以下、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置について、図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるパネル10の構造を示す分解斜視図である。ガラス製の前面基板21上には、走査電極22と維持電極23とからなる表示電極対24が複数形成されている。そして走査電極22と維持電極23とを覆うように誘電体層25が形成され、その誘電体層25上に保護層26が形成されている。
また、保護層26は、放電セルにおける放電開始電圧を下げるために、パネルの材料として使用実績があり、ネオン(Ne)およびキセノン(Xe)ガスを封入した場合に2次電子放出係数が大きく耐久性に優れた酸化マグネシウム(MgO)を主成分とする材料から形成されている。
背面基板31上にはデータ電極32が複数形成され、データ電極32を覆うように誘電体層33が形成され、さらにその上に井桁状の隔壁34が形成されている。そして、隔壁34の側面および誘電体層33上には赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色に発光する蛍光体層35が設けられている。
これら前面基板21と背面基板31とは、微小な放電空間を挟んで表示電極対24とデータ電極32とが交差するように対向配置され、その外周部をガラスフリット等の封着材によって封着されている。そして、内部の放電空間には、ネオンとキセノンの混合ガスが放電ガスとして封入されている。なお、本実施の形態では、発光効率を向上させるためにキセノン分圧を約10%とした放電ガスを用いている。放電空間は隔壁34によって複数の区画に仕切られており、表示電極対24とデータ電極32とが交差する部分に放電セルが形成されている。そしてこれらの放電セルが放電、発光することにより画像が表示される。
なお、パネル10の構造は上述したものに限られるわけではなく、例えばストライプ状の隔壁を備えたものであってもよい。また、放電ガスの混合比率も上述した数値に限られるわけではなく、その他の混合比率であってもよい。
図2は、本発明の実施の形態1におけるパネル10の電極配列図である。パネル10には、行方向に長いn本の走査電極SC1〜SCn(図1の走査電極22)およびn本の維持電極SU1〜SUn(図1の維持電極23)が配列され、列方向に長いm本のデータ電極D1〜Dm(図1のデータ電極32)が配列されている。そして、1対の走査電極SCi(i=1〜n)および維持電極SUiと1つのデータ電極Dj(j=1〜m)とが交差した部分に放電セルが形成され、放電セルは放電空間内にm×n個形成されている。そして、m×n個の放電セルが形成された領域がパネル10の表示領域となる。
また、パネル10においては、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとの位置関係が表示電極対24毎に交番するように、具体的には、・・・−走査電極−走査電極−維持電極−維持電極−走査電極−走査電極−維持電極−維持電極−・・・となるように配列している(以下、このような電極配列を「ABBA電極構造」と呼称する。なお、比較のため、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとの位置関係が表示電極対24毎に変化せず、・・・−走査電極−維持電極−走査電極−維持電極−・・・と配列された電極構造を、「ABAB電極構造」と呼称する)。
そして、図1、図2に示したように、走査電極SCiと維持電極SUiとは互いに平行に対をなして形成されているために、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとの間に電極間容量Cpが存在する。しかし、本実施の形態では、パネル10をABBA電極構造としているので、維持期間における維持動作の際に隣接する放電セル間で電圧変化を同相にすることができ、無効電力を削減することができる。
次に、パネル10を駆動するための駆動電圧波形とその動作の概要について説明する。本実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置は、サブフィールド法、すなわち1フィールド期間を複数のサブフィールドに分割し、サブフィールド毎に各放電セルの発光・非発光を制御することによって階調表示を行う。それぞれのサブフィールドは、初期化期間、書込み期間および維持期間を有する。
各サブフィールドにおいて、初期化期間では初期化放電を発生し、続く書込み放電に必要な壁電荷を各電極上に形成する。加えて、放電遅れを小さくし書込み放電を安定して発生させるためのプライミング粒子(放電のための起爆剤=励起粒子)を発生させるという働きを持つ。このときの初期化動作には、全ての放電セルで初期化放電を発生させる全セル初期化動作と、直前のサブフィールドで維持放電を行った放電セルだけで選択的に初期化放電を発生させる選択初期化動作とがある。
書込み期間では、後に続く維持期間において発光させるべき放電セルで選択的に書込み放電を発生し壁電荷を形成する。そして維持期間では、輝度重みに比例した数の維持パルスを表示電極対24に交互に印加して、書込み放電を発生した放電セルで維持放電を発生させて発光させる。このときの比例定数を「輝度倍率」と呼ぶ。
本実施の形態では、1フィールドを10のサブフィールド(第1SF、第2SF、・・・、第10SF)で構成し、各サブフィールドはそれぞれ、例えば(1、2、3、6、11、18、30、44、60、80)の輝度重みを持つものとする。そして、第1SFの初期化期間では全セル初期化動作を行い、第2SF〜第10SFの初期化期間では選択初期化動作を行うものとする。これにより、画像の表示に関係のない発光は第1SFにおける全セル初期化動作の放電にともなう発光のみとなり、維持放電を発生させない黒表示領域の輝度である黒輝度は全セル初期化動作における微弱発光だけとなって、コントラストの高い画像表示が可能となる。また、各サブフィールドの維持期間においては、それぞれのサブフィールドの輝度重みに所定の輝度倍率を乗じた数の維持パルスを表示電極対24のそれぞれに印加する。
しかし、本実施の形態は、サブフィールド数や各サブフィールドの輝度重みが上記の値に限定されるものではなく、また、画像信号等にもとづいてサブフィールド構成を切換える構成であってもよい。
なお、本実施の形態では、後述する全セル点灯率検出回路および部分点灯率検出回路で計測されるサブフィールド毎の点灯率に応じて、維持パルスを立ち上げるために後述する電力回収回路を動作させる期間(以下、「立ち上がり期間」と呼称する)および維持パルスを立ち下げるために電力回収回路を動作させる期間(以下、「立ち下がり期間」と呼称する)の少なくとも一方の長さを制御するとともに、維持パルスの立ち上がりと立ち下がりとを重複させる重複期間を制御している。これにより、パネル10における消費電力を削減しつつ、維持放電を安定化させて各放電セルの表示輝度を均一化させ、パネル10における画像表示品質を向上させている。以下、まず駆動電圧波形の概要および駆動回路の構成について説明し、続いて、点灯率に応じた「立ち上がり期間」、「立ち下がり期間」および重複期間の制御について説明する。
図3は、本発明の実施の形態1におけるパネル10の各電極に印加する駆動電圧波形図である。図3には、2つのサブフィールドの駆動電圧波形、すなわち全セル初期化動作を行うサブフィールド(以下、「全セル初期化サブフィールド」と呼称する)と、選択初期化動作を行うサブフィールド(以下、「選択初期化サブフィールド」と呼称する)とを示しているが、他のサブフィールドにおける駆動電圧波形もほぼ同様である。また、以下における走査電極SCi、維持電極SUi、データ電極Dkは、各電極の中から画像データにもとづき選択された電極を表す。
まず、全セル初期化サブフィールドである第1SFについて説明する。
第1SFの初期化期間前半部では、データ電極D1〜Dm、維持電極SU1〜SUnにそれぞれ0(V)を印加し、走査電極SC1〜SCnには、維持電極SU1〜SUnに対して放電開始電圧以下の電圧Vi1から、放電開始電圧を超える電圧Vi2に向かって緩やかに上昇する傾斜波形電圧(以下、「上りランプ波形電圧」と呼称する)を印加する。
この上りランプ波形電圧が上昇する間に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUn、データ電極D1〜Dmとの間でそれぞれ微弱な初期化放電が持続して起こる。そして、走査電極SC1〜SCn上部に負の壁電圧が蓄積されるとともに、データ電極D1〜Dm上部および維持電極SU1〜SUn上部には正の壁電圧が蓄積される。この電極上部の壁電圧とは、電極を覆う誘電体層上、保護層上、蛍光体層上等に蓄積された壁電荷により生じる電圧を表す。
初期化期間後半部では、維持電極SU1〜SUnには正の電圧Ve1を印加し、データ電極D1〜Dmには0(V)を印加し、走査電極SC1〜SCnには、維持電極SU1〜SUnに対して放電開始電圧以下となる電圧Vi3から放電開始電圧を超える電圧Vi4に向かって緩やかに下降する傾斜波形電圧(以下、「下りランプ波形電圧」と呼称する)を印加する。この間に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUn、データ電極D1〜Dmとの間でそれぞれ微弱な初期化放電が持続して起こる。そして、走査電極SC1〜SCn上部の負の壁電圧および維持電極SU1〜SUn上部の正の壁電圧が弱められ、データ電極D1〜Dm上部の正の壁電圧は書込み動作に適した値に調整される。以上により、全ての放電セルに対して初期化放電を行う全セル初期化動作が終了する。
なお、図3の第2SFの初期化期間に示したように、初期化期間の前半部を省略した駆動電圧波形を各電極に印加してもよい。すなわち、維持電極SU1〜SUnに電圧Ve1を、データ電極D1〜Dmに0(V)をそれぞれ印加し、走査電極SC1〜SCnに放電開始電圧以下となる電圧(例えば、接地電位)から電圧Vi4に向かって緩やかに下降する下りランプ波形電圧を印加する。これにより前のサブフィールドの維持期間で維持放電を起こした放電セルでは微弱な初期化放電が発生し、走査電極SCi上部および維持電極SUi上部の壁電圧が弱められる。また直前の維持放電によってデータ電極Dk(k=1〜m)上部に十分な正の壁電圧が蓄積されている放電セルでは、この壁電圧の過剰な部分が放電され書込み動作に適した壁電圧に調整される。一方、前のサブフィールドで維持放電を起こさなかった放電セルについては放電することはなく、前のサブフィールドの初期化期間終了時における壁電荷がそのまま保たれる。このように前半部を省略した初期化動作は、直前のサブフィールドの維持期間で維持動作を行った放電セルに対して初期化放電を行う選択初期化動作となる。
続く書込み期間では、まず維持電極SU1〜SUnに電圧Ve2を、走査電極SC1〜SCnに電圧Vcを印加する。
