ところが特許文献4に記載の組電池装置においては、空間 904に埃などが堆積する場合があり、そうなると均一な冷却が困難となり、各単電池セルの冷却特性に差が生じる。また冷却媒体としては一般にエアコンからの風が用いられるが、外気との温度差によって空間 904に結露が生じる場合があり、水滴が電極部にまで移動することで漏電する可能性が無いとは云えない。
そこで本願出願人は、特願2007−219812において、シリコーンゴムなど、熱伝導性の高い軟質材からなるシートを単電池セル間に挟持した組電池装置を提案している。この電池装置によれば、列設方向の両端から加圧拘束されたときに、軟質のシートが両側の単電池セルによって圧縮され、単電池セルの最も広い表面に密着する。これにより単電池セルの熱は、シートから放熱表面に伝導され、放熱空間へ放熱される。
すなわち単電池セルとシートとの間には隙間が無いので、従来の空間 904への埃の堆積の問題は生じない。したがって長期使用後においても各単電池セル毎の冷却条件はほとんど同一となるので、各単電池セル間の冷却特性を均一とすることができ、寿命が長くなる。
さらに単電池セルどうしの間に、特許文献3に記載のような冷却風が流通するための空間を形成する必要がない。したがって単電池セル間距離を縮小でき、全体がコンパクトな形状となり搭載スペースを縮小することができる。また放熱表面を電極から遠い位置に形成しておけば、結露による漏電も防止することができる。
ところが、複数の単電池セルを列設し組電池装置を組み立てる際に、作業性を向上するには、列設される複数個の単電池セルどうしの相対位置を容易かつ正確に決める必要があった。そして、列設され隣接する単電池セルどうし間の相対移動を抑制し、単電池セルどうし間の相対移動による電極結線位置ずれや結線不良などの組電池装置の不具合を改善する余地があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、単電池セルを列設した組電池装置において、各単電池セルの冷却特性を均一とするとともに、埃の堆積や結露による漏電などの不具合を防止し、かつ高い組立作業性及び安定性を持つ組電池装置及び組電池装置用保持部材とすることを解決すべき課題とする。
[1]本発明の組電池装置は、直方体形状をなす単電池セル(1)と、熱伝導性と電気絶縁性を有する軟質材から板状に形成された熱伝導部材(2)と、が互いに密着して交互に複数個列設され、複数の単電池セル(1)の短辺を構成する端部(130)にそれぞれ被覆されるキャップ状の保持部材(6)が装着され、列設方向の両端から加圧拘束されてなる組電池装置であって、保持部材(6)は、板状の基部(61)と、基部(61)の一表面に形成され、単電池セル(1)の最も広い表面を構成する一対の側面(10)と当接する一対の第1平面(611)と、単電池セル(1)の長辺を構成する一対の側面(11)と当接する一対の第2平面(612)と、単電池セル(1)の短辺を構成する側面(13)と対向する第3平面(613)とを持ち、端部(130)を収容する収容凹部(62)と、を備え、保持部材(6)は、列設方向に隣接する保持部材(6)を近づけて、熱伝導部材(2)を撓ませた時に、その撓み量を所定値に規制する規制部をさらに有することを特徴とする。
本発明の組電池装置によれば、保持部材を用いることにより、容易に複数個の単電池セルを一体に並列して列設することができ、組電池装置の組立作業性が向上する。また、保持部材に規制部を備えることにより、列設方向に隣接する保持部材を近づけて、列設方向に隣接する単電池セルどうしの間の熱伝導部材を撓ませた時に、その撓み量を所定値に規制することができる。すなわち、熱伝導部材の圧縮量などを規制することができる。
[2]本発明の組電池装置の保持部材(6)は、基部(61)に形成された凸形の第1係合部(63)と、第1係合部(63)と対称な凹形の第2係合部(64)と、を備え、複数の保持部材は、各々の第1係合部(63)が隣接する保持部材の第2係合部(64)と咬合することで一体に並列可能であることが好ましい。
保持部材に第1係合部、第2係合部を備えることにより、さらに容易に複数個の単電池セルを一体に並列して列設することができ、組電池装置の組立作業性が向上する。
[3]本発明の組電池装置の第1係合部(63)及び第2係合部(64)の少なくとも一方は、並列されたときに隣接する保持部材どうしの第1平面(611)及び第3平面(613)と平行方向の相対移動を規制する第1規制部(65A、65B、65a、65b)と、隣接する保持部材どうしの間隔を規制する第2規制部(66A、66a)と、を有することが好ましい。
第1係合部、第2係合部の少なくとも一方に第1規制部、第2規制部を備えることにより、一体に並列して列設された単電池セルどうし間の相対移動を抑制することができる。単電池セルどうし間の相対移動による電極結線位置ずれや結線不良などの不具合が確実に改善される。
[4]本発明の組電池装置の規制部は、第2規制部(66A、66a)よりなることが好ましい。
これにより、より確実に隣接する保持部材どうし(単電池セルどうし)の間隔を規制することができ、列設方向に隣接する保持部材を近づけて、列設方向に隣接する単電池セルどうしの間の熱伝導部材を撓ませた時に、その撓み量を所定値に規制することができる。すなわち、熱伝導部材の圧縮量などをより確実に規制することができる。
[5]本発明の組電池装置の第3平面(613)は単電池セル(1)の短辺を構成する側面(13)と当接し、第1係合部(63)及び第2係合部(64)の少なくとも一方は、並列されたときに隣接する保持部材どうしの第1平面(611)及び第2平面(612)と平行方向の相対移動を規制する第3規制部(67A、67a)を有することが好ましい。
