JP5128379B2 - 配合物およびその硬化物 - Google Patents
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また、特許文献2の合成例1には、メタクリル酸メチルとメタクリル酸を重合反応させて重合体を得、得られた重合体にメタクリル酸グリシジルをエステル化反応させて重合体を得、これにメタクリル酸tert−ブチルとワックス等を添加したメタクリルシラップ(1)が記載されているが、該メタクリルシラップは粘度が高いため塗工作業性が悪い。また、シラップの粘度が高いと、該シラップに骨材を配合した配合物の塗工作業性も悪い。
[1]メチルメタクリレート単量体(A)60〜85質量%と、炭素数2個以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート単位またはシクロアルキル(メタ)アクリレート単位を有するとともに二重結合を有する重合体(B)15〜40質量%とを含むシラップ(X)の100質量部、およびワックス(C)0.1〜5質量部を含有するシラップ組成物(L)の100質量部に対し、骨材を400〜1500質量部配合してなる配合物。
[2]前記重合体(B)が、炭素数2〜4のアルキルメタクリレート単位またはイソボルニル(メタ)アクリレート単位を有する前記[1]記載の配合物。
[3]前記[1]乃至[2]記載の配合物に、該配合物中の前記シラップ(X)100質量部に対して0.5〜10質量部の有機過酸化物を添加して硬化させた硬化物であって、20℃における強度が、曲げ強度:10N/mm2以上、圧縮強度:15N/mm2以上、且つ(20℃での強度−80℃での強度)/20℃での強度=0.5以下である硬化物。
本発明の配合物の硬化物は、強度が高く、且つ、低温から高温においても強度が高く、かつ温度による強度変化が小さく、物性が安定である。
本発明の配合物を塗工した場合、短時間で、強度が高く、低温から高温においても強度が高く、かつ温度変化による強度の変動が小さく、強度安定性に優れる硬化物を得ることができる。
メチルメタクリレート単量体(A)を用いることにより、シラップ(X)の粘度が充分に低くなり、骨材との混練性が良好となるだけでなく、塗工作業性も良好となる。
シラップ(X)におけるメチルメタクリレート単量体(A)の含有量は60〜85質量%である。該含有量が60質量%以上であると、充分に粘度が低くなり、骨材との混練性、および配合物の塗工作業性が良好となる。該含有量が85質量%以下であると、良好な硬化性が得られる。該メチルメタクリレート単量体(A)の含有量のより好ましい範囲は65〜85質量%であり、70〜82質量%がさらに好ましい。
シラップ(X)には、シラップの低粘性および硬化物の物性安定性を損なわない範囲で、メチルメタクリレート以外のアクリル系単量体(D)を含有させることができる。該アクリル系単量体(D)は単官能アクリル系単量体(D1)および多官能アクリル系単量体(D2)の一方または両方である。
ここでいう単官能アクリル系単量体(D1)とは、(メタ)アクリロイル基を1つだけ有する(メタ)アクリレート(ただしメチルメタクリレートは除く)であり、多官能アクリル系単量体(D2)は、(メタ)アクリロイル基を2以上有する(メタ)アクリレートである。なお、本発明において「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および/または「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリロイル基」は、「アクリロイル基」および/または「メタクリロイル基」を意味する。
重合体(B)は、炭素数2個以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート単位またはシクロアルキル(メタ)アクリレート単位を有し、且つ、二重結合を有する重合体である。該重合体(B)は、硬化性を付与し、硬化物に強度を付与する成分である。重合体(B)における前記二重結合は、ラジカル重合反応に関与する二重結合であり、かかる二重結合を有する官能基としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
炭素数2個以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート単位およびシクロアルキル(メタ)アクリレート単位はいずれも、シラップ(X)の低粘度、および硬化物の高温での高強度に寄与するものであり、このことが本発明の効果に関与していると考えられる。
