JP5070483B2 - ルテニウム酸ナノシートおよびその製造方法 - Google Patents

ルテニウム酸ナノシートおよびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、新規な構造を有するルテニウム酸ナノシート、その製造方法、および前記ルテニウム酸ナノシートを用いた電極を有する電気化学素子に関する。
従来、蓄電機能を有する電気化学素子の代表的なものとしては、電気二重層キャパシタ、擬似二重層キャパシタおよび二次電池などがあり、これらはそれぞれの特徴を生かした応用機器において実用化されている。二次電池は電気二重層キャパシタに比べ高エネルギー密度を有し、現在最も汎用の蓄電デバイスである。しかし、二次電池は電極と電解液との間の電気化学反応を利用して充放電するため、サイクル寿命が不十分であり、一定期間使用後は交換する必要がある。他方、活性炭電極表面と電解液との界面で生じる電気二重層容量に基づく電気二重層キャパシタは、二次電池に比べて高出力密度を有し寿命が長いことから、高信頼性が要求されるバックアップ電源などに用いられる。これに対し、擬似二重層キャパシタはRuO、IrO、Coなどの金属酸化物の表面と電解液との界面での電気化学吸着現象により発現する擬似容量を持っており、電気二重層キャパシタの特徴である高出力密度及び長寿命と、二次電池の特徴である高エネルギー密度とを併せ持つ蓄電デバイスとして近年開発が加速している。
特にRuOを用いる擬似二重層キャパシタは最も古くから研究開発が行われ、最近では一部で実用化されている。しかしルテニウムは貴金属であり高価なため、より一層の高活性化と有効活用が望まれている。最近、層状ルテニウム酸カリウムからイオン交換で得た層状ルテニウム酸を層間剥離してルテニウム酸ナノシートが合成され、高い電子導電性と高い静電容量が報告された(特許文献1及び非特許文献1)。
しかしこのルテニウム酸カリウム由来のルテニウム酸ナノシートのシート厚は0.5nm程度と推定され、一層の厚さ方向に含有されるRuOは2個に相当し、更に薄層化の余地が有りながら、RuO一層に相当するルテニウム酸ナノシートの製法は知られていなかった。
最近、α‐NaFeO型構造をとる新規な層状ルテニウム酸NaRuOの合成と構造解析が報告された(非特許文献2及び非特許文献3)。このNaRuOは、一層に含有されるRuOが一層で、極限まで薄いため、これを層間剥離してナノシートコロイド化出来れば、これまでのルテニウム酸ナノシートでは無駄になっていたRuとRuの層間を極限まで有効活用でき、より高い擬似二重層容量が期待できる。しかしルテニウム酸カリウム由来の層状ルテニウム酸に適用出来た層間剥離の手法はルテニウム酸ナトリウム由来の層状ルテニウム酸には適用困難であった。
特開2004−315347 W. Sugimoto, H. Iwata, Y. Yasunaga, Y. Murakami, and Y. Takasu, Angew.Chem., Int. Ed., 42, 4092 (2003) M. Shikano, R.K. Kremer, M. Ahrens, H.J. Koo, M.H. Whangbo, and J. Inorg.Chem., 43,5 (2004) M. Shikano, C. Delmas, and J. Darriet, Inorg. Che., 43, 1214 (2004)
本発明は、MRuO2(M=アルカリ金属)型の層状ルテニウム酸アルカリ金属化合物由来のルテニウム酸の層間を剥離して得られる極限まで薄いルテニウム酸ナノシート、及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明は、0.4nm以下の厚みを有し、式(1):
[RuO2x― (0<x<1) (1)
で表されるルテニウム酸ナノシートを提供する。
また、本発明は、上記ルテニウム酸ナノシートが積層して形成される層状ルテニウム酸化合物の層間にアルキルアンモニウムイオンを含むアルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物を提供する。
また、本発明は、上記ルテニウム酸ナノシートおよび/または上記アルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物と、溶媒とからなるコロイドを提供する。
本発明はまた、上記ルテニウム酸ナノシートおよび/または上記アルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物を含む電極を有する電気化学素子を提供する。
本発明はまた、下記工程(a)〜(e):
(a)IV価以上の原子価の酸化ルテニウムとアルカリ金属化合物との混合物、またはIV価以上の原子価のルテニウム酸のアルカリ金属化合物を、金属ルテニウム粉末と混合し、得られた混合物を焼成または溶融することによって、III価のルテニウムを含むアルカリ金属型層状ルテニウム酸化合物を得る工程、
(b)前記アルカリ金属型層状ルテニウム酸化合物を臭素溶液で処理し、層間のアルカリ金属イオンの少なくとも一部を除去してプロトン型層状ルテニウム酸を得る工程、
(c)前記プロトン型層状ルテニウム酸を水和処理してプロトン型層状ルテニウム酸水和物を得る工程、
(d)前記プロトン型層状ルテニウム酸水和物にアルキルアンモニウム化合物および/またはアルキルアミンを反応させてアルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物を得る工程、及び
(e)前記アルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物を溶媒と混合し分散させて、層間剥離したルテニウム酸ナノシートコロイドを得る工程
を含む、0.4nm以下の厚みを有し、式:[RuO2x―(0<x<1)で表されるルテニウム酸ナノシートの製造方法を提供する。
本発明のルテニウム酸ナノシートおよび/またはそれを積層したアルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物は、レドックスキャパシタや燃料電池等の各種の電気化学素子の電極として用いることが出来る。シート厚みが薄くなったことによりルテニウムの利用効率が向上し、シート面上の電子導電性とシート間のプロトン導電性の両方が改善され、電極性能が著しく向上する。レドックスキャパシタ電極に用いた場合、従来の粒子状の酸化ルテニウムに比べると10倍以上、従来のルテニウム酸ナノシートに比べても10%以上、高いレドックスキャパシタ容量が得られる。
本発明者等は、層厚が約0.3nmと、極限まで薄いことが報告された(上記非特許文献3の図3)Ru(III)価の層状ルテニウム酸ナトリウム(NaRuO2)を用い、従来法では困難であったその層間剥離の方法を鋭意検討した結果、先ず臭素処理によってナトリウムイオンをデインターカレートしてプロトン型層状ルテニウム酸(HRuO2)に変換し、次いで嵩高いアルキルアンモニウムイオンとプロトンのゲスト交換反応を行わせることにより、層間剥離が可能であることを見出した。この方法により、シート厚みが0.4nm以下と従来に無く薄いルテニウム酸ナノシートコロイドを得ることに成功した。ここでルテニウム酸ナノシートとは、厚みがnm〜サブオーダーで、縦および横がそれぞれ数百nm〜μmオーダーのサイズのシート状の結晶性ルテニウム酸化合物のことを言う。このようなルテニウム酸ナノシートは電気泳動法等で容易に積層させることが出来、擬似二重層キャパシタや燃料電池の電極に用いることができ、ルテニウムの利用効率を極限まで高めて電極を高性能化できることが判明した。
