本発明は、電子写真感光体の製造方法に関するものである。
従来、電子写真感光体の感光層を形成するための基体としては、ガラス、半導体、耐熱性合成樹脂、ステンレス、アルミニウムなど、様々の材料の使用が提案されている。その中でも、アルミニウムは、軽く、加工性が良好である点から電子写真感光体用基体の最適な材料の1つとして、これまでに数多くの提案がなされている。
このような電子写真感光体用の基体は、電子写真感光体の帯電特性等の均一性向上を目的として、感光層形成前に旋盤等により切削加工が施されている。そのため、切削加工された表面には、切削油、切り粉、ダスト等が付着しており、そのままの状態では基体上に良好な感光層の形成ができない。したがって、洗浄によりそれらを除去し、その後、基体上に無機系感光層や有機系感光層を形成して電子写真感光体の作製が行われてきた。
近年、この基体の洗浄方法は、環境への配慮から、溶剤洗浄から水系洗浄へと移行してきた。具体的には、切削油を除去するための脱脂工程においては塩素系溶剤を用いた溶剤から界面活性剤を用いた水溶液へ移行し、また、乾燥工程においては前記溶剤による乾燥から温水引き上げ等の乾燥方法へと移行してきた。
そして、上記水系洗浄においては、脱脂工程に超音波を印加することで基体の全面における切削油等の除去の均一性向上と時間短縮が行われてきた。
更に、脱脂工程以外の工程においても同様に超音波を印加し、切削時のアルミニウム中の不純物等に起因するバリを除去することにより、画像不良の原因の更なる除去が行われてきた。これら超音波を用いた水系洗浄の基体洗浄方法やこれにより洗浄されたアルミニウム基体を用いた電子写真感光体の製造方法に関して、様々な提案が開示されている。
上記超音波を用いた水系洗浄による基体洗浄方法及びこれを用いた電子写真感光体の製造方法に関する技術として、例えば以下の技術が開示されている。
アルミニウムからなる基体を界面活性剤含有水槽に浸漬させる工程後に水槽に浸漬させる工程を行う。界面活性剤含有水槽と水槽の少なくとも1槽に90kHz以上850kHz以下の超音波を印加して水系洗浄を行った基体上に感光層を形成することにより、画像出力時に画像欠陥の少ない電子写真感光体を作製する技術が開示されている(特許文献1参照)。
また、少なくとも3つの洗浄槽を有し、各洗浄槽で周波数が10kHz以上200kHz以下の範囲で、周波数が異なり、更に周波数が洗浄槽毎に順次高くなるような超音波を洗浄液に印加する。これにより、純度の低いアルミニウム基体であっても画像出力時に画像欠陥の少ない電子写真感光体を作製するという技術が開示されている(特許文献2参照)。
特開平6−118663号公報
特開2003−233204号公報
従来技術に示したように、複数の洗浄槽に超音波を印加するアルミニウム基体の水系洗浄に関する技術の開示により、切削加工時にアルミニウム基体の表面に付着する切削油、切り粉、ダストの低減や切削加工時に生じるバリ等の低減が可能となった。そのため、このような洗浄方法により洗浄されたアルミニウム基体を用いることにより、良好な画像が出力可能な電子写真装置が市場に提供されるようになってきた。
しかしながら、近年、電子写真装置のカラー化が進展し、画質に対する市場要求が従来以上の高画質、更には印刷画質へと変化してきている。同時に、エコロジーへの意識の高まりから、更なる電子写真感光体の高寿命化、省エネルギー化が求められている。このような観点から、アモルファスシリコン(以下:a−Si)電子写真感光体を用いたカラー複写機による更なる高画質化への市場要求が高まってきている。
a−Si電子写真感光体において、この市場要求を満たすためには、画像不良として画像に現れる感光層の異常成長を従来以上に徹底的に低減していくことが必要である。これを実現するためには、堆積膜形成方法、堆積膜形成装置の面からの改善は勿論のこと、画像不良の原因となるアルミニウム基体起因で発生する異常成長を安定して低減することが必要となってきている。
アルミニウム基体を用いたa−Si電子写真感光体において、アルミニウム基体の洗浄に起因して発生する異常成長の原因は、
(A)アルミニウム基体上の粉塵
(B)アルミニウム基体の表面欠損
(C)洗浄工程起因のアルミニウム基体の表面の汚染
(D)超音波によるアルミニウム基体のダメージ
に大別できる。
(A)のアルミニウム基体の表面に付着している粉塵には、切削加工時に発生する切り粉、切削加工や洗浄機内の空間に浮遊しているダスト、そして洗浄液中に浮遊しているダスト等が挙げられる。
(B)の表面欠損には、アルミニウム中に含まれるアルミニウムよりも高硬度の不純物が切削加工の際に刃にえぐられて生じるアルミニウム基体の表面のバリ等が挙げられる。
(C)の洗浄工程起因のアルミニウム基体の表面の汚染には、脱脂工程にてアルミニウム基体の表面から除去できなかったアルミニウム基体の表面の残留切削油や脱脂工程で用いた薬液によるリンス槽の汚染による薬液シミ等が挙げられる。
(D)の超音波によるアルミニウム基体のダメージには、アルミニウム基体を超音波により洗浄した際、超音波で洗浄液中に生じる定在波の腹位置に相当する部分に超音波により生成されるキャビティー(空孔)が集中するために生じる局所的な表面の粗れ等が挙げられる。
上述した異常成長の原因である(A)〜(D)がアルミニウム基体の表面に存在した状態でa−Si電子写真感光体を作製すると、そこを起点に堆積膜の異常成長が生じ、このような電子写真感光体を複写機に搭載させて画像を出力すると、画像不良を生じる場合があった。
このため、従来技術に開示されているように、超音波を洗浄液中に印加することにより粉塵、表面欠損、薬液シミの除去が行われ、画像不良の低減がされてきた。しかし、従来以上に高画質の画像を出力可能なa−Si電子写真感光体を実現するためには、従来以上に異常成長の原因の低減を実現する必要がある。よって、異常成長の原因を従来以上に低減させつつも、更に超音波を用いながらも超音波によるアルミニウム基体のダメージを低減させることが求められる。
しかしながら、超音波を用いたアルミニウム基体の洗浄では、一般的に、洗浄能力は、超音波によって生成されるキャビティーの数、衝撃力及び超音波の印加時間により決まることが知られている。衝撃力は、キャビティーの生成−消滅のサイクルにおける膨張と収縮の速度差により生じることから、キャビティーが大きくなるほどその速度差は大きくなる。つまり、これら洗浄能力を決めるキャビティーの数及び衝撃力は、超音波の周波数に依存すると考えられる。
周波数の低い超音波を用いた場合、洗浄物に対する付着物の引き離し効果は大きくなる。それは以下の理由によるものである。周波数が低い場合、洗浄液中に発生するキャビティーは大きくなるため、生成−消滅のサイクルにおける膨張と収縮の速度差が大きくなる。したがって、洗浄物に対する付着物への引き離し効果は、印加される超音波の周波数が低いほど高い効果が得られる。しかしながら、付着物が表面にない場合には、アルミニウム基体の表面への引き離し効果がアルミニウム基体の表面に直接影響を与えるためアルミニウム基体の表面が粗くなってしまう。
逆に、周波数が高い場合、洗浄液中に発生するキャビティーは小さくなる。そのため、生成−消滅のサイクルにおける膨張と収縮の速度差が小さくなるため、表面へのダメージを抑えることができる。一方、周波数が高くなると音圧が高くなるため、生成するキャビティーの数が多くなる。そのため、衝撃力が小さくともアルミニウム基体にダメージを与えることなくダストを除去可能となり、洗浄能力は高くなる。しかしながら、キャビティーの生成−消滅のサイクルにおける膨張と収縮の速度差は周波数に反比例するため、周波数が高くなるとキャビティーによるダストの振動量が小さくなる。そのため、小さいダストの除去は可能であるが、大きなダスト等を動かすのに必要な振動量が得られないため、比較的大きいダストを除去することは困難となる。
周波数を高くすると、洗浄液中に発生するキャビティーは更に小さくなる。そのため、表面へのダメージは更に抑えられるが、キャビティーによるダストの振動量は更に小さくなる。そのため、キャビティーがダストに与える振動量のみで小さいダストを除去することもできなくなってしまう。