単量体(B1)としては、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも重合体(B)のガラス転移温度が高く、シラップ(X)とした時の粘度を低くできる点で炭素数2〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートが好ましい。特にi−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレートが好ましい。単量体(B1)は1種でもよく2種以上を併用してもよい。
単量体(B2)としては、イソボロニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。特に重合体(B)のガラス転移温度が高く、シラップ(X)とした時の粘度を低くできる点でイソボルニル(メタ)アクリレートが好ましい。単量体(B2)は1種でもよく2種以上を併用してもよい。
重合体(B)を構成する単量体として、炭素数2〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートおよび/またはイソボルニル(メタ)アクリレートと、メチルメタクリレートと、グリシジル(メタ)アクリレートと、(メタ)アクリル酸とを用いることがより好ましい。
炭素数2〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートは、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレートが好ましく、n−ブチルメタクリレートが特に好ましい。
前記第1の官能基と第2の官能基の組み合わせとしては、カルボキシル基とグリシジル基、ヒドロキシル基とイソシアネート基等が好ましい。
第1段階の反応において懸濁重合する際の重合温度は70〜98℃の範囲であることが好ましく、重合時間は2〜5時間程度であることが好ましい。第2段階の反応における反応温度は90〜95℃が好ましく、反応時間は1〜4時間程度が好ましい。
また、前記懸濁重合時の懸濁液に、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マンガンなどの電解質を含有させることが好ましい。電解質を含有させることにより、分散安定性を向上させることができる。電解質の使用量は適宜設定すればよく特に限定されるものではない。
前記懸濁重合において連鎖移動剤を用いることが好ましい。連鎖移動剤を用いると、単官能アクリル系単量体の重合反応を容易に制御できる。
連鎖移動剤としてチオール化合物が好適に用いられる。チオール化合物は特に限定されず、例えば、t−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン;チオフェノールチオナフトールなどの芳香族メルカプタン:チオグリコール酸、チオグリコール酸オクチルなどのチオグリコール酸アルキル等が挙げられる。連鎖移動剤の添加量や添加方法は適宜設定すればよく特に限定されるものではない。
第2段階の反応において重合禁止剤を添加してもよい。重合禁止剤を添加すると第2段階の反応をより安定に行うことができる。重合禁止剤としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−t−ブチル4−メチルフェノール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。重合禁止剤の添加量は適宜設定すればよく特に限定されるものではない。
なお、本明細書における重量平均分子量は、樹脂を溶剤(テトラヒドロフラン)に溶解し、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(以下、「GPC」と記す。)により測定した分子量をポリスチレン換算したものである。
第2段階の反応で得られる重合体(B)の酸価(単位:mgKOH/g)は1以下が好ましく、0.5以下がより好ましい。
本明細書における酸価の値は、重合体をトルエンに溶解し、フェノールフタレインを指示薬として、0.1NのKOHエタノール溶液を用いて滴定して求めた値である。
本発明におけるシラップ組成物(L)は、シラップ(X)の他にワックス(C)を含有する。ワックス(C)は、空気遮断作用を利用した表面硬化性向上等の作用を奏する。
ワックス(C)としては、固形ワックス類が挙げられる。固形ワックス類としては、パラフィン類、ポリエチレン類、ステアリン酸等の高級脂肪酸類等が挙げられる。これらのうちでパラフィンワックスが好ましい。
パラフィンワックスは、融点の異なる2種以上を併用することが好ましい。パラフィンワックスの融点は、40〜80℃が好ましい。融点が40℃以上であると、配合物を硬化させた際に充分な空気遮断作用が得られ、表面硬化性が良好となりやすい。融点が80℃以下であると、シラップ(X)への溶解性が良好となりやすい。また、融点の異なる2種以上のパラフィンワックスを併用することによって、配合物を塗装硬化させるときに、下地温度が変わった場合でも、充分な空気遮断作用が得られ、表面硬化性が良好となる。2種以上を併用する際には、融点の差が5℃〜20℃程度のものを併用することが好ましい。
