本発明は、駆動源を有して車輪の転舵を助勢するための助勢力を発生させる転舵助勢装置を備えた車両用ステアリングシステムに関し、詳しくは、その助勢力の制御に関する。
車両用ステアリングシステムとして、駆動源の発生させる力に依拠して車輪の転舵を助勢する転舵助勢装置を備えたシステム、いわゆるパワーステアリングシステムが存在する。そのパワーステアリングシステムにおいて、車輪の転舵を助勢する力である助勢力は、一般的に、運転者によって操作されるステアリング操作部材に加わる操舵力に基づいて制御される。そして、例えば、駆動源の負担を軽減することを目的として、下記特許文献1に記載されているシステムでは、助勢力を抑制するための制御が行われるように構成される。詳しく言えば、駆動源である電磁モータに流れる電流を検出して、その電流の平均値が規定値以上となった場合に、操舵力の増加に対する助勢力の変化勾配を、その電流の平均値に応じて、通常より徐々に小さくすることで、助勢力を抑制するように構成される。
特開平8−133108号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載のシステムでは、助勢力を抑制すべく操舵力に対する助勢力の変化勾配を変更しても、操舵力の増加に応じて助勢力が増加するとは限らず、その助勢力を抑制するための制御に変更した際に、転舵助勢装置に発生させる助勢力にギャップが存在するような場合には、運転者の操舵フィーリングが急変することになる。つまり、パワーステアリングシステムにおいて、通常の制御から、助勢力を抑制する制御に切り換える際に、運転者の操舵フィーリングの変化を抑えることによって、そのシステムの実用性が向上すると考えられる。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、転舵助勢装置を備えた車両ステアリングシステムの実用性を向上させることを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の車両用ステアリングシステムは、(a)転舵助勢装置が発生させる助勢力が、操舵力の増加に応じて増加するように規定された標準助勢力となるように、その転舵助勢装置の駆動源を制御する標準制御と、(b)操舵力が増加する過程において(i)ステアリング操作部材の操舵速度が閾速度以上である場合あるいは(ii)ステアリング操作部材の操舵量が閾操舵量以上である場合に、第1の設定条件を充足したとして、標準制御に代えて、助勢力が、第1の設定条件を充足した時点における操舵力である条件充足時操舵力に対応する標準助勢力から操舵力の増加に応じて増加し、かつ、標準助勢力より小さく規定された抑制助勢力となるように、駆動源を制御する助勢力抑制制御を実行可能に構成される。
本発明の車両用ステアリングシステムでは、比較的簡便な制御である助勢力抑制制御によって、転舵助勢装置が発生させる助勢力を、通常時に実行される標準制御において発生させる助勢力より小さく、操舵力の増加に応じてその制御の開始時点における助勢力より確実に増加させることが可能であり、助勢力の急変を防止するとともに、運転者の操舵フィーリングの変化を抑えることが可能である。そのような利点を有することで、本発明の車両用ステアリングシステムは実用性の高いものとなる。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
なお、以下の各項において、(1)項および(9)項を合わせたものが請求項1に相当し、請求項1に(11)項の技術的特徴を付加したものが請求項2に相当する。また、(1)項および(11)項を合わせたものが請求項3に相当し、請求項1ないし請求項3のいずれか1つに(2)項の技術的特徴を付加したものが請求項4に、請求項4に(3)項の技術的特徴を付加したものが請求項5に、請求項1ないし請求項5のいずれか1つに(5)項および(6)項の技術的特徴を付加したものが請求項6に、それぞれ相当する。
(1)運転者によって操作されるステアリング操作部材と、
そのステアリング操作部材の操舵量に応じた転舵量となるように車輪を転舵させる転舵装置と、
前記ステアリング操作部材に加わる操舵力を前記転舵装置に伝達する操舵力伝達機構と、
駆動源を有し、その駆動源が発生させる力に依拠して車輪の転舵を助勢するための助勢力を発生させる転舵助勢装置と、
その転舵助勢装置の前記駆動源を制御して、その転舵助勢装置が発生させる助勢力を、前記ステアリング操作部材の操舵力に基づいて制御する制御装置と
を備えた車両用ステアリングシステムであって、
前記制御装置が、
前記転舵助勢装置が発生させる助勢力が、操舵力の増加に応じて増加するように規定された標準助勢力となるように、前記駆動源を制御する標準制御を実行する標準制御部と、
操舵力が増加する過程において第1の設定条件を充足した場合に、前記標準制御に代えて、前記転舵助勢装置が発生させる助勢力が、前記第1の設定条件を充足した時点における操舵力である条件充足時操舵力に対応する標準助勢力から操舵力の増加に応じて増加し、かつ、前記標準助勢力より小さくなるように規定された抑制助勢力となるように、前記駆動源を制御する助勢力抑制制御を実行する助勢力抑制制御部と
を有することを特徴とする車両用ステアリングシステム。
本項に記載の態様は、転舵助勢装置が発生させる助勢力の増加を抑える必要がある、あるいは、助勢力の増加を抑えた方が望ましい状況下を表す第1の設定条件を、ステアリング操作部材(以下、単に「操作部材」という場合がある)に加わる操舵力が増加する過程において充足した場合に、通常時に実行される標準制御に代えて助勢力抑制制御が実行されるように構成される。そして、その助勢力抑制制御が、転舵助勢装置が発生させる助勢力を、その条件を充足した時点での助勢力から操舵力の増加に応じて常に増加させるとともに、同じ操舵力に対する標準制御の助勢力より小さなものとする態様である。例えば、操舵力を横軸に、助勢力を縦軸にとった場合において、標準制御における標準助勢力が描く線分を標準特性線と定義し、助勢力抑制制御における抑制助勢力が描く線分を抑制特性線と定義する。その場合において、本項の態様においては、助勢力が、操舵力の増加に応じて標準特性線上を辿って増加し、第1設定条件を充足した場合に、その条件を充足した時点における標準特性線上の点から標準特性線より緩やかに延びる抑制特性線上を辿って増加することになる。つまり、本項の態様によれば、標準制御から助勢力抑制制御へ制御が切り換わる際に、助勢力が急変することや、操舵フィーリングが急変することを防止して、その標準制御から助勢力抑制制御へ制御が切り換わることに起因して運転者が受ける違和感を抑えることが可能である。
本項に記載の「第1の設定条件」は、上述したように、助勢力の増加を抑える必要がある、あるいは、助勢力の増加を抑えた方が望ましい状況下となったことを判定できる条件であればよく、助勢力を抑制する目的は特に限定されず、また、種々のパラメータを利用することが可能である。例えば、助勢力の変化速度等に基づいて助勢力が急増することが予測される場合や、現時点から遡った設定時間内の助勢力(供給電流,供給電力)の平均値,総量等に基づいて駆動源の負担が大きくなっていることが予測される場合等に、第1の設定条件が充足したと判定する態様とすることができる。そのように、第1の設定条件を、上記の駆動源の負担を軽減することを目的として設定すれば、助勢力抑制制御によって、省電力,駆動源の小型化等が可能となる。また、後に詳しく説明するように、第1設定条件に利用するパラメータとして、操作部材の操舵速度や操舵量等を採用することも可能である。