本発明のルテニウム酸ナノシートは、Ru(III)価の層状ルテニウム酸アルカリ金属化合物を前駆体とすることにより、先に報告されたMRuO2+0.5x・nH2O(Mはアルカリ金属イオン、0<x<1)を前駆体とするシート厚み約0.5nmのルテニウム酸ナノシート(以下、ルテニウム酸ナノシート・タイプ1と称する)とは異なり、式(1):[RuO2x― (0<x<1)で表される〔以下、本発明のルテニウム酸ナノシートを、ルテニウム酸ナノシート(タイプ1)と区別してルテニウム酸ナノシート(タイプ2)と称する〕。本発明においては、上記Ru(III)価の層状ルテニウム酸アルカリ金属化合物としては、NaRuO2が好ましい。
また、本発明は、上記ルテニウム酸ナノシートが積層して形成される層状ルテニウム酸化合物の層間にアルキルアンモニウムイオンを含むアルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物を提供する。このアルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物は、X線回折図形において(00L)の各面(但し、0≦2θ(CuKα)≦90°の範囲においてL=1〜nでありnは基本面間隔によって決まり5≦n≦35を満たす)に回折ピークを有することが好ましい。上記アルキルアンモニウムイオンとしては、構造式:(R)(R’)(R’’)(R’’’)NH4-(m+n+p+q) (式中、R,R’,R’’,およびR’’’は夫々独立にHまたはCH3(CH2)を示し、m,n,p及びqはそれぞれ0または1〜4の整数で、且つ0≦m+n+p+q≦4を満たし、そしてr=0〜18の整数である)で表されるカチオンが好ましい。特に、後述する工程(e)でのルテニウム酸ナノシートの層間剥離を促進するには、上記式中、R=R’=R’’=R’’’=n-CH3(CH2)3-のアンモニウム化合物、即ち四級(n-テトラブチル)アンモニウムイオンが好ましい。上記アルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物は、[(R)(R’)(R’’)(R’’’)NH4-(m+n+p+q) ](RuO2)(R,R’,R’’,R’’,m,n,p及びqは上記の通りであり、xは0<x<1の数である)で表されるものが好ましい。xは0.05〜0.3であるのが特に好ましい。
さらに、本発明は、上記ルテニウム酸ナノシートおよび/または上記アルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物と、溶媒とを含むコロイドにも関する。本発明のルテニウム酸ナノシートおよび/またはアルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物のコロイド溶液は、ルテニウム酸ナノシート・タイプ1およびそれに対応するアルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物のコロイド溶液とは、ルテニウム酸ナノシートのプラズモン共鳴吸収の波長が異なることで識別可能である。即ち、UV・可視吸収スペクトルにおいて、公知のルテニウム酸ナノシート(タイプ1)およびそれに対応するアルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物のコロイド溶液は、λmax 357−367nm領域に吸収極大を有するのに対し、本発明のルテニウム酸ナノシート(タイプ2)およびそれに対応するアルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物のコロイド溶液は、λmax 340−350nm領域に吸収極大を有する。本発明のルテニウム酸ナノシート(タイプ2)は、ルテニウム酸ナノシート・(タイプ1)に比べてそのシート厚みが約1/2〜2/3と薄いため、量子サイズ効果としてのプラズモン共鳴吸収波長がブルーシフト(短波長化)したものと推測される。因みに、ナノシート化されない粒径3.01nm或いは2.05nmの球形水和酸化ルテニウムのコロイドのプラズモン吸収極大はそれぞれ397nm、394nmと報告されている〔Chi-Chang Hu 等、J. Electrochem. Soc., 151 (2), A281 (2004)〕。これらに比べると、本発明のルテニウム酸ナノシートコロイドの吸収波長のブルーシフトは一層顕著である。
上記コロイドの溶媒としては、水、アルコール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびプロピレンカーボネートよりなる群から選択されるのが好ましく、水、アセトニトリルおよびジメチルホルムアミドが更に好ましい。
本発明のルテニウム酸ナノシート(タイプ2)および/またはそれを積層したアルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物は、レドックスキャパシタや燃料電池等の各種の電気化学素子の電極として用いることが出来る。該電極は、本発明の上記ルテニウム酸ナノシートおよび/または上記アルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物のコロイドを電極基質に被覆することにより製造し得る。本発明のルテニウム酸ナノシート(タイプ2)を含む電極の製造において、当該コロイドを電極基質に被覆する方法は当該分野で公知の方法を用いることが出来る。例えば、導電性の基質へはコロイド溶液からの電気泳動法が、多孔性の基質へは濾過法が、また非導電性・非多孔性の基質へはスピンコートや塗布法等が適用できる。ナノシートの易積層性の故にバインダー無しでも密着強度の高い被覆層を得ることが出来るが、用途によっては各種のバインダーを使用することも可能である。例えば、プロトン導電性を確保したい場合はパーフルオロスルフォン酸のアイオノマー、例えば、ナフィオン溶液(E.I DuPont de Nemourの登録商標)を用いることができる。ルテニウム酸ナノシート及びそれを積層したアルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物のシート厚みが薄くなったことにより、ルテニウムの利用効率が向上し、シート面上の電子導電性とシート間のプロトン導電性の両方が改善され、電極性能が著しく向上する。レドックスキャパシタ電極に用いた場合、従来の粒子状の酸化ルテニウムに比べると10倍以上、ルテニウム酸ナノシート(タイプ1)に比べても10%以上、高いレドックスキャパシタ容量が得られる。
<製造方法>
上述の通り、本発明のルテニウム酸ナノシート(タイプ2)は、
(a)IV価以上の原子価の酸化ルテニウムとアルカリ金属化合物との混合物、またはIV価以上の原子価のルテニウム酸のアルカリ金属化合物を、金属ルテニウム粉末と混合し、得られた混合物を焼成または溶融することによって、III価のルテニウムを含むアルカリ金属型層状ルテニウム酸化合物を得る工程、
