しかしながら、上記特許文献1によるレールクランプ装置では、レールの把持を解除するための油圧シリンダをバネ部材の上方に配置しているため、レール把持状態およびレール把持解除状態の間のバネ部材のストローク(変位量)を含むバネ部材の高さと、バネ部材の付勢力をクランプアームに伝達するリンク機構と、油圧シリンダとの分だけレールクランプ装置の高さを確保する必要がある。このため、レールクランプ装置の高さが大きくなるので、レールクランプ装置が大型化してしまうという問題点がある。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、装置の高さを小さくして小型化することが可能なレールクランプ装置を提供することである。
課題を解決するための手段および発明の効果
上記目的を達成するために、この発明の一の局面によるレールクランプ装置は、回動軸周りに回動してレールを両側から把持してクランプ可能な一対のレバーと、一対のレバーがそれぞれレールを把持してクランプする方向に回動するように一対のレバーを付勢するコイル状の圧縮バネ部材と、コイル状の圧縮バネ部材の内側に配置され、圧縮バネ部材を圧縮して一対のレバーによるクランプを解除させることが可能なクランプ解除機構とを備え、圧縮バネ部材と圧縮バネ部材の内側に配置されたクランプ解除機構とは高さ方向にオーバーラップし、クランプ解除機構が圧縮バネ部材の内側に収容されるように設けられている。
この発明の一の局面によるレールクランプ装置では、上記のように、一対のレバーを付勢するコイル状の圧縮バネ部材と、コイル状の圧縮バネ部材の内側に配置され、圧縮バネ部材を圧縮して一対のレバーによるクランプを解除させることが可能なクランプ解除機構とを設けることによって、コイル状の圧縮バネ部材の内側に圧縮バネ部材と高さ位置が重なる(オーバーラップする)ようにクランプ解除機構を配置することができる。これにより、クランプ解除機構を圧縮バネ部材の上方に配置する構成と比較して、圧縮バネ部材とクランプ解除機構とが高さ方向に重なる(オーバーラップする)分だけレールクランプ装置の高さを小さくして、装置を小型化することができる。また、圧縮バネ部材と圧縮バネ部材の内側に配置されたクランプ解除機構とは高さ方向にオーバーラップし、クランプ解除機構が圧縮バネ部材の内側に収容されるように設けられている。このように構成すれば、容易に、圧縮バネ部材とクランプ解除機構とが高さ方向にオーバーラップする分だけ装置の小型化を図ることができる。
上記一の局面によるレールクランプ装置において、好ましくは、圧縮バネ部材の上端部および下端部とそれぞれ接する上側部材および下側部材をさらに備え、クランプ解除機構は、上側部材を圧縮バネ部材の付勢力に抗して下側部材側に移動させることにより、圧縮バネ部材を圧縮して一対のレバーによるクランプを解除させるように構成されている。このように構成すれば、上側部材を圧縮バネ部材の付勢力に抗して下側部材側に移動させるだけでクランプを解除させることができるので、レバーによるクランプを解除するのにリンク機構などを設ける必要がない。この結果、リンク機構を設ける構成と比較して装置構成の簡素化を図ることができるとともに、リンク機構を設けない分だけ装置の小型化を図ることができる。
上記一の局面によるレールクランプ装置において、好ましくは、一対のレバーの上部には、圧縮バネ部材の伸張方向に対して傾斜する傾斜面が設けられ、傾斜面よりも下方の位置に設けられ、圧縮バネ部材の伸縮に伴って移動するとともに、一対のレバーの傾斜面と当接する当接部材をさらに備え、当接部材がレバーの傾斜面と当接しながら圧縮バネ部材の伸張により傾斜面を押し広げるように上方へ移動して一対のレバーを回動させることにより、一対のレバーがレールを把持してクランプするように構成されている。このように構成すれば、圧縮バネ部材の伸張方向の付勢力を当接部材と傾斜面とを介して直接的に一対のレバーに伝達することができる。これにより、バネ部材の付勢力をリンク機構により伝達する構成と比較して、圧縮バネ部材(当接部材)とレバー(傾斜面)との間にリンク機構を設けない分だけ装置の小型化を図ることができる。また、たとえば一対のレバーの上方から圧縮バネ部材が当接部材を下方に移動させる場合には、圧縮バネを上側から支持するための支持部材を設ける必要がある一方、当接部材が圧縮バネ部材の伸張により上方へ移動して一対のレバーを回動させるように構成することによって、一対のレバーよりも上方に支持部材を設ける必要がないので、装置の高さを小さくして、装置を小型化することができる。
この場合において、好ましくは、一対のレバーにそれぞれ交換可能に取り付けられるとともに、傾斜面を有するクサビ状部材をさらに備え、当接部材は、一対のレバーに取り付けられたクサビ状部材の傾斜面と当接するとともに、傾斜面と当接しながら回転可能に構成されたローラ部材からなる。このように構成すれば、圧縮バネ部材の付勢力が作用する傾斜面を有するクサビ状部材を容易に交換することができるとともに、ローラ部材が傾斜面と当接しながら回転することにより、ローラ部材と傾斜面(クサビ状部材)との当接による摩擦を抑制してローラ部材およびクサビ状部材の摩耗を低減することができる。
上記一の局面によるレールクランプ装置において、好ましくは、一対のレバーを回動可能に支持するとともに、圧縮バネ部材と、クランプ解除機構とを支持する固定ブロックをさらに備え、固定ブロックは、レールの両側の位置に配置され、クランプ解除状態で固定ブロックがレールと直交する横方向へ移動した場合にレールと当接して、固定ブロックの移動を制限するガイド部を含む。このように構成すれば、レールの湾曲や外部からの横方向荷重などに起因して固定ブロックが横方向に移動する場合にもガイド部がレールと当接することにより、レールクランプ装置がレールから脱落したり、一定量以上傾いたりするのを制限することができる。
この場合において、好ましくは、一対のレバーは、それぞれ、固定ブロックと当接してレバーの回動を制限する回動制限部を有し、回動制限部は、クランプ解除状態で固定ブロックがレールに対して横方向に傾斜してガイド部がレールと当接した状態において、レバーがレールに当接しない所定のレバー回動位置でレバーの回動を制限するように設けられている。このように構成すれば、クランプ解除状態でガイド部がレールと当接するまで傾いたとしても、回動制限部によりレバーがレールに当接するのを防止することができる。これにより、クランプ解除状態でレバーがレールと当接し、レバーのレール把持部が摩耗(消耗)するのを防止することができる。
上記固定ブロックを備える構成において、好ましくは、固定ブロックに回転可能に支持され、レール上をレールに沿って回転移動する1つの車輪をさらに備え、1つの車輪は、一対のレバー間の位置に配置されている。このように構成すれば、一対のレバーを回動可能に支持するとともに、圧縮バネ部材と、クランプ解除機構とを支持する固定ブロックに車輪を設けるだけで、レールクランプ装置を移動可能とすることができる。また、レールクランプ装置の外部に複数の車輪を設ける場合と異なり、1つの車輪を固定ブロックに設けるだけでよいので、車輪を含む移動機構の構造を簡素化することができるとともに装置全体の小型化を図ることができる。この場合にも、固定ブロックのガイド部により、レール上からの車輪の脱輪を防止することができるので、車輪自体に脱輪防止の鍔を設ける必要がない。
