JP5085963B2 - 電磁棒鋼およびその製造方法 - Google Patents
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Description
省エネルギー化や高効率化を図るには、高周波化が有効な手段の一つとして挙げられるが、周波数が上がるとモータの回転速度も増大する。モータの回転数が増大すると、ローターを構成するコアに加わる遠心力も増大するため、コア材には高い降伏強度が要求される。即ち、コア材の降伏強度が不十分な場合は、遠心力によってコア材が塑性変形を起こし、ローターコアとステーターコア間のエアギャップが設計値から変化することでモータ性能が劣化したり、更には、回転中にローターとステーターが接触しモータを破損する結果となる。このため、高周波化によりモータの省エネルギー化や高効率化を図るには、ローターコア材の高強度化が不可欠となる。
ない。
さらに、10nm未満と極めて微細な析出物でフェライトを強化した、上記鋼の被削性について検討を行った結果、フェライトの結晶粒径を所定の範囲に制御し、組織の均一細粒化を図ることによって、磁気特性並びに被削性を兼備した電磁棒鋼が得られることも知見した。
1.質量%で
C:0.04〜0.12%、
Si:0.5%以下、
Mn:0.5〜3.0%、
Al:0.1%以下、
Ti:0.03〜0.35%および
Mo:0.05〜0.8%
を含み、残部Feおよび不可避的不純物の成分組成を有し、平均結晶粒径が30μm以上80μm以下のフェライトの面積率が95%以上の組織からなり、粒径が10μm以下のフェライトの面積率が20%以下であり、かつフェライト中に粒径10nm未満の微細析出物が分散していることを特徴とする電磁棒鋼。
記
0.50≦(C/12)/[(Ti/48)+(Mo/96)]≦1.50 …(1)
ただし、化学成分表示は当該成分の含有量(質量%)を示す。
Nb:0.08%以下、
V:0.15%以下および
W:1.5%以下
の1種または2種以上を含むことを特徴とする前記1に記載の電磁棒鋼。
記
0.50≦(C/12)/[(Ti/48)+(Mo/96)+(Nb/93)+(V/51)+(W/184))≦1.50…(2)
ただし、化学成分表示は当該成分の含有量(質量%)を示す。
S:0.01〜0.1%を含み、かつ
Pb:0.2%以下、
Ca:0.005%以下、
Bi:0.1%以下および
B:0.02%以下
の1種または2種以上を含有することを特徴とする前記1ないし6のいずれかに記載の電磁棒鋼。
C:0.04〜0.12%、
Si:0.5%以下、
Mn:0.5〜3.0%、
Al:0.1%以下、
Ti:0.03〜0.35%および
Mo:0.05〜0.8%
を含み、残部Feおよび不可避的不純物の成分組成を有する鋼素材を、1100℃以上に加熱した後、熱間圧延を、開始パスにおける減面率が25%以上、最終パスにおける減面率が15%以上35%以下および仕上温度880℃以上で施し、次いで1.0℃/s以下の冷却速度で冷却することを特徴とする電磁棒鋼の製造方法。
ここで、減面率(%)は、
((各パスにおける圧延前の断面積−(各パスにおける圧延後の断面積))/(各パスにおける圧延前の断面積)×100
にて求めることができる。
記
0.50≦(C/12)/[(Ti/48)+(Mo/96)]≦1.50 …(1)
ただし、化学成分表示は当該成分の含有量(質量%)を示す。
Nb:0.08%以下、
V:0.15%以下および
W:1.5%以下
の1種または2種以上を含むことを特徴とする前記9に記載の電磁棒鋼の製造方法。
記
0.50≦(C/12)/[(Ti/48)+(Mo/96)+(Nb/93)+(V/51)+(W/184)]≦1.50…(2)
ただし、化学成分は当該成分の含有量(質量%)を示す。
S:0.01〜0.1%を含み、かつ
Pb:0.2%以下、
Ca:0.005%以下、
Bi:0.1%以下および
B:0.02%以下
の1種または2種以上を含有することを特徴とする前記9ないし12のいずれかに記載の電磁棒鋼の製造方法。
記
Mn含有量が1.7%以下のとき:600℃≦T≦800℃
Mn含有量が1.7%超のとき:600℃≦T≦750℃
さらに、棒鋼に必要とされる被削性についても、工具寿命の延長を実現するに足る良好な被削性を与えることができる。
[成分組成]
C:0.04〜0.12%
Cが0.04%未満であると、微細析出物の析出量が不足し、高い降伏強度が得られないため、Cは0.04%以上とする必要がある。一方、Cは0.12%を超えて含有すると析出物が粗大化し、やはり高い降伏強度が得られないため、Cの上限は0.12%とする必要がある。