ちなみに、本項に記載の「操舵量」および「転舵量」は、それぞれ、操作部材,転舵装置の中立位置からの量を意味している。また、本項にいう「操舵量に応じた転舵量」とは、操舵量の変化量と転舵量の変化量との比であるステアリングギヤ比が固定された比となるようなものに限定されない。後に詳しく説明するように、操舵力伝達機構が、ステアリングギヤ比が変化するあるいは変更される機能を有して、操舵量に応じた転舵量が変化するようなものも含まれる。
(2)前記制御装置が、
前記助勢力抑制制御の実行中に前記第1の設定条件を充足しなくなった場合であっても、第2の設定条件を充足するまでは、前記助勢力抑制制御部に前記助勢力抑制制御を継続して実行させるように構成された(1)項に記載の車両用ステアリングシステム。
本項に記載の態様は、第1の設定条件が、助勢力抑制制御の開始条件とされるとともに、その制御の終了条件として、第2の設定件が設定された態様である。つまり、本項の態様においては、操舵力の増加過程において第1の設定条件を充足した場合に、標準制御から助勢力抑制制御に切り換えられ、第2の設定条件を充足した場合に、助勢力抑制制御から標準制御に戻されることになる。また、本項の態様は、第2の設定条件を充足するまでは、助勢力が、操舵力の増減に応じて先に述べた抑制特性線上を増減する態様となる。
(3)前記制御装置が、
操舵力が減少する過程においてその操舵力が前記条件充足時操舵力以下となった場合に、前記第2の設定条件を充足したとして、前記助勢力抑制制御から前記標準制御に切り換えるように構成された(2)項に記載の車両用ステアリングシステム。
本項に記載の態様は、平たく言えば、先に述べた抑制特性線上を、操舵力の減少過程において標準特性線上まで戻った場合に、標準制御に戻される態様である。本項の態様によれば、助勢力抑制制御から標準制御へ制御が切り換わる際に、助勢力が急変することや、操舵フィーリングが急変することを防止して、その助勢力抑制制御から標準制御へ制御が切り換わることに起因して運転者が受ける違和感をも抑えることが可能である。
(4)前記制御装置が、
前記転舵助勢装置が発生させるべき助勢力が設定力を超える場合に、前記転舵助勢装置が発生させる助勢力をその設定力に制限する助勢力制限部を有する(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の車両用ステアリングシステム。
本項に記載の態様は、駆動源の出力の上限値を考慮して、設定力を定めた態様とすることが可能である。本項の態様においては、助勢力が設定力に達した際に、運転者の操舵フィーリングが急変することになるが、助勢力抑制制御によって、助勢力が設定力に達し難くすることが可能である。
(5)前記標準助勢力が、
それの操舵力の増加に対する変化の勾配が、漸増するように規定された(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載の車両用ステアリングシステム。
本項に記載の態様は、標準制御における助勢力の増加のさせ方を、具体化した態様であり、助勢力が、下に凸な曲線上を変化する態様、つまり、先に述べた標準特性線が下に凸な曲線となる態様である。本項の態様によれば、運転者に操舵が重いと感じさせないようにすることが可能である。
(6)前記抑制助勢力が、
それの操舵力の増加に対する変化の勾配が、一定となるように規定された(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の車両用ステアリングシステム。
本項に記載の態様は、助勢力抑制制御における助勢力の増加のさせ方を、具体化した態様であり、助勢力が、条件充足時操舵力に対する標準助勢力となる点を通る直線上を変化する態様、つまり、先に述べた抑制特性線が直線となる態様である。本項の態様によれば、助勢力抑制制御において転舵助勢装置が発生させる助勢力を、簡便な演算で決定することが可能であり、助勢力抑制制御部における演算の負荷を軽減することが可能である。ちなみに、本項の態様は、例えば、条件充足時操舵力に依らず変化勾配を同じ勾配とする態様であってもよく、条件充足時操舵力が大きいほど変化勾配を大きくする態様や、条件充足時操舵力が大きいほど変化勾配を小さくする態様であってもよい。その条件充足時操舵力が大きいほど変化勾配を大きくする態様は、条件充足時操舵力が大きいほど、車輪の転舵を助勢することを重視する態様となり、条件充足時操舵力が大きいほど変化勾配を小さくする態様は、条件充足時操舵力が大きいほど、助勢力を抑制することを重視する態様となる。
なお、本項の態様と、先に述べた標準特性線が下に凸な曲線となる態様とを合わせれば、操舵力の増加に応じて標準特性線と抑制特性線との差が大きくなる、つまり、操舵力が大きくなるほど、助勢力を大きく抑制する態様となるのである。
(7)前記操舵力伝達機構が、
前記ステアリング操作部材の操舵量の変化量と前記転舵装置の転舵量の変化量との比であるステアリングギヤ比が変化するあるいは変更される機能を有する(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の車両用ステアリングシステム。
本項の態様における操舵力伝達機構は、例えば、アクチュエータを有してそのアクチュエータを制御することでステアリングギヤ比を変更可能なもの、いわゆるVGRS(Variable Gear Ratio Steering)であってもよく、後に詳しく説明する構造のもの、簡単に言えば、カム等の機構を有して操作部材の操舵量に応じてステアリングギヤ比が機械的に変化する構造のものであってもよい。そして、本項の態様における操舵力伝達機構においては、クイックなステアリングギヤ比である場合、つまり、操舵量の変化量に対する転舵量の変化量が大きいギヤ比である場合には、小さな操舵量で大きく転舵させる必要があるため、大きな助勢力が必要となる。したがって、本項の態様においては、大きな助勢力を発生させる状況下になり易く、助勢力抑制制御が、特に有効である。
(8)前記操舵力伝達機構が、
前記ステアリング操作部材と前記転舵装置との一方に一端部が連結され、回転可能に配設された第1シャフトと、
前記ステアリング操作部材と前記転舵装置との他方に一端部が連結され、前記第1シャフトの回転軸線と自身の回転軸線とが平行でありかつそれら回転軸線が所定距離だけズレた状態で回転可能に配設された第2シャフトと、
(A) 前記第1シャフトの他端部において、その第1シャフトの回転軸線からその第1シャフトの径方向に前記所定距離より離れた位置に設けられた係合部と、(B) 前記第2シャフトの他端部において、その第2シャフトの径方向に延びるようにして設けられ、前記第1シャフトの係合部を係合させるとともに、その係合部の前記第2シャフトの径方向における移動を許容する案内通路とを含んで構成され、前記第1シャフトと前記第2シャフトとの一方の回転によって、その第1シャフトおよび第2シャフトのそれぞれの回転位相の差である回転位相差を変化させつつ、他方が回転するように構成された回転伝達機構と
を含んで構成されることで、
前記ステアリング操作部材の操舵量に応じて前記ステアリングギヤ比が変化する機能を有する(7)項に記載の車両用ステアリングシステム。
