JP5131098B2 - ニッケル微粉及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ニッケル微粉の製造方法に関し、さらに詳しくは、電子部品用材料として好適な分散性が十分に確保されたニッケル微粉を高生産性かつ低コストで製造する方法に関する。
従来から、ニッケル粉末は、厚膜導電体を作製するための導電ペーストの材料として使用されている。前記厚膜導電体は、電気回路の形成、積層セラミックコンデンサ及び多層セラミック基板等の積層セラミック部品の電極等に用いられている。特に、積層セラミックコンデンサの性能を向上させるためには、積層数を増加させることが有効な手段であるが、積層数の増加は、電子部品の大型化に繋がるので、これを防ぐためには一層あたりの厚みを薄く(薄層化)する必要がある。このため、1.0μm以下の粒子径を有するニッケル微粉は、積層セラミックコンデンサの電極等、電子部品の導電体形成用材料として広く使用されている。
このように、積層セラミックコンデンサの電極層を薄層化する場合、内部電極形成材料として用いられるニッケル微粉には、粒子径が小さいこととともに、高い分散性が要求される。例えば、内部電極形成材料として、多数の粒子が凝集したニッケル微粉を使用した場合には、形成される電極の厚みのばらつきが生じ、電極間の短絡や絶縁抵抗の低下などの原因となる。したがって、電子部品材料用のニッケル微粉の製造に関しては、得られるニッケル微粉の分散性の確保が重要な課題である。
ところで、電子部品用材料として一般的に用いられる粒子径が1.0μm以下のニッケル微粉は、気相還元法、湿式還元法、噴霧熱分解法、蒸発凝集法などの公知の技術により製造されている。しかしながら、電子部品の小型化や高効率化がさらに求められ、従来よりも粒子径が小さく、かつ分散性に優れた粒子への要求が大きくなり、それに伴い、それぞれの方法において、次の問題点が顕在化し、その改善が求められてきた。
すなわち、気相還元法、噴霧熱分解法、蒸発凝集法に代表される気相粒子合成法においては、分散性に優れた粒子を製造するためには、粒子の生成密度を小さく制御する必要があり、そのため、製造コストが大きくなってしまう問題がある。一方で、生産性を重視して生成密度を大きくした場合には、連結粒子や粗大粒子の発生が起こりやすく、これを分離するためには、分級操作を繰り返す必要が生じるため、やはりコストの増大という問題が発生する。
また、湿式還元法は、粒子径が微細で、分散性に優れた粒子の製造方法として適している。しかしながら、この方法では、多量の還元剤を用いるとともに、表面に分散剤などを吸着させる方法が一般的であり、不純物品位の増加、或いは製造時に発生する難処理廃液の処理コストが増大するなどの問題がある。
一方、複雑な設備を必要とせず、比較的低コストである製造方法としては、酸化物粉末還元法がある。この方法では、湿式中和法により、ニッケル塩を中和して水酸化ニッケルを晶析し、得られた水酸化ニッケルをそのまま用いるか、あるいは酸化焙焼により酸化物へ変換した後、水素などの還元ガス雰囲気下で還元処理することによりニッケル微粉を得る。例えば、この酸化物粉末還元法を利用して、粒径が1μm以下のニッケル微粉を得るため、40〜80℃の範囲で可能な限り一定温度に保持されたスラリーに、含ニッケル溶液を連続的に添加しつつ、かつ該スラリーpH値を8.0〜9.5の範囲で可能な限り一定に保持するようにしてアルカリ溶液を添加し、水酸化ニッケルを生成させ、次いで、該スラリーを濾過水洗し、乾燥して水酸化ニッケルを得て、その後、これを400〜500℃の温度で水素ガスを用いて加熱還元することによりニッケル粉を得る方法(例えば、特許文献1参照。)が提案されている。この方法によれば、還元時に生成したニッケル粉が凝集又は焼結し、分散性に優れたニッケル粉が得られないという問題がある。
この解決策として、還元時のニッケル粉の凝集又は焼結を防止して、分散性を改善するため、ニッケル化合物と焼結防止剤の混合物を還元する方法、例えば、ニッケル水溶液にアルカリ金属化合物を添加して中和反応に付し、ニッケル化合物と焼結防止剤を含むスラリーを形成するスラリー調整工程、前記スラリー調整工程で得られるスラリーを乾燥して、ニッケル化合物と焼結防止剤の混合物を生成する乾燥工程、前記乾燥工程で得られる混合物を水素還元に付し、金属ニッケル粒子を含む還元生成物を形成する還元工程、及び前記還元工程で得られる還元生成物を水溶液による浸出に付し、金属ニッケル粒子を得る湿式処理工程を含むニッケル粉末の製造方法(例えば、特許文献2参照)が開示されている。しかしながら、この方法で得られるニッケル粉末は、平均粒径が0.1μm未満と微細であるため、電子部品用材料としては用途が限定されるばかりか、多量に含まれる焼結防止剤を洗浄する必要があり、コスト的にも安価と言えないという問題があった。
また、金属化合物を還元して得られる金属粉の凝集又は焼結を防止する方法として、金属化合物を造粒して、その造粒物を還元する方法、例えば、鉄化合物粉末の造粒物をガス流通可能な構造の搬送容器に載置し、該搬送容器を加熱還元反応炉に搬送し、鉄化合物粉末の造粒物を、還元性ガスの存在下で加熱還元する金属磁性粉の製造方法(例えば、特許文献3参照。)が開示されている。この方法によれば、鉄化合物粉末の形骸粒子の形状変化及び形骸粒子間の焼結がない金属磁性粉末を、工業的に有利に製造することができるとされている。しかしながら、この方法をニッケル微粉に適用した場合、ニッケル酸化物粉末の還元時には、鉄化合物粉末の還元とは異なり粉末形状が大きく変化するので、前記鉄化合物粉末と同様の方法が適用できるかは不明である。