(b)前記アルカリ金属型層状ルテニウム酸化合物を臭素溶液で処理し、層間のアルカリ金属イオンの少なくとも1部を除去してプロトン型層状ルテニウム酸を得る工程、
(c )前記プロトン型層状ルテニウム酸を水和処理してプロトン型層状ルテニウム酸水和物を得る工程、
(d)前記プロトン型層状ルテニウム酸水和物にアルキルアンモニウム化合物および/またはアルキルアミンを反応させてアルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物を得る工程、および
(e)アルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物を溶媒中に分散処理して層間剥離させて、ルテニウム酸ナノシートを含むコロイドを得る工程
を含む製造方法によって製造される。
工程(a)
まず工程(a)では、IV価以上の高原子価の酸化ルテニウムとアルカリ金属塩、またはルテニウム酸のアルカリ金属化合物を、金属ルテニウム粉末と混合して焼成または熔融することにより、金属ルテニウムで高原子価の酸化ルテニウムまたはルテニウム酸のアルカリ金属化合物を還元して、III価のルテニウムからなるアルカリ金属層状ルテニウム酸化合物を得る。IV価以上の高原子価の酸化ルテニウムとしては、IV価の酸化ルテニウム(RuO2)、V価のRu25、VIII価のRuO4が挙げられるが、RuO2が好ましい。IV価以上の高原子価の酸化ルテニウムと組み合わせて使用する上記アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩、例えば炭酸ナトリウム、硝酸ナトリウムが挙げられるが、炭酸ナトリウムが好ましい。上記ルテニウム酸のアルカリ金属化合物としては、VI価のルテニウム酸アルカリ金属化合物が好適に用いられ、ルテニウム酸ナトリウム(NaRuO)が特に好ましい。
IV価以上の高原子価の酸化ルテニウム及びアルカリ金属塩と金属ルテニウムとの混合物、或いはルテニウム酸化合物と金属ルテニウムとの混合物の各組成およびそれらの混合物を焼成・熔融する条件は、III価のルテニウムからなるアルカリ金属型層状ルテニウム酸が最も効率良く得られる混合物組成および焼成・熔融条件が、適宜選択される。例えばVI価のルテニウム酸アルカリ金属化合物であるNaRuOを出発物質として用いる場合は、Na2RuO4:Ruの原子比を0.5:1〜1.5:1、好ましくは約1:1で仕込み、混合して不活性ガス雰囲気中、或いは不活性ガス置換した封管中で溶融することより、以下の式に従ってIII価のルテニウムを含むルテニウム酸ナトリウム(NaRuO2)が得られる。
Na2RuO4 + Ru → 2NaRuO2
この製法は非特許文献2および3によって公知である。
他方、IV価の酸化ルテニウムRuO2を用いる場合は、酸化ルテニウムRuO2にアルカリ金属の炭酸塩、好ましくは炭酸ナトリウム(Na2CO3)を添加し、これと金属ルテニウム粉末を、RuO2:Na2CO3:Ruの原子比を2.5〜3.5:1.5〜2.5:1、好ましくは約3:2:1で混合し、熔融することにより、以下の式に従ってNaRuO2が得られる。
3RuO2 + 2Na2CO3 + Ru → 4NaRuO2 + 2CO2
この方法は従来知られていない新規な製法である。生成物NaRuO2は、上記の非特許文献3に記載のNaRuO2の物性(とりわけ粉末法X線回折パターン)との対比によって同定される。非特許文献3によれば、NaRuO2のRuO層は、含まれるRuO単位が厚み方向に1個のみで、厚さ0.4nm以下である。
これらのルテニウム酸化合物の組成やルテニウムの原子価状態は、湿式重量分析、熱天秤―示唆熱分析(TG−DTA)、X線フォトエレクトロンスペクトロスコピー法(XPS)等、定法に従って決定される。ルテニウム濃度は、過酸化ナトリウム共存下での溶融によってルテニウムを完全に可溶化し、その溶液を誘導結合プラズマ法(ICP)で分析される。
以下の工程で得られるルテニウム酸化合物、ルテニウム酸ナノシートおよびそれらのコロイドの組成やルテニウムの原子価状態に関しても、同様に決定される。また、本発明のルテニウム酸化合物の層状構造やシート構造等の表面形態や微細構造は、走査電子顕微鏡や透過電子顕微鏡、およびそれと組み合わされた電子線回折等、定法に従って観察・同定される。層状ルテニウム酸化合物やそのコロイドから再積層された層状ルテニウム酸のバルクの層状構造は、X線回折法によって回折パターンの周期構造から同定される。
本工程で得られるIII価のルテニウムを含むアルカリ金属型層状ルテニウム酸化合物は、好ましくは0.4nm以下の厚みを有する層状化合物で、好ましくはNaRuO2から成る。こうして得られたIII価のルテニウムを含むアルカリ金属型層状ルテニウム酸化合物は、特許文献1に報告された[RuO2+0.5xx−型のIV価ルテニウムからなる層状ルテニウム酸とは異なり、水或いは希塩酸水溶液での直接的なイオン交換反応によっては、プロトン型層状ルテニウム酸へイオン交換することは困難である。水和処理によって一部のアルカリ金属イオンはプロトンへ交換されるが、高々7割程度であり、残りのアルカリ金属イオンは強固に層間に保持される。無理に強酸で処理すると層状構造の崩壊が起こり好ましくない。層間のアルカリ金属イオンの大半を除去してプロトン型層状ルテニウム酸を得るには、(b)の工程で、前記のIII価ルテニウムを含むアルカリ金属型層状ルテニウム酸化合物を臭素溶液で処理する必要がある。
工程(b)
(a)工程で得られたアルカリ金属型層状ルテニウム酸化合物の層間のアルカリ金属イオンの大半を除去してプロトン型層状ルテニウム酸を得るために、該アルカリ金属型層状ルテニウム酸化合物を臭素溶液、好適には臭素の有機溶媒溶液で処理する。該有機溶媒としては、極性有機溶媒、例えばアセトニトリル又はジメチルホルムアミド、が特に好ましい。この臭素処理は1回でも大半のアルカリ金属イオンを除去できるが、更に徹底して除去するには複数回繰り返しても良い。この臭素処理の工程で層間のアルカリカチオンがプロトン型へイオン交換されると同時に、ルテニウム酸はIII価のルテニウムの部分的な酸化が起こり、式(1):[RuO2x−(0<x<1)で表されるように、(4−x)価(0<x<1)の酸化状態へ酸化される。
得られたプロトン型層状ルテニウム酸化合物は臭素の有機溶媒溶液から濾過によって回収され、臭素を含まない有機溶媒、好ましくは極性有機溶媒、更に好ましくはアセトニトリルで、濾液が無色透明になるまで十分洗浄される。本工程によって層状ルテニウム酸は、構造式中のアルカリ金属イオンがルテニウム1原子に対して、0.2当量以下、好ましくは0.1当量以下に低減される。
工程(c)
次いで工程(c)では、臭素処理済みルテニウム酸化合物の粉末を大過剰のイオン交換水中に懸濁させて室温で1〜48時間攪拌後、濾過して、脱イオン水で洗浄し、24時間〜72時間室温で乾燥させて、臭素処理済みルテニウム酸化合物の水和物を得る。
本工程によって層状ルテニウム酸は、構造式中の水和水はルテニウム1原子に対して0.2当量以上、好ましくは0.3当量以上に増加する。臭素処理を行わないアルカリ金属型層状ルテニウム酸の水和処理では、構造式中の水和水はルテニウム1原子に対してせいぜい0.2当量までしか入らないのに対し、臭素処理によって水和水を増加させることができるのは、臭素処理によってルテニウムがより多くIII価からIV価へと酸化され、層間の相互作用が弱まって層間に水和水が挿入されやすくなったためと推定される。
