以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
図1は、本実施の形態の駆動制御装置を含む建設機械100を示す側面図である。
この建設機械100の下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。また、上部旋回体3には、ブーム4、アーム5、及びバケット6と、これらを油圧駆動するためのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9に加えて、キャビン10及び動力源が搭載される。
「全体構成」
図2は、本実施の形態の駆動制御装置を含む建設機械の構成を表すブロック図である。この図2では、機械的動力系を二重線、高圧油圧ラインを実線、パイロットラインを破線、電気駆動・制御系を一点鎖線でそれぞれ示す。
機械式駆動部としてのエンジン11と、アシスト駆動部としての電動発電機12は、ともに増力機としての減速機13の入力軸に接続されている。また、この減速機13の出力軸には、メインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。
コントロールバルブ17は、本実施の形態の建設機械における油圧系の制御を行う制御装置であり、このコントロールバルブ17には、下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)及び1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9が高圧油圧ラインを介して接続される。
また、電動発電機12には、インバータ18を介してバッテリ19が接続されており、また、バッテリ19には、インバータ20を介して旋回用電動機21が接続されている。
旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回減速機24が接続される。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続される。
操作装置26には、油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及び圧力センサ29がそれぞれ接続される。この圧力センサ29には、本実施の形態の建設機械の電気系の駆動制御を行うコントローラ30が接続されている。
このような本実施の形態の建設機械は、エンジン11、電動発電機12、及び旋回用電動機21を動力源とするハイブリッド型の建設機械である。これらの動力源は、図1に示す上部旋回体3に搭載される。以下、各部について説明する。
「各部の構成」
エンジン11は、例えば、ディーゼルエンジンで構成される内燃機関であり、その出力軸は減速機13の一方の入力軸に接続される。このエンジン11は、建設機械の運転中は常時運転される。
電動発電機12は、力行運転及び回生運転の双方が可能な電動機であればよい。ここでは、電動発電機12として、インバータ18によって交流駆動される電動発電機を示す。この電動発電機12は、例えば、磁石がロータ内部に埋め込まれたIPM(Interior Permanent Magnetic)モータで構成することができる。電動発電機12の回転軸は減速機13の他方の入力軸に接続される。
減速機13は、2つの入力軸と1つの出力軸を有する。2つの入力軸の各々には、エンジン11の駆動軸と電動発電機12の駆動軸が接続される。また、出力軸にはメインポンプ14の駆動軸が接続される。エンジン11の負荷が大きい場合には、電動発電機12が力行運転を行い、電動発電機12の駆動力が減速機13の出力軸を経てメインポンプ14に伝達される。これによりエンジン11の駆動がアシストされる。一方、エンジン11の負荷が小さい場合は、エンジン11の駆動力が減速機13を経て電動発電機12に伝達されることにより、電動発電機12が回生運転による発電を行う。電動発電機12の力行運転と回生運転の切り替えは、コントローラ30により、エンジン11の負荷等に応じて行われる。
メインポンプ14は、コントロールバルブ17に供給するための油圧を発生するポンプである。この油圧は、コントロールバルブ17を介して油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の各々を駆動するために供給される。
パイロットポンプ15は、油圧操作系に必要なパイロット圧を発生するポンプである。この油圧操作系の構成については後述する。
コントロールバルブ17は、高圧油圧ラインを介して接続される下部走行体1用の油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の各々に供給する油圧を運転者の操作入力に応じて制御することにより、これらを油圧駆動制御する油圧制御装置である。
インバータ18は、電動発電機12の力行運転に必要な電力をバッテリ19から電動発電機12に供給するとともに、電動発電機12の回生運転によって発電された電力をバッテリ19に充電するために電動発電機12とバッテリ19との間に設けられたインバータである。
バッテリ19は、インバータ18とインバータ20との間に配設されている。これにより、電動発電機12と旋回用電動機21の少なくともどちらか一方が力行運転を行っている際には、力行運転に必要な電力を供給するとともに、また、少なくともどちらか一方が回生運転を行っている際には、回生運転によって発生した回生電力を電気エネルギーとして蓄積するための電源である。
インバータ20は、上述の如く旋回用電動機21とバッテリ19との間に設けられ、コントローラ30からの指令に基づき、旋回用電動機21に対して運転制御を行う。これにより、インバータが旋回用電動機21の力業を運転制御している際には、必要な電力をバッテリ19から旋回用電動機21に供給する。また、旋回用電動機21が回生運転をしている際には、旋回用電動機21により発電された電力をバッテリ19へ充電する。
旋回用電動機21は、力行運転及び回生運転の双方が可能な電動機であればよく、上部旋回体3の旋回機構2を駆動するために設けられている。力行運転の際には、旋回用電動機21の回転駆動力の回転力が減速機24にて増幅され、上部旋回体3が加減速制御され回転運動を行う。また、上部旋回体3の慣性回転により、減速機24にて回転数が増加されて旋回用電動機21に伝達され、回生電力を発生させることができる。ここでは、旋回用電動機21として、PWM(Pulse Width Modulation)制御信号によりインバータ20によって交流駆動される電動機を示す。この旋回用電動機21は、例えば、磁石埋込型のIPMモータで構成することができる。これにより、より大きな誘導起電力を発生させることができるので、回生時に旋回用電動機21にて発電される電力を増大させることができる。
なお、バッテリ19の充放電制御は、バッテリ19の充電状態、電動発電機12の運転状態(力行運転又は回生運転)、旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づき、コントローラ30によって行われる。
レゾルバ22は、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転位置及び回転角度を検出するセンサであり、旋回用電動機21と機械的に連結することで旋回用電動機21の回転前の回転軸21Aの回転位置と、左回転又は右回転した後の回転位置との差を検出することにより、回転軸21Aの回転角度及び回転方向を検出するように構成されている。旋回用電動機21の回転軸21Aの回転角度を検出することにより、旋回機構2の回転角度及び回転方向が導出される。
