図1A及び図1Bは、本発明の実施形態に係る燃料電池1の外観を示す斜視図であり、図1Aは、燃料電池1の第1の面(一主面)S1側から見た図、図1Bは、第1の面S1の背面となる第2の面(他主面)S2側から見た図である。なお、図1A及び図1Bは燃料電池1を概念的に示すものであり、後述する空気流路12の開口を大きく示すなどしている。
燃料電池1は、略直方体状に形成された基体2を備えている。基体2は、例えばセラミック多層基板により構成されている。すなわち、基体2は、略薄型直方体状に形成され、互いに同等の広さ、厚さ、形状を有する複数の第1絶縁層3A〜第7絶縁層3G(以下、絶縁層3A〜3Gを区別せずに「絶縁層3」ということがある。)を積層してなる積層体により形成されている。絶縁層3は、例えば、アルミナセラミックスであり、例えば、SiO2、Al2O3、MgO、ZnO、B2O3などから成るガラス成分とアルミナ粒子とを含んで形成される。積層後の絶縁層3は、例えば900°C〜1600°Cの大気雰囲気で焼成される。
なお、基体2を構成する絶縁層3を7枚としたのは例示であり、絶縁層3の枚数は適宜に設定してよい。また、複数の絶縁層3は、互いに同一の広さ、厚さ、形状でなくてもよい。ただし、複数の絶縁層3を互いに同一の広さ、厚さ、形状とすれば、製造コストが縮小される。
第1の面S1には、燃料電池1から電子機器へ電力を供給するためのプラス端子5P、マイナス端子5N(以下、両者を区別せずに「端子5」ということがある。)が設けられている。端子5は、例えば第1の面S1に重ねて配置される金属製の板状部材により構成されている。
また、第1の面S1には、凹部2aが形成されており、凹部2aには、各種電子部品が配置されている。各種電子部品は、例えば、電源装置6、制御装置7、キャパシタ8、燃料流動制御要素用電源装置9であり、これらについては後述する。
第2の面S2には、後述する電池本体15(図1A及び図1Bでは不図示)を収容する凹部2bが形成されており、凹部2bは蓋体11により塞がれている。凹部2b及び蓋体11は、電池本体15の数に対応して第2の面S2に複数、例えば4つ配列されている。蓋体11は、例えば絶縁層3と同様の材料により形成され、絶縁性を有している。従って、蓋体11は、基体2を構成する絶縁層3の一つと捉えることもできる。
図2は、図1AのII−II線矢視方向における断面図である。ただし、図2は、基体2の構成を概念的に示すものであり、後述する、同一断面にない供給部17a、排出部17c、導電路18を全て示している。また、図3A〜図3D及び図4A〜図4Bは、基体2の分解斜視図である。ただし、図3A〜図3D及び図4A〜図4Bは、基体2の構成を概念的に示すものであり、燃料流路17を図2よりも大きく示すなどしている。このため、図2や後述する図5に対して燃料流路17と導電路18との相対位置が若干ずれている。また、導電路18の細部は省略している。
図2に示すように、基体2の内部には、燃料と酸素との化学反応により発電を行う電池本体15と、電池本体15に供給する燃料を貯蔵する燃料貯蔵部16と、燃料貯蔵部16に貯蔵されている燃料を電池本体15に導くための燃料流路17と、電池本体15からの電力を導くための導電路18とが設けられている。
電池本体15は、いわゆる単位セルであり、同一平面状に4つ配置され、互いに導電路18により接続されている。ただし、単位セルは、積層されていてもよいし、平面視及び側面視の双方において互いに異なる位置に配置されていてもよいし、一つのみ設けられていてもよい。また、配置される数も適宜に設定してよい。複数の単位セルを平面視において互いに異なる位置に配置すると、各セルのカソード極側をすべて大気中に近づけることができるので、空気を導入しやすくなるとともに、薄型化も可能となる。さらに各単位セルを直列または並列に連結するのが容易であり、高電流または高電圧を容易に得ることができる。
電池本体15は、電解質部材21と、電解質部材21を挟んで配置されるアノード極22及びカソード極23とを備えている。電池本体15は、例えば、ダイレクトメタノール燃料電池により構成されており、電解質部材21は、イオン導電膜により構成されている。アノード極22及びカソード極23は、白金などの触媒を担持した多孔質部材により構成されており、触媒層とガス拡散層の両方の機能を兼ね備えるものである。
電池本体15は、例えば絶縁層3と同等の厚さに形成されており、第6絶縁層3Fに設けられた孔部101(図4Bも参照)に嵌合挿入され、第5絶縁層3Eと蓋体11とに挟まれることにより、基体2内部に固定されている。換言すれば、基体2の第2の面S2に設けられた凹部2bに収納されて、凹部2bの開口部が蓋体11により塞がれている。
電池本体15は、第6絶縁層3Fの孔部101に配置されているから、第1の面S1までの距離は絶縁層3の5枚の厚さ相当であり、第2の面S2までの距離は絶縁層3の1枚の厚さ相当である。すなわち、電池本体15は、第1の面S1までの距離よりも第2の面S2までの距離が短く、第2の面S2寄りに配置されている。これにより、燃料流路の配置自由度の向上が可能と成るとともに、大気中の酸素を取り入れやすくなり、高効率な発電が可能となる。
電池本体15を収納する凹部2bは、第6絶縁層3Fの孔部101と、第7絶縁層3Gに設けられた孔部102(図4Cも参照)とにより形成されており、孔部101は孔部102よりも径が小さく、蓋体11は孔部101の周縁において第6絶縁層3Fに当接して固定されている。蓋体11の固定は、例えば、半田、樹脂、接着剤、ねじ等の適宜な固定部材を用いて行われる。蓋体11は、絶縁層3と同等の厚さを有しており、蓋体11は第2の面S2から突出しないように配置されている。これにより、電池本体15に突起がなくなり、小型化が可能となる。
ただし、電池本体15の厚さ及び蓋体11の厚さは、絶縁層3の厚さと同等に限られず、適宜に設定してよい。絶縁層3よりも薄くてもよいし、厚くてもよいし、絶縁層3の複数枚分の厚さにしてもよい。特に電池本体15を絶縁層3よりも厚く、あるいは絶縁層3の複数枚分よりも厚くしておき、蓋体11で電池本体15を圧縮して電池本体15を絶縁層3と同じ厚さ、あるいは絶縁層3の複数枚分と同じ厚さにするのがよい。これにより、電池本体15の電極と導電路18との電気的接続をより信頼性の高いものとすることができる。
図5は、燃料貯蔵部16、燃料流路17及び導電路18を示す斜視図である。ただし、図5は、燃料貯蔵部16、燃料流路17及び導電路18の概要を示すものであり、導電路18から各種電子部品6〜9への配線等、細部については省略している。
燃料貯蔵部16は、図2及び図5に示すように、例えば、第2絶縁層3B〜第6絶縁層3Fにそれぞれ設けられた孔部104A〜108A、孔部104B〜108B(図3B〜図4Bも参照。付加記号A、Bを省略して両者を区別しないことがある。)が連通することにより形成された収納空間25A、25B(図5も参照。付加記号A、Bを省略して両者を区別しないことがある。)を有している。孔部104〜孔部108は、例えば、同一の大きさの同一形状に形成されるとともに、第2絶縁層3B〜第6絶縁層3F間において互いに対向する位置に設けられており、柱状(例えば四角柱)に形成されている。収納空間25Aと収納空間25Bとは、隔壁16aにより仕切られ、隔壁16aには、収納空間25Aと25Bとを連通する孔部16bが設けられている。収納空間25には、不図示の開口を介してメタノールや水素ガス等の燃料が充填される。
燃料流路17は、絶縁層3に設けられた溝部(中空部)が相互に連結されて成る。なお、本願において溝部は、絶縁層3を厚み方向に貫通するもの(孔部)も含むものとする。燃料流路17を構成する溝部は、積層前の絶縁層3を切削等することにより形成される。
燃料流路17は、燃料貯蔵部16の燃料を電池本体15に(矢印y1の方向へ)導く供給部17aと、供給部17aに連通し、電池本体15のアノード極22に接する接触部17bと、接触部17bに連通し、電池本体15に接した燃料を燃料貯蔵部16に(矢印y2の方向へ)還流する排出部17cとを備えている。燃料流路17は、各部17a〜17cを備えることにより、燃料貯蔵部16から燃料を導くとともに、その燃料を燃料貯蔵部16に還流する循環経路を形成している。
燃料流路17は、3次元的に配置されている。具体的には以下の通りである。
図5及び図2に示すように、供給部17aは、例えば、第5絶縁層3Eと第6絶縁層3Fとの間において燃料貯蔵部16の収納空間25Aに連通し、燃料貯蔵部16から第5絶縁層3Eと第6絶縁層3Fとの間で絶縁層3に平行に若干延びる(図4Bの溝部110も参照)。次に、第5絶縁層3E及び第4絶縁層3Dを貫通するように第1の面S1側に延びる(図4Aの孔部111及び図3Dの孔部112も参照)。その後、第4絶縁層3D及び第3絶縁層3Cの間を絶縁層3に平行に延びる(図3Cの溝部113も参照)。その途中では、図5に示すように、紙面奥手側の2個の電池本体15及び紙面手前側の2個の電池本体15に対応して、同一平面内で(同一の絶縁層間において)図5の紙面奥手側と紙面手前側とに分岐する。その後、図2に示すように、紙面右側の電池本体15に対応する流路が、絶縁層3に平行な流路から絶縁層3に直交する方向に分岐し、電池本体15に到達する(図3Dの孔部114及び図4Aの孔部115も参照)。また、分岐後の絶縁層3に平行な流路は、紙面左側の電池本体15に対応する位置で、絶縁層3に直交する方向へ屈曲し、電池本体15に到達する(図3Dの孔部116及び図4Aの孔部117も参照)。このように絶縁層3に直交する方向に分岐することにより、直交方向への分岐点で乱流を効率よく発生させることができ、燃料(例えばメタノールと水との混合液)の混合を良好に行なうことができる。
排出部17cは、例えば、第2絶縁層3Bと第3絶縁層3Cとの間において燃料貯蔵部16の収納空間25Bに連通し、燃料貯蔵部16から第2絶縁層3Bと第3絶縁層3Cとの間で絶縁層3に平行に延びる(図3Bの溝部119も参照)。その途中では、図5に示すように、紙面奥手側の2個の電池本体15及び紙面手前側の2個の電池本体15に対応して、同一の絶縁層間において、図5の紙面奥手側と紙面手前側とに分岐する。その後、図2に示すように、紙面右側の電池本体15に対応する流路が、絶縁層3に平行な流路から絶縁層3に直交する方向に分岐し、電池本体15に到達する(図3Cの孔部120、図3Dの孔部121及び図4Aの孔部122も参照)。また、分岐後の絶縁層3に平行な流路は、紙面左側の電池本体15に対応する位置で、絶縁層3に直交する方向へ屈曲し、電池本体15に到達する(図3Cの孔部123、図3Dの孔部124及び図4Aの孔部125も参照)。なお、排出部17cにおける燃料の流れる方向は上記の排出部17cの各部の説明順と逆である。
供給部17aの絶縁層3に平行に延びる部分(第3絶縁層3Cと第4絶縁層3Dとの間)と、排出部17cの絶縁層3に平行に延びる部分(第2絶縁層3Bと第3絶縁層3Cとの間)とは、側面視(絶縁層3に平行な方向に見て)互いに平行である。また、平面視(絶縁層3に直交する方向に見て)において比較的近い距離で互いに平行に延びている。従って、排出部17cの一部は、供給部17aに沿って配置されていることになる。
