JP5165186B2 - ポリエステル樹脂及び該樹脂の製造方法 - Google Patents

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Description

ポリエステル樹脂、中でもポリエチレンテレフタレート樹脂は、機械的強度、化学的安定性、ガスバリア性、衛生性等に優れるためフィルム、ボトル等の各種用途に使用されている。なかでも各種飲料用のボトル等の中空成形体容器としての需要は、近年、その成長が著しい。
ボトル等の中空成形体は、通常、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂からプリフォームを射出成形し、そのプリフォームを再加熱して軟化させた後、延伸ブロー成形することにより製造されている。
加熱殺菌充填を必要とするボトルにおいては、延伸ブロー成形を行う際に、ブロー金型を加熱しておくことによってボトルにヒートセットを施し、延伸による分子鎖の配向結晶を固定化し、耐熱性を発現させている。しかしながら、プリフォームを形成する射出成形等の溶融成形時に樹脂中に副生した環状三量体(シクロトリエチレンテレフタレート)等が、延伸ブロー成形時及びヒートセット時に金型表面へ移行して金型を汚染し、この金型汚染が得られるボトル表面に転写されてボトルの表面平滑性が損なわれ、透明性が劣るものとなり、又、金型清掃のために生産性が大幅に悪化するという問題があった。
そこで、このような金型汚染を改善するために、該樹脂をリン化合物と接触させる方法が提案されている。例えば、特許文献1では、固相重縮合したポリエチレンテレフタレート樹脂のペレットを濃度1ppm以上のリン酸水溶液と接触させることからなるポリエチレンテレフタレートの処理方法が開示されている。しかしながら、この方法では環状三量体等の副生の抑制効果が必ずしも十分でなく、十分な効果を得るためには比較的高温の処理温度を必要とし、他方室温で処理した場合には長時間の処理をしなければならず、また、溶融成形時に固有粘度の低下が促進されてしまうという欠点を有していた。
特許文献2には、リン原子換算の濃度が10ppm以上である亜リン酸、次亜リン酸、若しくはそれらのエステル化物、或いはリン酸エステルの水溶液や有機溶媒溶液とポリエチレンテレフタレート樹脂とを接触させる処理方法が提案されている。しかしながら本発明者等が検討したところ、本特許方法では溶融成形時の固有粘度の低下は抑制されたが、溶融成形時の環状三量体等の副生の抑制効果は不十分であった。また、特許文献3には、50℃〜200℃のpH5以下のリン化合物溶液にポリエステル樹脂を接触させる方法が開示されているが、この方法では接触処理前後でのポリエステル樹脂の固有粘度の低下が大きく、ボトル用樹脂の製造方法としては適当ではない。
特許文献4には、アンチモン、チタン、ニッケル原子から選ばれた1種以上の金属原子を特定量含有するポリエチレンテレフタレートまたはこれを主体とするポリエステルに、リン酸由来の水酸基を有するリン化合物を特定量配合させることにより、溶融時に環状オリゴマー生成量の少ないポリエステルを得ることが開示されており、具体的方法としては、溶融重縮合及び固相重合を行ってポリエステルを製造した後、リン化合物を含有する熱可塑性樹脂とポリエステルを混練することが開示されている。
しかしながら、この方法による場合、リン化合物を含有する熱可塑性樹脂の製造工程、及びその樹脂とポリエステルの混練処理工程が必要なため、最終成形品を得るための工数、製造コストの増大が不可避であり、産業上の利用において現実的なものではなかった。また、リン化合物を含有する熱可塑性樹脂とポリエステルの混練が十分に行われないとオリゴマー生成量を抑制することができず、溶融成形の際の溶融滞留時間を十分にとる必要があり、生産性低下は避けられず、特に一般的に溶融滞留時間の短い射出成形または射出ブロー成形の際には、十分なオリゴマー抑制効果を得ることができなかった。
特開平5−97990号 特開2001−81176号公報 特開2002−322261号公報 特開平10-251393号
本発明の課題は、溶融成形時の環状三量体等の副生が十分に抑制され、また溶融成形時の固有粘度の保持率が高いポリエステル樹脂の製造方法及びその方法で製造されるポリエステル樹脂を提供することである。
本発明は、前記課題を達成するものであり、その要旨は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分とから、触媒としてチタン化合物を用いて製造されたポリエステル樹脂(A)を酸性リン酸エステルまたはその溶液と接触させ、接触後に得られるポリエステル樹脂(B)が、下記式(1)〜(3)を満たすことを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法、及び該ポリエステル樹脂(B)に存する。
(1)0.002≦T≦0.2
(2)30≧P/(T+X)≧4.0
(3)1.3≧X≧0
但し、式(1)〜(3)において、Tはポリエステル樹脂(B)1トン当たりのチタン原子の含有量(モル/樹脂トン)、Xはポリエステル樹脂(B)1トン当たりのチタン原子以外の金属原子の含有量(モル/樹脂トン)、およびPはポリエステル樹脂(B)1トン当たりのリン原子の含有量(モル/樹脂トン)をそれぞれ表す。
本発明の製造方法により、リン化合物と接触させて得られるポリエステル樹脂を、特定の原子を特定量比で含有するものとなすことで、該接触後の樹脂を射出成形・延伸ブロー・ヒートセットすることによりボトル等に成形する場合、金型汚染を従来よりも大幅に防止し、もって得られるボトルが表面平滑性・透明性に優れたものとなす事が出来、又、金型清掃のための時間を省くこともできるのでボトル等の生産性が大幅に改良される。更に、該接触後の樹脂は固有粘度の保持率が良好であるので、得られるボトル等の固有粘度が高く、強度等にも優れたものとなる。
以下に記載する本発明の構成要件の説明は、その実施態様の代表例であり、それらの内容に限定されるものではない。
本発明のポリエステル樹脂の製造方法は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分とから、触媒としてチタン化合物を用いて製造されたポリエステル樹脂(A)を酸性リン酸エステルまたはその溶液と接触させ、接触後に得られるポリエステル樹脂(B)が、下記式(1)〜(3)を満たすことよりなるポリエステル樹脂の製造方法である。
(1)0.002≦T≦0.2
(2)30≧P/(T+X)≧4.0
(3)1.3≧X≧0
但し、式(1)〜(3)において、Tはポリエステル樹脂(B)1トン当たりのチタン原子の含有量(モル/樹脂トン)、Xはポリエステル樹脂(B)1トン当たりのチタン原子以外の金属原子の含有量(モル/樹脂トン)、およびPはポリエステル樹脂(B)1トン当たりのリン原子の含有量(モル/樹脂トン)をそれぞれ表す。
なお、ここで、ポリエステル樹脂1トン当たりの各原子の含有量とは、樹脂の中に存在するもののみならず、樹脂表面に付着しているものも含まれる。
そして、本発明方法によって得られるポリエステル樹脂(B)は、その溶融成形時における環状三量体の副生が抑制され、且つ固有粘度の良好な保持率を達成するのである。
本発明におけるポリエステル樹脂(A)は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主成分とするジオール成分とから、触媒としてチタン化合物を用いて製造されたものである。
本発明で使用されるジカルボン酸成分は、テレフタル酸を主成分とするが、ここで主成分であるとは、全ジカルボン酸成分に対してテレフタル酸が50モル%以上であることをいい、80モル%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。
テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、ジブロモイソフタル酸、スルホイソフタル酸ナトリウム、フェニレンジオキシジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環式ジカルボン酸、及び、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸、ドデカジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、等が挙げられる。中で、本発明においてはイソフタル酸が好ましい。
本発明で使用されるジオール成分は、エチレングリコールを主成分とするジオール成分である。ここで主成分であるとは、エチレングリコールが全ジオール成分の50モル%以上であることをいい、80モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましい。
エチレングリコール以外のジオール成分としては、ジエチレングリコールの他、例えば、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の脂肪族ジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール、2,5−ノルボルナンジメチロール等の脂環式ジオール、及び、キシリレングリコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸等の芳香族ジオール、並びに2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパンのエチレンオキサイド付加物又はプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
本発明におけるポリエステル樹脂(A)の製造においては、必要に応じ更に、共重合成分として、例えば、グリコール酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシエトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸やアルコキシカルボン酸、及びステアリルアルコール、ヘネイコサノール、オクタコサノール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、ベヘン酸、安息香酸、t−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸等の単官能成分、トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ナフタレンテトラカルボン酸、没食子酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、シュガーエステル等の三官能以上の多官能成分等が用いられてもいてもよい。
又、本発明におけるポリエステル樹脂(A)としては、そのエチレングリコール単位の含有量が全ジオール成分に対して97.0モル%以上であるのが好ましい。エチレングリコール以外のジオール単位としては、例えば、反応系内で副生するジエチレングリコール、及び共重合成分として系外から添加されるジエチレングリコールに基づくジエチレングリコール単位が挙げられるが、そのジエチレングリコール単位の含有量は、全ジオール成分に対して3.0モル%未満であるのが好ましく、2.5モル%以下であるのが更に好ましく、2.0モル%以下であるのが特に好ましい。ジエチレングリコール単位の含有量が前記範囲を超えて多すぎると、ポリエステル樹脂(A)のリン化合物処理後のポリエステル樹脂(B)のボトル等の成形体としての耐熱性、保香性、ガスバリア性、耐ストレスクラック性等が低下したり、熱安定性が悪化する等の問題を生じ易い傾向となる。