メカニカルブレーキ23は、機械的な制動力を発生させる制動装置であり、旋回用電動機21の回転軸21Aを機械的に停止させる。このメカニカルブレーキ23は、電磁式スイッチにより制動/解除が切り替えられる。この切り替えは、コントローラ30によって行われる。
旋回減速機24は、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転速度を減速して旋回機構2に機械的に伝達する減速機である。
旋回機構2は、旋回用電動機21のメカニカルブレーキ23が解除された状態で旋回可能となり、これにより、上部旋回体3が左方向又は右方向に旋回される。
操作装置26は、旋回用電動機21、下部走行体1、ブーム4、アーム5、及びバケット6を操作するための操作装置であり、レバー26A及び26Bとペダル26Cを含む。レバー26Aは、旋回用電動機21及びアーム5を操作するためのレバーであり、上部旋回体3の運転席近傍に設けられる。レバー26Bは、ブーム4及びバケット6を操作するためのレバーであり、運転席近傍に設けられる。また、ペダル26Cは、下部走行体1を操作するための一対のペダルであり、運転席の足下に設けられる。
この操作装置26は、パイロットライン25を通じて供給される油圧(1次側の油圧)を運転者の操作量に応じた油圧(2次側の油圧)に変換して出力する。操作装置26から出力される2次側の油圧は、油圧ライン27を通じてコントロールバルブ17に供給されるとともに、圧力センサ29によって検出される。
レバー26A及び26Bとペダル26Cの各々が操作されると、油圧ライン27を通じてコントロールバルブ17が駆動され、これにより、油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9内の油圧が制御されることによって、下部走行体1、ブーム4、アーム5、及びバケット6が駆動される。
なお、油圧ライン27は、油圧モータ1A及び1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダの駆動に必要な油圧をコントロールバルブに供給する。
圧力センサ29では、レバー26Aの操作による、油圧ライン28内の油圧の変化が圧力センサ29で検出される。圧力センサ29は、油圧ライン28内の油圧を表す電気信号を出力する。この電気信号は、レバー26Aの操作方向(右旋回又は左旋回)と操作量を表す信号であり、コントローラ30に入力される。
「コントローラ30」
コントローラ30は、本実施の形態の建設機械の駆動制御を行う制御装置であり、アシスト駆動制御装置31及び駆動制御装置40を含む。このコントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)及び内部メモリを含む演算処理装置で構成され、アシスト駆動制御装置31及び駆動制御装置40は、コントローラ30のCPUが内部メモリに格納される駆動制御用のプログラムを実行することにより、実現される装置である。
アシスト駆動制御装置31は、電動発電機12の運転制御(力行運転又は回生運転の切り替え)、及び、バッテリ19の充放電制御を行うための制御装置である。このアシスト駆動制御装置31は、エンジン11の負荷の状態とバッテリ19の充電状態に応じて、電動発電機12の力行運転と回生運転を切り替える。アシスト駆動制御装置31は、電動発電機12の力行運転と回生運転を切り替えることにより、インバータ18を介してバッテリ19の充放電制御を行う。
駆動制御装置40には、学習スイッチ90が接続される。学習スイッチ90は、後述の如く学習モードをオンさせるためのために作業者(ユーザ)により操作されるスイッチであり、キャビン10内の適切な位置に配置される。学習スイッチ90は、機械式のスイッチであってもよいし、タッチスイッチのようなソフトウェア的なスイッチであってもよいし、形式は任意である。駆動制御装置40には、学習スイッチ90の他、後述の対話式の学習機能を実現するための各種スイッチが接続されてよい。
駆動制御装置40には、表示装置92が接続される。表示装置92は、後述の如く学習状態等の情報を作業者(ユーザ)に視覚的に伝達する装置であり、キャビン10内の適切な位置に配置される。表示装置92は、点灯状態に応じて情報を伝達する簡易なランプであってもよいし、液晶ディスプレイ等のような、表示内容により情報を伝達するディスプレイであってもよいし、構成は任意である。
駆動制御装置40には、建設機械100の作業者を特定するための個人認証装置98が接続される。個人認証装置98による個人認証は、ユーザが所持する建設機械100のキー(又は、自宅のキーのような、その他の個人携帯用のキー)、携帯電話、運転免許証などの所有物認証、カメラによる顔認証や、静脈や指紋認証のような生体認証、又は、コントローラ30等への入力による知識認証のいずれか1つ若しくは任意の組み合わせにより実現されてもよい。
「駆動制御装置40」
図3は、本実施の形態の駆動制御装置40の構成を示す制御ブロック図である。
駆動制御装置40は、インバータ20を介して旋回用電動機21の駆動制御を行うための制御装置であり、旋回用電動機21を駆動するための駆動指令を生成する駆動指令生成部50、トルク指令生成部60、学習部60b、補正用トルク指令生成部61、主制御部70、及び速度指令生成部80を含む。
駆動指令生成部50は、トルク指令生成部60及び補正用トルク指令生成部61から入力されるトルク電流指令及び補正用トルク電流指令に基づく駆動指令の生成、又は、速度指令生成部80から入力される速度指令に基づく駆動指令の生成を行い、これらの駆動指令により旋回用電動機21を駆動制御する。駆動指令生成部50から出力される駆動指令はインバータ20に入力され、このインバータ20によって旋回用電動機21がPWM制御信号により交流駆動される。
ここで、トルク指令生成部60及び補正用トルク指令生成部61から入力されるトルク電流指令及び補正用トルク電流指令に基づく駆動指令による旋回用電動機21の駆動制御は、補正用トルク電流指令によって補正されたトルク電流指令に基づいて旋回用電動機21を駆動制御することを意味する。本実施の形態では、これをトルク指令による旋回用電動機21の駆動制御と称する。この駆動制御の詳細については後述する。
トルク指令生成部60は、レバー26Aの操作量に応じて、旋回用電動機21を旋回駆動するためのトルクを制御するトルク電流指令を生成する。レバー26Aの操作量に応じてトルク電流指令値を生成するための特性は、コントローラ30の内部メモリであるマップ記憶部60aに格納されており、後述の如く、作業者に応じた特性がトルク指令生成部60によって読み出される。
学習部60bは、学習スイッチ90により学習モードがオンされた場合に作動する。学習部60bは、作動中、レバー26Aに対して行われた操作態様に基づいて、作業者に適合した特性(図6を参照して後述)を学習し、学習した特性をマップ記憶部60aに記憶する。このとき、学習部60bは、個人認証装置98による個人認証情報に基づいて、作業者毎に学習結果(特性)を類別してマップ記憶部60aに記憶する。
補正用トルク指令生成部61は、レバー26Aの操作量に応じて、トルク電流指令を補正するための補正用トルク電流指令を生成する。レバー26Aの操作量に応じて補正用トルク電流指令値を生成するための特性は、コントローラ30の内部メモリに格納されており、補正用トルク指令生成部61によって読み出される。
主制御部70は、駆動制御装置40の制御処理に必要な周辺処理と、操作レバー26Aの操作量に応じて駆動制御を切り替える処理とを行う制御部である。主制御部70には、圧力センサ29から出力されるレバー26Aの操作量を表すデータと、旋回動作検出部57から出力される回転速度を表すデータとが入力される。駆動制御の切替処理は、レバー26Aの操作量と回転速度とに基づいて行われる。具体的な処理内容については、関連箇所において説明する。
