本発明は、類似パターンが繰り返し配置された構造を有する試料に対し、指定された番地に対応するパターンを荷電粒子装置内で検索する技術に関する。
半導体デバイス製造工程では、半導体デバイス内の不良ないし欠陥を検出し、不良原因を解析する技術が重要である。欠陥検出に使用される検査装置としては、回路の電気特性の検査装置、配線パターンに存在する異物や配線パターンの形状不良などを検査する外観検査装置などがある。これらの検査装置で検出された欠陥から、不良原因解析に用いられる欠陥がピックアップされ、解析対象となる欠陥箇所の被検査試料上における位置情報が解析装置に伝達される。解析装置では、指定された不良箇所の電気特性測定、組成分析、断面形状観察などが実施される。
通常、検査装置で用いられる試料ステージの位置設定精度は数マイクロメートル程度である。近年の半導体デバイスの配線パターンは非常に微細化されており、例えば、現在量産レベルにあるメモリデバイスのメモリセルブロックの大きさは、凡そ数100 ナノメートルである。従って、検査装置で発見された欠陥位置の座標情報を他の装置に伝達する場合、検査装置の試料ステージの位置制御情報のみを伝達しても、欠陥位置の座標情報を必要な精度で伝達することは困難である。
多くの半導体デバイスの配線パターンや回路パターンは、同じような構造のセルが、設計データに従って規則的に配列されたアレイ構造を備えている。各種の計測、検査装置において、設計データはCADデータの形で利用可能である。そこで、検査装置で発見された欠陥を各種解析装置で解析する場合、検査装置で取得した欠陥位置の座標情報に加えて、当該位置が設計データ上でどの位置に該当するかという情報をCADデータから取得する。各種解析装置は、解析試料上の適当な参照位置を始点として選択して、当該参照位置がCADデータ上でどの位置に該当するかのマッチングをとり、かつ解析目標の位置が参照位置からどの程度離れているかという情報を取得する。参照位置としては、例えば、半導体デバイスのアレイ構造の端等が選ばれる。この際、解析装置は、与えられた始点位置から終点位置までセル数をカウントしながら終点位置に到達する。この際に、始点位置から終点位置まで、所定のパターンが何回現れるかを計測するパターン計測(セルカウント)が必要となる。パターン数が比較的少ない場合は、オペレータの目視によるパターン計数も可能であるが、セル数が数百、数千に及ぶ現在のデバイスではパターン計数の自動化が強く求められる。
特開平10-92883には、光学写真や電子顕微鏡などにより対象箇所の画像を取得し、パターン認識により画像の輝度または明度の変化からメモリLSI上のメモリセル数を計数する技術が開示されている。パターン認識装置は、セルカウントの終点情報を物理アドレス情報として保持し、メモリセル数の計数値と前記物理アドレスに示される値が一致した箇所でメモリセル計数を終了する。そして、当該計数の終了した位置を、メモリLSIの設計図面上の座標である論理アドレスとして判断する。
また、特開2000-251824には、セルカウントの始点から目標点に向かって、ステージの移動ベクトルを検出しながらSEM画像の視野を移動していく発明が開示されている。ステージの移動距離が電子ビームの偏向限界に達した場合には、一旦ステージを停止し、再び、その位置での観察視野内のセル配置個数情報が抽出される。抽出されたデータに基づき、各セルの配置に関する相互位置関係が特定され、再度、SEM画像の視野移動を繰り返す。このような動作を多段に繰り返すことにより、指定の目標セルがSEM画像の視野内に移動されるようにする。試料ステージ移動ベクトルは、ある1つのセルを指標基本パターンとして指定し、試料ステージの移動前後における指標基本パターンのSEM像視野内での相対的な移動状況から取得する。指標基本パターンのSEM像視野内での相対的な移動状況は、試料ステージの移動前後のSEM像の差画像から求める。
特開平10-092883号公報
特開2000-251824号公報
従来のセルカウントの問題点について、図1を参照しながら説明する。図1は、複数のプラグが規則的に配列された半導体装置の顕微鏡画像を示す模式図である。丸がプラグを示す。従来のセルカウントにおいては、セルカウントを行う領域のエッジ101,102で囲まれた全領域内で適当な基準パターン100を任意間隔で移動しながらパターンマッチングを行い、基準パターンと一致する領域が何個あるかを数え上げることにより、セルカウントを行っていた。基準パターンの設定に際しては、カウントするセルが格子状に配列されていることを前提としていた。
しかし、実際カウントするメモリセルの配列は、必ずしも正方格子状ではなく、セルが斜めに配列された配列パターンや、複数の繰り返しパターンが入れ子構造になって現れる複雑な配列パターンも存在する。従って、従来のセルカウントやビットカウントの技術で、このような複雑なパターンのセルカウントを行うと、パターンマッチングが複雑になり、セルカウントないしビットカウントを実行する計算機の負担が大きくなるという問題がある。また、従来のセルカウントは、始点と終点を含む全領域でパターンマッチングを実行する必要がある点が問題である。始点と終点の距離が離れていると、カウントするべきセル数が増えるため、やはり計算機の負担が大きくなる。
そこで、本発明においては、セルカウント/ビットカウントの際に、単位ベクトルという概念を導入して、計数を実行する試料に応じて、パターンの繰り返し単位を自由に設定できるようにすることにより、従来の課題を解決する。ここで、「単位ベクトル」とはセルカウントの際の始点と終点の番地を表すための座標系の指定単位のことであり、大きさと方向を持っているため、本明細書では単位ベクトルと称している。以下、単位ベクトルについて、図2を用いて説明する。
図2は、半導体デバイスのプラグ形成面の一部を拡大した模式図である。丸がプラグに該当する。(a,b)が単位ベクトルであり、セルカウントの際の繰り返し単位となる。単位ベクトルが変わると、当該単位ベクトルで表現される各セルの番地が変わる。例えば、単位ベクトルを図2(A)に示される(a,b)のように選んだとすると、終点の番地は(4,3)と表現される。ここで、座標軸の正負は、単位ベクトルa,bの矢印の向きが正、矢印とは逆の向きが負の方向であると定義している。一方、単位ベクトルを図2(B)に示されるように選んだ場合、終点の番地は(4,6)と表現される。
本発明では単位ベクトルに基づいて検出予測領域を設定する。検出予測領域とは検出パターンが存在すると予測される領域である。検出予測領域は始点から単位ベクトルの整数倍離れた点を中心にした領域として設定する。各検出予測領域には単位ベクトルの整数倍に対応した番地が付けられている。検出予測領域内で検出されたパターンがその番地のセルと判断される。
