JP5076596B2 - レベリング材及びレベリング材を施工したコンクリート床構造体 - Google Patents
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Description
この場合、床補修は微妙な勾配の調整に熟練度が要求されるが、左官職人の高齢化・就業者数の減少により、短期間の工期での大量施工が困難になってきている。
また、廊下やバルコニーは作業通路として用いられるため、通行禁止期間の短縮が望まれるが、左官用補修材の低温時の硬化遅延、硬化前の他業者の立入りや施工中、養生中の風雨による再補修と相俟って、工事期間が長くなる事が多い。
このような背景のもと、近年、省力化を目的として、高流動タイプのモルタルが普及しているが、硬化速度が遅く、工期短縮に至っていないのが現状である。
また、日光や風が当たる場所での施工となるため、モルタル表面の乾燥によるシワや気泡跡、硬化体にひび割れが発生し易いなどの問題がある。
本発明は、屋外環境下で施工可能であり、水勾配施工が可能で、且つ、勾配を有する平滑な床面を形成できる適度な粘性を有し、速硬性・速乾性に優れるとともに低収縮特性及び、ひび割れ抵抗性を有し、耐候性に優れたレベリング材を提供することを目的とした。
アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏からなる水硬性成分と、アクリル共重合再乳化形樹脂粉末とを含むレベリング材であって、
アクリル共重合再乳化形樹脂粉末は、樹脂粉末の1次粒子の平均粒径が0.2〜0.8μmであり、樹脂粉末の1次粒子表面がポリビニルアルコールの水溶性保護コロイドで被覆されていること
を特徴とするレベリング材である。
本発明の第2は、
前記本発明のレベリング材を用いて得られる勾配を有するコンクリート床構造体である。
1)レベリング材は、水硬性成分とアクリル共重合再乳化形樹脂粉末とを含み、さらに無機粉末、細骨材、凝結調整剤、流動化剤、増粘剤及び消泡剤から選ばれる成分を少なくとも1種以上含むこと。
2)レベリング材と水とを混練して調製したレベリング材スラリーは、水平面及び0/1000を超えて50/1000以下の勾配を有する屋外のコンクリート床に打設され、スラリー表面を鏝仕上げされること。
3)レベリング材スラリーの硬化体表面のショア硬度は、スラリーを打設して鏝仕上げしたのち5時間後に10以上であること。
4)レベリング材スラリーの硬化体表面は、0/1000を超えて50/1000以下の勾配を有すること。
また、本発明のレベリング材のスラリー硬化体は低収縮であるとともに、気候の変動に対して安定な硬化体が得られるアクリル共重合再乳化形樹脂粉末を用いているため、優れた耐候性を有するコンクリート床構造体を実現できる。
さらに、本発明では、アクリル共重合再乳化形樹脂粉末を選択して用いることによって、気温や通風条件が多様な屋外条件下での施工においても優れた表面仕上りを得ることができる。
石膏は、自己流動性水硬性組成物と水とを混練して得られるモルタルが硬化した後の寸法安定性を保持する成分として機能するものである。
水硬性成分は、好ましくは
アルミナセメント20〜80質量部、ポルトランドセメント5〜70質量部及び石膏5〜45質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)からなる組成、
さらに好ましくはアルミナセメント25〜70質量部、ポルトランドセメント10〜60質量部及び石膏10〜40質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)からなる組成、
より好ましくはアルミナセメント30〜60質量部、ポルトランドセメント20〜50質量部及び石膏15〜35質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)、