上記一の局面によるレールクランプ装置において、好ましくは、一対のレバーを回動可能に支持するとともに、圧縮バネ部材と、クランプ解除機構とを支持する固定ブロックと、レールに沿って移動する移動構造物に取り付けられるとともに内部に固定ブロックを収容するブラケットとをさらに備え、固定ブロックは、固定ブロック側制限部材を有し、ブラケットは、固定ブロック側制限部材と当接するブラケット側制限部材を有し、固定ブロックがブラケットに対して横方向に傾斜すると固定ブロック側制限部材とブラケット側制限部材とが当接することにより、固定ブロックのブラケットに対する横方向の傾斜が制限されるように構成されている。このように構成すれば、荷役機械(クレーンなど)や開閉屋根などの移動構造物に取り付けられたブラケットを介して固定ブロックおよび固定ブロックに支持される各部を移動構造物とともに移動させる構成において、固定ブロック側制限部材とブラケット側制限部材との当接によって、容易に、ブラケットと固定ブロックとの相対的な傾きを制限することができる。
上記傾斜面が設けられる構成において、好ましくは、傾斜面は、初期状態のレールを把持した場合のレバーのレールに対する押圧力を、所定の摩耗状態のレールを把持した場合のレバーのレールに対する押圧力に近づけるように、初期状態のレールを把持する場合の当接部材との接触位置における傾斜角度を、所定の摩耗状態のレールを把持する場合の当接部材との接触位置における傾斜角度と異なるように構成している。ここで、レールが摩耗していない初期状態と比較してレールが摩耗している状態では、レバーによるクランプを行う際にレールが摩耗した分だけ余分にレバーを回動させる必要がある。この場合、圧縮バネ部材を初期状態よりも伸張させる必要があるとともに当接部材と傾斜面との接触位置も変化するので、レールの摩耗状態によってレールに対する押圧力(クランプ力)が小さくなる方向に変化することになる。これに対し、上記のように初期状態での当接部材との接触位置における傾斜面の傾斜角度を所定の摩耗状態での当接部材との接触位置における傾斜面の接触角度と異ならせることによって、初期状態でのレールに対する押圧力を所定の摩耗状態での押圧力に近づくように低くすることができるので、初期状態でのレールに対する押圧力が高くなりすぎる(過大になる)のを抑制することができる。
この場合において、好ましくは、傾斜面は、初期状態のレールを把持する場合に当接部材と接触する第1傾斜面と、所定の摩耗状態のレールを把持する場合に当接部材と接触する第2傾斜面とを有し、第1傾斜面の第1傾斜角度は、第2傾斜面の第2傾斜角度よりも大きい。ここで、所定の磨耗状態では、摩耗のない初期状態よりも圧縮バネ部材を摩耗分だけ伸張させる必要があるため、レールに対する押圧力(クランプ力)は減少する。したがって、所定の磨耗状態でも所要の押圧力(クランプ力)を得ようとすれば、通常、初期状態で過大な押圧力(クランプ力)が発生することになる。このため、傾斜面を押し広げるようにしてレバーを回動させる構成において、上記のように初期状態で接触する第1傾斜面の第1傾斜角度を磨耗状態で接触する第2傾斜面の第2傾斜角度よりも大きくすることによって、圧縮バネ部材の付勢力のクランプ方向(レバーをレールに向けて回動させる方向)成分を初期状態で相対的に小さくすることができる。これにより、所定の磨耗状態で所要の押圧力(クランプ力)が得られるように構成した場合にも、初期状態で過大な押圧力(クランプ力)が発生するのを抑制することができるので、当接部材と第1傾斜面との接触部分や、レバーとレールとの接触部分の消耗(摩耗)を抑制することができる。
上記一の局面によるレールクランプ装置において、好ましくは、圧縮バネ部材の上端部および下端部とそれぞれ接する上側部材および下側部材をさらに備え、クランプ解除機構は、下側部材上に設置されたシリンダと、シリンダから上下方向に進退可能に設けられ、上端部が上側部材に連結されたロッドとを含み、上側部材とロッドとは、球面状の凸面からなる第1当接面と、第1当接面に対して移動可能に球面接触する球面状の凹面からなる第2当接面とを有する連結部材を介して連結されている。このように構成すれば、上側部材がロッドに対して傾く場合にも、球面接触する第1当接面および第2当接面が上側部材の傾斜に合わせて移動することにより、上側部材の傾斜に起因してロッドに荷重が加わるのを抑制することができる。これにより、クランプ解除機構が圧縮バネ部材の内側に配置される構成において、圧縮バネ部材の上側部材に対する付勢力が水平方向にばらつく(たとえば、前後で付勢力がばらつく)ために上側部材が僅かに傾斜する場合にも、連結部分(上側部材)の傾斜に起因してロッドに加わる横方向(曲げ方向)荷重を低減することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、図1〜図13を参照して、本発明の一実施形態によるレールクランプ装置100の構造について説明する。
図1および図2に示すように、本実施形態によるレールクランプ装置100は、レールに沿って移動する荷役機械などの移動構造物が停止中に強風などを受け逸走(走行方向に移動すること)するのを防ぐための装置(逸走防止装置)である。荷役機械としては、港湾などで使用されコンテナの荷積みおよび荷下ろしを行うためのコンテナクレーンなどがある。また、移動構造物としては、荷役機械の他に、レールに沿って移動するドーム式開閉屋根などがある。大型の移動構造物は走行装置を有し、レールに沿って移動可能に構成される。レールクランプ装置100は、上記した荷役機械や開閉屋根などの移動構造物に連結され、レールを把持(クランプ)することで移動構造物の停止時の逸走を防止し、把持を解除することにより移動時には移動構造物に伴って移動するように構成されている。
図1〜図3に示すように、レールクランプ装置100は、レールの把持を行うクランプ機構からなる内部ユニット1と、荷役機械などの移動構造物に連結され、内部ユニット1を内側に収容するブラケット2と、内部ユニット1の駆動を行うための油圧ユニット3とから構成されている。また、レールクランプ装置100は、ブラケット2に取り付けられ内部ユニット1を覆うカバー4を備えている。
図4および図5に示すように、内部ユニット1は、一対のレバー10によりレール110を把持して移動しないようにクランプするクランプ状態(図4参照)と、一対のレバー10によるレール110の把持を解除して移動可能にするクランプ解除状態(図5参照)とに切り替え可能に構成されている。
図1および図6に示すように、ブラケット2は、上方(矢印Z1方向)から見て矩形状の枠状形状を有し、上下が開放されている。また、ブラケット2は、後述する固定ブロック40を含む内部ユニット1の下側(矢印Z2方向側)部分を取り囲んで内部に収容するように形成されている。ブラケット2と内部ユニット1とは連結固定されておらず、内部ユニット1はブラケット2の内部で移動可能となっている。上記の通り移動構造物(荷役機械など)がレール110に沿って移動する場合には、移動構造物(荷役機械など)に連結されたブラケット2が内部ユニット1を引き(または押し)動かすように構成されている。
図1および図2に示すように、油圧ユニット3は、ブラケット2の後部(矢印Y2方向側)に固定された取り付台3a上に設置されている。油圧ユニット3は内部ユニット1の後述する油圧シリンダ30に図示しない油圧チューブを介して接続されている。油圧ユニット3は、油圧シリンダ30に油圧(作動流体)を供給することによって、クランプ状態からクランプ解除状態へ切り替える機能を有する。なお、レールクランプ装置100は、油圧ユニット3を作動させない場合にはクランプ状態となるように構成されており、油圧ユニット3が稼働しない状態でもクランプ側(逸走防止側)に作用するいわゆるフェイルセーフ構造となっている。なお、油圧シリンダ30は、本発明の「クランプ解除機構」の一例である。