そして、1行目の走査電極SC1に負の走査パルス電圧Vaを印加するとともに、データ電極D1〜Dmのうち1行目に発光させるべき放電セルのデータ電極Dk(k=1〜m)に正の書込みパルス電圧Vdを印加する。このときデータ電極Dk上と走査電極SC1上との交差部の電圧差は、外部印加電圧の差(Vd−Va)にデータ電極Dk上の壁電圧と走査電極SC1上の壁電圧との差が加算されたものとなり放電開始電圧を超える。これにより、データ電極Dkと走査電極SC1との間に放電が発生する。また、維持電極SU1〜SUnに電圧Ve2を印加しているため、維持電極SU1上と走査電極SC1上との電圧差は、外部印加電圧の差である(Ve2−Va)に維持電極SU1上の壁電圧と走査電極SC1上の壁電圧との差が加算されたものとなる。このとき、電圧Ve2を、放電開始電圧をやや下回る程度の電圧値に設定することで、維持電極SU1と走査電極SC1との間を、放電には至らないが放電が発生しやすい状態とすることができる。これにより、データ電極Dkと走査電極SC1との間に発生する放電を引き金にして、データ電極Dkと交差する領域にある維持電極SU1と走査電極SC1との間に放電を発生させることができる。こうして、発光させるべき放電セルに書込み放電が起こり、走査電極SC1上に正の壁電圧が蓄積され、維持電極SU1上に負の壁電圧が蓄積され、データ電極Dk上にも負の壁電圧が蓄積される。
このようにして、1行目に発光させるべき放電セルで書込み放電を起こして各電極上に壁電圧を蓄積する書込み動作が行われる。一方、書込みパルス電圧Vdを印加しなかったデータ電極D1〜Dmと走査電極SC1との交差部の電圧は放電開始電圧を超えないので、書込み放電は発生しない。以上の書込み動作をn行目の放電セルに至るまで行い、書込み期間が終了する。
続く維持期間では、まず走査電極SC1〜SCnに正の維持パルス電圧Vsを印加するとともに維持電極SU1〜SUnにベース電位となる接地電位、すなわち0(V)を印加する。すると書込み放電を起こした放電セルでは、走査電極SCi上と維持電極SUi上との電圧差が維持パルス電圧Vsに走査電極SCi上の壁電圧と維持電極SUi上の壁電圧との差が加算されたものとなり放電開始電圧を超える。
そして、走査電極SCiと維持電極SUiとの間に維持放電が起こり、このとき発生した紫外線により蛍光体層35が発光する。そして走査電極SCi上に負の壁電圧が蓄積され、維持電極SUi上に正の壁電圧が蓄積される。さらにデータ電極Dk上にも正の壁電圧が蓄積される。書込み期間において書込み放電が起きなかった放電セルでは維持放電は発生せず、初期化期間の終了時における壁電圧が保たれる。
続いて、走査電極SC1〜SCnにはベース電位となる0(V)を、維持電極SU1〜SUnには維持パルス電圧Vsをそれぞれ印加する。すると、維持放電を起こした放電セルでは、維持電極SUi上と走査電極SCi上との電圧差が放電開始電圧を超えるので再び維持電極SUiと走査電極SCiとの間に維持放電が起こり、維持電極SUi上に負の壁電圧が蓄積され走査電極SCi上に正の壁電圧が蓄積される。以降同様に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとに交互に輝度重みに輝度倍率を乗じた数の維持パルスを印加し、表示電極対24の電極間に電位差を与えることにより、書込み期間において書込み放電を起こした放電セルで維持放電が継続して行われる。
そして、維持期間の最後には、走査電極SC1〜SCnに、ベース電位となる0(V)から電圧Versに向かって緩やかに上昇する傾斜波形電圧(以下、「消去ランプ波形電圧」と呼称する)を印加する。これにより、微弱な放電を持続して発生させ、データ電極Dk上の正の壁電圧を残したまま、走査電極SCiおよび維持電極SUi上の壁電圧の一部または全部を消去している。
具体的には、維持電極SU1〜SUnを0(V)に戻した後、ベース電位となる0(V)から放電開始電圧を超える電圧Versに向かって上昇する消去ランプ波形電圧を発生させ、走査電極SC1〜SCnに印加する。すると、維持放電を起こした放電セルの維持電極SUiと走査電極SCiとの間で微弱な放電が発生する。そして、この微弱な放電は、走査電極SC1〜SCnへの印加電圧が上昇する期間、持続して発生する。
このとき、この微弱な放電で発生した荷電粒子は、維持電極SUiと走査電極SCiとの間の電圧差を緩和するように、維持電極SUi上および走査電極SCi上に壁電荷となって蓄積されていく。これにより、データ電極Dk上の正の壁電荷を残したまま、走査電極SC1〜SCn上と維持電極SU1〜SUn上との間の壁電圧は、走査電極SCiに印加した電圧と放電開始電圧の差、すなわち(電圧Vers−放電開始電圧)の程度まで弱められる。以下、この消去ランプ波形電圧によって発生させる維持期間の最後の放電を「消去放電」と呼称する。
続くサブフィールドの動作は、維持期間の維持パルスの数を除いて上述の動作とほぼ同様であるため説明を省略する。以上が、本実施の形態におけるパネル10の各電極に印加する駆動電圧波形の概要である。
なお、本実施の形態では、上述したように、パネル10をABBA電極構造にしているため、隣接する放電セルでは、走査電極と走査電極とが隣り合い、維持電極と維持電極とが隣り合う。したがって、隣接する放電セル間で、維持パルス電圧の変化を同相にすることができ、無効電力を削減することができる。例えば、ABAB電極構造を有するパネルを駆動する場合と比較して、無効電力を約25%削減できることが確認された。
次に、本実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の構成について説明する。図4は、本発明の実施の形態1におけるプラズマディスプレイ装置の回路ブロック図である。プラズマディスプレイ装置1は、パネル10、画像信号処理回路41、データ電極駆動回路42、走査電極駆動回路43、維持電極駆動回路44、タイミング発生回路45、全セル点灯率検出回路46、部分点灯率検出回路47、最大値検出回路48および各回路ブロックに必要な電源を供給する電源回路(図示せず)を備えている。
画像信号処理回路41は、入力された画像信号sigをサブフィールド毎の発光・非発光を示す画像データに変換する。データ電極駆動回路42はサブフィールド毎の画像データを各データ電極D1〜Dmに対応する信号に変換し各データ電極D1〜Dmを駆動する。
全セル点灯率検出回路46は、サブフィールド毎の画像データにもとづき、全放電セル数に対する点灯させるべき放電セル数の割合、すなわち全セル点灯率をサブフィールド毎に検出する。そして、検出した全セル点灯率をあらかじめ定めた複数の点灯率しきい値(本実施の形態においては、15%、30%、60%)と比較し、その結果を表す信号をタイミング発生回路45に出力する。
部分点灯率検出回路47は、パネルの表示領域を後述する複数の領域に分け、サブフィールド毎の画像データにもとづき、領域毎かつサブフィールド毎に、放電セル数に対する点灯させるべき放電セル数の割合、すなわち部分点灯率を検出する。
最大値検出回路48は、部分点灯率検出回路47で検出した部分点灯率を互いに比較し、その最大値をサブフィールド毎に検出する。そして、検出した最大値をあらかじめ定めた最大値しきい値と比較し、その結果を表す信号をタイミング発生回路45に出力する。
なお、本実施の形態では、この点灯率しきい値を15%、30%、60%に設定し、最大値しきい値を60%に設定しているが、各しきい値は何らこれらの数値に限定されるものではなく、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等にもとづいて最適な値に設定することが望ましい。
タイミング発生回路45は水平同期信号H、垂直同期信号Vおよび全セル点灯率検出回路46、最大値検出回路48からの出力をもとにして各回路ブロックの動作を制御する各種のタイミング信号を発生し、それぞれの回路ブロックへ供給する。そして、上述したように、本実施の形態においては、維持パルスの立ち上がりにおける「立ち上がり期間」、維持パルスの立ち下がりにおける「立ち下がり期間」および維持パルスの立ち上がりと立ち下がりとを重複させる重複期間を全セル点灯率検出回路46および最大値検出回路48からの出力にもとづいて制御しており、それに応じたタイミング信号を走査電極駆動回路43および維持電極駆動回路44に出力する。これにより、消費電力の削減と維持放電の安定化とを実現している。
走査電極駆動回路43は、初期化期間において走査電極SC1〜SCnに印加する初期化波形電圧を発生するための初期化波形発生回路(図示せず)、維持期間において走査電極SC1〜SCnに印加する維持パルスを発生するための維持パルス発生回路50、書込み期間において走査電極SC1〜SCnに印加する走査パルス電圧を発生するための走査パルス発生回路(図示せず)を有し、タイミング信号にもとづいて各走査電極SC1〜SCnをそれぞれ駆動する。維持電極駆動回路44は、維持パルス発生回路60および電圧Ve1、電圧Ve2を発生するための回路を備え、タイミング信号にもとづいて維持電極SU1〜SUnを駆動する。
次に、維持パルス発生回路50、維持パルス発生回路60の詳細とその動作について説明する。図5は、本発明の実施の形態1における維持パルス発生回路50、維持パルス発生回路60の回路図である。なお、図5にはパネル10の電極間容量をCpとして示し、走査パルスおよび初期化電圧波形を発生させる回路は省略している。
維持パルス発生回路50は、電力回収回路51とクランプ回路52とを備えており、電力回収回路51およびクランプ回路52は、走査パルス発生回路(維持期間中は短絡状態となるため図示せず)を介してパネル10の電極間容量Cpの一端である走査電極SC1〜SCnに接続されている。
電力回収回路51は、電力回収用のコンデンサC10、スイッチング素子Q11、スイッチング素子Q12、逆流防止用のダイオードD11、逆流防止用のダイオードD12、共振用のインダクタL10を有している。そして、電極間容量CpとインダクタL10とをLC共振させて維持パルスの立ち上がりおよび立ち下がりを行う。このように、電力回収回路51は電源から電力を供給されることなくLC共振によって走査電極SC1〜SCnの駆動を行うため、理想的には消費電力が0となる。なお、電力回収用のコンデンサC10は電極間容量Cpに比べて十分に大きい容量を持ち、電力回収回路51の電源として働くように、電圧値Vsの半分の約Vs/2に充電されている。
クランプ回路52は、走査電極SC1〜SCnを電圧Vsにクランプするためのスイッチング素子Q13、走査電極SC1〜SCnをベース電位である0(V)にクランプするためのスイッチング素子Q14を有している。そして、スイッチング素子Q13を介して走査電極SC1〜SCnを電源VSに接続して電圧Vsにクランプし、スイッチング素子Q14を介して走査電極SC1〜SCnを接地して0(V)にクランプする。したがって、クランプ回路52による電圧印加時のインピーダンスは小さく、強い維持放電による大きな放電電流を安定して流すことができる。
そして、維持パルス発生回路50は、タイミング発生回路45から出力されるタイミング信号によりスイッチング素子Q11、スイッチング素子Q12、スイッチング素子Q13、スイッチング素子Q14の導通と遮断とを切換えることによって電力回収回路51とクランプ回路52とを動作させ、維持パルス波形を発生させる。
例えば、維持パルス波形を立ち上げる際には、スイッチング素子Q11をオンにして電極間容量CpとインダクタL10とを共振させ、電力回収用のコンデンサC10からスイッチング素子Q11、ダイオードD11、インダクタL10を通して走査電極SC1〜SCnに電力を供給する。そして、走査電極SC1〜SCnの電圧が電圧Vsに近づいた時点で、スイッチング素子Q13をオンにして、走査電極SC1〜SCnを駆動する回路を電力回収回路51からクランプ回路52に切換え、走査電極SC1〜SCnを電圧Vsにクランプする。
逆に、維持パルス波形を立ち下げる際には、スイッチング素子Q12をオンにして電極間容量CpとインダクタL10とを共振させ、電極間容量CpからインダクタL10、ダイオードD12、スイッチング素子Q12を通して電力回収用のコンデンサC10に電力を回収する。そして、走査電極SC1〜SCnの電圧が0(V)に近づいた時点で、スイッチング素子Q14をオンにして、走査電極SC1〜SCnを駆動する回路を電力回収回路51からクランプ回路52に切換え、走査電極SC1〜SCnをベース電位である0(V)にクランプする。
