JP5167480B2 - アレルギー予防方法又は治療方法、飲食品、並びに経口医薬品 - Google Patents

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Description

本発明は、アレルギー予防方法又は治療方法、飲食品、経口医薬品に関する。特に、経口的な投与により経皮的/経静脈的な投与とは異なる免疫応答を修飾するアレルギー予防方法又は治療方法、飲食品、経口医薬品に関する。
腫瘍増殖因子ベータ(Transforming Growth Factor−β:TGF-β)は、1980年代に同定された母乳中に多量に含まれる生理活性分子(サイトカイン)の一つであり、細胞の増殖・生存・分化などを制御する多機能性のサイトカインである。(非特許文献1)
TGF-βは、ハエ、カエル、マウス、ヒト等において遺伝子配列が非常によく保存されていること、体内のほぼすべての細胞にTGF-βの受容体が存在すること、人為的にTGF-βを欠如させたマウス(遺伝子ノックアウトマウス)が胎生期に死亡してしまうことなどから、生物の生存に必須な分子であると考えられている。
これまでの疫学的な研究により、母乳から摂取されたTGF-βの量と乳幼児期におけるアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の発症率が反比例すること(非特許文献2)、母親が妊娠ならびに授乳中にプロバイオティクスを摂取すると乳幼児のアレルギー疾患発症率は低下し、その結果は母乳中のTGF-β量と関連していることが報告されている。
また、疾患の予防/治療を目的として、TGF-βを経皮的/経静脈的に投与する研究は種々の動物疾患マウスにおいて行われており、実際に、ヒトの疾患の予防/治療を目的した臨床治験が行われている例もある。
特開平7−258115 "Transforming growth factor-beta(TGF-β) in human milk", Clin Exp Immunol Vol.94(1):220-224, 1993 Oct. "TGF-β in human milk is associated with wheeze in infancy", J Allergy Clin Immunol vol.112(4):723-728, 2003 Oct.
しかしながら、経皮的/経静脈的なTGF-βの投与による疾患の予防/治療効果は確定しておらず、疾患に対する作用の弱さやTGF-βの投与により惹起される全身的副作用など、医薬品として実用化されるまでには解決しなければならない課題が多く残されている。
花粉症,気管支喘息,アトピー性皮膚炎,アレルギー性鼻炎などをはじめとするアレルギー疾患は年々増加しており、社会問題にもなっている。
近年、乳幼児を中心に食物アレルギーも急増している。飲食物に含有されるアレルギー原因物質の摂取により湿疹や蕁麻疹を発症したり、重篤な場合にはアナフィラキシーショックにより死亡してしまうこともある。食物アレルギーの原因物質は、人それぞれであるが、牛乳、卵、小麦、米、そば、魚介類など身近な食物が多く、現代社会においてアレルギーの原因物質を完全に断った生活を送ることは困難である。
本発明者は、母乳からTGF−βの摂取量と乳児の喘息の発症数が反比例するという報告(非特許文献2)に着目し、TGF−βの経口的投与による食物アレルギー疾患の予防/治療を目的として実証的な研究を進めた。
これまで、経口から摂取されたタンパク質分子は胃腸内で分解され、その作用を全身的に及ぼすことはないと一般に考えられ、TGF−βに関しても十分な検証はなされていなかった。本発明者はモデル動物を用いて経口的なTGF-βの投与が免疫系に及ぼす影響について検証を行った結果、経口的に多量のTGF−βを投与した場合、TGF−βは分解されることなく、従来の経皮的/経静脈的な投与の場合とは異なる経口的な投与に特有な仕方で免疫応答を修飾することを見出した。
