以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態におけるカード用コネクタの分解図、図2は本発明の第1の実施の形態におけるカード用コネクタの下面図、図3は本発明の第1の実施の形態におけるカード用コネクタの端子の上面図である。
図において、1は本実施の形態におけるカード用コネクタであり、図示されない電子機器に取付けられる。そして、前記カード用コネクタ1の内部には後述されるカード101が挿入され、前記カード用コネクタ1を介して、前記電子機器にカード101が装着される。なお、前記電子機器は、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、PDA、デジタルカメラ、ビデオカメラ、音楽プレーヤ、ゲーム機、車両用ナビゲーション装置等であるが、いかなる種類の機器であってもよい。
また、カード101は、例えば、SIMカード、MMC(R)、SD(R)カード、miniSD(R)カード、xDピクチャーカード(R)、メモリスティック(R)、メモリスティックDuo(R)、スマートメディア(R)、T−Flash(Trans−Flash)メモリカード、マイクロSD(R)カード等のICカードであり、いかなる種類のカードであってもよいが、本実施の形態においては、マイクロSD(R)カードであるものとして説明する。
なお、本実施の形態において、カード用コネクタ1の各部の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、カード用コネクタ1又はその部品が図に示される姿勢である場合に適切であるが、カード用コネクタ1又はその部品の姿勢が変化した場合には、姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
ここで、前記カード用コネクタ1は、合成樹脂等の絶縁性材料によって一体的に成形されたハウジング11と、金属等の導電性材料から成る板材に打抜き、折曲げ等の加工を施すことによって一体的に成形され、ハウジング11の上側に取付けられたカバー部材としてのシェル61とを有する。該シェル61は、ハウジング11及び該ハウジング11に収容されたカード101の少なくとも一部の上方を覆うようになっている。そして、前記カード用コネクタ1は、概略、扁(へん)平な直方体形状を備え、前記電子機器に取付けられ、前方(図1における左下方)からカード101が挿入される。
図に示されるように、ハウジング11は、カード101の挿入方向に関して手前側となる前縁側(図1における左下側)が略U字状又は略コ字状に切取られた形状を備える底壁部11b、及び、該底壁部11bの奥部において奥側(図1における右上側)の縁に沿って延在し、底壁部11bから立設する奥壁部11aを有する。ここで、底壁部11bの上面には、接続端子としての端子51が収容される端子収容溝11eが、前後方向に延在するように、複数本形成されている。なお、各端子収容溝11eの前縁側の部分には、端子51を保持する端子保持部11fが形成されている。
そして、各端子51は、金属等の導電性及び弾性を備える材料の板材から一体的に形成され、前記端子保持部11fに保持される基端部51aと、該基端部51aから奥壁部11aに向けて、すなわち、後方(図1における右上方)に延出する可撓部分としてのアーム部51dと、該アーム部51dの先端に接続された先端部としての接触部51bと、前記基端部51aから前方に延出するソルダーテール部51cとを備える。
前記アーム部51dは、図3に示されるように、先端に行くに従って幅が狭くなる先細形状の平面形状を備え、基端部51a側の部分が最も幅の広い幅広部51eであり、接触部51b側の部分が最も幅の狭い幅狭部51fである。換言すると、前記アーム部51dの平面形状は、テーパ形状である。なお、図3に示される例において、前記アーム部51dの両側縁は、直線状に形成されているが、曲線状に形成されていてもよい。つまり、前記アーム部51dの平面形状は、幅広部51eから幅狭部51fまでの間に幅が単調減少するような形状であれば、いかなる形状であってもよい。なお、前記アーム部51dの厚さ寸法、すなわち、板厚は幅広部51eから幅狭部51fまでの間で均一である。
また、前記アーム部51dは基端部51aに対して斜めに接続されており、端子51がハウジング11に装填された状態では、端子保持部11fに保持された基端部51aが底壁部11bの下面に対してほぼ平行となるのに対し、前記アーム部51dは、底壁部11bの下面に対して、先端に近付くに従って上昇するように傾斜する。
