特許文献1や特許文献2に開示された従来の排水ポンプは、遮音ケースや防塵カバーをモータとポンプ本体との間に設けて運転中の騒音を低減させるようにしているが、モータやポンプ本体とは別部品のケースやカバーを用意しなければならず、組み立て作業性の低下を招く上に部品コストが増大してしまう。しかも、モータの駆動音や排水騒音の他に共振現象によって発生する騒音、特に1〜2kHzの耳障りな音を遮音するには至っておらず、改善が望まれている。
特許文献3においては、ポンプ本体の上面に設けられる蓋体に消音カバーを一体的に形成することにより、特許文献1,2における部品点数の増大を抑制しているが、大気導入口をモータの内部に形成しているため、このモータの内部にポンプ室内の水が浸入してしまうことが予想される。従って、内部に電子回路などを組み込む必要があるDCモータは、静粛性の点でACモータよりも有利であるけれども、この特許文献3のような構成のポンプには使用することができないという欠点があった。
本発明の目的は、ロータの回転に伴って発生する耳障りな騒音を遮断して静粛性に優れた立軸形遠心ポンプおよびこれを排水ポンプとして組み込んだ空気調和装置を提供することにある。
本発明の第1の形態は、吸込ポートおよび吐出ポートを有するケーシングと、このケーシングに連結されて当該ケーシングとで前記吸込ポートおよび吐出ポートに連通するポンプ室を画成するカバーと、前記ポンプ室内に回転自在に収容されるロータとを具えた立軸形遠心ポンプであって、前記カバーは、その中央部から前記ポンプ室と反対側に突出し、かつ前記ロータに連結される駆動モータのスピンドルが貫通する貫通穴が形成された円筒状のボス部と、このボス部よりも外周側に形成されて当該ボス部を囲む内筒部と、この内筒部よりも外周側に形成されて当該内筒部を囲む外筒部とを具え、前記内筒部は、その内周側と外周側とに連通するオーバーフロー通路を有すると共に前記外筒部はその内周側と外周側とに連通するオーバーフローポートを有することを特徴とするものである。
本発明においては、駆動モータによってロータを回転させると、ポンプ室内に介在する水などの液体が連れ回り、これに伴って発生する遠心力により液体がポンプ室から吐出ポートに吐出され、同時に吸込ポートから液体がポンプ室内に吸い上げられる。この時、ポンプ室内にてロータおよび液体の回転に伴って発生する騒音がポンプ室の外に漏洩した場合、外筒部によって外部に対し遮断される。
本発明の第1の形態による立軸形遠心ポンプにおいて、外筒部のオーバーフローポートは、ロータの径方向に対して垂直の接線方向に延在していることが好ましい。
カバーの外筒部に複数の補強リブを設けることができる。
駆動モータのスピンドルが貫通する貫通穴を中心として外筒部のオーバーフローポートと内筒部のオーバーフロー通路とを異なる方向に配置することが好ましい。また、外筒部と内筒部との間隔をこれらの周方向に沿って不均一に設定することも有効である。
駆動モータのスピンドルが貫通する貫通穴の内径を駆動モータのスピンドルの外径よりも大きく、ロータの軸径よりも小さく設定することができる。
一方が弾性変形を伴って他方に係合し、これによりケーシングとカバーとを一体的に連結する連結手段と、ケーシングとカバーとの連結位置を規定する位置決め手段とをこれらケーシングとカバーとに設けることができる。また、連結手段がスナップ止め機構を利用したものであってよく、位置決め手段がケーシングから突出する位置決めピンと、この位置決めピンが嵌合するように外筒部の補強リブに形成した位置決め穴とを有するものであってよい。これら連結手段および位置決め手段を円周方向に沿ってそれぞれ等間隔に複数、例えば4組ずつ形成することができる。