以上のように、従来の技術では、電子部品用材料として分散性が十分に確保されたニッケル微粉を均一に製造することと、高い生産性で製造することとを両立させることは困難であった。
特開2003−213310号公報(第1頁、第2頁) 特開2004−323884号公報(第1頁、第2頁) 特開平10−280013号公報(第1頁、第2頁)
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、電子部品用材料として好適な分散性が十分に確保されたニッケル微粉を高生産性かつ低コストで製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために、複雑な設備を必要とせず、コスト低減が期待できる酸化物粉末還元法に着目し、分散性が優れたニッケル微粉を均一に製造する方法について、鋭意研究を重ねた結果、特定の条件で、水酸化ニッケル粉を得る工程(A)と、酸化ニッケル粉を生成させる工程(B)と、酸化ニッケル粉の造粒体を得る工程(C)と、酸化ニッケル粉の造粒体を乾燥する工程(D)と、ニッケル微粉を得る工程(E)とを含む一連の工程によりニッケル微粉を得たところ、電子部品用材料として好適な分散性が十分に確保されたニッケル微粉を高生産性かつ低コストで製造することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、ニッケル塩水溶液をアルカリ水溶液で中和して水酸化ニッケル沈澱を生成させ、次いで水酸化ニッケル粉を得る工程(A)と、該水酸化ニッケルを非還元性雰囲気下に焙焼し、酸化ニッケル粉を生成させる工程(B)と、該酸化ニッケル粉を造粒し、酸化ニッケル粉の造粒体を得る工程(C)と、該酸化ニッケル粉の造粒体を乾燥し、含有水分率が5質量%以下である酸化ニッケル粉の造粒体を得る工程(D)と、乾燥後の酸化ニッケル粉の造粒体を還元ガス雰囲気下に還元し、レーザー散乱法で測定した90%体積径(D90)が0.95μm以下であるニッケル微粉を得る工程(E)とを含むことを特徴とするニッケル微粉の製造方法が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第1の発明において、前記工程(C)において、酸化ニッケル粉を造粒する際、酸化ニッケル粉と溶媒を混合してスラリー化し、得られたスラリーを成型して造粒体を得ることを特徴とするニッケル微粉の製造方法が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第の発明において、前記溶媒は、純水であることを特徴とするニッケル微粉の製造方法が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第1〜いずれかの発明において、前記工程(C)において、造粒体の形状は、球形、回転楕円形又は円筒形のいずれかであることを特徴とするニッケル微粉の製造方法が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第4の発明において、前記造粒体の寸法は、工程(D)の乾燥後において、形状が球形の場合は、直径2〜10mm、回転楕円形の場合は、直径2〜10mmで回転軸長さ2〜50mm、及び円筒形の場合は、直径2〜10mmで長さ2〜50mmであることを特徴とするニッケル微粉の製造方法が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5いずれかの発明において、前記造粒体の見掛け密度は、工程(D)の乾燥後において、1〜3g/cmであることを特徴とするニッケル微粉の製造方法が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第1〜いずれかの発明において、前記工程(E)において、還元ガス雰囲気は、水素を含有したガスであることを特徴とするニッケル微粉の製造方法が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第1〜いずれかの発明において、前記工程(E)において、還元温度は、300〜500℃であることを特徴とするニッケル微粉の製造方法が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第1〜いずれかの発明において、前記工程(A)において、ニッケル塩水溶液は、還元時の融着抑制剤となる第2属元素を含有することを特徴とするニッケル微粉の製造方法が提供される。
本発明のニッケル微粉及びその製造方法は、電子部品用材料として好適な分散性が十分に確保されたニッケル微粉を高生産性かつ低コストで製造することができるので、その工業的価値は極めて大きい。
以下、本発明のニッケル微粉の製造方法を詳細に説明する。
本発明のニッケル微粉の製造方法は、ニッケル塩水溶液をアルカリ水溶液で中和して水酸化ニッケル沈澱を生成させ、次いで水酸化ニッケル粉を得る工程(A)と、該水酸化ニッケルを非還元性雰囲気下に焙焼し、酸化ニッケル粉を生成させる工程(B)と、該酸化ニッケル粉を造粒し、酸化ニッケル粉の造粒体を得る工程(C)と、該酸化ニッケル粉の造粒体を乾燥し、含有水分率が5質量%以下である酸化ニッケル粉の造粒体を得る工程(D)と、乾燥後の酸化ニッケル粉の造粒体を還元ガス雰囲気下に還元し、レーザー散乱法で測定した90%体積径(D90)が0.95μm以下であるニッケル微粉を得る工程(E)とを含むことを特徴とする。
