JP5125601B2 - 自動車構造部材用高張力溶接鋼管およびその製造方法 - Google Patents
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Description
また、特許文献2に記載された技術で製造された電縫鋼管は、伸びElが高々18%であり、曲げ加工により成形されるスタビライザー用としては好適であるが、プレス成形あるいはハイドロフォーム成形を伴う部材用としては、延性が不足し、プレス成形あるいはハイドロフォーム成形を伴うトーションビーム、アクスルビーム等の自動車構造部材用としては不適であるという問題があった。また、特許文献2に記載された技術では、ノルマ処理および焼入れ処理を必要とし、工程が複雑であり、寸法精度、経済性という観点からも問題を残していた。
また、本発明でいう「優れた断面成形加工後の耐ねじり疲労特性」とは、図1(特開2001−321846号公報の図11)に示すように、鋼管の長手中央部分をV字形状に断面を成形加工したのち、両端部をチャッキングにより固定してねじり疲労試験を、1Hz、両振りの条件で行い、5×105繰返し疲れ限度σBを求め、得られた5×105繰返し疲れ限度σBと鋼管引張強さTSとの比、(σB/TS)が0.40以上である場合をいうものとする。
(1)質量%で、C:0.03〜0.24%、Si:0.002〜0.95%、Mn:1.01〜1.99%、Al:0.01〜0.08%、Nb:0.001〜0.15%を含有し、不純物であるP、S、N、Oを、P:0.019%以下、S:0.010%以下、N:0.008%以下、O:0.003%以下に調整して含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、管最外表面および管最内表面から肉厚方向に50μmまでの領域が、円周方向断面の平均結晶粒径が2.0〜14μmであるフェライト相と該フェライト相以外の第二相からなる組織とを有し、前記フェライト相の組織分率が体積率で60%以上であり、該フェライト相中に1.5〜60nmのNb炭化物が析出してなり、前記領域の平均硬さHV0−50と、管最外表面または管最内表面から肉厚方向に50〜200μmの範囲の領域の平均硬さHV50−200との差ΔHV(=HV50−200−HV0−50)がビッカース硬さで40ポイント以下、前記管最外表面または管最内表面から肉厚方向に50μmまでの領域の硬さの標準偏差σがビッカース硬さで20ポイント以下であり、低温靭性、成形性、および断面成形加工後の耐ねじり疲労特性に優れることを特徴とする自動車構造部材用高張力溶接鋼管。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、管内外面表面の、次(2)式
αf=1+2√(d/ρ)‥‥(2)
(ここで、d:表面凹凸の深さ(μm)、ρ:表面凹部先端の曲率半径(μm))
で定義される応力集中係数αfが10以下であることを特徴とする自動車構造部材用高張力鋼管。
幅絞り率=[(素材鋼管の幅)−π{(製品外径)−(製品肉厚)}]/π{(製品外径)−(製品肉厚)}×(100%)‥‥(1)
で定義される幅絞り率を10%以下として、連続的にロール成形し電縫溶接して溶接鋼管とする工程であり、前記溶接鋼管が、低温靭性、成形性、および断面成形加工後の耐ねじり疲労特性に優れること、を特徴とする自動車構造部材用高張力鋼管の製造方法。
C:0.03〜0.24%
Cは、強度を増加させる元素であり、所望の鋼管強度を確保し、鋼管の耐疲労特性、とくに耐ねじり疲労特性を向上させるうえで必須の元素である。このような効果は0.03%以上の含有で認められるが、0.24%を超える含有は、体積率で60%以上のフェライト相主体の組織とすることができず、所望の優れた鋼管延性、優れた低温靭性が確保できなくなる。なお、好ましくは0.08〜0.20%である。