ロータは、ロータ軸と、このロータ軸に同心状をなして一体的に連結される円形の主板と、この主板からロータ軸の軸線とほぼ平行に突出する複数本のピンと、主板に形成されてその表面側と裏面側とを連通する均圧部とを有するものであってよい。この場合、主板の表面側と裏面側とを連通する複数の連通孔を形成し、これら連通孔を均圧部として機能させることも有効であり、主板の円周方向にほぼ沿った第1の方向およびこれと直交する方向にピンおよび連通孔を配列した第1の配列グループと、第1の方向に対して45度傾斜した方向およびこれと直交する方向にピンおよび連通孔を配列した第2の配列グループとを円周方向に沿って交互に配列することができる。
主板の回転方向に対して垂直な面に投影した個々のピンの面積がロータ軸の径方向内側に位置するピンほど小さくなるように設定することができる。この場合、個々のピンの突出長さをロータ軸の半径方向内側ほど短く設定したり、あるいはロータ軸の半径方向内側に位置するピンのロータ軸の半径方向に沿った先端部の幅寸法を基端部のそれより小さくする設定したり、あるいはロータ軸の半径方向内側に位置するピンの間隔をその半径方向外側に位置するピンの間隔より広くすることによっても同様な効果を得ることができる。
ロータ軸の軸線に対して垂直な面における個々のピンの断面形状は、円形,楕円形,矩形などの多角形,あるいは翼形などの非対称形状を適宜採用することができる。この場合、主板の回転方向に沿ったピンの最大長さは、ロータ軸の半径方向に沿ったピンの最大幅寸法と同じか、あるいはそれ以上に設定することができる。
ロータ軸の軸線に沿ってその一端部から突出する攪拌部材を吸込ポート内に配することができ、この攪拌部材はロータ軸の軸線から放射状に突出する複数枚の羽根部材であってよい。
ロータの周囲を囲むように下向きに突出してケーシングの内壁との間に環状の空隙を形成する仕切り壁をカバーが有し、このカバーの仕切り壁をケーシングに形成された吐出ポートと対向してこれを遮るように配することが好ましい。
ロータに連結されてこれを駆動するスピンドルを有する駆動モータと、外部の固定部に取り付けるための取り付け部を有し、駆動モータが搭載されると共に外筒部に連結されるブラケットとをさらに具えることができる。この場合、駆動モータの回転軸が貫通する貫通穴をブラケットに形成し、外筒部と駆動モータとの間に介在してこれらを仕切る仕切り壁としてブラケットを機能させることができる。
耐蝕性を有する非磁性材料にてブラケットを形成することができる。
駆動モータとしてACモータよりも振動が少なく、かつ小型軽量であって制御も容易なDCブラシレスモータを採用することができる。
ブラケットおよび駆動モータの取り付けフランジを貫通してこれらを一体的に接合する接合部を外筒部に形成することができる。この場合、接合部が駆動モータの取り付けフランジに係止する溶着部を有するものであってよく、この溶着部を超音波溶着によって成形することができる。
本発明の第2の形態は、上述した本発明の第1の形態による立軸形遠心ポンプが排水ポンプとして組み込まれた空気調和装置にある。
本発明の第1の形態の立軸形遠心ポンプによると、ロータの回転に伴ってポンプ室内で発生する騒音がポンプ室外に漏洩したとしても、ボス部の周囲が内筒部および外筒部にて囲まれているため、特に1kHz〜2kHzの帯域の耳障りな騒音の漏洩を最小限に止めることができる。また、ロータの回転停止時にポンプ室内で逆流してポンプ室外に漏出する水などの液体をオーバーフロー通路を介してオーバーフローポートからポンプ外へと確実に排出させることができ、駆動モータに対する悪影響を回避することが可能である。
オーバーフローポートがロータの径方向に対して垂直の接線方向、つまり回転方向に対して逆向きの接線方向に延在している場合、ポンプ室内で逆流した液体の飛散を最小限に抑えつつ、外筒部内に溢流した液体の排出をより迅速かつ円滑に行うことができる。
カバーの外筒部に複数の補強リブを設けた場合、駆動モータが搭載される外筒部の強度を向上させることができる。
外筒部のオーバーフローポートと内筒部のオーバーフロー通路とを、駆動モータのスピンドルが貫通する貫通穴を中心として異なる方向に配した場合、ロータの回転に伴ってポンプ室内で発生する騒音の漏洩をラビリンス効果によってより一層抑えることができる。
