JP5142488B2 - インクジェット用インク、インクジェット用インクの製造方法、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、及びシアンインク - Google Patents
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Description
本発明にかかるインクは、シアンの色相を有するインクである。色材としてシアンの色相を有する染料と、銅フタロシアニン骨格を有する顔料、例えば、C.I.ピグメントブルー15:3、を共に含有するインクで光沢を有する記録媒体に形成した画像の反射光が赤色に見える現象について説明する。これは、記録媒体の表面上で凝集したC.I.ピグメントブルー15:3(シアン顔料の1種である)に反射した光が、シアン顔料の本来の色と補色をなす色に近い色が観察されるブロンジング(ブロンズ現象)を生じているためである。そこで、本発明者らは、このブロンズ現象を引き起こす原因であるシアン顔料について検討を行った。その結果、インク中のシアン顔料の含有量を1質量%未満として、更に、該シアン顔料に対する貧溶媒を含有する構成とすることが有効であり、特に、インク中におけるシアン顔料に対する貧溶媒の含有量を特定量とした場合に、ブロンズ現象をより効果的に抑制できることを見出した。このようなインクの構成によってブロンズ現象を抑制できる理由は明確ではないが、本発明者らは以下のように推測している。
V=Vr+Ka(t−tw)1/2 式(1)
本発明にかかるインク中のシアン顔料の含有量(質量%)Aは、インク中の染料の含有量(質量%)Dに対して、即ち、A/D×100%の値を、7%以上25%未満とすることが好ましい。尚、上記A及び上記Dは、インク全質量を基準とした含有量(質量%)をそれぞれ示す。インク中におけるシアン顔料と染料の含有量の比を7%以上にすることで、記録媒体における染料の横方向への広がりを抑制するのに十分な量の凝集体が形成されることによって、ブリーディングをより効果的に抑制できるためである。又、インク中におけるシアン顔料と染料の含有量の比を25%未満にすることで、光沢を有する記録媒体における、染料を付与した部分とシアン顔料を付与した部分の光沢の差(以後「光沢ムラ」と称する)が目視ではほとんど観察できない程度とすることができる。
本発明にかかるインクは、銅フタロシアニン骨格を有する顔料を水性媒体に分散した状態で含有してなる。前記銅フタロシアニン骨格を有する顔料は、以下のものを用いることができる。例えば、顔料粒子の表面に少なくとも1つのイオン性基が直接又は他の原子団を介して結合している自己分散型顔料、分散剤や界面活性剤等により水性媒体に分散している樹脂分散型顔料等が挙げられる。本発明においては、前記したような状態でインク中に存在する銅フタロシアニン骨格を有する顔料分散体の分散状態を安定に保つことができる水溶性有機溶剤を良溶媒、分散状態を安定に保つことができない水溶性有機溶剤を貧溶媒と定義する。
分散液X:判定対象としての水溶性有機溶剤が50質量%、銅フタロシアニン骨格を有する顔料、又は該銅フタロシアニン骨格を有する顔料及びその分散に寄与する物質の総量が5質量%、水が45質量%である組成の分散液。
水分散液Y:銅フタロシアニン骨格を有する顔料、又は該銅フタロシアニン骨格を有する顔料及びその分散に寄与する物質の総量が5質量%、水が95質量%である組成の水分散液。
次に、本発明にかかるインクを構成する各成分について、それぞれ説明する。
[色材]
本発明にかかるインクは色材として、銅フタロシアニン骨格を有する顔料を含有することが必要である。色材として銅フタロシアニン骨格を有する顔料を含有するインクを用いて形成した画像のブロンズ現象は、他の色材を含有するインクを用いる場合と比較して非常に顕著に表れる。このことから、本発明は、前記したブロンズ現象という課題を解決することを目的のひとつとしている。本発明にかかるインクに用いることができる銅フタロシアニン骨格を有する顔料は、以下のものが挙げられる。具体的には、例えば、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー16等が挙げられる。上記した銅フタロシアニン骨格を有する顔料の中でも特に、本発明においては、C.I.ピグメントブルー15:3を用いることが特に好ましい。
本発明にかかるインクが含有する銅フタロシアニン骨格を有する顔料は、その分散方法にかかわらずに用いることができる。例えば、分散剤を用いて分散する樹脂分散タイプの顔料(樹脂分散型顔料)や、界面活性剤によって分散する界面活性剤分散タイプの顔料を用いることができる。又、顔料粒子の表面にイオン性基を導入して分散剤等を用いることなく分散可能とした自己分散タイプの顔料(自己分散型顔料)を用いることができる。更には、顔料粒子の表面を有機高分子類で被覆すること等により分散性を高めたマイクロカプセル型顔料や、顔料粒子の表面に高分子を含む有機基を化学的に結合して改質したポリマー結合型自己分散型顔料を用いることができる。勿論、本発明においては、上記に挙げた分散方法の異なる顔料を組み合わせて用いることもできる。以下、本発明で用いることができる顔料について説明する。
