以下、本発明の実施形態を図1乃至9に基づき説明する。本実施形態では、電子写真方式でタンデム型のカラーのプリンタ1(画像形成装置に相当)を例に挙げ説明する。但し、本実施形態に記載されている構成、配置等の各要素は、発明の範囲を限定するものではなく単なる説明例にすぎない。
(画像形成装置の概略構成)
まず、図1乃至図3を用いて、本発明の実施形態に係るプリンタ1の概略を説明する。図1は、本発明の実施形態に係るプリンタ1の概略構成を示す断面図である。図2は、本発明の実施形態に係る各画像形成部3の拡大断面図である。図3は、本発明の実施形態に係る露光装置4(露光部に相当)の一例を示す模式図である。そして、本実施形態にかかるプリンタ1は、図1に示すように、本体内に、シート供給部2a、搬送路2b、画像形成部3、露光装置4、中間転写部5、定着部6等が設けられる。
前記シート供給部2aは、中間転写部5等に向け、例えば、コピー用紙、OHPシート、ラベル用紙等の各種シートを収容し、モータ等の駆動機構(不図示)により回転する給紙ローラ21により搬送路2bに送り出す。そして、搬送路2bは、プリンタ1内でシートを搬送し、シート供給部2aから供給されたシートを、中間転写部5、定着部6を経て排出トレイ22まで導く。搬送路2bには、搬送ローラ対23やガイド24及び搬送されてくるシートを中間転写部5の手前で待機させ、タイミングをあわせて送り出すレジストローラ対25等が設けられる。
図1及び図2に示すように、プリンタ1は、形成すべき画像の画像データに基づき、トナー像を形成する部分として、4色分の画像形成部3を備える。具体的に、プリンタ1は、ブラックの画像を形成する画像形成部3a(帯電装置7a、現像装置8a、除電装置31a、清掃装置32a等を具備)と、イエローの画像を形成する画像形成部3b(帯電装置7b、現像装置8b、除電装置31b、清掃装置32b等を具備)と、シアンの画像を形成する画像形成部3c(帯電装置7c、現像装置8c、除電装置31c、清掃装置32c等を具備)と、マゼンタの画像を形成する画像形成部3d(帯電装置7d、現像装置8d、除電装置31d、清掃装置32d等を具備)と、を備える。
ここで、図2に基づき、各画像形成部3a〜3dについて詳述する。尚、各画像形成部3a〜3dは、形成するトナー像の色が異なるだけで、いずれも基本的に同様の構成である。そこで、下の説明では、各画像形成部3内のa、b、c、dの符号は、特に説明する場合を除き省略する(尚、図2では、画像形成部3a、3b、3c、3d内の各部材に、識別的にa、b、c、dの符号を付すこととする。)
各感光体ドラム9は、周面にトナー像を担持し、例えば、アルミニウム製のドラムの基体の外周面上に正帯電のアモルファスシリコンの感光層を有し、駆動装置(不図示)によって所定のプロセススピードで紙面反時計方向に回転駆動される。尚、本実施形態の各感光体ドラム9は、正帯電型である。
各帯電装置7(帯電部に相当)は、帯電ローラ71を有し、感光体ドラム9を一定の電位で帯電させる。各帯電ローラ71は、各感光体ドラム9に接し、感光体ドラム9に合わせ回転する。又、各帯電ローラ71には、帯電電圧印加部72(図5参照)により直流と交流が重畳された電圧が印加され、感光体ドラム9の表面が所定の正極性の電位(例えば、200V〜300V、暗電位)に均一に帯電される。又、各帯電ローラ71の表面の異物を除去する清掃ブラシ73(例えば、軸に樹脂等のブラシを巻き付けたもの)が設けられる。尚、帯電装置7は、コロナ放電式や、ブラシ等を用いて感光体ドラム9を帯電させるものでも良い。
各現像装置8は、トナーと磁性体のキャリアを含む現像剤(いわゆる2成分現像剤)を収納する(現像装置8aはブラック、現像装置8bはイエロー、現像装置8cはシアン、現像装置8dはマゼンタの現像剤を収納する)。各現像装置8は、現像ローラ81と、磁気ローラ82と、搬送部材83とを有する。各現像ローラ81は、それぞれ感光体ドラム9に対向し、所定のギャップ(例えば、1mm以下)を設けて配される。そして、各磁気ローラ82は、各現像ローラ81の右斜め上方に対向し、所定の隙間を設けて配される。そして、各搬送部材83は、各磁気ローラ82の上方に設けられる。
各現像ローラ81と各磁気ローラ82の各ローラ軸811、821は固定される。そして、各現像ローラ81と各磁気ローラ82の内部の各ローラ軸811、821には、軸線方向にのびる磁石813、823が取り付けられる。そして、各現像ローラ81と各磁気ローラ82は、それぞれ、磁石813、823を覆う円筒状のスリーブ812、822を有し、画像形成時は、このスリーブ812、822が回転する(図4参照)。そして、現像ローラ81の磁石813と、磁気ローラ82の磁石823では、現像ローラ81と磁気ローラ82の対向位置で異極が向かい合う。
これにより、各現像ローラ81と、各磁気ローラ82間には、磁性体キャリアで磁気ブラシが形成される。磁気ブラシと磁気ローラ82のスリーブ822の回転や磁気ローラ82への電圧印加(磁気ローラバイアス印加部84:図5参照)等で、現像ローラ81に、トナーが供給され、現像ローラ81にはトナーの薄層が形成される。又、現像後に残留したトナーは、磁気ブラシで現像ローラ81から引き剥がされる。各搬送部材83は、例えば、軸に対しスクリューが螺旋状に設けられ、現像剤を各現像装置8内で搬送、撹拌し、トナーを所定のレベルに帯電させる(本実施形態では、トナーは正帯電)。