次に、内部ユニット1の構成について詳細に説明する。図3に示すように、内部ユニット1は、一対のレバー10と、コイル状の圧縮バネ部材20と、油圧シリンダ30(図4参照)とを備えている。これらの一対のレバー10と、圧縮バネ部材20と、油圧シリンダ30とは、固定ブロック40により支持されている。また、固定ブロック40には1つの車輪50が設けられ、レール110の上面上を車輪50が回転移動可能に構成されている。これにより、内部ユニット1は、車輪50によってレール110上を移動可能に構成されている。
内部ユニット1の一対のレバー10は、レール110の両側を挟むように互いに対向して配置されている。一対のレバー10は、それぞれ上下方向(Z方向)に延びるように形成され、正面から見て、下側が内側(レール110側)に向けて湾曲した形状を有する。なお、一対のレバー10は正面から見て左右対称に設けられ、同一の構成を有する。
レバー10は、下端部にレール110を把持するためのシュー(把持部)11が設けられるとともに、上端部に傾斜面12aを有するクサビ12が設けられている。また、図4に示すように、レバー10は、レバー10の下側部分でかつシュー11よりも上方の位置で、回動軸41を介して固定ブロック40に回動可能に支持されている。これにより、一対のレバー10は、回動軸41を中心に矢印R1方向に回動して、シュー11がレール110の上部側面を両側から把持することによりクランプするクランプ状態(図4参照)と、矢印R1方向とは逆の矢印R2方向に回動してレール110とシュー11とが間隔CLを隔てて離間するクランプ解除状態(図5参照)とに切替可能に構成されている。図1および図2に示すように、レバー10の上端部のクサビ12は、レール110の延びる方向(長手方向、Y方向)に沿って取り付けられている。また、図3に示すように、クサビ12は、一対のレバー10(クサビ12)が互いに対向する側(内側)に傾斜面12aが配置され、圧縮バネ部材20の伸張方向である上方向に対して内側に傾斜面12aが傾斜するように取り付けられている。なお、クサビ12は、本発明の「クサビ状部材」の一例である。
図7に示すように、クサビ12は、傾斜面12aと、2つのねじ穴12cが形成された取り付面12bとを含んでいる。クサビ12はレバー10の厚み(前後方向(Y方向)の長さ)に対応した幅Wを有している。また、傾斜面12aの下端部におけるクサビ12の厚みtは、クランプ状態で押圧力(クランプ力)がレバー10に加わることに起因するレバー10の撓み量を考慮して、所定の厚みを有するように形成されている。クサビ12は、傾斜面12aの反対側の面が取り付面12bとなっており、図1に示すように、取り付面12bがレバー10の上端部の所定位置に配置された状態で2つのボルト13によって裏側(取り付面12b側)からレバー10に取り付けられる。クサビ12は、この2つのボルト13を緩めてレバー10から容易に取り外すことができ、交換可能なように構成されている。
図4に示すように、クサビ12の傾斜面12aは、後述するローラ23と当接するとともに、ローラ23の上方への移動に伴って傾斜角度分だけレバー10(クサビ12)が外側に押し広げられるように構成されている。この傾斜角度に応じたレバー10の上端部の移動によって、レバー10が回動軸41周りに矢印R1方向に回動して、シュー11がレール110をクランプ(押圧)する。なお、レール110の幅WLは、経年的な摩耗によって減少する。レール110が摩耗している場合には、その分だけローラ23が傾斜面12aの上側まで移動して、クサビ12を押し広げる。このため、図8に示すように、本実施形態では、傾斜面12aは、摩耗のない初期状態のレール110をクランプする場合にローラ23と当接する第1傾斜面121と、所定の第1摩耗状態(片側約1mm摩耗状態)のレール110をクランプする場合にローラ23と当接する第2傾斜面122と、第2摩耗状態(片側約2mm摩耗状態)のレール110をクランプする場合にローラ23と当接する第3傾斜面123とを含んでいる。そして、これらの第1傾斜面121と、第2傾斜面122と、第3傾斜面123とは、それぞれ異なる傾斜角度α1と、α2と、α3とを有する。特に、本実施形態では、第1傾斜面121は、第2傾斜面122の傾斜角度α2よりも大きな傾斜角度α1を有する。なお、ローラ23は、本発明の「当接部材」および「ローラ部材」の一例である。また、傾斜角度α1は、本発明の「第1傾斜角度」の一例である。また、傾斜角度α2は、本発明の「第2傾斜角度」の一例である。一例として、本実施形態では、傾斜角度α1と、α2と、α3とは、それぞれ、約12.3度と、約10.5度と、約10.9度とに設定されている。なお、図8では、理解の容易化のため傾斜角度を誇張して図示している。
なお、図1に示すように、一対のレバー10の前方側(矢印Y1方向側)および後方側(矢印Y2方向側)には、それぞれ水平に延びる支持棒14が合計4本設けられている。図2に示すように、これらの支持棒14は、それぞれブラケット2の内側面と僅かな間隔を隔てて離間するように設けられており、内部ユニット1のブラケット2に対する前後方向(Y方向)の傾きを制限するように構成されている。
圧縮バネ部材20は、上下方向に伸縮可能に構成されたコイル形状を有する圧縮コイルバネからなる。図2および図4に示すように、コイル形状の圧縮バネ部材20は、油圧シリンダ30の外形寸法D2よりも大きい内径寸法D1を有し、本実施形態では、圧縮バネ部材20の内側に油圧シリンダ30が収容されるように構成されている。図4に示すように、圧縮バネ部材20は、一対のレバー10の間の位置で、固定ブロック40の上面上に設けられた下側部材21上に設けられている。また、圧縮バネ部材20は、上端面がローラユニット22の下面と接するように設けられている。圧縮バネ部材20は、このローラユニット22を上方に付勢するように構成されている。なお、ローラユニット22は、本発明の「上側部材」の一例である。
ローラユニット22は、一対のレバー10にそれぞれ設けられたクサビ12の傾斜面12aとそれぞれ当接する一対のローラ23を有している。ローラ23は、回転軸方向がクサビ12の幅方向(前後方向(Y方向))と一致するように設けられており、クサビ12の傾斜面12aと当接したまま回転することが可能なように構成されている。一対のローラ23は、ローラユニット22が圧縮バネ部材20によって上方に押し上げられることによって、クサビ12の傾斜面12aとの接触位置で回転しながら上方に移動し、傾斜面12aの傾斜角度に応じた所定量だけレバー10の上端(傾斜面12a)を外側(矢印R1方向)に押し広げるように構成されている。
また、油圧シリンダ30は、圧縮バネ部材20の内側において下側部材21上に設置されているとともに、油圧により上下方向に移動可能なロッド31が一対の連結部材33および34を介してローラユニット22に連結されている。具体的には、ロッド31の上端部31aがローラユニット22の基部22aに形成された穴部22bから上方に突出するとともに、環状の一対の連結部材33および34に挿入されている。また、ロッド31の上端部31aの外周にはネジ部が形成され、ナット35が螺合している。ローラユニット22は下方から圧縮バネ部材20によって上方に付勢されているので、上端部31aに螺合するナット35により、ローラユニット22が一対の連結部材33および34を介して係止されている。
