以下、本発明に係る遊技機の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の実施形態に係る遊技機を示した正面図である。図示されるように、遊技機1はパチンコ遊技機である。
この遊技機1には、所要の奥行きを有する額縁形状に形成された機枠2を備えており、その機枠2の前面側には、左側縁が軸着されて前方に開閉可能に前面枠3が取り付けられ、その前面枠3に対して左側縁が軸着されて前面側に開閉可能に形成されたガラス枠4が取り付けられている。
尚、以下の説明においては、遊技機1の前面とは、遊技機1の正面側(遊技者が遊技を行う側)のことであり、遊技機1の裏面或いは後方とは遊技機1の背面側のことである。また遊技機1の左側、右側、上側、下側とは、遊技機1を正面側(遊技者側)から視た場合の左側、右側、上側、下側のことである。また、遊技機1を構成する各種部材においても、表側、裏側、前面側、後側等という場合、特に断りがない限り、遊技機1に装着された状態での表側、裏側、前面側、後側方向等である。
図1に示されるように、ガラス枠4には、遊技盤5の位置にガラス板またはプラスチック板等の透明板が嵌め込まれており、この透明板を通して前面側から遊技盤5の遊技領域6を視認可能である。また、ガラス枠4には、遊技領域6へ発射するための遊技球を入れる上皿ユニット7が一体的に形成されている。上皿ユニット7には、貯留されている遊技球を下皿ユニット8に流下させるための上皿操作部9等が設けられている。また、ガラス枠4の上部左右両側には、スピーカ10,10が設けられている。
図1に示されるように、前面枠3のガラス枠4の下方には、左側縁が軸着されて前面枠3に対して開閉可能な下皿ユニット8が組み付けられている。また、前面枠3の右下には、遊技球を発射操作するためのタッチスイッチを備える発射ハンドル12が設けられている。下皿ユニット8は、払い出された遊技球のうち上皿ユニット7に入りきらない遊技球を貯めることが可能である。下皿ユニット8には、遊技球を下方に落下させるための下皿操作部13等が設けられている。
図2は図1の遊技盤5を示す正面図である。遊技盤5は、ほぼ正方形の合板により成形されており、前面枠3に着脱可能に取り付けられている。この遊技盤5には、発射装置から発射された遊技球をガイドするための金属製の薄板からなる帯状の内側ガイドレール14および外側ガイドレール15が略円弧形状に立設されており、このガイドレール14,15によって遊技領域6の外郭の一部が形成されている。
図2に示されるように、遊技盤5の遊技領域6には、その中心線上において上から順に、遊技状況に応じた演出を行うことが可能な遊技演出装置としての表示装置17、電動チューリップからなる始動入賞装置18、長方形の開口部を開閉可能に覆っている蓋からなるアタッカー形式の特別入賞装置19、アウト口20が配置されている。また、遊技領域6には、風車21や、流下する遊技球が衝突することにより遊技球の流下態様に変化を与える障害物としての図示しない遊技釘が複数立設されている。遊技領域6を流下する遊技球は、遊技釘に衝突したときの条件に応じて様々な態様に変化して流下される。
このような遊技機1においては、発射ハンドル12の操作により発射装置から遊技領域6に遊技球を発射すると、遊技球が遊技領域6の表面を転動しながら落下し、その遊技球が始動入賞装置18、特別入賞装置19等の入賞装置に入ると、所定数の賞球遊技球が、払い出されるように構成されている。
尚、特に図示しないが、遊技機1の背面側には、枠用外部端子基板、表示制御基板、主制御基板、音声制御基板、ランプ制御基板、払出制御基板、発射制御基板、電源基板等の各種基板や、カードインターフェース接続部、球タンク、タンクレール、屈曲樋、球切れ検出スイッチ、球払出装置,球排出樋、発射装置等の遊技機構成部材が設けられている。
表示装置17としては、液晶表示パネルが適用されており、その矩形状の表示画面(表示部17a)において種々なる図柄等が表示されるようになっている。この表示部17aの前面の周囲には、遊技の装飾効果(遊技演出効果)を高めるためのセンター役物30が配設されている。センター役物30は、前面側装飾部材40や可動演出装置50などを備えている。前面側装飾部材40は、遊技盤5の前面側に設けられており、その略中央には表示部17aを視認可能な開口部40aが形成され、表示部17aの周囲を装飾している。