各清掃装置32は、感光体ドラム9の清掃を行い、例えば、外周部分に弾性を有する円筒状の素材の清掃部材33を有し、清掃部材33は、各感光体ドラム9に当接し、ドラム表面の転写残トナーを除去、回収する。又、各清掃装置32の下方に、感光体ドラム9に対し光を照射して除電を行う除電装置31(例えば、アレイ状のLED)が設けられる。
各画像形成部3の上方の露光装置4(露光部に相当)は、入力されるカラー色分解された画像信号をレーザ出力部(不図示)にて光信号にそれぞれ変換し、変換された光信号であるレーザ光(破線で図示)を出力し、帯電後の感光体ドラム9の走査露光を行って、静電潜像を形成する。
ここで、図3に基づき、露光装置4の概略構成を説明する。図3に示すように、露光装置4には、半導体レーザ装置41(レーザダイオード)と、レーザ光を反射させる平面反射面を複数持ち高速回転するポリゴンミラー42(ポリゴンモータ43により回転)と、fθレンズ44、レーザ光を適宜、各感光体ドラム9に向けて反射させるミラー45等が設けられる(尚、図3では1色分の構成のみを図示。例えば、4色の場合、ポリゴンミラー42は共有され、その他の半導体レーザ装置41、fθレンズ44、ミラー45等は各色分備えられる)。この構成で、レーザ光が露光装置4から各感光体ドラム9に照射され画像データに併せた静電潜像が感光体ドラム9上に形成される。具体的に、本実施形態の各感光体ドラム9は正帯電し、光の照射部分は電位が下がり(例えば、ほぼ0V)、電位の低下部分に正帯電トナーが付着する(例えば、ベタ塗り画像の場合、全ライン、全画素にレーザ光を照射)。尚、露光装置4は、多数のLEDからなるもの等を用いてもよい。
尚、露光装置4には、レーザ光の照射範囲内、かつ、感光体ドラム9への照射範囲外に、受光素子46が設けられる。この受光素子46は、レーザ光が照射されると、電流(電圧)を出力し、この出力は、例えば、後述のCPU11(Central Processing Unit)に入力され、放電発生の有無の検出時の同期信号として用いられる(図5参照)。
図1に戻り、中間転写部5は、感光体ドラム9からトナー像の1次転写を受けて、シートに2次転写を行うもので、各1次転写ローラ51a〜51d(転写部に相当)、中間転写ベルト52(中間転写体に相当)、駆動ローラ53、従動ローラ54、55、56、2次転写ローラ57、ベルト清掃装置58等で構成される。各1次転写ローラ51a〜51dは、無端状の中間転写ベルト52を介して各感光体ドラム9に当接し、転写用の電圧を印加する転写電圧印加部59(図9参照)に接続され、トナー像を中間転写ベルト52に転写する。
中間転写ベルト52は、駆動ローラ53、従動ローラ54、55、56に張架され、モータ等の駆動機構(不図示)に接続される駆動ローラ53の回転駆動により紙面反時計方向に周回する。中間転写ベルト52は、例えば、誘電体樹脂で構成される。又、駆動ローラ53は、中間転写ベルト52を介して2次転写ローラ57と当接し、2次転写部を形成する。シートへのトナー像転写を説明すると、各画像形成部3で形成されたトナー像(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの各色)は、各1次転写ローラ51に所定の電圧を印加して、順次、中間転写ベルト52に1次転写される。この時、各色のトナー像は、ずれなく重畳されるように、タイミングを取られつつ1次転写される。そして、各色重ね合わされたトナー像は、所定の電圧を印加された2次転写ローラ57により、シートに転写される。尚、2次転写後に中間転写ベルト52上に残った残トナー等は、ベルト清掃装置58で除去されて回収される(図1参照)。
前記定着部6は、2次転写部の転写材搬送方向の下流側に配され、シートに2次転写されたトナー像を加熱・加圧して定着させる。そして、定着部6は主として、発熱源を内蔵する定着ローラ61と、これに圧接される加圧ローラ62とで構成され、ニップが形成される。そして、トナー像の転写されたシートは、ニップを通過すると加熱・加圧され、その結果、トナー像がシートに定着する。尚、定着後のシートは、排出トレイ22に排出され画像形成処理が完了する。
(放電検出用の構成)
次に、本発明の特徴となる各現像ローラ81への現像バイアス印加と各感光体ドラム9間の放電検出に関する構成を説明する。
図4は、本発明の実施形態に係る現像ローラ81への現像バイアス印加と感光体ドラム9間の放電発生検出に関する現像ローラ81周辺の構成を示す。ただし、図4は1つの画像形成部3についてのみ示し、画像形成部3ごとに直流電圧印加部85、交流電圧印加部86、検出部14、アンプ15が設けられ、各アンプ15の出力が、後述する制御部10のCPU11に入力される。ここで、直流電圧印加部85、交流電圧印加部86、検出部14、アンプ15のそれぞれについて、各画像形成部の区別を示すa、b、c、dの符号を付しても良いが、各画像形成部では同様のものが設けられるので、記載の煩雑さを回避するため、以下では、a、b、c、dの符号は省略して説明する。
図4に示すように、感光体ドラム9にギャップが設けられつつ対向する現像ローラ81は、ローラ軸811、画像形成時にトナーを担持するスリーブ812、キャップ814を有する。ローラ軸811はスリーブ812を挿通され、スリーブ812の両端に円形のキャップ814が嵌入される。又、現像ローラ81のローラ軸811には、感光体ドラム9へのトナーの供給のため、直流電圧印加部85と、交流電圧印加部86が接続される。
