JP5109936B2 - 炭素繊維前駆体繊維と炭素繊維の製造方法 - Google Patents
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・紡糸ドラフト=(凝固糸の引き取り速度)/(吐出線速度)
上記の紡糸ドラフトを高めることは、繊維の細径化への寄与も大きい。紡糸ドラフトが5未満では、生産性向上効果が少なく、生産性の観点から紡糸ドラフトが25以下で十分である。
測定しようとするPAN系重合体が濃度0.1重量%でジメチルホルムアミド(0.01N−臭化リチウム添加)に溶解した検体溶液を作製する。作製した検体溶液について、GPC装置を用いて、次の条件で測定したGPC曲線から分子量分布曲線を求め、Z+1平均分子量MZ+1、Z平均分子量Mz、重量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mnを算出する。
・カラム :極性有機溶媒系GPC用カラム
・流速 :0.5ml/分
・温度 :75℃
・試料濾過:メンブレンフィルター(0.45μmカット)
・注入量 :200μl
・検出器 :示差屈折率検出器
Mwは、分子量が異なる分子量既知の単分散ポリスチレンを少なくとも6種類用いて、溶出時間―分子量の検量線を作成し、その検量線上において、該当する溶出時間に対応するポリスチレン換算の分子量を読み取ることにより求める。
紡糸に用いる溶媒50ccに対して紡糸に用いる重合体を1重量%溶解した溶液を5℃の温度に調温する。凝固促進成分を攪拌されたその溶液に徐々に滴下し、温度が25℃に安定し、十分攪拌されたのを確認してから滴下を続ける。沈殿生成を開始して溶液が透明から白濁に変化することを目視で確認し、滴下した凝固促進成分量を測定した。設定する凝固浴の凝固促進成分濃度(%)から、凝固価(g)=滴下した凝固促進成分量(g)/凝固促進成分濃度×100として求めた。測定は3回行い、その平均値を採用した。
JIS R7608(2007年)「樹脂含浸ストランド試験法」に従って求める。測定する炭素繊維の樹脂含浸ストランドは、3、4−エポキシシクロヘキシルメチル−3、4−エポキシシクロヘキシル−カルボキシレート(100重量部)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(3重量部)/アセトン(4重量部)を、炭素繊維または黒鉛化繊維に含浸させ、130℃の温度で30分硬化させて作製する。また、炭素繊維のストランドの測定本数は6本とし、各測定結果の平均値を引張強度とする。本実施例では、3、4−エポキシシクロヘキシルメチル−3、4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレートとして、ユニオンカーバイド(株)製“ベークライト”(登録商標)ERL4221を用いた。
AN95重量部、メタクリル酸1重量部、アクリル酸メチル4重量部、ラジカル開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと略記することもある)0.01重量部、部分鹸化ポリビニルアルコール(重合度1000)1.5重量部、および水290重量部を混合し、それを還流管と攪拌翼を備えた反応容器に入れた。反応容器内の空間部を窒素置換した後、下記の条件(重合条件Aと呼ぶ。)の熱処理を撹拌しながら行い、水系懸濁重合法により重合してPAN系重合体を得た。
[重合条件A]
(1)30℃から70℃へ昇温(昇温速度120℃/時間)
(2)70℃の温度で2時間保持
得られたPAN系重合体粉末を水で十分に洗浄し、乾燥して乾燥ポリマーAを得た。得られた乾燥ポリマーAのMz、MwおよびMnは、それぞれ580万、340万および140万であった。
乾燥ポリマーB100重量部を、攪拌しているジメチルスルホキシド400重量部に投入し、スラリー状とした後、25℃から80℃に昇温し、溶解するまで攪拌し、紡糸溶液を作製した。紡糸溶液を変更した他は、実施例1と同様にして炭素繊維束を得ようとしたが、可紡性が低く、設定紡糸ドラフトを採用することができず、紡糸できなかった。
凝固浴濃度を55重量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を得た。凝固浴中の凝固剤(水)の割合が低下したため、凝固浴液の凝固価が低下した。