Siは、フェライト生成元素であり、熱延工程でのフェライト変態を促進する作用を有し、所望の組織と必要な成形性を確保するために必須の元素である。このような効果は、O.002%以上の含有で認められる。一方、O.95%を超える含有は、表面性状、電縫溶接性が低下する。このため、SiはO.002〜0.95%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.10〜0.30%である。
Mnは、強度を増加させ、所望の鋼管強度を確保して鋼管の疲労強度を高め、耐疲労特性を向上させる作用、とくに耐ねじり疲労特性を向上させる作用を有する元素である。このような効果は1.01%以上の含有で認められるが、1.99%を超える含有は、フェライト変態が抑制され、所望のフェライト相主体の組織とすることができず、所望の優れた成形性を確保できなくなる。このため、Mnは1.01〜1.99%の範囲に限定した。なお、好ましくは1.20〜1.80%である。
Alは、製鋼時の脱酸剤として作用するとともに、熱延工程でのオーステナイト粒の成長を抑制し、結晶粒の微細化、とくにフェライト粒の微細化に寄与する元素である。このような効果は0.01%以上の含有で認められる。一方、O.08%を超える含有は、上記した効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できないうえ、酸化物系介在物が増大し、耐疲労特性が低下する。このため、Alは0.01〜0.08%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.02〜0.06%である。
Nbは、鋼中ではCと結合し、炭化物として析出し、熱延工程における回復・再結晶による粒成長を抑制し、所望の粒径(2.0〜14μm)を有するフェライト相とするとともに、炭化物として析出し表層の硬さを確保し、疲労強度を高め、耐疲労特性を向上させる作用を有する。このような効果はO.001%以上の含有で認められる。一方、O.15%を超える含有は、析出炭化物による強度上昇が顕著となり、延性が著しく低下する、このため、Nbは0.001〜0.15%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.010〜0.049%である。
P:O.019%以下
Pは、Mnとの凝固共偏析を介し、低温靱性を低下させるとともに、電縫溶接性を劣化させる悪影響を有する元素であり、できるだけ低減することが好ましい。0.019%を超えて含有すると、上記した悪影響が顕著となるため、Pは0.019%以下に限定した。
Sは、鋼中ではMnS等の介在物として存在し、成形時の微細割れや疲労亀裂の起点として作用し、耐疲労特性、成形性を低下させる悪影響を有する元素であり、本発明ではできるだけ低減することが好ましい。0.010%を超えて含有すると、上記した悪影響が顕著となる。このため、Sは0.010%以下に限定した。なお、好ましくは0.005%以下である。
Nは、鋼中に固溶Nとして残存すると、鋼管の成形性、低温靭性を低下させる悪影響を有する元素であり、本発明ではできるだけ低減することが好ましい。0.008%を超えて含有すると、上記した悪影響が顕著となるため、Nは0.008%以下に限定した。なお、好ましくはO.0049%以下である。
Oは、鋼中では酸化物系介在物として存在し、鋼の耐疲労特牲、低温靭性を低下させる悪影響を有する元素であり、本発明ではできるだけ低減することが好ましい。0.003%を超える含有は、上記した悪影響が顕著となるため、OはO.003%以下に限定した。なお、好ましくはO.002%以下である。
Vは、上記した作用に加えてさらに、炭化物として析出し、表層近傍の硬さを高め、疲労強度を向上させるとともに、Nbの、熱延工程における回復・再結晶による粒成長を抑制し、フェライト相を所望の微細結晶粒径とする作用を補完する働きも有する。このような効果は、0.001%以上の含有で発現するが、0.15%を超える含有は成形性、低温靭性を低下させる。このため、含有する場合には、Vは0.001〜0.15%の範囲に限定することが好ましい。