なお、検出予測領域内でパターンが検出された場合は正検出、検出予測領域外でパターンが検出された場合は誤検出、検出予測領域内でパターンが検出されなかった場合は検出落しと分類し、それらの位置情報を記録しておく。記録された誤検出と検出落としの位置情報を解析することにより、パターンマッチングの際に発生した誤差を修正することが可能となる。
セルカウント/ビットカウントの際の単位ベクトルという概念を導入し、パターンの繰り返し単位を装置ユーザーが自由に設定できるようにすることにより、以下の効果が得られる。1つはセルカウント/ビットカウント時間の短縮である。始点と終点の間にある全領域でパターンマッチングを実行するより、検出予測領域のみでパターンマッチングを実行した方がパターンマッチング時間を短くできる。更に、全てのセルを検出するのではなく、例えば図2に示した補助線と重なる検出予測領域のみでパターンマッチングを実行することによって、パターンマッチング時間を更に短くすることができる。もう1つはパターンマッチング結果判定機能を追加できることである。パターン検出位置と検出予測領域との比較から検出落としや誤検出などを抽出し、パターン計数が仕様とおりに実施されているかを判断することができる。これによって終点つまり不良箇所の特定精度が大幅に向上する。
以上、検査装置等で検出された半導体デバイス上の不良箇所を、解析装置や分析装置などの別装置上で、高精度、高速かつ安定に特定することが可能となった。
本実施例では、単位ベクトルを用いてセルカウントまたはビットカウントを行う際の基本概念について、図を用いて説明する。
図3は、本実施例のセルカウントを実行する際の基本的な流れを示したフローチャートである。最初に、ステップ301で、セルカウントを行うべき対象箇所の画像が取得され、画面に表示される。画像としては、SEM、TEM等の電子線画像の他、光学顕微鏡像等、いかなる方法で取得したものであっても良い。取得画像の典型例としては、例えば、図2(A)、(B)に示したような半導体試料が該当する。
次のステップ302では、セルカウントに必要なセルカウント情報が設定・入力される。ここで、「セルカウント情報」とは、セルカウントに必要な始点(0,0)の位置、終点の番地、単位ベクトル、基準パターンを含む情報であり、本実施例では、全て装置ユーザーにより入力されるものとする。ステップ302が実行された後の表示画面が、例えば図2(A)に相当する。単位ベクトルa,b、始点、終点及びパターンマッチングの際の基準パターンを示す図形情報200が、画面上に表示されている。単位ベクトルa,bに重ねて示した直線は補助線であり、原理的には無くとも良いが、あった方が表示されたセルパターンに最適な単位ベクトルを選択する上で、視認性が向上する。
次のステップ303で、検出予測領域が設定される。検出予測領域とは検出パターンが存在すると予測される領域である。単位ベクトルを用いることにより、検出予測領域は始点から単位ベクトルの整数倍離れた点を中心にした領域として設定することができる。各検出予測領域には単位ベクトルの整数倍に対応した番地が付けられている。個々の検出予測領域の大きさは、パターンマッチングの位置検出精度よりも大きく、単位ベクトルよりも小さく設定する必要がある。パターンマッチングが実行される領域を検出予測領域に限定するとパターンマッチング時間が短縮される。パターンマッチングを実行する検出予測領域を、例えば図2に示した補助線と重なる検出予測領域のみに限定すると、パターンマッチング時間を更に短くすることもできる。検出予測領域の限定は、例えば、画面表示された検出予測領域の端点をマウスで指定するなどの方法により設定する。端点の座標情報を入力しても良いが、GUI上で設定入力できたほうが操作性が良い。なお、検出予測領域の限定は必ずしもユーザーにより入力されるものとは限らず、予め設定された値に従って、装置側が自動的に設定してもよい。
図4には、図3のステップ303が実行された後の表示画面に表示されるSEM画像を示す。白抜きおよびハッチングを付された丸はセルを意味する。401はセルカウントを開始する始点セルを示す。a,bは、設定された単位ベクトルを意味し、四辺形 402は、パターンマッチングの際の基準パターンを意味する。始点と単位ベクトルから生成される検出予測領域のうち、今回はハッチングされた検出予測領域を選択した。補助線405,406と終点座標(4,3)を通る補助線405’,406’に囲まれた領域にあるセルと、それに隣接するセルである。
図2のステップ304では、設定された情報に基づいてパターンマッチングが実行される。検出予測領域内を基準パターンでサーチし、一致度が最も高くなる位置を検出パターンの位置と特定する。
図3のステップ305ではセルカウントが実行される。検出パターンの位置情報と検出予測領域の比較から、正しく検出されたセルを抽出する。抽出されたセルで計数を実施し、終点のセルを特定する。
次に、より複雑なパターンに対してセルカウントを実行した実施例について説明する。試料によっては、セルカウントの対象となるパターンが、クラスタ構造や入れ子構造など、図4のような単純な格子配列ではないパターンの場合がある。
図5(A)には、パターンがクラスタ構造を持っている場合の模式図を示した。ここで、クラスタとは、複数のセルが集まって特定のパターンを形成し、更に、当該特定パターンが周期的に繰り返して配列されたような形状のパターンを意味する。この場合、単位ベクトルとして、クラスタの周期を表現するための単位aと、クラスタ内のパターンを表現するための単位(b,c)の2つを指定する。この場合、図5(A)に示される各パターンの座標は、(a,b,c)で表現することができる。例えば、始点(1)が含まれるクラスタにおいて、始点(1)(0,0,0)対して単位ベクトルb方向に1つ隣のセルは(0,1,0)と、単位ベクトルc方向に1つ隣のセルは(0,0,1)と表現される。
パターンマッチングをしながらセルカウントを実行する際には、まず、補助線502(つまりaベクトル)の方向にカウントを進め、所定のカウント数だけ進んだところでクラスタ単位でのセルカウントを終了する。ベクトルa方向に何カウント進むかという情報は、予めCADデータ上の終点情報と設定したa方向の単位ベクトルの大きさから計算する。次に、到達したクラスタ内で適当な始点(例えば図5(A)中の始点(2))と検出予測領域505が設定され、当該位置を基点としてクラスタ内でのセルカウントが実行される。クラスタ内でのセルカウントは、補助線503,504に沿った方向に実行され、最終的に終点(2,3,1)が検出される。始点(1)(0,0,0)から終点(2,3,1)に至るセルカウントの経路は矢印506で示した。なお、以上の説明では、単位ベクトルを1つだけ使ってクラスタの周期を指定した例について説明したが、クラスタ自体の基準パターンを指定してセルカウントを実行してもよい。その場合には、クラスタの基準パターンを例えば単位ベクトル(a,b)で、クラスタ内の位置を単位ベクトル(c,d)等の要領で指定すればよい。
