実施の形態1.
以下この発明の実施の形態1を図1に示す。図1はこの発明の冷凍空調装置の回路図である。冷凍空調装置である熱源機1内には、同一回路構成の冷凍サイクル2a、2bが搭載されている。冷凍サイクル2aには圧縮機3a、四方弁4a、熱源側熱交換器である空気熱交換器5a、逆止弁6a〜6d、過冷却熱交換器7a、減圧装置である主膨張弁8a、負荷側熱交換器である水熱交換器9a、第二の減圧装置であるバイパス膨張弁10aが内蔵されており、図示されるように環状に接続され冷媒回路を構成する。また、冷凍サイクル2bにおいても、同様にして、圧縮機3b、四方弁4b、熱源側熱交換器である空気熱交換器5b、逆止弁6e〜6h、過冷却熱交換器7b、減圧装置である主膨張弁8b、負荷側熱交換器である水熱交換器9b、第二の減圧装置であるバイパス膨張弁10bが内蔵されており、図示されるように環状に接続され冷媒回路を構成する。なお、以下の説明においては、例えば冷凍サイクル2a及び2bを総称するときには冷凍サイクル2と称するものとし、このことは他の機器においても同様とし、圧縮機3、四方弁4、空気熱交換器5、逆止弁6、過冷却熱交換器7、主膨張弁8、水熱交換器9、バイパス膨張弁10、ファン11とそれぞれ称するものとする。
圧縮機3は、例えばDCブラシレスモータを搭載したスクロール圧縮機から構成されており、インバータ(図示せず)により回転数が制御され容量制御されるタイプのものである。空気熱交換器5は、プレートフィン熱交換器から構成されており、ファン11によって搬送される熱源機1周囲の空気と熱交換を行う。過冷却熱交換器7は、冷媒・冷媒熱交換器であり、プレート熱交換器から構成される。主膨張弁8及びバイパス膨張弁10は、開度が可変に制御される電子膨張弁から構成される。水熱交換器9は、プレート熱交換器から構成されており、熱負荷媒体である冷温水と冷媒との間で熱交換を行う。この冷凍空調装置の冷媒としては疑似共沸混合冷媒であるR410Aが用いられる。
冷媒回路は環状に接続され、水熱交換器9で冷水をつくる冷却運転では、圧縮機3、四方弁4、空気熱交換器5、逆止弁6a(6e)、過冷却熱交換器7の一方の流路、主膨張弁8、逆止弁6d(6h)、水熱交換器9、四方弁4、圧縮機3が環状に接続され、この順で冷媒が流れる。また過冷却熱交換器7を出た冷媒の一部が分岐され、バイパス膨張弁10、過冷却熱交換器7のもう一方の流路を経て圧縮機3の圧縮室にインジェクションされる。
水熱交換器9で温水をつくる加熱運転では、圧縮機3、四方弁4、水熱交換器9、逆止弁6b(6f)、過冷却熱交換器7の一方の流路、主膨張弁8、逆止弁6c(6g)、空気熱交換器5、四方弁4、圧縮機3が環状に接続され、この順で冷媒が流れる。また加熱運転においても過冷却熱交換器7を出た冷媒の一部が分岐され、上記冷却運転時と同様にバイパス膨張弁10、過冷却熱交換器7のもう一方の流路を経て圧縮機3の圧縮室にインジェクションされる。
このように冷却、加熱運転において過冷却熱交換器7から分岐後、バイパス膨張弁10、過冷却熱交換器7を経て圧縮機3にインジェクションされる回路にてエコノマイザ回路を構成する。
熱負荷媒体である冷温水は熱源機1の外部に設けられたポンプ12により搬送され、熱源機1内では点線の流路となり、冷凍サイクル2bの水熱交換器9b、冷凍サイクル2aの水熱交換器9aの順に流れる。水熱交換器9では、冷却運転時は冷媒と冷水が並行して流れる並行流となり、加熱運転時は冷媒と温水が対向して流れる対向流となるように流路構成されている。
冷凍サイクル2a、2bには圧力センサ14a、14cが圧縮機3吸入側、圧力センサ14b、14dが圧縮機3吐出側に設けられており、それぞれ設置場所の冷媒圧力を計測する。また温度センサ15a、15iが圧縮機3吸入側、温度センサ15b、15jが圧縮機3吐出側、温度センサ15c、15kが空気熱交換器5の冷却運転時の出口側、温度センサ15d、15lが水熱交換器9の冷却運転時の入口側、温度センサ15e、15mがエコノマイザ回路上の過冷却熱交換器7流路の入口側、温度センサ15f、15nがエコノマイザ回路上の過冷却熱交換器7流路の出口側に設けられており、それぞれ設置場所の冷媒温度を計測する。また温度センサ15g、15oが水熱交換器9での冷温水の流入部、温度センサ15h、15pが水熱交換器9での冷温水の流出部に設けられており、それぞれ設置場所の冷温水の温度を計測する。温度センサ15sは熱源機1周囲の空気温度を計測するために設けられている。なお、以下の説明においては、圧力センサ14a〜14dを総称するときには圧力センサ14と称し、温度センサ15a〜15pを総称するときには温度センサ15と称するものとする。
計測制御装置13は、圧力センサ14、温度センサ15などの熱源機1の計測・運転情報や冷凍空調装置使用者から指示される運転内容に基づいて、圧縮機3の運転・停止や回転数、空気熱交換器5のファン送風量、主膨張弁8、バイパス膨張弁10の開度など各アクチュエータを制御する。
次に、この冷凍空調装置での運転動作について図1及び図2に基づいて説明する。図2は、この発明の実施の形態1における冷凍空調装置の圧力とエンタルピの関係を表した図であり、横軸はエンタルピを表し、縦軸は圧力を表している。冷凍サイクル2の運転動作は冷凍サイクル2a、2bとも同様となるので、代表して冷凍サイクル2aにおける動作を説明する。
まず冷却運転における冷媒回路の動作について説明する。冷却運転においては、四方弁4aの流路は図1の実線方向に設定される。圧縮機3aから吐出された高温高圧(Ph)のガス冷媒(図2点A)は、四方弁4aを経て空気熱交換器5aに流入し、凝縮器となる空気熱交換器5aで放熱しながら凝縮・液化する(図2点B)。空気熱交換器5aを出た高圧の液冷媒は逆止弁6aを経て、過冷却熱交換器7aで、エコノマイザ回路を流れる冷媒によりさらに冷却され(図2点C)、温度低下し主膨張弁8aに流入する。主膨張弁8aにて低圧(Pl)に減圧された二相状態の冷媒は(図2点D)、逆止弁6dを経て蒸発器となる水熱交換器9aにて、蒸発ガス化しながら吸熱し、負荷側熱媒体である水を冷却し冷水を生成する。水熱交換器9aを出た冷媒は、四方弁4aを経て圧縮機3aに吸入される(図2点E)。過冷却熱交換器7aを出た高圧の液冷媒の一部はエコノマイザ回路にバイパスされ、バイパス膨張弁10aにて、中間圧(Pm)まで減圧された後(図2点F)、過冷却熱交換器7aのもう一方の流路に流入し、空気熱交換器5aを出た高圧液冷媒と熱交換し加熱蒸発される(図2点G)。エコノマイザ回路を流れる冷媒は、その後圧縮機3a内の圧縮途中の圧縮室にインジェクションされ、吸入状態(図2点E)から圧縮された冷媒(図2点H)と混合した後(図2点I)、高圧(Ph)まで圧縮され、高温高圧のガス冷媒(図2点A)となる。
次に冷却運転における冷水の動作について説明する。冷水はポンプ12によって駆動される。低温の、例えば7℃の冷水はファンコイルなど負荷側装置に流入し、そこで負荷側装置周囲に冷熱を供給しながら冷水そのものの温度は上昇し、例えば12℃まで上昇した後で、熱源機1に流入する。熱源機1に流入した冷水は冷凍サイクル2bの水熱交換器9bにて冷媒により冷却され温度低下し、例えば9.5℃となって流出し、次いで冷凍サイクル2aの水熱交換器9aに流入する。ここで冷水は冷媒により冷却され、さらに温度低下し、例えば7℃となって、水熱交換器9aを流出し、熱源機1を流出する。その後冷水は再び負荷側装置に流入する。
