JP5120049B2 - 車両の走行制御装置 - Google Patents

車両の走行制御装置 Download PDF

Info

Publication number
JP5120049B2
JP5120049B2 JP2008116457A JP2008116457A JP5120049B2 JP 5120049 B2 JP5120049 B2 JP 5120049B2 JP 2008116457 A JP2008116457 A JP 2008116457A JP 2008116457 A JP2008116457 A JP 2008116457A JP 5120049 B2 JP5120049 B2 JP 5120049B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
vehicle
control
actuator
driver
ideal
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2008116457A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2009262837A (ja
Inventor
喜朗 入江
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp filed Critical Toyota Motor Corp
Priority to JP2008116457A priority Critical patent/JP5120049B2/ja
Publication of JP2009262837A publication Critical patent/JP2009262837A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5120049B2 publication Critical patent/JP5120049B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Traffic Control Systems (AREA)
  • Control Of Driving Devices And Active Controlling Of Vehicle (AREA)

Description

本発明は、自動車等の車両の走行制御に係り、より詳細には、車両の運転者の運転支援を行うべく車両の走行・運動状態を自動的に又は自律的に制御する走行制御装置に係る。
近年、自動車等の車両の知能化技術、情報化技術の進歩により、車両の運転・走行を支援する車両の制御技術は、従前に比して高度に発展し、車両の運転者の操縦負担は軽減され、車両の安全性が向上されている。例えば、車載レーダー、車車間通信技術等を用いて、自車の進行方向に存在する先行車両や障害物を自動的に発見し、それらを適切に回避し又は適正な車間距離を維持するよう運転者に警告を発し或いは自車の走行・運動を制御する技術(ACC。例えば、特許文献1、2参照)や、車両のフロントガラス上部に備えられたビデオカメラを用いて車両の走行路面上の左右の白線を認識し、車両が車線を逸脱しそうになると、運転者に対し警告を発し(例えば、警告音、警告灯、操舵トルクの増大など)、或いは、自動操舵を実行して、車両が車線内にて走行するよう制御する技術(LKA。例えば、特許文献3参照)などが提案されている。また、GPS(Global Positioning System)によるカーナビゲーションシステムを用いることにより、自車両の現在位置の情報や周辺の道路状況に関する情報を取得し、それらの情報と運転者の長期希望(目的地、到着時刻など)とを参照して車両の走行制御を計画的に実行する技術(例えば、本願出願人による特願2006−313258)、或いは、自車両の現在位置の情報や周辺の道路状況に関する情報に基づいて検知される障害物に対する数秒後の接触確率と自車両のタイヤ摩擦円の利用率とが最小化されるように車両の走行挙動を制御する技術(特許文献4)などが提案されている。
上記の如き車両の知能化技術、情報化技術を利用した車両の運転支援制御のいくつかに於いては、自車両の現在位置の情報や周辺の道路状況に関する情報、特に車両の進行方向の情報、例えば、道路線形、路面摩擦状態など(しばしば、「プレビュー情報」と称される。)に基づいて、将来の或る目標地点までの走行経路での車両の走行限界を考慮しつつ、将来の予定走行経路(理想軌跡又は将来軌跡)を設定し、車両がその経路に沿って走行するように、車両の走行を自律的に制御することが可能となっている。そのような車両の自律走行を達成する走行制御が実行されるときには、運転者が操縦を行わなくても、車両は、安全に且つ安定的に理想軌跡(概念的に述べれば、タイヤがそれぞれの摩擦円内で運動しタイヤがスリップせずに、更には、障害物等への衝突も回避されるよう設定される軌跡)を走行することが期待される。しかしながら、そのままでは、運転者の操縦意図が車両の挙動に全く反映されないことになりかねない。そこで、自律走行制御(「自律運転制御」とも称される。)の実行中に於いて運転者による操縦があったときには、自律走行制御と運転者による操縦との間で両者を協調させる制御(「自律運転とヒトとの協調制御」)の開発が試みられている。
特開2003−341501 特開2005−100336 特開2002−67998 特開2007−99166 「自動車の運動と制御」安部正人著、平成13年4月15日 第4刷、山海堂、185頁
車両が走行している間に車両の走行制御が自動的に働く際に、即ち、運転者の車両の操縦に対して何らかの制御装置による制御が介入する際に、一般に、運転者は、車両の前後方向の挙動・位置を変化させる制御の介入があっても然程に違和感を覚えないが、車両の左右方向の挙動・位置を変化させる制御の介入があると、違和感を覚えやすいことが知られている。これは、車両の操縦の際、運転者は、車両の前後方向については、主として、周辺の車両との相対的な位置関係に着目する一方、車両の左右方向については、車両の絶対的な位置に着目するためであると考えられる。しかしながら、これまでの「自律運転とヒトとの協調制御」に於いては、上記の如く車両の前後方向と左右方向とで制御の介入に対する運転者の違和感の感じ方が異なるにもかかわらず、運転者の車両の運転制御に対する制御装置による制御の介入の大きさは、前後方向及び左右方向の双方で運転者の感じる違和感が問題とならないように、一括的に低減されることが多い。その場合、結局、制御装置による制御の介入の大きさ、つまり、制御装置による制御量の大きさは、違和感の感じやすい車両の左右方向に於いて運転者の違和感が問題とならないように調整されることとなるが、そうすると、車両の走行軌跡が理想軌跡から逸脱されやすくなってしまう。
そこで、本発明では、車両を理想軌跡に沿って自律的に運転する走行制御と運転者による操縦との協調制御を実行する制御システムに於いて、自律的走行制御による制御量を車両の前後方向の挙動・位置を調整する成分と左右方向の挙動・位置を調整する成分とに分割し、それぞれの成分の運転者の操縦に対する介入の大きさを別々に又は独立に制御する構成が提案される。このように、自律的走行制御による制御量に於ける車両の前後方向と左右方向の成分を切り離すことにより、車両の左右方向について自律走行制御の介入による運転者の違和感を低減しつつ、車両の前後方向について車両の走行を、できるだけ或いは少しでも、理想軌跡に沿った最適な状態に近づけられることが期待される。