本項に記載の態様は、操舵力伝達機構を、操作部材の操舵量に応じてステアリングギヤ比が変化する構造のものに限定した態様である。本項に記載された「回転伝達機構」は、2本のシャフトの回転位相差を変化させるものであることから、第1シャフトの回転角と第2シャフトの回転角との差が変化する。具体的には、例えば、2本のシャフトの回転角差(回転位相差)がない状態における位置から、操作部材に連結される第1シャフトと第2シャフトとの一方を回転させた場合に、その操作部材側のシャフトが180°回転するまでは、転舵装置に連結される第1シャフトと第2シャフトとの他方が、操作部材側のシャフトの回転角より小さい回転角となり、操作部材側のシャフトが180°回転した時点で、転舵装置側のシャフトの回転角も180°となる構造とすることが可能である。つまり、このような構造の場合、2本のシャフトの回転角差が0から増加し、途中からそれが減少して0に至るのであり、ステアリングギヤ比は、操作部材側のシャフトが回転するにつれて大きくなるのである。なお、そのような構造の操舵力伝達機構によれば、操作部材が中立位置付近に位置する場合に、穏やかで安定感のあるハンドリングを実現させ、操作部材の操舵量が大きくなるにつれてレスポンスの良いハンドリングを実現させることが可能である。
本項に記載の態様においては、操舵力伝達機構が上述のような構造であることから、操作部材の操作可能な範囲が、比較的小さくされることとなる(例えば、ロックトゥロックが360°)。そのことにより、操舵力伝達装置の動作量、詳しく言えば、操舵力伝達装置の転舵装置側のシャフトの回転角に対する転舵装置の転舵量が、比較的大きくなるのである。つまり、本項の態様においては、小さな操舵量で大きく転舵させる必要があるため、大きな助勢力が必要となる。したがって、本項の態様においては、大きな助勢力を発生させる状況下になり易く、助勢力抑制制御が、さらに有効である。
(9)前記制御装置が、前記ステアリング操作部材の操舵速度が閾速度以上である場合に、前記第1の設定条件を充足したとして、前記助勢力抑制制御部に前記助勢力抑制制御を実行させるように構成された(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載の車両用ステアリングシステム。
(10)前記制御装置が、前記閾速度を、前記ステアリング操作部材の操舵力が大きい場合に、それが小さい場合に比較して小さい値に変更するように構成された(9)項に記載の車両用ステアリングシステム。
操作部材の操舵速度は、操舵力に関連し、操舵速度が速いほど操舵力が大きくなると考えられる。したがって、上記2つの項に記載の態様のように、操舵速度に基づけば、操舵力が大きくなると推定されるような場合に、助勢力抑制制御が実行されるようにすることができ、効果的に助勢力を抑制することが可能である。なお、後者の態様によれば、現時点での操舵力に応じて閾速度を適切な大きさに変更できるため、より効果的に助勢力を抑制することが可能となる。
(11)前記制御装置が、前記ステアリング操作部材の操舵量が閾操舵量以上である場合に、前記第1の設定条件を充足したとして、前記助勢力抑制制御部に前記助勢力抑制制御を実行させるように構成された(1)項ないし(10)項のいずれか1つに記載の車両用ステアリングシステム。
車両用ステアリングシステムにおいては、操作部材、あるいは、転舵装置に、設定量以上の操舵あるいは転舵を制限すべくストッパが設けられるのが一般的である。つまり、転舵助勢装置を備えるステアリングシステムにおいては、そのストッパ当たりする際の衝撃を比較的大きなものとなる。本項に記載の態様によれば、ストッパ当たりしそうな場合に、助勢力を抑制することで、そのストッパ当たりの衝撃を緩和することが可能である。なお、本項の態様においては、先に述べた閾速度と同様に、閾操舵量を、操舵力が大きい場合にそれが小さい場合に比較して小さい値に変更するように構成することも可能である。
また、第1の設定条件を、本項に記載の操作部材の操舵量と、先に述べた操作部材の操舵速度との両者に基づいて設定することが可能である。例えば、閾操舵量を、操舵速度が大きい場合にそれが小さい場合に比較して小さい値に変更する態様とすることが可能である。また、操舵速度が閾速度以上となった場合に、第1の設定条件を充足したと判定するとともに、操舵速度が閾速度未満であっても、操舵量が閾操舵量以上となった場合には、第1の設定条件を充足したと判定する態様とすることも可能である。
以下、請求可能発明の実施例およびその変形例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。また、〔発明の態様〕の各項の説明に記載されている技術的事項を利用して、下記の実施例の変形例を構成することも可能である。
<車両用ステアリングシステムの全体構成>
図1に、請求可能発明の実施例である車両用ステアリングシステムの全体構成を示す。本ステアリングシステムは、運転者によって操作されるステアリング操作部材としてのステアリングホイール10と、一端部においてステアリングホイール10を保持するステアリングコラム12と、車輪を転舵する転舵装置14と、ステアリングコラム12と転舵装置14との間に位置するインタミディエイトシャフト(以下、「I/Mシャフト」と略す場合がある)16とを含んで構成されている。さらに、I/Mシャフト16の一端部とステアリングコラム12の備える出力シャフト18とは、ユニバーサルジョイント20によって連結され、I/Mシャフト16の他端部と転舵装置14の備える入力シャフト22の一端部とは、もう1つのユニバーサルジョイント24によって連結されている。
本システムは、図1において右側、つまり、ステアリングホイール10側が車両後方を、左側、つまり、転舵装置14側が車両前方を向くように配設されており、I/Mシャフト16は、車室とエンジン室とを区画するダッシュパネル26に設けられた穴を通るようにして配設されており、I/Mシャフト16のその穴を通る部分はブーツ28に被われている。
転舵装置14は、入力シャフト22と、外殻部材としてのハウジング30と、車輪を転舵するための転舵ロッド32とを備えており、その転舵ロッド32は、それの軸線方向に移動可能にそのハウジング30に保持されるとともに、車幅方向に延びるように配設されている。転舵ロッド32は、それの両端部が、左右の前輪の各々を保持するステアリングナックル(図示省略)に連結されている。また、入力シャフト22は、ハウジング30に回転可能に保持され、そのハウジング30内において、転舵ロッド32と係合している。入力シャフト22の車両前方側の端部にはピニオン(図示省略)が形成されており、転舵ロッド32の軸線方向における中間部に形成されたラック(図示省略)がそのピニオンと噛合することで、転舵ロッド32と入力シャフト22とが係合しているのである。
ステアリングコラム12は、インパネリインフォースメント34に設けられたステアリングサポート36において、車体の一部に固定支持される。ステアリングコラム12は、支持された状態では、図に示すように、車両前方側が下方に位置するように傾斜した姿勢で配置されることになる。ステアリングコラム12には、それの前方部に前方ブラケット38が設けられるとともに、その前方ブラケット38より車両後方側にブレークアウェイブラケット(以下、「B.A.BKT」と略す場合がある)40が設けられており、それら前方ブラケット24とB.A.BKT40との各々が、ステアリングサポート22に取り付けられることで、ステアリングコラム12は、2箇所において支持される。支持されたステアリングコラム12は、後方に位置する部分がインパネ42から車両後方側に突出する状態とされ、その突出する後端部に、ステアリングホイール10が取り付けられている。ステアリングコラム12のインパネ42から突出する部分は、コラムカバー44によって覆われ、また、下部は、インパネロアカバー46によってカバーされる。