本発明にかかるインクが含有する銅フタロシアニン骨格を有する顔料には、先に述べたように、樹脂分散タイプの顔料を用いることができる。この場合には、疎水性である顔料を分散剤や界面活性剤等を用いて水性媒体に分散することが好ましい。この際に用いる分散剤又は界面活性剤は特に限定されるものではなく、以下に挙げるようなものを用いることができる。
アニオン系界面活性剤は、以下のものを用いることができる。具体的には、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、
ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、又はこれらの置換誘導体等が挙げられる。
ノニオン系界面活性剤は、以下のものを用いることができる。具体的には、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、
ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー、又はこれらの置換誘導体等が挙げられる。
アクリル酸又はその誘導体、マレイン酸又はその誘導体、イタコン酸又はその誘導体、フマール酸又はその誘導体、
酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、アクリルアミド、又はその誘導体等から選ばれた少なくとも2つの単量体(このうち少なくとも1つは親水性単量体)で構成されるブロック共重合体、ランダム共重合体及びグラフト共重合体、
又はこれらの塩等が挙げられる。更に、ブロック共重合体及びランダム共重合体等を組み合わせて用いることもできる。
本発明にかかるインクが含有する銅フタロシアニン骨格を有する顔料には、先に述べたように、顔料粒子の表面を有機高分子類で被覆すること等により分散性を高めたマイクロカプセル型顔料を用いることができる。
本発明にかかるインクが含有する銅フタロシアニン骨格を有する顔料には、先に述べたように、顔料粒子の表面にイオン性基を導入して分散剤等を用いることなく分散可能とした自己分散型顔料を用いることができる。自己分散型顔料は、顔料粒子の表面にイオン性基が直接又は他の原子団を介して結合しているものが挙げられる。例えば、顔料粒子の表面に導入したイオン性基が、−COOM、−SO3M及び−PO3H(M)2(式中のMは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムである)からなる群から選ばれるもの等であることが好ましい。更に、前記他の原子団が、炭素原子数1乃至12のアルキレン基、置換若しくは未置換のフェニレン基、又は置換若しくは未置換のナフチレン基等であることが好ましい。その他にも、顔料を次亜塩素酸ソーダや水中オゾン処理で酸化する方法、オゾン処理を施した後に酸化剤により湿式酸化して顔料粒子の表面を改質する方法等によって得られる、表面酸化処理タイプの自己分散型顔料を用いることができる。
本発明にかかるインクが含有する銅フタロシアニン骨格を有する顔料には、先に述べたように、顔料粒子の表面に高分子を含む有機基を化学的に結合して改質したポリマー結合型自己分散型顔料を用いることができる。ポリマー結合型自己分散型顔料は、顔料粒子の表面に、直接又は他の原子団を介して化学的に結合した官能基と、イオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合体との反応物を含有するものを用いることが好ましい。これは、表面を改質する際に用いる共重合体の材料であるイオン性モノマー及び疎水性モノマーとの共重合比率を適宜に変えることができ、これによって改質した顔料のイオン性を任意に調整することができるためである。又、イオン性モノマー及び疎水性モノマーの種類や、両者の組み合わせを任意に変えることができるため、顔料粒子の表面に様々な特性を付与することができるためである。
本発明にかかるインクは、上記したように、特定の含有量の銅フタロシアニン骨格を有する顔料、特定の染料、及び、該顔料に対する貧溶媒を含有してなることを特徴とする。それ以外のインクの成分は、従来のインクジェット用インクに使用するものを何れも用いることができる。例えば、インクが含有する上記した顔料及び染料を溶解又は分散するための水性媒体は、前記顔料に対する貧溶媒を含有することを満たしていれば、下記に挙げるようなものを何れも用いることができる。
N,N−ジメチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド;
アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン等のケトン又はケトアルコール;
テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;
グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、
1,2−又は1,3−プロピレングリコール、1,2−又は1,4−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、
ジチオグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、
アセチレングリコール誘導体、トリメチロールプロパン等のような多価アルコール類;
エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールのアルキルエーテル類;
2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルモルホリン等の複素環類;
ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物、尿素及び尿素誘導体等。
本発明にかかるインクには、上記した成分以外にも、界面活性剤、pH調整剤、キレート剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、消泡剤、及び、水溶性ポリマー等の種々の添加剤を含有してもよい。
アニオン界面活性剤は、具体的には、例えば、以下のものを用いることができる。
アルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸又はその塩、N−アシルメチルタウリン塩、
アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、
アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリルスルホン塩酸、
ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸ジオクチルスルホ琥珀酸塩等。
2−ビニルピリジン誘導体、ポリ4−ビニルピリジン誘導体等がある。両性界面活性剤は、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、
2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、イミダゾリン誘導体等。
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、
ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアリルキルアルキルエーテル等のエーテル系、
ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、
ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系、
2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレングリコール系
(例えば、川研ファインケミカル製アセチレノールEH、日信化学製サーフィノール104、82、465、オルフィンSTG等)等。
本発明にかかるインクは、本発明において必須である以下の構成要件を満足するものであればよい。即ち、色材が、特定の染料、及び、銅フタロシアニン骨格を有する顔料であることが必要である。特定の染料とは、C.I.ダイレクトブルー199、C.I.ダイレクトブルー86、及びC.I.アシッドブルー9からなる群から選択される1種以上の染料のことである。又、水溶性有機溶剤として上記シアン顔料に対する貧溶媒を含有し、更に、該シアン顔料のインク中の含有量が1質量%未満であることが必要である。本発明にかかるインクは、前記した構成要件を満足するものであればよく、その作製方法やその実施形態については特に限定されない。
本発明にかかるインクは、水、カーボンブラック、及び水溶性有機溶剤を含有してなるブラックインクと共に用いるシアンインクとすることが特に好ましい。このような構成とすることで、より効果的にブリーディングを抑制できると考えられる。以下、ブラックインクを構成する各成分について説明する。
ブラックインクが含有するカーボンブラックは、その分散方法にかかわらずに用いることができる。上記銅フタロシアン骨格を有する顔料の分散方法と同様に、例えば、分散剤を用いて分散する樹脂分散タイプのカーボンブラック(樹脂分散型カーボンブラック)や、界面活性剤によって分散する界面活性剤分散タイプのカーボンブラックを用いることができる。又、カーボンブラック粒子の表面にイオン性基を導入して分散剤等を用いることなく分散可能とした自己分散タイプのカーボンブラック(自己分散型カーボンブラック)を用いることができる。又、カーボンブラック粒子の表面を有機高分子類で被覆すること等により分散性を高めたマイクロカプセル型カーボンブラックを用いることができる。更に、カーボンブラック粒子の表面に高分子を含む有機基を化学的に結合して改質したポリマー結合型自己分散型カーボンブラックを用いることができる。勿論、本発明においては、上記に挙げた分散方法の異なるカーボンブラックを組み合わせて用いることもできる。