ここで、本実施形態では、上側の連結部材33は、上面側でロッド31に螺合するナット35と接するとともに、球面状の凸面(図2および図4参照)からなる第1当接面33aを有する。また、下側の連結部材34は、下面側でローラユニット22の基部22aと接するとともに、連結部材33の第1当接面33aと摺動可能に球面接触する球面状の凹面(図2および図4参照)からなる第2当接面34aを有する。基部22aの穴部22bは、ロッド31から僅かに間隔CLを隔てるように一回り大きく形成され、連結部材34の内周部は、ロッド31からさらに間隔を隔てている。このため、ローラユニット22が僅かに傾いた場合に、連結部材34が連結部材33に対して球面に沿って摺動し、穴部22bとロッド31との間隔CL分だけ角度を変えることが可能なように構成されている。これにより、ローラユニット22が僅かに傾く場合にも、ロッド31自体は垂直を保つことが可能なように構成されている。
また、油圧シリンダ30は、外形寸法D2の筒状形状を有する。本実施形態では、油圧シリンダ30は、ロッド31の先端(上端)の一部を除いて、圧縮バネ部材20と高さ方向(Z方向)に完全にオーバーラップする。すなわち、図5に示す圧縮状態で高さH1を有する圧縮バネ部材20の高さ範囲内に、高さH2の油圧シリンダ30が収まるように構成されている。油圧シリンダ30は、油圧ユニット3に駆動されることによりロッド31を下降させ、圧縮バネ部材20の上方への付勢力に抗してローラユニット22を下方(矢印Z2方向)に引き下げる。これにより、油圧シリンダ30は、圧縮バネ部材20を圧縮して一対のレバー10によるクランプを解除させることが可能なように構成されている。
図4および図9に示すように、固定ブロック40は、一対の回動軸41を介して一対のレバー10を回動可能に支持しているとともに、下側部材21を介して圧縮バネ部材20および油圧シリンダ30を支持している。固定ブロック40は、これらの内部ユニット1の各部を支える機能を有する。一対の回動軸41は、レール110と直交する横方向(X方向)の両側に配置され、軸方向がレール110と一致するように設けられている。これにより、一対のレバー10が、それぞれ回動軸41を回動中心としてクランプ方向(矢印R1方向)またはクランプ解除方向(矢印R2方向)に回動可能となっている。また、固定ブロック40には、レール110上を回転移動可能な1つの車輪50が設けられている。これにより、クランプ解除状態では、内部ユニット1がレール110に沿って移動可能となるように構成されている。
具体的には、図4に示すように、固定ブロック40の中央に車輪50が配置されており、車輪50は、ベアリング51を介してシャフト52に回転可能に支持されている。シャフト52の両端は、固定ブロック40を上面から下方に貫通する一対のボルト53と、固定ブロック40の下面側で一対のボルト53に締結する一対のナット54とによってそれぞれ支持されている。また、各ボルト53に対してシャフト52は上下方向に相対移動可能となっており、シャフト52は一対のボルト53にそれぞれ設けられた一対のサスペンションバネ55によって下方向(ナット54側)に付勢されている。このため、車輪50はシャフト52およびベアリング51ごと固定ブロック40に対して上方に相対移動可能に構成され、一対のサスペンションバネ55によって移動時の上下動や衝撃を吸収することが可能である。また、これらの一対のサスペンションバネ55は、クランプ時に外力がレール110の上面よりも上方の位置で作用することによる回転モーメントに起因して車輪50(ベアリング51)に作用する荷重を逃がす機能を有している。
また、図2および図3に示すように、固定ブロック40の前後方向(Y方向)両端部の下面には、それぞれ、下方向に突出してレール110の両外側まで延びる一対のガイド爪42が一体的に設けられている。図10に示すように、この1対のガイド爪42は、クランプ解除状態で内部ユニット1(固定ブロック40)が横方向(X方向)に移動した場合にレール110と当接して、内部ユニット1(固定ブロック40)が移動するのを制限する機能を有する。ここで、1対のガイド爪42は、内部ユニット1(固定ブロック40)が横方向(X方向)に水平移動する場合だけでなく、内部ユニット1(固定ブロック40)が横方向(X方向)に所定量以上傾く場合にも、レール110と当接する。これにより、内部ユニット1(固定ブロック40)の車輪50がレール110上から脱輪するのを防止するとともに、内部ユニット1(固定ブロック40)がレール110に対して横方向に所定角度を超えて傾斜しないように構成されている。なお、本実施形態では、内部ユニット1の重心位置が横方向(X方向)についてレール110上に位置するように設計されている。そして、ガイド爪42で制限する横方向の所定角度とは、この内部ユニット1のX方向の重心位置がレール110上から外れない角度である。これにより、固定ブロック40のガイド爪42が制限する範囲において内部ユニット1の重心位置がレール110上方から外れないように構成されている。なお、ガイド爪42は、本発明の「ガイド部」の一例である。
ここで、クランプ解除状態では、一対のレバー10は回動軸41周りに回動し得る状態となるため、内部ユニット1(固定ブロック40)の傾斜に伴ってレバー10が回動し、シュー11がレール110に近づく可能性がある。このため、本実施形態では、一対のレバー10の固定ブロック40近傍の所定位置(回動軸41近傍の位置)に、それぞれ、回動制限ピン15が設けられている。回動制限ピン15は、所定の回動位置までレバー10を回動させると、回動制限ピン15が固定ブロック40のリブ部43と接触してそれ以上レバー10を回動させないように制限する機能を有する。図10に示すように、この所定の回動位置は、クランプ状態におけるレバー10の回動位置よりは大きく、かつ、ガイド爪42がレール110と当接するまで内部ユニット1(固定ブロック40)を傾斜させた状態(レール110に対して内部ユニット1を限界まで傾斜させた状態)で、回動制限ピン15が固定ブロック40と当接する側のシュー11がレール110には当接しない位置となるように設定されている。なお、図10では、矢印X1方向側のシュー11がレール110の矢印X1方向側側面と当接しないように、矢印X1方向側の回動制限ピン15が固定ブロック40のリブ部43と接触してレバー10の回動を制限している状態を示している。これにより、固定ブロック40をレール110に対して限界まで傾斜させレバー10を回動させた状態でも、レバー10のシュー11はレール110とは当接せず、シュー11をクランプ時のみレール110と接触させるようにすることによりシュー11の摩耗を抑制することができる。なお、回動制限ピン15は、本発明の「回動制限部」の一例である。
また、図1に示すように、一対のレバー10の上側部分には、レバー10を互いに閉じる方向に付勢するコイルバネからなる保持バネ16が設けられている。この保持バネ16の付勢力によって、クランプ解除状態でもレバー10のクサビ12(傾斜面12a)がローラ23と常に接触する状態となっている。従って、固定ブロック40が横方向に傾斜した場合にも、一対のレバー10は、クサビ12とローラ23とが接触した状態を保つように拘束を受けながら、一体的に傾く。固定ブロック40のガイド爪42が制限する範囲において内部ユニット1の重心位置はレール110上方から外れないため、固定ブロック40をレール110に対して限界まで傾斜させた状態でも、内部ユニット1自体の復元力が働いて直立した状態に戻るとともに、この保持バネ16の作用によって、一対のレバー10も回動制限ピン15が当接した状態から元の状態に戻るように構成されている。
また、図9に示すように、固定ブロック40の中央部前側(矢印Y1方向側)には、前方に突出する突出部44が形成されている。突出部44は水平方向に延びる平板状形状を有する。この突出部44には、固定ブロック40のブラケット2に対する横方向の相対的な傾きを制限するブロック側制限部材60が設けられている。なお、ブロック側制限部材60は、本発明の「固定ブロック側制限部材」の一例である。
