以下、本発明に係る内燃機関の可変動弁装置の各実施例を図面に基づいて詳述する。この実施例では、可変動弁装置を内燃機関の吸気側に適用したものを示している。
〔第1実施例〕
この実施例における可変動弁装置は、図1及び図2に示すように、シリンダヘッド1にバルブガイドを介して摺動自在に設けられて、吸気ポートを開閉する一気筒当たり2つの吸気弁3,3と、機関前後方向に配置された内部中空状の駆動軸4と、各吸気弁3,3の上端部に配設されたフォロアである各スイングアーム6、6を介して各吸気弁3,3を開閉作動させる一対の揺動カム7,7と、駆動軸4の後述する駆動偏心カム5と揺動カム7,7との間を連係し、前記駆動偏心カム5の回転力を揺動運動に変換して揺動カム7,7に揺動力として伝達する伝達機構8と、該伝達機構8の姿勢を可変にして各吸気弁3,3のバルブリフト量及び作動角を機関運転状態に応じて可変制御する制御機構9とを備えている。なお、前記作動角とは、吸気弁3,3が開弁している期間をいう。この作動角は、吸気弁3,3の開弁時のリフト開始直後及びリフト終了直前の傾斜の緩やかなランプ部を除いた有効リフト区間をいう。
前記吸気弁3,3は、シリンダヘッド1の上端部内に収容されたほぼ円筒状のボアの底部とバルブステム上端部のスプリングリテーナ10との間に弾装された図外のバルブスプリングによって吸気ポートの各開口端を閉塞する方向に付勢されている。
前記駆動軸4は、駆動支軸4aと該駆動支軸4aの外周に固定された前記駆動偏心カム5とを備えていると共に、両端部がシリンダヘッド1の上部に設けられた軸受部11によって回転自在に軸支されている。また、この駆動軸4は、一端部に設けられた図外のバルブタイミング制御装置(カムフェーザー)を介して機関のクランクシャフトから回転力が伝達されて、図1の時計方向(矢印方向)に回転するようになっている。
前記駆動偏心カム5は、ほぼ円盤状に形成されたカム本体5aと、該カム本体5aの外側部に一体に設けられた筒状のボス部5bと、からなり、このボス部5bに径方向に穿設されたピン孔に挿通する固定用ピン12を介して前記駆動支軸4aに固定されている。また、この駆動偏心カム5は、前記揺動カム7,7の一端側に配置されていると共に、前記ボス部5bがカム本体5aを挟んで揺動カム7,7と反対側の位置に配置されている。したがって、カム本体5a側がスペーサ2を介して揺動カム7,7側に位置している。前記カム本体5aは、外周面が偏心円のカムプロフィールに形成されて、軸心Xが駆動支軸4aの軸心Yから径方向へ所定量だけオフセットしており、前記軸心Xが第1支点Xとして構成されている。
前記各スイングアーム6は、図1に示すように、凹状一端部6aの下面が前記各吸気弁3のステムエンドに当接していると共に、他端部6bの球面状下面がシリンダヘッド1に形成された保持穴1c内に保持された油圧ラッシアジャスタ13の球面状の頭部に当接支持されて、この油圧ラッシアジャスタ13の頭部を枢支点として揺動するようになっている。また、スイングアーム6は、中空状のほぼ中央位置に各揺動カム7が当接するローラ14が回転自在に支持されている。
前記各揺動カム7は、図1及び図4に示すように、同一形状のほぼ雨滴状を呈し、基端部側に前記駆動軸4の外周面に嵌挿される円筒状のカムシャフト7aが一体に形成されて、該カムシャフト7aを介して揺動支軸としての前記駆動支軸4aの軸心Yを中心として揺動自在に支持されている。
また、各揺動カム7は、基端部と先端側のカムノーズ部7bとの間の下面にはカム面7dがそれぞれ形成されている。このカム面7dは、基端部側の基円面と、該基円面からカムノーズ部7b側に円弧状に延びるランプ面と、該ランプ面からカムノーズ部7bの先端側に有する最大リフトの頂面に連なるリフト面とが形成されており、該基円面とランプ面、リフト面及び頂面とが、揺動カム7の揺動位置に応じて各スイングアーム6のローラ14の外周面の変位した位置に当接するようになっている。
さらに、各揺動カム7は、前記カム面7dがリフト面側に移動して吸気弁3,3を開作動させる揺動方向が前記駆動軸4の回転方向(矢印方向)と同一に設定されている。したがって、前記駆動軸4と各揺動カム7との間の摩擦係数によって、各揺動カム7がリフトする方向に連れ回りトルクが発生する。このため、各揺動カム7の駆動効率が向上する。
さらに、前記駆動偏心カム5側の揺動カム7は、前記カムシャフト7aを挟んだカムノーズ部7bと反対側の位置に連結部7cが一体に突設されており、この連結部7cには、後述するリンクロッド17の他端部と連結する連結ピン20が挿通されるピン孔が両側面方向へ貫通形成されている。
なお、前記各ローラ14が、各スイングアーム6の上面から突出した状態に配置されて、スイングアーム6,6の上面との間に比較的大きな隙間が形成されていることから、作動中において前記スイングアーム6,6と各揺動カム7,7の連結部7cやリンクロッド17の他端部17bとの干渉が防止される。したがって、図4Aに示すように、各揺動カム7が最も跳ね上がった位置でも、該干渉が防止されるのである。また、ローラ14と揺動カム7の連結部7cとの干渉も図4Aに示すように左右のクリアランスで回避することができる。よって、平面フォロアのバケットリフターに適用した場合などに較べて連結部7cの干渉が発生しにくくなる。