外筒部と内筒部との間隔を周方向に沿って不均一に設定した場合、ロータの回転に伴ってポンプ室内で発生する騒音を外筒部の内周面と内筒部の外周面との間の内部反射によってさらに減衰させることができる。
駆動モータのスピンドルが貫通する貫通穴の内径を駆動モータのスピンドルの外径よりも大きく、ロータの軸径よりも小さく設定した場合、貫通穴と駆動モータのスピンドルとの間の隙間からの液体の溢流を抑制し、これによってスピンドルを伝って駆動モータ内への液体の浸入を防止することができる。
ケーシングとカバーとに一方が弾性変形を伴って他方に係合し、これによりケーシングとカバーとを一体的に連結する連結手段と、ケーシングとカバーとの連結位置を規定する位置決め手段とを設けた場合、ケーシングとカバーとの組み立て作業を容易かつ迅速化させることができる。また、連結手段によってケーシングとカバーとの相対回転を防止することができるため、吐出ポートに吐出管を接続する際の作業性を向上させることが可能となる。
ロータが、ロータ軸と、このロータ軸に同心状をなして一体的に連結される円形の主板と、この主板からロータ軸の軸線とほぼ平行に突出する複数本のピンと、主板に形成されてその表面側と裏面側とを連通する均圧部とを有する場合、ロータの軸心を中心としてポンプ室内で旋回するピンが、その周囲に介在する液体に対し、これをほぼ層流状態で後方へと回り込ませるように移動し、主板の上下で発生する圧力差によって、複数の均圧孔から上昇してくる水流の結果、ピンの周囲でのキャビテーションの発生や空気の巻き込みによる騒音を抑制することができる。
ロータの周囲を囲むように下向きに突出してケーシングの内壁との間に環状の空隙を形成する仕切り壁をカバーが有し、ケーシングに形成された吐出ポートと対向してこれを遮るように仕切り壁を配した場合、ポンプ室内に介在する空気が吐出ポート側に流れ込むのを阻止して気泡がポンプ室から吐出ポートへと移動する際に発生する騒音を無くすことができる。
ロータに連結されてこれを駆動するスピンドルを有する駆動モータと、外部の固定部に取り付けるための取り付け部を有し、駆動モータが搭載されると共に外筒部に連結されるブラケットとをさらに具えた場合、ケーシングやカバーあるいはブラケットを異なる寸法のものに交換しない限り、外部の固定部に対するケーシングの吸込ポートおよび吐出ポートの相対位置が変化しないため、能力の異なる駆動モータに交換した場合であっても、ブラケットを交換する必要がなくなり、駆動モータの能力に拘らずブラケットの共用化を図ることができる。
本発明の第2の形態の空気調和装置によると、本発明による立軸形遠心ポンプを排水ポンプとして組み込んだので、空気調和装置によって発生する凝縮水の排水処理を極めて静粛に行うことができる。
本発明による立軸形遠心ポンプを排水ポンプとして空気調和装置に組み込んだ一実施形態について図1〜図13を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこのような実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載された本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が可能であり、従って本発明の精神に帰属する他の任意の技術にも当然応用することができる。
本実施形態における排水ポンプの取り付け状況を図1に示す。すなわち、本実施形態における排水ポンプ10は、そのブラケット11を介して空気調和装置の筺体隔壁12に形成された固定部13に取り付けられている。固定部13と板状をなすブラケット11との間には、防振機能とシール機能とを併せ持つ図示しないガスケットが挟み込まれ、固定部13にねじ込まれる取り付けねじ14によってブラケット11の取り付け部11aが筺体隔壁12の固定部13にねじ止めされた状態となっている。後述するロータを駆動するための駆動モータ15が筺体隔壁12の外側に位置するように、駆動モータ15がブラケット11の連結部11bに搭載されている。駆動モータ15の作動を制御するための制御盤16が筺体隔壁12の外側に設置され、この制御盤16と駆動モータ15に取り付けられたコネクタ17とがケーブル18を介して連結されている。制御盤16と駆動モータ15との接続は、コネクタ17を用いずにケーブル18を駆動モータ15から直接引き出して制御盤16に連結するものであってもよい。
