JP5168795B2 - 3次元モールドの製造方法 - Google Patents
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Description
高い加速電圧を用いる理由は、電子ビーム径を絞りやすく、かつ電子とレジストとの相互作用が少なくなるために、細いビーム径のままレジストを突き抜けて基板内に注入するので、細いビームを所望のパターンに応じて照射を繰り返し行なって、半導体のような二次元モールドのような深さがほぼ一定のパターンを加工するのに有効であることにあるが、反面、該相互作用が少なくなって感度が低下し、それを補うのに高いドーズ量が必要となって、その結果描画に長時間かかるという問題がある。
このように、従来、電子ビーム照射による微細加工法は、二次元モールドパターン作製が主流であり、高さ、深さそれに線幅が変化した三次元パターン作製に適用する例は少なかった。
三次元パターンを作製する場合においても、従来、高加速電圧領域で電圧を固定し照射量を増減させる、いわゆる高加速ドーズ変調方式が一般的に用いられているが、通常、電子ビームレジストが照射量の変化に対して敏感に高さや深ささらに線幅が変わってしまい、制御性が低く、高くても線幅制御と深さ制御が共に50nm程度であり、所望の三次元微細パターンを作製することは困難であった。
特に、該後方散乱電子の影響によって照射量も変化を受けるため、三次元の微細パターン再現を一層困難なものとしている。
例えば、高い加速電圧の電子ビーム照射微細加工の場合に、感度が悪いために、別途30kV程度の低い加速電圧の電子ビーム照射を行なって、予め感度を上げておいてから、100kV程度の加速電圧で重ねて照射を行なう方法(例えば、特許文献7参照。)があるが、これらの方法による補正効果は不十分であり、満足できる加工パターン寸法が得られるに至っていない。
しかしながら、この提案では、低い加速電圧と高い照射量によって、加工深さ精度を従来より向上させることはできたものの、未だ不十分であり、さらに、微細線の線幅制御については電子ビーム径の調整によって行なわれ、満足できる線幅制御は得られていない。
線幅制御を電子ビーム径の調整に依らない場合にも、照射量が高ければ微細線の制御は難しいものと考えられる。
さらに、微細パターンの密度あるいは隣接するパターンの間隔によっては、パターンが全部くっついてしまったり、全部抜けてしまったりする場合が多く、微細線の特に線幅を所望の形状に描くことが困難な状況である。
なお、特許文献5では、電子ビームが基板に達成しない低加速電圧範囲で電圧を変化させて、光学特性の優れた薄膜型微小光学素子を作製することが提案されているが、照射量及び加工精度に関する記述は一切なく、低加速電圧の電子ビーム照射する点において特許文献9と同様であるものの、照射量の調整を行なわずに加工精度の高い素子を作製することは期待できないものと考えられる。
また、本発明の第二の課題は、モールドの加工深さを略連続的でアナログ的に、しかも正確に制御可能な3次元モールドの製造方法を提供することである。
また、本発明の第三の課題は、モールドの微細線幅の制御可能な3次元モールドの製造方法を提供することであり、特に加工深さが浅い場合の微細線幅の制御可能な3次元モールドの製造方法を提供することである。
さらに、本発明の第四の課題は、前記3次元モールドを用いる微細加工物の製造方法、3次元モールド又は微細加工物を用いる微細パターン成形品の製造方法を提供することである。
さらにまた、本発明の第五の課題は、これらの製造方法によって得られる3次元モールド、微細加工物、及び微細パターン成形品、並びに光学素子を提供することである。
本発明者は、この問題が10nm程度の加工深さ制御を一層難しくすることを認識し、検討を重ねた結果、ドーズ量の大きさに着目した。
その結果、特許文献8に記載される大きさのドーズ量ではなく、より低領域のドーズ量を使用することが10nm程度の加工深さ制御を行なうのに有効であり、さらに、加速電圧又はドーズ量の一方を固定し他方を変化させると、加速電圧又はドーズ量の増加に伴い加工深さがほぼ比例して深くすることができることを確認した。
