JP5142606B2 - トラック用フレームおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
最近、自動車用部材への軽量化の要求はさらに強くなり、トラック用フレームのような厚肉大型の部材においても、更なる高強度化が熱望されている。このような要望に対し、例えば、欧米においては、素材である鋼板をプレス加工等で所定形状としたのち、バッチ式に焼入れ焼戻処理を施して、所望の高強度を有するトラック用フレームを製造していた。
(1)厚肉熱延鋼板を所定の形状に加工し、ついで所定の領域に熱処理を施してなるトラック用フレームであって、前記厚肉熱延鋼板が、質量%で、C:0.10〜0.20%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.5〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Al:0.01〜0.10%、N:0.005%以下、Ti:0.01〜0.15%、B:0.0010〜0.0050%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、面積率で95%以上のベイニティックフェライト相からなる組織とを有し、引張強さ:440〜640MPaの強度を有する鋼板であり、前記所定の領域が焼戻マルテンサイト相からなる組織を有し、引張強さで540〜1200MPaの高強度を有することを特徴とするトラック用フレーム。
(2)厚肉熱延鋼板を所定形状のフレームに成形する成形工程と、該成形されたフレームの所定の領域に焼入れ焼戻処理を施す熱処理工程とを順次施し、トラック用フレームとするに当たり、前記厚肉熱延鋼板が、質量%で、C:0.10〜0.20%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.5〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Al:0.01〜0.10%、N:0.005%以下、Ti:0.01〜0.15%、B:0.0010〜0.0050%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、面積率で95%以上のベイニティックフェライト相からなる組織とを有する鋼板であり、前記焼入れ焼戻処理が、高周波誘導加熱手段により所定の焼入れ温度に加熱した後、冷却手段により所定の焼入れ冷却速度で焼入する焼入れ処理と、高周波誘導加熱手段により所定の焼戻温度に加熱する焼戻処理とからなり、前記トラックフレームの所定の領域が、焼戻マルテンサイト相からなる組織と、引張強さで540〜1200MPaの高強度を有することを特徴とするトラック用フレームの製造方法。
本発明のトラック用フレームは、特定な組成および組織を有する厚肉熱延鋼板を所定の形状に成形し、ついで所定の領域に焼入れ焼戻処理を施し、該所定の領域を焼戻マルテンサイト相からなる組織とし、引張強さで540〜1200MPaの高強度化を達成した、トラック用フレームである。
C:0.10〜0.20%
Cは、鋼中では炭化物を形成し、鋼板の強度増加に有効に作用するとともに、焼入れ処理時には、マルテンサイト変態を促進させマルテンサイト相による組織強化に有効に作用する元素であり、本発明では0.10%以上の含有を必要とする。C含有量が0.10%未満では、所望の鋼板強度を確保することが難しく、また所望の熱処理後強度を確保することが難しくなる。一方、0.20%を超える多量の含有は、鋼板強度および熱処理後の強度が高くなりすぎて、加工性や靭性が低下するとともに、溶接性が低下する。このため、Cは0.10〜0.20%の範囲に限定した。
Siは、固溶強化により鋼の強度を有効に増加させる作用を有する元素であり、このような効果を得るためには、0.01%以上の含有を必要とする。一方、1.0%を超える多量の含有は、表面に赤スケールと呼ばれる凹凸を生じ表面性状を低下させるとともに、疲労強度を低下させる。このため、Siは0.01〜1.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.35%以下である。
Mnは、固溶強化により有効に鋼の強度を増加させるとともに、焼入れ性の向上を介し鋼の強度を増加させる作用を有する元素であり、このような効果を得るためには、0.5%以上の含有を必要とする。一方、2.0%を超える含有は、偏析が顕著となり、鋼板特性および熱処理後の材質の均一性が低下する。このため、Mnは0.5〜2.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは1.0〜2.0%である。
Pは、固溶強化により鋼の強度を増加させるが、偏析を生じ材質の均一性を低下させるとともに、熱処理後の靭性を著しく低下させる。このため、本発明ではできるだけ低減することが好ましいが、過度の低減は材料コストを高騰させる。また、0.03%を超えて過剰に含有すると、偏析が顕著となる。このため、Pは0.03%以下に限定した。なお、好ましくは0.02%以下である。
Sは、鋼中では硫化物として存在し、延性を低下させ、曲げ加工性等を低下させるため、できるだけ低減することが好ましいが、過度の低減は材料コストを高騰させる。0.01%を超える含有は、熱処理後の靭性を顕著に低下させる。このため、本発明では、Sは0.01%以下に限定した。なお、好ましくは0.005%以下である。
