以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。図1〜図3には、本発明の実施形態における第1例の他動運動機器を示している。本例の他動運動機器は、使用者が起立した姿勢のまま両足を乗せる方式である立位式の他動運動機器であって、使用者が片足ずつを挿入する左右一対の靴型ハウジング5と、各靴型ハウジング5の底壁6の略平坦な内面に配されるエアバッグ7と、エアバッグ7を膨縮させるための給排気を行うポンプ装置8を内蔵した制御ボックス26とを具備している。
本例では、上記靴型ハウジング5の底壁6が、使用者が足を乗せる支持台部2を成し、上記靴型ハウジング5の底壁6上方を覆う上カバー部9が、使用者の足裏の位置を拘束する位置決め部10を成す。そして、上記エアバッグ7が、使用者の足裏の足指部分に当たって上下動するアクチュエータ15を成す構造である。なお、アクチュエータ15として他の構成、つまり上下スライド自在な突起体を足裏の足指部分に当たるように配置し、該突起体を上下駆動させる等の構成を用いても構わない。
上記エアバッグ7は、上カバー部9に設けてある開口16から挿入して底壁6内面に載置させた足裏のうち、足指の爪先部分と根元部分の少なくとも一方に当たる部分に配してある。これにより、エアバッグ7を収縮した状態に保持すれば、使用者の足は足指部分を底壁6に沿って前方に伸ばした状態となり、エアバッグ7を膨張させて上方に突出した状態に保持すれば、使用者の足は足指部分だけを甲側に反らせた状態となる。即ち、エアバッグ7の膨縮の切換えにより、起立姿勢にある使用者の足先の状態を、図3(a)に示すように足指部分を前方に伸ばした状態(以下「伸張状態」という。)と、図3(b)に示すように足指部分を甲側に反らした状態(以下「反り状態」という。)との間で切換えることができる。
図2に示すように制御ボックス26内には、上記ポンプ装置8に加えて、ポンプ装置8から各エアバッグ7への給排気を切換える電磁弁27や、ポンプ装置8及び各電磁弁27を制御する制御回路部28を備えている。また制御ボックス26の外面には、使用者が指令を入力する操作パネル29を設けており、この操作パネル29に入力された指令に基づいて操作回路部28がポンプ装置8及び各電磁弁27を制御し、各エアバッグ7を給排気させるようになっている。
本例の他動運動機器によれば、急激な運動が困難な高齢者等の使用者であっても、靴型ハウジング5に足を挿入して起立姿勢を保持している間に自動的に各靴型ハウジング5内のエアバッグ7を膨縮させ、使用者の足先を伸張状態と反り状態との間で強制的に切換え、反り状態としたときに、主に使用者の脹脛部分の筋肉を刺激し、踏ん張って転倒を防止する力を効果的に鍛えることができる。また、起立姿勢のまま足先の伸張状態と反り状態が強制的に切換わることで、バランスを取りながら柔軟に身体全体を支える能力も向上することになる。
図4〜図6には、本発明の実施形態における第2例の他動運動機器を示している。なお、本例の構成のうち上記した第1例の構成と同様の構成については詳しい説明を省略し、第1例とは相違する特徴的な構成についてのみ以下に詳述する。
本例にあっては、第1例のように左右の靴型ハウジング5ごとにエアバッグ7を一つ配するのではなく、靴型ハウジング5ごとに複数のエアバッグ7を配している。そして、各エアバッグ7が協調動作しながら使用者に他動運動を行わせるように給排気を制御するものである。
具体的には、使用者の各足裏が当たる底壁6の内面ごとに、該足裏の足指部分に当たるエアバッグ7a,7bを左右一対配している。即ち、左右に五指ある足指部分のうち、内側の足指部分(親指、人差し指等)に当たるエアバッグ7aと、外側の足指部分(小指、薬指等)に当たるエアバッグ7bとが備えてあり、左右両足における内側の足指部分と外側の足指部分を、それぞれ伸張状態と反り状態との間で切換え自在にしている。