次に加熱運転における冷媒回路の動作について説明する。加熱運転においても、冷凍サイクル2a、2bの動作は同様となるので、代表して冷凍サイクル2aにおける動作を説明する。加熱運転では四方弁4aの流路は図1の点線方向に設定される。加熱運転における冷媒の状態変化も冷却運転とほぼ同様であり、図2に示される状態変化となる。圧縮機3aから吐出された高温高圧(Ph)のガス冷媒(図2点A)は、四方弁4aを経て水熱交換器9aに流入し、凝縮器となる水熱交換器9aで放熱しながら凝縮・液化する(図2点B)。この際、液媒体である水を加熱し温水を生成する。水熱交換器9aを出た高圧の液冷媒は逆止弁6bを経て、過冷却熱交換器7aで、エコノマイザ回路を流れる冷媒によりさらに冷却され(図2点C)、温度低下し主膨張弁8aに流入する。主膨張弁8aにて低圧(Pl)に減圧され二相状態の冷媒となり(図2点D)、逆止弁6cを経て蒸発器となる空気熱交換器5aに流入し、空気熱交換器5aにて、蒸発ガス化され、四方弁4aを経て圧縮機3aに吸入される(図2点E)。過冷却熱交換器7aを出た高圧の液冷媒の一部はエコノマイザ回路にバイパスされ、バイパス膨張弁10aにて、中間圧(Pm)まで減圧された後、過冷却熱交換器7aのもう一方の流路に流入し、水熱交換器9aを出た高圧液冷媒と熱交換し加熱蒸発される(図2点G)。エコノマイザ回路を流れる冷媒は、その後圧縮機3a内の圧縮途中の圧縮室にインジェクションされ、吸入状態(図2点E)から圧縮された冷媒(図2点H)と混合した後(図2点I)、高圧(Ph)まで圧縮され、高温高圧のガス冷媒(図2点A)となる。
次に加熱運転における温水の動作について説明する。温水はポンプ12によって駆動される。高温の、例えば45℃の温水はファンコイルなど負荷側装置に流入し、そこで負荷側装置周囲に温熱を供給しながら温水そのものの温度は低下し、例えば40℃まで低下した後で、熱源機1に流入する。熱源機1に流入した温水は冷凍サイクル2bの水熱交換器9bにて冷媒により加熱され温度上昇し、例えば42.5℃となって流出し、次いで冷凍サイクル2aの水熱交換器9aに流入する。ここで温水は冷媒により加熱され、さらに温度上昇し、例えば45℃となって、水熱交換器9aを流出し、熱源機1を流出する。その後温水は再び負荷側装置に流入する。
次に、この冷凍空調装置での制御動作について説明する。始めに冷却運転について図3に基づいて説明する。まず冷凍空調装置使用者などにより、負荷側装置に供給される冷水の目標温度が設定される(S11)。また負荷側装置の運転状況に応じて冷水を送水するポンプ12の流量が変更される(S12)。
熱源機1内では、温度センサ15oで検知される冷水の流入温度、および負荷側装置に供給する冷水の目標温度に応じて、冷凍サイクル2a、2bの水熱交換器9出口の冷水温度目標値が設定される(S13)。この冷水温度目標値は、水熱交換器9出入口の冷水温度差が冷凍サイクル2a、2bの熱交換器の定格熱交換量を示す容量、もしくは水熱交換器9の伝熱面積など定格熱交換量を決定する値に対して、比例するように決定される。例えば、熱源機1に流入する冷水温度が12℃、供給される冷水の目標温度が7℃、冷凍サイクル2a、2bの水熱交換器9の定格容量が等しい場合には、熱源機1全体の冷水温度差が12−7=5℃となるため、冷凍サイクル2a、2bともに冷水温度差が5×1/2=2.5℃となるように設定される。従って、水熱交換器9が冷水流路上流に配置される冷凍サイクル2bでは、水熱交換器9b出口の冷水温度目標値は12−2.5=9.5℃に設定される、水熱交換器9が冷水流路下流に配置される冷凍サイクル2aでは、水熱交換器9a出口の冷水温度目標値は9.5−2.5=7℃に設定され、これは当然負荷側装置に供給する冷水温度の目標値と等しくなる。
次に、各冷凍サイクル2a、2bの運転制御について説明する。ここで制御方法は、各冷凍サイクル共通となるので、冷凍サイクル2aについて説明する。まず、圧縮機3aの回転数、空気熱交換器5aへの送風量、主膨張弁8aの開度、バイパス膨張弁10aの開度を初期値に設定して運転を行う(S14)。空気熱交換器5aの送風量の初期設定値は温度センサ15sで検知される外気温度、およびあらかじめ計測制御装置13に記憶された所定値とを比較して決定される。ここで外気温度と比較する所定値は圧縮機の運転容量、熱交換器性能など機器性能に基づいて定められ、冷凍サイクルの高圧(圧縮機3a吐出冷媒の圧力)が低下しすぎないようにするため、外気温度が高い場合は高風量、低い場合は低風量に設定される。
そして、この状態で運転した後、装置運転状態に応じて各アクチュエータを制御する。まず圧縮機3の回転数は、温度センサ15hで検知される水熱交換器9出口の冷水温度が前述した目標値となるように制御される。圧縮機3の回転数が高いと、冷媒流量が増加するため冷却能力が増加し、水がより冷却されるため、水熱交換器9出口の水温は低下する。逆に、圧縮機3の回転数が低いと、水熱交換器9出口の水温は上昇する。そこで水熱交換器9出口の水温と目標値とを比較し(S15)、水温が高い場合は圧縮機3の回転数を増加させ、水温が低い場合は圧縮機3の回転数を減少させる(S16)。
次に、空気熱交換器5の送風量であるが、この送風量は基本的に初期設定値にて運転を行う。ただし、運転条件によって、圧力センサ14bで検知される高圧(圧力)が所定範囲内からはずれるような場合には、高圧が所定範囲内であるかどうかを確認し(S17)、高圧が過度に上昇した場合は圧縮機3a保護のために風量を増加させる制御を行う。また、高圧が過度に低下した場合は、主膨張弁8の開度制御を行っても低圧(圧縮機3a吸入冷媒の圧力)が大きく低下し、冷媒蒸発温度が氷点下以下に低下し、冷水が凍結する恐れが出てくるので、高圧の過度の低下を抑制するように風量を減少させる制御を行う(S18)。
次に、主膨張弁8aの開度であるが、蒸発器となる水熱交換器9aの出口であり、圧縮機3a吸入の状態(図2点E)の冷媒過熱度SHを演算し(S19)、この冷媒過熱度SHが、予め設定された目標値、例えば1℃となるように制御される。ここで水熱交換器9aの出口であり圧縮機3a吸入の冷媒過熱度SHは、(温度センサ15a検知温度(圧縮機3の吸入温度))−(圧力センサ14aから換算される冷媒飽和温度)で演算される値を用いる。
主膨張弁8aの開度が小さくなると、水熱交換器9aを流れる冷媒流量は減少し、水熱交換器9a出口の冷媒過熱度SHは大きくなり、逆に主膨張弁8aの開度を大きくすると水熱交換器9aの冷媒過熱度SHは小さくなる。そこで、圧縮機3a吸入(水熱交換器9a出口)の冷媒過熱度SHと目標値とを比較し(S20)、冷媒過熱度SHが目標値より大きい場合には、主膨張弁8aの開度を大きく制御し、冷媒過熱度SHが目標値より小さい場合には主膨張弁8aの開度を小さく制御する(S21)。
次に、バイパス膨張弁10aの開度であるが、エコノマイザ回路上の過冷却熱交換器7a出口(図2点G)の冷媒過熱度SHecoを演算し(S22)、この冷媒過熱度SHecoが、予め設定された目標値、例えば2℃となるように制御される。ここで過冷却熱交換器7出口の冷媒過熱度SHecoは、温度センサ15f検知温度−温度センサ15e検知温度で演算される値を用いる。