工程(d)
工程(c)で得られたプロトン型層状ルテニウム酸水和物は、次いで工程(d)において、アルキルアンモニウム化合物および/またはアルキルアミンの水溶液と反応させて、アルキルアンモニウムイオンを含むアルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物に転換され、場合によっては、このアルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物を経て、層間剥離を起こしたルテニウム酸ナノシートコロイドに転換される。
上記アルキルアンモニウム化合物としては、構造式:(R)(R’)(R’’)(R’’’)NH4-(m+n+p+q) (式中、R,R’,R’’,およびR’’’は夫々独立にHまたはCH3(CH2)を示し、m,n,p及びqはそれぞれ0または1〜4の整数で、且つ0≦m+n+p+q≦4を満たし、そしてr=0〜18の整数である)で表されるアルキルアンモニウムイオンを有するアルキルアンモニウム化合物が好ましい。特に、工程(e)でのルテニウム酸ナノシートの層間剥離を促進するには、上記式中、R=R’=R’’=R’’’=n-CH3(CH2)3-のアンモニウム化合物、即ち四級(n-テトラブチル)アンモニウム化合物、とりわけ四級(n-テトラブチル)アンモニウムハイドロオキサイドが好適に用いられる。
また、上記アルキルアミンとしては、(R)(R’)(R’’)NH3-(m+n+p) (式中、R,R’およびR’’は夫々独立にHまたはCH3(CH2)を示し、m,n及びpはそれぞれ0または1〜3の整数で、且つ0≦m+n+p≦3を満たし、そしてq=0〜18の整数である)で表されるものが好ましい。特に、工程(e)でのルテニウム酸ナノシートの層間剥離を促進するには、R=R’=R’’=n-CH3(CH2)3-のアミン、即ちトリ(n-ブチル)アミンが好適に用いられる。アルキルアミンは水溶液中では水和して、対応するアルキルアンモニウムハイドロオキサイドとして機能する。
これらのアルキルアンモニウム化合物および/またはアルキルアミンの水溶液とプロトン型層状ルテニウム酸との反応は、プロトン型層状ルテニウム酸の粉末にアルキルアンモニウム化合物および/またはアルキルアミンの水溶液を加え、得られたスラリーを一定温度で一定時間攪拌保持することにより行われる。反応条件は、プロトンのアルキルアンモニウムイオンによるイオン交換反応、更には層間剥離が、効率的に進む条件が適宜選択される。液温は通常室温乃至70℃、好適には30℃〜60℃であり、反応時間は通常2時間〜96時間、好適には24時間〜72時間である。反応中、雰囲気は不活性ガスでパージすることが好ましい。特に四級アンモニウム化合物以外の、分子内に水素を含有するアンモニウム化合物やアルキルアミンを用いる場合は、プロトン型層状ルテニウム酸粉末を入れた反応器を予め不活性ガス置換した後にアンモニウム化合物やアルキルアミンを添加するのが好ましい。空気中で添加すると、アミン性水素のルテニウム酸を触媒とする酸化反応で発火する危険性がある。
上記スラリー中のアルキルアンモニウム化合物および/またはアルキルアミンの濃度、プロトン型層状ルテニウム酸の濃度、並びにアルキルアンモニウム化合物および/またはアルキルアミンのプロトン型層状ルテニウム酸に対するモル比も、プロトンのアルキルアンモニウムイオンによるイオン交換反応、更には層間剥離が効率的に進む条件が適宜選択される。アルキルアンモニウム化合物および/またはアルキルアミンの濃度は、上記スラリーに対して質量%で通常1%〜70%、好ましくは5%〜60%、更に好ましくは10%〜50%である。プロトン型層状ルテニウム酸の濃度は、上記スラリーに対して質量%で通常0.001%〜20%、好ましくは0.01%〜10%、更に好ましくは0.05%〜5%である。アルキルアンモニウム化合物および/またはアルキルアミンのプロトン型層状ルテニウム酸に対するモル比は、通常1:1〜500:1、好適には5:1〜200:1、更に好適には10:1〜100:1である。該モル比が小さ過ぎると層間のプロトンのアルキルアンモニウムイオンによるイオン交換反応が不十分となることがあり、好ましくない。大きすぎると、過剰のアルキルアンモニウム化合物および/又はアルキルアミンが必要でコスト高になることがあり、好ましくない。
また上記アルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物を得た後、これを更に第二のアルキルアンモニウム化合物を含む溶液と混合して反応させ、ゲスト交換反応によって、第二のアルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物を得ることもできる。
本工程で用いるアルキルアンモニウム化合物および/またはアルキルアミンの構造と反応条件を適宜選択することによって、生成物のアルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物は、イオン交換後、層間剥離を起こさないで層状化合物の粉末として回収される。即ち、好適には、エチルアミンやエチルアンモニウムヒドロオキサイドのような、比較的小さな分子又は立体的に嵩張らない分子からなるアルキルアンモニウムイオン水溶液を用い、好適には30℃以下の比較的温和な反応条件でイオン交換し、得られたスラリーを濾過し、脱イオン水で洗浄後、真空乾燥することによって、アルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物の粉末が得られる。
他方、本工程において、R、R、R及びRの1つ以上が炭素数4以上の鎖長のアルキル基を有するアルキルアンモニウム化合物、或いはR、R、及びRの1つ以上が炭素数4以上の鎖長のアルキル基を有するアルキルアミン等を使用し、立体的に嵩高い分子のアルキルアンモニウムイオン水溶液を用いてイオン交換する場合は、生成したアルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物は、溶媒中で逐次的に層間剥離を起こしてルテニウム酸ナノシートのコロイドが得られる。通常、このアルキルアンモニウムイオンを過剰に含む粗製コロイドは、遠心分離法で濃縮分離される。その濃縮沈殿物は、イオン交換溶液中で生成したルテニウム酸ナノシートコロイドが再び積層してアルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物となっている。濃縮沈殿物は過剰のアルキルアンモニウム化合物やアルキルアミンを含むので、これらを除去するために洗浄処理を行うことが好ましい。コロイドの濃縮沈殿物に、n−ヘプタンやn−オクタン等の長鎖の炭化水素溶媒を添加して分散後遠心分離処理によって洗浄する。濃縮・洗浄の為の遠心力は通常1,000g〜100,000g、好適には2,000g〜10,000gである。
工程(e)