直流電圧印加部85は、現像ローラ81に印加する直流成分を発生させる回路であり、その出力は交流電圧印加部86に入力される。そして、直流電圧印加部85は、出力制御部87を有し、出力制御部87は、直流電圧印加部85が出力するバイアスの値をCPU11の指示に応じて制御する。
直流電圧印加部85は、プリンタ1内の電源装置16(図5参照)からの直流電力の供給を受け、CPU11の指示に応じ、出力制御部87の制御により、出力電圧が可変な回路である(例えば、出力電圧が異なる出力端までの経路を複数有し、画像形成時と放電検出時で、その経路の選択を変える等)。これにより、現像ローラ81に印加する交流電圧をバイアスさせることができる。
又、交流電圧印加部86は、例えば、矩形波状(パルス状)であり、直流電圧印加部85の印加する直流電圧を平均値とする交流電圧を出力する回路である。そして、交流電圧印加部86は、Vpp制御部88およびデューティ比/周波数制御部89を有する。Vpp制御部88は、交流電圧のピーク間電圧(ピークトゥピーク)をCPU11の指示に応じて制御する。また、デューティ比/周波数制御部89は、交流電圧のデューティ比および周波数をCPU11の指示に応じて制御する。
例えば、交流電圧印加部86は、スイッチング素子等を備え、出力の正負をスイッチングにより反転させ、交流電圧を出力する。そして、デューティ比/周波数制御部89は、例えば、交流電圧印加部86の出力の正負のスイッチングのタイミングを制御することで、交流電圧のデューティ比や周波数を制御することができる。又、Vpp制御部88は、現像ローラ81に印加すべき交流電圧のピーク間電圧とデューティ比とに基づき、電源装置16から入力される直流電圧の昇降圧等により、交流電圧における正側のピーク値と負側のピーク値を、CPU11の指示に応じ、可変させる。尚、交流電圧印加部86の構成や、交流電圧のピーク間電圧、デューティ比、周波数を可変させる構成は、ピーク間電圧、デューティ比、周波数を変化できればよい。
そして、交流電圧印加部86内には、例えば、昇圧用トランス等による昇圧回路を出力段に備えることができ、昇圧後の直流と交流の重畳された現像バイアスが、例えば、現像ローラ81のローラ軸811に印加される。これにより、スリーブ812にも現像バイアスが印加され、スリーブ812に担持される帯電トナーが飛翔する。
検出部14は、現像ローラ81と感光体ドラム9間での放電発生時に流れる電流を電圧信号に変換し、放電の発生を検出する回路であり、変換した電圧信号をアンプ15に出力する。アンプ15は、検出部14からの電圧信号を増幅しCPU11に出力する。CPU11は、アンプ15からの電圧信号をA/D変換する。このA/D変換部されたアンプ15の出力から、CPU11は、発生した放電の大きさ(現像ローラ81と感光体ドラム9間に流れた電流の大きさ)を認識することができる。
(プリンタ1のハードウェア構成)
次に、図5に基づき、本発明の実施形態に係るプリンタ1のハードウェア構成を説明する。図5は、本発明の実施形態に係るプリンタ1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図5に示すように、本実施形態に係るプリンタ1は、内部に制御部10を有する。制御部10は、プリンタ1の各部を制御し、検出部14の出力が入力され放電発生を認識する。例えば、制御部10は、CPU11、記憶部12等から構成される。CPU11は、中央演算処理装置であり、記憶部12に格納され、展開される制御プログラムに基づきプリンタ1の各部の制御や演算を行う。記憶部12は、ROM、RAMフラッシュROM等の不揮発性と揮発性の記憶装置の組み合わせで構成される。例えば、記憶部12は、プリンタ1の制御プログラム、制御データ等を記憶する。尚、本発明に関し、放電検出や現像ローラ81に印加する交流電圧の設定用プログラムも記憶部12に記憶される。
そして、制御部10は、シート供給部2a、搬送路2b、画像形成部3、露光装置4、中間転写部5、定着装置、操作パネル13等と接続され、記憶部12の制御プログラムやデータに基づき、適切に画像形成が行われるように各部の動作を制御する。
尚、図5に示す操作パネル13は、例えば、プリンタ1の正面上方に設けられ、液晶画面を有し、種々の設定情報、警告等を表示する。又、操作パネル13は、種々の操作ボタンを有し、ユーザからの操作を受け付ける。又、制御部10には、印刷を行う画像データの送信元となるユーザ端末100(パーソナルコンピュータ等)等が接続され、制御部10は、受信した画像データを画像処理し、露光装置4に送信し、露光装置4はその画像データに基づき、感光体ドラム9に静電潜像を形成する。又、図5に示す、磁気ローラバイアス印加部84は、磁気ローラ82に、交流と直流を重畳した電圧を印加する回路である。又、帯電電圧印加部72は、帯電ローラ71に帯電用の電圧を印加する回路である。
又、本発明に関し、制御部10(CPU11)は、検出部14(アンプ15)が接続される。又、本発明の実施時、CPU11は、現像ローラ81に印加する交流電圧のピーク間電圧等を段階的に変える指示を交流電圧印加部86に与え、検出部14(アンプ15)の出力から放電発生の有無の検出や、放電の大きさを判断する。そして、放電発生を検出した場合、制御部10は、その時の直流電圧や交流電圧のピーク間電圧等の値に基づき、放電発生時の現像ローラ81の感光体ドラム9の電位差を把握し、画像形成時に放電が生じないように、画像形成動作時に印加すべき現像バイアスの設定を決定する。尚、現像バイアスの設定値は記憶部12に記憶できる。