または、ワックス(C)として、有機溶剤を全く含有せずに、予めメチルメタクリレート単量体(A)などにワックス(C)を分散させたものを用いてもよい。
なお本発明において、基準となるシラップ(X)100質量部は、メチルメタクリレート単量体(A)と、重合体(B)と、単量体(A)以外のアクリル系単量体(D)の合計質量とする。
ワックス(C)の添加量が0.1質量部以上であると、硬化させた際の空気遮断作用が充分に得られやすく、良好な表面硬化性が得られる。ワックス(C)の添加量が5質量部以下であると、シラップ組成物(L)の良好な貯蔵安定性およびワックスの良好な分散性が得られやすい。
本発明におけるシラップ組成物(L)に3級アミンを含有させることが好ましい。3級アミンは、硬化反応を促進させる硬化促進剤である。
3級アミンとしては、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド、4−[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]ベンズアルデヒド、4−(N−メチル−N−ヒドロキシエチルアミノ)ベンズアルデヒド、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン、N−エチル−m−トルイジン、トリエタノールアミン、m−トルイジン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェニリモルホリン、ピペリジン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、ジエタノールアニリン等のN,N−置換アニリン、N,N−置換−p−トルイジン、4−(N,N−置換アミノ)ベンズアルデヒド等が挙げられる。
芳香族3級アミンとしては、シラップ組成物(L)の反応性、硬化性の点から、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ジ(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジンが好ましい。
3級アミンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
3級アミンは、配合物を硬化させる直前(骨材と同時添加、または骨材添加後)に添加してもよく、あらかじめシラップ組成物に添加しておいてもよい。
3級アミンの添加量は、硬化性とポットライフ(作業性)とのバランス等の点から、シラップ(X)の100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましく、0.2〜8質量部がより好ましく、0.3〜5質量部が特に好ましい。3級アミンの添加量が0.05質量部以上であると、良好な表面硬化性が得られやすい。3級アミンの添加量が10質量部以下であると適度な可使時間が得られやすい。
本発明のシラップ組成物(L)に、3級アミン以外の他の硬化促進剤として、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、アセトアセチル酸コバルト等の多価金属石鹸を含有させてもよい。
該他の硬化促進剤の添加量は、シラップ(X)の100質量部に対して、0.2〜2質量部が好ましく、0.3〜1質量部がより好ましい。
本発明におけるシラップ組成物(L)に、硬化物の柔軟化および硬化時の収縮の低減を図るための可塑剤を添加してもよい。
可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル類;ジ−2−エチルヘキシルアジペート、オクチルアジペート等のアジピン酸エステル類;ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等のセバシン酸エステル類;ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、オクチルアゼレート等のアゼラインエステル類等の2塩基性脂肪酸エステル類;アセチルクエン酸トリブチル;塩素化パラフィン等のパラフィン類が挙げられる。
可塑剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
可塑剤の添加量は、シラップ(X)の100質量部に対して、20質量部以下が好ましい。可塑剤の添加量が20質量部以下であると、硬化性が良好となりやすく、硬化物の表面に可塑剤が滲出することもない。
本発明におけるシラップ組成物(L)には、基材に対する接着性の安定化、接着強度の耐久性、骨材との接着性の安定化を付与する目的で、シランカップリング剤を添加してもよい。
