JP5158242B2 - 高圧放電ランプ点灯装置 - Google Patents
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Description
一方、高圧放電ランプを長期間同じ状態で点灯した場合には、突起が複数形成したり、電極の先端表面部に凹凸が発生したりすることがある。電極先端の表面部が乱れると、放電位置が不安定となり、アーク移動による照度低下やチラツキが発生することが知られている。
同図(a)はランプ電圧が低い場合を示し、同図(b)はランプ電圧が高い場合を示す。同図(a)に示すように、ランプ電圧が低い場合には、周波数60〜1000Hzの範囲から選択された周波数の交流電流を、定常点灯時の基本的な周波数(基本周波数)の交流電流として供給し、かつ、所定の間隔をもって、上記基本周波数よりも低い周波数であって5〜200Hzの範囲から選択された周波数を供給する。そして、ランプ電圧が上昇した場合には、同図(b)に示すように、所定の間隔をもって供給する基本周波数よりも低い周波数の幅を広くする。これにより、突起の温度を最適な状態に常に保つことができる。
すなわち、この技術によれば、電極先端に突起を形成させて、当該突起を起点として安定なアーク放電を形成することができ、また、ランプの点灯電圧が変化した場合であっても、アーク起点となるべき突起のみを発生、維持するとともに、当該突起以外の余計な突起は消失させることができ、電極の長寿命化を図ることが可能になる。
しかし、上記点灯方式によりランプを点灯させる場合であっても、ランプ電圧の変化がない期間においては、定常点灯時の基本周波数よりも低い一定の周波数を所定の間隔で間歇的に挿入してランプを点灯させることになる。
陽極サイクル時に突起の温度は上昇してタングステンを気相中に供給する。その後に極性反転して陰極サイクルとなった時に突起の温度は急激に低下する。
その時に突起根元付近が気相からのタングステンの凝固する温度となると思われ、図12(b−1)に示すように、突起根元付近に、気相からの多くタングステンが堆積する。また、時間幅も長いためアーク中のイオン化したタングステンも多く引っ張る事ができ、より多く堆積する。
突起根元に多く堆積したタングステンは次の低周波で陽極サイクルとなった時に溶融し突起の一部となる。しかし、その時に、図12(b−2)に示すように、堆積したタングステンを溶融して突起の一部として取り込まれた時に、突起が移動してしまうことがある。つまり、低周波の陽極サイクルで供給したタングステンを直後の陰極サイクルで過剰に堆積させる事が突起移動に繋がり、この細かい移動を繰り返して、突起が移動してしまうものと考えられる。
すなわち、本発明者が鋭意検討したところ、点灯中、例えば10分以上ランプ電圧が変化しない状況において、その期間、低周波数が変化せず、また低周波数が基本周波数に挿入されるタイミングが変化しない場合に、上記突起の位置ずれが生じることが分かった。
電極は、上記したようにアーク放電による熱を受けて突起が溶融・蒸発し、その蒸発したものが再度突起として堆積することを繰り返しているが、基本周波数を供給する期間が一定であると、蒸発したタングステンが突起根元付近に多く凝固して電極に付着する位置がある程度決められて、低周波数が変化しない状況においては、発光管内における熱対流の影響を受けて、電極先端以外の位置に堆積が生じたものと推測される。
さらに、点灯電圧が上昇するため、図11に示したように、挿入された低周波の幅は広がる。このように、低周波数が低くなると突起は加熱されて蒸発量が増え、発光管内壁に黒化が生じる。これを何度も繰り返されることで、照度維持率が時間と共に低下してしまう。
本発明は上記問題を解決するものであって、定常点灯時の基本周波数よりも低い低周波を所定の間隔で間歇的に挿入してランプを点灯させ、点灯電圧の変化に応じて、上記低周波の周波数を変える高圧放電ランプ点灯装置において、突起の位置ずれによる照度維持率の低下を抑制し、放電ランプの長寿命化を図ることができる点灯装置を提供すること。