Siは冷間加工性を低下させるため、添加量は0.5%以下とする。より好ましくは、0.15%以下である。
本発明では、析出物の析出挙動がオーステナイトからフェライトへの変態(以降、フェライト変態という)の進行と密接に関係しており、圧延後の冷却中に生じるフェライト変態の変態開始温度と析出物の析出開始温度との差が小さく、フェライト変態と析出が競合する場合に、析出物がフェライト中に微細に分散析出する。すなわち、Mnは、フェライト変態温度を下げ、フェライト変態の変態開始温度と析出物の析出開始温度との差を減少させることで、フェライト変態と析出を競合させることに寄与する。そのためには、Mnを0.5%以上添加する必要がある。一方、Mn量が3.0%を超えると、フェライト以外にベイナイト等の低温変態相が生成するようになり、微細析出物による強化が不足し、また低温変態相が生成すると磁束密度も低下するため、Mnの上限は3.0%とする。
Alは、脱酸元素として添加しても良く、この場合は0.01%以上で添加する必要がある。しかし、過剰に添加するとその効果が飽和するだけでなく、Nとの析出物であるAlNの量が増え、AlNは10nm未満の径で析出することがないため、磁気特性を劣化させることになる。これを避けるために、Alの添加量は0.1%以下とする。より好ましくは、0.05%以下である。
Tiは、Ti系炭化物やTi−Mo系炭化物を含む析出物を微細に析出させ硬度を上昇させる。高い降伏強度を確保するためには、0.03%以上が必要であり、一方0.35%を超えて添加すると析出物が粗大化し、却って強度が低下するため、Tiは0.03〜0.35%とする。より好ましくは、0.03〜0.30%である。
Moは、Mo系炭化物やTi-Mo系炭化物を含む析出物を微細に析出させ、強度を向上させるために添加する。また、Moは拡散速度が遅く、Tiと共に析出する場合、析出物の成長速度が低下し、微細な析出物が得られ易いという利点も有する。ここで、高い降伏強度を確保するためには、0.05%以上のMo添加が必要であり、一方、0.8%を超えて添加すると、フェライト以外にベイナイト等の低温変態相が生成するようになり、微細析出物による析出強化が不足し強度が低下すると共に磁気特性が劣化する。このため、Moは0.05〜0.8%とする。より好ましくは、0.15〜0.50%である。
記
0.50≦(C/12)/[(Ti/48)+(Mo/96)]≦1.50・・・(1)
本パラメーターは、析出物の大きさに影響を与えるもので0.50以上1.50以下とした場合、粒径10nm未満の微細析出物の形成が容易となり好ましい。
Nb:0.08%以下、
Nbは、TiやMoと共に微細析出物を形成して強度上昇に寄与する。また、フェライトを整粒化することで延性および靭性を向上させる。これらの効果を得るには、0.005%以上添加することが好ましい。但し、0.08%を超えて含有するとフェライトが微細化し、微細析出物が磁気特性に悪影響をおよぼすことになるため、添加量は0.08%以下とする。より好ましくは、0.04%以下である。
VもTiやMoと共に微細析出物を形成して強度上昇に寄与することから、好ましくは0.005%以上添加するが、0.15%を超えて含有すると析出物が粗大化するため、添加量は0.15%以下とする。より好ましくは、0.10%以下とする。
WもTiやMoと共に微細析出物を形成して強度上昇に寄与することから、好ましくは0.01%以上添加するが、1.5%を超えて含有すると析出物が粗大化するため、添加量は1.5%以下とする。より好ましくは、1.0%以下である。
記
0.50≦(C/12)/[(Ti/48)+(Mo/96)+(Nb/93)+(V/51)+(W/184)]≦1.50…(2)
本パラメーターは、析出物の大きさに影響を与えるもので、0.50以上1.50以下とした場合、粒径10nm未満の微細析出物の形成が容易となる。
ここで、S量を0.01〜0.1%としたのは、S量が0.01%未満であると、被削性の向上が図られないためであり、0.1%を超えると延性や靭性が低下するためである。なお、Sは0.01%未満で不純物として含有されるものである。本発明において、0.1%以下の含有量では強度ならびに磁気特性には影響を及ぼさない。そのため、積極的に添加して0.01〜0.1%の含有量とすることができる。