速度指令生成部80は、正転側の最高回転速度、逆転側の最高回転速度、又は零速度に制御するための速度指令を生成する。各速度指令を表すデータは、コントローラ30の内部メモリに格納されており、速度指令生成部80によって読み出される。
なお、駆動制御装置40は、操作レバー26Aの操作量に応じて、旋回用電動機21を駆動制御する際に、力行運転と回生運転の切り替え制御を行うと共に、インバータ20を介してバッテリ19の充放電制御を行う。
ここで、図4を用いて操作レバー26Aの操作量と駆動領域の関係について説明する。
「操作量による駆動領域の切替特性」
図4は、本実施の形態の建設機械の駆動制御装置40における操作レバー26Aの操作量と駆動領域との関係を示す特性図である。横軸はレバー26Aの操作量を表し、右旋回側の最大操作量を100%、左旋回側の最大操作量を"−100%"とした百分率で示す。本実施の形態の駆動制御装置40は、レバー26Aの操作量をトルク電流指令値又は速度指令値に変換して旋回用電動機21の駆動制御を行うように構成されているため、図4では操作レバー26Aの操作量と駆動領域の関係のみを示し、トルク電流指令値及び速度指令値の特性については別の特性を用いて説明する。なお、この特性は、コントローラ30の内部メモリに格納されており、主制御部70によって読み出される。
駆動領域は、操作レバー26Aの操作量に応じて、不感帯領域、零速度指令領域(右旋回用及び左旋回用)、右方向旋回駆動領域、及び左方向旋回駆動領域の5つの領域に区分される。
ここで、本実施の形態の建設機械の制御系では、旋回用電動機21の回転軸21Aが反時計回りに回転する回転方向を「正転」と称し、正転方向の駆動を表す制御量に正の符号を付す。一方、旋回用電動機21の回転軸21Aが時計回りに回転する回転方向を「逆転」と称し、逆転方向の駆動を表す制御量に負の符号を付す。正転は、上部旋回体3の右方向への旋回に対応し、逆転は、上部旋回体の左方向への旋回に対応する。
また、旋回用電動機21の回転速度は、(rad/s)なる単位を有するが、以下では、最高回転速度を100%速度とした場合の百分率を用いて「50%速度」のように表す。
「不感帯領域」
不感帯領域は、レバー26Aの中立点付近に設けられる操作量が±10%未満の領域である。旋回停止状態から旋回を開始するときに、レバー26Aの操作量が不感帯領域にある場合は、駆動制御装置40による旋回用電動機21の駆動制御は行われない。また、不感帯領域内で旋回用電動機21の駆動制御が行われていないときは、メカニカルブレーキ23によって旋回用電動機21が機械的に停止された状態となる。
一方、旋回中にレバー26Aの操作量が不感帯領域となると、旋回用電動機21の回転軸21Aを停止させるための駆動制御が行われ、回転軸21Aが停止すると、駆動制御装置40による旋回用電動機21の駆動制御が行われ、メカニカルブレーキ23によって旋回用電動機21が機械的に停止されるように構成されている。
なお、メカニカルブレーキ23の制動(オン)/解除(オフ)の切り替えは、コントローラ30内の駆動制御装置40によって行われる。
「零速度指令領域」
零速度指令領域は、レバー26Aの操作方向における不感帯領域の両外側に設けられる操作量が10%以上20%未満と"−10%"以下"−20%"未満の領域である。レバー26Aの操作量が零速度指令領域にあり、かつ、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転速度が絶対値で10%速度未満であるときは、旋回用電動機21は零速度指令によって回転速度が零になるように駆動制御される。
ここで、零速度指令とは、上部旋回体3の旋回速度を零にするために、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転速度を零にするための速度指令であり、後述するPI(Proportional Integral)制御では、回転軸21Aの回転速度を零に近づけるための目標値として用いられる。
また、操作レバー26Aの操作量が零速度指令領域の範囲内にあり、かつ、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転速度が絶対値で10%速度以上であるときは、トルク指令生成部60及び補正用トルク指令生成部61から出力されるトルク電流指令及び補正用トルク電流指令に基づいて旋回用電動機21が減速するように駆動制御が行われる。
なお、零速度指令領域では、メカニカルブレーキ23は解除された状態となる。
「右方向旋回駆動領域」
右方向旋回駆動領域は、上部旋回体3を右方向に旋回させるための駆動制御を行う領域である。操作レバー26Aの操作量がこの右方向旋回駆動領域の範囲内にあるときは、トルク指令生成部60及び補正用トルク指令生成部61から出力されるトルク電流指令及び補正用トルク電流指令に基づく旋回用電動機21の駆動制御、又は、旋回用電動機21の回転速度を最高回転速度に制限するための速度指令に基づく旋回用電動機21の駆動制御のいずれかが行われる。この最高回転速度に制限するための速度指令に基づく駆動制御は、トルク電流指令に基づく駆動制御を行っているときに、旋回用電動機21の回転速度が最高回転速度に達すると、回転速度を制限するために行われる。その詳細については、後述する。
「左方向旋回駆動領域」
左方向旋回駆動領域は、上部旋回体3を左方向に旋回させるための駆動制御を行う領域である。操作レバー26Aの操作量がこの左方向旋回駆動領域の範囲内にあるときは、トルク指令生成部60及び補正用トルク指令生成部61から出力されるトルク電流指令及び補正用トルク電流指令に基づく旋回用電動機21の駆動制御、又は、旋回用電動機21の回転速度を最高回転速度に制限するための速度指令に基づく旋回用電動機21の駆動制御のいずれかが行われる。この最高回転速度に制限するための速度指令に基づく駆動制御は、トルク電流指令に基づく駆動制御を行っているときに、旋回用電動機21の回転速度が絶対値で逆転方向の最高回転速度に達すると、回転速度を制限するために行われる。その詳細については、後述する。
「駆動指令生成部50」
駆動指令生成部50は、減算器51、切替スイッチ部52、トルク制限部53、減算器54、PI制御部55、電流変換部56、及び旋回動作検出部57を含む。この駆動指令生成部50の減算器51には、レバー26Aの操作量に応じた旋回駆動用のトルク電流指令及び補正用トルク電流指令が入力される。
減算器51は、レバー26Aの操作量に応じてトルク指令生成部60から出力されるトルク電流指令の値(以下、トルク電流指令値)から、レバー26Aの操作量に応じて補正用トルク指令生成部61から出力される補正用トルク電流指令の値(以下、補正用トルク電流指令値)を減算して偏差を出力する。
切替スイッチ部52は、入力端子a及びbを有し、主制御部70によって切替が行われる。旋回用電動機21をトルク電流指令で駆動する場合は、主制御部70によって入力端子aが選択され、旋回用電動機21を速度指令に基づいて駆動する場合は、主制御部70によって入力端子bが選択される。
トルク制限部53は、レバー26Aの操作量に応じてトルク電流指令の値(以下、トルク電流指令値)を制限する処理を行う。ここで、トルク制限とは、トルク制限部53に入力されるトルク電流指令値を、トルク制限特性によって許容される値(許容値)以下に制限して出力することをいう。
トルク制限部53は、図5に示すように、制限によって許容されるトルク電流指令値(許容値)の絶対値がレバー26Aの操作量の増大に応じて緩やかに増大するトルク制限特性を用いて、PI制御部83から入力されるトルク電流指令値を制限する。このようなトルク電流指令値の制限は、PI制御部83によって演算されるトルク電流指令値が急激に増大すると制御性が悪化するため、これを抑制するために行われる。