なお、本実施形態における駆動モータ15のコネクタ17は、図3中の二点鎖線で示すような位置に配置することも可能となっており、ケーブル18の接続作業性や他の部材との干渉を考慮して適宜選択することができる。また、このコネクタ17が駆動モータ15と同様に筺体隔壁12の外側に配置されているため、耐水性を考慮する必要のない安価な非防水構造のものを採用することができる。さらに、本実施形態におけるブラケット11は、後述する駆動モータ15の作動に悪影響を与えないオーステナイト系ステンレス鋼やアルミニウムなどの非磁性体にて形成されている。
この排水ポンプ10の主要部分の内部構造を図2に示し、その平面形状,底面形状をそれぞれ図3,図4に示し、そのカバーの部分の側面形状および底面形状をそれぞれ図5,図6に示し、図2中のVII−VII,VIII−VIII矢視断面構造をそれぞれ図7,図8に示し、ロータの部分の外観を図9に示し、その底面形状を図10に示す。すなわち、本実施形態における排水ポンプ10は、筒状の側壁部19aと円錐状の底壁部19bとを有するケーシング19と、このケーシング19の側壁部19aの上端部に連結されて当該ケーシング19とでポンプ室20を画成するカバー21と、このポンプ室20内に収容されるロータ22と、このロータ22に連結されてこれを回転させる駆動モータ15と、この駆動モータ15が搭載されると共にカバー21と一体の外筒部23が連結される前述のブラケット11とを具えている。本実施形態では空気調和装置の筺体隔壁12の外側に配される駆動モータ15と、筺体隔壁12の内側に配されるカバー21およびケーシング19を仕切るように、ブラケット11を筺体隔壁12の固定部13に取り付けているため、カバー21と駆動モータ15との間に駆動モータ15の軸受部分を保護するための水切板を設ける必要がなくなるばかりか、能力が異なる駆動モータを使用するような場合であっても、排水ポンプ10としては単に駆動モータ15を交換するだけで良く、ブラケット11などの交換が全く不要となる利点をも有する。
なお、本実施形態ではDCブラシレスモータを駆動モータ15として採用しており、振動の大きなACモータよりも大幅な小型軽量化が可能であり、その駆動制御も容易である。DCモータの欠点である高周波振動は、空気調和装置の筺体隔壁12とブラケット11の取り付け部11aとの間に上述したガスケットを介装することにより確実に遮断することができる。
本実施形態では、ケーシング19の底壁部19bを中央部が下向きに窪んだ円錐状に設定しているが、底壁部19bを水平面と平行ないわゆる平底状に設定しても何ら問題はない。このケーシング19には、底壁部19bの中央から下向きに突出し、ポンプ室20内に連通する吸込ポート24を形成する吸込管25と、側壁部19aからロータ22の半径方向外側に突出し、ポンプ室20内に臨む吐出ポート26が開口する吐出管27とが一体的に形成されている。吸込管25は、図2中、二点鎖線で示す空気調和装置のドレンパン28内に位置決めされ、このドレンパン28内に溜まる凝縮水の中にほぼ没する状態となる。また、吐出管27には先端部が空気調和装置の筺体隔壁12の外に導き出されるドレン管29の基端部が連結されている。
本実施形態では、吐出管27の内径を下流側ほど太くしてポンプ室20に臨む吐出ポート26を絞った状態にしているが、吐出管27の外径を一定にしてドレン管29を嵌合する際の作業性およびこれらの間でのシール性を確保できるように配慮している。このため、吐出管27の肉厚が基端側ほど厚くなるけれども、本実施形態では吐出管27の外周部に肉抜き処理を施し、これによって吐出管27の高剛性化および軽量化も同時に達成している。吐出管27に対するドレン管29の嵌合の容易性およびシール性を確保することができさえすれば、吐出管27の外周に形成される肉抜きは、どのような形態および形状であってもよい。