本発明において、乾燥後の酸化ニッケル粉の造粒体を還元ガス雰囲気下に還元し、ニッケル微粉を得ることに重要な技術的意義を有する。すなわち、還元時に、発生する水蒸気が得られるニッケル微粉の分散性に大きく影響するので、水蒸気の発生量を抑制するとともに、発生した水蒸気を効率的に排出することが、分散性に優れたニッケル微粉を得るため効果的である。このため、水酸化ニッケルの酸化焙焼によって得られる酸化ニッケルを造粒体とし、造粒体を十分に乾燥させた後、還元処理することによって、均一に高い生産性で製造することができる。
以下に、本発明の製造方法の技術的特徴を、従来の酸化物粉末還元法と比較して説明する。
従来の酸化物粉末還元法は、湿式中和法により、ニッケル塩を中和して水酸化ニッケルを晶析し、得られた水酸化ニッケルをそのまま用いるか、或いは酸化焙焼により酸化物へ変換した後、水素などの還元ガス雰囲気下で還元処理することによりニッケル微粉を得る方法であり、還元時に生成したニッケル粉が凝集又は焼結し、分散性に優れたニッケル粉が得られないという問題点があった。
すなわち、一般に、還元ガス雰囲気下での還元処理において、水酸化ニッケル粉をそのまま用いた場合には、水酸化ニッケルは還元処理中に一旦酸化ニッケルに変換された後、ニッケル微粉が生成する。また、酸化物粉末へ変換した後、還元処理した場合は、酸化ニッケル粉から、直接、ニッケル微粉が生成する。いずれの場合においても、ニッケル微粉は、酸化ニッケル粉が還元されて生成するが、このとき、酸化ニッケル粉の形骸を残したまま金属化されてニッケル微粉が生成されることはない。すなわち、酸化ニッケル粉は、表面から還元されて微細なニッケル粒子の生成を伴いながらニッケル微粉となる。このため、このようにして得られたニッケル微粉では、生成されたニッケル微粉の表面の活性が高くなるので、形骸を残したまま金属化される他の金属粉の場合と比べると、粒子同士の凝集又は焼結が生じやすい状態となっている。さらに、還元時の雰囲気中に水蒸気が多く存在すると、還元ガスとの酸化ニッケル粉の接触の妨げとなるばかりか、水蒸気が持つ金属粒子を凝集又は焼結させる作用がより大きなものとなる。
したがって、還元時に、発生する水蒸気量を抑制するとともに、発生した水蒸気を系外に排出することが肝要である。このため、ガスの流通を改善し水蒸気を系外に排出するという観点から、ロータリーキルンなどを用いて酸化ニッケル粉を流動させながら還元する方法が有効と考えられるが、酸化ニッケル粉の還元の場合には、酸化ニッケル粉と還元で得られるニッケル微粉の流動性の違いが大きいため、ニッケル微粉が偏在化しやすく、凝集又は焼結したニッケル微粉になりやすいため適さない。このため、静置式で還元する方法において、ガスの流通を改善し水蒸気を系外に排出する手段が用いられる。
上記静置式で還元する方法において、水蒸気を排出させるためには、例えば、酸化ニッケル粉を耐熱容器に積載して還元する場合、積載する酸化ニッケル粉の層厚を薄くすることにより可能であるが、生産性が著しく低下してしまうという問題がある。
これに対して、本発明の方法のように、酸化ニッケル粉の造粒体を還元ガス雰囲気下に還元すれば、造粒体間の雰囲気ガスを流通させることにより、水蒸気の排出を十分に行なわせることができ、しかも還元処理できる酸化ニッケル粉の量を大幅に増加させることができる。さらに、本発明の方法のように、水酸化ニッケル粉を十分に酸化焙焼して完全に酸化ニッケル粉とするとともに還元前の造粒体を十分に乾燥して含有水分を除去しておくことにより、発生する水蒸気量自体を抑制することが不可欠である。すなわち、酸化ニッケル粉の還元の場合、前述したように、生成されるニッケル微粉の表面の活性が高く、粒子同士の凝集又は焼結が生じやすいので、造粒体にすることにより雰囲気ガス中の水蒸気の排出を容易にするのみでは不十分であり、発生する水蒸気量自体を抑制することが必要であるからである。
以上のように、本発明の製造方法では、水酸化ニッケル粉を非還元性雰囲気下に焙焼し、酸化ニッケル粉を生成させる工程(B)、酸化ニッケル粉の造粒体を得る工程(C)および酸化ニッケル粉の造粒体を乾燥する工程(D)を備えることにより、還元時に、発生する水蒸気量を抑制するとともに、発生した水蒸気を系外に排出することができるので、分散性に優れ、かつ均一なニッケル微粉を高い生産性で得ることができる。
以下に、本発明のニッケル微粉の製造方法を工程毎に説明する。
(1)工程(A)
上記工程(A)は、ニッケル塩水溶液をアルカリ水溶液で中和して水酸化ニッケル沈澱を生成させ、次いで水酸化ニッケル粉を得る工程である。
上記工程(A)で用いるニッケル塩水溶液としては、特に限定されるものではなく、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、ニッケル有機酸塩等の水溶性ニッケル塩を含む水溶液が用いられるが、この中で、特に廃水処理の容易さなど環境への影響とコスト面から、塩化ニッケル塩水溶液を用いることが好ましい。
上記ニッケル塩水溶液としては、必要により、公知技術の利用として、還元時の融着抑制剤となるマグネシウムなどの周期表第2属元素を含むことができる。これによって、より分散性に優れたニッケル微粉が得られる。すなわち、本発明と併用することでその効果を一層高めることができる。
上記工程(A)で用いる水酸化ニッケル沈殿を生成させる方法としては、特に限定されるものではなく、公知技術を用いることができるが、例えば、ニッケル塩水溶液とアルカリの中和反応において、pHを一定に保ちながら行うと、沈殿生成速度を一定に保つことができるので、均一な沈殿を得るため好ましい。