又、テレフタル酸単位の含有量が全ジカルボン酸成分に対して99.0モル%以上であるのが好ましい。テレフタル酸単位の含有量が前記範囲未満では、ポリエステル樹脂(B)の耐熱ボトル等の成形体としての耐熱性が劣る傾向となる。
本発明におけるポリエステル樹脂(A)の製造において、触媒としてチタン化合物が用いられるが、チタン化合物としては、従来公知のチタン化合物から適宜選択して使用することができる。
チタン化合物としては、具体的には、例えば、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートテトラマー、テトラ−t−ブチルチタネート、酢酸チタン、蓚酸チタン、蓚酸チタンカリウム、蓚酸チタンナトリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ナトリウム、塩化チタン、塩化チタン−塩化アルミニウム混合物等が挙げられ、中でも、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート等のチタンアルコキシド、蓚酸チタン、蓚酸チタンカリウムが好ましい。
チタン化合物の使用量としては、生成ポリエステル樹脂(A)中に存在するチタン原子の含有量をTA(モル/樹脂トン)とすると、0.002≦TA≦0.200であるのが好ましいが、0.020≦TA≦0.200であるのがより好ましく、0.060≦TA≦0.100であるのがさらに好ましく、0.070≦TA≦0.090であるのが特に好ましい。TAがこの範囲を超えて大きいと、ポリエステル樹脂(A)をリン化合物と接触させて得られるポリエステル樹脂(B)のチタン原子含有量Tの値も大きくなり、P/(T+X)が小さくなる傾向になるので、溶融成形時の環状三量体の副生量が多くなったり、固有粘度の保持率が低下したりする傾向となるほか、ポリエステル樹脂(B)の色調が黄味がかったものとなる。一方、TAがこの範囲より小さいと、ポリエステル樹脂(A)を得る際の重縮合速度や環状三量体の低減速度が低下して、ポリエステル樹脂(A)及び(B)の環状三量体含有量が増加する傾向となり、樹脂の生産性や溶融成形で得られる成形体の環状三量体量が多くなり、金型汚染が増大する傾向となる。
なお、ここで、P/(T+X)で表される、前記TとXの総和に対するPの比、つまりポリエステル樹脂(B)中に存在するチタン及び他の金属原子の量に対するリン原子の量の比は、リンによるチタンや他金属の触媒能の失活効果を示す指標であり、この値が大きいと成形時の環状三量体の副生や固有粘度の低下が抑制され、小さいとその副生や固有粘度の低下が増加する傾向を示す。
本発明では、この様に比較的少量ではあるが重縮合反応速度や環状三量体の低減速度を十分達成する、チタン化合物触媒を用いてポリエステル樹脂(A)を得、この樹脂(A)とリン化合物との接触後に得られるポリエステル樹脂(B)のP/(T+X)値を大きくし、リンによるチタンやその他の金属の失活を大きくすることができ、その結果、樹脂(B)の溶融成形時の環状三量体の副生量や固有粘度の低下を抑制することができるのである。
尚、触媒として用いるチタン化合物としては、有機溶媒又は水に不溶性の固体系チタン化合物は、一般に触媒活性が低く重縮合反応のための必要量が大きいため、得られるポリエステル樹脂(A)をリン化合物と接触して得られるポリエステル樹脂(B)のP/(T+X)が小さくなる傾向にあり、溶融成形時の環状三量体の副生量が多くなったり、固有粘度が低下したりする傾向となり好ましくない。
また、ポリエステル樹脂(A)の製造時には、チタン以外の金属原子の化合物を、触媒、助触媒、エステル化触媒などとして併用してもよい。ここで、チタン以外の金属原子としては、チタン原子以外の周期表第1族〜第15族金属原子すべてを含み、例えば、アンチモン、ゲルマニウム、アルミニウム、亜鉛、錫、銅、鉛、コバルト、鉄、マンガン、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどが挙げられる。本発明の製造方法においては、これらチタン以外の金属原子化合物の使用量は化合物の種類によっても異なるが、ごく少量であることが好ましく、ポリエステル樹脂(A)中に存在するチタン以外の金属原子の化合物の含有量をXA(モル/樹脂トン)とすると、好ましいXAの値としては、その上限値は1.3であり、0.400であることがより好ましく、0.300であることがさらに好ましく、0.220であることが特に好ましい。
XAの下限値は、チタン化合物の触媒性能や併用する上記金属化合物の種類により異なるが、好ましくは0であり、0.004であることがより好ましく、0.060であることがさらに好ましく、0.070であることが特に好ましい。
XAが大きいと、ポリエステル樹脂(A)をリン化合物と接触させて得られるポリエステル樹脂(B)のX値が大きくなり、P/(T+X)値が小さくなる傾向にあり、樹脂(B)の溶融成形時の環状三量体の副生量が多くなったり、固有粘度の保持率が低下したりする傾向となる。一方XAが小さいと、併用する金属化合物の効果が達せられずポリエステル樹脂(A)を得る際の重縮合反応速度や環状三量体の低減速度が低下して、ポリエステル樹脂(A)及び(B)の環状三量体含有量が増加する場合があり、樹脂の生産性が悪化したり、溶融成形で得られる成形体の環状三量体量が多くなり、金型汚染が増大する場合がある。
また、ポリエステル樹脂(A)の製造時には、リン化合物を、助剤・安定剤などとして併用してもよい。
使用されるリン化合物の量としては、ポリエステル樹脂(A)中に存在するリン原子の含有量をPA(モル/樹脂トン)とすると、前記式(6)0.020≦PA≦0.300であるのが好ましく、0.050≦PA≦0.200であるのがより好ましく、0.080≦PA≦0.180であるのがさらに好ましく、0.090≦PA≦0.150であるのが特に好ましい。PAがこの範囲を超えて小さすぎるとポリエステル樹脂(A)をリン化合物と接触させて得られるポリエステル樹脂(B)のP/(T+X)が小さくなる傾向にあり、樹脂(B)の溶融成形時の環状三量体の副生量が多くなったり、固有粘度の保持率が低下したりする傾向となる。一方PAがこの範囲を超えて大き過ぎると、重縮合反応における重縮合速度や環状三量体の低減速度が低下して、ポリエステル樹脂(A)及び(B)の環状三量体含有量が増加する場合があり、樹脂の生産性や溶融成形で得られる成形体の環状三量体量が多くなり、金型汚染が増大する場合がある。
本発明のポリエステル樹脂の製造方法は、上述の如く比較的少量のチタン化合物触媒を用いて製造されたポリエステル樹脂(A)をリン化合物と接触させる工程を含み、リン化合物との接触により、ポリエステル樹脂(A)中またはその表面にリン化合物が含浸・付着し、得られるポリエステル樹脂(B)のP/(T+X)が、所定値の範囲のものとなる。その結果、ポリエステル樹脂(B)を溶融成形する際に、多量のリン化合物が少量のチタン化合物及びチタン以外の金属化合物と反応してそれらの触媒を失活させ、環状三量体の副生を抑制したり、固有粘度の低下を抑制したりするものと考えられる。
本発明のポリエステル樹脂の製造方法では、ポリエステル樹脂(B)のP/(T+X)が所定値の範囲内であることが必須であり、その為にポリエステル樹脂(A)とリン化合物との接触条件を、例えば以下のように種々調節して、得られるポリエステル樹脂(B)中の各原子の含有量が前記所定範囲を満たすものとなるように行われる。
ポリエステル樹脂(A)と接触させるリン化合物としては、正リン酸、ポリリン酸、及び、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(トリエチレングリコール)ホスフェート、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、モノブチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、トリエチレングリコールアシッドホスフェート、トリエチルホスホノアセテート等のリン酸エステル等の5価のリン化合物、並びに、亜リン酸、次亜リン酸、及び、トリメチルホスファイト、ジエチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリスドデシルホスファイト、トリスノニルデシルホスファイト、エチルジエチルホスホノアセテート、トリフェニルホスファイト等の亜リン酸エステル、リチウム、ナトリウム、カリウム等の金属塩等の3価のリン化合物、次亜リン酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、低温短時間の接触処理により、効率的にポリエステル樹脂(A)中またはその表面にリン化合物を含浸・付着させ、得られるポリエステル樹脂(B)のP/(T+X)の値を、所定範囲の比較的大きな値とするためには、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート等の酸性リン酸エステルが好ましく、エチルアシッドホスフェートが特に好ましい。
酸性リン酸エステル以外のリン化合物を使用する場合、化合物の種類にもよるが、ポリエステル樹脂(A)へのリン化合物の含浸・付着が起こりにくく、得られるポリエステル樹脂(B)のP/(T+X)を所定範囲の値とすることがやや困難であるか、所定範囲の値とするためにポリエステル樹脂(A)との接触に比較的高温長時間を要する傾向となる。例えばトリエチルホスフェートなどのリン酸エステルを使用すると、ポリエステル樹脂(A)へのリン化合物の含浸・付着が起こりにくく、得られるポリエステル樹脂(B)のP/(T+X)の値を、所定範囲の比較的大きな値とすることが困難な場合がある。また、正リン酸を使用すると得られるポリエステル樹脂(B)のP/(T+X)を、所定範囲の値とするために、ポリエステル樹脂(A)との高温長時間の接触を要する傾向となるほか、溶融成形時の固有粘度の低下が大きくなる傾向を示す場合がある。
本発明の製造方法において、ポリエステル樹脂(A)とリン化合物を接触させる際は、リン化合物をポリエステル樹脂(A)と直接接触させてもよいし、リン化合物を溶液などの媒体に溶解・分散させたものをポリエステル樹脂(A)に接触させてもよいが、リン化合物を溶液として使用するのが、少ないリン化合物量で効率的にポリエステル樹脂(A)へのリン化合物の含浸・付着を行い得る観点から好ましい。リン化合物の溶液に使用される溶媒としては、水及び/又は水と相溶性のアルコール類が好ましく、水、エタノール、イソプロパノールが更に好ましく、水、イソプロパノールが特に好ましい。
ポリエステル樹脂(A)をリン化合物の溶液と接触させる場合、その溶液中のリン化合物の濃度は、リン原子としての濃度が10重量ppm以上であることが好ましく、10〜100000重量ppmであることがより好ましく、1000〜50000重量ppmであることが特に好ましい。リン化合物溶液中のリン原子の濃度が前記範囲未満では、得られるポリエステル樹脂(B)中のP/(T+X)の値が所定の範囲内となるには比較的高温長時間の接触時間を必要とする傾向となり、他方、前記の濃度範囲を越える場合には、ポリエステル樹脂(A)とリン化合物との接触処理設備等の腐食等が起こりやすくなる傾向となる。
本発明の製造方法において、リン化合物とポリエステル樹脂(A)との接触方法は、連続式、バッチ式のいずれでも行うことが出来る。連続式で行う場合には、例えば、塔型の接触処理装置を用い、塔型の接触処理装置の上部からペレット状のポリエステル樹脂(A)を連続的に供給し、同時にリン化合物の溶液を塔型の接触処理装置に連続的に供給し、ポリエステル樹脂(A)をリン化合物溶液に浸漬させて接触させ、連続的に樹脂とリン化合物溶液を排出する。この時のリン化合物の供給方法は、ポリエステル樹脂(A)に対し、並流、向流のどちらでもよい。バッチ式で行う場合には、例えばサイロ型の接触処理装置を用い、ポリエステル樹脂(A)とリン化合物溶液とを入れて、ポリエステル樹脂(A)をリン化合物溶液に浸漬させて接触させる。