特に好ましくはアルミナセメント40〜50質量部、ポルトランドセメント30〜40質量部及び石膏20〜30質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)からなる組成
を用いることにより、速硬性・速乾性を有し、低収縮性又は低膨張性で硬化中の体積変化が少なく、クラックの発生を抑制した硬化体が得られやすいために好ましい。
本発明のレベリング材は、屋外でレベリング材のスラリーを施工した場合の硬化体表面の乾燥による皺や気泡跡の発生、又は、材料分離によるブリージング水の発生を防止して、硬化体表面の仕上りを大幅に向上させる効果とともに、硬化体の弾性を高めてひび割れの発生を防止する効果とを付与するために再乳化形樹脂粉末を使用する。
樹脂粉末の製造方法については特にその種類・プロセスは限定されず、公知の製造方法で製造されたものを用いることができ、また樹脂粉末としては、ブロッキング防止剤を主に樹脂粉末の表面に付着しているものを用いることができる。
樹脂粉末は、水性ポリマーディスパーションを噴霧やフリーズドライなどの方法で、溶媒を除去し乾燥した再乳化形の樹脂粉末を用いる。
本発明では、粉末樹脂として保護コロイドアクリルエマルジョンから製造されたアクリル共重合系の再乳化型樹脂粉末を好適に用いることができ、特に、保護コロイドアクリルエマルジョンから製造されたアクリル酸エステル/メタアクリル酸エステル共重合体の再乳化型樹脂粉末を好適に用いることができる。
アクリル共重合系の再乳化型樹脂粉末の1次粒子(エマルジョンの粒子)の平均粒径は、
好ましくは0.2〜0.8μmの範囲であり、
さらに好ましくは0.25〜0.75μmの範囲であり、
より好ましくは0.3〜0.7μmの範囲であり、
特に好ましくは0.35〜0.65μmの範囲のものを選択して用いることによって、
良好な施工性と、緻密なポリマーフィルムの形成によって得られる優れた接着性や耐久性・耐候性とを併せて得られることから好ましい。
1次粒子の平均粒径が前記範囲のアクリル共重合系の再乳化型樹脂粉末を用いたレベリング材スラリーでは、スラリー表面を左官鏝などを用いて適正な勾配を持たせつつ表面を平滑に仕上げる鏝作業を行う過程で、良好な鏝送り性と鏝放れ性とを得ることができる。
樹脂粉末の1次粒子の平均粒径が前記範囲より大きい場合、スラリー施工時の作業性は良好なものの、スラリー硬化体の接着性や耐久性・耐候性が低下するため好ましくなく、樹脂粉末の1次粒子の平均粒径が前記範囲より小さい場合、スラリー硬化体の接着性や耐久性・耐候性は良好であるが、スラリー施工時の鏝送り性と鏝放れ性が低下して作業性が悪くなることから好ましくない。
好ましくは0.1〜1μmの粒子を97質量%以上含み、
さらに好ましくは、0.15〜0.9μmの粒子を95質量%以上含み、
より好ましくは0.2〜0.8μmの粒子を90質量%以上含み、
特に好ましくは0.3〜0.7μmの粒子を75質量%以上含むものを選択して用いることによって、
良好な施工性と、緻密なポリマーフィルムの形成によって得られる優れた接着性や耐久性・耐候性とを併せて得られることから好ましい。
前記範囲の粒径の1次粒子を前記の範囲で含む場合、アクリル共重合系の再乳化型樹脂粉末を用いたレベリング材スラリーでは、スラリー表面を左官鏝などを用いて適正な勾配を持たせつつ表面を平滑に仕上げる鏝作業を行う過程で、良好な鏝送り性と鏝放れ性とを得ることができる。
樹脂粉末の1次粒子の平均粒径が前記範囲より大きい場合、スラリー施工時の作業性は良好なものの、スラリー硬化体の接着性や耐久性・耐候性が低下するため好ましくなく、樹脂粉末の1次粒子の平均粒径が前記範囲より小さい場合、スラリー硬化体の接着性や耐久性・耐候性は良好であるが、スラリー施工時の鏝送り性と鏝放れ性が低下して作業性が悪くなることから好ましくない。