本発明は、TGF−βの経皮的/経静脈的な投与による全身的副作用や免疫不全などのトラブルなくアレルギー症状の予防/治療できるアレルギー予防方法又は治療方法、飲食品、並びに経口医薬品を提供することを課題とする。

従来の経皮的/経静脈的な投与の場合、アレルギー反応に関係するTh2型の免疫応答(IgE抗体の産生など)の抑制と共に、癌や感染症に対するTh1型の免疫応答(癌細胞や病原体への防御反応などの細胞性免疫)も抑制されることから、TGF−βの投与により免疫応答が全体的に抑制され、免疫不全状態となる恐れがあった。
今回、発明者は、食物アレルギーモデルマウスに対して経口的にTGF-βを投与し、全身免疫系に及ぼす作用について検証を行った。検証前の段階では、たんぱく質分子であるTGF−βは胃腸内で分解されてしまい、経皮的/経静脈的な投与のような免疫抑制作用は発揮することはないと予想されていた。しかしながら、実際は、経口的なTGF-βの投与の場合、アレルギー反応に関係するTh2型の免疫応答のみが選択的に抑制され、癌や感染症に対するTh1型の免疫応答は増強されるという、経皮的/経静脈的な投与の場合とは異なる免疫抑制作用を発揮した。これにより、たんぱく質分子でありながら経口的に投与されたTGF−βは胃腸内において分解されないこと、及び、経口的な投与によりTGF−βは特有の免疫応答を修飾することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のアレルギー予防方法又は治療方法は、投与対象体の体重に対して100μg/kg以上の腫瘍増殖因子ベータ(TGF−β)を経口投与することにより、Th2型の免疫応答を選択的に抑制することを特徴とする。
これによれば、Th2型の免疫応答が選択的に抑制されるから、アレルギー症状の発症を予防することができると共に、既に発症しているアレルギー症状を緩和又は治療することができる。
さらに、Th2型の免疫応答を抑制し、Th1型の免疫応答を維持又は増強することを特徴とするものにおいては、アレルギーの予防又は治療に加えて、癌や感染症をはじめ種々の疾患や感染症などの予防や治療に用いることができる。
ここで、TGF―βはヒト母乳中に多量に含有され乳児期に摂取して成長することから、ヒトは経口的に摂取されたTGF―βを代謝する経路を有していると考えられる。そのため、ヒトが幼児期に母乳から摂取するTGF―βの摂取量の範囲内については安全に経口投与することができると考えられる。
また、TGF−βは種を超えて保存性が高く、これまでの研究により異種間にいても相互に作用し得ることが確認されていることから、異種由来のTGF―βを経口的に投与した場合もヒト由来の者と同様の効果を得ることができると考えられる。しかしながら、本発明のアレルギー抑制剤及び治療剤,医薬品組成物,飲食品に用いられるTGF-βは、ヒト由来のTGF−βであるものが安全性の面では好ましい。
また、本発明のアレルギー予防方法又は治療方法は、食物アレルギーの原因物質の摂取と同時に経口投与することを特徴とする。これによれば、食物アレルギーの原因物質の摂取により惹起される湿疹や蕁麻疹、アナフィラキシーショックなどのアレルギー症状の発症を予防することができる。
本発明の飲食品は、腫瘍増殖因子ベータ(TGF-β)を所定の量で含有することにより、Th2型の免疫応答を選択的に抑制することを特徴とする食品、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、特定保健用食品、医薬部外品からなる群から選ばれるものである。これによれば、飲食品の摂取によりTGF−βが経口的に多量に摂取され、Th2型の免疫応答が選択的に抑制されるから、アレルギー症状の予防や緩和することができる。
さらに、Th2型の免疫応答を抑制し、Th1型の免疫応答を維持又は増強することを特徴とする飲食品においては、アレルギー予防や緩和の効果に加えて、癌や感染症をはじめとする各種疾患の予防,健康維持などに効果を発揮することができる。
また、本発明の飲食品は、食物アレルギーの原因物質を含有する食品等に腫瘍増殖因子ベータ(TGF-β)を所定の量で添加することを特徴とする。