ブロック側制限部材60は、突出部44の上下に設けられた一対の傾斜制限板61および62が、突出部44の両外側で一対のスペーサ63(図3参照)を介して連結された枠状構造を有する。一対の傾斜制限板61および62は同一形状で、平面的に見て幅の小さい先端部61a(62a)を有する凸状形状に形成されている。傾斜制限板61および62間の間隔は、一対のスペーサ63により、突出部44の厚みよりも僅かに大きくなるように保たれている。このため、ブロック側制限部材60は、傾斜制限板61および62と一対のスペーサ63により枠状に囲まれた空間に突出部44が挿入されるように設けられている。なお、傾斜制限板61(62)の先端部61a(62a)の幅方向(X方向)の大きさも突出部44の幅よりも大きい。このため、突出部44とブロック側制限部材60とは、突出部44がブロック側制限部材60に当接する限度内で、互いに上下方向にも横方向にも相対的に動くことが可能である。
また、図1および図3に示すように、ブロック側制限部材60の傾斜制限板61および62の凸状の先端部61a(62a)の横方向の両側には、一対のブラケット側制限部材70が設けられている。ブラケット側制限部材70は、上方から見てL字状の板状部材(図6参照)からなり、上下方向に延びるようにブラケット2の内側面にボルト71によって固定されている。一対のブラケット側制限部材70は、L字状の直立部分が傾斜制限板61および62の凸状の先端部61a(62a)の両側に位置するように設けられている。また、一対のブラケット側制限部材70は、傾斜制限板61および62の凸状の先端部61a(62a)から横方向に僅かに間隔を隔てて配置されている。
ブロック側制限部材60とブラケット側制限部材70とは、図11〜図13に示すように、固定ブロック40(内部ユニット1)がブラケット2に対して相対的に横方向に傾斜するときに、ブロック側制限部材60とブラケット側制限部材70とが当接することにより、ブラケット2に対して内部ユニット1が横方向に傾斜するのを制限する機能を有する。
具体的には、図11に示すように、傾きのない通常状態では、ブロック側制限部材60の上側の傾斜制限板61の下面と固定ブロック40の突出部44の上面とが接触した状態にある。ここから、たとえば固定ブロック40(内部ユニット1)がブラケット2に対して矢印Q方向に傾く場合を考えると、突出部44と傾斜制限板61とが接触しているため、固定ブロック40(突出部44)の傾きに伴ってブロック側制限部材60も同じ矢印Q方向に傾く。図12に示すように、ブロック側制限部材60が矢印Q方向に傾くと、上側の傾斜制限板61の先端部61aは一方(矢印Q方向側)のブラケット側制限部材70と接触点Q1で接触し、下側の傾斜制限板62の先端部62aは他方(矢印Q方向とは反対側)のブラケット側制限部材70と接触点Q2で接触する。傾斜制限板61の先端部61aおよび傾斜制限板62の先端部62aがそれぞれ接触点Q1およびQ2でブラケット側制限部材70と接触した結果、ブロック側制限部材60はそれ以上矢印Q方向に傾くことができなくなる。
その後、図13に示すように、固定ブロック40(内部ユニット1)がさらに矢印Q方向に傾くと、ブロック側制限部材60はそれ以上傾くことができないため、突出部44のみがブロック側制限部材60およびブラケット側制限部材70に対して矢印Q方向に傾く。この結果、突出部44の上面が角部の接触点Q3で上側の傾斜制限板61(先端部61a)の下面と当接するとともに、突出部44の下面が角部の接触点Q4で下側の傾斜制限板62(先端部62a)の上面と当接する。これにより、固定ブロック40(内部ユニット1)の矢印Q方向の傾きがブロック側制限部材60によって制限され、ブロック側制限部材60の矢印Q方向の傾きがブラケット側制限部材70によって制限される。この結果、内部ユニット1(固定ブロック40)とブラケット2との横方向の相対的な傾きが所定の範囲内で制限される。
このように、クランプ解除状態において、内部ユニット1(固定ブロック40)のレール110に対する横方向(X方向)の移動および傾きは、固定ブロック40のガイド爪42によって所定範囲に制限される。また、内部ユニット1(固定ブロック40)とブラケット2との横方向(X方向)の相対的な傾きは、ブロック側制限部材60とブラケット側制限部材70とによって所定範囲に制限される。実際の動作(たとえば、荷役機械に引かれてレールクランプ装置100が移動する場合)において、内部ユニット1が横方向に移動または傾く場合には、内部ユニット1(固定ブロック40)とレール110との位置関係および内部ユニット1(固定ブロック40)とブラケット2との位置関係の両方が変化する。したがって、実際には、それぞれ異なる位置に設けられた固定ブロック40のガイド爪42と、ブロック側制限部材60およびブラケット側制限部材70との相互の作用によって、内部ユニット1の横方向(X方向)の傾きおよび移動が制限される。
次に、本実施形態によるレールクランプ装置100のクランプ動作およびクランプ解除動作について説明する。
上記の通り、フェイルセーフ構造を有するレールクランプ装置100は、油圧シリンダ30を駆動しない場合にクランプ動作を行う。図5に示すように、一対のレバー10のクサビ12(傾斜面12a)と、一対のクサビ12に対応する一対のローラ23とは、保持バネ16の付勢力によって、常に接触する状態となっている。油圧シリンダ30を駆動しない場合には、圧縮バネ部材20がローラユニット22を上方に付勢して押し上げる。これにより、一対のローラ23は、ローラユニット22の上方移動に伴いクサビ12の傾斜面12aと接触したまま回転しながら上方に移動し、傾斜面12aの傾斜角度に応じた所定量だけレバー10の上端(傾斜面12a)を外側(矢印R1方向)に押し広げる。この結果、ローラ23と傾斜面12aとの接点が上方に移動するに従ってレバー10が回動軸41周りの矢印R1方向に回動する。圧縮バネ部材20によるローラユニット22の上方移動と、これに伴うレバー10の回動軸41周りの回動とは、図4に示すように、レバー10の下端のシュー11がレール110に当接することにより停止される。このとき、圧縮バネ部材20の上方への押し上げ力(付勢力)がローラ23およびクサビ12を介してレバー10(シュー11)に伝達される。これにより、レール110の両側がシュー11により把持され、所定のクランプ力(押圧力)がレール110に作用する。このようにして、レバー10によるレール110のクランプが行われ、このクランプ力(押圧力)によって移動構造物(荷役機械など)の逸走が防止される。
一方、クランプ解除動作時には、油圧ユニット3により油圧シリンダ30を駆動して、ロッド31を下降(シリンダ内に退入)させる。このとき、油圧シリンダ30が圧縮バネ部材20による上方への付勢力よりも大きな駆動力を発生させることにより、ロッド31の先端(上端)に連結されたローラユニット22が圧縮バネ部材20の付勢力に抗して下降する。一対のレバー10のクサビ12(傾斜面12a)と一対のローラ23とは、保持バネ16の付勢力によって常に接触する状態となっているため、ローラユニット22が下降する場合にもクサビ12(傾斜面12a)とローラ23とが接触した状態を保ちながら、傾斜面12aの傾斜角度に応じた所定量だけ一対のレバー10の上端(傾斜面12a)を内側(矢印R2方向)に互いに近づけ合う。この結果、ローラ23と傾斜面12aとの接点が下方に移動するに従ってレバー10が回動軸41周りの矢印R2方向に回動する。これにより、図5に示すように、レール110の両側をクランプしていたシュー11が、レバー10の矢印R2方向への回動に伴ってレール110から離間して、クランプ状態が解除される(クランプ解除状態になる)。油圧シリンダ30によるローラユニット22の下方移動と、これに伴うレバー10の回動軸41周りの矢印R2方向への回動とは、油圧シリンダ30の下限位置で停止される。そして、油圧ユニット3による油圧シリンダ30の駆動を停止すれば、再度上記のクランプ動作によってクランプ状態へと切り替わる。以上のようにして、クランプ動作と、クランプ解除動作とが行われる。