上述した理由により、(A)〜(D)の各異常成長の原因に対する超音波が与える影響が周波数により異なること、また、切削油の有無等のアルミニウム基体の表面の状態によっても超音波によるアルミニウム基体への影響が異なる。したがって、アルミニウム基体の水系洗浄において、上記異常成長の原因を効率良く低減させることは困難であった。
そこで、本発明の目的は、超音波を用いてアルミニウム基体の表面に存在する異常成長の原因を従来以上に低減させることが可能なアルミニウム基体の洗浄方法を用いた電子写真感光体の製造方法を提供することにある。
上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、アルミニウム基体を洗浄するための脱脂槽及びリンス槽に使用する超音波の周波数の範囲を限定することにより、アルミニウム基体の表面に上述の(A)〜(D)の異常成長の原因を低減することが可能であることを見出した。その結果、このような異常成長の原因の少ないアルミニウム基体を用いることで、安定して画像出力時に画像不良の少ない電子写真感光体の生産が可能であることを見出し、本発明を完成させるに至ったのである。
詳細に記述すると、本発明は、表面に切削油が付着しているアルミニウム基体を洗浄する洗浄工程と、洗浄後の該アルミニウム基体上にアモルファスシリコン電子写真感光体用の堆積膜を形成する工程と、を有する電子写真感光体の製造方法において、
該洗浄工程が、少なくとも脱脂工程及びリンス工程を有し、
該脱脂工程においては、20kHz以上39kHz以下の周波数の超音波を超音波発生手段により少なくとも1つの脱脂槽の洗浄液に印加し、
該リンス工程においては、100kHz以上200kHz以下の周波数の超音波を超音波発生手段により少なくとも1つのリンス槽の洗浄液に印加し、
該超音波が印加される各リンス工程の各リンス槽内に貯留される洗浄液の量をV2(L)とし、該各リンス槽内に貯留される洗浄液に印加される超音波の電力をP2(kW)とし、該各リンス槽内に貯留される洗浄液に超音波を印加する時間をt2(秒)とし、該各リンス槽内に貯留される洗浄液に印加される超音波の周波数をf2(kHz)としたとき、該超音波が印加される各リンス工程におけるt2×f2×P2/V2の和が4以上240以下であり、
該洗浄工程においては、20kHz以上39kHz以下の周波数及び100kHz以上200kHz以下の周波数以外の超音波は用いない
ことを特徴とする電子写真感光体の製造方法である。
本発明における脱脂工程により、アルミニウム基体の表面に付着している切削油の除去、及び比較的大きなダストや切り粉の除去が可能となる。そして、脱脂工程後の本発明におけるリンス工程により、切削により生じたバリ及び比較的小さなダストや切り粉の除去が可能となる。この結果、洗浄によりアルミニウム基体の表面から異常成長の原因を効果的に除去することが可能となるため、従来に比べ画像出力時に画像不良の少ないa−Si電子写真感光体を安定して提供することが可能となった。
すなわち、脱脂工程にて20kHz以上39kHz以下の周波数を有する超音波を洗浄液中に印加、脱脂工程後のリンス工程にて100kHz以上200kHz以下の周波数を有する超音波を洗浄液中に印加することにより、アルミニウム基体の表面上に存在する粉塵、欠損、汚染及び超音波によるダメージを効率よく低減することが可能となる。この結果、アルミニウム基体上に存在した異常成長の原因が低減されるため、従来に比べ画像出力時に画像不良の更に少ないa−Si電子写真感光体を提供することが可能となる。
次に、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
[本発明に関わるアルミニウム基体の洗浄装置]
図1は、本発明の洗浄方法で用いられるアルミニウム基体の洗浄を行うための第1の実施形態を示す洗浄装置の模式的な概略断面図である。図1に示す洗浄装置は、切削加工後のアルミニウム基体110を置くための洗浄前ストッカー104と、洗浄液が貯留された3つの洗浄槽と、洗浄後のアルミニウム基体110を置くための洗浄後ストッカー105より構成されている。上記洗浄槽は、切削時にアルミニウム基体の表面に付着する切削油を除去する脱脂工程を行う脱脂槽101と、リンス工程を行うリンス槽102と、リンス工程後にアルミニウム基体の表面から水を除去し乾燥させる乾燥工程を行う乾燥槽103とから構成されている。
脱脂槽101には、脱脂槽に貯留される洗浄液131に超音波を印加するための超音波振動子121が脱脂槽下面に取り付けられており、超音波振動子121には超音波発振器122が接続されている。また、リンス槽102にもリンス槽に貯留される洗浄液132に超音波を印加するための超音波振動子123がリンス槽下面に取り付けられており、超音波振動子123には超音波発振器124が接続されている。
本発明における洗浄工程の流れを、図1を用いて説明する。図1に示す洗浄装置は、円筒状のアルミニウム基体を洗浄するための処理部141と基体搬送機構142とにより構成されている。処理部141は、切削加工後のアルミニウム基体110を置くための洗浄前ストッカー104、脱脂槽101、リンス槽102及び乾燥槽103、並びに洗浄後のアルミニウム基体を置くための洗浄後ストッカー105から構成されている。脱脂槽101、リンス槽102、乾燥槽103とも不図示の温度調節装置により洗浄液の温度を一定に保っている。
切削加工後のアルミニウム基体110は、投入台151上に置かれた後、搬送機構152により脱脂槽101に搬送される。図5は、図1の脱脂槽101の詳細図である。脱脂槽501には、純水で希釈された界面活性剤を含む洗浄液が貯留されており、脱脂槽501と貯槽511との間を循環ポンプ531により洗浄液の循環が行われている。
このとき、洗浄液は、ヒーター533及び冷却機構534により所定の温度となるように制御され、フィルター535により洗浄液中のダストの除去を行っている。また、脱脂槽501の冷却機構537により、超音波の印加に伴う脱脂槽に貯留された洗浄液の液温を制御している。更に、貯槽511から脱脂槽501への洗浄液の液量は、手動バルブ544により調整している。同時に、槽内循環ポンプ532により槽内循環が行われ、脱脂槽501に貯留された洗浄液中のダストをフィルター536により除去した後に脱脂槽へと送っている。
また、液面調整機構502により超音波振動子521上面から液面までの高さを調整することにより、超音波振動子521より印加される超音波が洗浄液中で安定した定在波を作ることができるようにした。
搬送機構550は、搬送レール551と搬送アーム552よりなる。上記搬送アーム552は、搬送レール551上を移動する移動機構553、アルミニウム基体510を保持するチャッキング機構555及びチャッキング機構555を上下させるためのエアーシリンダー554よりなる。
この脱脂工程では、洗浄液にアルミニウム基体510を浸漬させ、槽内循環ポンプ532を停止して槽内循環を止めた後、超音波発振子521から洗浄液中へと超音波を印加することにより、アルミニウム基体の表面に付着した切削油の脱脂を行う。洗浄液への超音波の印加が終了した後、受け台557が上昇することにより洗浄液からアルミニウム基体510を取り出し、エアーシリンダー554により引き上げられる。また、超音波の印加が終了した後に、槽内循環ポンプ532を起動させて、洗浄液のダスト除去を行う。
図1に示すアルミニウム基体110は、搬送機構により脱脂槽からリンス槽に搬送される。図6は、図1のリンス槽102の詳細図である。リンス槽601には、ヒーター633及び冷却機構634により所定の温度となるように制御され、フィルター635により洗浄液中のダストを除去された一定の導電率の純水がリンス槽601に供給されている。
このとき、リンス工程も脱脂工程と同様に、リンス槽601の冷却機構637により、超音波の印加に伴うリンス槽に貯留された洗浄液の液温の上昇を制御している。更に、リンス槽601に供給される洗浄液の液量は、手動バルブ644により調整している。同時に、槽内循環ポンプ632により槽内循環が行われ、リンス槽に貯留された洗浄液中のダストをフィルター636により除去した後にリンス槽へと送っている。
また、液面調整機構602により超音波振動子621上面から液面までの高さを調整することにより、超音波振動子621より印加される超音波が洗浄液中で安定した定在波を作れるようにした。