かくして、本発明の一つの課題は、車両の運転支援を実現する車両の走行制御装置による自律運転とヒトとの協調制御システムであって、運転者の車両の運転制御に対する制御装置による制御の介入の大きさを車両全体で一括的に調整するのではなく、制御装置による制御の介入の大きさを車両の前後方向と左右方向で別々の程度にて調節できるようになったシステムを提供することである。
また、本発明の一つの課題は、上記の如き車両の運転支援システムであって、運転者の違和感に配慮し又はそれを低減しつつ、車両の走行軌跡・挙動状態をできるだけ理想軌跡に沿った安定的な状態に近づけられるよう構成されたシステムを提供することである。
本発明の車両の運転支援を実行する車両の走行制御装置は、車両の周囲環境情報に基づいて車両の理想軌跡を生成する理想軌跡生成手段と、理想軌跡と車両の運転者の操作に基づいて車両の走行軌跡を制御する走行軌跡制御手段とを含み、走行軌跡制御手段が理想軌跡に対する車両の左右方向の位置を調節する第一のアクチュエータを制御する左右方向制御手段と理想軌跡に対する車両の前後方向の位置を調節する第二のアクチュエータを制御する前後方向制御手段とを含み、左右方向制御手段が第一のアクチュエータに与える第一の制御量と前後方向制御手段が第二のアクチュエータに与える第二の制御量とが互いに独立に決定されることを特徴とする。
かかる構成に於いて、車両の理想軌跡を生成する理想軌跡生成手段とは、任意の車両の周囲環境情報、例えば、カーナビゲーション情報、路車間通信、車車間通信、レーダー装置、ビデオカメラ装置等によって得られる情報(又は更に運転者による入力)から得られる道路線形、路面の摩擦係数、障害物の位置などを含む情報に基づいて、任意の形式にて車両の将来の走行軌跡(以下、「理想軌跡」と称する。)を決定又は生成する手段であってよい(例えば、上記の特願2006−313258に記載のシステムであってもよいが、これに限定されない。)。理想軌跡は、好適には、車両が安全且つ安定的に走行できるように、車両の各輪のタイヤ力の摩擦円の使用率に基づいて、タイヤがそれぞれの摩擦円内で運動しタイヤがスリップせずに、更には、障害物等への衝突も回避されるよう設定又は決定された軌跡であり、例えば、車両の発進後の任意の時刻以降(将来)に於いて、車両が辿るべき座標値、車速値、ヨーレート、ヨー角などの車両の状態量の値により与えられる(なお、本発明の趣旨は、理想軌跡が与えられた後の制御の構成であり、理想軌跡自体は、如何なる手法にて設定されるかは問わない。)。
また、上記の構成に於いて、車両の左右方向の位置を調節する第一のアクチュエータは、典型的には、前輪又は後輪の舵角を制御する操舵装置であってよく、車両の前後方向の位置を調節する第二のアクチュエータは、車両の駆動装置及び/又は制動装置であってよい。従って、運転者の第一のアクチュエータに対する操作が車両の舵角の操作を含み、運転者の第二のアクチュエータに対する操作が車両の制駆動の操作を含むようになっていてよい。しかしながら、例えば、タイヤの制駆動力の左右差により、車両にヨーモーメントや横力を発生させることができるので、第一のアクチュエータの一部として、車両の制動装置又は駆動装置(の一部の構成)が含まれていてもよい。また、逆に、車輪の舵角を制御することにより、車両の前後方向の制駆動力を調整することも可能なので、第二のアクチュエータの一部として、車両の操舵装置(の一部の構成)が含まれていてもよい。
上記の本発明の構成によれば、走行軌跡制御手段が理想軌跡と車両の運転者の操作に基づいて車両の走行軌跡を制御するところ、かかる走行軌跡制御手段に於いては、第一のアクチュエータを制御する左右方向制御手段と、第二のアクチュエータを制御する前後方向制御手段とが設けられ、左右方向制御手段が第一のアクチュエータに与える第一の制御量と前後方向制御手段が前記第二のアクチュエータに与える第二の制御量とが互いに独立に決定されることとなる。即ち、車両の走行軌跡の制御に於いて、車両の前後方向の制御と左右方向の制御とが、互いに切り離されて実行されることとなる。かかる態様によれば、車両の前後方向の制御と左右方向の制御のそれぞれの制御の寄与、即ち、理想軌跡に基づいて車両を走行させる制御の運転者の操縦に対する介入の程度が独立に調節できることとなる。従って、車両の前後方向と左右方向との制御の介入に対する運転者の違和感の感じ方に差異があっても、それぞれの方向に適合するように、典型的には、左右方向の制御の介入の大きさを低減しつつ、前後方向の制御の介入の大きさを大きくするといった制御態様が可能となる。そして、かかる制御態様によって、車両の前後方向と左右方向のうち、いずれかの一方の方向の理想軌跡に基づく制御の大きさが低減される状況に於いても、他方の方向については、車両の位置を理想軌跡に一致させる又は近づけられることとなる。
上記の本発明の車両の前後方向の制御と左右方向の制御を切り離す構成に於いて、一つの態様として、第一の制御量が車両の走行軌跡を理想軌跡に一致させるよう決定される第一のアクチュエータの制御量(以下、「自律走行制御量」と称する。)と運転者の第一のアクチュエータに対する操作量とに基づいて決定され、第二の制御量が車両の走行軌跡を理想軌跡に一致させるよう決定される第二のアクチュエータの自律走行制御量と運転者の第二のアクチュエータに対する操作量とに基づいて決定されるようになっていてよい。かかる態様によれば、車両の走行状態をその前後方向及び左右方向について調節するそれぞれの運転者の操作量と自律走行制御量の大きさとに基づく最終的な各方向のアクチュエータの制御量が独立して決定されることになり、従って、車両の前後方向及び左右方向のそれぞれに於いて、運転者の操作量と自律走行制御量の大きさとのバランスを適宜調整するといったことが可能となる。
上記の態様を達成する一つの形態としては、本発明の装置に於いて、更に運転者の希望する走行モードを受容する手段が設けられ、理想軌跡に対する車両の左右方向の位置、ヨーレート、スリップ角、旋回曲率等に基づいて決定される第一のアクチュエータの自律走行制御量と運転者の第一のアクチュエータに対する操作量とを前記の走行モードに応じて決定される第一の割合にて足し合わせることにより、第一の制御量が決定され、理想軌跡に対する車両の前後方向の走行状態、例えば、位置、車速、加減速度、制駆動力、制駆動トルク、に基づいて決定される第二のアクチュエータの自律走行制御量と運転者の第二のアクチュエータに対する操作量とを前記の走行モードに応じて決定される第二の割合にて足し合わせることにより第二の制御量が決定されるようになっていてよい。走行モードを受容する手段は、運転者の如何に車両を走行させたいかという要求を受け付ける手段であり、上記の構成に於いては、運転者の要求するモードに応じて、車両の前後方向と左右方向とで、運転者の操作量と自律走行制御量の大きさとのバランス(割合)を別々に設定することとなる。かかる構成によれば、例えば、燃費を重視する走行モードが選択されれば、前後方向についての最終的にアクチュエータに与える制御量(第二の制御量)に於いて、自律走行制御量の割合を大きくする(運転者の第一のアクチュエータに対する操作量の寄与が低減される。)といったことや、或いは、車両を緩やかに(運転者の違和感が大きくならないように)走行させる走行モードが選択されれば、左右方向についての最終的にアクチュエータに与える制御量(第一の制御量)に於いて、自律走行制御量の割合を小さくするといったことが可能となる。