(放電発生検出動作、及び、現像ローラ81に印加する交流電圧の設定)
次に、図6及び図7に示すタイミングチャートで、感光体ドラム9と現像ローラ81間での放電の発生検出動作の一例を説明する。図6は、本発明の実施形態に係る放電発生検出動作の概略を説明するためのタイミングチャートである。図7は、本発明の実施形態に係る現像ローラ81に印加する交流電圧の詳細を説明するタイミングチャートである。尚、この放電発生検出動作は、各画像形成部3について、1つずつ順に行われる。
まず、図6に基づき、放電発生検出動作の概略を説明する。尚、図6での、「現像ローラ(交流)」は、交流電圧印加部86が現像ローラ81に交流電圧を印加するタイミングを示す。「Vpp」は、現像ローラ81への交流電圧のピーク間電圧の大きさの変化を示す。「現像ローラ(直流)」は、直流電圧印加部85が現像ローラ81に直流電圧を印加するタイミングを示す。「磁気ローラ(交流)」は、磁気ローラ82バイアス部(図5参照)が磁気ローラ82に交流電圧を印加するタイミングを示す。「磁気ローラ(直流)」は磁気ローラ82バイアス部が磁気ローラ82に直流電圧を印加するタイミングを示す。
又、「帯電ローラ」は、帯電装置7が感光体ドラム9を帯電させるタイミングを示す。「同期信号」は、露光装置4の受光素子46が出力する同期用信号である。「露光」は、露光装置4での感光体ドラム9の露光(レーザ光照射)タイミングを示す。「放電検出(検出部出力)」は、検出部14による放電発生検出タイミングを示す。
〈初期動作〉
本発明に係る放電発生検出動作が開始されると、感光体ドラム9、現像ローラ81、中間転写ベルト52等が回転を開始した後、初期動作では、現像ローラ81と磁気ローラ82にそれぞれ、交流と直流の電圧が印加される。この初期動作での磁気ローラ82への電圧印加により、少量のトナーが磁気ローラ82から現像ローラ81に供給される。放電発生検出では、基本的に、現像ローラ81にトナーを担持させないが、全くトナーを担持させないと、感光体ドラム9とこれに接する回転部材(中間転写ベルト52等)との摩擦が大きくなりすぎる等、弊害があるので、若干量、感光体ドラム9にトナーが供給される。初期動作の後、準備状態に移行する。
〈準備状態〉と〈デフォルト測定〉
準備状態では、帯電装置7による感光体ドラム9への帯電が開始される。尚、放電発生検出動作が終了するまで、帯電装置7に印加される電圧はONのままである。又、現像ローラ81に印加する交流電圧のピーク間電圧が、デフォルト測定でのピーク間電圧にまで高められる。次に、デフォルト測定に移行し、放電の検出有無を確かめる。尚、デフォルト測定は、検出部14等、部材設置位置や回路等の異常発見のため行われる。デフォルト測定の後、条件変更状態(1回目)に移行する。
〈条件変更状態〉
条件変更状態となった場合、現像ローラ81に印加する交流電圧のピーク間電圧は、段階的に変化される(例えば、上昇)。そして、条件変更状態の途中で、露光装置4の露光の開始の目安となる同期信号がHighとなる。同期信号のHigh後に、放電検出状態(1回目)に移行する。
〈放電検出状態〉
放電検出状態(1回目)では、現像ローラ81に対し現像バイアスが印加され、露光装置4が露光を継続して行う(感光体ドラム9全面の露光)。尚、本実施形態のプリンタ1では、トナーと感光体ドラム9の帯電極性が正極性であり、露光部分にトナーがのるので、継続した露光は、ベタ塗り画像の静電潜像形成と同じである。従って、放電検出状態では、例えば、制御部10から露光装置4に、ベタ塗りの画像データが送り込まれる(ベタ塗りの画像データは、例えば、記憶部12が記憶)。
放電検出状態は、一定時間(例えば、1秒〜数秒間)続き、CPU11へのアンプ15の入力から放電発生を認識しない場合等、条件変更状態に移行する。条件変更状態では、再び、制御部10は、交流電圧印加部86に指示し、交流のピーク間電圧の変更指示を出す。これにより、次回以降の放電検出状態では、基本的に、前回よりも現像ローラ81に印加される交流電圧のピーク間電圧が高い状態で、放電の有無が確認される。言い換えると、放電する交流電圧の認定まで、条件変更状態と放電検出状態が繰り返され、繰り返しの間、基本的に、段階的に一定の刻み幅で現像ローラ81に印加する交流電圧のピーク間電圧が高められる。尚、図5ではn回目の放電検出状態で、放電が検出されたことを示す。
次に、図7に基づき、放電検出状態での現像ローラ81への電圧の印加について説明する。尚、図7では、上段に画像形成時のタイミングチャートを、下段に、放電検出状態のタイミングチャートを示している。
まず、画像形成時のタイミングチャートにおける矩形波は、現像ローラ81に印加される現像バイアス(交流+直流)の波形の一例である。そして、「Vdc1」は、直流電圧印加部85のバイアスの電位を示す。「V0」は、感光体ドラム9の露光装置4による露光後の電位(ほぼ0V=明電位)を示す。「V1」は、感光体ドラム9の帯電後の電位(露光しない部分の電位。例えば、200〜300V程度)を示す。「V+1」は、V0と、画像形成時の現像バイアスの正のピーク値との電位差を示す。「V-」は、V1と現像バイアスの負のピーク値との電位差を示す。「Vpp1」は、画像形成時の現像ローラ81に印加する交流電圧のピーク間電圧を示す。又、「T1」は、矩形波におけるHigh状態(正極性状態)の時間である。「T01」は、矩形波の周期を示す。