バイパス膨張弁10aの開度が小さくなると、エコノマイザ回路を流れる冷媒流量は減少し、エコノマイザ回路上の過冷却熱交換器7a出口の冷媒過熱度SHは大きくなり、逆にバイパス膨張弁10aの開度を大きくすると過冷却熱交換器7a出口の冷媒過熱度SHは小さくなる。そこで、過冷却熱交換器7a出口の冷媒過熱度SHecoと目標値とを比較し(S23)、冷媒過熱度SHecoが目標値より大きい場合には、バイパス膨張弁10aの開度を大きく制御し、冷媒過熱度SHecoが目標値より小さい場合にはバイパス膨張弁10aの開度を小さく制御する(S24)。
次に、負荷状況に応じて、負荷側装置の運転状況が変化し、冷水を送水するポンプ12の流量が変更される(S25)が、ポンプ流量が増減した場合の制御動作について説明する。まず、冷凍サイクル2a、2bともに動作している状況でポンプ流量、すなわち冷水流量が増加した場合の運転動作について説明する。この場合、冷水流量が増加する一方で、冷凍サイクル2a、2bの蒸発器熱交換量、即ち冷却能力は変化しないので、水熱交換器9出入口の冷水温度差が減少し、水熱交換器9出口の冷水温度が上昇する。そこで冷水出口温度が目標値となるように、各冷凍サイクル2の圧縮機3の回転数が増速される運転が行われる。
逆に冷水流量が減少した場合の運転動作は以下のようになる。この場合、冷水流量が減少する一方で、冷凍サイクル2a、2bの蒸発器熱交換量、即ち冷却能力は変化しないので、水熱交換器9出入口の冷水温度差が増加し、水熱交換器9出口の冷水温度が低下する。そこで冷水出口温度が目標値となるように、各冷凍サイクル2の圧縮機3の回転数が減速される運転が行われる。
圧縮機3の回転数については、動作下限値があるので、冷水流量が、ある程度以上低下し、圧縮機3回転数が動作下限値に近づき、所定の回転数以下となったら、一方の冷凍サイクル2の圧縮機を停止し、運転させる冷凍サイクル2の数を減少させる。例えば、圧縮機3の下限回転数が20rpsの場合には、圧縮機3の回転数が30rpsとなった段階で、圧縮機の停止動作を行わせる。このとき、冷水上流流路に接続される冷凍サイクルから順に停止動作を行う。冷凍サイクル2の停止に伴って、水熱交換器9出口の冷水温度目標値が再設定される。この実施の形態では、冷凍サイクルの数が2から1に減少され、冷水流路の最も下流側に位置する冷凍サイクル2aのみの運転となるので、この場合の冷水出口温度目標値は、冷凍サイクルの数によらず7℃のままとなる。そして上述した冷凍サイクルの運転制御が実施される。
冷凍サイクル2aのみ動作している状況で冷水流量が減少した場合には、冷水出口温度が目標値となるように、冷凍サイクル2aの圧縮機3aの回転数が減速される運転が行われる。さらに冷水流量が減少し、圧縮機3の回転数が下限値となるまで制御された場合には、下限回転数での運転を継続する。さらに冷水流量が減少し、冷水出口温度が目標値より所定温度、例えば1℃以上下回り、6℃以下となった場合には、冷凍サイクル2aの圧縮機3も停止動作を行い、熱源機1の運転を停止する。
熱源機1が停止している状況で、温度センサ15hで検知される熱源機1の冷水出口温度が負荷側への供給目標温度より、所定温度、例えば1℃以上上回り、8℃以上となった場合には、熱源機1の運転を行う。そして、冷水流路の下流に配置される冷凍サイクル2aの圧縮機3aを起動し、水熱交換器9a出口の冷水温度が目標値となるように圧縮機3aの回転数制御を行う。
冷凍サイクル2aのみ動作している状況で冷水流量が増加した場合には、冷水出口温度が目標値となるように、冷凍サイクル2aの圧縮機3aの回転数が増速される運転が行われる。さらに冷水流量が増加し、圧縮機3aの回転数が所定値以上となるまで制御された場合には、冷水流路の上流に配置される冷凍サイクル2bの圧縮機3bを起動する。冷凍サイクル2bの運転に伴って、水熱交換器9出口の冷水温度目標値が再設定され、各冷凍サイクルで水熱交換器9出口の冷水温度が目標値となるように圧縮機の回転数制御が実施される。
次に、この冷凍空調装置での加熱運転の制御動作について図4に基づいて説明する。まず冷凍空調装置使用者などにより、負荷側装置に供給される温水の目標温度が設定される(S31)。また負荷側装置の運転状況に応じて温水を送水するポンプ12の流量が変更される(S32)。
熱源機1内では、温度センサ15oで検知される温水の流入温度、および負荷側装置に供給する温水の目標温度に応じて、冷凍サイクル2a、2bの水熱交換器9出口の温水温度目標値が設定される(S33)。この温水温度目標値は、水熱交換器9出入口の温水温度差が冷凍サイクル2a、2bの熱交換器の定格熱交換量を示す容量、もしくは水熱交換器9の伝熱面積など定格熱交換量を決定する値に対して、比例するように決定される。例えば、熱源機1に流入する温水温度が40℃、供給される温水の目標温度が45℃、冷凍サイクル2a、2bの水熱交換器9の定格容量が等しい場合には、熱源機1全体の温水温度差が45−40=5℃となるため、冷凍サイクル2a、2bともに温水温度差が5×1/2=2.5℃となるように設定される。従って、水熱交換器9が温水流路上流に配置される冷凍サイクル2bでは、水熱交換器9b出口の温水温度目標値は40+2.5=42.5℃に設定される、水熱交換器9が温水流路下流に配置される冷凍サイクル2aでは、水熱交換器9a出口の温水温度目標値は42.5+2.5=45℃に設定され、これは当然負荷側装置に供給する温水温度の目標値と等しくなる。
次に、各冷凍サイクル2a、2bの運転制御について説明する。ここで制御方法は、各冷凍サイクル共通となるので、冷凍サイクル2aについて説明する。
まず、圧縮機3aの回転数、空気熱交換器5aの送風量、主膨張弁8aの開度、バイパス膨張弁10aの開度を初期値に設定して運転を行う(S34)。ここで空気熱交換器5送風量の初期設定値は温度センサ15sで検知される外気温度およびあらかじめ計測制御装置13に記憶された所定値とを比較して決定され、外気温度が低い場合は高風量、高い場合は低風量に設定される。
そして、この状態で運転した後、装置運転状態に応じて各アクチュエータを制御する。まず圧縮機3の回転数は、温度センサ15hで検知される水熱交換器9出口の温水温度が予め設定された目標値となるように制御される。圧縮機3の回転数が高いと、冷媒流量が増加するため装置の冷却能力が増加し、水がより加熱されるため、水熱交換器9出口の水温は上昇する。逆に、圧縮機3の回転数が低いと、水熱交換器9出口の水温は低下する。そこで水熱交換器9出口の水温と目標値とを比較し(S35)、水温が低い場合は圧縮機3の回転数を増加させ、水温が高い場合は圧縮機3の回転数を減少させる(S36)。
次に、空気熱交換器5の送風量であるが、この送風量は基本的に初期設定値にて運転を行う。状況として高外気温(たとえば15℃くらい)に、加熱運転を行った場合に、圧縮機の負荷が過大となるのを防止するため風量を低下させ、冷凍サイクルの低圧を低下し、圧縮機の搬送流量を低下することで、圧縮機駆動の負荷を低減する場合があるが、この実施の形態が対象とする冷凍空調装置が用いられるビル用空調などの場合、高外気温時に暖房負荷が発生することはほとんどないため、上記の通り初期設定値にて運転を行う。
次に、主膨張弁8aの開度であるが、蒸発器となる空気熱交換器5aの出口であり、圧縮機3a吸入の状態(図2点E)の冷媒過熱度SHが、予め設定された目標値、例えば1℃となるように制御される。ここで空気熱交換器5aの出口であり圧縮機3a吸入の冷媒過熱度SHは、(温度センサ15a検知温度(圧縮機3の吸入温度))−(圧力センサ14aから換算される冷媒飽和温度)で演算される値を用いる(S37)。