Niは、Cuと同様に、上記した作用に加えさらに、耐食性を向上させる働きを有する。このような効果は、0.001%以上の含有で認められるが、0.45%を超える含有は、成形性を低下させる。このため、含有する場合には、Niは0.001〜0.45%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.2%以下である。
Ca:0.0001〜0.005%
Ca は、展伸した介在物(MnS)を粒状の介在物(Ca(Al)S(O))とする、いわゆる介在物の形態を制御する作用を有し、この介在物の形態制御を介して、成形時の微細割れおよび疲労亀裂発生を抑制し、成形性、耐疲労特性、低温靭性を向上させる効果を有する元素であり、必要に応じて含有できる。このような効果は、0.0001%以上の含有で顕著となるが、0.005%を超える含有は、非金属介在物が増加しかえって耐ねじり疲労特性が低下する。このため、含有する場合には、Caは0.0001〜0.005%の範囲に限定することが好ましい。
つぎに、本発明鋼管の組織限定理由について説明する。
本発明鋼管では、少なくとも管表層が微細化した組織を有する。管表層の組織は、優れた成形性、優れた耐疲労特性等を確保するうえで重要である。本発明鋼管の管最外表面および管最内表面から肉厚方向に50μmまでの管表層の領域は、平均結晶粒径が、円周方向断面(管長手方向と直交する断面)で、2.0〜14μmである微細フェライト相と、該フェライト相以外の第二相とからなる組織を有する。
管表層のフェライト相中のNb炭化物の平均粒径が1.5nm未満では、降伏強さが著しく高くなり、所望の成形性が確保できなくなるため、局所的な減肉、表面肌荒れ、微細割れが応力集中部となり断面成形加工後の5×105繰返し疲れ限度σBと鋼管引張強さTSとの比、σB/TSが0.40を下回り、断面成形加工後の耐ねじり疲労特性が低下する。一方、管表層のフェライト相中のNb炭化物の平均粒径が60nmを超えると、管表層領域の硬さが低下し、肉厚方向の硬さばらつきが大きくなり、断面成形加工後の5×105繰返し疲れ限度と鋼管引張強さTSとの比、σB/TS が0.40を下回るようになり、耐ねじり疲労特性が低下する。このため、最外表面および最内表面から肉厚方向に50μmまでの管表層領域におけるフェライト相中のNb炭化物を平均粒径で1.5nm 〜60nmの範囲に限定した。なお、好ましくは5nm〜50nmである。
管最外表面および最内表面から肉厚方向に50μmまでの領域、すなわち管表層は、管内層部と比べて、熱間圧延時の歪・熱履歴が異なり、管内層部の硬さと相違する硬さとなる場合が多い。とくに、管表層が、管内層部に比べて相対的に軟質である場合には、成形時に管表層に歪が集中し、成形後に管表層に大きな引張の残留応力が残ることになる。このため、管表層部分の疲労強度が低下することになる。
図2から、ΔHVが40ポイントを超えると、σB/TSが0.40を下回ることがわかる。このため、本発明では、HV50−200とHV0−50との差ΔHVを40ポイント以下に限定した。なお、好ましくはΔHVが30ポイント以下である。
管表層は、その平均硬さに加えて、そのばらつき(標準偏差)が疲労強度に大きな影響を及ぼす。これは、疲労亀裂が疲労強度の最弱部位で先ず発生するためと考えられる。管最外表面および最内表面から肉厚方向に50μmまで領域の硬さの標準偏差σ0−50と、断面成形加工後の5×105繰返し疲れ限度σBと鋼管引張強さTSとの比、σB/TS との関係を図3に示す。
図3から、σ0−50が、ビッカース硬さで20ポイントを超えると、σB/TSが0.40を下回り、耐ねじり疲労特性が低下する。これは、管表層内の硬さが相対的に低い部分から、疲労亀裂が発生し、ねじり疲労寿命が低下するためであると考えられる。このため、最外表面および最内表面から肉厚方向50μmまでの領域における硬さの標準偏差σ0−50を、ビッカース硬さで20ポイント以下に限定した。なお、好ましくは15ポイント以下である。