その他、延性および靭性を向上させる目的で、Cr、NiおよびCuの1種または2種以上をCr≦0.5%、Ni≦0.5%およびCu≦0.5%の範囲で添加しても構わない。
尚、これら元素の添加の有無や含有量により、本発明の効果が損なわれることは無い。
本発明では、ミクロ組織を、平均結晶粒径が30μm以上80μm以下のフェライトの面積率が95%以上で、粒径10μm以下のフェライト粒の圧延方向断面での面積率が20%以下であり、10nm未満の微細析出物が分散析出した組織に規定する。以下に、組織の限定理由について説明する。
まず、フェライトの面積率を95%以上、好ましくは98%以上とするのは、フェライト相が磁気特性にとって最も好ましい組織であるからである。なお、本発明におけるフェライトの面積率は、断面組織観察(200倍の光学顕微鏡組織観察)で求める。以下、フェライトの面積率が95%以上の組織をフェライト単相組織という。
本発明の成分組成範囲に従う、C:0.072%、Si:0.07%、Mn:1.41%、Ti:0.19%、Mo:0.25%、P:0.011%、S:0.020%、Al:0.039%およびN:0.0028%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を溶製し、これを1120℃に加熱後、直径100mmの棒鋼に熱間圧延し、その後、500℃までの平均冷却速度が0.18℃/sで室温まで冷却した。その際、組織を変化させるため、熱間圧延における圧延パススケジュール(各圧下パスの温度および減面率)を種々に変化させた。
かくして得られた棒鋼について、組織観察を行うと共に、引張試験値と磁気特性を測定した。
また、磁気特性については、得られた棒鋼の中央部から内径33mm、外径45mmおよび厚み5mmのリング状試験片を、リング板面が棒鋼断面と平行になるように採取し、1次巻線100回および2次巻線100回を施し、直流の励磁電流5000A/mでの磁束密度B50並びに、交流50Hzで磁束密度1.0Tまで励磁したときの鉄損W10/50を測定した。
従って、フェライトの平均的な大きさを増大させることに加えて、磁壁移動の律速となる微細なフェライトが占める割合を低減することが磁気特性上重要となる。このため、粒径10μm以下の微細なフェライトの割合を減じると、磁気特性に対する析出物の悪影響を防止するためのフェライトの平均粒径が、微細なフェライトの割合を特段考慮しない場合より低下するものと考えられる。
図2に、フェライト粒径と被削性との関係を示す。同図から、フェライトの平均粒径が80μm以下の場合、粒径10μm以下のフェライトの占める面積率が20%以下であれば、工具寿命は15min以上と良好な値を示す。ところが、粒径10μm以下のフェライト面積率が20%を超えると、工具寿命は5min未満となる。更に、フェライトの平均粒径が80μm超と粗大な場合には、粒径10μm以下のフェライト面積率が20%以下であっても、5min未満の工具寿命しか得られない。
磁気特性の観点からは、フェライトの平均粒径を30μm以上、粒径が10μm以下のフェライトの面積率を25%以下とする必要がある。また、被削性の観点からは、フェライトの平均粒径を80μm以下、粒径が10μm以下のフェライトの面積率を20%以下とする必要がある。
微細析出物の粒径は小さい程強度上昇に有効であり、望ましくは5nm、更に望ましくは3nm以下とし、そのような微細析出物としてTiおよびMoを複合含有した炭化物、またそれらに更にNb、VおよびWの1種または2種以上を含む炭化物が好ましい。
但し、10nm以上の大きさの析出物は析出物形成元素を徒に消費し、強度に悪影響を与えるため、その大きさは50nm以下に抑えることが好ましい。
電子顕微鏡試料として、ツインジェット法を用いた電解研磨法で作製し、加速電圧200kVで観察する。その際、析出物が母相に対して計測可能なコントラストになるように母相の結晶方位を制御し、析出物の数え落としを最低限に抑えるため、焦点を正焦点からずらしたデフォーカス法で観察を行う。また、析出物粒子の計測を行った領域の試料厚さは、電子エネルギー損失分光法を用いて、弾性散乱ピークと非弾性散乱ピーク強度とを測定することで評価する。
以下に、望ましい製造条件について説明する。
加熱温度
本発明では、熱間圧延後の冷却中に析出物を微細に析出させるために、熱間圧延前の鋳片に析出している析出物を、加熱炉にて一旦固溶させる必要がある。その際、加熱温度が1100℃未満であると、Ti-Mo系炭化物等が十分に固溶しないため、加熱温度は1100℃以上とする。
