JP5114923B2 - 接着剤組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、引っ張り剪断接着力、耐水性、耐熱性などに優れて均衡のとれた性能を発揮する接着剤組成物に関するものである。
アクリル樹脂は、透明性、耐光性に優れ、接着剤として着実に需要を伸ばしている。一方で、耐熱性、耐湿熱性、粘着力、接着力の保持性という点ではまだ課題が多いのが現状である。
エポキシ樹脂の接着剤としての優れた性能と、アクリル樹脂の粘着剤としての機能を組み合わせたいわゆるアクリル−エポキシハイブリッド型接着剤が提案されている(特許文献1参照)。本提案は、エポキシ樹脂、(メタ)アクリレート化合物および硬化剤としてのジアミン化合物またはビス(アミノ)アルキルピペラジンを含有する硬化性(メタ)アクリレート変性エポキシ樹脂組成物を提供するものである。特許文献1によれば、エポキシ樹脂接着剤の機械的強靱性は、そのままで耐衝撃性が改善され、自動車バンパーなどの接着剤用途として適しているとされている。本提案の狙うところは、
(1)高粘度エポキシ樹脂を低粘度の(メタ)アクリレートで希釈し、低粘度化して接着剤塗布作業性の改善を図ること、
(2)硬化過程で、エポキシ樹脂を前記ジアミン化合物などで硬化、架橋反応させるとともに、(メタ)アクリレートの重合を進めエポキシ−アクリルの相互侵入網目構造(以下IPNともいう)を形成し、強靱で耐衝撃性に優れた接着剤を得ようとするものと考えられる。特許文献1の狙いは大変興味深いものであるが、
(1)接着剤の粘度を単純に低くした場合には、接着剤粘性がニュートニアンとなり接着剤が流れ易くなって十分な接着剤層膜厚が得られない傾向があり、また被着体へのヌレ性が悪化し接着強度が不十分となる懸念がある、
(2)周知の通り、ジアミン化合物、ビス(アミノ)アルキルピペラジンなどの塩基性化合物(または含N原子含有化合物)の存在下では(メタ)アクリレートはきわめて重合性が乏しく、硬化のために十分に長い時間をとったとしても(メタ)アクリレートは未反応で残る懸念が払拭できず、接着強度に重大なバラツキが出ることが予測される。さらにまた、(メタ)アクリレートは嫌気性が強く、脱気(脱酸素)が不十分な場合には、同様に接着強度発現に懸念が残ることになる。
ポリアクリレート成分と、エポキシ成分と、カチオン開始剤とを含む硬化性接着剤が提案されている(特許文献2参照)。本提案は脆い光学素子に構造用支持体を形成するのに有用とされる。本提案になる技術は、光学用塗に適用される。
特許文献2に記載の接着剤は、ポリアクリレートは自己架橋することなく独自に、単独で存在する。したがって、ポリアクリレートによるエポキシへの絡み合い、エポキシの拘束、エポキシとの網目構造のバインダー力はある程度制限され、さほど強くはないことが容易に推察される。換言すれば、ポリアクリレートはずるずると歪みに引きずられ移動するだけで、本来期待されるはずのIPN効果は希薄となることが予測される。
ポリアクリレートは、エポキシとポリアクリレートが有する特定の官能基、カルボン酸、水酸基、で接合される場合がある。ポリアクリレートが有する官能基がカルボン酸の場合には、エポキシ樹脂が有するエポキシ基との反応が起こり、接着剤の本来のカチオン重合反応によらないゲル化が進行し、接着剤の貯蔵安定性が悪化するばかりか、十分な高分子化が阻害されるため機械的強度や接着力の低下を招く懸念がある。ポリアクリレートが有する官能基が水酸基の場合には、接着剤をカチオン重合で硬化する際、連鎖移動剤として働き、見かけの硬化速度、架橋は促進されるが、重合度の低下を招き、接着剤が脆くなって、構造接着剤としての機能を発揮しないことが懸念される。
特開昭63−215716号公報 特表2005−508435号公報
炭素繊維やガラス繊維で強化されたポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ABS樹脂、エポキシ樹脂などのプラスチック類同士の接着、炭素繊維やガラス繊維で強化されたポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ABS樹脂、エポキシ樹脂などのプラスチック類と金属他の異種材料の接着に好適で、引っ張り剪断接着力、耐水性、耐熱性などに優れて均衡のとれた性能を発揮する接着剤組成物を提供する。
本発明は、(1)分子鎖中に下記一般式で示されるユニットを有し、
Figure 0005114923
(ここで、R1は水素原子またはメチル基、mは0または1〜5の整数から選択される異なる2個以上の数値からなる。)
さらに、下記一般式で示されるユニットを有する
Figure 0005114923
(ここで、R3は炭素原子数1〜4個のアルキル基、nは1〜10の整数を表す。)
アクリル共重合体(A)を幹ポリマーとし、
(2)分子鎖中に下記一般式で示されるユニットを有するアクリル共重合体(B)を枝ポリマーとする
Figure 0005114923
(ここで、R1は水素原子またはメチル基、R2は炭素原子数1〜12個のアルキル基を表す。)
数平均分子量2〜50万のアクリル樹脂(C)と、エポキシ樹脂、および、イミダゾール化合物またはスルホニウム塩化合物のいずれかを含む接着剤組成物を提供する。
本発明の接着剤組成物は、フィラーや繊維で強化されたポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの熱可塑性または熱硬化性プラスチック、アルミニウム、銅、鉄、チタンなどの金属に対し優れた接着力を示し、耐水性、耐アルカリ性、耐熱性に優れてバランスのとれた構造接着剤となるものである。
ことさら、本発明の接着剤組成物は、炭素繊維強化で強化された熱可塑性または熱硬化性プラスチックの接着、および炭素繊維強化で強化された熱可塑性または熱硬化性プラスチックとアルミニウム、鉄、チタンなどの金属との接着に好適な接着剤組成物である。
本発明の接着剤組成物は、常態での接着性に優れるのはもちろんであるが、高温高湿度などの過酷な環境に置かれた場合でも接着剤の外観変化、被着体の外観変化、劣化を伴うことなく、かつ初期と変わらず良好な接着性が維持され、発揮される。
本発明は、(1)分子鎖中に下記一般式で示されるユニットを有し、
Figure 0005114923
(ここで、R1は水素原子またはメチル基、mは0または1〜5の整数から選択される異なる2個以上の数値からなる。)
さらに、下記一般式で示されるユニットを有する
Figure 0005114923
(ここで、R3は炭素原子数1〜4個のアルキル基、nは1〜10の整数を表す。)
アクリル共重合体(A)を幹ポリマーとし、
(2)分子鎖中に下記一般式で示されるユニットを有するアクリル共重合体(B)を枝ポリマーとする
Figure 0005114923
(ここで、R1は水素原子またはメチル基、R2は炭素原子数1〜12個のアルキル基を表す。)
数平均分子量2〜50万のアクリル樹脂(C)と、エポキシ樹脂、および、イミダゾール化合物またはスルホニウム塩化合物のいずれかを含む接着剤組成物である。
本発明の接着剤組成物では、アクリル樹脂(C)は、アクリル共重合体(A)を幹ポリマー(以下、マトリックスとも言う)、アクリル共重合体(B)を枝ポリマー(以下、ブランチとも言う)とするグラフト共重合体である。
本発明のアクリル樹脂(C)(グラフト共重合体)は、好ましくは、下記構造式で示される酸性官能基含有単量体混合物、
Figure 0005114923
(ここで、R1は水素原子またはメチル基、mは0または1〜5の整数から選択される異なる2個以上の数値からなる。)
およびグリシジルエーテル基含有単量体(以下VBGEとも言う)
Figure 0005114923
(ここで、R3は炭素原子数1〜4個のアルキル基、nは1〜10の整数を表す)