可動演出装置50は、表示部17aの下方に配置されており、羽根の形状を模した変位部材63,64が左右に配された可動部材60を備えている。この可動部材60は、図2に示されるような前面側装飾部材40の下側に設けられたカバー体40bの背面側に隠れるように配置される待機位置(第1位置P1)と、前面側装飾部材40の開口部40a内、つまり表示部17aの下辺からその前面側に現れる(露出される)ように配置される露出位置(第2位置P2)との間を往復移動できるようになっている。更に、待機位置(第1位置P1)において、閉じた姿勢(第1姿勢S1)になっていた変位部材63,64を、可動部材60が露出位置(第2位置P2)に到達する前に、上下に開いた姿勢(第2姿勢S2)に変位させることが可能になっている。
例えば、入賞装置に遊技球が入賞して遊技状態が変化して、遊技機1に備えられる制御回路等から可動演出装置50を駆動させる命令が発生すると、可動部材60は、図2に示されるようなカバー体40bの背面側に隠れるように配置される待機位置(第1の位置)P1から、前面側装飾部材40の開口部40a内に徐々に現れ(露出され)ながら露出位置(第2の位置)P2に移動させられると共に、露出位置P2の手前位置から変位部材63,63が開くように変位(回動)されるようになっている。
図3は、センター役物30が備えるセンターベース41と、このセンターベース41に取り付けられた可動演出装置50の正面図を示している。尚、図3においては遊技盤5、前面側装飾部材40の記載は省略されている。
図示されるように、センターベース41は、可動演出装置50などの部材を取り付けるための枠体状の部材である。尚、前面側装飾部材40は遊技盤5の前面側に装着され、センターベース41は遊技盤5の背面側に装着されるようになっており、遊技盤5は前面側装飾部材40とセンターベース41との間に挟み込まれるように配設されるように構成されている。
センターベース41は、表示装置17の表示部17aの周囲を囲むように形成されており、その中央部分には、表示部17aを視認可能にするための開口部41aが設けられている。この場合、開口部41aの背面側に表示装置17は取り付けられるようになっている。また、センターベース41の前面側は、前面側装飾部材40にその背面側から光を照射するLED(発光ダイオード)が複数実装されたLED基板(図示せず)などの各種部材を取り付けたり収納したりするための額縁状の枠体として形成されている。
図示されるように、可動演出装置50の本体であるベース体51は、センターベース41の矩形状の開口部41aの下辺(表示部17aの下辺)よりも下方に配設されている。
図4は、可動演出装置50を前面側から視た外観斜視図、図5は、可動演出装置50を背面側から視た外観斜視図を示している。また、図6は、可動部材60を前面側から視た分解斜視図、図7は、可動部材60を背面側から視た分解斜視図である。
また、図8および図9は、可動部材60が第1位置P1にある状態の可動演出装置50を前面側から視た外観斜視図およびその背面図を示している。図10および図11は可動部材60が第1位置P1と第2位置P2との間の途中位置(当接位置PT)にある状態でかつ変位部材63,64が閉じた姿勢(第1姿勢S1)になっている状態の可動演出装置50を前面側から視た外観斜視図およびその背面図を示している。
更に、図12および図13は可動部材60が第1位置P1と第2位置P2との間の途中位置(当接位置PT)にある状態でかつ変位部材63,64が開いた姿勢(第2姿勢S2)になっている状態の可動演出装置50を前面側から視た外観斜視図およびその背面図を示している。そして、図14および図15は、可動部材60が第2位置P2にある状態の可動演出装置50を前面側から視た外観斜視図およびその背面図を示している。尚、図9、図11、図13および図15の背面図においては、図面を簡略化するためにベース体51等の記載が省略されている。
図示されるように、可動演出装置50には、可動部材60、ベース体51、モータ81などが備えられている。
先ず、可動部材60について説明する。図6および図7に示されるように、可動部材60は、表側カバー61、裏側カバー62、変位部材63,64、連結部材71などを備えている。表側カバー61の中央には、略楕円形の透明部61aが形成されており、その背面に配される図示しないLEDなどの光源からの光が照射されて、発光するように構成されている。表側カバー61と裏側カバー62との間の空間には、変位部材63,64の基端部63a,64aが収容可能になっている。