このようにして、維持パルス発生回路50は、維持パルスを発生させる。なお、これらのスイッチング素子は、MOSFETやIGBT等の一般に知られた素子を用いて構成することができる。
維持パルス発生回路60は、維持パルス発生回路50とほぼ同様の構成であり、電力回収用のコンデンサC20、スイッチング素子Q21、スイッチング素子Q22、逆流防止用のダイオードD21、逆流防止用のダイオードD22、共振用のインダクタL20を有し維持電極SU1〜SUnを駆動するときの電力を回収して再利用するための電力回収回路61と、維持電極SU1〜SUnを電圧Vsにクランプするためのスイッチング素子Q23および維持電極SU1〜SUnを接地電位(0(V))にクランプするためのスイッチング素子Q24を有するクランプ回路62とを備えており、パネル10の電極間容量Cpの一端である維持電極SU1〜SUnに接続されている。なお、維持パルス発生回路60の動作は維持パルス発生回路50と同様であるので説明を省略する。
また、図5には、電圧Ve1を発生する電源VE1、電圧Ve1を維持電極SU1〜SUnに印加するためのスイッチング素子Q26、スイッチング素子Q27、電圧ΔVeを発生する電源ΔVE、逆流防止用のダイオードD30、電圧Ve1に電圧ΔVeを積み上げるためのポンプアップ用のコンデンサC30、電圧Ve1に電圧ΔVeを積み上げて電圧Ve2とするためのスイッチング素子Q28、スイッチング素子Q29を示している。
例えば、図3に示した電圧Ve1を印加するタイミングでは、スイッチング素子Q26、スイッチング素子Q27を導通させて維持電極SU1〜SUnにダイオードD30、スイッチング素子Q26、スイッチング素子Q27を介して正の電圧Ve1を印加する。なお、このときスイッチング素子Q28を導通させ、コンデンサC30の電圧が電圧Ve1になるように充電しておく。また、図3に示した電圧Ve2を印加するタイミングでは、スイッチング素子Q26、スイッチング素子Q27は導通させたまま、スイッチング素子Q28を遮断させるとともにスイッチング素子Q29を導通させてコンデンサC30の電圧に電圧ΔVeを重畳し、維持電極SU1〜SUnに電圧Ve1+ΔVe、すなわち電圧Ve2を印加する。このとき、逆流防止用のダイオードD30の働きにより、コンデンサC30から電源VE1への電流は遮断される。
なお、電圧Ve1、電圧Ve2を印加する回路については、図5に示した回路に限定されるものではなく、例えば、電圧Ve1を発生させる電源と電圧Ve2を発生させる電源とそれぞれの電圧を維持電極SU1〜SUnに印加するための複数のスイッチング素子とを用いて、それぞれの電圧を必要なタイミングで維持電極SU1〜SUnに印加する構成とすることもできる。
なお、電力回収回路51のインダクタL10とパネル10の電極間容量CpとのLC共振の周期、および電力回収回路61のインダクタL20と同電極間容量CpとのLC共振の周期(以下、「共振周期」と記す)は、インダクタL10、インダクタL20のインダクタンスをそれぞれLとすれば、計算式「2π√(LCp)」によって求めることができる。そして、本実施の形態では、電力回収回路51、電力回収回路61における共振周期が2000nsecになるようにインダクタL10、インダクタL20を設定しているが、この数値は実施の形態における一例に過ぎず、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等に合わせて最適な値に設定すればよい。
次に、維持期間における駆動電圧波形の詳細について説明する。
上述したように、本実施の形態においては、無効電力を削減するためにパネル10をABBA電極構造にしているが、このABBA電極構造にした放電セルでは、放電のばらつきが発生しやすいことが確認された。
これは、ABBA電極構造では同種の電極同士が隣り合う(走査電極−走査電極、または維持電極−維持電極)ため、印加される維持パルスが同相となり、その結果、無効電力を削減する効果は得られるが、一方で、ABAB電極構造の放電セルと比較して列方向に隣接する放電セル間にかかる電界が小さくなり、行方向に隣接する放電セルに電荷が移動しやすくなって放電セル間で電荷の移動量が増え、それにより壁電荷のばらつきが大きくなるためと考えられる。
そして、壁電荷のばらつきが大きくなると、放電の発生に必要な印加電圧のばらつきも大きくなり、放電にばらつきが生じる。次に、壁電荷がばらつくことで発生する放電のばらつきの一例について、図面を用いて説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、接地電位を「GND」と記す。
図6は、本発明の実施の形態1における維持パルスの一例を示す概略波形図である。例えば、図6に示すように、直前の維持パルスが十分に立ち下がった後に、次の維持パルスを立ち上げるような維持動作では、電力回収回路による駆動を十分に行うことができるため、消費電力を抑えた駆動を行うことができる。
一方、電力回収回路の出力インピーダンスは、クランプ回路の出力インピーダンスと比較して大きいため、点灯させるべき放電セルの割合が増えて駆動時の負荷が大きくなると、放電が不安定に発生する場合がある。
図7は、本発明の実施の形態1における維持パルスの一例とそのときの発光の様子を示す概略波形図である。なお、図7に示す波形は、図6に示した維持パルスによる駆動を行ったときに、点灯率が比較的高いサブフィールドの維持期間で、走査電極SCi、維持電極SUiにおいて観測される電圧の変化の一例を示す波形であり、そのときの発光の強さを示す波形である。
まず、電力回収回路によって維持パルスが立ち上げられると、例えば図面のAに示すように、維持パルス電圧に壁電圧が加算された電圧が放電開始電圧を超えた時点で、1回目の放電が発生する。このとき、点灯率が比較的高いサブフィールドでは、この放電により瞬間的に大量の放電電流が流れるため、維持パルス電圧は一時的な電圧降下を生じる。その後、電力回収回路からクランプ回路に切換えられ維持パルス電圧が電圧Vsにクランプされると、例えば図面のBに示すように、2回目の放電が発生する。ただし、1回目の放電により壁電荷の一部が消費されるため、2回目の放電は強い放電にはならない。そのため、強い放電が発生した場合と比較して、蓄積される壁電荷も少なくなる。
その結果、直後の維持パルスでは、電力回収回路による維持パルスの立ち上げ時においては、放電が発生しないか、あるいはたとえ放電が発生しても非常に弱い放電にしかならない。したがって、上述した図面のAに示すような維持パルスの立ち上げ時における1回目の放電による壁電荷の消費といった現象はほとんど発生しない。そのため、その後、電力回収回路からクランプ回路に切換えられ維持パルス電圧が電圧Vsにクランプされたときに、図面のCに示すように、非常に強い放電が発生する。
また、図面のCに示したような強い放電は、放電セル内に十分な壁電荷を蓄積させるので、その次の維持パルスでは、その立ち上がりにおいて、図面のA、Bに示したような2回の放電が発生する。
このように、ABBA電極構造を有するパネル10の駆動においては、点灯率が比較的高いサブフィールドの維持期間において、上述したような、非常に強い1回の放電と、それよりは弱い連続した2回の放電とが繰り返され、その結果、輝度ムラと呼ばれる輝度のばらつきが発生する恐れがある。
なお、図示はしないが、点灯率が低ければ、上述したような放電のばらつきの発生は少なくなり、安定した維持放電が発生することが確認された。
一方、維持パルスの立ち上がりと立ち下がりとを重複させる重複期間を大きくしていくと、ABBA電極構造を有するパネル10であってかつ点灯率が高いサブフィールドであっても、放電のばらつきを低減できることが確認された。
図8は、本発明の実施の形態1における維持パルスの他の例を示す概略波形図である。なお、本実施の形態では、維持パルスの「立ち上がり期間」および「立ち下がり期間」、すなわち維持パルスの立ち上げ時および立ち下げ時に電力回収回路を動作させる時間を全セル点灯率検出回路46および最大値検出回路48における検出結果に応じて制御しているが、ここでは、維持パルスの「立ち上がり期間」および「立ち下がり期間」をそれぞれ1050nsecとし、維持パルスのパルス幅を2.7μsecとした波形形状の一例を示している。なお、この「パルス幅」とは、維持パルスがベース電位(0(V))から維持パルス電圧Vsに向かって上昇を開始し始めてから再度ベース電位にクランプされるまでの期間を表す。また、図6では説明しなかったが、図6に示した維持パルスにおいても、「立ち上がり期間」、「立ち下がり期間」およびパルス幅は、図8に示した維持パルスと同等とし、重複期間だけが異なるものとする。
そして、本発明者が検討を行った結果、例えばこのように設定された維持パルスであれば、維持パルスの立ち上がりと立ち下がりとを重複させる重複期間を850nsecに設定すれば、放電のばらつきを低減できることが確認された。次に、この詳細を説明する。
図9は、本発明の実施の形態1における維持パルスの一例とそのときの発光の様子を示す概略波形図である。なお、図9に示す波形は、図8に示した維持パルスによる駆動を行ったときに、点灯率が比較的高いサブフィールドの維持期間で、走査電極SCi、維持電極SUiにおいて観測される電圧の変化の一例を示す波形であり、そのときの発光の強さを示す波形である。
本発明者が詳細に検討を行った結果、重複期間を十分に大きくすれば、直前の維持パルスの立ち下がり時において、電力回収回路からクランプ回路に切換わり維持パルス電圧が接地電位にクランプされた時点で、図面のDに示すように、強制的に1回目の放電を発生させることができることを確認した。そして、この1回目の放電を強制的に発生させることで、引き続き、維持パルスの立ち上がり時において電力回収回路からクランプ回路に切換わり維持パルス電圧が電圧Vsにクランプされた時点で、図面のEに示すように2回目の放電を発生させ、かつこれら2回の放電をばらつきを抑えて発生させることができることを確認した。
上述したように、図6に示した駆動波形では、壁電荷の状態により、電力回収回路によって維持パルスを立ち上げる途中で放電が発生する場合と放電が発生しない場合とが混在し、その結果、放電のばらつきが発生していた。
しかし、図8に示した駆動波形では、壁電荷のばらつきにかかわらず、強制的に1回目の放電を発生させることができるため、連続した2回の放電を放電のばらつきを抑えて発生させることができ、輝度ムラの発生を防止することができる。
なお、上述した放電のばらつきを抑えた連続した2回の放電は、重複期間を設けさえすれば発生するといったものではなく、重複期間を十分な長さに設定することが必要である。そこで、本実施の形態では、維持パルスの立ち下がり時において、維持パルス電圧が接地電位にクランプされた時点で強制的な1回目の放電が発生するか否かで重複期間を分け、強制的な1回目の放電が発生するまでその長さを延長した重複期間を「第2の重複期間」と呼称し、強制的な1回目の放電を発生させることができない、「第2の重複期間」未満の長さに設定された重複期間を「第1の重複期間」と呼称する。したがって、重複期間を「0」に設定したものも「第1の重複期間」に含まれるものとし、図6に示した重複期間を設けない駆動波形も、重複期間を「第1の重複期間」に設定したものとする。
また、本発明者は、1回の維持動作において、重複期間を「第2の重複期間」にして強制的に2回の放電を発生させることで、続く維持動作での放電状態が安定し、かつその安定した放電がある程度継続することを確認した。