主膨張弁8aの開度が小さくなると、空気熱交換器5aを流れる冷媒流量は減少し、空気熱交換器5a出口の冷媒過熱度SHは大きくなり、逆に主膨張弁8aの開度を大きくすると空気熱交換器5aの冷媒過熱度SHは小さくなる。そこで、圧縮機3a吸入(空気熱交換器5a出口)の冷媒過熱度SHと目標値とを比較し(S38)、冷媒過熱度SHが目標値より大きい場合には、主膨張弁8aの開度を大きく制御し、冷媒過熱度SHが目標値より小さい場合には主膨張弁8aの開度を小さく制御する(S39)。
次に、バイパス膨張弁10aの開度であるが、冷却運転と同様に行い、過冷却熱交換器7a出口の冷媒過熱度SHecoを演算し(S40)、この冷媒過熱度SHecoと目標値とを比較し(S41)、冷媒過熱度SHecoが目標値より大きい場合には、バイパス膨張弁10aの開度を大きく制御し、冷媒過熱度SHecoが目標値より小さい場合にはバイパス膨張弁10aの開度を小さく制御する(S42)。
なお、冷却・加熱運転におけるこれらの圧縮機3aの回転数制御や、主膨張弁8a、バイパス膨張弁10aの開度制御においては、目標値との偏差に基づくPID制御法などにより、制御量が決定される。
次に、負荷状況に応じて、負荷側装置の運転状況が変化し、温水を送水するポンプ12の流量が変更される(S43)が、ポンプ流量が増減した場合の制御動作について説明する。まず、冷凍サイクル2a、2bともに動作している状況でポンプ流量、すなわち温水流量が増加した場合の運転動作について説明する。この場合、温水流量が増加する一方で、冷凍サイクル2a、2bの凝縮器熱交換量、即ち加熱能力は変化しないので、水熱交換器9出入口の温水温度差が減少し、水熱交換器9出口の温水温度が低下する。そこで温水出口温度が目標値となるように、各冷凍サイクル2の圧縮機3の回転数が増速される運転が行われる。
逆に温水流量が減少した場合の運転動作は以下のようになる。この場合、温水流量が増加する一方で、冷凍サイクル2a、2bの凝縮器熱交換量、即ち加熱能力は変化しないので、水熱交換器9出入口の温水温度差が増加し、水熱交換器9出口の温水温度が上昇する。そこで温水出口温度が目標値となるように、各冷凍サイクル2の圧縮機3の回転数が減速される運転が行われる。
圧縮機3の回転数については、動作下限値があるので、温水流量が、ある程度以上低下し、圧縮機3回転数が動作下限値に近づき、所定の回転数以下となったら、一方の冷凍サイクル2の圧縮機を停止し、運転させる冷凍サイクル2の数を減少させる。例えば、圧縮機3の下限回転数が20rpsの場合には、圧縮機3の回転数が30rpsとなった段階で、圧縮機の停止動作を行わせる。このとき、温水上流流路に接続される冷凍サイクルから順に停止動作を行う。冷凍サイクル2の停止に伴って、水熱交換器9出口の温水温度目標値が再設定される。この実施の形態では、冷凍サイクルの数が2から1に減少され、温水流路の最も下流側に位置する冷凍サイクル2aのみの運転となるので、この場合の温水出口温度目標値は、冷凍サイクルの数によらず45℃のままとなる。そして上述した冷凍サイクルの運転制御が実施される。
冷凍サイクル2aのみ動作している状況で温水流量が減少した場合には、温水出口温度が目標値となるように、冷凍サイクル2aの圧縮機3aの回転数が減速される運転が行われる。さらに温水流量が減少し、圧縮機3aの回転数が下限値となるまで制御された場合には、下限回転数での運転を継続する。さらに温水流量が減少し、温水出口温度が目標値より所定温度、例えば1℃以上上回り、46℃以上となった場合には、冷凍サイクル2aの圧縮機3aも停止動作を行い、熱源機1の運転を停止する。
熱源機1が停止している状況で、温度センサ15hで検知される熱源機1の温水出口温度が負荷側への供給目標温度より、所定温度、例えば1℃以上下回り、44℃以下となった場合には、熱源機1の運転を行う。そして、温水流路の下流に配置される冷凍サイクル2aの圧縮機3aを起動し、水熱交換器9a出口の温水温度が目標値となるように圧縮機3aの回転数制御を行う。
冷凍サイクル2aのみ動作している状況で温水流量が増加した場合には、温水出口温度が目標値となるように、冷凍サイクル2aの圧縮機3aの回転数が増速される運転が行われる。さらに温水流量が増加し、圧縮機3aの回転数が所定値以上となるまで制御された場合には、温水流路の上流に配置される冷凍サイクル2bの圧縮機3bを起動する。冷凍サイクル2bの運転に伴って、水熱交換器9出口の温水温度目標値が再設定され、各冷凍サイクルで水熱交換器9出口の温水温度が目標値となるように圧縮機の回転数制御が実施される。
次に、水熱交換器9の冷温水出口温度の目標設定と熱源機1の運転効率に関する特性を図5に基づいて説明する。図5は、冷凍サイクル2a、冷凍サイクル2bが同じ仕様、構成であり、各冷凍サイクルの圧縮機容量が20HPである場合に、熱源機1にて冷水を冷却する運転を行ったときの特性を表した図である。図の横軸は熱源機1全体の冷却熱交換量に対する冷温水下流側の配置される冷凍サイクル2aの冷却熱交換量の比率である。冷凍サイクル2a、2bの熱交換量が等しい場合は、熱交換量比率は0.5となる。冷水の熱交換においては、比熱が温度によらずほぼ一定となるので、熱交換量は水熱交換器9出入口の冷水温度差に比例する。従って図5横軸の熱交換量比率は、熱交換量比率≒水熱交換器9bの出入口の冷水温度差/熱源機1出入口の冷水温度となる。水熱交換器9bの出入口の冷水温度差は、運転制御により、水熱交換器9b出口の冷水温度目標値によって規定されることになり、水熱交換器9b出口の冷水温度目標値が高く設定されると、冷凍サイクル2bの熱交換量は少なくなり、冷凍サイクル2aの冷却熱交換量の比率は高くなる。逆に、水熱交換器9b出口の冷水温度目標値が低く設定されると、冷凍サイクル2bの熱交換量は多くなり、冷凍サイクル2aの冷却熱交換量の比率は低くなる。
図5には、熱源機1のCOP(運転効率)比が示されており、COP最大の状態を100%として比率を示している。図5には他に冷凍サイクル2a、2bの圧縮機3の回転数を表している。図5に示されているとおり、熱源機1のCOP比はサイクル2aの熱交換量比率=0.5付近をピークとした曲線となる。サイクル2aの熱交換量比率が0.4〜0.6の範囲では、COP比は最大効率の−2%程度以内に収まっており、この範囲で運転するようにすれば熱源機1を高効率で運転できる。
上記範囲で運転すると高効率運転できる理由は以下のように説明できる。冷凍サイクルの効率(COP)は一般に高温熱源と低温熱源の温度差が大きくなる程低下し、冷媒の温度で換算すると凝縮温度が高ければ高いほど低下し、蒸発温度が低ければ低いほど低下する。冷凍サイクル2aの冷却熱交換量の比率が0.5から大きく外れる場合、例えば冷凍サイクル2aの冷却熱交換量の比率が0.33の場合、冷凍サイクル2bの冷却熱交換量の比率は0.67となり、冷凍サイクル2bは冷凍サイクル2aの2倍の熱交換量で運転されることになる。
このとき、冷凍サイクル2aにおいては、冷却熱交換量=蒸発器の熱交換量が少ないため、蒸発器で冷水と冷媒が熱交換するための温度差が少なくなり、冷媒の蒸発温度は冷水温度と近接する。一方冷凍サイクル2bにおいては、冷却熱交換量=蒸発器の熱交換量が多く、蒸発器で冷水と冷媒が熱交換するための温度差が多く必要となり、冷媒の蒸発温度は冷水温度から離れて低下する。