上記した組成の溶鋼をまず、転炉等の公知の溶製方法で溶製し、連続鋳造法等の公知の鋳造方法で鋼素材とすることが好ましい。ついで、これら鋼素材に、熱延工程を施し、熱延鋼帯等の鋼管素材とすることが好ましい。
熱延工程は、鋼素材に、1160〜1320℃に加熱した後、粗圧延を経て、仕上圧延圧下率:80〜97%、仕上圧延終丁温度:980〜760℃とする仕上圧延を行う熱間圧延と、該熱間圧延終了後、750〜650℃の温度範囲で2s以上の徐冷を行う徐冷処理とを施し、巻取り温度:660〜510℃で巻取り熱延鋼帯とする工程とすることが好ましい。
鋼素材の加熱温度は、鋼中のNbの再固溶、析出状況を通じて、特に鋼板表層の析出物サイズ、硬度プロファイルに影響を及ぼし、軟化を抑制し、良好な疲労強度を確保するために重要である。加熱温度が1160℃未満では、連続鋳造時に析出した粗大なNb炭窒化物が未固溶炭窒化物として残存するため、フェライト相中のNb炭化物が粗大化(平均粒径で60nmを超え)し、所望の耐ねじり疲労特性が確保できない。一方、加熱温度が1320℃を超えて高温となると、結晶粒が粗大化するため、その後の熱延工程で得られる最外表面および最内表面から肉厚方向に50μmまでの領域のフェライト相が粗大化(円周方向断面の平均粒径が14μmを超え)し、表面硬さが低下し、成形性が低下するとともに、耐ねじり疲労特性が低下する。このため、鋼素材の加熱温度は1160〜1320℃の範囲に限定することが好ましい。なお、さらに好ましくは1200〜1300℃である。また、Nbの固溶状態の均一性と十分な固溶時問の確保という観点から、鋼素材の均熱時間は30min以上とすることが好ましい。
熱延工程における仕上圧延圧下率は、鋼材のオーステナイト域での再結晶・回復挙動、圧延歪誘起析出を通して、鋼管素材(熱延鋼帯)の最外表面および最内表面から肉厚方向に50μmまでの領域の組織、すなわちフェライト相分率、フェライト相粒径、フェライト相中のNb炭化物の粒径等に、さらに硬度プロファイルに影響を及ぼし、良好な耐ねじり疲労特性を確保するために、特に重要な因子である。
熱延工程における仕上圧延終了温度は、鋼帯表層のフェライト相分率、平均粒径を所定範囲に調整して良好な鋼管成形性を確保するために重要である。仕上圧延終了温度が980℃を超えると、得られる鋼管素材のフェライト相平均粒径が14μmを超え、またフェライト相分率が60体積%未満となり、成形性が低下するとともに、表面性状が低下し、耐ねじり疲労特性が低下する。一方、仕上圧延終了温度が760℃を下回ると、鋼帯表層のフェライト相の平均粒径が2.0μmを下回り、成形性が低下するとともに、歪誘起析出により、Nb炭化物の平均粒径が60nmを超え、所望の耐ねじり疲労特性を確保できなくなる。このため、仕上圧延終了温度は980〜760℃の範囲に限定することが好ましい。なお、さらに好ましくは900〜880℃である。また、良好な表面性状、所望の表層硬さを確保するという観点から、仕上圧延前に140kg/cm2(1.4MPa)以上の水圧でのデスケーリングを行なうことが好ましい。
本発明では、熱延工程の仕上圧延終了後、直ちに巻き取るのではなく、巻取りまでの間に750〜650℃の温度範囲で2s以上の徐冷を行う徐冷処理を施す。ここで、徐冷とは、冷却速度20℃/s以下の冷却をいうものとする。上記した温度範囲における徐冷の時間は、2s以上とすることが好ましい。これにより、体積率で60%以上のフェライト相分率となる組織を確保でき、JIS 12号試験片での伸びElが15%以上となる引張特性を確保できる。2s未満では、所望の組織を確保できなくなり、所望の成形性、耐ねじり疲労特性が確保できなくなる。なお、より好ましくは4s以上である。