しかしながら、本発明者の実験結果によると、凹凸パターンを形成して試ても、ほとんどの場合、所期の計画値(照射する幅)より大きくずれた広い線幅になることが検証され、低加速電圧の場合のパターン制御、特に線幅の制御が極めて難かしいことを認識した。
このような、パターン制御を困難にし、線幅が大きくずれるばかりでなく、崩れたりくっついたりあるいは抜けたりした凹凸パターン状態をつくる要因が、上記の「高感度状態」に加えて、レジスト層に電子ビーム照射を行なうと、低加速電圧の場合、高加速電圧の場合のような後方散乱電子の発生はないものの、レジスト層の電子ビーム入射点を基点にして電子が散乱(前方散乱電子という)して拡がり、この前方散乱電子のエネルギーが加工精度に直接影響する入射点を基点とした表面近傍領域に蓄積されることにあるものと推察される。
本発明においては、このような凹凸パターンの乱れ状態を「前方散乱電子が引き起こす凹凸部(凹凸パターンとも言う)間近接効果」と総称することにする。
本発明者は、このような認識のもとに鋭意実験を重ねた結果、前方散乱電子による上記近接効果の補正にドーズ量の調整が有効であり、低領域の加速電圧と、低領域範囲内で調整したドーズ量を用いて電子線照射を行なうと、200nm以下の線幅が実現でき、パターン乱れのない加工精度の高い3次元モールドを製造することができることを確認した。
基体上に、有機基を有するポリシロキサン系材料と有機溶媒とからなるレジストを塗布し、塗布したレジストを350℃〜550℃で、10分〜300分加熱してレジスト層を形成することにより、当該レジスト層を有する被加工体を形成する工程と、電子線の加速電圧及びドーズ量の一方を固定し他方を変化させて、前記レジスト層に電子線を複数回照射する照射工程と、電子線を照射した後の前記レジスト層をフッ酸緩衝液により現像して、前記レジスト層に異なる深さの複数の凹部を形成する現像工程と、を有し、
異なる深さの複数の凹部は、各照射毎の加速電圧又はドーズ量の大きさに依存した加工深さを備え、
前記照射工程において、後方散乱を発生させず、10nm以内の深さ制御と、実際に形成された線幅と電子線を照射した幅との比が2.5以下となる線幅形成とを可能とするように、前記各加速電圧を1kV乃至3kVの範囲内で、かつ、前記各ドーズ量を20〜300μC/cm2 の範囲内で、各々選択して、各照射時の照射条件とすることを特徴とする、3次元モールドの製造方法。
本発明の「基体上に複数の凹部が形成されたレジスト層を有する3次元モールドの製造方法であり、基体上に、有機基を有するポリシロキサン系材料と有機溶媒とからなるレジストを塗布し、塗布したレジストを350℃〜550℃で、10分〜300分加熱してレジスト層を形成することにより、当該レジスト層を有する被加工体を形成する工程と、電子線の加速電圧及びドーズ量の一方を固定し他方を変化させて、前記レジスト層に電子線を複数回照射する照射工程と、電子線を照射した後の前記レジスト層をフッ酸緩衝液により現像して、前記レジスト層に異なる深さの複数の凹部を形成する現像工程と、を有し、異なる深さの複数の凹部は、各照射毎の加速電圧又はドーズ量の大きさに依存した加工深さを備え、前記照射工程において、後方散乱を発生させず、10nm以内の深さ制御と、実際に形成された線幅と電子線を照射した幅との比が2.5以下となる線幅形成とを可能とするように、前記各加速電圧を1kV乃至3kVの範囲内で、かつ、前記各ドーズ量を20〜300μC/cm2 の範囲内で、各々選択して、各照射時の照射条件とすることを特徴とする、3次元モールドの製造方法」について説明する。
なお、本発明において特定された上記照射条件は、深さを10nm以内に制御しかつ200nm以下の線幅を形成する条件であるが、1つの3次元モールドの複数の凹凸部の中には、当然のことながら、必要に応じて必ずしも深さが10nm以内に制御されず線幅が200nm以下でない部分を形成する場合がある。
そのような場合には、連続的に複数回行なわれる一連の照射工程の中で、本発明において特定された照射条件に加えて、該条件を逸脱した加速電圧あるいはドーズ量を用いて照射し、深さが10nm以内に制御されず線幅が200nmより広い凹凸部を形成することができる。
