ところで、近年、自動車内の光通信において、その通信容量の増大が図られており、車載用光ファイバはコア径が小さく伝送帯域が大きいものが適用されるようになってきている。このような車載用光ファイバのコア径の細径化に伴い、特許文献1に記載のスリーブ21にあっては、以下のような問題点を有している。例えば、このスリーブ21を細径コア光ファイバ(例えばコア径が0.2mm以下の光ファイバ)に対応させる場合、コア部22(特に導波路24やレンズ27)を非常に微細な構造に成形しなければならない。従って、射出成形(二色成形)によるコア部22の作製では、加工精度及び特性(伝送損失)を満足する作製が難しくなるという問題点を有している。また、コア部22の小径側の端部にも二色成形にてレンズを形成しようとした場合、工夫を要する。この他、二色成形による製造では、使用可能な材料が限られてしまうため、透過率や経時劣化等の特性に優れた材料選定ができないという問題点を有している。
例えば特許文献1の受承筒52内にスリーブ21ではなく、レンズ単体あるいは光ファイバスタブ単体あるいはこれらを組み合わせたもの等を設けることを考えると、各部材間で生じる軸ずれと間隙が複合で生じた場合の結合効率低下が著しい。そこで、スリーブ21のようなレンズ付き光結合用部材を設けて、このレンズにより光のガイドをすることが有効であるが、上述の如くスリーブ21にあっては、細径コア光ファイバに対応させる場合に安価な加工での製造が難しいという問題点を有している。
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、光コネクタの光結合部分における結合効率の向上を図りつつ、高精度化、低損失化、低コスト化を図ることが可能な光結合用部材の製造方法及び光結合用部材を提供することを課題とする。
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明の光結合用部材の製造方法は、透明な合成樹脂材料からなる光導波路コアと、該光導波路コアよりも小さな屈折率を有する透明な合成樹脂材料からなるクラッド部とを備えて構成され、光コネクタの受光用又は発光用光素子と光ファイバとの間に配置される光結合用部材の製造方法において、両端部に凸レンズが一体に成形されるとともに該凸レンズ間において上向きに開口する開口溝と該開口溝の底面において前記各凸レンズに連続するコア溝とを有するコア溝付き基材と、前記開口溝に挿入可能な溝挿入部材とを備える前記クラッド部を成形する工程と、前記光導波路コアの材料であるとともに前記コア溝付き基材と前記溝挿入部材とを固定するための接着剤としても機能するコア樹脂を前記コア溝に充填する工程と、前記コア溝を覆うように前記溝挿入部材を前記開口溝に挿入し、少なくとも前記コア溝の直近周囲に前記コア溝からはみ出た前記コア樹脂が残留しないように加圧しながら前記コア樹脂を硬化させて、前記光導波路コアを成形するとともに前記コア溝付き基材と前記溝挿入部材を一体化して前記光導波路コアの周囲に密着する前記クラッド部を形成する工程と、を含むことを特徴としている。
このような特徴を有する本発明によれば、光結合用部材を作製する際、コア溝付き基材のコア溝に充填されたコア樹脂を硬化させることにより、両端が各凸レンズに連続する光導波路コアが形成されるとともに、光導波路コアの周囲に密着した状態のクラッド部がコア溝付き基材と溝挿入部材が一体化することにより形成される。本発明によれば、従来技術のような二色成形による光結合用部材の作製方法と比べて、部材の中心軸に対する光入射側凸レンズ、光出射側凸レンズ、光入射側光導波路コア、光出射側光導波路コアの位置ずれ量を抑えることができる。すなわち、光結合用部材の高精度化が可能となる。従って、細径コア光ファイバにも対応可能な高精度な光結合用部材を製造することができる。本発明によれば、製造された光結合用部材は、光の入出射部分となる位置に凸レンズを有する。この凸レンズにより入出射する光を集光することができるため、受光用又は発光用光素子あるいは光ファイバとの光結合の結合効率の向上を図ることができる。すなわち、光結合の結合効率の向上を図ることができる光結合用部材を製造することができる。また、本発明によれば、溝挿入部材を加圧することによりコア溝からはみ出たコア樹脂がコア溝の直近周囲に残留しないようにしている。コア溝の直近周囲にコア樹脂が残留していると、光導波路コアからの光の漏れが生じ光学特性の劣化につながるからである。本発明によれば、細径コア光ファイバに対応可能で且つ底損失な光結合を可能とする光結合部材を製造することができる。また、高価な部材を用いる必要がないため、低コストでの製造をすることができる。