冷凍サイクル2aの冷却熱交換量の比率が0.5の場合の、冷水と冷媒蒸発温度との温度差をΔTとすると、冷凍サイクル2bの蒸発器では同一熱交換器仕様にて同一熱交換量で動作するので、冷凍サイクル2bの冷水と冷媒蒸発温度との温度差もΔTとなる。ここで前述したように、冷凍サイクル2aの冷却熱交換量の比率が0.33の場合を想定すると、冷凍サイクル2bの冷却熱交換量の比率は0.67となり、比率が0.5の場合に比べ熱交換量が33%増加し、冷凍サイクル2bは冷凍サイクル2aの2倍の熱交換量で運転されることになる。
各水熱交換器9での冷水と冷媒蒸発温度との温度差は、冷凍サイクル2aでは蒸発器での熱交換量が熱交換量の比率が0.5の場合の2/3倍となるので、2/3×ΔT、冷凍サイクル2bでは蒸発器での熱交換量が熱交換量の比率が0.5の4/3倍となり、4/3×ΔTとなる。ここで、各冷凍サイクルのCOPを評価すると、熱交換量の比率が0.33の場合、冷凍サイクル2aのCOPは熱交換量の比率が0.5の場合に比べ、温度差1/3×ΔT分蒸発温度が上昇した分高くなり、冷凍サイクル2bのCOPは熱交換量の比率が0.5の場合に比べ、温度差1/3×ΔT分蒸発温度が低下した分低くなる。蒸発温度の変化が同じであるのでサイクル2aのCOP上昇幅とサイクル2bのCOP低下幅はほぼ等しくなる。
冷凍サイクルの入力は入力=能力(蒸発器熱交換量)/COPで表されるので、COPが低ければ入力は増加するが、能力が増加するとそれに比例して入力も増加する。熱交換量の比率が0.33の場合、冷凍サイクル2bの能力は冷凍サイクル2aの2倍あるので、その分入力も増加する。従って、熱交換量の比率が0.33の場合の入力は、冷凍サイクル2aについては、(熱交換量の比率が0.5の場合の入力)×熱交換量比2/3×(1−温度差1/3×ΔT分のCOP上昇による効果)となり、冷凍サイクル2bについては、(熱交換量の比率が0.5の場合の入力)×熱交換量比4/3×(1+温度差1/3×ΔT分のCOP低下による効果)となる。熱源機1全体の入力は、両者を合算して、(熱交換量の比率が0.5の場合の入力)×2×(1+2/3×ΔT分のCOP低下による効果)となり、熱交換量の比率が0.5の場合の入力に比べ、熱源機1の入力は増加し、運転効率が低下する。
熱交換量の比率が0.5の場合の入力に比べ、熱交換量の比率が0.33の場合は、冷凍サイクル2bの方の水熱交換器9が偏って負荷を賄う運転を行うことになり、その分各冷凍サイクル2の運転がアンバランスになり、効率が低下する。本実施の形態のように、水熱交換器9出入口の冷水温度の温度差が同じ程度になるように運転を行うことで、各冷凍サイクルの水熱交換器9がその容量に応じて、同じように負荷を賄う運転となり、各冷凍サイクル2がバランスよく運転を行うことができ、高効率運転を実現できる。
また、本実施の形態では、水熱交換器9を冷水流路に対して直列に流すようにしたので高効率を得ることができる。図6は、水熱交換器9が1つしか無い場合(1蒸発回路)と、本実施の形態のように水熱交換器9が直列に配置されている場合(2蒸発回路)での、熱交換器での冷水と冷媒との温度差の特性を表した図である。図6では熱源機1の冷水入口温度が12℃、出口温度が7℃である場合の特性を表している。この場合の2蒸発回路での温度変化は図7のように表され、冷凍サイクル2bは蒸発温度ETbで運転され、冷凍サイクル2aは蒸発温度ETaで運転され、それぞれのサイクルの冷水と蒸発温度との温度差はΔTb、ΔTaとなる。上記実施の形態のように、各水熱交換器9での冷水出入口温度との温度差が同じく制御される場合にはΔTb=ΔTaとなる。このとき水熱交換器9aの冷水出入口温度は水熱交換器9bに比べ2.5℃低くなるので、冷凍サイクル2aの蒸発温度ETaは冷凍サイクル2bの蒸発温度ETbより2.5℃低くなる。
図6の横軸は冷媒蒸発温度を表し、2蒸発回路では各冷凍サイクル2の平均値、(ETa+ETb)/2を表す。図6のグラフ(a)の縦軸温度差は、冷水と冷媒蒸発温度との対数平均温度差を表し、1蒸発回路の場合は、温度差=(冷水入口温度12℃−冷水出口温度7℃)/ln{(冷水入口温度12℃−冷媒蒸発温度)/(冷水出口温度7℃−冷媒蒸発温度)}となる。2蒸発回路の場合は、冷凍サイクル2aの温度差=(冷水入口温度9.5℃−冷水出口温度7℃)/ln{(冷水入口温度9.5℃−冷媒蒸発温度ETa)/(冷水出口温度7℃−冷媒蒸発温度ETa)}と、冷凍サイクル2bの温度差=(冷水入口温度12℃−冷水出口温度9.5℃)/ln{(冷水入口温度12℃−冷媒蒸発温度ETb)/(冷水出口温度9.5℃−冷媒蒸発温度ETb)}との平均値を表す。
図6のグラフ(b)の縦軸温度差は、上記のようにして求めて2蒸発回路の温度差−冷水と冷媒蒸発温度との対数平均温度差を表す。
図6に示されるように、冷水と冷媒蒸発温度との温度差は1蒸発回路に比べ、2蒸発回路の方が大きく、その分2蒸発回路の熱交換量は大きくなる。同一熱交換量の運転を行う場合は、1蒸発回路よりも2蒸発回路の方が蒸発温度を高く運転でき、その分高効率運転を行うことができる。また、2蒸発回路の温度差増加幅は、冷媒蒸発温度が高くなるほど拡大する。従って冷媒蒸発温度が高く、冷水と冷媒蒸発温度との温度差が小さくなる運転条件、即ち冷却負荷の小さい運転条件では、2蒸発回路での運転効率がより高くなる。
図6に示される特性は以下の要因で生じる。一般に負荷側熱媒体は水など温度変化により顕熱で熱交換が行われる媒体が用いられる。このとき、冷水と冷媒との温度差が大きい場合、例えば水熱交換器9の冷水入口部では、熱交換量が大きくその分冷水の温度変化が大きくなる。一方、冷水と冷媒との温度差が小さい場合、例えば水熱交換器9の冷水出口部では、熱交換量が小さくその分冷水の温度変化が小さくなる。従って、水熱交換器9の内部では、冷水温度が高い領域よりも低い領域の方が一般に長くなる。この傾向は、高温部と低温部の温度差が大きいほど極端になり、冷水出口温度が冷媒蒸発温度と近接する運転条件となるほど、冷水温度が低い領域が長くなる。冷水温度が低い領域が長くなると、その分水熱交換器の伝熱性能に及ぼす影響が大きくなり、水熱交換器9の伝熱性能には、水熱交換器9の冷水出口温度と冷媒蒸発温度との温度差の影響を受けるようになる。
ここで、冷媒蒸発温度が6℃の場合を評価すると、1蒸発回路の場合は、冷水出口温度を7℃とすると温度差が水熱交換器9の出口温度と冷媒蒸発温度との温度差が1℃であり、この温度差に応じた熱交換がなされる。一方2蒸発回路の場合は、平均蒸発温度6℃で運転されるとすると、各冷凍サイクル2の蒸発温度差が2.5℃存在するので、冷凍サイクル2aの蒸発温度ETaは4.75℃、冷凍サイクル2bの蒸発温度は7.25℃となる。このとき、冷水出口温度との温度差は、冷凍サイクル2a、2bとも2.25℃となり、1蒸発回路よりも大きくなる。この分、水熱交換器9での冷水と冷媒との温度差が拡大する。
この2蒸発回路による温度差拡大効果は、冷媒蒸発温度と冷水出口温度が近接しやすい条件、すなわち低負荷の条件であるほど効果が大きくなる。1蒸発回路では、低負荷となると、冷水出口温度と冷媒蒸発温度が近接するので、温度差が減少しやすくなり、低負荷による水熱交換器の熱交換量が低減した場合でも蒸発温度の上昇幅が小さくなり、効率向上効果が得られにくい。一方、2蒸発回路の場合は、熱交換量が減少した場合に、冷水出口温度と冷媒蒸発温度が近接しないので、低負荷による水熱交換器の熱交換量が低減した場合に、それに応じて蒸発温度を高く運転でき、効率向上効果が得られる。なお、この運転を実現するには、インバータによる圧縮機の容量制御が必須であり、逆に、インバータ圧縮機による容量制御と2蒸発回路を組み合わせることによって、低負荷時の大幅な効率向上効果が得られることになる。