図5に示すように制御ボックス26内には、ポンプ装置8から左右のエアバッグ7a,7bへの給排気を切換える電磁弁27や、ポンプ装置8及び各電磁弁27を制御する制御回路部28を備えており、操作パネル29に入力された指令に基づいて操作回路部28がポンプ装置8及び各電磁弁27を制御し、左右のエアバッグ7a,7bを給排気させるようになっている。
本例の他動運動機器によれば、左右のエアバッグ7a,7bの膨縮のタイミングを一致させれば第1例と同様の他動運動を行わせることができ、更に、左右のエアバッグ7a,7bの膨縮のタイミングを相違させた場合には、足先を捻るようにしながら足指部分を甲側に反らすという特徴的な他動運動を行わせることができる。
例えば、左足を載置する底壁6内面に配してある右側の(内側の)エアバッグ7aと、右足を載置する底壁6内面に配してある左側の(内側の)エアバッグ7aだけを膨張させた(図6参照)場合には、使用者には、左右両足の足先を外側に捻るようにしながら足指部分を甲側に反らすという他動運動を行わせることができる。また、左足を載置する底壁6内面に配してある左側の(外側の)エアバッグ7bと、右足を載置する底壁6内面に配してある右側の(外側の)エアバッグ7bだけを膨張させた場合には、使用者には、左右両足の足先を内側に捻るようにしながら足指部分を甲側に反らすという他動運動を行わせることができる。
また、左足を載置する底壁6内面の右側の(内側の)エアバッグ7aと、右足を載置する底壁6内面の右側の(外側の)エアバッグ7bだけを膨張させた場合や、左足を載置する底壁6内面の左側の(外側の)エアバッグ7bと、右足を載置する底壁6内面の左側の(内側の)エアバッグ7aだけを膨張させた場合には、使用者には、両足先を左右同一方向に捻りながら足指部分を甲側に反らすという他動運動を行わせることができる。
このように本例では、アクチュエータ15を成すエアバッグ7を、足裏に対応する場所ごとに(即ち、左右の靴型ハウジング5の底壁6ごとに)左右に複数並設して協調動作させることで、左右両足の反り状態に足先の内側への捻りを加えた状態、左右両足の反り状態に足先の外側への捻りを加えた状態、左右両足の反り状態に足先の左右同一方向への捻りを加えた状態、等に切り替え自在となっている。したがって、第1例のものと比較しても更に多様な刺激を使用者の脹脛部分に与えることができ、踏ん張って転倒を防止する力を更に効果的に鍛えることができる。また、起立姿勢のまま足先が多様な状態に強制的に切換わることで、バランスを取りながら柔軟に身体全体を支える能力も更に向上する。
なお、本例では底壁6内面の足指部分に当たる箇所ごとにエアバッグ7を左右一対配しているが、エアバッグ7を左右に3以上並設してあってもよいし、或いは、前後に並設してあってもよい。
図7には、本発明の実施形態における第3例の他動運動機器を示している。なお、本例の構成のうち上記した第1例の構成と同様の構成については詳しい説明を省略し、第1例とは相違する特徴的な構成についてのみ以下に詳述する。
本例の靴型ハウジング5は、使用者の下腿部分を覆う筒体部17を上カバー部9から延設したブーツ型のものであり、上下に貫通する筒体部17の上端開口が、使用者が足を挿入する開口16となっている。筒体部17の少なくとも後部には、硬質の板状部材から成る規制部18を設けており、規制部18の内面に使用者の下腿部分が当たれば、それ以上後方に足首が曲がること(つまり、それ以上後方にまで下腿部分が倒れること)を防止するようになっている。
したがって、本例の他動運動機器によれば、底壁6内面のエアバッグ7が膨張して使用者の足指部分を甲側に反らせた際に、これと連動して足首が後側に倒れて転倒することが防止される。加えて、下腿部分は底壁6内面に対して直立する姿勢を維持するので、足指部分の反りによって脹脛部分の筋肉を効果的に刺激することが可能となる。
図示例では、規制部18として板状部材を立設した構成となっているが、この構成に限定されるわけではなく、例えば、上記筒体部17の後部自体を硬質の材料で形成して規制部18とする構成であってもよい。
図8には、本発明の実施形態における第4例の他動運動機器を示している。なお、本例の構成のうち上記した第3例の構成と同様の構成については詳しい説明を省略し、第3例とは相違する特徴的な構成についてのみ以下に詳述する。