図5(B)には、セルカウント対象パターンが、2種類のパターン(1)、(2)が入れ子になった構造を持っている場合の模式図を示した。この場合、2種類の単位ベクトル(a,b)、(c,d)と基準パターン間の相対位置ベクトルeを入力すれば、入れ子構造のパターンを表現することができる。実際にセルカウントを実行する際には、まず、指定した単位ベクトル(a,b)に基づき適切な検出予測領域501を設定し、始点(1)(0,0)から検出予測領域501に向かって縦横の補助線方向に基準パターンを移動しながらセルカウントを実行する。ここで、パターン(1)に対する補助線は実線で示した。検出予測領域501に到達したところで、基準パターンとのパターンマッチングを実行しパターン(1)の終点検出を行う。検出された終点(終点(2)(2,3))が妥当であった場合には、パターン(1)の終点から相対位置ベクトルeによって指定される位置をパターン(2)の始点(2)(0,0)と設定する。そして、単位ベクトル(c,d)とCADデータ上の終点(1)の情報に基づき、パターン(2)に対する検出予測領域502を設定する。パターン(1)と同様に、始点(2)(0,0)を開始点としてセルカウントを実行し、検出予測領域に到達したところで終点検出を実行する。以上、単位ベクトルを指定して、複雑な構造のパターンも表現した例について説明した。このような複雑なパターンを備えた試料としては、例えば、マイコンやロジック系の半導体デバイスなどがあげられる。
なお、図示はしていないが、画像取得手段と、当該画像取得手段を表示するための画像表示手段、画像取得手段により取得された画像情報に対して図2に示すフローを実行するための演算処理手段、当該演算処理手段に対して、演算に必要な情報を伝達するための情報入力手段あるいはそのような情報を格納しておく記憶手段などの構成要素を備えた装置であれば、本実施例で説明したセルカウントを実行できる。
以上、本実施例のセルカウント手法により、従来よりも使い勝手が良くかつ高精度で、計算機負荷も少ないセルカウントが実現できる。
本実施例では、実施例1で説明したセルカウント手法を探針接触式の電気特性評価装置(ナノ・プローバ:登録商標)へ適用した構成例について説明する。まず、図6に、ナノ・プローバの全体図を示す。ここで、「ナノ・プローバ」とは、微細な回路パターンの電気特性を、ナノスケールで測定可能な電気特性評価装置であり、微小な探針を回路パターンに直接接触させることにより電気特性を測定する装置である。従って、プローブを被検査試料上の被接触箇所に蝕針させる際にセルカウントによる蝕針位置検索を行うことで、装置の操作性が向上する。なお、以下の記載において「プローブ」とある場合には、機械的な探針すなわちメカニカルプローブのことを意味するものとする。
初めに、不良検査の対象となる試料603を観察するための電子光学系について説明する。電子光学系は、1次電子線601を試料603上で照射かつ走査するための照射光学系610と、電子線照射により発生する二次荷電粒子を検出するための結像光学系により構成される。照射光学系610は、1次電子線を発生する電子銃611、1次電子線を成形するコンデンサレンズ612、613、1次電子線の開き角を制限する絞り614、1次電子線を試料603上で走査するスキャン偏向器615、1次電子線の試料603上での位置を変化させるイメージシフト偏向器616,1次電子線を試料603上に集束させる対物レンズ617などで構成される。1次電子線601の照射によって試料603から発生した2次電子602は、2次電子検出器618などにより検出される。スキャン偏向器615に送られる走査信号と電子線検出器618で検出される2次電子線検出信号を同期させることにより、試料603の2次電子像が得られる。
次に、駆動系に付いて説明する。試料603は試料台624上に保持され、試料台624は試料台駆動手段623に保持されている。試料台624と試料台駆動手段623を合わせてDUTステージと称される。試料603の電気特性を測定するためのメカニカルプローブ627はプローブ用アタッチメント626に保持されており、プローブ用アタッチメントはプローブ駆動手段625に保持されている。DUTステージとプローブ駆動手段625とは、大ステージ622上に形成されている。大ステージ622は、x、y(面内)、z(垂直)方向への駆動手段を備えており、DUTステージとプローブ駆動手段625とを一体的に駆動することができる。大ステージ622は、さらに、ベース621上に配置される。これらの駆動系は真空チャンバ隔壁620内にあり、真空中で駆動する。
次に、電気特性測定系に付いて説明する。試料603は試料台624を介して、プローブ627はアタッチメント626を介して電気特性計測器628に接続されている。プローブ627を試料603に触針させ、試料603の電流−電圧特性を計測し、そこから所望の特性値を算出する。例えば、メカニカルプローブ627の触針箇所の抵抗値や電流値、電圧値などを算出する。半導体ウェハの解析の場合には、電気特性計測器628として、例えば半導体パラメータアナライザが用いられている。電気特性計測器628の測定結果は制御コンピュータ630へ伝達され、更に高次の解析に使用される。
次に制御系について説明する。制御系は、電子光学系や駆動系の制御動作を実行するための系であり、電子銃611の駆動電圧を供給する電子銃制御電源611'、同様にコンデンサレンズ612の駆動電圧を供給するコンデンサレンズ用制御電源612'、絞り614の開口径を制御する絞り制御装置614'、スキャン偏向器615へ走査信号を供給する偏向器制御装置615'、イメージシフト偏向器616へ偏向信号を供給するイメージシフト偏向器制御電源616',対物レンズ617の駆動電圧を供給する対物レンズ制御電源617'、二次電子検出器で検出された検出信号の制御コンピュータへの伝達をオン・オフする二次電子検出器制御装置618'、大ステージ622へ位置制御信号を伝達する大ステージ制御手段622'、試料台駆動手段623へ位置制御信号を伝達する試料台駆動手段623'、プローブ駆動手段625へ制御信号を伝達するプローブ駆動手段制御手段625'などで構成される。