なお、この制限特性は、横軸及び縦軸共に絶対値で表してあるため、左旋回を表す場合の制御量は、レバー26Aの操作量(横軸)及び許容値(縦軸)の両方とも、絶対値に換算されてトルク制限が行われる。また、図5の特性におけるレバー26Aの操作量が0%から20%の間は、図4に示す不感帯領域と零速度指令領域に相当する。
この制限特性は、レバー26Aの操作量の増大に伴ってトルク電流指令値を絶対値で緩やかに増大させる特性を有し、上部旋回体3を左方向及び右方向の双方向に旋回させるためのトルク電流指令値を制限するための特性を有するものである。制限特性を表すデータは、主制御部70の内部メモリに格納されており、主制御部70によって読み出され、トルク制限部53に入力される。
減算器54は、トルク制限部53から入力されるトルク電流指令値から、電流変換部56の出力値を減算して得る偏差を出力する。この偏差は、後述するPI制御部55及び電流変換部56を含むフィードバックループにおいて、電流変換部56から出力される旋回用電動機21の駆動トルクを、トルク制限部53を介して入力されるトルク電流指令値(目標値)によって表されるトルクに近づけるためのPI制御に用いられる。
PI制御部55は、減算器54から入力される偏差に基づき、この偏差を小さくするようにPI制御を行い、インバータ20に送る最終的な駆動指令となるトルク電流指令を生成する。インバータ20は、PI制御部55から入力されるトルク電流指令に基づき、旋回用電動機21をPWM駆動する。
電流変換部56は、旋回用電動機21のモータ電流を検出し、これをトルク電流指令に相当する値に変換し、減算器54に入力する。
旋回動作検出部57は、レゾルバ22によって検出される旋回用電動機21の回転位置の変化(すなわち上部旋回体3の旋回)を検出するとともに、回転位置の時間的な変化から旋回用電動機21の回転速度を微分演算によって導出する。導出された回転速度を表すデータは、減算器51及び主制御部70に入力される。
「トルク指令生成部60」
トルク指令生成部60は、レバー26Aの操作量に応じて、図6に示す特性に従ってトルク電流指令を生成する。ここで、本実施の形態のトルク指令生成部60は、後述の如く作業者毎に学習された特性を用いて、トルク電流指令を生成する。
図6は、一例として、3つの異なるトルク電流指令特性を示し、符号X1で示す特性は、作業者がX1さんであるときに用いられる特性であり、符号X2で示す特性は、デフォルト特性であり、符号X3で示す特性は、作業者がX3さんであるときに用いられる特性である。デフォルト特性X2は、マップ形式で予め用意され、他の特性X1,X3は、後述の如くデフォルト特性X2を基に学習により作業者毎に作成され、マップ記憶部60aに記憶保持される。デフォルト特性X2は、典型的には、多数の作業者の平均的な操作態様に適合するように予め決定される。
図6に示すように、いずれの特性X1,X2,X3においても、トルク電流指令値T0(%)は、レバー26Aの操作量の増大に応じて緩やかに立ち上がり始め、レバー26Aの操作量の増大に応じて次第に傾きが増大して行き、操作量が約80%に達したところで飽和する。なお、この特性は、横軸及び縦軸共に絶対値で表してあるため、左旋回を表す場合の制御量は、負の値となる。また、図6の特性におけるレバー26Aの操作量が0%から20%の間は、図4に示す不感帯領域と零速度指令領域に相当する。なお、トルク電流指令値T0(%)は、最大値を100%とした百分率で示す。
図示の例では、特性X1,X2,X3の相違は、レバー26Aの操作量が20%から80%の間で発生する。同一のレバー26Aの操作量に対するトルク電流指令値T0(%)の大きさは、特性X1が一番大きく、特性X2が中間であり、特性X3が最も小さい。即ち、レバー26Aの操作量の単位増加量あたりのトルク電流指令値T0の大きさの増加量(応答性)は、特性X1が一番大きく、特性X2が中間であり、特性X3が最も小さい。尚、特性X1,X2,X3は、レバー26Aの操作量が20%から80%の間で非線形な特性を有しているが、線形特性を有してもよい。
尚、以下では、説明の便宜上、特性X1が最も応答性の良い特性であり、応答性を決めるゲインGが上限値のときに対応し、特性X3が最も応答性の悪い特性であり、ゲインGが下限値のときに対応するものとする。
図7は、トルク指令生成部60において実行されるトルク電流指令生成処理の一例を示すフローチャートである。図7の処理ルーチンは、後述の学習モードがオフされている間に実行される。
ステップ60では、トルク指令生成部60において、個人認証装置98による個人認証情報が入力され、現在の建設機械100の作業者が把握される。
ステップ62では、トルク指令生成部60において、現在の建設機械100の作業者に対応した学習結果(特性)がマップ記憶部60a内で探索され、現在の建設機械100の作業者に対応した学習結果が存在する場合には、現在の建設機械100の作業者に対応した学習結果をマップ記憶部60aから読み出してステップ64に進み、現在の建設機械100の作業者に対応した学習結果が存在し無い場合には、ステップ66に進む。
ステップ64では、トルク指令生成部60において、現在の建設機械100の作業者に対応した学習結果に係る特性が、使用する特性として設定される。例えば、図6に示す例で、今回特定された作業者がX1さんであるときは、特性X1が、使用する特性として設定される。尚、特性の学習態様については、後に詳説する。
ステップ66では、トルク指令生成部60において、デフォルト特性X2(図6参照)が、使用する特性として設定される。
ステップ70では、トルク指令生成部60において、レバー26Aの操作量が入力される。
ステップ72では、トルク指令生成部60において、上記ステップ64又は66で設定した特性を用いて、今回入力されたレバー26Aの操作量に応じたトルク電流指令値T0が算出される。
ステップ74では、建設機械100の作業が終了したか又は作業者が変更したかが判定され、いずれも否定された場合には、ステップ70からの処理が繰り返される。尚、作業者が変更した場合には、旧作業者に対する図7の処理ルーチンが終了し、新たな作業者に対して図7の処理ルーチンがステップ60から開始される。
「学習部60b」
図8は、学習部60bにおいて実行される学習処理の一例を示すフローチャートである。図8の処理ルーチンは、学習スイッチ90により起動された学習モードがオン状態である間に実行される。
ここで、学習モードは、前提として、作業者が学習スイッチ90をオンにすることで起動される。作業者は、典型的には、自身の好みや癖に適合した操作特性を建設機械100に学習させたい場合や、学習結果をリセットして再学習させたい場合に、学習スイッチ90をオンにする。学習モードがオンされると、その旨が表示装置92を介して作業者に通知される。例えば表示装置92がランプである場合、学習モードがオンされると、ランプが例えば緑色に点灯し、学習モード中、緑色の点灯状態が維持される。
作業者は、学習モードをオンにしてから、レバー26Aを、所望の応答性が実現されるように操作速度を調整しながら複数回操作する。学習モードオン中に、所望の応答性が実現されるような操作速度を調整しながらレバー26Aを複数回操作すべきことは、ユーザに周知される。尚、この学習モードがオン状態にあるとき、学習部60b以外の構成要素は、作業者のレバー26Aの操作に応じて通常通り動作する。但し、学習モードがオン状態にあるとき、トルク指令生成部60においては、後述の如く学習部60bにより変更される最新の特性を利用して、トルク電流指令が生成される。
ステップ80では、学習部60bにおいて、個人認証装置98による個人認証情報が入力され、現在の建設機械100の作業者が把握される。
