JP5166360B2 - マイクロ反応装置を用いた細胞運動評価方法 - Google Patents

マイクロ反応装置を用いた細胞運動評価方法 Download PDF

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Description

本発明は、細胞組織の機能や薬剤の効用を解析するために、細胞組織等の生体試料に薬剤を導入し、細胞の遊走又は浸潤などの細胞運動を観察する方法に関するものである。
細胞が何らかの化学物質による刺激を受けて方向性をもって運動する現象は、細胞遊走、浸潤又は走化性と呼ばれており、生体内の様々な器官や形態の構成、炎症、さらには癌の浸潤又は転移等に関連があるといわれている。この現象は、細胞が化学物質又はその濃度勾配を検知して、移動を開始することであると考えられている。
そこで、これらの細胞の移動現象を観測する際には、化学物質の濃度勾配を作製し、その環境に細胞を配置した後に、細胞の移動を観測する手法が用いられている(非特許文献1参照。)。
濃度勾配の作製方法は、チップを用いない方法と、用いる方法に分けることができる。
チップを用いない方法では、一般的には、市販のボイデンチャンバー法を用いることが多い。この手法は、細胞の移動を誘引する物質を導入した容器にポアサイズが数μm(例えば、3μm、5μm、8μmなど)のポリカーボネート製メンブレンインサートを挿入して、メンブレンの上下で培養環境を異ならせる。そして、メンブレンの上部に細胞を導入した後、メンブレンの上下で異なる培養環境下におかれた細胞の移動性を下部の容器に移動した細胞数を数えることで評価するものである。
一方、チップを用いる方法は、より少数の細胞を対象とし、移動中の細胞をより簡便に観察する手段を提供する手法であり、μTAS(Micro Total Analysis System)又はMEMS((Micro Electro-Mechanical Systems)技術などの微細加工技術により製作されたチップデバイスを用いたものが知られている。
第1のチップデバイスの例は、チップ内に化学物質の定常的な濃度勾配を形成して細胞に作用させるものである(非特許文献2,3参照。)。
第2のチップデバイスの例は、マイクロインジェクタを設けた小さな通路を介して配置された2つの微量チャンバーの一方に細胞を入れ、他方に細胞誘引物質を入れ、その通路のマイクロインジェクタを開けることにより細胞の入ったチャンバーに細胞誘引物質の濃度勾配を作製して細胞の移動を観察するものである(非特許文献4参照。)。そこでは、具体的には、ケモカイン(CXCL8/IL8)に対する好中球の遊走を観測している。
第2のチップデバイスの濃度勾配は、細胞誘引物質が無限大に存在すると見なせる領域からゼロの領域に向かって形成される。
これらのチップデバイスを用いることで、ボイデンチャンバー法に比べて少量の細胞の分析や効率的な薬剤試験を実現することができ、さらには移動中の細胞をより簡便に観察することもできる。
特開2004−361205号公報 実験医学Vol.24, No.13,pp.173 -179, 2006 D. Zicha, et al., Journal of Cell Science, 99, pp.769-775 (1991) S. kanegasaki, et al., Journal of Immunological Methods, 282, pp.1-11 (2003) C. W. Frevert, et al. Lab Chip, 6, pp849-856 (2006) E.Ashihara, BIO Clinica VOL22, No.12, pp24-30 (2007)
一般的に細胞遊走を誘引すると言われているケモカインと呼ばれる物質の分子量は8〜14kDaである。ケモカインやそれより大きい分子量をもつタンパク質などの物質は、拡散速度がそれほど速くないため濃度勾配を維持することが容易である。そのため、分子量の大きいケモカインやタンパク質などの物質による細胞遊走の誘引を観察することは、ボイデンチャンバー法によっても上記のチップデバイス法によっても実行することができる。
一方、例えば脂質など、分子量がケモカインよりも1桁程度小さい物質(分子量にして約1000以下)はすぐに拡散してしまうために濃度勾配を維持することは難しく、ボイデンチャンバー法や上記のチップデバイス法によっては細胞遊走測定が困難であった。