再乳化型樹脂粉末の1次粒子表面が、ポリビニルアルコールの水溶性保護コロイドで被覆されていることによって、再乳化の過程で速やかに且つ均一にもとのエマルジョンの状態(樹脂粉末化前の1次粒子の状態)、すなわち、レベリング材スラリー中に1次粒子が均一に分散した状態を実現することができる。
本発明で用いるアクリル共重合系の再乳化型樹脂粉末の2次粒子の粒子径は、
好ましくは20〜100μmの範囲であり、
さらに好ましくは30〜90μmの範囲であり、
より好ましくは45〜85μmの範囲であり、
特に好ましくは50〜80μmの範囲であることが、
再乳化型樹脂粉末を含むレベリング材と水とを混練してスラリー化する過程で、再乳化型樹脂粉末の2次粒子がレベリング材に含まれている細骨材によって解砕されて容易に再分散し、1次粒子が均一に分散した状態になりやすいことから前記範囲の2次粒子径を有する再乳化型樹脂粉末を用いることが好ましい。
再乳化型樹脂粉末の2次粒子径が前記範囲より大きくなるとスラリー化の過程で再分散されにくくなり、1次粒子が均一に分散した状態になり難くなることから好ましくなく、2次粒子径が前記範囲より小さくなると、工場においてプレミックスしてレベリング材を製造する際に、再乳化型樹脂粉末が飛散して作業環境が悪化するなどのハンドリング性が悪くなることから好ましくない。
好ましくは1〜20質量部、
より好ましくは2〜18質量部、
さらに好ましくは3〜16質量部、
特に好ましくは4〜15質量部の範囲で配合することによって、良好な作業性と高耐久な硬化体特性を併せて得ることができる。
樹脂粉末の配合割合が、前記範囲よりも大きい場合、レベリング材に水を加えて得られるスラリーの粘度が高くなり、施工性および鏝作業性が低下し、表層の乾燥による皺や気泡跡が発生し易くなるとともに、硬化体の圧縮強度が低下する傾向がある。また、配合割合が前記範囲より小さい場合には、スラリーのチクソトロピック性が低下して傾斜面を安定して形成することが困難になる傾向にあり、さらにスラリー硬化体の弾性向上によるひび割れ抑制効果が小さくなり、スラリー硬化体の表面仕上りも悪くなる傾向があるため好ましくない。
レベリング材において、無機成分の添加量は、水硬性成分100質量部に対し、好ましくは10〜200質量部、より好ましくは20〜180質量部、さらに好ましくは30〜150質量部、特に好ましくは40〜120質量部とするのが好ましい。
高炉スラグ微粉末は、JIS A 6206に規定されるブレーン比表面積3000cm2/g以上のものを用いることができる。
細骨材は、水硬性成分100質量部に対し、好ましくは30〜500質量部、より好ましくは50〜400質量部、さらに好ましくは100〜300質量部、特に好ましくは150〜250質量部の範囲が好ましい。
細骨材としては、粒径2mm以下の骨材、好ましくは粒径0.075〜1.5mmの骨材、さらに好ましくは粒径0.1〜1mmの骨材、特に好ましくは0.15〜0.6mmの骨材を主成分としていることが好ましい。
細骨材の種類は、珪砂、川砂、海砂、山砂、砕砂などの砂類、アルミナクリンカー、シリカ粉、粘土鉱物、廃FCC触媒、石灰石などの無機材料、ウレタン砕、EVAフォーム、発砲樹脂などの樹脂粉砕物などを用いることができる。
特に細骨材としては、珪砂、川砂、海砂、山砂、砕砂などの砂類、廃FCC触媒、石英粉末、アルミナクリンカーなどが好ましく用いることが出来る。
細骨材の粒径は、JIS Z 8801に規定される呼び寸法の異なる数個のふるいを用いて測定する。
水硬性成分であるアルミナセメントの発現強度は、水/セメント比の影響を大きく受けることから、減水効果を有する流動化剤を使用して水/水硬性成分比を小さくすることが特に好ましい。
流動化剤としては、減水効果を合わせ持つ、メラミンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物、カゼイン、カゼインカルシウム、ポリカルボン酸系、ポリエーテル系等、ポリエーテルポリカルボン酸などの市販の流動化剤が、その種類を問わず使用でき、特にポリエーテル系等、ポリエーテルポリカルボン酸などの市販の流動化剤が好ましい。