徐冷処理を施された熱延鋼帯は、ついで、コイル状に巻き取られる。巻取り温度は660〜510℃の温度範囲とすることが好ましい。巻取り温度は、熱延鋼帯の組織分率、とくに鋼帯表層のフェライト相分率と析出物の析出状態を決定する重要な因子である。巻取り温度が510℃未満では、所望のフェライト相分率が得られず、所望の成形性が得られないうえ、Nb炭化物の平均粒径が1.5nm未満となり、所望の耐ねじり疲労特性が確保できなくなる。一方、巻取り温度が660℃を超えると、フェライト相の平均粒径が14μmを超え、成形性が低下するとともに、巻取り後のスケール成長により、表面性状が低下し耐ねじり疲労特性が低下する。さらにまた、Nb炭化物の平均寸法が60nmを超え、所望のねじり疲労特性が確保できなくなる。このため、巻取り温度は660〜510℃の範囲とすることが好ましい。なお、さらに好ましくは600〜560℃である。
鋼管素材は、熱延ままとしてもよいが、鋼管素材に酸洗処理、ショットブラスト等を施し表面の黒皮を除去することが好ましい。また、さらに、耐食牲、塗膜密着性の観点から鋼管素材に亜鉛メッキ、アルミメッキ、ニッケルメッキ、有機皮膜処理などの表面処理を施すこともできる。
電縫造管工程は、鋼管素材を連続的にロール成形し電縫溶接して溶接鋼管とする工程とする。電縫造管工程では、幅絞り率:10%以下(0%を含む)の電縫造管を施すことが好ましい。鋼管素材を連続的にロール成形し電縫溶接する場合には、幅絞り率は所望の成形性を確保するための重要な因子である。幅絞り率が10%を超えると造管に伴う成形性の低下が顕著となり、所望の鋼管成形性が確保できなくなる。このため、幅絞り率は10%以下(0%を含む)とすることが好ましい。なお、より好ましくは1%以上である。幅絞り率(%)は、次(1)式
幅絞り率(%)=[(鋼管素材の幅)−π{(製品鋼管外径)−(製品鋼管肉厚)}]/π{(製品鋼管外径)−(製品鋼管肉厚)}×(100%)………(1)
で定義される値とする。
表1に示す組成のスラブ(鋼素材)を、約1250℃に加熱し、仕上圧延圧下率:93%、仕上圧延終了温度:約860℃とする熱間圧延を施し、熱間圧延終了後、750℃〜650℃の温度範囲で5s間徐冷する徐冷処理を施したのち、巻取り温度:590℃で巻き取る熱延工程を施し、熱延鋼帯(板厚:約3mm)とした。
これら溶接鋼管から、試験片を採取し、組織観察試験、析出物観察試験、引張試験、ねじり疲労試験、低温靭性試験を実施した。試験方法はつぎの通りとした。
得られた溶接鋼管から、円周方向断面が観察面となるように、組織観察用試験片を採取して、研磨し、ナイタール腐食して、走査型電子顕微鏡(3000倍)で組織を観察し、撮像して、画像解析装置を用いて、フェライト相の組織分率(体積%)、フェライト相の平均結晶粒径(円相当径)を測定した。測定は、管最外表面、管最内表面から肉厚方向に50μmまでの領域(管表層)を肉厚方向に3ブロックに分けて行った。各ブロックにおいて、フェライト相の組織分率(体積%)、フェライト相の平均結晶粒径を測定し、各ブロック(計6ブロック)の測定値を算術平均し、管表層におけるフェライト組織分率、フェライト相の平均結晶粒径とした。
得られた溶接鋼管から、円周方向断面が観察面となるように、析出物観察試験片を採取して、抽出レプリカ法を用いて組織観察用試料を作製し、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、10万倍で計6視野観察し、EDS分析によりNbを含まないセメンタイト、TiNなどを同定・除外し、Nbを含有する炭化物(Nb炭化物)について、画像解析により、各Nb炭化物の面積を測定しその面積から円相当直径を算出し、それらの算術平均値をNb炭化物の平均粒径とした。なお、Ti、Mo等を含む複合炭化物なども、Nb炭化物としてカウントした。また、測定は、管最外表面、管最内表面から肉厚方向に50μmまでの領域を肉厚方向に3ブロックに分けて行い、各ブロック2視野ずつ行った。
得られた溶接鋼管から、管軸方向が引張方向となるように、JIS Z 2201の規定に準拠してJIS 12号試験片を切出し、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を実施し、引張特性(引張強さTS、降伏強さYS、El)を求め、強度と成形性を評価した。