突起の位置ずれによる照度維持率の低下を抑制することを目的とする。
このように、点灯電圧の変化に応じて、上記低周波の周波数を変えることに加え、基本周波数を供給する期間を漸次増減させ、低周波数が挿入される間隔を変化させることで、突起の位置ずれを抑制することができ、また、これにより、前記特許文献1に記載される効果も得ることができる。
すなわち、本発明においては、次のようにして前記課題を解決する。
(1)石英ガラスからなる放電容器内に一対の電極が対向配置されるとともに水銀が封入されてなる高圧放電ランプと、この放電ランプに対して交流電流を供給する給電装置とを備えて構成される高圧放電ランプ点灯装置において、前記給電装置は、前記高圧放電ランプに対して、定常点灯時の周波数からなる基本周波数の交流電流とこの基本周波数よりも低い低周波数の交流電流を交互に供給するものであるとともに、前記基本周波数の交流電流は、60〜1000Hzの範囲から選択された周波数の交流電流であり、前記低周波数の交流電流は、前記基本周波数の交流電流の周波数よりも低い5〜200Hzの範囲から選択された周波数の交流電流であり、かつ、半サイクル以上の長さであって、前記低周波数の交流電流が発生してから次の前記低周波数の交流電流が発生するまでの間隔が120秒以下であり、前記放電ランプの点灯電圧の変化に対応して、当該低周波の周波数を変化させ、前記給電装置は、少なくとも前記放電ランプの点灯電圧が同一点灯電圧で継続する期間において、前記高圧放電ランプに、前記基本周波数を供給する期間が所定時間ごとに漸次増減するよう交流電流を供給する。
(2)上記(1)において、前記給電装置は、前記低周波の周波数を、放電ランプの点灯電圧が上昇したときは低い周波数に、放電ランプの点灯電圧が低下したときは高い周波数に変化させる。
さらに、特許文献1に記載のものと同様、ランプの点灯電圧が変化した場合であっても、アーク起点となるべき突起のみを発生、維持するとともに、当該突起以外の余計な突起は消失させることができ、電極の長寿命化を図ることが可能になる。
高圧放電ランプ10は、石英ガラスからなる放電容器によって形成された概略球形の発光部11を有する。この発光部11の中には一対の電極20a,20bが2mm以下という極めて小さい間隔で対向配置している。また、発光部11の両端部には封止部12が形成される。この封止部12には、モリブデンよりなる導電用の金属箔13が、例えばシュリンクシールにより気密に埋設されている。金属箔13の一端には電極20a,20bの軸部が接合しており、また、金属箔13の他端には外部リード14が接合し、給電装置(30)から電力が給電される。
また、ハロゲンは、沃素、臭素、塩素などが水銀あるいはその他の金属と化合物の形態で封入される。ハロゲンの封入量は、10-6μmol/mm3〜10-2μmol/mm3の範囲から選択される。ハロゲンの機能は、いわゆるハロゲンサイクルを利用した長寿命化であるが、本発明の高圧放電ランプのように極めて小型で極めて高い点灯蒸気圧のものは、放電容器の失透防止という作用もある。
高圧放電ランプの数値例を示すと、例えば、発光部の最大外径9.4mm、電極間距離1.0mm、放電容器内容積55mm3、定格電圧70V、定格電力180Wであり交流方式で電力が供給される。
このような、高い水銀蒸気圧や管壁負荷値を有することがプロジェクタやオーバーヘッドプロジェクタのようなプレゼンテーション用機器に搭載された場合に、演色性の良い放射光を提供することができる。
図3は本発明における放電ランプの点灯波形の概要を説明する図である。
図3Aは前記特許文献1に記載される点灯方式(以下A点灯方式という)を示し、同図A(a)〜(b)は放電ランプに供給されるランプの電流波形の一例を示し、縦軸は電流値、横軸は時間を表し、同図A(a)はランプ電圧が低い場合を示し、同図A(b)はランプ電圧が高い場合を示す。
前記したように、ランプ電圧が低い場合には、同図A(a)に示すように、定常点灯時の基本的な高い周波数(基本周波数)の交流電流を供給し、かつ、所定の間隔をもって、基本周波数よりも低い周波数(低周波)を供給する。そして、ランプ電圧が上昇した場合には、同図A(b)に示すように、所定の間隔をもって供給する上記低周波の幅を広くする(周波数を低下させる)。
