JP5152136B2 - 半導体パワーモジュール - Google Patents
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Description
図4は、この種の電力変換装置の回路図である。図4において、1は直流電源、2U,2V,2Wは還流ダイオードが逆並列接続された電力用半導体素子としてのIGBT(Insulated Gate Bi-polar Transistor)を2個直列に接続した半導体パワーモジュール、3は負荷としてのモータである。各相の半導体パワーモジュール2U,2V,2Wでは、上下アームのIGBTを交互にスイッチングすることにより、直流電源1の直流電力を交流電力に変換してモータ3に供給する。
なお、図4では、IGBTのゲート駆動回路の図示を省略してある。
IGBTのスイッチング方法としては、外部の制御回路5において、基準正弦波5a及び出力電圧指令5bの大小関係を比較演算部5cにより比較してスイッチングパターンを決定するPWM(Pulse Width Modulation)制御方法が良く知られている。上記スイッチングパターンは駆動回路4に送られ、IGBTに対するゲート信号に変換されて各パワーモジュール2U,2V,2Wに出力される。なお、IGBTのゲート駆動回路は図示を省略してある。
また、近年では、IGBTや還流ダイオードのほかに、IGBTを駆動するための駆動回路4も含めて一つの容器内に実装したインテリジェントパワーモジュール(IPM)と称するパワーモジュールも開発されており、電力変換装置の構成を一層簡素化する努力が重ねられている。
図5は、上記インテリジェントパワーモジュール2Aを有する電力変換装置の回路図である。このパワーモジュール2Aは、IGBT、還流ダイオード、ダイオード、駆動回路4等を内蔵しており、直流電源1に接続される直流入力端子2a,2b、負荷3に接続される交流出力端子2c,2d,2e、制動用抵抗11の接続端子2f、及び制御回路5に接続される制御入力端子2gを備えている。
上述した従来の半導体パワーモジュール2U,2V,2Wやインテリジェントパワーモジュール2Aを備えた電力変換装置では、電力用半導体素子がスイッチングすると過大なスイッチングノイズが生じ、電力変換装置の周囲に設置された他の機器が誤動作したり、雑音が混入する等の障害が発生するおそれがあった。
第1番目のスイッチングノイズは、パワーモジュールと直流電源とからなる閉ループを流れるノーマルモードの高周波電流によるノーマルモードノイズである。図6Aに、このノーマルモードノイズ電流が流れる閉ループ10Nを示す。なお、図6Aにおいて、2は前述した半導体パワーモジュール2U,2V,2Wやインテリジェントパワーモジュール
2Aにおける一相分のパワーモジュールを代表して示したパワーモジュールである。
このノーマルモードは、電力用半導体素子のスイッチングにより、前記閉ループ10Nを構成する配線の浮遊インダクタンスと電力用半導体素子の接合容量とによるLC共振が発生し、この共振による高周波ノイズ電流が閉ループ10Nを流れるモードである。
第2番目のスイッチングノイズは、パワーモジュール及び電力変換装置内部の浮遊容量を通してアースを流れるノイズ電流によるコモンモードノイズである。図7Aに、このコモンモードノイズ電流が流れる閉ループ10Cを示す。
このコモンモードは、電力用半導体素子のスイッチングにより生じる高い電圧変化(dV/dt)によって浮遊容量7,8が高周波で充放電され、この高周波充放電電流がアースを経て閉ループ10Cを流れるモードである。このモードでは、直流電源1側にノイズ電流が流出したり、ノイズが電波となって放射されることもある。
図6Bは、ノーマルモードノイズ電流を抑制するために、パワーモジュール2と直列にインダクタンス6aを設けた従来技術である。
また、図7Bは、コモンモードノイズ電流を抑制するために、パワーモジュール2の直流入力端子の正極側及び負極側を一括してインダクタンス6bを介し直流電源1の両端に接続した従来技術である。この従来技術によれば、図7Aにおける浮遊容量7,8を通ってアース側へ流れるノイズ電流に対し、前記インダクタンス6bがインピーダンス成分として働くため、ノイズ電流を抑制することができる。