流動化剤は、使用する水硬性成分に応じて、特性を損なわない範囲で適宜添加することができ、水硬性成分100質量部に対して好ましくは0.01〜2.0質量部、さらに好ましくは0.02〜1.0質量部、特に好ましくは0.05〜0.5質量部を配合することができる。添加量が余り少ないと好適な効果(優れた流動性と高い硬化体強度)を発現せず、また添加量が多すぎても添加量に見合った効果は期待できず単に不経済であるだけでなく、チクソトロピック性の低下により勾配面の形成が困難になることが考えられる。
オキシカルボン酸としては、例えばクエン酸、グルコン酸、酒石酸、グリコール酸、乳酸、ヒドロアクリル酸、α−オキシ酪酸、グリセリン酸、タルトロン酸、リンゴ酸などの脂肪族オキシ酸、サリチル酸、m−オキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、没食子酸、マンデル酸、トロパ酸等の芳香族オキシ酸等を挙げることができる。
オキシカルボン酸の塩としては、例えばオキシカルボン酸のアルカリ金属塩(具体的にはナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(具体的にはカルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩など)などを挙げることができる。
特に重炭酸ナトリウムや酒石酸一ナトリウムは、凝結遅延効果、入手容易性、価格の面から好ましい。
リチウム塩の一例として、炭酸リチウム、塩化リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、水酸化リチウムなどの無機リチウム塩や、酢酸リチウム、酒石酸リチウム、リンゴ酸リチウム、クエン酸リチウムなどの有機酸有機リチウム塩などのリチウム塩を用いることが出来る。特に炭酸リチウムは、凝結促進効果、入手容易性、価格の面から好ましい。
又、上記リチウム塩に硫酸アルミニウム、硫酸カリウム、アルミン酸ナトリウム等の凝結促進成分を併用することが、更に促進効果が発揮されることから、特に好ましい。
特にリチウム塩を用いる場合、リチウム塩の粒径は50μm以下、さらに30μm以下、特に10μm以下が好ましく、粒径が上記範囲より大きくなるとリチウム塩の溶解度が小さくなるために好ましくなく、特に顔料添加系では微細な多数の斑点として目立ち、美観を損なう場合がある。
好ましくは0.01〜2質量部であり、より好ましくは0.01〜1質量部、さらに好ましくは0.02〜0.5質量部、特に好ましくは0.02〜0.3質量部の範囲で用いることによって、レベリング材の可使時間を確保したのち好適な速硬性・速乾性が得られることから好ましい。
増粘剤の添加量は、本発明の特性を損なわない範囲で添加することができ、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.001〜2質量部、さらに好ましくは0.005〜1.5質量部、より好ましくは0.01〜1質量部、特に0.05〜0.8質量部含むことが好ましい。増粘剤の添加量が多くなると、モルタル粘度が増加して流動性の低下を招く恐れがあるために上記の好ましい範囲で用いることが好ましい。
消泡剤の添加量は、本発明の特性を損なわない範囲で添加することができ、1種類の消泡剤を用いる場合、水硬性成分100質量部に対して、
好ましくは0.001〜3.0質量部、さらに好ましくは0.005〜2.5質量部、より好ましくは0.01〜2.0質量部、特に0.02〜1.5質量部含むことが好ましい。消泡剤の添加量は、上記範囲内が、好適な消泡効果が認められるために好ましい。