(5)ねじり疲労試験
得られた溶接鋼管から、試験材(長さ:1500mm)を採取し、該試験材の中央部約1000mmLに、図1(特開2001−321846号公報の図11)に示すように、鋼管の長手中央部分をV字形状に断面を成形加工したのち、両端部をチャッキングにより固定して、ねじり疲労試験を実施した。
(6)低温靭性試験
得られた溶接鋼管から、試験材(長さ:1500mm)を採取し、ねじり疲労試験材と同一条件で断面成形加工を行ない、断面成形加工ままの試験材平坦部分より、管円周方向(C方向)が試験片長さとなるように展開し、JIS Z 2242の規定に準拠してVノッチ試験片(1/4サイズ)を切出し、シャルピー衝撃試験を実施し、破面遷移温度vTrsを求め、低温靭性を評価した。
次(2)式
αf=1+2√(d/ρ)‥‥(2)
(ここで、d:表面凹凸の深さ(μm)、ρ:表面凹部先端の曲率半径(μm))
で定義される応力集中係数αfを求めた。その結果、各溶接鋼管のαfはいずれも、10以下であり、表面性状は良好であった。
熱延工程における鋼素材加熱温度、仕上圧延圧下率のいずれかが本発明範囲を外れる比較例(鋼管No.34、 No.36、 No.37、 No.41)では、(σB/TS) が0.40未満と耐ねじり疲労特性が低下している。また、鋼素材の熱延工程における仕上圧延終了温度、徐冷処理時間、巻取り温度、鋼管の電縫造管工程における幅絞り率のいずれかが本発明範囲を外れる比較例(鋼管No.42、 No.44、 No.45、 No.47、 No.51、 No.59)はいずれも、Elが15%未満と低く、延性が不足し、かつ(σB/TS) が0.40未満と低く、耐ねじり疲労特性が低下している。
(実施例3)
表1に示す鋼No.Dを基本組成とし、S含有量のみを変化し、介在物量を変えた溶鋼を溶製し、連続鋳造法でスラブに鋳造し、鋼素材とした。これら鋼素材に、約1250℃に加熱し、仕上圧延圧下率:93%、仕上圧延終了温度:約860℃とする熱間圧延を施し、熱間圧延終了後、750℃〜650℃の温度範囲で5s間徐冷する徐冷処理を施したのち、巻取り温度:590℃で巻き取る熱延工程を施し、熱延鋼帯(板厚:約3mm)とした。
得られた溶接鋼管から、試験材(長さ:1500mm)を採取し、該試験材の中央部約1000mmLに、図1(特開2001−321846号公報の図11)に示すように、鋼管の長手中央部分をV字形状に断面を成形加工したのち、両端部をチャッキングにより固定して、ねじり疲労試験を実施した。ねじり疲労試験条件は実施例1と同様とした。
得られた結果を、断面成形加工後のねじり疲労試験での5×105繰返し疲れ限度σBと鋼管強度TSとの比(σB/TS)と、管最外表面および管最内表面から肉厚方向に50μmまでの領域の介在物率との関係で、図4に示す。図4から、管最外表面および管最内表面から肉厚方向に50μmまでの領域の介在物率が低下するにしたがい、(σB/TS) が増加する傾向となることがわかるが、介在物率0.10%以下に低減すると、(σB/TS) が O.40以上となる。なお、観察された介在物は、多いものから硫化物、酸化物、窒化物の順であった。図4からは、介在物率が0.04%以下まで低減することにより、(σB/TS) が O.42以上となることがわかる。
Claims (6)
- 質量%で、
C:0.03〜0.24%、 Si:0.002〜0.95%、
Mn:1.01〜1.99%、 Al:0.01〜0.08%、
Nb:0.001〜0.15%
を含有し、不純物であるP、S、N、Oを、P:0.019%以下、S:0.010%以下、N:0.008%以下、O:0.003%以下に調整して含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、
管最外表面および管最内表面から肉厚方向に50μmまでの領域が、円周方向断面の平均結晶粒径が2.0〜14μmであるフェライト相と該フェライト相以外の第二相からなる組織とを有し、