本発明では優れた磁気特性と被削性を得るために、フェライトの平均粒径を30μm以上80μm以下、粒径10μm以下のフェライトの面積率を20%以下とする必要がある。このうち、粒径10μm以下のフェライトの面積率を20%以下とするには、圧延初期に減面率25%以上の強圧下を施し、再結晶核を十分に導入することで圧延初期にオーステナイト粒径を均一化することが重要である。こうすることによって、最終的に得られるフェライト組織も均一化し、微細フェライトの生成を一定量以下に抑制することができる。ここで、粒径10μm以下のフェライトの面積率を20%以下とするには、25%以上の減面率が必要となるため、本発明では、熱間圧延の開始パスにおける減面率を25%以上と規定する。
本発明では、析出物の析出挙動がフェライト変態の進行と密接に関係しており、圧延後の冷却中に生じるフェライト変態の変態開始温度と析出物の析出開始温度との差が小さく、フェライト変態と析出とが競合する場合に、析出物がフェライト中に微細に分散析出する。フェライト変態と析出とを競合させるには、フェライト変態の開始温度を下げる必要があるが、熱間圧延おける仕上温度が低い場合には、圧延で導入される歪がフェライト変態の開始温度を上昇させ、析出物の微細化を阻害する。これを避けるためには、仕上温度を歪の影響が現れない高温にすれば良く、この点から仕上温度は880℃以上とする。
本発明では、熱間圧延後の冷却中に微細析出物を析出させる。その際、熱間圧延後の冷却速度が1.0℃/sを超えると低温変態相が生成し、析出が十分に進行せず、高い降伏強度が得られなくなる。そこで、熱間圧延後の冷却速度は1.0℃/s以下とする必要がある。また、冷却速度が1.0℃/s以下であれば、本発明鋼は低Cであることから、フェライト単相組織が得られる。尚、析出は500℃までで実質上終了するため、熱間圧延後から500℃までを1.0℃/s以下の冷却速度で冷却すれば良い。
以下、焼鈍を行った場合について、検討した結果を説明する。
かくして得られた棒鋼について、組織観察を行うと共に、引張試験値と磁気特性を測定した。組織観察、引張試験、磁気特性の測定方法は、前述した方法と同様とした。
また、焼鈍を行うことによって、粒径10μm以下のフェライトの占める面積率をさらに低減することは、被削性の向上に対しても有効であることもわかった。以下、この点を説明する。
図4に、フェライト粒径と被削性との関係を示す。同図から、フェライトの平均粒径が80μm以下の場合、粒径10μm以下のフェライトの占める面積率が5%以下であれば、工具寿命は30min以上と特に良好な値を示す。ここでも、フェライトの平均粒径が80μm超と粗大な場合には、粒径10μm以下のフェライト面積率が5%以下であっても、30min以上の工具寿命は向上しない。
磁気特性の観点からは、フェライトの平均粒径を30μm以上、粒径が10μm以下のフェライトの面積率を10%以下とする必要がある。また、被削性の観点からは、フェライトの平均粒径を80μm以下、粒径が10μm以下のフェライトの面積率を5%以下とする必要がある。
焼鈍温度
本発明では、熱間圧延後の焼鈍によって微細析出物を十分に析出させ、さらに組織を均一化させることによって、高い強度、磁気特性並びに被削性をさらに高いレベルで兼備させることができる。この際、焼鈍温度が600℃未満では、微細析出物を析出させることができないため、高強度化が十分に図れない。加えて、粒径10μm以下のフェライトの面積率を5%以下とすることができず、磁気特性と被削性の改善が図れない。したがって、焼鈍温度は600℃以上とすることが好ましい。また、焼鈍温度が高すぎると微細析出物が粗大化するとともに、焼鈍後の冷却中に第2相が析出することで磁気特性が低下する。鋼中のMn含有量が1.7%以下の場合には、焼鈍温度を800℃以下とすれば良好な磁気特性が確保でき、また、鋼中のMn含有量が1.7%超の場合には、焼鈍温度を750℃以下とすれば良好な磁気特性が確保できることがわかった。
以上のような検討の結果、焼鈍を行う場合の焼鈍温度は、下記の温度域Tとする。
記
Mn含有量が1.7%以下のとき:600℃≦T≦800℃
Mn含有量が1.7%超のとき:600℃≦T≦750℃
表1に示す組成の鋼を溶製し、これらを表2および表3に記載の条件に従って、所定寸法の棒鋼に熱間圧延した。 熱間圧延においては、加熱温度、パススケジュール、仕上温度および圧延後から500℃までの冷却速度を変化させた。ここで、圧延仕上寸法を変え、この圧延後に空冷することによって、冷却速度を変化させた。
