JP5100433B2 - 低サイクル疲労特性に優れた浸炭部品 - Google Patents

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Description

本発明は、高い低サイクル曲げ疲労強度を要求される浸炭部品、特に自動車などの駆動系部品に関するものである。
浸炭部品は、自動車等の動力伝達部品、例えばディファレンシャルギヤに適用されている。この浸炭部品の浸炭方法の一つとして、ガス浸炭が広く知られている。ガス浸炭は、ガスのカーボンポテンシャルを自由に制御でき、また浸炭から焼入れまでの連続操業が容易である等の利点がある。このガス浸炭では、下記特許文献1および非特許文献1に記載されているように、浸炭部品の表層のC濃度が0.8%程度に設定されるのが一般的である。すなわち、浸炭部品の表層のC濃度を0.8%よりも低く設定すると、表層の硬さが低下し、浸炭部品の強度(例えば、ディファレンシャルギヤの歯面強度)を確保することが困難となる。また、浸炭時に浸炭部品の表面が酸化され(粒界酸化層の形成)、この表面酸化による不完全焼入れ層の存在によって疲労強度を確保することも困難となる。
また、下記特許文献2には、浸炭方法は特に規定していないが、浸炭部品の表層のC濃度を0.5〜1.0%(発明例は0.62〜0.83%)に設定する技術が開示されている。この特許文献2では、浸炭部品の表層の硬さを確保しながら、表層のオーステナイト粒界に粗大なセメンタイトが生成されることを防止することで靭性を確保するようにしている。
一方、下記特許文献3には、真空浸炭処理により浸炭部品の表層のC濃度を0.7〜0.9%に設定し、かつその表面に1段目のショット粒径よりも2段目のショット粒径が小さいダブルショットピーニング処理を施す技術が開示されている。この特許文献3では、真空浸炭処理により粒界酸化層が形成されることを防止しながら、ダブルショットピーニング処理により残留オーステナイト量を低減することで疲労強度を確保するようにしている。
特開平10−8199号公報 特開平8−92690号公報 特開2002−30344号公報 日刊工業新聞社,「浸炭焼入れの実際 第2版」,1999年2月26日 初2版1刷発行,p.101
ところで、浸炭部品としての例えばディファレンシャルギヤにおける歯元の低サイクル疲労(塑性変形を与えるような大きな繰り返し荷重を作用させた場合に、例えば10000サイクル以下の繰り返し数で起こる疲労破壊)に対する疲労強度を向上させるためには、ギヤ表層のC濃度を低く設定することが有効である。しかしながら、この場合には、上記したギヤの歯面強度等を確保することができない。このため、ギヤに要求される歯面強度等と、その歯元の低サイクル疲労強度との特性を両立させることができないという問題があった。この場合、ガス浸炭に代えて真空浸炭を採用すれば、上記した表面酸化による疲労強度低下の問題は解決できる。しかし、この真空浸炭では、浸炭部品のエッジ部に過剰浸炭が発生するため、上記ガス浸炭の場合と同様、低サイクル疲労強度を向上させることができない。
本発明は、上記問題に対処するためになされたものであり、その目的は、浸炭部品としての例えばディファレンシャルギヤに要求される歯面強度等と、その歯元の低サイクル疲労強度とを共に向上させることが可能な低サイクル疲労特性に優れた浸炭部品を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、以下の知見を得た。(a)破壊起点となる表層粒界破壊を抑制するためには、浸炭鋼の表層粒界にあるCの偏析を抑制することが有効である。そのためには、浸炭処理で濃化される表層Cの管理値を0.40〜0.60%まで下げることが有効である。(b)表層Cの管理値を下げると、当然ながら表層硬さが低下する。表層硬さを確保するためには、浸炭後にショットピーニング処理を施すことが有効である。ショットピーニング処理によれば、加工硬化および圧縮残留応力の効果により、表層硬さ(700HV以上)を確保することができる。また、ショットピーニング処理によれば、疲労き裂の進展を抑制することもできる。(c)表層Cの管理値を下げたものに、単にショットピーニング処理を施すだけでは、例えばディファレンシャルギヤの歯面強度を向上させることはできても、耐塑性変形抵抗性の低下によりその歯元の低サイクル疲労強度を十分に向上させるには至らない。これに対しては、限界硬さを513HVとする有効硬化層深さを管理値として設定することが有効である。