一方、放電発生検出時のタイミングチャートにおける矩形波は、放電有無検出時に、現像ローラ81に印加される現像バイアスの波形を示す。「Vdc2」は、検出時の直流電圧印加部85のバイアスの電位を示す。又、「V0」は、図6上段と同様、感光体ドラム9の露光装置4による露光後の電位(ほぼ0V)を示す。「V+2」は、検出時の現像バイアスの正のピーク値とV0との電位差を示す。「Vpp2」は、検出時の現像ローラ81に印加する交流電圧のピーク間電圧を示す。「T2」は、矩形波におけるHigh状態(正極性状態)の時間である。「T02」は、矩形波の周期である。
まず、放電発生検出時、CPU11の指示により、出力制御部87は直流電圧印加部85の出力を、放電発生検出用の設定値Vdc2(例えば、100V〜200V)に設定する。又、CPU11の指示で、Vpp制御部88は交流電圧印加部86の出力する交流電圧のVpp2を設定する。又、CPU11の指示で、デューティ比/周波数制御部89は、交流電圧印加部86の出力する交流電圧のデューティ比D2(周期T02に対するHighの時間T2の比、T2/T02)を放電発生検出用の設定値に設定し、交流電圧印加部86の出力する交流電圧の周波数f2(=1/T02)を放電発生検出用の設定値に設定する(図6下段)。
ここで、デューティ比D2は、画像形成時のデューティ比D1(周期T01に対するHighの時間T1の比、T1/T01)より小さく設定される(例えば、D1=40%、D2=30%)。そして、周波数f2は、交流電圧のプラス側時間が画像形成時と放電発生検出時で同じとなるよう設定される(即ち、T1=T2。例えば、D1=40%、D2=30%の場合、画像形成時の周波数f1=4kHzであれば、f2=3kHz)。これにより、画像形成時と同じ正極性の電圧が現像ローラ8に印加される。
尚、バイアスの放電発生検出用の設定値Vdc2は、画像形成時の設定値Vdc1よりも高く設定することが望ましい。トナーは正極性に帯電し、放電発生検出時に磁気ローラ82から現像ローラ81に供給されるトナーの量を抑えることができるからである。
(放電発生検出動作の制御の流れ)
次に、図8に基づき、本発明の実施形態に係るプリンタ1の放電発生検出動作の制御の流れの一例を説明する。図8は、本発明の実施形態に係るプリンタ1の放電発生検出動作の制御の流れの一例を示す、フローチャートである。尚、このフローチャートは、1つの画像形成部3に対する制御であり、全色行う場合、本実施形態では、4回繰り返される。
尚、この放電発生検出動作は、例えば、初期不良発見や初期設定として製造時や、プリンタ1の設置時、現像装置8や感光体ドラム9の交換時に行える。又、プリンタ1の設置時に行うのは、設置環境の標高によって気圧が変化し(例えば、日本国内とメキシコの高地との差)、放電が発生する電圧に差があるためである。現像装置8等の交換時に行うのは、感光体ドラム9と現像ローラ81とのギャップが交換前と変わるためである。尚、上記の例に限られず、例えば、プリンタ1が一定枚数を印刷するごとに行っても良いし、実施タイミングは、適宜設定することが可能である。
まず、操作部において所定の操作がされ、放電発生検出動作が開始されると(スタート)、CPU11の指示で、不図示の駆動機構により、感光体ドラム9、現像ローラ81、磁気ローラ82、中間転写ベルト52等の画像形成部3と中間転写部5での各種回転体の回転が開始される(ステップS1)。この各回転体の駆動は、放電発生検出動作が終了するまで継続する。尚、放電発生検出動作では、基本的に、現像ローラ81はトナーを担持しない。次に、図5で説明した初期動作が行われる(ステップS2)。次に、図5で説明した準備状態に移行し(ステップS3)、例えば、CPU11の指示により、帯電電圧印加部72が、帯電装置7に電圧印加を開始する。
次に、図6で説明したデフォルト測定が行われる(ステップS4)。この時、放電発生を検出しないことを確認する(ステップS5)。このデフォルト測定は、放電が到底発生しないという状態(例えば、現像ローラ81への交流電圧の大きさが極めて低い等)で行われ、デフォルト測定で放電発生を検出すれば(ステップS5のNo)、ギャップの異常や検出部14等のハードの異常が考えられる。この場合、操作パネル13等にエラー表示(ステップS6)を行って、放電発生検出動作は終了する(エンド)。
一方、CPU11に放電が発生した旨の信号が入力されなければ(ステップS5のYes)、図6で説明した条件変更状態に移行し、CPU11の指示で、Vpp制御部88が、交流電圧印加部86の出力する交流電圧のピーク間電圧を現状より所定の刻み幅ΔV1(例えば、30〜100Vなど)だけ増加させる設定が行われる(ステップS7)。
そして、次に、放電検出状態に移行し、具体的には、ΔV1だけピーク間電圧を増加させた交流電圧を現像ローラ81に印加し、CPU11の指示により所定時間露光が行われ、その間、CPU11はアンプ15の出力電圧が所定の閾値を越えた回数をカウントする(ステップS8)。そして、カウント数が0回でないかを確認し(ステップS9)、0回であれば(ステップS9のNo)、放電発生なしとして、現状のピーク間電圧が設定可能な最大値(例えば、1500〜3000V)に達しているかをCPU11が確認し(ステップS10)、達していれば(ステップS10のYes)、ステップS11に移行する(詳細は後述)。達していなければ(ステップS10のNo)、ステップS7に戻る。