なお、この排水ポンプ10の低揚程時においては、底壁部19bと吸込管25との接続部分をなめらかな凸状断面の湾曲面に形成するよりも、図2中の二点鎖線で示すような凹形の湾曲部19cを形成した方がここを通過する水をより円滑に流動させることができ、さらに低騒音化を図ることが可能である。
カバー21の中央部には、上面が塞がった円筒形断面を有するボス部30が上向きに形成されており、このボス部30を囲む円形の内筒部31と、さらにこの内筒部31を囲むほぼ円形の外筒部23とがカバー21から上向きに突設され、これらは樹脂によってすべて一体的に成形されている。
ボス部30は、その中央に位置して駆動モータ15のスピンドル15aが貫通する貫通穴30aと、その外周部に位置してポンプ室20内を大気圧に保つための複数(図示例では4つ)のスリット30bとが形成されている。貫通穴30aの内径は、駆動モータ15のスピンドル15aの外径よりも大きく、後述するロータ22の軸径よりも小さく設定されている。また、本実施形態におけるスリット30bは、ボス部30の周壁部分の上端から前記カバーの上面までの間で溝状をなしており、しかも径方向内側ほどロータ22の回転方向(図7中、左回転方向)側にずれた状態となっている。このため、駆動モータ15を停止してロータ22の回転を停止した場合、ドレン管29から吐出ポート26を介してポンプ室20側に逆流する排水の一部がスリット30bからポンプ室20外に溢流するけれども、本実施形態ではロータ22の回転方向(図7中、左回転方向)とは逆向き、つまり図7中、時計回りの接線方向に沿ってスリット30bがボス部30の周壁部分に形成されているため、スリット30bから溢れ出る排水の量を低減させることができると共により円滑にポンプ室20からカバー21の外に溢流させることができる。しかも、ポンプ室20外に溢れた水をこのスリット30bから速やかにポンプ室20内に戻すことができる。
上端がブラケット11の連結部11bに当接する内筒部31には、180度隔てて対向する一対のそれぞれスリット状をなすオーバーフロー通路31aが形成され、その内周のボス部30側と外周の外筒部23側とを連通している。
外周縁部に複数(図示例では4つ)の円筒形断面の補強リブ23aを周方向に沿って等間隔に形成した外筒部23には、この外筒部23の内周側と外部とを連通する一対のオーバーフローポート23bが180度隔てて形成されている。これら一対のオーバーフローポート23bは、内筒部31の一対のオーバーフロー通路31aの対向方向とほぼ直交するように配されており、ロータ22の回転方向(図7中、左回り)に対して逆向きの接線方向にそれぞれ延在している。
内筒部31に形成された一対のオーバーフロー通路31aおよび外筒部23に形成された一対のラビリンス構造を有するオーバーフローポート23bは、ボス部30のスリット30bと共に大気連通路を構成する。本実施形態では、内筒部31の一対のオーバーフロー通路31aと外筒部23の一対のオーバーフローポート23bとが貫通穴30aを中心として一直線状に並ばないように、異なる方向、つまりこれらの回転位相をほぼ90度ずらすことにより、ポンプ室20からスリット30bおよびオーバーフロー通路31a,オーバーフローポート23bを介して排水ポンプ10の外につながる大気連通路を大きく屈曲させ、ポンプ室20内で発生する直進性の高い高周波(1〜2kHz)の騒音に対して大きな消音効果が得られるように配慮している。しかも、本実施形態では外筒部23を半径方向に大きく凹凸させて内筒部31と外筒部23との間隔が不均一となるようにしており、これによってポンプ室20内にて発生してスリット30bからオーバーフロー通路31aを抜けた騒音が外筒部23の内周面と内筒部31の外周面との間で反射する間に大きく減衰する結果、オーバーフローポート23bから外部に抜ける騒音をほとんど無くすことが可能である。