そして、前記接触部51bは、アーム部51dの先端から上方に向けて突出するように湾曲した側面形状を備える。そのため、端子51がハウジング11に装填された状態で、かつ、カード101が挿入されていない状態では、基端部51aが底壁部11bの上面より下方に位置するのに対し、接触部51bの少なくとも一部は、底壁部11bの上面より上方に突出する。なお、端子51がハウジング11に装填された状態では、上から観ると、基端部51a、アーム部51d及び接触部51bは、すべて端子収容溝11e内に収容される。また、前記接触部51bは、図3に示されるように、その先端を除き、幅が幅狭部51fと同等で、ほぼ均一な平面形状を備える。
一方、前記ソルダーテール部51cは、底壁部11bの手前側の縁から前方に、かつ、下面方向に延出し、前記電子機器における後述される配線基板91に形成された信号線、コンタクトパッド、端子等、すなわち、相手側端子部材に、はんだ付等によって電気的に接続される。
また、ハウジング11は、底壁部11bの一方の側縁に沿って前後方向に延在する断面L字状の側壁としての第1側壁部11c、及び、底壁部11bの他方の側縁に沿って前後方向に延在する側壁としての第2側壁部11dを有する。該第2側壁部11dの内側にはカード案内機構収容部11gが形成され、該カード案内機構収容部11g内にはカード用コネクタ1内に挿入されたカード101を案内するためのカード案内機構のスライド部材21が前後方向にスライド可能に取付けられている。
ここで、スライド部材21は、カード101を保持するためのカード保持部と、移動カム部材としてのスライドカム部とを備える。そして、前記カード保持部がカード101の側面と係合することによって、スライド部材21は、カード101を保持し、該カード101とともに前後方向に移動する。また、前記スライド部材21は、コイルスプリングから成る付勢部材81の付勢力を受け、カード101の挿入方向と反対の方向、すなわち、カード101の排出方向に付勢される。
そして、前記カード用コネクタ1は、該カード用コネクタ1内にカード101を挿入する際にも、カード用コネクタ1内からカード101を取出す際にも、カード101を押込む動作を必要とする、いわゆる、プッシュインプッシュアウトタイプ、又は、プッシュ/プッシュタイプと通称されるものである。このような動作は、押しボタンスイッチの分野におけるオルタネイト動作(位置保持型、プッシュオン・プッシュオフ型)と同様のものである。そして、前記スライド部材21のスライドカム部は、プッシュ/プッシュタイプの動作を行うためのハート状カムのカム機構におけるスライドカムとして機能する。
そのため、スライドカム部の上面には、カム溝23が形成され、該カム溝23には固定カム部材としての細長いピン部材71の自由端が係合している。また、該ピン部材71の他端は、固定端として、ハウジング11に掛止され、ピボット結合されている。そして、前記ピン部材71とカム溝23とが協働することによって、カード101とともに移動するスライド部材21にプッシュ/プッシュタイプの動作を行わせるようになっている。これにより、前記カード案内機構は、カード101を挿入方向に押込むプッシュ動作によってカード101が挿入方向に移動して終端点まで到達すると、前記付勢部材81の付勢力により、前記カード101を終端点から挿入方向と反対の方向に移動させて排出することができる。
前記ピン部材71は、シェル61の板ばね66によって上から下方向に付勢されることにより保持されている。前記板ばね66は、シェル61の一部をハウジング11の底壁部11bの方向に押圧可能に折曲げ加工することによって形成されており、ピン部材71は、前記板ばね66とスライド部材21又はハウジング11との間に位置し、スライド部材21又はハウジング11から離脱しないように保持されている。
また、カード101の端子部材としてのコンタクトパッドと端子51とが接触していることを検出して、カード101がカード用コネクタ1に装填されていることを検出するカード検出スイッチの第1接点部材52が第1側壁部11cに取付けられ、前記カード検出スイッチの第2接点部材53が奥壁部11aに取付けられている。そして、カード101が挿入されていない状態においては、第1接点部材52と第2接点部材53とは非接触であり、カード検出スイッチは非導通状態、すなわち、オフ(OFF)になっている。また、カード101が挿入されると、第1接点部材52と第2接点部材53とが接触し、カード検出スイッチは導通状態、すなわち、オン(ON)になる。