制御コンピュータ630は、不良解析装置全体の制御を行なう。そのため、上述の電子銃制御電源611'、コンデンサレンズ用制御電源612'、絞り制御装置614'、偏向器制御装置615'、イメージシフト偏向器制御電源616',対物レンズ制御電源617'、二次電子検出器制御装置618'、大ステージ制御手段622'、試料台駆動手段623'、プローブ駆動手段制御手段625'は全て制御コンピュータ630へ接続されている。また、制御コンピュータ630は、接続された各構成部品を制御するソフトウェアを格納するための記憶手段635と、ユーザーが装置の設定パラメータを入力するためのユーザーインターフェース637、各種の操作画面やSEM像を表示するための表示装置636を備える。更に、複数の画像処理部631-633、被検査試料の配線レイアウトのデータ(以下、CAD像データと称する)を格納し、当該配線レイアウトのデータを適当な参照情報に応じて出力するCADナビシステム634を含む。
次に、図6に示した装置において、セルカウントがどのように実行されるかの詳細について説明する。
まず、図7の全体フローについて説明する。図7に示したフローチャートは、アライメントフロー、条件設定フロー、実行フローの3つに大きく分けられる。
アラインメントフロー部は主に電子光学系の光軸調整を行うフローであり、試料を装置に挿入し、SEM像を観察しながら試料ステージを用いて鏡体内の試料位置を調整するステップ1と、SEM像を観察しながら電子光学系の軸ずれ、非点、焦点を補正するステップ2とからなる。アライメント工程の後、条件設定フロー部が開始される。
条件設定フロー部は、セルカウントに必要な諸条件を設定するフローである。ステップ3では、DUTステージまたは大ステージ622が動作し、セルカウントの始点を含む所望領域がSEM画像の視野内に収まるように試料が移動される。ステップ4では、パターン計数に用いるアレイ構造像の撮影条件、基準パターン像、始点(0,0)の位置、単位ベクトル、終点の番地を設定する(ステップ4)。始点の番地位置と始点の番地は、CADナビシステムにより供給される配線レイアウト上で設定してもよいし、ユーザーインターフェース637を介して実際に取得されたSEM画像上で設定してもよい。パターン計数の始点位置特定に必要なデータを記録する(ステップ5)。ステージ位置設定誤差測定に用いるアレイ構造像の撮影条件と解析可能な位置ずれ量を設定する(ステップ6)。終点の番地と終点近傍で実行する解析もしくは加工手順を設定する(ステップ7)。
ステップ3からステップ7が一通りの設定手順である。必要な数の条件を入力した後、実行工程に進む。ステップ5で入力された条件を呼び出し、パターン計数の始点を特定する(ステップ8)。ステップ4で入力された条件を呼び出し、パターン計数を実施する(ステップ9)。終点に達するまでイメージシフト偏向器で視野を移動させながら順次アレイ構造像を撮影し(ステップ10)、パターン計数を継続する。イメージシフト偏向器の可動範囲を超える場合は、試料ステージ移動によってイメージシフト偏向器の制御値変化を相殺した後(ステップ11)、イメージシフトによる視野移動を継続させる。終点に到達したら、ステップ7で入力された条件を呼び出し、指定された解析もしくは加工を実施する(ステップ12)。ステップ8からステップ12が一通りの実行手順である。入力された条件を全て実行した後、終了する。
次に、各ステップの詳細を説明する。最初に、ステップ1の試料位置調整工程を、図8を用いて説明する。試料603を試料台装置624に設置し、大ステージ622を用いて試料室に挿入する。まず、低倍率のSEM像で試料を確認し、電子ビーム照射系610の光軸に対する大ステージ622の位置を調整する。大ステージ位置調整の際、プローブ駆動手段、試料台移動手段、イメージシフト偏向器などの制御値はresetにしておいたほうが良い。次に、電子ビーム照射系610光軸に対するプローブの位置を調整する。使用する全てのプローブがSEM視野内に含まれる様にプローブ駆動手段625を調整し、プローブ駆動手段625の制御値を記録する。次に電子ビーム照射系610光軸に対する試料603の位置をDUTステージで調整する。この時、DUTステージ制御系623’とCADナビシステム634とのリンクも実施する。最近の検査・解析装置では、デバイス構造のレイアウトデータ(CADデータ)が格納されたCADナビシステムが装備されている。CADナビシステムに観察箇所の情報を入力すると、観察箇所を含むSEM像が表示される様に試料ステージが制御される。このシステムを利用するには、試料603上に配置された複数のアライメントマークを使用し、試料台624に試料603を設置する際の位置設定誤差を修正する必要がある。
ステップ2の電子光学系の調整は、電子光学系調整用パターンがSEM像内に含まれる様にDUTステージを制御し、調整用パターンを観察しながら実施する。これらの調整は制御ソフトによって自動的に実施することも可能である。また、ステップ1の途中で実施しても良い。
ステップ3における試料移動ではCADナビシステムを利用する。CADデータ上での始点の位置を入力し、SEM像視野内に始点が含まれるようDUTステージを制御する。CADナビシステムが利用できない装置では、ユーザーがDUTステージを調整し、始点がSEM像視野内に含まれる位置まで試料を移動させる。この場合において、始点がSEM像視野の左上に位置するようにDUTステージを移動させると視認性がよい。
次に、図7のステップ4(パターン計数の条件設定ステップ)の詳細を図9を用いて説明する。まずアレイ構造像を撮影する。基準パターンは撮影されたアレイ構造像から作成しても良いし、予め記録された基準パターン像を呼び出しても良い。次に単位ベクトルの初期値を入力する。単位ベクトルの初期値はアレイ構造を観察しながら指定しても良いし、CADデータとアレイ構造像の撮影倍率から計算した値を用いても良い。入力された初期値は単位ベクトル校正システムを用いて修正可能である。単位ベクトル校正システムの詳細については、実施例4で説明する。次に、アレイ構造における始点の位置と番地を入力し、検出予測領域を求める。次に、パターン検出システムに基準パターン、検出予測位置とアレイ構造像を入力し、パターン位置検出を実施する。検出予測位置と検出位置の比較から、正検出、検出落し、誤検出などのパターン検出結果を求める。検出落しや誤検出の発生件数が特に多い(所定の閾値よりも多い)場合には、発生件数やそれに類する情報が画面表示される。画面表示の要否を判断するための閾値は、記憶手段635内に格納され、制御コンピュータ630により参照される。パターン検出結果が所定の条件を満たしていない場合は、パターン計数条件を調整し、再度検証する。検出結果が所定の条件を満たしていれば、パターン計数条件を記録する。
ステップ5では、パターン計数の始点位置特定に必要なデータを記録する。パターン計数の始点が含まれるアレイ構造像をステップ4で撮影していれば、それを利用しても良い。アレイ構造像内の始点の座標、アレイ構造像の撮影条件、DUTステージ制御値、イメージシフト偏向器制御値をアレイ構造像と共に記録する。