請求項2記載の本発明の光結合用部材の製造方法は、請求項1に記載の光結合用部材の製造方法において、前記コア樹脂に光硬化型の合成樹脂材料を用いることを特徴としている。
このような特徴を有する本発明によれば、コア樹脂が硬化するまでの時間が短いため、光結合用部材の製造に係る作業性に配慮することができる。
請求項3記載の本発明の光結合用部材は、透明な合成樹脂材料からなる光導波路コアと、該光導波路コアよりも小さな屈折率を有する透明な合成樹脂材料からなるクラッド部とを備えて構成され、光コネクタの受光用又は発光用光素子と光ファイバとの間に配置される光結合用部材において、前記クラッド部は、両端部に凸レンズが一体に成形されるとともに該凸レンズ間において連続し上向きに開口する開口溝と該開口溝の底面において前記各凸レンズに連続するコア溝とを有するコア溝付き基材と、前記開口溝に挿入可能な溝挿入部材とを備えて構成され、前記光導波路コアは、該光導波路コアの材料であるとともに前記コア溝付き基材と前記溝挿入部材とを固定するための接着剤としても機能するコア樹脂を前記コア溝に充填し、該コア溝を覆うように前記溝挿入部材を挿入し、少なくとも前記コア溝の直近周囲に前記コア溝からはみ出た前記コア樹脂が残留しないように前記溝挿入部材を加圧しながら前記コア樹脂を硬化させることにより、前記コア溝付き基材と前記溝挿入部材の一体化とともに作製されることを特徴としている。
このような特徴を有する本発明によれば、光の入出射側となる位置に凸レンズを有し、この各凸レンズに連続する光導波路コアが形成される。すなわち、本発明の光結合部材に入射する光は、一端側の凸レンズにより集光されて光導波路コア内に導かれ、この光導波路コアを通過し、他端側の凸レンズで再び集光されて出射されるようになる。従って、光導波路コアに入出射する光は凸レンズにより集光されるため、受光用又は発光用光素子と光ファイバとの光結合部分における結合効率の向上を図ることができる。本発明によれば、従来技術のような二色成形により作製される光結合用部材と比べて、部材の中心軸に対する光入射側凸レンズ、光出射側凸レンズ、光入射側光導波路コア、光出射側光導波路コアの位置ずれ量を抑えることができる。すなわち、細径コア光ファイバに対応可能な高精度化を図ることができる。本発明によれば、溝挿入部材を加圧することによりコア溝からはみ出たコア樹脂がコア溝の直近周囲に残留しないようにしている。コア溝の直近周囲にコア樹脂が残留していると、光導波路コアからの光の漏れが生じ光学特性の劣化につながるからである。また、本発明によれば、光導波路の光入出射口となるコア溝両端部を平滑に加工することにより、光導波路の端面研磨を必要としない。
請求項4記載の本発明の光結合用部材は、請求項3に記載の光結合用部材において、前記コア溝の深さを前記光導波路コアの高さより深く形成するとともに、前記溝挿入部材は、前記コア溝内に隙間なく入り込む突起部を有するように形成されることを特徴としている。
このような特徴を有する本発明によれば、溝挿入部材の突起部でコア溝を塞ぐように溝挿入部材をコア溝付き基材に挿入する。これにより、光導波路コアは溝挿入部材の突起部とコア溝とで囲まれた状態となる。すなわち、コア溝からはみ出たコア樹脂が光導波路コアの直近周囲に存在しないような状態となる。従って、コア溝直近周囲のコア樹脂残留による光学特性劣化を防ぐことができる。
請求項5記載の本発明の光結合用部材は、請求項3又は請求項4に記載の光結合用部材において、前記コア溝付き基材又は前記溝挿入部材は、前記開口溝に前記溝挿入部材を挿入した状態で前記開口溝の側面と前記溝挿入部材の側面との間にクリアランス部を有するように形成されることを特徴としている。
このような特徴を有する本発明によれば、溝挿入部材の加圧によりコア溝からはみ出たコア樹脂がクリアランス部に回り込むようになる。これにより、このコア樹脂はコア溝付き基材の側面と溝挿入部材の側面との間に介在する状態となる。このコア樹脂が硬化することにより、コア溝付き基材に対して溝挿入部材がより確実に固定される。また、本発明によれば、溝挿入部材の加圧の際にコア溝付き基材と溝挿入部材の間に生じた気泡を逃がすことができる。これにより、導波路となる光導波路コアとコア溝付き基材及び溝挿入部材とを確実に密着させることができるほか、気泡による光学特性の劣化を防ぐことができる。
請求項6記載の本発明の光結合用部材は、請求項3ないし請求項5いずれか記載の光結合用部材において、前記コア溝付き基材の前記各凸レンズの表面には、無反射膜コーティングが施されることを特徴としている。
このような特徴を有する本発明によれば、各凸レンズの表面に施された無反射膜コーティングにより、光の入射時に界面で発生するフレネル反射を抑えることができる。従って、光ファイバと発光用又は受光用光素子との光結合の結合効率を向上させることができる。