なお、ボス部30のスリット30bから一時的に多量の水がポンプ室20外に溢流した場合、この水の一部は内筒部31のオーバーフロー通路31aから外筒部23のオーバーフローポート23bを通って外筒部23の外から排出され、ドレンパン28に流下する。
ポンプ室20側に臨むカバー21の外周縁部には、ケーシング19の側壁部19aとの間に環状の空隙32を形成する筒状の仕切り壁33がケーシング19の底壁部19bに向けて下向きに突設されている。従って、ポンプ室20の上部周縁に位置する凝縮水は仕切り壁33の存在によって下向きに流れ、仕切り壁33の下端とケーシング19の底壁部19bとの間の隙間34を通って環状の空隙32から吐出ポート26内へ導かれる結果、ポンプ室20の上部周縁に介在する気泡が吐出ポート26側に流れ込むのを阻止することができる。つまり、本実施形態における仕切り壁33は、ポンプ室20の上部周縁に介在する気泡が吐出ポート26側に流れ込むのを抑制するためのものであるので、本実施形態のようにカバー21の全周を亙って形成する必要はない。しかしながら、吐出ポート26と対向する位置にのみ仕切り壁33を形成した場合には、この仕切り壁33の吐出ポート26よりも上流側をケーシング19の側壁部19aの内周面に近接させておき、ポンプ室20内を流動する気泡を含む凝縮水が環状の空隙32内に直接流入しないようにすることが必要である。また、この仕切り壁33の下端部は凝縮水の円滑な流れを妨げないように、その断面形状が半円状などの曲面にて形成されていることが好ましい。
なお、ケーシング19とカバー21の仕切り壁33との間にはOリング35が装着され、ケーシング19およびカバー21の嵌合部分から凝縮水が外部に漏出しないように配慮している。
補強リブ23aの上端には、ブラケット11の連結部11bおよび駆動モータ15に形成された取り付けフランジ15bをそれぞれ貫通する連結ピン36がそれぞれ突設されており、この連結ピン36の上端を溶融してかしめ部36aを形成することにより、外筒部23と一体のカバー21と、ブラケット11の連結部11bおよび駆動モータ15とを一体的に接合している。連結ピン36の上端に形成されるかしめ部36aは、超音波溶着などの技術を利用することが可能であり、その形状は駆動モータ15およびブラケット11が容易に抜け外れないような形状でありさえすれば良い。
カバー21の下部外周には、上向きに半径方向外側へと突出する複数(図示例では4個)の係止爪37が円周方向に沿って等間隔に形成されている。また、これらの係止爪37をそれぞれ係止し得る半径方向に弾性変形可能な枠状をなす爪ホルダ38がケーシング19の側壁部19aの外周に設けられ、これら係止爪37および爪ホルダ38が本発明における連結手段を構成している。本実施形態では、ケーシング19に対してカバー21を上方から押し込むことにより、係止爪37が爪ホルダ38に対してスナップ止めされるようになっているため、ケーシング19とカバー21とを極めて容易に一体化することができる。
このように、本実施形態では爪ホルダ38を枠状に形成すると共に係止爪37に返し部を形成したことにより、係止爪37が爪ホルダ38に対して係止した状態において、ケーシング19に対して軸線と平行な方向にカバー21が分離するような動きを拘束することができ、ケーシング19とカバー21とを分離するような外力が作用した場合、爪ホルダ38が係止爪37の返し部に食い付くようになっている。さらに、爪ホルダ38が半径方向に僅かに弾性変形できるように、ガラス繊維や無機物のウィスカなどを混入した硬質複合樹脂材料にてケーシング19および爪ホルダ38を成形した場合、ケーシング19を高強度に設計することが可能となる。