なお、既に述べた如く、理想軌跡は、好適には、タイヤがそれぞれの摩擦円内で運動しタイヤがスリップせずに車両が安全に且つ安定的に走行するよう決定される軌跡であるところ、運転者の操作が自律的走行制御に介入することで、タイヤがスリップ状態となることは回避されることが好ましい。そこで、上記の構成に於いて、更に、第一及び第二の制御量が、前記車両の各輪のタイヤ力の大きさが対応する車輪の摩擦円内に収まるよう修正されるようして、車両が安全に且つ安定的に走行する状態が維持されるようになっていてよい。例えば、各輪のタイヤ力が車輪の摩擦円を超えるときには、前記の第一及び第二の割合がそれぞれ自律走行制御量の寄与を大きくする方向に変更されるようになっていてよい。
車両の運転支援を実行する制御の一つである自律的な走行制御は、原理的には、運転者の車両の操縦によらず達成されるよう構成されるが、実車に於いて、運転者が操縦を行うことなく車両を走行させる構成は、現実的でない。そこで、自律的な走行制御装置を搭載した車両に於いても、運転者の操縦通りに車両を走行させる構成が必須となる。しかしながら、その場合には、運転者の操縦と自律的な走行制御とが互いに干渉し得ることととなり、運転者の側からすれば、自律的な走行制御の実行により、運転者自身の操縦に対して介入を受け、違和感を感じることとなる。従って、実車に於いては、運転者がそのような違和感を感じないように配慮する必要があるが、そのために自律的な走行制御の寄与を低減すると、折角の運転支援効果が低減される。即ち、車両の運転支援と運転者の違和感低減は、相反する要求であるということができる。
本発明に於いては、上記の如き相反する要求に対して、「自律的走行制御装置による運転者の操縦への制御介入」に対する運転者の違和感の感じ方に車両の前後方向と左右方向とで差異が有り得ることに着目し、車両の前後方向と左右方向の挙動・位置を調節する自律的走行制御装置による制御の大きさをそれぞれ別々に調整することによって、できるだけ、前記の制御介入による運転者の違和感の低減を図ると同時に、車両の走行軌跡を理想軌跡に近づけることが可能となることが期待される。かかる新規な「自律運転とヒトとの協調制御」によれば、自律運転制御又は自律走行制御が適用される車両の範囲が更に拡大されることが期待される。
本発明のその他の目的及び利点は、以下に於いて、部分的に明らかになり、指摘される。
車両の構成
図1は、本発明による車両の走行制御装置の好ましい実施形態が組み込まれた車両の構成を模式的に示している。同図を参照して、左右前輪12FL、12FRと、左右後輪12RL、12RRを有する車両10には、運転者によるアクセルペダル14の踏込みに応じて各輪(図示の例では、後輪駆動車であるから、後輪のみ)に制駆動力を発生する動力装置20と、操舵装置30と、各輪に制動力を発生する制動装置40とが搭載される。駆動装置又は動力装置20は、図示の例では、エンジン22からトルクコンバータ24、自動変速機26、差動歯車装置28等を介して出力される回転制駆動力が後輪12RL、12RRへ伝達されるよう構成されている(エンジン22に代えて電動機が用いられる電気式、或いは、エンジンと電動機との双方を有するハイブリッド式の駆動系装置であってもよい。)。駆動装置20の発生する制駆動力は、本発明の走行制御の実行時には、後述の電子制御装置60により適宜調節される。
操舵装置30は、運転者によって作動されるステアリングホイール(ハンドル)32の回転に応答してタイロッド34L、Rを介して前輪12FL、12FRを転舵する。かかる操舵装置30は、好ましくは、運転者の操舵とは独立に前輪の舵角を変えることができる「アクティブ操舵装置」であり、ステアリングシャフトの途中に転舵角可変装置36が設けられる。転舵角可変装置36は、内部に駆動用電動機を含み、該電動機は、後述の電子制御装置60の制御下、前輪舵角δwを、ステアリングホイール32の回転によらず、転舵できるよう構成されている。ステアリングホイールの操舵角δh及び車輪舵角δwは、それぞれ、舵角センサ32a、36aにより検出される。なお、図示していないが、後輪にも同様の電子制御装置60の制御下、後輪を転舵する後輪操舵装置が設けられていてもよい。
制動装置40は、各車輪の制動力を個別に発生することのできる油圧式制動装置であり、オイルリザーバ、オイルポンプ、種々の弁等(図示せず)、各輪に装備をされたホイールシリンダ42FL、42FR、42RL、42RR、及び、運転者によりブレーキペダル44の踏込みに応答して作動されるマスタシリンダ46を含む油圧回路48を有し、各ホイールシリンダ内のブレーキ圧、即ち、各輪に於ける制動力は、通常は、マスタシリンダ圧力に応答して油圧回路48によって調節されるところ、何らかの走行制御の実行時に於いては、電子制御装置60の制御下、加減速制御又はVSC若しくはその他のヨーモーメント生成を行う制御に応じて一斉又は個別に制御されるようになっている。また、ブレーキ圧を制御するために、圧力センサ(図示せず)が、それぞれ、マスタシリンダ圧力、ホイールシリンダ42FL−42RRの各圧力を検出するために設けられている。なお、制動装置は、各車輪の制動力を個別に調節できるものであれば、任意の形式(例えば、電磁式など)のものであってよい。
エンジンの駆動出力、各輪のブレーキ圧、即ち、制動力、車輪舵角を制御する電子制御装置60は、通常の形式の、双方向コモン・バスにより相互に連結されたCPU、ROM、RAM及び入出力ポート装置を有するマイクロコンピュータ及び駆動回路を含んでいてよい。制御装置60へは、本発明の制御を実施するために、アクセルペダルセンサ(図示せず)からのアクセルペダル踏込量θa、ブレーキペダルセンサ(図示せず)からのブレーキペダル踏込量θb、ステアリングホイール(ハンドル)舵角δh、各輪の備えられた車輪速センサ(図示せず)からの車輪速Vwi、各輪のホイールシリンダ42FL−42RR内の圧力Pbi(i=FL、FR、RL、RR)、前輪舵角δw、前後加速度センサ64により検出される前後加速度Gx、横方向加速度センサ66により検出される横加速度Gy、ヨーレートセンサ68により検出されるヨーレートγ、エンジン回転数・吸入空気量等のエンジン動作情報Er等が入力される。
また、図示の車両に於いては、車両の周辺環境情報を取得する手段として、車両の前方の障害物・先行車両、レーン形状等を認識するための検出器(ビデオカメラ、レーダー装置)70と、GPS人工衛星データを受信して種々の情報を取得するカーナビゲーションシステム72が設けられている。ビデオカメラ又はレーダー装置70の検出データは、電子制御装置60内のデータ解析装置IP(画像処理装置等)へ送信され、任意の公知の手法にて車両前方の障害物の有無とその位置(自車両からの相対距離・相対速度と方向)や、走行路面の形状に関する情報を生成するために用いられる。一方、カーナビゲーションシステムは、自車両の位置(緯度、経度)・車体の向き、走行路の道路線形等のデータを生成し、それらの情報を電子制御装置60へ送信する。更に、電子制御装置60の内部に於いて、公知の任意の方式により(好ましくは各輪の)路面摩擦係数μを推定する装置が組み込まれ、路面摩擦係数μが本発明の制御に於いて適宜利用される。その他、電子制御装置60には、任意に、制御に必要なパラメータが各種センサにより検出され入力されてよい。なお、上記の電子制御装置へ入力される車両の周囲環境情報(自車の現在位置、道路線形、路面摩擦係数、障害物の有無及び位置など)は、周囲の他車と通信して情報交換を行う車車間通信システム又は道路インフラと通信して情報交換を行う路車間通信システムを通じて取得されるようになっていてもよい。