洗浄液にアルミニウム基体610を浸漬させ、槽内循環ポンプ632を停止して槽内循環を止めた後、超音波発振子621から洗浄液へと超音波を印加することにより、アルミニウム基体610表面に付着したダスト等の除去を行う。洗浄液への超音波の印加が終了した後、受け台657が上昇することにより洗浄液からアルミニウム基体610を取り出し、エアーシリンダー654により引き上げられる。また、超音波の印加が終了した後に、槽内循環ポンプ632を起動させて、洗浄液のダスト除去を行う。
最後に、アルミニウム基体110は搬送機構152により乾燥槽103へと搬送され、一定の導電率に制御された温純水にて昇降装置(図示せず)により引き上げ乾燥が行われる。乾燥工程が終了したアルミニウム基体110は、搬送機構152により洗浄後ストッカー105へと搬送される。
本発明において、脱脂工程及びリンス工程を、それぞれ複数設けても良い。図2は、本発明に関わる第2の実施形態を示す洗浄装置の模式的な概略断面図であり、洗浄槽が5槽で構成された洗浄装置である。図2に示す洗浄装置では、洗浄槽として第1脱脂槽201、第2脱脂槽202、第1リンス槽203、第2リンス槽204及び乾燥槽205の5槽から構成されている。超音波発振装置として第1脱脂槽201に超音波振動子221及び超音波発振器222、第2リンス槽204に超音波振動子223及び超音波発振器224が設置されている。
脱脂工程及び/又はリンス工程を複数設置した場合には、超音波発生装置は脱脂槽及びリンス槽の少なくとも1槽に設置されていれば良い。図3に示すように超音波発生装置を脱脂槽又はリンス槽のどちらか一方のみに複数設置しても良いし、図4に示すように超音波発生装置を脱脂槽及びリンス槽の両方にそれぞれ複数設置しても良い。
更に、脱脂工程、リンス工程、乾燥工程以外に、他の機能を有する工程を設置しても良い。アルミニウム基体を純水により洗浄を行う工程を有する場合、特に純度の低いアルミニウムを洗浄する場合には、腐食を防止する点から脱脂工程後に皮膜形成工程を加えた方が好ましい。
本発明において、洗浄工程で用いる超音波の周波数は20kHz以上39kHz以下、及び100kHz以上200kHz以下に限られ、これらの周波数範囲以外の超音波は用いない。具体的には、少なくとも1つの脱脂工程に20kHz以上39kHz以下の周波数を有する超音波を超音波発生手段により洗浄液中に印加し、更に、少なくとも1つのリンス工程に100kHz以上200kHz以下の周波数を有する超音波を超音波発生手段により洗浄液中に印加することを特徴としている。
まず、脱脂工程において使用する超音波の周波数を20kHz以上39kHz以下とする理由について説明する。上記周波数を39kHzより大きくすると、アルミニウム基体の表面に付着させた切削油の除去が不十分となり、その結果堆積膜形成後にアルミニウム基体の表面に残留した切削油による異常成長が生じる場合があった。この理由としては、上述したように、周波数が高く、付着物に対する引き離し効果が低下したと考えられる。そのため、上記周波数を39kHz以下にすることにより、異常成長の原因を除去可能となる。一方、洗浄液中に印加される超音波の周波数が低くなるにつれて、超音波印加時の音が大きくなり騒音対策が必要となることから、上記周波数の下限は20kHzにすることが好ましい。
次に、リンス工程において使用する超音波の周波数を100kHz以上200kHz以下とする理由について説明する。上記周波数を200kHzより大きくすると、アルミニウム基体の表面に付着したダストの除去が不十分となり、その結果、堆積膜形成後にダストによる異常成長が生じる場合がある。この理由としては、上述したように、周波数が高くキャビティーが小さくなった結果、ダストの振動量が少なくなり、アルミニウム基体の表面から効率良く除去することが難しくなったと考えられる。また、上記周波数を100kHzより小さくすると、アルミニウム表面が粗くなってしまい、その結果、堆積膜形成後に粗くなった部分による異常成長が生じる場合があった。この理由としては、リンス工程ではアルミニウム基体の表面から切削油等の付着物が非常に少なくなり、超音波による引き離し効果がアルミニウム基体の表面へと直接影響したために、アルミニウム基体の表面が粗くなったと考えられる。
本発明において、脱脂槽及びリンス槽で用いられる超音波の周波数は、超音波振動子の作製上、同じ超音波振動子を作製しても振れ幅を有する。そのため、本発明の超音波の周波数は、±2kHzの範囲を含む周波数に関しても同様の効果が得られる。
本発明においては、更なる異常成長の低減のために、超音波が印加されるリンス工程のリンス槽に貯留される洗浄液の量をV2(L)とし、洗浄液中に印加される超音波の電力P2を(kW)とし、洗浄液に超音波を印加する時間をt2(分)とし、印加する超音波の周波数をf2(kHz)としたとき、これらを用いて算出されるt2×f2×P2/V2の和が4以上240以下となるようにする。
まず、t2×f2×P2/V2の式について説明する。超音波洗浄における洗浄力は、前述したように、キャビティーの数、衝撃力及び超音波の印加時間によって決定される。
リンス槽において、本発明の周波数では衝撃力による洗浄能力の効果は十分には期待できない。そのため、キャビティーの数を増加させる、超音波の印加時間を延ばすことにより洗浄力を上げる必要がある。キャビティーの数を増加させるためには、周波数を高くする、洗浄液中に印加する超音波のエネルギーを高くする方向が良いことから、t2×f2×P2/V2がリンス槽における洗浄力の指標となっているものと推察される。
t2×f2×P2/V2が小さくなるとダストやバリを除去する効果が小さくなり、逆に大きくなるとアルミニウム基体の表面の粗れを低減する効果が小さくなってしまう。
このような観点から、t2×f2×P2/V2を4以上240以下とすることにより、更に異常成長の原因を効果的に除去可能となり、その結果、上記条件で作製されたアルミニウム基体を用いた電子写真感光体の異常成長を低減することが可能となる。
また、複数のリンス槽に超音波を用いる場合に関しては、各リンス工程でのt2×f2×P2/V2の合計が4以上240以下にすることにより、上述した効果が得られる。例えば、超音波が印加されるリンス工程が2工程ある場合は、第1リンス槽に貯留される洗浄液の量V2(L)、洗浄液中に印加される超音波の電力P2(kW)、洗浄液に超音波を印加する時間t2(分)及び超音波の周波数f2(kHz)とした際のt2×f2×P2/V2と第2リンス槽の洗浄液の量V2’(L)、洗浄液中に印加される超音波の電力P2’(kW)、洗浄液に超音波を印加する時間t2’(分)及び超音波の周波数f2’(kHz)とした際のt2’×f2’×P2’/V2’の合計(t2×f2×P2/V2)+(t2’×f2’×P2’/V2’)が4以上240以下とすれば良い。
本発明は、洗浄工程開始前のアルミニウム基体の表面に付着している切削油の洗浄前ストッカー104上の大気温度における動粘度が15mm2/s以上40mm2/s以下である場合がより顕著な効果が現れる。
この理由としては、以下のように推察される。洗浄前ストッカー上の大気温度における動粘度が低い切削油が付着している場合、アルミニウム基体が洗浄前ストッカーに置かれてから脱脂洗浄を行うまでの間に、切削油が重力で垂直方向に向かって流れ、アルミニウム基体の表面に切削油の層厚ムラが生じる。つまり、垂直方向下側の切削油厚が垂直方向上側よりも厚くなり、この結果、洗浄前ストッカーにアルミニウム基体を置いてから脱脂洗浄までの時間の差により切削油の層厚ムラに差が生じる。したがって、異常成長の原因の除去に対する効果の安定性の面から、ある程度の高い動粘度の切削油が求められる。
しかしながら、動粘度が高い切削油が付着している場合、アルミニウム基体の表面から切削油を除去しにくくなり、脱脂洗浄による切削油の除去要する時間が増加してしまう。その結果、1本当りの洗浄時間の増加に繋がってしまう。
以上のことから、洗浄工程開始前のアルミニウム基体の表面に付着している切削油が、洗浄前ストッカー104上の大気温度における動粘度が15mm2/s以上40mm2/s以下の場合に、より顕著な効果が現れる。
本発明において、超音波が印加される脱脂工程の脱脂槽、及び/又は超音波が印加されるリンス工程のリンス槽に貯留される洗浄液中を脱気制御手段により気体濃度を制御することで更なる異常成長の低減が可能となる。