レイヴァン(Raven):1170、1190ULTRA−II、1200、1250、1255、1500、2000、3500、5000ULTRA、5250、5750、7000、(以上、コロンビア製);
ブラックパールズ(Black Pearls)L;
リーガル(Regal):330R、400R、660R;
モウグル(Mogul)L;
モナク(Monarch):700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、2000;
ヴァルカン(Valcan)XC−72R(以上、キャボット製)。
カラーブラック(Color Black)FW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170;
プリンテックス(Printex):35、U、V、140U、140V;
スペシャルブラック(Special Black):4、4A、5、6(以上、デグッサ製)。
No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300;
MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学製)。
本発明に使用するブラックインクに用いられる水性媒体としては、水、又は、水溶性有機溶剤と水との混合媒体を用いることが好ましい。そして、このブラックインクには、先に説明したカーボンブラックに対する貧溶媒を含有することが好ましい。尚、この際のカーボンブラックは、樹脂分散型のカーボンブラックや自己分散型のカーボンブラック等の分散体を含むものとする。上記のような構成とすることで、より効果的にブリーディングを抑制できるようになる。かかるブラックインクと共に用いる本発明のシアンインク中の銅フタロシアニン骨格を有する顔料に対する貧溶媒が、上記ブラックインク中のカーボンブラックに対する貧溶媒である場合、特に効果的にブリーディングを抑制できるので、特に好ましい。本発明にかかるインクと共に用いるブラックインク中の水性媒体を構成する成分は、上記した好ましい構成を満たすものであれば、特に限定されるものではなく、先に説明したインクに含有させる水性媒体と同様のものを用いることができる。
ブラックインクには、上記した成分以外にも、界面活性剤、pH調整剤、キレート剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、消泡剤、及び、水溶性ポリマー等の種々の添加剤を含有してもよい。かかる添加剤は、先に説明した本発明のインクに用いるものと同様のものを用いることができる。
本発明にかかるインクは、特に、インクを記録信号に応じて吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法に用いる場合に良好な結果が得られる。この場合の好ましいインクジェット記録方式は、インクに熱エネルギーを作用させて記録媒体に記録を行う方式が挙げられる。
本発明にかかるインクを用いて記録を行うのに好適なインクカートリッジは、これらのインクを収容するインク収容部を有するインクカートリッジが挙げられる。以下に本発明にかかるインクを用いて記録を行うのに好適なインクカートリッジの具体例を示す。
ここでは、本発明の実施態様のひとつであるインクについて下記のような手順で調製し、得られたインクについて下記のようにして評価を行った。
(シアン顔料分散液の調製)
顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)10部、分散剤20部、イオン交換水70部を混合し、バッチ式縦型サンドミルを用いて3時間分散した。その後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去した。更に、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過し、シアン顔料分散体を調製した。その後、顔料濃度が10%となるように水で調整してシアン顔料分散液を得た。尚、分散剤には、酸価200、重量平均分子量10,000のスチレン−アクリル酸共重合体を、10%水酸化ナトリウム水溶液で中和することにより得られた水溶液を用いた。
上記で得られたシアン顔料分散体に対して貧溶媒及び良溶媒として作用する水溶性有機溶剤を選択するために以下の実験を行った。先ず、上記で得られたシアン顔料分散液の固形分濃度10%水溶液を調製し、これと各水溶性有機溶剤とを用いて、以下の配合比にて貧溶媒及び良溶媒の判定用分散液X、判定用水分散液Yを調製した。