ステップ82では、学習部60bにおいて、レバー26Aが操作されたか否かが判定される。レバー26Aが操作された場合には、ステップ84に進む。
ステップ84では、学習部60bにおいて、レバー26Aの操作速度V(%/s)が算出され、算出結果が蓄積される。レバー26Aの操作速度V(%/s)は、例えばレバー26Aの操作量の前回値x(i−1)と、レバー26Aの操作量の今回値x(i)を用いて、次式により算出されてもよい。
V=(x(i)−x(i−1))/ΔT
ここで、ΔTは、レバー26Aの操作量の入力周期(サンプリング周期)に対応する。但し、フィルタや重み付け演算を用いてノイズの影響を低減する態様で、レバー26Aの操作速度Vを演算してもよい。また、レバー26Aの操作速度としては、レバー26Aの操作開始直後の操作量が増加していく際の増加速度が算出されてよく、この場合、操作開始時点から所定の短い時間経過するまでの(操作量が増加する過程での)各周期で演算されるレバー26Aの操作速度Vの平均値として求められてもよい。これは、本実施の形態では、上部旋回体3をある角度まで旋回させる際のレバー26Aの操作の応答性を問題とし、上部旋回体3の旋回を停止させるときのレバー26Aの操作(中立に戻す操作)の応答性を問題としていないためである。
ステップ86では、学習部60bにおいて、算出したレバー26Aの操作速度Vが、所定の推奨速度に対応するか否かが判定される。ここで、推奨速度とは、レバー26Aの操作速度として推奨される速度(固定値)であり、多数の作業者の平均的な操作速度の取りうる範囲の中心値Vave(平均値)に対応するように決定されてよい。尚、推奨速度は、ある一点の速度(例えば、上記平均値Vaveそのもの)である必要はなく、ある範囲内の速度であってよく、例えば、上記平均値Vaveを中心とした±10(%/s)の範囲内の速度であってよい。算出したレバー26Aの操作速度Vが、所定の推奨速度に対応する場合には、ステップ88に進み、算出したレバー26Aの操作速度Vが、所定の推奨速度に対応しない場合には、ステップ90に進む。
ステップ88では、学習部60bにおいて、特性の応答性を決めるゲインGが現在値に維持されると共に、カウンタが1だけインクリメントされる。このとき、トルク指令生成部60においては、前回操作時と同一の特性に基づいて、今回入力されたレバー26Aの操作量に応じたトルク電流指令値T0が算出される。尚、ゲインGの初期値は、デフォルト特性X2に対応したデフォルト値である。
ステップ90では、学習部60bにおいて、算出したレバー26Aの操作速度Vが推奨速度よりも大きいか否かが判定される(尚、推奨速度が範囲で規定されている場合にはその上限値を上回るか否かが判定される)。算出したレバー26Aの操作速度Vが推奨速度よりも大きい場合には、ステップ92に進み、算出したレバー26Aの操作速度Vが推奨速度よりも小さい(推奨速度が範囲で規定されている場合にはその下限値を下回った)場合には、ステップ94に進む。
ステップ92では、学習部60bにおいて、特性の応答性を決めるゲインGが現在値から所定量(1段階に相当する量)だけ増加されると共に、カウンタが初期値(ゼロ)にリセットされる。これにより、応答性が一段階高まり、図6の特性X1に近づく方向に特性が変化(補正)される。このとき、トルク指令生成部60においては、当該変化後の特性に基づいて、今回入力されたレバー26Aの操作量に応じたトルク電流指令値T0が算出される。尚、ゲインGの現在値が既に上限値である場合には、ゲインGの現在値が維持される。また、このようなゲインGが上限値である状況下で、レバー26Aの各回の操作でステップ92の処理が連続的に実行される場合には、例外的にステップ96をスキップしてステップ98に進むこととしてもよい。
ステップ94では、学習部60bにおいて、特性の応答性を決めるゲインGが現在値から所定量(1段階に相当する量)だけ減少されると共に、カウンタが初期値(ゼロ)にリセットされる。これにより、応答性が一段階低まり、図6の特性X3に近づく方向に特性が変化(補正)される。このとき、トルク指令生成部60においては、当該変化後の特性に基づいて、今回入力されたレバー26Aの操作量に応じたトルク電流指令値T0が算出される。尚、ゲインGの現在値が既に下限値である場合には、ゲインGの現在値が維持される。また、このようなゲインGが下限値である状況下で、レバー26Aの各回の操作でステップ94の処理が連続的に実行される場合には、例外的にステップ96をスキップしてステップ98に進むこととしてもよい。
尚、上記ステップ92及び94のゲインの変更処理は、レバー26Aの1回操作に対して1回だけ実行されてよい。即ち、レバー26Aの1回操作中に動的に複数回ゲインを変えるのではなく、レバー26Aの1回操作中に一回だけ(好ましくは開始直後)に変更する。
ステップ96では、学習部60bにおいて、カウンタが所定値以上となったか否かが判定される。所定値は、安定的に推奨速度でレバー26Aの操作が行われている状況を検出するための閾値であり、例えば3から10の間の値であってよい。カウンタが所定値以上となった場合には、ステップ98に進み、カウンタが所定値未満である場合には、ステップ82からの処理を繰り返す。
ステップ98では、学習部60bにより、現在の特性が、最終的な学習結果として、上記ステップ90で把握された作業者に対応付けてマップ記憶部60aに記憶される。尚、このようにして学習結果がマップ記憶部60aに記憶されると、学習モードは自動的にオフとなり、例えば表示装置92の緑色の点灯が消灯する。
このようにして学習部60bにより作業者に対応した特性が学習されると、以後、図7を参照して上述したように、学習された特性に基づいて、レバー26Aの操作量に応じたトルク電流指令値T0が算出される。従って、学習された特性が作業者毎に異なる場合には、トルク電流指令値T0が作業者毎に変化し、レバー26Aの操作量に応じた旋回用電動機21の出力特性が作業者毎に変化することになる。
図8に示す学習処理によれば、学習開始時の最初の操作時に推奨速度で操作したときは、デフォルト特性X2が実現されるので、デフォルト特性X2では応答性が悪いと感じる作業者は、次の操作時に、レバー26Aの操作速度を推奨速度よりも速めることになる。従って、この次の操作では、デフォルト特性X2に比べて応答性が一段階高まるが、この一段階高まった応答性でも足りないと感じる作業者は、次の操作で、推奨速度よりも依然として速い操作速度でレバー26Aを操作することになる。この次の操作で、応答性が更に一段階高まる。このようにして、現在の応答性が低いと感じる作業者は、次の操作時に、推奨速度よりも速い操作速度でレバー26Aを操作することから、応答性が徐々に増加していく。逆に、現在の応答性が高いと感じる作業者は、次の操作時に、レバー26Aの操作速度を推奨速度よりも遅くすることから、応答性が徐々に減少していく。このようにして、作業者の操作速度は、作業者の感覚にあった応答性が実現された段階で、推奨速度に落ち着くことになる。これにより、図8に示す学習処理によれば、作業者のレバー26Aの操作速度を推奨速度へと矯正しつつ、推奨速度の操作速度で作業者の感覚に合った応答性を実現することができる。
尚、図8に示す例では、カウンタが所定値以上となったとなった場合に学習モードが自動的にオフされているが、所定時間経過後に自動的にオフされることとしてもよいし、ユーザからの指示に応じてオフされることとしてもよい。いずれの場合も、学習モードがオフされた時点の特性が、最終的な学習結果として、上記ステップ90で把握された作業者に対応付けてマップ記憶部60aに記憶されることとしてよい。