また、図5に示すように、供給部17aにおける燃料の流れる方向を示す矢印y1及び排出部17cにおける燃料の流れる方向を示す矢印y2から明らかなように、排出部17cの供給部17aに沿う部分においては、両者を流れる燃料の向きは互いに反対方向である。
排出部17cが供給部17aに沿う部分では、両者間の距離は、側面視において絶縁層3の1枚の厚さと同じであり、比較的近接している。なお、図5等では、供給部17aと排出部17cとが絶縁層3を貫通する部分において合流しないように、平面視において排出部17cを供給部17aの若干外側に配置した場合を例示しているが、大部分においては平面視において互いに一致するように配置するとともに、絶縁層3を貫通する部分付近のみにおいて平面視において互いにずれるように配置し、排出部17cと供給部17aとの距離を絶縁層3の1枚の厚さに等しくしてもよい。また、図5等のように平面視において排出部17cと供給部17aとの間に距離をおく場合には、当該平面視における距離を例えば絶縁層3の1枚の厚さと同程度あるいはそれ以下にしてもよい。
図2に示すように、排出部17cは、第1の面S1との距離が絶縁層3の2枚の厚さ相当未満であるのに対し、供給部17aは、第1の面S1との距離が絶縁層3の1枚の厚さだけ排出部17cよりも長い。また、供給部17aは、第1の面S2との距離も絶縁層3の4枚の厚さ相当以上であり、排出部17cと第1の面S1との距離よりも長い。すなわち、排出部17cは、供給部17aに比し基体2の表面に近づけて配置されている。これにより、電池本体15で発生した熱により温度が上昇した、排出部を流れる流体を外気に近づけることができ、良好に放熱することができる。
なお、図では、供給部17a又は排出部17cの分岐前の断面積と分岐後の各流路の断面積とが同等に示されているが、分岐前の断面積と、分岐後の各流路の断面積の総和とが同等になるようにしてもよい。これにより、分岐前と分岐後とで流速(圧力)が一定に保たれる。
供給部17aは、4つの電池本体15に対応して4つに分岐し、それぞれ電池本体15に対して接続されている。しかし、4つに分岐した後に更に分岐して、一つの電池本体15に対して複数個所で接続されてもよい。排出部17cも同様である。これにより、各電池本体15に同じ濃度の燃料を供給でき、各電池本体15の発電をむらなく効率よく行なうことができる。また、逆に、供給部17a及び排出部17cを燃料貯蔵部16から一切分岐させずに、一の電池本体15に接した後の排出部が、他の電池本体15に接続される供給部を兼ねるように、すなわち、流路が複数の電池本体15に対して直列に接続されるようにしてもよい。これにより、各流路の構造が容易になり、生産性を向上できる。
図6Aは、接触部17bの上面図(絶縁層3に直交する方向から見た図)であり、図6Bは、図6AのVIb−VIb線矢視方向における断面図である。
図6Aに示すように、供給部17a及び排出部17cは、電池本体15に対して互いに反対側の縁部寄りの位置において電池本体15に到達し、それぞれ接触部17bの端部に連通している。接触部17bは、供給部17aとの連通位置から排出部17cとの連通位置まで蛇行するように延び、電池本体15の全面に亘って広がっている。
図6Bに示すように、接触部17bは、第5絶縁層3Eの電池本体15側の面に溝部が設けられることにより形成されており、電池本体15のアノード極22に接している。アノード極22は、多孔質部材により形成されており、接触部17bを流れる燃料はアノード極22を介して電解質部材21へ流れる。換言すれば、接触部17bは電解質部材21に接している。
なお、蓋体11には、電池本体に空気(酸化ガス)を導くための空気流路12が形成されている(図1Bも参照)。蓋体11の空気流路12は、第1の面S1側から電池本体15側に蓋体11を貫通するように設けられる部分と、蓋体11のカソード極23側に設けられた溝により形成され、接触部17bと同様に蛇行するように延びてカソード極23の全面に広がる部分とを有している。
図2に示す導電路18は、例えば従来のセラミック多層基板における導電路と同様の製造方法により基体2に設けられる。具体的には、銀系や銅系、タングステン系、モリブデン系、白金系等の導電材料を含む導電性ペーストを、積層前の絶縁層3の表面に塗布又は絶縁層3に形成した貫通孔に充填し、その後、絶縁層3を積層して焼成することにより、導電路18が設けられた基体2が得られる。
従って、導電路18は、絶縁層3と絶縁層3との間において絶縁層3に平行に延びる部分と、絶縁層3を貫通する部分とを有し、基体2の内部に3次元的に配置されている。例えば、導電路18は4つの電池本体を直列に接続するように配置される。具体的には以下の通りである。
図2及び図5に示すように、導電路18は、マイナス端子5Nから第1絶縁層3A〜第5絶縁層3Eを貫通し(図3Aの導体201、図3Bの導体202、図3Cの導体203、図3Dの導体204、図4Aの導体205も参照)、電池本体15のアノード極22に面するアノード側導電膜18aに達する。なお、実際には、途中で凹部2a(図1A参照)に設けられた電源装置6に接続され、電源装置6から電池本体15に延びるから、図2及び図5の概念図よりも複雑な形状をしている。
アノード側導電膜18aは、図6A及び図6Bにも示すように、第5絶縁層3Eのアノード極22側に形成され、接触部17bの配置領域を除いてアノード極22と接する全面に設けられている。一方、蓋体11のカソード極23側には、空気流路12の配置領域を除いてカソード極23と接する全面にカソード側導電膜18bが形成されている(図4Dも参照)。アノード側導電膜18a及びカソード側導電膜18bは、集電体としての機能を果たす。
図2及び図5に示すように、カソード側導電膜18bから延びる導電路18は、第6絶縁層3F及び第5絶縁層3Eを貫通した後、絶縁層3に平行になるように屈曲し、第5絶縁層3Eと第4絶縁層3Dとの間を延びる(図4Bの導体206、図4Aの導体207も参照)。その後、第5絶縁層3Eを貫通して(図4Aの導体207も参照)、紙面右側の電池本体10に対応するアノード側導電膜18aに接続される。以後、同様にして、カソード極23と、隣接する電池本体15のアノード極22とを接続するように導電路18は延びる。
そして、プラス端子5P直下の電池本体15のカソード極23から延びる導電路18は、第6絶縁層3F〜第1絶縁層3Aまで貫通し(図4Bの導体208、図4Aの導体209、図3Dの導体210、図3Cの導体211、図3Bの導体212、図3Aの導体213も参照)、プラス端子5Pに接続される。なお、実際には、途中で凹部2a(図1A参照)に設けられた電源装置6に接続され、電源装置6からプラス端子5Pに延びるから、図2及び図5の概念図よりも複雑な形状をしている。
図7は、燃料電池1の電気系の構成を示すブロック図である。図中、実線で示す矢印は信号の経路を示し、点線で示す矢印は電力供給の経路を示している。
電源装置6、制御装置7、キャパシタ8、燃料流動制御要素用電源装置9は、図1Aに示すように、凹部2aに収納されている。凹部2aは、各種電子部品6〜9が第1の面S1から突出しないように、各種電子部品6〜9の厚さ(高さ)よりも深く形成されている。例えば、凹部2aは、第1の絶縁層3Aに孔部131(図3Aも参照)を設けることにより形成されている。
なお、図1Aでは、凹部2aに被せる蓋体等が設けられておらず、安価、放熱性がよい等のメリットがある。ただし、蓋体を凹部2aに被せてもよい。この場合、防水、防塵等のメリットがある。なお、蓋体を凹部2aに被せる場合には、電池本体15の収納と同様に、凹部2aを絶縁層3の1枚の厚さよりも深くし、絶縁層3と同様の厚さの蓋体を第2絶縁層3Bに当接させて固定してもよい。
図7に示すように、電池本体15からの電力は、電源装置6へ供給される。電源装置6は、例えばDC/DCコンバータであり、電池本体15において発生した直流電流は、電源装置6により適宜な電圧に変換されて、端子5、制御装置7、キャパシタ8、燃料流動制御要素用電源装置9等の各種電子部品に出力される。
キャパシタ8は、電源装置6から供給される電力の圧力を安定にするためのものである。すなわち、電池本体15から供給される電力は電池本体15の状態によって変動し、また、消費される電力も燃料電池1に設けられた各種電子部品等の稼動状態や端子5に接続される電子機器の稼動状態によって変動する。従って、例えば消費電力が大きい場合には、需要に対して電力不足となる場合がある。また、逆に、余剰電力が発生する場合がある。
そこで、電源装置6は、電池本体15から供給される電力が消費電力を上回る場合にはキャパシタ8に電力を蓄え、電池本体15から供給される電力が消費電力を下回る場合にはキャパシタ8に蓄えられた電力を各種電子部品等に供給する。これにより、電子機器を安定に作動させることができる。
なお、図1Aでは、独立した部品として構成されたコンデンサ素子によりキャパシタ8を構成し、凹部2aに取り付けた場合を例示している。しかし、絶縁層3が誘電体として機能することから、絶縁層3を挟むように配置される導電膜を絶縁層3間又は基体2の表面に設け、基体2の一部又は全部をキャパシタとして機能させるようにしてもよい。
図7に示す制御装置7は、燃料電池1に設けられる各種の電子部品の動作を制御するものであり、例えば、CPU、ROM、RAM等を含むICにより構成されている。具体的には、流速センサ31の検出する燃料の流速に基づいて、燃料の流動を制御する燃料流動制御要素32の動作を制御し、また、濃度センサ33の検出する燃料の濃度に基づいて、燃料の濃度を制御する濃度調整装置34の動作を制御する。なお、燃料の流動の制御は、燃料の流速や流量の制御である。
流速センサ31は、例えば、流路に接する抵抗体と、抵抗体の抵抗値を測定する抵抗計とを含んで構成し(いずれも不図示)、流速変化により抵抗体が温度変化し、抵抗値が変化することを利用して計測する。この場合、抵抗体や、抵抗体と抵抗計とを結ぶ導電路18、抵抗計と制御装置7とを結ぶ導電路18は、例えば積層前において絶縁層3に設けられ、計測器は基体2の焼成後に凹部2a等に設けられる。
なお、流速センサ31は、上記の構成に限らず、ピトー管を利用するものなど、適宜なセンサにより構成してよい。電池本体15のように、基体2の一部に燃料流路17に連通する凹部を設けてセンサを配置し、凹部に蓋体を被せるようにしてもよい。また、燃料流路17の断面積は一定であるから、流速の計測と流量の計測とは等価である。
燃料流動制御要素32は、例えば、燃料がメタノール水溶液である場合、電気浸透流型流動制御要素(一般に、電気浸透流型ポンプと呼ばれる場合もある)により構成され、燃料流動制御要素32は、燃料流動制御要素用電源装置9と、燃料流動制御要素用電源装置9により電圧が印加されるプラス電極36P、マイナス電極36N(以下、両者を区別せずに「電極36」ということがある)とを備えている。
