JP5151124B2 - 光制限素子及び光造形システム - Google Patents
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Description
しかしながら、従来公知の二光子吸収化合物においては、十分な二光子吸収能が得られないため、二光子吸収を誘起する励起光源としては高価な非常に高出力のレーザーが必要である。従って、小型で安価なレーザーを使って、二光子吸収を利用した実用用途を実現するためには、高効率の二光子吸収材料が必須であると共にその増感技術の開発が非常に重要な課題である。
例えば、表面プラズモン顕微鏡として、高屈折率媒体上に成膜された金属薄膜上に配置された極薄い膜(表面プラズモン増強場は、表面から約100nm以下の限られた領域にのみ発生する)を試料として用いる技術が提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
また、金属微粒子により励起される表面プラズモン増強場を用いる測定方法についての技術提案もなされており、これは、観察測定領域が金属微粒子の周囲100nm以下の領域に限定し、粒子表面に吸着した試料を観察することにより高感度な観測を行うというものである。
更には、マイクロキャビティー中に配置された凝集ナノ粒子により、多光子課程を含む高感度観測法についての開示もなされている(例えば、下記特許文献3参照。)。
この金ナノロッドは、アスペクト比を変えることにより、共鳴波長を変えられるという特性を有しており、530nm程度から近赤外(1100nm程度)までをカバーできる、優れた機能を有する材料である。この金ナノロッドは、界面活性剤を含む溶液中での電気化学的反応によって作製できる(例えば、下記特許文献4参照。)。
しかしながら、この技術は、表面プラズモン増強場を発生する粒子は一光子吸収を増感するものであるのに加え、微粒子のみに適用範囲を限定しているため、使用波長選択範囲が狭く、実用上の適用範囲が限定されてしまうという問題を有している。
これにより、小型で安価なレーザーを使った実用用途(三次元メモリ、光制限素子、光造形システムなど)を実現可能となった。
また、特に三次元多層光メモリ用途のように記録層(機能層)が多層化された構成の場合、各機能層の特性均一性に優れたデバイスが実現可能となった。
しかしながら、このような二光子同時吸収の遷移効率は、一光子吸収に較べて低く、極めて大きなパワー密度の光子を必要とするため、通常に使用されるレーザー光強度では殆ど無視されていまい、ピーク光強度(最大発光波長における光強度)が高いモード同期レーザーのようなフェムト秒程度の極超短パルスレーザーを用いることによって観察できるものである。
このため、レーザーを照射した場合、レーザースポット中心部の電界強度の高い位置でのみ二光子の吸収が起こり、周辺部の電界強度の弱い部分では二光子の吸収は全く起こらない。
三次元空間においては、レーザー光をレンズで集光した焦点の電界強度の大きな領域でのみ二光子吸収が起こり、焦点から外れた領域では電界強度が弱いために二光子吸収が全く起こらない。印加された光電場の強度に比例してすべての位置で励起が起こる一光子の線形吸収に比べて、二光子吸収は、この二乗特性に由来して空間内部のピンポイントのみでしか励起が起こらないため、空間分解能が著しく向上する。
この特性を利用して、記録媒体の所定の位置に二光子吸収によりスペクトル変化、屈折率変化または偏光変化を生じさせ、ビットデータを記録する三次元メモリの研究が進められている。二光子吸収は、光の強度の二乗に比例して生じるため、二光子吸収を利用したメモリは、一光子吸収を利用したメモリに比べて、スポットサイズを小さくすることができ、超解像記録が可能となる。その他、この二乗特性に由来する高い空間分解能の特性から、光制限材料、光造形用光硬化樹脂の硬化材料、二光子蛍光顕微鏡用蛍光色素材料などの用途への開発も進められている。
また、二光子吸収、二光子発光を用いると、入射した光子のエネルギーよりも高いエネルギーの光子を取り出せるため、波長変換デバイスという観点からアップコンバージョンレージングに関する研究も進められている。