とこれと共重合可能なアクリル単量体(以上、マトリックス)、および、(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー(以下、MMともいう)(以上、ブランチ)との共重合により製造することができる(マクロモノマー法によるグラフト共重合体の製造方法の参考文献;「ラジカル重合ハンドブック」蒲池幹治、遠藤剛監修、エヌ・ティー・エス発行(1999)、p156−p158、p191−p194)。
下記構造式で示される酸性官能基含有単量体混合物は、式中mが0または1〜5の整数から任意に選択される2種類以上の単量体混合物である。
Figure 0005114923
(ここで、R1は水素原子またはメチル基、mは0または1〜5の整数から選択される異なる2個以上の数値からなる。)
酸性官能基含有単量体混合物としては、アクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、アクリル酸トリマー、メタクリル酸、β−カルボキシエチルメタクリレート、メタクリル酸トリマーなどから任意に選択される2種類以上の単量体混合物が例示される。
酸性官能基含有単量体混合物は、例えばm=0の単量体を20%、m=1の単量体を40%、m=2〜5の単量体を40%で混合し共重合されるとき、例えば、仮にm=0の単量体(例えば、アクリル酸)を単独で使用した場合に比較し、優れた機能を発揮する傾向が強い。酸性官能基含有単量体混合物が共重合された場合には、アクリル樹脂の被着体への粘着性、接着性が飛躍的に向上する傾向が見られる。もっとも強調すべきことは、例えばm=0の単量体(例えば、アクリル酸)が単独で用いられた場合には、接着剤の耐水性、耐湿熱性がきわめて劣悪となる傾向が見られるが、例えば先のような混合物(m=0 20%、m=1 40%、m=2〜5 40%)(酸性官能基含有単量体混合物)として共重合された場合には、被着体への接着性、粘着性がきわめて良好となるばかりか、長期に渡る耐水性試験、耐湿熱性試験でも何らの変化を起こすことなく接着剤の優れた透明性、接着性、粘着性は試験前と同等以上に維持され、発揮される。
酸性官能基含有単量体混合物は、アクリル樹脂(C)の酸価が、好ましくは1〜50mgKOH、より好ましくは1.2〜35mgKOH、さらに好ましくは1.5〜20mgKOHとなるよう共重合されるのが望ましい。アクリル樹脂(C)の酸価が1mgKOH未満の場合には、被着体への接着性、粘着性が悪化する場合があり、また耐水性、耐湿熱性が悪くなる傾向が見られる。アクリル樹脂(C)の酸価が50mgKOHを超える場合には、耐湿熱性、耐水性が悪化し、接着層が膨潤、白化、剥離を起こしやすくなる傾向が見られる。
グリシジルエーテル基含有単量体(VBGE)単量体としては、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルブチルグリシジルエーテルなどが例示される。これらの単量体は単独でも、もしくは2種類以上の混合物であってもより。
グリシジルエーテル基含有単量体(VBGE)は、アクリル共重合体(A)中に好ましくは0.02〜50重量%、より好ましくは0.2〜30重量%、さらに好ましくは0.2〜25重量%共重合されるのが望ましい。グリシジルエーテル基含有単量体(VBGE)の共重合量が0.02重量%未満の場合には、アクリルポリマー間でのネットワーク、エポキシ樹脂とのグラフトが少なくなる傾向が見られ、接着剤の機械的強度や接着力がやや不足する場合が見られる。グリシジルエーテル基含有単量体(VBGE)が50重量%を超えて共重合される場合には、接着剤が硬化する際に接着剤に硬化歪みが残りやすくなる傾向が見られ、接着剤の割れやひけが見られる場合がある。
酸性官能基含有単量体混合物、グリシジルエーテル基含有単量体(VBGE)と共重合できるアクリル単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、p−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルアクリレート、アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、p−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルメタクリレート、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどが例示される。これらのアクリル単量体は単独でも、もしくは2種類以上の混合物であってもよい。これらのアクリル単量体のなかでは、エステル基の炭素原子数が4〜12個のものが望ましい傾向が見られ、接着性、粘着性、耐水性が向上する場合がある。
本発明では、アクリル単量体は、好ましくはエステル基の炭素原子数が4〜12個のアクリル酸アルキルエステルを60〜98重量%含むものであることが望ましい。この場合に、接着剤がより強靱になり、耐衝撃性、剪断接着性、剥離強度が向上する傾向が見られる。
エステル基の炭素原子数が4〜12個のアクリル酸アルキルエステルの共重合量が60重量%未満の場合には、接着剤が脆くなる傾向が見られ、例えば、接着剤が動力を伝達するクランクなどに使用された場合、加えられた大きいトルクを伝達する際の衝撃で接着破壊を起こす場合も見られる。エステル基の炭素原子数が4〜12個のアクリル酸アルキルエステルの共重合量が98重量%を超える場合には、接着剤としての機能発揮が困難となる場合があり、柔らかい粘着剤となり、経時で接着面にズレや剥がれを起こしやすくなる傾向が見られる。
本発明の接着剤組成物では、アクリル樹脂(C)は、好ましくは、酸性官能基含有単量体混合物とグリシジルエーテル基含有単量体(VBGE)、これらと共重合可能なアクリル単量体、および、より好ましくは(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー(以下、MMともいう)との共重合により製造することができる。
本発明の接着剤組成物で好ましく用いられる(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー(MM)としては、ポリメタクリル酸メチルマクロモノマー(例えば、東亞合成(株)製アロンマクロマーAA−6)、ポリアクリル酸ブチルマクロモノマー(例えば、東亞合成(株)製アロンマクロマーAB−6)、ポリアクリル酸2−エチルヘキシルマクロモノマー(例えば、東亞合成(株)製アロンマクロマーAJ−7)、ポリメタクリル酸メチル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)マクロモノマー(例えば、東亞合成(株)製アロンマクロマーAA−714)などが例示される。これらの(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー(MM)は単独でも、もしくは2種類以上の混合物であってもよい。
ラジカル重合で使用されるマクロモノマーは、分子鎖の片末端に(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性オリゴマーまたはポリマーを指す。一般的にその数平均分子量は数千から数万程度である(参考文献;(1)「ラジカル重合ハンドブック」蒲池幹治、遠藤剛監修,エヌ・ティー・エス発行(1999),p189−p194、(2)「反応性高分子とその応用展開」,(株)東レリサーチセンター発行(1998),p48−p56、p231−232)。
本発明では、(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマーとは、分子鎖片末端にラジカル重合性(メタ)アクリロイル基を有する高分子またはオリゴマーを指し、分子鎖(オリゴマーまたはポリマー)が、