次いで工程(e)で、上記のアルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物を溶媒中に分散処理して層間剥離させて、厚み0.4nm以下のルテニウム酸ナノシートを含むコロイドを得る。溶媒としては高誘電率溶媒が好ましく、特に、水、アルコール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびプロピレンカーボネートよりなる群から選択される少なくとも1種の溶媒が好ましい。分散処理には超音波分散が好適に使用できる。このようにして得られたルテニウム酸ナノシートの分散コロイドは、比較的弱い遠心力で遠心分離処理して、層間剥離しきれなかったアルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物やルテニウム酸ナノシートコロイドの凝集物等からなる微量の不純物を除去することができる。この際の遠心力は通常100g〜1000g、好ましくは300g〜800gの範囲である。ルテニウム酸ナノシートコロイドに於けるルテニウムの濃度は特に限定されないが、通常0.001〜100g Ru/L、好ましくは0.01〜10g Ru/L、更に好ましくは0.1〜1.0g Ru/Lである。
以下に、本発明の実施例を示すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>テトラブチルアンモニウム−ルテニウム酸(タイプ2)層間化合物の製造
工程(a):RuO2の還元によるNaRuO2の製造
ルテニウム粉末0.51g(フルカ製、平均粒径45μm)、炭酸ナトリウム1.06g(和光純薬工業製、特級99.5%)および酸化ルテニウム(RuO2)(エヌ・イー ケムキャット製、Ru含有量75%)2.02gを混合し、メノウ乳鉢を用いて30分間、窒素雰囲気のグローブボックス中で混合した。その後、混合粉末をアルミナ坩堝に入れて、環状炉にてアルゴンガス流通下、450℃で12時間焼成した。焼成後、一旦固体を取り出し、窒素雰囲気下のグローブボックス中、再度メノウ乳鉢で30分間混合した。再び混合物粉末をアルミナ坩堝に入れて環状炉でアルゴンガス流通下、900℃に1.5時間で昇温し、同温度に24時間保持した後、室温まで冷却して、黒色粉末3.13gを得た。なお、この生成物の組成は、誘導結合プラズマ発光(ICP)分析法、熱重量分析(TG/DTA)法、エネルギー分散型発光X線分析(EDX)法、蛍光X線分析法およびX線光電子分光法(XPS)を併用してNaRuO2と決定された(以下の工程においても同様に決定した)。
この方法で得たNaRuO2粉末の粉末X線回折(XRD)パターンを図1(a)に示す。なお、XRDはローターフレックス型X線回折装置(株式会社リガク製、RINT2550H/PC)を用い、CuKα(グラファィト単色化、λ=0.15406nm)をX線源とし、管電圧40kV、管電流40mA、角送り速度2°min-1、測定範囲2θ=3〜80°で測定した。図1(a)から、本工程で得られたNaRuO2粉末には極微量の未反応Ru金属が残存していることが判る。
上記生成物の表面形態は、走査型電子顕微鏡SEM((株)日立ハイテクノロジーズS-300)によって観察した。試料は、導電性カーボン両面テープを用いて試料台に固定した(以下の実施例においても同様に生成物の表面形態を観察した)。NaRuO2のSEM像を図3(a)に示す。
生成物の熱分解過程は、熱重量法および示唆熱分析法TG-DTAにより評価した。メノウ乳鉢で粒径をそろえた粉末試料をアルミナパン(5φx2.5mm、5μl)に充填し、熱分析装置((株)リガク製、TAS-200)を用いて測定した。準空気流通下、室温から900℃まで5℃min-1の昇温速度で測定した。
工程(b):臭素処理によるNaRuO2のデインターカレーション
工程(a)で製造したNaRuO2粉末1.00gをパイレックス(登録商標)製三ツ口フラスコに取り、臭素(和光純薬工業製、特級99.0%)5.11gとアセトニトリル(和光純薬工業製、特級99.5%)100mlを加え、側管に栓をして室温25℃で5日間攪拌した。攪拌終了後、吸引濾過を行い、濾過ケークをアセトニトリル50mlで6回洗浄を行った。洗浄後のケークを24時間室温で真空乾燥した。その後再度、上記操作を繰り返して臭素処理を行った。2回目の乾燥粉末としてNaRuO2(0<n<1)0.88gを得た。
ぞれぞれ臭素処理1回目及び2回目の生成物NaRuO2(0<n<1)の粉末のXRDパターンを図1(c)及び(d)に示す。また、臭素処理2回目後のNaRuO2のSEM像を図3(c)に示す。更に臭素処理2回目後のNaRuO2のTG/DTA曲線を図4(b)に示す。150℃までの質量減少は表面付着水の消失に帰属され、150〜400℃での質量減少は層間水の消失に帰属される。400〜600℃の質量減少は以下の式のような脱水縮合反応によると推測される。
Ru-OH + Ru-OH → Ru-O-Ru + H2
これらの結果から、臭素処理(2回目)後の生成物の組成は、H0.1RuO2・0.1H2Oと決定された。
工程(c):臭素処理NaRuO2の水和物の製造
上記工程(b)で製造した臭素処理NaRuO2粉末0.50gに対し、イオン交換水150mlを加え、室温で15時間攪拌した。終了後、吸引濾過により沈殿物を回収した。これを室温で48時間乾燥し、臭素処理NaRuO2水和物0.513gを得た。
得られた臭素処理NaRuO2水和物について、XRDパターンを図1(e)に、SEM像を図3(d)に、そしてTG/DTA曲線を図4(c)に示す。150℃までの質量減少は表面付着水の消失に帰属される。150〜400℃の質量減少は層間水の消失に帰属される。400〜600℃の質量減少は脱水縮合反応に帰属される。
これらの結果から、臭素処理NaRuO2水和物の組成は、H0.1RuO2・0.3H2Oと同定された。
工程(d):テトラブブチルアンモニウムのインターカレーション
上記工程(c)で製造した臭素処理NaRuO2水和物粉末0.50gに10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(和光純薬工業製、特級)920mlを加え、60℃にて72時間攪拌した。室温まで放冷後、攪拌を止め、得られた黒褐色コロイドを沈降式遠心分離機(コクサン製、H−103N)のガラス製沈降管に入れ、回転数4000rpm(2900g)で30分間遠心分離し、沈殿物を回収した。沈殿物にヘプタン200mlを加え、洗浄し、再度遠心分離した。この洗浄−遠心分離操作を5回繰り返した。最後の上澄み液をデカンテーションで捨て、沈降管に残った沈殿物を室温で24時間真空乾燥して、テトラブブチルアンモニウム(TBA)−ルテニウム酸層間化合物〔(TBA)RuO2〕の黒色固体0.571gを得た。
(TBA)RuO2のXRDパターンを図2(b)に示す。この段階までは、まだ極微量ながら未反応のRu金属の混入が認められた。
(TBA)RuO2のSEM像を図3(e)に示す。
(TBA)RuO2のTG/DDTA曲線を図4(d)に示す。150℃までの質量減少は表面付着水の消失に帰属される。200℃付近の急激な発熱は層間アミンの消失に帰属される。層間アミンの消失が起こった温度範囲を150〜250℃とすると、この間の質量減少は16%であり、本工程の処理で層間のプロトンの16%がTBAイオンにゲスト交換したと推定される。250〜400℃の質量減少は層間水の消失に帰属され、400〜600℃の質量減少は脱水縮合に帰属される。
これらの結果から、(TBA)RuO2の組成式は(TBA)0.1RuO2・0.2H2Oと同定された。
工程(e):ルテニウム酸ナノシート(タイプ2)コロイドの製造