先に説明したように、低い加速電圧を用いた電子ビーム照射の場合に、3次元モールドの加工精度を向上させるには、表面近傍領域に蓄積される前方散乱エネルギーの制御如何に依ることを課題として認識し、本発明においては、前方散乱電子エネルギーが予測しやすい表面近傍領域に蓄積されるために、主として、電子ビームのドーズ量(照射量)のみを調整することによって前方散乱電子エネルギーを制御し、該課題の解決が図られたものである。
本発明においては、ドーズ量を調整して、レジスト層内で前方散乱電子が引き起こす凹凸パターン間近接効果の発生を制御することを要件としているが、以後、「調整し選定されたドーズ量」を「低いドーズ量」とも言う。
ここで、具体事例として、図1に、レジストとしてAccuglass SOG512B(ラサ工業社製)を用い、1kV、2kV、3kVの加速電圧で、500μC/cm2のドーズ量の電子線を照射して、設計値200nmのラインパターンを形成したときのレジスト層の電子顕微鏡写真を掲載する。そのときの加工深さと加工線幅を下記表1に示す。
発明者の鋭意研究によって、1〜3kVの加速電圧によって形成される加工深さの浅い条件下で、200nm以下の加工線幅を得るには、400μC/cm2以下のドーズ量としなければならないことを見出した。400μC/cm2以下のドーズ量であれば、レジスト層表面近傍での加工深さであっても、200nm以下の加工線幅を形成することができる。
低加速電圧を用いて電子線照射加工によって形成される線幅(実際値)は、前方散乱電子の影響により、多くの場合、実際に照射した幅(設計値)より大きくずれた広い幅になってしまうことは、先述したとおりである。
微細加工する場合には、複数の線を線と線の間にスペースを設けて行なうのが実用上一般的であるが、設計値とのずれが大きすぎる線が形成されると、線はスペース部分まで拡がるばかりでなく、場合によっては隣接する線と重なってしまうことになる。
従って、本発明の加速電圧1〜3kVでドーズ量が400μC/cm2以下の照射条件は、単一線パターンの形成を可能とするのみならず、上記のような複数線の不具合なパターン状態の形成を回避し、200nm以下の線幅加工を可能とし、設定されたものである。
本発明者の検証結果によると、設計値に対する実際値の倍率(線幅拡大率)1〜2.5程度が実用的であり、2.5倍を越えると上記の不具合なパターン状態を発生しやすい傾向になることを確認した。
図2に示されるように、ドーズ量が400μC/cm2以下の場合には、全ての設計値に対して、200nm以下の線幅が形成されていることを示し、500μC/cm2の場合には、設計値を90nmにすると、200nm以下の線幅が形成されないことを示している。
図3に示されるように、ドーズ量が400μC/cm2以下の場合には、線幅拡大率が全て2.5以下で複数線の形成ができ実用的であるが、500μC/cm2の場合には線幅拡大率が実用限界値の2.5を越える場合があることを示している。
従って、3kVの加速電圧を用いる場合には、線幅が200nm以下の線パターンが単一線でも複数線でも形成可能するには、400μC/cm2以下でありさえすれば良いが、特に200μC/cm2以上であることがより好ましい。
従って、3kV未満、例えば1kVとか2kVの加速電圧を用い、400μC/cm2以下の場合200nm以下の線幅形成ができたが、500μC/cm2の場合には200nm以下の線幅形成ができない場合があり、さらに線幅拡大率がさらに広がることが確認された。
(1) 電子ビーム照射条件(電子ビーム電流、加速電圧)から、モンテカルロ・シミュレーションによって、二次電子の拡がり(前方散乱電子)程度を解析し、解像度を予測し、線幅、深さ方向への現像液に対して溶けやすくなる領域を想定する。
(2) (1)で確認された条件によって、レジストに実際に電子ビーム照射をする。
(3) (2)の照射後、現像液を用いて現像し、現像度合いを観て、形成されるパターンの程度を測定し確認する。
(4) (3)で形成されたパターンが所期のものであれば、そのドーズ量を用い、そうでない場合には、(1)〜(3)の必要な事項から繰り返し行ない、適当なドーズ量を割り出す。
このようにして、設計値と実際値のデータを予め蓄積しておいて、本発明においてはこのデータを使って、所望の深さと線幅を持つ3次元モールドを作製することができる。