食物アレルギーの原因物質を含有する飲食品に予め所定の量のTGF−βを混合/配合などの方法により添加しておくことにより、誤ってアレルギー原因物質を含有する飲食品を摂取した場合に、アレルギー症状の発症を予防することができる。特に、摂取により致死的なアレルギー症状であるアナフィラキシーショック症状などには有効である。
前記所定の量は、飲食品の種類や一日あたりの摂取量、摂取対象個体の年齢などを考慮して設定されるものであり、1日あたりのTGF−βの総摂取量が、摂取対象個体の体重に対して100μg/kg以上となるように設定するのが好ましい。特に、1日あたりのTGF−βの総摂取量が、摂取対象個体の体重に対して100μg/kg〜200μg/kgに設定するものが安全性の面で好ましい。
本発明の飲食品は、腫瘍増殖因子ベータ(TGF-β)を所定の量で含有することにより、Th1型の免疫応答を増強することを特徴とする食品、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、特定保健用食品、医薬部外品からなる群から選ばれるものである。これによれば、免疫力が増強されるから、癌や感染症をはじめとする各種疾患の予防,健康維持又は健康増進などの効果を発揮することができる。
本発明の経口医薬品は、腫瘍増殖因子ベータ(TGF-β)を所定の量で含有することにより、Th2型の免疫応答を選択的に抑制することを特徴とするアレルギー予防剤、アレルギー治療剤、免疫賦活剤、抗腫瘍剤、抗感染症剤、抗ウィルス剤からなる群から選ばれるものである。これによれば、経口的なTGF−βを多量投与により、Th2型の免疫応答が抑制されるから、アレルギー症状の予防や治療に用いることができる。
さらに、Th2型の免疫応答を選択的に抑制し、Th1型の免疫応答を維持又は増強することを特徴とする経口医薬品においては、アレルギー予防や緩和の効果に加えて、癌や感染症をはじめとする各種疾患の症状の予防や治療などに用いることができる。
また、本発明の経口医薬品は、腫瘍増殖因子ベータ(TGF-β)を所定の量で含有することにより、Th1型の免疫応答を増強することを特徴とする免疫賦活剤、抗腫瘍剤、抗感染症剤、抗ウィルス剤からなる群から選ばれるものである。これによれば、TGF-βの投与により免疫力が増強されるから、癌や感染症をはじめとする各種疾患の症状の予防や治療などに用いることができる。
前記所定の量は、投与対象体の年齢や体重、予防・治療対象の症状や疾患などを考慮して設定されるものであり、1日あたり又は1回あたりの投与量が、投与対象個体の体重に対して100μg/kg以上となるように設定するのが好ましい。1日あたり又は1回あたりの投与量は、投与対象個体の体重に対して100μg/kg〜500μg/kgに設定するものが好ましく、100μg/kg〜200μg/kgに設定するのが安全性の面において特に好適である。
本発明によれば、TGF−βを経口的に多量投与することにより、経皮的/経静脈的にTGF−βを投与する際にみられる副作用や免疫不全などのトラブルがなくアレルギー疾患の予防又は治療を行うことができる。また、アレルギーの原因物質との同時摂取することにより食物アレルギー症状の発症を予防することができる。
さらに、アレルギー症状、癌や感染症をはじめとする種々の疾患の予防や健康維持効果を有する飲食品や、アレルギー症状、種々の疾患の予防や治療に用いられる経口医薬品として利用することができる。
本発明は、投与対象体の体重に対して100μg/kg以上の腫瘍増殖因子ベータ(TGF−β)を経口投与することにより、Th2型の免疫応答を選択的に抑制することを特徴とするアレルギー予防方法及び治療方法である。さらに、前記TGF−βの経口投与により、Th2型の免疫応答を抑制し、Th1型の免疫応答を維持又は増強することを特徴とするアレルギー予防方法及び治療方法である。
ここで、前記TGF−βの経口投与量100μ/kg以上は、一日あたりのTGF−βの摂取量を示しており、これは発明者等の実験データに基づいて算出したものである。