図10は、本発明の実施の形態1における「第2の重複期間」の発生の一例を示す概略波形図である。なお、ここでは、「第1の重複期間」を200nsecに設定し、「第2の重複期間」を850nsecに設定している。そして、この図10に示すように、複数回に1回(図10に示す例では、8回の重複期間のうちの1回)の頻度で「第2の重複期間」を発生させ、残りの重複期間(図10に示す例では、8回の重複期間のうちの残りの7回)を「第1の重複期間」としたとしても、安定した放電を発生させることができ、放電のばらつきを低減させる効果が得られることを確認した。
すなわち、「第2の重複期間」を発生させる場合、必ずしも維持期間の全てで重複期間を「第2の重複期間」にせずともよく、複数回に1回(例えば、8回のうち1回)の頻度で「第2の重複期間」を発生させるだけで、放電のばらつきを低減させる効果を得ることができる。
また、本発明者は、残りの重複期間(図10に示す例では、8回のうちの7回)を「第1の重複期間」とすることで、発光効率の改善による消費電力の削減効果が得られることも合わせて確認した。
図11は、本発明の実施の形態1における「第2の重複期間」の発生頻度を変えて駆動したときの点灯率と発光効率との関係を示す概略図である。
図11において、横軸は点灯率(ここでは、全セル点灯率を表す)を、縦軸は発光効率を表す。また、実線は維持期間の全てで重複期間を「第2の重複期間」にしたときの結果を表し、破線は維持期間の全てで重複期間を「第1の重複期間」にしたときの結果を表し、一点鎖線は図10に示した維持パルス、すなわち8回の重複期間のうち1回を「第2の重複期間」にし残りの7回を「第1の重複期間」にしたときの結果を表す。
そして、図11に示すように、維持期間の全てで重複期間を「第1の重複期間」にしたときが最も発光効率が良いが、8回の重複期間うちの1回を「第2の重複期間」とし残りの7回を「第1の重複期間」とすることで、維持期間の全てで重複期間を「第2の重複期間」にしたときと比べて発光効率が大きく改善されることが確認された。発光効率を改善できれば、消費電力を抑えた駆動にすることができ、消費電力の削減を図ることができる。
なお、図8、図10では「第2の重複期間」を850nsecに設定し、さらに図10では、「第1の重複期間」を200nsecに設定し、8回の重複期間うちの1回を「第2の重複期間」とし残りの7回を「第1の重複期間」とする構成を説明したが、これらの数値は単なる一例を挙げたものに過ぎない。「第1の重複期間」、「第2の重複期間」の長さ、および「第2の重複期間」の発生頻度は、維持パルスの波形形状やパネルの特性、プラズマディスプレイ装置の仕様等に応じて、最適に設定すればよい。
一方、放電のばらつきおよび消費電力と維持パルスの「立ち上がり期間」とには関連性があり、「立ち上がり期間」の長さに依存して放電のばらつきおよび消費電力も変化する。まず、放電のばらつきと「立ち上がり期間」とについて説明する。
図12、図13、図14は、本発明の実施の形態1における維持パルスの「立ち上がり期間」と放電のばらつきとの関係を示す波形図である。なお、図12は「立ち上がり期間」を400nsecに設定したときの測定結果を示した図であり、図13は「立ち上がり期間」を500nsecに設定したときの測定結果を示した図であり、図14は「立ち上がり期間」を550nsecに設定したときの測定結果を示した図である。また、図12、図13、図14では、複数の放電セルにおける測定結果を1つのグラフに重ねて示している。
なお、図12、図13、図14において、縦軸は発光強度を、横軸は電力回収回路の動作が開始してからの経過時間を示す。また、縦軸における単位(a.u.)は任意単位(arbitrary unit)を表す。また、ここでは、電力回収回路の共振周期を1200nsec、パルス幅を2.7μsec、重複期間を0nsec、「立ち下がり期間」を900nsecに設定し、「立ち上がり期間」を400nsec(図12)、500nsec(図13)、550nsec(図14)の3通りで変えて実験を行った。
例えば、図12に示すように、「立ち上がり期間」を比較的短い400nsecに設定すると、ほとんどの放電セルがほぼ同じ時刻に発光し、放電のばらつきが抑えられていることが確認された。これは、「立ち上がり期間」が短いため、ほとんどの放電セルにおいて、図7において説明した1回目の放電が強く発生しているためと考えられる。
また、図13に示すように、「立ち上がり期間」を図12よりも100nsec延ばして500nsecに設定すると、放電セルの発光時刻にばらつきが生じ、放電のばらつきが大きくなることが確認された。これは、「立ち上がり期間」が適切に設定されていないため、図7において説明した1回目の放電が強く発生する放電セルと、同じく2回目の放電が強く発生する放電セルとに分かれたためと考えられる。
また、図14に示すように、「立ち上がり期間」を十分に長い550nsecに設定すると、ほとんどの放電セルが、図12に示した発光のタイミングよりも遅いほぼ同じ時刻に発光し、放電のばらつきが抑えられていることが確認された。これは、「立ち上がり期間」が十分に長いため、ほとんどの放電セルにおいて、図7において説明した2回目の放電が強く発生しているためと考えられる。
このように、維持パルスにおける「立ち上がり期間」を次の2つのいずれか、すなわち、ほとんどの放電セルにおいて図7において説明した1回目の放電が強く発生する長さ、または、ほとんどの放電セルにおいて同じく2回目の放電が強く発生する長さのいずれかに設定することで、放電のばらつきを低減させることが可能となる。
次に、消費電力と「立ち上がり期間」とについて説明する。なお、消費電力に影響を与える項目として、発光効率、発光輝度、無効電力、維持放電を安定に発生させるために必要な維持パルス電圧Vsが考えられる。そこで、ここでは、各項目と「立ち上がり期間」との関係について順に記す。
図15は、本発明の実施の形態1における維持パルスの「立ち上がり期間」と発光効率との関係を示す特性図である。図15において、縦軸は発光効率の相対比率を、横軸は「立ち上がり期間」の長さを示す。なお、縦軸における単位(%)は、発光効率(lm/W:単位電力あたりの発光輝度)の検出結果を所定の値を100%として相対比率化したものであり、数値が大きいほど発光効率が良いことを表す。また、図15および続く図16から図18では、電力回収回路の共振周期を2000nsec、パルス幅を2.7μsec、重複期間を0nsec、「立ち下がり期間」を900nsecに設定し、「立ち上がり期間」を500nsecから1000nsecまで50nsecずつ延長して実験を行った。
図15に示すように、「立ち上がり期間」の長さによって発光効率は変化する。そして、図15に示すように、「立ち上がり期間」を長くしていくと、発光効率は徐々に低下していき、その後上昇して、再び低下していく。このことから、発光効率を改善できるポイントが2箇所(図15では、約500nsecと約900nsecとの2箇所)あることがわかる。これは、「立ち上がり期間」を徐々に延ばしていくことで、当初1つの維持パルスで1回の放電が安定に発生していた状態(1つ目の発光効率改善ポイント)から、1回の放電と連続した2回の放電とを繰り返す状態に移行し、その後、連続した2回の放電が安定に発生する状態(2つ目の発光効率改善ポイント)へと移行したためと考えられる。
図16は、本発明の実施の形態1における維持パルスの「立ち上がり期間」と発光輝度との関係を示す特性図である。図16において、縦軸は発光輝度の相対比率を、横軸は「立ち上がり期間」の長さを示す。なお、縦軸における単位(%)は、発光輝度(lm)の検出結果を所定の値を100%として相対比率化したものであり、数値が大きいほど発光輝度が高いことを表す。
図16に示すように、「立ち上がり期間」の長さによって発光輝度は変化する。
そして、図15と同様に、「立ち上がり期間」を長くしていくと、発光輝度は徐々に低下していき、その後上昇して、再び低下していく。このことから、発光輝度を向上できるポイントが、図15と同じく2箇所(図16では、約500nsecと約800nsecとの2箇所)あることがわかる。これは、図15と同様に、「立ち上がり期間」を徐々に延ばしていくことで、当初1つの維持パルスで1回の放電が安定に発生していた状態(1つ目の発光輝度改善ポイント)から、1回の放電と連続した2回の放電とを繰り返す状態に移行し、その後、連続した2回の放電が安定に発生する状態(2つ目の発光輝度改善ポイント)へと移行したためと考えられる。なお、2つ目の改善ポイントに関し、図15と図16とでは約100nsecのずれがあるが、これは、発光効率が最良になる「立ち上がり期間」と発光輝度が最良になる「立ち上がり期間」とに差があり、その差は、連続した2回の放電のうちの1回目の放電と2回目の放電のどちらを強めるかということに関連しているためと考えられる。
図17は、本発明の実施の形態1における維持パルスの「立ち上がり期間」と無効電力との関係を示す特性図である。図17において、縦軸は無効電力の相対比率を、横軸は「立ち上がり期間」の長さを示す。なお、縦軸における単位(%)は、無効電力(W)の検出結果を所定の値を100%として相対比率化したものであり、数値が大きいほど無効電力が大きいことを表す。
図17に示すように、「立ち上がり期間」の長さによって無効電力は変化する。そして、「立ち上がり期間」が短いほど無効電力は大きくなっている。これは、「立ち上がり期間」を短くすることで、電力回収回路に回収された電力が放電の発生に使用される比率が減少するためと考えられる。
図18は、本発明の実施の形態1における維持パルスの「立ち上がり期間」と維持パルス電圧Vsとの関係を示す特性図である。図18において、縦軸は安定した維持放電を発生させるために必要な維持パルス電圧Vsを、横軸は「立ち上がり期間」の長さを示す。
図18に示すように、「立ち上がり期間」の長さによって、安定した維持放電を発生させるために必要な維持パルス電圧Vsの電圧値は変化し、「立ち上がり期間」が長いほど必要な維持パルス電圧Vsは大きくなっている。これは、「立ち上がり期間」が長くなることで、クランプ回路で維持放電を発生させるときのような強い放電を発生させることができなくなり、その分放電セル内に蓄積される壁電荷が減少するためと考えられる。
これらのことから、「立ち上がり期間」を適宜制御することで、消費電力に影響を与える項目、すなわち発光効率、発光輝度、無効電力、維持放電を安定に発生させるために必要な維持パルス電圧Vsのそれぞれに関し、改善を図れることが確認された。また、改善効果を最良にするための「立ち上がり期間」は各項目で必ずしも一致せず、重視する項目に応じて「立ち上がり期間」を設定すればよいことが確認された。
なお、上述した各効果と「立ち上がり期間」の長さとの関係は共振周期によって変化するため、「立ち上がり期間」の長さは共振周期に応じて最適に設定することが望ましい。
次に、全セル点灯率、部分点灯率について説明する。
上述したように、「第2の重複期間」を発生させる頻度や「立ち上がり期間」の長さをパネルの特性等に応じて最適に設定することで、放電のばらつきを低減する効果および消費電力を低減する効果を得ることができる。しかし、これらの最適と考えられる範囲は、放電セルの点灯率に応じても変化する。これは、電力回収回路の出力インピーダンスが、クランプ回路の出力インピーダンスと比較して大きいため、点灯させるべき放電セル(以下、「点灯セル」とも記す)の割合が変化することで「立ち上がり期間」の波形形状が変化するためである。