・シアン顔料分散液 50部
・表1に記載の各水溶性有機溶剤 50部
〔判定用水分散液Y〕
・シアン顔料分散液 50部
・純水 50部
先ず、表1に挙げた各水溶性有機溶剤のKa値の測定にあたり、下記に示す組成を有する染料の含有量が0.5%の染料水溶液をそれぞれ調製した。かかる染料水溶液を用いるのは、無色透明の水溶液を着色することにより可視化して、Ka値の測定を容易にするためである。
・C.I.ダイレクトブルー199 0.5部
・純水 99.5部
・上記0.5%の染料水溶液 80部
・表1に記載の水溶性有機溶剤 20部
表2及び表3に示した各成分を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過を行い、参考例1〜3、6、7、実施例4、5、8〜11及び比較例1〜7のインクを調製した。又、上記で得られたインクについて、協和CBVP−2式表面張力計(協和科学)を用いて、25℃におけるインクの表面張力を測定した。測定したインクの表面張力を表2及び表3中に示した。尚、表2及び表3には、各インク中における、顔料の含有量A(%)、貧溶媒の含有量B(%)、良溶媒の含有量C(%)、染料の含有量D(%)、及び、B/A、C/B、A/D×100(%)、の値を示した。
参考例1〜3、6、7、実施例4、5、8〜11、並びに、比較例1〜5及び7の各インクを用いて、記録物を作製した。記録物の作製には、熱エネルギーの作用によりインクを吐出するインクジェット記録装置(商品名:PIXUS 950i;キヤノン製)を用いた。具体的には、図1の構成を有するインクカートリッジに、上記で得られた各インクを充填して、このインクカートリッジを前記インクジェット記録装置に搭載して画像を形成した。そして、各インクを用いて、プロフェッショナルフォトペーパーPR−101(キヤノン製)に、10cm×10cmのベタ画像を形成した記録物を作製した。プリンタドライバは、プロフォトペーパーモードを選択した。プロフォトペーパーモードの設定条件は下記の通りである。
・用紙の種類:プロフォトペーパー
・印刷品質:きれい
・色調整:自動
上記で得られた各記録物を白色蛍光灯を照射した机の上に置き、記録物に対する視線を変化することで、様々な角度から記録物を目視して、ブロンズ現象の発生を確認して評価を行った。ブロンズ現象の評価基準は下記の通りである。評価結果を表4に示す。
B:角度を変化することで、記録物における反射光の色の変化が確認されたが、比較例の記録物における反射光の色の変化に比べて目立たないレベルであった。
C:比較例の記録物における反射光の色の変化と同レベルで、角度を変化することでの記録物における反射光の色の変化が確認された。
上記で得られた記録物を目視して、光沢ムラの発生を確認して評価を行った。その結果、インク中の顔料と染料との含有比率(A/D×100%)が高い参考例6及び7が、他のインクで作製した記録物に比べて、光沢ムラの発生が見られた。
先に調製した参考例1〜3、6、7、実施例4、5、8〜11の各インクをそれぞれショット瓶に入れて密栓し、60℃のオーブンで2週間保存した。60℃での保存前後における、顔料の平均粒径、及びインクの粘度をそれぞれ測定して、平均粒径の変化率及び粘度の変化率を求め、得られた各変化率により評価を行った。保存安定性の評価基準は下記の通りである。評価結果を表5に示す。
A:顔料の平均粒径の変化率又はインクの粘度の変化率が、60℃での保存前後で5%以下である。
B:顔料の平均粒径の変化率又はインクの粘度の変化率が、60℃での保存前後で5%を超えて10%以下である。
C:60℃での保存後に、インクがゲル状に変化している、インクの上部が透明に変化している、又はインクが明らかに増粘している。
先に調製した1〜3、6、7、実施例4、5、8〜11、並びに、比較例1〜4及び6〜7の各インク、更に下記に示すブラックインクを用いて、下記の評価を行った。
比表面積210m2/g、DBP吸油量74ml/100gのカーボンブラック10部、分散剤20部、イオン交換水70部を混合し、サンドグラインダーを用いて1時間分散した。その後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去した。更に、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過し、ブラック顔料分散体1を調製した。その後、顔料濃度が10%となるように水で調整してブラック顔料分散液1を得た。尚、分散剤には、酸価200、重量平均分子量10,000のスチレン−アクリル酸共重合体を、10%水酸化ナトリウム水溶液で中和することにより得られた水溶液を用いた。