前記フェライト相の組織分率が体積率で60%以上であり、該フェライト相中に1.5〜60nmのNb炭化物が析出してなり、
前記領域の平均硬さHV0−50と、管最外表面または管最内表面から肉厚方向に50〜200μmの範囲の領域の平均硬さHV50−200との差ΔHV(=HV50−200−HV0−50)がビッカース硬さで40ポイント以下、前記管最外表面または管最内表面から肉厚方向に50μmまでの領域の硬さの標準偏差σがビッカース硬さで20ポイント以下であり、低温靭性、成形性、および断面成形加工後の耐ねじり疲労特性に優れることを特徴とする自動車構造部材用高張力溶接鋼管。 - 前記組成に加えてさらに、質量%で、V:0.001〜0.15%、W:0.001〜0.15%、Ti:0.001〜0.15%、Cr:0.001〜0.45%、Mo:0.001〜0.45%、Cu: 0.001〜0.45%、Ni: 0.001〜0.45%、B:0.0001〜0.0009%のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、Ca:0.0001〜0.005%、を含有する組成とすることを特徴とする請求項1に記載の自動車構造部材用高張力溶接鋼管。
- 前記管最外表面および管最内表面から肉厚方向に50μmまでの領域における管軸方向断面の介在物率が、JIS G 0555-2003に記載の方法で測定した値で0.10%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車構造部材用高張力鋼管。
- 管内外面表面の、下記(2)式で定義される応力集中係数αfが10以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の自動車構造部材用高張力鋼管。
記
αf=1+2√(d/ρ)‥‥(2)
ここで、d:表面凹凸の深さ(μm)、ρ:表面凹部先端の曲率半径(μm) - 鋼管素材に、電縫造管工程を施して溶接鋼管とするにあたり、
前記鋼管素材が、質量%で、
C:0.03〜0.24%、 Si:0.002〜0.95%、
Mn:1.01〜1.99%、 Al:0.01〜0.08%、
Nb:0.001〜0.15%
を含有し、不純物であるP、S、N、Oを、P:0.019%以下、S:0.010%以下、N:0.008%以下、O:0.003%以下に調整して含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材に、1160〜1320℃に加熱した後、仕上圧延圧下率:80〜97%、仕上圧延終了温度:980〜760℃とする仕上圧延を行う熱間圧延と、該熱間圧延終了後、750〜650℃の温度範囲で2s以上の徐冷を行う徐冷処理とを施し、巻取り温度:660〜510℃で巻取る熱延工程を施してなる熱延鋼帯であり、
前記電縫造管工程が、前記鋼管素材を酸洗、スリッティングしたのち、該鋼管素材に下記(1)式で定義される幅絞り率を10%以下として、連続的にロール成形し電縫溶接して溶接鋼管とする工程であり、
前記溶接鋼管が、低温靭性、成形性、および断面成形加工後の耐ねじり疲労特性に優れること、
を特徴とする自動車構造部材用高張力鋼管の製造方法。
記
幅絞り率=[(素材鋼管の幅)−π{(製品外径)−(製品肉厚)}]/π{(製品外径)−(製品肉厚)}×(100%)‥‥(1) - 前記組成に加えてさらに、質量%で、V:0.001〜0.15%、W:0.001〜0.15%、Ti:0.001〜0.15%、Cr:0.001〜0.45%、Mo:0.001〜0.45%、Cu: 0.001〜0.45%、Ni: 0.001〜0.45%、B:0.0001〜0.0009%のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、Ca:0.0001〜0.005%、を含有する組成とすることを特徴とする請求項5に記載の自動車構造部材用高張力溶接鋼管の製造方法。
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