また、生体内で化学物質が細胞に作用する環境を考えると、ボイデンチャンバー法による環境とは全く異なることは容易に想像がつく。第1のチップデバイス法のような定常的な濃度勾配が存在する環境とも異なる。さらに、第2のチップデバイス法のように無限大と見なせる化学物質量の供給源が存在する環境とも異なる。
本発明は、生体内に類似した微小環境中で、近傍に存在する細胞が分泌した液性因子によって刺激を受けた別の細胞が移動する現象を観測する方法を提供することを目的とするものである。
生体内に類似した微小環境を擬似的に作製するために、体積の小さい微小反応室を用い、周囲からの微量物質の導入を達成するためにマイクロインジェクタを使用する。マイクロインジェクタにはデッドボリュームが小さいものを用いる。
すなわち、本発明で使用する反応装置は、反応室は容積が1μL以下のものであり、細胞懸濁液を収容することができ、下底面又は上底面の少なくとも一方が顕微鏡観察可能な透明材質にてなる反応室に、分泌物質相当物を含む試薬を反応室に供給する試薬供給流路からマイクロインジェクタを介して試薬を供給するようにする。そのマイクロインジェクタは反応室と試薬供給流路の間に配置され、試薬供給流路の液を所望の液に置換するための流路を備えることによりデッドボリュームを小さくしたものであり、任意の時間だけ開くことのできるものである。マイクロインジェクタは制御部によって制御され、制御部は反応室内に細胞懸濁液が満たされた状態で所定量の試薬を反応室内に供給して細胞に対して分泌物質相当物の非定常的な濃度勾配を形成するようにマイクロインジェクタを所定時間だけ開くように制御する。
本発明では、マイクロインジェクタのデッドボリュームが少なく、遊走などを測定したい細胞の周辺の微小部分への試薬の導入が可能になる。反応室内の液量に比して小さな体積の誘引物質を注入可能であることから拡散により急峻な濃度勾配の作製が容易である。拡散により濃度勾配はいずれ平衡化するが、誘引物質を小さな体積で導入することにより急峻な濃度勾配を作製するので、拡散により濃度が平衡化するまでの時間を長く確保することができ、低分子量の誘引物質による細胞遊走の観測が可能になる。
このことは、遊走を測定したい細胞の近傍に存在する細胞からの液性因子の放出を模擬的に再現することを可能にする。また、微量体積の反応室内では対流などが起こりにくく、放出された液性因子が生体内に近い状態で拡散して目的細胞に到達して刺激を与えることが可能となる。
遊走を測定したい細胞の近傍とは、例えば細胞の10〜100倍程度、例えば300μmから1mm、の距離だけ離れた位置であり、そのような位置にある細胞に別の細胞による極微量の分泌現象を再現する。
制御部はマイクロインジェクタから反応室に供給される1回あたりの試薬量が極微量になるようにマイクロインジェクタの開閉動作を制御するものである。その好ましくは、1回あたりの試薬量は100nL以下であり、さらに好ましくは数nLである。その分泌量は1細胞あたり0.01〜0.1pLとされているので、それに近づけるような微量制御が好ましい。
本発明は細胞遊走のみならず、細胞浸潤を含む一般的な細胞の移動現象全般に応用できる。細胞の移動現象は、生体内の様々な器官や形態の構成、炎症、さらには癌の浸潤・転移等に関連があるといわれており、多くの生理・病理的な過程において重要な現象である。これらの現象の解明を目指す研究、それを基にした薬剤開発などに展開できる。
細胞遊走、浸潤の誘引物質はこれまでケモカイン、サイトカインなどの分子量8kDa以上の物質について主に研究されてきたが、本発明によれば、さらに、脂質などの低分子量の物質についても研究することが可能となり、スクリーニング範囲が飛躍的に増加する。
一実施例で使用するマイクロ反応装置を表わす図であり、(A)は一部をブロック図で表わした斜視図、(B)は(A)のA−A線位置での断面図である。 マイクロ反応装置の動作を示す断面図である。 反応室部分を製造する方法を示す工程断面図である。 反応室への試薬導入を示す概略斜視図である。 反応室での細胞の移動を示す画像であり、(a)は実施例、(b)は比較例である。 細胞遊走の指標を示す概念図である。 細胞遊走の解析結果を示す図であり、(a)は実施例、(b)は比較例である。 従来のボイデンチャンバー法によるIPP濃度と遊走の相関を調べた結果を示すグラフである。