作業者は、表示装置92の緑色の点灯が消灯すると、学習が終了したことを把握し、その後、レバー26Aを操作して、学習後の操作特性が自己の好みや癖に適合するかを判断してよく、適合する場合は、そのまま作業を継続し、適合しない場合には、再度学習スイッチ90をオンにして(学習結果をリセットして)、再学習させてもよい。
「補正用トルク指令生成部61」
補正用トルク指令生成部61は、レバー26Aの操作量に応じて、図9(a)に示す補正用トルク電流指令を生成する。図9(a)において、横軸のレバー26Aの操作量x(%)、旋回用電動機21の回転速度y(%)に対して、補正用トルク電流指令値をTf(x、y)(%)で示す。
図9(a)には代表的な特性として、回転速度yが0%速度、10%速度、20%速度、40%速度、60%速度、80%速度、及び100%速度の場合における操作量xの変化に対する補正用トルク電流指令値Tf(x、y)の特性を示す。
10%速度、20%速度、40%速度、60%速度、80%速度、及び100%速度の場合の補正用トルク電流指令値Tf(x、y)は、レバー26Aの操作量xの増大に応じて徐々に減少し、操作量xが約90%に達したところで略一定の値となる特性を有する。また、この補正用トルク電流指令値Tf(x、y)は、回転速度yの増大に応じて増大する特性を有する。
また、回転速度yが0%速度の場合の補正用トルク電流指令値Tf(x、y)は、操作量xが0%から20%の間では存在せず、操作量が20%以上から100%の間で0%に設定される。このような特性をとるのは、回転速度yが0%速度の場合は補正が必要ないため、補正用トルク電流指令値Tf(x、y)は0%でよく、また、回転速度yが0%速度の場合は操作量xが0%から20%未満では、零速度指令に基づく駆動制御が行われるか、又は、メカニカルブレーキ23によって旋回用電動機21の回転軸21Aが停止されるため、補正用トルク電流指令値Tf(x、y)が必要ないからである。
なお、実際には、補正用トルク指令生成部61により、これらの代表的な特性を補間するように操作量x及び回転速度yに応じて補正用トルク電流指令値Tf(x、y)が生成される。
このような補正用トルク電流指令を用いるのは、図6に示すトルク電流指令だけで旋回用電動機21の駆動制御を行うと、レバー26Aの操作量の増大に応じて駆動トルクが増大することにより、従来のような速度指令による駆動制御を行う場合よりも操作性は良好になるが、旋回用電動機21の回転速度が上昇し続けるため、回転速度に応じてトルク電流指令を補正することにより、トルク指令に基づく駆動制御において回転速度の制御を行いやすくするためである。
ここで、この特性は、横軸及び縦軸共に絶対値で表してあるが、左旋回を表す場合の補正用トルク電流指令値は負の値となる。
また、補正用トルク電流指令値Tf(x、y)は、最大値を100%とした百分率で示す。なお、この最大値は、トルク電流指令値T0(%)の最大値と同一の値である。
「減算器51の出力」
図9(b)は、減算器51から出力されるトルク電流指令値Tcmdを示す特性図である。減算器51の出力は、図6に示すトルク電流指令から図9(a)に示す補正用トルク電流指令を減じて得る特性であり、次式で与えられる。
Tcmd=T0−Tf(x、y)(%)
図9(b)に示すように、操作量xが0%から20%未満では、回転速度yが0%速度の場合のトルク電流指令値Tcmdは存在しない。これは、操作量xが0%から20%未満では、零速度指令に基づく駆動制御が行われるか、又は、メカニカルブレーキ23によって旋回用電動機21の回転軸21Aが停止されるためである。
操作量が±20%以内では、回転速度yが0%速度の場合のトルク電流指令値Tcmdは0%に設定される。これは、旋回用電動機21が停止しているときは、その状態を保持するために駆動トルクを発生させる必要がないからである。
また、操作量xが0%のときに、回転速度yが100%速度の場合は、トルク電流指令値Tcmdは"−100%"に設定される。これは、操作量xが0%で旋回用電動機21が正転方向に最高回転速度で駆動されている場合は、旋回用電動機21に逆転方向の最大トルクを発生させる必要があるため、トルク電流指令値Tcmdが"−100%"に設定されている状態を表す。
なお、操作量xが0%のときにトルク電流指令値Tcmdが"−100%"に設定されるのは、回転速度yが10%速度以上の場合である。
また、操作量xが0%から20%まで増大する間に、回転速度yが10%速度及び20%速度の場合は、トルク電流指令値Tcmdの値が絶対値で急激に低減され、旋回用電動機21の逆転方向の駆動トルクが小さくされる。これは、回転速度yが比較的低い場合は、減速させるための駆動トルクは比較的小さくて足りるからである。
一方、操作量xが0%から20%まで増大する間に、回転速度yが40%速度、60%速度、80%速度、及び100%速度の場合は、トルク電流指令値Tcmdの値は絶対値で徐々に低減され、旋回用電動機21の逆転方向の駆動トルクは大きい状態にされる。これは、回転速度yが比較的高い場合は、減速させるために大きな駆動トルクが必要だからである。
また、操作量xが20%から80%まで増大する間に、回転速度yが0%速度の場合は、トルク電流指令値Tcmdは徐々に増大される。これは、操作量xが増大しているのに回転速度yが上昇しないため、さらに駆動トルクを増大させる必要があるからである。
また、操作量xが20%から80%まで増大する間に、回転速度yが10%速度及び20%速度の場合は、始めはトルク電流指令値Tcmdの値は徐々に低減され、操作量xが30%〜40%の辺りでトルク電流指令値Tcmdの値は0%となり、操作量xが40%から80%まで増大する間は、回転速度yが0%速度の場合に近い増加度合いでトルク電流指令値Tcmdが徐々に増大される。これは、操作量xを増大しても回転速度yが比較的低い場合は、加速させるために大きな駆動トルクが必要になるからである。
また、操作量xが20%から80%まで増大する間に、回転速度yが40%速度、60%速度、80%速度、及び100%速度の場合は、始めはトルク電流指令値Tcmdの値は徐々に低減され、操作量xが50%〜70%の辺りでトルク電流指令値Tcmdの値は0%となり、さらに操作量xが80%まで増大する間は、次第に傾きが増大されてトルク電流指令値Tcmdの値が正の値で増大される。これは、回転速度が比較的高い場合は、減速にも加速にも比較的小さい駆動トルクで足りるからである。
また、操作量xが80%から100%まで増大する間に、回転速度yが0%速度、10%速度、及び20%速度の場合は、トルク電流指令値Tcmdは100%に制限される。これは、操作量xが80%以上と大きい領域にも関わらず、回転速度が零又は比較的低いときは、速度を維持又は加速するために大きな駆動トルクが必要となるからである。
また、操作量xが80%から100%まで増大する間に、回転速度yが40%速度、60%速度、80%速度、及び100%速度の場合は、トルク電流指令値Tcmdは約75%から約10%の間に段階的に制限される。これは、操作量xが80%以上と大きい領域にも関わらず、回転速度が比較的高いときは、速度を維持又は加速するために比較的小さな駆動トルクで足りるからである。
なお、図9(b)には代表的な特性として、回転速度yが0%速度、10%速度、20%速度、40%速度、60%速度、80%速度、及び100%速度の場合における操作量xの変化に対するトルク電流指令値Tcmdの特性を示すが、実際には、これらの代表的な特性を補間するように操作量x及び回転速度yに応じてトルク電流指令値Tcmdが生成される。特に、実際には旋回用電動機21の加速と減速に合わせて回転速度yは変化するため、トルク電流指令値Tcmdは、ここに示す代表的な特性を横断するようにして生成される。
「速度指令生成部80」