各爪ホルダ38に近接して上向きに突出する複数(図示例では4個)の円柱状をなす位置決めピン39がケーシング19の側壁部19aの上端から円周方向に沿って等間隔に突設され、これら位置決めピン39の先端部が嵌合する肉抜き穴40が外筒部23の補強リブ23aの下端面に開口している。従って、これらを嵌合した状態においてはケーシング19に対するカバー21の回転を拘束することが可能であり、これらが本発明における位置決め手段を構成している。このように、ケーシング19の位置決めピン39に対する補強リブ23aの肉抜き穴40の嵌合位置を変更することにより、カバー21に対するケーシング19の相対回転位置を選択することが可能であり、図4中の二点鎖線で示すように、他の部材の配置などに合わせて吐出管27の向きを4方向の何れかに変更することができるようになっている。
本実施形態におけるロータ22は、駆動モータ15のスピンドル15aが連結される筒状の接続部41aを上端部に有するロータ軸41と、このロータ軸41から放射状に突出する複数本(図示例では4本)のステー42と、これらステー42を介してロータ軸41に対して一体的に連結される円環状をなす主板43と、この主板43の表面、つまり上面側からロータ軸41の軸線とほぼ平行に突出する多数本のピン44と、これらピン44と共に主板43に形成されてその表面側と裏面、つまり下面側とを連通する多数個の連通孔45と、ロータ軸41の下端から当該ロータ軸41の軸線に沿って突出し、吸込ポート24内に位置する攪拌部材46とを具えている。
主板43はロータ軸41に対して同心状をなしており、その内周面とロータ軸41の外周面との間に上述した連通孔45と共に本発明の均圧部として機能する空隙47が形成されている。上述したステー42は、この空隙47を横切った状態となってロータ軸41と主板43とを連結している。また、本実施形態では主板43の円周方向にほぼ沿った第1の方向(図8中、左右方向)およびこれと直交する方向にピン44および連通孔45がそれぞれ交互に配列する第1の配列グループAと、第1の方向に対して45度傾斜した方向およびこれと直交する方向にピン44および連通孔45がそれぞれ交互に配列する第2の配列グループBとを主板43の円周方向に沿って交互に4組ずつ形成している。個々のピン44は、ロータ軸41の軸線に対して垂直な平面で切った断面形状がほぼ正方形となる正四角柱状をなし、その四隅の稜部に丸みを持たせることにより、水掻き音が極力少なくなるように配慮している。さらに、攪拌部材46は、ロータ軸41の軸線に対して垂直な断面形状が十文字状となるような4枚の羽根板46aを有する。
このような構成を持つ排水ポンプ10の駆動モータ15が作動を始めると、吸込ポート24内に介在する凝縮水が攪拌部材46の回転によって攪拌され、その粘性によって次第に攪拌部材46と共に吸込ポート24内で旋回し始める。吸込ポート24内での凝縮水の旋回に伴って発生する遠心力により、その水面が凹状の立体放物曲面を描きながら吸込ポート24の上端を越えてポンプ室20の底壁部19bへとせり上がり、さらに主板43およびピン44が凝縮水で浸された状態となる。このようにしてポンプ室20内に入って来る凝縮水は、回転するロータ22の主板43およびピン44によってさらに高速で旋回し、凝縮水の一部がケーシング19の底壁部19bとカバー21の仕切り壁33の下端との隙間を通って環状の空隙32から吐出ポート26へと排出される。この凝縮水の排出に伴ってドレンパン28内の新たな凝縮水が吸込ポート24内に吸い込まれ、連続的にドレンパン28内の凝縮水が吐出ポート26からドレン管29を介して外部に排出される。この場合、ロータ22の回転数とその最大径、つまり主板43の外径とによってロータ22の径方向中心側と径方向外側端との圧力差が決まるため、この排水ポンプ10の締切揚程も自ずと決まるが、その排水量は主板43の回転方向に対して垂直な面に投影したピン44の面積によって左右されることとなる。