燃料流動制御要素用電源装置9は、例えばDC/DCコンバータである。電極36は、例えば、供給部17aに露出するように設けられており、プラス電極36Pがマイナス電極36Nの上流側に配置されている。電極36と、電極36と燃料流動制御要素用電源装置9とを接続する導電路18とは、例えば積層前おいて絶縁層3に設けられ、燃料流動制御要素用電源装置9は基体2の焼成後に凹部2aに設けられる。
図12は、電気浸透流型流動制御要素の原理を説明する図である。燃料流路17を形成する壁面3wは、メタノール水溶液に接したときに負に帯電し、その負電荷により燃料流路17の壁面3wに溶液中の正電荷が引き付けられ局在化する。そして、燃料流動制御要素用電源装置9により電極36間に電圧を印加すると、正電荷がマイナス電極36N方向に移動し、その際、周囲の溶液を引きずるために溶液全体がマイナス電極36N方向に流動する。
制御装置7は、例えば、流速センサ31の検出結果に基づいて、予め定められた流速になるように、燃料流動制御要素用電源装置9により電極36間に印加される電圧の大きさを制御する。なお、流速センサ31は省略してもよい。この場合、制御装置7は、例えば予め設定された電圧を印加するように燃料流動制御要素用電源装置9の動作を制御したり、電源装置6等において検出される電池本体15の発電量が、予め設定された値になるように燃料流動制御要素用電源装置9の動作を制御する。
濃度センサ33は、例えば、燃料流路17内に設けられ、絶縁膜により被覆された一対の電極(不図示)と、当該一対の電極間における静電容量(誘電率)を測定する測定器(不図示)とを含んで構成され、測定した静電容量と、電極間の燃料の濃度と電極間の静電容量との相関関係に基づいて燃料の濃度を特定する。この場合、絶縁膜により被覆された電極と、電極と測定器とを接続する導電路18は、例えば積層前において絶縁層3に設けられ、測定器は基体2の焼成後に凹部2a等に設ける。なお、絶縁層3自体が電極を燃料から絶縁する絶縁体になり得るから、例えば、供給部17aを挟む第3絶縁層3C及び第4絶縁層3D(図2参照)にそれぞれ電極を埋設することにより、濃度測定用のコンデンサを構成してもよい。また、濃度センサ33は、静電容量を測定するものに限定されず、例えば、燃料の沸点を測定するもの等、適宜なものにより構成してよい。
濃度調整装置34は、例えば、燃料が水素ガスやメタノールガス等の気体である場合、気液分離器によって構成される。すなわち、燃料を冷却して所定の温度まで低下させ、飽和水蒸気量を小さくし、水分を結露させることにより、燃料から余剰水分を除去して燃料の濃度を調整する。この場合、気液分離室、結露した水分の排水路、冷媒を通過させるための流路(いずれも不図示)は、燃料流路17等と同様に、絶縁層3に設けられた溝を互いに連結することにより構成することができる。また、気液分離器に温度センサを設ける場合には、例えば抵抗体の抵抗値の変化により温度を検出するセンサにより構成し、上述の抵抗体を設ける流速センサと同様にして基体2に設けることができる。
制御装置7は、濃度センサ33の検出結果に基づいて、気液分離室の温度が目標の濃度に対応する温度になるように濃度調整装置34の動作を制御する。なお、濃度センサ33は省略してもよい。この場合、制御装置7は、例えば予め設定された温度に気液分離室の温度を調整したり、電源装置6等において検出される電池本体15の発電量が、予め設定された値になるように濃度調整装置34の動作を制御する。
図8A〜図8Cは、燃料貯蔵部の変形例を示しており、図8Aは斜視図、図8Bは図8AのVIIIb−VIIIb線矢視方向における断面図、図8Cは図8Bの一部拡大図である。
燃料貯蔵部16′は、燃料供給用のカートリッジ71を挿脱可能に構成されている。具体的には以下の通りである。
燃料貯蔵部16′の収納空間25′は、第2絶縁層3B′〜第6絶縁層3F′に設けられた切り欠き部が互いに連結されて形成されている。切り欠き部は、例えば矩形状に形成されており、収納空間25′は直方体状に形成されている。
カートリッジ71は、収納空間25′に嵌合する形状に形成されており、例えば直方体状である。カートリッジ71は、基体2′と同様に、セラミックが積層されて形成されていてもよいし、金属や樹脂等により形成されていてもよい。カートリッジ71の内部空間71sには水素やメタノール等の燃料が充填されている。
カートリッジ71が収納空間25′に挿入されると、図8Bに示すように、燃料貯蔵部16′に設けられたパイプ(接続部)72がカートリッジ71に設けられた開口71aに嵌合挿入される。この際、図8Cに示すように、スプリング74に付勢されて開口71aを塞いでいた弁73が、パイプ72により押し開けられて、燃料流路17′と内部空間71sとが連通する。パイプ72は、例えば金属又は樹脂により形成され、カートリッジ71からの燃料供給用と、カートリッジ71への還流用の2つが設けられる(図8B及び図8Cでは一つのみ示す。)。
カートリッジ71の燃料貯蔵部16′からの脱落防止は、例えば、互いに係合する係合部がカートリッジ71及び燃料貯蔵部16′に設けられることにより、あるいは、カートリッジ71を挿入した後に収納空間25′を蓋体で塞ぐことなどにより行われる。
燃料電池1には、電解質部材において発生した水が流入する水流入路が、空気流路12(酸素流路)とは別に形成される。
図23Aは、水流入路の第1の例を概念的に示す断面図である。
水流入路251は、例えば燃料流路17や空気流路12と同様に、絶縁層3(図23Aでは不図示)に形成された溝部(中空部)が連結されて構成されている。水流入路251は、空気流路12の側面に開口するとともに、基体2の表面(例えば第2の面S2)に開口して外部に連通している。水流入路251は、空気流路12よりも径が小さく設定されている。例えば、空気流路12の側面に付着した水を毛管現象により吸引可能な径に設定されている。なお、毛管現象により吸引可能な径は、基体2の材質や表面粗さ等に応じて設定される。
図23Aの例では、電池本体15において発生し、空気流路12の側面に付着した水が水流入路251に流入することから、空気流路12の側面から水が迅速に除去される。従って、空気流路12の実質的な断面積の減少が防止され、電解質部材への空気の供給不足が防止される。
水流入路251は、毛管現象により空気流路12の側面の水を吸引するから、吸引するためのポンプ等を設けなくても迅速に空気流路12から水を除去できる。
水流入路251は、基体外部に連通していることから、当該水流入路251に流入した水を基体外部へ排出することにより、永続的に空気流路12の側面の水を除去できる。
図23Bは、水流入路の第2の例を概念的に示す断面図である。
水流入路253は、第1の例の水流入路251と同様に、基体2の中空部により形成されている。水流入路253は、空気流路12の側面に開口するとともに、燃料流路17の供給部71aに連通している。
水流入路253は、空気流路12の側面に開口する吸引路253aと、吸引路253aに連通する水貯蔵部253bと、水貯蔵部253bに連通するとともに燃料流路17に連通する排出路253cとを有している。
吸引路253aは、例えば、第1の例の水流入路251と同様に、空気流路12よりも小さい径、具体的には、毛管現象により空気流路12の側面に付着した水を吸引可能な径に形成されている。水貯蔵部253bは、吸引路253aや排出路253bよりも径が大きく形成されており、吸引路253aにより吸引された水を滞留させて貯蔵することが可能である。排出路253cは、適宜な径に設定される。例えば排出路253cは燃料流路17よりも小さい径で形成されている。
排出路253bには、水の流動を制御する水流動制御要素255が設けられている。水流動制御要素255の構成は、燃料流動制御要素と同様の構成としてよい。例えば、電気浸透流型流動制御要素により構成してよい。また、例えば、後述する圧電体を含むポンプにより構成してもよい。
水流動制御要素255の動作は、水流動制御要素255に駆動電力を供給する駆動部256を介して制御装置7により制御される。制御装置7は、制御装置7は、検出された燃料の濃度と、目標の燃料の濃度との差に応じて水分の流量の目標値を算出し、水分の流量がその目標値になるように水流動制御要素255の動作を制御する。すなわち、制御装置7は、水分の流量を直接的な制御対象としつつ、燃料の濃度をフィードバック制御する。
図23Bの例では、図23Aの例と同様の効果が得られる。すなわち、毛管現象により空気流路12の側面の水を吸引し、空気流路12の実質的な断面積の減少を防止して、電解質部材への空気の供給不足を防止できる。
燃料電池の仕様態様によっては、燃料電池から水が排出されることが好ましくない場合がある。例えば、燃料電池から排出された水が燃料電池によって駆動される電子機器に侵入して誤作動や故障を招くおそれがある場合である。しかし、図23Bの例では、水流入路253は燃料流路17に接続されているから、水は基体外部へ排出されず、水が排出されることによる不都合が防止される。
電解質部材が高いプロトン伝導性を有するためには水分が必要であるが、水流入路253により吸引した水を燃料流路17に供給することで水分を補給し、発電効率を向上させることができる。なお、循環経路を形成している燃料流路では、発電に伴って燃料が消費されて濃度が低下するとともに発生した水が混入する場合があることから、水分の割合は相対的に増加していくが、循環経路を形成していない燃料流路では、水が不足する可能性が比較的高い。従って、水流入路253は、循環経路を形成していない燃料流路に対して特に効果的に水分を補給できる。
水流入路253には、水貯蔵部253bが設けられていることから、燃料に水分を補給する必要がない場合でも空気流路12から水分を吸引することができるとともに、空気流路12の水分が少ない場合でも燃料流路17に水分を補給することができる。従って、燃料流路17への新たな燃料の補給による燃料濃度の上昇、発生した水の混入等による燃料濃度の低下、発電量の変動による水分発生量の変動、外部環境の温度変化や湿度変化による空気流路12の水分付着量の変動等が生じても、適切に水分の吸引及び水分の供給を行うことができる。
水流入路253には、水流動制御要素255が設けられていることから、燃料流路17に適切な量の水分を供給することができ、燃料流路17に過剰に水分が供給されることや補給される水分が不足することを防止できる。電池本体15において発電が行われている場合、燃料流路17には燃料が流れており、ベルヌーイの定理に示されるように、燃料が流れることによる圧力低下により排出路253cの水は燃料流路17に引き込まれるが、電池本体15において発電が行われていない場合には、燃料流路17から水流入路253に燃料が流れ込むおそれがある。しかし、発電を停止している場合にも、水流動制御要素255により燃料の水流入路253への流入を防止できる。
濃度センサ33の検出する濃度に基づいて水流動制御要素255の動作を制御することから、燃料を適切な濃度に維持することができる。なお、濃度センサ33は、排出路253cと燃料流路17との連通部に対して適宜な位置に設けてよいが、当該連通部の下流側に設ければ、水流動制御要素255の動作と、その動作によって生じた燃料の濃度の変動の検出との時間差が小さくなり、制御遅れにより制御が不安定になることが抑制される。