一般的に純水中には酸素濃度で約7〜8ppmの気体が含有している。気体を含有していると、超音波が印加されても含有気体により超音波が全反射されたり、超音波のエネルギーが気泡形成に使われたりしてしまう。そのため、洗浄液中に安定して効率良く定在波を作るためには、洗浄液中の気体をできるだけ減らす方が良い。また、一度脱気された洗浄液であっても空気に接触している面から洗浄液中に気体が入りこんでしまうことから、安定した洗浄を行うためには、常時洗浄液中の気体濃度を制御することが好ましい。
上記理由により、洗浄液中の気体濃度は、酸素濃度で5ppm以下に制御することにより安定した定在波を洗浄液中に作ることが可能となる。定性的には洗浄液中の気体濃度は少ない程安定した洗浄が可能となるが、必要以上に低い気体濃度で制御しようとすると脱気装置が大型化してしまう。そのため、実質上十分な効果が得られかつ簡易であるという視点から、1ppm程度以上にすることが好ましい。
以上のことから、洗浄液中の気体濃度は、酸素濃度で1ppm以上5ppm以下に制御することが好ましい。脱気制御手段に関して、脱気方式に関しては特に制限はないが、脱気能力の安定性及び価格の点から真空脱気方式による脱気制御手段が好ましい。
超音波が印加される脱脂工程及び超音波が印加されるリンス工程で用いられる洗浄液を温度調整手段により一定温度に制御することが、超音波洗浄の安定性を得るためには好ましい。
超音波を印加する脱脂工程では切削油を超音波によりアルミニウム基体から引き離し、界面活性剤により除去するため、界面活性剤による除去効率を高めるためには、洗浄液の液温は高い方が好ましい。また、超音波を印加するリンス工程ではダストやバリをキャビティーにより除去するので、キャビティーの数を増やすためには洗浄液の液温は低い方が好ましい。このことから、超音波が印加される脱脂工程の洗浄液の液温を超音波が印加されるリンス工程の洗浄液の液温より高くすると、より良好な洗浄が可能となる。
更に、超音波が印加される脱脂工程の脱脂槽に貯留される洗浄液の液温は適宜調整すればよいが、切削油の除去効率を高く維持するために30℃以上が好ましい。また、脱脂洗浄工程引き上げ時にアルミニウム基体の温度上昇に伴い、アルミニウム基体の表面に付着した洗剤が乾燥することで生じる洗剤シミを低減させるためには、50℃以下が好ましい。
また、超音波が印加されるリンス工程のリンス槽に貯留される洗浄液の液温に関しても適宜調整すればよいが、結露等によるアルミニウム基体の表面への水分付着やキャビティーの発生数の減少の点から室温以上35℃以下が好ましい。ここで示す室温とは、結露等によるアルミニウム基体の表面への水分付着が見られない範囲であればよく、15℃から20℃の範囲が好ましい。
本発明において、洗浄液中で超音波による定在波を安定して作るために、超音波が印加されているときの超音波が印加される脱脂工程の脱脂槽内に貯留される洗浄液の液量をV1(L)とし、脱脂槽内に供給される液量をL1(L/分)としたときの100×L1/V1、及び/又は、前記超音波が印加されるリンス工程のリンス槽に貯留される洗浄液の液量をV2(L)とし、リンス槽内に供給される液量L2(L/分)としたときの100×L2/V2が、0.7以上4.0以下に制御することが好ましい。
これは、1分間あたりに脱脂槽及びリンス槽に供給及びオーバーフローにより排出される洗浄液量を表している。このように上記洗浄液の供給量を制御することにより、脱脂槽、リンス槽の液面に浮遊しているダストの効果的な排出と、供給された洗浄液による乱流低減による洗浄液中での超音波による定在波の安定性の向上が同時に達成される。したがって、異常成長の原因の低減が可能となる。
図5に示す脱脂槽のように、脱脂槽への洗浄液の供給が貯槽からの循環ライン541と槽内循環ライン542のように、複数の洗浄液供給ラインが存在する場合には、各ラインから洗浄槽に供給される液量の合計L、脱脂槽、リンス槽に貯留させている洗浄液の液量Vとしたときの100×L/Vが、0.7以上4.0以下に制御すればよい。
また、洗浄槽への洗浄液の供給方法に関して特に制限はないが、洗浄槽内に乱流が起こらないように、複数の供給口に分配した後に供給する、又は洗浄槽内部でリング状の供給管等を用いることが好ましい。
本発明において、超音波が印加されるリンス槽の配置には特に制限はないが、より効果的な異常成長の原因の除去の観点から、乾燥工程の直前のリンス工程にて超音波を印加する方が好ましい。すなわち、超音波が印加されるリンス槽におけるリンス工程に次いで連続して乾燥工程を行うことが好ましい。
また、超音波が印加される脱脂工程の脱脂槽及びリンス工程のリンス槽への超音波振動子の設置位置は、定在波の制御性と安定性の面から各槽の下面に設置することが好ましい。
次に、本発明で用いられる洗浄装置の洗浄槽について詳細に説明する。
<脱脂槽>
脱脂槽は、切削工程にてアルミニウム基体の表面に付着した切削油を薬液により除去する洗浄槽である。この脱脂槽で用いられる薬液は、環境等への配慮から水系の洗浄液を用いることが望ましく、特に界面活性剤等を含有した薬液を用いることが好ましい。水系の洗浄を行う場合、界面活性剤を溶解するための水の水質は、特に半導体グレードの純水を用いるのが好ましい。
脱脂工程で用いられる界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、又はそれらの混合したもの等、特に制限はない。そのなかでも、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、燐酸エステル塩等の陰イオン性界面活性剤、又は脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
<リンス槽>
脱脂槽での脱脂工程後、アルミニウム基体の表面から洗剤を除去するためにリンス槽によりアルミニウム基体の表面を清浄化する必要がある。このリンス槽で用いる水は、前述したグレードの純水を用いることが好ましい。また、リンス方法に関しては、アルミニウム基体の表面を薬液で適切に清浄化できればいずれの形式でも可能であるが、ディップ形式とシャワー形式を組み合わせて使用することが好ましい。シャワー形式でアルミニウム基体の表面に水を吹き付ける場合には、水の圧力は、2kg・f/cm2以上、300kg・f/cm2以下が好ましい。
<乾燥槽>
リンス工程後は、アルミニウム基体の表面及び内面を乾燥させるための乾燥工程を設けることが好ましい。乾燥工程は、温風乾燥、真空乾燥、温水乾燥等いずれの乾燥方法も有効であるが、アルミニウム基体の表面のダスト低減のためには、温水による引き上げ乾燥が好ましい。
温水乾燥における水の温度は、感光層の剥れや乾燥性の点から、30℃以上90℃以下が好ましい。引き上げ乾燥する際の引き上げ速度は、100mm/min以上2000mm/min以下程度の範囲にする方が好ましい。
<皮膜形成槽>
純度の低いアルミニウムを使用する場合には、アルミニウム表面に部分的に露出したSi、Fe、Cu原子が多い部分は周囲の通常のアルミニウムの部分と局所的な電池を形成して、特に純水等では腐食が促進される。したがって、インヒビターを添加して皮膜を形成し、アルミニウム基体が純水等に接触する前に皮膜を形成することが好ましい。
本発明の洗浄工程で用いられるインヒビターとしては、リン酸塩、珪酸塩、ホウ酸塩等が挙げられいずれも可能であるが、珪酸塩が特に好ましい。珪酸塩では、珪酸カリウム、珪酸ナトリウム等が好適なものとして挙げられる。
洗浄水中に含まれる珪酸塩の濃度は、高すぎると痕跡によるシミが発生してしまい、感光層の剥れの原因となり、低すぎると皮膜形成効果が小さくなってしまう。よって、珪酸塩の濃度は0.05%以上2%以下にすることが好ましい。この皮膜形成槽で用いる水は、前述したグレードの純水を用いること、また水温は室温以上70℃以下であることが好ましい。
<使用するアルミニウム基体>
本発明においてアルミニウム基体の材質はアルミニウムを母体とするものであればいずれも可能であるが、通常、純度99.5%以上のアルミニウムが用いられる。また、純度が99.99%を超える高純度のアルミニウムを母材としたアルミニウム基体であれば、図1のような洗浄装置が好ましく、それよりも低い純度であれば皮膜形成槽を有する洗浄装置が好ましい。
<切削工程>
本発明でアルミニウム基体を洗浄する前の切削工程について詳細に説明する。