したがって、点灯率を検出し、その検出結果に応じた制御を行うことで各設定を最適にすることができる。そして、本実施の形態では、パネル10の全放電セルに対する点灯セルの割合を示す全セル点灯率を検出し、各制御に用いている。しかし、同じ全セル点灯率であっても、表示する画像の図柄、すなわち点灯セルの分布によって、1対の表示電極対上に発生する点灯セルの数は大きく変化し、駆動負荷も大きく変化する。
図19は、全セル点灯率が等しくかつ点灯セルの分布が異なる図柄を説明するための概略図である。なお、図19において、表示電極対24は、図2と同様に、図面における左右方向に延長して配列されているものとする。また、図19において斜線で示した部分は維持放電を発生させない非点灯セルの分布を表し、斜線のない白抜きの部分は点灯セルの分布を表す。
例えば、図19の上段に示すように、点灯セルが(図面における)上下に延びた形状で分布している場合は、1対の表示電極対上に発生する点灯セルの数は比較的少なく、その1対の表示電極対における駆動負荷も小さい。しかし、同じ全セル点灯率であっても、図19の下段に示すように、点灯セルが(図面における)左右に延びた形状で分布している場合は、ある1対の表示電極対上に発生する点灯セルの数は多くなり、その1対の表示電極対の駆動負荷は大きくなる。
このように、同じ全セル点灯率であっても、図柄に応じて部分的な駆動負荷の違いが発生し、図柄によっては部分的に駆動負荷の大きい表示電極対が発生することがある。
そこで、本実施の形態では、全セル点灯率に加え、パネルの表示領域を複数の領域に分け、各領域における点灯率を部分点灯率として検出する構成とする。
図20は、本発明の実施の形態1における部分点灯率を検出する領域の一例を示す概略図である。
本実施の形態では、図20に示すように、パネル10の表示領域を、その境界が表示電極対24と平行になるように設け、かつ各領域に属する表示電極対数ができるだけ均等になるようにした8つの領域に分けるものとする。そして、各領域毎に点灯率を検出して部分点灯率とする。例えば、表示電極対数が1080のパネルであれば、表示電極対数135ずつの領域に分け、それぞれの領域で点灯率を検出する。これにより、サブフィールド毎に8つの部分点灯率を検出することができる。
なお、本実施の形態では、パネル10の表示領域を8つの領域に分ける構成を説明したが、この数値は単なる一例を挙げたものに過ぎず、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等に応じて、最適に設定すればよい。本実施の形態では、パネル10の表示領域を少なくとも2つの領域に分けてそれぞれの部分点灯率を検出することで上述と同様の効果を得ることができる。また、表示電極対の駆動に用いるICの仕様に応じて領域を分ける構成としてもよい。例えば、1つのICで108本の走査電極または維持電極を駆動するように構成したプラズマディスプレイ装置では、このICに合わせて108対の表示電極対を1つの領域とし、例えば表示電極対数1080のパネルを10の領域に分ける構成としてもよい。あるいは、表示電極対数と領域数とを同数とし、表示電極対毎に点灯率を検出する構成としてもかまわない。
そして、本実施の形態では、「立ち上がり期間」および「立ち下がり期間」の少なくとも一方の長さが異なる複数の維持パルスを発生させるとともに、発生させる維持パルスの組み合わせ、および「第2の重複期間」の発生頻度を異ならせた複数の駆動パターン(ここでは、第1駆動パターン、第2駆動パターン、第3駆動パターン、第4駆動パターン、第5駆動パターンの5つの駆動パターン)を発生させる。そして、検出した部分点灯率の最大値をサブフィールド毎に検出し、検出した最大値と全セル点灯率とに応じて駆動パターンを切換えて維持パルスを発生させる構成とする。
なお、維持パルスの立ち上がりで強い放電を発生させると、維持パルスの立ち下がりにおいて微弱な放電が発生することがあることが確認された。この放電は、維持放電で形成された壁電荷を減少させるため、この立ち下がりによる放電が発生すると、壁電荷が不足して続く維持放電を不安定に発生させる恐れがあり、好ましくない。そして、立ち下がりにかける時間を長くすることで、この立ち下がりにおける微弱な放電を低減できることが実験的に確認された。一方、維持パルスの立ち上がりで発生させる放電の強度は、パネルの駆動負荷や維持パルスの立ち上がりにおける波形形状によって変化する。そこで、本実施の形態では、検出した全セル点灯率、部分点灯率の最大値および発生させる維持パルスの「立ち上がり期間」等を考慮して「立ち下がり期間」を設定している。
図21は、本発明の実施の形態1における全セル点灯率および部分点灯率の最大値と駆動パターンの切換えとの関係の一例を示す図である。
本実施の形態では、図21に示すように、全セル点灯率が低い(ここでは、15%未満)サブフィールドでは、部分点灯率の最大値にかかわらず、第1駆動パターンで維持パルスを発生させる。この第1駆動パターンは、発光輝度の向上を目的とした駆動パターンであり、これにより、全セル点灯率が低いとき、すなわちパネル10の駆動負荷が全体的に低いときの発光輝度を向上させて、画像表示品質の向上を図る。
また、全セル点灯率が高い(ここでは、60%以上)サブフィールドでは、部分点灯率の最大値にかかわらず、第2駆動パターンで維持パルスを発生させる。この第2駆動パターンは、無効電力削減と発光効率改善を目的とした駆動パターンであり、これにより、全セル点灯率が高いとき、すなわちパネル10の駆動負荷が全体的に高いときに無効電力を削減するとともに発光効率を改善して消費電力の低減を図る。
そして、全セル点灯率が所定の範囲内(ここでは、15%以上60%未満)のサブフィールドでは、部分点灯率の最大値に応じて駆動パターンを切換える。具体的には、全セル点灯率が所定の範囲内(ここでは、15%以上60%未満)にあって、かつ部分点灯率の最大値が高ければ(ここでは、60%以上)、第3駆動パターンで維持パルスを発生させる。この第3駆動パターンは、発光輝度の向上と無効電力削減および発光効率改善とを目的とした駆動パターンであり、これにより、全セル点灯率が所定の範囲内でかつ部分点灯率の最大値が高いとき、すなわちパネル10の駆動負荷が部分的に高いときに、発光輝度の向上による画像表示品質の向上と、無効電力削減および発光効率改善による消費電力の低減とを図る。
また、全セル点灯率が所定の範囲内(ここでは、15%以上60%未満)にあって、かつ部分点灯率の最大値が低ければ(ここでは、60%未満)、全セル点灯率によって駆動パターンを切換える。具体的には、全セル点灯率が所定の範囲内の低い方(ここでは、15%以上30%未満)にあって、かつ部分点灯率の最大値が低ければ(ここでは、60%未満)、第4駆動パターンで維持パルスを発生させる。この第4駆動パターンは、無効電力削減および発光効率改善の効果を最も高めることを目的とした駆動パターンであり、これにより、通常の動画表示において表示頻度が比較的高いと考えられる、全セル点灯率がやや低くかつ部分点灯率の最大値も低い画像を表示するときの、無効電力削減および発光効率改善による消費電力の低減効果の向上を図る。
また、全セル点灯率が所定の範囲内の高い方(ここでは、30%以上60%未満)にあって、かつ部分点灯率の最大値が低ければ(ここでは、60%未満)、第5駆動パターンで維持パルスを発生させる。この第5駆動パターンは、無効電力削減および発光効率改善の効果を高めることを目的とした駆動パターンであり、これにより、全セル点灯率がやや高くかつ部分点灯率の最大値が低いとき、すなわちパネル10における駆動負荷の高い領域が第3駆動パターンを適用するときほどは偏っておらず、全体的にやや駆動負荷が高いときに、無効電力削減および発光効率改善による消費電力の低減を図る。
次に、各駆動パターンの詳細について説明する。図22は、本発明の実施の形態1における第1駆動パターンを示す概略図であり、図23は、本発明の実施の形態1における第2駆動パターンを示す概略図であり、図24は、本発明の実施の形態1における第3駆動パターンを示す概略図であり、図25は、本発明の実施の形態1における第4駆動パターンを示す概略図であり、図26は、本発明の実施の形態1における第5駆動パターンを示す概略図である。なお、図22、図23、図24、図25、図26において、図面内の上に示した図は発生させる維持パルスの概略波形形状を示した図であり、図面内の下に示した図は「立ち上がり期間」、「立ち下がり期間」、「第1の重複期間」、「第2の重複期間」のそれぞれの長さ、および「第1の重複期間」、「第2の重複期間」の発生箇所を示した図である。また、図22、図23、図24、図25、図26においては、各維持パルスのパルス幅は2.7μsecであるものとする。
そして、本実施の形態では、図22、図23、図24、図25、図26に示すように、8つの維持パルスから構成される1つのパターンを繰り返して発生させる構成としている。また、全ての駆動パターンにおいて、電力回収回路における共振周期は2000nsecに設定している。
本実施の形態における第1駆動パターンにおいては、図22に示すように、1つ目の維持パルス(図面のA)は「立ち上がり期間」を700nsec、「立ち下がり期間」を1150nsecとし、2つ目の維持パルス(図面のB)はそれぞれを1100nsec、900nsecとし、3つ目の維持パルス(図面のC)はそれぞれを700nsec、900nsecとし、4つ目の維持パルス(図面のD)はそれぞれを600nsec、900nsecとし、5つ目の維持パルス(図面のE)はそれぞれを600nsec、1000nsecとし、6つ目の維持パルス(図面のF)、7つ目の維持パルス(図面のG)、8つ目の維持パルス(図面のH)はそれぞれを700nsec、900nsecとしている。そして、1つ目の維持パルス(図面のA)の立ち下がりと2つ目の維持パルス(図面のB)の立ち上がりとの間に「第2の重複期間」(ここでは、850nsec)を設け、それ以外は「第1の重複期間」(ここでは、200nsec)としている。そして、この第1駆動パターンによる駆動を行うことで、従来の駆動と比較して、発光輝度を約9.6%向上させることができた。なお、ここでの従来の駆動とは、重複期間0nsec、共振周期2000nsec、パルス幅2.7μsec、「立ち上がり期間」800nsec、「立ち下がり期間」900nsecの維持パルス波形による駆動を表す。
また、本実施の形態における第2駆動パターンにおいては、図23に示すように、1つ目の維持パルス(図面のA)は「立ち上がり期間」を600nsec、「立ち下がり期間」を1100nsecとし、2つ目の維持パルス(図面のB)はそれぞれを1000nsec、900nsecとし、3つ目の維持パルス(図面のC)はそれぞれを750nsec、900nsecとし、4つ目の維持パルス(図面のD)はそれぞれを600nsec、900nsecとし、5つ目の維持パルス(図面のE)、6つ目の維持パルス(図面のF)、7つ目の維持パルス(図面のG)、8つ目の維持パルス(図面のH)はそれぞれを750nsec、900nsecとしている。そして、1つ目の維持パルス(図面のA)の立ち下がりと2つ目の維持パルス(図面のB)の立ち上がりとの間に「第2の重複期間」(ここでは、850nsec)を設け、それ以外は「第1の重複期間」(ここでは、200nsec)としている。そして、この第2駆動パターンによる駆動を行うことで、従来の駆動と比較して、発光輝度を約1.7%向上させ、無効電力を約1.3%低減し、発光効率を約2.9%向上させることができた。