図2に、ステアリングコラム12の側面断面図を示す。ステアリングコラム12は、大きくは、ステアリングホイール10を保持するとともに軸線方向に伸縮可能とされたコラムセクション50と、電動式パワーステアリング機能を実現する主体となるEPSセクション52とに区分することができ、それら2つのセクション50,52が一体化されたものとなっている。以下、それら各セクションについて、順に説明する。
コラムセクション50は、ステアリングホイール10を車両後方側の端部において保持するメインシャフト54と、そのメインシャフト54を挿通させた状態で回転可能に保持するハウジングとしてのコラムチューブ56とを含んで構成されている。メインシャフト54は、車両後方側つまり上方側に位置させられるアッパシャフト58と、車両前方側つまり下方側に位置させられるロアシャフト60とを含んで構成されている。アッパシャフト58はパイプ状に、ロアシャフト60はロッド状に形成され、アッパシャフト58の前方部にロアシャフト60の後方部が挿入されている。アッパシャフト58とロアシャフト60とはスプライン嵌合されており、アッパシャフト58とロアシャフト60とは、回転軸線方向に相対移動可能かつ相対回転不能な状態で接続されている。つまり、メインシャフト54は、回転軸線方向に伸縮可能な構造とされている。なお、ロアシャフト60は、それの後方側のシャフト本体部62と、そのシャフト本体部62の前方側のそのシャフト本体部62の外径より大きな外径の円形フランジ部64とから構成されており、その円形フランジ部64において、後に説明するEPSセクション52に連結されている。なお、ステアリングコラム12では、ロアシャフト60のシャフト本体部62とアッパシャフト58とによって、メインシャフト54のシャフト本体部が構成されている。
コラムチューブ56は、車両後方側(上方)に位置させられるアッパチューブ66と、車両前方側(下方)に位置させられるロアチューブ68とを含んで構成されている。アッパアチューブ66およびロアチューブ68は、ともに筒状のものであり、第1筒部材としてのアッパチューブ66の前方部に第2筒部材としてのロアチューブ68の後方部が嵌入されている。ロアチューブ68は、段付形状とされており、それの後方の部分においてアッパチューブ66の内径より小さな外径の小径部70と、前方の部分においてアッパチューブ66の内径より大きな外形の大径部72と、小径部70と大径部72とをつなぐ段差部74とを有している。ロアチューブ68の小径部70とアッパチューブ66との間には、図示を省略するライナが設けられており、このライナを介することによって、ロアチューブ68がアッパチューブ66にがたつきなく嵌入されるとともに、アッパチューブ66とロアチューブ68との回転軸線方向の相対移動を容易ならしめている。つまり、コラムチューブ56は、回転軸線方向に伸縮可能な構造とされている。
また、アッパチューブ66の後端部には、ラジアルベアリング76が配設され、ロアチューブ68の大径部72には、後述するEPSセクション52の一部を介してラジアルベアリング78が配設されている。それらベアリング76,78によって、メインシャフト54は回転可能に保持されている。このような構造とされていることで、コラムセクション50は、メインシャフト54の回転を担保しつつ、伸縮可能とされているのである。
図3に、EPSセクション52の側面断面図を示す。EPSセクション52は、ステアリングホイール10に加えられた操舵力を転舵装置に対して出力するための出力シャフト18と、駆動源としての電磁モータ80を有してそのモータ80によって出力シャフト18の回転出力を助勢する転舵助勢装置82(以下、単に「助勢装置82」という場合がある)と、出力シャフト18を回転可能に保持するとともに助勢装置82を収容するEPSハウジング84とを含んで構成されている。出力シャフト18は、出力側シャフト86,入力側シャフト88,トーションバー90の3つが一体化されたものとして構成されている。出力側シャフト86は、EPSハウジング84の車両前方側から延出しており、その延出する部分において、ユニバーサルジョイント20を介して、I/Mシャフト16に接続され、転舵装置14へ回転を出力する。
出力側シャフト86は、中空構造とされており、その出力側シャフト86の車両後方側の部分に入力側シャフト88が挿入している。出力側シャフト86の内周面と入力側シャフト88の外周面との間には、軸受92が介在させられており、出力側シャフト86と入力側シャフト88とは相対回転可能とされている。入力側シャフト88は、車両前方側の端面に開口して回転軸線方向に延びる有底穴を有している。トーションバー90の一端部は、その有底穴の底部にピン94によって固定されており、また、トーションバー90のもう一方の端部は、出力側シャフト86を回転軸線方向に貫通する貫通穴の前方側の端部にピン96によって固定されている。このような構成により、出力シャフト18は、トーションバー90の捩りを許容し、その分だけ自身も捩じられるものとされているのである。また、出力側シャフト86は、その外周において2つのラジアルベアリング98,100を介してEPSハウジング84に回転可能に保持され、入力側シャフト88は、その外周においてニードルベアリング102を介してEPSハウジング84に回転可能に保持されている。
助勢装置82は、上記電磁モータ80と、その電磁モータ80のモータ軸に連結されたウォーム104と、そのウォーム104に噛合させられるウォームホイール106とを含んで構成されている。そのウォームホイール106は、出力シャフト18の出力側シャフト86に固定されており、出力側シャフト86に対して相対回転不能とされている。このような構造により、電磁モータ80によってウォーム104に回転力が付与され、ウォームホイール106に回転力が付与される。つまり、助勢装置82は、電磁モータ80によって出力シャフト18の回転出力が助勢されて、車輪の転舵を助勢するための助勢力を発生させる構造とされている。
また、EPSセクション52は、操舵力を検出するための相対変位量センサ108を備えている。その相対変位量センサ108は、トーションバー90の車両前方部が固定される出力側シャフト86と、トーションバー90の車両後方部が固定される入力側シャフト88との間に設けられており、それら出力側シャフト86と入力側シャフト88との相対回転変位量を検出するものである。そして、その相対回転変位量に基づいて操舵力(操舵トルク)を推定することが可能であり、その操舵力の大きさに応じた助勢力を発生させるように電磁モータ80の作動が制御される。