リン化合物溶液とポリエステル樹脂(A)とを接触させた後は、通常リン化合物溶液とポリエステル樹脂(A)とを分離し、粒状振動篩機やシモンカーターなどの液切り装置で液切りし、乾燥する。乾燥前に、通常用いられるポリエステル樹脂の洗浄方法を用いることができ、水及び/又はアルコール類により洗浄できるし、リン化合物を溶液として使用している場合には、その溶液の溶媒と同種の溶媒により洗浄することもできるが、通常、最終的には水で洗浄する。また、乾燥方法は、通常用いられるポリエステル樹脂の乾燥方法を用いることができる。
ポリエステル樹脂(A)とリン化合物溶液との接触温度及び接触時間は、得られるポリエステル樹脂(B)の各原子の含有量が、前記式P/(T+X)の所定範囲を満たすものとなるように調節される。
接触温度は、通常0〜100℃であり、その接触時間は通常5分〜10時間である。接触温度が高いほどリン原子のポリエステル樹脂(A)への含浸量・付着量が増加する傾向にあり、接触時間を短縮することができるが、ポリエステル樹脂(A)とリン化合物との接触処理設備等の腐食等が起こりやすくなる傾向となる。また接触時間が長いほどリン原子のポリエステル樹脂(A)への含浸量・付着量が増加する傾向にあるが、接触処理設備の巨大化或いは生産性の低下を招くこととなる。
本発明の製造方法においては、接触温度及び時間は、両者のバランスを考慮して決められるが、接触温度は0〜70℃が好ましく、40〜70℃がより好ましい。接触時間は、接触温度0〜40℃の場合は、好ましくは2〜10時間、より好ましくは6〜10時間であり、接触温度40〜70℃の場合、好ましくは2〜6時間、接触温度70〜100℃の場合、好ましくは0.1〜2時間である。中でも、接触処理設備等の腐食の問題と、設備規模・生産性のバランスの観点から、接触温度が40〜70℃、接触時間が2〜6時間であることが最も好ましい。
本発明の製造方法では、リン化合物と接触させるポリエステル樹脂(A)が比較的少量のチタン化合物触媒を用いて製造されており、また接触処理に用いるリン化合物の種類、リン化合物溶液の濃度等が適度に調整されることにより、従来技術に比べ同じ処理時間なら低い温度で、同じ処理温度なら短い時間で、リン原子の樹脂(A)への十分な含浸・付着をなし得、それによって環状三量体副生の抑制効果を得ることが出来、同じ処理時間・処理温度ならより顕著な環状三量体副生抑制効果が得られる。
上記の如く、本発明のポリエステル樹脂の製造方法によりポリエステル樹脂(A)を、酸性リン酸エステルまたはその溶液と接触させるが、接触後に得られるポリエステル樹脂(B)は、下記式(1)〜(3)を満たすポリエステル樹脂である。
(1)0.002≦T≦0.2
(2)30≧P/(T+X)≧4.0
(3)1.3≧X≧0
但し、式(1)〜(3)中、Tはポリエステル樹脂(B)1トン当たりのチタン原子の含有量(モル/樹脂トン)、Xはポリエステル樹脂(B)1トン当たりのチタン原子以外の金属原子の含有量(モル/樹脂トン)、Pはポリエステル樹脂(B)1トン当たりのリン原子の含有量(モル/樹脂トン)をそれぞれ表す。
ここで、Tは前記ポリエステル樹脂(A)の製造時に触媒として使用するチタン化合物に由来して、ポリエステル樹脂(B)中に存在するチタン原子の含有量であり、前記TAにほぼ対応し、通常0.002≦T≦0.2であり、0.020≦T≦0.2であるのが好ましく、0.060≦T≦0.100であるのがより好ましく、0.070≦T≦0.090であるのがさらに好ましい。Tが大き過ぎると、ポリエステル樹脂(B)のP/(T+X)が小さく、リン原子によるチタン原子及び他の金属原子の失活効果が小さくなる傾向にあり、溶融成形時の環状三量体の副生量が多くなったり、固有粘度の保持率が低下したりする傾向となるほか、ポリエステル樹脂(B)の色調が黄味がかったものとなる。一方、Tが小さ過ぎる場合は、前述の如くポリエステル樹脂(A)を得る際のTAが小さいので重縮合速度や環状三量体の低減速度の低下によってポリエステル樹脂(B)の環状三量体含有量が増加する傾向となり、溶融成形で得られる成形体の環状三量体量が多くなり、金型汚染が増大する傾向となる。
また、Xは、必要に応じて前記ポリエステル樹脂(A)の製造時に使用されるチタン以外の金属原子の化合物に由来して、ポリエステル樹脂(B)中に存在するチタン原子以外の金属原子の含有量であり、前記XAにほぼ対応する。ここで、チタン原子以外の金属原子とは、前記と同様チタン原子以外の周期表第1族〜第15族金属原子すべてをいい、例えば、アンチモン・ゲルマニウム・アルミニウム・亜鉛・錫・銅・鉛・コバルト・鉄・マンガン・タングステン・ジルコニウム・ハフニウム・ベリリウム・マグネシウム・カルシウム・ストロンチウム・バリウム・リチウム・ナトリウム・カリウム・ルビジウム・セシウムなどが挙げられる。これらの金属原子の化合物は、通常、ポリエステル樹脂(A)の製造時に、重縮合触媒や助触媒、エステル化触媒として使用されるものであり、本発明においては、これらチタン以外の金属原子化合物の使用量はその種類によっても異なるが、できるだけ少量であることが好ましく、好ましいXの値としては、その上限値は1.3であり、0.400であることがより好ましく、0.300であることがさらに好ましく、0.220であることが特に好ましい。Xの下限値は、チタン化合物の触媒能及び併用する他の金属化合物の種類にもよるが、好ましくは0であり、0.004であることがより好ましく、0.060であることがさらに好ましく、0.070であることが特に好ましい。
Xの値が上記の範囲を超えて過多に過ぎるとポリエステル樹脂(B)のP/(T+X)が小さくなる傾向にあり、溶融成形時の環状三量体の副生量が多くなったり、固有粘度の保持率が低下したりする傾向となる。一方Xの値が小さ過ぎる、つまりXAが小さいことで、併用する金属原子化合物の効果が達せられず、ポリエステル樹脂(A)を得る際の重縮合速度や環状三量体の低減速度の低下により、ポリエステル樹脂(B)の環状三量体含有量が増加する傾向となり、溶融成形で得られる成形体の環状三量体量が多くなり、金型汚染が増大する傾向となる場合がある。
また、Pはポリエステル樹脂(B)1トン当たりのリン原子の含有量(モル/樹脂トン)であり、必要に応じて前記ポリエステル樹脂(A)の製造時に使用されるリン化合物に由来するリン原子と、前記のポリエステル樹脂(A)とリン化合物との接触時にポリエステル樹脂(A)中またはその表面に含浸・付着されるリン原子との両方に由来するものである。好ましいPの値としては下記(10)を満足するものであり、下記(10’)を満足するものがより好ましい。
(10) 1.00≦P≦6.50
(10’)3.20≦P≦5.80
Pがこの範囲を超えて小さ過ぎるとポリエステル樹脂(B)のP/(T+X)が小さくなる傾向にあり、溶融成形時の環状三量体の副生量が多くなったり、固有粘度の保持率が低下したりする傾向となる。一方Pがこの範囲を超えて大き過ぎると、ポリエステル樹脂(A)とリン化合物との接触に時間を要したり、接触時の温度を上げたりする必要が生じ、しかもポリエステル樹脂(B)の溶融成形時の環状三量体副生量の抑制効果や固有粘度低下の抑制効果はそれほど改良されず、生産性が悪化することとなる。更に、成形体のヘーズも低下する傾向となる。
前記の如く、P/(T+X)は、リン原子によるチタン原子や他金属原子の触媒能の失活効果を示す指標であり、従って、P/(T+X)が大きいほど、ポリエステル樹脂(B)を溶融成形する際に、リン化合物が金属化合物と反応して、それら金属化合物の触媒能を失活させ、環状三量体の副生を抑制したり、固有粘度の低下を抑制したりするものと考えられる。P/(T+X)の値としては、下限値として4.0であり、10.0であることが好ましく、15.0であることが更に好ましく、20.0であることが特に好ましく、上限値としては30であることが好ましい。
P/(T+X)の値がこの範囲を超えて小さ過ぎる、つまりPの値が小さいと溶融成形時の環状三量体の副生量が多くなったり、固有粘度の保持率が低下したりする傾向となる。
一方P/(T+X)の値がこの範囲を超えて大き過ぎる、つまりPの値を大きくするには、ポリエステル樹脂(A)とリン化合物との接触に時間を要したり、接触時の温度を上げたりする必要が生じ、しかもポリエステル樹脂(B)の溶融成形時の環状三量体副生量の抑制効果や固有粘度低下の抑制効果はそれほど改良されず、生産性が悪化することとなる。
本発明の製造方法においてリン化合物と接触させるポリエステル樹脂(A)は、チタン化合物を触媒として用い、基本的には慣用的な製法により製造される。例えば、先ずテレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主成分とするジオール成分とを、必要に応じて用いられる共重合成分等と共に、スラリー調製槽に投入して攪拌下に混合して原料スラリーとなす原料混合工程、次いで、その原料スラリーをエステル化反応槽で常圧〜加圧下、加熱下で、エステル化反応させるエステル化工程により、エステル化反応生成物であるポリエステル低分子量体を得る。引き続いて、得られたポリエステル低分子量体を重縮合反応槽に移送し、前記チタン化合物触媒等の各化合物の存在下に、常圧から漸次減圧としての減圧下、加熱下で、溶融重縮合反応させる溶融重縮合工程、更に、必要に応じて加熱下で固相重縮合反応させる固相重縮合工程を経る方法が採られる。
以下に、ポリエステル樹脂(A)を、上記エステル化工程を経て製造する方法を例にして詳細に説明する。原料混合工程における原料スラリーの調製は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主成分とするジオール成分、及び必要に応じて用いられる共重合成分等とを混合するが、ジカルボン酸成分に対するジオール成分のモル比を1.0〜2.0とし、1.05〜1.5とするのが好ましく、1.1〜1.3とするのが更に好ましい。ジカルボン酸成分に対するジオール成分のモル比が前記範囲未満では、エステル化反応で得たポリエステル低分子量体の重縮合反応速度が低下することとなり、一方、この範囲を超えて多すぎると、ジエチレングリコールの生成量が増加することとなる。
調製した原料スラリーは、単数又は複数のエステル化反応槽を備えたエステル化工程に移送され、常圧〜加圧下、加熱下で、エステル化反応させてポリエステル低分子量体とされる。
エステル化反応における反応条件としては、単一のエステル化反応槽の場合、通常240〜280℃程度の温度、大気圧に対する相対圧力を、通常0〜400kPa(0〜4kg/cmG)程度とし、攪拌下に1〜10時間程度の反応時間とする。又、複数のエステル化反応槽の場合は、第1段目のエステル化反応槽における反応温度を、通常240〜270℃、好ましくは245〜265℃、大気圧に対する相対圧力を、通常5〜300kPa(0.05〜3kg/cmG)、好ましくは10〜200kPa(0.1〜2kg/cmG)とし、最終段における反応温度を、通常250〜280℃、好ましくは255〜275℃、大気圧に対する相対圧力を、通常0〜150kPa(0〜1.5kg/cmG)、好ましくは0〜130kPa(0〜1.3kg/cmG)とする。
また、上記エステル化反応を複数のエステル化反応槽を用いて行う場合には、最終段のエステル化反応槽のひとつ手前のエステル化反応槽において、ポリエステル低分子量体の平均エステル化率(原料ジカルボン酸成分の全カルボキシル基のうちジオール成分と反応してエステル化したものの割合)を、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上とすることが、本発明におけるポリエステル樹脂(A)の末端カルボキシル基を低減するうえで好ましい。最終段のエステル化反応槽のひとつ手前のエステル化反応槽において、ポリエステル低分子量体の平均エステル化率を前記のものとするためには、エステル化反応槽における反応温度や圧力を前記の範囲で、高めのものとする方法が挙げられる。