アレルギー予防方法又は治療方法として有用なTGF−βの投与量は、投与対象体の体重に対して100μg/kg〜500μg/kgに設定するのが好ましい。特に、投与対象体の体重に対して150μg/kg〜250μg/kgに設定するのが好適である。
個体や採乳する時期によって大きな差があるが、母乳中に含まれるTGF-βの量:500 ng/ml〜1500 ng/mlと、授乳する乳児の体重、一日あたりの授乳量などから算出される体重に対するTGF―βの摂取量が最大200μg/kgであることから、投与対象体の体重に対して最大200μg/kg程度まではヒトに対して安全に経口的に投与することができると推定される。
本発明のアレルギー予防方法又は治療方法は、食物アレルギーの原因物質の摂取と同時に経口投与することを特徴とするが、前記原因物質と事実上同時に胃腸などの消化器系器官を通過するという条件を満たすことができれば、前記原因物質の摂取前に予め投与するものであっても、前記原因物質の摂取後に投与するものであってもよい。
また、本発明のアレルギー予防方法又は治療方法の対象はヒトだけでなく、母乳中にTGF−βを含有する哺乳動物に対しても用いることができると考えられる。
本発明は、腫瘍増殖因子ベータ(TGF-β)を所定の量で含有することにより、Th2型の免疫応答を選択的に抑制することを特徴とする食品、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、特定保健用食品、医薬部外品からなる群から選ばれる飲食品である。さらに、前記TGF-βの経口投与により、Th2型の免疫応答を抑制し、Th1型の免疫応答を維持又は増強することを特徴とする飲食品である。また、前記TGF-βの経口投与により、Th1型の免疫応答を増強することを特徴とする飲食品である。
具体的な飲食物としては、乳幼児用の人工ミルクや既成食品、ヨーグルト,乳飲料などの乳製品、菓子類、麺・穀類、インスタント食品、サプリメント、哺乳動物用の餌(ペットフード)などが考えられる。
また、食物アレルギーの原因物質を含有する飲食品としては、牛乳、ヨーグルトなどの飲料物、チョコレート、ビスケット、プリンなどの菓子類や、お好み焼き粉、小麦粉、餅などの粉類、蕎麦、うどんなどの麺類などのほか、卵、魚介類が考えられる。
前述のアレルギー予防方法又は治療方法と同様に、一日あたりの乳児のTGF−βの最大摂取量が200μg/kgであることから、一日あたりの総摂取量が、対象個体の体重に対して最大200μg/kgまでは飲食品として安全に摂取できると推定される。
本発明は、腫瘍増殖因子ベータ(TGF-β)を100μg/日服用〜100mg/日服用の範囲で含有することにより、Th2型の免疫応答を選択的に抑制することを特徴とするアレルギー予防剤、アレルギー治療剤、免疫賦活剤、抗腫瘍剤、抗感染症剤、抗ウィルス剤からなる群から選ばれることを特徴とする経口医薬品である。さらに、前記TGF-βの経口投与により、Th2型の免疫応答を抑制し、Th1型の免疫応答を維持又は増強することを特徴とする経口医薬品である。また、前記TGF-βの経口投与により、Th1型の免疫応答を増強することを特徴とする経口医薬品である。
経口医薬品の形態としては、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、懸濁剤などがあげられる。
前述のアレルギー予防方法又は治療方法と同様に、一日あたりの乳児のTGF−βの最大摂取量が200μg/kgであることから、一日あたりの又は一回あたりの投与量が、投与対象個体の体重に対して最大200μg/kgまでは医薬品として安全に経口投与できると推定される。
また、これまでの実験により、予防・治療効果が確認されているTGF−βの一日あたり又は1回あたりの投与量は、投与対象体の体重に対して100μg/kg〜500μg/kgの範囲についてであり、各疾患の予防・治療薬としての経口医薬品への応用が期待される。ただし、上述のように、ヒトに対する投与量として安全と推定される量は、投与対象体の体重に対して200μg/kgまでであるから、投与対象体の体重に対して200μg/kg〜500μg/kg又は500μg/kg以上のTGF−βの経口投与については、副作用などについて臨床的に十分検討を行う必要があると考えられる。
