JP5076517B2 - 耐硫化性に優れた錫めっき鋼板 - Google Patents

耐硫化性に優れた錫めっき鋼板 Download PDF

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Description

この発明は、DI缶、食缶、飲料缶などに使用される缶用表面処理鋼板に関するものであって、特に、耐硫化性に優れた錫めっき鋼板に関するものである。
缶用表面処理鋼板としては、従来から“ぶりき”と称される錫めっき鋼板が広く用いられている。このような錫めっき鋼板は、通常、重クロム酸などの6価クロム化合物を含有する水溶液中に鋼板を浸漬もしくは該水溶液中で電解処理、または前記6価クロム化合物の水溶液を鋼板に塗布することによって、鋼板のめっき表面に、クロメート皮膜を形成させるのが一般的である。このように、クロメート皮膜を鋼板表面に形成した鋼板に要求される特性としては、耐黄変性、塗料密着性、耐硫化性である。耐黄変性は、長期保管時の錫めっき表面の酸化を防止し、外観の劣化(黄変)を抑制する性能である。塗料密着性は、塗装して使用する際に錫酸化膜の成長を抑えることで、錫酸化膜の凝集破壊を防止し、塗料との密着性を確保する性能である。耐硫化性は、内容物との接触により内容物中の硫黄分が皮膜中に浸透していくのを抑制する性能である。
しかし、上記のように、錫めっき鋼板表面にクロメート皮膜を形成するにあたっては、6価クロム酸化物を含有する水溶液を使用するため、作業環境上の安全性確保および廃水処理に多大な費用を要する。さらに、万が一、事故等でクロメート処理液が漏洩した場合には、環境に大きな被害を及ぼす危険性が高い。そのため、昨今の環境問題から、クロムを規制する動きが各分野で進行しており、前記錫めっき鋼板においてもクロムを使わない化成処理の必要性が増大している。
以上のような状況を受けて、缶用錫めっき鋼板におけるクロメート処理に代わる化成処理技術がいくつか提案されており、例えば、特許文献1に示すような、リンおよび錫を含有する化成皮膜上にシランカップリング剤を形成する錫めっき鋼板について開示されている。
特開2001−316851号公報
しかしながら、特許文献1の錫めっき鋼板を用いた場合、耐黄変性及び塗料密着性については良好な性能が得られるものの、シランカップリング層の均一被覆性が劣り、十分な耐硫化性を得ることができない場合があった。また、この均一被覆性向上のためにアルコールを使用した場合、防爆装置を設置する必要が生じコストアップになるという問題があった。
この発明の目的は、錫めっき層の上層に形成される化成皮膜中に、その皮膜特性を向上させる作用を有するものの環境上の問題から望ましくないとされるクロムを含有させることなく、優れた耐黄変性及び塗料密着性を具備しつつ、特に耐硫化性にも優れた錫めっき鋼板を提供することにある。
クロムを含有しない化成皮膜を形成した錫めっき鋼板は、環境上の点から好ましいが、かかる鋼板はクロメート皮膜を有する錫めっき鋼板と比べて性能が劣る傾向がある。このため、クロムを含有しない化成皮膜を形成した錫めっき鋼板であっても、クロメート皮膜を有する錫めっき鋼板と同等、もしくはそれ以上の優れた諸性能を有することが強く望まれている。
このため、発明者らは、錫めっき鋼板における上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、Snめっき層の上層に、リン及び錫を含有する化成皮膜を形成させた後、さらに上層に特定のアミン系シランカップリング剤によるシラン処理を施した場合には、上記性能の全てを満足させることができることを見出した。
より具体的には、化成皮膜の上層に特定のアミン系シランカップリング剤を用いてシラン処理を施すことによって、前記シランカップリング剤の溶媒(水)への分散性が向上し、シランカップリング層の均一被覆性が向上したため、耐硫化性が格段に向上することを見出した。
すなわちこの発明の錫めっき鋼板は、鋼板表面に形成した錫めっき層の上層に、リン及び錫を含有するクロムフリー化成皮膜を有し、該化成皮膜中のリン含有量が、その付着量にして1〜50mg/m2であり、さらに、前記化成皮膜の上層に、HLB値が7より大きい有機官能基をもつアミン系シランカップリング層を有し、該シランカップリング層の付着量が、Si付着量にして0.1〜100mg/m2であることを特徴とする耐硫化性に優れた錫めっき鋼板である。