図3Bに示すように、B点灯方式においては、同図B(a)(b)(c)に示すように、基本周波数が出力される期間(基本周波サイクル数)を少しずつ減少させるとともに低周波が出力される期間(低周波サイクル数)を少しずつ増大させ、基本周波数が出力される期間(基本周波サイクル数)が最低値になったら、基本周波数が出力される期間(基本周波サイクル数)を少しずつ増大させながら、低周波が出力される期間(低周波サイクル数)を少しずつ減少させる。すなわち、基本周波数のサイクル数は同図B(d)に示すように、時間とともに一定の割合で増大、減少を繰り返す。
この説明では1秒ごとに1サイクルの変動率の例をもって説明しているが、これら数値についてはこの限りではなく、任意に設定することができる。
ランプ 275W
定格電圧 80V
ランプ内容積 80mm3
極間距離 1.2mm
水銀量 0.28mg/mm3
希ガス(具体的にはアルゴン) 13kPa
ハロゲン(例えば、沃素、臭素、塩素)量10-6〜10-2μmol/mm3
すなわち、S5で(a)から(b)に遷移し、低周波の幅を広くし、S6→S7→S8→S9→S10のように基本周波数のサイクル数を時間とともに増減させる。すなわち、前記図3Aに示すように点灯電圧に応じて低周波の幅を変化させるとともに、図3Bに示したように、基本周波数のサイクル数を時間とともに一定の割合で増大、減少させる。
このように、A点灯方式により点灯電圧に応じた幅の低周波を供給し、点灯電圧に応じた電流負荷を突起に供給することにより、突起形状を安定化しフリッカを抑制することができ、また、B点灯方式により点灯させることにより、突起移動を抑制し、照度低下を抑制できるとともに、過剰な負荷を電極に与えることがない。
この結果、相乗効果として点灯電圧の上昇を抑制し、黒化を抑制することができる。
すなわち、A点灯方式と、B点灯方式を組み合わせてランプを点灯させることにより、前記したように、照度維持率の低下を抑制することができ、さらに、ランプ電圧の変動に対してもアーク起点となるべき突起のみを発生、維持することができ、ランプの長寿命化を図ることができる。
給電装置30は、直流電圧Vdcが供給されて、これを降圧する降圧チョッパ回路U1と、降圧チョッパ回路U1の出力側に接続され直流電圧を交流電圧に変化させて放電ランプ10に供給するフルブリッジ型インバータ回路U2(以下、「フルブリッジ回路」ともいう)と、この高圧放電ランプ10に直列接続されたコイルLh、コンデンサChで構成されたスタータ回路U3と、上記フルブリッジ回路U2のスイッチング素子Q1〜Q4を駆動するドライバ51と、制御部U4からなる。
制御部U4は例えばマイクロプロセッサ等の処理装置で構成することができ、本図ではその機能構成をブロック図で示している。
上記スイッチング素子Qxは、制御部U4が出力するゲート信号Gxで駆動され、スイッチング素子Qxを所定のデューティで駆動することにより、入力直流電圧Vdcをこのデューティに応じた電圧に降圧する。降圧チョッパ回路U1の出力側には、電圧検出用の抵抗の直列回路Vxが設けられている。
フルブリッジ回路U2は、ブリッジ状に接続したスイッチング素子Q1〜Q4から構成され、これらのスイッチング素子Q1〜Q4はドライバ51が出力するゲート信号G1〜G4により駆動され、対角に配置されたスイッチング素子Q1、Q4、スイッチング素子Q2、Q3を交互にオンにすることにより、スイッチング素子Q1、Q2の接続点と、スイッチング素子Q3、Q4の接続点間に矩形波状の交流電圧が発生する。
従って、スタータ回路U3は始動時のみ高い周波数で動作し、高電圧が放電ランプ10の両端に印加され、ランプが点灯する。
上記回路において、ランプ定常時におけるフルブリッジ回路U2の駆動周波数を変更する場合は、フルブリッジ回路U2のスイッチング素子Q1〜Q4のスイッチング周期を調整することで達成でき、また、出力電圧は降圧チョッパ回路U1のスイッチング素子Qxの動作デューティを調整することで達成できる。