図23Bの例において、水貯蔵部253b、ポンプ255は省略してもよい。また、排出路253cは、燃料流路17の排出部17cに連通してもよい。この場合、例えば、燃料流路17が循環経路を構成していない場合、基体2の外部に水が排出されることを防止しつつ、単純に水を燃料に混ぜて排出することになるから、燃料の濃度調整を複雑化してしまうおそれがない。
図23Bの例において、排出路253cに流速センサや流量センサを設け、その流速センサや流量センサの検出値に基づいて、水の流量が、濃度センサの検出値に基づいて算出した水の流量の目標値になるように制御してもよい。この場合、濃度センサの検出値のみに基づいて水の流量を調整する場合に比較して、水が燃料に均等に混ざるまでの時間遅れを除去してフィードバック制御ができるから、制御が安定する。
図23Cは、水流入路の第3の例を概念的に示す断面図である。
水流入路258は、第1の例の水流入路251と同様に、基体2の中空部により形成されている。また、水流入路258は、空気流路12の側面に開口し、毛管現象により空気流路12の側面に付着した水を吸引可能である。
基体2には、絶縁層3(図23Cでは不図示)に形成された切り欠き部が連結されて形成されたカートリッジ収納部261が形成されている。カートリッジ収納部261には、水貯蔵用カートリッジ259を着脱可能である。
水貯蔵用カートリッジ259は、例えば、図8A〜図8Cにおいて説明した燃料供給用のカートリッジ71と同様の構成である。すなわち、水貯蔵用カートリッジ259をカートリッジ収納部261に挿入すると、パイプ260が水貯蔵用カートリッジ259に設けられた開口部に嵌合挿入され、水貯蔵用カートリッジ259に設けられた不図示の弁が押し開けられて、水流入路258と、水貯蔵用カートリッジ259の内部空間とは連通する。ただし、水貯蔵用カートリッジ259は空の状態でカートリッジ収納部261に挿入され、水貯蔵用カートリッジ259には、水流入路258により吸引された空気流路12の水が導かれる。
図23Cの例では、図23Aの例と同様の効果が得られる。すなわち、毛管現象により空気流路12の側面の水を吸引し、空気流路12の実質的な断面積の減少を防止して、電解質部材への空気の供給不足を防止できる。
水流入路258により吸引した水を、基体2に着脱可能な水貯蔵用カートリッジ259に導くことから、図23Bの例と同様に、基体2の外部に水を排出する場合の不都合が解消されるとともに、水貯蔵用カートリッジ259を交換することにより、簡単に貯蔵した水を除去できる。
水流入路を設けた燃料電池は、図23A〜図23Cの例に限定されず、種々の変形が可能である。
図23A〜図23Cに示した例は適宜に組み合わせて実施可能である。
例えば、図23Aに示したような基体外部に連通する水流入路と、図23Bに示したような水貯蔵部や図23Cに示したような水貯蔵用カートリッジとを接続し、水貯蔵部や水貯蔵用カートリッジが満杯になったときや、ユーザによる排出操作が行われたときのみ基体外部に連通する水流入路を介して基体外部へ水を排出するようにしたり、図23Aに示したような基体外部に連通する水流入路と、図23Bに示すような燃料流路に連通する水流路とを接続し、燃料流路に水を補給する必要がないときに基体外部へ水を排出するようにしてもよい。図23Bに示した燃料流路に接続される水流入路の中途に形成される水貯蔵部を、図23Cに示した水貯蔵用カートリッジにより構成してもよい。
水流入路は、毛管現象により酸素流路の側面に付着した水を吸引するものに限定されない。例えば、水流入路に水流動制御要素を設け、水流動制御要素が生じる吸引力により酸素流路の側面に付着した水を吸引してもよい。
図9は、上述の燃料電池1が装着される電子機器としての携帯電話機(携帯電子機器)501を示している。携帯電話機501は、いわゆる折り畳み式の携帯電話機として構成されており、送話筐体502と、受話筐体503とが回動可能に連結されている。
送話筐体502には、携帯電話機501への入力操作を受け付ける操作部504が設けられている。操作部504には、ダイヤルキー505、カーソルキー506等の各種押しボタンが配置されている。受話筐体503には、各種情報を表示する表示部507が設けられている。表示部507は、例えば液晶ディスプレイにより構成されている。
図10は、図9のX−X線矢視方向における断面図である。送話筐体502は、操作部504側の上部カバー502aと、その背面側(紙面下方側)の下部カバー502bと、下部カバー502bに被せられる蓋体502cとを備えている。燃料電池1は、下部カバー502b及び蓋体502cにより形成されたバッテリ収納部502dに収納されている。
燃料電池1は、第1の面S1側を送話筐体502の内部側に向けてバッテリ収納部502dに収納され、第2の面S2側に蓋体502cが被せられている。下部カバー502bには、端子5と対向する位置に端子511が設けられており、端子5と端子511とが接触して接続されることにより、燃料電池1の電力は携帯電話機501の各種電子部品に供給される。
なお、下部カバー502bのバッテリ収納部502dとは反対側、すなわち、上部カバー502aと下部カバー502bとの間には、例えば、高周波回路等が設けられる回路基板510が配置されている。
図11は、携帯電話機501の電気系の構成を示すブロック図である。図中、実線の矢印は信号の経路を示しており、点線の矢印は電力の経路を示している。
燃料電池1の電力は、端子5及び端子511を介して携帯電話機501の電源装置512に供給される。電源装置512は、供給された電力を所定の電圧に変換して表示部507等の各種電子部品に供給する。
携帯電話機501は、各種の制御を行うための制御装置(動作制御部)513を備えている。制御装置513は、例えばCPU、ROM、RAM等を含んだICにより構成されている。操作部504は、押し込まれたキーに対応する信号を制御装置513に出力する。制御装置513は、操作部504からの信号に対応する処理をROM等に記憶されたプログラムに従って実行する。制御装置513の実行する処理には、例えば、表示部507の制御が含まれ、表示内容に応じた画像データを表示部507に出力するなど、各種信号を表示部507に出力する。すなわち、制御装置513は、操作部504からの入力情報に基づいて表示部507の表示内容を制御する。
なお、携帯電話機501は、この他にも、例えば、無線通信を行うための高周波回路、送話用のマイクロフォン、受話用のスピーカ、着信の報知や音楽再生に利用されるスピーカ、カメラモジュール等の電子部品を備える。
携帯電話機501における消費電力は表示部507等の各種電子部品の稼働状況により変動する。例えば、携帯電話機501を折り畳んでいる間には、表示部507は画像を表示せず、携帯電話機501を開いている場合に比較して消費電力は少ない。音楽再生をしている場合には音量を大きくするためにスピーカのアンプによる消費電力が増加する。従って、燃料電池1から一定の電力を供給されていても、需要に対して供給される電力が不足する場合がある。また、逆に、余剰な電力が発生する場合がある。
そこで、携帯電話機501では、表示部507等の各種電子部品の稼働状況に応じて燃料電池1の発電量を変化させるように、燃料電池1による発電を制御する。例えば、以下のように行う。
制御装置513は、表示部507等の各種電子部品における各種動作それぞれについて消費電力をROM等に記憶している。一方で、制御装置513は、各種電子部品の動作を制御しているから、各種電子部品がいずれの動作を行っているかを把握できる。従って、制御装置513は、各種電子部品における現在の消費電力を積算して携帯電話機501において必要な電力を算出することができる。なお、積算される消費電力には、携帯電話機501の電源投入時から各種電子部品の動作に関係なく消費される一定量の消費電力も含まれる。
次に制御装置513は、算出した必要な電力を燃料電池1の制御装置7に出力する。なお、制御装置513から制御装置7への制御信号の出力は、携帯電話機501の筐体内部に設けられた接続部515と、燃料電池1の基体2に設けられ、接続部515に接続される被接続部516とを介して行われる。
そして、燃料電池1の制御装置7は、電池本体15に供給される燃料の流速(流量)が、必要な電力に応じた値になるように、燃料流動制御要素32の動作を制御する。これにより、燃料電池1の発電量は、携帯電話機501の稼働状況に応じた値となる。
以上の実施形態によれば、基体2を複数の絶縁層3を積層して成る積層体により形成し、異なる絶縁層3に設けた溝同士を相互に連結して燃料流路17を形成していることから、燃料流路17を3次元的に配置することがきる。すなわち、燃料流路17の配置の自由度を向上できる。しかも、基体2内部に形成することから、基体2の周囲にパイプを引き回す必要が無く、燃料電池1の外装を簡素化できる。
電解質部材21は基体2を構成する絶縁層3に挟まれていることから、電解質部材21を基体2に配置するとともに電解質部材21を絶縁することができる。すなわち、基体2が絶縁体を兼ねるから、従来のように燃料電池の基体とは別個に絶縁体を設ける必要が無く、燃料電池の小型化を図ることができる。
絶縁層3がセラミック材料から成ることから、従来から研究されている、セラミック多層基板の技術を利用することができる。また、アルミナセラミックスを用いることにより、耐熱性、絶縁性が良好な基体2を形成することができる。
燃料流路17が、循環経路を形成していることから、電解質部材に接する流路を通過したにも関らず発電に利用されなかった燃料を、再度電解質部材21へ送ることにより、再利用することができる。そして、このような再利用を可能とする循環経路が、多層基板により構成された基体2の内部に設けられることから、燃料の循環系を含む燃料電池システム全体のモジュール化及びシステム全体の小型化が容易である。発電反応はある温度範囲(例えば60〜80℃)で反応が起こりやすいので、効率よい発電をするためにはこの温度範囲にするのがよい。従来のように外部の供給部から燃料を基体の流路に供給した場合、外部の供給部と基体との温度差があり、燃料の温度がばらつきやすくなって、効率が落ちる。本実施形態では基体2の内部で循環経路を形成することにより、燃料の温度変化を小さくすることができる。
なお、供給部17aに燃料を供給する収納空間25Aと、排出部17cから燃料が還流される収納空間25Bとを隔壁16aにより仕切っていることから、排出部17cからの比較的希釈な燃料が供給部17aに直接的に供給されることが防止される。隔壁16aの形状や、収納空間25Aと収納空間25Bとを連通する孔部16bの位置、形状は、適宜に設定してよい。
燃料流路17と接続された燃料貯蔵部16が配置されていることから、燃料電池1の外部から燃料流路17へ燃料を追加することなく長時間発電することができ、燃料電池1の携帯性が向上する。そして、このような燃料貯蔵部16が、多層基板により構成された基体2の内部に設けられることから、燃料の供給系を含む燃料電池システム全体のモジュール化及びシステム全体の小型化が容易である。