溶媒をジメチルスルホキシドからジメチルアセトアミドに変更したこと以外は、比較例2と同様にして炭素繊維束を得た。凝固浴液に用いる溶媒もジメチルアセトアミドに変更した。凝固浴中の凝固剤の割合が低いため、凝固浴液の凝固価は低いものであった。可紡性は高かったものの、製造エネルギーが多く必要であったことと、凝固糸の緻密性が低下したため、その結果として、CF強度が低下した。
凝固浴濃度を60重量%に変更して、凝固価を高めたこと以外は、比較例3と同様にして炭素繊維束を得た。可紡性低下が少なく、かつ、CF物性も向上した。
凝固浴濃度を69重量%に変更して、凝固価を高めたこと以外は、比較例3と同様にして炭素繊維束を得た。可紡性低下が少なく、かつ、CF物性も向上した。
凝固浴濃度を72重量%に変更して、凝固価を高めたこと以外は、比較例3と同様にして炭素繊維束を得た。可紡性低下が少なく、かつ、CF物性も向上した。
溶媒をジメチルスルホキシドからジメチルアセトアミドに変更したこと以外は、比較例1と同様にして紡糸溶液を作製した。実施例4と同様に炭素繊維束を得ようとしたが、可紡性が低く、設定紡糸ドラフトを採用することができなかった。紡糸溶液の溶媒がジメチルアセトアミドにおいても重合体の特定の分子量分布にすることで可紡性が向上することがわかった。
溶媒をジメチルスルホキシドから塩化亜鉛水溶液に変更し、重合体濃度を10重量%に変更し、凝固浴条件を表1に示すように変更し、紡糸口金を変更して吐出量、凝固引取速度を一定にした以外は実施例1と同様にして炭素繊維束を得た。可紡性は高く、CF物性も高かった。
溶媒をジメチルスルホキシドから塩化亜鉛水溶液に変更し、重合体濃度を10重量%に変更し、凝固浴条件を表1に示すように変更し、紡糸口金を変更して吐出量、凝固引取速度を一定にしたこと以外は、比較例1と同様にして紡糸溶液を作製した。比較例1と同様に炭素繊維束を得ようとしたが、乾湿式紡糸をすることができなかった。紡糸溶液の溶媒が塩化亜鉛水溶液においても重合体の特定の分子量分布にすることで可紡性が向上することがわかった。
溶媒をジメチルスルホキシドからチオシアン酸ナトリウム水溶液に変更し、重合体濃度を16重量%に変更し、凝固浴条件を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を得た。可紡性は高く、CF物性も高かった。
溶媒をジメチルスルホキシドからチオシアン酸ナトリウム水溶液に変更し、重合体濃度を16重量%に変更し、凝固浴条件を表1に示すように変更したこと以外は、比較例1と同様にして紡糸溶液を作製した。比較例1と同様に炭素繊維束を得ようとしたが、可紡性が低く、設定紡糸ドラフトを採用することができなかった。紡糸溶液の溶媒がチオシアン酸ナトリウム水溶液においても重合体の特定の分子量分布にすることで可紡性が向上することがわかった。
ポリマーAの重合において、AIBNを0.0025重量部として水系懸濁重合を行い、乾燥ポリマーCを得た。得られた乾燥ポリマーCのMz、MwおよびMnは、それぞれ770万、570万および360万であった。乾燥ポリマーCと乾燥ポリマーBの混合割合を3:97にして、乾燥ポリマーAの代わりに乾燥ポリマーCを用いたこと以外は、実施例4と同様にして炭素繊維束を得た。製糸工程および焼成工程ともに工程通過性は良好であり、得られた前駆体繊維の繊度むらはなく、炭素繊維束のストランド強度は5.5GPaであった。
乾燥ポリマーCと乾燥ポリマーBの混合割合を5:95にしたこと以外は、実施例7と同様にして紡糸溶液を作製した。実施例7と同様にして炭素繊維束を得ようとしたが可紡性が低く、紡糸が困難であった。
凝固浴温度を35℃に変更したこと以外は、実施例4と同様にして炭素繊維束を得た。凝固浴液粘度が低下し、毛羽の発生が若干見られ、かつ、炭素繊維強度が低下した。
凝固浴温度を−5℃に変更したこと以外は、実施例4と同様にして炭素繊維束を得た。
製糸工程・焼成工程とも安定しており、得られた炭素繊維束の品位は良好であった。
紡糸口金を変更して吐出量、凝固引取速度を一定にしたこと以外は、実施例4と同様にして炭素繊維束を得た。紡糸ドラフトが低く、吐出が安定しなかったため、炭素繊維束のストランド強度が若干低下した。