上記工程(A)で用いる中和する際のpHとしては、特に限定されるものではないが、7〜9.5が好ましく、8〜9がより好ましい。すなわち、pHが7未満であると、ニッケル塩の中和が十分に行われない場合がある。一方、pHが9.5を超えると、微細なコロイド状の水酸化ニッケル粒子を形成し、固液分離が非常に困難となるとともに、次工程の酸化焙焼で酸化ニッケル粉が凝集又は焼結し、最終的に得られるニッケル微粉の分散性が十分でない場合がある。
上記工程(A)で用いる中和する際の方法としては、特に限定されるものではなく、十分に攪拌されている反応槽内に、ニッケル塩水溶液とアルカリ水溶液をダブルジェット方式で添加しながら中和生成することが、均一な特性の水酸化ニッケルを得るため有効である。ここで、反応槽内にあらかじめ入れておく液としては、純水を用いることができるが、中和生成に一度使用したろ液をアルカリで所定のpHに調整した液を用いることがより好ましい。
上記工程(A)で用いるアルカリ水溶液としては、特に限定されるものではなく、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等の水酸化アルカリ金属の水溶液が好ましく、入手しやすさや価格などの点で水酸化ナトリウム水溶液がより好ましい。なお、アルカリ水溶液の代わりに、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ性を示す化合物を直接用いることができるが、沈殿が不均一になる場合がある。
上記工程(A)において、生成された水酸化ニッケル沈澱は、ろ過により脱水し、ろ過ケーキを得ることにより回収される。
ここで、ろ過操作としては、十分に残留塩素濃度を下げることができる手段を用いることが好ましい。このため、次の(イ)〜(ハ)の方法が用いられる。
(イ)数回のろ過・レパルプ洗浄を繰返す。
(ロ)残留塩素濃度を下げながらスラリー濃度を上げていく方法として、クロスフロー方式のろ過を用いる。
(ハ)得られた水酸化ニッケル沈澱のゲルを解消しながら残留塩素濃度を下げるように洗浄する方法として、硫酸などの酸を用いて洗浄する。
この中で、(ハ)の方法が、硫酸などの酸を用いることで、得られた水酸化ニッケル沈澱のゲルを解消しながら洗浄することにより、水酸化ニッケル沈澱に残留する塩素を効率よく低減させることができるので、より好ましい。例えば、この方法において、特に、生成した水酸化ニッケル沈澱を、濃度0.0004〜0.0015mol/Lの硫酸、又は硫酸塩水溶液で洗浄した後、さらに水洗することが好ましい。ここで、硫酸又は硫酸塩水溶液の濃度が0.0004mol/L未満では、洗浄効果が十分に得られず、該濃度が0.0015mol/Lを超えると、洗浄効果の改善が得られないばかりか、残留するイオウ濃度が高くなりすぎ、得られるニッケル微粉が電子材料として不適となる可能性がある。
(ハ)の方法において、洗浄時の液の温度としては、常温で可能であるが、洗浄効果を高めるため加熱してもよい。
(ハ)の方法において、水酸化ニッケル沈澱に対する硫酸又は硫酸塩水溶液の添加量としては、特に限定されるものではなく、残留塩素が十分に低減できる量とすればよいが、水酸化ニッケル沈澱を良好に分散させるためには、硫酸又は硫酸塩水溶液中の水酸化ニッケル粉の濃度を100g/L程度とすることが好ましい。また、洗浄時間としては、特に限定されるものではなく、洗浄条件により残留塩素濃度が十分に低減される洗浄時間とすればよい。また、洗浄に用いる装置としては、特に限定されるものではなく、水洗と同様の装置を用いることができる。
(ハ)の方法において、予め硫酸又は硫酸塩の濃度を調整した水溶液を準備し、撹拌しながら、この中に水酸化ニッケル沈澱を添加することが好ましい。なお、水酸化ニッケル沈澱の代わりに、一旦乾燥して得た水酸化ニッケル粉を添加することも行なえるが、含水したままのケーキ状のものを使用する方が、均一な処理を行いやすく洗浄の効率が良くなるばかりでなく、さらに工程の短縮にもなる。
ここで、均一な処理のためには、まず、水酸化ニッケルのろ過ケーキに、少量の水を加えてスラリー状にした後、添加後に所定の濃度となるように調整した硫酸又は硫酸塩水溶液を攪拌しながら、一度に添加することが好ましい。
上記水酸化ニッケルのケーキの水分含有率としては、特に限定されるものではなく、10〜40質量%であることが好ましく、30質量%程度にすることがより好ましい。すなわち、水分含有率が10質量%未満では、均一に水溶液中に分散しにくく洗浄の効率が悪くなることや、水分含有率を下げるためにより厳しい脱水処理が必要となるなどの制約がある。一方、水分含有率が40質量%を超えると、水酸化ニッケルのハンドリング性が悪く、均一な処理を妨げる場合があり、また、一定量の水酸化ニッケルを得るために必要な処理量が増加してしまう。
上記工程(A)において得られた洗浄後の水酸化ニッケル沈澱は、大気乾燥、真空乾燥などの公知方法により、乾燥させることができる。これにより、残留塩素濃度が十分に低下された水酸化ニッケル粉が得られる。
(2)工程(B)
上記工程(B)は、工程(A)で得られた水酸化ニッケル粉を非還元性雰囲気下に焙焼し、酸化ニッケル粉を生成させる工程である。
上記工程(B)において、焙焼する際の方法としては、特に限定されるものではなく、静置式焙焼炉、転動炉、バーナー炉、搬送式連続炉、流動焙焼炉等の一般的な焙焼炉を用いて、公知方法で行うことができるが、目的とする分散性に優れ、かつ均一なニッケル微粉を得るためには、この工程で、特性が均一で十分に酸化ニッケル形態に変換された酸化ニッケル粉を得ることが重要である。すなわち、酸化ニッケル形態への変換が不十分であると、水酸化ニッケルが残留し、後工程の還元処理の際に水酸化ニッケルの分解による水蒸気が発生し、ニッケル粒子間の凝集又は焼結が生じて、分散性に優れたニッケル微粉が得られない。