第1係合部、第2係合部の少なくとも一方に第3規制部を備えることにより、一体に並列して列設された単電池セルどうし間の相対移動をさらに抑制することができる。単電池セルどうし間の相対移動による電極結線位置ずれや結線不良などの不具合がより確実に改善される。
[6]本発明の組電池装置の保持部材(6)は、第1平面(611)を構成する側壁の厚さが板状の熱伝導部材(2)の厚さの1/2よりも小さいことが好ましい。
保持部材の側壁の厚さを熱伝導部材の厚さの1/2よりも小さく設定することにより、確実に板状の熱伝導部材を単電池セルどうしの間に挟持することができ、熱伝導部材の最も広い表面と単電池セルの最も広い表面との密着性が向上する。同時に、熱伝導部材の圧縮量を規制することができる。
[7]本発明の組電池装置用保持部材は、直方体形状をなす単電池セル(1)と、熱伝導性と電気絶縁性を有する軟質材から板状に形成された熱伝導部材(2)と、が互いに密着して交互に複数個列設されてなり、列設方向の両端から加圧拘束されてなる組電池装置に用いられ、複数の単電池セル(1)の短辺を構成する端部(130)にそれぞれ被覆されるキャップ状の組電池装置用保持部材であって、板状の基部(61)と、基部(61)の一表面に形成され、単電池セル(1)の最も広い表面を構成する一対の側面(10)と当接する一対の第1平面(611)と、単電池セル(1)の長辺を構成する一対の側面(11)と当接する一対の第2平面(612)と、単電池セル(1)の短辺を構成する側面(13)と対向する第3平面(613)とを持ち、端部(130)を収容する収容凹部(62)と、基部(61)に形成された凸形の第1係合部(63)と、第1係合部(63)と対称な凹形の第2係合部(64)と、を備え、複数の保持部材は、各々の第1係合部(63)が隣接する保持部材の第2係合部(64)と咬合することで一体に並列可能であり、第1係合部(63)及び第2係合部(64)の少なくとも一方は、並列されたときに隣接する保持部材どうしの第1平面(611)及び第3平面(613)と平行方向の相対移動を規制する第1規制部(65A、65B、65a、65b)と、隣接する保持部材どうしの間隔を規制する第2規制部(66A、66a)と、を有することを特徴とする。
本発明の組電池装置用保持部材によれば、キャップ状の保持部材を単電池セルの短辺を構成する端部にそれぞれ被覆させ、隣接する保持部材どうしに形成された第1係合部、第2係合部を咬合させることにより、容易に保持部材で保持された単電池セルを一体に並列して列設することができ、組電池装置の組立作業性が向上する。また、保持部材に第1規制部、第2規制部を備えることにより、第1平面及び第3平面と平行方向の保持部材どうしの相対移動(単電池セルどうしの高さ方向の相対移動)及び隣接する保持部材どうしの間隔(単電池セルどうしの間隔)を規制することができ、一体に並列して列設された単電池セルどうし間の相対移動を抑制することができる。また、単電池セルどうし間の相対移動による電極結線位置ずれや結線不良などの不具合を改善することができる。さらに、第2規制部により隣接する保持部材どうしの間隔を規制することで、熱伝導部材の圧縮量を規制することができ、組電池装置の放熱性が安定する。
[8]本発明の組電池装置用保持部材の第3平面(613)は単電池セル(1)の短辺を構成する側面(13)と当接し、第1係合部(63)及び第2係合部(64)の少なくとも一方は、並列されたときに隣接する保持部材どうしの第1平面(611)及び第2平面(612)と平行方向の相対移動を規制する第3規制部(67A、67a)を有することが好ましい。
本発明の組電池装置用保持部材によれば、保持部材に第3規制部を備えることにより、隣接する保持部材どうしの第1平面及び第2平面と平行方向の相対移動を規制することができ、列設された単電池セルどうし間の相対移動をさらに抑制することができ、単電池セルどうし間の相対移動による電極結線位置ずれや結線不良などの不具合をさらに改善することができる。
なお、[請求項]や[課題を解決するための手段]に用いられる符号は、本発明の構成を理解しやすくするためのものであって、実施例に限定されるものではない。
本発明の組電池装置によれば、保持部材を用いることにより、容易に複数個の単電池セルを一体に並列して列設することができ、組電池装置の組立作業性が向上する。また、保持部材に規制部を備えることにより、列設方向に隣接する保持部材を近づけて、列設方向に隣接する単電池セルどうしの間の熱伝導部材を撓ませた時に、その撓み量を所定値に規制することができる。すなわち、熱伝導部材の圧縮量などを規制することができる。
本発明の組電池装置用保持部材によれば、キャップ状の保持部材を単電池セルの短辺を構成する端部にそれぞれ被覆させ、隣接する保持部材どうしに形成された第1係合部、第2係合部を咬合させることにより、容易に保持部材で保持された単電池セルを一体に並列して列設することができ、組電池装置の組立作業性が向上する。また、保持部材に第1規制部、第2規制部を備えることにより、第1平面及び第3平面と平行方向の保持部材どうしの相対移動(単電池セルどうしの高さ方向の相対移動)及び隣接する保持部材どうしの間隔(単電池セルどうしの間隔)を規制することができ、一体に並列して列設された単電池セルどうし間の相対移動を抑制することができる。また、単電池セルどうし間の相対移動による電極結線位置ずれや結線不良などの不具合を改善することができる。さらに、第2規制部により隣接する保持部材どうしの間隔を規制することで、熱伝導部材の圧縮量を規制することができ、組電池装置の放熱性が安定する。
また、単電池セルと熱伝導部材との間には隙間が無いので、従来の空間 904への埃の堆積の問題は生じない。したがって長期使用後においても各単電池セル毎の冷却条件はほとんど同一となるので、各単電池セル間の冷却特性を均一とすることができ、寿命が長くなる。