降圧チョッパ回路U1のスイッチング素子Qxは、制御部U4が出力するゲート信号Gxのデューティに応じてオン/オフし、ランプ10に供給される電力が変化する。すなわち、電力アップならQxのデューティを下げるなどして、その入力された電力調整信号値に合致する電力値になるようにゲート信号Gxの制御を行う。
また、上記基本周波数よりも低い周波数の低周波を決定する低周波設定値制御部73とこれを受けて信号を発生する低周波発生部70、低周波発生部70から出力される低周波信号のサイクル数をカウントする第2のサイクル数カウンタ71、低周波発生部70から出力される低周波信号のカウント値の設定値を保持する第2のカウント設定値制御部72、高周波発生部61、低周波発生部71の出力のいずれか一方を選択的にドライバ51に出力するセレクタ80を有する。
電力制御部52は、電流検出用の抵抗Rxの両端電圧と、電圧検出用の抵抗Vxにより検出された電圧から、ランプ電流I、ランプ電圧Vを求めてランプ電力を演算し、この電力が点灯電力指令に一致するような降圧チョッパ回路U1のスイッチング素子Qxのデューティを制御する。
ここでいう高周波とは、前記した高圧放電ランプを定常的に点灯する際の基本周波数であり、低周波とは前記した基本周波数の中に定期的に挿入される交流電流の周波数である。
前記特許文献1に開示されているように、上記基本周波数は60〜1000Hzの範囲から選択されるものであり、低周波は上記60〜1000Hzの範囲から選択される基本周波数よりも低い周波数であり、5〜200Hzの範囲から選択されるものである。
また、上記低周波は、半サイクル以上の長さであって、基本周波数と低周波の交流電流が交互に発生しているときの低周波は5サイクル以下の長さであり、前記低周波数の交流電流が発生してから次の前記低周波数の交流電流が発生するまでの間隔は120秒以下である。上記低周波の周波数、挿入される長さおよび挿入される間隔は、放電ランプの設計、特に電極の熱的な設計との関係において選定される。
このように高周波と低周波を組み合わせた波形の交流電流を供給することで、低周波数の交流電流を供給して電極先端部を溶融して、アーク起点となる突起以外の余計な突起の発生を防止することができるようになる。
ここで、第2の突起の発生成長を抑制するためには、電極表面の温度を時間的に変化させることが本質的に重要である。低い周波数が5Hz未満であったり、低い周波数を0.01秒未満の間隔で発生させ続けたり、低い周波数を5周期を越えて発生させ続けた場合は、電極先端の温度上昇が大きくなり過ぎるため、第2の突起ばかりか、本発明に係わる超高圧放電ランプにとって必要不可欠である第1の突起までも消失させてしまう。
逆に、低い周波数が200Hzを超えたり、半周期未満の低い周波数を挿入した場合は、第2の突起が発生する中間的な温度領域の十分な温度上昇が得られないため、第2の突起の発生成長を抑制できない。また、低い周波数が発生する間隔が120秒を超えた場合も、定常点灯の間に第2の突起が浸食し得ないまでに成長してしまう。
図5においては、まず高周波設定値制御部63において決定された周波数により高周波発生部60から高周波(基本周波数)でDuty(オン/オフ比)50%の矩形波信号が生成および出力される。セレクタ80はR側に選択されているものとし、その場合は高周波発生部60の信号はセレクタ80を介してドライバ51に送出される。
これにより、ドライバ51から、ゲート信号G1〜G4がフルブリッジ回路U2のスイッチング素子Q1〜Q4に供給され、スイッチング素子Q1〜Q4は上記高周波信号に応じた周波数で駆動される。
そして、フルブリッジ回路U2から上記高周波信号の周波数の矩形波状の交流電圧が発生する。この交流電圧は放電ランプ10に供給される。
また、高周波発生部60からの高周波信号はサイクル数カウンタ61にて、そのサイクル数がカウントされている。カウント設定値制御部62はサイクル数カウンタ61の設定値を保持する機能であり、前記サイクル数カウンタ61はカウントしたサイクル数が前記設定値と一致すれば、すなわち高周波信号が所定のサイクル数の実行が完了したならば信号S’を出力し、セレクタ80をS側に切り替える。また、これと同時に、高周波発生部60の動作を停止させるとともに低周波発生部70を起動する。