シランカップリング剤としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グルシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
シランカップリング剤の添加量は、シラップ(X)の100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、硬化性、コストの点から、5質量部以下がより好ましい。シランカップリング剤の添加量を10質量部以下にすることによって、シラップ組成物(L)と骨材との密着性や配合物の基材への接着性の安定化を保持しつつ、表面硬化性が良好となる。
本発明におけるシラップ組成物(L)には、貯蔵安定性の向上、重合反応の調整の目的で、重合禁止剤を添加してもよい。
重合禁止剤としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2−6−ジ−t−ブチル4−メチルフェノール等が挙げられる。
シラップ(X)の100質量部に対して、重合禁止剤の添加量は0.01〜0.1質量部が好ましく、0.02〜0.08質量部がより好ましい。
本発明のシラップ組成物(L)には、表面硬化性の向上を図るために、(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーを添加してもよい。
該オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートは、水酸基含有(メタ)アクリレートと、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと、1分子中に2個以上の水酸基を有するポリオールとを公知の方法で反応させて得られるものである。
エポキシ(メタ)アクリレートは、多塩基酸無水物と、水酸基含有(メタ)アクリレートの部分エステル化物と、2官能ビスフェノールA型エポキシ樹脂と、不飽和一塩基酸とを公知の方法で反応させて得られるものである。2官能ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとを反応させた汎用のエポキシ樹脂である。
ポリエステル(メタ)アクリレートは、フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、アジピン酸等の多塩基酸またはその無水物と、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール化合物と、(メタ)アクリル酸付加物またはグリシジル(メタ)アクリレートと、多塩基酸無水物とからなるものである。
本発明におけるシラップ組成物(L)には、その他のポリマー成分として、スチレン/ブタジエン共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、セルロースアセテートブチレート樹脂、エポキシ樹脂なども含有させることが可能である。
本発明におけるシラップ組成物(L)には、必要に応じて紫外線吸収剤、耐光安定剤、消泡剤を任意の割合で添加することができる。また酸化防止剤、レベリング剤、アエロジル等の揺変剤を添加してもよい。
さらに、酸化チタン、酸化鉄、ベンガラ、群青など顔料等を添加してもよく、炭酸カルシウムなどの耐質顔料を添加してもよい。
揺変剤を含有させることによって、シラップ組成物(L)に構造粘性が付与され、チキソ性が増し中空粒子を均一に分布させることができ、シラップ組成物(L)の貯蔵安定性が向上する。また、本発明の配合物を、例えば傾斜面へ施工する場合等の作業性を向上させることができる。
揺変剤の含有量は、シラップ組成物(L)100質量%中、ウレタンウレア系、脂肪酸アマイドおよび/または有機ベントナイトが合計で0.5〜5質量%、微粒シリカが1〜10質量%であることが好ましい。揺変剤の含有量が少なすぎると、添加効果が不充分となる。一方、揺変剤の含有量が多すぎると、シラップ組成物(L)の流動性が悪くなり、実用的ではなくなる。揺変剤はシラップ組成物(L)へ添加しても良く、骨材に配合して用いてもよい。
本発明の配合物はシラップ組成物(L)と骨材を含有する。本発明の配合物は、例えばシラップ組成物(L)と細骨材を配合したレジンモルタル、またはシラップ組成物(L)と粗骨材および/または細骨材を配合したレジンコンクリートとして、道路舗装、道路橋床版、スラブ軌道、橋脚などの土木用途や工場床、厨房床などの建築用途に用いることができる。特に高強度が必要で、温度の変化に対して強度の変動が少ないことが要求される用途に好適に用いることができる。
骨材として、珪砂3号、珪砂5号、および炭酸カルシウムの混合物;珪砂3号、珪砂4号、珪砂6号および炭酸カルシウムの混合物;珪砂3号、珪砂4号、珪砂5号、珪砂7号、および炭酸カルシウムの混合物;等の細骨材を好適に用いることができる。