さらに、シェル61は、概略矩(く)形の天板部62と、該天板部62の側縁の複数箇所から立設する複数の側板部64とを有する。該側板部64には、複数の掛止開口63が形成され、シェル61をハウジング11の上側に取付けると、該ハウジング11の奥壁部11a、第1側壁部11c及び第2側壁部11dの外側面に形成された掛止突起13に前記掛止開口63が掛止され、これにより、シェル61がハウジング11に固定される。また、一部の側板部64の下端には、掛止用突片65が形成され、シェル61をハウジング11の上側に取付けると、底壁部11bの下面に前記掛止用突片65が掛止し、これにより、シェル61がハウジング11によって確実に固定される。
また、該ハウジング11はグランド板としての金属底板55を備える。該金属底板55は、底壁部11bの下面に取付けられ、図2に示されるようにほぼ矩形の形状を備える本体部56を有する。そして、該本体部56の前後方向(図2における上下方向)の寸法は、端子51のアーム部51dの全長以上である。また、本体部56の幅方向(図2における左右方向)の寸法は、図に示される例においては、幅方向に並んでハウジング11に装填された端子51の列における第1側壁部11c寄り(図2における左寄り)の2本及びその両側の端子51が存在しない部分を含む範囲の寸法にほぼ等しい。そして、本体部56の側縁からは、取付用帯部57が延出し、該取付用帯部57の先端には掛止突部58が形成されている。該掛止突部58はシェル61の側板部64、掛止用突片65等に当接するとともに、ハウジング11に係合し、これにより、金属底板55は、ハウジング11に固定されるとともに、シェル61と電気的に接続し、該シェル61と同電位となる。
さらに、前記本体部56には、端子51に対応する部分に、カップリング調整部として機能するスリット状の開口である開口部56aが形成されている。該開口部56aの大きさは、対応する端子51のアーム部51dよりもやや大きい程度であり、前記開口部56aの形状は、前記アーム部51dの平面形状に対応する形状、すなわち、端に行くに従って幅が狭くなる先細形状、又は、テーパ形状である。また、図において56bは、開口部56aの側方において金属底板55が残存する残存部である。なお、図に示される例において、前記開口部56aは、本体部56の前後方向に延在するように2つ形成され、残存部56bは、本体部56の前後方向に延在するように3つ形成されている。
そして、前記金属底板55は、少なくとも本体部56が底壁部11bの下面に当接するとともに、上又は下から観て、前記本体部56が第1側壁部11c寄りの2本の端子51及びその両側の端子51が存在しない部分を含む範囲に対応し、かつ、各端子51と各開口部56aとが対応するように配設される。これにより、第1側壁部11c寄りの2本の端子51における基端部51aの中間から少なくともアーム部51dの先端までの部分の直下に金属底板55が位置せず、かつ、前記部分の直下の周囲に金属底板55が位置することとなり、前記端子51と金属底板55との距離を長くすることができる。すなわち、端子51を信号ラインとし、金属底板55をグランドラインとする信号の伝送路における信号ラインとグランドラインとの間隔を適切な寸法に調整することができ、前記伝送路の特性インピーダンスを適切にコントロールすることができる。
なお、第1側壁部11c寄りの2本の端子51以外の端子51についても金属底板55を配設して特性インピーダンスをコントロールする必要がある場合には、本体部56の幅方向の寸法及び開口部56aの数を変更し、かつ、上又は下から観て、対象となる端子51の各々と各開口部56aとが対応するように本体部56の位置を調節する。例えば、図に示される例において、8つのすべての端子51について金属底板55を配設して特性インピーダンスをコントロールする必要がある場合、本体部56は、端子51の列における左端に位置する端子51の左側縁より左側から右端に位置する端子51の右側縁より右側までの範囲に対応する幅を備える大きさとし、8つの開口部56aを備え、かつ、上又は下から観て、対象となる端子51の各々と各開口部56aとが対応するようにその位置が調節される。
次に、前記構成のカード用コネクタ1にカード101を挿入した場合の端子51と金属底板55の開口部56aとの関係について説明する。
図4は本発明の第1の実施の形態におけるカード用コネクタにカードを挿入した状態を示す斜視図、図5は本発明の第1の実施の形態におけるカード用コネクタにカードを挿入した状態の断面図であり図4のA−A矢視断面図、図6は本発明の第1の実施の形態におけるカード用コネクタの端子と金属底板の開口部との関係を示す模式平面図である。