変位部材63,64は左右に延びる羽根を模した形状を有しており、上側に配される左右一対の変位部材63,63は、基端部63a,63aを略中心にして上下に回動可能となっていると共に、下側に配される左右一対の変位部材64,64は、基端部64a,64aを略中心にして上下に回動可能となっている。この場合、変位部材63が前側、変位部材64が後側になるように配されており、変位部材63,64の基端部63a,64a同士が前後に重なるように構成されている。
このような変位部材63,64は、図10に示されるような変位部材63,64が互いに接近するように閉じた姿勢(第1姿勢S1)と、図12に示されるような変位部材63,64が互いに離間するように開いた姿勢(第2姿勢S2)とに変位(回動)することが可能になっている。
図7に示されるように、上側に配される変位部材63の基端部63aには、後方に向かって突出した円筒部63bが形成されており、この円筒部63bには、下側に歯部を有する連動ギア65が一体回転可能に係合するようになっている。これら変位部材63の円筒部63bの開口孔および連動ギア65の開口孔には、裏側カバー62に開口されたピン挿通孔62aを通る軸支ピン72が挿入されるようになっている。また、変位部材63の円筒部63bの開口孔に挿入された軸支ピン72の先端は、表側カバー61の背面に形成された係止孔61bに係止されるようになっており、係止孔61bに軸支ピン72によって軸支された変位部材63はその円筒部63bを中心にして上下に回動可能にされている。
また、同じく図7に示されるように、下側に配される変位部材64の基端部64aには、円筒部64bが形成されており、この円筒部64bには、上側に歯部を有する連動ギア66が一体回転可能に係合するようになっている。これら変位部材64の円筒部64bの開口孔および連動ギア66の開口孔には、裏側カバー62に開口されたピン挿通孔62bを通る軸支ピン73が挿入されるようになっている。また、変位部材64の円筒部64bの開口孔に挿入された軸支ピン73の先端は、変位部材63の円筒部63bの下方に配置された円弧形のガイド孔63cを通って、表側カバー61の背面に形成された係止孔61cに係止されるようになっており、係止孔61cに軸支ピン73によって軸支された変位部材64はその円筒部64bを中心にして上下に回動可能にされている。
この場合、図6に示されるように、連動ギア65と連動ギア66は、互いの歯部が噛み合うように上下に配されているので、変位部材63,64の一方を上方(または下方)に回動させると、それに連動して変位部材63,64の他方が下方(または上方)に変位(回動)するように構成されている。
また、図7に示されるように、下側に配される変位部材64の円筒部64bから偏心した位置には、長円形に開口されたカム溝64cが形成されている。このカム溝64cには、連結部材71の前方に向かって突出形成された円筒形のカム71aが、裏側カバー62の上下長円形に開口されたカム挿通孔62cを通って係合されるようになっている。したがって、例えば、連結部材71のカム71aが、裏側カバー62のカム挿通孔62c内において下方にスライド移動すると、変位部材64は下方に変位(回動)されると共に、これに連動して変位部材63は上方に変位(回動)されるようになっている。
裏側カバー62は、上述した変位部材63,64の基端部63a、64aと連動ギア65,66を収容した状態で、表側カバー61にネジ止めによって固定可能になっている。この裏側カバー62は、表側カバー61とほぼ同じ大きさの取付部62dと、この取付部62dから下方に延びると共に、後方に開口した略箱状の収容部62eを有している。この場合、収容部62eは、取付部62dの中央から右寄り位置に設けられている。
この裏側カバー62の取付部62dの左右には、軸支ピン72,72が挿通されるピン挿通孔62a,62aと、軸支ピン73,73が挿通されるピン挿通孔62b,62bとが上下に配されている。また、裏側カバー62の取付部62dの左右端部には、連結部材71のカム71a,71aが上下にスライド可能に挿通される上下に長円形状を有するカム挿通孔62c,62cが開口形成され、これにより連結部材71のカム71a,71aの移動範囲が規制されている。そして、裏側カバー62の収容部62eの内側には、連結部材71の延設部71bが上下にスライド可能に収容されるように構成されている。