次に、本実施形態によるクサビ12の形状(傾斜面12aの傾斜角度)とレバー10のレール110に対する押圧力(クランプ力)との関係について説明する。
上記のクランプ動作によってレール110をクランプする場合に、クランプされるレール110の幅は一定とは限らず、摩耗などによって幅が異なる場合がある。具体的には、レール110が摩耗のない初期状態にある場合には、図14の(a)のように、回動軸41からの高さh1の接触点p1でクサビ12の傾斜面12aとローラ23とが接したときに、回動軸41からの距離x1の位置でシュー11がレールをクランプしたとする。これに対し、レール110が所定量dxだけ摩耗している場合には、摩耗分(dx)だけレバー10をさらに回動させる必要がある。このため、図14の(b)に示すように、圧縮バネ部材20は高さh1からさらに高さdhだけローラ23(ローラユニット22)を押し上げる。これにより、シュー11は、所定量dxだけさらに内側に変位して磨耗したレール110をクランプする。このときのクサビ12の傾斜面12aとローラ23との接触点は、p2となる。また、鉛直方向に対する回動軸41と接触点p1との角度θ1よりも、回動軸41と接触点p2との角度θ2の方がレバー10の回動分だけ小さくなる。
図14の初期状態(a)と摩耗状態(b)とを比較すると、摩耗状態(b)の方が圧縮バネ部材20の伸張量(圧縮バネ部材20のセット長さ)が大きく、クサビ12の傾斜面12aのより高い位置をローラ23が押圧することになる。このため、圧縮バネ部材20が延びた分だけ圧縮バネ部材20の付勢力が低下する。また、クサビ12の接触点p2の高さがdhだけ大きいため、レバー10の撓み量が大きくなりやすい。そして、レバー10の回動(および撓み)に伴ってクサビ12の傾斜面12aとローラ23との接触角度が変化し、傾斜面12aに加わる荷重の水平方向成分(レバー10の回転に寄与する荷重成分)が変化する。このため、初期状態(a)と摩耗状態(b)とではレバー10によるレール110のクランプ力(押圧力)は摩耗状態(b)の方が小さくなる。
そこで、図14の摩耗状態(b)においても所用のクランプ力(押圧力)を得るためには、摩耗状態(b)におけるクランプ力を基準にレールクランプ装置を設計する必要があるが、この場合には、初期状態(a)におけるクランプ力(押圧力)が過大になり、シュー11やクサビ12の傾斜面12aおよびローラ23の消耗が大きくなってしまう。
本実施形態では、図8に示すように、傾斜面12aのうち、初期状態(a)のレール110を把持する場合にローラ23と接触する第1傾斜面121の第1傾斜角度α1が、所定の摩耗状態(片側1mm摩耗状態)のレール110を把持する場合にローラ23と接触する第2傾斜面122の第2傾斜角度α2よりも大きくなるように構成することによって、初期状態でのローラ23と第1傾斜面121との接触角度がローラ23と第2傾斜面122との接触角度よりも大きくなる。このとき、図15に示すように、傾斜面の傾斜角度が大きい場合(b)におけるレバー10に伝達される力のクランプ方向(レバーをレールに向けて回動させる方向)成分S2は、傾斜面の傾斜角度が小さい場合(a)における力のクランプ方向成分S1よりも小さくなる。このため、初期状態ではレバー10に伝達される力(圧縮バネ部材20の付勢力)のクランプ方向成分は相対的に小さくなる。これにより、片側1mm摩耗状態で所要の押圧力(約750kN)が得られるように構成した場合にも、初期状態における過大な押圧力(クランプ力)の発生を抑制することが可能である。なお、本実施形態では、第1傾斜面121(傾斜角度α1)でローラ23との接触角度が略α1(約12.3度)、第2傾斜面122(傾斜角度α2)および第3傾斜面123(傾斜角度α3)でローラ23との接触角度が約10度となるように設計されている。
本実施形態によるレールクランプ装置100においてクサビ12(傾斜面12a)の傾斜角度を変更した構成の効果を確認するため、傾斜面の角度を初期状態でも摩耗状態でも一定(約10度)とした構成(比較例)と、第1傾斜面121の傾斜角度α1が第2傾斜面122の傾斜角度α2よりも大きくなるレールクランプ装置100(実施例)とでクランプ力を比較した。なお、比較例および実施例のいずれにおいても、レールクランプ装置は、片側摩耗量1mmの摩耗状態で750kNのクランプ力(押圧力)が得られるように設計した。この結果、図16に示す結果が得られた。図16では、縦軸にレールに対するレバー(シュー)の押圧力(クランプ力)をとり、横軸にレールの片側摩耗量をとった。
図16に示すように、比較例では、レール摩耗量0mmの初期状態において、約900kNのクランプ力が発生している一方、実施例では770kNのクランプ力となっている。このように、第1傾斜面121の傾斜角度α1を第2傾斜面122の傾斜角度α2よりも大きくなるように構成したレールクランプ装置100(実施例)では、第1傾斜面121でローラ23とクサビ12とが接触する初期状態(0mm摩耗)におけるクランプ力(押圧力)の増大を抑制することができた。また、レールクランプ装置100(実施例)では、1mmの摩耗状態までにクランプ力が約900kN〜約750kNの範囲で変動した比較例と比較して、1mmの摩耗状態まで770kN〜約750kNで略一定に近いクランプ力を発生させることに成功している。
本実施形態では、上記のように、一対のレバー10を付勢するコイル状の圧縮バネ部材20と、コイル状の圧縮バネ部材20の内側に配置され、圧縮バネ部材20を圧縮して一対のレバー10によるクランプを解除させることが可能な油圧シリンダ30とを設けることによって、コイル状の圧縮バネ部材20の内側に圧縮バネ部材20と高さ位置が重なる(オーバーラップする)ように油圧シリンダ30を配置することができる。これにより、油圧シリンダをバネ部材の上方に配置する構成と比較して、圧縮バネ部材20と油圧シリンダ30とが高さ方向に重なる(オーバーラップする)分だけレールクランプ装置100の高さを小さくして、装置を小型化することができる。
また、本実施形態では、上記のように、圧縮バネ部材20と圧縮バネ部材20の内側に配置された油圧シリンダ30とは高さ方向にオーバーラップし、油圧シリンダ30が圧縮バネ部材20の内側に収容される。このように構成すれば、容易に、圧縮バネ部材20と油圧シリンダ30とが高さ方向にオーバーラップする分だけレールクランプ装置100の小型化を図ることができる。
また、本実施形態では、上記のように、油圧シリンダ30は、ローラユニット22を圧縮バネ部材20の付勢力に抗して下側部材21側に移動させることにより、圧縮バネ部材20を圧縮して一対のレバー10によるクランプを解除させる。このように構成すれば、ローラユニット22を圧縮バネ部材20の付勢力に抗して下側部材21側に移動させるだけでクランプを解除させることができるので、レバー10によるクランプを解除するのにリンク機構などを設ける必要がない。この結果、リンク機構を設ける構成と比較して装置構成の簡素化を図ることができるとともに、リンク機構を設けない分だけレールクランプ装置100の小型化を図ることができる。