これらの図6Bや図7Bの方法によれば、ノーマルモードノイズ電流やコモンモードノイズ電流を一応抑制することが可能である。
この場合、ノイズ電流抑制用のインダクタンスを半導体素子に一層近接した位置に配置できれば、回路全体の小型化やパッケージングに有効であることから、以下に述べるような特許文献記載の技術が提供されている。
また、下記の特許文献2には、ダイオード等の各種半導体素子のリード部に外嵌され、または一体的にモールドされる非晶質磁性合金製のノイズ低減素子が開示されている。
通常、スイッチングノイズの周波数は外部回路条件(配線浮遊インダクタンスや浮遊容量)により様々である。このため、半導体素子にフィルタ素子を付加してノイズを低減する場合には、フィルタ素子をパッケージ外部に装着して必要に応じて交換できることが望
ましいが、特許文献1ではこれが不可能である。
また、特許文献1の従来技術では、複合磁性材料がパッケージに内蔵されるため、パッケージが大型化するという問題がある。
更に、特許文献2に記載された従来技術は、リード線を有する比較的小容量の半導体素子への適用を想定しており、中・大容量のパワーモジュールにそのまま適用することは不可能である。また、パワーモジュールの端子には、大電流を流せるように面積の大きい銅バー等の大型配線部品を接続するのが一般的であるため、特許文献2に記載されているようなノイズ低減素子をパワーモジュールの端子に外嵌することは不可能であった。
そこで本発明の目的は、フィルタ素子として使用される磁性部材を必要に応じて交換可能にした半導体パワーモジュールを提供することにある。
更に、本発明の別の目的は、個々の電力用半導体素子やモジュール全体の容量を問わず、また、上下アーム一相分の半導体パワーモジュールや駆動回路を内蔵したインテリジェントパワーモジュール等の区別なく適用可能な半導体パワーモジュールを提供することにある。
本発明の半導体パワーモジュールは、例えば電力変換装置を構成する上下アーム一相分の電力用半導体素子をモジュールパッケージに内蔵した半導体パワーモジュールを始めとして、電力用半導体素子及びその駆動回路をモジュールパッケージに内蔵したパワーモジュール(いわゆるインテリジェントパワーモジュール)も含む。
要するに、本発明は、モジュールパッケージに電力用半導体素子が内蔵され、かつ、電力用半導体素子に接続された端子がモジュールパッケージの外部に配置された半導体パワーモジュールであれば、いかなる機能、構造を有する半導体パワーモジュールであってもよい。
環状磁性部材は、端子の周囲に形成された磁性部材配置空間に配置されるものであり、この磁性部材配置空間は、端子の周囲に凹部を形成したり、端子をモジュールパッケージから突設させることによって形成される。
また、外部回路条件に依存するスイッチングノイズの周波数に応じて、フィルタ素子に要求されるインダクタンスも変化するので、外部回路条件が変化した場合には最適なインダクタンスを有する環状磁性部材に交換すれば良い。その際、環状磁性部材は端子に外嵌
されているため、交換作業を容易に行うことができる。
まず、図1A,図1B,図1Cは、本発明をインテリジェントパワーモジュールに適用した場合の実施形態を示す斜視図である。
図1Aにおいて、2Bはインテリジェントパワーモジュールである。例えば樹脂製のモジュールパッケージ21には、例えば図5に示されるインテリジェントパワーモジュール2Aと同様に、IGBT、還流ダイオード、ダイオード、駆動回路が内蔵されている。また、モジュールパッケージ21の周囲には、内部の回路部品に接続された直流入力端子2a,2b、交流出力端子2c,2d,2e、制動用抵抗11の接続端子2f、及び制御入力端子2gが設けられている。なお、前記IGBT等の回路部品と前記端子2a〜2gとの接続状態は、図5のインテリジェントパワーモジュール2Aと同様である。
また、この実施形態では、端子2a〜2gをモジュールパッケージ21の表面よりも若干上方に突設し、また、端子2a〜2gの周囲に凹部2hを形成することにより、下記の環状磁性部材を嵌入するための磁性部材配置空間が形成される。