以下に、本発明の実施の形態について実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
*実施例1:TGF−βの多量投与による食物アレルギー症状の予防
<IgE抗体の産生抑制>
卵白アルブミン(ovalbumin:OVA)特異的T細胞受容体が遺伝子導入されたトランスジェニックマウス(DO11.10 mice)を用い、経口的なTGF−βの投与によるアレルギー症状の予防効果について検証を行った。
前記トランスジェニックマウス(DO11.10 mice)は、OVAを反復的に経口投与するとOVA特異的なIgE (免疫グロブリンE) 抗体が血中に産生され、OVAの静脈注射によりアナフィラキシーショックを誘導することができる食物アレルギーモデルマウスである。(Shida et al., J Allergy Clin Immunol vol.105:788, 2000)
前記食物アレルギーモデルマウス(DO11.10,週齢6〜8週,体重20〜30g)に対して、OVA:100mg(Sigma Chemical Inc.)+賦形剤と、OVA:100mg+TGF-β:5μg(R&D Inc.)とを一日おきに計6回反復して給餌を行った。最後の給餌から2日後(9日後)にそれぞれのモデルマウスと、コントロールとしてOVAの給餌を行っていないモデルマウスの計3匹の血清を採取し、IgE抗体の産生量をELISA法(enzyme linked immunosorbent assay法)により測定した。
図1(a)に示されるように、OVA+賦形剤を給餌したモデルマウスはIgE抗体が著しく上昇しているが、OVAと同時にTGF−βを給餌したモデルマウスの血清からはIgE抗体を検出することができなかった(ND:non ditectable)。これより、アレルギーを惹起するOVAと同時に経口投与されたTGF−βにより、IgE抗体の産生が抑制されたと考えられる。また、この結果は最後の給餌から9日経過後においても同様であることから、TGF−βによるIgE抗体の産生抑制は一過性のものではないと考えられる。
また、図1(b)には、受身皮膚アナフィラキシー反応法(passive cutaneous anaphylaxis:PCA法)を用いて血清中のOVA特異的IgE抗体の産生量を測定した結果を示しており、図1(a)のELISA法の結果と同様に、TGF−βによりOVA特異的IgE抗体の産生が抑制されていることが分かる。
<免疫応答関連分子の産生抑制>
図2に、IgE抗体以外の免疫応答に関連する5つの免疫応答関連分子(OVA特異的IgG抗体およびサイトカイン):(a)IgG1(イムノグロブリンG1),(b)IgG2a(イムノグロブリンGa),(c)IL-4(インターロイキン−4),(d)IFN-γ(インターフェロン−γ),(e)IL-12(インターロイキン−12)の血清中濃度ならびにマウス脾臓細胞における産生量について測定を行った結果を示している。
モデルマウスの血清中のOVA特異的IgG1抗体,IgG2a抗体の量をELISA法により光学濃度(OD unit)で評価したところ、Th2型の免疫応答(アレルギー反応など)に関与すると考えられるIgG1抗体については、図2(a)に示すように、TGF−βの同時投与によりIgEと同様に産生が抑制されているが、Th1型の免疫応答(癌や感染症に対する防御免疫など)に関与するとされるIgG2a抗体については、図2(b)に示すように、産生を抑制されないどことか2倍以上に産生量が増加するという結果が得られた。
また、TGF-βの投与により、IgE抗体を特異的に産生させるIL-4のマウス脾臓細胞における産生量については、図2(c)に示すように、IgG1抗体と同様に抑制され、抗ウィルス作用,免疫増強作用,抗腫瘍作用に関与するとされるインターフェロンγ(IFN-γ)や、NK細胞や細胞性免疫を活性化するとされるIL-12のマウス脾臓細胞における産生量については、図2(d)(e)に示すように、IgG2a抗体と同様に増強するという結果が得られた。