また、2種類以上の消泡剤を併用する場合の消泡剤の添加量は、それぞれの消泡剤の添加量が水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.001〜2質量部、さらに好ましくは0.005〜1.5質量部、より好ましくは0.01〜1.3質量部、特に0.02〜1.0質量部含むことが好ましい。消泡剤の添加量は、上記範囲内が、好適な消泡効果が認められるために好ましい。
本発明で用いるレベリング材スラリーは、レベリング材(S)と水(W)とを質量比(W/S)が、
好ましくは0.14〜0.34の範囲、
さらに好ましくは0.16〜0.32の範囲、
より好ましくは、0.18〜0.30の範囲、
特に好ましくは0.20〜0.28の範囲になるように配合して混練することが好ましい。
好ましくは140〜230mm、
さらに好ましくは160〜220mm、
特に好ましくは180〜210mmに調整されていることが、施工の容易さ及び適正な勾配を形成しつつ平滑性の高い硬化体表面を得られやすいという理由により好ましい。
好ましくは施工厚さ0.5mm〜50mmの範囲、
さらに好ましくは施工厚さ1mm〜40mmの範囲、
より好ましくは施工厚さ1.5mm〜30mmの範囲、
特に好ましくは施工厚さ2mm〜20mmの範囲で流し込み施工することが好ましい。
レベリング材スラリーをコンクリート床面の最も凸部分上面を基準にして0.5mm〜10mmの高さまで薄く施工する場合は、前記スラリーを流し込み施工しながら、スパイクローラー、とんぼ、コテなどを用いてスラリーを均等に広げる操作を行い、コンクリート床面に薄層に前記スラリー層を形成し、左官鏝などを用いて適正な勾配になるよう仕上げることが好ましい。
レベリング材スラリーを床スラブ面の最も凸部分上面を基準にして10mm〜50mmの高さまで厚く施工する場合には、前記スラリーを流し込み施工しながら、とんぼなどを用いてスラリーが均等に広がるように補助的な操作を行い、床スラブ全体に厚層の前記スラリー層を形成し、適正な勾配になるよう左官鏝を用いて表面仕上げを行うか定規ずりを行って仕上げることが好ましい。
レベリング材スラリーの可使時間は、スラリー調製から
好ましくは60分間であり、
さらに好ましくは40分間であり、
特に好ましくは30分間である。
水平面を有する屋外のコンクリート床面や、
好ましくは0/1000を超えて50/1000以下の勾配を有する、
さらに好ましくは0/1000を超えて40/1000以下の勾配を有する、
特に好ましくは0/1000を超えて30/1000以下の勾配を有する
屋外のコンクリート床面に打設され、スラリー表面を鏝仕上げされて用いられる。
レベリング材スラリー硬化体表面のショア硬度は、スラリーを打設してスラリー表面を鏝仕上げしてから、
好ましくは5時間後に10以上、
さらに好ましくは4.5時間後に10以上、
より好ましくは4時間後に10以上、
特に好ましくは3時間後に10以上であり、
スラリー施工(打設・鏝仕上げ)が終了した後、速やかに硬化が進行することによって勾配を有するコンクリート床構造体を短期間に形成させることができる。
好ましくは0/1000を超えて50/1000以下の勾配を有すること、
さらに好ましくは0/1000を超えて40/1000以下の勾配を有すること、
特に好ましくは0/1000を超えて30/1000以下の勾配を有することによって良好な排水性を付与することができる。
なお、本発明では、例えば、30/1000の勾配を有するとは、水平方向1000mmの直線において、起点(片側)の高さが0mmであり、終点(反対側)の高さが30mmの高さを有する状態を示している。
(1)レベリング材スラリーの流動性評価:
・フロー値の測定法:
JASS・15M−103に準拠して測定する。厚さ5mmのみがき板ガラスの上に内径50mm、高さ51mmの樹脂製パイプ(内容積100ml)を設置し、練り混ぜたレベリング材スラリーを樹脂製パイプの上端まで充填した後、パイプを鉛直方向に引き上げる。スラリーの広がりが静止した後、直角2方向の直径を測定し、その平均値をフロー値とし、スラリーの流動性を評価した。