ここでは、図4及び5に示されるように、カード用コネクタ1は配線基板91の表面に実装されている。この場合、端子51のソルダーテール部51cの下面は、配線基板91の表面に露出する信号線、コンタクトパッド、端子等の相手側端子部材の上面に当接し、はんだ付等によって電気的に接続されている。また、シェル61の掛止用突片65の下面は、配線基板91の表面に露出するグランド線、接地パッド等の相手側グランド部材92の上面に当接し、はんだ付等によって電気的に接続されている。
まず、利用者は、手指等によってカード101をカード用コネクタ1の前方(図4における左下方、図5における左方)から挿入する。なお、カード101は、前端101aがハウジング11の奥壁部11aの方を向き、図示されないコンタクトパッドが配設された面が底壁部11bと対向し、コンタクトパッドが配設されていない面がシェル61の天板部62と対向するような姿勢で挿入される。
続いて、利用者がカード101をプッシュして更に押込むと、スライド部材21のカード保持部と係合し、前記カード101は、スライド部材21とともに、奥壁部11aに向けて移動する。この際、前記スライド部材21がコイルスプリングから成る付勢部材81を圧縮する。そして、スライド部材21及びカード101は、最も前進した位置である終端点に到達してフルストローク状態となる。
続いて、利用者がカード101をプッシュする動作を止め、カード101に対する押圧力を解除すると、付勢部材81の反発力によって、スライド部材21及びカード101は奥壁部11aから離脱する向きに移動させられる。そして、スライド部材21のカム溝23と係合しているピン部材71の自由端が、カム溝23の一部に掛止されてスライド部材21の動きを停止させることによって、スライド部材21及びカード101は、図4及び5に示されるように、ロック位置で停止する。これにより、カード101はハウジング11に確実に収容された状態となる。
このように、カード101は、ロック位置に保持されることによって、カード用コネクタ1が実装された基板を備える電子機器の演算手段等との間でデータの送受信を行うことができる状態となる。なお、カード101がロック位置に保持されている場合、カード検出スイッチの第1接点部材52がカード101によって押されて変位し、第2接点部材53と接触しているので、カード検出スイッチはオンになっている。また、カード101の各コンタクトパッドは、対応する端子51の接触部51bと接触して導通している。
この場合、図5に示されるように、端子51の接触部51bがカード101のコンタクトパッドによって上から押されるので、端子51は弾性的に変形し、これにより、ばね力を発揮して接触部51bをコンタクトパッドに押圧する。したがって、コンタクトパッドと端子51との接触が確実に維持される。
ここで、図5に示されるような端子51の変形状態を微細に観察すると、基端部51a、接触部51b及びソルダーテール部51cは実質的に変形することがなく、主として、平板状のカンチレバーのようなアーム部51dのみが変形していることが見て取れる。しかも、該アーム部51dは、その一部のみが変形するのではなく、幅広部51eから幅狭部51fまでの全体がほぼ均一に変形していることが分かる。これは、前述のように、アーム部51dが、板厚は均一であるが、先端に行くに従って幅が狭くなる先細形状の平面形状、すなわち、幅広部51eから幅狭部51fまでの間に幅が単調減少するような形状を備えているからである。
仮に、アーム部51dの全体に亘って幅が均一であると、カード101のコンタクトパッドによって押されることにより生じる曲げモーメントが基端部51a側の部分で最大となるので、該基端部51a側の部分は、大きな曲げ応力を受けて破断する可能性がある。また、破断を回避するためには、アーム部51d又は端子51全体の板厚を厚くする必要があり、コストが上昇するだけでなく、カード用コネクタ1全体の高さが高くなり、該カード用コネクタ1を小型化することができなくなってしまう。
これに対し、本実施の形態におけるアーム部51dは、幅広部51eから幅狭部51fまでの間に幅が単調減少するような形状を備えているので、曲げモーメントが大きい部分で幅が広く、曲げモーメントが小さい部分で幅が狭くなるので、アーム部51dの全体に亘って曲げ応力が均一になる。したがって、アーム部51dは、その一部のみが変形するのではなく、幅広部51eから幅狭部51fまでの全体がほぼ均一に変形する。これにより、アーム部51dの一部が大きな曲げ応力を受けて破断することがないので、アーム部51d又は端子51全体の板厚を薄くすることができ、その結果、コストを低減することができ、かつ、カード用コネクタ1を低背化及び小型化することができる。