図1は一実施例で使用するマイクロ反応装置を示したものであり、(A)は概略斜視図、(B)はそのA−A線位置での断面図である。
基体20にはエッチングにより反応室22が形成され、反応室22につながる流路として、反応室入口を兼ねる流体入口36から反応室22に試薬を供給する試薬供給流路28、細胞を含んだ細胞懸濁液を反応室22に供給する細胞供給流路46、及び反応室22の液を排出する排出用流路30が形成されている。
基体20としては、シリコン基板のほか、合成石英ガラス基板、パイレックス(登録商標)ガラス基板、その他のガラス基板なども用いることもできる。反応室22は基体20を貫通する空洞のウエルとして形成されている。
反応室22の上部には基体20の表面部分の一部がエッチングされずに残された残存部分32が設けられている。その残存部分32には試薬供給流路28からの試薬の導入を制御するマイクロインジェクタとしてマイクロバルブ41が形成されている。マイクロバルブ41は反応室22の上部の基体残存部分32に反応室入口を兼ねる流体入口36を備え、反応室上から離れた位置に流体排出口42を備えている。反応室22への流体入口36は基板の残存部分32に垂直方向の穴として形成されている。
試薬供給流路28は基板中の流路を介して基体上面の試薬供給口24に接続されている。
マイクロバルブ41の流体排出口42は基体20内の流路を介して基体上面の排出口44につながっている。
マイクロバルブ41は流体入口36を開閉するダイヤフラム41aと、流体排出口42を開閉するダイヤフラム41bを備えている。ダイヤフラム41aと41bはそれぞれ独立して開閉できるように設けられている。ダイヤフラム41a,41bのそれぞれに駆動用ガスを供給するために基体上面にガス供給口38a,38bがそれぞれ設けられ、それぞれのガス供給口38a,38bから流路を経てダイヤフラム41a,41b上のガス室に駆動用ガスが独立して供給されるようになっている。
ダイヤフラム41a,41bとなる薄膜としては、PDMS(ポリジメチルシロキサン)のほか、シリコーン樹脂膜、フッ素アモルファス樹脂(例えば、CYTOP:旭硝子株式会社製)などを用いることができ、その厚さは数十μm〜数百μmが適当である。
反応室22の細胞入口につながる細胞供給流路46は基板中の流路を介して基板上面の細胞導入口47に接続されている。
反応室22につながる排出用流路30は基板中の流路を介して基板上面の液排出口26に接続されている。
マイクロバルブ41のダイヤフラム41a,41b上に空気室を形成するとともに、基体20の上面に試薬供給口24、細胞導入口47、液排出口26、排出口44及びガス供給口38a,38bとなる開口を設け、ガス供給口38a,38bからダイヤフラム41a,41b上の空気室にマイクロバルブ駆動用のガスを供給するための流路を形成するために、基体20の上面に上部基板40が接合されている。上部基板40は例えばPDMSによる樹脂成型品である。
基体20の裏面側は透明ガラス基板21、例えばパイレックスガラス(登録商標)が接合され、裏面側から反応室22内を光学的に観測できるようになっている。ガラス基板21の厚さは特に限定はされないが、顕微鏡観察を行なうことを目的とする場合には、顕微鏡観察に適した厚さ、例えば0.17mm程度のものを使用するのが好ましい。
試薬供給流路28にはシリンジポンプで駆動されるマイクロシリンジ25が接続され、マイクロシリンジ25には試薬又は細胞を含まない細胞培養液が入れられる。
細胞供給流路46の供給口47にはシリンジポンプで駆動されるマイクロシリンジ48が接続され、マイクロシリンジ48には細胞を含んだ細胞懸濁液が入れられる。
駆動用ガス供給口38a,38bにはそれぞれのマイクロバルブを駆動するための駆動用ガスを供給するためのバルブ制御圧力コントローラ39a,39bが接続される。駆動用ガスとしては、空気のほかに窒素その他のガスを用いることができる。
制御部45は専用のコンピュータ又は汎用のパーソナルコンピュータにより実現され、マイクロシリンジ25のシリンジポンプ、マイクロシリンジ48のシリンジポンプ、及びバルブ制御圧力コントローラ39a,39bの駆動を制御し、反応室22内に所定数の細胞を収容するとともに、反応室22内に収容された細胞に対して試薬に含まれる分泌物質相当物の濃度勾配を形成することができるように、所定量の試薬を反応室22に導入する。
この反応装置におけるマイクロバルブ41の動作を図2により説明する。