請求項7記載の本発明の光結合用部材は、請求項3ないし請求項6いずれか記載の光結合用部材において、前記コア溝付き基材は、前記各凸レンズの側部に回転防止用突起を有することを特徴としている。
このような特徴を有する本発明によれば、光結合用部材の製造する際に、回転防止用突起により、コア溝付き基材が回転しにくくなるため、コア溝を水平に保持しやすくなる。すなわち、光結合用部材を製造する作業が行い易くなる。
請求項8記載の本発明の光結合用部材は、請求項3ないし請求項7いずれか記載の光結合用部材において、前記コア溝の直近を外れた前記コア溝付き基材及び前記溝挿入部材の表面は、前記コア溝の前記直近周囲における前記コア溝付き基材及び前記溝挿入部材の表面より粗く形成されることを特徴としている。
このような特徴を有する本発明によれば、溝挿入部材を加圧した際にコア溝からはみ出て、コア溝の直近周囲から遠ざけられたコア樹脂がコア溝付き基材及び溝挿入部材の表面の粗さにより、溝挿入部材の側面側(クリアランス部側)へ移動し易くなる。すなわち、コア樹脂の処理性が向上する。本発明によれば、コア溝付き基材及び溝挿入部材の表面の粗さにより、コア溝の直近周囲以外において、コア樹脂とコア溝付き基材及び溝挿入部材の表面の接触面積が増えるため、コア溝付き基材に対する溝挿入部材の固着力が向上する。
請求項9記載の本発明の光結合用部材は、請求項3ないし請求項8いずれか記載の光結合用部材において、前記クラッド部は、全体の外観形状が略円柱形状になるように形成されることを特徴としている。
このような特徴を有する本発明によれば、製造が完了した状態で外観形状が円柱形状となる。これにより、部材の取り扱い性や光コネクタへの組み付け時の作業性の向上を図ることができる。
請求項10記載の本発明の光結合用部材は、請求項3ないし請求項9いずれか記載の光結合用部材において、前記コア溝付き基材は、どちらか一方の前記凸レンズ近傍に部材の向きを認識するためのボスを有することを特徴としている。
このような特徴を有する本発明によれば、光コネクタに設置する際に、部材の向きを認識することができる。従って、コネクタへの組み付け作業が行い易くなる。
請求項1に記載された本発明によれば、光コネクタの光結合部分における結合効率の向上を図りつつ、高精度化、低損失化、低コスト化を図ることが可能な光結合用部材の製造方法を提供することができるという効果を奏する。本発明によれば、細径コア光ファイバに対応可能な光結合用部材の製造方法を提供することができるという効果を奏する。本発明によれば、従来の二色成形により作製される光結合用部材よりも高精度な光結合部材を簡素な方法で且つ低コストに製造することができるという効果を奏する。
請求項2に記載された本発明によれば、光結合用部材の製造に係る作業性に配慮することができるという効果を奏する。
請求項3に記載された本発明によれば、光コネクタの光結合部分における結合効率の向上を図りつつ、高精度化、低損失化、低コスト化を図ることが可能な光結合用部材を提供することができるという効果を奏する。本発明によれば、光コネクタの光結合部分における結合効率の向上を図ることができ、且つ、細径コア光ファイバにも対応することができるという効果を奏する。
請求項4に記載された本発明によれば、コア溝からはみ出たコア樹脂による光学特性の劣化を防ぐことができるという効果を奏する。
請求項5に記載された本発明によれば、クリアランス部にコア樹脂が回り込み硬化することにより、コア溝付き基材と溝挿入部材との固着力を確保することができるという効果を奏することができる。また、本発明によれば、導波路となる部分に生じた気泡を逃がすことができることから、上記固着力の確保のほか、気泡による光学特性の劣化を防ぐことができるという効果を奏する。
請求項6に記載された本発明によれば、光結合部分における結合効率の向上を図ることができるという効果を奏する。
請求項7に記載された本発明によれば、光結合用部材の製造に係る作業性に配慮することができるという効果を奏する。
請求項8に記載された本発明によれば、コア溝からはみ出たコア樹脂の処理性及びコア溝付き基材に対する溝挿入部材の固着力に配慮することができるという効果を奏する。
請求項9、10に記載された本発明によれば、光結合用部材を光コネクタに組み付ける作業に配慮することができるという効果を奏する。