本発明のポリエステル樹脂(A)の製造方法においては、上記エステル化工程から溶融重縮合工程の間の、エステル化率が75%以上で数平均重合度が3.0〜10.0の低分子量体のエステル化反応生成物に対して、ポリエステル樹脂(A)の理論収量の4〜40重量%となる量のエチレングリコールを追加添加することが好ましい。
エチレングリコールを追加添加する際のポリエステル低分子量体の平均エステル化率は、75%以上であることが好ましく、90%以上であるのが更に好ましく、95%以上であるのが特に好ましい。エステル化率が前記範囲未満では、追加添加したエチレングリコールによるエステル化反応に時間を要し、末端カルボキシル基の酸触媒作用によりエチレングリコールが脱水縮合してジエチレングリコールが副生成してしまうこととなる。
又、エチレングリコールを追加添加する際のポリエステル低分子量体の数平均重合度は3.0〜10.0とするのが好ましい。連続式のエステル化反応方式においては、数平均重合度は4.0〜8.0とするのが更に好ましく、5.0〜7.0とするのが特に好ましく、回分式のエステル化反応方式においては、5.0〜9.0とするのが更に好ましく、6.0〜8.0とするのが特に好ましい。数平均重合度が前記範囲未満では、溶融重縮合工程に移送して減圧下におかれる反応生成物が昇華、揮散し易く、溜出系の閉塞等のトラブルの原因となる外、重縮合に時間がかかって色調の悪化や生産性の低下を生じることとなる。一方、前記範囲を越えると、全末端数が減少し、全末端数に占めるカルボキシル基の割合が増加することとなって、エチレングリコールの追加添加が末端カルボキシル基の低減化には繋がらないこととなる。
エチレングリコールの追加添加は、温度が250℃以上265℃未満で、圧力が常圧〜大気圧に対する相対圧力1.0×10Paの加圧下のエステル化反応生成物であるポリエステル低分子量体に対して行うのが好ましく、温度は255℃以上265℃未満であるのが更に好ましく、圧力は、常圧〜大気圧に対する相対圧力0.5×10Paの加圧下であるのが更に好ましく、常圧〜大気圧に対する相対圧力0.3×10Paの加圧下であるのが特に好ましい。
温度が前記範囲未満では、エチレングリコールの追加添加により系内が冷却されて反応生成物が固化する惧れがあり、一方、前記範囲を越える場合には、追加添加するエチレングリコールの蒸発、揮散が激しく、又、末端カルボキシル基の酸触媒作用によりエチレングリコールが脱水縮合してジエチレングリコールが生成し易い傾向となる。又、圧力が前記範囲未満では、追加添加するエチレングリコールの蒸発、揮散が激しく、一方、前記範囲を越えると、末端カルボキシル基の酸触媒作用によりエチレングリコールが脱水縮合してジエチレングリコールが生成し易い傾向となる。
本発明のポリエステル樹脂(A)の製造方法において、エチレングリコールの追加添加は、前記エステル化工程から溶融重縮合工程までの間であって、前記エステル化率および前記数平均重合度を満足するエステル化反応生成物に対し、前記温度および前記圧力の範囲下にあるいずれかの1ケ所又は複数ケ所で行われるが、エステル化工程から、溶融重縮合工程で減圧が負荷される前までのいずれかにおけるエステル化反応生成物に対して行うのが好ましく、エステル化工程を経た後、溶融重縮合工程で減圧が負荷される前の常圧下のエステル化反応生成物に対して行うのが特に好ましい。
更に、追加添加するエチレングリコールの量は、ポリエステル樹脂(A)の理論収量の4〜40重量%とすることが好ましいが、エチレングリコールの追加添加をエステル化工程でなす場合には、4〜20重量%とするのがより好ましく、4〜15重量%とするのが特に好ましい。追加添加量が前記範囲未満では、末端カルボキシル基が増加する傾向となり、一方、前記範囲を越えると、系内の冷却固化や解重合による重合度の低下が生じることとなる。
追加添加するエチレングリコールの添加形態としては、純粋のエチレングリコールの外、共重合成分、触媒、その他の添加剤等の溶媒または分散媒としてであってもよいし、エステル化工程、或いは重縮合工程で溜去されるエチレングリコールまたはそれを含む混合物であってもよい。
本発明のポリエステル樹脂(A)の製造方法において、上記のようなエチレングリコールの追加添加を含むエステル化の方法を行うことにより、溶融重縮合後に得られるポリエステル樹脂の末端カルボキシル基量を、後述するような小さい値のものとすることができる。特に固相重縮合を行う場合は、末端カルボキシル基量を小さくすることにより、固相重縮合における環状三量体の低減速度を増大させ得るので、ポリエステル樹脂(A)及び(B)の環状三量体含有量を低くすることができ、ポリエステル樹脂(B)の溶融成形で得られる成形体の環状三量体量が少なくなり、金型汚染が抑制されるほか、末端カルボキシル基による自己酸触媒加水分解作用が軽減されるため、溶融成形時の固有粘度の低下が軽減される。
本発明のポリエステル樹脂(A)の製造方法において、上記の如く得られたエステル化反応生成物であるポリエステル低分子量体は、引き続いて、単数又は複数の重縮合反応槽を備えた溶融重縮合工程に移送され、チタン化合物触媒の存在下、常圧から漸次減圧としての減圧下、加熱下で溶融重縮合反応させる。
溶融重縮合反応は、単一の重縮合反応槽、又は複数の重縮合反応槽を直列に接続した、例えば、第1段目が攪拌翼を備えた完全混合型の反応器、第2段及び第3段目が攪拌翼を備えた横型プラグフロー型の反応器からなる多段反応装置を用いて、減圧下に、生成するエチレングリコールを系外に留出させながら行われる。
溶融重縮合における反応条件としては、単一の重縮合反応槽の場合、通常250〜290℃程度の温度、常圧から漸次減圧として、最終的に、絶対圧力を、通常1.3〜0.013kPa(10〜0.1Torr)程度とし、攪拌下に1〜20時間程度の反応時間とする。又、複数の重縮合反応槽の場合は、第1段目の重縮合反応槽における反応温度を、通常250〜290℃、好ましくは260〜280℃、絶対圧力を、通常65〜1.3kPa(500〜10Torr)、好ましくは26〜2kPa(200〜15Torr)とし、最終段における反応温度を、通常265〜300℃、好ましくは270〜295℃、絶対圧力を、通常1.3〜0.013kPa(10〜0.1Torr)、好ましくは0.65〜0.065kPa(5〜0.5Torr)とする。中間段における反応条件としては、それらの中間の条件が選択され、例えば、3段反応装置においては、第2段における反応温度を、通常265〜295℃、好ましくは270〜285℃、絶対圧力を、通常6.5〜0.13kPa(50〜1Torr)、好ましくは4〜0.26kPa(30〜2Torr)とする。
本発明におけるポリエステル樹脂(A)は、前記のごときチタン化合物を触媒として用いて製造されたものであるが、さらに、製造時に重縮合反応速度や環状三量体の低減速度を向上させる為にマグネシウム化合物を添加し溶融重縮合反応させたものであるのが好ましく、該チタン化合物、該マグネシウム化合物、及び助剤・安定剤としてのリン化合物を用いて溶融重縮合させたものであるのが特に好ましい。
触媒としてのチタン化合物は、前記したチタン化合物が用いられる。
マグネシウム化合物としては、具体的には、例えば酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシド、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、及びそれらの水和物等が挙げられ、中でも酢酸マグネシウム、及びその水和物が好ましい。
また、リン化合物としては、具体的には、例えば、正リン酸、ポリリン酸、及びトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(トリエチレングリコール)ホスフェート、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、モノブチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、トリエチレングリコールアシッドホスフェート、トリエチルホスホノアセテート等のリン酸エステル等の5価のリン化合物、並びに、亜リン酸、次亜リン酸、及びトリメチルホスファイト、ジエチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリスドデシルホスファイト、トリスノニルデシルホスファイト、エチルジエチルホスホノアセテート、トリフェニルホスファイト等の亜リン酸エステル、リチウム、ナトリウム、カリウム等の金属塩等の3価のリン化合物、次亜リン酸エステル等が挙げられ、中でも、重縮合速度制御性の面から、5価のリン化合物のリン酸エステルが好ましく、トリメチルホスフェート、エチルアシッドホスフェート、トリエチルホスホノアセテートがより好ましく、エチルアシッドフホスフェートが特に好ましい。
本発明で製造されるポリエステル樹脂(A)としては、チタン化合物触媒と共に上記のごとくマグネシウム化合物およびリン化合物を併用して製造されたものが好ましく、そのポリエステル樹脂(A)中のチタン原子含有量をTA(モル/樹脂トン)、マグネシウム原子含有量をMA(モル/樹脂トン)、リン原子含有量をPA(モル/樹脂トン)、としたとき、TA、PA、MAが下記式(4)〜(8)を満たすものであることが好ましい。
(4)0.020≦TA≦0.200
(5)0.040≦MA≦0.400
(6)0.020≦PA≦0.300
(7)0.50≦MA/PA≦3.00
(8)0.20≦MA/TA≦4.00
また、ポリエステル樹脂(A)中の前記チタン化合物に由来するチタン原子としての含有量TAとしては、前記の如く下記式(4)を満足するのが好ましいが、下記式(4')を満足するのが更に好ましく、下記式(4'') を満足するのが特に好ましい。TAが、下記式の左辺未満であると、固相重縮合を行った場合に重縮合速度や環状三量体の低減速度が低下する傾向となり、一方、右辺を越えると、ポリエステル樹脂としての色調が黄味がかったものとなり、又、得られるポリエステル樹脂(A)をリン化合物と接触して得られるポリエステル樹脂(B)のP/(T+X)が小さくなる傾向にあり、射出成形時の環状三量体の副生量が多くなったり、固有粘度の保持率が低下したりする傾向となる。
(4) 0.020≦TA≦0.200
(4') 0.060≦TA≦0.100
(4'') 0.070≦TA≦0.090
ポリエステル樹脂(A)中の前記マグネシウム化合物に由来するマグネシウム原子としての含有量MAが、下記式(5)を満足するのが好ましく、下記式(5') を満足するのが更に好ましく、下記式(5'')を満足するのが特に好ましい。MAが下記式の左辺未満であると、固相重縮合を行った場合に重縮合速度や環状三量体の低減速度が低下する傾向となり、一方、右辺を越える場合であっても、固相重縮合を行った場合に重縮合速度や環状三量体の低減速度が低下したり、ポリエステル樹脂としての色調や熱安定性も低下する傾向となるほか、得られるポリエステル樹脂(A)をリン化合物と接触して得られるポリエステル樹脂(B)のP/(T+X)が小さくなる傾向にあり、射出成形時の環状三量体の副生量が多くなったり、固有粘度の保持率が低下したりする傾向となる。
(5) 0.040≦MA≦0.400
(5') 0.060≦MA≦0.300
(5'')0.110≦MA≦0.220
又、ポリエステル樹脂(A)に含まれる前記リン化合物に由来するリン原子としての含有量PAが、下記式(6) を満足するのが好ましく、下記式(6')を満足するのが更に好ましく、下記式(6'') を満足するのが特に好ましく、下記式(6''')を満足するのが最も好ましい。PAが、下記式の左辺未満であると、ポリエステル樹脂としての熱安定性が低下する傾向となり、一方、右辺を越えると、固相重縮合における重縮合速度や環状三量体の低減速度が低下する傾向となる。