本発明の制御の概要
本実施形態の車両の走行制御の全体に於いては、基本的には、上記の如き自車の現在位置、道路線形、路面摩擦係数、障害物の有無及び位置などの車両の周囲環境情報を用いて、車両の「理想軌跡」が設定され、車両の操舵装置(第一のアクチュエータ)と制駆動装置(第二のアクチュエータ)は、車両が「理想軌跡」に沿って走行するよう自動的に制御される(自律走行制御)。ここで「理想軌跡」とは、車両が道路線形に沿って或いは障害物を回避しつつ安全に且つ安定的に走行できるよう任意の形式によって決定され走行軌跡である。具体的には、図5に模式的に例示されている如く、理想軌跡に於いて、軌跡(丸点列の各点)の座標値[XGPS ,YGPS ](GPS座標等であってよいが、これに限定されない。)と、それらの座標値の各々に於ける車速値Vsx、ヨーレート値γ、スリップ角値βが、いわば、表形式のテーブルの如く、与えられる(以下、「理想軌跡」と言う場合には、特に断らない限り、座標値、車速値、ヨーレート値及びスリップ角値から成る数値の組を指す。「」は、理想軌跡の値であることを示す。)。そして、操舵装置と制駆動装置とは、車両が理想軌跡を達成するように制御される。
しかしながら、実車に於いては、車両は、運転者により操縦できるようになっていなければならない。そうなると、運転者の操作(ハンドルの回転、アクセル・ブレーキペダルの踏込み)があったときには、その運転者の操作に基づく制御と上記自律走行制御とが互いに干渉することとなる。そこで、二つの制御の干渉を調停するべく、既に触れた如く、「自律運転とヒトとの協調制御」が準備される。本発明の対象は、「理想軌跡」にて与えられている座標値、車速値、ヨーレート値及びスリップ角値を実現するよう走行している車両に於いて、運転者の操作があったときにその操作と理想軌跡に基づく自律走行制御とを調停するための自律運転とヒトとの協調制御にあり、本発明の装置の於いては、「理想軌跡」に基づいてアクチュエータの制御量を決定する際に、車両の前後方向の位置・走行状態を調節するアクチュエータと、車両の左右方向の位置・走行状態を調節するアクチュエータとを別々に制御し、即ち、車両の左右方向と前後方向の制御を互いに切り離して制御し、より好適には、運転者の操作による制御と自律走行制御との寄与の割合が車両の左右方向と前後方向とで別々に設定されるよう構成される。そして、かかる構成により、運転者の、自身の操作への自律走行制御の介入に対する違和感をできるだけ低減しつつ、車両をできるだけ理想軌跡に沿う又は理想軌跡を達成する態様にて走行させることが試みられる。
制御の構成と作動
図2及び図3は、本発明の走行制御装置を組み込んだ電子制御装置60の好ましい実施形態の構成の概略を制御ブロック図の形式で表したものである。図中、符号60a〜m、80a〜bが付されているブロック及び加算器、乗算器は、電子制御装置60の内部構成及びその内部の記憶装置に記憶されたプログラムに従った演算処理作動により実現される。なお、同図に於いて、信号の流れについては、簡単のため、主要な信号の流れのみが記載されている。
[運転者操作による制御のための構成]
まず、図2を参照して、電子制御装置60の好ましい実施形態は、通常の走行制御装置と同様に、アクセル踏込量θaとブレーキ踏込量θbとに基づいて運転者の要求加減速度αtを決定する加減速度制御指令決定部60aと、ハンドル操舵角δhに基づいて車輪の目標転舵角δwtを決定する車輪舵角制御指令決定部60bと含み、理想軌跡が生成されないときには(周知環境情報が取得できないときや運転者が自律走行制御を望まないとき)、通常の走行制御装置と同様に、要求加減速度αtと目標転舵角δwtとが、制駆動力制御指令部60cを介して駆動制御装置60d及び/又は制動制御装置60eと、操舵制御装置60fとへそれぞれ直接送られ、これらの目標値に基づいて、駆動装置、制動装置、操舵装置がそれぞれ制御される。
[自律走行制御のための構成]
更に、電子制御装置60には、車両の自律走行を達成するために、理想軌跡生成部60gが設けられ、これにより、GPS情報(又は車車間通信情報)を含む周辺環境情報に基づいて、理想軌跡(座標値[XGPS ,YGPS ]、車速値Vsx、ヨーレート値γ及び車体スリップ角値β)が設定される。理想軌跡生成部60gは、走行モード決定部60hからのモード情報により運転者により自律走行を指示する走行モードが選択されたことを受信すると、任意の形式にて、前記の図5に例示されている如き理想軌跡の各値を設定する(理想軌跡生成(例えば、特願2006−313258参照))。なお、理想軌跡生成は、更に、運転者のハンドル又はペダル操作に応答して、例えば、要求加減速度αt、目標転舵角δwtの所定の変化に応答して開始されるようになっていてよい。理解されるべきことは、ここで、設定される理想軌跡の各値は、車両が道路線形に沿って、好適には、安全且つ安定的に走行するよう決定されるという点である。従って、車両が理想軌跡で設定される走行状態(車速、ヨーレート、スリップ角等)に追従して走行する場合には、各輪のタイヤ力がそれぞれ対応する最大摩擦円の十分に内側にある状態が達成され且つ維持されることとなる。
更に、理想軌跡生成部60gに於いては、後に説明される制御処理に用いられる加減速度Gsx及び旋回曲率1/ρが各座標値に対応して決定されるようになっていてよい。加減速度Gsxは、理想軌跡上の隣接する2点間の座標値と車速値Vsxとを用いて、
Gsx(n)=(Vsx(n)−Vsx(n-1))/2(ΔXGPS *2+ΔYGPS *2)1/2 …(1)
(ここで、ΔXGPS *=XGPS *(n)−XGPS *(n-1);ΔYGPS *=YGPS *(n)−YGPS *(n-1))
により与えられる。(n)は、座標点を表す符号である。一方、曲率1/ρは、
1/ρ=cosΨ・dΨ/dXGPS …(2)
ここで、cosΨ=(1+(dYGPS /dXGPS))-1/2
/dXGPS=(d2YGPS /dXGPS 2)・(1+(dYGPS /dXGPS)2
により与えられる(dYGPS /dXGPSは、最近理想点(後述)の近傍の軌跡点YGPS のXGPS方向の変化率であり、d2YGPS /dXGPS 2は、更にdYGPS /dXGPSのXGPS方向の変化率である。)。
かくして、上記の如く設定された理想軌跡の各値は、自律走行制御が実行される際には、現在の車両の位置を理想軌跡に一致させるように作動される車両のアクチュエータ、即ち、操舵装置、駆動装置、制動装置のための制御量(自律走行制御量)の決定に用いられる。なお、現在の車両の位置を理想軌跡に一致させる際の目標となる具体的な値は、GPS装置から取得された車両の現在の位置[XaGPS,YaGPS]に最も近い理想軌跡点(最近理想点)であってよい。車両の現在の位置に最も近い理想軌跡点は、任意のアルゴリズムで決定されてよい。例えば、車速ベクトルVsxと垂直方向の直線を決定し、その直線に最も近い理想軌跡上の点が最近理想点として選択されてよい(図5の右の四角枠内参照)。或いは、理想軌跡上の全点又は現在位置から所定の範囲の点のうち、車両の現在位置との間で最短距離を与える点が最近理想点として選択されてよい。更に、現在の車両の位置を理想軌跡に一致させる際の目標となる具体的な値は、自律走行開始時からの車両の走行距離sを変数パラメータとして、現在の車両の走行距離sに一致する距離sを有する理想軌跡上の点の値であってもよい。