さらに、熱伝導部材を設けることによって、単電池セルの排熱が効率的に放出できるため、単電池セル間距離を縮小することできる。よって、全体がコンパクトな形状となり搭載スペースを縮小することができる。また、熱伝導部材を伝熱可能に冷却通路に表出して設置した場合には、熱交換が冷却通路内にて行われるため、結露しやすい位置が単電池セルの電極から遠くなり、結露による漏電も防止することができる。
本発明の組電池装置は、電気自動車やハイブリッド車などの電源装置として好適に用いられる。また、本発明の組電池装置用保持部材は、単電池セルから組電池装置を組立てる際の組立作業に好適に用いられる。以下、本発明の組電池装置用保持部材を本発明の組電池装置の構成の一部として説明する。
本発明の組電池装置は、単電池セルと、熱伝導部材と、保持部材とを備える。
具体的には、本発明の組電池装置は、直方体形状をなす単電池セルと、熱伝導性と電気絶縁性を有する軟質材から板状に形成された熱伝導部材と、が互いに密着して交互に複数個列設される。複数の単電池セルの短辺を構成する端部にそれぞれ被覆されるキャップ状の保持部材が装着される。保持部材によって保持された複数の単電池セルが列設方向の両端から加圧拘束される。
保持部材は、板状の基部と、基部の一表面に形成され単電池セルの短辺を構成する端部を収容する収容凹部とを備える。
収容凹部は、単電池セルの最も広い表面を構成する一対の側面と当接する一対の第1平面と、単電池セルの長辺を構成する一対の側面と当接する一対の第2平面と、単電池セルの短辺を構成する側面と対向する第3平面とを持つ。
さらに、保持部材は、列設方向に隣接する保持部材を近づけて、熱伝導部材を撓ませた時に、その撓み量を所定値に規制する規制部を有する。
組電池装置に保持部材を用いることにより、保持部材で保持された単電池セルを容易に、一体に並列して列設することができ、組電池装置の組立作業性が向上する。
また、保持部材に規制部を備えることにより、一体に並列して列設された単電池セルどうし間の相対移動(例えば、列設方向における相対移動)を抑制することができる。よって、列設方向に隣接する保持部材を近づけて、熱伝導部材を撓ませた時に、その撓み量を所定値に規制することができ、熱伝導部材の圧縮量を規制することができる。
なお、保持部材は、例えばポリプロピレン(PP)樹脂などの樹脂材料で構成することができる。また、保持部材は、電気絶縁性を持つものが望ましい。
本発明の組電池装置は、保持部材に第1係合部と、第2係合部とを備えることが望ましい。
第1係合部は、凸形として基部に形成されている。第2係合部は、第1係合部と対称な凹形として基部に形成されている。また、複数の保持部材は、各々の第1係合部が隣接する保持部材の第2係合部と咬合することで一体に並列可能になっている。このため、保持部材で保持された単電池セルを容易に、一体に並列して列設することができ、組電池装置の組立作業性が向上する。
また、第1係合部及び第2係合部の少なくとも一方は、並列されたときに隣接する保持部材どうしの第1平面及び第3平面と平行方向の相対移動を規制する第1規制部と、隣接する保持部材どうしの間隔を規制する第2規制部とを備える。
保持部材に第1規制部を備えることにより、第1平面及び第3平面と平行方向の保持部材どうしの相対移動を抑制することができ、保持部材に保持された単電池セルどうしの第1平面及び第3平面と平行方向の相対移動を抑制することができる。また、保持部材に第2規制部を備えることにより、隣接する保持部材どうしの間隔を規制することができる。
これにより、単電池セルどうし間の相対移動による電極結線位置ずれや結線不良などの不具合を改善することができる。さらに、第2規制部により隣接する保持部材どうしの間隔を規制することで、熱伝導部材の圧縮量を規制することができ、組電池装置の放熱性が安定する。
また、保持部材の第3平面は単電池セルの短辺を構成する側面と当接し、第1係合部及び第2係合部の少なくとも一方は、並列されたときに隣接する保持部材どうしの第1平面及び第2平面と平行方向の相対移動を規制する第3規制部を有することが望ましい。保持部材に第3規制部を備えることにより、隣接する保持部材どうしの第1平面及び第2平面と平行方向の相対移動を規制することができ、列設された単電池セルどうし間の相対移動をさらに抑制することができる。単電池セルどうし間の相対移動による電極結線位置ずれや結線不良などの不具合をさらに改善することができる。
また、本発明の組電池装置の保持部材は、第1平面を構成する側壁の厚さが板状の熱伝導部材の厚さの1/2よりも小さく設定されることが望ましい。
保持部材の側壁の厚さを熱伝導部材の厚さの1/2よりも小さく設定することにより、確実に板状の熱伝導部材を単電池セルどうしの間に挟持することができ、熱伝導部材の最も広い表面と単電池セルの最も広い表面との密着性が向上する。
なお、本発明の組電池装置では、単電池セルと板状の熱伝導部材とを互いに密着して交互に複数個列設し、列設方向の両端から加圧拘束することで組電池部材を構成することができる。
また、本発明の組電池装置では、組電池部材に冷却通路を備えることができる。
具体的には、冷却通路は、組電池部材の一表面と接してトンネル状に形成され、内部に冷媒が流通される。熱伝導部材の少なく一部が冷却通路の内部に表出しており、熱伝導部材がこの表出部位を介して、冷却通路内の冷媒と熱交換を行うことができる。また、冷却通路を外部から区画する区画壁は断熱壁であることが好ましい。
断熱壁は、熱伝導率が0.5W/m・K以下の断熱材を用いることが望ましい。断熱材のなかでも、一般的に熱伝導率が0.2W/m・K以下の樹脂(例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂)、或いは熱伝率がさらに低い0.02W/m・K以下の樹脂発泡体(例えば、ポリエチレン樹脂発泡体、ポリプロピレン樹脂発泡体)などが好適に用いられる。