以下、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の光結合用部材の一実施の形態を示す図であり、(a)は全体斜視図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は(b)のB−B線断面図である。また、図2は本発明の光結合用部材の製造手順を示す説明図であり、(a)は射出成形されたコア溝付き基材を示す図、(b)は(a)のコア溝付き基材中央部分の断面を示す図、(c)はコア溝にコア樹脂を充填した状態のコア溝付き基材を示す図、(d)は(c)のコア溝付き基材中央部分の断面を示す図、(e)は溝挿入部材をコア溝付き基材に一体化した状態を示す図、(f)は(e)のコア溝付き基材中央部分の断面を示す図である。
図1において、引用符号1は本発明の光結合用部材1を示している。光結合用部材1は、コア溝付き基材2と、溝挿入部材3と、光導波路コア4とを備えて構成されている。尚、引用符号5はクラッド部を示し、コア溝付き基材2と溝挿入部材3とが一体化したものを示している。光結合用部材1は、この全体が略円柱形状となるように形成されている。光結合用部材1は、後述する光コネクタ41の受発光素子側光コネクタ42のスリーブ51、51内に設けられるようになっている。具体的には、受発光素子側光コネクタ42の受光用光素子有する受光素子モジュール45及び発光用光素子を有する発光素子モジュール46と光ファイバ側光コネクタ43に設けられた光ファイバ52、52との間に配置され、これらのいずれか一方から出射される光をいずれ片方へ伝搬する部材となっている。以下、先ずは光結合用部材1の各構成部材について説明する。
コア溝付き基材2は、後述する光導波路コア4のコア樹脂13よりも小さな屈折率を有する透明な合成樹脂材料により形成されている。また、コア溝付き基材2は、射出成形により略円柱形状に形成されている。コア溝付き基材2を形成する合成樹脂材料としては、高精度成形性及び高透過率を有する合成樹脂材料であればよく、特に限定するものではないが、シクロオレフィン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
コア溝付き基材2の両端部には、外向きに凸となる凸レンズ6、6が一体に成形されている。凸レンズ6、6は、この中心がコア溝付き基材2の円柱中心と一致するように形成されている。一方の凸レンズ6は、発光素子モジュール46(発光用光素子)又は光ファイバ52から出射された光を集光して、後述する光導波路コア4に導き、他方の凸レンズ6は、光導波路コア4内部を通過した光を集光して光ファイバ52又は受光素子モジュール45(受光用光素子)に導くようになっている。凸レンズ6、6の表面は、鏡面加工されている。これにより、凸レンズ6、6表面において、凸レンズ6、6に入出射する光の散乱を抑えられるようになっている。更に、凸レンズ6、6の表面には、無反射膜コーティングが施されている。これにより、光の入射時に界面で生じるフレネル反射を抑えることができるようになっている。このような凸レンズ6、6は、受光素子モジュール45又は発光素子モジュール46と光ファイバ52との光結合の結合効率の向上を図ることができるようになっている。
コア溝付き基材2の凸レンズ6、6の側部には、光結合用部材1の製造時に部材自体が回転してしまうことを防止するための回転防止用突起7が形成されている。光結合用部材1を製造する工程において、この回転防止用突起7が引っ掛かることにより、コア溝付き基材2が例えば作業台上等で回転してしまわないようになっている。すなわち、製造時に後述するコア溝9を水平に保持することができるようになっている。従って、光結合用部材1を製造する作業が行い易くなっている。
コア溝付き基材2は、両端部に成形された凸レンズ6、6間において連続し上向きに開口する開口溝8を有している。開口溝8は、この底面に後述する凸レンズ6、6に連続するコア溝9を有している。開口溝8は、コア溝付き基材2の軸に沿って真っ直ぐに形成されている。開口溝8は、所定の幅・深さを有するように形成されている。すなわち、開口溝8は、後述する溝挿入部材3を挿入可能に形成されている。開口溝8は、この両側面が傾斜しており、溝挿入部材3が挿入された状態において、開口溝8の側面と溝挿入部材3の側面との間にクリアランス部10を有するように形成されている。尚、開口溝8の傾斜は、コア溝付き基材2を射出成形する際の抜き勾配を兼ねている。
クリアランス部10は、コア樹脂13が充填されたコア溝9に対して、溝挿入部材3を挿入・加圧した際にコア溝9からはみ出たコア樹脂13が回り込む部分となっている。クリアランス部10は、コア樹脂13を硬化させた時に、溝挿入部材3のコア溝付き基材2に対する固着力を確保するための部分となっている。また、クリアランス部10は、溝挿入部材3を挿入・加圧した際にコア溝付き基材2と溝挿入部材3との間に生じた気泡も回り込むようになっている。すなわち、コア溝付き基材2及び溝挿入部材3と光導波路コア4との密着性を良好にすることができるようになっている。これにより、固着力の確保とともに気泡による光学特性の劣化を防ぐことができる。尚、本形態において、クリアランス部10は開口溝8の側面を傾斜させることにより設けられているが、例えば、溝挿入部材3よりも開口溝8の幅を広く取ることによりクリアランス部10を設けるようにしてもよいものとする。