加速電圧とドーズ量を上記範囲内とするのであれば、本発明における電子ビーム照射条件として、所期の凹凸パターンに応じて、加速電圧を本発明の範囲内の特定値に固定し、ドーズ量を本発明の範囲内で変化させて行なうことも、加速電圧を本発明の範囲内で変化させ、ドーズ量を本発明の範囲内の特定値に固定して行なうこともでき、特に3次元モールド特有の高低差のある深さの微小な加工を可能とするものである。
なお、「深さ制御」とは、レジスト表面からパターンの底までの絶対値を意味するものではなく、加速電圧さらにはドーズ量の調整によって、レジスト層に形成された凹凸の高さの差分、つまりレジスト層に形成された凹凸の高さ階調を意味するものである。
本発明の3次元モールドの製造方法は、このような精密な深さ制御が可能であり、且つレジスト表面層付近においても微細な線幅の加工を行うことできるため、これまでの方法では得られなかった3次元モールドの形状を得ることができる。また、レジスト層の表面まで有効に3次元モールド形成のために利用できるため、レジスト層を無駄なく使うことができる。よって、レジスト層を不要に厚く形成する必要が無くなり、レジストの使用量を削減することができる。
基体上にレジスト層を有する被加工体としては、電子線照射工程を行う以前に、別途独立に作製しておいたレジスト層を用いる、あるいはレジスト層形成工程、電子線照射工程、現像工程を順次行う一連の工程の中の一つのレジスト層形成工程において作製されるレジスト層を用いるものが包含される。
まず、基体10の上にレジストを塗布する。レジストはネガ型、ポジ型のいずれでもよいが、酸素エッチング耐性が高く、かつ高解像度になり、加工深さ方向の制御(アナログ性)が良好である観点から、本発明では、ポリシロキサン系材料を用いる。
ベーク後、電子ビームを照射する。
本発明における電子ビームの加速電圧としては、後方散乱電子を発生させないことを前提とした1〜3kVに特定され、極めて低い範囲を適用する。
本発明におけるドーズ量の調整・選定は、深さ制御ばかりでなく線幅制御に重要である。
深さ制御には300μC/cm2以下であることが好ましく、80〜200μC/cm2であり、更に好ましくは100〜200μC/cm2である。100〜200μC/cm2の場合には、線幅制御が良好であることに加えて、加工深さと加速電圧との関係が線形的になり加速電圧を変動させたときの加工深さの制御が良好となる。
レジストの材料を変更する場合には、ドーズ量を適宜変更することが好ましい。
同様に、レジスト層が現像後に残存する部分の幅は、ドーズ量を調整することで調節することができるが、加速電圧によっても変化するため、目的の残存の幅にするには、加速電圧との兼ね合いでドーズ量を調整することが好ましい。
加速電圧を固定してドーズ量を変化させて高い精度の3次元モールドを得るためには、加速電圧を1〜3kVに固定して、ドーズ量が20〜400μC/cm2であることが好ましく、特に20〜300μC/cm2であることがより好ましい。
このように加速電圧を固定してドーズ量を変化させて電子線照射を行なう場合、ドーズ量を15〜40μC/cm2内の特定値、例えば、20μC/cm2で刻んでドーズ量を増やしていくと、微細に制御された高い加工深さ精度の階段構造の3次元モールドを製造することができる。
一方、本発明において、ドーズ量を固定して加速電圧を変化させて高い精度の3次元モールドを得るためには、加速電圧を1〜5kVに固定して、ドーズ量が20〜400μC/cm2であることが好ましく、特に20〜300μC/cm2であることがより好ましい。
このように加速電圧を固定してドーズ量を変化させて電子線照射を行なう場合、ドーズ量を15〜40μC/cm2内の特定値、例えば、20μC/cm2で刻んで、ドーズ量を増やして照射すると、微細に制御された高い加工深さ精度の階段構造の3次元モールドを製造することができる。
例えば、加速電圧を30V以下の特定値の刻みで変化させると、基体からの高さ階調を6nm以下の特定値の刻みで、レジスト層に凹凸部を形成することができる。
しかしながら、電子ビーム径を細くするにはビーム電流を下げる必要が出てきて時間がかかり、結局生産効率の低下に繋がることになる。また、所望の電子ビーム径に調節するのは難しく煩雑な操作を要する。そこで、可能な限り電子ビーム径を最小値となるように固定した上でドーズ量等を調節することで、目的の加工線幅を得ることが好ましい。