本発明の表面加工は、精密切削用の旋盤の回転フランジに、アルミニウム基体をチャックし、所望する外径及び表面性に切削加工を行う。表面加工時は、切削油を塗布又は吹き付けながら切削を行う。
例えば、精密切削用のエアダンパー付旋盤(PNEUMO PRECISION INC.製)に、ダイヤモンドバイト(商品名:ミラクルバイト、東京ダイヤモンド製)を、アルミニウム基体中心線に対して5°のすくい角を得るようにセットする。次に、この旋盤の回転フランジに、アルミニウム基体を真空チャックし、付設したノズルから切削油噴霧、同じく付設した真空ノズルから切り粉の吸引を併用しつつ、周速1000m/min、送り速度0.01mm/Rの条件で所望の外径となるように切削を施す。
以下、図面に従って本発明の電子写真感光体について説明する。
図9は、本発明の電子写真感光体用光受容部材の好適な層構成の一例を示した模式的構成図である。電子写真感光体は、アルミニウム基体901の上に光受容層900が設けられており、光受容層900は、アルミニウム基体901側から順に、下部阻止層902、光導電層903、表面層904から構成されている。
次に、本発明の電子写真感光体を形成する装置について説明する。
図10は、本発明の電子写真感光体を作製するために供される、13.56MHzの高周波電源を用いたRFプラズマCVD法による堆積装置の一例を模式的に示した図である。この装置は大別すると、反応容器1001、反応容器内を減圧する為の排気装置1008から構成されている。反応容器1001内にはアースに接続された導電性の受け台1007の上にアルミニウム基体1002が設置され、更にアルミニウム基体の支持体加熱ヒーター1003、原料ガス導入管1005が設置されている。又、カソード電極1006は導電性材料からなり、絶縁碍子1013によって絶縁されている。カソード電極はマッチングボックス1011を介して13.56MHzの高周波電源1012が接続されている。不図示の原料ガス供給装置の各構成ガスのボンベは原料ガス導入バルブ1009を介して反応容器1001内のガス導入管1005に接続されている。
図10の装置を用いた電子写真感光体の形成方法の一例について説明する。
アルミニウム基体1002を導電性受け台1007に取り付け、反応容器1001内の支持体加熱ヒーター1003を包含するように取り付ける。
次に、ガス供給装置内の排気を兼ねて、原料ガス導入バルブ1009を開き、メインバルブ1015を開いて反応容器1001及び原料ガス導入管1005内を排気する。真空計1010の読みが0.67Pa以下になった時点で原料ガス導入バルブ1009から加熱用の不活性ガス、一例としてアルゴンを原料ガス導入管1005より反応容器1001に導入する。反応容器1001内が所望の圧力になるように加熱用ガスの流量及び、メインバルブ1015の開口あるいは排気装置1008の排気速度を調整する。その後、不図示の温度コントローラーを作動させてアルミニウム基体1002を支持体加熱ヒーター1003により加熱し、アルミニウム基体1002の温度を20℃〜500℃の所定の温度に制御する。所望の温度に加熱されたところで、不活性ガスを徐々に止めると同時に、成膜用の所定の原料ガス、例えばSiH4、Si2H6、CH4、C2H6などの材料ガスを、またB2H6、PH3などのドーピングガスを不図示のミキシングパネルにより混合した後に反応容器1001内に徐々に導入する。次に、不図示のマスフローコントローラーによって、各原料ガスが所定の流量になるように調整する。その際、反応容器1001内が0.1Pa〜数100Paの圧力に維持するよう真空計1010を見ながらメインバルブ1015の開口あるいは排気装置1008の排気速度を調整する。
以上の手順によって成膜準備を完了した後、アルミニウム基体1002上に光受容層の形成を行う。内圧が安定したのを確認後、高周波電源1012を所望の電力に設定して高周波電力をカソード電極1006に供給し高周波グロー放電を生起させる。このときマッチングボックス1011を調整し、反射波が最小となるように調整し、高周波の入射電力から反射電力を差し引いた値を所望の値に調整する。この放電エネルギーによって反応容器1001内に導入させた各原料ガスが分解され、アルミニウム基体1002上に所定の光受容層が形成される。なお、膜形成を行っている間はアルミニウム基体1002を駆動装置(不図示)によって所定の速度で回転させても良い。
所望の膜厚の形成が行われた後、高周波電力の供給を止め、反応容器1001への各原料ガスの流入を止めて反応容器内を一旦高真空に排気した後に層の形成を終える。上記のような操作を繰り返し行うことによって、堆積膜を形成し、感光体が完成する。
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。
アルミニウム(神戸製鋼製 材質:MB2)よりなる外径約80〜81mm、長さ358mm、肉厚3mmのアルミニウム基体を、以下の手順により表面加工を行った。
<切削工程1>
表面加工は、精密切削用のエアダンパー付旋盤(PNEUMO PRECISION INC.製)に、ダイヤモンドバイト(商品名:ミラクルバイト、東京ダイヤモンド製)を、アルミニウム基体中心線に対して5°のすくい角を得るようにセットする。次に、この旋盤の回転フランジに、アルミニウム基体を真空チャックし、付設したノズルから切削油として炭化水素系合成油ポリブデン(商品名;日石ポリブデンLV−7)を用いアルミニウム基体に噴霧しながら、同じく付設した真空ノズルから切り粉の吸引を併用しつつ、周速1000m/min、送り速度0.01mm/Rの条件で外径が79.92〜79.98mmとなるように鏡面切削を施した。
(実施例1)
<洗浄工程1>
切削加工が終了したアルミニウム基体を、脱脂槽で用いる超音波の周波数は表2に示す条件、その他の洗浄条件は表1に示す条件にて、図1に示す洗浄装置により洗浄を行った。
また、脱脂槽は図5のような貯槽を有し、槽の大きさは縦400mm、横400mm、高さは液面調整機構により表2のように調整した。リンス槽及び乾燥槽は図6のような貯槽がなく、リンス槽の大きさは縦400mm、横400mm、高さ801mmとした。
図1、図5及び図6に示す脱脂槽及びリンス槽は、各槽内に供給された洗浄液を洗浄槽上面から排出するオーバーフロータイプであるため、図12に示すように超音波振動子1202上面から液面までの高さが洗浄槽の高さと同じとなる。
具体的な洗浄方法としては、シャッターにより洗浄前ストッカーと脱脂槽、リンス槽、乾燥槽及び洗浄後ストッカーを分離した。そして、分離された洗浄前ストッカーをブースで覆い、ブース内の温度を40℃に調整した。また、シャッターにより洗浄前ストッカーから分離された洗浄装置内を20℃に調整した。ブース内、洗浄装置内及び各貯留槽に貯留されている洗浄液の温度が安定した後、洗浄前ストッカーにアルミニウム基体を置き、3分間保持した。
3分経過後、シャッターを開き、アルミニウム基体を搬送アームにより洗浄前ストッカーから脱脂槽へと搬送し、シャッターを閉じる。搬送されたアルミニウム基体は、界面活性剤として、アルミ用侵食低起泡性液状脱脂剤(ヘンケルジャパン(株)社、商品名;almeco CT−29)を純水で30倍に希釈した洗浄液に浸透させ、超音波を印加して脱脂洗浄を行った。
次に、脱脂槽からリンス槽にアルミニウム基体を搬送して純水に浸漬させ、超音波を印加してリンス洗浄を行った。リンス槽には常に酸素濃度約7ppmの純水を供給した。
最後に、リンス槽から乾燥槽にアルミニウム基体を搬送して純水に表1の処理時間浸透させた後、500mm/minの速度でゆっくり引き上げながら温水引き上げ乾燥を行った後、搬送機構により洗浄後ストッカーへアルミニウム基体を搬出した。
以上の切削工程及び洗浄工程を繰り返し行い、処理されたアルミニウム基体3本を用いて、図10の13.56MHz電源を用いたRFプラズマ装置を用いて、表3に示す条件にてa−Si電子写真感光体を作製した。ただし、洗浄条件(1)で洗浄されたアルミニウム基体を用いて作製されたa−Si電子写真感光体を1とし、他の洗浄条件においても同様に電子写真感光体番号をつけることにした。
表3の条件により作製されたa−Si電子写真感光体の異常成長の数を下記[異常成長の数の測定]により評価した。
(比較例1)