前記伝達機構8は、図1〜図4に示すように、駆動軸4の上方に機関巾方向に沿って配置されたロッカアーム15と、該ロッカアーム15と駆動偏心カム5とを連係するリンクアーム16と、ロッカアーム15と前記一方の揺動カム7の連結部7cとを連係するリンクロッド17とによって多節リンク機構に形成されている。
前記ロッカアーム15は、図3A、Bに示すように、後述する制御偏心軸29に揺動自在に支持された一端側の筒状基部15aと、該筒状基部15aの外面から機関の内側へ二股状にほぼ並行に突設された第1、第2アーム部15b、15cとから構成されている。
前記筒状基部15aは、ほぼ内部に後述する制御偏心軸29の外周に微小隙間をもって嵌合支持される支持孔15dが貫通形成されている。
前記第1アーム部15bは、先端部の外側面に前記リンクアーム16の後述する突出端16bが回転自在に連係される軸部15eが一体に突設されており、この軸部15eの軸心が第2支点Rとして構成されている。
一方、前記第2アーム部15cは、先端部のブロック部15fにリフト調整機構21が設けられていると共に、該リフト調整機構21の後述する枢支ピン19に前記リンクロッド17の後述する一端部17aが回転自在に連係しており、前記枢支ピン19の軸心が第3支点Sとして構成されている。また、前記ブロック部15fの両側部には、前記枢支ピン19が上下方向移動可能な長孔15hが横方向から貫通形成されている。
前記第1アーム部15bと第2アーム部15cは、互いに揺動方向へ異なった角度で設けられて上下に位置ずれ状態に配置され、第1アーム部15bの先端部が第2アーム部15cの先端部よりも僅かな傾斜角度をもって下方に傾斜している。
前記リンクアーム16は、比較的大径な円環部16aと、該円環部16aの外周面所定位置に突設された前記突出端16bとを備え、円環部16aの中央位置には、前記駆動偏心カム5の外周面を回転自在に嵌合支持する嵌合孔16cが形成されている。
前記各リンクロッド17は、プレス成形によって一体に形成され、横断面ほぼコ字形状に形成され、内側がコンパクト化を図るために、ほぼ円弧状に折曲形成されている。この各リンクロッド17は、一端部17aがピン孔に挿通された前記枢支ピン19を介して第2アーム部15cに連結され、他端部17bがピン孔に挿通した連結ピン20を介して前記一方の揺動カム7の連結部7cに回転自在に連結されている。前記連結ピン20の軸心が第4支点Tとして構成されている(図4A参照)。また、このリンクロッド17は、一気筒当たり一つだけ設けられていることから、構造が簡素化されると共に軽減化が図れる。
このリンクロッド17によって、揺動カム7が連結部7cが引き上げられることでリフトするが、ローラ14からの入力を受けるカムノーズ部7bは揺動中心に対して連結部7cの逆側に配置されていることから、各揺動カム7の倒れの発生が抑制できる。
前記リフト調整機構21は、図1及び図2に示すように、ロッカアーム15の第2アーム部15cのブロック部15fの前記長孔15hに配置された前記枢支ピン19と、前記ブロック部15fの下部内に前記長孔に向かって穿設された調整用雌ねじ孔に下方から螺着した調整ボルト22と、ブロック部15fの上部内に前記長孔に向かって穿設された固定用雌ねじ孔に上方から螺着したロック用ボルト23とを備えている。
そして、各構成部品の組み付け後に、前記調整ボルト22によって前記枢支ピン19の長孔15h内での上下位置を調整することによって各吸気弁3,3のリフト量を微調整し、該調整作業が終了した時点で前記ロック用ボルト23を締め付けることによって枢支ピン19の位置を固定するようになっている。
前記制御機構9は、駆動軸4の上方位置に駆動支軸4aと平行に配置された制御軸24と、該制御軸24を回転駆動する図外のアクチュエータである電動アクチュエータとを備えている。
前記制御軸24は、図1、図2、図4に示すように、制御支軸24aと該制御支軸24aの外周に一気筒毎に設けられて前記ロッカアーム15の揺動支点となる複数の制御偏心カム25とから構成されている。
前記制御支軸24aは、前記各ロッカアーム15に対応する位置に二面幅状の凹部24b、24cが形成されていると共に、該両凹部24b、24cの間には軸方向へ所定間隔をもって2つのボルト挿通孔26a、26bが径方向に沿って貫通形成されている。前記各凹部24b、24cは、制御支軸24aの軸方向に沿って延設されて、それぞれの底面が平坦面に形成されている。
前記制御偏心カム25は、前記一方の凹部24bに、他方の凹部24c側から前記ボルト挿通孔26a、26aに挿通した2本のボルト27,27を介して固定されるブラケット28と、該ブラケット28の先端側に固定された制御偏心軸29とから構成されている。
前記ブラケット28は、側面ほぼコ字形状に折曲形成されて前記一方の凹部24bの長手方向に沿って延設され、前記一方の凹部24bに嵌合保持される長方形状の基部28aと、該基部28aの長手方向の両端部に図2中、下方へ突設されたアーム状の固定片28b、28bと、から構成されている。
前記基部28aは、長手方向の両端部側に前記ボルト27,27の先端部が螺着する雌ねじ孔が形成されている一方、前記両固定片28b、28bは、各先端部側に前記制御偏心軸29を固定する固定用孔28c、28cが貫通形成されている。また、このブラケット28は、基部28aの外面が一方の凹部24bの底面に当接配置されていると共に、両固定片28b、28bの各外端縁が前記一方の凹部24bの対向内面に密接状態に当接しつつ嵌合保持されていることから、長手方向の位置決め精度が高くなる。
