JP5144551B2 - 落石等防護柵 - Google Patents
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Description
こうした防護柵は、図7の荷重−伸び曲線に示すように、落石によりケーブルに加わる荷重が破断荷重の1/2以下の場合はケーブルが落石エネルギー(斜線部分)を吸収するが、1/2以上の荷重が加わると支柱を変形させて落石エネルギーを吸収する構造になっている。
さらに、支柱と横ロープの係留部を、緩衝金具を介して結合した構造とし、山側から落下した落石がロープを直撃した際の張力によるロープと緩衝金具の滑り摩擦抵抗や金具の塑性変形により衝撃エネルギーを減衰吸収させるようにしたものも提案されている。
また、緩衝金具により衝突エネルギーを吸収する方法は、緩衝金具を塑性変形させるので、ロープ端末及び緩衝金具にはロープの破断荷重以上の強度が要求される。ロープの伸び(破断伸びは7%以下)ではエネルギー吸収はそれほど期待できず、緩衝金具及びロープ端末が衝撃エネルギーを直接受けることになるので、やはり端末金具や支柱の大型化は避けられない。
なお、本発明は、落石防止のほか土砂の落下、雪崩の防止にも用いられ得るので落石等防護柵としている。
したがって、暴風雨などでの小規模な小石等の落下(100kj以下)、年に数回程度発生する台風時での落石(500kj以下)、数年に1度発生する地震などによる岩塊(1000kj以下)などの多様な落石形態に1基で対応することができる。
上記のようにケーブル自体のエネルギー吸収能力が高いため、端末金具や中間支柱として軽量な部材を使用して高い性能を発揮することができ、また、部材の塑性変形は数年に1度程度の大規模災害時なので、通常の維持管理や補修は大幅に軽減でき、コストも安価で済む。
これによれば、中間支柱に取り付けられた道路側ケーブルは長手方向に摺動可能なので、一箇所の落石が端末支柱間のケーブル全長に確実に伝わり、落石エネルギーの吸収量を高めることができる。
さらに、ケーブル保護材は、両端がラッパ状に開口した半割パイプからなっているので、ケーブルが道路側に伸びたときにケーブル屈曲を防止することができ、スムーズなケーブル伸びが得られる。
これによれば、通常頻発する小規模な落石や土砂が上下に張設したケーブルの間をすり抜けて道路上に到達することを防止することができる。また、落石による金網の塑性変形が落石エネルギーの吸収に役立つと同時に上下ロープへの張力伝達にも寄与する。
図1において、aは道路側(谷側) bは山側である。符号1は道路と山側傾斜面との境界に沿って設置された本発明によるハイブリッド型高エネルギー吸収式の落石等防護柵である。
前記落石等防護柵1は、山の傾斜面から落石(土砂、雪崩など)を受け止め阻止すべき箇所に沿って両端部に端末支柱2、2が立設されるとともに、端末支柱2,2間に中間支柱3がほぼ等間隔で立設されており、中間支柱3,3間には、複数本の縦長の間隔保持材6が位置している。
端末支柱2,2の道路側aと山側bにそれぞれ上下方向に複数段に張設されたケーブル4A,4Bは間隔保持材6に支持されており、また、少なくとも山側ケーブル4Bには全面に金網7が張られている。なお、本発明において、「ケーブル」はロープを含む概念である。
4本の単位支柱2A,2Bは所要長さたとえば1000mm の下部211がモルタルやコンクリートなどのセメント系基礎50に埋め込まれ、強固に地盤に固定されている。もちろん、地盤が図1の仮想線のようにコンクリート基礎壁を有している場合には、これを利用して下部211が埋設される。なお、単位支柱2A,2BはH形鋼でなく角鋼管でもよいし、溝形鋼を対向状に溶接したものでもよい。
中間支柱3は所要長さたとえば1150mmの下部311がモルタルやコンクリートなどのセメント系基礎50に埋め込まれることで強固に立設されている。
しかし、これに限らず、前記端末支柱と同じように地盤がコンクリート基礎壁を有している場合には、これを利用して下部311が埋設されておよいし、下部にステーつきのプレート金具を設け、これをセメント系基礎にアンカーされたプレート金物(図示せず)に剛結することで立設していてもよい。
図2に示されるように、道路側aのケーブル4Aは、端末支柱2の道路側にある単位支柱2A、2Aを貫通してナットで緊締固定された索端金具11にターンバックル10を介して連結されており、山側のケーブル4Bも同様に端末支柱2の山側にある単位支柱2B、2Bに端部が固定された索端金具11にターンバックル10を介して連結されており、それぞれターンバックル10の操作により初期張力が加えられるようになっている。
すなわち、道路側ケーブル4Aは、構成するワイヤの降伏比が0.5〜0.7(降伏点/引っ張り破断荷重)で、かつ、伸びPが25%≦P≦60%の範囲にコントロールされた吸収エネルギーの大きなロープを用いることが望ましい。伸びの上限を60%としたのは、これを超える伸びでは必要以上に道路側に落石がはみ出すからであり、下限を25%としたのはこれ未満だとエネルギー吸収が少なく十分な効果が得られないからである。