切削工程1により切削加工されたアルミニウム基体を、実施例1と同様に洗浄を行い、表3の条件にてa−Si電子写真感光体を作製した。但し、脱脂工程で用いる超音波の周波数、脱脂槽の高さを表4に示す条件にて脱脂洗浄を行った。
作製されたa−Si電子写真感光体の異常成長の数を下記[異常成長の数の測定]により評価した。
(比較例2)
切削工程1により切削加工されたアルミニウム基体を、表5に示す洗浄条件にて図11に示す洗浄装置により洗浄を行った。図11に示す洗浄装置には、リンス槽に超音波を印加するための超音波振動子及び超音波発振器がないものである。
また、脱脂槽は図5のような貯槽を有し、槽の大きさは、縦400mm、横400mm、高さ789mmとした。リンス槽及び乾燥槽は図6のような貯槽がなく、リンス槽の大きさは縦400mm、横400mm、高さ801mmとした。
以上の切削工程1及び洗浄工程を繰り返し行い、実施例1と同様に洗浄後のアルミニウム基体上にa−Si電子写真感光体を作製した。但し、比較例2の洗浄条件(表5)を(7)とし、作製されたa−Si電子写真感光体番号を7とした。
作製されたa−Si電子写真感光体の異常成長の数を下記[異常成長の数の測定]により評価した。
[異常成長の数の測定]
異常成長の数の測定は、作製されたa−Si電子写真感光体をラインセンサCCD(竹中システム機器株式会社製、TL−7400CL)を用いて、電子写真感光体全面スキャンを行い、長径10μm以上の異常成長の数を測定した。同様に合計3本の電子写真感光体を測定して得られた異常成長の数の平均値を異常成長の数として求めた。
実施例1、比較例1及び比較例2により得られた異常成長の数を、比較例2に示す電子写真感光体7の異常成長の数に対する割合(%)を求め比較した。評価基準は次の通りである。その評価結果を表6に示す。
F ‥比較例2の異常成長の数に対する割合が110%以上。
E ‥比較例2の異常成長の数に対する割合が90%以上110%未満で変化無し。
D ‥比較例2の異常成長の数に対する割合が50%以上90%未満。
C ‥比較例2の異常成長の数に対する割合が30%以上50%未満。
B ‥比較例2の異常成長の数に対する割合が10%以上30%未満。
A ‥比較例2の異常成長の数に対する割合が10%未満。
脱脂工程で用いる超音波の周波数が39kHz以下の場合には電子写真感光体7よりも異常成長の数が減少し、39kHzよりも大きい場合には周波数の増加にともない異常成長の数が増加した。39kHzよりも大きくすると、周波数が高くなり衝撃力が小さくなるため、切削油を除去するための洗浄力が足りなくなったためだと思われる。
電子写真感光体1〜2をiR−6000に搭載させて画像を出力したところ、電子写真感光体7よりも良好な画像が得られた。
(実施例2)
切削工程1により切削加工されたアルミニウム基体を、リンス槽で用いる超音波の周波数は表8に示す条件、その他の洗浄条件は表7に示す条件にて図1に示す洗浄装置により洗浄を行った。
脱脂槽は図5のような貯槽を有し、槽の大きさは縦400mm、横400mm、高さ798mmとした。リンス槽及び乾燥槽は図6のような貯槽がなく、リンス槽の大きさは縦400mm、横400mm、高さは液面調整機構により表8のように調整した。その他、洗浄工程は実施例1と同様に行った。
以上の切削工程及び洗浄工程を繰り返し行い、実施例1と同様に洗浄後のアルミニウム基体上に表3の条件にてa−Si電子写真感光体を作製し、作製されたa−Si電子写真感光体の異常成長の数を[異常成長の数の測定]により評価した。
(比較例3)
切削工程1により切削加工されたアルミニウム基体を、実施例2と同様に洗浄を行い、表3の条件にてa−Si電子写真感光体を作製した。但し、リンス工程で用いる超音波の周波数、リンス槽の高さを表9に示す条件にてリンス洗浄を行った。作製されたa−Si電子写真感光体の異常成長の数を[異常成長の数の測定]により評価した。
実施例2及び比較例3により得られた異常成長の数を比較例2の電子写真感光体7の異常成長の数に対する割合(%)を求め比較した。評価基準は実施例1及び比較例1と同様である。その評価結果を表10に示す。
リンス工程で用いる超音波の周波数を100kHz以上200kHz以下とすることで、電子写真感光体7よりも異常成長の数が減少した。周波数を100kHz未満にすると脱脂工程のみで超音波を印加したときよりも異常成長の数が増加し、200kHzより大きくすると異常成長の数には大きな変化が見られなかった。
周波数が100kHz未満の場合、脱脂槽でアルミニウム基体に切削油が除去されているため、衝撃力の強い周波数の超音波を印加したことで、アルミニウム基体の表面に直接衝撃がかかる。その結果、アルミニウム基体の表面が粗くなったためと思われる。また、200kHzより高い場合、キャビティーによる変化量が少なくなるため、ダストの除去が効果的に行われなかったために、脱脂工程のみで超音波を印加したときと大きな変化がなかったと思われる。
電子写真感光体番号8をiR−6000に搭載させて画像を出力したところ、電子写真感光体番号8は、7よりも良好な画像が得られた。
(実施例3)
切削工程1により切削加工されたアルミニウム基体を、リンス槽で用いる超音波の印加電力及び超音波の印加時間は表12に示す条件、その他の洗浄条件は表11に示す条件にて図1に示す洗浄装置により洗浄を行った。
また、脱脂槽は図5のような貯槽を有し、槽の大きさは縦400mm、横400mm、高さ798mmとした。リンス槽及び乾燥槽は図6のような貯槽がなく、リンス槽の大きさは縦400mm、横400mm、高さ799mmとした。その他、洗浄工程は実施例1と同様に行った。
以上の切削工程及び洗浄工程を繰り返し行い、実施例1と同様に洗浄後のアルミニウム基体上に表3の条件にてa−Si電子写真感光体を作製し、作製されたa−Si電子写真感光体の異常成長の数を[異常成長の数の測定]により評価した。
実施例3により得られた異常成長の数を実施例1に示す電子写真感光体2の異常成長の数に対する割合(%)を求め比較した。評価基準は次の通りである。その評価結果を表13に示す。なお、電子写真感光体13は、f2×t2×P2/V2の値が2であり、4未満であることから、比較例である。
F ‥電子写真感光体2の異常成長の数に対する割合が110%より大きい
E ‥電子写真感光体2の異常成長の数に対する割合が90%以上110%未満で変化無し
D ‥電子写真感光体2の異常成長の数に対する割合が50%以上90%未満
C ‥電子写真感光体2の異常成長の数に対する割合が30%以上50%未満
B ‥電子写真感光体2の異常成長の数に対する割合が10%以上30%未満
A ‥電子写真感光体2の異常成長の数に対する割合が10%未満。
リンス工程で用いる超音波の印加電力及び印加時間を変更したところ、リンス槽におけるf2×t2×P2/V2の値が4以上の範囲になると、異常成長の数がより減少することが確認された。この場合、超音波によりリンス槽内の洗浄液中で発生するキャビティーの数が増加し、その結果、ダスト等の異常成長の原因をアルミニウム基体から除去する洗浄力が増加するためと思われる。
電子写真感光体13〜21をiR−6000に搭載させて画像を出力したところ、14〜21に関しては、より良好な画像が得られた。
(実施例4)
切削工程1により切削加工されたアルミニウム基体を、リンス槽で用いる超音波の印加電力及び超音波の印加時間は表15に示す条件、その他の洗浄条件は表14に示す条件にて図1に示す洗浄装置により洗浄を行った。
また、脱脂槽は図5のような貯槽を有し、槽の大きさは縦400mm、横400mm、高さ798mmとした。リンス槽及び乾燥槽は図6のような貯槽がなく、リンス槽の大きさは縦301mm、横301mm、高さ501mmとした。その他、洗浄工程は実施例1と同様に行った。
以上の切削工程及び洗浄工程を繰り返し行い、実施例1と同様に洗浄後のアルミニウム基体上に表3の条件にてa−Si電子写真感光体を作製し、作製されたa−Si電子写真感光体の異常成長の数を[異常成長の数の測定]により評価した。
実施例4により得られた異常成長の数を実施例1に示す電子写真感光体2の異常成長の数に対する割合(%)を求め比較した。評価基準は実施例3と同様である。その評価結果を表16に示す。なお、電子写真感光体30は、f2×t2×P2/V2の値が320であり、240を超えることから、比較例である。