さらに、燃料供給用のカートリッジ71を挿脱可能に燃料貯蔵部16を構成した場合には、カートリッジ71の交換により更に長時間の使用が可能になり、携帯性が一層向上する。そして、互いに平行に積層された絶縁層3のうち、一部(第2絶縁層3B′〜第6絶縁層3F′)を切り欠いてカートリッジ71の収納凹部を形成していることから、その両側の絶縁層3(第1絶縁層3A′及び第7絶縁層3G′)の互いに平行な面をそのままカートリッジ71の摺動面として利用することができる。
燃料流路17は、電解質部材21と接する部位が複数の経路に分岐していることから、複数の流路を並列に形成して効率的に電解質部材21に燃料を供給することができる。パイプを引き回して燃料の流路を形成する場合には、流路の分岐、すなわち、流路の増加は部品点数の増加、外装の複雑化を招くが、そのような問題も生じない。また、複数の電解質部材21に対応して流路を分岐させる場合には、複数の電解質部材に効率的に燃料を供給できるから、電解質部材を増加させることが容易になり、比較的多くの単位セルを含む燃料電池のモジュール化及び小型化が容易になる。好ましくは、各々の分岐経路に燃料流動制御要素が設けられているのがよく、このような構成により、分岐経路の各流量に差が生じるのを抑制でき、安定した燃料の供給を行うことができる。
燃料流路17を形成する溝が絶縁層3を厚み方向に貫通していることから、一の絶縁層間(例えば第3絶縁層3Cと第4絶縁層3Dとの間)の流路と、他の絶縁層間(例えば第5絶縁層3Eと第6絶縁層3Fとの間)の流路とを連通することができ、立体的な燃料流路17を容易に形成できる。
基体2の表面に電力を出力するための端子5が設けられ、基体2の内部に、端子5と電解質部材21とを電気的に接続する導電路18が設けられていることから、導線を燃料電池の周囲に引き回す必要がなく、外装を簡素化できる。また、電解質部材から導電路を経由して出力端子に至るまでの燃料電池の出力系をモジュール化及び小型化することが容易である。
電解質部材21と接した後の排出部17cが、電解質部材21と接する前の供給部17aに比し基体2の表面に近づけて配置されていることから、排出部17cを流れる燃料の熱を基体2の表面から効率的に排出できる。なお、例えば、排出部を基体表面に沿って蛇行させることにより、基体表面への投影面積を大きくし、排熱性を高めてもよい。
また、排出部17cの少なくとも一部が供給部17aに沿って配置されていることから、排出部17cと供給部17aとの間で熱交換を行い、電解質部材21における化学反応により生じた熱を効率的に分散させることができる。
さらに、排出部17cの供給部17aに沿って配置された部分を流れる燃料の向きが供給部17aを流れる燃料の向きと逆方向であることから、供給部17aと排出部17cとの間の熱交換を効率的に行うことができる。これは、排出部17cを流れる燃料は、流れの方向と熱の伝播方向とが一致する前方側(下流側)が後方側(上流側)よりも熱がこもりやすく、その前方から供給部17aにより比較的低温の燃料を流すことによるものである。
燃料流路17内の燃料の流動を制御する燃料流動制御要素32が設けられていることから、燃料電池内外の電子部品の稼働状況等の種々の条件に応じて発電量を制御することができる。そして、燃料流動制御要素32が多層基板により形成された基体2の内部に設けられていることから、流動制御による発電量の制御系のモジュール化及び小型化が容易である。
燃料流動制御要素32を電気浸透流型流動制御要素により形成したことから、燃料流動制御要素32を小型化することが可能である。また、他の流動制御要素に比較して一様な流れで燃料を制御することができるから、安定した発電量を得ることができる。また、多層基板内部に燃料流動制御要素32を設けた場合には、絶縁層3に形成した溝を利用して燃料流動制御要素32を形成することができる。
燃料流路17を流れる燃料から水分を除去して燃料の濃度を調整する濃度調整装置34を設けたことから、余剰水分により燃料が希釈されることが防止される。例えば、ダイレクトメタノールでは、メタノールのクロスオーバーを防止するために、アノード側からカソード側へのメタノールの流れが生じないようにすることから、電解質部材21において生成された水がメタノール水溶液に過剰に混ざるおそれがあり、このようなおそれを排除できる。
電解質部材21と電気的に接続される端子5が基体2の第1の面S1に設けられ、電解質部材21が基体2の第2の面S2寄りに配置されていることから、電解質部材21において生成した水などが端子5側に接続された電子機器あるいは電子機器内部の電子部品に侵入することが防止される。
基体2の第2の面S2に電解質部材21を収容する凹部2bが設けられ、凹部2bの開口部が空気流路12を有した蓋体11で塞がれていることから、絶縁層3の積層後に電解質部材21を配置することができ、燃料電池のモジュール化及び小型化が容易である。しかも、電解質部材21と外気とは蓋体11により隔てられているだけであり、当該蓋体11に貫通孔を設けることから、効率的に電解質部材21に空気を導くことができ、また、効率的に電解質部材21で生成された水の排出が行われる。
多層基板からなる基体2内部に、電解質部材21を設けるとともに、電解質部材21から供給される電力により駆動される、制御装置7等の各種電子部品を配置したことから、燃料電池のモジュール化及び小型化が容易になる。
燃料電池1は、多層基板からなる基体2によりモジュール化及び小型化がなされているから、携帯性、持続性、着脱の容易性等が高く、燃料電池1を携帯電話機501等の携帯電子機器に備えることにより、携帯電子機器の携帯性や取り扱い性等も向上する。
また、携帯電話機501では、表示部507等の電子部品の稼動状況に応じて燃料電池1の電解質部材21への燃料の供給を制御することから、必要電力に応じた発電をすることができ、電力不足や余剰電力の発生を抑制できる。しかも、燃料電池1は、多層基板からなる基体2により形成されており、制御装置7等を含んでモジュール化されているから、燃料供給の制御の一部又は全部を燃料電池に負担させることができる。
本発明は以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施してよい。
電解質部材は、固体高分子型のもの、リン酸型のもの、アルカリ型のもの、溶融炭酸塩型のもの、固体酸化物型のもの等、あらゆるものを含む。酸化ガスは、少なくとも酸素を含むガスであればよく、空気に限定されない。
積層されて基体を形成する絶縁層は、セラミック材料からなるものに限定されない。例えば、耐熱性の樹脂により絶縁層を形成してもよい。また、互いに異なる材料からなる絶縁層同士を積層してもよい。セラミック材料はアルミナセラミックスに限定されず、例えば、ガラスセラミックスでもよく、アルミナ成分を含まないジルコニアセラミックス、炭化ケイ素セラミックスでもよい。特にアルミナセラミックスやガラスセラミックスは、基体に電子回路を容易に、かつ良好な電気特性で形成することができ、好ましい。また、メタノールや水のような燃料に対して耐食性に優れるとともに、燃料の浸透も有効に防止でき、燃料の浸透によって配線導体が腐食するのを有効に防止できる。
絶縁層に設けられる溝部(孔部を含む)や溝部により形成される流路の大きさ、形状は適宜に設定してよい。従って、溝が絶縁層を厚み方向に貫通していなくてもよいし、排出部が供給部に比し基体の表面に近づけて配置されていなくてもよいし、排出部の少なくとも一部が供給部に沿って配置されていなくてもよいし、排出部の流体の向きが供給部の流体の向きと同一方向であってもよい。いずれにせよ、積層前の絶縁層に溝部を形成することにより、基体内部の任意の位置に流路を形成することができるから、配置の自由度向上という効果を奏する。
燃料貯蔵部の形状及び大きさも流路と同様に適宜に設定してよい。例えば、実施形態では、第1の面S1及び第1の面S2側の一枚の絶縁層を残して燃料の収納空間を形成したが、何枚分の絶縁層により収納空間又は収納空間の壁部を形成するかは適宜である。
基体内部又は基体表面に設けられ、燃料電池から供給される電力により駆動される電子部品は、種々のものを選択することができる。例えば、電子部品は、燃料電池としての機能に必要なものでもよいし、燃料電池としての機能とは全く別の機能を果たすものでもよい。
前者としては、例えば、実施形態における、制御装置7、キャパシタ8、燃料流動制御要素32等である。また、実施形態に記載されたもの以外にも、例えば、基体や基体内部の燃料等が何らかの原因により高温になり、燃料電池が破損することを防止するために、温度センサを基体の内部又は表面の複数位置に配置し、基準温度以上の温度が検出されたときに、発電を停止したりする等の処理を実行するようにしてもよい。これにより、燃料電池を長期にわたり安定して使用できる。
また、後者としては、例えば、外部からの信号を増幅して音声信号に変換するアンプ内蔵型スピーカや、コンピュータ等を介して入力された情報を保持する揮発性の記録媒体である。なお、燃料電池としての機能とは全く別の機能を果たす電子部品を基体内部又は気体表面に有する場合、本発明の燃料電池を、燃料電池を含んだ電子機器として捉えることもできる。
いずれにせよ、基体内部及び基体表面に電子部品を設ける場合、基体が多層基板により形成されていることからモジュール化及び小型化が容易である。
燃料流動制御要素や濃度調整装置は、本発明の必須の要件ではなく、また、燃料流動制御要素や濃度調整装置は、燃料が存在する場所であれば、供給部、接触部、排出部、燃料貯蔵部のいずれに設けられていてもよい。燃料流動制御要素や水流動制御要素等の流動制御要素は、電気浸透流型流動制御要素に限定されず、例えば、ダイヤフラムを振動させて流体を送り込む逆止弁型流動制御要素でもよい。流動制御要素は、燃料を送出するものや水を送出するものに限定されない。例えば、酸化ガスを送出するものであってもよい。
図13A〜図13Cは、燃料流動制御要素の配置位置の例を示す図である。
図13Aでは、燃料流路17の供給部17aが複数の電池本体15に対応して複数に分岐しており、その分岐点の上流側に燃料流動制御要素32−1が設けられている。なお、分岐方向(紙面下方への方向)は、例えば、図2等に示したように、積層基板の厚み方向である。
また、図13Aでは、温度センサ(温度検出素子)79が設けられている。温度センサ79は、例えば、抵抗体と、抵抗体の抵抗値を測定する抵抗計とを含んで構成され(いずれも不図示)、抵抗体の温度変化に応じた抵抗値の変化を検出することにより、温度を検出する。抵抗体は、導電路18等と同様に、焼成前のセラミックグリーンシート(絶縁層3)に金属ペーストが印刷されることにより形成されてもよいし、サーミスタ等の汎用部品により構成されてもよい。温度センサ79(抵抗体)は適宜な位置に適宜な数だけ設けられる。例えば、温度センサ79は、電池本体15に接する位置、燃料流路17に接する位置、電池本体15や燃料流路17に接しない基体表面や基体内部に配置される。このような温度検出素子を設けることにより、安定した発電を行うことができる。