すなわち、本発明の低サイクル疲労特性に優れた浸炭部品は、質量%で、C:0.10〜0.30%未満,Si:0.10%以下,Mn:0.20〜0.60%,P:0.015%以下,S:0.035%以下,Cr:0.50〜1.00%,Mo:0.50〜1.00%,B:0.0005〜0.0030%,Ti:0.010〜0.100%,Nb:0.010〜0.100%を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、ガス浸炭処理後の表層C濃度が0.40〜0.60%であり、限界硬さを513HVとする有効硬化層深さが0.6〜1.2mmであり、かつショットピーニング処理後の表層硬さが700HV以上であることを特徴とする。
この場合、ショットピーニング処理後にて、圧縮残留応力の最大値が800MPa以上であり、その圧縮残留応力が最大となる深さ位置(ピーク深さ)が、表層から100μm以内であるとよい。好ましくは、圧縮残留応力の最大値が1000MPa以上であり、そのピーク深さが表層から50μm以内であることが望ましい。また、浸炭部品は、例えばディファレンシャルギヤであるとよい。
以下、各元素の組成限定理由および限定条件について説明する。
(1)C:0.10〜0.30%未満
Cは、浸炭部品の強度(心部の強度)を確保するための元素である。この効果を得るには、0.10%以上の含有が必要である。他方、過度に含有させると、靭性および低サイクル疲労強度が低下してしまうため、上限を0.30%未満とする。好ましくは、0.25%以下である。
(2)Si:0.10%以下
Siは、溶製時の脱酸剤として添加される。このSiは、浸炭時における粒界酸化を助長する元素であり、低サイクル疲労強度の低下をもたらすため、その含有を極力制限する必要がある。具体的には、0.10%以下の含有とする。好ましくは0.05%以下である。なお、Siは、鋼の焼入れ性を高めるのに有効であるため、この効果を得るために0.01%以上を含有させることができる。
(3)Mn:0.20〜0.60%
Mnは、浸炭時における粒界酸化を助長する元素であり、低サイクル疲労強度の低下をもたらすため、その含有を極力制限する必要がある。具体的には、0.60%以下の含有とする。他方、Mnは、鋼の焼入れ性を高めるのに有効な元素であり、また、靭性向上のためには浸炭後の適度なオーステナイトの残留が必要である。これらの効果を得るには、0.20%以上の含有が必要である。好ましくは0.40%以上である。
(4)P:0.015%以下
Pは、浸炭層の靭性を劣化させる元素である。特に、その含有量が0.015%を超えると、低サイクル疲労強度の低下が著しくなる。また、Pは、不純物元素であるので、できるだけ含有量を0%に近づけることが好ましい。
(5)S:0.035%以下
Sも、浸炭層の靭性を劣化させる元素であり、Pと同様にその含有量が0.035%を超えると、低サイクル疲労強度の低下が著しくなる。しかし、被削性を特に要求されている場合には、0.010〜0.020%含有してもよい。
(6)Cr:0.50〜1.00%
Crも、Mnと同様に浸炭時における粒界酸化を助長する元素であり、低サイクル疲労強度の低下をもたらすため、その含有を極力制限する必要がある。具体的には、その含有量を1.00%以下に制限する。好ましくは0.80%以下である。他方、Crは、鋼の焼入れ性を高めるのに有効な元素であるから、この効果を得るには、0.50%以上の含有が必要である。
(7)Mo:0.50〜1.00%
Moは、鋼の焼入れ性を高めるのに有効な元素であり、Cr含有量を制限したことにより不足する鋼の焼入れ性を補完するために添加する。また、浸炭された表層の靭性を向上させるのに有効な元素でもある。これらの効果を得るには、0.50%以上の含有が必要である。他方、過度の含有は、浸炭焼入れ後の硬さが高くなり過ぎ、製造性が悪化してしまうので、1.00%以下の含有とする。好ましくは0.80%以下である。