一方、有機化合物は、分子設計により所望の二光子吸収の最適化が可能であり、かつ諸物性のコントロールも比較的容易であるため、実用化に適しているといえる。
有機系二光子吸収材料としては、ローダミン、クマリン等の色素化合物、ジチエノチオフェン誘導体、オリゴフェニレンビニレン誘導体等が知られている。
しかしながら、これらは、分子あたりの二光子吸収能を示す二光子吸収断面積が小さく、特にフェムト秒パルスレーザーを用いた場合の二光子吸収断面積は、200(GM:×10-50cm4・s・molecule-1・photon-1)未満のものが殆どで、工業上実用的ではない。
先ず、二光子吸収材料の応用について説明する。
近年、インターネット等のネットワークやハイビジョンTVが急速に普及している。
また、HDTV(HighDefinition Television)を考慮すれば、民生用途においても50GB以上、好ましくは100GB以上の画像情報を安価簡便に記録するための大容量記録媒体の要求が高まっている。
更に、コンピューターバックアップ用途、放送バックアップ用途等、業務用途においては、1TB程度以上の大容量の情報を高速かつ安価に記録できる光記録媒体が求められている。
DVD±R等の従来公知の2次元光記録媒体は、記録再生波長を短波長化したとしてもせいぜい25GB程度であり、今後の大容量化への要望に充分に応えることができないことが懸念されている。
三次元光記録媒体とは、三次元(膜厚)方向に何十、何百層もの記録層が積層された構成を有しているものである。
また、記録層を厚膜として光入射方向に対して何重にも記録再生を行えるようになされていてもよい。
このように、三次元光記録媒体は、従来の二次元記録媒体の何十〜何百倍もの超高密度、超高容量記録を達成できるものである。
さらに、これら従来の技術において、用いられているフォトクロミック化合物は、可逆材料であるため、非破壊読み出し、記録の長期保存性、再生のS/N比等に実用上の問題点を有しており、光記録媒体として実用性のある方式であるとは言えなかった。
特に非破壊読出しや、記録の長期保存性等の観点からは、不可逆材料を用いて反射率(屈折率または吸収率)または発光強度の変化で再生するのが好ましいが、このような機能を有する二光子吸収材料を具体的に開示している技術についての提案はなされていなかった。
さらに、非破壊読み出しが可能で、かつ不可逆材料であるため良好な保存性も期待でき実用的である。
特に三次元光記録媒体に使用するためには、速い転送レートを達成するために、高感度にて発光能の違いによる記録を二光子吸収により行うことができる二光子吸収三次元光記録材料の構築が必須である。そのためには、高効率に二光子を吸収し励起状態を生成することができる二光子吸収化合物と、二光子吸収化合物励起状態を用いて何らかの方法にて二光子吸収光記録材料の発光能の違いを効率的に形成できる記録成分を含む材料が有力であるが、そのような材料は今までほとんど開示されておらず、そのような材料の構築が望まれていた。
更に、多(二)光子吸収化合物の多(二)光子吸収を利用して記録を行った後、光を記録材料に照射してその発光、反射強度等の違いを検出することにより再生することを特徴とする記録再生が可能な光記録媒体を提供する。
多光子吸収材料含有層と金属微粒子含有層とよりなる複合材料の積層順については特定するものではなく、所定の記録層の上方、下方の少なくともいずれか一方にあれば本発明の構成要件を満足するものである。
具体的な材料としては、ポリエチレンテレフタレート、樹脂下塗り型ポリエチレンテレフタレート、火炎又は静電気放電処理されたポリエチレンテレフタレート、セルロースアセテート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ガラス等が挙げられる。
また、最終的に目的とする記録媒体の態様に応じて、予め所定のトラッキング用の案内溝やアドレス情報を形成してもよい。
溶媒の蒸発除去は、加熱法、減圧法のいずれによって行ってもよい。
保護層(中間層)は、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、またはセロファンフィルム等のプラスチック製のフィルム、または板を静電的な密着、押し出し機を使った積層等により貼合わせるか、前記ポリマーの溶液を塗布することによって形成することができる。また、ガラス板を貼り合わせることによって形成することもできる。