組織観察は、棒鋼の任意の位置計20箇所から組織観察用試験片を採取して組織の同定を行うと共に、それぞれの試験片について各100個の粒を任意に選び、これらの断面積を画像処理によって求め、これと等価な断面積を持つ相当円の直径として計2000個の結晶粒の粒径を個別に算出し、これらの平均値を求めて棒鋼全体の平均結晶粒径を求めた。また、計2000個の結晶粒の内、粒径10μm以下のフェライトの断面積の和を求め、これを結晶粒2000個の断面積の総和で除することで粒径10μm以下のフェライトの面積率を算出した。
磁気特性については、得られた棒鋼の中央部から内径33mm、外径45mmおよび厚み5mmのリング状試験片をリング板面が棒鋼断面と平行になるように採取し、1次巻線100回および2次巻線100回を施し、直流の励磁電流5000A/mでの磁束密度B50ならびに、交流50Hzで磁束密度1.0Tまで励磁したときの鉄損W10/50を測定した。
被削性は、超硬工具P10を用い、切削速度200m/min、無潤滑の条件により棒鋼の外周切削を行い、工具の逃げ面磨耗が0.2mmに達した時間を工具寿命とした。
表中のNo.は個々の結果を区分するためのものであり、供試鋼と熱延条件の組合せが明示されるように、鋼番と熱延条件を組み合せて起番した。例えば、鋼番1を条件Aで熱間圧延した場合は1-Aと起番した。
組織については、フェライトはF、ベイナイトやマルテンサイト等の低温変態相が生成し、その体積分率が5%を超える場合をTと略記した。析出物については平均粒子径を記載した。尚、粒子径のばらつきは、10nm未満の析出物で最大でも±1nm、それ以上の大きさの析出物では±3nmから±5nmであった。尚、組織に低温変態相が生成した場合については、結晶粒径と析出物の粒子径の測定は割愛した。
No.17-Aは、Cが低く、微細析出物の析出量が不足しており、降伏強度が低い。
No.18-Aは、Cが高く、析出物が粗大化しており、降伏強度が低い。析出物が粗大な場合には、上述したように、析出物が磁気特性に悪影響を及ぼすため、磁束密度B50は1.57Tおよび鉄損W10/50は43W/kg程度となっており、磁気特性に劣る。
Mnの高いNo.20-Aは、低温変態相が生成し、微細析出物による析出強化が不足するため降伏強度が低い。また、低温変態相の生成に起因すると思われるが、磁束密度B50が1.55Tと低い。
No.21-Aは、Tiが低いため微細析出物の析出量が不足し降伏強度が低い。一方、Tiが高いNo.22-Aは、析出物が粗大化しており、降伏強度が低く、磁束密度B50並びに鉄損W10/50とも劣っている。
No.23-Aは、Moが低いために微細析出物の析出量が不足し、降伏強度が低い。一方、Moが高いNo.24-Aは、低温変態相が生成しており、微細析出物による析出強化が不足するため降伏強度が低い。また、Mnが高く、同じく低温変態相を生成したNo.20-Aと同様、磁束密度B50が1.56Tと低くなっている。
すなわち、No.2-GおよびNo.2-Mは、熱間圧延における圧延開始パスの減面率が低く、粒径10μm以下のフェライトの面積率が本発明の上限である20%を超えており、析出物が磁気特性に悪影響を及ぼす結果、磁束密度B50と鉄損W10/50の何れか一方が劣っている。
No.2-HとNo.2-Nは熱間圧延における圧延最終パスの減面率が低く、フェライトの平均粒径が本発明の上限である80μmを超えており、工具寿命が短い。
No.2-IとNo.2-Oでは熱間圧延における圧延最終パスの減面率が高く、フェライトの平均粒径が本発明の下限である30μmを下回っており、析出物が磁気特性に悪影響を及ぼす結果、磁束密度B50及び鉄損W10/50が劣っている。
すなわち、No.2-Pは、加熱温度が低く、熱間圧延前の鋳片に析出している析出物が加熱炉にて十分に固溶しないため、析出物の微細析出が阻害される結果、降伏強度が低く、加えて磁気特性も低位である。析出物に関しては、圧延後の冷却中に微細に析出したと思われるものと、鋳片で析出した析出物の溶け残りと思われるものが混在しており、析出物の平均粒子径は100nm以上となっていた。
No.2-Tは、仕上温度が低く、圧延で導入される歪がフェライト変態の開始温度を上昇させ、フェライト変態と析出との競合を妨げる結果、析出物が粗大化し、降伏強度が低下すると共に磁気特性が劣化している。
No.2-Uは、熱間圧延後の冷却速度が過大な例であるが、これのみ冷却速度を増加させるため、圧延後ミスト冷却を行った。冷却速度が速いと低温変態相が生成し、微細析出物の析出を妨げるため、降伏強度が低下することが判る。