また、本実施の形態における第3駆動パターンにおいては、図24に示すように、1つ目の維持パルス(図面のA)は「立ち上がり期間」を1000nsec、「立ち下がり期間」を1050nsecとし、2つ目の維持パルス(図面のB)はそれぞれを1000nsec、900nsecとし、3つ目の維持パルス(図面のC)はそれぞれを800nsec、900nsecとし、4つ目の維持パルス(図面のD)はそれぞれを650nsec、900nsecとし、5つ目の維持パルス(図面のE)、6つ目の維持パルス(図面のF)、7つ目の維持パルス(図面のG)はそれぞれを800nsec、900nsecとし、8つ目の維持パルス(図面のH)はそれぞれを800nsec、1050nsecとしている。そして、1つ目の維持パルス(図面のA)の立ち下がりと2つ目の維持パルス(図面のB)の立ち上がりとの間、および8つ目の維持パルス(図面のH)の立ち下がりと1つ目の維持パルス(図面のA)の立ち上がりとの間に「第2の重複期間」(ここでは、850nsec)を設け、それ以外は「第1の重複期間」(ここでは、200nsec)としている。そして、この第3駆動パターンによる駆動を行うことで、従来の駆動と比較して、発光輝度を約3%向上させ、無効電力を約4.2%低減し、発光効率を約6.8%向上させることができた。
また、本実施の形態における第4駆動パターンにおいては、図25に示すように、1つ目の維持パルス(図面のA)は「立ち上がり期間」を850nsec、「立ち下がり期間」を900nsecとし、2つ目の維持パルス(図面のB)、3つ目の維持パルス(図面のC)はそれぞれを850nsec、900nsecとし、4つ目の維持パルス(図面のD)はそれぞれを550nsec、900nsecとし、5つ目の維持パルス(図面のE)はそれぞれを550nsec、1000nsecとし、6つ目の維持パルス(図面のF)、7つ目の維持パルス(図面のG)はそれぞれを850nsec、900nsecとし、8つ目の維持パルス(図面のH)はそれぞれを550nsec、1000nsecとしている。そして、この駆動パターンでは「第2の重複期間」を設けず、全てを「第1の重複期間」(ここでは、0nsec)としている。そして、この第4駆動パターンによる駆動を行うことで、従来の駆動と比較して、無効電力を約6.3%低減し、発光効率を約11.1%向上させることができた。
また、本実施の形態における第5駆動パターンにおいては、図26に示すように、1つ目の維持パルス(図面のA)は「立ち上がり期間」を850nsec、「立ち下がり期間」を900nsecとし、2つ目の維持パルス(図面のB)はそれぞれを800nsec、900nsecとし、3つ目の維持パルス(図面のC)はそれぞれを850nsec、900nsecとし、4つ目の維持パルス(図面のD)、5つ目の維持パルス(図面のE)はそれぞれを550nsec、900nsecとし、6つ目の維持パルス(図面のF)はそれぞれを800nsec、900nsecとし、7つ目の維持パルス(図面のG)はそれぞれを850nsec、900nsecとし、8つ目の維持パルス(図面のH)はそれぞれを550nsec、900nsecとしている。そして、この駆動パターンでも「第2の重複期間」を設けず、全てを「第1の重複期間」(ここでは、0nsec)としている。そして、この第5駆動パターンによる駆動を行うことで、従来の駆動と比較して、無効電力を約4.5%低減し、発光効率を約8.2%向上させることができた。
そして、これらの5つの駆動パターンを全セル点灯率および部分点灯率の最大値に応じて切換えてパネル10を駆動することで、表示画像の図柄にもよるが、一般的な動画表示において、平均して約10W〜30Wの消費電力削減効果を確認することができた。合わせて、放電のばらつき低減効果による画像表示品質の向上を確認することができた。
なお、本実施の形態では、「第2の重複期間」により発生させる強制的な2回の放電がより安定に発生するように、「第2の重複期間」を構成する維持パルスの「立ち上がり期間」および「立ち下がり期間」を他よりも長く設定している。
また、本実施の形態では、駆動負荷が比較的小さく、比較的強い放電が発生しやすいと考えられるサブフィールドで用いる駆動パターンにおいて、立ち下がりの緩やかな維持パルスを発生させている。具体的には、第1駆動パターンおよび第4駆動パターンにおいて、5つ目の維持パルス(図面のE)の立ち下がりが比較的緩やかになるように、また、第4駆動パターンでは、8つ目の維持パルス(図面のH)の立ち下がりも比較的緩やかになるようにそれぞれ「立ち下がり期間」を設定している。これは、第1駆動パターンおよび第4駆動パターンにおいて、4つ目の維持パルス(図面のD)と5つ目の維持パルス(図面のE)とで強い放電が連続して発生する恐れがあるためであり、また、第4駆動パターンでは8つ目の維持パルス(図面のH)でも強い放電が発生する恐れがあるためである。そして、これにより、維持パルスの立ち下がりにおいて発生する恐れのある微弱な放電を防止することができ、続く維持放電を安定に発生させることが可能となる。
また、本実施の形態では、第4駆動パターン、第5駆動パターンにおいて「第2の重複期間」を設けていないが、これは、全ての重複期間を「第1の重複期間」に設定したとしても、部分点灯率が低ければ、維持パルス発生回路から見た駆動負荷が小さくなり、放電のばらつきが少なくなって、安定した維持放電を行うことができるからである。また、全ての重複期間を「第1の重複期間」に設定することで発光効率を上げることができ、消費電力の削減を図ることができるからである。
また、本実施の形態では、第1駆動パターンにおいて全セル点灯率が低いにもかかわらず「第2の重複期間」を設けているが、これは次のような理由による。第1駆動パターンは、発光輝度の向上を目的とした駆動パターンであり、そのため、強い維持放電が発生しやすく、また、全セル点灯率が低いことで駆動負荷も十分に小さいため、より強い放電が発生しやすい。ABBA電極構造を有するパネル10では、強い放電が発生すると壁電荷のばらつきも大きくなりやすく、その結果放電のばらつきが発生する恐れがある。しかし、第1駆動パターンに「第2の重複期間」を設けることで、この放電のばらつきを防止することが可能となるからである。
なお、本実施の形態では、8つの維持パルスから構成される1つのパターンを繰り返し発生させる構成を説明したが、維持パルスの総数が8未満の維持期間においては、全ての維持パルスを同一の波形形状としてもよく、あるいは、プラズマディスプレイ装置の仕様等に応じて任意に設定してもよい。
また、ここに示した各駆動パターンの構成は単なる一例に過ぎず、適宜最適に設定すればよい。また、8つの維持パルスで1つのパターンを構成する例に限定されるものではなく、より多くの維持パルス、あるいはより少ない維持パルスで1つのパターンを構成してもかまわない。
次に、維持期間における駆動電圧波形の発生について説明する。図27は、本発明の実施の形態1における維持パルス発生回路50、維持パルス発生回路60の動作を説明するためのタイミングチャートである。ここでは、維持パルスの繰り返し周期(以下、「維持周期」と略記する)の1周期分をT1〜T6で示した6つの期間に分割し、それぞれの期間について説明する。
なお、以下の説明においてスイッチング素子を導通させる動作をオン、遮断させる動作をオフと表記し、図面にはスイッチング素子をオンさせる信号を「ON」、オフさせる信号を「OFF」と表記する。また、図27では、正極の波形を用いて説明をするが、本発明はこれに限るものではない。例えば、負極の波形における実施の形態例は省略するが、以下の説明の正極の波形において「立ち上がり」と表現しているものを、負極の波形においては「立ち下がり」に読みかえることで、負極の波形であっても同様の効果を得ることができるものである。
(期間T1)
時刻t1でスイッチング素子Q12をオンにする。すると、走査電極SC1〜SCn側の電荷はインダクタL10、ダイオードD12、スイッチング素子Q12を通してコンデンサC10に流れ始め、走査電極SC1〜SCnの電圧が下がり始める。インダクタL10と電極間容量Cpとは共振回路を形成しているので、共振周期の1/2の時間経過後の時刻t2bにおいて走査電極SC1〜SCnの電圧は0(V)付近まで低下する。しかし共振回路の抵抗成分等による電力損失のため、走査電極SC1〜SCnの電圧は0(V)までは下がらない。そして、時刻t2bでスイッチング素子Q14をオンにする。すると、走査電極SC1〜SCnはスイッチング素子Q14を通して直接に接地されるため、走査電極SC1〜SCnの電圧は0(V)にクランプされる。
なお、この間、スイッチング素子Q24はオンに保持されており、維持電極SU1〜SUnは0(V)にクランプされている。
(期間T2)
そして、時刻t2bでスイッチング素子Q14をオンにする。すると走査電極SC1〜SCnはスイッチング素子Q14を通して直接に接地されるため、走査電極SC1〜SCnの電圧は接地電位である0(V)にクランプされる。
また、本実施の形態では、時刻t2bより所定の時間だけ早い時刻t2aでスイッチング素子Q21をオンにする。このように、本実施の形態では、時刻t2bより所定の時間だけ早い時刻t2aでスイッチング素子Q21をオンにすることで、期間T1と期間T2とが重複する重複期間を設けている。一例として、重複期間を「第2の重複期間」(例えば、850nsec)にするときにはこの所定の時間を850nsecとし、重複期間を「第1の重複期間」(例えば、0nsec)にするときには0nsec、すなわち、時刻t2aと時刻t2bとをほぼ同時刻にする。
そして、このスイッチング素子Q21のオンにより、インダクタL20と電極間容量Cpとは共振回路を形成しているので、電力回収用のコンデンサC20からスイッチング素子Q21、ダイオードD21、インダクタL20を通して維持電極SU1〜SUnへ電流が流れ始め、維持電極SU1〜SUnの電圧が上がり始める。インダクタL20と電極間容量Cpとの共振周期は2000nsecに設定されているため、時刻t2aから1000nsec後には維持電極SU1〜SUnの電圧は電圧Vs付近まで上昇する。しかし、駆動回路の出力インピーダンスや駆動負荷の影響で、電圧Vsまでは上昇しない。そして、本実施の形態では、時刻t2aから時刻t3までの期間T2、すなわち電力回収回路61を用いた維持パルスの立ち上がり時間を1050nsecとしている。
(期間T3)
そして、時刻t3でスイッチング素子Q23をオンにする。すると維持電極SU1〜SUnはスイッチング素子Q23を通して直接に電源VSへ接続されるため、維持電極SU1〜SUnの電圧は電圧Vsにクランプされ強制的に電圧Vsまで上昇する。この期間T3では維持電極SU1〜SUnの電圧は電圧Vsに保たれる。
(期間T4〜期間T6)
走査電極SC1〜SCnに印加される維持パルスと維持電極SU1〜SUnに印加される維持パルスとは同じ波形であり、期間T4から期間T6までの動作は、期間T1から期間T3までの動作を走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとを入れ替えて駆動する動作に等しいので説明を省略する。
そして、本実施の形態においては、期間T1、期間T4を「立ち下がり期間」とし、期間T2、期間T5を「立ち上がり期間」として、それぞれを必要な長さに設定することで、「立ち上がり期間」および「立ち下がり期間」を制御している。
なお、スイッチング素子Q12は時刻t2b以降、時刻t5aまでにオフすればよく、スイッチング素子Q21は時刻t3以降、時刻t4までにオフすればよい。また、スイッチング素子Q22は時刻t5b以降、次の時刻t2aまでにオフすればよく、スイッチング素子Q11は時刻t6以降、次の時刻t1までにオフすればよい。また、維持パルス発生回路50、維持パルス発生回路60の出力インピーダンスを下げるために、スイッチング素子Q24は時刻t2a直前に、スイッチング素子Q13は時刻t1直前にオフにすることが望ましく、スイッチング素子Q14は時刻t5a直前に、スイッチング素子Q23は時刻t4直前にオフにすることが望ましい。