(1)ポリ(メタ)アクリル酸エステルからなるもの、および
(2)(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なラジカル重合性単量体、例えば、スチレン、アクリロニトリルなど、が共重合されたオリゴマー、コポリマーからなるものを指す。
本発明のアクリル樹脂(C)を含む接着剤組成物は、ポリマー粘性(レオロジー)が制御され、グラフト共重合体固有の自己構造化機能とも相まって、被着体へのなじみ、ヌレ性、浸透性が大きく改善、向上する傾向が強く見られる。また、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー(MM)が本来有する機械的性質が反映されて、接着剤の強靱性が向上する傾向が見られる。この結果、被着体の接着性が向上し、被着体が凸凹表面を有している場合または複雑な形状をしていたとしても被着体の接着力が向上し、同時に耐衝撃性が向上し、クランクなどの駆動部に使用される場合にはエネルギー伝達効率が改善される傾向が見られる。さらにまた、良好ななじみ性、ヌレ性、浸透性は、接着剤と被着体界面の空気層を排除し、良好な透明性と低ヘイズである接着物品を与える傾向が見られる。
さらに驚くべきことは、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー(MM)の共重合によりアクリル樹脂(C)がグラフト共重合体化されることで、常態では、さらに配合されるポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂などと酸性官能基含有単量体混合物との不用意な反応性が制御され、貯蔵安定性に十分に優れた接着剤が製造されることである。また、適切な硬化反応条件下では、さらに配合されるポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂などと酸性官能基含有単量体混合物との反応性が著しく促進され、強靱で、耐熱性、耐湿熱性、耐衝撃性に優れた接着製品が得られる傾向が見られる。
(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー(MM)は、酸性官能基含有単量体混合物およびグリシジルエーテル基含有単量体(VBGE)由来の連鎖を有するアクリル樹脂マトリックス100重量部に対し好ましくは0.2〜20重量%、より好ましくは0.5〜12重量%、さらに好ましくは0.5〜8重量%導入されるのが望ましい。(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー(MM)の導入量が0.2重量%未満の場合には、ポリマー粘性制御が不十分である傾向が見られ、被着体へのなじみ、ヌレ性、浸透性が低下して、接着力がやや低下する場合がある。(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー(MM)導入量が20重量%を超える場合には、接着力が低下し、剥離しやすくなる傾向が見られる。
本発明では、分子鎖中に下記一般式で示されるユニットを有するアクリル共重合体(A)
Figure 0005114923
(ここで、R1は水素原子またはメチル基、mは0または1〜5の整数から選択される異なる2個以上の数値からなる。)
Figure 0005114923
(ここで、R3は炭素原子数1〜4個のアルキル基、nは1〜10個の整数を表す)。
のガラス転移温度(以下、Tgとも言う)は、好ましくは−80〜30℃、より好ましくは−55〜10℃、さらに好ましくは、−55〜0℃であることが推奨される。アクリル共重合体(A)のTgが−80℃未満の場合には、ポリマー凝集力が小さくなりすぎ、接着剤が容易に凝集破壊を起こしやすくなって接着力の低下を招く傾向が見られる。アクリル共重合体(A)のTgが30℃を超える場合には、接着剤の靭性が損なわれ、耐衝撃性が悪化する傾向が見られる。
ここで、本発明では、ガラス転移温度(Tg)は、「高分子の力学的性質」(J.E.Nielsen著、小野木重治訳)(化学同人、1975年発行)に記載されている方法(p15〜p27)に準じて算出した。すなわち、
1/Tg=Σ(wi/Tgi)
(ここで、Tgはアクリル樹脂のTg(絶対温度 K)、Wiはi単量体の共重合量(重量分率)、Tgiはi単量体から作製されたホモポリマーのガラス転移温度を表す。)
により算出した。また、共重合する単量体から作製されるホモポリマーのTgは前記文献「高分子の力学的性質」に記載されている値、およびアクリル単量体販売会社(例えば、三菱レイヨン、東亞合成、日本触媒工業、日本油脂など)カタログ記載値を採用し、用いた。
アクリル樹脂(C)の数平均分子量(以下、Mnとも言う)は2〜50万である。アクリル樹脂(C)の数平均分子量は、好ましくは、3〜35万、さらに好ましくは5〜30万であるのが望ましい。アクリル樹脂(C)のMnが2万未満の場合には、ポリマー凝集力が弱く、接着力の低下、耐衝撃性の悪化をまねく。アクリル樹脂(C)のMnが50万を超える場合には、接着剤の粘性が強くなりすぎ、被着体へのヌレ性、なじみが悪化し、接着力が低下する。
ここで、本発明では、アクリル樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(例えば、東ソー(株)製「HLC−8220 GPC」システム)を使用し、分子量が定められたポリスチレンスタンダード(例えば、ジーエル サイエンス社製の標準POLYSTYRENE)を分子量標準として測定した。
本発明のアクリル樹脂(C)は、好ましくは、ラジカル共重合で製造され、塊状重合、懸濁重合、分散重合、沈殿重合、溶液重合、乳化重合などいずれの重合方法で実施されても目的を達成することができる。
製造されたポリマーを使っての後工程を考慮した場合には、塊状重合、分散重合、沈殿重合、溶液重合などの無溶剤系または非水溶媒系で実施されるのが望ましい。
アクリル樹脂(C)の製造は、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガス置換された重合系で実施されるのが望ましい。この際、重合系の酸素濃度は、好ましくは5vol%以下、より好ましくは2vol%以下、さらに好ましくは0.5vol%以下であることが望ましい。重合系中の酸素濃度が5vol%を超える場合には、ラジカル重合反応が系中の酸素の影響を受け、十分に進行しない場合が見られる。すなわち、重合速度が著しく遅くなり、酸素によるテロメリゼーションを受け低重合度のポリマーが多く生成する場合があり、接着剤の着色や耐水性の低下を招く傾向が見られる。
アクリル樹脂(C)の製造は、重合温度が好ましくは、50〜150℃、より好ましくは、60〜140℃で実施されるのが望ましい。重合温度が50℃未満では、重合率が上がりにくく、製造にきわめて長時間を要する場合がある。さらに懸念されることは、製造されたポリマーの耐熱性が悪化する場合があることである。150℃を超えて重合が実施される場合には、ポリマー末端ラジカルの安定性が低下する傾向にあり、希望する分子量、分子量分布を有するポリマーの製造が困難となる場合がある。
溶液重合の際溶媒として使用できる有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、などが例示される。これらの有機溶媒は単独でも、2種類以上の混合物であってもよい。
これらの溶媒の中では、ポリマーの着色や耐熱性の低下を予防する上で、また接着剤を製造する際脱溶媒を必要とする場合には、酢酸エチル、酢酸n−プロピルのような連鎖移動定数の小さいものが推奨される。