前記制御偏心軸29は、その外周面に前記ロッカアーム15の筒状基部15aの支持孔15dを介してロッカアーム15を揺動自在に支持していると共に、その軸方向の長さLが前記ブラケット28の両支持片28b、28bの各外面とほぼ同一に設定されて、両端部が前記各固定用孔28c、28c内に圧入などによって固定されている。前記ロッカアーム15の揺動支点となる軸心が第5支点Qとして構成されている。
そして、前記制御偏心軸29の長さL内に、前記駆動偏心カム5のカム本体5aの外面から前記一方の揺動カム7を含むリンクロッド17の外面までが配置された状態になっている。
また、制御偏心軸29の第5支点Qは、図4A、Bに示すように、ブラケット28の両支持片28b、28bの腕に長さによって前記制御支軸24aの軸心Pから比較的大きな偏心量αで偏心している。換言すれば、前記制御偏心軸29は、前記ブラケット28を介して前記制御支軸24aの軸心Pに対してクランク状に形成されていることから、その偏心量αを十分に大きく取ることができるのである。
なお、前記制御偏心カム25としては、前記ブラケット28や制御偏心軸29によって構成されるばかりではなく、前記制御支軸24aの外周に一体的に固定された単に円柱状の構造することも可能である。これによって、剛性を向上させることも可能になる。
前記電動アクチュエータは、シリンダヘッド1の後端部に固定された図外の電動モータと、該電動モータの回転駆動力を前記制御支軸24aに伝達する例えばボール螺子機構などの減速機とから構成されている。
前記電動モ−タは、比例型のDCモータによって構成され、機関の運転状態を検出する図外の電子コントローラからの制御信号によって駆動するようになっている。
この電子コントローラは、機関回転数を検出するクランク角センサや、吸入空気量を検出するエアーフローメータ、機関の水温を検出する水温センサ及び制御軸24の回転位置を検出するポテンショメータ等の各種のセンサからの検出信号をフィードバックして現在の機関運転状態を演算などにより検出して、前記電動モータに制御信号を出力している。このような電動モータによって回転駆動するアクチュエータによれば、機関の油温などに拘わらず迅速な切り換え応答性を期待できる。
また、この実施例では、前記駆動支軸4aの前端部に、前記吸気弁3,3の開閉時期を機関運転状態に応じて可変できるバルブタイミング制御装置が設けられている。このバルブタイミング制御装置(カムフェーザー)は、周知のような、例えばベーンタイプ式のものであって、概略的には、前記駆動支軸5aの前端部に配置されて、前記クランクシャフトから回転力が伝達されるタイミングスプロケットと、該タイミングスプロケットの円筒状のハウジングの内部に回転自在に配置されて、前記駆動支軸4aの前端部に固定されたベーン部材と、前記ハウジングとベーン部材との間に隔成された進角油圧室と遅角油圧室とに油圧を選択的に給排する油圧回路と、を備えている。また、この油圧回路のオイルポンプから前記各油圧室への油圧を給排を切り換える電磁切換弁は、前記電子コントローラによって作動が制御されている。この種のバルブタイミング制御装置は、油圧を駆動源としていることから、一般的に作動応答性が遅く、油温の影響も受けやすい。
そして、この実施例では、機関運転状態に応じて前記電動アクチュエータにより前記制御支軸24aの回転位置を制御することによって、前記吸気弁3,3のバルブリフト量と作動角を最小作動角から最大作動角まで制御するようになっているが、前記制御支軸24aの回転位置に応じて前記第1支点X,第2支点R、第3支点Sなどの位置関係を特定することによって中間作動角制御時におけるバルブリフト特性の開時期を進角側に変化させるようになっている。
以下、前記本実施例の可変動弁装置の作動説明中において、前記特異なバルブリフト特性について詳述する。
すなわち、まず、駆動支軸4aがクランクシャフトによって図1の矢印方向へ回転すると、駆動偏心カム5も同方向へ回転してリンクアーム16を介してロッカアーム15が制御偏心軸29の第5支点Qを支点として揺動してリンクロッド17を引き上げあるいは引き下ろすことにより、各揺動カム7,7のカム面によりローラ14を介して各吸気弁3,3を開閉作動させる。
そして、例えば、機関のアイドリング運転時などの低回転域では、コントローラからの制御信号によって電動モータが回転駆動し、この回転トルクによって減速機を介して制御支軸24a反時計方向のθ1の位置に回転駆動される。したがって、制御偏心軸29は、図4及び図5に示すように同じくθ1の位置になり、第5支点Qが駆動軸4から左上方向に離間移動する。これにより、伝達機構8の全体が、駆動支軸4aを中心として反時計方向に傾動する。このため、各揺動カム7も反時計方向へ回動して、ローラ14の当接位置がカム面7dの基円部側寄りになる。
よって、駆動偏心カム5の回転に伴いリンクアーム16を介してロッカアーム15を押し上げると、図5Aに示すように、リンクロッド17を介して揺動カム7の連結部7cを持ち上げ揺動カム7を時計方向に回転させ、そのリフトがスイングアーム6のニードルローラ14に伝達されてバルブリフトするが、そのリフト量及び作動角が十分小さくなる。