(8)B(固溶B):0.0005〜0.0030%
Bは、浸炭鋼の心部の焼入れ性を向上させるのに有効な元素である。すなわち、Bの添加により、不完全焼入れによる強度低下が防止され、後述する有効硬化層深さが深くなる効果が得られる。また、Bは、浸炭層の結晶粒界に優先偏析して浸炭層の粒界を強化するのに有効な元素でもある。この効果を得るには、0.0005%以上の含有が好ましい。他方、過度の含有は、焼入れ性向上の効果が飽和するだけでなく、熱間および冷間での加工性が低下するので、0.0030%以下の含有とする。
(9)Ti:0.010〜0.100%
Tiは、浸炭鋼中のNと結合して窒化物を生成し、NがBと結合することを防止することで、固溶Bを確保してBの焼入れ性向上の効果を維持するのに有効な元素である。ただし、0.010%未満では浸炭鋼中のNを固定するのに十分でなく、0.100%を超えるとTiNの大型化により冷間での加工性が低下するので、0.100%以下の含有とする。
(10)Nb:0.010〜0.100%
Nbは、浸炭鋼中のCやNと反応して炭窒化物を形成し、浸炭時のオーステナイト結晶粒の粗大化を防止するのに有効な元素である。ただし、0.010%未満ではオーステナイト結晶粒の粗大化を防止する効果が得られにくく、0.100%を超えるとその効果が飽和する。
(11)表層C濃度:0.40〜0.60%
本発明の浸炭部品にはガス浸炭処理が施される。ガス浸炭処理によれば、表層C濃度を所定の設定値に容易に設定することができる。この場合、上述したように、通常の浸炭処理では、浸炭部品の表層C濃度が0.8%程度に設定される。しかし、本発明では、浸炭部品における浸炭層の延性を向上させ、き裂発生強度(疲労試験による、き裂が発生するまでの寿命)を向上させる観点から、後述する試験結果を踏まえて、0.40〜0.60%以下の含有とする。
(12)有効硬化層深さ(限界硬さを513HVとする表面からの深さ位置。表3および表5ではECDと表記する):0.6〜1.2mm
ECDは耐塑性変形性を確保する観点から0.6mm以上が必要である。好ましくは、0.7mm以上である。一方、1.2mm以上にするためには長時間の浸炭が必要であり、コストが高く、また粒界酸化や不完全焼入れ層の生成が顕著となり、強度低下が起きるので、1.2mm以下が好ましい。
(13)ガス浸炭処理
浸炭部品のガス浸炭処理は、表層を高C濃度とする浸炭期と、表層のC濃度を拡散させる拡散期との浸炭焼入れ工程を含んでなるのが一般的である。このガス浸炭処理において、浸炭期および拡散期のカーボンポテンシャル(以下、CPともいう)を何れも高く設定した場合には、浸炭期および拡散期を短くしながら、有効硬化層深さを深くすることができる。しかし、拡散期のCPを高くすると、最終的な表層C濃度が高くなって、き裂発生強度が低下するおそれがある。一方、浸炭期および拡散期のCPを何れも低く設定した場合には、浸炭期および拡散期を長くすることにより、有効硬化層深さを深くすることができる。しかし、浸炭期および拡散期を長くすると、浸炭処理のコストが高くなるおそれがある。そこで、浸炭期のCPを高めに設定し拡散期のCPを低めに設定、すなわち浸炭期におけるカーボンポテンシャルを拡散期におけるカーボンポテンシャルよりも0.30%以上高く設定するとよい。これによれば、浸炭期および拡散期のCPを何れも低く設定した場合に比べ、短い処理時間で有効硬化層深さを深くすることができ、浸炭処理にかかるコストを抑えながら、き裂発生強度を向上させることが可能である。
(14)ショットピーニング
表層C濃度を低くすると、表層硬さが低下し浸炭部品(例えばギヤ)の面強度を確保することが困難となる。ガス浸炭処理後に浸炭部品にショットピーニング処理を施すことにより、き裂の起点となる表層の粒界酸化層を除去することができ、また圧縮残留応力の付与により表層の硬さを良好に確保することができる。
(15)表層硬さ:700HV以上