更に、裏側カバー62の取付部62dの背面の中央の上下には、取付用円筒部62f,62fが後方に向かって突出形成されており、第2ラック部材59に形成された取付孔59a,59aにネジ止めすることによって、その第2ラック部材59を裏側カバー62の背面側に固定することができるようになっている。この場合、裏側カバー62の背面と第2ラック部材59の前面との間に挟み込まれる連結部材71は、取付用円筒部62f,62fの突出長さによって、その連結部材71が上下にスライド可能となるように、裏側カバー62と第2ラック部材59との間の距離(間隙)が設定されている。
また、裏側カバー62の取付部62dの背面には、上側に配された取付用円筒部62fのやや下方位置に、コイルバネからなる第1付勢バネ74の一端が係止されるバネ係止片62gが後方に向かって突出形成されている。
このような裏側カバー62の背面には、連結部材71が上下にスライド可能に配されている。この連結部材71は、略U形のスライド板部71cと、このスライド板部71cから下方に延びた棒状の延設部71bを有している。この場合、延設部71bは、スライド板部71cの中央から右寄り位置に設けられている。
この連結部材71のスライド板部71cの中央には、上方から切り欠くように形成された切欠部71dが形成されている。このスライド板部71cの切欠部71dの内側に、裏側カバー62のバネ係止片62gが配置されるようになっている(図11参照)。また、この切欠部71dの左右には、軸支ピン72,72が上下にスライド可能に挿通されるピンスライド孔71e,71eと、軸支ピン73,73が上下にスライド可能に挿通されるピンスライド孔71f,71fとが上下に配されている。また、連結部材71のスライド板部71cの前面の左右両端には、円筒形のカム71a,71aが前方に向かって突出形成されている。
また、スライド板部71cの背面の下端部には、一端が裏側カバー62のバネ係止片62gに係止された第1付勢バネ74の他端が係止される係止片71gが後方に向かって突出形成されている。
したがって、図11に示されるように、裏側カバー62の背面にスライド可能に配された連結部材71は、第1付勢バネ74によってその裏側カバー62に対して上方に向かって引っ張られている(付勢されている)構成になっているので、それに伴って、連結部材71のカム71aが、裏側カバー62のカム挿通孔62c内において上方にスライド移動されている。これにより、変位部材63は下方に変位(先端が下方に向いている状態に)されると共に、これに連動して変位部材64は上方に変位(先端が上方に向いている状態に)されており、変位部材63,64が互いに接近するように閉じた姿勢(第1姿勢S1)に保持されている。
図7に示されるように、連結部材71の延設部71bの下端寄り位置には、後方に向かって突出した第1当接部71hが形成されている。この第1当接部71hには、図8および図10に示されるように、その上方から接触部材52の第2当接部52bが接触可能となっている。この場合、連結部材71の第1当接部71hを、第1付勢バネ74よりも付勢力の大きい第2付勢バネ75によって下方に引っ張られた(付勢された)状態の接触部材52の第2当接部52bによる接触によって、連結部材71を上述した第1付勢バネ74の付勢に抗して下方へとスライドさせること可能となっている(図12および図13参照)。これにより、図10および図11に示されるような閉じた第1姿勢S1の変位部材63,64を、図12および図13に示されるような開いた第2姿勢S1へと変位させることが可能になっている。
このような構成を有する可動部材60は、図8に示されるようなベース体51の上端よりも下方に配置された第1位置P1と図14に示されるようなベース体51の上端よりも上方に配置された第2位置P2との間を、ベース体51に設けられた駆動機構によって上下にスライド移動可能にされている。
ベース体51は、横長の板状の部材で、図3に示されるように、センターベース41に図示しない固定ネジによって取付可能になっている。
図4に示されるように、ベース体51の前面には、モータ81、センサ基板91、接触部材52、接触部材用カバー53、保護カバー54などが備えられている。