リンス工程で用いる超音波の印加電力及び印加時間を変更したところ、リンス槽におけるf2×t2×P2/V2の値が240以下と範囲になると、異常成長の数がより減少することが確認された。この場合には、超音波によりリンス槽内の洗浄液中で発生したキャビティーの数の増加を適正に制御できるため、アルミニウム基体の表面へのダメージを最小限に抑えつつも、効果的にダストやバリの除去が可能であるためと思われる。
電子写真感光体22〜30をiR−6000に搭載させて画像を出力したところ、22〜29に関しては、より良好な画像が得られた。
<切削工程2>
切削加工時に用いる切削油として動粘度が異なる2種類の炭化水素系合成油ポリブデン(商品名;日石ポリブデンLV−7、日石ポリブデンLV−50)を表17の条件で混合した切削油を用いて切削加工を行った。その他切削工程は、切削加工1と同様に行った。
(実施例5)
切削工程2により切削油番号a〜fを用いて切削加工されたアルミニウム基体を、表18に示す洗浄条件にて図1に示す洗浄装置により洗浄を行った。
また、脱脂槽は図5のような貯槽を有し、槽の大きさは縦400mm、横400mm、高さ793mmとした。リンス槽及び乾燥槽は図6のような貯槽がなく、リンス槽の大きさは縦400mm、横400mm、高さ801mmとした。その他、洗浄工程は実施例1と同様に行った。
以上の切削工程及び洗浄工程を繰り返し行い、実施例1と同様に洗浄後のアルミニウム基体上に表3の条件にてa−Si電子写真感光体を作製し、作製されたa−Si電子写真感光体の異常成長の数を[異常成長の数の測定]により評価した。但し、切削油番号aの切削油を用いて切削加工されたアルミニウム基体を用いて作製されたa−Si電子写真感光体の電子写真感光体番号をAとし、b〜fに関しても同様にB〜Fとした。
実施例5により得られた異常成長の数を実施例1に示す電子写真感光体2の異常成長の数に対する割合(%)を求め比較した。評価基準は実施例3と同様である。その評価結果を表19に示す。
表19の結果より、切削加工に用いる切削油の動粘度aを変更したところ、切削油の動粘度aが15以上の範囲になると、更に異常成長の数が減少することが確認された。電子写真感光体A〜FをiR−6000に搭載させて画像を出力したところ、A〜Eに関しては、より良好な画像が得られた。
(実施例6)
切削工程2により切削油番号a〜fを用いて切削加工されたアルミニウム基体を、表20に示す洗浄条件にて図1に示す洗浄装置により洗浄を行った。但し、ブースで覆われた洗浄前ストッカーのブース内の温度を20℃に調整した。ブース内の温度が安定した後、洗浄工程1と同様に切削加工後のアルミニウム基体を3分間洗浄前ストッカーで保持した後に洗浄を行うこと以外は、洗浄工程1と同様である。
また、脱脂槽は図5のような貯槽を有し、槽の大きさは縦400mm、横400mm、高さ798mmとした。リンス槽及び乾燥槽は図6のような貯槽がなく、リンス槽の大きさは縦400mm、横400mm、高さ801mmとした。その他、洗浄工程は実施例1と同様に行った。
以上の切削工程及び洗浄工程を繰り返し行い、実施例1と同様に洗浄後のアルミニウム基体上に表3の条件にてa−Si電子写真感光体を作製し、作製されたa−Si電子写真感光体の異常成長の数を[異常成長の数の測定]により評価した。但し、切削油番号aの切削油を用いて切削加工されたアルミニウム基体を用いて作製されたa−Si電子写真感光体の電子写真感光体番号をA2とし、b〜fに関しても同様にB2〜F2とした。
実施例6により得られた異常成長の数を実施例1に示す電子写真感光体2の異常成長の数に対する割合(%)を求め比較した。評価基準は実施例3と同様である。評価結果を表21に示す。
切削加工に用いる切削油の動粘度aを変更したところ、切削油の動粘度aが40以下の範囲となると、更に異常成長の数が減少することが確認された。電子写真感光体番号A2〜F2をiR−6000に搭載させて画像を出力したところ、C2〜F2に関しては、より良好な画像が得られた。
<切削工程3>
切削加工時に用いる切削油として炭化水素系合成油ポリブデン(商品名;日石ポリブデンLV−10)を用いて切削加工を行った。その他切削工程は、切削加工1と同様に行った。
(実施例7)
<洗浄工程2>
切削工程3により切削加工されたアルミニウム基体を、表22に示す洗浄条件にて図1に示す洗浄装置により洗浄を行った。但し、脱脂槽は、図7に示す真空脱気装置(千代田電気工業株式会社製 TKF−11)を洗浄液の供給ラインに有するものを、リンス槽は、図8に示す真空脱気装置(千代田電気工業株式会社製 TKF−11)を洗浄液の供給ラインに有するものを用いて、脱脂槽及びリンス槽内の洗浄液の酸素濃度を表23となるように制御した。
また、脱脂槽は槽の大きさは、縦400mm、横400mm、高さ798mmとした。リンス槽の大きさは、縦400mm、横400mm、高さ799mmとした。乾燥槽は図6のような貯槽がないものとした。その他、洗浄工程は実施例1と同様に行った。
以上の切削工程及び洗浄工程を繰り返し行い、実施例1と同様に洗浄後のアルミニウム基体上に表3の条件にてa−Si電子写真感光体を作製し、作製されたa−Si電子写真感光体の異常成長の数を[異常成長の数の測定]により評価した。
実施例7により得られた異常成長の数を実施例1に示す電子写真感光体2の異常成長の数に対する割合(%)を求め比較した。評価基準は実施例3と同様である。評価結果を表24に示す。
脱脂槽及びリンス槽内の洗浄液を脱気したところ、脱脂槽又はリンス槽の洗浄液の酸素濃度が5ppm以下の範囲となると異常成長の数が減少した。更に、脱脂槽及びリンス槽ともに酸素濃度が5ppm以下の範囲となると、更に異常成長の数が減少することが確認された。
電子写真感光体番号31〜40をiR−6000に搭載させて画像を出力したところ、32〜37に関しては、より良好な画像が得られ、38〜40に関しては、更に良好な画像が得られた。
(実施例8)
切削工程3により切削加工されたアルミニウム基体を、脱脂槽及びリンス槽の液温を表26の条件に制御して、その他の洗浄条件は表25の洗浄条件にて図1に示す洗浄装置により洗浄を行った。
また、脱脂槽は槽の大きさは、縦400mm、横400mm、高さ798mmとした。リンス槽の大きさは、縦400mm、横400mm、高さ801mmとした。乾燥槽は図6のような貯槽がないものとした。その他、洗浄工程は実施例1と同様に行った。
以上の切削工程及び洗浄工程を繰り返し行い、実施例1と同様に洗浄後のアルミニウム基体上に表3の条件にてa−Si電子写真感光体を作製し、作製されたa−Si電子写真感光体の異常成長の数を[異常成長の数の測定]により評価した。
実施例8により得られた異常成長の数を実施例7に示す電子写真感光体38の異常成長の数に対する割合(%)を求め比較した。評価基準は次の通りである。その評価結果を表27に示す。
F ‥電子写真感光体38の異常成長の数に対する割合が110%以上
E ‥電子写真感光体38の異常成長の数に対する割合が90%以上110%未満で変化無し
D ‥電子写真感光体38の異常成長の数に対する割合が50%以上90%未満
C ‥電子写真感光体38の異常成長の数に対する割合が30%以上50%未満
B ‥電子写真感光体38の異常成長の数に対する割合が10%以上30%未満
A ‥電子写真感光体38の異常成長の数に対する割合が10%未満。
脱脂槽及びリンス槽内の洗浄液の温度を制御したところ、リンス槽の液温よりも脱脂槽の液温を高くすると異常成長の数が減少し、脱脂槽の液温を30℃以上50℃以下、リンス槽の液温を35℃以下の範囲とすると、その数がより減少した。更に、脱脂槽の液温を30℃以上50℃以下、及びリンス槽の液温を35℃以下の範囲とすると、その数が特に減少することが確認された。
電子写真感光体番号41〜50をiR−6000に搭載させて画像を出力したところ、45〜47、50に関しては、より良好な画像が得られ、42〜44、48〜49に関しては、更に良好な画像が得られた。
(実施例9)
切削工程3により切削加工されたアルミニウム基体を、脱脂槽及びリンス槽に供給される洗浄液の供給量を表29の条件に制御して、その他の洗浄条件は表28の洗浄条件にて図1に示す洗浄装置により洗浄を行った。