浸炭部品の表面強度を確保する観点から、表層にて少なくとも700HVの硬さが必要である。ここで、表層硬さとは、表面から0.05mmの深さ位置における硬さを意味する。
(16)圧縮残留応力の最大値:800MPa以上
曲げ疲労による、き裂の発生を抑制する観点から、少なくとも800MPa以上の圧縮残留応力が必要である。好ましくは、後述する試験結果を踏まえて、1000MPa以上とする。絶対値が高い方が好ましいが、ショットピーニングのコストが高くなり、また被投射部材の降伏強度を超えると表層にき裂が発生し、曲げ疲労強度を低下させることになる。
(17)ピーク深さ:100μm以内
浸炭部品の表層の応力値を確保するためである。好ましくは50μm以内とする。本発明のピーク深さを規定する目的は、表層の浅い部分に高い残留応力となっている部分を形成することであり、本発明のように表層から100μmの部分を高い残留応力とした上で、100μm以上のところにピークをもってきたものも対象である(複合的にショットピーニングをすればできる)。
本発明は、低サイクル疲労強度(き裂発生強度)が特に必要とされる自動車のディファレンシャルギヤの用途に好適である。以下、本発明による浸炭部品をディファレンシャルギヤに適用した一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、前記ディファレンシャルギヤを備えたディファレンシャルユニット10を示していて、このディファレンシャルユニット10においては、リングギヤ(図示省略)が固定されたディファレンシャルケース11内に、ディファレンシャルギヤとしての左右一対のサイドギヤ12,12と、両サイドギヤ12に係合する差動ピニオン13,13とが収容されている。各サイドギヤ12は、アクスルシャフト(図示省略)に連結され、各差動ピニオン13は、ディファレンシャルケース11に設けたピニオンシャフト14に対して回転自在に装着されている。
車両の走行時、ディファレンシャルユニット10は、エンジンからの回転トルクをドライブピニオン(図示省略)およびリングギヤを介して、ディファレンシャルケース11、ピニオンシャフト14、両差動ピニオン13、両サイドギヤ12の順に伝達し、アクスルシャフトを回転させる。
以上、本発明による浸炭部品をディファレンシャルギヤに適用した一実施形態について説明したが、浸炭部品の適用範囲はこれに限らず、低サイクル疲労強度が要求される機械構造部品に広く適用することができる。
a.第1実施例
まず、表1に示す化学成分の鋼Aを電気炉を用いて溶製した。この鋼Aを直径22mmの丸棒に熱間圧延し、920℃で1時間保持して空冷した後、図2に示す形状の試験片をそれぞれ作製した。この試験片は1.5Rの円弧溝状の切欠きを持ち、歯車の歯元(強度)を模擬している。そして、各試験片を図3、図4(A),4(B)に示す何れかの浸炭条件(浸炭焼入れ焼戻し工程)に従って表層C濃度を変化させたものを実施例1〜7、比較例1〜9とした。
図3の浸炭条件aは、浸炭焼入れ工程における浸炭期のCPを高C濃度(0.9%)とし、拡散期のCPを低C濃度(0.55%)とし、浸炭期を90分、拡散期を90分に設定したものである。浸炭条件bは、通常の浸炭焼入れ工程で採用されることの多い条件であり、浸炭期および拡散期のCPを何れも高C濃度(浸炭期:0.8%、拡散期:0.7%)とし、浸炭期を240分、拡散期を180分に設定したものである。浸炭条件cは、浸炭期および拡散期のCPを何れも低C濃度(浸炭期:0.65%、拡散期:0.55%)とし、浸炭期を90分、拡散期を90分に設定したものである。
図4(A),4(B)の浸炭条件a1〜a5は、図3の浸炭条件aをベースとして更に個々の設定を適宜変更したものである。具体的には、浸炭条件a1,a2は、浸炭条件aにおける浸炭期および拡散期を共に長くしたものである。浸炭条件a3は、表層C濃度の下限値が0.40%以上となる範囲内で浸炭条件aにおける拡散期のCPを低くし、かつ拡散期を長くしたものである。浸炭条件a4は、表層C濃度の下限値が0.40%を下回るように浸炭条件aにおける拡散期のCPを低くし、かつ拡散期を長くしたものである。浸炭条件a5は、表層C濃度の下限値が0.60%を上回るように浸炭条件aにおける拡散期のCPを高くし、かつ拡散期を長くしたものである。なお、浸炭条件a〜c,a1〜a5の何れについても浸炭焼入れ工程での保持温度を930℃とし、拡散期後、850℃に30分間保持した後、油冷した。また、その後の浸炭焼戻し工程では180℃に120分間保持した後、空冷した。このときの表層C量、有効硬化層深さ(ECD)を後述する表3に示す。