電子線を照射後、レジスト層を現像する。ポジ型レジストの場合、露光部が現像によって取り除かれ、ネガ型レジストの場合は、非露光部が現像によって取り除かれる。SOGの場合、ドーズ量によってポジ型・ネガ型のいずれをも呈する。
本発明において、調整し選定したドーズ量が400μC/cm2以下の場合には、この条件でSOGを用いると、ポジ型レジストとして機能するが、条件によっては、ネガ型レジストとして機能させることもできる。
現像は、現像液によって行ってもよいし、熱脱離処理で行ってもよい。
本発明における3次元モールドの「3次元」とは、モールド内の複数の加工部に高低(深さ)又は幅に違いのある凹凸部を意味するものである。
本発明における3次元モールドは、レジスト層を基体上に設けてなる3次元モールドであって、基体からのレジスト層の高さ階調が8.0nm以下の加工部を有することを特徴とする。さらに好ましくは、基体からのレジスト層の高さ階調が6.0nm以下の加工部を有する。このような3次元モールドは、上記製造方法によって得ることができる。
ダイヤモンドは、超高硬度であるために、繰り返しインプリントを行う際に長寿命や圧力による変形がないことが期待されている。また、ダイヤモンドは低熱膨張係数を有するため、加熱工程を有するインプリントの場合、基体を含むモールドの寸法変化が小さく精密なパターン転写が期待できる。さらに耐薬品耐性が大きいため、モールドが汚れた場合でも洗浄が行え、その洗浄工程でのモールドの損傷が少ないといった様々なメリットが期待できる。
ダイヤモンドを基体として用いる場合、天然ダイヤモンド、高温高圧合成によるバルクダイヤモンド又は気相合成によるダイヤモンド膜のいずれであっても同様の微細加工が可能である。気相合成によるダイヤモンド膜である場合には、(111)又は(100)面に配向しているダイヤモンド結晶が、均一なエッチングが可能である点で好ましい。また、前記ダイヤモンドは、不純物元素がドーピングされた半導体ダイヤモンドであってもよい。半導体ダイヤモンドの場合、電子デバイスへの適用も可能となる。ダイヤモンドの高耐摩耗性を利用して、工具及びマイクロマシーン用へも適用が可能である。
接着層を設ける場合、接着層の厚みは、0.1〜1nmであることが好ましく、2〜10nmであることが好ましい。
また、3次元モールドを微細パターン成形品の成形用の型として用いることもできる。
本発明の微細加工物の製造方法は、上記3次元モールドの製造方法によって得られた、基体上に凹凸部を有するレジスト層を設けてなる3次元モールドに、イオンビームを照射し、前記基体に凹凸部を形成する工程(図4の(4))を有することを特徴とする。
本発明の微細加工物は、上記方法によって、高さ階調が8nm以下の加工部を有する。さらに好適には、高さ階調が6nm以下の加工部を有する。
微細加工物の材質は、上記3次元モールドの基体で説明したものであり、ダイヤモンド、炭化ケイ素、シリコン、ガラス、サファイア又樹脂等を用いることができる。
この微細加工物は、次に説明する微細パターン成形品の成形用の型として用いることができる。
本発明の微細パターン成形品の製造方法は、上記3次元モールド又は上記微細加工物を成形用の型として用いる。微細加工物に樹脂を押し付ける際、樹脂のガラス転移温度よりも高い温度に設定して樹脂を軟らかくした上で、樹脂に型を押し付けた後、樹脂を硬化し、その後、型と樹脂とを剥離する。
ガラス40と型の間に樹脂30を挟みこみ(図5(1))、圧力を一定に保ったまま(図5(2))、樹脂30を硬化する(図5(3))。その後、型を引き離すと、ガラス40上に樹脂30の微細パターン成形品が形成される(図5(4))。図5では、型として、基体上に凹凸部を有するレジスト層を設けてなる3次元モールドを用いているが、上述の通り、基体に凹凸を形成してなる微細加工物を用いてもよい。
また、型が剥離しやすいよう、型の表面に剥離剤を付与しておくことも好ましい。剥離剤としては、シランカップリング剤を挙げることができ、剥離しやすいよう金属薄膜を設けることも好ましい。しかし、剥離剤も繰り返しインプリントすると剥がれるため、できれば剥離処理なしで行えることが好ましい。なお、基体にサファイアを用いた微細加工物を型として用いると、剥離性が良好である。