上記工程(B)で用いる焙焼の条件としては、特に限定されるものではなく、目的とするニッケル微粉の粒子径などの特性が得られるように、炉の特性に応じて任意に設定することができるが、均一な処理を行うためには、ガス気流中で行うことが好ましい。
上記焙焼の雰囲気としては、非還元性雰囲気下であれば問題なく、雰囲気ガスとして、不活性ガス又は酸化性ガスが用いられるが、この中で、空気を用いることがコスト及び取り扱いやすさの点で好ましい。
上記焙焼温度としては、特に限定されるものではなく、十分に酸化ニッケル形態に変換することができる温度が選ばれるが、一般的な静置式で焙焼する炉の場合には、350〜550℃とすることが好ましく、400〜500℃とすることがより好ましい。すなわち、焙焼温度が350℃未満では、酸化ニッケル形態への変換が十分でなく水酸化ニッケルが残留することがある。一方、焙焼温度が550℃を超えると、酸化ニッケル粉の凝集又は焼結が起こり、還元処理によって得られるニッケル微粉の粒子が粗大化するとともに、分散性が十分でない場合がある。
上記焙焼時間としては、特に限定されるものではなく、焙焼温度、処理量、用いる装置等を考慮して、水酸化ニッケル粉が十分に酸化ニッケル形態に変換され、かつ水酸化ニッケル粉の形骸を残すことができる条件が選ばれる。
(3)工程(C)
上記工程(C)は、工程(B)で得られた酸化ニッケル粉を造粒し、酸化ニッケル粉の造粒体を得る工程である。
ここで、酸化ニッケル粉を造粒することにより、後続の工程(E)での還元反応を均一に進行させることができ、得られるニッケル微粉の分散性を良好なものとするとともに、特性を均一にすることができる。しかも、造粒しない場合と比べて生産性を大幅に向上させることができる。すなわち、還元反応を均一に進行させるためには、水素などの還元ガスと原料の酸化ニッケル粉との接触界面を大きくすることにより、原料全体ができるだけ一様に反応を開始するように制御すること、及び反応により発生する水蒸気は、未反応原料の還元反応の妨げとなるとともに、生成したニッケル粒子の凝集又は焼結を促進するため、速やかに反応系から除去することの2要件を満足することが肝要であるが、この工程で酸化ニッケル粉を造粒することにより、還元処理する酸化ニッケル粉量を多くしても、マクロ的な接触界面の増加とガスの流通経路を大きくすることができるので、均一な特性のニッケル微粉を得ることができる。
上記要件を満たすためには、酸化ニッケル粉の造粒体の特性を適切に調整することが好ましい。すなわち、酸化ニッケル粉の造粒に際しては、個々の造粒体の密度及び大きさのバラツキを極力抑え、かつ、原料酸化ニッケル粉の粒径、微細構造などの変化を避けることが肝要である。
したがって、造粒方法としては、湿式方法が適しており、例えば、酸化ニッケル粉と溶媒を混合してスラリー化し、得られたスラリーを成型して造粒体を得る方法が好ましい。ここで、酸化ニッケル粉と溶媒を、成型に適した粘度などの特性が得られるように混合してスラリー化する。
上記溶媒としては、特に限定されるものではなく、任意の有機溶媒が用いられ、さらに樹脂などのバインダー成分を添加することもできるが、次工程の還元反応への影響を考慮すると、純水を用いることが好ましい。なお、上記溶媒として、有機溶媒を用いた場合には、後続の工程(E)で炭素等が残留することを防止するため、予め十分に除去しておく必要がある。このため、工程(E)の還元処理前に適切な条件での処理、例えば、300〜400℃の温度で大気雰囲気中で熱処理する工程を追加することができる。
上記スラリー化に際しては、一般的な混練機又は攪拌機を用いることができ、例えば、規模や特性に応じて、二軸スクリューニーダー、自転公転式攪拌機など任意の方法を用いることができる。また、成型する際、一般的な成型機を用いることができ、例えば、一軸押出成型機、ロールプレス機などを使用することができる。
上記造粒体の形状としては、特に限定されるものではなく、成型体の強度、或いはガスとの均一な反応のため、球形、回転楕円体又は円筒形のいずれかであることが好ましい。すなわち、角張った形状では、取り扱い時に破壊されやすく、発塵の原因となる場合があるとともに、ガスとの接触界面とガスの流通経路の確保が十分でない場合がある。
上記造粒体の寸法としては、特に限定されるものではないが、乾燥後において、球形の場合には、直径が2〜10mmであることが好ましく、回転楕円形の場合には、直径が2〜10mmで回転軸長さが2〜50mmであることが好ましく、また円筒形の場合には、直径が2〜10mmで長さが2〜50mmであることが好ましい。すなわち、乾燥後の造粒体の直径が10mmを超えると、還元反応時に造粒体の内部と外部の反応が不均一になることにより、特性のバラツキが生じることがある。一方、乾燥後の造粒体の直径が2mm未満では、後続の工程(E)での還元反応に際し、造粒の効果が十分に得られないことがある。また、回転楕円体又は円筒形の場合、長さが上記範囲外であると、後続の工程(E)での還元処理などの取り扱い時に、造粒体が崩れ、発塵の原因となる。
上記造粒体の見掛け密度としては、特に限定されるものではないが、後続の工程(E)での還元反応を造粒体全体で均一に進めるため、乾燥後において、1〜3g/cmであることが好ましい。すなわち、造粒体の見掛け密度が3g/cmを超えると、還元反応時に造粒体の中心部と外周部の反応が不均一になることにより、特性のバラツキが生じることがある。また、造粒体の見掛け密度を大きくするため、成型時に過度の圧縮力を加えると、酸化ニッケル粉の粒径、微細構造などの特性を変化させ、目的とするニッケル微粉が得られなくなる。一方、造粒体の見掛け密度が1g/cm未満では、造粒体に十分な強度が得られず、造粒体が崩壊する可能性があり、造粒効果が十分に得られないことがあり、また、崩壊による発塵が発生する可能性がある。