温度センサ79の検出信号は、図7の流速センサ31等と同様に制御装置7に出力され、制御装置7は温度センサ79からの温度情報に基づいて燃料流動制御要素32−1の動作を制御する。例えば、制御装置7は、温度センサ79により検出された温度が所定の閾値よりも高くなる場合には、燃料の供給量を減らす、あるいは、停止するように燃料流動制御要素32−1の動作を制御する。あるいは、制御装置7は、電池本体15における、温度と、燃料の供給量と、発電量との相関関係を特定できるデータを保持しており、当該データを参照して、検出された温度と、現在の必要発電量とから燃料供給量を算出し、算出した燃料供給量になるように、燃料流動制御要素32−1の動作を制御する。
図13Aの例では、供給部17aが複数に分岐することにより、効率的に複数の電池本体15に燃料を供給することができるとともに、燃料流動制御要素32−1を複数の分岐流路に対して共通に設けることにより、燃料流動制御要素32−1の数を少なくしてコスト削減を図ることができる。
また、温度センサ79による温度情報に基づいて燃料の流動を制御することから、燃料電池の過度の昇温を防止できる。また、電池本体15の発電量は温度により変化するところ、温度変化に応じて燃料供給量を制御することにより、安定した発電を行うことができる。
図13Bでは、燃料流路17の供給部17aが複数の電池本体15に対応して複数に分岐しており、その分岐点の下流側において、複数の分岐流路それぞれに燃料流動制御要素32−2が設けられている。なお、複数の燃料流動制御要素32−2は、互いに同一の構成、能力であってもよいし、異なっていてもよい。複数の燃料流動制御要素32−2は、それぞれ独立に制御されてもよいし、共通に(同一の制御量で)制御されてもよい。また、分岐方向(紙面下方への方向)は、例えば、図2等に示したように、積層基板の厚み方向である。
図13Bにおいても、温度センサ79(抵抗体)は適宜な位置に適宜な数だけ設けられてよい。例えば、温度センサ79は、複数の電池本体15それぞれの温度を検出できる位置(電池本体15に隣接する位置)に設けられている。
図13Bの例では、供給部17aが複数に分岐することにより、効率的に複数の電池本体15に燃料を供給することができるとともに、燃料流動制御要素32−2を複数の分岐流路それぞれに設けることにより、各分岐流路に適切な流量で燃料を送り込むことができる。例えば、燃料流動制御要素から遠い位置にある電池本体15に送り込まれる燃料が減少することが防止される。複数の電池本体15は、配置位置が異なることから、供給される酸化ガスの量、放熱する際の熱流束等がことなり、適切な燃料供給量が異なるが、配置位置に応じて燃料を供給できる。互いに能力の異なる電池本体15を設けたり、複数の電池本体15毎に電力の供給先(電子部品)が異なることにより、電池本体15毎に適切な燃料供給量が異なる場合がありうるが、そのような場合にも対応できる。複数の電池本体15毎に温度センサ79が設けられ、各温度センサ79の検出結果に応じて複数の電池本体15毎に燃料供給量が制御される場合には、各電池本体15の温度に適した燃料供給量とすることができる。
図13Cでは、燃料流路17の供給部17aが一の電池本体15に対応して複数に分岐しており、その分岐点の下流側において、複数の分岐流路それぞれに燃料流動制御要素32−3が設けられている。複数の分岐流路は、例えば、図5、図6A及び図6Bに示した燃料流路17の接触部17bの複数の適宜な位置へそれぞれ接続されている。また、燃料流路17の排出部17cも、接触部17bの複数の適宜な位置から複数延び、合流している。なお、分岐方向(紙面下方への方向)は、例えば、図2等に示したように、積層基板の厚み方向である。
図13Cの例では、供給部17aが複数に分岐することにより、効率的に一の電池本体15に燃料を供給することができるとともに、燃料流動制御要素32−3を複数の分岐流路に対してそれぞれ設けることにより、各分岐流路に適切な流量で燃料を送り込むことができる。
図14A及び図14Bはそれぞれ、燃料流動制御要素として、燃料流路17を形成する壁面を振動させる振動体を設けた例を示している。振動体は、例えば、印加した電圧の大きさに応じて伸縮する圧電体である。
図14Aの燃料流動制御要素32−4は、圧電体81と、圧電体81に電圧を印加する一対の電極82P、82N(単に「電極82」といい、両者を区別しないことがある)とを備えている。
圧電体81は、例えば、圧電セラミックスである。圧電セラミックスは、例えば、Pb(Zr,Ti)O3系などの焼結体を分極処理して形成されている。圧電体81は、例えば、一枚の絶縁層3と同等の厚さを有し、一枚の絶縁層に形成された孔部にはめ込まれている。
電極82P、82Nは、燃料流路17に直交する方向において圧電体81を挟み込むように配置されている。電極82Nは、燃料流路17のうち、絶縁層に平行に形成された部分に面している。換言すれば、圧電体81は電極82Nを介して燃料流路17に面している。
燃料流動制御要素32−4を含む燃料電池の電気系の構成は、図7と同様である。ただし、電極82は燃料流動制御要素電源装置9′(電圧制御部、図7の燃料流動制御要素電源装置9に相当)に接続されている。このように電圧制御部を設けることにより、安定した燃料の供給を行うことができ、発電の安定性を向上できる。電極82と燃料流動制御要素電源装置9′とは、導電路18により接続されている。燃料流動制御要素電源装置9′は電極82に電圧を印加する。圧電体81は、電極82を介して印加される電圧の変動に応じて伸縮し、燃料流路17を形成する壁面の一部である電極82Nを振動させ、燃料流路17内の燃料に圧力を付与する。
燃料流動制御要素32−4は、燃料の流入側の流体抵抗を流出側の流体抵抗よりも大きくすることにより、燃料の流入側への逆流を防止するバルブレス型流動制御要素として構成されている。例えば、圧電体81が面する領域へ接続される流入通路83は、流出通路84よりも断面積が小さく形成されている。このため、圧電体81が燃料に与える圧力が大きくなると、流入通路83では流出通路84よりも容易に乱流が形成され、流体抵抗が増すことになる。これにより、流入通路83へ逆流する流量は、流出通路84へ流れる流量よりも少なくなる。
燃料流動制御要素32−4は、例えば、以下のように製造される。まず、焼成前のセラミックグリーンシート(絶縁層3)にレーザ加工や打ち抜き加工により、圧電体81を埋め込むための孔部を形成する。次に、その孔部に焼成前の圧電セラミックス(圧電体81)を埋め込むとともに、圧電セラミックスの両面に金属ペースト(電極82)を設ける。そして、溝部(燃料流路17、流入通路83、流出通路84)が形成された複数のセラミックグリーンシートを積層し、焼成する。
燃料流動制御要素32−4の動作は、図7の燃料流動制御要素32と同様に、制御装置7により制御される。また、燃料流動制御要素32−4は、図13A〜図13Cの燃料流動制御要素32−1〜32−3の一例でもあり、温度センサ79の検出結果に基づいて制御される。具体的には、制御装置7は、燃料流動制御要素用電源装置9′により、電極82に電圧を印加するとともに、その印加する電圧を変動させる。例えば、制御装置7は、電極82Nの電位を基準電位に設定するとともに、電極82Pの電位を基準電位と基準電位よりも高い電位との間で振動させる。これにより、圧電体81が伸縮して燃料に圧力が付与される。制御装置7は、印加される電圧の振幅や周波数を、温度センサ79の検出結果等に応じて変化させる。
図14Bの燃料流動制御要素32−5は、燃料流動制御要素32−4と同様に、圧電体81と、圧電体81に電圧を印加する一対の電極82とを備えている。ただし、燃料流動制御要素32−5は、圧電体81及び電極82の組み合わせを、燃料流路17に沿って複数備えており、進行波型流動制御要素として構成されている。すなわち、燃料流動制御要素32−5は、複数の圧電体81を互いに異なるタイミングで伸縮させることにより燃料の逆流を防止するバルブレス型流動制御要素として構成されている。
図14Aの燃料流動制御要素32−4及び燃料流動制御要素32−5によっても、実施形態の燃料流動制御要素32と同様の効果が得られる。すなわち、燃料電池内外の電子部品の稼働状況等の種々の条件に応じて発電量を制御することができ、燃料流動制御要素32が多層基板により形成された基体2の内部に設けられていることから、流動制御による発電量の制御系のモジュール化及び小型化が容易である。
図14A及び図14Bに示す振動体を含む流動制御要素は、燃料流路に代えて水流入路に設ければ、水流動制御要素として機能させることができる。
なお、振動体を含む燃料流動制御要素及び水流動制御要素等の流動制御要素は、種々の態様で実施してよい。
振動体は、燃料流路や水流入路等の流路を形成する壁面を振動させることができるものであればよく、圧電体(圧電素子)に限定されない。換言すれば、振動体のアクチュエータは、適宜なものにより構成してよい。例えば、静電引力を利用する静電型、磁力を利用する電磁型、加熱による部材の膨張を利用する熱型、形状記憶合金の温度変化に応じた変形を利用するSMA型(形状記憶合金型)のアクチュエータにより振動体のアクチュエータを構成してよい。流路を形成する壁面は、振動体自体の表面であってもよい。
圧電体は、圧電セラミックス以外にも、水晶、LiNbO3、LiTaO3、KNbO3などの単結晶、ZnO、AlNなどの薄膜、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの圧電高分子膜など、適宜な材料の圧電体を用いてよい。
圧電体は、モノモルフ、バイモルフ、積層型等のいずれの構造のものでもよい。また、圧電体は、伸縮作用により燃料流路や水流入路等の流路の壁面を振動させるものだけでなく、すべり変形により壁面を振動させるものでもよい。
圧電体は、一枚の絶縁層と同等の厚さでなくてもよく、一枚の絶縁層よりも薄くてもよいし、厚くてもよい。また、圧電体の配置位置は、燃料流路や水流入路等の流路のうち絶縁層に平行に延びる部分に面する位置でなくてもよく、流路のうち絶縁層に直交する部分、屈曲部、分岐部等、適宜な位置に面するように配置されてよい。
電極は、圧電体に燃料流路や水流入路等の流路を形成する壁面を振動させるように、圧電体に電圧を印加できればよく、流路に直交する方向に圧電体を挟み込むものに限定されない。例えば、流路に沿う方向において圧電体を挟み込むように電極を配置してもよい。流動制御要素はバルブレス型流動制御要素でなくてもよく、逆止弁を設けてもよい。
図15〜図22は、電気浸透流型流動制御要素の好適な例を示している。図12において示したように、電気浸透流型流動制御要素では、燃料流路17の壁面に帯電した負電荷により燃料中の正電荷が燃料流路17の壁面に引き付けられており、その正電荷を電極36により移動させることにより、燃料を流動させる。従って、燃料と、燃料に接触する壁面との接触面積を大きくすれば、より効率的に燃料の正電荷を壁面に引き付けて燃料を流動させることができる。以下では、燃料と壁面との接触面積を大きくした具体的な例を示す。