また、出力シャフト18は、メインシャフト54の回転軸線と自身の軸線とが平行であり、かつ、それら回転軸線が所定量ズレた状態で配設されており、メインシャフト54の車両前方側の端部に連結されている。詳しく言えば、まず、メインシャフト54を構成するロアシャフト60は、それの円形フランジ部64の前方側の端面に、図3のA−A’断面図である図4に示すように、円形フランジ部64の径方向に延びる溝114が形成されている。一方、入力側シャフト88には、それの後方側の端部に、円環状の円環プレート116が固定的に嵌合されている。その円環プレート116の後方側の端面とロアシャフト60の円形フランジ部64の前方側の端面とは、小さな間隔をあけて向かい合っている。そして、円環プレート116には、ピン118が車両後方側に突出する状態で固定されている。そのピン118の突出する部分には、ニードルベアリング120を介して、円筒形状のローラ122が設けられている。そのローラ122の外径は、溝114の幅より僅かに小さくされている。そのローラ122が溝114に係合することで、入力側シャフト88、つまり、出力シャフト18が、メインシャフト54を構成するロアシャフト60に連結されている。
つまり、ステアリングコラム12においては、ピン118,ニードルベアリング120,ローラ122とによって、円環プレート116から入力側シャフト88の回転軸線の延びる方向に突出する突出部が構成されており、その突出部と出力シャフト18と円環プレート116とによって、第1シャフトとしての転舵装置側シャフトが構成されているのである。その転舵装置側シャフトのシャフト本体部は、入力側シャフト88と出力側シャフト86とによって構成されている。ちなみに、操作部材側シャフトとしてのメインシャフト54は、第2シャフトとして機能している。
運転者によってステアリングホイール10が回転操作されると、メインシャフト54が自身の回転軸線回りに回転する。その際、ロアシャフト60の円形フランジ部64に形成された溝114に係合するローラ122は、溝114の有する1対の側壁面126によってそのロアシャフト60の周方向への変位が規制されるとともに、その溝114によってそのシャフト60の径方向への移動が許容される。つまり、1対の側壁面126が1対の案内面として機能し、溝114が案内通路として機能するのである。ロアシャフト60の回転に伴って、ローラ122が溝114内を移動させられる際に、そのロアシャフト60の回転力が、ローラ122,ピン118,円環プレート116等を介して、入力側シャフト88に伝達されて、その入力側シャフト88が自身の回転軸線回りに回転するのである。つまり、ステアリングコラム12は、ロアシャフト60の回転軸線回りの回転を、自身の回転軸線がロアシャフト60の回転軸線からずれて配設された入力側シャフト88に伝達する回転伝達機構を備えるものとされてる。なお、その回転伝達機構は、溝114,ローラ122,ピン118,ニードルベアリング120等を含んで構成されている。上述のような構造によって、ステアリングコラム12は、ステアリングホイール10に入力された操舵力を、I/Mシャフト16等を介して転舵装置18に伝達するのである。つまり、ステアリングコラム12とI/Mシャフト16とを含んで、ステアリングホイール10の操舵力を転舵装置18に伝達する操舵力伝達機構が構成されている。
ステアリングコラム12は、EPSセクション52の前方端部と、コラムセクション50のアッパチューブ66とにおいて、車体の一部に取り付けられている。EPSセクション52のEPSハウジング84には、先に説明した前方ブラケット38が固定的に設けられており、この前方ブラケット38には、軸挿通穴130が設けられている。ステアリングサポート36には、軸穴132が穿設された軸受部材134が固定されており、前方ブラケット38の軸挿通穴130と軸受部材134の軸穴132とに、支持軸136が挿通されることで、ステアリングコラム12は、その支持軸136を中心に揺動可能に支持される。
一方、コラムセクション50は、B.A.BKT40に保持され、そのB.A.BKT40がステアリングサポート36に取り付けられている。詳しく説明すれば、図5に示すように、B.A.BKT40は、アッパチューブ66に固定された被保持部材140を保持する保持部材142と、その保持部材142に固定されてステアリングサポート36に取り付けられる取付プレート144とを有しており、その取付プレート144に設けられたスロット146を利用してステアリングサポート36に締結されている。被保持部材140,保持部材142には、それぞれ長穴148,150が穿設され、それらにはロッド152が貫通しており、図では省略するが、そのロッド152を利用して保持部材142が被保持部材140を挟持するようにされている。この挟持力によって、アッパチューブ66の変位が禁止される構造とされている。操作レバー154を操作することによって、その挟持力を弱めることが可能とされており、挟持力が弱められた状態では、ロッド152の長穴148に沿った移動が許容されることで、アッパチューブ66のロアチューブ68に対する軸線方向の移動が、アッパシャフト58のロアシャフト60に対する軸線方向の移動とともに許容され、コラムセクション50の伸縮が許容される。また、ロッド152の長穴150に沿った移動が許容されることで、前方ブラケット38に挿通された支持軸136を中心としたステアリングコラム12の揺動が許容されることになる。つまり、ステアリングコラム12は、そのような構造のチルト・テレスコピック機構156を備えているのである。
車両の衝突に起因して運転者がステアリングホイール10に二次衝突した場合には、B.A.BKT40がステアリングサポート36から離脱するとともに、コラムセクション50が収縮させられる。ステアリングコラム12には、二次衝突の衝撃を吸収する衝撃吸収機構157が設けられており、ステアリングコラム56の収縮に伴ってEAプレート158が変形させられることによって、二次衝突の衝撃が効果的に吸収される。
先に述べた転舵助勢装置82は、図1に示すステアリング電子制御ユニット180(以下、「ECU180」という場合がある)によって、助勢力の制御が行われる。ECU180は、転舵助勢装置82のモータ80の駆動回路であるインバータ182が接続されており、そのインバータ182を制御することでモータ80の制御を行うものとされている。なお、そのインバータ182は、図示を省略する電源に接続されており、モータ80には、電源から電力(電流)が供給される。そして、供給電流は、インバータ182がPWM(Pulse Width Modulation)によるパルスオン時間とパルスオフ時間との比(デューティ比)を変更することによって行われる。
また、ECU180は、先に述べた操舵トルクを推定するための相対変位量センサ[θ]108や、操作部材の操舵量としてのステアリングホイール20の中立位置を基準とした操作角を検出する操作角センサ[δ]184等の各種センサが接続されている。ECU180は、それらのセンサからの信号に基づいて、転舵助勢装置82の作動の制御を行うものとされている。また、ECU180のコンピュータが備えるROMには、転舵助勢装置82の制御に関するプログラム,各種のデータ等が記憶されている。
<回転伝達機構の機能>
ステアリングコラム12においては、互いの軸線が平行にズレた状態で配設された第1シャフトとしての出力シャフト18と第2シャフトとしてのメインシャフト54とが、詳しく言えば、出力シャフト18の入力側シャフト88とメインシャフト54のロアシャフト60とが、上記回転伝達機構によって連結されている。そのことから、ロアシャフト60の回転位相と入力側シャフト88の回転位相とがズレて、それら2本のシャフト60,88の回転位相の差である回転位相差が変化するものとされている。以下に、具体的に図を用いて説明する。