ステップS9で、カウント値が1回以上ならば(ステップS9のYes)、放電発生として、CPU11の指示で、Vpp制御部88(図4)は、交流電圧印加部86が現像ローラ81に印加する交流電圧のピーク間電圧を、現状より所定の刻み幅ΔV1だけ減少させ(ステップS12)、さらに所定の刻み幅ΔV2だけ増加させた値に設定する(ステップS13)。ここで、所定の刻み幅ΔV2は、所定の刻み幅ΔV1を分割したものとできる(例えば、ΔV1=50Vであれば、ΔV2=10V等)。言い換えると、放電が発生するピーク間電圧をより細かく探し当てるため、1段階戻って放電発生検出におけるピーク間電圧の段階的な変化の刻み幅を小さくする。
その後、ステップS8と同様に、放電検出状態となり、CPU11は、アンプ15の出力電圧が所定の閾値を越えた回数をカウントする(ステップS14)。言い換えると、刻み幅Δ1でのピーク間電圧の段階的な変更の際、放電が検出されれば、より詳細に、放電が発生するピーク間電圧を得るため、刻み幅Δ2で、放電が検出されるまで、放電検出状態と条件変更状態とが繰り返される。
次に、カウント数が0回でないかを確認し(ステップS15)、0回であれば(ステップS15のNo)、放電発生なしとして、現在のピーク間電圧が先に放電を検出したピーク間電圧に達しているかをCPU11が確認する(ステップS16)。もし達していれば(ステップS16のYes)、ステップS11に移行する。もし、達していなければ(ステップS17のNo)、ステップS12に戻る。一方、カウント値が1回以上であれば(ステップS15のYes)、CPU11は、現在のピーク間電圧のときに放電が発生すると認定し、ステップS11に進む。
次に、ステップS11について、詳述する。放電発生検出時(ステップS15のYes、ステップS16のYesの場合)や、設定可能な最大ピーク間電圧でも検出できなかった場合(ステップS9のYes)、CPU11は、最大ピーク間電圧、又は、放電が発生すると認めたピーク間電圧Vpp2、周波数f2、デューティ比D2、バイアス設定値Vdc2から、図5に示す電位差V+2(放電検出時又は設定可能な最大値でのVpp2印加時の感光体ドラム9と現像ローラ81の電位差)を求める(ステップS11)。
ここで、V+2は容易に求めることができる。CPU11は、ピーク間電圧の大きさを指定してVpp制御部88に指示を出す。従って、制御部10は、放電発生を検出した場合、その時のVpp2を把握している。そして、設定値としてのデューティ比D2と、Vdc2を基準として、正側の面積と負側の面積を等しくすることに基づき、Vpp2の正側のピーク値とVdc2の電位差が求められる。この電位差に、Vdc2とV0との電位差(V0は、ほぼ0Vなので、Vdc2と扱える)を加えれば、V+2が求められる。
具体的には、放電発生検出動作時のVpp2は、段階的に変更されるので、デューティ比D2、バイアス設定値Vdc2を一定とすれば、各Vpp2の大きさ応じ、予めV+2を算出しておき、ルックアップテーブルとしてデータ化し、CPU11がそのテーブルを参照し、V+2が求められても良い。尚、このテーブルは、例えば、記憶部12に記憶しておけばよい。
次に、求められたV+2に基づき、CPU11は、図5に示したV+1と、V-がいずれも求められたV+2よりも、小さくなるように、画像形成時に現像ローラ81に印加する交流電圧のピーク間電圧Vpp1を設定する(ステップS17)。具体的に、Vpp1の決定方法は多様であるが、例えば、V+1とV-をV+2よりも、どれほど小さくすれば放電が発生しないか(マージンをどれほどとるべきか)は、使用トナーにより異なる等の事情から、開発時の実験に基づき、例えば、求められたV+2に対し、画像形成時に放電が発生しないと認められるVpp1の値をテーブル化し、CPU11がそのテーブルを参照し、Vpp1が定められても良い。尚、このテーブルも記憶部12に記憶しておけばよい。これにより、画像形成時、放電が発生しないできるだけ大きな交流電圧を印加できる。
要するに、本実施形態のプリンタ1は、放電発生検出時に放電が発生したことを検出した場合、制御部10は、放電発生時に前記現像ローラ81に印加していた交流電圧のピーク値に対する感光体ドラム9と前記現像ローラ81間の電位差を求め、画像形成時における現像ローラ81と感光体ドラム9の表面電位の電位差が電位差よりも小さくなるように、画像形成時に現像ローラ81に印加すべき交流電圧を定めるのである。
そして、このVpp1の設定が完了すれば、放電発生検出と画像形成時のVpp1の設定は終了する(エンド)。そして、プリンタ1は、この制御完了後、画像形成可能な状態に復帰する。このように、本発明によれば、現像効率が高く、かつ、画像形成時に放電が発生しない、現像ローラ81に印加すべきVpp1を自動的に設定することができる。
次に、図9を利用して、本発明の利点を説明する。図9(a)は、放電発生検出時の画像形成部3の一部拡大図であり、(b)は、中間転写ベルト52に付着するトナー量と中間転写ベルト52の摩擦係数の変動の関係の一例を示すグラフであり、(c)は、放電発生検出時の画像形成部3の一部拡大図であり、(d)は、本発明の実施形態に係る放電発生検出時の画像形成部3の一部拡大図である。