本例の他動運動機器においては、使用者の足首が後方に倒れることを防止する規制部18として、使用者の足首および脹脛の少なくとも一方に当たって加圧するエアバッグ19を用いている。この加圧手段を成すエアバッグ19は、ポンプ装置8に接続されたうえで筒体部17内面の板状部材に配されており、底壁6内面に配されるエアバッグ7と協調動作を行うようにその膨縮を制御される。
つまり、エアバッグ7が膨張して使用者の足指部分を甲側に反らせる際に、加圧手段を成すエアバッグ19も膨張して圧力を強め、使用者の下腿部分を確実にホールドするように設けている。これにより、足首が後側に曲がることをエアバッグ19で弾力的に且つ確実に拘束することができ、しかもこのエアバッグ19は足指部分を甲側に反らす際以外には収縮しているので邪魔になることがない。
図9〜図18には、本発明の実施形態における第5例の他動運動機器を示している。なお、本例の構成のうち上記した第1例の構成と同様の構成については詳しい説明を省略し、第1例とは相違する特徴的な構成についてのみ以下に詳述する。
本例の他動運動機器においては、左足用の靴型ハウジング5の底壁6を後述の左足支持台2aの設置板21上面に平行に設置固定し、右足用の靴型ハウジング5の底壁6を後述の右足支持台2bの設置板21上面に平行に設置固定している。換言すれば、左足支持台2aおよび右足支持台2bにそれぞれ、靴型ハウジング5の底壁6や、位置決め部10を成す靴型ハウジング5の上カバー部9や、アクチュエータ15を成すエアバッグ7が配された構成である。本例の場合、底壁6と左足支持台2aおよび右足支持台2bとで、使用者が足を乗せる支持台部2を形成している。
なお、靴型ハウジング5については図9に右側の靴型ハウジング5を示しているが、他の図中では図示を省略している。また、ポンプ装置8についても図示は省略している。
そして、本例の他動運動機器には左足支持台2aと右足支持台2bを往復移動させる駆動装置3を備え、左足支持台2aと右足支持台2bがエアバッグ7の膨縮と協調して動作するように設けている。したがって、使用者の足指部分を強制的に甲側に反らせて主に脹脛の筋肉を刺激するという第1例で示した他動運動と、左右の足を強制的に所定の軌跡で往復動させて脚部の様々な筋群を刺激するという別の他動運動とを、組み合わせることが可能になっている。以下、左足支持台2aおよび右足支持台2bや、この左足支持台2aおよび右足支持台2bを往復動させる駆動装置3について詳述する。
本例においては、図9および図10に示すように、床上に載置するための架台としてベース板1aを備える。ベース板1aは直方体状のものを図示しているが、ベース板1aの外周形状にはとくに制限はない。以下では、説明を簡単にするために、ベース板1aを床上に載置した状態でベース板1aの上面が床面と平行になるものとする。したがって、図9および図10における上下が使用時の上下になる。
ベース板1aの上方には上板1bが配設され、ベース板1aと上板1bとを結合することによりハウジング1が形成される。ベース板1aの上には、使用者の左右の足をそれぞれ乗せる靴型ハウジング5や、左右の靴型ハウジング5を取り付ける左足支持台2aおよび右足支持台2bや、左足支持台2aおよび右足支持台2bの位置をそれぞれ移動させる駆動装置3が配置される。なお、図9および図10における矢印Xの向きを前方とし、他の図においても矢印Xを記載している場合には、その向きを前方とする。
上板1bには左足支持台2aおよび右足支持台2bをそれぞれ露出させる2個の開口窓11a,11bが厚み方向に貫設される。各開口窓11a,11bは、それぞれ矩形状に開口する。ただし、各開口窓11a,11bは、長手方向に沿った中心線がハウジング1の前後方向に対して傾斜し、両中心線間の距離がハウジング1の前端側で後端側よりも大きくなるように形成してある。