本発明によれば、耐黄変性及び塗料密着性を具備するとともに、特に耐硫化性にも優れた錫めっき鋼板を得ることができる。その結果、本発明の錫めっき鋼板は、錫めっき層の上層に、その皮膜特性を向上させる作用を有するものの環境上の問題から望ましくないとされるクロメート皮膜を形成させることなく、クロメート皮膜を有しためっき鋼板と同等またはそれ以上の優れた諸性能を有することが可能となる。
以下にこの発明の実施形態について説明する。
この発明の錫めっき鋼板は、錫を含むめっきが施された全ての鋼板を対象としている。中でも、特に好ましい錫めっき鋼板としては、Fe−Sn−Ni合金層もしくはFe−Sn合金層の単一層からなる中間層、または最下層にFe−Ni合金層を形成した上面にFe−Sn−Ni合金層の複合層からなる中間層を形成し、さらに前記中間層の上面に金属Sn層を形成した鋼板である。前記めっき層の付着量は、片面あたり0.05〜20g/m2であることが好適である。付着量が0.05 g/m2未満であると耐食性に劣る傾向があり、20 g/m2超えではめっき層が厚くなりすぎるため、コスト的なメリットがなくなるためである。なお、Sn付着量は、電量法または蛍光X線を用いた表面分析により測定することができる。
そして、この発明の構成上の主な特徴は、鋼板表面に形成した錫めっき層の上層に、リン及び錫を含有するクロムフリー化成皮膜を有し、該化成皮膜中のリン含有量が、その付着量にして1〜50mg/m2であり、さらに、前記化成皮膜の上層に、HLB値が7より大きい有機官能基をもつアミン系シランカップリング層を有し、該シランカップリング層の付着量が、Si付着量にして0.1〜100mg/m2であることにある。
(1)化成皮膜中のリン含有量がその付着量にして1〜50mg/m2であること
化成皮膜中のリン含有量は、その付着量にして1〜50mg/m2の範囲とすることが必要である。 1mg/m2 未満では、塗料密着性及び耐黄変性が十分に得られず、また、50mg/m2超えでは化成皮膜に欠陥が生じやすくなり、塗料密着性が劣化するからである。なお、リン付着量の測定は、蛍光X線による表面分析により行った。
前記リン及び錫を含有させた化成皮膜の形成方法としては、例えば、リン酸系化成処理によって行うことができる。この場合、リンの供給源としては、オルトリン酸もしくはリン酸塩により供給することが好ましい。錫めっき鋼板上に化成皮膜を形成させる方法は、化成処理液に浸漬する方法か、もしくは陰極電解する方法が好ましい。
前記錫を含有させた化成皮膜の形成方法としては、例えば、上記リン酸系化成処理液中に錫イオンを有する塩化第一錫、塩化第ニ錫、硫酸第一錫などを添加することが好ましく、これによって、錫めっき層の上層に不溶性で最も安定なリン酸錫を形成させることができる。なお、前記化成処理液には、Fe、Niの金属塩、例えば、FeSO4、NiSO4などの金属塩を適宜添加することができる。この場合には、促進剤として、亜硝酸塩などの酸化剤、フッ素イオンなどのエッチング剤を適宜添加してもよい。また、化成処理液の均一処理性を向上させる目的のラウリル硫酸ナトリウム、アセチレングリコールなどの界面活性剤、ピロリン酸2ナトリウム等のFeとキレートを形成するスラッジ抑制剤、その他pH緩衝剤を適宜添加してもよい。
また、化成皮膜中に錫を含有することが、安定なリン酸錫皮膜を形成するために必須となる。前記化成皮膜中の錫は、X線光電子分光法でSn固有の光電子ピークにより、その存在を確認することができる。リンと錫の比としては、X線光電子分光法で表面から測定した化成皮膜のP2pピークとSn3dピークの強度から求めた錫とリンの原子比率Sn/Pが1.0以上1.5以下とすることが好ましい。
リン酸と錫の化合物には、リン酸第1錫(Sn(H2PO4)2)、リン酸第2錫(SnHPO4)、リン酸第3錫(Sn3(PO4)2)が存在し、水溶液中において式(1)または(2)に示す平衡関係にある。
Sn(H2PO4)2⇔SnHPO4+H3PO4・・・(1)
3SnHPO4⇔Sn3(PO4)2+H3PO4・・・(2)
ここで、化成皮膜は管の内面にも適用されるため、水分を含む内容物に対して化成皮膜は安定に存在する必要がある。リン酸第1錫は水に対して可溶性があり、内容物中に容易に溶出し、皮膜の安定性が失われる恐れがあるためである。したがって、化成皮膜はリン酸第2錫もしくはリン酸第3錫、あるいはそれらの混合物とすることが好ましい。以上の点を考慮した場合、前記の錫とリンの原子比率Sn/Pはリン酸第2錫100%の場合1.0、リン酸第3錫100%の場合1.5になる。よって、本発明においては、SnとPの原子比率Sn/Pは1.0以上1.5以下とすることが好ましい。Sn/Pが1.0未満の場合、リン酸第1錫が皮膜中に残存していることで可溶性の成分が内容物中に溶出し耐食性が劣化する場合がある。一方、1.5超えの場合は化学量論的に存在しない範囲となる。