冷却通路の区画壁は断熱性を有することにより、冷却通路内を流通する冷媒は、外部から熱的に保護される。よって、外部の熱源(例えば自動車の排熱)からの影響が低減される。冷却通路内の冷媒温度が管理しやすくなる。熱交換時の温度差を大きくそして、安定的に維持することができるので、単電池セルからの熱を効率的に放出することができる。
また、本発明の組電池装置では、冷媒として、エアコンからの冷却風(冷却空気)を使用することができる。冷却空気の他には、電気絶縁性を有する冷却オイルなども使用できる。
本発明の組電池装置において、単電池セルとしては一般的な所謂角型電池セルを用いることができる。樹脂製の筐体をもつもの、あるいは表面に絶縁被膜がコーティングされたものを用いてもよいが、熱伝導性が高い鉄やアルミニウムなどの金属製の筐体が表出する単電池セルを用いることが好ましい。単電池セルの上部には、一対の電極が突出形成されているのが一般的である。通常は、電極をもつ側が全て同じ側となるように、複数の単電池セルが列設される。
熱伝導部材は、熱伝導性と電気絶縁性とを有する軟質材からなる。
また、熱伝導部材は、マトリックス基材と、マトリックス基材中に含まれた繊維部材とからなることができる。マトリックス基材が軟質材に相当する。熱伝導部材は板状に形成される。ここで熱伝導部材を構成するマトリックス基材における軟質の程度は、アスカーC硬度で50以下のものが望ましい。アスカーC硬度で50以下の軟質度とすることで、単電池セルの最も広い側面との密着性を十分に確保することができ、単電池セルの熱を効率よく放熱することができる。なおアスカーC硬度とは、日本ゴム協会標準規格SRIS 0101 で規定されるゴム硬度であり、JIS K 6253で規定されるショア硬度Eに相当する。またマトリックス基材は、熱伝導率が5W/m・K以上の熱伝導性を備えることが望ましい。熱伝導率がこれより低いと、放熱性が低くなって好ましくない。
上記した特性を備えるマトリックス基材の材料としては、例えばシリコーンゴムなどの熱可塑性エラストマを用いることができる。シリコーンゴムは熱伝導性と高い電気絶縁性を兼ね備え、アスカーC硬度で2〜45程度と軟質である。また一般のゴムや熱可塑性エラストマは、そのままでは熱伝導性が低すぎて使用できないが、例えばアルミナ、窒化ホウ素、窒化ケイ素、シリカなどの高熱伝導材を混合することで用いることができる可能性がある。
繊維部材は、繊維の長さ方向の熱伝導率が10W/m・K以上のものが望ましい。このような繊維部材の材料としては、繊維の長さ方向の熱伝導率が約60W/m・Kの超高分子量ポリエチレン繊維、同熱伝導率が約 540W/m・Kのカーボン繊維、同熱伝導率が約 240W/m・Kのアルミニウム繊維、同熱伝導率が約1015W/m・Kのアルミナ繊維、同熱伝導率が約 400W/m・Kの銅繊維、同熱伝導率が約 300〜 400W/m・Kの窒化アルミニウム繊維、同熱伝導率が約22W/m・Kのチタン繊維、同熱伝導率が約 250W/m・Kの窒化ホウ素などが例示される。中でも、同熱伝導率が約60W/m・Kの超高分子量ポリエチレン繊維は電気絶縁性も併せ持つので、特に好ましい材料である。
また、繊維部材は、単繊維の集合体で構成することができる。また、単繊維の集合体の配向方向として、冷却通路側に向かう方向に沿う方向が好ましい。つまり、単繊維の熱伝導率は、繊維の長さ方向で10W/m・K以上であったとしても、繊維の径方向では10W/m・Kに満たない場合がある。単繊維の集合体からなる繊維部材をマトリックス基材の中に埋設した際、冷却通路側に向かう方向に沿って単繊維の集合体を配向することにより、熱伝導部材の表面から伝導してきた単電池セルの排熱は、繊維部材の配向方向に沿って伝導しやすくなっており、冷却通路側に向かう方向以外の方向における熱の伝導(流出)を抑制しながら、冷却通路側に集中して伝熱することができる。これにより、単電池セルを囲む環境の温度上昇を抑えつつ、効率的に冷却通路側に熱を移送し、そして冷却通路を介して放熱を実現している。一方、冷却通路側に向かう方向以外の方向に、単電池セルからの熱が大量に流出した場合、単電池セルの周辺環境の温度が上昇し、単電池セルの劣化に繋がる。
また、マトリックス基材に繊維部材を埋設することにより、熱伝導部材の面剛性が高くなり、単電池セルの膨張をより抑制することが可能となる。
また、繊維部材は、熱伝導部材中に20〜80体積%の範囲で含まれていることが望ましい。繊維部材の含有量が20体積%より少ないと放熱性が不十分となり、80体積%より多く含有すると熱伝導部材の軟質度が低下して単電池セルとの密着性が低下するため放熱性が低下する。
熱伝導部材を形成するには、繊維部材を型内に配置した状態で溶融状態にあるシリコーンゴムなどの軟質材を注入してプレス成形することで、容易に形成することができる。この場合、繊維部材を形成する際に、長さ方向の熱伝導率が10W/m・K以上の単繊維と単繊維の表面に被覆された軟質熱伝導樹脂層とからなる複合糸を用いることも好ましい。そして軟質熱伝導樹脂層としてマトリックス基材との親和性に富むものを用いれば、マトッリクス基材と繊維部材との密着性が高まり放熱性が向上する。また単繊維と単繊維の表面に被覆された軟質熱伝導樹脂層とからなる複合糸のみを型内に配置してプレス成形すれば、軟質熱伝導樹脂層をマトリックス基材とすることも可能である。
しかし上記したように、シリコーンゴムなどの軟質材を注入するプレス成形にて熱伝導部材を形成した場合、シリコーンゴムの熱伝導性が繊維部材より低い場合には、シリコーンゴムの表面から繊維部材への伝熱量が不足する可能性がある。