各開口窓11a,11bの幅方向の両側部には、図11に示すように、スライド溝12が開口窓11a,11bの内側に臨む形で開口する。スライド溝12には、足置カバー22に形成したフランジ部22bがスライド可能に挿入される。足置カバー22は、靴型ハウジング5を設置するための設置板21とともに左足支持台2aおよび右足支持台2bを構成するものであって、矩形筒状に形成された本体部22aを有しており、フランジ部22bは本体部22aの一方の開口面(上面)に沿って本体部22aの全周に亘って延設されている。足置カバー22の本体部22aの内側には下部において取付板22cが一体に形成される。
本体部22aは長手方向の寸法および幅方向の寸法が開口窓11a,11bよりも小さく、フランジ部22bは長手方向の寸法および幅方向の寸法が開口窓11a,11bよりも大きく形成されている。さらに、スライド溝12の底間の距離はフランジ部22bの先端縁間の距離よりも大きく形成される。したがって、足置カバー22は、幅方向においてはスライド溝12の範囲内において移動可能になり、また長手方向においても移動可能になる。
設置板21は、足置カバー22における本体部22aの内周縁よりもやや小さい矩形板状に形成されており、靴型ハウジング5全体を乗せることができる寸法に形成される。設置板21の下面周部にはそれぞれコ字状に折曲されたカバー体21a,21bが一体に設けられる。さらに、設置板21の下面であってカバー体21a,21bに囲まれる部位には設置板21の幅方向に離間した一対の軸受21cが設置板21と一体に設けられる。
足置カバー22に設けた取付板22cの上面には上方に開放された断面コ字状の軸受板23が固定される。設置板21に設けた軸受21cは、軸受板23の各脚片23aの外側面に当接する。さらに、軸受板23の両脚片23aおよび両軸受21cを通る軸部24が設けられる。したがって、軸部24は設置板21の幅方向に沿って配置され、設置板21は、足置カバー22に対して長手方向の前後が上下するように軸部24の周りに回動可能になる。上述したカバー体21a,21bは、設置板21が足置カバー22に対して回動する際に、設置板21の下面と足置カバー22との間に隙間が生じるのを防止するために設けられている。
足置カバー22に設けた取付板22cの下面には下面に開放された断面コ字状の台車41が取り付けられる。台車41の両脚片41aの外側面には各2個ずつの車輪42が取り付けられる。ベース板1aの上面には左足支持台2aと右足支持台2bとに対してそれぞれ2本ずつのレール43が固定されており、レール43の上面に設けたレール溝43aの中で車輪42が転動するように、レール43上に台車41が載置される。また、レール43の上面には車輪42がレール溝43aから脱落するのを防止するために、脱輪防止板44が固定される(図12参照)。
ところで、レール43の長手方向はハウジング1に設けた開口窓11a,11bの長手方向とは異なる方向としてある。上述したように開口窓11a,11bは長手方向の中心線がハウジング1の前端側で後端側よりも大きくなるように傾斜しており、レール43の長手方向もハウジング1の前後方向に対して同様に傾斜している。
ただし、レール43ではハウジング1の前後方向に対する角度が開口窓11a,11bよりもさらに大きくなっている。たとえば、ハウジング1の前後方向に対する角度が、開口窓11a,11bの長手方向で30度とすれば、レール43の長手方向は45度などに設定される。すなわち、左足支持台2aおよび右足支持台2bに設置してある靴型ハウジング5内に足を挿入し、開口窓11a,11bの長手方向に足の中心線を一致させた状態において、レール43に沿って左足支持台2aおよび右足支持台2bを移動させることにより足の位置を変化させても膝に剪断力が作用しない方向に、レール43の長手方向が設定される。なお、本実施形態では、望ましい動作として、左足支持台2aおよび右足支持台2bが前後方向と左右方向とを複合した移動経路で移動する例を示しているが、レール43を配置する方向により左足支持台2aおよび右足支持台2bを前後方向や左右方向に移動させることも可能である。