更に、上記の自律走行制御量の決定に於いては、既に触れた通り、運転者の操作と自律走行制御との調停が、車両の左右方向の位置を調整するアクチュエータへの制御量(第一の制御量)と車両の前後方向の位置を調整するアクチュエータへの制御量(第二の制御量)とで別々に行われることとなる。そのために、自律走行制御量は、車両の左右方向の位置を調整するアクチュエータへの制御量と車両の前後方向の位置を調整するアクチュエータへの制御量とが別々に調製される。具体的には、図2に例示されている如く、車両の左右方向については、アクチュエータとして、例えば、操舵装置が選択され、自律制御(左右方向)目標舵角算出部60iに於いて第一の制御量として目標舵角δwtが決定され、車両の前後方向については、アクチュエータとして、例えば、駆動装置及び/又は制動装置が選択され、自律制御(前後方向)目標加減速度算出部60jに於いて目標加減速度αtが決定される。
図3(A)及び(B)は、それぞれ、上記の自律走行制御のための目標舵角δwt及び目標加減速度αtを決定する自律制御のための目標値の算出部60i、60jの内部の制御構成をブロック図の形式で示したものである。
まず、図3(A)を参照して、自律制御(左右方向)目標舵角算出部60iに於いては、自律目標舵角算出部80aにて、現在の実車速Vsx、実加減速度Gsx及び理想軌跡の座標値から得られる理想軌跡に於ける走行経路の曲率1/ρを用いて、目標舵角δwtが、例えば、下記の式により、算出される。
δwt=1/ρ・l・{1+Vsx2(Ao+A1Gsx+A2Gsx2)} …(3)
ここで、lは、ホイールベース長であり、Ao、A1、A2は、車両の諸元により与えられる定数である(非特許文献1参照)。実車速Vsxは、典型的には、車輪速センサからの車輪速値を用いて任意の形式で与えられたものでよい。また、実加減速度Gsxは、車両に備えられた前後加速度センサ64からの値が用いられてよい。曲率1/ρは、前記の最近理想点での値である。そして、自律目標舵角算出部80aにて理想軌跡を達成する基本的な目標舵角が算出されると、次いで、センサにより検知された現在の実ヨーレートγと最近理想点に於いて設定されたヨーレート目標値γとの偏差Δγ(=γ−γ)、任意の形式にて与えられる現在の実スリップ角(車体)βと最近理想点に於いて設定されたスリップ角目標値βとの偏差Δβ(=β−β)とが算出され、これらの偏差が小さくなる方向に(適当に設定されるゲインKγ、Kβを乗じて)基本的な目標舵角δwtが、下記の如く、修正されるようになっていてよい(フィードバック制御)。即ち、
δwt←δwt+KγΔγ+KβΔβ …(4)
更に、車両の現在位置の左右方向の位置を理想軌跡へ一致させるために、左右方向変位算出部80bにて与えられる現在位置と最近理想点との距離ΔYsに基づいて、その距離ΔYsが小さくなる方向に(適当に設定されるゲインKYsを乗じて)基本的な目標舵角δwtが下記の如く、修正される。
δwt←δwt+KYsΔYs …(5)
ΔYsの大きさは、前記の如く決定された最近理想点と現在位置との距離
|ΔYs|={(XGPS −XaGPS)+(YGPS −YaGPS)1/2 …(6)
により与えられる。ΔYsの符号(向き)は、車両が現在位置から最近理想点へ向かう方向へ舵角が増大する方向に設定される。
一方、自律制御(前後方向)目標加減速度算出部60jに於いては、図3(B)を参照して、最近理想点での加減速度Gsxが、基本的な目標加減速度αtとして設定される。そして、前後方向センサにより検知された実加減速度Gsxと最近理想点での加減速度Gsxとの偏差ΔGsx(=Gsx−Gsx)と、実車速Vsxと最近理想点での車速Vsxとの偏差ΔVsx(=Vsx−Vsx)とが小さくなる方向に(適当に設定されるゲインK、Kを乗じて)目標加減速度αtが修正される(フィードバック制御)。なお、車速は、加減速度の一次であるので、車速偏差の微分項を適当に設定されるゲインKV’を乗じて目標加減速度αtにフィードバックし、偏差ΔVsxが小さくなる方向に目標加減速度αtを修正してもよい。かくして、αtは、
αt←Gsx+K・ΔGsx+K・ΔVsx+KV’・dΔVsx/dt
により与えられる。
[自律運転とヒトとの協調制御のための構成]
以上の如く算出された目標舵角δwtと目標加減速度αtとがそのまま操舵制御装置60f、制駆動力制御指令部60cへ送られると、車両は、自律的に理想軌跡に沿って予定された走行状態にて走行することが期待される。しかしながら、かかる自律走行中に運転者がハンドル操作やペダル操作を行ったときには、その操作を車両に或る程度反映させるために、運転者の操作に基づく目標舵角δwt及び目標加減速度αtと、自律走行制御による目標舵角δwt及び目標加減速度αtとを調停する「自律運転とヒトとの協調制御」のための構成が設けられる。この点に関し、既に述べた如く、本実施形態の電子制御装置60に於いては、運転者の操作に基づく制御目標値と自律走行制御による制御目標値との調停が、車両の左右方向と前後方向とで別々に行われる。
再び、図2を参照して、電子制御装置60に於いて、車両の左右方向の位置を調節する制御量である目標舵角についての調停は、左右方向制御調停部60kにて行われ、車両の前後方向の位置を調節する制御量である目標加減速度についての調停は、前後方向制御調停部60lにて行われる。左右方向制御調停部60kは、車輪舵角制御指令決定部60bからの目標舵角δwtと自律制御目標舵角算出部からの目標舵角δwtを受容し、調停後の目標舵角δwcは、
δwc=k1・δwt+(1−k1)・δwt …(7)
により与えられる。ここで、k1は、1以下の正の係数(0≦k1≦1)であり、δwtとδwtとの寄与の割合を決定する。同様に、前後方向制御調停部60lは、加減速度制御指令決定部60aからの目標加減速度αtと自律制御目標加減速度算出部αtを受容し、調停後の目標加減速度αcは、
αc=k2・αt+(1−k2)・αt …(8)
により与えられる。ここで、k2は、1以下の正の係数(0≦k2≦1)であり、αtとαtとの寄与の割合を決定する。上記の調停に於いて、重要なことは、左右方向に於けるδwtとδwtとの寄与の割合を決定する係数k1と、前後方向に於けるαtとαtとの寄与の割合を決定する係数k2とは、別々に決定される値であるという点である。係数k1、k2は、それぞれ、値が大きくなると、上記式(7)、(8)から理解される如く、それぞれ自律走行制御による制御の寄与が大きくなり、従って、車両の走行軌跡・状態は、理想軌跡に近づくこととなるところ、その程度は、車両の左右方向と前後方向とで独立して調節できることとなる。
上記の係数k1、k2の具体的な値は、運転者の選択によって可変であってよく、走行モード決定部60hからのモード情報に基づいて適宜設定されてよい。例えば、自律走行モードの選択中に、燃費を重視する走行モードが選択されたときには、k2の値を大きくし(前後方向状態が理想軌跡に近いほど、エネルギー効率良く車両が走行するため)、或いは、車両の挙動が穏やかにするモードが選択されたときには、k1の値を小さくする(k1を小さくすると、自律走行制御の寄与が下がり、車両は、より運転者の操舵通りに走行することとなり、運転者の違和感が低減される。)、といった設定が為されてよい(なお、かかる係数k1、k2の設定は、例示であって、これに限定されない。自律走行制御を実行しないときには、k1=k2=0としてよい。)。