例えば、点灯電圧(ランプ電圧)に応じて前記したように低周波の幅を変化させる場合には、点灯電圧を信号化した電圧信号Svxに基づいて低周波設定値制御部73の設定値を制御する。
低周波発生部70からの信号はサイクル数カウンタ71にて、そのサイクル数がカウントされている。カウント設定値制御部72はサイクル数カウンタ71の設定値を保持する機能であり、前記サイクル数カウンタ71は前記設定値と一致すれば、すなわち低周波信号が所定のサイクル数を実行したならば信号R’を出力し、セレクタ80をR側に切り替えるともに低周波発生部70を停止させるとともに高周波発生部60を起動する。これにより低周波発生部60からドライバ51へ出力されるのでフルブリッジ回路U2は再び高周波の交流電圧を出力する。
高周波発生部60 370Hz
カウント設定値制御部62 100.5サイクル
低周波発生部70 90Hz
カウント設定値制御部72 1サイクル
すなわち、前記図3Bに示したように、予め設定された最大サイクル数FcyMaxから所定の変動率で、サイクル数が減じるように設定値を変化させていくことで高周波(基本周波数)が出力される期間を少しずつ短くし、予め設定された最小サイクル数FcyMinに到達したら、今度は1秒ごとに1サイクルずつ増加させることで高周波が出力される期間を少しずつ長くなるようにする(前記B点灯方式)とともに、前記図3Aに示したように、点灯電圧が変化したとき、低周波設定値制御部63により決定される低周波を供給する(前記A点灯方式)。
すなわち、前記説明では、放電ランプの点灯電圧が変化した場合、低周波の幅を変化させているが、当該変化に対応して、低周波のサイクル数も変化させるようにしてもよい。
これら高周波設定値制御部63、カウント設定値制御部62、カウント設定値制御部72の設定値に関わるパラメータの変化は、いずれか一つを変化させてもよいし、2つあるいは3つの要素を全て変化させてもかまわない。さらに、放電ランプの点灯電圧が変化した場合、高周波(基本周波数)のパラメータ、例えば、周波数も変化させてもよい。
なお、「放電ランプの点灯電圧の変化に応じて」とは、点灯電圧の変化に対応させてリニアに制御するだけでなく、電圧値の閾値を設けて、この閾値を上回る場合あるいは下回る場合に低周波数のパラメータを変化させる場合も含む。
さらに、ランプ電圧が上昇した場合は高周波(基本周波数)を高くしてもよい。定常周波数が高いほど第一の突起が高く形成されるという性質を利用して、ランプ電圧を低くできるからである。
以上、ランプ電圧が上昇した場合について説明したが、ランプ電圧が低下した場合(すなわち、ランプ電流が増加した場合)については、各パラメータを逆に変化させることになる。
なお、「放電ランプの点灯電圧の変化に応じて」とは、点灯電圧の変化に対応させてリニアに制御するだけでなく、電圧値の閾値を設けて、この閾値を上回る場合あるいは下回る場合に低周波数のパラメータを変化させる場合も含む。
上記基本周波数の発生時間及び基本周波数の変動率は、以下の条件1,条件2を満たすように設定するのが望ましい。
[条件1] サイクル数が最大となる時点において、基本周波数の発生時間を、低周波周波数の半周期(s)の2倍以上、1000倍以下とする。
[条件2] 基本周波数のサイクル数が1サイクル増減するのに要する時間を「サイクル増減速度(s)」と称すると、サイクル増減速度(s)を0.5s以上、10s以下とする。
なお、例えば、サイクル増減速度が1sであるとは、1s経過するごとに基本周波数のサイクル数が1サイクル増減することである。
上記条件1のように設定するのが望ましい理由は以下の通りである。
突起形状を良好に保つためには、前記図3B(d)に示す基本周波数のサイクル数が最大となる時点(FcyMax)において、基本周波数を連続的に形成する期間を適正な範囲に設定する必要がある。