図6に、ロアシャフト60の円形フランジ部64とその円形フランジ部64に連結される入力側シャフト88とその円形フランジ部64に形成された溝114に係合するローラ122との断面図(図3のA−A’断面図に相当する)を示す。図6(a)は、ステアリングホイール10が車輪の転舵中立位置に対応する位置、つまり、中立操作位置にあるときの状態を、図6(b)は、ステアリングホイール10が中立操作位置から左旋回方向に90゜回転操作された位置にあるときの状態を、図6(c)は、ステアリングホイール10が中立操作位置から右旋回方向に90゜回転操作された位置にあるときの状態を、図6(d)は、ステアリングホイール10が中立操作位置から右、若しくは左旋回方向に180゜回転操作された位置にあるときの状態を、それぞれ示している。
図から解るように、ステアリングホイール10が中立操作位置から右、若しくは左旋回方向に90゜回転操作された場合には、ロアシャフト60は自身の回転軸線を中心に90°回転するが、入力側シャフト88は自身の回転軸線を中心に90°までは回転せずに、入力側シャフト88の回転角は90°未満となる。そして、ステアリングホイール10が、さらに回転操作されて、中立操作位置から右、若しくは左旋回方向に180゜回転操作された場合に、ロアシャフト60および入力側シャフト88は共に180°回転する。ロアシャフト60の回転角αと入力側シャフト88の回転角βとの関係は、図7に示すように、ステアリングホイール10が中立操作位置から180°未満回転操作される場合には、入力側シャフト88の回転角βはロアシャフト60の回転角αより小さく、ステアリングホイール10が中立操作位置から180°回転操作されると、入力側シャフト88の回転角βがロアシャフト60の回転角αと同じとなる。つまり、ロアシャフト60の回転位相が、ロアシャフト60の回転位相と入力側シャフト88の回転位相とが一致する特定回転位相となる場合、具体的にいえば、ロアシャフト60の回転角αが0°若しくは180°となる場合には、各回転角α,βがともに同じとなり、回転位相差は0となる。一方、ロアシャフト60の回転角αが0°から180°に変化する間に、回転位相差は徐々に増加し、ある回転角からは逆に、徐々に減少し、0となるのである。この場合の2本のシャフト60,88のギヤ比(dβ/dα)、つまり、ロアシャフト60の回転速度(dα/dt)に対する入力側シャフト88の回転速度(dβ/dt)の比(dβ/dα)は、図8に示すように、ロアシャフト60の回転角αに応じて変化する。
図から解るように、ロアシャフト60の回転角αが0°の場合には、ギヤ比(dβ/dα)は最も小さく、ロアシャフト60の回転角αが大きくなるにつれてギヤ比(dβ/dα)は大きくなる。つまり、ステアリングコラム12においては、ステアリングホイール10の操作角が小さい場合においては、穏やかで安定感のあるハンドリングが実現され、ステアリングホイール10の操作角が大きくなるにつれて、レスポンスの良いハンドリングが実現されるのである。なお、本システムにおいては、ステアリングホイール10の操作範囲が、図示を省略する操作範囲制限機構によって、中立操作位置から左右約180゜に制限されている。
ちなみに、図8の縦軸に示されているeは、ローラ122が溝114に係合する位置の入力側シャフト88の回転軸線からのオフセット量L(図4)に対する入力側シャフト88の回転軸線とロアシャフト60の回転軸線とのズレ量d(図4)の比率であり、ステアリングホイール10の操作フィーリングを左右するものとなっている。
<ステアリングシステムの制御>
ECU180における転舵助勢制御は、前述した転舵助勢装置82に関する制御であり、詳しくは、それが有するモータ80の制御である。この制御では、まず、相対変位量センサ108によって検出されるトーションバー90の上端部と下端部との相対回転変位量θに基づいて、ステアリングホイール10に加えられた操舵力としての操舵トルクTSが推定される。次いで、その推定された操舵トルクTSに応じた助勢力である目標アシストトルクTA *を発生させるように、モータ80への目標となる供給電流i*=Ki・TA *(Ki:ゲイン)が決定される。そして、その目標供給電流i*に基づいて、目標となるデューティ比が決定され、そのデューティ比に基づいた指令がインバータ182に送信される。インバータ182は、その適切なデューティ比の下、インバータ182の備えるスイッチング素子の開閉が制御されて、目標アシストトルクTA *を発生させるようにモータ80を作動させる。以下に、目標アシストトルクTA *の決定方法について、詳しく説明する。
i)標準制御
目標アシストトルクTA *は、基本的には、図9に実線で示すように、操舵トルクTSの増加に応じて増加するように規定された標準アシストトルクTB(TS)となるように、決定される。その標準アシストトルクTB(TS)は、図からも分かるように、それの変化勾配が操舵トルクTSの増加に対して漸増するように規定されており、運転者が操舵が重いと感じないような操舵フィーリングが得られるようになっている。なお、目標アシストトルクTA *は、モータ80の出力の上限値を考慮して、制限トルクTAlimit以下に制限されるようになっている。
ii)助勢力抑制制御の意義
本ステアリングシステムは、先に述べたように、ステアリングホイール10の操作角に応じてステアリングギヤ比dβ/dαが変化する構造の操舵力伝達機構を備えている。そのため、ステアリングホイール10の操作範囲が、中立操作位置から左右に約180゜とされているため、一般的な車両に比較して、操作範囲が小さく、ステアリングギヤ比が比較的大きい構成、簡単に言えば、ステアリングホイール10の操作角に対する転舵装置の転舵量が大きい構成となっている。つまり、小さな操舵で大きく転舵させる必要があるため、本ステアリングシステムにおいては、比較的大きなアシストトルクが必要となる。また、その操舵力伝達機構においては、操作角が大きくなるほど、ステアリングギヤ比も大きくなるため、そのような場合には、より大きなアシストトルクが必要となり、本システムでは、アシストトルクが制限トルクTAlimitに比較的容易に達し得る。
目標アシストトルクが、制限されると、運転者の操舵フィーリングは急変することになる。そこで、その操舵フィーリングの急変を防止すべく、本ステアリングシステムでは、標準アシストトルクTB(TS)に従ったアシストトルクを発生させる標準制御に代えて、アシストトルクを抑制する制御である助勢力抑制制御を実行可能に構成される。
iii)助勢力抑制制御
本システムでは、操舵トルクTSが増加する過程において開始条件を充足した場合に、標準制御から助勢力抑制制御に切り換えられる。その開始条件は、操作角センサ184により検出された操作角δと、そのセンサ184の検出結果から得られるステアリングホイール10の操舵速度ωとをパラメータとして、設定されている。具体的には、まず、操舵速度ωが閾速度以上であることが、1つ目の条件である。ただし、その閾速度は、図10に示すように、操舵トルクTSが大きい場合に、それが小さい場合に比較して小さな値に設定されている。ちなみに、閾速度は、操舵トルクに代えて、目標アシストトルクや、その供給電流,供給電力等に応じて変更されるように構成することもできる。
そして、操舵速度ωが閾速度ωB(TS)以下である場合には、2つ目の条件として、操作角δが閾操作角以上であるか否かが判断される。つまり、操舵速度ωが閾速度ωB(TS)以下であっても、操作角δが閾操作角δB(ω)以上である場合には、標準制御から助勢力抑制制御に切り換えられるのである。その閾操作角は、図11に示すように、操舵速度ωに応じて設定されており、操舵速度ωが大きい場合に、それが小さい場合に比較して小さな値に設定されている。