維持期間においては、以上の期間T1〜期間T6の動作を、必要なパルス数に応じて繰り返す。このようにして、ベース電位である0(V)から電圧Vsに変位する維持パルス電圧を、表示電極対24のそれぞれに交互に印加して放電セルを維持放電させる。
以上説明したように、本実施の形態では、「立ち上がり期間」および「立ち下がり期間」の少なくとも一方の長さが異なる複数の維持パルスを発生させるとともに、発生させる維持パルスの組み合わせ、および「第2の重複期間」の発生頻度を異ならせた複数(ここでは、5つ)の駆動パターンを発生させる。そして、検出した全セル点灯率と部分点灯率の最大値とに応じて駆動パターンを切換えて維持パルスを発生させる構成とする。これにより、消費電力を低減しつつ放電のばらつきを抑えた駆動を実現し、パネルの画像表示品質を向上させることが可能となる。
(実施の形態2)
実施の形態1においては、全セル点灯率および部分点灯率の最大値を検出して、複数の駆動パターンを切換える構成を説明した。このとき、検出した全セル点灯率が点灯率しきい値をまたいで頻繁に変動したり、あるいは検出した部分点灯率の最大値が最大値しきい値をまたいで頻繁に変動するような場合、駆動パターンの頻繁な切換わりが発生する恐れがある。
上述したように、本実施の形態における各駆動パターンは、発光輝度の向上を目的としたものや無効電力の削減を目的としたもの等、目的とする効果に応じて発生させる維持パルスのパターンを変えている。そのため、駆動パターンの切換えにより表示画像の輝度に変化が発生する場合がある。しかし、静止画像や動きの緩やかな動画像を表示しているときには、輝度の変動は目に付きやすく、できるだけ輝度の変化が少ないことが望ましい。
そこで、本実施の形態では、各駆動パターン間にヒステリシス特性を設け、駆動パターンの頻繁な切換わりが発生するのを低減する構成とする。
なお、本発明は、実施の形態1で説明したとおり、全セル点灯率と部分点灯率の最大値との2つのパラメータで駆動パターンを切換えており、この2つのパラメータを2軸とする平面上に各駆動パターンを配置すると、1つの駆動パターンが複数の異なる駆動パターンと隣り合う。例えば、図21に示したように、第3駆動パターンは、第1駆動パターン、第2駆動パターン、第4駆動パターン、第5駆動パターンのいずれとも隣り合っている。
したがって、異なる2つの駆動パターン間に、単に1次元的にヒステリシス特性を設けるだけでは、本発明のように2つのパラメータを2軸とする平面上に各駆動パターンが配置される構成には対応できない。
そこで、本実施の形態では、上述の平面上に各駆動パターンを配置したときに、隣接する駆動パターン間に、2次元的にヒステリシス特性を設けて維持パルスを発生させる構成とする。なお、以下の説明においては、上述の平面上においてヒステリシス特性が設定された領域を「ヒステリシス領域」と呼称する。
図28は、本発明の実施の形態2における全セル点灯率と部分点灯率の最大値との2つのパラメータを2軸とする平面上に配置した各駆動パターンおよびヒステリシス領域の一例を示す概略図である。なお、図28においては、図21と同様に、縦軸は全セル点灯率を、横軸は部分点灯率の最大値を表す。また、ヒステリシス領域を斜線で表し、ヒステリシス領域において値の大きい方のしきい値を実線で、値の小さい方のしきい値を破線で表す。また、図28に示す第1駆動パターン〜第5駆動パターンの各駆動パターンは、実施の形態1で説明した同名の駆動パターンと同等であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
本実施の形態では、図28に示すように、全セル点灯率および部分点灯率の最大値の変動にかかわらず、全セル点灯率14%未満の領域は第1駆動パターンとする。同じく、全セル点灯率61%以上の領域は第2駆動パターンとする。同じく、全セル点灯率16%以上59%未満かつ部分点灯率の最大値61%以上の領域は第3駆動パターンとする。同じく、全セル点灯率16%以上29%未満かつ部分点灯率の最大値59%未満の領域は第4駆動パターンとする。同じく、全セル点灯率31%以上59%未満かつ部分点灯率の最大値59%未満の領域は第5駆動パターンとする。そして、図面に斜線で示すように、隣接する各駆動パターンの間に2次元的にヒステリシス領域を設ける。
具体的には、第1駆動パターンと第3駆動パターンとの間、および第1駆動パターンと第4駆動パターンとの間に、全セル点灯率の変動に対してのヒステリシス特性を設ける。より具体的には、全セル点灯率検出回路46において、全セル点灯率の増加により第1駆動パターンから第3駆動パターンまたは第4駆動パターンへの切換えが発生するときに用いる点灯率しきい値(ここでは、16%)を、全セル点灯率の減少により第3駆動パターンまたは第4駆動パターンから第1駆動パターンへの切換えが発生するときに用いる点灯率しきい値(ここでは、14%)よりも大きな値に設定してヒステリシス特性を設ける。
同様に、第2駆動パターンと第5駆動パターンとの間、および第2駆動パターンと第3駆動パターンとの間に、全セル点灯率の変動に対してのヒステリシス特性を設ける。具体的には、全セル点灯率検出回路46において、全セル点灯率の増加により第3駆動パターンまたは第5駆動パターンから第2駆動パターンへの切換えが発生するときに用いる点灯率しきい値(ここでは、61%)を、全セル点灯率の減少により第2駆動パターンから第3駆動パターンまたは第5駆動パターンへの切換えが発生するときに用いる点灯率しきい値(ここでは、59%)よりも大きな値に設定してヒステリシス特性を設ける。
同様に、第4駆動パターンと第5駆動パターンとの間に、全セル点灯率の変動に対してのヒステリシス特性を設ける。具体的には、全セル点灯率検出回路46において、全セル点灯率の増加により第4駆動パターンから第5駆動パターンへの切換えが発生するときに用いる点灯率しきい値(ここでは、31%)を、全セル点灯率の減少により第5駆動パターンから第4駆動パターンへの切換えが発生するときに用いる点灯率しきい値(ここでは、29%)よりも大きな値に設定してヒステリシス特性を設ける。
また、第3駆動パターンと第4駆動パターンとの間、および第3駆動パターンと第5駆動パターンとの間に、部分点灯率の最大値の変動に対してのヒステリシス特性を設ける。具体的には、最大値検出回路48において、部分点灯率の最大値の増加により第4駆動パターンまたは第5駆動パターンから第3駆動パターンへの切換えが発生するときに用いる最大値しきい値(ここでは、61%)を、部分点灯率の最大値の減少により第3駆動パターンから第4駆動パターンまたは第5駆動パターンへの切換えが発生するときに用いる最大値しきい値(ここでは、59%)よりも大きな値に設定してヒステリシス特性を設ける。
次に、このようにヒステリシス領域を設定したときに、全セル点灯率および部分点灯率の最大値の変動により各駆動パターンがどう切換わるのかを、具体的な例を示して説明する。図29は、図28に示した平面上において全セル点灯率または部分点灯率の最大値の少なくとも一方が変動したときの様子を示す概略図である。
なお、図29に示すA、B、C、Dは、検出された全セル点灯率および部分点灯率の最大値の一例を、図28に示した平面上に表示したものであり、全セル点灯率および部分点灯率の最大値の変動の一例を示すものである。なお、部分点灯率の最大値をX座標、全セル点灯率をY座標とし、(部分点灯率の最大値,全セル点灯率)として座標表示すると、A、B、C、Dは、それぞれ、A(61.5,58.5)、B(61.5,60.5)、C(59.5,60.5)、D(58.5,60.5)であるものとする。また、A、B、C、Dの順で変動が発生するものとする。
上述したように、全セル点灯率および部分点灯率の最大値の変動にかかわらず、全セル点灯率16%以上59%未満かつ部分点灯率の最大値61%以上の領域は第3駆動パターンとなるので、Aは第3駆動パターンとなる。
続いて、Bは第2駆動パターンと第3駆動パターンとの間に設定されたヒステリシス領域内に配置されるが、直前のAが第3駆動パターンであるため、第2駆動パターンと第3駆動パターンとの間の点灯率しきい値は61%となって、Bは第3駆動パターンとなる。
続いて、Cは第2駆動パターンと第3駆動パターンと第5駆動パターンとの3つの駆動パターン間に設定されたヒステリシス領域内に配置されるが、直前のBが第3駆動パターンであるため、点灯率しきい値は61%のままであり、かつ第3駆動パターンと第5駆動パターンとの間の最大値しきい値は59%となって、Cは第3駆動パターンとなる。
続いて、Dは第2駆動パターンと第5駆動パターンとの間に設定されたヒステリシス領域内に配置される。このとき、直前のCが第2駆動パターンまたは第5駆動パターンのいずれかであれば、第2駆動パターンと第5駆動パターンとの間の点灯率しきい値はCの駆動パターンに応じて決定され、Dの駆動パターンが決定される。しかし、ここでは、Cが第3駆動パターンであるため、そのままでは、第2駆動パターンと第5駆動パターンとの間の点灯率しきい値を決定することができず、Dの駆動パターンを決定することができない。
このように、2つのパラメータを2軸とする平面上に2次元的にヒステリシス領域を設ける構成では、直前の状態と現在の判定との間の関連性が途切れてしまい、現在の判定が不定になることがある。具体的には、ある1つの駆動パターン(例えば、第3駆動パターン)で維持パルスを発生させている領域から、他の2つ以上の駆動パターン間(例えば、第2駆動パターンと第5駆動パターンとの間)に設けられたヒステリシス領域への変動が発生したときに、そのような状態が発生する。
そこで、本実施の形態では、ある1つの駆動パターンで維持パルスを発生させている領域から、他の2つ以上の駆動パターン間に設けられたヒステリシス領域への変動が発生し、現在のしきい値を決定できない場合には、その直前の状態に応じてしきい値を決定する構成とする。
例えば、ここでは、Cの判定において点灯率しきい値61%を用いたので、Dの判定においても、第2駆動パターンと第5駆動パターンとの間の点灯率しきい値を61%とする。これにより、Dの駆動パターンを、第5駆動パターンとすることができる。
このように、本実施の形態では、全セル点灯率と部分点灯率の最大値との2つのパラメータを2軸とする平面上に各駆動パターンを配置したときに、隣接する駆動パターン間に、2次元的にヒステリシス特性を設けて維持パルスを発生させる構成とする。これにより、全セル点灯率および部分点灯率の最大値がしきい値をまたいで頻繁に変動することを低減して、駆動パターンの頻繁な切換わりが発生するのを低減させることができ、画像表示品質をさらに向上させることが可能となる。さらに、パラメータの変動により、ある1つの駆動パターンで維持パルスを発生させている領域から、他の2つ以上の駆動パターン間に設けられたヒステリシス領域への変動が発生し、そのままでは現在のしきい値を決定できないような場合には、その直前の状態に応じてしきい値を決定する構成とする。これにより、安定した動作を実現することが可能となる。
(実施の形態3)
実施の形態2では、現在のしきい値を決定できないような状況が発生したときに、安定した動作を実現するための構成の一例を示したが、実施の形態2に示した構成以外の構成でも、安定した動作を実現することは可能である。本実施の形態では、この構成の一例について説明する。