表4に示す組成の鋼を溶製し、これらを表5および表6に記載の条件に従って、所定寸法の棒鋼に熱間圧延した。
熱間圧延においては、加熱温度、パススケジュール、仕上温度および圧延後から500℃までの冷却速度を変化させた。ここで、圧延仕上寸法を変え、この圧延後に空冷することによって、冷却速度を変化させた。さらに、圧延後に、0〜850℃の温度での焼鈍を施した。
組織観察は、棒鋼の任意の位置より、各々20個の組織観察用試験片を採取し、組織の同定を行った。それぞれの試験片について、JIS G 0552の切断法で結晶粒の平均断面積を求め、これより相当円の直径として各試験片の結晶粒径を算出し、更に各々20個の平均値を算出することによって、各位置の平均結晶粒径D並びに粒径10μm以下の圧延方向断面での面積率をそれぞれ求めた。
磁気特性については、得られた棒鋼の中央部から内径33mm、外径45mmおよび厚み5mmのリング状試験片をリング板面が棒鋼断面と平行になるように採取し、1次巻線100回および2次巻線100回を施し、直流の励磁電流1000および5000A/mでの磁束密度B10、B50ならびに、交流50Hzで磁束密度1.0Tまで励磁したときの鉄損W10/50を測定した。
工具寿命は、超硬工具P10を用い、切削速度200m/min、無潤滑の条件により棒鋼の外周切削を行い、工具の逃げ面磨耗が0.2mmに達した時間を工具寿命とした。
表中のNo.は個々の結果を区分するためのものであり、供試鋼と熱延条件の組合せが明示されるように、鋼番と熱延条件を組み合せて起番した。例えば、鋼番1を条件Aで熱間圧延した場合は1-Aと起番した。
組織については、フェライトはF、ベイナイトやマルテンサイト等の低温変態相が生成し、その体積分率が5%を超える場合をTと略記した。析出物については平均粒子径を記載した。尚、粒子径のばらつきは、10nm未満の析出物で最大でも±1nm、それ以上の大きさの析出物では±3nmから±5nmであった。尚、組織に低温変態相が生成した場合については、結晶粒径と析出物の粒子径の測定は割愛した。
No.13-Aは、Cが低く微細析出物の析出量が不足しており、降伏強度が低い。
No.14-Aは、Cが高く析出物が粗大化しており、降伏強度が低い。析出物が粗大な場合には、前述したように析出物が磁気特性に悪影響をおよぼすため、磁束密度B10が0.87T、B50は1.57Tと低く、鉄損W10/50は40W/kg以上となっており、磁気特性が劣っている。
No.15-Aは、Mnが低いためにフェライト変態と析出が十分競合せず、析出物が粗大に析出する結果、降伏強度が低く、磁気特性が劣る結果となった。一方、Mnの高いNo.16-Aでは、低温変態相が生成し、微細析出物による析出強化が不足するため降伏強度が低い。また、低温変態相の生成に起因すると思われるが、磁束密度B10が0.91Tと低い。
No.19-Aは、Moが低いため微細析出物の析出量が不足し降伏強度が低い。
一方、熱間圧延条件あるいは焼鈍条件が本発明範囲を外れた比較例では、降伏強度、磁気特性および被削性の少なくとも一つが低位の値を示す。
No.4-I鋼およびNo.4-O鋼は、熱間圧延における圧延開始パスの減面率が低いため、粒径10μm以下の微細なフェライトの面積率が大きく、磁束密度B10が低位である。
No.4-J鋼は、熱間圧延における圧延最終パスの減面率が低く、フェライトの平均結晶粒径が本発明の上限である80μmを上回っているため、被削性が劣っている。
No.4-P鋼は、熱間圧延における圧延最終パスの減面率が高く、フェライトの平均結晶粒径が本発明の下限である30μmを下回っており、かつ10μm以下のフェライトの面積率も高いため、磁気特性が低位にある。
No.4-Q鋼は、加熱温度が低いため、熱間圧延前の鋳片の析出物が加熱炉で十分に固溶せず、析出物が粗大化する。その結果、降伏強度が低いことに加え、磁気特性も劣っている。
No.4-U鋼は、仕上げ温度が低く、圧延で導入される歪がフェライト変態の開始温度を上昇させ、フェライト変態と析出の競合を阻害する。その結果、析出物が粗大化し降伏強度が低下することに加え、磁気特性が劣化する。
No.4-V鋼は、熱間圧延後の冷却速度が過大な例であり、冷却速度を増大させるために圧延後にミスト冷却を行った。この冷却速度が速いと低温変態相が生成し、焼鈍を行っても微細析出物が十分に析出しないため、降伏強度が低下する。また、磁気特性も低位となった。