熱硬化樹脂としては、PMMA等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド等を挙げることができ、PMMA等のアクリル系樹脂が好ましい。
光硬化樹脂としては、紫外線等で硬化する樹脂が好ましく、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、及びこれらの混合物を挙げることができる。
本発明の微細パターン成形品は、高さ階調が8nm以下の加工部を有する。好適には、高さ階調が6nm以下の加工部を有する。
得られた微細パターン成形品や3次元モールドは、その形状と材質から、光学素子に用いることができる。例えば、フレネルゾーンプレート、回折格子、バイナリ−光学素子、ホログラム光学素子、反射防止膜、CDやDVDなどのメディア等を挙げることができる。
なお本実施例では、本発明と比較例との比較を行うべく、本発明に該当しない3次元モールドの製造方法についても実施例中に記載する。なお、本発明の3次元モールドの製造方法に該当する実施例は、照射工程の前にレジスト層を350℃〜550℃で加熱する工程を含み、そして照射工程では、後方散乱を発生させず且つ1kV乃至3kVの加速電圧で、20〜300μC/cm 2 のドーズ量で照射するものをいう。
<レジスト層の形成>
シリコン基板上に、メチルシロキサンポリマーと有機溶媒(主成分としてメチルイソブチルケトンを含む)とを含有するAccuglass SOG512B(ラサ工業社製)を300rpmで3秒間、3000rpmで10秒間スピンコートし、450℃60分間ベークした試料1を作製した。試料1の膜厚を測定したところ、約500nmであった。
上記で得られた試料1に電子線を照射した。電子線照射には、走査型電子顕微鏡ERA−8800FE(エリオニクス社製)をパソコン上の描画パターンを露光できるように改造したものを用いた。
加速電圧を2kVに固定し、ドーズ量を20〜400μC/cm2のいずれかに固定し、加工線幅の設計値を変化させて、試料1に電子線を照射した。なお、照射時のビーム電流は1.6pAとして、ビーム径を20nmに固定した。
照射後の試料1を、フッ酸緩衝液(HF:NH4F=1:1混合液)中に90秒間浸漬した後、純水でリンスした。
現像後の加工線幅を走査型電子顕微鏡ERA−8800FE(エリオニクス社製)を用いて測定した。
実施例1と同様にして試料1を用いて、加速電圧を1kVに固定し、ドーズ量を80μC/cm2とし、加工線幅の設計値を90nmとしたときに得られた現像後のレジストパターンを電子顕微鏡で写真で観察したところ、加工線幅が110nmであった。
実施例3以降では、本発明と比較例との比較を行うべく、本発明に該当しない3次元モールドの製造方法についても実施例中に記載する。
シリコン基板上に、メチルシロキサンポリマーと有機溶媒(主成分としてメチルイソブチルケトンを含む)とを含有するAccuglass SOG512B(ラサ工業社製)を300rpmで3秒間、3000rpmで10秒間スピンコートし、300℃60分間ベークした試料2−1と、同回転でスピンコートし425℃60分間ベークした試料2−2を作製した。試料2−1と試料2−2の膜厚を測定したところ、それぞれ約500nmであった。
上記で得られた試料に電子線を照射した。電子線照射には、走査型電子顕微鏡ERA−8800FE(エリオニクス社製)をパソコン上の描画パターンを露光できるように改造したものを用いた。
加速電圧を1〜30kVのいずれかに固定し、ドーズ量を20〜400μC/cm2で変化させて、試料2−1及び2−2に電子線を照射した。
また、ドーズ量を20〜500μC/cm2のいずれかに固定し、加速電圧を1〜5kVで変化させて、試料2−2と2−1に電子線を照射した。
いずれの試料の照射も、加速電圧が1〜10kVの場合は、ビーム電流を1.6pAとして、ビーム径を20nmに固定し、加速電圧が30kVの場合は、ビーム電流を3.2pAとして、ビーム径を3nmに固定した。
試料2−1及び2−2は、フッ酸緩衝液(HF:NH4F=1:1混合液)中に90秒間浸漬した後、純水でリンスした。
形成された凹凸の加工深さを、段差測定器(Tencor Alpha−Step500;KLA−Tencor Co.製)を用いて測定した。