以上の結果より、TGF−βの多量投与により、Th2型の免疫応答に関与する生理活性分子の産生が選択的に抑制され、Th1型の免疫応答に関与する生理活性分子の産生が増強されることが明らかになった。
<抗TGF−β抗体による影響>
食物アレルギーモデルマウス(DO11.10,週齢6〜8週,体重20〜30g)に対して、1.OVA:100mg+賦形剤の給餌、2.(OVA:100mg+TGF-β:5μgの給餌)+IgG抗体(コントロール抗体)の皮下注射、3.(OVA:100mg+TGF-β:5μgの給餌)+抗TGF-β抗体(αTGF-β Ab)の皮下注射、を一日おきに計6回反復して給餌及び注射を行った。最後の給餌から2日後(9日後)にそれぞれのモデルマウスの計3匹の血清を採取し、IgE抗体の産生量をELISA法及びPCA法により測定した結果、IgG2a抗体の産生量をELISA法により測定した結果を図3に示している。
図3(a)(b)(c)に示されるように、皮下注射により投与された抗TGF-β抗体(αTGF-β Ab)により、経口TGF−β投与によるIgE抗体の産生抑制,IgG2抗体の産生の増強がいずれも阻害されていることがわかる。これより、経口投与され胃腸内から吸収・代謝されたTGF−βによりIgE抗体の関与するTh2型の免疫応答が抑制され、IgG2抗体の関与するTh1型の免疫応答が増強されていることを確認することができた。
以上の結果から、経口的に投与されたTGF-βは、胃腸で分解されることがなく、経皮的/経静脈的に投与されたTGF−βとは異なる経路で代謝されて免疫応答を修飾していると考えられる。
<アナフィラキシーショックの抑制>
アレルギー疾患モデルマウス(DO11.10,週齢6〜8週,体重20〜30g)に対して、OVA: 100mg+賦形剤、OVA:100mg+TGF-β:5μg、TGF-β:5μgを一日おきに計6回給餌した。最後の給餌から2日後に、経静脈的にOVAを注入してアナフィラキシーショックを生じるかどうかを観察した結果を表1に示している。
OVA:100mg+賦形剤、OVA:100mg+TGF-β:5μgの条件については、それぞれ6匹のモデルマウスについて実験を行い、コントロール(給餌なし)、TGF-β:5μgの条件については、それぞれ4匹のモデルマウスについて実験を行った。
OVAのみを投与したマウスの大部分が「++」〜「+++」レベルの致死的なアナフィラキシーショックを生じているのに対して、TGF-βを経口投与したモデルマウスは、「−」〜「+」レベルのほとんどショックを起こしていない状態に抑制されることが明らかになった。
これより、アレルギーの原因物質と同時に経口的にTGF−βを多量に投与することにより、重篤なアレルギー症状であるアナフィラキシーショックを抑制することができることが明らかになった。
<経皮的/経静脈的な投与との比較>
従来の経皮的/経静脈的な投与との比較実験として、アレルギー疾患モデルマウス(DO11.10,週齢6〜8週,体重20〜30g)に対して、OVA:100mgの給餌+TGF-β:5μgの皮下注射を一日おきに計6回給餌及び注射を行った。最後の給餌から2日後に、血清IgE抗体の産生量をPCA法により測定した結果、血清IgG2a抗体の産生量をELISA法により測定した結果を図4に示している。
図5(a)のTGF-βの投与により血清IgE抗体の産生が抑制されているのは経口投与の場合と同じであるが、経口投与の場合は、図4(b)に示されるように、増強されていた血清IgG2a抗体の産生も抑制されている。つまり、経皮的なTGF−βの投与の場合は、アレルギー反応(Th2型の免疫応答)と共に、感染症や癌に対する防御免疫(Th1型の免疫応答)抑制される。これより、免疫不全状態に陥ってしまう恐れがある。
一方、経口的なTGF−βの投与は、生命維持に必要な免疫応答力を低下(Th1型の免疫応答を抑制)することなく、アレルギー反応(Th2型の免疫応答)のみを抑制することができる。これより、経皮的/経静脈的にTGF−βを投与する際にみられる副作用や免疫不全などのトラブルがなくアレルギー疾患の予防又は治療を行うことができる。