図1Bは、直流入力端子2a,2bを一括して包囲するように環状磁性部材6cを嵌入したインテリジェントパワーモジュール2Cを示している。この例は、環状磁性部材6cをコモンモードノイズ除去用のインダクタンスとして動作させる例である。
勿論、環状磁性部材6dは、正極側の直流入力端子2aまたは他の端子を包囲するように嵌入しても良い。
なお、環状磁性部材6c,6dとしては、例えば環状に成型されたフェライト焼結体が使用される。
図1Dは、図1Cを横方向(端子2f,2a,2bに正対する方向)から見た側面図である。環状磁性部材6dは、端子2a,2b,2fを接続配線する銅ブスバー9とインテリジェントパワーモジュール2Dとの間に嵌入されることになる。
図1A〜図1Dに示したように、モジュールパッケージ21の外部に配置された各端子2a〜2gを包囲するように環状磁性部材6cまたは6dを嵌入することにより、モジュールパッケージ21が大型化することなくノイズ対策を実施することができる。
また、モジュールパッケージ21の外部に環状磁性部材を配置する構造であるから、ノイズ周波数に合わせた所望のインダクタンスを有する環状磁性部材を交換して装着することもできる。
次に、図2Aは、制御入力端子2gにロ字形の環状磁性部材6eを嵌入したインテリジェントパワーモジュール2Eの斜視図である。
この場合、図示するように、制御入力端子2gをモジュールパッケージ21の表面から若干突設させることにより、必然的に制御入力端子2gの周囲に磁性部材配置空間が形成されることになる。また、構造上、制御入力端子2gの高さがモジュールパッケージ21
の表面とほぼ同一である場合には、制御入力端子2gの周囲に凹部を形成して磁性部材配置空間を形成すればよい。
図2Aにおけるコモンモードノイズ電流の経路を、図2Bに示す。なお、図2Bでは、モジュールパッケージ21内部の回路構成について、上下アーム一相分の電力用半導体素子のみを図示してある。
コモンモードノイズ電流は、インテリジェントパワーモジュール2Eの制御入力端子2gを通り、パワーモジュール・アース間や制御回路5・アース間の浮遊容量8を通して流れる場合があり、このノイズ電流経路10Cに環状磁性部材6eを挿入することにより、ノイズ電流を抑制することができる。
次いで、図3A,図3B,図3Cは、上下アーム一相分の電力用半導体素子を内蔵した半導体パワーモジュールの実施形態を示す斜視図である。これらのパワーモジュールは、例えば、前述した図4における半導体パワーモジュール2U,2V,2Wに相当する。
図3Aに示す半導体パワーモジュール2Fにおいて、12aは正極側直流入力端子、12bは負極側直流入力端子、12cは交流出力端子、12gは制御入力端子であり、各端子の並び順や配置は任意に変更可能である。この実施形態でも、各端子12a,12b,12c,12gをモジュールパッケージ12から突設して各端子12a,12b,12c,12gの周囲に凹部12hを形成することにより、環状磁性部材を嵌入するための磁性部材配置空間が保有されている。
図3Bは、直流入力端子12a,12bを一括してこれらの周囲に環状磁性材料6fを嵌入した半導体パワーモジュール2Gを示しており、環状磁性材料6fによってコモンモードノイズを抑制するための構造である。
環状磁性材料6f,6gは各端子の上方の空間を開放した状態で嵌入可能であるから、各端子に銅ブスバー等を接続して配線を行う場合に、環状磁性材料6f,6gが邪魔になるおそれはなく、環状磁性材料6f,6gの絶縁も容易に行えるため、電極同士の短絡防止も容易に行うことができる。この場合、環状磁性材料6f,6gの絶縁方法としては、環状磁性材料6f,6gの表面を絶縁性の樹脂により覆う等の方法がある。
次に、図3Dは、複数の半導体パワーモジュール2Hの正極側直流入力端子12a同士、負極側直流入力端子12b同士を、銅ブスバー9a,9bによりそれぞれ接続した例である。これらの銅ブスバー9a,9bは、環状磁性材料6fの上面に載置した状態で各端子に接続可能であるから、銅ブスバー9a,9bの形状、構造を変更することなく従来の部品を使用することができる。