基本周波数のサイクル数が最大となる時点において、基本周波数を発生する期間が短すぎる場合には、FcyMaxとFcyMinの幅が小さくなり、スイング幅をほとんど持たないことと同じになるため、電極の先端が先細りして突起形状がいびつになってしまう。このような問題を回避するため、基本周波数を発生する期間を、低周波周波数の半周期の2倍以上とすることが望ましい。
一方、基本周波数が発生する期間が長すぎる場合には、低周波の発生から次の低周波の発生までの時間が長くなって電極の温度が低くなり、低負荷領域が長すぎてしまい、損耗モードとなり、突起がいびつになってしまう。
そのため、基本周波数を形成する期間としては1000倍以下の範囲にするのが望ましいと考えられる。
上記条件2のように設定するのが望ましい理由は以下の通りである。
サイクルの増減速度が速すぎる場合には、電極温度はその変化に追従することができなくなり、スイングの効果が得られず、突起の形状はいびつとなる。
例えば、サイクル増減速度が0.2sの場合、1sの間に5サイクル増減することになる。この場合、電極先端の温度を緩やかに変化させることができなくなる。スイングの効果がなく、電極先端の温度を広範囲に加熱することができない。電極先端形状が乱れて安定な放電を維持できなくなる。
このサイクル増減速度が0.5s(1s経過するごとに2サイクル増減する)になると、電極先端の温度は、サイクルの増減に追従できるようになり、電極先端温度を広範囲に加熱することができるようになる。この結果、先端の突起を維持することができる。
低周波交流電流の発生間隔の増減速度(基本周波数の1サイクルが増減する時間)は0.5以上であることが望ましい。
例えば、サイクルの増減速度が20sである場合(20s経過するごとに1サイクル増減する)、負荷の高い時間が長いために電極温度の低下を招き、先端の突起を維持できなくなる。また、サイクルの増減速度が10sになると(10s経過するごとに1サイクル増減する)、電極先端温度の低温〜高温の制御ができるようになり、先端の突起を維持することができる。
このことから、低周波交流電流の発生間隔の増減速度(基本周波数の1サイクルが増減する時間)は10以下であることが望ましい。無論、このような設定値は必要な条件があいさえすれば、2サイクル、あるいは3サイクルと言った複数サイクルを段階的に増減するように設定しても構わない。
ここで、以下に説明する実施例で使用したランプの仕様、ランプ動作条件は以下の通りである。
[実施例に係るランプの仕様]
・定格電力:270W
・定格電圧:80V
・発光部の内容積:80mm3
・電極間距離:1.2mm
(封入物)
・水銀量:0.28mg/mm3
・希ガス(具体的にはアルゴンガス):13kPa
・ハロゲン(例えば、沃素、臭素、塩素)量:10-6〜10-2μmol/mm3
[ランプ動作条件]
・基本周波数:370Hz
・低周波周波数:46.25Hz、92Hz
・最小の低周波挿入間隔:0ms
・最大の低周波挿入間隔:300ms
・サイクル増減速度:1サイクル/2s
図6は、高圧放電ランプに供給されるランプの電流波形と基本周波数のサイクル数の設定値の変化パターン例1を示す図である。同図(a)〜(c)は、電流波形を示し、縦軸は電流値、横軸は時間を表している。また、同図(d)は、サイクル数の設定値の変化パターンであり、縦軸は基本周波数の発生サイクル数(回)、横軸は時間である。
図6(d)に示すように基本周波数のサイクル数が、0から1秒ごとに1サイクルずつの変動率で増加するようにし変化させていくことで高周波(基本周波数)が出力される期間を少しずつ長くし、予め設定された最大サイクル数に到達したら、今度は1秒ごとに1サイクルずつ減少させることで高周波が出力される期間を少しずつ短くする。
これにより、電流波形は、同図(a)→(b)→(c)→(b)→(a)に示すように
変わる。
上記の例において具体的数値をいうと、基本周波数の値は370Hzであり、低周波周波数の値は92Hzである。なお、図6(a)〜(c)における低周波周波数の発生回数は1サイクルである。