また、層間の気密性を高めるために粘着剤または液状物質を存在させてもよい。
上記中間層や粘着層に本発明の構成要素であるプラズモン増強場を発現する金属微粒子やロッドが分散混合されていても良いし、中間層、粘着層表面に金属微粒子層が形成されていても良い。
また、層間を保護層(中間層)で区切っていない構成としても、多(二)光子吸収材料の特性から深さ方向の三次元記録を行うことも可能である。
なお、本発明は下記の実施形態により何ら限定されるものではなく、三次元記録(平面及び膜厚方向に記録)が可能な構造であれば、他の構造であってもよい。
図1(a)、(b)に示す三次元記録媒体10においては、平らな支持体(基板1)に、多(二)光子吸収化合物を用いた記録層11と、クロストーク防止用の中間層(保護層)12とが交互に50層ずつ積層された、多層ディスク構成を有しており、各層はスピンコート法により成膜されているものとする。
上述したような構造によれば、従来公知のCD、DVDと同様のディスクサイズで、テラバイト級の超高密度光記録が実現できる。
記録ビット3の形成時には、記録用レーザー光源13による単一ビーム(図中、レーザー光L)を用い、フェムト秒オーダーの超短パルス光を利用する。
また再生時には、再生用レーザー光源14によるデータ記録に使用するビームとは異なる波長を用いる。或いは低出力の同波長の光を用いてもよい。
記録及び再生は、ビット単位/ページ単位のいずれにおいても実行可能であり、面光源や二次元検出器等を利用する並行記録/再生は、転送レートの高速化に有効である。
なお、本発明に従い同様に形成される三次元多層光メモリの形態としては、カード状、プレート状、テープ状、ドラム状等が考えられる。
光通信や光情報処理では、情報等の信号を光で搬送するためには変調、スイッチング等の光制御が必要になる。この種の光制御には、電気信号を用いた電気−光制御方法が従来採用されている。しかし電気−光制御方法は、電気回路のようなCR時定数による帯域制限、素子自体の応答速度や電気信号と光信号との間の速度の不釣合いで処理速度が制限されることなどの制約があり、光の利点である広帯域性や高速性を十分に生かすためには、光信号によって光信号を制御する光−光制御技術が非常に重要になってくる。この要求に応えるものとして本発明の二光子吸収機能材料を加工して光学素子を作製する。これは光を照射することで引き起こされる透過率や屈折率、吸収係数などの光学的変化を利用し、電子回路技術を用いずに光の強度や周波数を変調し、これによって、光通信、光交換、光コンピューター、光インターコネクション等における光スイッチなどに応用するものである。
二光子吸収による光学特性変化を利用する本発明の光制限素子は、通常の半導体材料により形成される光制限素子や、一光子励起によるものに比べ、応答速度にはるかに優れた素子を提供することができる。また高感度ゆえに、S/N比の高い信号特性に優れた光制限素子を提供することができる。
図2に、本発明の二光子吸収機能材料を、二光子励起し得る波長の制御光により二光子励起させることによって、一光子励起し得る波長の信号光を光スイッチングする光制限素子20の一例の概略図を示す。
この例においては、光制限素子20は、金属微粒子または金ナノロッドを含む、または表面に該金属が配置された保護層21で狭持された二光子吸収材料22の構成であるが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
制御光23は二光子過程を、信号光24は一光子過程を利用するため波長が異なるので、カラーフィルター25を用い、制御光23と信号光24を分離することが可能である。
分離された信号光24を検出器26により検出する。このような構成により、光−光制御技術の高速応答性とS/N比を両立させることが出来る。
二光子吸収材料を適用した二光子光造形法に適用する装置の概略図を図3に示す。