速度指令生成部80は、図3に示すように、切替スイッチ部81、減算器82、及びPI制御部83を含み、正転側の最高回転速度、逆転側の最高回転速度、又は零速度に制御するための速度指令を生成する。
切替スイッチ部81は、入力端子a、b、及びcを含む。入力端子aには正転側最高速度指令が入力される。この正転側最高速度指令は、旋回用電動機21の回転速度を正転側の最高速度に制御するための速度指令である。入力端子bには零速度指令が入力される。この零速度指令は、旋回用電動機21の回転速度を零に制御するための速度指令である。入力端子cには逆転側最高速度指令が入力される。この逆転側最高速度指令は、旋回用電動機21の回転速度を逆転側の最高速度に制御するための速度指令である。
この切替スイッチ部81は、主制御部70によって切り替えられる。主制御部70は、旋回用電動機21の回転速度が正転側の最高値になると、切替スイッチ部81を入力端子aに切り替える。また、旋回用電動機21の回転速度が±10%速度未満になると、主制御部70は、切替スイッチ部81を入力端子bに切り替える。旋回用電動機21の回転速度が逆転側の最高値になると、主制御部70は、切替スイッチ部81を入力端子cに切り替える。
また、主制御部70は、上述のように切替スイッチ部81の切替を行う場合は、切替スイッチ部52を入力端子bに切り替える。これにより、旋回用電動機21は、減算器51から出力されるトルク電流指令値Tcmdに基づく駆動制御から、速度指令生成部80から出力される正転側最高速度指令値に基づく駆動制御に切り替えられる。
なお、切替スイッチ部81の入力端子a、b、及びcに入力される正転側の最高回転速度、逆転側の最高回転速度、又は零速度に制御するための速度指令を表すデータは、コントローラ30の内部メモリに格納されており、速度指令生成部80によって読み出される。
減算器82は、切替スイッチ部81から入力される速度指令の値(rad/s)から、旋回動作検出部58によって検出される旋回用電動機21の回転速度(rad/s)を減算して偏差を出力する。この偏差は、後述するPI制御部83に入力される。
PI制御部83は、減算器82から入力される偏差に基づき、この偏差を小さくするようにPI制御を行い、PI制御によって生成されるトルク電流指令を切替スイッチ部52の入力端子bに入力する。
「旋回動作時の駆動制御」
図10は、本実施の形態の旋回用駆動制御装置による旋回動作時の駆動制御の処理手順を示す図である。この処理は、本実施の形態の建設機械の運転中に、主制御部70によって繰り返し実行される処理である。
主制御部70は、レバー26Aの操作量が不感帯領域にあるか否かを判定する(ステップS1)。
主制御部70は、レバー26Aの操作量が不感帯領域にはないと判定した場合は、レバー26Aの操作量が零速度指令領域にあるか否かを判定する(ステップS2)。
主制御部70は、レバー26Aの操作量が零速度指令領域にはないと判定した場合は、旋回用電動機21の回転速度が正転側の最高速度より高いか否かを判定する(ステップS3)。
主制御部70は、回転速度が正転側の最高速度以下であると判定した場合は、旋回用電動機21の回転速度が絶対値で逆転側の最高速度の絶対値を超えているか否かを判定する(ステップS4)。
主制御部70は、回転速度が絶対値で逆転側の最高速度の絶対値以下であると判定した場合は、切替スイッチ部52を入力端子aに切り替える(ステップS5)。これにより、トルク指令生成部60及び補正用トルク指令生成部61によって生成されるトルク電流指令値及び補正用トルク電流指令値に基づいて旋回用電動機21の駆動制御が行われる。このとき、トルク指令生成部60によって生成されるトルク電流指令値は、上述の図7を参照して説明した態様で生成される。
ステップS5の処理が実行される場合とは、レバー26Aの操作量が右方向旋回駆動領域又は左方向旋回駆動領域にあり、かつ、回転速度が正転側及び逆転側の最高回転速度を絶対値で超えていない状態である。このような状態には、旋回用電動機21を加速又は減速させることによって上部旋回体3を旋回させる状況のうちの殆どの場合が含まれる。このため、本実施の形態の駆動制御装置40によれば、トルク指令に基づいて旋回用電動機21の駆動制御を行うことができ、速度指令に基づいて旋回用電動機21の駆動制御を行う場合に比べて操作性が向上する。
主制御部70は、ステップS1において不感帯領域内であると判定した場合は、旋回用電動機21の回転速度が零(0%速度)であるか否かを判定する(ステップS6)。
主制御部70は、回転速度が零ではないと判定した場合は、旋回用電動機21の回転速度が絶対値で10%速度未満であるか否かを判定する(ステップS7)。
主制御部70は、回転速度が絶対値で10%速度以上であると判定した場合は、切替スイッチ部52を入力端子aに切り替える(ステップS8)。これにより、トルク指令生成部60及び補正用トルク指令生成部61によって生成されるトルク電流指令値及び補正用トルク電流指令値に基づいて旋回用電動機21の駆動制御が行われる。
ステップS8が実行される場合とは、レバー26Aの操作量が不感帯領域にあり、かつ、回転速度が絶対値で10%速度以上である状態である。この状態は、回転速度が10%速度以上であるときに、旋回用電動機21を停止させようとして減速トルクを発生させる場合に相当する。このため、本実施の形態の駆動制御装置40によれば、トルク指令によって旋回用電動機21を減速させることができ、速度指令に基づいて旋回用電動機21の駆動制御を行う場合に比べて操作性が向上する。
なお、主制御部70は、ステップS6において回転速度が零(0%速度)であると判定した場合は、手順をステップS1にリターンする。これは、レバー26Aの操作量が不感帯領域にあって、旋回用電動機21が停止している状態に相当する。このような場合は、駆動制御を行う必要がないため、手順がステップS1にリターンされる。
また、主制御部70は、ステップS7において回転速度が絶対値で10%速度未満であると判定した場合は、切替スイッチ部81を入力端子bに切り替え(ステップS9)、さらに、切替スイッチ部52を入力端子bに切り替える(ステップS10)。
このようにステップS9及びS10が実行される場合とは、レバー26Aの操作量が不感帯領域にあり、かつ、回転速度が絶対値で10%速度未満の状態である。このような状態は、旋回用電動機21を停止させようとしてレバー26Aの操作量の操作量を減じているが、零速度指令領域内で回転速度が零(0%速度)になりきらなかった場合に相当する。このような場合は、切替スイッチ部81の入力端子bから入力される零速度指令を用いて旋回用電動機21を駆動制御する。
また、主制御部70は、ステップS2においてレバー26Aの操作量が零速度指令領域にあると判定した場合は、手順をステップ7に進行させ、旋回用電動機21の回転速度が絶対値で10%速度未満であるか否かを判定する(ステップS7)。
主制御部70は、回転速度が絶対値で10%速度以上であると判定した場合は、切替スイッチ部52を入力端子aに切り替える(ステップS8)。これにより、トルク指令生成部60及び補正用トルク指令生成部61によって生成されるトルク電流指令値及び補正用トルク電流指令値に基づいて旋回用電動機21の駆動制御が行われる。
ステップS8が実行される場合とは、レバー26Aの操作量が零速度指令領域にあり、かつ、回転速度が絶対値で10%速度以上である状態である。この状態は、回転速度が10%速度以上であるときに、旋回用電動機21を停止させようとして減速トルクを発生させる場合に相当する。このため、本実施の形態の駆動制御装置40によれば、トルク指令によって旋回用電動機21を減速させることができ、速度指令に基づいて旋回用電動機21の駆動制御を行う場合に比べて操作性が向上する。
なお、主制御部70は、ステップS7において回転速度が絶対値で10%速度未満であると判定した場合は、切替スイッチ部81を入力端子bに切り替え(ステップS9)、さらに、切替スイッチ部52を入力端子bに切り替える(ステップS10)。