図7は、高圧放電ランプに供給されるランプの電流波形と基本周波数のサイクル数の設定値の変化パターン例2を示す図である。同図(a)〜(c)は、電流波形を示し、縦軸は電流値、横軸は時間を表している。また、同図(d)は、サイクル数の設定値の変化パターンであり、縦軸は基本周波数の発生サイクル数(回)、横軸は時間である。
図7(d)に示すように基本周波数のサイクル数が、FcyMinから1秒ごとに1サイクルずつの変動率で増加するようにし変化させていくことで高周波(基本周波数)が出力される期間を少しずつ長くし、予め設定された最大サイクル数に到達したら、今度は1秒ごとに1サイクルずつ減少させることで高周波が出力される期間を少しずつ短くする。
これにより、電流波形は、同図(a)→(b)→(c)→(b)→(a)に示すように
変わる。
図8は、高圧放電ランプに供給されるランプの電流波形と基本周波数のサイクル数の設定値の変化パターン例3を示す図である。同図(a)〜(c)は、電流波形を示し、縦軸は電流値、横軸は時間を表している。また、同図(d)は、サイクル数の設定値の変化パターンであり、縦軸は基本周波数の発生サイクル数(回)、横軸は時間である。
この例においては低周波周波数の発生サイクルが0.5、すなわち半サイクルであり、低周波が発生するごとに極性が反転するよう(すなわち交互)に発生する。
図8(d)に示すように基本周波数のサイクル数が、0から1秒ごとに1サイクルずつの変動率で増加するようにし変化させていくことで高周波(基本周波数)が出力される期間を少しずつ長くし、予め設定された最大サイクル数に到達したら、今度は1秒ごとに1サイクルずつ減少させることで高周波が出力される期間を少しずつ短くする。
これにより、電流波形は、同図(a)→(b)→(c)→(b)→(a)に示すように
変わる。
同図(a)は最小サイクル数(FcyMin)から一定の速度で高周波が出力される期間を長くしていき、最大サイクル数(FcyMax)に到達させ、最大サイクル数のまま、所定の時間保持し、その後、最大サイクル数(FcyMax)から高周波が出力される期間を少しずつ一定の速度で短くしていくようにしたものである。
同図(b)は最小サイクル数(FcyMin)から一定の速度で高周波が出力される期間を長くしていき最大サイクル数(FcyMax)に到達させ、最大サイクル数に到達したら所定の時間その状態を保持し、その後、最大サイクル数(FcyMax)から高周波が出力される期間を少しずつ一定の速度で短くし、最小サイクル数(FcyMin)に到達したら所定時間その状態を保持するようにしたものである。
同図(c)は、上記(b)において、最小サイクル数(FcyMin)から最大サイクル数(FcyMax)に上昇させる過程で、所定のサイクル数に達したとき、その状態を所定時間保持し、また、最小サイクル数(FcyMin)から最大サイクル数(FcyMax)に下降させる過程で所定のサイクル数に達したとき、その状態を所定時間保持するようにしたものである。
このようなパラメータは、実用上においては予めランプの仕様にあわせて最適なパラメータを実験的に求めておき、このパラメータをカウント設定値制御部62、72に格納することで、図9に示す制御を実現することができる。
表1に、ランプ供給電圧(点灯電圧)と低周波周期設定値を記憶したテーブルの例を示す。
この例では、ランプ電圧が高くなるにつれて挿入される低周波の幅を増加させるよう設定されている。また、ランプ供給電圧を細分化して低周波設定値を選択しているが、より細分化しても良いし、あるいは2つのランプ供給電圧領域で区分けする制御であっても構わない。
この例ではサイクル数設定値を細分化して値を選択しているが、より細分化しても良いし、あるいは数式化して制御しても構わない。
このため、本発明においては、点灯電圧に間接的に応じて低周波数を変化させてもかまわない。
この実験は、前記特許文献1に記載されるA点灯方式(放電ランプの点灯電圧の変化に対応して低周波の選択すべきパラメータを変化させる点灯方式)と、B点灯方式(基本周波数を供給する期間が所定時間ごとに漸次増減するように制御する点灯方式)と、上記A点灯方式にB点灯方式を適用した本発明の点灯方式(本発明の点灯方式という)について、照度維持率を比較したものである。