また冷媒蒸発温度と冷水出口温度が近接しやすい他の条件として、いわゆる冷水の大温度差条件でも本実施の形態の効果は向上する。冷水が大温度差である場合、例えば冷水入口温度が17℃、出口温度が7℃で運転される場合を想定すると、前述の例にあげた冷水入口温度が12℃の場合に比べて、冷媒と冷水の平均的な温度差は大きくなるので水熱交換器9で同一熱交換量とした場合の冷媒蒸発温度はより高くなり、冷媒蒸発温度が冷水出口温度である7℃に近接するため、温度差向上に見合うほど蒸発温度は高く運転できない。従って1蒸発回路の場合には、大温度差条件で運転しても、大きな効率向上効果は得られない。
一方、2蒸発回路の場合は、大温度差となると、上流側の水熱交換器9bでの冷水出口温度が上昇し、上記のように冷水入口温度が12℃から17℃になったとすると、水熱交換器9bでの冷水出口温度の目標値を9.5℃から12℃に変更して運転制御が実施される。この制御により、冷凍サイクル2bの蒸発温度ETbは水熱交換器9bでの冷水出口温度目標値の上昇に応じて高く運転されるので、高効率運転が可能となる。大温度差になればなるほど冷凍サイクル2bの蒸発温度ETbは高く運転されることになり、高効率運転が可能となる。
なお、水熱交換器9の冷温水出口温度の目標設定については、負荷側熱媒体の物性に応じて補正を行ってもよい。負荷側熱媒体が水である場合は、温度による比熱の変化が小さいので、熱交換量は水熱交換器9での出入口温度差に比例するとできるが、ブラインなど他の媒体を用いる場合に、温度による比熱変化がある場合は、比熱変化に応じた補正を行ってもよい。
水熱交換器9が複数ある場合の運転方法として、重要なポイントは、各水熱交換器9で熱負荷をその容量に応じてバランスよく賄うことにあるので、比熱の大きい温度条件では、それに応じて水熱交換器9での温度差を小さく、逆に比熱の小さい温度では水熱交換器9での温度差を大きく補正する。例えば、負荷側熱媒体として、エチレングリコールを用いた場合には、低温であるほど比熱が小さくなる。従って冷却運転時には、より低温であり水熱交換器9aでの温度差が水熱交換器9bでの温度差よりも、比熱が小さい分、それに反比例して大きくなるように、水熱交換器9出口の負荷側熱媒体の目標温度を設定する。
なお、水熱交換器9の容量は、各冷凍サイクル2a、2bでアンバランスなく運転できるようにするため、基本的には圧縮機3の定格容量に応じた値に設計される。従って、冷温水出口温度の目標設定について、圧縮機3の定格容量を用いて、この容量に比例するように水熱交換器9での冷温水の温度差を設定し、冷温水出口温度の目標値を設定してもよい。この場合でも、水熱交換器9の容量に応じてバランスよく熱負荷を賄う運転を行うことができ、高効率の運転を実現できる。なお、一般に圧縮機3の定格容量は電動機出力が用いられるが、それ以外にも定格能力や、ストロークボリュームなど、定格容量に準じた値を適用してもよい。
また圧縮機3の容量制御方法として以下のような運転を行ってもよい。まず、熱源機1の冷温水出口温度に相当する、温度センサ15gで検知される値が負荷側に供給する温度となるように、各冷凍サイクルの圧縮機3の合計容量を制御する。そしてその合計容量を各冷凍サイクルの圧縮機容量に分配するが、ここで、この容量分配は圧縮機3の定格容量に比例して分配する。圧縮機3a、3bが同容量の圧縮機の場合には同じ容量で分配され、インバータ圧縮機の場合は各圧縮機の運転回転数が同じ回転数になるように制御される。従って、冷却運転の場合は冷水出口温度が目標値より高いと各圧縮機の運転回転数を同じく上昇し、冷水出口温度が目標値より低いと各圧縮機の運転回転数を同じく低下させる運転を行い、加熱運転の場合は温水出口温度が目標値より低いと各圧縮機の運転回転数を同じく上昇し、温水出口温度が目標値より低いと各圧縮機の運転回転数を同じく低下させる運転を行う。
この運転の場合においても、圧縮機3の定格容量に応じて水熱交換器9の容量が設定されている場合には、各水熱交換器9において熱負荷を水熱交換器9の容量比に応じて賄うことになり、各冷凍サイクル2がバランスよく運転を行うことができ、高効率運転を実現できる。図5には、各冷凍サイクルの圧縮機回転数も示しているが、圧縮機回転数が等しくなる運転条件では、ほぼ最高効率に近い運転が実現されることが示されている。
なお、図5に示されているように、各冷凍サイクルが同仕様かつ、圧縮機回転数が等しい運転条件であっても、各冷凍サイクルの水熱交換器9の熱交換量は等しくならず、水流路下流である冷凍サイクル2aの方の熱交換量が若干少ない運転となる。これは各冷凍サイクル2の運転蒸発温度の違いに起因し、圧縮機3は同一回転数で駆動されても、冷水温度が低いため運転蒸発温度が低くなる冷凍サイクル2aでは、その分圧縮機流量が低下し、水熱交換器9aでの熱交換量が低下する。従ってこの運転では、完全に各冷凍サイクルがバランスよく運転されているわけでなく、冷凍サイクル2bで賄われる熱負荷が若干多い運転となる。従って、この運転よりも冷凍サイクル2aで多く負荷が賄われるように、冷凍サイクル2aの圧縮機容量を高く設定するとより高効率に運転できる。
また前述した制御で、各水熱交換器9での冷水温度差が、水熱交換器9での容量に応じた値となるように制御を行った場合には、水熱交換器9で賄う熱負荷はバランスよく運転される一方で、熱源側熱交換器である空気熱交換器5のバランスが若干崩れた運転となる。空気熱交換器5も、水熱交換器9と同様に一般に圧縮機3の定格容量に応じて設計されることになり、各冷凍サイクル2の水熱交換器9、および圧縮機3が同仕様である場合は、一般に空気熱交換器5も同仕様となる。この運転では、水熱交換器9の熱負荷はバランスよく運転されるが、冷凍サイクル2aは、冷凍サイクル2bに比べ低蒸発温度で運転されるので、その分運転効率COPが悪化し、圧縮機3の入力がより多くなる。空気熱交換器5での熱交換量は水熱交換器熱交換量+圧縮機入力となるので、この運転では、冷凍サイクル2aの空気熱交換器5の熱交換量が多い運転となり、その分、冷凍サイクル2aで賄われる熱負荷が多い運転となる。従って、この運転よりも冷凍サイクル2bで多く負荷が賄われるように、冷凍サイクル2bの水熱交換器9での冷水温度差を大きく設定し、冷凍サイクル2bの圧縮機容量が高くなるように運転するとより高効率に運転できる。
以上の特性から、冷凍サイクル2aの圧縮機容量が冷凍サイクル2bよりも高くなるように運転するとともに、冷凍サイクル2bの水熱交換器9bでの冷水温度差が冷凍サイクル2aよりも大きくなるように運転することで、前述した制御よりも、さらに高効率の運転を行うことができる。図5の特性においても、最大効率となる運転条件は、この条件にあてはまる領域にあることが示されている。
以上の水熱交換器9を冷水流路に直列に接続する効果は、冷却運転を例に説明したが、加熱運転時にも同様の効果が得られ、各冷凍サイクルの水熱交換器9が同じように加熱運転時の負荷を賄う運転を実施することで、各冷凍サイクル2がバランスよく運転を行うことができ、高効率運転を実現できる。また、低負荷運転時の効率向上効果も大きくなる。