本発明では、アクリル樹脂(C)は、望ましくはヒンダードアミン化合物と有機過酸化物の存在下に酸性官能基含有単量体混合物を含むアクリル単量体、および(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー(MM)をラジカル共重合し製造されるのが推奨される。より望ましくは、ヒンダードアミン化合物と有機過酸化物との反応生成物の存在下に、酸性官能基含有単量体混合物を含むアクリル単量体、および(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー(MM)をラジカル共重合し製造されるのが望ましい。
ラジカル共重合反応はリビングラジカル重合機構で進行し、(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー(MM)を共重合するにもかかわらず分子量分布が狭く、高分子量のアクリル樹脂(C)が製造できる。本製造方法によって製造されたアクリル樹脂(C)を使用したとき、接着剤のレオロジーコントロールが容易で最適化され、塗布作業性が改善されるばかりでなく、被着体へのヌレ性、浸透性が改善され、接着剤の強靱性、機械的強度、耐熱性、接着力が向上する傾向が強く見られる。
ヒンダードアミン化合物としては、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、N−メチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、N−メチル−4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが例示される。該ヒンダードアミン化合物は単独でも、もしくは2種類以上の混合物であってもよい。
有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどが例示される。該有機過酸化物は単独でも、もしくは2種類以上の混合物であってもよい。
ヒンダードアミン化合物と有機過酸化物とは、ヒンダードアミン化合物1モルに対して有機過酸化物が、好ましくは1×10−4モル〜2.5モル、より好ましくは5×10−4モル〜2.0モルの割合となるよう使用される。
有機過酸化物の使用量が、ヒンダードアミン化合物1モルに対して1×10−4モル未満の場合には、重合率が上がりにくくなり、重合効率が悪く、また分子量も小さいものしかできなくなる傾向にある。
有機過酸化物の使用量が、ヒンダードアミン化合物1モルに対して2.5モルを超えて使用される場合には、重合のリビング性が失せられ、低分子量ポリマーが大きい割合で生成する傾向にあり、アクリル樹脂(C)の分子量分布が広がる傾向が見られる。
ヒンダードアミン化合物は、酸性官能基含有単量体混合物、グリシジルエーテル基含有単量体(VBGE)を含むアクリル単量体、および(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー(MM)の合計量100重量部に対して、好ましくは0.002〜20.0重量%、より好ましくは0.005〜15.0重量%、さらに好ましくは0.02〜12.0重量%使用されるのが望ましい。
ヒンダードアミン化合物の使用量が、酸性官能基含有単量体混合物、グリシジルエーテル基含有単量体(VBGE)を含むアクリル単量体、および(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー(MM)の合計量100重量部に対して、0.002重量%未満の場合には、重合率が上がりにくく、重合に長時間を必要とし実用性が失われる傾向にある。
ヒンダードアミン化合物の使用量が、酸性官能基含有単量体混合物、グリシジルエーテル基含有単量体(VBGE)を含むアクリル単量体、および(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー(MM)の合計量100重量部に対して、20.0重量%を超えて使用される場合には、ポリマーに着色が見られる場合があり、実用上問題になる場合がある。
ヒンダードアミン化合物と有機過酸化物との反応生成物は、例えば、窒素ガス、ヘリウムガスなどの不活性ガス置換された容器中で、ヒンダードアミン化合物と有機過酸化物とを混合するだけで製造することができる。
以下に、アクリル樹脂(C)製造の好ましい態様の一例を示す。当然ながら、本発明がこれに限定されるものではない。
窒素ガス吹き込み管、温度センサー、コンデンサー、撹拌装置がついたフラスコに重合溶媒(例えば酢酸エチル/酢酸n−プロピル(80/20重量比)の混合溶媒)を仕込む。窒素ガスをフラスコ底部に導入し、バブリングしながら30分間保持する。この後、フラスコ内の酸素濃度を酸素濃度計「XO−326ALA」(新コスモス電機(株)の酸素濃度計)で測定し、酸素濃度が0.5vol%未満であることを確認する。
窒素ガスのバブリングは継続したまま、フラスコに所定量のヒンダードアミン化合物、例えば4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを仕込み、均一になるよう溶解する。溶解ができれば、有機過酸化物、例えば過酸化ベンゾイルをヒンダードアミン化合物と等モル量仕込み攪拌を継続する。昇温を開始し、30分間で80℃に昇温、以下80℃に温度を保持する。
モノマー、例えばメタクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸n−ブチル/酸性官能基含有単量体混合物(例えば、下記構造式で、m=0 20%、m=1 40%、m=2および3 40%の混合物)、
Figure 0005114923
(ここで、R1は水素原子またはメチル基、mは0または1〜5の整数から選択される異なる2個以上の数値からなる。)
グリシジルエーテル基含有単量体(VBGE)(例えば、ビニルベンジルグリシジルエーテル)、「アロンマクロマー AA−6」(東亞合成(株)製メタクリル酸メチルマクロモノマー)(=5/86/1/5/3;重量比)の混合モノマー、を2時間でフラスコ内に滴下し、滴下終了直後からサンプリングを行い、分子量と重合率を測定する。重合率が100%になった時点で重合を終了し、冷却を開始する。
以上によりアクリル樹脂(C)が製造できる。
クリル樹脂(C)は、単独で使用することもでき、あるいは、アクリル樹脂(C)に硬化剤などを配合して使用することもできる。
下記にその例を記載する。
(1)アクリル樹脂(C)を直接被着体の一方に塗布した後、室温〜150℃程度の温度で乾燥して有機溶剤を除去する。これにもう一方の被着体を熱プレスなどにより圧着し、必要であれば50〜150℃で加熱して、接着物品を製造する。
(2)アクリル樹脂(C)に、例えば、アクリル酸2−エチルヘキシル、エポキシジアクリレートオリゴマーなどのラジカル重合性希釈剤、架橋剤を添加し均一に混合する。さらに重合開始剤として、例えばクメンヒドロペルオキシド、オクチル酸コバルトなどのレドックス開始剤を添加してラジカル硬化性接着剤を製造する。レドックス開始剤に変え、ミヒラーケトンなどの光重合開始剤を添加すれば、光硬化型の接着剤を製造することができる。
(3)アクリル樹脂(C)に、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシランとビスフェノールA型エポキシ樹脂などの硬化触媒、硬化剤を添加して2液硬化型接着剤を製造する。
本発明の接着剤組成物は、アクリル樹脂(C)の他にも、タルク、ベントナイト、モンモリロナイト、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ石粉、ガラス粉、マイカ、チタン酸カリウムウィスカー、グラスウール、炭素繊維などの補強、充填用フィラー類、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピルトリエトキシシランなどのシランカップリング剤などを配合することができる。