図6及び図7には、425℃でベークしたSOG層を有する試料2−2について、加速電圧を固定した場合に得られた加工深さとドーズ量との関係を示した。
図6は、ドーズ量が多くなるほど加工深さが深くなる相関関係(以下、「線形性」と称する場合あり。)を示しており、本発明のモールドの加工深さを略連続的でアナログ的に、しかも正確に制御可能とする目的は達成されている。
しかしながら、加速電圧が5kVの場合には、ドーズ量が50μC/cm2程度を境にして急激に傾きが大きくなっている。
これは、試料2−2のようなレジストの膜厚が500nmの場合に、4kV程度以上の加速電圧をかけると、照射電子がレジストを貫通し、その結果後方散乱電子が発生し、この後方散乱電子のレジスト内での拡がりの影響によって、レジストの感度が上がり掘れやしくなって、深さが急に深くなって、傾きが大きくなっているものと考えられる。
従って、この図6に示される実施例では、後方散乱電子の発生のない加速電圧が1kV〜3kVの場合の方が、後方散乱電子の影響があると思われる5kVの場合よりも、はるかに高い精度のモールドを得ることができる。
図8に示すように、特に、60μC/cm2以降300μC/cm2までは、ドーズ量を増やす毎に、深さが深くなっていくことがわかる。このように、ドーズ量を変化させることによって、ドーズ量に対応した加工深さを有する三次元階段構造のパターンが作製できることが明らかとなった。つまり、本発明の方法では、加速電圧を1〜3kVとして表面層近傍で加工する場合において線幅制御性に極めて優れているが、加速電圧を5kVとして、加工深さを深くした場合であっても、精密な深さ制御を行うことができることを示している。
なお図8では、特に、60μC/cm2〜300μC/cm2の範囲において深さ制御性が良好であったが、レジスト材料を変更したり、ベーク温度を変更したりした場合には、20μC/cm2、あるいは40μC/cm2でも加工できる場合がある。
しかし、ドーズ量に対しての加工深さの相関関係(線形性)は、ベーク温度425℃の場合の試料2−2の方が良好であり、高精度な3次元の形成には、ベーク温度を300℃よりも425℃で行うことが好適であることが判明した。
しかしながら、加速電圧が高くなると線形性が悪くなる傾向が観察されるが、これは、図6についての先の説明と同様に、後方散乱電子の発生がその一因ではないかと考えられる。
図11では、80μC/cm2〜500μC/cm2のドーズ量では、加速電圧が高くなるほど加工深さが深くなっているが、500μC/cm2のドーズ量の場合に形成されたパターンを観察すると、パターンの線幅が予定の線幅より大きい場合があった。これは、「前方散乱電子が引き起こす凹凸部間近接効果」が発生したものと思われる。特にレジスト層表面は光源に近いため、パターンエッジ部分が丸くなる傾向があった。しかしながら、ドーズ量が低くなるに従って、この傾向は少なくなることが観察された。
実施例3と同様の方法で試料2−1(SOG層で300℃ベークしたもの)を準備し、これに、ドーズ量を400μC/cm2固定し、加速電圧を30Vの刻みで変化させて電子線の照射を行った後、実施例1と同様の方法で現像を行った。得られた試料のパターンを実施例1と同様の方法で測定した。
図12は、その結果の一部について加速電圧と加工深さとの相関関係を示したグラフであり、縦軸は加速電圧が2000Vの場合形成される加工深さ130nmを基点とした、
加工深さの差分を6nm毎に刻んで表し、横軸は、2000Vを基点として30V毎に刻んだ加速電圧を表したものである。
<熱脱離処理による現像>
実施例1と同様の方法で試料2−1を準備し、加速電圧10kV,ドーズ量400μC/cm2で、電子線を照射した。その後、真空炉中で、昇温条件60℃/分で1000℃まで温度を上げて現像を行った。その後、室温まで冷却した後、得られた試料のパターンを実施例1と同様の方法で測定したところ、30nmの深さで加工された。
しかしながら、加工深さが浅いため、より深いパターンを得るには、現像液による現像が望ましい。
<微細加工物の製造>
石英基板上にメチルシロキサンポリマーと有機溶媒とを含有するAccuglass SOG512B(ラサ工業社製)を300rpmで3秒間、3000rpmで10秒間スピンコートし、300℃60分間ベークした。更にもう1層、SOG512B(ラサ工業社製)を300rpmで3秒間、3000rpmで10秒間スピンコートし、300℃で60分間ベークして、試料3を作製した。試料3の膜厚は、1200nmであった。