図30は、本発明の実施の形態3における全セル点灯率と部分点灯率の最大値との2つのパラメータを2軸とする平面上に配置した各駆動パターンおよびヒステリシス領域の一例を示す概略図である。なお、本実施の形態では、上述したしきい値に加え、新たに補助しきい値を用いる構成としており、図30においては、ヒステリシス領域において、上述した値の大きい方のしきい値を実線で、上述した値の小さい方のしきい値を破線で、新たに用いる補助しきい値を一点鎖線で表す。
本実施の形態においては、パラメータの変動により、ある1つの駆動パターンで維持パルスを発生させている領域から、他の2つ以上の駆動パターン間に設けられたヒステリシス領域への変動が発生し、それにより現在のしきい値を決定できない場合には、ヒステリシス領域内に設けた補助しきい値を用いて判定を行う構成とする。
具体的には、第1駆動パターンと第3駆動パターンとの間、および第1駆動パターンと第4駆動パターンとの間のヒステリシス領域においては、大きい方の点灯率しきい値(ここでは、16%)と小さい方の点灯率しきい値(ここでは、14%)との間に、補助点灯率しきい値(ここでは、15%)を設ける。
同様に、第2駆動パターンと第5駆動パターンとの間、および第2駆動パターンと第3駆動パターンとの間には、このヒステリシス領域における大きい方の点灯率しきい値(ここでは、61%)と小さい方の点灯率しきい値(ここでは、59%)との間に、補助点灯率しきい値(ここでは、60%)を設ける。
同様に、第4駆動パターンと第5駆動パターンとの間には、このヒステリシス領域における大きい方の点灯率しきい値(ここでは、31%)と小さい方の点灯率しきい値(ここでは、29%)との間に、補助点灯率しきい値(ここでは、30%)を設ける。
同様に、第3駆動パターンと第4駆動パターンとの間、および第3駆動パターンと第5駆動パターンとの間には、このヒステリシス領域における大きい方の最大値しきい値(ここでは、61%)と小さい方の最大値しきい値(ここでは、59%)との間に、補助最大値しきい値(ここでは、60%)を設ける。
そして、ある1つの駆動パターンで維持パルスを発生させている領域から、他の2つ以上の駆動パターン間にヒステリシス特性が設定されたヒステリシス領域への変動が発生し、かつ、そのヒステリシス領域が全セル点灯率の変化に対してヒステリシス特性が設定された領域であれば、全セル点灯率検出回路46は、そのヒステリシス領域における補助点灯率しきい値と全セル点灯率との比較を行ってその結果を出力する構成とする。
また、同じくそのヒステリシス領域が、部分点灯率の最大値の変化に対してヒステリシス特性が設定された領域であれば、最大値検出回路48は、そのヒステリシス領域における補助最大値しきい値と部分点灯率の最大値との比較を行ってその結果を出力する構成とする。
また、同じくそのヒステリシス領域が、全セル点灯率の変化および部分点灯率の最大値の変化のいずれに対してもヒステリシス特性が設定された領域であれば、全セル点灯率検出回路46および最大値検出回路48は、そのヒステリシス領域においてあらかじめ定めた優先順位にもとづいて、補助点灯率しきい値と全セル点灯率との比較および補助最大値しきい値と部分点灯率の最大値との比較を行ってその結果を出力する構成とする。
次に、このようにヒステリシス特性を設定したときの動作の一例を、具体的な例を示して説明する。図31は、図30に示した平面上において全セル点灯率または部分点灯率の最大値の少なくとも一方が変動したときの様子を示す概略図である。
なお、図31に示すA、B、C、Dは、図29で説明した同名のものと同じとし、Eは、E(58.5,59.5)であるものとする。また、AからB、BからCへの変動にともなう動作も図29における説明と同様とし、ここでの説明を省略する。
Dは第2駆動パターンと第5駆動パターンとの間に設定されたヒステリシス領域内に配置されるが、図29でも説明したように、直前のCが第2駆動パターン、第5駆動パターンのいずれでもないため、第2駆動パターンと第5駆動パターンとの間の点灯率しきい値を決定することができず、Dの駆動パターンを決定することができない。
このようなときに、本実施の形態では、補助点灯率しきい値(ここでは、60%)とDの全セル点灯率(60.5%)との比較を行い、その比較の結果にもとづきDの駆動パターンを決定(ここでは、第2駆動パターンに決定)する構成とする。
同様に、CからEへの変動が発生した場合には、補助点灯率しきい値(60%)とEの全セル点灯率(59.5%)との比較を行い、その比較の結果にもとづき、Eの駆動パターンを決定(ここでは、第5駆動パターンに決定)する。
また、本実施の形態では、全セル点灯率の変化および部分点灯率の最大値の変化のいずれに対してもヒステリシス特性が設定されたヒステリシス領域では、あらかじめ定めた優先順位にもとづく比較を行う構成としている。
例えば、最大値しきい値59%〜61%かつ点灯率しきい値14%〜16%のヒステリシス領域(第1駆動パターンと第3駆動パターンと第4駆動パターンとの間にヒステリシス特性が設定された領域)においては、補助点灯率しきい値15%未満は第1駆動パターンとし、補助点灯率しきい値15%以上かつ補助最大値しきい値60%未満は第4駆動パターンとし、補助点灯率しきい値15%以上かつ補助最大値しきい値60%以上は第3駆動パターンとする。
また、最大値しきい値59%〜61%かつ点灯率しきい値59%〜61%のヒステリシス領域(第2駆動パターンと第3駆動パターンと第5駆動パターンとの間にヒステリシス特性が設定された領域)においては、補助点灯率しきい値60%以上は第2駆動パターンとし、補助点灯率しきい値60%未満かつ補助最大値しきい値60%未満は第5駆動パターンとし、補助点灯率しきい値60%未満かつ補助最大値しきい値60%以上は第3駆動パターンとする。
また、最大値しきい値59%〜61%かつ点灯率しきい値29%〜31%のヒステリシス領域(第3駆動パターンと第4駆動パターンと第5駆動パターンとの間にヒステリシス特性が設定された領域)においては、補助最大値しきい値60%以上は第3駆動パターンとし、補助最大値しきい値60%未満かつ補助点灯率しきい値30%未満は第4駆動パターンとし、補助最大値しきい値60%未満かつ補助点灯率しきい値30%以上は第5駆動パターンとする。
このように、本実施の形態では、ヒステリシス領域内に補助しきい値を設け、現在のしきい値を決定できないような状態になったときに、補助しきい値を用いて判定を行う構成とする。これにより、実施の形態2と同様の安定した動作を実現することができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、現在のしきい値を決定できないような状況が発生したときに、安定した動作を実現するための構成のさらに他の例について説明する。
図32は、本発明の実施の形態4における全セル点灯率と部分点灯率の最大値との2つのパラメータを2軸とする平面上に配置した各駆動パターンおよびヒステリシス領域の一例を示す概略図である。
本実施の形態においては、パラメータの変動により、ある1つの駆動パターンで維持パルスを発生させている領域から、他の2つ以上の駆動パターン間に設けられたヒステリシス領域への変動が発生し、それにより現在のしきい値を決定できない場合には、あらかじめ定めた優先順位にもとづく駆動パターンを発生させる構成とする。
本実施の形態では、例えば、第4駆動パターンを最も優先順位が高い駆動パターンとし、続いて第5駆動パターン、第3駆動パターンと優先順位が下がり、第1駆動パターンおよび第2駆動パターンが最も優先順位が低い駆動パターンとする。
具体的には、図32に示すように、第1駆動パターンと第3駆動パターンとの間のヒステリシス領域において、現在のしきい値を決定できない状態になったときには、上述した優先順位にもとづき、現在の駆動パターンを第3駆動パターンとする。同様に、第1駆動パターンと第4駆動パターンとの間のヒステリシス領域では、第4駆動パターンとする。同様に、第1駆動パターンと第3駆動パターンと第4駆動パターンとの間のヒステリシス領域では、第4駆動パターンとする。同様に、第3駆動パターンと第4駆動パターンとの間のヒステリシス領域では、第4駆動パターンとする。同様に、第4駆動パターンと第5駆動パターンとの間のヒステリシス領域では、第4駆動パターンとする。同様に、第3駆動パターンと第4駆動パターンと第5駆動パターンとの間のヒステリシス領域では、第4駆動パターンとする。同様に、第3駆動パターンと第5駆動パターンとの間のヒステリシス領域では、第5駆動パターンとする。同様に、第2駆動パターンと第3駆動パターンとの間のヒステリシス領域では、第3駆動パターンとする。同様に、第2駆動パターンと第5駆動パターンとの間のヒステリシス領域では、第5駆動パターンとする。同様に、第2駆動パターンと第3駆動パターンと第5駆動パターンとの間のヒステリシス領域では、第5駆動パターンとする。
このように、本実施の形態では、あらかじめ発生させる駆動パターンの優先順位を設定しておき、現在のしきい値を決定できないような状態になったときには、その優先順位にもとづき駆動パターンを発生させる構成とする。これにより、実施の形態2、実施の形態3と同様の安定した動作を実現することができる。
なお、実施の形態2から実施の形態4においては、ヒステリシス領域における大きい方のしきい値と小さい方のしきい値との間を、2%以上に設定することが望ましい。
なお、本発明の実施の形態において示した「立ち上がり期間」および「立ち下がり期間」の長さ、「第2の重複期間」の発生頻度、「第1の重複期間」および「第2の重複期間」の長さ、各点灯率しきい値、最大値しきい値等の具体的な各数値は、実験に用いた表示電極対数1080の42インチのパネルの特性にもとづき設定したものであって、単なる一例を示したものに過ぎない。本発明の実施の形態はこれらの数値に何ら限定されるものではなく、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等に合わせて最適に設定することが望ましい。また、これらの各数値は、上述した効果を得られる範囲でのばらつきを許容するものとする。
なお、本発明の実施の形態は、走査電極SC1〜SCnを第1の走査電極群と第2の走査電極群とに分割し、書込み期間を、第1の走査電極群に属する走査電極のそれぞれに走査パルスを順次印加する第1の書込み期間と、第2の走査電極群に属する走査電極のそれぞれに走査パルスを順次印加する第2の書込み期間とで構成し、第1の書込み期間および第2の書込み期間の少なくとも一方において、走査パルスを印加する走査電極群に属する走査電極には、走査パルス電圧よりも高い第2の電圧から走査パルス電圧に遷移し再び第2の電圧に遷移する走査パルスを順次印加し、走査パルスを印加しない走査電極群に属する走査電極には、走査パルス電圧より高い第3の電圧と、第2の電圧および第3の電圧より高い第4の電圧とのいずれかの電圧を印加し、少なくとも隣接する走査電極に走査パルス電圧が印加されている間は第3の電圧を印加する、いわゆる2相駆動によるパネルの駆動方法にも適用させることができ、上述と同様の効果を得ることができる。
なお、本発明の実施の形態では、消去ランプ波形電圧を走査電極SC1〜SCnに印加する構成を説明したが、消去ランプ波形電圧を維持電極SU1〜SUnに印加する構成とすることもできる。あるいは、消去ランプ波形電圧ではなく、いわゆる細幅消去パルスにより消去放電を発生させる構成としてもよい。
なお、本発明の実施の形態では、電力回収回路51、61において、維持パルスの立ち上がりと立ち下がりとで1つのインダクタを共通に用いる構成を説明したが、複数のインダクタを用い、維持パルスの立ち上がりと立ち下がりとで異なるインダクタを使用する構成としてもかまわない。