また、本発明の配合物を3cm以上に厚く塗工したい場合には、上記混合物からなる細骨材と、粒径が5mm以上の粗骨材を併用して配合することが好ましい。
骨材の配合量は、シラップ組成物(L)100質量部に対し、400〜1500質量部である。
骨材が400質量部未満ではシラップ組成物(L)の樹脂と骨材の分離が起こり易く均一な硬化物が得られにくい。また1500質量部を超えると樹脂と骨材を充分に均一に混ぜることが難しくなるとともに、作業性も悪化する。該骨材の配合量の好ましい範囲は、シラップ組成物(L)100質量部に対して550〜1400質量部であり、より好ましい範囲は700〜1350質量部である。
なお本発明において、基準となるシラップ組成物(L)100質量部は、硬化させる配合物に含まれる成分のうち、硬化剤と骨材を除いた残りの成分の合計質量とする。
本発明の配合物を硬化させるには、硬化剤として有機過酸化物を添加することが好ましく、硬化促進剤と有機過酸化物とを組み合わせたレドックス触媒を用いることがより好ましい。
有機過酸化物としては、ラジカル重合を開始させることができる重合開始剤として公知の有機過酸化物を用いることができる。具体例としては、ジアシルパーオキサイド、アルキルパーオキサイド、ケトンパーオキサイド等が挙げられる。これらのうちでもジアシルパーオキサイドが好ましく、ベンゾイルパーオキサイド(過酸化ベンゾイル)が特に好ましい。ベンゾイルパーオキサイドは、取扱性の点から、不活性の液体または固体によって濃度が30〜55質量%程度に希釈された液状、ペースト状または粉末状のものが好ましい。
有機過酸化物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機過酸化物の添加量は、配合物の可使時間が5〜60分となるように適宜調整することが好ましい。該範囲で有機過酸化物を添加すれば、添加後すみやかに重合反応が開始され、シラップ組成物(L)の硬化が進行する。
有機過酸化物の添加量は、シラップ(X)の100質量部に対して、0.5〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。有機過酸化物の添加量が1質量部以上であると、硬化性が良好となりやすい。有機過酸化物の添加量が10質量部以下であると、配合物の塗工作業性、得られる硬化物の各種物性が良好に向上する。
本発明の配合物は、床面、壁面、道路の舗装面、道路橋床版面、スラブ軌道面等への被覆材・補強材、或いは充填材として用いることができる。
床面、壁面、道路の舗装面、道路橋床版面、スラブ軌道面等の施工面への塗工方法としては、施工面に、下地との接着良好にするためにプライマーを塗布した後、本発明の配合物を塗工して積層し、場合によりさらにトップコート層を積層する方法が挙げられる。該配合物が硬化することにより施工面上に硬化物からなる積層体が形成される。なお、シラップ組成物(L)をプライマー、トップコートに使用することもできる。
本発明の配合物の塗工方法としては、金ゴテ、吹付機(モルタル吹付塗装機等)等を用いる公知の塗工方法が挙げられるが、金ゴテ等のコテで塗工するのが好ましい。
塗工時の温度は−20〜50℃が好ましく、特に−10〜40℃が好ましく、施工性の点から可使時間は5〜60分、硬化時間は10〜90分以内が好ましい。可使時間、硬化時間の調整は、硬化剤及び硬化促進剤の量を塗工時の温度に応じて調整することにより行うことができる。
該配合物の硬化後の使用環境としては、−30〜90℃の使用温度範囲が好ましく、特に−10〜80℃の範囲内が好ましい。本発明の配合物は温度変化に対する物性変動が小さい低感温性配合物であり、使用環境が80℃以下では強度変化がおきにくいことから、高温下においても充分な性能を発揮することはできる。
本発明の配合物を硬化させた硬化物は、20℃を基準としたときに、曲げ強度:10N/mm2以上、圧縮強度:15N/mm2以上を達成することができる。また曲げ強度、圧縮強度の両方についての温度変化による強度の変動幅は、(20℃での強度−80℃での強度)/20℃での強度=0.5以下を得ることができ、好ましくは0.35以下を達成できる。
また、一時的な状態であれば、特に上記使用温度範囲内に限られたことではなく、例えば、一時的に熱湯などに接触する場面にでも、変形することなく充分に使用可能である。
実施例中の「部」はすべて「質量部」を、湿度以外の「%」はすべて「質量%」を示す