また水熱交換器9を水流路に直列に接続する場合、下流側の水熱交換器9aについては、冷却運転の場合はより、低温の冷水が流入し、加熱運転の場合はより高温の温水が流入する。従って加熱運転時に冷媒の水熱交換器9出口温度を低く運転することができない運転となる。加熱運転の場合、水熱交換器9では冷媒側の熱は潜熱と併せて、冷媒のガス側、液側の顕熱を使って熱交換することになるが、下流側の冷凍サイクル2aについては、水熱交換器9が1つである場合に比べ、冷媒温度を十分に冷却できないことになり、冷媒の液側顕熱を活用できず、冷凍サイクルとしての効率が低下しやすい傾向となる。
そこで、本実施の形態では、そのデメリットを補うべく、エコノマイザ回路を搭載し、冷媒の液側顕熱を活用できる構成としている。即ち、過冷却熱交換器7で熱交換することで、高圧の液冷媒の顕熱を使って中間圧の冷媒を加熱し、この冷媒を圧縮し圧縮機3で圧縮し、水熱交換器9に流入させることで、間接的に冷媒の液側顕熱を水熱交換器9で温水を加熱するための熱として用いている。これにより、水熱交換器9を水流路に直列に接続する場合であっても、加熱運転時に冷媒の液側顕熱を十分に活用でき、より高効率の運転を行うことができる。
また、本実施の形態では、水熱交換器9の流路は、冷却運転時は冷媒と冷水が並行して流れる並行流となり、加熱運転時は冷媒と温水が対向して流れる対向流となるように流路構成される。一般に冷温水を供給するチラーでは、冷却運転時に水熱交換器9で冷媒が冷水と対向し流れる対向流の構成とされることが多い。通常1蒸発回路である従来例では、冷却運転の効率向上をねらったときに、大温度差条件や低負荷条件などで、冷媒温度と冷水出口温度が近接する運転において、対向流構成としておくと、前述したような蒸発温度上昇させる効果は望みにくいが、冷媒出口側の蒸発温度と冷水入口温度との温度差が大きいので、この温度差を活かして、水熱交換器9の冷媒出口部で過熱度SHを大きくとることができ、それによる効率向上が実現できていた。
本実施の形態のように、2つの水熱交換器9a、9bを直列に配置した構成とする場合、冷却運転において、大温度差条件や低負荷条件となっても、冷水冷媒出口側の蒸発温度と冷水入口温度との温度差は小さいため、水熱交換器9の冷媒出口部で過熱度SHを大きくとる運転は実施できない。従って冷却運転では、冷媒温度がほぼ一定の蒸発温度である状況で水と熱交換することになるので、水熱交換器9の流路が対向流であっても並行流であってもほぼ同程度の熱交換性能となる。
加熱運転においても、水熱交換器9での冷媒出口側の凝縮温度と温水入口温度との温度差は小さく、冷媒出口部で過冷却度SCを大きくとれない運転となる。しかし、加熱運転では冷媒入口が過熱ガスであり、冷媒凝縮温度よりも高温である。この高温部の冷媒で、低温である水熱交換器9入口部の温水を加熱するよりは、高温である水熱交換器9出口部の温水を加熱する方が、熱ロスを少なく高温冷媒を活用でき、水熱交換器の性能を高くできる。そこで、本実施の形態のように2つの水熱交換器9a,9bを直列に配置した構成とする場合、加熱運転時は冷媒と温水が対向して流れる対向流となるように流路構成とすることで、高効率運転を実現できる。
また、本実施の形態では、動作する冷凍サイクルの数が減少する場合には、流路下流側の冷凍サイクル2aが動作するように制御を行う。停止した冷凍サイクル2bでは、圧縮機3bの停止により冷媒が流れないため、水熱交換器9bでの熱交換量は減少するが、それでも水熱交換器9bを冷温水が流れることにより、いくらかの熱交換がなされる。このとき冷媒温度は、熱源機1周囲の温度とおおよそ等しくなるので、一般に冷却運転時に冷媒は加熱され、温水運転時には冷却され、若干の熱ロスが生じる。このとき、停止する冷凍サイクル2が冷温水流路下流にあると、運転している冷凍サイクル2の冷温水出口温度は、熱ロスに見合った分、冷却運転時は低下、加熱運転時は上昇させる運転となる。冷凍サイクル2の運転数が減少する場合、基本的に負荷が少ない運転となるので、冷温水出口温度と冷媒蒸発温度、冷媒凝縮温度が近接する運転となる。従って、熱ロスにより冷温水出口温度目標を変動しなければならない運転となると、その変動分、冷媒蒸発温度を低く、冷媒凝縮温度を高く運転しなければならず、運転効率が低下する。
一方、本実施の形態のように、停止する冷凍サイクル2が冷温水流路上流にあると、熱ロス分だけ、運転している冷凍サイクル2に流入する冷温水入口温度が変動するが、冷温水出口温度は熱源機1から負荷側に供給する温度となる。従って、熱ロスが生じても、冷温水出口温度目標はそのまま運転でき、停止する冷凍サイクル2が冷温水流路下流にある場合の熱ロスによる運転効率低下が生じず、高効率の運転を実現できる。
なお、冷凍サイクル2の動作停止時の熱ロスを抑制するための対策として、水熱交換器9での冷温水の流路をバイパスする流路を設け、冷凍サイクル2停止時は、冷温水がバイパス流路を流れる構成としてもよいし、冷凍サイクル2停止時に水熱交換器9を冷媒が流れないように、水熱交換器9前後を逆止弁などの弁類で閉止する機構を設けてもよい。これらの対策により熱ロスを抑制でき、高効率の運転を実現できる。
なお、熱源機1に搭載される冷凍サイクル2の数は2個に限定されるものではなく、3個以上搭載してもよい。この場合も各冷凍サイクルの水熱交換器9を負荷側熱媒体に対して直列となるように構成するとともに、冷温水の温度差が搭載される水熱交換器9の容量、もしくは圧縮機3の容量に比例するように運転することで高効率の運転を実現できる。
なお、圧縮機3の容量制御方法については、インバータによる回転数制御だけでなく、他の手法を用いてもよい。例えば機械的に圧縮機3のストロークボリュームを変更する容量制御方法を用いてもよいし、圧縮機3を複数台設け、その運転台数を変更することで圧縮機3の容量制御を行ってもよい。この場合も、インバータで制御する場合と同様の運転制御を行うことで、各冷凍サイクル2の運転をバランスよく実施でき、高効率の運転を実現できる。
また水熱交換器9の構成については、プレート熱交換器に限定するものでは無く、他の構成、例えばシェルチューブ型や、二重管式などの構成を用いてもよい。空気熱交換器5についても、プレートフィン熱交換器に限定されるものでなく、コルゲートフィンを用いるなど他の形式を用いてもよい。また熱源側熱交換器としては空気を媒体とするものだけでなく、水など他の媒体を用いるものを適用しても同様の効果を実現できる。
また負荷側熱媒体としては、水やブラインだけでなく、顕熱で熱を授受する媒体であれば他の媒体でも同様の効果を得ることができる。例えば空気を用いる場合であっても、各負荷側熱交換器を風路構成内に直列に配置することで、高効率運転を実現できる。
冷媒としては、R410Aを例に説明したが、他の冷媒、例えばR407C、R404A、NH3、CO2などであっても同様の効果を得ることができる。本実施の形態では、潜熱で温度を伝えるとともに、その間温度一定である媒体を適用する場合の高効率化手段として有効である。R407Cなど潜熱で温度を伝える場合に温度変化する媒体を適用すると、冷媒温度と冷水出口温度が近接する状況となりにくく、効果は小さくなるが、潜熱で温度を伝える場合に温度変化しない媒体で、特に高圧冷媒であり圧力損失による温度変化が小さいR410AやCO2を適用した場合には、冷媒温度と冷水出口温度が近接する状況となりやすく、本実施の形態を適用した場合の効果が高まる。
実施の形態2.