このようにステップS2を経由してステップS9及びS10が実行される場合とは、レバー26Aの操作量が零速度指令領域にあり、かつ、回転速度が絶対値で10%速度未満の状態である。このような状態は、旋回用電動機21を停止させようとしてレバー26Aの操作量の操作量を減じていて、レバー26Aの操作量が零速度指令領域にあり、回転速度が十分に減速されている場合(絶対値で10%速度未満の場合)に相当する。このような場合は、切替スイッチ部81の入力端子bから入力される零速度指令を用いて旋回用電動機21を駆動制御する。
また、主制御部70は、ステップS3において、旋回用電動機21の回転速度が正転側の最高速度より高いと判定した場合は、切替スイッチ部81を入力端子aに切り替え(ステップS11)、さらに、切替スイッチ部52を入力端子bに切り替える(ステップS11)。
このようにステップS11及びS12が実行される場合とは、レバー26Aの操作量が右方向旋回駆動領域にあり、かつ、回転速度が100%速度を超えている状態である。このような状態では、旋回用電動機21の回転数を正転側の最高速度(100%速度)に制限するために、切替スイッチ部81の入力端子aから入力される正転側最高速度指令で旋回用電動機21の駆動制御を行う。
また、主制御部70は、ステップS4において、回転速度が絶対値で逆転側の最高速度の絶対値を超えていると判定した場合は、切替スイッチ部81を入力端子cに切り替え(ステップS13)、さらに、切替スイッチ部52を入力端子bに切り替える(ステップS14)。
このようにステップS13及びS14が実行される場合とは、レバー26Aの操作量が左方向旋回駆動領域にあり、かつ、回転速度が絶対値で逆転側の最高速度の絶対値を超えている状態である。このような状態では、旋回用電動機21の回転数を逆転側の最高速度(−100%速度)に制限するために、切替スイッチ部81の入力端子cから入力される逆転側最高速度指令で旋回用電動機21の駆動制御を行う。
主制御部70は、本実施の形態の建設機械が運転されている間は、以上の処理を繰り返し実行する。
以上のように、本実施の形態の駆動制御装置及びこれを含む建設機械によれば、操作手段の操作量に応じたトルク指令に基づいて旋回駆動用の電動発電機の駆動制御を行う際に、学習した特性を用いることで、作業者の好みや癖に適合した操作特性を実現することが可能となる。本実施の形態によれば、特に、推奨速度の操作速度で作業者の好み等に適合した応答性が実現されるように特性の学習が行われるので、作業者の操作速度を推奨速度に矯正することも可能である。このような学習機能は、建設機械100が一般的に不特定の作業者により操作されるので有用であるが、特に不特定多数の作業者により操作されるレンタル機である場合に特に好適である。
また、本実施の形態の駆動制御装置及びこれを含む建設機械によれば、操作手段の操作量に応じたトルク指令に基づいて旋回駆動用の電動発電機の駆動制御を行う際に、このトルク指令を回転速度に応じて補正することにより、操作量と回転速度に応じて電動発電機の駆動トルクを制御することができるため、従来のように速度指令に基づいて駆動制御を行う場合に比べて、乗り心地と操作性の改善を図ることができる。
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
例えば、上述した実施例では、原則的にトルク指令に基づいて旋回用電動機21の駆動制御を行い(図10のステップ5)、ある特定条件下でのみ速度指令に基づいて駆動制御を行っている(図10のステップ10,12,14)が、常にトルク指令に基づいて旋回用電動機21の駆動制御を行うこととしてもよい。或いは、トルク指令に代えて、速度指令に基づいて駆動制御を行うことも可能である。この場合、トルク指令の場合と同様の観点から、上述した実施例と同様に、例えば、図11に示すように、操作手段の操作速度と推奨速度との関係に応じて、異なる特性X1,X2,X3が学習されてよい。図11に示す例では、レバー26Aの操作量の単位増加量あたりの目標回転速度y0(又は速度指令値)の大きさの増加量(応答性)は、特性X1が一番大きく、特性X2が中間であり、特性X3が最も小さい。特性X2は、デフォルト特性であり、特性X2は、上述と同様の学習処理により、操作手段の操作速度が推奨速度を上回って速いときは、ゲインが特性X1の方向に補正され、操作手段の操作速度が推奨速度を下回って遅いときは、特性X3の方向に補正されてよい。
また、上述した実施例では、電動機により駆動される機構が、旋回機構であったが、本発明は、電動機により駆動される機構が、他の機構である場合も適用可能である。例えば図12には、図2に示した下部走行体1用の油圧モータ1A、1Bを、バッテリ19を電源として動作する走行用発電機201A,201Bに置き換えた建設機械200が示される。この建設機械200においては、コントローラ300は、ペダル26Cの操作量に応じて、走行用発電機201A,201Bを制御する際、上述の実施例と同様の態様で、推奨速度を基準としたペダル26Cの操作速度の高低に応じて、走行用発電機201A,201Bの出力特性を可変(学習)すればよい。
また、上述した実施例では、レバー26A及び26Bとペダル26Cの操作量は、油圧式に検出されているが、レバー26A及び26Bとペダル26Cの操作量は、ポテンショメータ等を用いて電気的に検出されてもよいし、光学素子を用いて光学的に検出されてもよいし、ホール素子等を用いて磁気的に検出されてもよいし、検出方法は任意である。
また、上述した実施例では、本発明が旋回用電動機21の駆動制御に適用された場合であったが、本発明は、電動機以外のアクチュエータ(例えば、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9、油圧モータ1A及び1B)の駆動制御にも適用可能である。例えば、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の油圧を、レバー26A及びレバー26Bの操作量に応じて、コントロールバルブ17(電磁比例弁)により制御する際、上述の実施例と同様の態様で、推奨速度を基準としたレバー26A及びレバー26Bの操作速度の高低に応じて、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の出力特性を可変すればよい。
また、上述した実施例では、補正用トルク電流指令値は、操作手段の操作速度と推奨速度との関係に依存せずに生成されているが、補正用トルク電流指令値は、操作手段の操作速度と推奨速度との関係に依存して学習により生成されてもよい。例えば、補正用トルク電流指令値は、操作手段の操作速度と推奨速度との関係の高低に応じて補正(学習)されてもよく、このとき、補正用トルク電流指令値は、推奨速度に比べて操作手段の操作速度が高くなると補正用トルク電流指令値が小さくなり且つ推奨速度に比べて操作手段の操作速度が低くなると補正用トルク電流指令値が大きくなる態様で、補正(学習)されてもよい。
また、上述した実施例では、旋回用電動機21がインバータ20によってPWM駆動される交流モータであり、その回転速度を検出するために、レゾルバ22及び旋回動作検出部57を用いる形態について説明したが、旋回用電動機21は直流モータであってもよい。この場合は、インバータ20、レゾルバ22及び旋回動作検出部57が不要となり、回転速度としては直流モータのタコジェネレータで検出される値を用いればよい。
また上述した実施例では、トルク電流指令の演算にPI制御を用いる形態について説明したが、これに代えて、ロバスト制御、適応制御、比例制御、積分制御等を用いてもよい。