なお、造粒体の寸法及び見掛け密度を乾燥後の数値で規定するのは、上記造粒方法により、一定条件で造粒した場合、乾燥前後での造粒体の寸法及び見掛け密度の変化は安定しているので、溶媒量、形状、造粒圧力等を考慮した、少量試料での造粒を行って造粒条件を決定することにより、乾燥後の寸法及び見掛け密度を上記範囲内に容易に制御することができるからである。
(4)工程(D)
上記工程(D)は、工程(C)で得られた酸化ニッケル粉の造粒体を乾燥する工程である。ここで、造粒体を十分に乾燥することにより、次の工程(E)の還元処理によって、均一な特性で、分散性に優れたニッケル微粉が得られる。すなわち、造粒体の乾燥が十分でない場合には、還元処理中に水蒸気が発生し、前述したように生成するニッケル微粉の凝集又は焼結が促進され、分散性に優れたニッケル微粉が得られない。
前記工程(D)において、乾燥後の酸化ニッケル粉の造粒体の含有水分率としては、特に限定されるものではないが、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下とすることがより好ましい。すなわち、前記含有水分率が5質量%を超えると、水蒸気の発生による影響で、分散性に優れたニッケル微粉が得られない場合がある。
前記工程(D)で用いる乾燥方法としては、特に限定されるものではなく、一般的な静置式乾燥機を用いてもよく、また振動式乾燥機を用いてもよい。ただし、振動式乾燥機を用いる場合には、成型体の崩壊に注意する必要があり、成型体の強度や形状について適切な条件を設定する必要がある。
前記工程(D)で用いる乾燥の温度及び時間としては、特に限定されるものではなく、通常の条件が選択される。例えば、乾燥温度は、60〜200℃とすることが好ましい。なお、乾燥温度が高すぎる場合には、造粒体の崩壊を引き起こす場合があるので注意が必要である。また、乾燥時間としては、乾燥温度及び処理量を考慮して、十分に乾燥できる時間とすればよい。
(5)工程(E)
上記工程(E)は、乾燥後の酸化ニッケル粉の造粒体を還元ガス雰囲気下に還元し、ニッケル微粉を得る工程である。
上記工程(E)において用いる処理条件としては、目的とする粒子径などに応じて適宜、処理温度、時間などを設定することができるが、例えば、工程(B)と同様に、ガス気流中で行い、かつ、可能な限り造粒体に均一な気流を与えることが、均一なニッケル微粉を得るために好ましい。また、その流速は、温度のバラツキ及び低下を生じさせない限りにおいて大きくすることが、ガス交換効率を高められるため好ましい。
上記工程(E)で用いる還元温度としては、特に限定されるものではなく、1μm以下の粒子径のニッケル微粉を得るためには、300〜500℃とすることが好ましい。すなわち、還元温度が高いほど、また、還元時間を長く設定するほど、粒子径は大きくなる傾向がある。したがって、電子部品材料用としてより好ましい平均粒径である、0.5μm以下のニッケル微粉を得るためには、還元温度としては、380〜480℃であることがより好ましい。ここで、還元温度が300℃未満では、酸化ニッケルが十分に還元されず、得られたニッケル微粉の酸素含有量が多くなることがある。一方、還元温度が500℃を超えると、ニッケル微粉の凝集又は焼結が発生し、分散性が悪化することがある。
上記工程(E)で用いる還元雰囲気としては、特に限定されるものではないが、得られるニッケル微粉中への炭素などの不純物の混入を防止するため、水素又は水素含有ガス雰囲気とすることが好ましい。ここで、水素含有ガス雰囲気としては、窒素などの不活性ガスとの混合ガス雰囲気とすることが好ましく、その場合、水素含有量は10〜50容量%とすることが好ましい。すなわち、水素含有量が10容量%未満では、還元反応速度が遅くなり、ニッケル微粉の凝集又は連結が発生する。一方、水素含有量が50容量%を超えると、反応が急激に進行して水蒸気発生量が高くなるため、やはりニッケル微粉の凝集又は連結が発生する原因となる。
上記工程(E)で用いる還元処理の方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、還元炉内に置かれた耐熱性の開放型容器に前記造粒体を載せて行うことができる。上記還元炉としては、特に限定されるものではないが、静置式還元炉が好ましく、例えば、バッチ式雰囲気焼成炉、搬送式連続炉などが用いられる。なお、キルン方式などの流動床式還元炉は、酸化ニッケル造粒体を崩壊させる場合があり好ましくない。
上記工程(E)で用いる還元時間としては、特に限定されるものではなく、還元温度及び処理量により、目的とするニッケル微粉の粒径に応じて適宜設定すればよいが、可能な限り短時間とすることが好ましい。
上記工程(E)において、還元後の造粒体は、容易に分散させることができ、ニッケル微粉が得られるが、分散性をより向上させるためには、還元後に解砕工程を備えることが好ましい。ここで、上記解砕方法としては、特に限定されるものではなく、通常の方法が用いられるが、振動篩、ジェットミルなどが好ましく用いられる。
以上のように、本発明のニッケル微粉の製造方法は、湿式法により製造した水酸化ニッケルを還元処理するため、複雑な工程を備えておらず、さらに分散性の良い均一なニッケル微粉が得られるため、その製造コストも低く抑えることができる。