したがって、かかる機関の低回転軽負荷領域では、各吸気弁3のバルブリフト量L1が図10に示すように十分に小さくなり、これによって、各吸気弁3の開時期が遅くなり、排気弁とのバルブオーバーラップがなくなる。このため、燃焼改善などによって、燃費の向上と機関の安定した回転が得られる。
前記各吸気弁3のピークリフト時は、図5A、Bに示すように、前記駆動偏心カム5の第1支点Xの駆動支軸4aの軸心Yに対する偏心方向X−Y線がリンクアーム16の第2支点Rとの2軸線X−Rと一致した瞬間である。
このとき、駆動偏心軸4aの偏心方向Y−Xは、同図に示すように駆動支軸4aの回転方向(時計方向)にα1だけ回転した位置にある。
ここで、リンクアーム16の2軸方向X−Rを結ぶ直線(延長線)とロッカアーム15の回動位置方向Q1−Rを結ぶ直線(線分)のなす角度∠X−R−Q1をβ1とおくと、このβ1は比較的大きな値になっている。
次に、ロッカアーム15上でのリンクロッド17の第3支点Sを結ぶ線R−Sについて考察すると、リンクアーム16の2軸方向のX−R直線と前記R−S直線とのなす角度γ1とすると、以下の式で表される。
γ1=∠Q1−R−S −(180°−β1)=β1−(180°−∠Q1−R−S)
ここで、丸括弧の中は固定値なので、γ1はβ1と直接的な相関関係にあることになる。
前述した最小作動角(最小リフト)制御時のピークリフトの瞬間においては、β1は比較的大きく、γ1も比較的大きくなっている。
次に、機関運転状態が低中回転部分負荷領域に移行すると、電子コントローラからの制御信号によって電動アクチュエータを介して制御軸24が、図6、図7に示すように、θ2の位置まで反時計方向へ回転して制御偏心軸29も同じくθ2の位置まで回動して、制御偏心カム25の中心である第5支点Q2は駆動支軸4aに最も接近する。
このため、ロッカアーム15とリンクアーム16などの伝達機構8全体が駆動支軸4aを中心に時計方向へ回動し、これによって、各揺動カム7,7も相対的に時計方向(リフト方向)へ回動する。
したがって、開弁時のピークリフトになると、図7A、Bに示すように、揺動カム7のリフトがスイングアーム6のニードルローラ14に伝達されてバルブリフトするが、そのリフト量及び作動角が増加して中間リフト、中間作動角になる。
よって、かかる機関の低中回転部分負荷の領域では、各吸気弁3のバルブリフト量L2および作動角が図10に示すように大きくなる。
そして、前記ピークリフト時の駆動支軸4aの軸心Yに対する駆動偏心カム5の第1支点Xの偏心方向Y−X(駆動軸角α2)は、前記最小作動角制御時に比較して時計方向(遅角側)へ移動する(α1<α2)。
したがって、かかる中間作動角時におけるバルブリフトのピークリフト位相は、図10に示すように、最小作動角時(L1)の場合に比較して遅角側に移行する。
ここで、制御偏心軸29は、駆動軸4側に指向していることから、ピークリフトの瞬間(図7A、B参照)においてX−Rの直線(Y−Rの直線と一致)と、R−Q2の直線のなす角度β2は最小になる。なぜならば、Y−R−Q2において形成される三角形のY−Q2の長さが最小になるためである(Q2−R、Y−Rは固定値)。
したがって、前記γ2も最小となり、このことが図10に記載されたバルブリフト軌跡のリフト開始時期(IVO)が進角側に膨らむ特性となる。この特性については後述する。
さらに、例えば、機関高回転領域に移行した場合は、電子コントローラからの制御信号によって電動モータが減速機を介して制御支軸24aをさらに反時計方向へ回転させると、図8及び図9に示すように、制御偏心軸29も同じ方向へ回動して、該制御偏心軸29の第5支点Q3が駆動軸4側から右方向は離れた位置に移動する(最小作動角制御時とほぼ対称位置)。
このため、伝達機構8全体が、図8、図9に示すように、さらに時計方向へ回動し、これによって、各揺動カム7,7も相対的にさらに時計方向(リフト方向)へ回動する。したがって、開弁時のピークリフトになると、図9A、Bに示すように、各揺動カム7のリフトがスイングアーム6のニードルローラ14に伝達されてバルブリフトするが、そのリフト量及び作動角がさらに増加して最大リフト、最大作動角になる。
よって、かかる高回転領域では、図10に示すように、バルブリフト量L3及び作動角が最大になり、各吸気弁3の開時期(IVO)がL1より早くなるものの、L2に対する進角が抑制され、排気弁とのバルブオーバーラップが適度に増加すると共に、閉時期が十分に遅くなる。この結果、吸気充填効率が向上して十分な出力が確保できる。
そして、前記ピークリフト時の駆動支軸4aの軸心Yに対する駆動偏心カム5の第1支点Xの偏心方向Y−X(駆動軸角α3)は、前記中間作動角制御時に比較してさらに時計方向(遅角側)へ移動する(α2<α3)。一方、角度β3は前記β2に対して再び大きくなり、したがって、角度γ3もγ2に対して再び大きくなる。
そして、前述したように、中間作動角時におけるバルブリフトのリフト開時期(IVO)は進角側へ膨らむ状態になるが、この理由は中間作動角時の前記角度γ2が、最小作動角制御時での角度γ1や最大作動角制御時での角度γ3よりも相対的に小さいことに起因する。