図15の燃料流動制御要素32−11は、図7に示した燃料流動制御要素32と同様に、一対の電極36−1P、36−1N(以下、単に「電極36−1」といい、両者を区別しないことがある。)を備え、電極36−1に電圧を印加することにより燃料を流動させるものである。ただし、燃料流動制御要素32−11は、電極36−1間に連通部材91−1(以下、「−1」を省略して、後述の連通部材91−2、91−3と区別しないことがある。)を備えている。
図16Aは連通部材91−1の斜視図、図16Bは連通部材91−1を燃料流路17の流路方向に見た図(平面図)、図16Cは図16BのXVIc−XVIc線矢視方向の断面図である。
連通部材91−1は、例えばセラミックスからなる多孔質体により構成されている。多孔質体は、内部に形成された複数の孔部92が互いに3次元的に結合することにより、液体(燃料)を透過させることができるものである。
多孔質体の気孔率は、燃料の圧力損失を小さくして燃料の流動性を良好にするという観点からは20%以上とするのがよい。また、燃料の電化の局在化を効率的に行うという観点からは80%以下がよい。よって、多孔質体の気孔率は好ましくは20〜80%である。より好ましくは基体の強度を高く維持するという観点からは40〜60%である。気孔率は、複数の切断面の画像から孔部92の平均面積率Srを算出し、算出した平均面積率Srの3/2乗を計算することにより求められる。また、切断面の画像より算出した孔部92の平均断面積Sは、好ましくは25〜40000平方マイクロメートル、より好ましくは3000〜10000平方マイクロメートルである。
連通部材91−1は、例えば略円柱状に形成されている。連通部材91−1の円柱の高さは、図15に示すように、例えば一枚の絶縁層3の厚みと同等である。そして、連通部材91−1は、燃料流路17のうち絶縁層3を貫通する部分において、一枚の絶縁層3に保持されている。すなわち、燃料流路17は、異なる絶縁層3に平行に設けた溝同士を、間に配置される絶縁層3等を貫通する孔部により相互に連結して構成され、連通部材91−1は、その溝同士を連結する孔部(連結部)に設けられている。
電極36−1P、36−1Nは、例えば、平板状に形成されており、燃料流路17を形成する壁面のうち、連通部材91−1の端面が対向する位置に配置されている。換言すれば、燃料の流向に直交するように配置されている。電極36−1P及び36−1Nは、例えば連通部材91−1の断面積と同等の広さを有している。
燃料流動制御要素32−11は、例えば、以下のように製造される。まず、焼成前のセラミックグリーンシート(絶縁層3)にレーザ加工や打ち抜き加工により、連通部材91−1を埋め込むための孔部を形成する。次に、その孔部にセラミックグリーンシートよりも樹脂成分の多いセラミックペーストを充填する。例えば、基体2を構成するセラミックグリーンシートの樹脂含有率に対してセラミックペーストの樹脂含有率を2〜10倍とする。そして、そのセラミックグリーンシートに、金属ペースト(電極36−1)等が設けられたセラミックグリーンシートを積層し、焼成する。セラミックペーストは、樹脂成分が揮発することにより、多孔質の連通部材91−1になる。すなわち、連通部材91−1は、絶縁層3と同一材料により一体的に形成される。このように連通部材91−1を基体2を構成する絶縁層3と同一材料により形成すると熱膨張差による応力を抑制でき、連通部材91−1の破損を有効に抑制できる。なお、多孔質体の部材を焼成前のセラミックグリーンシートに埋め込んで連通部材91−1を構成してもよい。
燃料流動制御要素32−11によれば、燃料流路17内に配置された連通部材91−1は多孔質体により形成されており、連通部材91−1が配置されない場合に比較して、燃料と、燃料に接触する壁面との接触面積が大きくなるから、燃料の電荷の局在化を促して効率的に燃料を流動させることができる。
連通部材91−1は、基体2と同一の材料で形成されていることから、基体2と連通部材91−1との間に、熱膨張によるずれが生じにくく、耐久性が向上する。
連通部材91−1が、燃料流路17のうち絶縁層3を貫通する部分に配置されていることから、絶縁層3に孔部を設けて、当該孔部へ連通部材91−1を配置することができ、連通部材91−1の形成が容易である。特に、樹脂成分を含む材料を焼成前の絶縁層3に配置して焼成し、多孔質体を形成する場合には、孔部に樹脂成分を含む材料を充填するだけであり、連通部材91−1の形成が容易である。
図17A〜図17Cは連通部材の他の例を示しており、図17Aは斜視図、図17Bは燃料流路17の流路方向に見た図、図17Cは図17BのXVIIc−XVIIc線矢視方向の断面図である。
図17A〜図17Cの連通部材91−2は、例えば、外形は連通部材91−1と同様に形成されており、図15に示した連通部材91−1の配置位置に配置される。連通部材91−2は、燃料流路17の流路方向に貫通する複数の孔部94が設けられている。孔部94の直径は、好ましくは燃料の電化の局在化を効率的に行うという観点からは50マイクロメートル以下、より好ましくは、流動性を良好にするとともに基体2の強度を高く維持するという観点からは5〜30マイクロメートルである。
連通部材91−2は、例えば、以下のように製造される。まず、焼成前のセラミックグリーンシート(絶縁層3)にレーザ加工や打ち抜き加工により、連通部材91−2となる部位に、孔部94となる穴を形成する。そして、そのセラミックグリーンシートに、金属ペースト(電極36−1)等が設けられたセラミックグリーンシートを積層し、焼成する。すなわち、連通部材91−2は、絶縁層3と同一材料により一体的に形成される。このように連通部材91−2を、基体2を構成する絶縁層3と同一材料により形成すると熱膨張差による応力を抑制でき、連通部材91−2の破損を有効に抑制できる。なお、孔部94が形成された部材を焼成前のセラミックグリーンシートに埋め込んで連通部材91−2を構成してもよい。
連通部材91−2によれば、連通部材91−1と同様の効果が得られる。すなわち、燃料と、燃料に接触する壁面との接触面積を大きくし、燃料の電荷の局在化を促して効率的に燃料を流動させることができる。
連通部材91−2が、燃料流路17のうち絶縁層3を貫通する部分に配置されていることから、孔部94を絶縁層3に直接形成して連通部材91−2を構成することができ、製造が容易である。
図18A〜図18Cは連通部材の他の例を示しており、図18Aは斜視図、図18Bは燃料流路17の流路方向に見た図、図18Cは図18BのXVIIIc−XVIIIc線矢視方向の断面図である。
図18A〜図18Cの連通部材91−3は、例えば、外形は連通部材91−1と同様に形成されており、図15に示した連通部材91−1の配置位置に配置される。連通部材91−3は、燃料流路17の流路方向に貫通する複数のスリット96が設けられている。スリット96の幅(径)は、好ましくは燃料の電化の局在化を効率的に行うという観点からは50マイクロメートル以下、より好ましくは、流動性を良好にするとともに基体2の強度を高く維持するという観点からは5〜30マイクロメートルである。連通部材91−3は、例えば、連通部材91−2と同様に形成される。
連通部材91−3によれば、連通部材91−1や連通部材91−2と同様の効果が得られる。すなわち、燃料と、燃料に接触する壁面との接触面積を大きくし、燃料の電荷の局在化を促して効率的に燃料を流動させることができる。
図19A及び図19Bは、電気浸透流型流動制御要素の電極の配置の変形例を示しており、図19Aは断面図、図19Bは斜視図である。
燃料流動制御要素32−12の電極36−2P、36−2N(以下、単に「電極36−2」といい、両者を区別しないことがある。)は、例えば円筒状に形成されており、燃料流路17のうち、絶縁層3を貫通する部分の壁面に、連通部材91を挟んで配置されている。換言すれば、電極36−2は、燃料の流向に沿うように配置されている。電極36−2は、例えば焼成前のセラミックグリーンシート(絶縁層3)に形成された孔部に金属ペーストを充填するとともに、その中央側に樹脂を充填し、当該セラミックグリーンシートを他のセラミックグリーンシートと積層して焼成し、樹脂を揮発させることにより形成される。
図20A及び図20Bは、電気浸透流型流動制御要素の電極の配置の変形例を示しており、図20Aは断面図、図20Bは斜視図である。
燃料流動制御要素32−13の電極36−3P、36−3N(以下、単に「電極36−3」といい、両者を区別しないことがある。)は、例えば連通部材91の断面形状と同一形状(例えば円形)の平板状に形成されており、連通部材91の端面に配置される。電極36−3には、複数の孔部98が設けられている。
孔部98は、例えば、連通部材91が、多孔質体からなる連通部材91−1である場合には、適宜な位置に適宜な形状で形成され、連通部材91が、孔部94が形成された連通部材91−2である場合には、孔部94の配置位置に孔部94と同等の大きさで形成され、連通部材91が、スリット96が形成された連通部材91−3である場合には、スリット96の配置位置にスリット96と同等の大きさのスリット状に形成される。すなわち、燃料は電極36−3の孔部98を通過するとともに、連通部材91を通過して、燃料流路17を流れることができる。
電極36−3は、例えば、焼成前のセラミックグリーンシート(絶縁層3)に連通部材91となる部材を配置した後に、連通部材91に金属ペーストを設け、レーザ加工や打ち抜き加工により孔部98を形成し、そのセラミックグリーンシートが他のセラミックグリーンシートと積層されて焼成されることにより形成される。なお、電極の孔部98の形成と同時に、連通部材91−2の孔部94や連通部材91−3のスリット96を形成してもよい。
図15、図19A、図20A、に示したように、連通部材91を配置する場合、一対の電極は、電極間に連通部材91を配置できれば適宜に配置してよい。ただし、図15のように絶縁層3に沿う面に電極を設ける場合には、焼成前の絶縁層3の表面に金属ペーストを配置するだけでよく、形成が簡単である。図19Aのように絶縁層3に直交する面に電極を設ける場合には、絶縁層3に直交する連通部材91に隣接して電極を配置することができる。図20Aに示したように連通部材91の端面に電極を設ける場合には、形成が容易であるとともに連通部材91に隣接して電極を配置することができる。
図21は、連通部材91と、連通部材91を挟んで対向する一対の電極36−3とからなる燃料流動制御要素32−13を、直列及び並列に複数配列して構成した燃料流動制御要素アレイ部32−15を示している。
例えば、燃料流路17は、絶縁層3に沿う第1平行部17eと、第1平行部17eと複数層隔てられた第2平行部17fと、第1平行部17eと第2平行部17fとを結び、複数の絶縁層3を貫通する複数の貫通部17gとを含んでいる。複数の貫通部17gは、互いに隣接している。貫通部17gにおいては、複数個所に燃料流動制御要素32−13が設けられている。例えば、一層おきに燃料流動制御要素32−13が設けられている。なお、燃料流動制御要素32−13の並列方向の配列数(複数の貫通部17gの数)は、例えば100〜500であり、燃料流動制御要素32の直列方向の配列数は、例えば10〜20である。