(6) 0.020≦PA≦0.300
(6') 0.050≦PA≦0.200
(6'') 0.080≦PA≦0.180
(6''') 0.090≦PA≦0.150
又、ポリエステル樹脂(A)は、前記TA、MA、及びPAが、前記式(4)〜(6) を満足した上で、MA/PAが下記式(7)を満足するのが好ましいが、下記式(7') を満足するのが更に好ましく、下記式(7'')を満足するのが特に好ましい。更に、MA/TAが下記式(8) を満足するのが好ましいが、下記式(8')を満足するのが更に好ましく、下記式(8'') を満足するのが特に好ましく、下記式(8''')を満足するのが最も好ましい。MA/PA及びMA/TAが下記式の左辺未満、及び右辺を越えるといずれの場合においても、固相重縮合を行った場合に重縮合速度や環状三量体の低減速度が低下し、又、ポリエステル樹脂としての熱安定性が低下する傾向となる。
(7) 0.50≦MA/PA≦3.00
(7') 0.90≦MA/PA≦1.80
(7'')1.10≦MA/PA≦1.50
(8) 0.20≦MA/TA≦4.00
(8') 0.50≦MA/TA≦3.50
(8'') 1.00≦MA/TA≦2.90
(8''')1.50≦MA/TA≦2.40
更に、ポリエステル樹脂(A)は、前記TA、MA、及びPAが、前記式(4) 〜(8) を満足した上で、PA/MA/TAが下記式(8−1)を満足するのが好ましく、下記式(8−1') を満足するのが更に好ましく、下記式(8−1'')を満足するのが特に好ましい。PA/MA/TAが下記式の左辺未満、及び右辺を超えるといずれの場合においても、固相重縮合を行った場合に重縮合速度や環状三量体の低減速度が低下し、又、ポリエステル樹脂としての熱安定性が低下する傾向となる。
(8−1) 3.0≦PA/MA/TA≦19.0
(8−1') 5.0≦PA/MA/TA≦15.0
(8−1'')8.0≦PA/MA/TA≦12.0
本発明におけるポリエステル樹脂(A)における、チタン化合物、マグネシウム化合物、及びリン化合物に由来する各原子としての前記含有量及び量比を以上のようなものとすることにより、比較的少量のチタン化合物触媒を用いて十分な重縮合速度や環状三量体の低減速度でポリエステル樹脂(A)を得、この樹脂(A)とリン化合物との接触後に得られるポリエステル樹脂(B)のP/(T+X)の値を大きくし、その結果、樹脂(B)の溶融成形時の環状三量体の副生量や固有粘度の低下を抑制することができるのである。加えて、ジエチレングリコール含有量、樹脂及び成形体としてのアセトアルデヒド含有量、及び保香性等も好ましいものとすることが出来る。
なお、前記チタン化合物、並びに前記マグネシウム化合物の反応系への添加は、エステル化率が75%以上で数平均重合度が3.0〜10.0の低分子量体のエステル化反応生成物に対して行うことが好ましく、エステル化率が90%以上の反応生成物に対して行うのがより好ましい。又、リン化合物の反応系への添加は、前記の如く原料混合工程から溶融重縮合工程までのいずれかであればよいが、原料スラリー調製工程で添加するのが好ましい。
これらの各化合物の反応系への具体的添加工程としては、例えば、チタン化合物は、多段反応装置における最終段のエステル化反応槽、又は、エステル化反応槽から溶融重縮合工程への移送段階の配管等に、マグネシウム化合物は、多段反応装置における最終段のエステル化反応槽に、それぞれ添加するのが好ましく、又、両者の添加順序を、マグネシウム化合物、次いでチタン化合物とするのが好ましい。又、リン化合物は、原料混合工程のスラリー調製槽、又は、第1段目のエステル化反応槽に添加するのが好ましく、スラリー調製槽に添加するのが特に好ましい。
本発明のポリエステル樹脂(A)の製造方法において前記溶融重縮合により得られるポリエステル樹脂は、固有粘度(〔η〕)が、フェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合物を溶媒とし、30℃で測定(実施例参照)した値として、0.35〜0.75dl/gであるのが好ましく、0.50〜0.65dl/gであるのが更に好ましい。固有粘度(〔η〕)が前記範囲未満では、重縮合反応槽からの後述する抜き出し性が悪く操作性が低下する傾向となり、一方、前記範囲を超えて高すぎると、得られるポリエステル樹脂中の環状三量体含有量およびアセトアルデヒド含有量の低減化が困難になる傾向となる。
前記溶融重縮合により得られたポリエステル樹脂は、通常、重縮合反応槽の底部に設けられた抜き出し口からストランド状に抜き出して、水冷しながら若しくは水冷後、カッター等で切断してペレット状、チップ状等の粒状体とする。本発明においては、更に、必要に応じてこの溶融重縮合後の粒状体を固相重縮合させポリエステル樹脂(A)を製造してもよい。即ち、溶融重縮合後の粒状体を、例えば、窒素、二酸化炭素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、大気圧に対する相対圧力として、通常100kPa(1kg/cmG)以下、好ましくは20kPa(0.2kg/cmG)以下の加圧下で通常5〜30時間程度、或いは、絶対圧力として、通常6.5〜0.013kPa(50〜0.1Torr)、好ましくは1.3〜0.065kPa(10〜0.5Torr)の減圧下で通常1〜20時間程度、通常190〜230℃、好ましくは195〜225℃の温度で加熱することにより、固相重縮合させることができる。この固相重縮合により、更に高重合度化させ得ると共に、環状三量体、アセトアルデヒド等の副生量を低減化することができる。
本発明のポリエステル樹脂(A)の製造方法で、溶融重縮合後の粒状体を固相重縮合させる場合、固相重縮合に先立って、不活性ガス雰囲気下、又は、水蒸気雰囲気下或いは水蒸気含有不活性ガス雰囲気下で、通常120〜200℃、好ましくは130〜190℃で、1分〜4時間程度加熱することにより、樹脂粒状体表面を結晶化させることが好ましい。中でも、水蒸気雰囲気下で加熱を行うことは、樹脂粒状体の結晶化速度を向上させたり、得られるポリエステル樹脂(A)のアセトアルデヒド含有量を更に低減化させたりし得るので好ましい。
本発明のポリエステル樹脂(A)の製造方法において、上記のような製造方法により得られるポリエステル樹脂(A)は、その末端カルボキシル基量が20当量/樹脂トン以下であると共に、固有粘度が0.50〜1.50dl/g、環状三量体含有量が0.5重量%以下であることが好ましい。
本発明におけるポリエステル樹脂(A)の有する末端カルボキシル基量は、20当量/樹脂トン以下であるのが好ましいが、15当量/樹脂トン以下であるのがより好ましく、10当量/樹脂トン以下であるのが更に好ましい。末端カルボキシル基量が前記範囲を越えると、ポリエステル樹脂(A)のリン化合物との接触処理後のポリエステル樹脂(B)の環状三量体含有量が増加し、ボトル等の成形時に金型汚染が起こりやすい傾向となり、また、末端カルボキシル基による自己酸触媒加水分解作用による溶融成形時の固有粘度の低下が起こりやすくなる傾向となる。
又、本発明におけるポリエステル樹脂(A)の有する固有粘度(〔η〕)は、フェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合液を溶媒として30℃で測定(実施例参照)した値として、0.50〜1.50dl/gであるのが好ましく、0.60〜1.00dl/gであるのがより好ましく、0.70〜0.90dl/gであるのが更に好ましい。固有粘度が前記範囲未満では、ポリエステル樹脂(A)のリン化合物との接触処理後のポリエステル樹脂(B)をボトル等の成形体とした場合その機械的強度が低下することとなり、一方、前記範囲を越えると、溶融成形性が低下したり、溶融成形時の環状三量体の副生量が増加する傾向となる。
更に、本発明におけるポリエステル樹脂(A)の有する環状三量体含有量は、0.5重量%以下であるのが好ましく、0.4重量%以下であるのがより好ましく、0.35重量%以下であるのがさらに好ましく、0.30重量%以下であるのが特に好ましい。環状三量体含有量が前記範囲を越えると、ポリエステル樹脂(A)のリン化合物との接触処理後のポリエステル樹脂(B)のボトル等の成形時に金型汚染等を起こし易く、成形体の透明性等の外観の低下等を招くこととなる。
本発明の製造方法においては、上記のようにして得られるポリエステル樹脂(A)を前記した如く酸性リン酸エステルまたはその溶液と接触させることによりポリエステル樹脂(B)を製造する。
本発明の製造方法により得られるポリエステル樹脂(B)は、前記の如く、下記式(1)〜(3)を満たすものである。
(1)0.002≦T≦0.2
(2)30≧P/(T+X)≧4.0
(3)1.3≧X≧0
但し、式(1)〜(3)において、Tはポリエステル樹脂(B)1トン当たりのチタン原子の含有量(モル/樹脂トン)、Xはポリエステル樹脂(B)1トン当たりのチタン原子以外の金属原子の含有量(モル/樹脂トン)、Pはポリエステル樹脂(B)1トン当たりのリン原子の含有量(モル/樹脂トン)を表す。
ここで、Tは0.020≦T≦0.200であるのが好ましく、0.060≦T≦0.100であるのがより好ましく、0.070≦T≦0.090であるのがさらに好ましい。Tが大きいと、ポリエステル樹脂(B)のP/(T+X)の値が小さくなる傾向にあり、溶融成形時の環状三量体の副生量が多くなったり、固有粘度の保持率が低下したりする傾向となるほか、ポリエステル樹脂(B)の色調が黄味がかったものとなる。一方、Tが小さいと、ポリエステル樹脂(B)の環状三量体含有量が増加する傾向となり、ポリエステル樹脂の生産性や溶融成形で得られる成形体の環状三量体量が多くなり、金型汚染が増大する傾向となる。
また、Xは、ポリエステル樹脂(B)中に存在するチタン原子以外の金属原子の含有量であり、チタン原子以外の金属原子とは、前記同様チタン原子以外の周期表第1族〜第15族金属原子すべてをいい、例えば、アンチモン・ゲルマニウム・アルミニウム・亜鉛・錫・銅・鉛・コバルト・鉄・マンガン・タングステン・ジルコニウム・ハフニウム・ベリリウム・マグネシウム・カルシウム・ストロンチウム・バリウム・リチウム・ナトリウム・カリウム・ルビジウム・セシウムなどが挙げられる。これらの金属原子の化合物は、通常、ポリエステル樹脂の製造時に、重縮合触媒や助触媒、エステル交換触媒、エステル化触媒として多用されるが、本発明においては、これらチタン以外の金属原子の使用はできるだけ少量であることが好ましく、好ましいXの値としては、その上限値は1.3であり、0.400であることがより好ましく、0.300であることがさらに好ましく、0.220であることが特に好ましく、その下限値は好ましくは0であり、0.004であることがより好ましく、0.060であることがさらに好ましく、0.070であることが特に好ましい。Xが大きいとポリエステル樹脂(B)のP/(T+X)の値が小さくなる傾向にあり、溶融成形時の環状三量体の副生量が多くなったり、固有粘度の保持率が低下したりする傾向となる。一方Xが小さいと、ポリエステル樹脂(B)の環状三量体含有量が増加する傾向となり、樹脂の生産性や溶融成形で得られる成形体の環状三量体量が多くなり、金型汚染が増大する傾向となる場合がある。
また、Pはポリエステル樹脂(B)1トン当たりのリン原子の含有量(モル/樹脂トン)であり、好ましいPの値としては1.00≦P≦6.50であり、より好ましくは3.20≦P≦5.80である。