この例においては、近赤外パルスレーザー光源31から光を、透過光量を時間的にコントロールするシャッター33と、NDフィルター34を介し、更には、ミラースキャナー35を通して、レンズ37を用いて光硬化性樹脂39中に集光させレーザースポットを走査し、二光子吸収を誘起することによって焦点近傍のみにおいて樹脂を硬化させて任意の三次元構造を形成する二光子マイクロ光造形方法を行うものである。
しかしながら、二光子吸収の発生確率は、光強度の二乗に比例するため、光強度の大きい集光点近傍にのみ、二光子吸収の発生の高い領域が形成される。
このように、パルスレーザー光をレンズ37によって集光させ二光子吸収を誘起することで、集光点近傍に光吸収を限定し、ピンポイント的に樹脂を硬化させることが可能となる。
集光点は、コンピュータ38によってZステージ36とガルバノミラーを制御して光硬化樹脂液39内を自由に移動させることができるため、光硬化性樹脂液39内において目的とする三次元加工物を自在に形成することができる。
(a)回折限界をこえる加工分解能:二光子吸収の光強度に対する非線形性によって、光の回折限界を超えた加工分解能を実現できる。
(b)超高速造形:二光子吸収を利用した場合、焦点以外の領域では、光硬化性樹脂が原理的にも硬化しない。このため照射させる光強度を大きくし、ビームのスキャン速度を速くすることができる。このため、造形速度を約10倍向上することができる。
(c)三次元加工:光硬化性樹脂は、二光子吸収を誘起する近赤外光に対して透明である。したがって焦点光を樹脂の内部へ深く集光した場合でも、内部硬化が可能である。従来のSIHでは、ビームを深く集光した場合、光吸収によって集光点の光強度が小さくなり、内部硬化が困難になる問題点が、本発明ではこうした問題点を確実に解決することができる。
(d)高い歩留り:従来法では樹脂の粘性や表面張力によって造形物が破損、変形するという問題があったが、本手法では、樹脂の内部で造形を行うのでこうした問題は解消される。
(e)大量生産への適用:超高速造形を利用することによって、短時間に、連続的に多数個の部品あるいは可動機構の製造が可能である。
主成分は、オリゴマーと反応性希釈剤からなる樹脂成分と光重合開始剤(必要に応じ光増感材料を含む)である。
オリゴマーは重合度が2〜20程度の重合体であり、末端に多数の反応基を持つ。
更に、粘度、硬化性等を調整するため、反応性希釈剤が加えられている。
レーザー光を照射すると、重合開始剤または光増感材料が二光子吸収し、重合開始剤から直接または光増感材料を介して反応種が発生し、オリゴマー、反応性希釈剤の反応基に反応し、重合が開始される。
その後、これらの間で連鎖的重合反応を起こし、三次元架橋が形成され、短時間のうちに三次元網目構造を持つ固体樹脂へと変化する。
特に、積層式立体造形においては、(1)反応性が良好であること、(2)硬化時の堆積収縮が小さいこと、(3)硬化後の機械特性が優れていること、等が重要である。
これらの特性は、本手法においても同様に重要であり、そのため、積層式立体造形用に開発された樹脂で二光子吸収特性を有するものは本手法の二光子光造形用光硬化性樹脂としても使用できる。
具体的には、アクリレート系及びエポキシ系の光硬化性樹脂が挙げられ、特にウレタンアクリレート系の光硬化性樹脂が好適である。
これは、感光性高分子膜の表面に、パルスレーザー光を、マスクを介さずに干渉露光させるものである。
前記パルスレーザー光としては、前記感光性高分子膜に感光性機能を発揮させる波長領域の光であることが重要とされている。
従って、パルスレーザー光としては、感光性高分子の種類、または、感光性高分子における感光性機能を発揮する基又は部位の種類等に応じて、その波長領域を適宜選択することができる。
特に、光源から発光されるパルスレーザー光の波長が、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させる波長領域でなくても、パルスレーザー光の照射に際して、多光子吸収過程を利用することにより、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させることが可能となる。