また、TGF−βの経口投与により細胞性免疫に関与するTh1型の免疫応答が増強されることから、アレルギー症状、癌や感染症をはじめとする種々の疾患の予防や治療にも有効であると考えられる。
*実施例2:アレルギー症状の治療
<アトピー性皮膚炎の治療>
実際にアトピー性皮膚炎を発症しているモデルマウス(DO11.10,週齢6〜8週,体重20〜30g)に、マウス一匹あたりTGF-β:5μg/回を1日おきに計3回にわたって経口投与を行った。投与後1週間目のTGF-βの経口投与前後における臨床的な重症度レベル(Clinical Skin Severity)と、血清中のIgEレベルを図5に示している。
TGF-βの経口投与したモデルマウスは、図5(a)に示されるように、投与前に比べてアトピー性皮膚炎の炎症状態が緩和されること、図5(b)に示されるように、IgEレベルも低下していることが明らかになった。また、TGF−βの経口投与による副作用などの症状はモデルマウスには見られなかった。
これより、経口的にTGF−βを多量に投与することにより、既にアレルギーを発症しているアレルギー症状を治療・緩和することができる。
実施例1の経口TGF−βによる血清IgE抗体の産生抑制を示すグラフである。 経口TGF−βが生理活性分子(a)IgG1抗体,(b)IgG2a抗体,(c)IL-4, (d)IL-12, (e)IFN-γの産生に与える影響を示すグラフである。 経静脈的に投与された抗TGF−β抗体が経口TGF−βによる免疫系への作用に与える影響を示すグラフである。 経静脈的に投与されたTGF−βによる(a)血清IgE抗体,(b)血清IgG2抗体の産生抑制を示すグラフである。 実施例2の経口TGF−βによる(a)アレルギー症状(皮膚炎)の治癒効果ならびに(b)IgE抗体の産生抑制を示すグラフである。

Claims (12)

  1. TGF−βを含む経口アレルギー予防剤であって、
    同時に摂取した食物アレルギー源により引き起こされるアレルギーを予防するためのアレルギー予防剤。
  2. TGF−βを含む経口アレルギー治療剤であって、
    同時に摂取した食物アレルギー源により引き起こされるアレルギーを治療するためのアレルギー治療剤。
  3. TGF−βを含む経口抗アレルギー剤であって、
    同時に摂取した食物アレルギー源により引き起こされるアレルギーに対する経口抗アレルギー剤。
  4. TGF−βを含むアレルギー予防剤である経口医薬品であって、
    同時に摂取した食物アレルギー源により引き起こされるアレルギーを予防するため
    Th2型の免疫応答を選択的に抑制するためのアレルギー予防剤である経口医薬品
  5. TGF−βを含むアレルギー治療剤である経口医薬品であって、
    同時に摂取した食物アレルギー源により引き起こされるアレルギーを治療するため
    Th2型の免疫応答を選択的に抑制するためのアレルギー治療剤である経口医薬品
  6. TGF−βを含む経口抗アレルギー剤である経口医薬品であって、
    同時に摂取した食物アレルギー源により引き起こされるアレルギーに対し、
    Th2型の免疫応答を選択的に抑制するための経口抗アレルギー剤である経口医薬品
  7. 非ヒト哺乳動物に用いられることを特徴とする請求項1に記載のアレルギー予防剤。
  8. 非ヒト哺乳動物に用いられることを特徴とする請求項2に記載のアレルギー治療剤。
  9. 非ヒト哺乳動物に用いられることを特徴とする請求項3に記載の抗アレルギー剤。
  10. 非ヒト哺乳動物に用いられることを特徴とする請求項4に記載のアレルギー予防剤である経口医薬品。
  11. 非ヒト哺乳動物に用いられることを特徴とする請求項5に記載のアレルギー治療剤である経口医薬品。
  12. 非ヒト哺乳動物に用いられることを特徴とする請求項6に記載の抗アレルギー剤である経口医薬品。
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