上記のように、図3A〜図3Dの実施形態においても、各端子を包囲するように環状磁性材料6f,6gを嵌入する構造であるため、モジュールパッケージにフィルタ素子を内蔵する場合に比べてパッケージの小型化が可能である。また、前記と同様な方法により、ノイズ周波数に応じた所望のインダクタンスを有する環状磁性部材を交換して装着することも容易である。
なお、上述の各実施形態において、ノイズ電流経路が交流出力端子を含む場合には、交流出力端子を包囲するように環状磁性体を嵌入すればよい。
また、電力変換装置の機能(直流−直流変換、交流−直流変換等)に応じて、直流出力端子や交流入力端子に環状磁性体を嵌入してノイズ対策を施しても良い。
加えて、各実施形態では、環状磁性体として○形またはロ字形の一体成型された環状磁性体を図示してあるが、コ字形及びI形の磁性体を組み合わせてその全体を環状に形成しても同様の効果が得られるものである。
また、各実施形態では、パワーモジュールが有する全ての端子の周囲に磁性部材配置空間を形成してあるが、ノイズ電流が流れていてノイズ電流の抑制が必要な端子の周囲だけに磁性部材配置空間を形成すれば足りる。
更に、前述した如く、本発明はモジュールパッケージの外部に配置された端子の周囲に磁性部材配置空間を形成すればよいから、端子の周囲に凹部を形成する構造、端子自体を突設する構造の何れも本発明の技術的範囲に属するものである。
2,2U,2V,2W,2F,2G,2H:半導体パワーモジュール
2A,2B,2C,2D,2E:インテリジェントパワーモジュール
2a,2b,12a,12b:直流入力端子
2c,2d,2e,12c:交流出力端子
2f:制動用抵抗の接続端子
2g,12g:制御入力端子
2h,12h:凹部
3:モータ
4:駆動回路
5:制御回路
5a:基準正弦波
5b:出力電圧指令
5c:比較演算部
6a,6b:インダクタンス
6c,6d,6e,6f,6g,6h,6i:環状磁性部材
7,8:浮遊容量
9,9a,9b:銅ブスバー
10C,10N:ノイズ電流経路
11:制動用抵抗
12,21:モジュールパッケージ1
Claims (4)
- 電力用半導体素子がモジュールパッケージに内蔵され、かつ、前記電力用半導体素子に接続された端子が前記モジュールパッケージの外側に配置されてなる半導体パワーモジュールにおいて、
前記端子の周囲に設けられた凹部により磁性部材配置空間を形成し、この磁性部材配置空間に前記端子を包囲するように、この端子を流れるノイズ電流を低減させるための環状磁性部材を配置し、
前記環状磁性部材は、比透磁率を変更して、外形形状が同一でノイズ周波数に応じたインダクタンスを有するものを交換して前記磁性部材配置空間に装着したものであることを特徴とする半導体パワーモジュール。 - 電力用半導体素子がモジュールパッケージに内蔵され、かつ、前記電力用半導体素子に接続された端子が前記モジュールパッケージの外側に配置されてなる半導体パワーモジュールにおいて、
前記端子の周囲に設けられた凹部により磁性部材配置空間を形成し、この磁性部材配置空間に前記端子を包囲するように、この端子を流れるノイズ電流を低減させるための環状磁性部材を配置し、
前記環状磁性部材は、薄肉の環状磁性部材であり、ノイズ周波数に応じたインダクタンスとなるように嵌入枚数を調整して前記磁性部材配置空間に装着したものであることを特徴とする半導体パワーモジュール。 - 請求項1または2に記載した半導体パワーモジュールにおいて、
前記端子を前記モジュールパッケージから突設させて前記端子の周囲に磁性部材配置空間を形成し、この磁性部材配置空間に前記環状磁性部材を配置したことを特徴とする半導体パワーモジュール。 - 請求項1〜3の何れか1項に記載した半導体パワーモジュールにおいて、
前記端子は、少なくとも、直流電力を伝達するための端子,交流電力を伝達するための端子,前記電力用半導体素子に対する制御信号を伝達するための制御端子、の何れかであることを特徴とする半導体パワーモジュール。
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