ステップ6では、ステージ位置設定誤差計測に用いる画像撮影条件と解析可能な視野ずれ解析量を設定する。レシピがあればそれを参照し、画像撮影条件と視野移動量を入力する。その条件でステージ位置設定誤差計測が可能か否かを検証するフローを図10に示す。視野移動前のアレイ構造像を撮影する。イメージシフト偏向器を用いて視野を移動させた後、アレイ構造像を撮影する。イメージシフト偏向器は位置設定精度が高いので、視野移動前後の視野ずれ量はイメージシフト偏向器の制御値からもとめることができる。視野ずれ量既知の画像ペアを視野ずれ解析システムに入力し、視野ずれ量が解析できるか否かを検証する。解析可能と判断されれば、画像撮影条件と視野ずれ量を記録する。解析不能と判断された場合は、条件を変更し、再び検証を行なう。
ステップ7にて終点の番地と終点近傍で実施する解析手順を入力する。メカニカルプローブを用いた電気特性評価装置では、プローブの接触箇所の指定と測定すべき電気特性の入力を行なう。プローブの接触に際しては、CAD像とSEM画像を対比させて接触動作を行う。図16(A)にCAD像の一例を示す。1600はウェハ試料、1601はプラグであり、点線で囲まれた領域は配線を示す。図16(A)では、横方向の配線1602〜1604と、当該横方向の配線1602〜1604間を接続する縦方向配線1605を分けて示した。また、プラグは各配線上に複数個形成されている。
各配線は試料内部の構造であり、SEM像から観察することは出来ない。表面に露出したプラグ1601にプローブを接触させ、電気特性測定することにより断線などを診断する。CADナビシステムに診断すべき配線を入力し、測定すべきプラグを出力させ、それらのプラグが含まれるCAD像を表示させ、プローブを接触させる位置、電気特性の測定手順をCAD像上で入力する。プローブを接触させる位置もしくはその近傍のプラグからセルカウントの終点とするプラグを選択する。ここでは図16(A)に示すプラグ1601を終点位置として選択した。ステップ4で入力したCADデータ上で始点の位置と番地、単位ベクトルに基づいて、終点の番地が計算される。
ステップ3〜7で一通りの条件設定が終了する。別の条件を入力する必要がなければ、条件設定を終了する。
ステップ8からは実行工程になる。まず、ステップ5で記録された条件を呼び出し、SEM像視野内に始点が含まれるように試料ステージを調整する。ステップ8には図11に示すイメージシフト調整と試料ステージの調整フローが含まれるが、この詳細は後述する。
ステップ9からステップ11で、SEM像の視野(FOV:Field of View)を移動させながら始点から終点までのセルカウントを実施する。図13にはSEM像の視野が、第1のFOV1301から第2のFOV1302を介して第3のFOV1303に移動していく様子を示した。ステップ8で特定された始点(0,0)を含む枠が最初のアレイ構造像(第1のアレイ構造像)の視野を示し、その右隣の枠が第2のアレイ構造像の視野を意味する。各FOVの移動に際しては、移動前のFOVの視野の右下と移動後のFOVの視野の左上が一部重なるように(すなわち、移動前FOVの終点が移動後FOV内の左上に位置するように)移動される。第1のアレイ構像では(0,0)番地のセルの位置と単位ベクトルに基づいて第1の検出予測領域を設定し、第1のパターンマッチングを実施する。そして、重なり領域にある(7,1)番地のセルの位置が特定される。第2のアレイ構造像では(7,1)番地のセルの位置と単位ベクトルに基づいて第2の検出予測領域を設定し、第2のパターンマッチングを実施する。これを繰り返して終点の位置を特定する。第3のFOV内でも同様である。本実施例の荷電粒子線応用装置の視野移動技術に関しては、視野移動手段と視野移動量計測手段に改善を加えた。視野移動手段に試料ステージに加えてイメージシフト偏向器を用いることにした。試料ステージは視野移動囲が広いが位置設定精度が低い。一方、イメージシフト偏向器は視野移動範囲が狭いが位置設定精度が高い。これらの特性を考慮し、視野移動はイメージシフト偏向器で実施し(ステップ10)、試料ステージはイメージシフト偏向器の視野移動範囲を変える(ステップ11)場合にのみ用いるフローとした。
イメージシフト偏向器の視野移動範囲の変更方法(ステップ11)について、図12を用いて説明する。最後に撮影されたアレイ構造像から終点を含む視野に到達するために必要な視野移動ベクトル(Gx,Gy)を計算する。視野が(Ix,Iy) = -(Gx,Gy)だけ移動するようにイメージシフト偏向器の制御値を変化させる。この視野移動(Ix,Iy)を相殺するように試料ステージによる視野移動(Sx,Sy)を実施する。ここれによって、イメージシフト偏向器の視野移動範囲が(Sx,Sy)だけ移動する。(Gx,Gy)がイメージシフト偏向器の制御値変化範囲よりも大きい場合は、(Gx,Gy)を複数のベクトルに分割して上記ステップを繰り返す。
ステップ9では各アレイ構造像におけるパターン計数を実施する。そのフローを図14に示す。視野移動前に撮影したアレイ構造像を第n-1のアレイ構造像、視野移動後に撮影したアレイ構造像を第nのアレイ構造像とする。まず、n=1の場合はステップ4で入力した始点の位置、始点の番地と単位ベクトルから、n>2の場合は視野移動前に撮影した第n-1のアレイ構造像におけるパターン検出結果に基づいて第nのアレイ構造像における検出予測領域を設定する。第n-1と第nのアレイ構造像にはイメージシフト偏向器による位置設定誤差以上の重なりを持たせてある。イメージシフト偏向器の位置設定精度は高く、単位ベクトルの1/2以下と仮定できるので、第n-1のアレイ構造像で求めたパターン検出結果から第nのアレイ構造像における検出予測領域を設定することが出来る。そして、第nのアレイ構造像にパターンの位置を、基準パターン像とのパターンマッチングにて特定する。検出予測領域と検出位置の比較から、正検出、検出落とし、誤検出などのパターン検出結果を生成する。パターン検出結果が所定の条件を満たしている場合は、パターン検出結果を記録し、次のステップに進む。所定の条件として、正検出の割合が一定値以上である、誤検出や検出落しがクラスタ的な分布をしていない、などの条件を設定する。これらの条件設定については実施例4で説明する。所定の条件を満たさなかった場合は、検出予測領域の修正が必要であると判断し、単位ベクトルや始点位置の修正を実施する。
撮影したアレイ構造に終点が含まれるまで、イメージシフト偏向器で視野を移動させる(ステップ10)。イメージシフト偏向器の可動範囲で終点に達しない場合は、イメージシフト偏向器の制御値変化を試料ステージで相殺した後(ステップ11)、イメージシフト偏向器による視野移動を継続する。ステップ11の手順を図15に示す。ステージ位置設定誤差解析用のアレイ構造像撮影条件および解析可能な視野ずれ量を呼び出す。ステージ移動前のアレイ構造像を撮影する。イメージシフト偏向器で視野を所定量ずらせた後、検証用のアレイ構造像を撮影する。これらの画像で視野ずれ解析可能か否かを検証する。なお、この検証ステップは省略可能である。イメージシフト偏向器による視野移動(Ix,Iy)と、それを相殺する試料ステージによる視野移動(Sx,Sy)を実施した後(図12参照)、試料ステージ移動後のアレイ構造像を撮影する。試料ステージ移動前後のアレイ構造像間の視野ずれ量を求める。この視野ずれ量から試料ステージの位置設定誤差を求め、イメージシフト偏向器による視野修正、もしくはパターン検出用のアレイ構造像における始点の位置修正によって修正する。