操舵トルクTSの増加過程において上記の開始条件を充足した場合に実行される助勢力抑制制御においては、目標アシストトルクTA *は、操舵トルクTSに応じて規定された抑制アシストトルクTR(TS)となるように決定される。その抑制アシストトルクTR(TS)は、図9に一点鎖線で示すように(2つの例を記載している)、上記開始条件を充足した時点における操舵トルクである条件充足時操舵トルクTS0に対応する標準アシストトルクTB(TS0)から、操舵トルクの増加に応じて増加するとともに、同じ操舵トルクTSに対する標準アシストトルクTB(TS)より小さくなるように規定されている。具体的に言えば、抑制アシストトルクTR(TS)は、それの変化勾配が、操舵トルクTSの増加に対して一定(変化勾配:k)となるように規定されている。なお、本システムでは、条件充足時操舵トルクTS0に依らず、抑制アシストトルクTR(TS)の変化勾配は、同じ勾配とされる。つまり、助勢力抑制制御では、目標アシストトルクTA *は、次式に従って決定されるようになっている。
TA *=TB(TS0)+k・(TS−TS0)
助勢力抑制制御は、終了条件を充足するまで、継続して実行される。そして、操舵トルクTSが、上記条件充足時操舵トルクTS0以下となることが、終了条件として設定されている。つまり、本システムでは、助勢力抑制制御の実行中に操舵トルクTSが減少する過程になると、アシストトルクは、増加過程において辿った線分上を戻っていくように変化し、操舵トルクが条件充足時操舵トルクTS0に戻った後は、標準アシストトルクTB(TS)で規定される線分上を辿るように変化する、つまり、標準制御に戻されることになる。なお、助勢力抑制制御においても、目標アシストトルクTA *は、制限トルクTAlimit以下に制限されるようになっている。
<制御プログラム>
上述した転舵助勢装置82の制御は、図12にフローチャートを示す転舵助勢制御プログラムが、イグニッションスイッチがON状態とされている間、短い時間間隔をおいて、ECU180により繰り返し実行されることによって行われる。以下に、その制御のフローを、図に示すフローチャートを参照しつつ、簡単に説明する。
転舵助勢制御プログラムにより処理では、標準制御と助勢力抑制制御とのうちいずれの制御を実行しているかを示す実行制御フラグFLが採用されており、そのフラグFLのフラグ値は、標準制御が実行されている場合に、0に、助勢力抑制制御が実行されている場合に、1にされるようになっている。このプログラムに従う処理では、まず、ステップ1(以下、「S1」と略す、他のステップも同様である)およびS2において、相対変位量センサ108により検出された出力側シャフト86と入力側シャフト88との相対回転変位量θに基づいて、操舵トルクTSが推定される。次いで、S3において、実行している制御を切り換えるための処理、つまり、先に述べた開始条件あるいは終了条件を充足するか否かを判定する処理が、図13にフローチャートを示す実行制御切換処理サブルーチンが実行されることにより行われる。
その実行制御切換処理では、まず、S21において、実行制御フラグFLのフラグ値が確認される。実行制御フラグFLのフラグ値が0である場合には、現時点では標準制御が実行されているため、助勢力抑制制御に切り換えるか否かの判定が、S22以下において行われる。逆に、実行制御フラグFLのフラグ値が1である場合には、現時点では助勢力抑制制御が実行されているため、標準制御に切り換えるか否かの判定が、S29において行われる。
実行制御フラグFLのフラグ値が0である場合には、まず、S22において、ステアリングホイール10の操舵力が増加する過程にあるか否かが確認され、増加過程にある場合のみ、先に述べた開始条件を充足するか否かの判定が行われる。具体的には、S23,24において、操作角センサ184によりステアリングホイール10の操作角δが取得されれるとともに、その操作角δに基づいてステアリングホイール10の操舵速度ωが演算される。次いで、S25において、その操舵速度ωが、図10に示した閾速度ωB(TS)以上か否かが判定され、S26において、操作角δが、図11に示した閾操作角δB(ω)以上か否かが判定される。いずれの条件も充足しない場合には、助勢力を抑制する必要がないため、実行制御フラグFLのフラグ値は変更されず、0のままとされる。
また、いずれかの条件を充足した場合、詳しく言えば、操舵速度ωが閾速度ωB(TS)以上である場合、あるいは、操舵速度ωが閾速度ωB(TS)以下であっても操作角δがその操舵速度ωに対する閾操作角δB(ω)以上となった場合には、標準制御から助勢力抑制制御に切り換えられる。具体的には、S27において、転舵助勢制御プログラムのS2において推定された操舵トルクTSが、条件充足時操舵トルクTS0として認定されるとともに、S28において、実行制御フラグFLのフラグ値が1に変更される。
一方、S21において、実行制御フラグFLのフラグ値が1である場合には、S29において、先に述べた終了条件を充足するか否かの判定、具体的に言えば、転舵助勢制御プログラムのS2において推定された操舵トルクTSが、条件充足時操舵トルクTS0以下か否かが判定される。操舵トルクTSが、条件充足時操舵トルクTS0より大きければ、実行制御フラグFLのフラグ値は変更されず、1のままとされ、条件充足時操舵トルクTS0以下であれば、S30において、フラグ値が0に変更される。
上記の実行制御切換処理が終了した後、転舵助勢制御プログラムのS4において、実行制御フラグFLのフラグ値が、再び確認される。実行制御フラグFLのフラグ値が0である場合には、S5以下の標準制御が実行され、フラグ値が1である場合には、S6以下の助勢力抑制制御が実行される。詳しく言えば、標準制御が実行される場合には、図9に実線で示した標準アシストトルクTB(TS)のマップデータに基づいて、目標アシストトルクTA *が決定される。また、助勢力抑制制御が実行される場合には、目標アシストトルクTA *が、式TA *=TB(TS0)+k・(TS−TS0)に従って、決定される。
上記のように、目標アシストトルクTA *が決定された後には、S7において、その目標アシストトルクTA *が、制限トルクTAlimitより大きいか否かが判定され、その制限トルクTAlimitより大きい場合には、目標アシストトルクTA *が、制限トルクTAlimitとされる。次いで、S9において、その決定された目標アシストトルクTA *に基づき、目標となる供給電流i*が決定される。そして、S10において、その決定された目標供給電流i*に基づいて、モータ80の制御を行うためのデューティ比が決定され、そのデューティ比に基づいた指令がインバータ182に送信される。このような処理により、転舵助勢装置82のモータ80の作動が制御されることで、転舵助勢装置30は、必要とされる助勢力を発生させることになる。
<制御装置の機能構成>