本発明の接着剤組成物は、被着体に塗布し別の被着体を圧着し、あるいはシート状にしたものを貼合して、好ましくは加熱処理することで接着物品を得ることができる。また、接着剤を剥離可能な保護フィルム上に塗布し、好ましくは適切な温度、好ましくは60〜120℃、で適切な時間、好ましくは30秒〜10分、加熱しBステージを経た後、これを被着体に圧着した後、加熱硬化し接着物品を得ることもできる。
本発明の接着剤組成物は、アクリル樹脂(C)、エポキシ樹脂、および、イミダゾール化合物またはスルホニウム塩化合物のいずれか少なくとも1種を含む。本発明の接着剤組成物は、硬化性に優れ、接着強度が優れたものとなる傾向が見られる。本発明の接着剤組成物は、好ましくは、イミダゾール化合物またはスルホニウム塩化合物のいずれかを含むが、イミダゾール化合物とスルホニウム塩化合物は同時に含まれない。
接着剤組成物が、アクリル樹脂(C)、エポキシ樹脂、および、イミダゾール化合物またはスルホニウム塩化合物のいずれかを含むものであるとき、グリシジルエーテル基含有単量体(VBGE)は、重要で有用な機能、作用を発現する。
すなわち、アクリル樹脂鎖同士の架橋(以下アクリルポリマーネットワークとも言う)点として作用し、アクリル樹脂とエポキシ樹脂とが硬化時に相互侵入高分子網目構造(以下IPNとも言う)を形成する際に、アクリルポリマー鎖とエポキシポリマー鎖との強固な絡み合いを促進し、接着剤の機械的強度、強靱性、耐衝撃性を向上する傾向が強く、接着剤、特に構造接着剤としての有用性を高める。
さらにまた、グリシジルエーテル基含有単量体(VBGE)は、接着剤組成物が、アクリル樹脂(C)、エポキシ樹脂、および、イミダゾール化合物またはスルホニウム塩化合物のいずれかを含むものである場合、接着剤が硬化する際、アクリル樹脂とエポキシ樹脂とのグラフト点として作用し、アクリル樹脂、エポキシ樹脂間に適度な相溶性と同時に非相溶性を提供し、またこれによりアクリル樹脂、エポキシ樹脂を一体化し、機械的強度、接着強度の高い構造接着剤を提供する。さらに適度な相溶性は接着剤の透明性を高め、光学用塗への適用性をも可能とする。
さらにまた、接着剤組成物が、アクリル樹脂(C)、エポキシ樹脂、および、イミダゾール化合物またはスルホニウム塩化合物のいずれかを含むものである場合、アクリル共重合体(A)中に下記一般式で示される連鎖と
Figure 0005114923
(ここで、R1は水素原子またはメチル基、mは0または1〜5の整数から選択される異なる2個以上の数値からなる。)
下記一般式で示される連鎖
Figure 0005114923
(ここで、R3は炭素原子数1〜4個のアルキル基、nは1〜10個の整数を表す。)
が同時に共存することで、接着剤の深部硬化性が高まり、接着剤の機械的強度が改善され、より強い接着力を発揮する傾向が見られる。
一方で、接着剤組成物が、アクリル樹脂(C)、エポキシ樹脂、および、イミダゾール化合物またはスルホニウム塩化合物のいずれか少なくとも1種を含むものである場合、仮に、アクリル共重合体中(A)に下記一般式で示される連鎖が存在せず、
Figure 0005114923
(ここで、R3は炭素原子数1〜4個のアルキル基、nは1〜10個の整数を表す)。
下記一般式で示される連鎖のみからなる場合には、
Figure 0005114923
(ここで、R1は水素原子またはメチル基、mは0または1〜5の整数から選択される異なる2個以上の数値からなる。)
接着剤の深部硬化性が損なわれ、被着体と接する接着剤界面は十分に硬化が進み強い接着強度を発揮するが、接着剤内面は半硬化状態(いわゆるBステージ)あるいは未硬化状態のままとなり、接着剤が凝集破壊を起こしやすくなる。さらにまた、接着剤層の膜厚が薄い場合(例えば100μm以下)、被着体として金属同士を接合する場合に顕著となる。以上の通り、接着剤組成物が、アクリル樹脂(C)、エポキシ樹脂、および、イミダゾール化合物またはスルホニウム塩化合物のいずれかを含むものである場合、アクリル共重合体(A)中に、上記2つの一般式で示される連鎖が同時に共存することがきわめて重要である。
接着剤組成物が、アクリル樹脂(C)、エポキシ樹脂、および、イミダゾール化合物またはスルホニウム塩化合物のいずれかを含むものである場合、フィラーの分散性、分散安定性を飛躍的に向上し、例えばモンモリロナイトなどのナノサイズ機能性フィラーのナノ分散をも可能とし、接着剤の機械的強度、耐熱性、耐湿熱性、耐水性などを向上する作用がある。
接着剤組成物が、アクリル樹脂(C)、エポキシ樹脂、および、イミダゾール化合物またはスルホニウム塩化合物のいずれかを含むものである場合、エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、異節環状型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂など分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物が例示され、これらのエポキシ樹脂は単独でも、もしくは2種類以上の混合物であってもよい(参考文献;「14705の化学商品(2005年発行)」(化学工業日報社、p1126〜p1135)。
これらのエポキシ樹脂の中では、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のような芳香族系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂が、接着剤の貯蔵安定性、硬化性、接着強度の点で望ましく、推奨される。ビスフェノールA型エポキシ樹脂のような芳香族系エポキシ樹脂を使用した場合には、硬化温度がやや高め(80〜150℃程度)になり、硬化時間がやや長め(10〜120分程度)になる傾向が見られるが、接着剤の貯蔵安定性に優れ1液型接着剤の設計が可能となる場合が多い。脂環式エポキシ樹脂を使用した場合には、比較的低温(60〜120℃程度)で速硬化性(1分〜120分程度)を発揮する接着剤が設計できるが、貯蔵安定性にやや不安が残るため(ポットライフは23℃で1週間程度/接着剤200gスケール)、2液型として設計するのが望ましい。いずれの場合にも、接着剤が硬化する際の収縮(線膨張係数、体積膨張係数)が少なく、ひけ、接着不良などの不具合を最小限に回避できる。
接着剤組成物が、アクリル樹脂(C)、エポキシ樹脂、および、イミダゾール化合物またはスルホニウム塩化合物のいずれかを含むものである場合、エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂とアクリル樹脂(C)の合計量を100重量部として、エポキシ樹脂は好ましくは5〜98重量%、より好ましくは10〜85重量%、さらに好ましくは20〜80重量%配合されるのが望ましい。エポキシ樹脂の配合量が5重量%未満の場合には、接着剤のエポキシ樹脂による架橋割合が低く、接着強度、接着剤の機械的性質に満足できるものが得られない場合が見られる。エポキシ樹脂の配合量が98重量%を超える場合には、アクリル樹脂(C)が有する高分子量、高い強靱性、IPN化のためのアクリルポリマーネットワーク機能が十分に活かされることがなく、接着剤が脆くなる傾向が見られ、機械的強度、接着力などが不足する場合がある。
接着剤組成物が、アクリル樹脂(C)、エポキシ樹脂、および、イミダゾール化合物またはスルホニウム塩化合物のいずれかを含むものである場合、アクリル樹脂(C)とエポキシ樹脂を所定割合で配合した後、これを架橋させるための硬化剤が配合される。
接着剤組成物が、アクリル樹脂(C)、エポキシ樹脂、および、イミダゾール化合物またはスルホニウム塩化合物のいずれかを含むものである場合、硬化剤は、イミダゾール化合物、または、芳香族スルホニウム塩から選択される。