まず、第1段階の反応を行った。すなわち、攪拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置内に、脱イオン水135部、および分散剤としてポリビニルアルコール(ケン化度80%、重合度1,700)0.4部を加えて攪拌し、ポリビニルアルコールを完全に溶解した後、一度攪拌を停止し、メタクリル酸(以下MAAと略す。)4部、メチルメタクリレート(以下MMAと略す。)60部、n−ブチルメタクリレート(以下n−BMAと略す。)36部、重合開始剤として2,2′−アゾビス2−メチルブチロニトリル(以下AMBNと略す。)0.2部、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン(以下n−DMと略す。)0.8部、電解質として炭酸ナトリウム0.1部を加えて再度攪拌し、75℃に昇温して2.5時間反応させ、98℃に昇温して1.5時間保持して反応を終了させた。40℃に冷却後、得られた水性懸濁液を目開き45μmのナイロン製濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、脱水後、40℃で16時間乾燥して、粒状ビニル系重合体(第1の共重合体)を得た。得られた粒状ビニル系重合体のTgは72℃、重量平均分子量は41,500であった。なお、粒状ビニル系重合体のTgはポリマーハンドブックに記載のホモポリマーのTgから、Foxの式を用いて算出した。
合成例1の第1段階の反応において、MMAの使用量を60部から78部へ、MAAの使用量を4部から2部へ、n−BMAの使用量を36部から20部へ変更した。それ以外は合成例1と同様にして、Tg86℃、重量平均分子量43,000の粒状ビニル系重合体(第1の共重合体)を得た。
得られた粒状ビニル系重合体を用いて第2段階の反応を行った。合成例1の第2段階の反応においてGMAの使用量を6.6部から3.3部へ、MMAの使用量を108.2部から104.9部へ変更した。それ以外は合成例1と同様に反応させて、酸価0.4mgKOH/gの重合体(B)とMMAを含む組成物S−2を得た。MAA/GMAのモル比は)1.0/1.0であった。
合成例1の第1段階の反応において、MAAの使用量を4部から2部へ、MMAの使用量を60部から68部へ変更し、n−BMAの36部に代えてイソボルニルメタクリレート(以下IBXMAと略す)の30部を用い、AMBNの0.2部に代えてラウロイルパーオキサイド(以下LPOと略す。)の0.4部を用いた。それ以外は合成例1と同様にして、Tg119℃、重量平均分子量40,000の粒状ビニル系重合体(第1の共重合体)を得た。
得られた粒状ビニル系重合体を用いて第2段階の反応を行った。合成例1の第2段階の反応においてGMAの使用量を6.6部から3.3部へ、MMAの使用量を108.2部から104.9部へ変更した以外は合成例1と同様に反応させ、酸価0.3mgKOH/gの重合体(B)とMMAを含む組成物S−4を得た。MAA/GMAのモル比は)1.0/1.0であった。
合成例1の第1段階の反応において、n−BMAの36部に代えてエチルメタクリレート(以下EMAと略す)36部に変更し、n−DMの使用量を0.8部から0.18部を用いた。それ以外は合成例1と同様にして、Tg83℃、重量平均分子量150,000の粒状ビニル系重合体(第1の共重合体)を得た。
得られた粒状ビニル系重合体を用いて第2段階の反応を行った。合成例1と同様に反応させ、酸価0.3mgKOH/gの重合体(B)とMMAを含む組成物S−4を得た。MAA/GMAのモル比は)1.0/1.0であった。
合成例1で得た組成物S−1を用い、表1に示す配合でシラップ組成物L−1を調製した。なお、表1に記載している組成物S−1〜S−4の配合量(単位:質量部)は、該組成物に含まれる重合体(B)とMMAの合計量であり、併記している()内の値が、該配合した組成物S−1〜S−4中に含まれる重合体(B)の量(単位:質量部)である。したがって、例えばシラップ組成物L−1において、シラップ(X)100質量部中のメチルメタクリレート単量体(A)の含有量は80.1質量部となる。
配合を表1に示すとおりに変更した他は、調製例1と同様にしてシラップ組成物L−2〜L−4を得た。
配合を表1に示すとおりに変更した他は、調製例1と同様にしてシラップ組成物L−5を得た。
表1において、2−HPMAは2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、PTMGはポリテトラメチレングリコールジメタクリレート(日本油脂(株)製ブレンマーPDT−650)である。
配合を表1に示すとおりに変更した他は、調製例1と同様にしてシラップ組成物L−6を得た。本例では重合体(B)を用いず、その代わりにn−ブチルメタクリレート単位を有するが、重合性二重結合を有しない共重合体−1を用いた。
共重合体−1は、MMAの60部とn−BMAの40部を共重合させた、重量平均分子量が41,000の共重合体である。なお、2−EHAは2−エチルヘキシルアクリレート、可塑剤はアジピン酸系(製品名:アデカサイザーP−300、アデカ社製、以下可塑剤と略す)である。
S−1:第一の共重合体/GMA+MMA=100/6.6+108.2(部)。