そこで、繊維部材の表面と熱伝導部材の表面との間(或いは、熱伝導部材の厚さ方向の両側の表面の間)には、長さ方向の熱伝導率が10W/m・K以上の短繊維の繊維長さ方向が熱伝導部材の厚さ方向に配向して埋設されていることが望ましい。このようにすれば、単電池セルから密着表面に伝えられた熱を、厚さ方向に配向した短繊維を介して効率よく繊維部材に伝熱することができ、放熱性がさらに向上する。
このように短繊維が配向した状態の熱伝導部材を形成するには、シリコーンゴムなどの軟質材に短繊維を混合した複合材を形成しておく。そして繊維部材を型内に配置し、溶融状態とした複合材を注入して成形する際に、熱伝導部材の厚さ方向に磁場を印加しながら成形を行う。これにより短繊維は繊維長さ方向が磁場方向と平行に配向し、熱伝導部材の厚さ方向に配向させることができる。
短繊維の材料は、繊維部材と同一であってもよいし、繊維部材とは異なり磁場方向に配向しやすい窒化ホウ素などの別材料を用いてもよい。また短繊維の形状は、繊維状ばかりでなく鱗片状のものを用いることもできる。厚さ方向に配向した短繊維の含有量は、熱伝導部材中に20〜60体積%の範囲とすることが望ましい。厚さ方向に配向した短繊維の含有量が20体積%より少ないと上記した効果の発現が困難となり、60体積%より多く含有しても効果が飽和するとともに熱伝導部材の剛性が高くなり過ぎて単電池セルとの密着性が低下して放熱性が低下する。
また熱伝導部材は、単電池セルを収納可能な袋形状に形成してもよい。このようにすれば、袋状の熱伝導部材に単電池セルを投入するだけで、単電池セルと熱伝導部材との積層体を容易に形成することができる。
また、熱伝導部材は、単電池セルに対向し密着する表面が単電池セルに向かって凸の球面とすることもできる。このようにすれば、加圧拘束時には球面の中心部が先ず単電池セルに当接し、圧縮されるに従って中心から外側へ向かって単電池セルと接触する面積が増大していくので、単電池セルと密着する表面との間に空気が残留するのが防止され放熱性が向上する。
本発明の組電池装置では、冷却通路の内部に伝熱可能に表出する熱伝導部材の一部(放熱表面)から延出するタブ部を形成し、そのタブ部を同一方向に配置して冷却通路の内部に突出させてもよい。
上記の場合には、単電池セルと熱伝導部材とを交互に列設して加圧拘束したものをケーシング中に収納し、上記の放熱表面(冷却通路の内部に伝熱可能に表出する熱伝導部材の一部)又はタブ部が突出する側の表面は冷却通路内の冷媒と接触し、熱交換ができる。つまり、トンネル状の冷却通路の内部空間が単電池セルの放熱空間とされており、エアコンの冷風を流通させるなどすれば、各単電池セルの熱を上記の放熱表面(熱伝導部材の冷却通路の内部に表出する一部)又はタブ部を介して均一に放熱することができる。
さらに、複数の放熱板が列設されてなるヒートシンクを放熱空間(冷却通路の内部空間)に配置し、ヒートシンクに熱伝導部材の放熱表面(熱伝導部材の冷却通路の内部に表出する一部)を当接させることが好ましい。ヒートシンクにエアコンの冷風を接触させるようにすれば、ヒートシンク及び熱伝導部材を介して各単電池セルの熱をより均一に放出することができる。
なおヒートシンクを用いる場合には、単電池セルと熱伝導部材とを交互に列設して加圧拘束したものの下方にヒートシンクを配置することが望ましい。このようにすれば、万一ヒートシンクに結露が発生した場合でも、水滴が単電池セルと接触することを防止することができ、漏電を確実に防止できる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
(第1実施例)
図1は、本実施例に係る組電池装置の分解斜視概念図を示す。図2は、本実施例に係る組電池装置の要部縦断面概念図を示す。図3は、図2に示すI−I位置の縦断面概念図を示す。
図に示すように、本実施例の組電池装置は、主に上方に位置する組電池部材101と、下方に位置し、組電池部材101の下部の一表面に接して形成された冷却通路102とを備える。また、冷却通路102にはヒートシンク4が設けられている。
(組電池部材)
組電池部材101は、直方体形状をなす単電池セル1と、板状に形成された熱伝導部材2とを、互いに密着して交互に複数個列設して積層体として構成される。
図2に示すように、単電池セル1の短辺を構成する端部130(側面13)には、PP樹脂から形成される一対の保持部材6が取り付けられている。
図4は、保持部材6の拡大図を示す。図5は、図2に示すVI−VI位置の保持部材6の横断面を含む斜視図を示す。
図に示すように、保持部材6は、容器状(キャップ状)に形成され、キャップの開口側から単電池セル1の端部130を挿入して収容する収容凹部62を備えている。収容凹部62は単電池セル1の端部130と略同じ形成とされている。キャップ状の保持部材6は、単電池セル1の端部130を被覆するように取り付けられる。これにより、単電池セル1が両側(側面13)から保持部材6によって挟持して保持される。
具体的には、保持部材6は、板状の基部61と、収容凹部62を備える。収容凹部62は、基部61の一表面に形成され、単電池セル1の最も広い表面を構成する一対の側面10と当接する一対の第1平面611と、単電池セル1の長辺を構成する一対の側面11と当接する一対の第2平面612と、単電池セル1の短辺を構成する側面13と対向する第3平面613とを備えている。また、保持部材6の外周には、収容凹部62の第1平面611と平行する一対の外側側面69が備えられている。なお、外側側面69は本発明の規制部を構成するものである。
保持部材6に外側側面69を備えることにより、隣接する保持部材6(に保持された単電池セル1)が図4に示すX方向の相対移動が規制される。よって、隣接する単電池セル1どうし間の間隔が決められ、熱伝導部材2の圧縮量が決められる。つまり、列設方向に隣接する保持部材6を近づけて、熱伝導部材2を撓ませた時に、その撓み量を所定値に規制することができる。