ここで、ステップ8で行なうイメージシフト偏向器と試料ステージの調整について説明する。試料ステージは位置設定精度が低いので、ステップ11の試料ステージによるイメージシフト偏向器制御値の調整を失敗する可能性がある。この調整回数をできるだけ少なくするために、ステップ8で図11に示すフローを実施する。まず、ステップ5で入力した設定に従って試料ステージを移動させる。ステップ4で入力した設定しに従って始点から終点に達するための視野移動ベクトル(Gx,Gy)を求める。イメージシフト偏向器で視野を-(Gx,Gy)の方向に(Ix,Iy)だけ移動させる。イメージシフト偏向器による視野移動(Ix,Iy)を相殺するような試料ステージによる視野移動(Sx,Sy)を実施した後、ステップ5と同じ撮影条件でアレイ構造像を撮影する。ステップ5で記録したアレイ構造像とステップ8で撮影したアレイ構造像の間には試料ステージ位置設定誤差による視野ずれがある。この視野ずれ量を視野ずれ解析システムで解析し、撮影されたアレイ構造像上の始点の座標を特定する。
終点位置へ到達すると、入力されていた解析工程が実施される(ステップ12)。解析工程の詳細を説明する。まず、終点を含むアレイ構造のSEM像(図16(B))とそのパターン検出結果から、ステップ7で用いたCAD像(図16(A))との位置調整を実施する。SEM像とCAD像とを重ねて表示された状態を図16(C)に示した。この表示によって、試料内部のデバイス構造を確認しながら電気特性を解析きるようになり、使い勝手が非常に向上する。次に、プローブ駆動手段625を用いて、プローブ先端をSEM像視野内まで移動させる。SEM像視野までのプローブ移動量は、イメージシフト偏向器による視野移動とDUTステージの視野移動の双方を考慮して計算される。プローブ駆動手段の位置設定精度は数μmであり、SEM像の視野径は数10μmと想定されるので、制御値設定によるSEM像視野内へのプローブ移動は可能である。利用する全てのプローブがSEM像内に含まれることを確認し、プローブ接触工程を開始する。電気特性でプローブの接触を確認し、設定され電気特性計測を実施する。なお、ドリフトなどの外乱のためにDUTステージの位置が変化する場合に備えて、終点位置が特定された直後に、視野ずれ解析用の画像取得条件でアレイ構造像を撮影しておいた方が良い。
ステップ8〜12で一通りの実行が終了する。入力された条件を全て実行した後、全ての工程を終了する。
最後に、制御画面の一例を図17に示す。アレイ構造像、CAD像およびそれらの重ね合わせ表示が可能である。基準パターン、単位ベクトル、始点の位置はアレイ構造と重ね合わせて表示される(パラメータ入力画面)。パターン検出結果もアレイ構造像およびCAD像との重ね合わせ表示が可能である(パターン検出結果表示画面)。各パターンに振り当てられた番地を確認できる画面もある(計数結果表示画面)。
以上、本実施例の探針接触式特性評価装置により、セルカウントの精度が向上し、従って探針を目的位置にプロービングする際の精度が向上する。更には、プロービングに要する時間も短縮される。
本実施例では、イオンビームを用いた試料加工装置に、本発明であるパターン計数システムを適用した場合について説明する。
本実施例のイオンビーム加工装置の基本構成図を図18に示す。図18に示されたイオンビーム加工装置は、半導体ウェハや半導体チップ等の試料1876(被加工物)にイオンビーム1811を照射するイオンビーム照射光学系1810、イオンビーム照射光学系1810の動作を制御するイオンビーム照射光学系制御装置1812、試料1876を載置し、イオンビーム照射領域に試料1876の観察領域を移動させる試料ステージ1870、試料ステージ1870の位置を制御する試料ステージ制御装置1871、プローブ1831を保持して移動させるマニピュレータ1830、マニピュレータ1830を制御するマニピュレータ制御装置1832、試料1876の上記観察領域近傍に堆積性ガス(デポガス)を供給するためのデポガス供給源1860、デポガス供給源1860を制御するデポガス供給制御装置1861、試料1876表面にSEM像用の1次電子ビーム1821を照射するための電子ビーム照射光学系1820、対物レンズ1822、電子銃1823、試料1876表面から放出される2次電子を検出する2次電子検出器1825、電子ビーム照射光学系を制御するSEM照射光学系制御装置1824、イオンビーム加工装置全体を制御する制御コンピュータ1840、二次電子検出器1825からの出力信号をA/D変換するA/D変換器、A/D変換によりデジタルデータに変換された二次電子検出器1825の出力信号を処理する画像演算ユニット1850等により構成される。
イオンビーム加工装置においては、どの方向の断面を露出させ、薄膜化するかによって、試料1876に対する1次電子ビーム1821およびイオンビーム1811の入射方向が決まる。そこで、本実施例の試料ステージ1870は、イオンビームの照射光軸に対するステージチルト機能と、XY面内の移動機構およびステージ中心軸に対する回転機能(θステージ)を備えている。よって、本実施例のイオンビーム加工装置は、試料1876の3次元方向位置および試料1876表面のイオンビーム軸に対する傾き角ならびに回転方向角度を自由に制御でき、これによって、試料1876表面上でのイオンビーム照射位置(加工位置)および試料1876表面に対するイオンビームの照射角度並びに回転方向角度を任意に設定できる。
なお、イオンビーム照射光学系1810、試料ステージ1870、デポガス供給源1860、電子ビーム照射光学系1810、および2次電子検出器1825は、高真空排気される真空室1800内に配置されている。
制御コンピュータ1840は、イオンビーム照射光学系1810や電子ビーム照射光学系1820等の荷電粒子光学系、あるいは試料ステージ1870やマニピュレータ1830等の機械系といったイオンビーム加工装置全体を、統括的に制御する。そのため、制御コンピュータ1840は、接続された各構成部品を制御するソフトウェアを格納するための記憶手段1855と、ユーザーが装置の設定パラメータを入力するためのユーザーインターフェース1842、各種の操作画面やSEM像を表示するための表示装置1841を備える。画像演算ユニット1850は、複数の画像処理部1851-1853、被検査試料の配線レイアウトのデータ(以下、CAD像データと称する)を取り扱うCADナビシステム1854を備える。