・SL値の測定方法:
SL値は、図1に示すSL測定器を使用し、幅30mm×高さ30mm×長さ750mmのレールに、先端より長さ150mmのところに堰板を設け、混練直後のスラリーを所定量満たして成形した。成形直後に堰板を引き上げて、スラリーの流れの停止後に、標点(堰板の設置部)からスラリー流れの最短部までの距離を測定し、その値(SL値)をL0とし、堰板より200mm流れる時間を測定し、その測定時間をSL流動速度(L0)(秒/200mm)とした。
屋外条件下で、1m×0.5mの区画の硬化コンクリート下地にセルフレベリング材用プライマーの3倍液(原液150g/m2に水を300g/m2加える)を塗布して自然乾燥させた。プライマーが造膜後、レベリング材スラリーを平均施工厚さが6mmになるよう流し込んだ後、勾配が10/1000となるように左官鏝を用いてスラリー表面を成形し(1000mmスパンにおいて、最低施工厚さは1mm、最高施工厚さ11mmとなる)、コテ作業性を評価した。
また、レベリング材スラリーを施工した後、スラリー表面の光沢がなくなるまでの時間(水引き時間)、スラリー施工後のスラリー硬化体の表面硬度(ショア硬度)及び硬化体の表面性状について評価を行った。
・勾配形成性:
スラリーが硬化した後、スラリー硬化体の表面の勾配を測定し、左官鏝を用いて形成した勾配(10/1000)が保持されているか評価した。評価指標は、勾配Xが(9.5≦X≦10)/1000の場合は良、勾配Xが(9≦X<9.5)/1000の場合は可、勾配Xが(X<9)/1000の場合は不可とした。
・コテ作業性:
コテ作業性は、コテ放れ性、コテ切れ性を評価し、評価の高い順より、優>良>可>不可の4段階で評価し、可以上を合格とした。
・ショア硬度の測定法:
レベリング材スラリーを流し込んだ後、所定の経過時間において、硬化した表面にスプリング式硬度計タイプD型(上島製作所製)を用いて任意の6カ所に垂直に押し付け、その時のスプリング式硬度計タイプD型のゲージの読み取り値の平均値をその時間のショア硬度とし表面硬度を評価した。
・硬化体表面の性状:
スラリー硬化体表面の性状は、硬化後(ショア硬度測定可能時点)、材齢24時間時点でシワ及び気泡の有無を目視で観察することで評価した。クラックは、材齢28日にて評価を行った、評価基準は以下の通りとする。
○:無し、×:有り。
1)セルフレベリング材用プライマー : 宇部興産社製、UプライマーG
2)レベリング材 : 下記の原材料を表1に示す配合割合で混合したレベリング材を使用した。
・アルミナセメント : フォンジュ、ケルネオス社製、ブレーン比表面積3100cm2/g。
・ポルトランドセメント : 早強セメント、宇部三菱セメント社製、ブレーン比表面積4500cm2/g。
・石膏 : II型無水石膏、セントラル硝子社製、ブレーン比表面積3460cm2/g。
・細骨材 : 珪砂:6号珪砂。
・無機成分 : 高炉スラグ微粉末、リバーメント、千葉リバーメント社製、ブレーン比表面積4400cm2/g。
・樹脂A : アクリル酸エステル/メタアクリル酸エステルの共重合体、1次粒子がポリビニルアルコールの水溶性保護コロイドで被覆された再乳化形樹脂粉末、ニチゴー・モビニール社製、DM7000P。
・樹脂B : 酢酸ビニル/バーサチック酸ビニルエステル/アクリル酸エステルの共重合体、再乳化形樹脂粉末、ニチゴー・モビニール社製、DM2071P。
・樹脂C : エチレン/酢酸ビニル共重合体、再乳化形樹脂粉末、旭化成ケミカルズ社製、RE5044N。
・樹脂D : スチレン/アクリル酸エステル/メタクリル酸共重合体のエマルジョン、宇部興産社製、UプライマーG。
・凝結遅延剤a : 重炭酸ナトリウム、東ソー社製。
・凝結遅延剤b : L−酒石酸ニナトリウム、扶桑化学工業社製。
・凝結促進剤a : 炭酸リチウム、本荘ケミカル社製。