また、本実施形態では、上記のように、ローラ23がレバー10にも受けられたクサビ12の傾斜面12aと当接しながら圧縮バネ部材20の伸張により傾斜面12aを押し広げるように上方へ移動して一対のレバー10を回動させることにより、一対のレバー10がレール110を把持してクランプする。このように構成すれば、圧縮バネ部材20の伸張方向の付勢力をローラ23と傾斜面12aとを介して直接的に一対のレバー10に伝達することができる。これにより、バネ部材の付勢力をリンク機構により伝達する構成と比較して、圧縮バネ部材20(ローラ23)とレバー10(クサビ12の傾斜面12a)との間にリンク機構を設けない分だけ装置の小型化を図ることができる。また、たとえば一対のレバーの上方から圧縮バネ部材が当接部材を下方に移動させる場合には、圧縮バネを上側から支持するための支持部材を設ける必要がある一方、ローラ23が圧縮バネ部材20の伸張により上方へ移動して一対のレバー10を回動させるように構成することによって、一対のレバー10よりも上方に支持部材を設ける必要がないので、レールクランプ装置100の高さを小さくして、装置の小型化を図ることができる。
また、本実施形態では、上記のように、傾斜面12aを有するクサビ12が一対のレバー10にそれぞれ交換可能に取り付けられ、一対のレバー10に取り付けられたクサビ12の傾斜面12aと当接するとともに、傾斜面12aと当接しながら回転可能に構成されたローラ23が設けられている。このように構成すれば、圧縮バネ部材20の付勢力が作用する傾斜面12aが形成されたクサビ12を容易に交換することができるとともに、ローラ23が傾斜面12aと当接しながら回転することにより、ローラ23と傾斜面12a(クサビ12)との当接による摩擦を抑制してローラ23およびクサビ12の摩耗を低減することができる。
また、本実施形態では、上記のように、レール110の両側の位置に配置され、クランプ解除状態で固定ブロック40がレール110と直交する横方向へ傾斜した場合にレール110と当接して、固定ブロック40の傾斜を制限するガイド爪42が固定ブロック40に設けられている。このように構成すれば、レール110の歪みや湾曲などに起因して固定ブロック40が横方向に傾く場合にもガイド爪42がレールと当接することにより、レールクランプ装置100が一定量以上傾いたり、倒れるたりするのを制限することができる。
また、本実施形態では、上記のように、クランプ解除状態で固定ブロック40がレール110に対して横方向に傾斜してガイド爪42がレール110と当接した状態において、レバー10(シュー11)がレール110に当接しない所定の回動位置でレバー10の回動を制限する回動制限ピン15が設けられている。このように構成すれば、クランプ解除状態でガイド爪42がレール110と当接するまで傾いたとしても、回動制限ピン15によりレバー10がレール110に当接するのを防止することができる。これにより、クランプ解除状態でレバー10がレール110と当接し、レバー10のレール把持部(シュー11)が摩耗(消耗)するのを防止することができる。
また、本実施形態では、上記のように、固定ブロック40の1つの車輪50が、一対のレバー10間の位置に配置されている。このように構成すれば、一対のレバー10を回動可能に支持するとともに、圧縮バネ部材20と、油圧シリンダ30とを支持する固定ブロック40に1つの車輪50を設けるだけで、レールクランプ装置100を移動可能とすることができる。また、レールクランプ装置100の外部に複数の車輪を設ける場合と異なり、車輪50を含む移動機構の構造を簡素化することができるとともにレールクランプ装置100全体の小型化を図ることができる。この場合にも、固定ブロック40のガイド爪42により、レール110上からの車輪50の脱輪を防止することができるので、車輪50自体に脱輪防止の鍔を設ける必要がない。
また、本実施形態では、上記のように、固定ブロック40に、ブロック側制限部材60が設けられるとともに、ブラケット2には、ブラケット側制限部材70が設けられている。そして、固定ブロック40がブラケット2に対して横方向に傾斜するとブロック側制限部材60とブラケット側制限部材70とが当接することにより、固定ブロック40のブラケット2に対する横方向の傾斜が制限されるように構成されている。このように構成すれば、荷役機械(クレーンなど)や開閉屋根などの移動構造物に取り付けられたブラケット2を介して固定ブロック40および固定ブロック40に支持される各部(内部ユニット1)を移動構造物とともに移動させる構成において、ブロック側制限部材60とブラケット側制限部材70との当接によって、容易に、ブラケット2と固定ブロック40との相対的な傾きを制限することができる。
また、本実施形態では、上記のように、クサビ12の傾斜面12aは、初期状態のレール110を把持した場合のクランプ力(押圧力)を、所定の摩耗状態(片側1mm摩耗)のレール110を把持した場合のクランプ力(押圧力)とに近づけるように、初期状態のレール110を把持する場合のローラ23との接触位置(第1傾斜面121)における傾斜角度α1を、所定の摩耗状態(片側1mm摩耗)のレール110を把持する場合のローラ23との接触位置(第2傾斜面122)における傾斜角度α2と異なるように構成している。このように構成すれば、初期状態でのレール110に対する押圧力を所定の摩耗状態(片側1mm摩耗)での押圧力に近づくように低くすることができるので、初期状態でのレール110に対する押圧力が高くなりすぎる(過大になる)のを抑制することができる。
また、本実施形態では、上記のように、ローラユニット22とロッド31とは、第1当接面33aを有する連結部材33と、第1当接面33aと摺動可能に球面接触する球面状の凹面からなる第2当接面34aを有する連結部材34とを介して連結されている。このように構成することにより、圧縮バネ部材20の付勢力が水平方向にばらつき(たとえば、図2のY1方向側とY2方向側とで、上方の付勢力がばらつき)、ローラユニット22が僅かに傾く場合にも、ロッド31自体は垂直を保つことができ、ばらついた付勢力が球面接触する第1当接面33aおよび第2当接面34aを介してロッド31に伝達されるので、ロッド31に加わる横方向(曲げ方向)の荷重を低減することができる。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記実施形態では、レールクランプ装置を用いる移動構造物の一例として、港湾などで使用されコンテナの荷積みおよび荷下ろしを行うためのコンテナクレーン(荷役機械)およびドーム式開閉屋根を例示したが、本発明はこれに限られない。本発明は、レールに沿って移動する移動構造物に用いられるレールクランプ装置であれば、コンテナクレーンおよびドーム式開閉屋根以外のどのような移動構造物に用いられるレールクランプ装置にも適用可能である。
また、上記実施形態では、一対のレバーと、圧縮バネ部材と、油圧シリンダとを含む内部ユニットを1つ備えたレールクランプ装置の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図17に示す変形例のように、2つの内部ユニットを備えたレールクランプ装置200としてもよい。図17の変形例では、レールクランプ装置200は、2つの内部ユニット201aおよび201bと、2つの内部ユニット201aおよび201bを収容するブラケット202と、油圧ユニット3とを備えている。2つの内部ユニット201aおよび201bの構成は、上記実施形態の内部ユニット1と同一である。この変形例によるレールクランプ装置200では、2つの内部ユニットを備えることにより、レールのクランプ力を2倍(たとえば、750kN×2=1500kN)にすることができる。本発明によるレールクランプ装置では、装置の小型化を図ることができるので、この変形例のように2つの内部ユニットを設けたとしても、装置全体の大型化の抑制を図ることが可能である。