なお、燃料流動制御要素アレイ部を構成する複数の燃料流動制御要素は、燃料流動制御要素32−3に限らず、図15に示したような燃料流動制御要素32−1や図19Aに示したような燃料流動制御要素32−2であってもよい。複数の燃料流動制御要素を配列する場合には、直列のみ、又は、並列のみでもよい。複数の燃料流動制御要素を直列に配置する場合には、絶縁層に沿う方向に直列に配置してもよいし、直線的に連結されなくても、ジグザグに連結されてもよい。また、複数の燃料流動制御要素を並列に配置する場合には、絶縁層に直交する方向に並列に配置してもよい。直線状に並列に配置されてもよいし、平面状に並列に配置されてもよい。
図22A及び図22Bは、電気浸透流型流動制御要素を取り囲むシールド導体231を設けた例を示しており、図22Aは断面図、図22Bは斜視図である。
シールド導体231は、例えば、絶縁層3に沿って平板状に形成された平板状導体232と、絶縁層3を貫通するように形成されたビア導体233とを含んでいる。平板状導体232は、燃料流動制御要素32−1を絶縁層3に直交する方向(紙面上下方向)において挟み込むように、2つ配置されている。ビア導体233は、2つの平板状導体232を結ぶように延びるとともに、連通部材91の周囲を囲むように複数設けられている。ビア導体233同士の間隔は、例えば、対象とするノイズの波長の1/2以下、好ましくは1/4以下である。シールド導体231は、導電路18(導体層含む)を介してマイナス端子5Nに接続されている。すなわち、シールド導体231は基準電位(グランド)に接続されている。
平板状導体232は、焼成前のセラミックグリーンシート(絶縁層3)の表面に金属ペーストが設けられることにより形成される。ビア導体233は、焼成前のセラミックグリーンシートに打ち抜き加工やレーザ加工により孔部を設け、当該孔部に金属ペーストを充填することにより形成される。
図22A及び図22Bの例では、シールド導体231により電気浸透流型流動制御要素へ侵入するノイズが低減されるとともに電気浸透流型流動制御要素から放出されるノイズが低減される。従って、電気浸透流型流動制御要素による燃料の流動制御の誤差が低減されるとともに、燃料電池に設けられた電子部品や燃料電池により駆動される電子部品の誤作動も防止される。
シールド導体231はビア導体233を含んで構成されていることから、絶縁層3に沿う方向に侵入、放射されるノイズを遮断するようにシールド導体231を形成することが容易である。
なお、シールド導体231は、燃料流動制御要素が、圧電体等の振動体からなるものである場合に、当該燃料流動制御要素(振動体)を囲むように設けてもよい。
図15〜図22に示す電気浸透流型流動制御要素は、燃料流路に代えて水流入路に設ければ、水流動制御要素として機能させることができる。
電気浸透流型の燃料流動制御要素や水流動制御要素は、上記以外にも種々の態様で実施してよい。
電気浸透流型流動制御要素は、燃料や水が高電位側へ流れるものであってもよいし、低電位側へ流れるものであってもよい。なお、燃料や水に接触する壁面が正電荷に帯電するか、負電荷に帯電するかは、燃料、燃料流路や水流路等の流路を形成する壁面、連通部材等の材料により決定される。
連通部材は、燃料や水と接触することにより、燃料や水の正電荷又は負電荷を引き付けることができるものであればよく、セラミックスからなるものに限定されない。連通部材は、一枚の絶縁層と同等の厚さでなくてもよく、一枚の絶縁層よりも薄くてもよいし、厚くてもよい。連通部材の断面形状も適宜に設定してよい。また、連通部材の配置位置は、燃料流路や水流入路等の流路のうち絶縁層を貫通する部分でなくてもよく、流路のうち絶縁層に平行な部分、屈曲部、分岐部等、適宜な位置に配置されてよい。
なお、流動制御要素は、燃料や水を基準の流動方向とは逆方向に流動させることが可能であってもよい。あるいは、複数の流動制御要素のうち、一部の流動制御要素は、他の流動制御要素とは逆方向に燃料や水を流動させるものであってもよい。例えば、図14Aに示した燃料流動制御要素32−4が複数設けられる場合に、そのうち一部の燃料流動制御要素32−4は、流入通路83の断面積が流出通路84の断面積よりも大きく設定されてもよい。図14Bに示した燃料流動制御要素32−5においては、燃料流動制御要素用電源装置9′は、複数の電極82へ印加する電圧変動のタイミングを変化させることにより、燃料を逆方向に流動させてもよい。図7等の電気浸透流型流動制御要素では、燃料流動制御要素用電源装置9が、一対の電極に印加する電圧の正負を切り換えることにより、燃料を逆方向に流動させてもよい。流動制御要素が、燃料や水を逆方向に流動させる力を燃料や水に付与することにより、燃料や水を速やかに減速、あるいは停止させ、適切に発電量、発熱量、燃料濃度を制御することができる。
電子機器の稼働状況に応じて発電量を制御する場合、最終的に発電量を制御できればよく、その方法は燃料の制御に限定されない。例えば、電解質部材に供給する酸素の量を制御してもよい。この場合、例えば、空気流路に電磁バルブや流動制御要素を設けて酸素の量を制御すればよい。
また、発電量の制御を行う反応制御部は、燃料電池に設けられていてもよいし、燃料電池が接続される電子機器の本体に設けられていてもよい。また、燃料電池の制御部と電子機器本体の制御部とにより反応制御部を構成する場合、その両者における役割分担は適宜に設定してよい。例えば、電子機器本体の制御部は、必要な電力だけでなく、当該電力に対応した燃料の流速まで算出して燃料電池の制御部に出力してもよい。ただし、必要電力の算出のような電子機器本体の特性に基づく処理は電子機器本体の制御部に負担させ、必要電力に対応する流速の算出等の燃料電池の特性に基づく処理は燃料電池の制御部に負担させたほうが、燃料電池の互換性は高くなる。また、表示部、操作部を燃料電池に設けてもよい。
酸素流路は、基体2の中空部により形成され、この酸素流路の側面、すなわち、酸素流路を構成する基体2の中空部の側面は、滑面であってもよいし、粗面(凹凸形状)であってもよい。
図24Aは、酸素流路263の側面264、すなわち、酸素流路を構成する基体2の中空部の側面が、凹凸形状になっている変形例を示す断面図である。例えば、側面264は、酸素流路263の全長、且つ、全周に亘って、複数の凸部264a(凹部264b)が形成されることにより、凹凸形状になっている。凸部264a(凹部264b)は、例えば、エッチングやブラストにより形成可能である。なお、ここで、凹凸形状とは、例えば、凸部264aとこれに隣接する凹部264bとの高さの差(或いは、264aとその周囲の平坦部との差)が、空気流路12の側面に開口する水流入路の開口部における流路の最大径(直径)よりも大きな形状をいう。
本願発明では、上述のように、酸素流路263の側面に付着した水が流入する水流入路251(253、258も同様。以下、251の符号のみ付す。)が設けられていることから、酸素流路263の側面264に過剰に水が付着して酸素流路263の断面積が低減されることが抑制されている。そこで、側面264を凹凸形状として、本来的には側面264に付着することが好ましくない水を、積極的に側面264に付着させることにより、水流入路251に水を積極的に流入させたり、及び/又は、酸素流路263から水が放出されて酸素流路263付近の燃料電池外部の電子回路に影響を及ぼすことを抑制したりすることができる。
なお、凸部264a(凹部264b)は、酸素流路263の流路方向の一部及び/又は周方向の一部にのみ設けられていてもよい。例えば、凸部264a(凹部264b)は、酸素流路263の流路方向においては、水流入路251よりも上流側(基体2の内部側、図24Aの下方側)から水流入路251よりも下流側(基体2の外部側、図24Aの上方側)に亘る一部の範囲にのみ設けられたり、水流入路251よりも上流側の一部又は全部の範囲にのみ設けられたり、水流入路251よりも下流側の一部又は全部の範囲にのみ設けられたりしてもよい。また、酸素流路263の周方向においては、凸部264a(凹部264b)は、水流入路251が設けられる側の一部の範囲にのみ設けられていてもよい。凸部264a(凹部264b)の配置及び形状は、図24Aに示すように、不規則であってもよいし、規則的であってもよい。
図24Bは、酸素流路265の側面266が、凹凸形状になっている他の変形例を示す断面図である。この変形例では、凹凸形状は、酸素流路265の流路方向(図24Bの上下方向)に交差する段差266aから成っている。段差266aは、例えば、水流入路251よりも、基体2の外方側(酸素流路265の下流側、図24Bの上方側)において、側面の一部が内側に突出することにより、形成されている。例えば、水流入路251の、基体2の外方側を形成する面が、水流入路251の、基体2の内方側を形成する面よりも、酸素流路265の内側に突出することにより、形成されている。段差266aは、例えば、酸素流路265の全周に亘って設けられている。なお、ここで、段差とは、例えば、内側に突出した側面の一部と、これに隣接し、且つ突出しない側面の他部との突出度合いの差が、空気流路12の側面に開口する水流入路の開口部における流路の最大径(直径)よりも大きなものをいう。
段差266aは、例えば、酸素流路265が、基体2を構成する複数の絶縁層3それぞれに孔部が形成され、その複数の絶縁層3の孔部が連結されることにより構成されている場合、その複数の絶縁層3の孔部のうち、一部の孔部の径を他の孔部の径よりも小さく(又は大きく)することにより形成できる。あるいは、複数の絶縁層3の孔部のうち、一部の孔部の位置を他の孔部の位置からずらすことにより形成できる。なお、同一径の孔部の位置をずらして段差266aを形成する場合、酸素流路265の周方向において、一部には突出する段差が、他の部分には凹む段差が形成される。
この変形例では、段差266aが酸素流路265の流路方向に交差していることから、段差266aにより、側面265における水の流路方向に沿う流れが妨げられる。従って、段差266aにより形成された凹凸に水分を付着させつつ、酸素流路265から水が放出されることを効果的に抑制できる。さらに、酸素流路265の側面266は、水流入路251よりも外方側において突出して段差266aを形成していることから、堰き止めた水を水流入路251へ流しやすく、効果的に水流入路251を活用できる。
なお、段差266aは、酸素流路263の流路方向において複数設けられてもよいし、水流入路251よりも酸素流路263の上流側(基体内部側、図24Bの下方側)に設けられてもよいし、上流側及び下流側に設けられてもよい。また、段差266aは、酸素流路263の周方向において、一部にのみ設けられてもよい。例えば、段差266aは、周方向において、水流入路251が設けられる側の一部の範囲にのみ設けられていてもよい。また、段差266aは、側面266の一部に凹部が形成されることにより形成されてもよい。