(A)は細胞培養液又は試薬を反応室22に供給するときのマイクロバルブ41a,41bの動作であり、ダイヤフラム41aには駆動用ガス圧は加えられず、ダイヤフラム41bに駆動用ガス圧が加えられる。これにより供給口36が開けられ、流体排出口42が閉じられる。試料供給流路28から矢印のように供給される細胞培養液又は試薬が反応室入口36から反応室22内に導入される。
(B)は試薬交換のときなど、例えば試薬供給流路28に残留している細胞培養液を試薬と置換するためのパージモードを示したものである。このときダイヤフラム41a,41bは、(A)とは逆にダイヤフラム41a上のガス室に駆動用のガス圧が与えられて供給口36が閉じられ、ダイヤフラム41b上のガス室には駆動用のガス圧が与えられずに流体排出口42が開いた状態となる。試薬を供給すると、流路28に残留していた細胞培養液は流体排出口42から排出され、試薬供給流路28は試薬で置換される。
この実施例の反応装置は、例えば特許文献1に記載されている以下の方法により製造することができる。その製造方法を図3により説明する。ただし、この製造方法は一部簡略化して示している。
反応室や流路は、シリコン基板にフォトリソグラフイーとデイープRIE(反応性イオンエッチング)により形成する。
(A)厚さが300μmのシリコン基板20にドライエッチング時のマスクとなるシリコン酸化膜50を熱酸化により1μmの厚さに形成する。
(B)両面アライナーを用いたフォトリソグラフイーによりレジストパターンを形成し、そのレジストパターンをマスクとしてフッ酸を用いた酸化膜エッチングにより、酸化膜50をパターニングする。このとき、基板20の上面ではマイクロバルブと反応室の上部開口形状を決定する酸化膜パターン50aを形成し、基板20の下面では試薬供給流路の形状が決定されるように酸化膜パターン50bを形成する。
(C)シリコン基板上面にフォトリソグラフイーにより、反応室の上部開口と、マイクロバルブにおける流体入口36と試薬供給流路28につながる口の形状を決定するフォトレジストパターン52を形成する。
次に、このときのフォトレジストパターンをマスクとして、シリコン基板20をICP(誘導結合プラズマ)−RIEを用いてドライエッチングにより50μm程度の深さにエッチングする。
(D)フォトレジスト除去後、工程(B)でバターニングした酸化膜パターン50aをマスクにしてCCP(Capacitive Coupling Plasma)−RIEを用いて20μm程度の深さにドライエッチングを行い、マイクロバルブ形状を形成する。
(E)次に、シリコン基板20の下面にフォトリソグラフイーにより、反応室の下面からの貫通穴の形状と試薬供給流路の基板厚さ方向の形状を決定するフォトレジストバターン54を形成する。
次にこのフォトレジストバターン54をマスクとしてシリコン基板20をICP−RIEを用いてドライエッチングする。
(F)フォトレジスト除去後、酸化膜パターン50a,50bをマスクとしてICP−RIEを用いてドライエッチングを行う。このエッチングで、反応室上部の一部32を除いた部分が貫通し、マイクロバルブ41が反応室22の上部にせり出した形状が実現される。また同時に試薬供給流路28が形成される。
(G)このように形成されたシリコン基板22の下面にパイレックスガラス(登録商標)板22を陽極接合する。
(H)シリコン基板20の上面にマイクロバルブのダイヤフラム41a,41bとなるPDMS薄膜を接合する。PDMS薄膜の接合は、例えば次のように行なう。まず、PDMS(例えば、Sylgard 184:Dow Corning社(米)の製品)をポリエステル膜やPET(ポリエチレンテレフタレート)膜などの樹脂膜上にスピンコート法により30μm程度の厚さに形成する。そのPDMS薄膜を60℃で30分間加熱処理する。PDMSはこの加熱処理では完全には硬化しない。次にそのPDMS薄膜をシリコン基板20の上面に貼りつけ、105℃で1時間加熱処理してPDMSを完全に硬化させることによりPDMS薄膜をシリコン基板20の上面に接合する。その後、PDMS薄膜を形成していた樹脂膜を剥離する。
次に、PDMS膜上に、ダイヤフラム41a,41b上の駆動用ガス室、そのガス室にマイクロバルブ駆動用のガスを供給するための流路、そのガス供給用流路につながるガス供給口、試薬供給口、細胞導入口、液排出口及び排出口が形成されたPDMSによる樹脂成型品40を貼り合せる。これにより、反応装置が完成する。