なお、図18のイオンビーム照射光学系1810は集束イオンビーム(FIB)を示しているが、同じ鏡体で成形イオンビーム(PJIB)を成形することも可能である。図19(A)は、試料加工に集束イオンビームを用いる集束イオンビーム(FIB)照射光学系の要部構成を示している。イオン源1813から放出されたイオンビームをビーム制限アパーチャー1814、イオンビームの拡がりを抑制したり集束させたりする集束レンズ1815、イオンビームを試料1876上に集束させる対物レンズ1817を通すことで集束イオンビーム1811を形成する。この集束イオンビーム1811を偏向器1816を用いて試料1876上で走査することにより、走査形状に合わせて試料1876を加工する。集束イオンビームを観察手段としても用いることもできる。集束イオンビーム1811によって試料1876表面を走査し、試料1876表面からの2次電子を2次電子検出器1825で検出し、走査信号と同期させて画像化し、表示する。
図19(B)は成形イオンビーム(PJIB)の照射光学系の要部構成図である。イオン源141から放出されたイオンビームをビーム制限アパーチャー1814、照射レンズ1815により投射マスク板1819に照射し、マスク板1819のパターン開口1818を通過したイオンビームを投射レンズ1817によって試料ステージ1870上に載置された試料1876表面に投射する。こうして形成されたイオンビーム1811により、試料1876表面をパターン開口1818とほぼ相似形に加工する。
本実施例のイオンビーム加工装置で実現される試料加工の手順を図7、図20および図21を用いて説明する。
本実施例のイオンビーム加工装置におけるセルカウントの手順は、基本的に実施例2の荷電粒子線応用装置の動作とほぼ同じである。そこで以下の説明では、イオンビーム装置に固有の処理を個々のステップ毎に説明する。
まず、ステップ1における試料1876の設置と位置調整について説明する。本装置はSEM像とSIM像の両方を取得可能であるので、セルカウント用のアレイ構造像としてSEM像とSIM像のどちらを用いるかを選択する。これは、表示装置1841上にいずれかの像の選択要求を表示させ、ユーザーインターフェースを介して入力された選択応答に沿って制御コンピュータ1840が、イオンビーム照射系と電子線照射系の切換を行う。SEM像を用いる利点は試料表面のダメージが少ないことである。入射ビームにイオンビームを用いるSIM像観察では、観察中に試料表面が徐々に削られる。試料表面にダメージを与えたくない場合はSEM像を選択した方が良い。本実施例のイオンビーム加工装置において、アレイ構造像としてにSEM像を用いることの欠点はSEM像とSIM像の視野がずれると、加工位置(すなわちイオンビームの照射位置)にズレが発生するという点である。従って、試料加工開始前に、SEM像とSIM像の視野を必要とされる精度で合わせておく必要がある。精度合わせのためには、例えば、適当なアライメントマークのSIM像とSEM像を取得し、得られたSEM像とSIM像上でのアライメントマークの座標とアライメントマークの絶対座標とを比較して、視野ずれ量を算出する。想定される視野ずれ量が必要とされる加工位置設定精度よりも大きい場合は、SIM像を選択した方が良い。
アレイ構造像に用いる画像を選択した後、画像を観察しながら試料位置の調整を実施する。試料ステージ制御装置1871とCADナビシステム1854とをリンクさせるために、試料1876上に配置された複数のアライメントマークを使用し、試料ステージ1870に試料1876を設置する際の位置設定誤差を修正する。
上記の第1荷電粒子光学系の調整と並行して、或いは調整後に、もう一方の第2荷電粒子光学系の調整を実施する。アレイ構造像としてにSIM像を用いる場合には、調整すべき荷電粒子光学系はイオンビーム照射光学系1810のみで良い。ただし、ビームを細く絞って電流量を少なくした試料観察用FIB照射条件と、ビーム径を広げて電流量を多くした試料加工用FIB照射条件を設定しておいたほうが良い。アレイ構造像としてSEM像を用いる場合、あるいはSIM像とSEM像の両方を用いる場合には、イオンビーム照射光学系1810と共に電子ビーム照射光学系1820も調整する。この場合、個々の照射系調整の後、イオンビーム照射光学系1810と電子ビーム照射光学系1820の視野ずれ量を算出し、視野ずれが補正される。視野ずれ補正としては、例えばイメージシフト偏向器を用い、偏向器での偏向量が視野ずれ量に等しくなるように動作させる。SEM像で試料を観察して試料加工にPJIBを用いる場合、個々の照射系調整の後、照射系間の視野ずれ量を補正する。イオンビームで試料加工を実施し、加工形状をSEM像で観察することにより、照射系間の視野ずれ量を測定し、イメージシフト偏向器で補正する。
ステップ3〜6の工程は、試料構造の観察に用いる画像の種類や試料移動に用いる試料ステージの種類が異なる以外は、実施例1で記載した工程とほぼ同じであるため説明を省略する。
ステップ7では、終点近傍で実施する試料加工手順を入力する。CADナビシステムに断面像を観察したいデバイス構造を入力し、そのデバイス構造のうえにある表面構造を出力させる。表面構造が含まれるCAD像を表示させ、加工手順と加工位置をCAD像上で指定する。また、CAD像上でパターン計数の終点位置も入力しておく。入力したCADデータ上での始点位置と番地および単位ベクトルに基づいて、終点の番地が計算される。
次に、ステップ8のパターン計数の始点の特定フローを説明する。試料加工においては、どの方向の断面を露出させ、薄膜化するかによって、試料1876に対する1次電子線601およびイオンビーム1811の入射方向および走査方向が決まってくる。それらの条件に合わせ、試料ステージ1870にはXY面内の回転機構を調整する。パターン計数後に試料を回転させると終点の位置を見失う可能性が高いので、試料回転角度はパターン計数前に設定する必要がある。試料加工条件を呼び出し、面内回転角度を求め、試料ステージ制御装置1871を用いて試料を回転させる。
この後、視野内に始点が含まれるように試料ステージ1870を制御する。試料ステージ制御装置1871とCADナビシステム1854はリンクされているので、試料回転前(ステップ5)で入力したXY方向の試料ステージ制御値は試料回転後(ステップ8)で使用するXY方向の試料ステージ制御値は自動的に変換される。さらに、実施例1で説明したイメージシフト偏向器による視野移動とそれを相殺する試料ステージ制御を実施した後、始点を含むアレイ構造像を撮影する。ステップ5で記録したアレイ構造像とステップ8で撮影したアレイ構造像に回転角度差がある場合、アレイ構造像を回転させて画像間の角度差を補正し、画像間の視野ずれ補正を行う。試料ステージの回転角度設定誤差が懸念される場合は、画像間の平行移動量、角度差、縮尺を解析できる画像処理法を用いても良い。画像間の視野ずれ量とステップ5で記録されたアレイ構造像内の始点の座標から、ステップ8で撮影されたアレイ構造像内の始点の座標を特定する。