接触部材52は、略四角形を有する部材で、ベース体51の右上部に配されている。この接触部材52は、図12および図14に示されるような、ベース体51の前面の右側上部に形成された上下に延びる左右一対のガイドレール51a,51aによって左右方向への移動が規制され、第3位置P3と第4位置P4との間で上下にスライド可能になっている。また、ベース体51の右側の下端位置には、バネ係止片51bが前方に向かって突出形成されている。このバネ係止片51bには、コイルバネからなる第2付勢バネ75の一端が係止されている。この第2付勢バネ75の他端は、接触部材52の下端に開口形成されたバネ係止孔52aに係止されている。したがって、接触部材52は、第2付勢バネ75によって、常時下方に引っ張られる(付勢される)ように構成されている。この場合、接触部材52は、ガイドレール51a,51aの下端に形成された保持部51cによって、その保持部51cから下方への移動が規制されている。
また、接触部材52の左端の上方部位には、左(連結部材71側)に向かって突出する第2当接部52bが形成されている。この第2当接部52bには、上述した可動部材60が備える連結部材71の下端に形成された第1当接部71hが下方から接触(当接)することが可能になっている。
このような接触部材52は、図4に示されるように、接触部材用カバー53によってその接触部材52の前面のほぼ右半分が覆われるようになっている。
ベース体51には、その中央よりやや右寄り位置に上下に延びるスリット状のガイド溝51dが形成されている。このガイド溝51dは、ベース体51の略中央の上端から下方に切り欠くように開口形成されている。
このガイド溝51dには、図6に示されるような、可動部材60に固定される第2ラック部材59と、この第2ラック部材59の前面に連結される上下に長円形のガイド板部59bとの連結部59cが、上下にスライド可能に挿通されている。
このようなガイド溝51dの下方部において、第2ラック部材59のガイド板部59b、裏側カバー62の収容部62eおよび第2付勢バネ75は、保護カバー54によって覆われるようになっている(図4および図8参照)。
図5に示されるように、ベース体51の背面には、可動部材60を上下方向に往復移動させる駆動機構として、駆動円板82、第1ラック部材55、第1ピニオン56、第2ピニオン58、第2ラック部材59などが配されている。
モータ81は、図4に示されるようにベース体51の前面の左下に取り付けられている。そして、図5に示されるように、モータ81の駆動軸81aは駆動円板82の中心に固定されており、駆動円板82は駆動軸81aと一体回転可能になっている。また、駆動円板82の中心から偏心した位置には円筒形のカム82aが後方に向かって突出形成されている。
ベース体51の背面には、略U字形の第1ラック部材55が配されている。この第1ラック部材55は、左右両端がガイド板77,77によって上下にスライド可能に支持されている。この第1ラック部材55には、駆動円板82のカム82aが挿入されて係合される横長の長円形を有するカム溝55aが右下位置に開口形成されている。したがって、モータ81の駆動によって駆動円板82が回動(回転)されると、駆動円板82のカム82aと、このカム82aが係合されるカム溝55aを介して第1ラック部材55は上下にスライド移動されるようになっている。
また、第1ラック部材55の左右の内側には、歯部55b,55bが上下方向に沿って形成されている。この第1ラック部材55の左右の歯部55b,55bの内側位置には、この歯部55b,55bに噛み合う一対の平歯車からなる第1ピニオン56,56がベース体51の背面に回転可能に軸支されている。この第1ピニオン56,56には、この第1ピニオン56,56より外径が大きい平歯車からなる可動ギア57,57が、第1ピニオン56,56と一体回転可能に設けられている。
更に、可動ギア57,57の内側位置には、この可動ギア57,57に噛み合う一対の平歯車からなる第2ピニオン58,58がベース体51の背面に回転可能に軸支されている。そして、この第2ピニオン58,58の内側位置には、この第2ピニオン58,58に噛み合う歯部59d,59dを左右端部に有する上下に長い略長方形の第2ラック部材59が上下にスライド可能に配されている。
したがって、第2ラック部材59は、モータ81の駆動によって駆動円板82が回動されると、第1ラック部材55、第1ピニオン56,56、可動ギア57,57、第2ピニオン58,58を介して、上下にスライド移動することが可能になっている。