さらに、図5に示されるように変形した端子51と、ハウジング11の底壁部11bの下面に配設された金属底板55との上又は下から観た位置関係、すなわち、平面的位置関係を観察すると、図6に示されるようになる。なお、図6においては、端子51及び金属底板55のみが描画され、他の部材は省略されている。また、端子51及び金属底板55は模式的に描画され、端子51の接触部51bは省略されている。さらに、図6には、8つのすべての端子51について金属底板55を配設して特性インピーダンスをコントロールする必要がある場合の例が示され、本体部56は、8つの開口部56aを備え、かつ、各端子51と各開口部56aとが対応するようにその位置が調節されている。
図6に示されるように、端子51のアーム部51dは、先端に行くに従って幅が狭くなるような先細の平面形状を備える。また、金属底板55の本体部56に形成された開口部56aも、前記アーム部51dと同様の平面形状、すなわち、先端に行くに従って幅が狭くなるような先細の平面形状を備える。そして、開口部56aは、対応する端子51のアーム部51dの真下に位置し、アーム部51dの基端側に対応する部分の幅が広く、先端側に対応する部分の幅が狭い形状を備え、かつ、各部における幅がアーム部51dの対応する部分における幅以上となっている。
したがって、前記アーム部51dの真下には開口部56aが位置して金属底板55が位置せず、かつ、前記アーム部51dの直下の周囲に金属底板55が位置するので、前記アーム部51dと金属底板55との間の距離を長くして前記アーム部51d及び金属底板55相互のカップリングを調整することができる。なお、アーム部51dと金属底板55との距離は、開口部56aの幅を調整することによって調整することができる。例えば、開口部56aの幅を狭くすればアーム部51dと金属底板55との距離を短くすることができ、また、開口部56aの幅を広くすればアーム部51dと金属底板55との距離を長くすることができる。
また、本実施の形態におけるアーム部51dと開口部56aとの関係は、隣接する一対の端子51のうちの一方を正の信号の信号ラインとし、他方を負の信号の信号ラインとするように差動信号を伝送し、かつ、金属底板55をグランドラインとするような差動信号の伝送ラインを端子51及び金属底板55が形成する場合に好適である。これは、伝送路の横断面でトライアッド(Triad)、すなわち、三つ組を形成するように配設された一対の信号ライン及び1つのグランドラインから成る組合せにおいて、信号ラインとグランドラインとの距離を容易に調整することができ、前記伝送路の特性インピーダンスを適切にコントロールすることができるからである。
とりわけ、本実施の形態におけるアーム部51dと開口部56aとの関係は、図5に示されるような断面における上下方向に関してアーム部51dと金属底板55との距離が短い場合、換言すると、ハウジング11の底壁部11bの肉厚が薄く、アーム部51dと金属底板55とが上下方向に近接している場合に好適である。このような場合に、アーム部51dの真下に金属底板55が位置すると、アーム部51dと金属底板55との距離が短過ぎ、カップリングが強くなってしまうが、本実施の形態においては、図6に示されるように、開口部56aの幅がアーム部51dの幅より広く、残存部56bがアーム部51dの外側に位置するので、アーム部51dと金属底板55との距離を長くして、カップリングを弱めることができる。
このように、本実施の形態において、カード用コネクタ1は、コンタクトパッドを備えるカード101を収容するハウジング11と、ハウジング11に取付けられ、カード101のコンタクトパッドと接触する端子51とを有し、端子51は、ハウジング11に保持される基端部51aと、基端部51aから延出するアーム部51dと、アーム部51dの先端に接続された接触部51bとを備え、アーム部51dは、基端側の幅が広く、先端側の幅が狭い形状を備え、ハウジング11には、少なくともアーム部51dとのカップリングを調整する開口部56aを備える金属底板55が取付けられる。そして、前記開口部56aは、アーム部51dと同様の形状を備え、アーム部51dの真下に位置する。
これにより、端子51の基端部51aから接触部51bに亘る範囲において、カップリングを調整して特性インピーダンスを適切にコントロールすることができ、信号伝送路全体における特性インピーダンスを整合させることができ、カード用コネクタ1を信号の高速伝送に使用してもクロストークが生じることがない。また、信号伝送路における信号の反射、減衰、共振、放射等の損失を低減することができる。さらに、カード用コネクタ1を低背化することができ、さらに、コストを低減することができる。