上記の構成に於いて理解されるべきことは、運転者の操作と自律走行制御の寄与の割合を車両の前後方向と左右方向とで別々に決定することにより、自律走行制御による運転者の操作への介入に対する運転者の違和感が車両の前後方向と左右方向とで差異があるということに対処することが可能であるという点である。既に述べた如く、一般に、運転者は、車両操縦中、車両の前後方向について制御介入については違和感を感じにくいが、車両の左右方向について制御介入については違和感を感じやすい。上記の本発明の構成によれば、運転者の違和感の感じ方の差異に応じて、運転者の操作と自律走行制御の寄与の割合を決定できることとなるので、前後方向では、車両の状態をできるだけ理想軌跡に近づける一方で、左右方向では、運転者の操作の寄与を大きくして、運転者が違和感を感じないようにする、といった制御態様が可能となる。
[調停後の処理]
ところで、上記の式(7)及び(8)の如く決定された各アクチュエータの目標値をそのまま各アクチュエータへ与えるときには、各輪のタイヤ力がそれぞれの最大摩擦円に収まっているという保証はないこととなり、車両の走行状態が安定であるという条件が達成されないことが有り得る。そこで、そのような状況を回避するために、本実施形態の制御装置に於いては、調停後の目標舵角δwcと目標加減速度αcから、車両の運動モデル又はタイヤモデルを用いて、各輪にてタイヤ力の大きさと向きを推定し、各輪の摩擦円の使用率が過剰にならないように上記の運転者の操作と自律走行制御の寄与の割合を決定する係数k1、k2をそれぞれ増大する調停割合修正部60mが設けられる(完全に自律走行制御が達成されるとき(k1=k2=1)には、各輪の摩擦円の使用率が過剰にならないという条件が満たされている。)。
図4(A)は、調停割合修正部60mの制御処理をフローチャートの形式にて表したものである。同図を参照して、調停割合修正部60mに於いては、左右方向及び前後方向の各制御調停部でそれぞれの目標値が算出されると、まず、それらの値に基づいて、公知の任意のモデルを用いて、各輪の前後力Ti、横力Fi、荷重Wi(i=FL,FR,RL,RR)とが推定され、各輪のタイヤ利用率λiが
λi=(Ti+Fi1/2/μWi …(9)
[ここで、μは、路面の最大摩擦係数である。]
により推定される(ステップ10)。次いで、各輪のタイヤ利用率λiに於いて、所定値λoに対して
λi>λo …(10)
が成立しないときには(ステップ20)、各調停部に対して目標値の出力を許可する(ステップ30)。他方、式(10)が成立したときには、上記の係数k1とk2がそれぞれ、
k1←k1+Δk1 …(11a)
k2←k2+Δk2 …(11b)
により修正される(ステップ40)。ここで、Δk1、Δk2は、任意に設定されてよい1未満の正の数であり、Δk1とΔk2とは、別々の値であってよい。そして、各調停部に於いて、式(7)、(8)により、目標値を再計算させ(ステップ50)、式(10)が成立しなくなるまで、ステップ10、20、40、50が繰り返される。
図4(B)は、かかる図4(A)の処理に於いて意図されるタイヤ力の大きさの変化を説明する図である。同図に於いて示されている如く、自律走行制御のみを実行した場合には、全輪に於いてタイヤ力は、最大摩擦円の内側に収容された状態となっている。しかしながら、運転者の操作の寄与を含めた調停を行うと、調停後と付された矢印の如く、タイヤ力が摩擦円をはみ出ることが起き得る。そこで、図4(A)の処理により、目標値に於いて、自律制御の寄与の割合を増大し、タイヤ力が摩擦円内に収容されるよう係数k1、k2が大きくして、状態を自律制御のみの場合に近づけ、車両の走行状態の安定性の維持が図られる。
総じて、上記の本発明の装置によれば、理想軌跡に沿った自律走行制御と運転者の操作との協調制御に於いて、車両の左右方向と前後方向との制御を切り離して、独立に制御されるようにすることにより、制御介入に対する運転者の違和感の低減と車両の走行軌跡を理想軌跡に一致させるという二つの相反する要求を、それぞれ、できるだけ高い程度に達成することが図られることとなる。
以上に於いては本発明を特定の実施例について詳細に説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施例が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
例えば、車両の左右方向の制御調停部に於いて、更に、加減速度制御指令決定部からの目標加減速度を考慮して、制御の調停が為されるようになっていてもよい。また、車両の左右方向の制御調停部からの制御量の一部が制動装置の制動力の左右差を与える成分を含み、調停後の制御量の一部が制動制御装置へ与えられるようになっていてもよい。更に、車両の左右方向の自律制御のための制御量として、ヨーモーメントが与えられてから、目標舵角、各輪制動力配分(ΔFbti)が決定されるようになっていてもよい。また更に、車両の前後方向の自律制御のための制御量として、加減速度に代えて、又は、これと共に、車速又は制駆動力若しくは制駆動トルクが用いられてもよい。本発明に於いて、重要なことは、理想軌跡の成分を車両の前後方向と左右方向と分割し、運転者の操作量に対する自律制御の割合を車両の前後方向と左右方向とで独立に調整できるようにすることである。
図1は、本発明の好ましい実施形態である走行制御装置が搭載される車両の模式図である。 図2は、本発明の好ましい実施形態に於ける自律運転とヒトとの協調制御のため走行制御装置が組み込まれた電子制御装置の内部構成を制御ブロックの形式で表したものである。 図3(A)は、自律制御の左右方向の制御量である目標舵角を決定する目標舵角算出部50iの内部構成を制御ブロックの形式で表したものであり、図3(B)は、自律制御の前後方向の制御量である目標加減速度を決定する目標加減速度算出部50jの内部構成を制御ブロックの形式で表したものである。 図4(A)は、目標舵角算出部50iと目標加減速度算出部50jに於ける調停割合を修正する調停割合修正部60mの制御処理をフローチャートの形式で表したものである。図4(B)は、調停割合修正部60mの制御処理による各輪タイヤ力の変化を模式的に表したものである。 図5は、理想軌跡生成部で生成される理想軌跡に於いて設定される座標値、各種状態量をGPS座標系と共に模式的に示したものである。理想軌跡の座標値は、図中の丸点列の座標値(XGPS 、YGPS )にて与えられ、更に、各丸点に於いて、車速Vsx、ヨーレートγ、車体スリップ角βが設定される。なお、更に、車両の横速度が設定されてもよい。座標値は、GPS座標系であってもよいが、これに限定されない。図中、Xs、Ysは、車両に固定された座標系を示している。XaGPS、YaGPSは、車両の現在位置の座標値である。図中、右下の四角枠内は、車両の現在位置に最も近い理想軌跡上の点を決定する処理の概念を説明する図である。
符号の説明
10…車両
12FL〜12RR…車輪
14…アクセルペダル
20…動力装置
30…操舵装置
32…ステアリングホイール
36…転舵角可変装置
40…制動装置
42FL〜42RR…ホイールシリンダ
44…ブレーキペダル
48…油圧回路
60…電子制御装置
64…前後加速度センサ
66…横方向加速度センサ
68…ヨーレートセンサ
70…ビデオカメラ又はレーダー装置
72…カーナビゲーションシステム