また、保持部材6は、さらに基部61に形成された凸形の第1係合部63と、第1係合部63と対称な凹形の第2係合部64とを備えている。
複数の保持部材6は、各々の第1係合部63が隣接する保持部材6の第2係合部64と咬合することで一体に並列される。
第1係合部63には、第1規制部65A、65Bが形成され、第2係合部64には、第1規制部65a、65bが形成される。図4から理解できるように、第1規制部65A、65B、65a、65bを備えることにより、保持部材6(に保持された単電池セル1)が並列されたときに、隣接する保持部材6どうしの第1平面611及び第3平面613と平行方向の隣接する保持部材どうしの相対移動を規制することができる。つまり、隣接する保持部材6(に保持された単電池セル1)が図4に示すY方向の相対移動が規制されており、相対位置が決められている。
第1係合部63には、第2規制部66Aが形成され、第2係合部64には、第2規制部66aが形成されている。なお、第2規制部66A、66aは、外側側面69と同様に本発明の組電池装置の規制部を構成するものである。図4から理解できるように、第2規制部66A,66aを備えることにより、保持部材(に保持された単電池セル1)が並列されたときに、66Aと66aが当接することで列設方向に隣接する保持部材6どうしの間隔を規制することができる。つまり、列設方向の両端から加圧拘束されるとき、第2規制部66A、66aは、外側側面69による同方向(図示すX方向)の規制作用に加え、隣接する保持部材6(に保持された単電池セル1)が図4に示すX方向の相対移動が規制されており、相対位置が決められている。よって、隣接する単電池セル1どうし間の間隔が決められ、熱伝導部材2の圧縮量が決められる。
なお、第1係合部63及び第2係合部64の少なくとも一方に第1規制部65A、65B(或いは第1規制部65a、65b)を形成してもよい。つまり、Y方向の相対移動を規制するには、第1係合部63に第1規制部65A、65Bのみ形成されてもよい。例えば、第1係合部63に第1規制部65A、65Bのみを形成する際、凹形として形成された第2係合部64に凸形として形成された第1係合部63を挿入して係合することで、第1規制部65A、65Bにより単電池セル1どうしのY方向の相対移動が規制される。また、これと対称に、第2係合部64に第1規制部65a、65bのみ形成されてもよい。
また、第1係合部63及び第2係合部64の少なくとも一方に第2規制部66A(或いは第2規制部66a)、を形成してもよい。つまり、X方向の相対移動を規制するには、第1係合部63に第2規制部66Aのみ形成されてもよい。例えば、第1係合部63に第2規制部66Aのみを形成する際、凹形として形成された第2係合部64に凸形として形成された第1係合部63を挿入して係合することで、第2規制部66Aにより単電池セル1どうしのX方向の相対移動が規制される。また、これと対称に、第2係合部64に第2規制部66aのみ形成されてもよい。
図4に示すように、凸形に形成された第1係合部63の第2規制部66Aの高さH1は、凹形に形成された第2係合部64の第2規制部66aの高さH2よりも大きく設定されている。これにより、列設方向の両側から加圧拘束する際に、熱伝導部材2をより密着するように単電池セル1の最も広い表面(側面10)に設置することができ、放熱性が向上する。また、保持部材6の第1平面611を構成する側壁の厚さ(即ち第1平面611と外側側面69との間の厚さ)H3は、板状の熱伝導部材2の厚さH4の1/2よりも小さく設定されている。これにより、列設方向の両側から加圧拘束する際に、熱伝導部材2をさらに密着するように単電池セル1の最も広い表面(側面10)に設置することができ、放熱性がさらに向上する。
なお、第2規制部66Aの高さが第2規制部66aの高さより大きい(H1>H2)時、熱伝導部材の厚さH4は、H4>(2×H3)+(H1−H2)を満たす。
また、第2規制部66Aの高さが第2規制部66aの高さより小さい或いは同じ(H1≦H2)時、熱伝導部材の厚さH4は、H4>(2×H3)を満たす。
このように、保持部材6の外側側面69の厚さH3及び第2規制部66Aの高さH1,66aの高さH2を介して、熱伝導部材2の厚さH4が決められ、熱伝導部材の撓み量(圧縮量)の所定値が決められる。
第1係合部63には、さらに第3規制部67Aが形成され、第2係合部64には、さらに第3規制部67aが形成されている。図4から理解できるように、第3規制部67A,67aを備えることにより、第3平面613が単電池セル1の短辺を構成する側面13と当接する際、第1係合部63及び第2係合部64は、並列されたときに隣接する保持部材6どうしの第1平面611及び第2平面612と平行方向の相対移動を規制することができる。つまり、隣接保持部材6(に保持された単電池セル1)が図4に示すZ方向の相対移動が規制されており、相対位置が決められている。
なお、第1係合部63及び第2係合部64の少なくとも一方に第3規制部67A(或いは第3規制部67a)を形成してもよい。つまり、Z方向の相対移動を規制するには、第1係合部63に第3規制部67Aのみ形成されてもよい。例えば、第1係合部63に第3規制部67Aのみを形成する際、凹形として形成された第2係合部64に凸形として形成された第1係合部63を挿入して係合することで、第2規制部67Aにより単電池セル1どうしのZ方向の相対移動が規制される。また、これと対称に、第2係合部64に第3規制部67aのみ形成されてもよい。
このように、保持部材6で保持された単電池セル1を列設する際、隣接する一方の保持部材6の第1係合部63が、隣接する他方の保持部材6の第2係合部64と係合することで、一体に並列することができる。また、保持部材6どうしの係合関係によって列設された単電池セル1どうしの相対位置のずれを防ぐことができる。さらに、保持部材6を単電池セル1に取り付けることにより、組電池装置の組立て作業がより容易かつ正確に行える。組電池装置の作業性が向上し、位置ずれによる電極の結線不良などの不具合の発生を低減することができる。