すなわち、中間作動角においては、図7Bに示すように、前記γの角度が相対的に小さいと、ロッカアーム15の第2アーム部15cとリンクロッド17の一端部17aとを連結する枢支ピン19の第3支点Sを相対的に引き上げるので、リンクロッド17の他端部17bの揺動カム7との連係位置の第4支点Tを持ち上げて、各揺動カム7,7をリフト方向へ移動(変位)させるため、リフト量及び作動角が増加する。このとき、ピークリフト位相α2は変化しない。
ここで、仮に前記γの角度変化の効果がない場合を想定してみると、図5Bは最小作動角制御時におけるピークリフトの瞬間を示しており、そのときの制御偏心カム25の中心である第5支点は点Q1である。
例えば、前述した特許文献1に記載した従来の可変動弁装置のように、駆動軸を中心に機構全体が回転する場合には、前記第5支点の軌跡は駆動軸を中心とした第2円弧線上を動くことになる。そして、この場合には、機構の全体回転であることからβはβ1のまま不変であり、またγもγ1のまま不変である。したがって、ピークリフト位相がα2になったときのリフトカーブは、図10の破線で示すようなリフトカーブ特性となり、かかるピークリフト軌跡(破線Z1)は、前記従来の可変動弁装置と同様なほぼ直線的な特性となる。
それに対して本実施例では、第5支点が図5Bに示す点Q2であり、第2円弧線に対して駆動軸4側(矢印方向)にある。すなわち、駆動軸4を中心として点Q2を通る第3円弧線は、前記第2円弧線に対して駆動軸4側にある。
したがって、前述のように、γの角度が変化して小さくなる(γ1→γ2)ため、揺動カム7,7のリフト変位(揺動)が増加してリフト量、作動角が増大する。このとき、ピークリフト位相は変わらないので(γとは無関係)、図10中、矢印で示すように、かかるピークリフト位相の不変によってリフト量と作動角が増大することから、実線L2に示すリフトカーブ特性となる。よって、同図に示すように、中間作動角域でピークリフト軌跡Z2が進角側へ湾曲状に膨らむのである。
また、前記点Q2は、図5Bの記載から明らかなように、点Rを中心として点Q1を通る第1円弧線aよりも時計方向側(矢印方向)、つまり駆動軸4の回転方向に対して進角側にある。
すなわち、第1円弧線aと第3円弧線cの交点をQ2'とすると、点Q1と点Q2'は両者ともに第1円弧線a上にあり、したがって、制御偏心カム25の中心が点Q1から点Q2'に移動してもリンクアーム16の角度は変わらないので、ピークリフトの駆動軸4の位相は変わらない。そこにもってきて、点Q2'から点Q2は第3円弧線c上を駆動軸4の回転方向で進角側にリンクアーム16とともに移動する。つまり、駆動偏心カム5は、中間作動角制御時にはさらに回転しないと、ピークリフトにならないことを意味している。したがって、ピークリフト位相がα1からα2に遅角し、前述のような吸気弁3の閉時期(IVC)を十分に遅らせ、開時期(IVO)は前述のように進角側に膨らみ、ピークリフト軌跡も湾曲状に膨らむのである。
さらに、最大作動角になると、制御偏心カム25の第5支点が図5Bの点Q3に移動する。この位置は、点Q2よりさらに第1円弧線aより時計方向側(矢印方向)に移動する。これは駆動軸4の回転方向に対して遅角側にある。したがって、ピークリフト位相がα2からα3へとさらに遅角する。
一方、第2円弧線bに対しては、点Q3は再び接近し、ほぼ第2円弧線b上に移動する。これによって、前述にように、γが再び増加(γ2→γ3)するので、同じα3に対して作動角が減少するためである。
このため、中間作動角(点Q2)において進角傾向にあった吸気弁3の開時期(IVO)やピークリフト位相は再び遅角方向へ移動する。そのため、図11におけるIVOやピークリフト位相は上凸傾向となり、また、図10におけるピークリフト位相も左上凸傾向になる。
このように、本実施例における吸気弁3のIVOやピークリフト位相の特異な変化は、制御偏心カム25の中心である第5支点Qの第1円弧線aと第2円弧線bに対する位置から説明することができる。
図11は吸気弁3,3の開閉時期(バルブタイミング)を縦軸に取り、作動角を横軸に取って本実施例(実線)と、従来技術(破線)のそれぞれの可変動弁装置によるバルブタイミング可変特性を比較して示したものである。
この図の上段側の本実施例の吸気弁3の開時期(IVO)特性をみると、中間作動角から最大作動角に至る付近でIVOが最進角となるが、この状態では、吸気弁3,3とピストンとの干渉を回避できる、つまり、許容IVOを超えないように設定されている。
具体的には、クランクシャフトの回転を駆動軸(カムシャフト)に伝達するタイミングプーリの取り付け位相の設定により行うか、あるいは特開2006−307658号公報に記載された技術であるタイミングプーリにカムフェイザー(位相可変型バルブタイミング制御装置)を用いた場合は、カムフェイザーによる最進角位相で図10のIVO特性(本実施例)となるようにし、許容IVOを超えないように設定されている。
そして、中間作動角制御時のIVO(中)は、図11から明らかなように、また、前述のように従来技術のIVOに対して進角寄りに設定されている。
したがって、本実施例では、機関低中回転あるいは部分負荷域で中間作動角に制御した際に、IVOが従来技術に対して十分進角するので、排気弁とのバルブオーバーラップを大きくできる。この結果、内部EGRを増加できることから、燃費を向上させることができる。
しかも、その後、機関の加速要求などから作動角を拡大制御してもIVOが最大まで僅かに進角するものの、許容IVOを超えていない。