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、このような効果は0.01%以上の含有で顕著となるが、0.1%を超える含有は、加工性を低下させるとともに、焼入性を低下させる。このため、Alは0.01〜0.1%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.05%以下である。
N:0.005%以下
Nは、鋼中ではTiN、AlN等の窒化物を形成し加工性を低下させるとともに、焼入れ時にBNを形成し焼入れ性向上に有効な固溶B量を低減させる。このようなNの悪影響はN含有量が0.005%以下であれば許容できる。このため、本発明では、Nは0.005%以下に限定した。
Tiは、熱間圧延後の組織をベイニティックフェライトとするのに有効に作用するとともに、Bよりも優先して窒化物を形成し、熱処理時にBによる焼入性向上効果を発揮させるのに有効に作用する元素である。このような効果は、0.01%以上の含有で認められるが、0.15%を超える含有は、熱間圧延時の変形抵抗を増加させ、圧延荷重を極端に増大させるとともに、熱処理後の靭性を低下させる。このため、Tiは0.01〜0.15%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.03〜0.10%である。
Bは、熱間圧延後の冷却中にポリゴナルフェライトやパーライトが生成するのを抑制する作用を有し、さらに熱処理時の焼入性・靭性向上に有効に作用する元素である。板厚7mm以上の場合、このような効果は、0.0010%以上の含有で顕著となる。一方0.0050%を超える含有は、熱間圧延時の変形抵抗を増加させ、圧延荷重を極端に増大させるとともに、熱間圧延後にベイナイトやマルテンサイトを生じさせ、板割れ等の不具合を生じさせる。このため、Bは0.0010〜0.0050%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.0015〜0.0040%である。
つぎに、使用する厚肉熱延鋼板の組織限定理由について説明する。
本発明で用いる厚肉熱延鋼板は、上記した組成を有し、さらに全厚に亘り、ベイニティックフェライト相からなる単相組織を有する。ここでいう単相組織とは、面積率で95%以上のベイニティックフェライト相からなる組織をいうものとする。ベイニティックフェライト相には、針状フェライト、アシキュラー状フェライトをも含むものとする。なお、ベイニティックフェライト相以外の組織としては、面積率で5%以下のポリゴナルフェライト相、パーライト相、セメンタイト相、ベイナイト相、およびマルテンサイト相などが許容できる。
上記した組成の鋼素材に、熱間圧延を施し、板厚7mm以上の厚肉熱延鋼板とする。熱間圧延のための加熱温度は、下記に述べる熱間圧延の仕上圧延終了温度が確保できればよく、とくに限定する必要はないが、1000℃以上とすることが好ましい。加熱温度が1000℃未満では、変形抵抗が増大しすぎて、圧延設備への負荷が増大し、ひいては圧延が困難となるという問題が生じやすい。
仕上圧延の圧延終了温度は、820℃以上とすることにより、その後の冷却過程において、フェライト変態が抑制され、面積率で95%以上のベイニティックフェライト相からなる単相組織とすることができる。仕上圧延の圧延終了温度が820℃未満ではその後の冷却過程でフェライト変態が促進され、ベイニティックフェライト単相組織とすることが難しくなる。一方、仕上圧延の圧延終了温度が880℃を超えて高温となると、フェライト変態のみならずベイニティックフェライトヘの変態も抑制され、ベイニティックフェライト単相組織とすることが難しくなり、その結果、ベイナイト相やマルテンサイト相を生じやすくなる。
表面の冷却速度で15℃/s未満では、板厚中央部等でポリゴナルフェライト相が析出しやすくなり、板厚方向で均一なベイニティックフェライト単相組織とすることが困難となる。一方、表面の冷却速度で50℃/sを超えて急冷されると、表層部にマルテンサイトが生成し、板厚方向で均一なベイニティックフェライト単相組織とすることができなくなる。なお、表面の冷却速度は、表面温度を測定し、仕上圧延終了温度と冷却停止温度との間で平均した値を用いるものとする。
成形工程で所定形状に成形されたフレームは、ついで、該フレームの所定の領域に焼入れ焼戻処理を施す熱処理工程を施される。なお、ここでいう「所定の領域」とは、フレーム全域、あるいはフレームの一部領域をいう。本発明では、焼入れ焼戻処理は、好ましくはインラインに設けられた、高周波誘導加熱手段、冷却手段等を用いて行う。図2に、本発明の熱処理工程で使用する高周波誘導加熱手段2(21,22)、冷却手段3の配列の一例を模式的に示す。なお、1は所定形状のフレームである。
本発明における焼入れ処理の焼入れ加熱温度は、Ac3変態点以上930℃以下とすることが好ましい。これにより、スケール生成を少なくし、板厚方向の強度等の特性の均一化が可能となる。加熱温度がAc3変態点未満では、焼入れ加熱時に完全にオーステナイト化できず、焼入れ後の組織を完全なマルテンサイト組織とすることができないため、所望の強度を確保することができない。一方、930℃を超えて高温となると、加熱時にスケール生成が著しくなり、表面品質が低下するとともに、組織が粗大化し、靭性の低下が著しくなる。