以上の製造方法により得られたニッケル微粉は、分散性に優れており、電子部品用の材料として好適である。すなわち、具体的な特性としては、条件を最適に設定することにより、レーザー散乱法で測定される粒度分布は、D90が0.95μm以下で、均一なニッケル微粉が得られる。
以下に、本発明の実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、本実施例および比較例で用いる比表面積、粒子の分散性、酸素、造粒体の寸法、造粒体の見掛け密度及び含有水分率の評価は、以下の通りである。
(1)比表面積の測定:窒素ガス吸着によるBET一点法により測定した。
(2)粒子の分散性の評価:レーザー光回折・散乱型粒度分布測定により、粒度分布を測定し、10%体積径(以下、D10と表記)、50%体積径(以下、D50と表記)、90%体積径(以下、D90と表記)を求め、分散状態の指標とした。
(3)酸素(質量%)の分析:不活性ガス融解−赤外線吸収法により測定した。この値を、還元状態の指標とした。
(4)造粒体の寸法の測定:マイクロメーターを用いて、径と長さを計測した。
(5)造粒体の見掛け密度の測定:、前記寸法の測定結果を元に、形状を円筒形あるいは球形として計算した造粒体の体積で重量を除して、見掛け密度を求め、造粒体10点の測定結果の平均値を用いた。
(6)含有水分率の測定:加熱乾燥方式測定器(エー・アンド・デイ社製 MX−50)を用いて、120℃までの加熱における重量減少分から求めた。
(実施例1)
次の工程(A)〜(E)を順次行い、ニッケル微粉を製造した。
(1)工程(A)
まず、反応槽中へ、ニッケル濃度が60g/Lで、還元時の融着抑制剤となるマグネシウムを0.04g/L含有した塩化ニッケル水溶液と、濃度24質量%の水酸化ナトリウム水溶液とを、pHが8.3となるように調整しながら、連続的に添加して、水酸化ニッケルの沈殿を生成させた。その後、ろ過と30分の純水レパルプを3回繰り返し、水分含有率30質量%の水酸化ニッケルろ過ケーキを得た。次いで、得られたろ過ケーキ3kgに、少量の水を加えた後、先に加えた水との合計で0.0015mol/Lの硫酸10Lとなるように濃度調整した硫酸を加え、30分間攪拌洗浄した。洗浄後、ろ過し、再度、純水でレパルプ洗浄し、乾燥して、水酸化ニッケル粉を得た。
(2)工程(B)
工程(A)で得られた水酸化ニッケル粉30kgを、300gずつアルミナ製コウ鉢に装入し、搬送式連続焼成炉に装入した。ここで、一加熱帯あたり27L/minの流量で空気を導入しながら、480℃の温度で2時間、酸化焙焼し、酸化ニッケル粉を得た。
(3)工程(C)、(D)
工程(B)で得られた酸化ニッケル粉120gに、純水42mlを添加し、自転・公転式混合機により混合し、粘土状のスラリーを得た。この操作を繰り返し、酸化ニッケル粉の純水スラリーを約4kg作製し、一軸造粒機(アキラ機工製、AX−75型)を用いて造粒成型した後、静置式乾燥機により120℃の温度で乾燥し、酸化ニッケル粉の円筒形の造粒体を得た。ここで、成型には直径が4mmのスクリーンを使用した。
得られた円筒形の造粒体の乾燥後における寸法を測定したところ、直径が約3.8mmで長さが約5〜20mmであった。また、その乾燥後における見掛け密度は2.2g/cmであり、含有水分率は2質量%であった。
(4)工程(E)
工程(D)で得られた乾燥後の酸化ニッケル粉の造粒体132gを、約150mm角のアルミナ製コウ鉢4つにそれぞれ33gずつ装入し、静置式雰囲気焼成炉を使用して、25L/minの流量で窒素80%−水素20%の混合ガスを導入しながら、410℃の温度で2時間保持して、還元処理し、還元処理後、メノウ製乳鉢にて解砕を行ない、ニッケル微粉を得た。ここで、温度保持時の酸化ニッケルの還元反応に必要な水素量に対する添加割合(水素当量)は、反応当量の15倍であった。
その後、得られたニッケル微粉に対して、粒度分布(D10、D50、D90)、比表面積、及び酸素品位を測定した。結果を表1に示す。
(実施例2)
工程(E)で、工程(D)で得られた乾燥後の酸化ニッケル粉の造粒体200gを、約150mm角のアルミナ製コウ鉢4つにそれぞれ50gずつ装入し、還元処理したこと、及び温度保持時の水素当量は10倍であったこと以外は、実施例1と同様に行い、ニッケル微粉を得た。
その後、得られたニッケル微粉に対して、粒度分布(D10、D50、D90)、比表面積、及び酸素品位を測定した。結果を表1に示す。
(実施例3)
工程(E)で、工程(D)で得られた乾燥後の酸化ニッケル粉の造粒体264gを、約150mm角のアルミナ製コウ鉢4つにそれぞれ66gずつ装入し、還元処理したこと、及び温度保持時の水素当量は7.6倍であったこと以外は、実施例1と同様に行い、ニッケル微粉を得た。
その後、得られたニッケル微粉に対して、粒度分布(D10、D50、D90)、比表面積、及び酸素品位を測定した。結果を表1に示す。
(実施例4)
工程(E)で、工程(D)で得られた乾燥後の酸化ニッケル粉の造粒体132gを、約150mm角のアルミナ製コウ鉢1つに装入し、還元処理したことこと以外は、実施例1と同様に行い、ニッケル微粉を得た。
その後、得られたニッケル微粉に対して、粒度分布(D10、D50、D90)、比表面積、及び酸素品位を測定した。結果を表1に示す。
(実施例5)
工程(C)、(D)で、高性能自動製丸機(アキラ機工製、PT6025)を用いて、直径約4mmの球形に造粒成型したこと以外は、実施例1と同様に行い、ニッケル微粉を得た。なお、得られた造粒体の乾燥後における寸法は、直径が約4.1mmの球形であり、その見掛け密度は2.3g/cmであり、及び含有水分率は1.8質量%であった。