Figure 0005100433
さらに、実施例1〜7については、ショットピーニング(以下、SPともいう)を施した。なお、比較例1〜9については、比較例7〜9についてのみSPを施した。SP条件を表2に示す。表2中、A,Bは、SP条件を変えてSPを2回行うものであり、C,Dは、SPを1回行うものである。なお、ショット粒径「大」はショット粒の直径が0.8mm程度のものを示し、「中」は0.15mm〜0.3mm程度のものを示し、「小」は0.05mm〜0.15mm程度のものを示す。また、アークハイト「大」は1.0mm(A)程度の反り量を示し、「小」は0.2mm(A)程度の反り量を示す。測定方法の詳細はJIS B 2711(2005)参照。
Figure 0005100433
次に、本発明の効果を確認するために行った評価方法および試験について説明する。
(1)表層C濃度
各試験片の表層C濃度を、JIS G 1253に基づき、発光分光分析により測定した。ここでは、C量1%まで測定できるように検量線を作成した(誤差は±0.01%)。また、各試験片の表層C濃度分布を、X線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて線分析により測定した。ここでは、表層C濃度が0.40〜0.60%のものを良とする。
(2)有効硬化層深さ、表層硬さ
各試験片の有効硬化層深さおよび表層硬さを、ISO2639(1982)に準拠し荷重300gのビッカース硬度計を用いて測定した。ただし、有効硬化層深さの限界硬さを513HVとし、表面から0.05mmの深さ位置における硬さを表層硬さとして測定した。ここでは、有効硬化層深さが0.6〜1.2mmのものを良とし、また表層硬さが700HV以上のものを良とする。
(3)圧縮残留応力
実施例1〜7、比較例1〜9について、電解研磨により表面を研磨し、周知のディフラクトメータ法によるX線回折プロファイルに基づいて、ピークの半値幅とピーク中心位置との関係から圧縮残留応力(最大残留応力)を測定した。また、表層からの応力分布を求め、ピーク深さを測定した。ここでは、圧縮残留応力が800MPa以上のものを良とする。
(4)曲げ疲労試験
各試験片について、図2(b)に示す試験方法に従って曲げ疲労試験(4点曲げ試験)を行った。そして、例えば図2(a)に示した試験片の切欠きに貼付した歪ゲージが破損するまでの負荷繰り返し数(き裂発生寿命)を測定した。ここでは、負荷繰り返し数が1100回以上のものを良とする。以上のSP条件、圧縮残留応力、表層硬さ、負荷繰り返し数を表3に示す。
Figure 0005100433
表3によると、表層C濃度が0.40〜0.60%である場合に、SPの有無にかかわらず、き裂発生寿命が長くなっていることがわかる。また、SPを施したものは、SPを施していないものに比して、き裂発生寿命が長くなっている。
実施例1〜6では、優れた表層硬さ(700HV以上)と、き裂発生寿命(1100回以上)とが得られている。このことから、圧縮残留応力の最大値が1000MPa以上である場合に、き裂発生寿命が長くなることがわかる。なお、実施例7では、圧縮残留応力の最大値が806MPaであり、1000MPaには達していないが、SP(D条件)を施すことにより、低サイクル疲労特性としては良好な表層硬さ(762HV)と、き裂発生寿命(1104回)とが得られている。
比較例1,7から、表層C濃度が低い場合には(0.35%)、SPを施しても十分な表層硬さが得られないことがわかる(559HV,639HV)。比較例5から、表層C濃度が高い場合には(0.65%)、十分なき裂発生寿命が得られないことがわかる(585回)。比較例2〜4から、表層C濃度が0.40〜0.60%の範囲内にあっても、SPを施さなければ十分な表層硬さが得られないことがわかる(614HV,662HV,698HV)。比較例8,9から、表層C濃度が0.40〜0.60%の範囲内にあり、SPを施した場合であっても、ECDが0.6〜1.2mmの範囲内になければ、十分なき裂発生寿命が得られないことがわかる(838回,805回)。