一方、従来技術についてみると、図11の破線で示すように、IVOが変化するが、中間作動角におけるIVO(中)は本実施例にように十分進角できないため、バルブオーバーラップが小さくなって燃費を向上させることができないと共に、NOxも減少させることができない。
ここで、従来技術において前記カムフェイザーを設け、これによってバルブタイミングを進角させて、図11の矢印に示すように、本実施例のIVO(中)の位置に持って行くこともできるが、加速要求などでさらに作動角を拡大制御する場合、カムフェイザーの遅角側への変換応答性が悪い場合、図11の星印に移行して許容IVOを超えてしまい、この結果、吸気弁3,3とピストンとの干渉が発生してしまう虞がある。したがって、ピストンの上面に干渉防止用のバルブリセスを大きく形成しなければならず、これによって、冷却損失が発生して燃費が悪化し、HCの排気エミッションも増加する虞がある。
またここで、前記カムフェイザーの遅角側への変換状況に応じて作動角を拡大制御するという方法も考えられるが、このカムフェイザーは、一般的に油圧が駆動源のため応答性が遅い上に、かかる増大制御による過渡モーションコントロールの制御のばらつきが大きく、安全性を考慮すると、やはり、バルブリセスを大きくせざるを得ず、燃費の悪化などを招来する。また、作動角の拡大制御を極めて遅くすることも考えられるが、このようにすると、加速性能が大幅に悪化して運転性が大きく低下するおそれがある。
これに対して、本実施例では、前述したカムフェイザーがあっても最進角側であっても、作動角によらず吸気弁3,3とピストンとの干渉が防止されるので、前記過渡モーションコントロールの制御のばらつきを考慮しなくてもよいため、バルブリセスを大きく形成する必要がない。これによって、燃費や排気エミッションなどの素質を良好にすることができる。
また、カムフェイザーの遅角側への制御応答性が遅い場合であっても、吸気弁3,3とピストンとの干渉なしに作動角を拡大することができるので、加速応答性も良好になるばかりか、前記中間作動角制御時でのIVOを十分進角することができるので、バルブオーバーラップの拡大による部分負荷での燃費の改善が図れると共に、排気エミッション性能の向上も図れる。
また、本実施例に前記カムフェイザーを適用した場合は、例えばアイドリング運転時に最小作動角制御し、さらにカムフェイザーを遅角側へ制御することで、機関回転の安定性を得ることができる。これは、図11中のカムフェイザー遅角(1)に示すように、IVOが上死点より遅れるため、バルブオーバーラップがなくなって内部EGRが大幅に減少することと、吸気スワールの増加により燃焼が改善するためである。
また、冷機時にアイドリング運転時よりもやや大きな小作動角(図10におけるL1の上のリフト特性)とし、前記カムフェイザーによって遅角制御することによって燃焼性が良好になり、HCの排出量を低減できる。すなわち、図11のカムフェイザー遅角(2)に示すように、やや作動角が大きく、冷機時の機関フリクションの増加に打ち勝つだけのトルクを出せるのに加えて、吸気弁3,3の閉時期(IVC)が下死点付近となるので、有効圧縮比が向上して冷機時の燃焼が良好になるのである。なお、カムフェイザーを遅角制御する分には、ピストンとの干渉はしにくくなる方向で問題はない。
また、本実施例は、中間作動角制御時には、前記制御偏心軸29が駆動支軸4aに指向した状態になることから、各構成部品の組付時において前記制御軸24の容易な位置決めよって、前記IVO特性を有する中間作動角設定を得ることができる。
さらに、図2に示すように、前記制御偏心軸29の長さLの範囲内に、前記ロッカアーム15やリンクアーム16、リンクロッド17及び駆動偏心カム5を配置したことから、装置のコンパクト化が図れると共に、特にロッカアーム15の作動の安定化が図れ、作動中における該ロッカアーム15の倒れモーメントに起因する倒れ挙動を低減することができる。しかも、前記駆動偏心カム5は、円筒部5b側が前記リンクロッド17と軸方向反対側に配置されていることから、カム本体5aとリンクロッド17の軸方向の距離を短くすることができるので、前記ロッカアーム15の倒れモーメント自体も低減することができ、さらに、ロッカアーム15の挙動の安定化が図れる。
また、前記制御軸24の制御支軸24aと制御偏心軸29を、ブラケット28を介して別体に形成したことから、組み付け作業時に、制御偏心軸29にロッカアーム15などをサブアッシしてから制御支軸24aに組み付けできるので、組み付け作業性が向上する。
さらに、この実施例では、前記バルブタイミング制御装置(カムフェイザー)も設けられていることから、吸気弁3,3のリフト位相の変換を機関運転状態に応じて自由に行うことができるので、より細かな開閉時期制御が可能になる。特に、制御作動角によらず、バルブタイミング制御装置によって進角側に制御された場合であっても、することができるので、ピストンとの干渉を抑制することが可能になる。この結果、ピストンとの干渉問題の制約がなくなって作動角の変換速度を速くすることができ、加速レスポンスをさらに向上させることもできる。ここで、変換応答性が良好な電動アクチュエータとすれば、一層、加速レスポンスを向上させることができる。
また、前記制御偏心軸29は、ブラケット28の両固定片28b、28b間に固定されていることから、制御支軸24aに対して安定かつバランス良く支持されている。