Claims (7)

  1. 車両の走行制御装置であって、前記車両の周囲環境情報に基づいて前記車両の各輪のタイヤ力の大きさが対応する車輪の摩擦円内に収まるよう設定される理想軌跡を生成する理想軌跡生成手段と、前記理想軌跡と前記車両の運転者の操作に基づいて前記車両の走行軌跡を制御する走行軌跡制御手段とを含み、前記走行軌跡制御手段が前記理想軌跡に対する前記車両の左右方向の位置を調節する第一のアクチュエータを制御する左右方向制御手段と前記理想軌跡に対する前記車両の前後方向の位置を調節する第二のアクチュエータを制御する前後方向制御手段とを含み、
    前記左右方向制御手段が前記第一のアクチュエータに与える第一の制御量が、前記車両の左右方向に於いて前記車両の走行軌跡を前記理想軌跡に一致させるように前記理想軌跡に基づいて決定される前記第一のアクチュエータの自律走行制御量と前記運転者の前記第一のアクチュエータに対する操作量とに基づいて決定され、前記前後方向制御手段が前記第二のアクチュエータに与える第二の制御量が、前記車両の前後方向に於いて前記車両の走行軌跡を前記理想軌跡に一致させるよう前記理想軌跡に基づいて決定される前記第二のアクチュエータの自律走行制御量と前記運転者の前記第二のアクチュエータに対する操作量とに基づいて決定され、前記第一の制御量に於ける自律走行制御量と操作量とのそれぞれの寄与の割合と前記第二の制御量に於ける自律走行制御量と操作量とのそれぞれの寄与の割合とが独立して決定されることを特徴とする装置。
  2. 請求項1の装置であって、前記第一のアクチュエータの自律走行制御量が前記理想軌跡より与えられる旋回曲率に基づいて決定され、前記第二のアクチュエータの自律走行制御量が前記理想軌跡より与えられる加減速度に基づいて決定されることを特徴とする装置。
  3. 請求項1又は2の装置であって、前記運転者の希望する走行モードを受容する手段を含み、前記理想軌跡に対する前記車両の左右方向の位置に基づいて決定される前記第一のアクチュエータの制御量と前記運転者の前記第一のアクチュエータに対する操作量とを前記走行モードに応じて決定される第一の割合にて足し合わせることにより前記第一の制御量が決定され、前記理想軌跡に対する前記車両の前後方向の走行状態に基づいて決定される前記第二のアクチュエータの制御量と前記運転者の前記第二のアクチュエータに対する操作量とを前記走行モードに応じて決定される第二の割合にて足し合わせることにより前記第二の制御量が決定されることを特徴とする装置。
  4. 請求項1乃至3のいずれかの装置であって、前記運転者の前記第一のアクチュエータに対する操作が前記車両の舵角の操作を含み、前記運転者の前記第二のアクチュエータに対する操作が前記車両の制駆動の操作を含むことを特徴とする装置。
  5. 請求項1乃至4の装置であって、前記第一及び第二の制御量が、前記車両の各輪のタイヤ力の大きさが対応する車輪の摩擦円内に収まるよう修正されることを特徴とする装置。
  6. 請求項1の装置であって、前記車両の周囲環境情報が道路線形、路面の摩擦係数又は障害物の位置を含むことを特徴とする装置。
  7. 請求項1の装置であって、前記理想軌跡が前記車両の各輪のタイヤ力の摩擦円の使用率に基づいて決定されることを特徴とする装置。
JP2008116457A 2008-04-25 2008-04-25 車両の走行制御装置 Active JP5120049B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008116457A JP5120049B2 (ja) 2008-04-25 2008-04-25 車両の走行制御装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008116457A JP5120049B2 (ja) 2008-04-25 2008-04-25 車両の走行制御装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2009262837A JP2009262837A (ja) 2009-11-12
JP5120049B2 true JP5120049B2 (ja) 2013-01-16