図10に実験結果を示す。同図の横軸は時間(h)、縦軸は照度維持率(%)であり、AはA点灯方式、BはB点灯方式、Cは本発明の点灯方式をしめす。
実験に使用したランプの仕様は次の通りである。
ランプ仕様
定格電力 270W
定格電圧 80V
発光部の内容積 80mm3
電極間距離 1.2mm
水銀量 0.28mg/mm3
(1)A点灯方式の点灯条件
A点灯方式においては、ランプ供給電圧に対して、高周波周期設定値、低周波周期設定値、低周波の挿入間隔を以下の表4の表Aのように設定して点灯させた。
(2)B点灯方式の点灯条件
B点灯方式の場合の、高周波周期設定値、低周波周期設定値、低周波の挿入間隔、サイクル増減速度を以下の表4の表Bのように設定して点灯させた。
(3)C点灯方式の点灯条件
C点灯方式においては、ランプ供給電圧に対して、高周波周期設定値、低周波周期設定値、低周波の挿入間隔、サイクル増減速度を以下の表4の表Cのように設定して点灯させた。
B点灯方式は、突起の移動を抑制し、突起移動による照度低下を抑制して安定した点灯を可能にするが、電圧が上昇、低下しても電極への電流負荷はコントロールしない。
一方、上記A点灯方式とB点灯方式を組み合わせた本発明の点灯方式(C点灯方式)によれば、電圧(電流)値により低周波の幅を変化させる事で突起の温度を冷えすぎないように、熱すぎないようにコントロールしつつ、突起の移動を抑制して余計な負荷を回避する事ができる。
上記実験により、図10に示すように、本発明の点灯方式が最も照度維持率が高いことが確認された。
11 発光部
12 封止部
13 金属箔
14 外部リード
20a,20b 電極
21 突起
201 球部
202 軸部
30 給電装置
51 ドライバ
52 電力制御部
60 高周波発生部
61 第1のサイクル数カウンタ
62 第1のカウント値設定値制御部
63 高周波設定値制御部
70 低周波発生部
72 第2のカウント値設定値制御部
71 第2のサイクル数カウンタ
72 第2のカウント値設定値制御部
73 低周波設定値制御部
80 セレクタ
U1 降圧チョッパ回路
U2 フルブリッジ回路(フルブリッジ型インバータ回路)
U3 スタータ回路
U4 制御部
Lh,Lx コイル
Cx,Cp,Ch コンデンサ
Qx スイッチング素子
Q1,Q2,Q3,Q4 スイッチング素子
Vx 電圧検出用の抵抗
Rx 電流検出用の抵抗
Gx,G1〜G4 ゲート信号
Claims (2)
- 石英ガラスからなる放電容器内に一対の電極が対向配置されるとともに水銀が封入されてなる高圧放電ランプと、
この放電ランプに対して交流電流を供給する給電装置とを備えて構成される高圧放電ランプ点灯装置において、
前記給電装置は、前記高圧放電ランプに対して、定常点灯時の周波数からなる基本周波数の交流電流とこの基本周波数よりも低い低周波数の交流電流を交互に供給するものであるとともに、
前記基本周波数の交流電流は、60〜1000Hzの範囲から選択された周波数の交流電流であり、
前記低周波数の交流電流は、前記基本周波数の交流電流の周波数よりも低い5〜200Hzの範囲から選択された周波数の交流電流であり、かつ、半サイクル以上の長さであって、前記低周波数の交流電流が発生してから次の前記低周波数の交流電流が発生するまでの間隔が120秒以下であり、前記放電ランプの点灯電圧の変化に対応して、当該低周波の周波数を変化させ、
前記給電装置は、前記放電ランプの点灯電圧が同一点灯電圧で継続する期間において、前記高圧放電ランプに、前記基本周波数を供給する期間が所定時間ごとに漸次増減するよう交流電流を供給する
ことを特徴とする高圧放電ランプ点灯装置。 - 前記給電装置は、前記低周波の周波数を、放電ランプの点灯電圧が上昇したときは低い周波数に、放電ランプの点灯電圧が低下したときは高い周波数に変化させる
ことを特徴とする請求項1に記載の高圧放電ランプ点灯装置。
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