Pが小さいとポリエステル樹脂(B)のP/(T+X)の値が小さくなる傾向にあり、溶融成形時の環状三量体の副生量が多くなったり、固有粘度の保持率が低下したりする傾向となる。一方Pがこれより大きいと、ポリエステル樹脂(B)を得る際に、原料であるポリエステル樹脂(A)とリン化合物との接触に時間を要したり、接触時の温度を上げたりする必要が生じる一方、溶融成形時の環状三量体副生量の抑制効果や固有粘度低下の抑制効果はそれほど改良されず、ポリエステル樹脂(B)の生産性が悪化することとなる。
さらに、P/(T+X)の値は、前記Pと、TとXの総和、つまりポリエステル樹脂(B)中に存在する金属原子の量との比を表しており、P/(T+X)の値が大きいほど、ポリエステル樹脂(B)を溶融成形する際に、リン化合物が金属化合物と反応して、それら金属化合物の触媒能を失活させ、環状三量体の副生を抑制したり、固有粘度の低下を抑制したりするものと考えられる。P/(T+X)の値としては、下限値として4.0であり、10.0であることが好ましく、15.0であることが更に好ましく、20.0であることが特に好ましく、上限値としては30であることが好ましい。P/(T+X)の値が小さいと、溶融成形時の環状三量体の副生量が多くなったり、固有粘度の保持率が低下したりする傾向となる。一方、P/(T+X)の値がこれより大きいと、ポリエステル樹脂(B)を得る際に、原料であるポリエステル樹脂(A)とリン化合物との接触に時間を要したり、接触時の温度を上げたりする必要が生じる一方、溶融成形時の環状三量体副生量の抑制効果や固有粘度低下の抑制効果はそれほど改良されず、ポリエステル樹脂(B)の生産性が悪化することとなる。
本発明の製造方法において、リン化合物により接触処理される好適なポリエステル樹脂(A)は製造時にマグネシウム化合物を使用して得られるものであり、そのマグネシウム化合物に由来してポリエステル樹脂(B)中に存する、ポリエステル樹脂(B)1トン当たりのマグネシウム原子の含有量(モル/樹脂トン)Mは、下記式(9)を満足するのが好ましいが、下記式(9')を満足するのが更に好ましく、下記式(9'')を満足するのが特に好ましい。Mが、下記式の範囲外であると、環状三量体含有量が増加する傾向となり、樹脂の生産性や溶融成形で得られる成形体の環状三量体量が多くなり、金型汚染が増大する傾向となったり、ポリエステル樹脂としての色調や熱安定性も低下する傾向となるほか、特にMが大きい場合にはポリエステル樹脂(B)のP/(T+X)が小さくなる傾向にあり、射出成形時の環状三量体の副生量が多くなったり、固有粘度の保持率が低下したりする傾向となる。
(9) 0.040≦M≦0.400
(9') 0.060≦M≦0.300
(9'') 0.110≦M≦0.220
又、本発明において、ポリエステル樹脂(B)中の金属含有量において、リン原子としての含有量Pが下記式(10)を満足するのが好ましいが、下記式(10')を満足するのが更に好ましい。リン原子としての含有量Pが、下記式の左辺未満であると、溶融成形時の環状三量体の生成量が増える傾向となり、一方、右辺を超えると、成形体のヘーズが低下する傾向となる。
(10) 1.00≦P≦6.50
(10') 3.20≦P≦5.80
又、本発明において、上記の如くマグネシウム化合物を用いて製造したポリエステル樹脂(A)から得られるポリエステル樹脂(B)がその中に有する金属含有量において、チタン原子としての含有量T、マグネシウム原子としての含有量Mが下記式(11)を満足するのが好ましく、下記式(11')を満足するのが更に好ましく、下記式(11'')を満足するのが特に好ましく、下記式(11''')を満足するのが最も好ましい。マグネシウム原子とチタン原子との比(M/T)が下記式の範囲外である場合は、得られるポリエステル樹脂(B)の熱安定性が低下する傾向となる。
(11) 0.20≦M/T≦4.00
(11') 0.50≦M/T≦3.50
(11'') 1.00≦M/T≦2.90
(11''') 1.50≦M/T≦2.40
本発明の製造法で得られるポリエステル樹脂(B)の有する末端カルボキシル基量は、20当量/樹脂トン以下であるのが好ましく、15当量/樹脂トン以下であるのがより好ましく、10当量/樹脂トン以下であるのが更に好ましい。末端カルボキシル基量が前記範囲を越えると、環状三量体含有量が増加し、ボトル等の成形時に金型汚染が起こりやすい傾向となり、また、末端カルボキシル基による自己酸触媒加水分解作用による溶融成形時の固有粘度の低下が起こりやすくなる傾向となる。
本発明におけるポリエステル樹脂(B)は、該樹脂中においてT、P及びXで表される各原子の含有量が上記式(1)〜(3)を満たし、該樹脂の固有粘度が0.50〜1.50dl/g、環状三量体含有量が0.5重量%以下であり、且つ、290℃で射出成形して得られた成形体の環状三量体増加量が0.05重量%以下であることが好ましい。
ここで、固有粘度は、フェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合液を溶媒として30℃で測定した値であり、0.60〜1.00dl/gであるのがより好ましく、0.65〜0.90dl/gであるのが更に好ましく、0.70〜0.80dl/gであるのが特に好ましい。固有粘度が前記範囲未満では、ボトル等の成形体としての機械的強度が低下する傾向となり、一方、前記範囲を越える場合には、溶融成形性が劣り、成形時の環状三量体の生成量が増加する傾向となる。
又、ポリエステル樹脂(B)中の環状三量体量は0.5重量%以下であるのが好ましく、0.4重量%以下であるのがより好ましく、0.35重量%以下であるのがさらに好ましく、0.30重量%以下であるのが特に好ましく、0.25重量%以下であるのが最も好ましい。環状三量体含有量が前記範囲を越えると、ボトル等の成形時に金型汚染等を起こし易く、成形体の透明性等の外観の悪化等を招くこととなる。
又、290℃で射出成形して得られた成形体の環状三量体増加量とは、成形体の環状三量体含有量CTと射出成形前の樹脂の環状三量体含有量CTの差[CT−CT]であり、この環状三量体増加量が0.05重量%以下であることが好ましく、0.03重量%以下であることがより好ましい。この範囲を越える場合には、ボトル等の成形時に金型汚染等を起こし易く、成形体の外観の低下等を招くこととなる。
ポリエステル樹脂(B)は、290℃で射出成形したときの固有粘度の保持率が94%以上であることが好ましい。
ここで固有粘度の保持率(%)とは、ポリエステル樹脂の固有粘度を[η0]とし、該ポリエステル樹脂を290℃で射出成形した成形体の固有粘度を[η]としたときの、([η]/[η0])×100を表す。
固有粘度の保持率が前記範囲未満であると、ボトル等の成形体としての機械的強度が低下したり、成形体の寸法安定性が低下する傾向となる。
又、本発明におけるポリエステル樹脂(B)は、ボトル等の成形体としての黄味がかる色調を抑えるため、Lab表色系によるハンターの色差式の色座標b値が4.0以下であるのが好ましく、3.0以下であるのが更に好ましく、2.0以下であるのが特に好ましい。又、明度指数L値が85以上であるのが好ましく、88以上であるのが更に好ましい。
尚、ポリエステル樹脂(B)の前記色座標b値を前記範囲とするために、所謂、有機系調色剤を添加してもよく、その有機系調色剤としては、例えば、ソルベントブルー104、ソルベントレッド135、ソルベントバイオレット36、ピグメントブルー29、同15:1、同15:3、ピグメントレッド187、同263、ピグメントバイオレット19等の染顔料等が挙げられ、その添加量は、前記明度指数L値の低下を抑えることから、3.0重量ppm以下とするのが好ましく、2.0重量ppm以下とするのが更に好ましく、1.5重量ppm以下とするのが特に好ましく、1.0重量ppm以下とするのが最も好ましい。
また、この有機系調色剤の添加時期は、ポリエステル樹脂の製造段階から成形段階に到るまでのいずれの段階でもよい。この有機系調色剤の添加により、前記明度指数L値を好ましくは80以上、更に好ましくは83以上に維持した上で、前記色座標b値を1.0以下とすることができる。
又、本発明のポリエステル樹脂(B)は、280℃で射出成形した厚さ5.0mmの成形板におけるヘーズが5.0%以下であるのが好ましく、3.0%以下であるのが更に好ましい。更に、270℃で射出成形した厚さ5.0mmの成形板におけるヘーズが40%以下であるのが好ましく、20%以下であるのが更に好ましく、10%以下であるのが特に好ましい。なお、成形板のヘーズは、所定温度で成形した厚さ5.0mmの成形板(図1に示す段付成形板のB部)について、日本電色社製ヘーズメーター「NDH−300A」を用いて測定することができる。
本発明のポリエステル樹脂(B)は、ボトル等の成形体としての内容物の風味、香り等への悪影響を抑える等の面から、アセトアルデヒド含有量が3.0重量ppm以下であるのが好ましく、2.0重量ppm以下であるのが更に好ましい。又、280℃で射出成形した成形体におけるアセトアルデヒド含有量が23重量ppm以下であるのが好ましく、20重量ppm以下であるのが更に好ましく、15重量ppm以下であるのが特に好ましく、10重量ppm以下であるのが最も好ましい。
ここで、アセトアルデヒドの含有量は、ポリエステル樹脂(PET)チップ5.0gを純水10.0mlとともに、窒素雰囲気下で内容積50mlのミクロボンベに装入して密封した。これを160℃で2時間加熱したのち、水中のアセトアルデヒドを、イソブチルアルデヒドを内部標準として、島津製作所製GC−14Aガスクロマトグラフを用いて定量し、PET重量当たりの比(重量ppm)表したものである。
このようにして得られた本発明のポリエステル樹脂(B)は、例えば射出成形によって、或いは射出成形によってプリフォームに成形した後、延伸ブロー成形することによって(射出ブロー成形)、または押出成形によって成形したパリソンをブロー成形することによって(押出ブロー成形)、ボトル等に成形し、また押出成形によってシートに成形した後、熱成形することによってトレイや容器等に成形し、或いは該シートを延伸してフィルム等とし、特に飲食品の包装資材等として有用なものとなる。これらの中、射出成形、及び射出成形によってプリフォームを二軸延伸するブロー成形法(射出ブロー成形)によってボトルを成形するのに好適であり、なかでも射出ブロー成形に好適である。例えば炭酸飲料、アルコール飲料、醤油、ソース、みりん、ドレッシング等の液体調味料等の容器として、更には、ヒートセットを施して、果汁飲料、ビタミン飲料、フレーバーティー、ミネラルウォーター等の飲料等の容器として、好適に用いられる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
尚、以下の実施例及び比較例に用いた各種測定法を以下に示す。
<金属原子含有量>
ポリエステル樹脂試料5gを、硫酸存在下に過酸化水素で常法により灰化、完全分解後、蒸留水にて50mlに定容したものについて、プラズマ発光分光分析装置(JOBIN YVON社製ICP−AES「JY46P型」)を用いて定量し、ポリエステル樹脂1トン中のモル量に換算した。
<固有粘度(dl/g)>
ポリエステル樹脂がペレット状の場合は、ペレットを凍結粉砕した樹脂試料0.25gを、又、成形体(プリフォーム)の場合は、ペレットと同程度の大きさに切り出した後、凍結粉砕した樹脂試料0.25gを、フェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合液を溶媒として、濃度(c)を1.0g/dlとして、溶融重縮合樹脂、及び成形体の場合は110℃で30分間、固相重縮合樹脂の場合は120℃で30分間保持することにより溶解させた。その後、得られた溶液につきウベローデ型毛細粘度管を用いて、30℃で、原液との相対粘度(ηrel )を測定し、この相対粘度(ηrel )−1から求めた比粘度(ηsp)と濃度(c)との比(ηsp/c)を求め、同じく濃度(c)を0.5g/dl、0.2g/dl、0.1g/dlとしたときについてもそれぞれの比(ηsp/c)を求め、これらの値より、濃度(c)を0に外挿したときの比(ηsp/c)を固有粘度(dl/g)として求めた。