これらの硬化剤は、接着剤の貯蔵安定性、ポットライフと硬化特性のバランスを取る上で機能的に作用する傾向が見られる。ひいては、1液型として低中温度域(−20〜40℃程度)での長期貯蔵安定性を有しながら、中高温域(80〜150℃程度)での安定で良好な硬化特性を発揮する傾向が見られる。
これらの硬化剤は、アクリル樹脂とエポキシ樹脂の合計量に対して、好ましくは、0.2〜30phr、より好ましくは、0.5〜20phr、さらに好ましくは、1〜15phr配合されるのが望ましい。硬化剤の配合量が0.2phr未満の場合には、貯蔵安定性は飛躍的に改善されるものの硬化性が極端に悪くなる傾向が見られ、接着剤の機械的強度、接着力が低下する場合が見られる。硬化剤の配合量が30phrを超える場合には、貯蔵安定性が悪化する傾向が見られ、またポットライフ調整が困難となる場合がある。さらに、硬化の際、硬化が急激に進むため接着剤に大きい歪みが生じ接着性が悪化する傾向が見られる。
本発明で硬化剤として使用されるイミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールなどが例示される。これらのイミダゾール化合物は単独でも、もしくは2種類以上の混合物であってもよい。
本発明で硬化剤として使用されるスルホニウム塩化合物としては、下記構造式で示されるものが例示される。
Figure 0005114923
Figure 0005114923
(ここで、R3、R4、R5は炭素原子数1〜12個のアルキル基を表す。)
Figure 0005114923
Figure 0005114923
Figure 0005114923
Figure 0005114923
スルホニウム塩化合物としては、メチルフェニル−ジメチル−スルホニウムのヘキサフルオロアンチモン塩、エチルフェニル−ジメチル−スルホニウムのヘキサフルオロアンチモン塩、メチルフェニル−ジメチル−スルホニウムのヘキサフルオロホスフェート塩などが例示される。これらのスルホニウム塩は単独でも、もしくは2種類以上の混合物であってもよい。
これらの硬化剤を使用し架橋反応が実施される場合には、接着剤は主としてエーテル結合で架橋構造を形成するため、耐水性や耐薬品性に優れたものとなる傾向が見られる。
本発明のアクリル樹脂(C)、エポキシ樹脂、および、イミダゾール化合物またはスルホニウム塩化合物のいずれかを含む接着剤組成物は、分子鎖中に酸性官能基含有単量体混合物とビニルベンジルグリシジルエーテル(VBGE)に由来するユニットを併有するアクリル樹脂(C)、エポキシ樹脂、硬化剤を混合することにより製造できる。
製造の一例を挙げれば、溶液重合で作製された分子鎖中に酸性官能基含有単量体混合物とビニルベンジルグリシジルエーテル(VBGE)に由来するユニットを併有するアクリル樹脂(C)を真空脱溶媒可能なプラネタリーミキサーに仕込み、これに所定量のエポキシ樹脂を仕込んで攪拌、混合する。この後、真空脱溶媒を行い、接着剤の無溶剤化を行う。これに硬化剤を所定量仕込み、さらに攪拌、混合して接着剤を製造する。
本発明のアクリル樹脂(C)、エポキシ樹脂、および、イミダゾール化合物またはスルホニウム塩化合物のいずれか少なくとも1種を含む接着剤組成物では、分子鎖中に酸性官能基含有単量体混合物とビニルベンジルグリシジルエーテル(VBGE)に由来するユニットを併有するアクリル樹脂(C)は分子鎖中に下記構造式で示される連鎖、
Figure 0005114923
(ここで、R1は水素原子またはメチル基、mは0または1〜5の整数から選択される異なる2個以上の数値からなる。)
下記構造式で示される連鎖
Figure 0005114923
(ここで、R3は炭素原子数1〜4個のアルキル基、nは1〜10個の整数を表す。)
を有するアクリル共重合体(A)を幹ポリマーとし、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー(MM)に由来するポリ(メタ)アクリル酸エステルを枝ポリマーとするグラフト共重合体である。グラフト共重合体は幹ポリマーと枝ポリマーによる分子内非相溶構造の影響で幹ポリマーと枝ポリマーが相互に分離独立した分散構造を取ることが知られている(参考文献;「ポリマーアロイ」,高分子学会編,東京化学同人(1985),p196−p220)。このため、幹ポリマー/枝ポリマーの適度な非相溶性を有する分子鎖中に酸性官能基含有単量体混合物とビニルベンジルグリシジルエーテル(VBGE)に由来するユニットを併有するアクリル樹脂(C)は高分子量であることと相まってチキソトロピックなレオロジー特性を示し、このため本発明のアクリル樹脂(C)、エポキシ樹脂、および、イミダゾール化合物またはスルホニウム塩化合物のいずれか少なくとも1種を含む接着剤組成物は、適度なチキソトロピー性を示す。また同時に、既述の通り、アクリル樹脂(C)は自己構造化作用も有している。チキソトロピー(またはチクソトロピーとも言う)は、ゾル−ゲル間の変化に関するものであるが、攪拌・振動・ずり速度の増大などによる液体粘度の低下をチキソトロピー流動と呼ぶ(参考文献;「レオロジーの世界」尾崎邦宏著,工業調査会(2004),p114)。
接着剤が適切なチキソトロピー性と自己構造化作用を有するため、被着体が複雑な形状、微細な凹凸を有する材料であっても、接着剤は隅々にまで浸透し、均一な膜厚になりやすいことと相まって、本発明のアクリル樹脂(C)、エポキシ樹脂、および、イミダゾール化合物またはスルホニウム塩化合物のいずれか少なくとも1種を含む接着剤組成物は、点でなく面での強力な接着力を発揮する。
本発明の接着剤組成物は、自動車、バイク、自転車部品用(構造)接着剤として、ゴルフクラブ、釣り竿などのレジャー、スポーツ用品用接着剤として、船舶、航空機用構造接着剤として、その他、接着強度、接着剤の機械的性質、強靱性、耐水性などの耐薬品性が要求される用途に好適に適用されるものである。特に、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)とアルミニウムなどの卑金属を接合する接着剤として使用されるとき、金属の電気腐食から派生する接着破壊抑制し、長期に渡って強力で、強靱な接着部材を提供する。
以下、実施例を持って本発明を詳細に説明する。
なお、実施例、比較例中、特に断りがなければ組成比は重量比を表す。
(1)アクリル樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(例えば、東ソー(株)製「HLC−8220 GPC」システム)を使用し、分子量が定められたポリスチレンスタンダード(例えば、ジーエル サイエンス社製の標準POLYSTYRENE)を分子量標準として測定した。
(2)加熱残分はJIS K 5400−1997に準拠し測定した。
〔構造接着剤としての評価方法〕
(3)接着剤の引張り試験は、JIS K 7113(1995)(プラスチックの引張試験方法)に準拠して行った。引張り速度は300mm/min.とした。
(4)接着試験
1)初期接着試験
a)テストピースの作製 接着剤をアルミニウム板に均一に塗布し(膜厚50μm、塗布面積25mm×25mm)、さらに別のアルミニウム板を接着剤表面に圧着し、特に断りがない場合は120℃で1時間、加熱硬化させた。このテストピースを用い剪断接着力を測定した。
b)試験方法 A−2017Pアルミニウム板(サイズ;長さ50mm、幅25mm、厚さ2mm)を使用し、JIS K 6850(1999)(剛性被着材の引張剪断接着強さ試験方法)に準拠して行った。引張り速度は1.0mm/min.で行い、特に断りがない限り試験温度は23℃とした。