次に、実施例の反応装置を用いて細胞遊走を観測した例を説明する。遊走誘引物質に対するγδT細胞と呼ばれる免疫担当細胞の遊走を顕微鏡観察した。γδT細胞自体については、例えば非特許文献5に記載されている。γδT細胞が遊走するのは、その標的となる癌細胞が遊走誘引物質を分泌しているからであると考えられる。そこで、γδT細胞の遊走誘引物質として脂質IPP(Isopentenyl pyrophosphate;分子量246.092)を用いた。
反応室22の体積を240nLとした反応装置を使用した。
反応室22への細胞導入に先立ち、細胞を含まない細胞培養液で反応室22を満たす。そのために、マイクロバルブ41を図2(A)の状態にし、細胞培養液の入ったマイクロシリンジ25をシリンジポンプで制御して試薬供給流路28から反応室22に細胞培養液を供給して反応室22を細胞培養液で満たす。その後、試薬供給流路28に接続するマイクロシリンジ25を試薬の入ったものに交換し、マイクロバルブ41を図2(B)の状態にし、マイクロシリンジ25をシリンジポンプで制御して試薬供給流路28に残っている細胞培養液を試薬で置換する。
次に、反応室22に細胞を導入する。細胞導入は、細胞導入口47に細胞懸濁液を入れたマイクロシリンジ48をつなぎ、これをシリンジポンプで制御する。細胞懸濁液が反応室22に導入されるにつれて反応室22から溢れた反応培養液は排出用流路30を経て液排出口26から排出される。所望の細胞数を反応室22へ導入するには、反応室22の体積から細胞懸濁液の濃度を調整すればよい。本実施例では反応室22の体積が240nLであるので、例えば細胞濃度を5×105個/mLとすれば120個の細胞が導入される。
次に試薬を導入する。マイクロバルブ41を図2(A)の状態にし、試薬供給流路28に接続したマイクロシリンジ25をシリンジポンプで制御して試薬を反応室22に供給する。例えば240nL/minの流速で6秒間送液すると24nLの試薬が導入され、同量の細胞培養液が液排出口26から排出される。試薬は、0.2%FCS(牛胎児血清)中にIPP原液(200μg/mL)を溶解したもので、0.2%FCS中のIPP原液(200μg/mL)濃度が1容量%のものを使用した。
模式的に示すと、図4に示されるように、反応室22内にγδT細胞70を導入した後、マイクロインジェクタ41から反応室22へ遊走誘引物質の脂質IPPを含む試薬を微量導入する。このことは、反応室22への入口36の位置に癌細胞があって、その癌細胞から分泌された誘引物質が反応室22に微量導入されたことに相当する。そのときのγδT細胞70の遊走を顕微鏡60により観察する。
培養室である反応室22は円筒型で、底面の直径が1mm、高さが300μmで、容積は240nLで非常に小さい。マイクロインジェクタ41から24nLの試薬をパルス的に注入する。
この実施例によれば、細胞遊走の観察において下記の利点を生む。
(1)反応室22が非常に小さいので、顕微鏡照明による熱照射に起因する対流に代表される「流れ」の影響を受けにくい。
(2)細胞が分泌した物質のごく近傍(数100μm)における濃度分布が再現できる。
また、その濃度分布が時間的に変化する過渡現象も再現できる。
観測結果を図5に示す。(a)は反応室22に細胞懸濁液が導入された状態でIPPを注入した場合、(b)は対照実験としてIPPに代えて培地(0.2%FCS含有)を注入した場合である。図中に多数点在する点は細胞であり、各点から延びる線は細胞の移動軌跡を示す。IPPを導入した(a)では、幾つかの細胞が注入口を目指して遊走しているのに対して、対照実験として培地を注入した(b)では細胞はランダムな動きしかしていないことがわかる。
図5で得られたγδT細胞の遊走を定量的に解析するために、細胞の軌跡と速度分布を評価した。その際の指標として、下記の3つの値を用いた。
(1)遊走速度: V=d/Δt、
(2)遊走方向指数(Chemotaxis Index): CI=Δx/d
(3)有効遊走指数(Effective Chemotaxis Index): ECI=V×CI
ここで、d,Δxは、図6に示されるように、dは遊走開始前と測定最終時の細胞位置間距離、Δxはdの濃度勾配方向成分である。また、Δtは測定時間である。遊走方向指数CIは注入口方向への一致度を意味し、有効遊走指数ECIは注入口へ向かう速度成分を意味する。