前記浸漬法または陰極電解法により化成皮膜を形成した鋼板は、次いで60〜200℃の温度に加熱することが好ましい。化成皮膜は、形成後そのままでは化成皮膜中に多くの吸着水もしくは水和水を含有するため、60℃以上に過熱することが好ましいためである。一方、温度が200℃を超えると、加熱処理による脱水効果は大きいが、加熱処理自身によって錫酸化膜が表面に多量に形成されてしまい、逆に外観や密着性を損ね、また、温度がさらに高温になると、オルトリン酸構造からの脱水縮合(メタ化)も起こるようになり、皮膜の耐食性も失われるようになる恐れもある。したがって200℃以下とすることが好ましい。加熱方式は、特に限定するものではなく、通常、工業的に行われている熱風を吹き付ける加熱方法や、赤外線加熱、誘導加熱、輻射加熱などが好適である。
(2)前記化成皮膜の上層に、HLB値が7より大きい有機官能基をもつアミン系シランカップリング層を有し、該シランカップリング層の付着量がSi付着量にして0.1〜100 mg/m2であること
この発明では、上記化成皮膜の上層に、さらに適正付着量のアミン系シランカップリング層を形成することを必須の構成とする。前記シランカップリング層は、例えば、シランカップリング剤を使用したシラン処理によって形成することができる。シランカップリング剤の一般化学式は、X−Si−(OR)3であり、ORは加水分解基、Xは有機官能基である。このシランカップリング剤は、アルコキシシリル基(Si−OR)が水により加水分解されてシラノール基(Si−OH)を生成し、鋼板表面の水酸基(−OH)との脱水縮合反応により密着する。また、鋼板の上層には、一般化学式のXにあたる有機官能基が配向し塗料などの樹脂と相溶もしくは結合する。
前記カップリング剤には、HLB値が7より大きい有機官能基をもつアミン系シランカップリング剤を用いる必要がある。その他のシランカップリング剤を用いた場合、溶媒(水)への分散性が低く、シランカップリング層の均一被覆性が確保できず、鋼板の耐硫化性が劣化するためである。ここで、前記水への分散性を判定する方法は、下記(式1)に示すように、シランカップリング剤の有機官能基Xの親水性・疎水性の指標であるDavisによるHLB値を用いる。
HLB値=Σ(親水基の基数)−Σ(疎水基の基数)+7 (式1)
前記有機官能基Xの部分の親水性・疎水性は、HLB値によって水への分散性を推察することができる。また、シランカップリング剤の有機官能基のHLB値が7超えであれば、Siを囲む官能基は親水基が主体となるため水への分散性が高く、7以下であればシランカップリング剤の有機官能基が疎水性となるため水への分散性が低いと考えられる。
なお、HLB値が7より大きい有機官能基をもつアミン系シランカップリング剤としては、例えば、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシランまたは3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
密着性向上の点でさらに説明を追加すると、錫めっき層上に直接シランカップリング層を形成するよりも、前記リン及び錫を含有する化成皮膜を形成してからシランカップリング層を錫めっき層上に形成する方が、塗料密着性の向上効果が大きくなる。つまり、リン及び錫を含有する化成皮膜によるアンカー効果と、シランカップリング層による塗膜との優れた相溶性及び反応性との相乗効果によって塗料密着性が向上するものと考えられるためである。
この発明では、シランカップリング層の付着量は、密着性向上効果が顕著に現われる範囲として、Si付着量にして0.1〜100mg/m2の範囲とする。0.1mg/m2未満だと、シランカップリング層の被覆率が小さく密着性向上効果が十分に得られないからであり、100mg/m2超えでは、未反応のシランカップリング剤が自己縮合するため、密着性向上効果が低減するからである。