また、組電池部材101では、保持部材6により保持された単電池セル1と、熱伝導部材2とが、隣接する単電池セル1の最も広い表面10どうしが熱伝導部材2を介して互いに対向するように交互に数10個(図3では3個に省略して示している)ずつ列設され、その列が二列平行に形成されている。保持部材6の側壁の厚さにより、列設方向に隣接する単電池セル1どうしの間に熱伝導部材2を収容する空間が形成される。
列設された組電池部材101の両端には、樹脂製の拘束プレート3が配置され、さらに図示しない拘束ロッドによって単電池セル1と熱伝導部材2とが互いに密着するように加圧された状態で拘束されている。その状態で、組電池部材101全体が図示しない電気絶縁性樹脂製のケーシングに収納されている。
単電池セル1では、極板、セパレータ、電解液などの電池要素がアルミニウム製の筐体内に収納されている。筐体の上部には、正極及び負極の一対の電極12が突出している。また筐体は6個の表面をもち、最も広い表面10どうしが互いに対向するように列設されている。
図6は、単電池セル1に熱伝導部材2を密着して設置された状態を示す概念図を示す。
また、図7は、図3に示すII―II位置における単電池セル1どうしの間に熱伝導部材2(第1部材201a)を密着して設置された状態を示す横断面概念図を示す。図8は、図3に示すIII−III位置における単電池セル1(組電池部材101)とヒートシンク4との間に熱伝導部材2(第2部材201b)を密着して設置された状態を示す縦断面概念図を示す。
図6に示すように、熱伝導部材2は、マットリスク基材20と、繊維部材21とからなる。
具体的には、マトリックス基材20は、アスカーC硬度が45、熱伝導率が5W/m・Kのシリコーンゴムからなる。
繊維部材21は、単繊維21bからなり、マトリックス基材20に埋設されている。単繊維21bは、超高分子量ポリエチレン繊維(「ダイニーマ」東洋紡製)から形成される。
具体的には、繊維部材21を構成する単繊維21bは、マトリックス基材20の厚み方向の略中央部に埋設されている。なお、繊維部材21は、熱伝導部材2中に50体積%の量で埋設されている。
図6に示すように、繊維部材21を含んだ熱伝導部材2は、列設方向における単電池セル1どうしの間、及び組電池部材101(単電池セル1)と冷却通路102との間に設けられる。つまり、熱伝導部材2は、水平方向に配置された第1部材201aと縦方向に配置された複数枚の第2部材201bにより構成されている。第1部材201aと第2部材201bは互い直交して配置されている。
第2部材201bは、単繊維21bが単電池セル1の最も広い表面(側面10)と略平行に、かつ冷却通路(102)に向かう方向に配向している。
第1部材201aは、短繊維21cが第1部材201aの厚さ方向に沿って配置されている。
なお、第1部材201aに、さらに単繊維(図示しない)を配合してもよい。つまり、単繊維が単電池セル1の長辺を構成する側面11と略平行に配向して設置してもよい。具体的には、単繊維は、横糸(図示しない)と縦糸(図示しない)により形成された織布で構成され、マトリックス基材20の厚さ方向の略中央部に埋設されていることができる。第1部材201aに横糸及び縦糸を備えることにより、面方向に熱を均一に分散してヒートシンク4に伝熱することができ、放熱性がさらに向上する。
図7、図8に示すように、本実施例の組電池装置の熱伝導部材2には、繊維部材21(単繊維21b)に加えて、マトリックス20にさらに、単繊維21bと同様の超高分子量ポリエチレン繊維(「ダイニーマ」東洋紡製)からなる短繊維21c が埋設保持されている。短繊維21c は、その繊維長さ方向が熱伝導部材2の厚さ方向に平行に配向している。なお短繊維21c は、熱伝導部材2中に30〜40体積%含有されている。
この熱伝導部材2(例えば、第2部材201b)を製造するには、短繊維21c を混合した複合材を形成しておく。そして繊維部材21を型内に配置し、溶融状態とした複合材を注入してプレス成形する際に、熱伝導部材2の厚さ方向に磁場を印加しながら成形を行う。これにより短繊維21c は磁場方向に配向し、熱伝導部材2の厚さ方向に配向させることができる。
また、図8に示すように、板状をなす第2部材201bは、最も広い表面が密着表面22を構成し、密着表面22に直交し密着表面22の長辺を含む表面が放熱表面23を構成している。第2部材201bには、単繊維21bが冷却通路102側に配向し、端面が放熱表面23に表出している。
一方、第1部材201aは、最も広い表面が密着表面22を構成している。
図6から理解できるように、第2部材201bの放熱表面23は、第1部材201aの一方の密着表面22に接している。そして、第1部材201aの他方の密着表面22は、冷却通路102側にも接している。よって、単電池セル1の最も広い表面10から放出された熱は、第2部材201bにおいて、短繊維21c によって効率よく単繊維21bに伝熱され、単繊維21bの配向に沿って第1部材201a側に伝導し、第1部材201aの密着表面22からヒートシンク4へ熱伝導される。そして、ヒートシンク4を介して冷却通路102に伝熱される。
このように、熱伝導部材2に短繊維21cを加えることにより、単繊維21b方向に直交する方向の熱伝導が促進される。単繊維21bと短繊維21cの熱的な連結より、有効に単電池セル1からの放熱を均一かつ効率的に放出することができる。