また、前記開口部56aは、対応する端子51のアーム部51dの真下に位置し、前記アーム部51dの基端側に対応する部分の幅が広く、先端側に対応する部分の幅が狭い形状を備え、かつ、各部における幅がアーム部51dの対応する部分における幅以上となっている。したがって、アーム部51dと金属底板55との距離を容易に調整することができ、端子51を信号ラインとし、金属底板55をグランドラインとする信号の伝送路の特性インピーダンスを適切にコントロールすることができる。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
図7は本発明の第2の実施の形態におけるカード用コネクタのハウジングの斜視図であり斜め下から観た図である。
本実施の形態における金属底板55は、ハウジング11と別個に形成された部材ではなく、ハウジング11の底壁部11bの下面にめっき、蒸着、塗布等の方法によって付着形成された金属被膜である。したがって、別個に形成された金属底板55をハウジング11の底壁部11bの下面に取付ける必要がないので、カード用コネクタ1の組立工程を簡素化することができ、コストを低減することができる。また、金属板を加工して開口部56a及び残存部56bを形成する必要がないので、金属板の加工性を考慮することなく、開口部56a及び残存部56bの形状を任意の形状とすることができる。さらに、金属底板55の厚さを極めて薄くすることができ、カード用コネクタ1を更に低背化することができる。
なお、その他の点の構成及び動作については、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1及び第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1及び第2の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
図8は本発明の第3の実施の形態におけるカード用コネクタの端子と金属底板の開口部との関係を示す模式平面図である。
本実施の形態において、端子51と、ハウジング11の底壁部11bの下面に配設された金属底板55との上又は下から観た位置関係、すなわち、平面的位置関係を観察すると、図8に示されるようになる。なお、前記第1の実施の形態における図6と同様に、図8においては、端子51及び金属底板55のみが描画され、他の部材は省略されている。また、端子51及び金属底板55は模式的に描画され、端子51の接触部51bは省略されている。さらに、図8には、8つのすべての端子51について金属底板55を配設して特性インピーダンスをコントロールする必要がある場合の例が示され、本体部56は、8つの開口部56aを備え、かつ、各端子51と各開口部56aとが対応するようにその位置が調節されている。
本実施の形態における開口部56aは、各部における幅がアーム部51dの対応する部分における幅以下となっている。その他の点については、前記第1の実施の形態と同様である。つまり、端子51のアーム部51dは、先端に行くに従って幅が狭くなるような先細の平面形状を備える。また、金属底板55の本体部56に形成された開口部56aも、前記アーム部51dに対応する平面形状、すなわち、先端に行くに従って幅が狭くなるような先細の平面形状を備える。そして、開口部56aは、対応する端子51のアーム部51dの真下に位置し、アーム部51dの基端側に対応する部分の幅が広く、先端側に対応する部分の幅が狭い形状を備える。
したがって、前記アーム部51dの幅方向中央寄りの部分の真下には金属底板55が位置しないが、アーム部51dの両側縁寄りの部分及びアーム部51dの外側の直下には金属底板55が位置するので、前記第1の実施の形態と比較して、前記アーム部51dと金属底板55との距離を短くすることができ、カップリングを強くすることができる。なお、アーム部51dと金属底板55との距離は、前記第1の実施の形態と同様に、開口部56aの幅を調整することによって調整することができる。
また、本実施の形態におけるアーム部51dと開口部56aとの関係は、前記第1の実施の形態と同様に、隣接する一対の端子51のうちの一方を正の信号の信号ラインとし、他方を負の信号の信号ラインとするように差動信号を伝送し、かつ、金属底板55をグランドラインとするような差動信号の伝送ラインを端子51及び金属底板55が形成する場合に好適である。