まず、図9(a)について説明する。図9(a)は、放電発生検出時の画像形成部3での電圧印加の一例を示す。図9(a)では、放電発生検出時、帯電装置7と転写ローラには、帯電のための電圧が印加されないことを示している。
放電発生検出時、感光体ドラム9の電位が安定していないと、同じ現像バイアスを印加しても、放電が発生する場合と放電が発生しない場合が生じやすくなる。従って、上述した画像形成時の交流電圧のピーク間電圧Vpp1の設定の精度が落ち、又、画像形成時の交流電圧のピーク間電圧Vpp1を設定しても、放電が発生してしまう可能性がある。
そこで、感光体ドラム9の表面電位を安定させるには、図9(a)に示すように、放電発生検出時、帯電装置7と1次転写ローラ51の電圧を印加をしない方法がある。これにより、感光体ドラム9の電位はほぼゼロ(グランドレベル)で安定する。ここで、本実施形態のプリンタ1では、放電発生検出時、基本的に現像ローラ81にトナーを担持させない。具体的に、磁気ローラ82に正極性の電圧を印加すると、トナーの帯電極性は正なので、斥力でトナーが磁気ローラ82から現像ローラ81に移動する。従って、磁気ローラ82に電圧を印加せず、現像ローラ81にトナーを担持させないように仕向ける。
しかし、感光体ドラム9表面には、残留するトナーが存在する。又、スリーブ812の回転にトナーが引きずられる等、スリーブ812のトナーは完全になくならず、現像ローラ81上のトナーが感光体ドラム9に飛翔する場合がある。そうすると、中間転写ベルト52の方がトナーよりも電位が低いため、図9(a)に示すように、中間転写ベルト52方向に移動してしまうトナーが現れる。そして、中間転写ベルト52に、放電発生検出時の間、少しずつ中間転写ベルト52にトナーが移り続けることになる。
そうすると、図9(b)で一例を示すように、中間転写ベルト52のトナーの付着量によって、中間転写ベルト52の摩擦係数(ミュー)が変動するという問題がある。本実施形態のプリンタ1では、中間転写ベルト52として、例えば、ゴムベルトを採用でき、ゴムベルト自体の摩擦係数は、大きい。しかし、適量のトナーをのせると、トナーという微少な粒子がゴムベルト表面に付着した状態となり、ゴムベルトは、摩擦係数が下がる傾向を示す。しかし、更に、トナー量が多くなると、摩擦係数が大きくなる(多すぎると、例えばベルト清掃装置58が動作してかき取ってしまう等の理由による)。
トナーの種類や粒径、中間転写ベルト52の材質、感光体ドラム9表面の材質、ベルト清掃装置58が動作条件等、摩擦係数は、多様な要因が関与し、図9(b)の特性は一例に過ぎないが、中間転写ベルト52でのトナー量が変わると、中間転写ベルト52の摩擦係数が変動することは明らかである。そして、トナーは通常、万遍なく中間転写ベルト52に分布しないので、ベルト表面の摩擦係数がばらつき、その結果、中間転写ベルト52と、中間転写ベルト52に接する感光体ドラム9の回転ムラ(回転速度ムラ)が生ずる。
そして、回転ムラが生ずれば、放電が発生するピーク間電圧の変動(即ち、画像形成時の交流電圧の設定の正確性の低下)や、放電発生検出後の画像形成でのトナー像の転写位置やトナー像形成位置のずれ等の原因となる。そこで、図9(c)に示すように、制御部10は、転写電圧印加部59に指示して、中間転写ベルト52にトナーがのらないように、トナーの帯電極性とは逆極性の電圧(以下、「逆バイアス」という。本実施形態では、正極性)を1次転写ローラ5151に印加することが考えられる。この逆バイアスにより、中間転写ベルト52へのトナーの移動を防ぐことができる。
しかし、トナーの移動を確実に防ぐには、比較的大きな(例えば、トナーの帯電電位を確実に上回る)逆バイアスを1次転写ローラ51に印加する必要がある。そうすると、感光体ドラム9が逆バイアス印加のため、帯電する。尚、感光体ドラム9と1次転写ローラ51の対向部分と清掃装置32の間に、除電装置31が存在するが、感光体ドラム9上のトナー等や粉塵等が光を妨げ、確実に除電できない場合がある。従って、放電発生検出時、図9(c)の方法では、感光体ドラム9の表面電位は安定しにくい。
そこで、本実施形態に係る発明では、放電発生検出時、図9(d)に示すように、CPU11の指示により、帯電電圧印加部72が帯電装置7で感光体ドラム9を帯電させ、露光装置4での感光体ドラム9の露光を継続して(周面全体に)行う。これにより、感光体ドラム9と現像ローラ81が対向する区間Lにおいては感光体ドラム9の表面電位が、ほぼゼロVで安定する。これにより、放電が発生するかしないかといったばらつきがなくなり、又、放電発生時の感光体ドラム9と現像ローラ81の電位差を正確に把握することができる。尚、図9に示す本発明では、1次転写ローラ51の逆バイアスも当然印加する。
又、帯電装置7での帯電により、通常、オゾンや帯電生成物が発生する。オゾンは、感光体ドラム9の表面と反応し、水分を吸着し、これに帯電生成物が溶け込むと、感光体ドラム9の抵抗が低下し、静電潜像を乱し、画質低下の原因となる(像流れ)。又、生成された帯電生成物が感光体ドラム9に降り積もり固着すれば、感光体ドラム9の摩擦係数を変化させ、回転ムラの原因となる。尚、画像形成時であれば、トナーの研磨剤的な作用と清掃装置32の研磨、清掃作用で、像流れや帯電生成物の固着はある程度防がれる。