第一の共重合体=MMA/n−BMA/MAA=60/36/4(部)、Tg:72℃、Mw:41,500。
S−2:第一の共重合体/GMA+MMA=100/3.3+104.9(部)。
第一の共重合体=MMA/n−BMA/MAA=78/20/2(部)、Tg:86℃、Mw:43,000。
S−3:第一の共重合体/GMA+MMA=100/3.3+104.9(部)。
第一の共重合体=MMA/IBXMA/MAA=68/30/2(部)、Tg:119℃、Mw:40,000。
S−4:第一の共重合体/GMA+MMA=100/6.6+108.2(部)。
第一の共重合体=MMA/EMA/MAA=60/36/4(部)、Tg:83℃、Mw:150,000。
共重合体−1:MMA/n−BMA=60/40(部)、Tg:66℃、Mw:41,000。
MMA:メチルメタクリレート。
2−EHA:2−エチルヘキシルアクリレート。
2−HPMA:2−ヒドロキシプロピルメタクリレート。
PTMG:ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート(日本油脂(株)製ブレンマーPDT−650)。
PEGDMA:ポリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学(株)製NKエステル3G)。
可塑剤:アジピン酸系(アデカ製アデカサイザーP−300)。
BHT:2,6−ジ−t−ブチル-4-メチルフエノール。
BYK−1752:破泡性ポリマー+石油ナフサ(ビックケミー・ジャパン(株)製)。
P−130、P−150、HNP−9:パラフィンワックス(日本精鑞(株)製)。
PTEO:N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−P−トルイジン。
調製例1で得られたシラップ組成物L−1の100部に、硬化剤として過酸化ベンゾイル(火薬アクゾー社製、純分50%、以下BPO50と略す。)の1.96部を加えて混合し、その後、骨材であるKM−2(製品名:KM−2、菱晃社製、以下KM−2と略す)を900部加えて混合し、配合物を調製した。
配合を表2に示すとおりに変更した他は、配合例1と同様にして配合物を得た。配合例5、7では骨材KM−2を用いず、その代わりに骨材KM−17A(製品名:KM−17A、菱晃社製、以下KM−17Aと略す)を用いた。配合例6では骨材KM−2に、さらに粒径5mmの玉砂利を加えて用いた。
[配合例10]
調製例6で得られたシラップ組成物L−6の100部(シラップ(X)として79.5質量部)に、硬化剤としてBPO50の1.59部(シラップ(X)に対して2部)を加えて混合し、その後、骨材であるKM−2を900部加えて混合し、配合物を調製した。
(粘度、比重)
調製例1〜6で得られた各シラップ組成物L−1〜6の粘度および比重を測定した。結果を表1に示す。
粘度は、B型粘度計(BM型、トキメック社製)を用いて、20℃における粘度を測定した。
比重は、比重カップを用いて、20℃における比重を測定した。
調製例1〜6で得られたシラップ組成物L−1〜6に、硬化剤としてBPO50を、該シラップ組成物(L)中のシラップ(X)100部に対して2質量部添加し、よく混合してBPO入りシラップ組成物を得た。直径10mm、長さ120mmの試験管の底部より70mmまで、該BPO入りシラップ組成物を投入し、熱電対を該シラップ組成物の深さ方向中央部に入れた。この試験管を20℃の水中に静置してシラップ組成物を硬化させつつ、前記熱電対により発熱温度を経時的に測定した。BPOの添加時から、最高発熱温度になった時点までの時間を求め、この時間を硬化時間とした。結果を表1に示す。
配合例1〜10において配合物を調製するに際し、20℃におけるシラップ組成物(L)と骨材との混練性について評価を行った。
すなわち、シラップ組成物(L)に硬化剤であるBPOを、該シラップ組成物(L)中のシラップ(X)100部に対して2部加えて混合し、JIS R 5201規定の凝結試験項目の機械練り用練り混ぜ機における容器に投入後、表2に示す配合で、骨材KM−2、KM−17A、またはKM−2と粒径5mmの玉砂利を加えて、JIS R 5201規定の凝結試験項目の機械練り用練り混ぜ機におけるモルタルミキサーで1分間混練した。混練時の骨材とシラップ組成物(L)との混合性について目視で観察し、下記基準に基づいて評価判断した。結果を表2に示す。
◎:非常に早くシラップ組成物(L)と骨材とがなじみ均一であった(45秒以内)。
○:充分にシラップ組成物(L)と骨材とがなじみ均一であった。
×:シラップ組成物(L)と骨材とがなじまず不均一であった。
配合例1〜10で得られた配合物をコンクリート板上に塗工した時の作業性について評価を行った。