とりわけ、本実施の形態におけるアーム部51dと開口部56aとの関係は、前記第1の実施の形態と比較して、上下方向に関してアーム部51dと金属底板55との距離がより長い場合、換言すると、ハウジング11の底壁部11bの肉厚がより厚く、アーム部51dと金属底板55とが上下方向により離間している場合に好適である。
なお、その他の点の構成及び動作については、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。なお、第1〜第3の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1〜第3の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
図9は本発明の第4の実施の形態におけるカード用コネクタの端子と金属底板の開口部との関係を示す模式平面図である。
本実施の形態において、端子51と、ハウジング11の底壁部11bの下面に配設された金属底板55との上又は下から観た位置関係、すなわち、平面的位置関係を観察すると、図9に示されるようになる。なお、前記第1の実施の形態における図6と同様に、図9においては、端子51及び金属底板55のみが描画され、他の部材は省略されている。また、端子51及び金属底板55は模式的に描画され、端子51の接触部51bは省略されている。さらに、図9には、8つのすべての端子51について金属底板55を配設して特性インピーダンスをコントロールする必要がある場合の例が示され、本体部56は、7つの開口部56aを備え、かつ、各端子51と各開口部56aとが対応するようにその位置が調節されている。
本実施の形態における開口部56aは、各端子51の真下ではなく、隣接する端子51同士の間の部分の真下に位置し、残存部56bが各端子51の真下に位置する。その他の点については、前記第1及び第3の実施の形態と同様である。つまり、端子51のアーム部51dは、先端に行くに従って幅が狭くなるような先細の平面形状を備える。また、金属底板55の本体部56に形成された開口部56aも、前記アーム部51dに対応する平面形状、すなわち、先端に行くに従って幅が狭くなるような先細の平面形状を備える。そして、開口部56aは、対応する端子51のアーム部51dの真下に位置し、アーム部51dの基端側に対応する部分の幅が広く、先端側に対応する部分の幅が狭い形状を備える。
したがって、前記アーム部51dの真下には金属底板55が位置し、アーム部51dの外側の直下には金属底板55が位置しないので、前記第1の実施の形態と比較して、前記アーム部51dと金属底板55との距離を短くすることができる。また、アーム部51dの外側の直下には金属底板55が位置しないので、アーム部51dと金属底板55とのカップリングを弱めることができる。該カップリングの強さは、開口部56aの幅を調整することによって調整することができる。
本実施の形態におけるアーム部51dと開口部56aとの関係は、前記第1及び第3の実施の形態と相違し、1つの端子51を正の信号の信号ラインとし、その真下の金属底板55をグランドラインとするようなシングルモードの伝送ラインを端子51及び金属底板55が形成する場合に好適である。
なお、その他の点の構成及び動作については、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。なお、第1〜第4の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1〜第4の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
図10は本発明の第5の実施の形態におけるカード用コネクタの端子とシェルとの関係を示す模式図である。なお、図10において(a)は端子の下面図、(b)はカード用コネクタの側断面図である。
本実施の形態において、端子51は、底壁部11bの上面に取付けられるのではなく、例えば、特開2006−313459号公報に記載のカード用コネクタと同様に、シェル61の天板部62に近接するように、すなわち、挿入されたカード101とシェル61の天板部62との間に位置するように配設されている。
具体的には、図10(a)に示されるように、端子51は、前記第1〜第4の実施の形態と同様の平面形状を備える。しかし、基端部51aは、ハウジング11の奥壁部11aに保持されるとともに該奥壁部11aを貫通する。また、接触部51bは、アーム部51dの先端から下方に向けて突出するように湾曲した側面形状を備える。そして、カード101は、コンタクトパッドが配設された面がシェル61の天板部62と対向し、コンタクトパッドが配設されていない面が底壁部11bと対向するような姿勢で、端子51と底壁部11bとの間に挿入される。したがって、下方に向けて突出する接触部51bが上を向いたコンタクトパッドに接触する。なお、ソルダーテール部51cは、奥壁部11aから下方に突出し、配線基板91に形成された信号線、コンタクトパッド、端子等にはんだ付等によって電気的に接続される。