また、前記シランカップリング剤層の形成方法としては、シランカップリング剤を水に希釈した溶液を化成皮膜を形成した鋼板表面に塗布することによって行うことが可能である。シランカップリング剤溶液を化成皮膜上に塗布する方法は、浸漬法もしくはロールコーティング法が好ましい。シランカップリング剤溶液を塗布した後、鋼板を60〜200℃の温度に加熱することが好ましい。60℃以上とすると、シランカップリング剤の脱水縮合反応によるシランカップリング層形成を促進することができるので好ましく、一方、200℃を超えると、外観や密着性を損ねることがあるからである。加熱方式は、特に限定するものではなく、通常、工業的に行われている熱風を吹き付ける加熱方法や、赤外線加熱、誘導加熱、輻射加熱などが好適である。
次にこの発明に従う具体的な製造方法の一例を説明する。通常のぶりき原板に錫めっきを施した後、錫の融点(231.9℃)以上の温度で加熱溶融(リフロー)処理を行う。引き続き、15g/lの炭酸ナトリウム水溶液中にて1C/dm2の陰極処理を行った後、浸漬、電解、スプレー、又はロールコートなどの公知方法によって化成処理を行う。
化成処理液としては、リン酸イオン換算で2.2〜13.5g/lのリン酸、リン酸ナトリウム、リン酸アルミニウム、リン酸カリウム等の金属塩などと、錫イオン換算で0.1〜7.4g/lの塩化第一錫、塩化第二錫、硫酸第一錫、及び/又は、金属錫などとを溶解した水溶液を使用する。このとき、促進剤として塩素酸ナトリウムなどの酸化剤を適宜添加しても良い。
化成処理の条件は、処理液の温度を40〜60℃として、処理(浸漬または陰極電解)時間を1〜5秒とすることが好ましい。化成処理後の錫めっき鋼板は、鋼板温度が60〜200℃に到達するように加熱する。
また、シランカップリング剤を形成するためのシランカップリング剤処理は、HLB値が7を超える有機官能基を有したアミン系シランカップリング剤、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン等を0.1〜5.0mass%含有する水溶液にて、鋼板に均一に塗布することができる。乾燥は、鋼板温度が60〜200℃に到達するように行う。
なお、上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
本発明の実施例について説明する。
(実施例1〜16)
実施例1〜16は、板厚0.2mmの低炭素鋼からなる冷延鋼板の両面に、市販の錫めっき浴を用い、錫めっき層を片面あたり2g/m2の付着量で形成した後、錫の融点(231.9℃)以上で加熱溶融(リフロー)処理を行った。次にリフロー処理後に表面に生成した錫酸化膜を除去するため、浴温50℃、10g/lの炭酸ナトリウム水溶液中で1C/dm2の陰極処理を行った。その後、表1または表2に示す化成処理液中、浴温60℃で、3A/dm2の電流密度で1秒間陰極電解処理を行った。さらにその後、リンガーロールで絞り、鋼板の温度が80℃となる条件で加熱し、水分を乾燥させた後、表1または表2に示すシランカップリング剤水溶液を室温でロールコーターにて塗布した。その後、赤外線加熱装置により、鋼板温度が100℃となる条件で加熱乾燥を行うことにより錫めっき鋼板のサンプルを作製した。なお、形成されたリンと錫を含有する化成皮膜及びシランカップリング剤層の付着量は、リン換算及びSi換算で表1に示し、リン及びSi付着量の測定はあらかじめ付着量を湿式分析して求めた検量板との比較による蛍光X線分析により測定した。また、化成皮膜中の錫の存在は、X線光電子分光法でSn固有の光電子ピークによりその存在を確認し、Sn/P比を次に示す方法により求めた。各試料を装置内に挿入後、表面汚染除去のための軽いArスパッタリングを施した後、定量分析に供した。このとき表面汚染除去はC1sピークが相対感度係数法による定量で5原子%以下になる条件を目安とした。表面汚染除去後、P2p、O1s、Sn3dのピーク強度を測定し、相対感度係数法を用いて強度を原子濃度に換算し、さらに、この値を用いてSn/Pの原子比を算出した。このとき相対感度係数は、KRATOS社製XPS(AXIS−HS)に組み込まれている値を用いた。一般に、XPSには各装置に標準的な相対感度係数が組み込まれており、半定量が可能であるが、定量値を議論する場合は、可能な限り試料に近く、かつ組成が明らかな物質でその定量性を確認しておくことが望ましい。本実施例では、Na2PO4、SnO2を用い、同様の定量を行えば、Na2PO4のO/Pは3.6〜4.4、SnO2のSn/Oは0.45〜0.55と±10%程度で定量できることを確認したのち測定を行った。これらの値は分析店を増やすことにより、精度・代表性を向上させることができるため、各資料については100μmφ以上の点を3点以上分析し、その平均を算出した。