この場合、第1ラック部材55の中央の上端には、コイルバネからなる第3付勢バネ76の一端が係止されるバネ係止片55cが形成されている。また、第3付勢バネ76の他端は、ベース体51の背面の中央の上端に形成されたバネ係止片51eに係止されている。したがって、第1ラック部材55は、第3付勢バネ76によってベース体51に対して上方に常時引っ張られるように付勢されている。このように、第1ラック部材55をベース体51に対して上方に引っ張るようにすることで、駆動円板82、第1ラック部材55、第1ピニオン56,56、可動ギア57,57、第2ピニオン58,58および第2ラック部材59を動作させるのに要するモータ81の駆動力を低減させることが可能になっている。すなわち、第2ラック部材59に固定された可動部材60を動作させるのに要するモータ81の駆動力を低減させることが可能になっている。
このような駆動手段であるモータ81としては、ステッピングモータが適用されており、駆動円板82を正転方向に所定角度回転させたり、その正転方向とは反対の反転方向に所定角度回転させたりすることが可能になっている。このモータ81にはコネクタ部81bが設けられており、モータ81は、遊技機1が備える制御回路等とこのコネクタ部81bおよび図示しないケーブルを介して電気的に接続されて、制御回路等によってモータ81の回転駆動が制御可能となっている。
図5に示されるように、第1ラック部材55の左端部には、ガイド板77を越えて側方に延出されると共に前方に向かって突出した位置検出用突起部55dが形成されている。この位置検出用突起部55dは、ベース体51の左側に上下に延びるように開口されたスリット51fに挿入されており、そのスリット51fから前方に向かって所定長さ突出するように設けられている。この場合、位置検出用突起部55dは、センサ基板91の背面に実装された初期位置検出センサ92の対向検出部92a,92aの間に受容可能に配置されている。
センサ基板91は、ベース体51の前面に取付固定されている。センサ基板91の背面には、初期位置検出センサ92が実装されており、この初期位置検出センサ92の対になって設けられた対向検出部92a、92aの内部には、図示しない位置検出素子が内蔵されている。これら一対の位置検出素子は、相互間で信号(例えば赤外線)を送受信することが可能になっている。このような対向検出部92a,92aによる信号の送受信は、上述した第1ラック部材55の位置検出用突起部55dによって遮ることが可能になっている。
このような第1ラック部材55の位置検出用突起部55dが、対向検出部92a,92aの間に配置されることにより、対向検出部92a,92aによる信号の送受信が不能となるので、この状態を初期位置(原点または基準位置)として、モータ81を所定角度回転させることで、第1ラック部材55を上下方向に所定距離で往復移動させることが可能になっている。これにより、第2ラック部材59、つまりこの第2ラック部材59の前面に固定された上述の可動部材60を、再現性良く上下方向に所定距離(第1位置P1と第2位置P2の間の距離)で往復移動させることが可能になっている。
尚、センサ基板91の前面には、コネクタ部91aが設けられており、センサ基板91は、遊技機1が備える制御回路等とこのコネクタ部91aおよび図示しないケーブルを介して電気的に接続されて、制御回路等からの初期位置検出センサ92への電源の供給や、制御回路等による初期位置検出センサ92からの検出信号の受信が可能になっている。
次に、図8〜図15を用いて可動演出装置50の動作について説明する。
図8および図9に示されるように、可動部材60は、変位部材63,64を閉じた第1姿勢S1のまま、待機位置(最下点位置)である第1位置P1にある状態になっている。また、接触部材52は、第2付勢バネ75によって、ベース体51の保持部51cに当接した第3位置P3にある状態になっている。
次に、入賞装置に遊技球が入賞して表示部17aにおいて表示図柄がリーチになる等、遊技状態が変化して、遊技機1に備えられる制御回路等が、可動演出装置50のモータ81を駆動させる命令が発生すると、制御回路はモータ81を回転駆動させる。
モータ81が駆動されると、ベース体51の背面に設けられた駆動円板82、第1ラック部材、第1ラック部材55、第1ピニオン56,56、可動ギア57,57、第2ピニオン58,58、第2ラック部材59を介して、可動部材60は上方にスライド移動を始める。
図10および図11は、連結部材71の第1当接部71hが、接触部材52の第2当接部52bに接触する直前(または接触した瞬間)の可動部材60の位置(当接位置PT)を示している。図示されるように、可動部材60は、第1位置P1から当接位置PTまでを移動する間は、その変位部材63,64は閉じた第1姿勢S1に保持されている。