具体的には、光源から発光されるパルスレーザー光を集光して、集光されたパルスレーザー光を照射すると、多光子の吸収(例えば二光子の吸収、三光子の吸収、四光子の吸収、五光子の吸収など)が生じ、これにより光源から発光されるパルスレーザー光の波長が、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させる波長領域でなくても、感光性高分子膜には、実質的に、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させる波長領域のパルスレーザー光が照射されたことになる。
このように、干渉露光するパルスレーザー光は、実質的に、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させる波長領域となるパルスレーザー光であればよく、照射条件などにより、その波長を適宜選択することができる。
一方、金属微粒子のうちの一種である金ナノロッドは、棒状の金微粒子であり、そのアスペクト比(長軸/短軸の値:R)を制御することにより、可視光線から近赤外線までの任意の特定波長を吸収することが可能な非常にユニークな材料として注目されている。アスペクト比が大きい程、その吸収(共鳴)波長は長波長側にシフトする。アスペクト比に対する吸収(共鳴)スペクトルを図4に示す。
また、プラズモン増強場を発生させる微粒子は、励起光中では独立のプラズモン増強場を発生させるが、微粒子が近接すると増強場に重なりを生じるばかりではなく、微粒子の間隙部にさらに大きなプラズモン増強場が発生する。このような大きなプラズモン増強場は二つの微粒子が近接した略二両体や微粒子凝集体に顕著に発生する。
特に、略二両体を含む小規模凝集体の状態に特定することにより、散乱による光利用効率の損失を抑え、より大きな増強効果が得られるエンハンス層としての機能が得られることが確かめられた。
また、金ナノロッドは上述のごとく、アスペクト比により共鳴(吸収波長)を制御できるもので、例えば、780nmの光を用いて光学デバイスに応用するのであれば、図4のごとくアスペクト比は3.5付近のものが理論上、増感効率が最も良いわけであるが、本発明は二光子吸収という使用光に対する透明な特性を利用するもので、吸収量があまり大きくなりすぎることが場合によっては二光子特性を相殺してしまうことになる。使用波長に対する透明性を重視するなら、使用波長における金ナノロッドの吸収量を5%以下、好ましくは1%以下にすると良く、使用波長に対する透明性がさほど重要でない場合、使用波長における金ナノロッドの吸収量30%以下好ましくは20%以下とすると良い。
多(二)光子吸収材料含有層であるが、これは二光子吸収材料そのものによる薄膜であっても、バルクの形態であっても、あるいは樹脂等で分散混合した形態であっても良い。
特に光造形に応用する場合、二光子吸収材料が紫外線硬化樹脂等の光硬化樹脂に分散されていることが必要であり、その場合の膜厚については特に制限されるものではなく、所望する造形物の大きさに依存する。光硬化樹脂が流動性の高い性質であれば、キャビティ内に金属微粒子含有層/二光子吸収層と配置しておき、光照射後に未露光部を洗い流すことでより高感度化された光造形法を構築することが可能である。また、光制限素子に応用する場合も厳密な厚さの制限はない。一方、三次元多層メモリに適用する場合、その膜厚は上述した通りである。
例えば、金や銀を特定の条件で水系溶媒に分散させると球状の微粒子としてコロイド分散させることも可能であるし、球状と形状異方性を有した微粒子との混合としても得ることが可能である。
特に金に関しては、金ナノロッドが微粒子の大半を占める形状のコロイド液を得ることも出来るし、ナノロッドと球状微粒子との混合体として得ることも可能である。
本発明の複合材料を構成する、いわゆる二光子吸収特性を増強させる層、すなわち金属微粒子含有層は、金属微粒子(例えば金ナノロッド)が表面に1粒子が二次元的に敷き詰められた単一層により構成されていてもよく、一部に凝集状態を有した層でもあってもよいし、微粒子が幾層にも積み重なったバルク層となっていても良いし、樹脂等のバインダーに分散混合された形態でもよい。金属微粒子含有層の膜厚は、10nm〜500μm程度の範囲であるものとする。