b.第2実施例
次に、合金組成の影響を判断するために、表4に示すように合金組成を変え、表層C濃度が0.40〜0.60%となるように、何れも図3の浸炭条件aを採用し、SP条件(A条件)下でSPを施して実施例8〜13、比較例10〜15を作製した。そして、これらの鋼についても、上記第1実施例と同じ評価方法および試験を行った。以上の結果を表5に示す。
Figure 0005100433
Figure 0005100433
表5によると、実施例8,9のように、Cの組成を0.10〜0.30%の範囲内で変えた場合、実施例10,12,13のように、Cr,Moの組成をそれぞれ0.50〜1.00%の範囲内で変えた場合にも、優れた表層硬さ(700HV以上)と、き裂発生寿命(1100回以上)とが得られている。
比較例10からCの含有量が低い場合には、SPを施しても十分なECDが得られないことがわかる(0.55mm)。また、心部硬さも十分に得られないことから、十分なき裂発生寿命が得られないことがわかる(963回)。比較例12,14から、それぞれCr,Moの含有量が低い場合には、SPを施しても十分な表層硬さが得られないことがわかる(506HV,583HV)。比較例11,13から、それぞれC,Crの含有量が高い場合には、十分なき裂発生寿命が得られないことがわかる(973回,1007回)。
以上の結果、本発明では、表層硬さ・き裂発生寿命が共に優れていることが確認された。したがって、本発明をディファレンシャルギヤに適用することによって、その歯面強度と、歯元の低サイクル疲労強度とを共に向上させることが可能である。
本発明による浸炭部品の一実施形態に係るディファレンシャルギヤを備えたディファレンシャルユニットを示す断面模式図。 (a)は試験片を示す正面図。(b)は曲げ疲労試験(4点曲げ試験)の概要を示す説明図。 浸炭条件を示す説明図。 (A),(B)は図3の浸炭条件aをベースとして個々の設定を適宜変更した浸炭条件を示す説明図。
符号の説明
12 サイドギヤ(ディファレンシャルギヤ)

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.10〜0.30%未満,Si:0.10%以下,Mn:0.20〜0.60%,P:0.015%以下,S:0.035%以下,Cr:0.50〜1.00%,Mo:0.50〜1.00%,B:0.0005〜0.0030%,Ti:0.010〜0.100%,Nb:0.010〜0.100%を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、
    ガス浸炭処理後の表層C濃度が0.40〜0.60%であり、限界硬さを513HVとする有効硬化層深さが0.6〜1.2mmであり、かつショットピーニング処理後の表層硬さが700HV以上であることを特徴とする低サイクル疲労特性に優れた浸炭部品。
  2. 前記ショットピーニング処理後にて、圧縮残留応力の最大値が800MPa以上であり、その圧縮残留応力が最大となる深さ位置が、表層から100μm以内であることを特徴とする請求項1に記載の低サイクル疲労特性に優れた浸炭部品。
  3. 前記浸炭部品は、ディファレンシャルギヤであることを特徴とする請求項1または2に記載の低サイクル疲労特性に優れた浸炭部品。
  4. 請求項1ないし3の何れか1項に記載の浸炭部品における浸炭焼入れ工程を、表層を高C濃度とする浸炭期と、表層のC濃度を拡散させる拡散期とを含んで構成し、前記浸炭期におけるカーボンポテンシャルを前記拡散期におけるカーボンポテンシャルよりも0.30%以上高く設定したことを特徴とする低サイクル疲労特性に優れた浸炭部品の製造方法。
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