そして、図12および図13に示されるように、連結部材71の第1当接部71hが、接触部材52の第2当接部52bに接触した状態で、更に可動部材60が当接位置PTより上方に移動されると、接触部材52を下方に引っ張る第2付勢バネ75の付勢力が、連結部材71を裏側カバー62(可動部材60)に対して上方に引っ張っていた第1付勢バネ74の付勢力に打ち勝って、連結部材71が裏側カバー62(可動部材60)に対して下方へと移動されると、この連結部材71の移動に伴って、変位部材63,64は開いた第2姿勢S2に変位される。
そして、図14および図15に示されるように、変位部材63,64は開いた第2姿勢S2に保持されたまま、可動部材60は第2位置P2にまで移動する。このとき、接触部材52は、ガイドレール51aの上方の第4位置P4にまで移動した状態(連結部材71によって引っ張り上げられた状態)にされている。
上述した可動演出装置60は、遊技状態に応じて第1位置P1と第2位置P2との間で往復移動可能な可動部材60と、可動部材60を往復移動させるための駆動手段81と、可動部材60および駆動手段81が取り付けられるベース体51とを備えている。
可動部材60には、その可動部材の第1位置P1と第2位置P2との間の移動に伴って第1姿勢S1と第2姿勢S2と間で変位可能な変位部材63,64と、変位部材63,64を第2姿勢S2から第1姿勢S1に変位させるように付勢する第1付勢部材74と、変位部材63,64に第1付勢部材74を介して連結された連結部材71とが設けられている。また、ベース体51には、可動部材60の第1位置P1と第2位置P2との間の移動に伴って連結部材71に接触する接触部材52が、可動部材60と異なる位置の第3位置P3と第4位置P4との間で往復移動可能に設けられている。更に、接触部材52には、変位部材63,64を第1姿勢S1から第2姿勢S2に連結部材71によって変位させるようにその連結部材71に形成された第1当接部71hに接触可能な第2当接部52bが形成されている。
そして、可動部材60が第1位置P1にある場合には、第1付勢部材74の付勢力により変位部材63,64が第1姿勢S1に保持される一方(図8参照)、可動部材60が第1位置P1から移動するに伴って連結部材71の第1当接部71hが、第3位置P3にある接触部材52の第2当接部52bと接触する当接位置PTから更に移動することで、その連結部材71を介して変位部材63,63を第1付勢部材74の付勢力に抗して第1姿勢S1から第2姿勢S2に変位させると共に(図10および図12参照)、可動部材60の当接位置PTから第2位置P2への移動に伴って連結部材71の第1当接部71hと接触部材52の第2当接部52bが接触した状態のままにその接触部材52が第3位置P3から第4位置P4へと移動することで、変位部材63,64が第2姿勢S2に保持されたまま可動部材60が第2位置P2へと到達するようにされている(図14参照)。
したがって、このような可動演出装置50によれば、可動部材60を第1位置P1から第2位置P2へと駆動手段81によって移動させるだけで、可動部材60に設けられた連結部材71および第1付勢部材74と、ベース体51に設けられた接触部材52によって、可動部材60に設けられた変位部材63,64を第1姿勢S1から第2姿勢S2へと変位させることができるので、可動部材60の移動とその可動部材60に設けられた変位部材63,64の変位という2段階の動作を一の駆動手段81で行うことが可能になっている。つまり、一の駆動手段81を用いるだけで、可動部材60を第1位置P1と第2位置P2の間で移動させることが可能であると共に、変位部材63,64も第1姿勢S1と第2姿勢S2との間で変位させることが可能となっており、変位部材63,64を変位させるため専用の駆動手段、例えば従来技術で説明した特許文献1に記載されるような電動ソレノイド等を別途用意する必要がない。したがって、これらの部材を移動または変位させるための機構が複雑化してしまうことが抑制されると共に、遊技機1という限られた空間にこのような可動演出装置50をコンパクトに配置することが可能となっている。