Family

ID=41389244

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008116457A Active JP5120049B2 (ja) 2008-04-25 2008-04-25 車両の走行制御装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5120049B2 (ja)

Families Citing this family (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE102009047333A1 (de) * 2009-12-01 2011-06-09 Robert Bosch Gmbh Verfahren zur Bestimmung einer Trajektorie eines Fahrzeugs
JP2011201366A (ja) * 2010-03-24 2011-10-13 Toyota Motor Corp 車両の制御装置
US9079607B2 (en) 2010-12-01 2015-07-14 Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha Vehicle steering control apparatus
JP6205947B2 (ja) * 2013-07-26 2017-10-04 日産自動車株式会社 自動運転制御装置
US10101742B2 (en) * 2014-12-07 2018-10-16 Toyota Motor Engineering & Manufacturing North America, Inc. Mixed autonomous and manual control of autonomous vehicles
US10571911B2 (en) 2014-12-07 2020-02-25 Toyota Motor Engineering & Manufacturing North America, Inc. Mixed autonomous and manual control of a vehicle
JP6607826B2 (ja) * 2016-06-07 2019-11-20 本田技研工業株式会社 走行制御装置
DE102016011282A1 (de) 2016-09-20 2018-03-22 Wabco Gmbh Verfahren zum Durchführen eines Ausweichmanövers mit einem Nutzfahrzeug-Gespann, sowie Notausweichsystem
JP6928512B2 (ja) * 2017-08-30 2021-09-01 日立Astemo株式会社 運転支援装置、運転支援方法および運転支援システム
JP7206970B2 (ja) * 2019-02-04 2023-01-18 日産自動車株式会社 車両運動制御方法及び車両運動制御装置

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3917241B2 (ja) * 1997-06-25 2007-05-23 富士重工業株式会社 車両用運転支援装置
JP4341534B2 (ja) * 2003-11-26 2009-10-07 日産自動車株式会社 車線逸脱防止装置
JP2005178628A (ja) * 2003-12-19 2005-07-07 Toyota Motor Corp 車両の統合制御システム
JP4445889B2 (ja) * 2005-03-24 2010-04-07 株式会社豊田中央研究所 車両制御装置
WO2007102405A1 (ja) * 2006-03-01 2007-09-13 Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha 自車進路決定方法および自車進路決定装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2009262837A (ja) 2009-11-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5120049B2 (ja) 車両の走行制御装置
US11780502B2 (en) Lane change assist apparatus for vehicle
JP6355167B2 (ja) 車両の運転支援制御装置
JP6179820B2 (ja) 車両の運転支援制御装置
JP6269557B2 (ja) 車両の運転支援制御装置
JP4752819B2 (ja) 車両の走行制御装置
JP6341137B2 (ja) 車両の運転支援制御装置
JP5012925B2 (ja) 車両用運動制御装置
JP5417386B2 (ja) 車両運動制御装置
EP2599676B1 (en) Vehicle motion control device
JP6814710B2 (ja) 車両運動制御装置及びその方法、並びに、目標軌道生成装置及びその方法
US20150336587A1 (en) Driving assist device
JP5168421B2 (ja) 運転支援装置
US11628840B2 (en) Vehicle control apparatus, vehicle control method, and vehicle control system
JP6928512B2 (ja) 運転支援装置、運転支援方法および運転支援システム
JP6947130B2 (ja) 車両走行支援装置
JP2005178628A (ja) 車両の統合制御システム
JP6986463B2 (ja) 運転支援装置、運転支援方法及び運転支援システム
JP7351797B2 (ja) 車両制御装置及び車両制御方法
JP2020075665A (ja) 車両走行制御装置
JP2011088574A (ja) 車両制御装置
WO2010016108A1 (ja) 車両の走行制御装置
JP2020032893A (ja) 車両運動制御装置
JP6591273B2 (ja) 車両操舵支援装置
JP7480856B2 (ja) 車両運動制御方法及び車両運動制御装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100816

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20120517

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120529

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120724

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120925

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20121008

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20151102

Year of fee payment: 3

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5120049

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20151102

Year of fee payment: 3