すなわち、プライマー((株)菱晃製アクリシラップDR−90)を0.3kg/m2の割合となるように塗布・硬化させたコンクリート板(30cm×30cm×6cm)に、配合物を厚さが5mmとなるように塗布した時のコテ作業性について、下記基準に基づいて評価判断した。結果を表2に示す。
なお、配合例6については塗布した厚さを10mmとし、評価を行った。
◎:配合物をコテで素早く充分に均すことができ、数回のコテ作業で均一に塗布できた。
○:配合物をコテで充分に均すことができ、均一に塗布できた。
×:配合物をコテで均す際に、粘度が高く均し難い、および/または均一な表面を得るに非常に時間を要した。
配合例1〜10で得られた配合物をコンクリート板上に塗工した時、或いは硬化した後の材料分離性について評価を行った。
すなわち、上記塗工作業性の評価に用いたのと同じコンクリート板に、配合物を厚さが5mmとなるように塗布した時、或いは硬化した後の材料分離性について目視で観察し、下記基準に基づいて評価判断した。結果を表2に示す。
なお、配合例6については塗布した厚さを10mmとし、評価を行った。
○:シラップ組成物(L)と骨材とが分離することなく均一であった。
×:骨材が沈みシラップ組成物(L)の浮きがひどく不均一であった、シラップ組成物(L)が下層に溜り不均一であった。
配合例1〜10で得られた配合物をJIS R 5201規定の4cm×4cm×16cm型枠に流し込み、20℃で硬化させて硬化物を得た。硬化後1日以上経過した後、各試験温度に4時間以上硬化物を静置して、硬化物を試験温度に設定した。その後、試験温度下でJIS R 5201に基づいて曲げ強度を測定した。試験温度は−10、20、60、80℃とした。その結果を表2に示す。
上記曲げ強度の評価と同様にして配合物の硬化物を各試験温度に設定した後、試験温度下でJIS R 5201に基づいて圧縮強度を測定した。その結果を表2に示す。
曲げ強度、圧縮強度の両方について、温度変化による強度の変動幅として、「(20℃での強度−80℃での強度)/20℃での強度」で表される値を求めた。その結果を表2に示す。
表2の結果に示されるように、調製例1〜4のシラップ組成物を用いて配合物を調製し、骨材の配合量を本発明の範囲内とした配合例1〜6は、混練性に優れ、均一な配合物が得られ、かつ曲げ強度、圧縮強度が高い。また曲げ強度および圧縮強度の両方について、(20℃での強度−80℃での強度)/20℃での強度で表される値が0.33以下と小さい。このことから温度による材料の強度変動が小さく良好であることがわかる。
これに対して、調製例1のシラップ組成物を用い、骨材の配合量を本発明の範囲外とした配合例7、8は、混練性或いは材料分離性に劣り、配合物で使用するには至らなかった。なお均一な配合物が得られなかったことから、配合物7〜8は硬化物の物性を測定しなかった。
また、シラップ(X)におけるMMA単量体(A)の含有量が少ない配合例9、および重合体(B)を使用しなかった配合例10は、混練性及び均一な配合物は得られるものの、粘度が高くて塗工作業性が悪い。また、配合例10は、曲げ強度および圧縮強度の両方とも、60℃において大きく強度低下が見られたことから、80℃の硬化物の物性を測定しなかった。さらに配合例9は、曲げ強度および圧縮強度の両方について、(20℃での強度−80℃での強度)/20℃での強度で表される値が0.6より大きく、硬化物の温度による強度変化が大きい。
本発明の硬化物は、強度が高く、且つ、温度による強度変化に対しての物性安定性に優れる。したがって、床面、壁面、道路舗装面等の被覆等の土木・建築に用いる樹脂モルタル或いは樹脂コンクリートに好適である。
Claims (3)
- メチルメタクリレート単量体(A)60〜85質量%と、炭素数2個以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート単位またはシクロアルキル(メタ)アクリレート単位を有するとともに二重結合を有する重合体(B)15〜40質量%とを含むシラップ(X)100質量部、およびワックス(C)0.1〜5質量部を含有するシラップ組成物(L)の100質量部に対し、骨材を400〜1500質量部配合してなる配合物。
- 前記重合体(B)が、炭素数2〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート単位またはイソボルニル(メタ)アクリレート単位を有する請求項1記載の配合物。
- 請求項1または2に記載の配合物に、該配合物中の前記シラップ(X)100質量部に対して0.5〜10質量部の有機過酸化物を添加して硬化させた硬化物であって、20℃における強度が、曲げ強度:10N/mm2以上、圧縮強度:15N/mm2以上、且つ(20℃での強度−80℃での強度)/20℃での強度=0.5以下である硬化物。
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