上述の構成によって、左足支持台2aおよび右足支持台2bはレール43の長手方向に沿って往復移動することが可能になり、レール43の長手方向は開口窓11a,11bの長手方向の中心線に対して傾斜しているから、設置板21および足置カバー22は開口窓11a,11bの中で長手方向に対して交差した方向に移動することになる。すなわち、上述した台車41と車輪42とレール43と脱輪防止板44とは、左足支持台2aおよび右足支持台2bの移動経路を拘束する案内部4として機能する。
左足支持台2aおよび右足支持台2bを移動させる駆動装置3は、図13に示すように、駆動力を発生させる駆動源31と、駆動力を左足支持台2aおよび右足支持台2bにそれぞれ伝達するように2系統に分離する系統分離部32と、駆動力を用いて台車41をレール43に沿って往復移動させる往復駆動部33とを有する。本実施形態では、図13(a)のように系統分離部32により駆動力を分離し、分離された駆動力を往復駆動部33に伝達する構成を採用しているが、図13(b)のように往復駆動部33により得られる往復駆動の駆動力を系統分離部32で2系統に分離することも可能である。
駆動装置3について、さらに具体的に説明する。駆動源31には回転モータ(以下、単にモータと略称し、符号31を用いる)を採用しており、モータ31の出力軸31aには系統分離部32が連結される。
系統分離部32は、モータ31の出力軸31aに連結されたウォーム(第1歯車)32aと、ウォーム32aに噛合する一対のウォームホイール(第2歯車)32bとを備える。ウォーム32aおよび2個のウォームホイール32bはベース板1aに固定されるギアボックス34に収納される。ギアボックス34は、上面に開口を有するギアケース34aと、ギアケース34aの開口面に覆着される蓋板34bとにより形成される。ギアケース34aと蓋板34bとの間にはウォーム32aの長手方向の両端部を支承する一対の軸受32cが取り付けられる。
ウォームホイール32bには、ギアケース34aと蓋板34bとに保持される回転軸35が挿通され、ウォームホイール32bの回転に伴って回転軸35が回転するように、ウォームホイール32bと回転軸35とを結合してある。回転軸35の上端部には断面が非円形状(図示例では矩形状)に形成された結合部35aが形成される。
モータ31は、ギアケース34aに設けた口受部34cとベース板1aに固定した口受板13aとに載置され、ギアケース34aに覆着される蓋板34bと口受け板13aに結合される押さえ板13bとによりベース板1aに固定される。
図14に示すように、往復駆動部33は、回転軸35の結合部35aに一端部が結合されるクランク板36と、クランク板36にクランク軸37を介して結合されたクランクロッド38とを備える。クランク軸37の一端部はクランク板36に固定され、他端部はクランクロッド38の一端部に保持された軸受38aに保持される。つまり、クランクロッド38の一端部はクランク板36に対して回動自在に結合される。クランクロッド38の他端部は台車41に対して軸体38bを用いて結合され、クランクロッド38の他端部は台車41に対して回動自在に結合される。
上述の構成から明らかなように、クランクロッド38は、ウォームホイール32bの回転力を台車41の往復移動に変換する変換機構として機能する。クランクロッド38はウォームホイール32bごとに設けられ、台車41は左足支持台2aと右足支持台2bとにおいて個別に設けられているから、クランクロッド38は、ウォームホイール32bの回転力をそれぞれ左足支持台2aと右足支持台2bとの往復移動に変換する変換機構として機能する。
台車41は上述したように車輪42とレール43とにより移動経路が拘束されているから、ウォームホイール32bの回転に伴って台車41がレール43の長手方向に沿って往復移動する。つまり、モータ31の回転がウォーム32aおよびウォームホイール32bを介してクランク板36に伝達され、さらに、クランク板36に結合されたクランクロッド38により台車41がレール43に沿った直線上で往復移動を行うのである。その結果、台車41に結合されている足置カバー22がレール43に沿って往復移動する。つまり、左足支持台2aと右足支持台2bとがレール43の長手方向において往復移動する。