5.5gの水に5gの濃塩酸を溶かした溶液に、5℃に冷却した状態で4−アミノフタル酸1.5gを加えた。次に、この溶液が入った容器をアイスバスに入れて液を撹拌することにより溶液を常に10℃以下に保った状態とし、これに5℃の水9gに亜硝酸ナトリウム1.8gを溶かした溶液を加えた。この溶液を更に15分間撹拌後、比表面積が220m2/gでDBP吸油量が105mL/100gであるカーボンブラック6gを撹拌下で加えた。その後、更に15分間撹拌した。得られたスラリーをろ紙(商品名:標準用濾紙No.2;アドバンテック製)でろ過した後、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥して、自己分散型カーボンブラックを調製した。その後、該カ−ボンブラックの濃度が10%となるように水で調整してブラック顔料分散液2を得た。
シアン顔料分散液に対する水溶性有機溶剤の貧溶媒及び良溶媒の判定と同様の方法により、上記で得られたブラック顔料分散液1及び2に対して貧溶媒及び良溶媒として作用する水溶性有機溶剤を選択するための実験を行った。表6に示した2種類の水溶性有機溶剤について、ブラック顔料分散液中の顔料分散体に対して貧溶媒及び良溶媒の何れに該当するかについて判定した。評価結果を表6に示す。表6中の結果は、良溶媒と判定された場合を○とし、貧溶媒と判定された場合を×として示した。
下記表7に示した各成分を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過を行い、ブラックインク1及び2を調製した。
記録物の作製には、熱エネルギーの作用によりインクを吐出するインクジェット記録装置(商品名:PIXUS 950i;キヤノン製)を用いた。具体的には、図1の構成を有するインクカートリッジに、上記で得られた各インクを充填して、このインクカートリッジを前記インクジェット記録装置に搭載して画像を形成した。そして、参考例1〜3、6、7、実施例4、5、8〜11、並びに、比較例1〜4及び6〜7の各インク、更にはブラックインク1を用いて、下記の4種類のコピー用紙(普通紙)に、シアンインク及びブラックインク1が隣接した状態の2cm×2cmのベタ画像を形成した記録物を作製した。
・用紙の種類:普通紙
・印刷品質:標準
・色調整:自動
・PPC用紙PB(キヤノン製)
・PPC用紙4024(ゼロックス製)
・PPC用紙プローバーボンド(フォックスリバー製)
・キヤノン用PPC用紙(ノイジドラ製)
記録物を作製した直後に、ブラックインク1で形成した画像と実施例及び参考例のインクで形成した画像が隣接した部分におけるブリーディングの程度を、目視により観察した。又、同様にして、ブラックインク1で形成した画像と比較例のインクで形成した画像が隣接した部分におけるブリーディングの程度を、目視により観察して、実施例及び参考例の記録物と比較して評価を行った。更に、記録物を作製した1日後に、シアンの画像における光学濃度を、マクベスRD915(マクベス製)を用いて測定した。発色性及びブリーディングの評価基準は下記の通りである。評価結果を表8に示す。尚、表8中の評価結果は、何れの記録媒体を用いた場合においても共通のものであった。
B:比較例のインクで形成した画像と比べて、発色性又はブリーディングの抑制の何れか一方で優れている。
C:比較例のインクで形成した画像と比べて、発色性及びブリーディングの抑制に差がない。
ここでは、本発明の別の実施態様であるインクジェット用インクの製造方法により得られたインクについての評価を行った。
実施例12〜14の各インクを用いて、記録物を作製した。記録物の作製には、熱エネルギーの作用によりインクを吐出するインクジェット記録装置(商品名:PIXUS 950i;キヤノン製)を用いた。具体的には、上記で得られたインクカートリッジを前記インクジェット記録装置に搭載して画像を形成した。そして、実施例12〜14の各インクを用いて、プロフェッショナルフォトペーパーPR−101(キヤノン製)に、10cm×10cmのベタ画像を形成した記録物を作製した。プリンタドライバは、プロフォトペーパーモードを選択した。プロフォトペーパーモードの設定条件は下記の通りである。
・用紙の種類:プロフォトペーパー
・印刷品質:きれい
・色調整:自動
上記で得られた記録物を白色蛍光灯を照射した机の上に置き、記録物に対する視線を変化することで、様々な角度から記録物を目視して、ブロンズ現象の発生を確認して評価を行った。ブロンズ現象の評価基準は下記の通りである。評価結果を表11に示す。尚、下記の評価基準における比較例は、比較例1〜5及び7のインクである。
B:角度を変化することで、記録物における反射光の色の変化が確認されたが、比較例の記録物における反射光の色の変化に比べて目立たないレベルであった。
C:比較例の記録物における反射光の色の変化と同レベルで、角度を変化することでの記録物における反射光の色の変化が確認された。
42:蓋部材
43Y、43M、43C:インク供給口
44Y、44M、44C:インク吸収体
45Y、45M、45C:インク供給部材
46:抜け止め爪
47:ラッチレバー
47c:根元斜面
48:ラッチ爪
49:段差部
112:大気連通口
114:液体供給口
132A:第二の負圧発生部材
132B:第一の負圧発生部材