本ステアリングシステムの制御装置であるECU180は、上述した転舵助勢制御プログラムの実行により、上述したような種々の処理を実行する。この種々の処理の実行によって、ECU180は、図14に示すような機能部を有していると考えることができる。ECU180は、前述した標準アシストトルクTB(TS)となる助勢力を転舵助勢装置82に発生させる標準制御を実行する標準制御部200と、抑制アシストトルクTR(TS)となる助勢力を発生させる助勢力抑制制御を実行する助勢力抑制制御部202とを有している。その標準制御部200は、転舵助勢制御プログラムのS5,S9,S10の処理を実行する部分が相当し、助勢力抑制制御部202は、プログラムのS6,S9,S10の処理を実行する部分が相当する。また、ECU180は、実行制御切換処理サブルーチンを実行して、前述した開始条件を充足する場合に標準制御から助勢力抑制制御に切り換えるとともに、終了条件を充足する場合に助勢力抑制制御から標準制御に切り換える機能部として、実行制御切換部204を有している。さらに、ECU180は、それら標準制御および助勢力抑制制御との両者において、転舵助勢制御プログラムのS7,8の処理を実行して、転舵助勢装置82に発生させるべき助勢力が設定力である制限トルクTAlimitを超える場合に、転舵助勢装置82に発生させる助勢力を設定力に制限する助勢力制限部206を有している。
<本ステアリングシステムの効果>
以上説明したように、本システムでは、上記の助勢力抑制制御によって、標準制御から助勢力抑制制御に切り換わる際と、助勢力抑制制御から標準制御に切り換わる際との両者において、アシストトルクが急変することはなく、運転者の操舵フィーリングの変化も比較的小さくされるため、制御の切り換わりに起因して運転者が受ける違和感を抑えることが可能である。また、助勢力抑制制御によって、目標アシストトルクが制限トルクに容易に達し難くされて、制限トルクに達することにより操舵フィーリングが急変する事態となることが、極力回避されるようになっている。
さらに、助勢力抑制制御の開始条件は、操舵速度に基づいて設定されていることにより、モータ80の負担が大きくなることが予測されるような場合に、効果的に助勢力を抑制して、モータ80の負担を軽減することが可能である。ちなみに、標準制御における標準アシストトルクは、車両の乗員が多い場合を考慮して、比較的高めに設定されているため、乗員が少ない場合には、操舵トルクが小さくても操舵速度が速くなる。そして、モータ80がその操舵速度に追従できないような場合には、運転者の操舵フィーリングが急変することになるが、助勢力抑制制御の開始条件が、操舵速度に基づいて設定されていることによって、その乗員が少ない場合の操舵に起因して操舵フィーリングが急変する事態となることが、極力回避されるようになっている。
さらにまた、開始条件が操舵量に基づいて設定されていることにより、ステアリングホイール10が操作範囲制限機構によって制限されることが予測される場合に、助勢力を抑制することで、そのステアリングホイール10が操作範囲制限機構によって制限される際の衝撃を効果的に緩和することが可能である。
なお、本ステアリングシステムは、先に述べたように、ステアリングホイール10の操作角に応じてステアリングギヤ比が変化する構造の操舵力伝達機構を備えていることから、ステアリングホイール10のロックトゥロックが360°となっている。そのことにより、一般的な車両に比較して、同じ操舵量でも転舵量が大きいため、大きな助勢力が必要となる場合が多い。大きな助勢力を発生させる状況下になりやすい本ステアリングシステムにおいては、上述した助勢力抑制制御が、特に有効である。
<変形例>
上記の実施例では、助勢力抑制制御において転舵助勢装置82に発生させるべき助勢力である抑制アシストトルクTR(TS)は、それの変化勾配が、条件充足時操舵トルクTS0に依らず同じ勾配とされていたが、その条件充足時操舵トルクTS0に応じて、勾配が変更されるように構成することも可能である。例えば、第1の変形例のステアリングシステムは、図15(a)に示すように、抑制アシストトルクTR(TS)が、条件充足時操舵トルクTS0に対応する標準アシストトルクと原点Oとを通る直線で規定されている。つまり、その第1変形例のシステムでは、条件充足時操舵トルクTS0が大きくなるほど、傾きが大きくなるため、条件充足時操舵トルクTS0が大きくなるほど、車輪の転舵を重視することとなる。また、例えば、第2の変形例のステアリングシステムは、図15(b)に示すように、抑制アシストトルクTR(TS)が、条件充足時操舵トルクTS0に対応する標準アシストトルクと、標準アシストトルクTB(TS)が規定されている操舵力より大きな操舵力において設定された固定点Aとを通る直線で規定されている。つまり、その第2変形例のシステムでは、条件充足時操舵トルクTS0が大きくなるほど、傾きが小さくなるため、条件充足時操舵トルクTS0が大きくなるほど、助勢力の抑制を重視することとなる。
請求可能発明の実施例である車両用ステアリングシステムを示す模式図である。
図1の車両用ステアリングシステムの備えるステアリングコラムを示す断面図である。
ステアリングコラムの備えるEPSセクションを示す断面図である。
図3に示すAA’線における断面図である。
ステアリングコラムの備えるコラムセクションを保持するブレークアウェイブラケットを示す斜視図である。
ステアリングホイールが回転操作される際の図3に示すAA’線における断面図である。
操作部材側シャフトの回転角と転舵装置側シャフトの回転角との関係を示すグラフである。
操作部材側シャフトの回転角に応じて変化する操作部材側シャフトと転舵装置側シャフトとのギヤ比を示すグラフである。
操舵トルクと図3に示す転舵助勢装置に発生させるべきアシストトルクとの関係を示す図である。
助勢力抑制制御を開始するための条件のパラメータである操舵速度の操舵トルクに対する大きさを示す図である。
助勢力抑制制御を開始するための条件のパラメータである操舵量の操舵速度に対する大きさを示す図である。
図1に示すステアリング電子制御ユニットによって実行される転舵助勢制御プログラムを表すフローチャートである。
図12の転舵助勢制御プログラムの一部分である実行制御切換処理サブルーチンを示すフローチャートである。
図1に示すステアリング電子制御ユニットの機能に関するブロック図である。
変形例のステアリングシステムにおける操舵トルクと転舵助勢装置に発生させるべきアシストトルクとの関係を示す図である。
符号の説明
10:ステアリングホイール(ステアリング操作部材) 12:ステアリングコラム(操舵力伝達機構) 14:転舵装置 16:インタミディエイトシャフト(操舵力伝達機構) 18:出力シャフト(第1シャフト) 50:コラムセクション 52:EPSセクション 54:メインシャフト(第2シャフト) 80:電磁モータ(駆動源) 82:転舵助勢装置 86:出力側シャフト 88:入力側シャフト
90:トーションバー 108:相対変位量センサ[θ] 114:溝(案内通路)
116:円環プレート 118:ピン 120:ニードルベアリング 122:ローラ 126:1対の側壁面 180:ステアリング電子制御ユニット(ECU) 182:インバータ 184:操作角センサ[δ] 200:標準制御部 202:助勢力抑制制御部 204:実行制御切換部 206:助勢力制限部
α:ロアシャフトの回転角 β:入力側シャフトの回転角 dβ/dα:ギヤ比 L:係合位置のオフセット量 d:2本のシャフトのズレ量 e:比率 δ:操作角(操舵量) θ:相対回転変位量 TS:操舵トルク(操舵力) TA *:目標アシストトルク i*:目標供給電流 TB(TS):標準アシストトルク TAlimit:制限トルク ω:操舵速度 ωB(TS):閾速度 δB(ω):閾操作角 TR(TS):抑制アシストトルク