増感効果としては、金属微粒子(例えば金ナノロッド)が表面に1粒子が二次元的に敷き詰められた単一層や一部に凝集状態を有した層、とりわけ、二光子吸収材料を含有する層との界面に凝集している形態を選定することにより、高い増感効率が得られることが可能であることが確かめられており、望ましい形態である。
これは、上述したように、金属微粒子や金ナノロッドは、使用レーザー波長に吸収を有していたり、金属微粒子の光散乱の影響により使用レーザーに対して透過性の高い二光子吸収特性を利用したりするということと相反する。従って、使用波長における金属微粒子、金ナノロッドの吸収、散乱の影響を、可能な限り低減化させる構成、濃度、配置を選定し、かつ高効率な増感を得るようにすることが好ましく、表面に一層のみであるものや、微粒子、ナノロッドを感光層界面に局在化させた光散乱の影響が少ないものでの増感が望ましい。また、微粒子、ナノロッドが局在化した構成であれば、粒子間の局在プラズモン共鳴による増感も可能であり高効率増感に寄与する。
金属微粒子含有層と、二光子吸収材料含有層とを、繰り返し複数回積層した構成とする場合、入射光に対して奥側に進むほど、光の利用効率は低下してくるのが一般的である。
そこで、各二光子吸収層感度の均一化が望まれる。感度均一化法としては奥側に行くほど二光子吸収材料含有層の感度を向上させる方法とその逆に光入射方向に対して手前側の二光子吸収材層になるほど二光子吸収能を低減させる方法とが挙げられる。具体的には二光子材料を奥側になるほど高感度な二光子吸収材料を配置させる方法が挙げられる。次に手前側になるほど、二光子吸収層をバインダー等で希釈して二光子能を順次低減させる方法でも同様の各層の感度均一化は達成出来る。
また、二光子吸収材料(層)は同一としても本発明の増感材料である金属微粒子(ナノロッド)の配置量でも各層の感度均一化は図れる。すなわち、手前側の二光子吸収層に接する金属微粒子(ナノロッド)数を少なく配置して奥側になるほど接する金属微粒子(ナノロッド)の設置密度を向上させて各二光子吸収層の二光子感度の均一化を図ることも可能である。
ここで、請求項での感度の略同一とは光照射パワーの±10%程度の均一化が図れれば良く、好ましくは±5%以内の感度均一化(同一)が図れることを略同一とする。
また、特に三次元多層光メモリ用途のように記録層(機能層)が多層化された構成の場合、各機能層の特性均一性に優れたデバイスが実現可能となる。
トルエン300mlに硝酸銀10gとオレイルアミン(85%)37.1gを加え、1時間撹拌した。次いで、アスコルビン酸15.6gを加えて3時間撹拌した。これにアセトン300mlを加え、デカンテーションにて上澄み液を除き、沈降物に含有されている溶媒を留去することで粒径10〜30nmの球状銀微粒子を得た。
得られた球状銀微粒子をテトラヒドロフランに再分散させ、厚さ1mmのガラス基板状に銀微粒子膜厚が20〜60nmとなるようにスピンコートした。
これを60℃のオーブンで在留溶媒を除き、室温まで冷却した。
この銀微粒子層上に下記式(1)に示す二光子吸収色素を、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールに溶解した液を用いて膜厚が100nmとなるようにスピンコートして積層型サンプルを得た。
水30mlに塩化金酸0.37gを加え、ついで、テトラオクチルアンモニウムブロミド2.187gとトルエン80ml混合液を加えて2時間撹拌した。
更に、1−ドデカンチオール0.2gを加えて1時間撹拌した。
次に、NaBH40.378gを水20mlに溶解した液を滴下して2時間撹拌した。
この反応物を分液ロートを用いて水で数回洗浄した後、有機層の溶媒を留去することで粒径20〜50nmの球状金微粒子を得た。
この球状金微粒子をテトラヒドロフランに再分散させ、厚さ1mmのガラス基板状に金微粒子膜厚が40〜100nmとなるようにスピンコートした。これを60℃のオーブンで在留溶媒を除き、室温まで冷却した。
この金微粒子層上に、上記式(1)で示す二光子吸収色素を、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールに溶解した液で膜厚が100nmとなるようにスピンコートして積層型サンプルを得た。