また、図示しない拘束ロッドにて両側から所定の荷重にて押圧した状態で加圧拘束すると、熱伝導部材2の厚みは隣接する一対の単電池セル1の最も広い側面10によって圧縮される。第2部材201bはアスカーC硬度が45と軟質であるために、圧縮によって容易に変形して単電池セル1の最も広い側面10及び単電池セル1の底部に位置する第1部材201aの密着面22と密着するとともに厚さが薄くなる。厚さが薄くなった部分の余肉は、単電池セル1の上方の空間へさらに膨出することで吸収される。
そして単電池セル1が熱膨張しようとしても、熱伝導部材2及び保持部材6によって膨張が規制されているため膨張を確実に規制することができる。また単電池セル1どうしの間隔は保持部材6の側壁の厚さによって決まり、従来のリブをもつスペーサを介在させる場合に比べて単電池セル1どうしの間隔を狭くすることができる。したがって搭載スペースを縮小することが可能となる。
(冷却通路)
冷却通路102は、断熱壁からなる区画壁103でトンネル状に形成されている。冷却通路102の両端には開口部1022が形成されている。一方の開口部1022から他方の開口部1022へエアコンからの冷却空気(冷媒)が冷却通路102を流通する。このように、冷却通路102は、外部から熱的に保護(断熱)されている。
また、組電池部材101側に、区画壁103に開口部1021が形成されており、開口部1021を介して、ヒートシンク4が冷却通路102の内部に設置(挿入)される。
また、図2に示すように、単電池セル1の最も広い表面10に直交し、最も広い表面10の長辺を含む側面(底面)11には、板状の熱伝導部材2(第1部材201a)を隔ててヒートシンク4が配置されている。なお、第1部材201aの上面には、単電池セル1の側面11(底面)が密着して当接され、第1部材201aの下面は、ヒートシンク4の表面に密着している。
ヒートシンク4は、複数の放熱板が列設されてなる金属製のものであり、本実施例では、第1部材201aの密着表面22がヒートシンク4に密着している。
このように、ヒートシンク4は、単電池部材101と密着しながら、外部から断熱された冷却通路102に挿入され、冷媒と接触している。
また、図1に示すように、冷却通路102の底部には、底部より突出し冷媒の流れ方向に直交する方向に沿ってリブ部1023が形成される。ヒートシンク4は、リブ部1023に当接して配置される。これにより、ヒートシンク4が安定に冷却通路102に配置されると同時に、冷却空気の流れを調整することができ、ヒートシンク4での熱交換性がさらに向上する。
なお、本実施例では熱伝導部材2に密着するヒートシンク4を用いているが、ヒートシンク4に代えて、熱伝導部材2の一部を冷却通路102に表出し、直接冷風により熱交換(放熱)をすることもできる。
本実施例では、区画壁103は、断熱性の高いポリエチレン樹脂から構成されているが、より高い断熱性の材料、例えば樹脂発泡体(ポリエチレン樹脂発泡体など)がより好ましい。
また、本実施例では、単電池セル1どうしの間に、特許文献4に記載のような冷却風が流通するための空間を形成する必要がなく、硬質スペーサを介在させる必要もなく、熱伝導部材2の厚さも薄くてよい。したがって単電池セル1間距離を縮小でき、全体がコンパクトな形状となるので搭載スペースを縮小することができる。
また、本実施例の組電池装置では、図に示すように、ヒートシンク4の位置を、単電池セル1の下方としている。このため、万一ヒートシンク4に結露が発生した場合でも、水滴が単電池セル1と接触することを防止することができ、漏電を確実に防止できる。
(熱伝導部材)
熱伝導部材2中に繊維部材21を厚さ方向で、単層でも複数層(図7に示す)で積層することができる。なお、複数層積層することが好ましい。このようにすれば、放熱表面23に表出する単繊維21b の端面の合計面積をより大きくすることができる。また密着表面22から繊維部材21までの距離が短くなる。したがって放熱性がさらに向上する。
本実施例の組電池装置によれば、マトリックス基材20の熱伝導率は5W/m・Kであり、繊維部材21の繊維の長手方向の熱伝導率は60W/m・Kであり、繊維部材21の繊維の短手方向の熱伝導率は3W/m・Kである。したがって単電池セル1の熱は、先ず密着表面22からマトリックス基材20に伝熱され、マトリックス基材20の内部を伝わって繊維部材21に伝熱される。そして繊維の長手方向の熱伝導率がきわめて高いため、熱は繊維部材21の単繊維21b から冷却通路側102のヒートシンク4に伝熱され、ヒートシンク4から効率よく放熱される。
すなわち本実施例の組電池装置によれば、それぞれの熱伝導部材2からほとんど同じ条件で放熱が行われるので、それぞれの単電池セル1はほとんど同じ条件で冷却され、各単電池セル1の放熱性を均一とすることができる。
また単電池セル1と熱伝導部材2との間には隙間が無いので、従来の空間 104への埃の堆積の問題は生じない。したがって長期使用後においても各単電池セル1毎の放熱性はほとんど同一となるので、各単電池セル間の冷却特性を均一とすることができ、寿命が長くなる。
(第2実施例)
本実施例は、基本的に第1実施例と同様であり、保持部材6に関する部分のみ第1実施例と異なる。以下、保持部材6について説明する。
図9は、本実施例の組電池装置の保持部材6の拡大概念図を示す。
図9に示すように、本実施例の保持部材6は、基部61と、単電池セル1の端部130を収納する収容凹部62とを備えているが、第1実施例に示すような凸形の第1係合部63と凹形の第2係合部64を備えていない。
このため、単電池セル1どうしの間に挟まれた熱伝導部材2の厚みH4は、保持部材6の第1平面611を構成する側壁の厚さ(即ち第1平面611と外側側面69との間の厚さ)H3に決められる。つまり、保持部材6の外側側面69の厚さH3を介して、熱伝導部材2の厚さH4が決められ、熱伝導部材2の撓み量(圧縮量)の所定値が決められる。外側側面69は、本発明の規制部を構成するものである。
なお、熱伝導部材2の厚さH4は、H4≧(2×H3)を満たすように設定されている。