しかし、放電発生検出時、現像ローラ81には、基本的にトナーを担持させないので、帯電生成物による弊害が顕著に表れやすい。ここで、放電発生検出時では、感光体ドラム9の表面電位を安定できれば良いので、制御部10の指示で、帯電電圧印加部72は、放電発生検出時、画像形成時よりも小さい電圧を印加する(例えば、画像形成時の20〜80%等)。従って、帯電ローラ71に印加される電圧は、画像形成時よりも小さくなるから、オゾンや帯電生成物の生成量が少なくなる。従って、本発明では、帯電生成物やオゾンによる弊害も軽減される。又、画像形成時よりも、露光装置4からのレーザ光のレーザパワーを上げなくても、十分に感光体ドラム9の表面電位を落とすことができる。
要するに、本発明では、制御部10が現像ローラ81に印加する交流電圧の段階的な変更を交流電圧印加部86に指示し、検出部14により放電の発生を検出する放電発生検出時に、制御部10は、転写電圧印加部59に指示して転写時とは逆極性の電圧を転写ローラに印加させ、帯電装置7に感光体ドラム9の帯電を行わせ、露光部に感光体ドラム9の周面全体にわたり露光させる。又、この時、制御部10は、印刷時よりも、帯電装置7の帯電出力を減らす指示を与える。
このようにして、本発明の実施形態によれば、放電が発生する現像ローラ81と感光体ドラム9間の電位差を把握するため、現像ローラ81に印加する交流電圧を変化させつつ放電の発生を検出、確認する場合、帯電部(帯電装置7)に感光体ドラム9の帯電を行わせ、露光部(露光装置4)に感光体ドラム9の周面全体にわたり露光させるので、帯電部が感光体ドラム9を一定の電位で帯電させ、感光体ドラム9が露光されることにより、露光後の感光体ドラム9の表面電位(V0)は安定する(例えば、ほぼ0V)。従って、基準となる感光体ドラム9の表面電位が安定するので放電が発生する現像ローラ81と感光体ドラム9の電位差を正確に把握することができる。
又、転写部(1次転写ローラ51)にトナー像の転写時とは逆極性の電圧を印加するので、中間転写体や転写ローラ等の転写部材(例えば、中間転写ベルト52)への、感光体ドラム9上のトナーの移動を防ぐことができ、転写部材等や、これらに当接する感光体ドラム9の回転ムラの発生を抑えることができ、画像形成のトナー像形成や転写等を、ずれなく正確に行うことができる。又、制御部10は、通常の印刷時よりも帯電部の帯電出力を減らすように指示を出すので、露光部の露光により、確実に感光体ドラム9の表面電位を安定させることができる。更に、帯電部では、感光体ドラム9を帯電させるため比較的高い電圧が印加されるが、この帯電のための電圧印加により、オゾンが発生することがあり、このオゾンが機内の粉塵(トナー、現像剤中のる外添剤等)と反応し、帯電生成物が生成される。この帯電生成物が感光体ドラム9に付着すると、感光体ドラム9や転写部材の摩擦係数が変動し、回転ムラを引き起こす場合がある。又、オゾンは、感光体ドラム9表面と反応し、水分を吸着させやすくする。そうすると、帯電生成物が感光体ドラム9に降り積もった場合や、水分に帯電生成物が溶け込んだ場合、感光体ドラム9の抵抗が下がり、感光体ドラム9表面での電荷が移動し、形成される画像の品質が低下する場合がある(いわゆる、像流れ)。そして、本発明では放電の発生の検出、確認のため、帯電部が帯電を行うところ、検出作業が長時間に及べば、帯電生成物が多く生成される場合がある。しかし、この構成では、制御部10は、通常の印刷時よりも帯電部の帯電出力を減少させるので、オゾンや帯電生成物の発生量が減少し、回転ムラの発生や放電検出後の画像形成での画質の劣化をなくすことができる。
又、感光体ドラム9の清掃を行う清掃部(清掃装置32)を有するので、転写部材に付着するトナーを減少させることができる。又、帯電生成物が感光体ドラム9に付着しても、付着量を減らすことができる。従って、感光体ドラム9等の回転速度ムラや、画質劣化の度合を下げることができる。又、正確に把握された放電が発生する現像ローラ81と感光体ドラム9の電位差に基づき、現像効率を高めた、適切な画像形成時に放電の生じない交流電圧の設定を行うことができる。
次に、他の実施形態について説明する。上記の実施形態では、各感光体ドラム9から中間転写ベルト52に1次転写し、その後、シートに2次転写する例を挙げたが、各感光体ドラム9からシートに直接トナー像を転写する構成においても、本発明を適用することができる(例えば、各感光体ドラム9に転写ローラが直接接し、シートがそのニップを通過する態様や、搬送用ベルトが各感光体ドラム9に接し、シートを搬送用ベルトに載せ、シートがそのニップを通過する態様など)。
又、上記の実施形態では、正帯電の感光体ドラム9やトナーを例に挙げて説明したが、本発明は負帯電の感光体ドラム9やトナーを用いた場合にも適用することができる。具体的に、放電発生検出時、帯電装置7は、感光体ドラム9に負極性の電圧を印加し、露光装置4が、表面電位をほぼゼロVで安定させる。又、転写ローラには、負極性の逆バイアス電圧を印加することになる。又、上記の実施形態では、カラーの画像形成装置について説明を行ったが、例えば、画像形成部3a(ブラック)のみを有するモノカラーの画像形成装置にも適用することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。