そして、シェル61の天板部62の下面、すなわち、底壁部11bと対向する面におけるアーム部51dと対応する位置には、カップリング調整部として機能する突部材である誘電率調整部材67が配設されている。該誘電率調整部材67は、例えば、合成樹脂、セラミクス等の比誘電率が1以上の材料から成り、前記天板部62の下面に接着、ボルト止め等の手段によって固定される。これにより、信号ラインとして機能するアーム部51dと、グランドラインとして機能する天板部62との間の空間の誘電率を調整して、信号ラインとグランドラインとのカップリングの強さを調整することができ、その結果、伝送路の特性インピーダンスを適切にコントロールすることができる。
また、前記誘電率調整部材67は、シェル61と同様の金属材料から成るものであって、前記天板部62の下面に溶接、ボルト止め等の手段によって固定されたもの、又は、天板部62と一体的に形成されたものであってもよい。この場合、誘電率調整部材67自体がグランドラインの一部として機能するので、誘電率調整部材67の寸法及び形状を調整することによって、信号ラインとして機能するアーム部51dとの距離を変化させ、信号ラインとグランドラインとのカップリングの強さを調整することができ、その結果、伝送路の特性インピーダンスを適切にコントロールすることができる。
なお、その他の点の構成及び動作については、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。なお、第1〜第5の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1〜第5の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
図11は本発明の第6の実施の形態におけるカード用コネクタの端子とシェルとの関係を示す模式図である。なお、図11において(a)は端子の上面図、(b)はカード用コネクタの側断面図である。
本実施の形態における端子51は、前記第5の実施の形態と同様に、ハウジング11の奥壁部11aに保持されるが、接触部51bは、アーム部51dの先端から上方に向けて突出するように湾曲した側面形状を備える。そして、カード101は、前記第5の実施の形態とは逆に、コンタクトパッドが配設されていない面がシェル61の天板部62と対向するような姿勢で、端子51と天板部62との間に挿入される。したがって、上方に向けて突出する接触部51bが下を向いたコンタクトパッドに接触する。
そして、図示が省略されている底壁部11bの下面には金属底板55が配設され、該金属底板55の上面、すなわち、シェル61の天板部62と対向する面におけるアーム部51dと対応する位置には、誘電率調整部材67が配設されている。該誘電率調整部材67は、例えば、合成樹脂、セラミクス等の比誘電率が1以上の材料から成り、前記金属底板55の上面に接着、ボルト止め等の手段によって固定される。これにより、信号ラインとして機能するアーム部51dと、グランドラインとして機能する金属底板55との間の空間の誘電率を調整して、信号ラインとグランドラインとのカップリングの強さを調整することができ、その結果、伝送路の特性インピーダンスを適切にコントロールすることができる。
また、前記誘電率調整部材67は、金属底板55と同様の金属材料から成るものであって、該金属底板55の上面に溶接、ボルト止め等の手段によって固定されたもの、又は、金属底板55と一体的に形成されたものであってもよい。この場合、誘電率調整部材67自体がグランドラインの一部として機能するので、誘電率調整部材67の寸法及び形状を調整することによって、信号ラインとして機能するアーム部51dとの距離を変化させ、信号ラインとグランドラインとのカップリングの強さを調整することができ、その結果、伝送路の特性インピーダンスを適切にコントロールすることができる。
なお、その他の点の構成及び動作については、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
また、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。