ケーブル4A、4Bは景観の効果を高めるため樹脂塗装が施されていてもよい。
まず、道路側ケーブル4Aについては、中間支柱3の道路側フランジ31AにU字ボルト33を挿通するための上下2個の穴がフランジ32を挟んで左右2箇所設けられており、道路側ケーブル4Aは前記上下穴の中央に配置するように道路側フランジ31Aに沿わされ、その状態で保護材8を被せ、左右2箇所の穴にU字ボルト33を貫挿し、ナットで締結している。
本発明では上記方法により、道路側ケーブル4Aが上下10段、山側ケーブル4Bが上下10段配置してある。ケーブル及び保護材は景観の効果を高めるため樹脂塗装されていてもよい。
間隔保持材6は図4のように、たとえば100mm×100mm×6mm×8mm、長さ3000mmの2本のH形鋼61,61を一方のフランジ面同士に間隙をもたせ、他のフランジ面が道路側と山側に面するように縦配置し、対向するフランジ面間の上下方向数箇所たとえば4箇所程度を、連結部材62たとえば100mm×100mm×6mm×8mmのH形鋼で溶接により結合したものである。
ケーブル4A,4Bの間隔保持材6への取り付けは、間隔保持材6の道路側a、山側bに面するそれぞれのフランジ面61A,61BにU字ボルト66を挿通する2個の上下穴をリブを挟んで左右2箇所設けておき、ケーブル4A,4Bを上下穴の中央に配置し、左右2箇所の穴にU字ボルト66を貫挿し、ナットで締結する。
山側ケーブル4Bの破断後、落石Sは道路側ケーブル4Aに衝突し、図5(d)のように道路側ケーブル4Aは伸びによりエネルギーを吸収する。道路側ケーブル4Aが28%まで伸びた時点で落石が停止したときのエネルギー吸収量は図8に示す斜線である。
本発明では、山側ケーブル4Bの破断までの伸びと、道路側ケーブル4Aの伸びにより落石のエネルギー吸収量が飛躍的に増大するので中間支柱3、端末支柱2の塑性変形を大幅に抑えることが可能になった。
すなわち、中間支柱3の山側フランジ31Bには帯板状のブラケット70が溶接されており、山側ケーブル4Bの端末には環状に加工したトヨロック端末72を設け、そのトヨロック端末72をブラケット70にシャックル71を介して連結している。
この実施例は山側ケーブル4Bが短尺化するので伸びの絶対量は少なくなり、エネルギー吸収量は減るけれども、ケーブルの取替えなどの補修が容易になるメリットがある。従って、山側ケーブル4Bの破断に至らない程度の小規模な落石、土砂災害が多発するような箇所に適した防護柵である。
そして、伸びが大きく破断荷重が低いロープを道路側に用いることで高い衝撃エネルギーを受けた際に端末部に伝わる反力は従来の柵よりも小さいため、柵の端末部をコンパクトにすることができ、またロープ自体のエネルギー吸収能力が高いため、構成部材として軽量なものを用いることができ、イニシャルコストも低減でき、躯体の大型化を抑止できる。すなわち、価格をあまり上げることなく性能が高くなり、また、メンテナンスの回数の低減も図ることができる。
1)100kj程度の軽微な落石エネルギー:風雨などによる小石・岩の落下:頻発
従来の柵と同様に金網及び山側ケーブルの吸収エネルギーで受け止める。支柱などの柵の塑性変形がないため、補修は不要である。
2)100〜500kj程度のやや大きい落石エネルギー:台風時などに連続発生する岩塊の落下:年数回
山側ケーブルが塑性変形を始めると、道路側ケーブルの伸びもエネルギー吸収に加担し始める。山側ケーブル、道路側ケーブル、衝突前後のエネルギー差によるエネルギー吸収が働く域である。
3)500〜1000kjの大きい落石エネルギー:大きな地震時に発生する岩塊の落下:通年に1回
山側ケーブルが破断してしまうと、道路側ケーブルの伸びと支柱の塑性変形によりエネルギーを吸収する。
3 中間支柱
4A 道路側ケーブル
4B 山側ケーブル
6 間隔保持材
7 金網
8 保護材
Claims (5)
- 傾斜面の落石、土砂、雪崩等を防止すべき箇所に沿って間隔をおいて立設された端末支柱と、前記端末支柱間に間隔をおいて立設された複数本の中間支柱と、端末支柱と中間支柱の山側に沿って上下方向に間隔をあけて複数段張設された山側ケーブルと、破断時伸びが山側ケーブルの破断時伸びの4〜9倍を有し、端末支柱と中間支柱の道路側に沿って上下方向に間隔をあけて複数段張設された道路側ケーブルを備え、中間支柱間の道路側ケーブルと山側ケーブルのそれぞれに間隔保持材が取り付けられていることを特徴とする落石等防護柵。
- 道路側ケーブルはケーブル保護材を介して中間支柱に長手方向摺動可能に支架されている請求項1に記載の落石等防護柵。
- ケーブル保護材は両端がラッパ状に開口した半割パイプからなっている請求項2に記載の落石等防護柵。
- 山側ケーブルが中間支柱に縁切りして取り付けられている請求項1ないし3のいずれかに記載の落石等防護柵。
- 山側ケーブルと道路側のケーブルのいずれか一方に網が張られている請求項1ないし4のいずれかに記載の落石等防護柵。
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