工程(d)で、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液から遠心分離して回収した沈殿物をヘプタンで洗浄した後、真空乾燥する代わりに、脱イオン水600mlを加えて、30分間超音波分散処理を施し、均一な黒褐色コロイドを得た。このコロイドを1600rpm(460g)で30分間遠心分離し、層間剥離していない元の層状ルテニウム酸や一旦層間剥離したルテニウム酸ナノシートの凝集物等を沈殿物として除去し、上澄み液としてルテニウム酸ナノシート(タイプ2)を含むコロイド600mlを得た。湿式重量分析によると、Ru濃度は0.46g/Lであった。
ルテニウム酸ナノシート(タイプ2)コロイドを無反射シリコン基板上にキャストして室温で乾燥させた膜のXRDパターンを図2(c)に示す。工程(d)における(TBA)0.1RuO2・0.2H2O粉末のXRDパターン(図2(b))で認められた微量のRu金属の混入に帰属されるピークは、本工程を経たルテニウム酸ナノシートコロイドにおいては検知されず、本工程において除去されたことが判る。
ルテニウム酸ナノシート(タイプ2)コロイドを脱イオン水で50倍に希釈した希釈コロイド水溶液のUV・可視吸収スペクトルを図5(a)に示す。UV・可視吸収スペクトルは、分光光度計(島津製作所製UV-2400PC)を用い、試料溶液を光路長10mmの石英セルに充填して900nm〜200nmの間をスキャン速度100nm/minで測定した。ルテニウム酸ナノシートの量子サイズ効果によるプラズモン吸収ピークがλmax346nmに検知された。
<実施例2>テトラブチルアンモニウム−ルテニウム酸(タイプ2)層間化合物の製造
工程(a):Na RuO の還元によるNaRuO2の製造
実施例1の工程(a)で用いたと同じ二酸化ルテニウム1.01gと過酸化ナトリウム(和光純薬工業製)0.78gとを、窒素ガス置換したドライボックス中で乳鉢で混合した。この混合粉末をアルミナ坩堝に入れ、環状炉に仕込み、アルゴン流通下627℃で50時間焼成して、NaRuOの黒色粉末1.79gを得た。
得られた黒色粉末を、実施例1の工程(a)で用いたと同じ金属ルテニウムの粉末1.01gと、窒素ガス置換したドライボックス中で混合し、アルミナ坩堝に入れ、アルゴン流通下197℃で12時間焼成し、更に900℃で12時間焼成した。生成したNaRuO2は、実施例1の工程(a)で得られたNaRuO2と同様なX線回折パターンを示す。また、ここで得られたNaRuO2粉末のSEM写真を図8に示す。
このNaRuO2粉末を用いて、以下、実施例1の工程(b)、(c)、(d)及び(e)と同様に処理して、Ru濃度0.47g/Lのルテニウム酸ナノシートコロイド600mlを得た。このコロイドの無反射Si基板へのキャスト膜のXRDは、図2(c)に示される実施例1の工程(e)で得られた(TBA)0.1RuO2・0.2H2Oと同様な回折パターンを示した。
<比較例1>NaRuO2・yH2Oの製造
実施例1の工程(a)で製造したNaRuO2粉末0.20gに対し、イオン交換水を500ml加え、室温25℃で3日間攪拌した。攪拌終了後、吸引濾過により沈殿物を回収し、室温で48時間乾燥し、NaRuO2・yH2Oを0.184g得た。
得られたNaRuO2・yH2OのXRDパターンを図1(b)に示す。このXRDパターンは、微量のRu金属ピークが検知される点を除いて、非特許文献3に記載されたNaRuO2・yH2OのXRDパターンに一致している。
上記NaRuO2・yH2OのSEM像を図3(b)に示す。
上記NaRuO2・yH2OのTG/DTA曲線を図4(a)に示す。150℃までの質量減少は表面付着水の消失に帰属される。150〜400℃の質量減少は層間水の消失に帰属され、400〜600℃の質量減少はルテニウム酸からルチル型RuO2への結晶構造の変化に伴うものと推定される。
これらの結果から、上記NaRuO2・yH2Oの組成式はNa0.3RuO2・0.2H2Oと決定された。
<比較例2>ルテニウム酸ナノシート(タイプ1)コロイドの製造
特許文献1の製法に従い、以下のように操作した。
工程(a’):K0.2RuO2.1・xH2Oの製造
2CO3(和光純薬工業製、特級99%)0.641gと、実施例1の工程(a)で用いたと同じニ酸化ルテニウムRuO2粉末1.01gとを混合し、混合物をアルゴンガス流通下850℃で12時間加熱焼成した。得られた固体を脱イオン水で濾液の電導度が100μS/cm以下となるまで洗浄した。65℃で16時間乾燥して、層状ルテニウム酸カリウムK0.2RuO2.1・xH2Oの粉末1.02gを得た。
工程(b’):H0.2RuO2.1・yHOの製造
工程(a’)で得たカリウム型層状ルテニウム酸1.00gに5%塩酸100mlを加え60℃で48時間攪拌した。冷却後濾過し、脱イオン水で濾液の電導度が100μs/cm以下となるまで洗浄した。このケークを65℃、16時間乾燥し、プロトン型層状ルテニウム酸H0.2RuO2.1・yHOの粉末0.92gを得た。
工程(c’):エチルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物の製造
上記工程(b’)で製造したプロトン型層状ルテニウム酸の粉末0.50gにアルゴン置換雰囲気で50%エチルアミン水溶液50mlを添加し、この混合物を室温25℃で24時間攪拌保持した。終了後スラリーを4000rpm(2900g)で30分遠心分離して濃縮し、最後に沈殿物にアセトン40mlを加えて洗浄し、再度遠心分離し、上澄み液を捨てた。沈殿物に再度アセトン40mlを加え、上記の洗浄工程を4回繰り返した。最後のアセトン洗浄の残渣を室温で24時間真空乾燥し、エチルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物(EtNH3 )0.2RuO2.1・0.3HO粉末0.53gを得た。
工程(d’)ルテニウム酸ナノシート(タイプ1)の製造
上記工程(c’)で製造したエチルアンモニウム−層状ルテニウム酸粉末0.50gに10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(和光純薬工業製、特級)870mlを加え、30℃にて50時間攪拌した。室温まで放冷後攪拌を止め、得られた黒褐色コロイドを回転数4000rpm(2900g)で30分間遠心分離し、沈殿物を回収した。沈殿物にヘプタン200mlを加え、洗浄し、再度遠心分離した。この洗浄・遠心分離操作を5回繰り返した。最後の上澄み液をデカンテーションで捨て、沈殿物に脱イオン水550mlを加えて30分間超音波分散処理を施し、均一な黒褐色コロイドを得た。このコロイドを1600rpm(460g)で30分間遠心分離し、未剥離成分や凝集物を除去した。上澄み液Ru濃度0.43g/Lのルテニウム酸ナノシートコロイド(タイプ1)550mlを得た。
上記工程(a’)、(b’)、及び(c’)でそれぞれ得られたK0.2RuO2.1・xH2O、H0.2RuO2.1・yH2O、および(EtNH3 )0.2RuO2.1・yH2Oの各粉末、並びに上記工程(d’)で得られたルテニウム酸ナノシート(タイプ1)コロイドの無反射シリコン基板へのキャスト膜のXRDパターンは、特許文献1及び非特許文献1のそれぞれ対応する工程の生成物のXRDパターンに一致した。