比較例
(比較例1〜9)
比較例1〜9は、構成する官能基のHLB値が10以下のシランカップリング剤を用いたこと以外は、実施例と同様の方法によりサンプルを作製した。
(比較例10及び11)
比較例10及び11は、化成処理皮膜のリンの付着量が1mg/m2未満または50mg/m2超えであること以外は、実施例1と同様の方法によりサンプルを作製した。
(比較例12及び15)
比較例12及び15は、シランカップリング剤層のSi付着量が0.1〜100mg/m2の範囲外であること以外は、実施例と同様の方法によりサンプルを作製した。
(比較例13及び14)
比較例13及び14は、シランカップリング剤層のSi付着量が0.1〜100mg/m2の範囲外であること及び用いるシランカップリング剤の有機官能基のHLB値が7以下であること以外は実施例と同様の方法によりサンプルを作製した。
以上のようにして得られたサンプルについて各種試験を行った。本実施例で行った試験の評価方法を以下に示す。
(評価方法)
(1)耐硫化性
実施例及び比較例のサンプルの表面に、付着量50mg/dm2のエポキシフェノール系塗料を塗布した後、210℃で10分間の焼付を行った。次いで、pHが7となるように乳酸で調整した1mass%Na2S溶液に浸漬(110℃で60分間)した。処理後のサンプル(n=1)の外観を目視で以下の評価基準に従って評価した。評価結果を表1または表2に示す。
○:黒変なし(クロメート処理材同等)
×:黒変あり
(2)耐黄変性
実施例及び比較例のサンプルを、温度60℃、相対湿度70%の環境下で10日間保管し、表面に形成された錫酸化膜の量を、電気化学的還元に要した電気量で以下の基準に従って評価した(n=1)。電解液には1/1000NのHBr溶液を用い、電流密度25μA/cm2で電解を行った。評価結果を表1または表2に示す。
○:還元電気量 3mC/cm2未満、外観 優(クロメート処理材同等)
△:還元電気量 3mC/cm2以上5mC/cm2未満、外観 やや黄色み
×:還元電気量 5mC/cm2以上、外観 はっきりとわかる黄色み
(3)密着性
実施例及び比較例のサンプルの表面に、付着量50mg/dm2のエポキシフェノール系塗料を塗布した後、210℃で10分間の焼付を行った。次いで、上記塗布・焼付を行った2枚の錫めっき鋼板を、塗装面がナイロン接着フィルムを挟んで向かい合わせになるように積層した後、圧力2.94×105Pa、温度190℃、圧着時間30秒の圧着条件下で貼り合わせ、その後、これを5mm幅の試験片に分割し、この試験片(n=2)を引張試験機を用いて引き剥がし、強度測定を行ない平均を求めた。以下の評価基準に従って評価し、評価結果は表1または表2に示す。
○:19.6N(2.0kgf)以上(クロメート処理材同等)
△:14.7N(1.5kgf)以上、19.6N(2.0kgf)未満
×:14.7N(1.5kgf)未満
上記各試験の評価結果を表1及び表2に示す。
Figure 0005076517
Figure 0005076517
表1及び表2によれば、実施例1〜16の錫めっき鋼板は、比較例1〜9に比べて、いずれも耐硫化性について良好な密着性が得られることがわかった。また、比較例10に比べて、いずれも耐黄変性について良好な値が得られており、比較例11〜15に比べて密着性について良好な値が得られていることがわかった。
本発明によれば、耐黄変性及び塗料密着性を具備するとともに、特に耐硫化性に優れた錫めっき鋼板を得ることができる。その結果、本発明の錫めっき鋼板は、錫めっき層の上層に、その皮膜特性を向上させる作用を有するものの環境上の問題から望ましくないとされるクロメート皮膜を形成させることなく、クロメート皮膜を有しためっき鋼板と同等またはそれ以上の優れた諸性能を有することが可能となる。

Claims (1)

  1. 鋼板表面に形成した錫めっき層の上層に、リン及び錫を含有するクロムフリー化成皮膜を有し、該化成皮膜中のリン含有量が、その付着量にして1〜50mg/m2であり、さらに、前記化成皮膜の上層に、HLB値が7より大きい有機官能基をもつアミン系シランカップリング層を有し、該シランカップリング層の付着量が、Si付着量にして0.1〜100mg/m2であることを特徴とする耐硫化性に優れた錫めっき鋼板。
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