また、上記実施形態では、本発明のクランプ解除機構の一例として、油圧シリンダを用いた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、電動式のクランプ解除機構を設けてもよいし、油圧式および電動式以外の他のクランプ解除機構を設けてもよい。
また、上記実施形態では、油圧シリンダを、ロッドの先端(上端)の一部を除いて、圧縮バネ部材と高さ方向に完全にオーバーラップするように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、油圧シリンダが圧縮バネ部材と部分的にオーバーラップするように設けてもよい。
また、上記実施形態では、固定ブロックの上面上に設けられた下側部材上に圧縮バネ部材を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、固定ブロックと下側部材とを一体的に形成して、固定ブロックが下側部材を兼ねるように構成してもよい。そして、圧縮バネ部材の下端を固定ブロック上面と接するように、圧縮バネ部材を固定ブロック上に設置してもよい。
また、上記実施形態では、一対のレバーにそれぞれ傾斜面を有するクサビを取り付けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、クサビを設けることなく、レバー自体に傾斜面を直接形成してもよい。
また、上記実施形態では、傾斜面に傾斜角度の異なる第1傾斜面、第2傾斜面および第3傾斜面を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、傾斜面は、たとえば第1傾斜面および第2傾斜面のみでもよいし、傾斜角度の異なる4つ以上の傾斜面を設けてもよい。また、傾斜面が一定の傾斜角度を有していてもよい。傾斜面は、曲面状に形成されていてもよい。この場合には、傾斜面の傾斜角度を連続的に変化させることによって、レバーのレールに対する押圧力(クランプ力)をレールの摩耗状態によることなく略一定に保つように構成してもよい。また、上記実施形態における傾斜角度α1(約12.3度)、α2(約10.5度)およびα3(約10.9度)は、一例であり、上記した傾斜角度以外の傾斜角度としてよい。
また、上記実施形態では、初期状態のレールを把持した場合のレバーの押圧力を、所定の摩耗状態(片側1mm摩耗)のレールを把持した場合の押圧力に近づけるように、第1傾斜面121の傾斜角度α1を、第2傾斜面122の傾斜角度α2よりも大きくなるように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1傾斜面(初期状態のレールを把持する場合のローラとの接触位置)の傾斜角度を第2傾斜面(摩耗状態のレールを把持する場合のローラとの接触位置)の傾斜角度よりも小さくしてもよい。
また、上記実施形態では、所定の摩耗状態として、レールの片側が1mm摩耗した状態(片側1mm摩耗状態)を基準にとり、初期状態における押圧力を片側1mm摩耗状態における押圧力(約750kN)に近づけるように傾斜面の傾斜角度を設定した例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、片側2mm摩耗状態における傾斜面とローラとの接触位置である第3傾斜面123での押圧力を基準としてもよい。所定の摩耗状態として、どの程度の摩耗状態(たとえば、片側1.5mmや、片側2mmなど)を設定するかは任意である。なお、この場合には、第2傾斜面122の傾斜角度α2を第3傾斜面123の傾斜角度α3よりも大きくするとともに、第1傾斜面121の傾斜角度α1を傾斜角度α2およびα3よりも大きくしてもよい。このように構成すれば、片側2mm摩耗状態における押圧力(クランプ力)を基準として、片側1mm摩耗状態における押圧力と初期状態における押圧力とを平準化することが可能である。
また、上記実施形態では、本発明の当接部材の一例として、傾斜面と当接したまま回転することが可能なローラを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、回転不能な円柱状または円筒状の当接部材を設けてもよい。また、傾斜面側との当接部分のみ曲面状に形成された扇状断面を有する当接部材であってもよい。また、矩形、六角形などの断面形状を有する当接部材であってもよい。
また、上記実施形態では、ブロック側制限部材とブラケット側制限部材とを設けるとともに、固定ブロックに突出部を設け、突出部とブロック側制限部材との当接と、ブロック側制限部材とブラケット側制限部材との当接とによって、ブラケットに対する内部ユニットの傾きを制限する構成を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえばブロック側制限部材を固定ブロック(突出部)に固定して、ブロック側制限部材とブラケット側制限部材との当接のみによって内部ユニットの傾きを制限するように構成してもよい。
また、上記実施形態では、1つの車輪を固定ブロック内部に設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、車輪を複数設けてもよい。また、車輪を固定ブロックに設けることなく、たとえばブラケットの前後にそれぞれ設けてもよい。
また、上記実施形態では、一対のレバーを互いに閉じる方向に付勢するコイルバネからなる保持バネを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、一対のレバーとローラユニットとをそれぞれ板バネおよびピンを介して接続し、これらの板バネにより一対のレバーがローラユニットに近づく方向(レバーが互いに閉じる方向)に付勢されるように構成してもよい。
また、上記実施形態では、クサビの幅Wをレバーの厚み(前後方向(Y方向)の長さ)にほぼ一致させるように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、クサビの幅をレバーの厚みよりも小さくしてもよい。この場合には、クサビの交換が容易となるので、メンテナンス性を向上させることができる。また、幅の小さいクサビを複数設けてもよい。
また、上記実施形態では、固定ブロックに一対のガイド爪を一体的に設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ガイド爪を固定ブロックとは別体で設けるとともに、ガイド爪が固定ブロックに着脱可能に取り付けられるように構成してもよい。この場合には、レールとの接触によりガイド爪が摩耗した場合にも、ガイド爪を容易に交換することができる。
また、上記実施形態では、ブロック側制限部材を取り付けるための突出部を固定ブロックに設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図2に示すように、固定ブロック40に突出部44を設ける代わりに、下側部材21に突出部を設けてもよい。
また、上記実施形態では、L字状の板状部材からなるブラケット側制限部材を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ブラケット側制限部材として、L字状以外の矩形状断面を有する角鋼などを用いてもよい。