これにより石英基板上に凹凸を有するSOG層を備える3次元モールドが得られた。形成された凹凸の加工深さを、段差測定器(Tencor Alpha−Step500;KLA−Tencor Co.製)を用いて測定した。その結果を図13に示す。
エッチング後の石英基板について、段差測定器(Tencor Alpha−Step500;KLA−Tencor Co.製)を用いて形状を測定したところ、SOG層の3次元階段構造に対応した石英の微細加工物(石英モールド)が得られていることが分かった。
<微細パターン成形品の製造>
実施例5で得られた石英モールドを成形用の型として用いて、微細パターン成形品を製造した。光硬化樹脂はPAK−01(東洋合成工業社製)を用い、インプリント圧力は、0.5MPa、紫外線照射量は1J/cm2とした。
図15に、得られた樹脂の微細パターン成形品のパターンを示す。図14の石英モールドのパターンに対応して忠実にパターンが転写されていることが分かる。
試料2−2を用いて以下の実験を行なった。
上記で得られた試料6−1に電子線を照射した。電子線照射には、走査型電子顕微鏡ERA−8800FE(エリオニクス社製)をパソコン上の描画パターンを露光できるように改造したものを用いた。
加速電圧を2kVに固定し、ビーム電流を1.6pAとし、ドーズ量を400μC/cm2で電子線を照射した。
電子線を照射後、試料6−1を、フッ酸緩衝液(HF:NH4F=1:1混合液)中に90秒間浸漬した後、純水でリンスした。
線幅の設計値が45nmにして形成されたレジストパターンの電子顕微鏡写真を図16に示す。
該パターンは、深さが140nm、線幅が140nmで加工されており、加工形状も良好である。このように、本発明の方法によると、精密かつ微細な深さと線幅を有する3次元モールドの形成が可能であることが分かる。
20 レジスト層
30 樹脂
40 ガラス
Claims (5)
- 基体上に複数の凹部が形成されたレジスト層を有する3次元モールドの製造方法であり、
基体上に、有機基を有するポリシロキサン系材料と有機溶媒とからなるレジストを塗布し、塗布したレジストを350℃〜550℃で、10分〜300分加熱してレジスト層を形成することにより、当該レジスト層を有する被加工体を形成する工程と、電子線の加速電圧及びドーズ量の一方を固定し他方を変化させて、前記レジスト層に電子線を複数回照射する照射工程と、電子線を照射した後の前記レジスト層をフッ酸緩衝液により現像して前記レジスト層に異なる深さの複数の凹部を形成する現像工程と、を有し、
異なる深さの複数の凹部は、各照射毎の加速電圧又はドーズ量の大きさに依存した加工深さを備え、
前記照射工程において、後方散乱を発生させず、10nm以内の深さ制御と、実際に形成された線幅と電子線を照射した幅との比が2.5以下となる線幅形成とを可能とするように、前記各加速電圧を1kV乃至3kVの範囲内で、かつ、前記各ドーズ量を20〜300μC/cm2 の範囲内で、各々選択して、各照射時の照射条件とすることを特徴とする、3次元モールドの製造方法。 - 前記照射工程の各照射毎に、電子線の加速電圧を50V以下の特定値の刻みで変えて、基体からの深さ階調を8nm以下の特定値の刻みで、レジスト層に複数の凹部を形成することを特徴とする請求項1に記載の3次元モールドの製造方法。
- 前記現像工程において、前記現像液による現像時間が、60〜300秒であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の3次元モールドの製造方法。
- 前記基体と前記レジスト層との間に接着層が設けられた被加工体を用いることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の3次元モールドの製造方法。
- 前記レジスト層の厚さが、20nm〜10μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の3次元モールドの製造方法。
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