その後、得られたニッケル微粉に対して、粒度分布(D10、D50、D90)、比表面積、及び酸素品位を測定した。結果を表1に示す。
(比較例1)
工程(C)、(D)を省いて、酸化ニッケル粉を造粒せずに還元処理したこと、及び工程(E)で還元温度が400℃であったこと以外は、実施例1と同様に行い、ニッケル微粉を得た。なお、酸化ニッケル粉の含有水分率を測定したところ、1.7質量%であった。
その後、得られたニッケル微粉に対して、粒度分布(D10、D50、D90)、比表面積、及び酸素品位を測定した。結果を表1に示す。
(比較例2)
工程(C)、(D)を省いて、酸化ニッケル粉を造粒せずに、還元処理量を66gずつ4コウ鉢として還元処理したこと、工程(E)で還元温度が400℃であったこと、及び温度保持時の水素当量は7.6当量であったこと以外は実施例1と同様に行い、ニッケル微粉を得た。
その後、得られたニッケル微粉に対して、粒度分布(D10、D50、D90)、比表面積、及び酸素品位を測定した。結果を表1に示す。
(比較例3)
酸化ニッケル粉132gを1コウ鉢に装入して還元処理したこと以外は、比較例1と同様に行いニッケル微粉を得た。
その後、得られたニッケル微粉に対して、粒度分布(D10、D50、D90)、比表面積、及び酸素品位を測定した。結果を表1に示す。
Figure 0005131098
表1より、実施例1〜5では、工程(A)〜(E)で、本発明の方法に従って行われたので、還元ガスの効率が向上し、均一な処理が可能であり、分散性の良い均一なニッケル微粉が得られることが分かる。特に、還元処理量を増加させた場合に、その効果が大きいことがわかる。詳しくは、1コウ鉢あたりの積載原料量を増加した場合のいずれにおいても、酸素品位はほとんど変化せず、還元状態に変化は認められない。また、D50、D90にも大きな変化がなく、粒子の焼結による粗大粒の発生も確認されておらず良好な分散性が得られている。
これに対して、比較例1〜3では、酸化ニッケル粉を造粒せずに還元処理したことがこれらの条件に合わないので、分散性において満足すべき結果が得られないことが分かる。詳しくは、比較例1、2では、処理量の増加により酸素品位が増加し、同じ水素当量で比較しても実施例より酸素品位が増加していることから、還元が不十分となっていることが確認される。また、D50、D90が増加し、D90が0.95μmを越えており、粒子の焼結による粗大粒の発生が認められる。すなわち、処理量の増加により、還元処理の均一性が喪失しているとともに分散性も低下している。
以上より明らかなように、本発明のニッケル微粉の製造方法は、分散性が良好なニッケル微粉が、生産量を増加した場合でも均一に製造できるので、低コストで製造される。また、得られたニッケル微粉は、電子部品材料として好適であり、特に配線材料、電極材料等として好適であり、ペーストとしても安定して用いることができる。

Claims (9)

  1. ニッケル塩水溶液をアルカリ水溶液で中和して水酸化ニッケル沈澱を生成させ、次いで水酸化ニッケル粉を得る工程(A)と、該水酸化ニッケル粉を非還元性雰囲気下に焙焼し、酸化ニッケル粉を生成させる工程(B)と、該酸化ニッケル粉を造粒し、酸化ニッケル粉の造粒体を得る工程(C)と、該酸化ニッケル粉の造粒体を乾燥し、含有水分率が5質量%以下である酸化ニッケル粉の造粒体を得る工程(D)と、乾燥後の酸化ニッケル粉の造粒体を還元ガス雰囲気下に還元し、レーザー散乱法で測定した90%体積径(D90)が0.95μm以下であるニッケル微粉を得る工程(E)とを含むことを特徴とするニッケル微粉の製造方法。
  2. 前記工程(C)において、酸化ニッケル粉を造粒する際、酸化ニッケル粉と溶媒を混合してスラリー化し、得られたスラリーを成型して造粒体を得ることを特徴とする請求項1に記載のニッケル微粉の製造方法。
  3. 前記溶媒は、純水であることを特徴とする請求項2に記載のニッケル微粉の製造方法。
  4. 前記工程(C)において、造粒体の形状は、球形、回転楕円形又は円筒形のいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のニッケル微粉の製造方法。
  5. 前記造粒体の寸法は、工程(D)の乾燥後において、形状が球形の場合は、直径2〜10mm、回転楕円形の場合は、直径2〜10mmで回転軸長さ2〜50mm、及び円筒形の場合は、直径2〜10mmで長さ2〜50mmであることを特徴とする請求項4に記載のニッケル微粉の製造方法。
  6. 前記造粒体の見掛け密度は、工程(D)の乾燥後において、1〜3g/cmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のニッケル微粉の製造方法。
  7. 前記工程(E)において、還元ガス雰囲気は、水素を含有したガスであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のニッケル微粉の製造方法。
  8. 前記工程(E)において、還元温度は、300〜500℃であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のニッケル微粉の製造方法。
  9. 前記工程(A)において、ニッケル塩水溶液は、還元時の融着抑制剤となる第2属元素を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のニッケル微粉の製造方法。
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