また、本実施例では、前記リンクアーム16を押し上げることによってリフトさせる方式を採用している。これによれば、リンクアーム16が剛性が高い状態で作動するので、バルブ運動特性が安定化する。なぜならば、リンクアーム16は、2軸間で圧縮されるだけなので、変形が小さいのである。逆にリンクアーム16が引っ張られると、円環部が変形するので、変形量が大きくなるのである。
なお、前記第1実施例では、第3支点Sが、第1支点Xと第2支点Rを結ぶ直線の延長線より外側にある例を示したが、この場合は、中間作動角制御時に、第2支点Rと第3支点Sを結ぶ直線が第1支点Xと第2支点Rを結ぶ直線に近づく方向(γが小さくなる方向)となり、前述のように、IVOが中間作動角制御時に進角側へ膨らむ効果が得られる。すなわち、この場合は、図5Bに示すように、中間作動角での点Q2が第2円弧線bより駆動軸4側の領域に位置し、この領域がγ効果でリフトや作動角が増大する領域になっている。
これに対して、第3支点Sが、第1,第2支点X,Rを結ぶ直線の延長線よりも内側にある場合も本実施例を適用することができる。
すなわち、この場合は、第2支点Rと第3支点Sを結ぶ直線が逆に反時計方向に回転する方向(第2支点Rと第3支点Sを結ぶ直線が第1支点Xと第2支点Rを結ぶ直線に近づく方向)となり、この場合は、前述のIVOが中間作動角制御時に膨らむ効果が得られる。これは、図5Bにおいて、点Q1はそのままにして制御支軸24aの中心Pを右上の位置から左上の位置に変更すれば実現可能になる。つまり、この場合は、反時計方向に制御軸24を捩り中間作動角に制御すると、点Q2は第2円弧線bより外側の領域になる。
そうすると、点Q1→Q2で前記βがβ1からβ2に増加するので、第2支点Rと第3支点Sを結ぶ直線が逆に反時計方向に回転することになり、所望のIVOやピークリフト位相が中間作動角で膨らむ特性を実現できる。
いずれにせよ、中間作動角の制御域で、第2支点Rと第3支点Sを結ぶ直線がリフト量、作動角の拡大する方向に角度変化する場合には、前述のIVOが中間作動角制御時に膨らむ効果が得られるのである。
要するに、中間作動角域で制御偏心カム25の中心点Q2が、最小作動角制御時Q1を通る第2円弧線bに対してリフト増大側に位置し、前述のように、小作動角制御時のピークリフトの瞬間における中心点Rを通る第1円弧線aに対して駆動軸4の方向へ遅角側になっていれば良いのである。
〔第2実施例〕
図12及び図13は第2実施例を示し、基本構造は第1実施例と同様であるが異なるところは、前記ロッカアーム15の第1アーム部15bの構造を変更したものである。
すなわち、前記第1アーム部15bの先端部を二股状に突出形成し、該二股部15b、15bの先端部に横方向から貫通形成された固定孔15g、15gに、前記リンクアーム16の突出端16bと回転自在に連結する連結ピン30の両端部を圧入固定した。
したがって、この第2実施例によれば、第1の実施例と同様な作用効果が得られることは勿論のこと、二股状に第1アーム部15b、15bによって連結ピン30が両持ち状態で支持されるため、支持剛性が向上し、リンクアーム16の突出端16bの傾きなどが防止されて、安定かつ確実に支持することができる。
なお、連結ピン18の軸方向のずれを防止するために、該連結ピン18をリンクアーム16のピン孔に圧入してもよいし、またリンクロッド17側では内側フランジと外側フランジの一方、または両方に圧入してもよい。さらには、圧入せずに、スナップリングによって抜け止め防止を行うことも可能である。
〔第3実施例〕
図14及び図15は第3実施例を示し、前記駆動偏心カム5を両揺動カム7,7の間に配置すると共に、リンクロッド17、17を一気筒当たり左右一対設けたものである。
すなわち、前記制御支軸24aのブラケット28側の凹部24bが、軸方向へ延設されていると共に、制御偏心カム25のブラケット28も同じく軸方向へ延長形成され、これに対応して制御偏心軸29が軸方向に延長形成されている。
前記ロッカアーム15は、筒状基部15aの軸方向幅が延長形成されていると共に、該筒状基部15aから前方に突出した対称形の第1アーム部15b、15bが二股状に形成されていると共に、該各第1アーム部15b、15bの各上部に突出状の第2アーム部15c、15cがそれぞれ一体に形成されて、該両第1アーム部15b、15b間に第2実施例のものよりも長い連結ピン30を介して前記リンクアーム26の突出端16bが回転自在に連結されている。
前記両第2アーム部15c、15cは、先端部に有する各ボス部15f、15fに前記各リフト調整機構21、21の両枢支ピン19、19に前記一対のリンクロッド17,17の一端部が回転自在に連結されている。
前記各揺動カム7、7は、左右に2分割形成されて各カムシャフト7a、7aが前記駆動支軸4aの外周に独立した状態で揺動自在に支持されている。
前記駆動偏心カム5は、カム本体5aの内部径方向から圧入された固定用ピン12によって駆動支軸4aに一体的に連結されていると共に、前記両揺動カム7,7にスペーサ2,2を介して挟持状態に配置されている。
したがって、この実施例によれば、ロッカアーム15の両端側の2つのリンクロッド17,17によって各揺動カム7,7を介して各吸気弁3,3を開閉作動するようになっているため、前記ロッカアーム15の軸方向の倒れを十分に防止することができる。この結果、伝達機構8全体の常時安定した作動が得られると共に、各部の片当たりなども抑制できることから、偏摩耗の発生も防止できる。