表7に示す組成の鋼を溶製し、これらを表8および表9に記載の条件に従って、所定寸法の棒鋼に熱間圧延した。
熱間圧延においては、加熱温度、パススケジュール、仕上温度および圧延後から500℃までの冷却速度を変化させた。ここで、圧延仕上寸法を変え、この圧延後に空冷することによって、冷却速度を変化させた。さらに、圧延後に、0〜850℃の温度での焼鈍を施した。
組織観察は、棒鋼の任意の位置より、各々20個の組織観察用試験片を採取し、組織の同定を行った。それぞれの試験片について、JIS G 0552の切断法で結晶粒の平均断面積を求め、これより相当円の直径として各試験片の結晶粒径を算出し、更に各々20個の平均値を算出することによって、各位置の平均結晶粒径D並びに粒径10μm以下の圧延方向断面での面積率をそれぞれ求めた。
磁気特性については、得られた棒鋼の中央部から内径33mm、外径45mmおよび厚み5mmのリング状試験片をリング板面が棒鋼断面と平行になるように採取し、1次巻線100回および2次巻線100回を施し、直流の励磁電流1000および5000A/mでの磁束密度B10、B50ならびに、交流50Hzで磁束密度1.0Tまで励磁したときの鉄損W10/50を測定した。
被削性は、超硬工具P10を用い、切削速度200m/min、無潤滑の条件により棒鋼の外周切削を行い、工具の逃げ面磨耗が0.2mmに達した時間を工具寿命とした。
表中のNo.は個々の結果を区分するためのものであり、供試鋼と熱延条件の組合せが明示されるように、鋼番と熱延条件を組み合せて起番した。例えば、鋼番1を条件Aで熱間圧延した場合は1-Aと起番した。
組織については、フェライトはF、ベイナイトやマルテンサイト等の低温変態相が生成し、その体積分率が5%を超える場合をTと略記した。析出物については平均粒子径を記載した。尚、粒子径のばらつきは、10nm未満の析出物で最大でも±1nm、それ以上の大きさの析出物では±3nmから±5nmであった。尚、組織に低温変態相が生成した場合については、結晶粒径と析出物の粒子径の測定は割愛した。
No.13-Aは、Cが低く微細析出物の析出量が不足しており、降伏強度が低い。
No.14-Aは、Cが高く析出物が粗大化しており、降伏強度が低い。析出物が粗大な場合には、前述したように析出物が磁気特性に悪影響をおよぼすため、磁束密度B10が0.86T、B50は1.56Tと低く、鉄損W10/50は40W/kg以上となっており、磁気特性が劣っている。
No.15-Aは、Mnが低いためにフェライト変態と析出が十分競合せず、析出物が粗大に析出する結果、降伏強度が低く、磁気特性が劣る結果となった。一方、Mnの高いNo.16-Aでは、低温変態相が生成し、微細析出物による析出強化が不足するため降伏強度が低い。また、低温変態相の生成に起因すると思われるが、磁束密度B10が0.94T、B50は1.55Tと低い。
No.19-Aは、Moが低いため微細析出物の析出量が不足し降伏強度が低い。一方、Moが高いNo.20-Aでは、低温変態相が生成し、微細析出物による析出強化が不足するため降伏強度が低く、かつ磁気特性も劣っている。
一方、熱間圧延条件あるいは焼鈍条件が本発明範囲を外れた比較例では、降伏強度、磁気特性および被削性の少なくとも一つが低位の値を示す。
No.2-I鋼およびNo.2-O鋼は、熱間圧延における圧延開始パスの減面率が低いため、粒径10μm以下の微細なフェライトの面積率が大きく、磁気密度性B10が低位である。
No.2-J鋼は、熱間圧延における圧延最終パスの減面率が低く、フェライトの平均結晶粒径が本発明の上限である80μmを上回っているため、被削性が劣っている。
No.2-P鋼は、熱間圧延における圧延最終パスの減面率が高く、フェライトの平均結晶粒径が本発明の下限である30μmを下回っており、かつ10μm以下のフェライトの面積率も高いため、磁気特性が低位にある。
No.2-Q鋼は、加熱温度が低いため、熱間圧延前の鋳片の析出物が加熱炉で十分に固溶せず、析出物が粗大化する。その結果、降伏強度が低いことに加え、磁気特性も劣っている。
No.2-U鋼は、仕上げ温度が低く、圧延で導入される歪がフェライト変態の開始温度を上昇させ、フェライト変態と析出の競合を阻害する。その結果、析出物が粗大化し降伏強度が低下することに加え、磁気特性が劣化する。
No.2-V鋼は、熱間圧延後の冷却速度が過大な例であり、冷却速度を増大させるために圧延後にミスト冷却を行った。この冷却速度が速いと低温変態相が生成し、焼鈍を行っても微細析出物が十分に析出しないため、降伏強度が低下する。また、磁気特性も低位となった。