ルテニウム酸ナノシート(タイプ1)コロイドを脱イオン水で50倍に希釈した希薄コロイド水溶液のUV・可視吸収スペクトルを図5(b)に示す。実施例1のルテニウム酸ナノシート(タイプ2)コロイドのUV・可視吸収スペクトル(図5(a))とは異なり、プラズモン吸収はλmax362nmであり、(タイプ2)コロイドより15nm長波長側に出現した。
<比較例3>アルカリ金属型層状ルテニウム酸の鉱酸によるイオン交換
実施例1の工程(a)で得られたNaRuO2 粉末0.50gを用い、比較例2の工程(b’)と同様に、5%硫酸50mlを加え60℃で48時間攪拌した。冷却後濾過し、脱イオン水で濾液の電導度が100μs/cm以下となるまで洗浄した。このケークを65℃で16時間乾燥して、黒色粉末0.43gを得た。この粉末のSEM像を図9に示す。層状構造はもはや観察されず、微細な無定形粒子に分解していることが判った。この生成物の粉末法X線回折においては、図1(c)、(d)および(e)に見られるようなプロトン型層状ルテニウム酸の規則性回折ピークは検知されなかった。即ち、比較例2のK0.2RuO2.1の場合とは異なり、NaRuO2を鉱酸で処理すると層状構造が崩壊し、目的とするプロトン型層状ルテニウム酸は得られないことが判った。
<実施例3>電気化学的特性評価
(分散液作成法)
粉末試料の場合、試料10mgに脱イオン水10mlを加えて1時間超音波分散処理を行い、1.0g/Lの分散液を調製した。実施例1及び比較例2のルテニウム酸ナノシートコロイド溶液の場合はそのまま使用した。
(電極作成法)
非晶質炭素(以下GCと略す)(東海カーボン(株)製、GC-20SS、φ5mmx30mm)の切断面をNo.3000のエメリー紙(丸本工業(株)製)で乾式研磨して平滑化した。イオン交換水で、次いでエタノールで、約3分間超音波洗浄をそれぞれ2回繰り返し、その後乾燥して炭素担体とした。上記方法で調製した試料分散液をGC研磨面にマイクロピペッターで20μl滴下し、60℃で30分乾燥した。次いで5wt.%ナフィオン(登録商標)溶液(Aldrich製)を脱イオン水で5倍に希釈して得た1%ナフィオン(登録商標)溶液を20μl滴下して再度60℃で30分乾燥し、試験電極とした。
(電気化学的測定)
試験電極の電気化学特性をサイクリックボルタンメトリー(CV)で評価した。ビーカー式三極セルを用い、対極にPtメッシュ((株)ニラコ製、99.98%、150メッシュ)、参照極にAg/AgCl電極(東亜電波工業(株)製、HS-205C)を用いた。作用極である試験電極を試料担持面(見掛け表面積19mm)のみを残し全てテフロン(登録商標)テープで覆った。電解液として0.5M H2SO4水溶液を用いた。測定装置として、HZ3000システム及びHSV100システム(いずれもポテンショ/ガルバノスタット、ファンクションゲネレータ、及び測定ソフトを含む)(北斗電工(株)製)を用いた。測定前に25℃に保持した恒温槽中に測定セルを設置し、窒素ガス(岡谷酸素(株)製、99.99995%)を流して40分間バブリング置換して電解液中の溶存酸素を除去し、測定中もバブリングを継続した。最初に0.2〜1.2V対RHEの電位走査範囲を電位走査速度50mV/sで500サイクル走査して安定化処理を行った後、500、200、50、20、5、及び2 mV/sの電位走査速度でCV測定を行った。
比較例1のNa0.3RuO2・0.2H2O、実施例1のH0.1RuO2・0.3H2O、及び実施例1のルテニウム酸ナノシートコロイド(タイプ2)のサイクリックボルタモグラムを、それぞれ図6(a)、図6(b)、及び図6(c)に示す。
表1に、電位走査速度と比静電容量の関係を、また表2に、電位走査速度と比静電容量保持率の関係を示す。
Figure 0005070483
Figure 0005070483
比較例1のNa0.3RuO2・0.2H2Oから製造された電極の比静電容量は187F/g RuO2であるのに対し、実施例1の臭素処理後水和物H0.1RuO2・0.3H2Oの電極の比静電容量は435F/g RuO2(いずれも電位走査速度2mV/S時の値)であり、著しく増加した。実施例1では臭素処理により層間のNaイオンが除去され、プロトン導電性が上昇して静電容量が増加したものと推測される。またNa0.3RuO2・0.2H2Oから製造された電極は比静電容量保持率も低く、プロトン導電性が阻害されている。
実施例1のルテニウム酸ナノシートコロイド(タイプ2)電極の比静電容量は730F/g RuO2(電位走査速度2mV/S時)であり、実施例1の臭素処理後水和物H0.1RuO2・0.3H2O電極よりも更に比静電容量が増加した。層間剥離によりナノシート化されたことによりH0.1RuO2・0.3H2Oよりも活性面積が一層増加した為と推測される。また実施例1のルテニウム酸ナノシートコロイド(タイプ2)電極の比静電容量は、既報のルテニウム酸ナノシートコロイド(タイプ1)電極よりも1〜2割以上高い比静電容量を示した。ルテニウム酸ナノシートの厚みが薄くなってルテニウムの利用効率が向上したものと推定される。
図6(a)、図6(b)及び図6(c)の各サイクリックボルタモグラムから、Na0.3RuO2・0.2H2O、H0.1RuO2・0.3H2O及びルテニウム酸ナノシート(タイプ2)コロイドの電気二重層容量はそれぞれ57F/g RuO2、201F/g RuO2及び420F/g RuO2と読み取られた。
結晶性RuO2の単位表面積あたりの電気二重層容量を80μF/cm2と仮定すると、Na0.3RuO2・0.2H2O、H0.1RuO2・0.3H2O、及びルテニウム酸ナノシート(タイプ2)コロイドのそれぞれの活性表面積は70、250、及び525m2/g RuO2と計算される。
電気二重層容量以外に、電位0.6〜0.7V及び0.8〜1.0V(対RHE)にレドックスピークが観察された。このレドックスピークは、ルテニウム酸ナノシートの表面および裏面へのイオン種の吸脱着に起因するものと推定される。
(a)は、実施例1の工程(a)で得られたNaRuO2のX線回折(XRD)パターン;(b)は、比較例1で得られたNa0.3RuO2・0.2H2OのXRDパターン;(c)および(d)は、それぞれ実施例1の工程(b)において臭素処理1回後の生成物NaRuO2、および臭素処理2回後の生成物H0.1RuO2・0.1H2OのXRDパターン;そして(e)は、実施例1の工程(c)の臭素処理2回後の水和物H0.1RuO2・0.3H2OのXRDパターンである。 (a)、(b)、および(c)は、それぞれ実施例1における臭素処理H0.1RuO2・0.3H2O〔工程(c)〕、(TBA)0.1RuO2・0.2H2O〔工程(d)〕、およびルテニウム酸ナノシート(タイプ2)コロイド〔工程(e)〕のキャスト膜のX線回折(XRD)パターンである。 実施例1の工程(a)で得られたNaRuO2のSEM像である。 比較例1で得られたNa0.3RuO2・0.2H2OのSEM像である。 実施例1の工程(b)で得られた臭素処理H0.1RuO2・0.1H2OのSEM像である。 実施例1の工程(c)で得られた臭素処理後の水和物H0.1RuO2・0.3H2OのSEM像である。 実施例1の工程(d)で得られた(TBA)0.1RuO2・0.1H2OのSEM像である。 比較例1で得られたNa0.3RuO2・0.2H2OのTG/DTA曲線である。 