2)耐水試験 (4)−1(a)で作製したテストピースを80℃温水中に72時間浸漬した。この後、(4)−1(b)に従い接着性試験を行った。
〔アクリル樹脂の製造例〕
〔アクリル樹脂(1)の製造〕
窒素ガス吹き込み管、温度センサー、コンデンサー、撹拌装置がついた1リットル四つ口フラスコに重合溶媒として酢酸エチル/酢酸n−プロピル(=50/50)を400g仕込んだ。窒素ガスをフラスコ底部に導入し、バブリングしながら30分間保持した。この後、フラスコ内の酸素濃度を酸素濃度計「XO−326ALA」(新コスモス電機(株)の酸素濃度計)で測定し、酸素濃度が0.2vol%未満であることを確認した。
窒素ガスのバブリングは継続したまま、フラスコに4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを混合モノマーの0.4重量%仕込み、均一になるよう溶解した。溶解ができれば、過酸化ベンゾイルを4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンと等モル量仕込み、昇温を開始する。30分間で80℃に昇温し、以後80℃に温度を保持した。
メタクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸n−ブチル/「β−CEA」(酸性官能基含有単量体混合物、ローヌ・プーラン(株)のモノマー)(下記構造式において、R1=H、m=0(20%)、m=1(40%)、m=2およびm=3(40%)の単量体混合物)
Figure 0005114923
/p−ビニルベンジルグリシジルエーテル(VBGE)/「アロンマクロマーAA−6」(東亞合成(株)製ポリメタクリル酸メチルマクロモノマー)(=5/90/1/3/1)の混合モノマー(「アロンマクロマーAA−6」を除いたTgは−45℃であった)400gを2時間でフラスコ内に滴下し、滴下終了後4時間重合を行った後、室温まで冷却してアクリル樹脂(1)を製造した。
アクリル樹脂(1)はメタクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸n−ブチル/「β−CEA」/VBGEからなるポリマーを幹ポリマーとし、「アロンマクロマーAA−6」のポリマー部分(ポリメタクリル酸メチル)を枝ポリマーとするグラフト共重合体である。アクリル樹脂(1)の重合挙動を図1に示した。
アクリル樹脂(1)は、リビングラジカル重合で製造されていることが分かる。アクリル樹脂(1)の加熱残分は50.3%、酸価は4.0mgKOH、数平均分子量は15万であった。
〔アクリル樹脂(2)の製造〕
窒素ガス吹き込み管、温度センサー、コンデンサー、撹拌装置がついた1リットル四つ口フラスコに重合溶媒として酢酸エチル/酢酸n−プロピル(=50/50)を400g仕込んだ。窒素ガスをフラスコ底部に導入し、バブリングしながら30分間保持した。この後、フラスコ内の酸素濃度を酸素濃度計「XO−326ALA」(新コスモス電機(株)の酸素濃度計)で測定し、酸素濃度が0.2vol%未満であることを確認した。
昇温を開始し、80℃になったら以後重合中は80℃を保持した。
メタクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸n−ブチル/「β−CEA」/p−ビニルベンジルグリシジルエーテル(VBGE)/「アロンマクロマーAA−6」(=5/90/1/3/1)の混合モノマー(「アロンマクロマーAA−6」を除いたTgは−45℃であった)400gにノルマルドデシルメルカプタン(以下、MDMとも言う)(連鎖移動剤)1.2g、α,α−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNとも言う)(重合開始剤)6gを添加し均一になるまで攪拌、溶解した。この混合物を3時間でフラスコ内に滴下し、滴下終了後さらに8時間重合を行った後、室温まで冷却してアクリル樹脂(2)を製造した。
アクリル樹脂(2)は、メタクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸n−ブチル/「β−CEA」/p−ビニルベンジルグリシジルエーテル(VBGE)からなるポリマーを幹ポリマーとし、「アロンマクロマーAA−6」のポリマー部分(ポリメタクリル酸メチル)を枝ポリマーとするグラフト共重合体である。
アクリル樹脂(2)の加熱残分は50.3%、酸価は4.0mgKOH、数平均分子量は2.5万であった。
〔アクリル樹脂(3)の製造〕
窒素ガス吹き込み管、温度センサー、コンデンサー、撹拌装置がついた1リットル四つ口フラスコに重合溶媒として酢酸エチル/酢酸n−プロピル(=50/50)を400g仕込んだ。窒素ガスをフラスコ底部に導入し、バブリングしながら30分間保持した。この後、フラスコ内の酸素濃度を酸素濃度計「XO−326ALA」(新コスモス電機(株)の酸素濃度計)で測定し、酸素濃度が0.2vol%未満であることを確認した。
窒素ガスのバブリングは継続したまま、フラスコに4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを混合モノマーの0.4重量%仕込み、均一になるよう溶解した。溶解ができれば、過酸化ベンゾイルを4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンと等モル量仕込み、昇温を開始する。30分間で80℃に昇温し、以後80℃に温度を保持した。
メタクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸n−ブチル/p−ビニルベンジルグリシジルエーテル(VBGE)(=5/94/1)の混合モノマー(Tgは−45℃)400gを2時間でフラスコ内に滴下し、滴下終了後4時間重合を行った後、室温まで冷却してアクリル樹脂(3)を製造した。アクリル樹脂(3)は、酸性官能基含有単量体混合物が共重合されておらず、グラフト共重合体でもない。アクリル樹脂(3)はアクリル樹脂(1)と同様な重合挙動を示した。
アクリル樹脂(3)は、リビングラジカル重合で製造されていることが分かる。アクリル樹脂(3)の加熱残分は50.3%、数平均分子量は15万であった。
実施例1
溶剤回収トラップが設けられた真空ラインに接続した5Lプラネタリーミキサーにアクリル樹脂(1)400gと「jER 828」(ジャパンエポキシレジン社のビスフェノールA型エポキシ樹脂)200g、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン40gを仕込み、攪拌を行った。(アクリル樹脂/エポキシ樹脂=50/50)攪拌しながら、1300Paに減圧し、接着剤が含有する溶剤をトラップ中に回収した。プラネタリーミキサー内の接着剤が加熱残分98%以上となった時点で真空引きを停止した。これに「サンエイド SI−80L」(三新化学社のスルホニウム塩化合物)を1phr添加し、さらに30分間攪拌を継続して接着剤(1)を製造した。
(接着剤の引張り試験)
接着剤(1)を膜厚が2mmになるようシート状に塗りのばし、120℃で1時間、加熱硬化させた。この硬化接着剤フィルムを3号ダンベルでカットし引張り試験を行った。
試験結果を表1に示した。
(接着力の評価)
(1)初期接着力の評価
接着剤(1)をアルミニウム板に均一に塗布し(膜厚50μm、塗布面積25mm×25mm)、さらに別のアルミニウム板を接着剤表面に圧着し、120℃で1時間、加熱硬化させた。このテストピースを用い剪断接着力を測定した。試験結果を表2に示した。
(2)耐水試験後接着力の評価
(1)で作製したテストピースを80℃温水中に72時間浸漬した。この後、(1)と同様に接着性試験を行った結果、結果を表1に示した。
実施例2