コア溝9は、上述の如く、凸レンズ6、6に連続するように形成されている。このコア溝9は、光導波路コア4を形成する部分となっている。すなわち、コア溝9は、コア樹脂13を充填・硬化することにより、凸レンズ6、6に連続する光導波路コア4を形成することができるようになっている。コア溝9は、コア溝付き基材2の円柱中心部分となる位置に設けられている。また、コア溝9は、コア溝付き基材2の軸に沿って真っ直ぐに形成されている。コア溝9は、一定の幅に形成されている(一例であるものとする。例えば、両端部で幅が異なるようなテーパ形状に形成しても良いものとする)。コア溝9は、この中心がコア溝付き基材2の円柱中心軸と一致するような深さに形成されている。これにより、凸レンズ6、6とコア溝9の中心は、コア溝付き基材2の中心軸と一致するようになっている。更に、コア溝9は、後述する光ファイバ52のコア径に対応したサイズの光導波路コア4が形成されるような深さにも形成されている。コア溝9は、各面が鏡面加工されている。これにより、光導波路コア4を通過する光の散乱を抑えることができるようになっている。また、コア溝9の両端部は、平滑になるように加工されている。
コア溝付き基材2は、溝挿入部材3と接触する接触面11の粗さ、傾き、うねりを抑えて形成されている。また、コア溝付き基材2は、コア溝9の直近を外れた部分の表面が接触面11よりも粗くなるように形成されている(例えば、コア溝付き基材2を成形する金型にブラスター処理を施す等により表面を粗くする)。
溝挿入部材3は、後述する光導波路コア4のコア樹脂13よりも小さな屈折率を有する透明な合成樹脂材料により形成されている。溝挿入部材3は、コア溝付き基材2の開口溝8に挿入可能な板状(ブロック状)に形成されている。溝挿入部材3を形成する合成樹脂材料としては、成形性が良く高透過率を有する合成樹脂材料であればよく、特に限定するものではないが、シクロオレフィン樹脂やアクリル樹脂等が挙げられる。また、溝挿入部材3を形成する合成樹脂材料としては、上記した要件と合わせて弾性を有する合成樹脂であってもよいものとする(溝挿入部材3が弾性を有することにより、コア溝付き基材2との接触性が向上するからである)。このような合成樹脂として、特に限定するものではないが、例えば、シリコーン系ゴムやスチレン系エラストマー等が挙げられる。尚、溝挿入部材3をコア溝付き基材2と異なる合成樹脂材料により形成する場合には、この材料の屈折率がコア溝付き基材2の材料の屈折率と同等か、もしくはコア溝付き基材2の材料の屈折率よりも小さい合成樹脂材料を用いることがふさわしい。
溝挿入部材3は、コア溝9を覆うように開口溝8に対して挿入されるようになっている。この溝挿入部材3は、後述する光導波路コア4を保護する機能を有している。溝挿入部材3がコア溝9に形成される光導波路コア4と接触する接触面12は、鏡面加工されている。これにより、光導波路コア4を通過する光の散乱を抑えることができるようになっている。また、溝挿入部材3は、コア溝9の直近を外れた部分の表面が粗くなるように形成されている(例えば、コア溝付き基材2を成形する金型にブラスター処理を施す等により表面を粗くする)。
尚、本実施形態において、溝挿入部材3は板状に形成されているが、特に限定するものではないものとする。例えば、溝挿入部材3をフィルム状に形成したり、溝挿入部材3の片面に弾性を有する材料を貼付したものを形成しても良いものとする(上述の如く溝挿入部材3の合成樹脂材料として、弾性を有するものでもよいため)。
光導波路コア4は、透明な合成樹脂材料からなるコア樹脂13をコア溝9に充填し、硬化することにより形成されている。光導波路コア4は、コア樹脂13よりも小さな屈折率を有する合成樹脂により形成されたコア溝付き基材2及び溝挿入部材3(クラッド部5)がその周囲に密着した状態となっている。これにより、コア溝付き基材2及び溝挿入部材3(クラッド部5)が光導波路コア4に対して、クラッドとして作用し、光を光導波路コア4に閉じこめて伝搬することができるようになっている。光導波路コア4は、発光素子モジュール46及び光ファイバ52のいずれかから出射される光の通り道である導波路となっている。光導波路コア4は、コア溝9にコア樹脂13を充填・硬化することにより形成されるため、この中心がコア溝付き基材2の円柱中心軸と一致するようになっている。従って、光導波路コア4は、上述のレンズ6、6とも中心軸が一致する状態となっている。