また、脱脂槽は槽の大きさは、縦400mm、横400mm、高さ798mmとした。リンス槽の大きさは、縦400mm、横400mm、高さ801mmとした。乾燥槽は図6のような貯槽がないものとした。脱脂槽及びリンス槽の洗浄液の供給量は、バイパスラインの手動バルブにより調整を行った。その他、洗浄工程は、実施例1と同様に行った。
以上の切削工程及び洗浄工程を繰り返し行い、実施例1と同様に洗浄後のアルミニウム基体上に表3の条件にてa−Si電子写真感光体を作製し、作製されたa−Si電子写真感光体の異常成長の数を[異常成長の数の測定]により評価した。
実施例9により得られた異常成長の数を実施例7に示す電子写真感光体38の異常成長の数に対する割合(%)を求め比較した。評価基準は実施例8と同様である。その評価結果を表30に示す。
脱脂槽及びリンス槽内への洗浄液の供給量を制御したところ、L1/V1又はL2/V2、すなわちいずれか一方が0.7以上4.0以下の範囲を満たす場合には異常成長の数が減少し、L1/V1とL2/V2との両方が上記範囲を満たす場合にはその数は特に減少することが確認された。
電子写真感光体番号51〜59をiR−6000に搭載させて画像を出力したところ、52〜53、56〜57に関してはより良好な画像が得られ、58〜59に関しては、特に良好な画像が得られた。
(実施例10)
切削工程3により切削加工されたアルミニウム基体を、表31の洗浄条件にて図2に示す洗浄装置により洗浄を行った。但し、超音波が印加されるリンス槽は乾燥槽から見て1つ前の洗浄槽に設置し、その他のリンス槽には超音波を設置しなかった。
また、脱脂槽は槽の大きさは、縦400mm、横400mm、高さ798mmとした。リンス槽の大きさは、縦400mm、横400mm、高さ801mmとした。乾燥槽は図6のような貯槽がないものとした。その他、洗浄工程は実施例7と同様に行った。
以上の切削工程1及び洗浄工程1を繰り返し行い、実施例1と同様に洗浄後のアルミニウム基体上に表3の条件にてa−Si電子写真感光体を作製し、作製されたa−Si電子写真感光体の異常成長の数を[異常成長の数の測定]により評価した。但し、実施例10で作製されたa−Si電子写真感光体の電子写真感光体番号は60とした。
(実施例11)
切削工程3により切削加工されたアルミニウム基体を、表32の洗浄条件にて図3に示す洗浄装置により洗浄を行った。但し、超音波が印加されるリンス槽は乾燥槽から見て2つ前のリンス槽に設置し、1つ前のリンス槽は超音波の印加を行わなかった。
脱脂槽の大きさ、リンス槽の大きさ、乾燥槽は、実施例10と同様のものを用いた。その他、切削工程及び洗浄工程、a−Si電子写真感光体作製及び評価についても実施例10と同様に行った。実施例11で作製されたa−Si電子写真感光体の電子写真感光体番号は61とした。
(実施例12)
切削工程3により切削加工されたアルミニウム基体を、表33の洗浄条件にて図3に示す洗浄装置により洗浄を行った。但し、超音波が印加されるリンス槽は乾燥槽から見て1つ前及び2つ前のリンス槽ともに超音波を印加した。
脱脂槽の大きさ、リンス槽の大きさ、乾燥槽は、実施例10と同様のものを用いた。その他、切削工程及び洗浄工程、a−Si電子写真感光体作製及び評価についても実施例10と同様に行った。実施例12で作製されたa−Si電子写真感光体の電子写真感光体番号は62とした。
実施例10〜12により得られた異常成長の数を、実施例7に示す電子写真感光体38の異常成長の数に対する割合(%)を求め比較した。評価基準は実施例8と同様である。その評価結果を表34に示す。
乾燥槽直前のリンス槽にて超音波を印加することにより、異常成長の数が減少することが確認された。電子写真感光体番号60〜62をiR−6000に搭載させて画像を出力したところ、60、62に関しては特に良好の画像が得られた。
本発明の電子写真感光体製造方法で使用するアルミニウム基体の洗浄を行うための第1の実施形態を示す洗浄装置の模式的な概略断面図である。
本発明の電子写真感光体製造方法で使用するアルミニウム基体の洗浄を行うための第2の実施形態を示す洗浄装置の模式的な概略断面図である。
本発明の電子写真感光体製造方法で使用するアルミニウム基体の洗浄を行うための第3の実施形態を示す洗浄装置の模式的な概略断面図である。
本発明の電子写真感光体製造方法で使用するアルミニウム基体の洗浄を行うための第4の実施形態を示す洗浄装置の模式的な概略断面図である。
本発明における脱脂槽を示す詳細な概略断面図である。
本発明におけるリンス槽を示す詳細な概略断面図である。
本発明における脱気装置を有する脱脂槽を示す詳細な概略断面図である。
本発明における脱気装置を有するリンス槽を示す詳細な概略断面図である。
本発明に係わる電子写真感光体の層構成を模式的に示す概略断面図である。
a−Si系感光体を形成可能な、本発明の一実施形態で用いられるプラズマCVD感光層形成装置の模式図である。
従来の洗浄装置における詳細な洗浄槽の概略断面図である。
洗浄槽を説明するための概略図である。
101、201、301、401、402、501、701、1101 ‥ 超音波が印加される脱脂槽
102、204、303、304、403、404、601、801、1102 ‥ 超音波が印加されるリンス槽
103、205、305、405、1103 ‥ 乾燥槽
104、206、306、406、1104 ‥ 洗浄前ストッカー
105、207、307、407、1105 ‥ 洗浄後ストッカー
110、210、310、410、510、610、710、810、1002、1110 ‥ アルミニウム基体
121、123、221、223、321、323、325、421、423、425、427、521、621、721、821、1121、1201 ‥ 超音波振動子
122、124、222、224、322、324、326、422、424、426、428、522、622、722、822、1122 ‥ 超音波発振器
131、231、232、331、332、431、432、1131 ‥ 脱脂槽に貯留される洗浄液
132、233、234、333、334、433、434、1132 ‥ リンス槽に貯留される洗浄液
133、235、335、435、1133 ‥ 乾燥槽に貯留される洗浄液
141、241、341、441、1141 ‥ 処理部
142、242、342、442、1142 ‥ 基体搬送機構
151、251、351、451、1151 ‥ 投入台
152、252、352、452、1152 ‥ 搬送機構
153、253、353、453、557、657、757、857、1153 ‥ 基体載置台
154、254、354、454、1154 ‥ シャッター
202、302 ‥ 脱脂槽
203、1102 ‥ リンス槽
502、602、702、802 ‥ 液面調整機構
511、711 ‥ 貯槽
531、631、731、831 ‥ 循環ライン
532、632、732、832 ‥ 槽内循環ポンプ
533、633、733、833 ‥ ヒーター
534、634、734、834 ‥ 冷却機構
535、536、635、636、735、736、835、836 ‥ フィルター
537、637、737、837 ‥ 槽の冷却機構
538、638、738、838 ‥ チラー
541、641、741、841 ‥ 循環ライン
542、642、742、842 ‥ 槽内循環ライン
543、643、743、843 ‥ 排水ライン
544、644、744、844 ‥ 手動バルブ
550、650、750、850 ‥ 搬送機構
551、651、751、851 ‥ 搬送レール
552、652、752、852 ‥ 搬送アーム
553、653、753、853 ‥ 移動機構
554、654、754、854 ‥ エアーシリンダー
555、655、755、855 ‥ チャッキング機構
739、839 ‥ 脱気装置
900 ‥ 光受容層
901 ‥ アルミニウム基体
902 ‥ 下部阻止層
903 ‥ 光導電層
904 ‥ 表面層
1001 ‥ 反応容器
1003 ‥ 支持体加熱ヒーター
1005 ‥ 原料ガス導入管
1006 ‥ カソード電極
1007 ‥ 導電性受け台
1008 ‥ 排気装置
1009 ‥ 原料ガス導入バルブ
1010 ‥ 真空計
1011 ‥ マッチングボックス
1012 ‥ 高周波電源
1013 ‥ 絶縁碍子
1015 ‥ メインバルブ
1201 ‥ 洗浄槽