132C:第一の負圧発生部材と第二の負圧発生部材の境界層
134:負圧発生部材収納室
136:液体収納室
138:仕切壁
140:連通孔
146:圧接体
150:大気導入溝(大気導入路)
411、412:仕切板
L:液体−気体界面
1300:記録媒体
1301:フタロシアニン骨格を有する顔料
1302:染料
1303:フタロシアニン骨格を有する顔料の凝集物
Claims (15)
- 水、色材、及び水溶性有機溶剤を含有してなるインクジェット用インクであって、
前記色材が、C.I.ダイレクトブルー199、C.I.ダイレクトブルー86、及びC.I.アシッドブルー9からなる群から選択される1種以上の染料、並びに、銅フタロシアニン骨格を有する顔料であり、
前記水溶性有機溶剤が、前記顔料に対する貧溶媒を含み、
前記インク中における前記顔料の含有量A(質量%)が、前記インクの全質量を基準として、1質量%未満であり、
前記顔料の含有量A(質量%)と、前記インクの全質量を基準とした前記染料の含有量D(質量%)が、7%≦A/D×100%≦24.3%の関係を満たすことを特徴とするインクジェット用インク。 - 前記インク中の、前記顔料の含有量A(質量%)に対する、前記貧溶媒の含有量B(質量%)の割合(B/A)が、1以上4以下である請求項1に記載のインクジェット用インク。
- 前記顔料のインク中における含有量(質量%)が、前記インクの全質量を基準として、0.2質量%以上である請求項1又は2に記載のインクジェット用インク。
- 前記水溶性有機溶剤が、前記顔料に対する良溶媒を含み、
前記インク中の、前記貧溶媒の含有量B(質量%)に対する、前記良溶媒の含有量C(質量%)の割合(C/B)が、0.3以上2以下である請求項1乃至3の何れか1項に記載のインクジェット用インク。 - 前記貧溶媒が、平均分子量1,000のポリエチレングリコール、2−ピロリドン、及び1,5−ペンタンジオールから選択される少なくとも1種である請求項1乃至4の何れか1項に記載のインクジェット用インク。
- 前記貧溶媒が、平均分子量1,000のポリエチレングリコールである請求項1乃至4の何れか1項に記載のインクジェット用インク。
- 前記良溶媒が、グリセリン及びエチレングリコールから選択される少なくとも1種である請求項4乃至6の何れか1項に記載のインクジェット用インク。
- 前記銅フタロシアニン骨格を有する顔料が、イオン性基の作用によって分散されている請求項1乃至7の何れか1項に記載のインクジェット用インク。
- 前記貧溶媒が、平均分子量1,000のポリエチレングリコールであり、前記インク中の、前記顔料の含有量A(質量%)に対する、前記貧溶媒の含有量B(質量%)の割合(B/A)が、1以上4以下である請求項1に記載のインクジェット用インク。
- 請求項1乃至9の何れか1項に記載のインクを得るインクジェット用インクの製造方法であって、
銅フタロシアニン骨格を有する顔料、及び前記顔料に対する貧溶媒を含有してなるインクを収納するインクカートリッジに、色材として、C.I.ダイレクトブルー199、C.I.ダイレクトブルー86、及びC.I.アシッドブルー9からなる群から選択される1種以上の染料を含有してなるインクを注入する工程を有することを特徴とするインクジェット用インクの製造方法。 - 請求項10に記載のインクジェット用インクの製造方法により得られてなることを特徴とするインクジェット用インク。
- インクジェット方式でインクを吐出するインクジェット記録方法において、前記インクに、請求項1乃至9及び11の何れか1項に記載のインクジェット用インクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法。
- インクを収容するインク収容部を備えてなるインクカートリッジにおいて、前記インク収容部に、請求項1乃至9及び11の何れか1項に記載のインクジェット用インクを収容してなることを特徴とするインクカートリッジ。
- 水、カーボンブラック、及び水溶性有機溶剤を含有してなるブラックインクと共に用いられるシアンインクであって、
水、色材、及び水溶性有機溶剤を含有してなり、前記色材として、C.I.ダイレクトブルー199、C.I.ダイレクトブルー86及びC.I.アシッドブルー9からなる群から選択される1種以上の染料、並びに、銅フタロシアニン骨格を有する顔料を含有し、
前記水溶性有機溶剤として、前記顔料に対する貧溶媒を含み、
前記インク中における前記顔料の含有量A(質量%)が、前記インクの全質量を基準として1質量%未満であり、
前記顔料の含有量A(質量%)と、前記インクの全質量を基準とした前記染料の含有量D(質量%)が、7%≦A/D×100%≦24.3%の関係を満たすことを特徴とするシアンインク。 - 前記貧溶媒が、共に用いる前記ブラックインク中の前記カーボンブラックに対する貧溶媒でもある請求項14に記載のシアンインク。
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