Claims (14)
- 質量%で
C:0.04〜0.12%、
Si:0.5%以下、
Mn:0.5〜3.0%、
Al:0.1%以下、
Ti:0.03〜0.35%および
Mo:0.05〜0.8%
を含み、残部Feおよび不可避的不純物の成分組成を有し、平均結晶粒径が30μm以上80μm以下のフェライトの面積率が95%以上の組織からなり、粒径が10μm以下のフェライトの面積率が20%以下であり、かつフェライト中に粒径10nm未満の微細析出物が分散していることを特徴とする電磁棒鋼。 - 前記成分組成は、下記(1)式を満たすことを特徴とする請求項1に記載の電磁棒鋼。
記
0.50≦(C/12)/[(Ti/48)+(Mo/96)]≦1.50 …(1)
ただし、化学成分表示は当該成分の含有量(質量%)を示す。 - 前記微細析出物は、TiおよびMoの炭化物であることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁棒鋼。
- 前記成分組成は、更に質量%で
Nb:0.08%以下、
V:0.15%以下および
W:1.5%以下
の1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の電磁棒鋼。 - 前記成分組成は、下記(2)式を満たすことを特徴とする請求項4に記載の電磁棒鋼。
記
0.50≦(C/12)/[(Ti/48)+(Mo/96)+(Nb/93)+(V/51)+(W/184)]≦1.50…(2)
ただし、化学成分表示は当該成分の含有量(質量%)を示す。 - 前記微細析出物は、TiおよびMoを含み、かつNb、VおよびWのうちの少なくとも1種を含む炭化物であることを特徴とする請求項4または5に記載の電磁棒鋼。
- 前記成分組成は、更に質量%で
S:0.01〜0.1%を含み、かつ
Pb:0.2%以下、
Ca:0.005%以下、
Bi:0.1%以下および
B:0.02%以下
の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の電磁棒鋼。 - 前記粒径が10μm以下のフェライトの面積率は5%以下であることを特徴とする請求項1ないし7に記載の電磁棒鋼。
- 質量%で
C:0.04〜0.12%、
Si:0.5%以下、
Mn:0.5〜3.0%、
Al:0.1%以下、
Ti:0.03〜0.35%および
Mo:0.05〜0.8%
を含み、残部Feおよび不可避的不純物の成分組成を有する鋼素材を、1100℃以上に加熱した後、熱間圧延を、開始パスにおける減面率が25%以上、最終パスにおける減面率が15%以上35%以下および仕上温度880℃以上で施し、次いで1.0℃/s以下の冷却速度で冷却することを特徴とする電磁棒鋼の製造方法。 - 前記鋼素材は、下記(1)式を満たすことを特徴とする請求項9に記載の電磁棒鋼の製造方法。
記
0.50≦(C/12)/[(Ti/48)+(Mo/96)]≦1.50 …(1)
ただし、化学成分表示は当該成分の含有量(質量%)を示す。 - 前記鋼素材は、更に質量%で
Nb:0.08%以下、
V:0.15%以下および
W:1.5%以下
の1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項9に記載の電磁棒鋼の製造方法。 - 前記鋼素材は、下記(2)式を満たすことを特徴とする請求項11に記載の電磁棒鋼の製造方法。
記
0.50≦(C/12)/[(Ti/48)+(Mo/96)+(Nb/93)+(V/51)+(W/184)]≦1.50…(2)
ただし、化学成分は当該成分の含有量(質量%)を示す。 - 前記鋼素材は、更に質量%で
S:0.01〜0.1%を含み、かつ
Pb:0.2%以下、
Ca:0.005%以下、
Bi:0.1%以下および
B:0.02%以下
の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項9ないし12のいずれかに記載の電磁棒鋼の製造方法。 - 前記熱間圧延を、開始パスにおける減面率を30%以上として、請求項9ないし13のいずれかに記載の方法にて製造された棒鋼に対し、下記温度域Tにて焼鈍することを特徴とする電磁棒鋼の製造方法。
記
Mn含有量が1.7%以下のとき:600℃≦T≦800℃
Mn含有量が1.7%超のとき:600℃≦T≦750℃
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