コア樹脂13は、上述の如くコア溝9に充填されて光導波路コア4を形成する合成樹脂材料であるとともに、コア溝付き基材2と溝挿入部材3とを接着固定する接着剤としても機能するようになっている。コア樹脂13の材料として、本形態においてはUV硬化型エポキシ樹脂を用いている。但し、コア樹脂13の材料としては、高流動性及び高透過率を有する合成樹脂であればよく、特に限定するものではないが、その他UV硬化型アクリル樹脂等が挙げられる。尚、上記したUV硬化型エポキシ樹脂やUV硬化型アクリル樹脂等の光硬化型樹脂においては、硬化時間が短くてよいことから、コア溝付き基材2と溝挿入部材3とを接着固定する作業の作業性を良好にすることができる。
続いて、図2を参照しながら本発明の光結合用部材1の製造手順の一例を説明する。
先ず、射出成形によりコア溝付き基材2を成形する(図2(a)、(b)参照)とともに溝挿入部材3を成形し、更にコア樹脂13を用意する作業を行う。次に、コア樹脂13がコア溝9から溢れるように図示しないディスペンサ等を用いて充填、塗布する作業を行う(図2(c)、(d)参照)。最後に、コア溝9を覆うように開口溝8に溝挿入部材3を挿入し、コア溝付き基材2の接触面11と溝挿入部材3との間にコア樹脂13が残らないように加圧しながらコア樹脂13を硬化させて、光導波路コア4を形成するとともに、コア溝付き基材2と溝挿入部材3を一体化してクラッド部5を形成する作業を行う。この時、コア樹脂13が硬化時の収縮により、溝挿入部材3とコア溝9に充填されたコア樹脂13との間に空隙が生じたり、脱ガスの影響がないように、加圧量や硬化用光照射量、照射時間の管理を行う。
以上により、光結合用部材1の製造が完了となり、図2(e)、(f)に示す如くの状態となる。
ここで、図3を参照しながら、上述した光結合用部材1が装着される光コネクタについて簡単に説明する(詳細な構造に関しては、背景技術の欄の特許文献1に記載されている)。図3は、光結合用部材を備える光コネクタの図であり、(a)は光コネクタの分解斜視図、(b)は受発光素子側光コネクタの一実施の形態を示す断面図である。
図3において、引用符号41は、例えば自動車等の多重伝送回路に用いられる光コネクタを示している。光コネクタ41は、合成樹脂製の受発光素子側光コネクタ42と、同じく合成樹脂製の光ファイバ側光コネクタ43とを備えて構成されている。
受発光素子側光コネクタ42は、前後に開放された矩形状のコネクタハウジング44を有している。このコネクタハウジング44の前方の開放部分に光ファイバ側光コネクタ43が嵌合するようになっている。また、後方の開放部分には、光結合用部材1、1、受光素子モジュール45、発光素子モジュール46及びキャップ47が順に嵌合するようになっている。尚、図3(a)に示す受発光素子側光コネクタ42は、既に光結合用部材1、1、受光素子モジュール45、発光素子モジュール46及びキャップ47が嵌合された状態となっている。
コネクタハウジング44は、前方に嵌合部48が形成されており、同じく前方の上壁に光ファイバ側光コネクタ43の後述するロッキングアーム55が係合する係止部49が形成されている。また、コネクタハウジング44の後方には、受光素子モジュール45及び発光素子モジュール46に対する格納室50、50が形成されている。この格納室50、50には、上壁及び下壁を貫通する開口部44a、44bが形成されている。上壁側の開口部44a、44bには、キャップ47の図示しない係合突起が係合するようになっている。また、下壁側の開口部44a、44bを介して、受光素子モジュール45及び発光素子モジュール46の図示しない接続部(電極)が外部に導出されるようになっている。
コネクタハウジング44の内部における中間部分には、嵌合部48から格納室50、50に連通するスリーブ51、51が前後方向に延在し、且つ嵌合部48内に突き出るように一体に設けられている。スリーブ51、51は、光コネクタ41における光軸の調心部分となっている。また、スリーブ51、51は、内外共に段付きに形成されており、内側の段部を境に前方側が光ファイバ側光コネクタ43に装着された光ファイバ52の図示しないフェルールが装着される部分となっている。これに対して、段部の後方には、光結合用部材1、1が格納室50、50を介して挿入されるようになっている。
スリーブ51、51の段部に光結合用部材1、1が当接すると、この光結合用部材1、1の位置決めがなされるようになっている。尚、特に図示しないが、光結合用部材1、1が挿入される側のスリーブ51、51内部には、光結合用部材1、1を保持するための微小突起等が設けられている。