また、可動部材60が、第1位置P1と当接位置PTとの間において移動される際には、変位部材63,64を第1姿勢S1に保持する一方(図8および図10参照)、可動部材60が、当接位置PTと第2位置P2との間において移動される際には、変位部材63,64を第2姿勢S2に保持するようにしたこと構成になっている(図12および図14参照)。つまり、可動部材60が第2位置P2に到達したときに変位部材63,64を変位させるのではなく、可動部材60が第2位置P2に到達する前の途中位置(当接位置PT)から変位部材63,64を第1姿勢S1から第2姿勢S2へと変位させ、その第2姿勢S2を保持したまま可動部材60を第2位置P2へと到達させるようにしたので、従来よりもその演出効果が向上している。
したがって、このような可動演出装置50を備えた遊技機1によれば、一の駆動手段81で可動部材60と変位部材63,64を2段階に動作させることができると共に、可動部材60の移動途中の段階で変位部材63,64を変位させた従来にない演出を行うことが可能となっている。
この場合、接触部材52を第4位置P4から第3位置P3に移動させる方向に付勢する第2付勢部材75が、その接触部材52とベース体51とを連結するように設けられると共に、ベース体51には、可動部材60が第1位置P1と当接位置PTとの間に位置する際に接触部材52を第3位置P3に保持する保持部51cが形成されているので、ベース体51に形成される保持部51cの位置を変更するだけで、変位部材63,64が第1姿勢S1から第2姿勢S2に変位する位置を容易に変更することができる。
また、可動部材60は、第2付勢部材75の付勢力に抗して当接位置PTから第2位置P2へ移動するように構成され、可動部材60が当接位置PTと第2位置P2との間に位置する際に、第1付勢部材74と第2付勢部材75は付勢する方向が互いに反対の方向、より具体的には、第1付勢部材74が連結部材71を引っ張る方向(上方向)と第2付勢部材75が接触部材52を引っ張る方向(下方向)が反対の方向であると共に、接触部材52の位置に関わらず第2付勢部材75の付勢力(接触部材52を下方に引っ張る力)は常に第1付勢部材74の付勢力(連結部材71を上方に引っ張る力)よりも大きい構成になっているので、第2付勢部材75の付勢力によって簡便に変位部材63,64を第1姿勢S1から第2姿勢S2へと変位させることが可能である。
更に、可動部材60を第1位置P1から第2位置P2へと移動させる方向に付勢する第3付勢部材76が、その可動部材60とベース体51を連結するように設けられると共に、可動部材60が当接位置PTと第2位置P2との間に位置する際に第3付勢部材76と第2付勢部材75は付勢する方向が互いに反対の方向、より具体的には、第3付勢部材76が可動部材60を引っ張る方向(上方向)と第2付勢部材75が接触部材52を引っ張る方向(下方向)が反対の方向になっているので、可動部材60を第2付勢部材75の付勢力に抗して当接位置PTから第2位置P2へ移動させるときの駆動手段81の駆動力を、第3付勢部材76による付勢力によって低減することができる。
以上本発明に係る遊技機の実施の形態について説明したが、上述した実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、上述した可動演出装置50は、表示部17aの下方に配設された構成を示したが、そのような構成に限るものではなく、遊技機1の枠等の配設可能な位置であれば、どこでも良く、上述した実施の形態には限定されない。また、可動演出装置50における可動部材60の移動方向は上下方向に限るものではなく、例えば、左右方向、前後方向などに移動させるような構成にしても良い。
更に、接触部材52は、第2付勢バネ75によって下方に引っ張られて(付勢されて)連結部材71を下方へとスライドさせる構成に限らず、例えば、接触部材52を重錘などで構成し、その接触部材52自体の自重によって連結部材71をスライドさせるようにしても良い。また、変位部材63,64は、第1付勢バネ74を介して互いに接近するように閉じた姿勢に保持される構成に限らず、例えば、変位部材63の先端側に重錘を設けて変位部材63を下方に変位させるのに伴って変位部材64を上方に変位させ互いに接近するように閉じた姿勢に保持するようにしても良い。この場合、変位部材63を下方に変位させる力は、接触部材52が連結部材71をスライドさせる力よりも小さくするように構成するのが良い。また、ベース体51は一体的な構成のものに限らず、複数の分割体の連結によって構成されると共に、そのようなベース体上に可動演出装置50のその他の構成部品が備えられるようにしても良い。