・凝結促進剤b : 硫酸アルミニウム、大明化学工業社製。
・凝結促進剤c : アルミン酸ナトリウム、北陸化成社製。
・流動化剤 : ポリカルボン酸系流動化剤、花王社製。
・増粘剤 : ヒドロキシエチルメチルセルロース系増粘剤、マーポローズMX−30000、松本油脂社製。
・消泡剤 : ポリエーテル系消泡剤、サンノプコ社製。
表1に示す、条件及び配合割合で調製したレベリング材と水とを、レベリング材100質量部に対して水25質量部の割合で配合し、回転数1100rpmのハンドミキサーを用いて3分間混練して、レベリング材スラリーを調製した。
表1に示す成分を配合したレベリング材を用いてレベリング材スラリーを調製した。スラリーの流動性(フロー値、SL値、スラリー移動速度)の測定結果を表2に示す。
(2)樹脂成分としてアクリル酸エステル/メタアクリル酸エステル共重合体の再乳化形樹脂粉末を用いた実施例1の場合、勾配の形成性および鏝作業性が良好であり、さらに硬化体の表面状態についても良好であった。
(3)樹脂成分として酢酸ビニル/バーサチック酸ビニルエステル/アクリル酸エステルの共重合体の再乳化形樹脂粉末を用いた比較例2、及び、エチレン/酢酸ビニル共重合体の再乳化形樹脂粉末を用いた比較例3の場合、コテ作業性は優れているものの勾配の形成性は実施例1と比較して劣っていた。また、硬化体表面にはシワが発生し、平滑で良好な仕上り面は得られなかった。
(4)樹脂成分としてスチレン/アクリル酸エステル/メタクリル酸共重合体のエマルジョンを用いた比較例4の場合、施工性については実施例1と同等の特性が得られたが、硬化体表面には気泡が認められ、平滑で良好な仕上り面は得られなかった。
Claims (4)
- アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏からなる水硬性成分と、アクリル共重合再乳化形樹脂粉末とを含むレベリング材であって、
アクリル共重合再乳化形樹脂粉末は、樹脂粉末の1次粒子の平均粒径が0.2〜0.8μmであり、樹脂粉末の1次粒子表面がポリビニルアルコールの水溶性保護コロイドで被覆され、
水硬性成分100質量部に対し、アクリル共重合再乳化形樹脂粉末1〜20質量部であり、
水硬性成分は、アルミナセメント30〜60質量部、ポルトランドセメント20〜50質量部及び石膏15〜35質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は100質量部)からなり、
レベリング材は、さらに水硬性成分100質量部に対し、高炉スラグ微粉末10〜200質量部、細骨材30〜500質量部、流動化剤0.01〜2.0質量部、凝結遅延剤0.01〜1.5質量部、凝結促進剤0.01〜2質量部、増粘剤0.001〜2質量部及び消泡剤0.001〜3質量部含み、
レベリング材と水とを混練して調製したレベリング材スラリーは、水平面及び0/1000を超えて50/1000以下の勾配を有する屋外のコンクリート床に打設され、スラリー表面を鏝仕上げされ、
レベリング材スラリーの硬化体表面は、0/1000を超えて50/1000以下の勾配を有すること
を特徴とするレベリング材。 - 増粘剤は、ヒドロキシエチルメチルセルロースを主成分とすること
を特徴とする請求項1に記載のレベリング材。 - レベリング材スラリーの硬化体表面のショア硬度は、スラリーを打設して鏝仕上げしたのち5時間後に10以上であること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載のレベリング材。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載のレベリング材を用いたスラリー硬化体層を表層に有する勾配を有するコンクリート床構造体。
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