以下この発明の実施の形態2を図8に示す。図8は実施の形態2における熱源機1の冷媒回路構成を表したものであり、冷凍サイクル2bにおいて、圧縮機3bと並列に圧縮機3cが設けられている。圧縮機3cは、圧縮機3a、3bと同仕様のインバータ圧縮機である。圧縮機3cが設けてある冷凍サイクル2bは、冷凍サイクル2aの2倍の圧縮機容量となり、それに応じて空気熱交換器5b、水熱交換器9bの伝熱面積や、空気熱交換器5bのファン風量は冷凍サイクル2aの2倍に設定される。これ以外の構成については、実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
実施の形態2における装置の動作、および容量制御方法も実施の形態1と同様に実施される。水熱交換器9での冷温水出口温度の目標設定については、水熱交換器9bの容量が水熱交換器9aの2倍であること、または冷凍サイクル2bに搭載されている圧縮機3の容量が冷凍サイクル2aに搭載されている容量の2倍であることから、冷凍サイクル2bの冷温水温度差が冷凍サイクル2aの冷温水温度差の2倍となるように設定される。
例えば、冷却運転においては、熱源機1に流入する冷水温度が12℃、供給される冷水の目標温度が7℃の場合には、熱源機1全体の冷水温度差が12−7=5℃となるため、冷凍サイクル2aの冷水温度差は5×1/3=1.67℃、冷凍サイクル2bの冷水温度差が5×2/3=3.33℃となるように設定される。従って、水熱交換器9が冷水流路上流に配置される冷凍サイクル2bでは、水熱交換器9b出口の冷水温度目標値は12−3.33=8.67℃に設定される、水熱交換器9が冷水流路下流に配置される冷凍サイクル2aでは、水熱交換器9a出口の冷水温度目標値は8.67−1.67=7℃に設定され、これは当然負荷側装置に供給する冷水温度の目標値と等しくなる。
加熱運転においては、例えば、熱源機1に流入する温水温度が40℃、供給される温水の目標温度が45℃の場合には、熱源機1全体の温水温度差が45−40=5℃となるため、冷凍サイクル2aの温水温度差は1.67℃、冷凍サイクル2bは3.33℃となるように設定され、水熱交換器9が温水流路上流に配置される冷凍サイクル2bでは、水熱交換器9b出口の温水温度目標値は40+3.33=43.33℃に設定される。水熱交換器9が温水流路下流に配置される冷凍サイクル2aでは、水熱交換器9a出口の温水温度目標値は43.33+1.67=45℃に設定され、これは当然負荷側装置に供給する温水温度の目標値と等しくなる。
このように冷温水の出口温度目標を設定することで、各冷凍サイクルの水熱交換器9が水熱交換器9の容量に応じて、同じように負荷を賄う運転となり、各冷凍サイクル2a、2bをバランスよく運転を行うことができ、高効率運転を実現できる。
また、各冷凍サイクルの冷温水出口温度目標を設定する代わりに、各圧縮機3の回転数が同一となるように運転制御を行ってもよい。この場合、圧縮機3の定格容量に応じて水熱交換器9の容量が設定されているので、各水熱交換器9において熱負荷を水熱交換器9の容量比に応じて賄うことになり、各冷凍サイクル2がバランスよく運転を行うことができ、高効率運転を実現できる。
なお、本実施の形態では、冷凍サイクル2に搭載される圧縮機3の容量が大きい冷凍サイクル2bを冷温水流路の上流側に配置している。冷凍サイクル2a、2bの運転を比較すると、冷却運転の場合、流入する冷水温度は冷凍サイクル2bの方が高く、加熱運転の場合、流入する温水温度は冷凍サイクル2bの方が低くなり、その分冷凍サイクル2bの運転効率が高くなる。熱源機1に搭載される圧縮機3の容量を大きくする場合、運転効率の低い冷凍サイクル2の容量を増加させるよりは、運転効率の高い冷凍サイクル2の容量を増加させる方が、熱源機1全体としての入力増加が少なく、高効率となる。従って、本実施の形態のように、各冷凍サイクル2に搭載される圧縮機3の容量が異なる場合には、容量の大きい圧縮機3が搭載される冷凍サイクル2を冷温水流路の上流側に配置することで、より高効率の装置とすることができる。
実施の形態3.
以下この発明の実施の形態3を図9に示す。実施の形態3では実施の形態1におけるエコノマイザ回路の変わりに、過冷却熱交換器7にて圧縮機3の吸入冷媒と高圧の液冷媒を熱交換する構成としている。図3の他の構成、および運転制御については実施の形態1と同様である。
本実施の形態では、高圧液冷媒の顕熱を使って圧縮機3の吸入冷媒を加熱し、この冷媒を圧縮機3で圧縮し、水熱交換器9に流入させることで、間接的に冷媒の液側顕熱を水熱交換器9で温水を加熱するための熱として用いている。これにより、水熱交換器9を水流路に直列に接続する場合であっても、加熱運転時に冷媒の液側顕熱を十分に活用でき、より高効率の運転を行うことができる。
実施の形態4.
以下この発明の実施の形態4を説明する。実施の形態4では実施の形態1と同じ図1の回路構成とする。加熱運転時は空気条件によっては、空気熱交換器5に着霜が生じるので、デフロスト運転を実施する必要がある。一般にデフロスト運転を実施するときは加熱運転を停止し、負荷側への熱供給を停止して、デフロスト運転を実施し、終了後加熱運転を再開する。従って、デフロスト運転時は、熱負荷を賄えず、空調運転の快適性上問題となる場合があった。
本実施の形態では、デフロスト運転は、冷却運転と同様の運転動作を行い、圧縮機3からの過熱ガスを空気熱交換器5に供給することでデフロストを行う。このデフロスト運転を冷凍サイクル2a、2b交互に行うことで、加熱運転を停止せず、加熱運転を行いながらデフロスト運転を実施する。すなわち、冷凍サイクル2aがデフロスト運転を行う場合は、冷凍サイクル2bの方を加熱運転とし、冷凍サイクル2bから供給される温水を熱源に冷凍サイクル2aのデフロスト運転を行う。逆に、冷凍サイクル2bのデフロスト運転を行う場合は、冷凍サイクル2aの方を加熱運転とし、負荷側から供給される温水を熱源に冷凍サイクル2bのデフロスト運転を行う。
デフロスト運転実施時は、空気熱交換器5のファン11を停止する必要がある。従って上記のような片側デフロスト運転を行う場合は、各冷凍サイクル2の空気熱交換器5が独立した構成であるとともに、ファン11も各冷凍サイクル個別に配置する。このような配置とすることで、デフロスト運転が必要となる運転条件であっても加熱運転を停止することなく、連続して実施でき、快適性の高い空調装置の運転を実現できる。