紡糸口金を変更して吐出量、凝固引取速度を一定にした以外は☆実施例4と同様にして炭素繊維束を得た。紡糸ドラフトが高すぎて、吐出が安定しなかったため、炭素繊維束のストランド強度が若干低下した。
紡糸口金を変更して吐出量、凝固引取速度を一定にしたこと以外は、実施例4と同様にして炭素繊維束を得た。吐出が安定し、炭素繊維束のストランド強度が高かった。
紡糸口金、紡糸ドラフト、浴中延伸倍率を5.2に変更して吐出量を一定にしたこと以外は、実施例4と同様にして炭素繊維束を得た。凝固がゆっくり行われたにもかかわらず、凝固糸の繊度が大きかったため、凝固状態が不均一となったため、炭素繊維束のストランド強度が若干低下した。
紡糸ドラフト、乾燥後の延伸倍率を1と変更したこと以外は、実施例4と同様にして炭素繊維束を得た。乾燥後の延伸倍率が低下したことにより前駆体繊維の配向度が低下して、炭素繊維束のストランド強度が若干低下した。
凝固浴濃度を40重量%に変更することで凝固価を変更したこと以外は、実施例6と同様にして炭素繊維束を得ようとしたが、凝固価が高かったため、凝固速度があまりに遅く、凝固できないまま紡糸ガイドに接触したため、単繊維間の融着を発生させ、紡糸できなかった。
ポリマーAの重合において、AIBNを0.025重量部として水系懸濁重合を行い、乾燥ポリマーDを得た。得られた乾燥ポリマーDのMz、MwおよびMnは、それぞれ310万、230万および150万であった。また、AN96重量部、メタクリル酸1重量部、アクリルアミド3重量部の共重合組成で、レドックス系ラジカル開始剤と連鎖移動剤を用いて水系懸濁重合を行い、水洗、乾燥して乾燥ポリマーEを得た。得られた乾燥ポリマーEのMz、MwおよびMnは、それぞれ18万、10万および4万であった。乾燥ポリマーDと乾燥ポリマーEの混合割合を2:98にし、重合体濃度を30重量%にした紡糸溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を得た。製糸工程および焼成工程ともに工程通過性は良好であった。
Claims (7)
- 重量平均分子量Mwが10万〜70万であり、Z平均分子量Mzと重量平均分子量Mwとの比で示される多分散度Mz/Mwが2.7〜6であるポリアクリロニトリル系重合体を5重量%以上30重量%以下の濃度で溶媒に溶解してなる紡糸溶液を乾湿式紡糸するに際し、該紡糸溶液を凝固価が17〜40gである凝固浴条件の凝固浴中に吐出する炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
- Z+1平均分子量MZ+1とMwとの比で示されるMZ+1/Mwが6〜25であるポリアクリロニトリル系重合体を用いる請求項1記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
- 凝固浴液の粘度が7〜12mPa・sである請求項1または2記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
- 凝固浴液に含まれる溶媒がジメチルアセトアミドである請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
- 紡糸溶液を乾湿式紡糸し、乾燥させた凝固糸の単繊維繊度が3.3〜6dtexの凝固糸を得、次いで該凝固糸を延伸倍率2.3〜5倍で延伸して単繊維繊度が1.0〜1.4dtexの延伸糸とする請求項1〜4のいずれかに記載の炭素繊維用前駆体繊維束の製造方法。
- 紡糸溶液を平均孔径が0.15〜0.3mmの紡糸口金から、該紡糸溶液の紡糸ドラフトが7〜30の範囲となるように設定制御にして吐出引き取る請求項1〜5のいずれかに記載の炭素繊維用前駆体繊維束の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法によって得られた炭素繊維用前駆体繊維を、200〜300℃の温度の空気中において耐炎化処理した後、300〜800℃の温度の不活性雰囲気中において予備炭化処理し、次いで1,100〜3,000℃の温度の不活性雰囲気中において炭化処理する炭素繊維の製造方法。
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