受光素子モジュール45及び発光素子モジュール46は、既知構成のモジュールを用いているため、詳細な説明を省略するものとする。尚、受光素子モジュール45及び発光素子モジュール46は、それぞれ受光用光素子及び発光用光素子を有しているものとする。受光素子モジュール45及び発光素子モジュール46は、受・発光モジュール、受・送信モジュール、FOT(Fiber Optic Transceiver)等と呼ばれる場合もある。
光ファイバ側光コネクタ43は、図示しないフェルールが端末に設けられた光ファイバ52、52とハウジング53及びキャップ54とを備えて構成されている。光ファイバ側光コネクタ43は、光ファイバ52、52の端末に設けられた図示しないフェルールをハウジング53内に収容し、キャップ54をハウジング53に係合することにより組み立てられている。尚、光ファイバ側光コネクタ43は、背景技術の欄に記載した特許文献1の光プラグと同じのものとなっている。従って、詳細な説明は省略するものとする。
光ファイバ52、52は、既知のもので、コア及びコアよりも屈折率の小さいクラッドからなる心線部と心線部を被覆する被覆部とを備えて構成されている。光ファイバ52、52の端末には、上述した如く図示しないフェルールが設けられている。この図示しないフェルールと光ファイバ52は、接着剤等で強固に固定されており、抜け落ちてしまうことがないようになっている。尚、図示しないフェルールは合成樹脂製であるものとする。
ハウジング53は、図示しないフェルールを収容する収容室を有する矩形状の箱体となっている。ハウジング53は、収容室にフェルールを収容することにより、光ファイバ52、52を保持することができるようになっている。収容室に収容された図示しないフェルールは、この先端が受発光素子側光コネクタ42の嵌合部48側を向くようになっている。ハウジング53の上壁には、後方に伸びるロッキングアーム55が一体に形成されている。このロッキングアーム55は、コネクタハウジング44の係合部49に係合するようになっている。すなわち、ロッキングアーム55を係合部49に係合させることにより、光ファイバ側光コネクタ43と受発光素子側光コネクタ42とが一体化するようになっている。
上記構成において、光ファイバ側光コネクタ43が受発光素子側光コネクタ42に嵌合すると、スリーブ51、51はハウジング53内に進入し、同時に光ファイバ52先端の図示しないフェルールがスリーブ51、51内に進入する。この状態において、フェルールの先端部分と光結合部材1、1の間隙及び受光素子モジュール45、発光素子モジュール46と光結合部材1、1の間隙は、双方とも最小に保って配置されている。
以上、図1ないし図3を参照しながら説明してきたように、本発明の光結合用部材1によれば、光の入出射側となる位置に凸レンズ6、6を有し、この各凸レンズ6、6に連続する光導波路コア4が形成される。すなわち、本発明の光結合部材1に入射する光は、一端側の凸レンズ6により集光されて光導波路コア4内に導かれ、この光導波路コア4を通過し、他端側の凸レンズ6で再び集光されて出射されるようになる。従って、光導波路コア4に入出射する光は凸レンズ6により集光されるため、受光用又は発光用光素子と光ファイバ52、52との光結合部分における結合効率の向上を図ることができる。また、本発明の光結合用部材1によれば、光導波路の光入出射口となるコア溝9両端部を平滑に加工することにより、光導波路の端面研磨を必要としない。
本発明の光結合用部材1によれば、凸レンズ6、6をコア溝付き基材2の両端に一体成形し、凸レンズ6、6の中心とコア溝9に形成される光導波路コア4の中心とが一致するような構造になっていることから、凸レンズ6、6と光導波路コア4の軸ずれ量を少なくすることができる。すなわち、光ファイバ52又は発光素子モジュール46のいずれか一方から出射される光の損失が少ない状態でいずれか他方へ伝搬することができる。本発明の光結合用部材1によれば、各凸レンズ6、6の表面に施された無反射膜コーティングにより、光の入射時に界面で発生するフレネル反射を抑えることができる。従って、光ファイバ52と受光素子モジュール45又は発光素子モジュール46との光結合の結合効率を向上させることができる。
本発明の光結合用部材1によれば、クリアランス部10を設けることにより、溝挿入部材3を加圧した際にコア溝9からはみ出たコア樹脂13がクリアランス部10に回り込むようになる。また、コア溝付き基材2と溝挿入部材3の間に生じた気泡を逃がすことができるようになる。これにより、溝挿入部材3をコア溝付き基材2に対して固定するための固着力を確保し、且つ、コア溝付き基材2と溝挿入部材3の間に生じた気泡による光学特性の劣化を防ぐことができるようになる。また、クリアランス部10へ向かうコア樹脂13は、コア溝付き基材2及び溝挿入部材3のコア溝9の直近を外した部分の表面が粗くなっていることにより、クリアランス部10側へ移動され易くなる。さらに、上述したコア溝付き基材2及び溝挿入部材3の表面の粗さにより、コア溝9の直近周囲以外において、コア樹脂13とコア溝付き基材2及び溝挿入部材3表面との接触面積が増える。これにより、コア樹脂13を硬化させた際に、コア溝付き基材2に対して溝挿入部材3をより確実に固着させることができる。