0.18mol/l臭化セチルトリメチルアンモニウム水溶液を70ml、シクロヘキサン0.36ml、アセトン1ml、0.1mol/l硝酸銀水溶液を1.3ml混合して撹拌する。これに0.24mol/l塩化金酸水溶液を0.3ml加えた後、0.1mol/lアスコルビン酸水溶液を0.3ml加えて塩化金酸溶液の色が消失したことを確認する。その後、この液をシャーレに移して低圧水銀灯による波長254nmの紫外線を20分照射することで、吸収波長に約830nmにある金ナノロッド分散液を得た。この金ナノロッド分散液を遠心分離器を用いて金ナノロッド成分を沈降させる。この上澄み液を除いて、さらに水を加えて遠心分離器にかけるという工程を複数回繰り返して、余剰の分散剤臭化セチルトリメチルアンモニウムを除いた。こうして得られた金ナノロッド分散液を、厚さ1mmのガラス基板状に滴下して自然乾燥させたところ金ナノロッド膜厚が40〜80nmとなった。この金微粒子層上に、上記式(1)で示す二光子吸収色素を2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールに溶解した液で膜厚が100nmとなるようにスピンコートして積層型サンプルを得た。
厚さ1mmのガラス基板上に、(3−アミノプロピル)エチルジエトキシシランの5%エタノール溶液をスピンコートする。
これを80℃で2時間加熱処理してガラス表面をシランカップリング処理する。
このガラスの処理面を、上記実施例1で得た銀微粒子テトラヒドロフランに分散液に浸して、その後引き上げる。
これを60℃のオーブンで余剰溶媒を除去して銀微粒子がガラス表面上に略1粒子ずつ2次元的に敷きつめられた微粒子層を得た。
AMF観察により微粒子は均一に敷き詰められている部分と微粒子が局所的に凝集している部分とが混在している形態であることを確認した。
この銀微粒子層上に、上記式(1)で示す二光子吸収色素を2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールに溶解した液で膜厚が100nmとなるようにスピンコートして積層型サンプルを得た。
上記実施例4と同様のシランカップリング処理を施したガラス基板処理面を、上記実施例3で得られた金ナノロッド分散液に浸して、その後引き上げ、これを60℃のオーブンで余剰溶媒を除去して金ナノロッドがガラス表面上に略1粒子ずつ2次元的に敷き詰められた微粒子層を得た。
AMF観察により微粒子は均一に敷き詰められている部分と微粒子が局所的に凝集している部分とが混在している形態であることを確認した。
この金ナノロッド層上に、上記式(1)で示す二光子吸収色素を2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールに溶解した液で膜厚が100nmとなるようにスピンコートして積層型サンプルを得た。
上記実施例4で得られた金ナノロッド分散液1gを、1重量%ポリエチレンイミン0.4gと混合した。これに5重量%ポリメタクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体のDMF溶液2gを混合する。これを減圧することにより数mlまで濃縮する。この濃縮液を厚さ1mmのガラス基板上に滴下して、90℃のオーブンで溶剤乾燥させてポリマーに金ナノロッドが分散された膜を250nmの厚みで得た。この金ナノロッド分散ポリマー層上に、上記式(1)で示す二光子吸収色素を2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールに溶解した液で膜厚が100nmとなるようにスピンコートして積層型サンプルを得た。
上記実施例1〜6において使用した二光子吸収色素を、下記式(2)に示す色素化合物に変更して使用した。
その他の条件は、上記実施例1と同様にしてサンプルを作製した。
厚さ1mmのガラス基板上に、上記色素(1)を2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールに溶解した液で膜厚が100nmとなるようにスピンコートしてサンプルを作製した。