<末端カルボキシル基量>
ポリエステル樹脂チップを粉砕した後、熱風乾燥機にて140℃で15分間乾燥させ、デシケーター内で室温まで冷却した試料から、0.1gを精秤して試験管に採取し、ベンジルアルコール3mlを加えて、乾燥窒素ガスを吹き込みながら195℃、3分間で溶解させ、次いで、クロロホルム5mlを徐々に加えて室温まで冷却した。この溶液にフェノールレッド指示薬を1〜2滴加え、乾燥窒素ガスを吹き込みながら攪拌下に、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で滴定し、黄色から赤色に変じた時点で終点とした。又、ブランクとして、ポリエステル樹脂試料抜きで同様の操作を実施し、以下の式によって酸価を算出した。
(数1)
酸価(モル/樹脂トン)=(A−B)×0.1×f/W
〔式中、Aは、滴定に要した0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μl)、Bは、ブランクでの滴定に要した0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μl)、Wは、ポリエステル樹脂試料の量(g)、fは、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価である。〕
尚、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価(f)は、試験管にメタノール5mlを採取し、フェノールレッドのエタノール溶液を指示薬として1〜2滴加え、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液0.4mlで変色点まで滴定し、次いで、力価既知の0.1Nの塩酸水溶液を標準液として0.2ml採取して加え、再度、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で変色点まで滴定した。(以上の操作は、乾燥窒素ガス吹き込み下で行った。)以下の式によって力価(f)を算出した。
(数2)
力価(f)=0.1Nの塩酸水溶液の力価×[0.1Nの塩酸水溶液の採取量(μl)/0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の滴定量(μl)]
<エステル化率>
試料を乳鉢で粉砕し、その1.0gをビーカーに精秤し、これにジメチルホルムアミド40mlを加えて攪拌しながら180℃で20分間加熱して溶解させた後、180℃のジメチルホルムアミド10mlでビーカー壁を洗浄し、室温まで冷却する。この溶液を、メトローム社製ポテンショグラフ「E−536型」自動滴定装置にて、複合pH電極「EA−120」を用い、0.1N 水酸化カリウムのメタノール溶液で滴定した。尚、0.1N 水酸化カリウムのメタノール溶液は、JIS K8006の方法により調製、標定した。得られた滴定曲線の変曲点から求めた滴定量〔A(ml)〕と、前記方法により調製、標定し、算出した、0.1N 水酸化カリウムのメタノール溶液のファクター〔f1 〕、及び試料重量〔W(g)〕とから、下式により、遊離の末端カルボキシル基量〔AV(meq/g)〕を求めた。
(数3)
AV(meq/g)={A×f1 ×(1/10)}/W
次いで、乳鉢で粉砕した試料0.3gを三角フラスコに精秤し、これに0.5N 水酸化カリウムのエタノール溶液をホールピペットで20ml加え、更に純水10mlを加えて還流冷却器をセットし、表面温度を200℃にしたプレートヒーター上で、時々攪拌しながら2時間加熱還流して試料を加水分解した。このときの試料液は透明となっている。放冷後、フェノールフタレインを指示薬として0.5N 塩酸水溶液で滴定した。尚、ここで、0.5N 水酸化カリウムのエタノール溶液と0.5N 塩酸水溶液は、JIS K8006の方法により調製、標定した。又、フェノールフタレインは、1gをエタノール90mlに溶解し、純水で100mlに定容したものを用いた。又、同一条件で試料を入れないブランクの状態においても滴定した。その際の、試料の滴定量〔Vs (ml)〕、ブランクの滴定量〔Vb (ml)〕、前記方法により調製、標定し、算出した、0.5N 塩酸水溶液のファクター〔f2 〕、及び試料重量〔W(g)〕とから、下式により、全カルボン酸由来のカルボキシル基量〔SV(meq/g)〕を求めた。
(数4)
SV(meq/g)={(Vb −Vs )×f2 ×(1/2)}/W
次いで、上記により得られたAV(meq/g)、及びSV(meq/g)とから、下式により、エステル化率(%)を求めた。
(数5)
エステル化率(%)={(SV−AV)/SV}×100
<環状三量体含有量(CT)>
樹脂試料(成形板を測定する場合は、図1に示す成形板のA部)10gを、イナートオーブン(ESPEC社製「IPHH−201型」)中で、50L/分の窒素ガス気流下160℃で2時間乾燥させた後、4.0mgを精秤し、クロロホルム/ヘキサフルオロイソプロパノール(容量比3/2)の混合溶媒2mlに溶解させた後、更にクロロホルム20mlを加えて希釈し、これにメタノール10mlを加えて析出させた。引き続いて得られた混合物を濾過して得た濾液を蒸発乾固後、ジメチルホルムアミド25mlに溶解し、その溶液中の環状三量体(シクロトリエチレンテレフタレート)量を、液体クロマトグラフィー(島津製作所製「LC−10A」)で定量した。
[製造例1]
<ポリエステル樹脂(A)−1>の製造
スラリー調製槽、及びそれに直列に接続された2段のエステル化反応槽、及び2段目のエステル化反応槽に直列に接続された3段の溶融重縮合槽からなる連続重合装置を用いた。スラリー調製槽に、テレフタル酸とエチレングリコールをそれぞれ毎時865重量部、485重量部で連続的に供給すると共に、エチルアシッドホスフェートの0.3重量%エチレングリコール溶液を、得られるポリエチレンテレフタレート樹脂(ポリエステル樹脂(A)相当)1トン当たりのリン原子としての含有量PAが0.113モル/樹脂トンとなる量で連続的に添加して、攪拌、混合することにより原料スラリーを調製した。このスラリーを、窒素雰囲気下で260℃、相対圧力50kPa(0.5kg/cm2 G)、平均滞留時間4時間に設定された第1段目のエステル化反応槽、次いで、窒素雰囲気下で260℃、相対圧力5kPa(0.05kg/cm2 G)、平均滞留時間1.5時間に設定された第2段目のエステル化反応槽に連続的に移送して、エステル化反応させた。又、その際、第2段目のエステル化反応槽に設けた上部配管を通じて、酢酸マグネシウム4水和物の0.6重量%エチレングリコール溶液を、得られるポリエチレンテレフタレート樹脂(ポリエステル樹脂(A)相当)1トン当たりのマグネシウム原子としての含有量MAが0.144モル/樹脂トンとなる量で連続的に添加すると共に、第2段目のエステル化反応槽に設けた別の上部配管を通じてエチレングリコールを毎時30重量部連続的に追加添加した。そのとき、上記の方法により測定したエステル化生成物のエステル化率は、第1段目においては85%、第2段目においては95%であった。
引き続いて、前記で得られたエステル化反応生成物を連続的に溶融重縮合槽に移送する際、その移送配管中のエステル化反応生成物に、テトラ−n−ブチルチタネートを、チタン原子の濃度0.15重量%、水分濃度を0.5重量%としたエチレングリコール溶液として、得られるポリエチレンテレフタレート樹脂(ポリエステル樹脂(A)相当)1トン当たりのチタン原子としての含有量TAが0.073モル/樹脂トンとなる量で連続的に添加しつつ、270℃、絶対圧力2.6kPa(20Torr)に設定された第1段目の溶融重縮合槽、次いで、278℃、絶対圧力0.5kPa(4Torr)に設定された第2段目の溶融重縮合槽、次いで、280℃、絶対圧力0.3kPa(2Torr)に設定された第3段目の溶融重縮合槽に連続的に移送して、得られる樹脂の固有粘度(〔η1 〕)が0.58dl/gとなるように各重縮合槽における滞留時間を調整して溶融重縮合させ、重縮合槽の底部に設けられた抜き出し口から連続的にストランド状に抜き出して、水冷しつつ、カッターで切断してペレット状粒状体(粒重25±5mg)とした溶融重縮合樹脂を製造した。
引き続いて、前記で得られた溶融重縮合樹脂ペレットを、窒素雰囲気下で約160℃に保持された攪拌結晶化機内に滞留時間が約30分となるように連続的に供給して結晶化させた後、塔型の固相重縮合装置に連続的に供給し、窒素雰囲気下で215℃で、得られる樹脂の固有粘度(〔η〕)が約0.76dl/gとなるように滞留時間を調整して固相重縮合させることにより、ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)−1を製造した。
得られたポリエチレンテレフタレート樹脂(A)−1について、チタン原子の含有量TA(モル/樹脂トン)、マグネシウム原子の含有量MA(モル/樹脂トン)、及びリン原子の含有量PA(モル/樹脂トン)、また固有粘度[η1](dl/g)、末端カルボキシル基量(当量/樹脂トン)を測定し、結果を表1に示した。
[製造例2]
<ポリエステル樹脂(A)−2>の製造
第1段目のエステル化反応槽の相対圧力を100kPa(1.0kg/cm2 G)とすることにより、第1段目におけるエステル化率を88%、第2段目におけるエステル化率を97%としたこと以外は、製造例1のポリエステル樹脂(A)−1と同様に操作して、ポリエステル樹脂(A)−2を得た。ポリエステル樹脂(A)−1と同様に分析して、結果を表1に示した。
[製造例3]
<ポリエステル樹脂(A)−3>の製造
触媒の製造
1000mlガラス製ビーカーに脱イオン水500mlを秤取し、氷浴にて冷却した後攪拌しながら四塩化チタン5gを滴下した。塩化水素の発生が止まったら氷浴より取り出し、攪拌しながら25%アンモニア水を滴下し、液のpHを8にした。生成したチタン水酸化物の沈殿は2500回転、15分間の遠心沈降で上清と分離した。その後、得られたチタン水酸化物の沈殿を脱イオン水で5回洗浄した。洗浄後の固液分離は2500回転、15分間の遠心沈降で行った。洗浄後のチタン水酸化物を70℃、1.3kPa(10Torr)、18時間の減圧乾燥で水分を除去し、固体状チタン化合物を得た。得られた固体状チタン化合物は重縮合触媒と使用する前に10ミクロン程度の粒子に粉砕した。
このようにして得られた固体状チタン化合物の付着水分量をカールフィッシャー水分計により測定したところ、6.7重量%の水分を含有していることが認められた。また熱重量測定により加熱減量を測定したところ、280℃までに当初重量の7.50重量%、280℃から600℃までにさらに2.17重量%が減量し、この減量は水分および窒素化合物の脱離によるものであることが分かった。触媒に含まれる窒素は1.3重量%であり、塩素は14ppmであった。なお、窒素は微量全窒素分析装置(化学発光法)で、塩素はクロマトグラフィーで分析し、それぞれアンモニア、塩化水素として脱離するとして計算した。
樹脂の製造
定常運転時に33500重量部の反応液が滞留する反応器内に、6458重量部/時の高純度テレフタル酸と2909重量部/時のエチレングリコールとを混合して調製されたスラリーを連続的に供給し、攪拌下、窒素雰囲気で260℃、0.9kg/cmGに維持された条件下でエステル化反応を行った。さらにエステル化反応の際には上記のようにして調製した触媒としての固体状チタン化合物をチタン原子として、0.187重量部/時および酢酸マグネシウムをマグネシウム原子として、0.187重量部/時の割合で供給した。このエステル化反応では、水とエチレングリコールとの混合液が留去された。
エステル化反応物(低次縮合物)は、平均滞留時間が3.5時間になるように制御して、連続的に系外に抜き出した。上記で得られたエチレングリコールとテレフタル酸との低次縮合物の数平均分子量は、600〜1300(3〜5量体)であった。