実施例1における臭素処理2回後の生成物H0.1RuO2・0.1H2O〔工程(b)〕のTG/DTA曲線である。 実施例1における臭素処理2回後の水和物H0.1RuO2・0.3H2O〔工程(c)〕のTG/DTA曲線である。 実施例1における(TBA)0.1RuO2・0.1H2O〔工程(d)〕のTG/DTA曲線である。 実施例1の工程(e)で得られたルテニウム酸ナノシートコロイドのUV・可視吸収スペクトルである。 比較例2で得られたルテニウム酸ナノシートコロイドのUV・可視吸収スペクトルである。 比較例1に係るNa0.3RuO2・0.2H2Oを用いた電極の2, 5, 20, 50, 200及び500mV/s走査時のサイクリックボルタモグラムである。 実施例1に係るH0.1RuO2・0.3H2Oを用いた電極の2, 5, 20, 50, 200及び500mV/s走査時のサイクリックボルタモグラムである。 実施例1に係るルテニウム酸ナノシート(タイプ2)を用いた電極の2, 5, 20, 50, 200及び500mV/s走査時のサイクリックボルタモグラムである。 (a)は、実施例1のH0.1RuO2・0.3H2Oを用いた電極(□)、実施例1のルテニウム酸ナノシート(タイプ2)コロイドを用いた電極(○)、および比較例1のNa0.3RuO2・0.2H2Oを用いた電極(△)の、サイクリックボルタメトリー評価における電位走査速度と比静電容量との関係を示すグラフ;そして(b)は、実施例1のH0.1RuO2・0.3H2Oを用いた電極(□)、実施例1のルテニウム酸ナノシート(タイプ2)コロイドを用いた電極(○)、および比較例1のNa0.3RuO2・0.2H2Oを用いた電極(△)の、電位走査速度と比静電容量保持率との関係を示すグラフである。 実施例2の工程(a)で得られたNaRuO2のSEM像である。 比較例3で得られたNaRuO2硫酸処理生成物のSEM像である。

Claims (16)

  1. :[RuO2x―(0<x<1)で表されるルテニウム酸ナノシート。
  2. 0.4nm以下の厚みを有する、請求項1に記載のルテニウム酸ナノシート。
  3. 請求項1又は2のルテニウム酸ナノシートが積層して形成される層状ルテニウム酸化合物の層間にアルキルアンモニウムイオンを含むアルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物。
  4. X線回折図形において(00L)の各面(但し0≦2θ(CuKα)≦90°の範囲においてL=1〜nでありnは基本面間隔によって決まり5≦n≦35を満たす)に回折ピークを有する請求項に記載のアルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物。
  5. 請求項1若しくは2のルテニウム酸ナノシートおよび/または請求項3若しくは4のアルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物と、溶媒とからなるコロイド。
  6. 上記溶媒が、水、アルコール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびプロピレンカーボネートよりなる群から選択される少なくとも1種である請求項記載のコロイド。
  7. UV・可視吸収スペクトルにおいて吸収極大を340―350nmの領域に有する請求項5または6記載のコロイド。
  8. 請求項1若しくは2のルテニウム酸ナノシートおよび/または請求項3若しくは4のアルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物を含む電極を有する電気化学素子。
  9. 請求項5〜7のいずれか1項記載のコロイドを用いて製造される電極を有する電気化学素子。
  10. 下記工程(a)〜(e):
    (a)IV価以上の原子価の酸化ルテニウムとアルカリ金属化合物の混合物、またはIV価以上の原子価のルテニウム酸のアルカリ金属化合物を、金属ルテニウム粉末と混合し、得られた混合物を焼成または溶融することによって、III価のルテニウムを含むアルカリ金属型層状ルテニウム酸化合物を得る工程、
    (b)前記アルカリ金属型層状ルテニウム酸化合物を臭素溶液で処理し、層間のアルカリ金属イオンの少なくとも一部を除去してプロトン型層状ルテニウム酸を得る工程、
    (c)前記プロトン型層状ルテニウム酸を水和処理してプロトン型層状ルテニウム酸水和物を得る工程、
    (d)前記プロトン型層状ルテニウム酸水和物にアルキルアンモニウム化合物および/またはアルキルアミンを反応させてアルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物を得る工程、及び
    (e)前記アルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物を溶媒と混合し分散させて、層間剥離したルテニウム酸ナノシートコロイドを得る工程
    を含む、請求項1記載のルテニウム酸ナノシートの製造方法。
  11. 前記工程(a)で得られるアルカリ金属型層状ルテニウム酸化合物が0.4nm以下の厚みを有する請求項10記載の製造方法。
  12. 前記工程(a)で得られるアルカリ金属型層状ルテニウム酸化合物がNaRuO2である請求項10又は11記載の製造方法。
  13. 前記工程(b)が、臭素のアセトニトリル溶液による処理である請求項10〜12のいずれか1項記載のルテニウム酸ナノシートの製造方法。
  14. 前記工程(d)が、プロトン型層状ルテニウム酸水和物に、構造式:(R)(R’)(R’’)(R’’’)NH4-(m+n+p+q) (式中、R、R’、R’’およびR’’’は夫々独立にHまたはCH3(CH2)を示し、ここで(R) (R’) (R’’) (R’’’) は少なくとも1つのCH 3 (CH 2 ) を有し、m、n、p及びqはそれぞれ0または1〜4の整数で、且つ0≦m+n+p+q≦4を満たし、そしてr=0〜18の整数である)で表されるアルキルアンモニウムイオンを有するアルキルアンモニウム化合物を反応させる工程である請求項10〜13のいずれか1項記載のルテニウム酸ナノシートの製造方法。
  15. 前記工程(d)が、プロトン型層状ルテニウム酸水和物に、構造式:(R)(R’)(R’’)NH3-(m+n+p)(式中、R、R’およびR’’は夫々独立にHまたはCH3(CH2)を示し、ここで(R) (R’) (R’’) (R’’’) は少なくとも1つのCH 3 (CH 2 ) を有し、m、n及びpは0または1〜3の整数で、且つ0≦m+n+p≦3を満たし、そしてq=0〜18の整数である)で表されるアルキルアミンを反応させる工程である請求項10〜13のいずれか1項記載のルテニウム酸ナノシートの製造方法。
  16. 前記工程(e)が、アルキルアンモニウム−層状ルテニウム酸層間化合物を、水、アルコール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびプロピレンカーボネートよりなる群から選択される少なくとも1種の溶媒と混合してコロイドを得る工程である請求項10〜15のいずれか1項記載のルテニウム酸ナノシートの製造方法。
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