しかも、前記各揺動カム7,7は、互いに独立した状態で揺動するため、各吸気弁3,3のリフト量を、例えば各カム面7d、7dのカムプロフィールなどを変えて異ならせることも可能になる。これによって、最小リフト制御時に筒内の吸気スワールを大きくすることができるので、燃焼性が良好になる。
〔第4実施例〕
図16A、Bは第4実施例(請求項5の発明に対応)を示し、制御軸24、揺動カム7、リンクロッド17などの基本構造は、前記第1実施例のものと共通であるが、前記リンクアーム16を廃止すると共に、前記駆動偏心カム5を一般的な駆動カム31に変更したものである。前記図5A,Bに対応している。
具体的には、前記ロッカアーム15の第1アーム部15bの先端部にローラ32がローラ軸33を介して取り付けられている。
一方、駆動軸4の駆動支軸4aに雨滴状(卵形)の駆動カム31が一体的に固定されており、この駆動カム31の円形状基部31aが駆動支軸4aに圧入などによって固定されていると共に、外周面31bがカム面として前記ローラ32の外周面に転接するようになっている。
また、前記ローラ32は、付勢手段であるコイルスプリング33によって前記駆動カム31の外周面方向へ付勢されている。つまり、前記コイルスプリング33は、一端部がロッカカバー34に弾持されて、他端部が前記ロッカアーム15の第1アーム部15bの上面に弾持されて、前記ローラ32の外周面を常時駆動カム31の外周面に弾接するようになっている。
ここで図16に示す駆動カム31のカムノーズ部31aのリフトトップ位置X’が、第1実施例のリンクアーム16の突出端16bの第1支点Xに対応し、ローラ32のローラ軸33の軸心R’が、第1実施例の第2支点Rに対応する。
そして、各吸気弁3,3のピークリフト時にY−X’を結ぶ直線とX’−R’を結ぶ直線の方向が一致するのは第1実施例と同様であり、前記Y−X’の直線の位相が第1実施例の駆動支軸4aの位相α2に相当する。
また、リンクロッド17の軸心である第3支点Sは第1実施例と同じであって、X’−R’を結ぶ直線の延長線と、R’−Sを結ぶ直線とのなす角度γ1が第1実施例のγ1に相当する。
したがって、前記中間作動角制御時の中心点Q2も前記第1実施例の図5に示す位置と同様の位置になる。よって、第1実施例と同様な作用効果が得られる。
〔第5実施例〕
図17は第5実施例(請求項4の発明に対応)を示し、前記リンクロッド17が揺動カム7,7のカムノーズ部7b側の端部を押し下げることによって吸気弁3、3を開作動させるように構成したものである。
図17A、Bにおいて前記制御偏心カム25は下方を指向しており(制御軸角度θ1、制御偏心カムの中心点Q1)、最小作動角制御の状態にある。
駆動軸4(駆動偏心カム5)の回転方向は、前記他の実施例と異なり、図17中では反時計方向になっている。
前記制御軸24を時計方向に回転させると、制御偏心カム25の中心点Qは点Q1から点Q2に変化して中作動角に制御される。
前記点Q2は、点Q1を通る第1円弧線aよりも駆動軸4の回転方向で進角している。したがって、他の実施例と同様に中間作動角のピークリフト位相は遅角する。
また、前記の点Q2を通る第2円弧線bより外側、つまりリフト増大方向へ乖離している。
したがって、他の実施例と同様に中間作動角制御時における吸気弁3,3の開弁時期を進角させることが可能になる。
ここで、前記点Q2を通る第2円弧線bよりも外側(他の実施例と相違)がリフト増大方向なのは、γがγ2に増加すると、リンクロッド17が揺動カム7,7を押し下げてリフトを増加させるためである。
なお、駆動軸4の中心で点Q2を通る第3円弧線cを想定してみると、さらに理解し易くなる。ここで、第3円弧線cと第1円弧線aの交点を点Q2'とする。
制御偏心カム25の中心点の位置が点Q1から点Q2'に移動してもリンクアーム16の位置は変わらないので、ピークリフト位相は変わらないが、γが増加するのでリフト量が増加するのである。
次に、点Q2'から点Q2に移動すると、第3円弧線c上を駆動軸4の回転方向で進角側にリンクアーム16とともに移動する。すなわち、駆動偏心カム5は、中間作動角制御時では、さらに回転しないとピークリフトにならないことを意味している。したがって、ピークリフト位相が他の実施例と同様に遅角する。このため、他の実施例と同様にIVCを十分に遅らせ、IVOは前述のように進角側に膨らみ、ピークリフト軌跡も湾曲状に膨らむのである。
本発明は、前記各実施例の構成に限定されるものではなく、例えば、前記各実施例では、ロッカアーム15とリンクアーム16との第2支点Rがロッカアーム15とリンクロッド17との第3支点Sと比較的近接した場合を示したが、さらに距離が離れたものであってもよい。つまり、各支点の具体的な座標は適宜選択できるものである。
さらに、前記各実施例における吸気弁3,3の作動角は、ランプ部を除いた開期間によって示したが、ランプ区間を含めた作動角としてもよく、効果は同じである。
また、前記各実施例では、吸気弁側に適用した場合を示したが、排気弁側あるいは両方に適用することも可能である。
フォロアとしては、前記実施例に示したスイングアームではなく、上面が平面のバケットリフターであってもよい。