次いで、上記低次縮合物中に、リン酸トリブチル0.831重量部/時を供給しながら、280℃、1Torrの条件下で液相重縮合反応を行った。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂の極限粘度(IV)は0.55dl/gであった。
さらに、この液相重縮合により得られたポリエチレンテレフタレート樹脂は、窒素雰囲気下、約170℃で2時間結晶化を行った後、塔型の固相重合機に充填し、窒素雰囲気下210℃で25時間固相重合を行った。得られたポリエステル樹脂(A)−3を、上記製造例1のポリエステル樹脂(A)−1と同様に分析して、結果を表1に示した。
[実施例1]
製造例1で得たポリエステル樹脂(A)−1の2.5kgを内容積5Lの処理槽に入れ、5wt%のエチルアシッドホスフェート(EAP)水溶液(リン原子として3200重量ppm)2.0Lを添加し、25℃にて4時間接触処理した後、ろ別及び水洗浄を行い、160℃にて4時間窒素気流下で乾燥させて、ポリエステル樹脂(B)−1を製造した。
得られたポリエステル樹脂(B)−1について、チタン原子の含有量T(モル/樹脂トン)、マグネシウム原子の含有量M(モル/樹脂トン)、及びリン原子の含有量P(モル/樹脂トン)を測定し、更にその結果からP/(T+M)を算出し、結果を表1に示した。又、得られたポリエステル樹脂(B)−1について、固有粘度〔η2〕(dl/g)、末端カルボキシル基量(当量/樹脂トン)、及び環状三量体含有量[CT]を測定し、結果を表2−1に示した。
さらに、得られたポリエステル樹脂(B)−1を、イナートオーブン(ESPEC社製「IPHH−201型」)中で、40L/分の乾燥エアー気流下160℃、4時間で乾燥させた後、射出成形機(「M−70AII−DM」)の窒素気流下のホッパーに投入し、シリンダー温度290℃、背圧0.5MPa、射出率ポリプロピレン換算40cc/秒、保圧力3.5MPa、金型冷却水温度21℃、射出時間25秒、冷却時間40秒、成形サイクル73秒の設定で射出成形を実施し、図1に示される形状の、縦50mm、横100mmで、横方向に6mmから3.5mmまで段差0.5mmの6段階の厚みを有する段付成形板(50g)を得た。(尚、図1において、Gはゲート部である。)
得られた段付成形板の固有粘度〔η〕(dl/g)及び環状三量体含有量[CT](重量%)を測定し、結果から固有粘度の保持率[η]/[η]、及び環状三量体の増加量[CT]-[CT]を算出し、結果を表2−1に示した。
[実施例2〜実施例5、比較例9
実施例1におけるポリエステル樹脂(A)−1とリン化合物との接触条件を表2−1に記載のものとした以外は、実施例1と同様に操作してポリエステル樹脂(B)−2〜(B)―6を製造した。得られた各樹脂につき、実施例1と同様にして成形評価及び分析を行い、その結果を表2−1に示した。
[実施例
実施例2においてポリエステル樹脂(A)−2を用いること以外は、実施例2と同様に操作して、ポリエステル樹脂(B)−7を製造した。得られた樹脂につき、実施例2と同様にして成形評価を行い、分析した。結果を表2−1に示す。
[比較例1]
実施例1においてポリエステル樹脂(A)−1と接触させるリン化合物溶液として、1.0wt%のリン酸水溶液(リン原子として3200重量ppm)2.0Lを添加し、25℃にて4時間接触処理すること以外は、実施例1と同様に操作してポリエステル樹脂(B)−11を製造した。得られた樹脂につき、実施例1と同様にして成形評価を行い、分析した。結果を表2−2に示す。
[比較例2]
実施例1においてポリエステル樹脂(A)−1と接触させるリン化合物溶液として、1.0wt%のリン酸水溶液(リン原子として3200重量ppm)2.0Lを添加し、90℃にて0.5時間接触処理すること以外は、実施例1と同様に操作してポリエステル樹脂(B)−12を製造した。得られた樹脂につき、実施例1と同様にして成形評価を行い、分析した。結果を表2に示す。
[比較例3]
実施例1においてポリエステル樹脂(A)−1と接触させるリン化合物溶液として、1.5wt%のトリメチルホスフェート(TMP)の水溶液(リン原子として3200重量ppm)2.0Lを添加し、25℃にて4時間接触処理すること以外は、実施例1と同様に操作してポリエステル樹脂(B)−13を製造した。得られた樹脂につき、実施例1と同様にして成形評価を行い、分析した。結果を表2−2に示す。
[比較例4]
実施例1においてポリエステル樹脂(A)−1と接触させるリン化合物溶液として、30wt%のトリメチルホスフェートの水溶液(リン原子として66000重量ppm)2.0Lを添加し、100℃にて1時間接触処理すること以外は、実施例1と同様に操作してポリエステル樹脂(B)−14を製造した。得られた樹脂は固有粘度の低下が著しく、射出成形評価が出来なかったが、分析は実施例1と同様にして行った。結果を表2−2に示す。
[比較例5]
実施例1において、ポリエステル樹脂(A)−3を用い、ポリエステル樹脂(A)−3と接触させるリン化合物溶液として、0.0695wt%のトリメチルホスフェートの水溶液(リン原子として150重量ppm)2.0Lを添加し、25℃にて4時間接触処理すること以外は、実施例1と同様に操作してポリエステル樹脂(B)−15を製造した。得られた樹脂につき、実施例1と同様にして成形評価を行い、分析した。結果を表2−2に示す。
[比較例6]
比較例5においてポリエステル樹脂(A)−3とリン化合物溶液との接触条件を表2−2に記載のものとする以外は、比較例5と同様に操作してポリエステル樹脂(B)−16を製造した。得られた樹脂につき、比較例5と同様にして成形評価を行い、分析した。結果を表2−2に示す。
[比較例7]
比較例5において、ポリエステル樹脂(A)−3と接触させるリン化合物溶液として、1.5wt%のエチルアシッドホスフェートの水溶液(リン原子として3200重量ppm)2.0Lを添加した以外は比較例5と同様に操作してポリエステル樹脂(B)−17を製造した。得られた樹脂につき、比較例5と同様にして成形評価を行い、分析した。結果を表2−2に示す。
[比較例8]
ポリエステル樹脂(A)−1を、リン化合物溶液と接触させることなくそのまま実施例1と同様に成形評価し、分析した。結果を表2−2に示す。
Figure 0005165186
Figure 0005165186
Figure 0005165186
(a)は成形評価における射出成形した段付成形板の平面図、(b)は側面図であり、縦50mm、横100mmで、横方向に6mmから3.5mmまで段差0.5mmの6段階の厚みを有する。
符号の説明
A 成形板の環状三量体測定試料部
B 成形板のヘーズ測定試料部
G ゲート部

Claims (9)

  1. テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分とから、触媒としてチタン化合物を用いて製造されたポリエステル樹脂(A)を酸性リン酸エステルまたはその溶液と接触させ、接触後に得られるポリエステル樹脂(B)が、下記式(1)〜(3)を満たすことを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。
    (1)0.002≦T≦0.2
    (2)30≧P/(T+X)≧4.0
    (3)1.3≧X≧0
    但し、式(1)〜(3)において、Tはポリエステル樹脂(B)1トン当たりのチタン原子の含有量(モル/樹脂トン)、Xはポリエステル樹脂(B)1トン当たりのチタン原子以外の金属原子の含有量(モル/樹脂トン)、およびPはポリエステル樹脂(B)1トン当たりのリン原子の含有量(モル/樹脂トン)をそれぞれ表す。
  2. ポリエステル樹脂(A)は、その末端カルボキシル基量が、20当量/樹脂トン以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
  3. ポリエステル樹脂(A)が、チタン化合物触媒と、マグネシウム化合物及びリン化合物を用いて製造され、下記式(4)〜(8)を満たすポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
    (4)0.020≦TA≦0.200
    (5)0.040≦MA≦0.400
    (6)0.020≦PA≦0.300
    (7)0.50≦MA/PA≦3.00
    (8)0.20≦MA/TA≦4.00
    但し、式(4)〜(8)において、TAはポリエステル樹脂(A)1トン当たりのチタン原子の含有量(モル/樹脂トン)、MAはポリエステル樹脂(A)1トン当たりのマグネシウム原子の含有量(モル/樹脂トン)、およびPAはポリエステル樹脂(A)1トン当たりのリン原子の含有量(モル/樹脂トン)をそれぞれ表す。
  4. テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分とから、触媒としてチタン化合物を用いて製造されたポリエステル樹脂(A)を酸性リン酸エステルまたはその溶液と接触させることにより得られるポリエステル樹脂(B)であって、フェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合液を溶媒として30℃で測定した固有粘度が0.50〜1.50dl/gであり、且つ下記式(1)〜(3)を満たすことを特徴とするポリエステル樹脂。
    (1)0.002≦T≦0.2
    (2)30≧P/(T+X)≧4.0
    (3)1.3≧X≧0
    但し、式(1)〜(3)において、Tはポリエステル樹脂(B)1トン当たりのチタン原子の含有量(モル/樹脂トン)、Xはポリエステル樹脂(B)1トン当たりのチタン原子以外の金属原子の含有量(モル/樹脂トン)、およびPはポリエステル樹脂(B)1トン当たりのリン原子の含有量(モル/樹脂トン)をそれぞれ表す。
  5. ポリエステル樹脂(B)は、その末端カルボキシル基量が、20当量/樹脂トン以下であることを特徴とする請求項に記載のポリエステル樹脂。
  6. ポリエステル樹脂(B)は、チタン化合物触媒とマグネシウム化合物を用いて製造されたポリエステル樹脂(A)を酸性リン酸エステルまたはその溶液と接触させて得られ、下記式(9)〜(11)を満たすことを特徴とする請求項4又は5に記載のポリエステル樹脂。
    (9) 0.040≦M≦0.400
    (10)1.00≦P≦6.50
    (11)0.20≦M/T≦4.00
    但し、式(9)〜(11)において、Mはポリエステル樹脂(B)1トン当たりのマグネシウム原子の含有量(モル/樹脂トン)、Pはポリエステル樹脂(B)1トン当たりのリン原子の含有量(モル/樹脂トン)、Tはポリエステル樹脂(B)1トン当たりのチタン原子の含有量(モル/樹脂トン)をそれぞれ表す。
  7. ポリエステル樹脂(B)は、環状三量体含有量が0.5重量%以下であり、且つ、290℃で成形して得られた成形体の環状三量体増加量が0.05重量%以下であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のポリエステル樹脂。
  8. ポリエステル樹脂(B)は、290℃で射出成形したときの固有粘度の保持率が94%以上であることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載のポリエステル樹脂。
  9. ポリエステル樹脂(B)は、射出成形用または射出ブロー成形用であることを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載のポリエステル樹脂。
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