この指標を用いて解析した結果を図7に示す。まず、図7上側のγδT細胞の遊走速度V分布図をみると、IPP注入(「誘引物質あり」)と対照実験(「誘引物質なし」)との間に有意差があることがわかる。図7下側の遊走速度Vの平均値のグラフにも現れている。有効遊走指数ECIで比較するとその差はさらに顕著になる。図7上側のECI分布図からもわかるが、図7下側の有効遊走指数ECIの平均値のグラフではより一層明瞭であり、誘引物質がない場合にはECI平均値はゼロである。これは、対照実験でのランダムな動きが方向性指標CIで明確に数値化され、その結果が有効遊走指数ECIに反映しているためである。その結果、遊走速度Vだけの場合と比較して、方向性指標CI及び有効遊走指数ECIでは本来遊走速度とみなすべきではないランダムな動きの成分が除去されて、解析の精度が向上した。方向性指標CI又は有効遊走指数ECIを使用することにより、細胞が活性化されてランダムな動きも活発になる現象と遊走の切分けも可能になる。
以上より、チップ中のマイクロインジェクタにより微量定量導入した誘引物質IPPに対するγδT細胞の動きを定量的に解析した結果、γδT細胞の遊走を観測できるシステムを構築できた。
一般的に、誘引物質の濃度勾配と細胞遊走には関連があることが多い。今回の遊走誘引物質の候補として用いた脂質IPPは低分子であり、拡散が速いため癌細胞の近傍に短時間しか濃度勾配が持続しない。すなわち、濃度勾配の情報が失われやすい。実際、図8に示すように、ボイデンチャンバー法による実験では、IPPによるγδT細胞の遊走能亢進は確認されなかった。
すなわち、図8の左端のデータは細胞培養液0.2%FCSのみの場合で、IPPを含んでいない。IPP濃度は0.2%FCS中のIPP原液(200μg/mL)濃度(容量%)である。縦軸は全細胞中の遊走した細胞の割合(%)を示したものであり、IPP濃度と細胞遊走との間に相関関係はみられない。
一方、チップを用いた実施例の24nLの微量注入により、細胞が分泌した物質の極近傍(数100μm)における誘引物質の拡散が再現でき、距離及び時間が短い領域での観察が可能となった。このことにより、従来法では観測されなかった低分子IPPによるγδT細胞の遊走能亢進が観測できた。
本発明は細胞遊走のみならず、細胞浸潤を含む一般的な細胞の移動現象全般を観察するのに利用することができる。
20 基体
21 透明ガラス基板
22 反応室
28 試薬供給流路
30 排出用流路
32 残存部分
36 流体入口
38a,38b マイクロバルブ駆動用ガス供給口
40 上部基板
41 マイクロバルブ
41a,41b ダイヤフラム
42 流体排出口

Claims (2)

  1. 容積が1μL以下であり、細胞懸濁液を収容することができ、下底面又は上底面の少なくとも一方が顕微鏡観察可能な透明材質にてなる反応室と、
    分泌物質相当物を含む試薬を前記反応室に供給する試薬供給流路と、
    前記反応室と試薬供給流路の間に配置され、試薬供給流路の液を所望の液に置換するための流路を備え、任意の時間だけ開くことのできるマイクロインジェクタと、
    前記反応室内に細胞懸濁液が満たされた状態で所定量の試薬を反応室内に供給して細胞に対して前記分泌物質相当物の非定常的な濃度勾配を形成するように前記マイクロインジェクタを所定時間だけ開く制御部と、を備えたマイクロ反応装置を用い、
    試薬として分泌物質相当物を含むものを用い、
    前記反応室内に細胞懸濁液が満たされた状態で、前記制御部により前記マイクロインジェクタを所定時間だけ開いて前記所定量の試薬を前記反応室内に供給することにより、細胞に対して前記分泌物質相当物の非定常的な濃度勾配を形成し、
    前記濃度勾配の存在下において前記反応室の透明材質にてなる下底面又は上底面を介して顕微鏡により細胞の運動を観察し、以下の3つの指標
    遊走速度V(=d/Δt)、
    遊走方向指数CI(=Δx/d)、及び
    有効遊走指数ECI=V×CI
    のうちの少なくとも1つを用いて細胞の運動を評価する細胞運動評価方法
    ただし、dは遊走開始前と測定最終時の細胞位置間距離、Δxはdの濃度勾配方向成分、Δtは測定時間である。
  2. 前記3つの指標のうちのVのほかに、CIとECIの一方又は両方を用いて細胞の遊走を評価する請求項1に記載の細胞運動評価方法。
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