厚さ1mmのガラス基板上に、上記色素(2)を2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールに溶解した液で膜厚が100nmとなるようにスピンコートしてサンプルを作製した。
測定システムの概略構成図を図5に示す。
上述のようにして作製した各サンプルの二光子吸収量を直接測定することは、プラズモン増強場を発生させる微粒子による励起光の吸収と散乱があるため容易には行うことができない。
そこで、蛍光発光を有する二光子吸収材料を用い、各々のサンプルが二光子吸収によって発する蛍光光量を相対比較し、これによって二光子吸収の増強度を測定することとした。
励起光には、赤外線フェムト秒レーザー、スペクトラフィジックス社製MaiTai(繰り返し周波数80MHz、パルス幅100fs、測定波長780nm、平均照射パワー50mW)を用いている。
出力を調整するため、1/2λ板とグランレーザープリズムよりなるアッテネーターを通し、1/4λ板により円偏光とし、焦点距離100mmの平凸レンズで試料上に集光し、焦点距離40mmのカップリングレンズで蛍光を集め、概略平行光とする。
ダイクロイックミラーで励起光を取り除いた後、焦点距離100mmの平凸レンズで検出用フォトダイオード上に概略集光する。フォトダイオードの手前には赤外線カットガラスフィルターが設置されている。
なお、蛍光強度の評価は、比較例1又は比較例2の二光子色素のサンプルの蛍光強度を1として基準値とし、これとの相対値として表すこととした。
実施例1〜実施例6と比較例1の相対比較評価を下記〔表1〕に表し、実施例7〜実施例12と比較例2との相対比較評価を下記〔表2〕に表す。
さらには、金属微粒子含有層は、ポリマー中に分散するよりも、二光子吸収材料含有層と接触面積をより大きく確保した方が、より増感効率の向上効果が見込まれ、更には、接触している金属微粒子が凝集している方が、より一層の増強効果が認められることが確かめられた。
2 基板(反射層)
3 記録ビット
6 ピンホール
7 検出器
10 三次元記録媒体
11 記録層
12 中間層
13 記録用レーザー光源
14 再生用レーザー光源
20 光制限素子
21 保護層
22 二光子吸収材料
23 制御光
24 信号光
25 カラーフィルター
26 検出器
30 光造形物
31 レーザー光源
33 シャッター
34 NDフィルター
35 ミラースキャナー
36 Zステージ
37 レンズ
38 コンピュータ
39 光硬化性樹脂液
Claims (8)
- 金属表面に発生する表面プラズモン増強場を発生させる金属微粒子を含有し、多光子吸収材料は含有しない金属微粒子含有層と、多光子吸収材料を含有し、前記表面プラズモン増強場を発生する金属微粒子を含有しない多光子吸収材料含有層とが、積層された複合部材を具備していることを特徴とする光制限素子。
- 前記金属微粒子含有層の金属微粒子が、前記多光子吸収材料含有層との界面に凝集していることを特徴とする請求項1に記載の光制限素子。
- 前記金属微粒子が、金ナノロッドであることを特徴とする請求項1または2に記載の光制限素子。
- 前記複合部材は、前記金属微粒子含有層と前記多光子吸収材料含有層との積層体を複数具備している多層構成を有しており、
前記複数の多光子吸収材料層の、それぞれの多光子吸収感度が、略同一に設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光制限素子。 - 請求項1に記載の複合部材を用いたことを特徴とする光造形システム。
- 前記金属微粒子含有層の金属微粒子が前記多光子吸収材料含有層との界面に凝集していることを特徴とする請求項5に記載の光造形システム。
- 前記金属微粒子が金ナノロッドであることを特徴とする請求項5または6に記載の光造形システム。
- 前記複合部材は、前記金属微粒子含有層と前記多光子吸収材料含有層との積層体を複数具備している多層構成を有しており、
前記複数の多光子吸収材料層の、それぞれの多光子吸収感度が、略同一に設定されていることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の光造形システム。
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