本発明の光結合用部材1によれば、溝挿入部材3の加圧により、コア溝9の直近周囲にコア溝9からはみ出たコア樹脂13が残留しないようにしている。これにより、光導波路コア4からの光の漏れが生じないようになるため、光学特性の劣化を防止することができる。
本発明の光結合用部材1によれば、光結合用部材1の製造加工時に、回転防止用突起7により、コア溝付き基材2が回転しにくくなるため、コア溝9を水平に保持しやすくなる。すなわち、光結合用部材1を製造する作業が行い易くなる。
最後に、図4を参照しながら本発明の光結合用部材の他実施の形態について説明する。図4は、本発明の光結合用部材の他実施の形態を示す断面図である。尚、上述した実施形態で説明した部分と同様の形状・機能を有する部分については同じ符号を付してその説明を省略するものとする。
図4において、光結合部材1’は、コア溝付き基材2’と溝挿入部材3’と光導波路コア4とを備えて構成されている。コア溝付き基材2’は、コア溝9の深さ(光導波路4の高さ)よりも大きい深さのコア溝9’を有している。また、このコア溝9’に合わせて開口溝8の深さよりも小さい深さの開口溝8’を有している。コア溝付き基材2’は、この開口溝8’及びコア溝9’以外は、コア溝付き基材2と同様の形状・機能を有するように形成されているため、その説明を省略するものとする。溝挿入部材3’は、コア溝付き基材2’の開口溝8’に収容可能な板状(ブロック状)に形成されている。更に、溝挿入部材3’には、コア溝9’に対応する部分にコア溝9’に入り込む突起部3’aが形成されている。この突起部3’aは、コア溝9’に隙間なく入り込むようになっている(尚、本明細書における隙間なくとは、突起部3’aの側面とコア溝9’の側面との隙間が、光学特性の劣化を招くような光の漏れを生じない程度の微少な隙間を許容するものとする)。溝挿入部材3’は、この他溝挿入部材3と同様に形成されているため、その説明を省略するものとする。
上記構成において、コア溝9’の上面まで満たすことなくコア樹脂13を充填し、溝挿入部材3’を突起部3’aがコア溝9’を塞ぐように挿入する(本形態においては、コア溝9’から溢れるようにコア樹脂13を充填する必要はない。溝挿入部材3’の突起部3’aがコア溝9’に隙間なく入り込むことにより、光導波路コア4の形成に必要なコア樹脂13以外は、コア溝9’からはみ出て、開口溝8’の底面及びクリアランス部10に回り込むからである)。これにより、光導波路コア4は溝挿入部材3’の突起部3’aとコア溝9’に囲まれた状態となる。すなわち、コア溝9’からはみ出たコア樹脂13が光導波路コア4の直近周囲に存在しないような状態となる。
本発明の光結合用部材1’によれば、光結合用部材1と同様の効果を奏することは言うまでもないが、それに加えてコア溝9’直近周囲のコア樹脂13残留による光学特性の劣化をより確実に防ぐことができる。
以上、図1から図4を参照しながら説明してきたように、各実施形態ともに光コネクタ41の光結合部分における結合効率の向上を図りつつ、高精度化、低損失化、低コスト化を図ることが可能な光結合用部材1、1’を提供することができるという効果を奏する。また、細径コア光ファイバに対応可能な光結合用部材1、1’を提供することができるという効果を奏する。更に、従来技術のように、二色成形により作製される光結合用部材よりも高精度な光結合用部材1、1’を簡素な方法で且つ低コストに製造することができるという効果を奏する。
この他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
すなわち、図5に示すように、製造後の光結合用部材1の外観形状が完全な円柱形状となるようにクラッド部5を形成してもよいものとする。この場合、溝挿入部材3の光導波路コア4側と反対側の面をコア溝付き基材2の円柱外周と同じ曲率を有するように形成する。これにより、光結合用部材1の取り扱い性や光コネクタ41への組み付け時の作業性の向上を図ることができる。
更に、特に図示しないが凸レンズ6、6の近傍に部材の向きを認識するためのボスを設けても良いものとする(一例であるものとする)。これにより、光結合用部材1、1’を光コネクタ41の受発光素子側光コネクタ42のスリーブ51、51に挿入する際に、光結合用部材1、1’の向きを認識することができる。