本実施形態では、ウォーム32aと2個のウォームホイール32bとにより駆動力を2系統に分離し、各系統ごとに左足支持台2aと右足支持台2bとの駆動力として用いるから、駆動装置3により左足支持台2aと右足支持台2bとが関連付けて駆動される。ここで、各ウォームホイール32bがウォーム32aに噛合する位置を180度異ならせてあり、したがって左足支持台2aが移動範囲の後端に位置するときには、右足支持台2bは移動範囲の前端に位置する。左足支持台2aの移動範囲における後端は左足支持台2aの移動範囲の右端であって、右足支持台2bの移動範囲における前端は右足支持台2bの移動範囲の右端であるから、左右方向においては、左足支持台2aおよび右足支持台2bは同じ向きに移動することになる。
なお、上述の構成から明らかなように、ウォーム32aとウォームホイール32bとを噛み合わせる位置に応じて、左足支持台2aと右足支持台2bとの移動における位相差を適宜に付与することが可能である。左足支持台2aと右足支持台2bの上に立って立位で使用する場合には、本実施形態のように180度の位相差を付与すれば、使用者の前後方向の重心移動が少なくなるからバランス機能が低下している使用者でも使用できる。あるいは、位相差を持たないようにすれば、使用者の前後方向の重心移動が生じるから、単に脚部の筋群の運動になるだけではなく、バランス機能を保つための腰背部などの筋群の運動にも役立つ。
ところで、左足支持台2aおよび右足支持台2bに設けた設置板21は足置カバー22に対して軸部24の周りで回動可能であるから、図15に示すように、設置板21の前端部と後端部との高さ位置を変化させることが可能になっている。つまり、設置板21上の靴型ハウジング5内に置いた足の爪先と踵との高さ位置を変化させることにより、足関節の底屈と背屈とが可能になっている。
ここで、軸部24の周りでの設置板21の回動をレール43に沿った往復移動に連動させるために、ベース板1aには、図16に示すように、設置板21の移動経路に沿って少なくとも一部に傾斜面14aを有したガイド面14が形成され、設置板21の下面にはガイド面14に当接する倣い突部25が設けられている。図示例では、ガイド面14の全長に亘ってベース板1aの上面に対して一定角度で傾斜する傾斜面14aを形成しているが、ガイド面14の形状はとくに限定されるものではなく、一部に傾斜面14aを含んでいればよい。倣い突部25の先端部は、ガイド面14に対する摩擦係数が小さくなるように材料および形状を選択しておけばよいが、本実施形態では、ガイド面14の上で転動するローラ25aを倣い突部25の先端部に設けている。
上述のように、ガイド面14に当接する倣い突部25を設けていることにより、モータ31の回転に伴って左足支持台2aおよび右足支持台2bが往復移動を行う際に、倣い突部25がガイド面14に設けた傾斜面14aに当接する際には、設置板21が軸部24の周りで回動することにより設置板21のベース板1aに対する角度が変化し、結果的に足関節の底屈および背屈が行われる。
なお、上述の例では、ガイド面14をベース板1aに設け、倣い突部25を設置板21に設けているが、図17のように、ガイド面14を設置板21に設け倣い突部25をベース板1aに設けるようにしても同様に動作する。
上述した構成例では、駆動装置3における系統分離部32の構成として、ウォーム32aとウォームホイール32bとを用いることにより、モータ31の出力軸31aとウォームホイール32bとともに回転する回転軸35との直角軸間の伝達を可能にするとともに減速を行う構成例を示したが、モータ31の出力軸31aと回転軸35との直角軸間の伝達をベルトにより行う構成を採用してもよい。この場合、ウォームホイール32bに代えてベルトを掛け回すプーリを用い、ウォーム32aを省略することができる。