排水ポンプ10の作動中においては、ロータ22のピン44が凝縮水の旋回速度よりも高速で回転しているため、その周囲に介在する凝縮水は、静止中のピン44に対して凝縮水がポンプ室20内を旋回していると見なした場合、ピン44の外周を巻くようにして比較的滑らかに後方に流下する状態となる。つまり、従来のように羽根車の回転方向に対してほぼ直交する広い面を持った抵抗の大きな羽根板を使用していないため、たとえロータ22の最外周側に位置するピン44であっても、その旋回方向の後側にはキャビテーションがほとんど発生せず、キャビテーションに起因する騒音を大幅に低減させることができる。特に、本実施形態ではピン44および連通孔45の第1の配列グループAによって形成される凝縮水の流動方向は、その流動状態を模式的に表す図11に示すように、半径方向に対してほぼ45度傾斜した方向となり、凝縮水に対して比較的大きな運動エネルギーを与えるのに対し、第2の配列グループBによって形成される凝縮水の流動方向は、その流動状態を模式的に表す図12に示すように、ほぼ主板43の円周方向となって凝縮水に対し比較的小さな運動エネルギーを与え、これら2種類の凝縮水の流動によって消泡効果をより一層高めることができる。また、吸込管25内での凝縮水の旋回周速度は、ポンプ室20内での凝縮水の旋回周速度よりも相当遅いため、攪拌部材46が抵抗の大きな羽根板46aであっても、ここでキャビテーションが発生するような不具合は生じない。また、排水ポンプ10の始動時および低揚程時においても、カバー21に形成された仕切り壁33の存在により、吐出ポート26側に排出される凝縮水に気泡が混入するのを阻止でき、気泡が吐出ポート26側に排出される際の騒音をなくすことができる。
このような本実施形態による排水ポンプ10の騒音特性を検証するため、比較として本実施形態による排水ポンプ10から外筒部23を除去したもの(外筒部23を持たない以外はすべて同一)を用意し、騒音計をこれらの排水ポンプから約50cm上方に離し、揚程が70cmとなるように駆動モータ15を運転した場合の100〜10000Hzの範囲の騒音値(dB)を求めた。結果を図13に示す。実線が本実施形態,破線が比較例をそれぞれ示し、二点鎖線が暗騒音の値を示している。図13から明らかなように、耳障りな1000Hz帯域、より詳細には630〜1250Hzの帯域にて比較例よりも騒音値が大きく減衰しているのを認識できよう。
なお、主板43の外周をロータ軸41の軸線を中心とする完全な円形にする必要はなく、またロータ軸41の軸線に対して垂直な面で切ったピン44の断面形状が上述した実施形態の如き略正方形状以外、種々の形状のものを採用することが可能である。
上述した実施形態では、個々のピン44の上端が同一水平面上に位置するように、個々のピン44の高さを設定したが、ロータ22の回転中においてはポンプ室20内の凝縮水の水面がすり鉢状に変位し、ロータ軸41に近い内周側のピン44の上部が水面から露出して凝縮水を攪拌できなくなるので、ポンプ室20内に形成される凝縮水の旋回水面の高さに応じてロータ軸41から遠いピン44ほどその高さを高く設定し、半径方向に配列するピン44の機能を最大限に発揮させることが有効である。あるいは、同じような効果を得るため、主板43の回転方向に対して垂直な面に投影したピン44の面積がロータ軸41の半径方向内側に位置するピン44ほど小さく設定することによっても対処可能である。
上述した実施形態では、ピン44を主板43の表面側から上方に突出させているが、主板43の裏面からピン44を下向きに突出させるようにしてもよい。この場合には、カバー21に近接して配された主板43により、ポンプ室20内に吸引される凝縮水に対してより大きな整流効果を得ることができる。また、ロータ軸41に近いピン44ほど外径が小さくなるような小径部を下端側に有する段付きに形成し、主板43の裏面から突出するこれらピン44の小径部の太さをロータ22の径方向内周側に位置するピン44側ほど細く設定することも有効である。
なお、ピン44や連通孔45を上述した実施形態のような配列グループA,Bのように整列させず、主板43にランダムに形成したり、あるいはピン44を主板43の表裏両面から突出させることも可能である。同様に、主板43をケーシング19の円錐状をなす底壁部19bと平行となるように円錐状に形成してもよい。さらに、ロータ22自体は従来から周知のものを採用することも可能である。