溶剤回収トラップが設けられた真空ラインに接続した5Lプラネタリーミキサーにアクリル樹脂(2)1.2kgと「jER 828」(ジャパンエポキシレジン社のビスフェノールA型エポキシ樹脂)400g、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン100gを仕込み、攪拌を行った。(アクリル樹脂/エポキシ樹脂=60/40)攪拌しながら、1300Paに減圧し、接着剤が含有する溶剤をトラップ中に回収した。プラネタリーミキサー内の接着剤が加熱残分98%以上となった時点で真空引きを停止した。これに「サンエイド SI−80L」(三新化学社のスルホニウム塩化合物)を1phr添加し、さらに30分間攪拌を継続して接着剤(2)を製造した。
これに「キュアゾール2E4MZ」(四国化成社のイミダゾール化合物)を3phr添加し、さらに30分間攪拌を継続して接着剤(3)を製造した。
(接着剤の引張り試験)
接着剤(2)を膜厚が2mmになるようシート状に塗りのばし、120℃で1時間、加熱硬化させた。この硬化接着剤フィルムを3号ダンベルでカットし引張り試験を行った。
試験結果を表1に示した。
(接着力の評価)
(1)初期接着力の評価
接着剤(2)をアルミニウム板に均一に塗布し(膜厚50μm、塗布面積25mm×25mm)、さらに別のアルミニウム板を接着剤表面に圧着し、120℃で1時間、加熱硬化させた。このテストピースを用い剪断接着力を測定した。試験結果を表1に示した。
(2)耐水試験後接着力の評価
(1)で作製したテストピースを80℃温水中に72時間浸漬した。この後、(1)と同様に接着性試験を行った結果、結果を表1に示した。
実施例3
溶剤回収トラップが設けられた真空ラインに接続した5Lプラネタリーミキサーにアクリル樹脂(2)1.2kgと「jER 828」(ジャパンエポキシレジン社のビスフェノールA型エポキシ樹脂)400g、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン100gを仕込み、攪拌を行った。(アクリル樹脂/エポキシ樹脂=60/40)攪拌しながら、1300Paに減圧し、接着剤が含有する溶剤をトラップ中に回収した。プラネタリーミキサー内の接着剤が加熱残分98%以上となった時点で真空引きを停止した。これに「キュアゾール2E4MZ」(四国化成社のイミダゾール化合物)を3phr添加し、さらに30分間攪拌を継続して接着剤(3)を製造した。
(接着剤の引張り試験)
接着剤(2)を膜厚が2mmになるようシート状に塗りのばし、120℃で1時間、加熱硬化させた。この硬化接着剤フィルムを3号ダンベルでカットし引張り試験を行った。
試験結果を表1に示した。
(接着力の評価)
(1)初期接着力の評価
接着剤(3)をアルミニウム板に均一に塗布し(膜厚50μm、塗布面積25mm×25mm)、さらに別のアルミニウム板を接着剤表面に圧着し、120℃で1時間、加熱硬化させた。このテストピースを用い剪断接着力を測定した。試験結果を表1に示した。
(2)耐水試験後接着力の評価
(1)で作製したテストピースを80℃温水中に72時間浸漬した。この後、(1)と同様に接着性試験を行った結果、結果を表1に示した。
実施例4
溶剤回収トラップが設けられた真空ラインに接続した5Lプラネタリーミキサーにアクリル樹脂(2)1.4kgと「ERL−4221」(ユニオンカーバイド社の脂環式エポキシ樹脂)300gを仕込み、攪拌を行った。(アクリル樹脂/エポキシ樹脂=70/30)攪拌しながら、1300Paに減圧し、接着剤が含有する溶剤をトラップ中に回収した。プラネタリーミキサー内の接着剤が加熱残分98%以上となった時点で真空引きを停止した。これに「サンエイド SI−80L」(三新化学社のスルホニウム塩化合物)を1phr添加し、さらに30分間攪拌を継続して接着剤(4)を製造した。
(接着剤の引張り試験)
接着剤(4)を膜厚が2mmになるようシート状に塗りのばし、120℃で1時間、加熱硬化させた。この硬化接着剤フィルムを3号ダンベルでカットし引張り試験を行った。
試験結果を表1に示した。
(接着力の評価)
(1)初期接着力の評価
接着剤(4)をアルミニウム板に均一に塗布し(膜厚50μm、塗布面積25mm×25mm)、さらに別のアルミニウム板を接着剤表面に圧着し、120℃で1時間、加熱硬化させた。このテストピースを用い剪断接着力を測定した。試験結果を表1に示した。
(2)耐水試験後接着力の評価
(1)で作製したテストピースを80℃温水中に72時間浸漬した。この後、(1)と同様に接着性試験を行った結果、結果を表1に示した。
Figure 0005114923
表2から、接着剤(1)、接着剤(2)、接着剤(3)、接着剤(4)は接着剤の機械的強度に優れ、さらに、接着剤(1)、接着剤(2)、接着剤(3)、接着剤(4)は接着性および耐水性試験後の接着力保持性にも優れていることが明らかとなった。以上の結果から、機械的強度の向上、接着性の向上、耐水性の向上に対するグラフト共重合体であるアクリル樹脂(C)の顕著な効果が明らかとなった。
比較例1
溶剤回収トラップが設けられた真空ラインに接続した5Lプラネタリーミキサーにアクリル樹脂(3)1.4kgと「jER 828」(ジャパンエポキシレジン社のビスフェノールA型エポキシ樹脂)300gを仕込み、攪拌を行った。(アクリル樹脂/エポキシ樹脂=70/30)攪拌しながら、1300Paに減圧し、接着剤が含有する溶剤をトラップ中に回収した。プラネタリーミキサー内の接着剤が加熱残分98%以上となった時点で真空引きを停止した。これに「サンエイド SI−80L」を1phr添加し、さらに30分間攪拌を継続して接着剤(6)を製造した。
(接着剤の引張り試験)
接着剤(6)を膜厚が2mmになるようシート状に塗りのばし、120℃で1時間、加熱硬化させた。この硬化接着剤フィルムを3号ダンベルでカットし引張り試験を行った。
試験結果を表2に示した。
(接着力の評価)
(1)初期接着力の評価
接着剤(5)をアルミニウム板に均一に塗布し(膜厚50μm、塗布面積25mm×25mm)、さらに別のアルミニウム板を接着剤表面に圧着し、120℃で1時間、加熱硬化させた。このテストピースを用い剪断接着力を測定した。試験結果を表2に示した。
(2)耐水試験後接着力の評価
(1)で作製したテストピースを80℃温水中に72時間浸漬した。この後、(1)と同様に接着性試験を行った結果、結果を表2に示した。
Figure 0005114923
図1は、アクリル樹脂(1)の重合挙動を示す図である。

Claims (2)

  1. (1)分子鎖中に下記一般式で示されるユニットを有し、
    Figure 0005114923
    (ここで、R1は水素原子またはメチル基、mは0または1〜5の整数から選択される異なる2個以上の数値からなる。)
    さらに、下記一般式で示されるユニットを有する
    Figure 0005114923
    (ここで、R3は炭素原子数1〜4個のアルキル基、nは1〜10の整数を表す。)
    アクリル共重合体(A)を幹ポリマーとし、
    (2)分子鎖中に下記一般式で示されるユニットを有するアクリル共重合体(B)を枝ポリマーとする
    Figure 0005114923
    (ここで、R1は水素原子またはメチル基、R2は炭素原子数1〜12個のアルキル基を表す。)
    数平均分子量2〜50万のアクリル樹脂(C)と、エポキシ樹脂、および、イミダゾール化合物またはスルホニウム塩化合物のいずれかを含む接着剤組成物。
  2. アクリル共重合体(A)が分子鎖中にエステル基の炭素原子数4〜12個のアクリル酸アルキルエステルを60〜98重量%含むものであり、アクリル(C)の酸価が1〜50mgKOHである請求項1に記載の接着剤組成物。
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