また、本発明における焼戻処理は、焼戻温度をAc1変態点以下の温度とし、所望の強度に応じて決定された温度とすることが好ましい。焼戻温度がAc1変態点超えの温度では、焼入れ処理で生じたマルテンサイト相がオーステナイト化し冷却中にパーライト変態して軟質化しやすい。このため、焼戻温度をAc1変態点以下の温度とすることが好ましい。焼入れ処理で肉厚中央部まで完全なマルテンサイト組織とすることができれば、所望の強度に応じた焼戻温度を変化させることにより、所望の特性を確保することが容易となる。
(a)組織観察
得られた熱延鋼板から、組織観察用試験片を採取し、試験片の圧延方向に平行な板厚断面を研磨し、ナイタール腐食したのち、表面から0.1mmの位置、板厚1/4の位置、板厚中央部位置について、走査型電子顕微鏡(SEM)(倍率:3000倍)で金属組織を観察(視野数:各10個所)し撮像して、組織の種類および、画像解析装置を利用して各相の組織分率(面積率)を測定し、ベイニティックフェライト相の面積率について、観察した10視野での測定値を平均して求めた。なお、表面から0.1mmの位置、板厚1/4の位置、板厚中央部位置で求めたベイニティックフェライト相の面積率(10視野での測定値の平均)が全て95%以上である場合を、全厚にわたり面積率で95%以上のベイニティックフェライト相からなる組織(ベイニティックフェライト単相組織)になっていると判断した。
得られた熱延鋼板(または試験板)から、引張方向が圧延方向と直角方向となるように、JIS 5号試験片(GL:50mm)を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を実施し、引張特性(降伏強さYS、引張強さTS、伸びEl)を求め、強度、延性を評価した。
(c)硬さ試験
得られた熱延鋼板から、硬さ測定用試験片を採取し、試験片の圧延方向に平行な板厚断面を研磨し、表面から板厚方向に全厚に亘り、0.2mmピッチでビッカース硬さHV (荷重:9.8N)を測定した。なお、硬さの測定は表面から0.2mm位置を硬さの測定の開始点とした。つぎに、測定すべき箇所が、もう一方の表面から0.2mm以内となった場合にその箇所については測定せず硬さ測定を終了した。各厚肉熱延鋼板について、得られた板厚方向硬さを算術平均して、平均硬さ(平均値)HVmeanを求めた。また、最高硬さ(表層硬さ)と最低硬さ(板厚中央硬さ)の差、ΔHVを算出し、[ΔHV/HVmean]×100(%)を求め、板厚方向の均一性を評価した。
(1)組織観察
試験材の長手方向断面が観察面となるように試験片を研磨、腐食(ナイタール)して、走査型電子顕微鏡(倍率:500倍)で、表面、板厚方向の1/4t、および1/2t位置について組織を観察し、各位置での組織分率を特定した。
得られた試験材から、試験材の長手方向が引張方向となるように、JIS5号試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して、引張試験を実施し、降伏強さYS、引張強さTS、伸びELを求め、強度、延性を評価した。
(3)硬さ試験
焼入れ処理後の試験材から硬さ試験片を採取し、試験材の長手方向断面が観察面となるように研磨し、表面下0.3mm、および板厚中央部についてビッカース硬さHV(荷重:5kgf(49N))を測定した。なお、測定は各位置5点とし、その平均値を求めた。
2 高周波誘導加熱手段
21 焼入れ処理用高周波誘導加熱装置
22 焼戻処理用高周波誘導加熱装置
3 冷却装置(冷却手段)
Claims (2)
- 厚肉熱延鋼板を所定の形状に加工し、ついで所定の領域に熱処理を施してなるトラック用フレームであって、
前記厚肉熱延鋼板が、質量%で、
C:0.10〜0.20%、 Si:0.01〜1.0%、
Mn:0.5〜2.0%、 P:0.03%以下、
S:0.01%以下、 Al:0.01〜0.10%、
N:0.005%以下、 Ti:0.01〜0.15%、
B:0.0010〜0.0050%
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、面積率で95%以上のベイニティックフェライト相からなる組織とを有し、引張強さ:440〜640MPaの強度を有する鋼板であり、前記所定の領域が焼戻マルテンサイト相からなる組織を有し、引張強さで540〜1200MPaの高強度を有することを特徴とするトラック用フレーム。 - 厚肉熱延鋼板を所定形状のフレームに成形する成形工程と、該成形されたフレームの所定の領域に焼入れ焼戻処理を施す熱処理工程とを順次施し、トラック用フレームとするに当たり、前記厚肉熱延鋼板が、質量%で、
C:0.10〜0.20%、 Si:0.01〜1.0%、
Mn:0.5〜2.0%、 P:0.03%以下、
S:0.01%以下、 Al:0.01〜0.10%、
N:0.005%以下、 Ti:0.01〜0.15%、
B:0.0010〜0.0050%
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、面積率で95%以上のベイニティックフェライト相からなる組織とを有する鋼板であり、
前記焼入れ焼戻処理が、高周波誘導加熱手段により所定の焼入れ温度に加熱した後、冷却手段により所定の焼入れ冷却速度で焼入する焼入れ処理と、高周波誘導加熱手段により所定の焼戻温度に加熱する焼戻処理とからなり、前記トラック用フレームの所定の領域が、焼戻マルテンサイト相からなる組織と、引張強さで540〜1200MPaの高強度を有することを特徴とするトラック用フレームの製造方法。
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