また、上述の構成例では、モータ31の出力軸31aがベース板1aの上面に沿って配置されているが、出力軸31aがベース板1aの上面に直交するように配置する場合には、ウォーム32aとウォームホイール32bとの組み合わせではなく、平歯車の組み合わせによって回転力の伝達と系統の分離とを行うことが可能である。この構成において平歯車をプーリに置き換えたり、プーリ間で回転力をベルトで伝達するように構成したりすることが可能である。
ところで、装置の使用にあたり、立位で使用する場合には、左足支持台2aおよび右足支持台2bが停止位置している初期位置において、左右の足をそれぞれ左足支持台2aと右足支持台2bに設置してある靴型ハウジング5内に挿入して立ち、駆動装置3の運転を開始させる。図18に示すように、左足支持台2aおよび右足支持台2bの長手方向Dxは前後方向(矢印Xの向き)に対して、たとえば9度程度の角度をなすように配置され、左足支持台2aおよび右足支持台2bの上に立ったときに、使用者の脚部に捻れを生じることがなく、自然な立ち位置になるようにしてある。
初期位置では、左足支持台2aおよび右足支持台2bは前後方向において同位置に位置する。つまり、初期位置では左足支持台2aおよび右足支持台2bが左右方向の一直線上に並ぶ。したがって、初期位置で使用者が左足支持台2aおよび右足支持台2bの上に載ると、使用者の重心から鉛直方向に下ろした直線は左足支持台2aと右足支持台2bとの間でほぼ中央を通ることになる。
上述した構成から明らかなように、駆動装置3の運転を開始すると、左足支持台2aおよび右足支持台2bはそれぞれ前後方向に位置を変化させるとともに、前後方向の位置変化に伴って左右方向の位置も変化させる。ここで、左足支持台2aおよび右足支持台2bはレール43に沿った一直線上を往復移動し、左足支持台2aおよび右足支持台2bは足の前後方向とは異なる方向に移動する。たとえば、ハウジング1の前後方向に対して45度をなす方向に移動する。この移動距離は、たとえば20mmなどに設定する。
また、上述したように、左足支持台2aおよび右足支持台2bがレール43に沿って往復移動するのと同時に、設置板21が軸部24の周りに回動する。設置板21が前方に移動する際には倣い突部25がガイド面14の傾斜面14aを昇るから、左足支持台2aおよび右足支持台2bの前端位置において足関節が背屈し、左足支持台2aおよび右足支持台2bの後端位置において足関節が底屈することになる。軸部24の位置は足裏において踵付近に設定し、底屈と背屈との角度はベース板1aの上面を基準面として基準面に対してそれぞれ10度程度に設定する。
左足支持台2aおよび右足支持台2bの前後の位置と底屈および背屈との関係は上述の例とは逆にすることが可能であり、また基準面に対する底屈および背屈の角度は異ならせてもよい。これらの動作はガイド面14の形状を適宜に設定することにより、容易に実現することができる。
以上述べたように、本例の他動運動機器においては、靴型ハウジング5に設けたエアバッグ7により使用者の足指部分を強制的に甲側に反らせて主に脹脛の筋肉を刺激するという第1例に示した他動運動と、駆動装置3により左右の足を強制的に所定の軌跡で往復動させて脚部の様々な筋群を刺激するという別の他動運動とを組み合わせることが可能である。
これら他動運動の組み合わせとしては多様なものが考えられる。例えば、前後方向に往復動する左足支持台2aおよび右足支持台2bの前端位置において設置板21が傾斜して足関節を背屈(或いは底屈)させるとともに、エアバッグ7が膨張して足指部分を甲側に反らせるといった組み合わせや、更に、左足支持台2aおよび右足支持台2bの後端位置において設置板21が傾斜して足関節を底屈(或いは背屈)させるとともに、エアバッグ7が膨張して足指部分を甲側に反らせるといった組み合わせが挙げられるが、他の組み合わせも適宜設定可能である。
なお、本例では第1例の靴型ハウジング5を左足支持台2aおよび右足支持台2bに設置した場合について説明したが、第2例〜第4例の靴型ハウジング5を左足支持台2aおよび右足支持台2bに設置してもよいことは勿論である。