ステップ9では、各アレイ構造像におけるパターン計数を実施する。まず、ステップ8で行なった試料回転角度に応じて基準パターン、単位ベクトルを修正する。修正された単位ベクトル、ステップ9で特定された始点の位置、始点の番地に基づいて、検出予測領域を生成する。修正された基準パターンを用いてアレイ構造像内のパターン位置を検出する。上記工程以外は実施例1で記載しステップ9の工程とほぼ同じである。
ステップ10および11の工程は、試料構造の観察に用いる画像の種類と試料ステージの制御手段が異なる以外は、実施例1とほぼ同じ手順で実行される。
ステップ12では、ステップ7で入力された加工工程が実行される。終点を含むアレイ構造像とそのパターン検出結果から、ステップ7で用いたCAD像との位置調整が実行される。図20には、計数の結果終点に到達し、ステップ12の加工が開始される直前に表示手段1841上に表示される画像の例を示す。図20では、終点位置付近のCAD像と当該CAD像にSEM像が重ねて表示された場合の表示画面が示されている。2000は試料であり、例えば半導体チップの割断片や半導体ウェハなどである。2001が配線プラグ、2002〜2005が配線である。2006が加工対象となるプラグであり、2007は加工対象プラグを識別するために電子ビーム照射ないしはイオンビーム照射により形成されたマーキングである。
図21には、ステップ12で実行されるイオンビーム加工の一例を示した。図21のステップ(a)では、加工用イオンビーム2102がマーキング2103の両側に照射され、加工穴2101が形成される。2104は加工対象であるプラグであって、図20の2007に相当する。以下、ステップ(b)で2つの加工穴を接続する溝が形成され、ステップ(c)ではステージチルトされた状態でのイオンビーム照射により、クサビ形状の試料片2106が形成される。ステップ(d)では、マニピュレータ1830の駆動によりプローブ2107の先端部とクサビ型試料片2106とが接触され、更に、プローブ先端部とクサビ形状試料片とを接続させるためのデポ膜がイオンビーム2102の照射により形成される。ステップ(e)においては、クサビ形状試料片2106と試料片が摘出される母材との接続部がイオンビーム照射により切断され、ステップ(f)において、マニピュレータ1830の操作により試料片が母材からリフトアウトされる。プローブに固着された試料片2106は、ステップ(g)においてサンプルキャリア2109に移送され、ステップ(h)においてサンプルキャリア表面の固定溝2110に載置される。ステップ(h)(g)においては、プローブ2107と試料片2106との固着用デポ膜2108がイオンビーム2101の照射によって除去され、プローブ2107と試料片2106とが分離される。ステップ(j)では、プラグ2104の側面がイオンビーム2101の照射により削られ、最終的にプラグ断面の薄片化試料が形成される。
ステップ8〜12で一通りの実行が終了する。入力された条件を全て実行した後、全ての工程を終了する。
以上、本実施例のイオンビーム加工装置により、セルカウントの精度が向上し、従って目的の構造にサンプリングする際の精度が向上する。更には、サンプリングに要する時間も短縮される。
本実施例では、セルカウント時に誤差が発生した場合に、当該誤差を補正する機能を備えた荷電粒子線装置の構成例について説明する。この誤差の補正に際しては、検出予測領域を利用する。本実施例で説明する計数条件再設定機能は、実施例2,3のいずれの装置にも実装可能であるが、本実施例では、特に走査電子顕微鏡を用いた計測装置(測長システムや欠陥レビューシステム、あるいは外観検査システム等)に実装した場合について説明する。
最初に、図22から24を用いて、本実施例で問題とする誤差の発生原因について説明する。図22には、取得されたアレイ構造像にパターン形状のバラツキや異物が多いためにセルカウントの誤差が発生する様子を示した。図22には、正常ビット2201以外に歪んだビット2202や異物2003が多数含まれている。試料に発生する異物には、2203のようにビットが形成されていない位置に発生した異物2203の他、ビット形成位置に発生した異物2204も存在する。このようなパターン歪みや異物の多いアレイ構造像の場合、基準パターン2205を元にパターンマッチングを行っても、検出落としや誤検出が発生する。ここで、検出落としとは、検出予測領域(図22中では点線の菱形で表現されている)を設定したにもかかわらず実際にはパターンが検出されなかった領域2206を意味し、誤検出とは、パターンが検出領域以外で検出された領域2207のことを意味する。検出予測領域とパターンマッチングにより実際に検出されたパターンが検出予測領域内に存在していた場合2208は、正検出と称される。検出落しや誤検出の割合がある程度少なければ、正検出されたパターンのみでパターン計数を継続することができるが、検出落しや誤検出の割合が多い場合は、アレイ構造像の撮影条件(倍率、取り込み時間など)、基準パターンの設定条件(形状、サイズなど)、パターンマッチングの画像処理条件(閾値など)を見直す必要がある。
図23には、最初に設定した単位ベクトルが不適切であったために検出落しや誤検出が発生する様子を模式的に示した。図23中において、補助線2304と2301とは、設定した単位ベクトルa,bの延長線、点線2205と2202は図23のアレイ構造パターンの座標軸として適切な軸を示す。単位ベクトルが適切ではないため、単位ベクトルによって規定される検出予測領域2307と本来あるべき検出予測領域2308とに乖離が生じ、この乖離が検出落としや誤検出の原因となる。図23に示すように、不適切な単位ベクトルに起因するずれの量は、始点(0,0)からの距離が大きくなるに従って増大する。この場合、単位ベクトルの修正が必要になる。
図24は、始点の位置ずれに起因する検出落としや誤検出を示すための概念図である。n-1番目に撮影したアレイ構造像からn番目に撮影したアレイ構造像に始点の位置を引き継ぐ際に、視野移動誤差のために、始点の位置がずれて伝えられる場合がある。図24において、始点(x1,y1)2401からセルカウントを開始する場合、実際の始点の中心座標2405が正しい中心座標2404からずれている場合、検出予測領域2403(実線で表示)が正しい検出予測領域2402(点線で表示)とはずれた位置に形成され、以降のセルカウントも、始点のずれ量2406が維持されたまま進行する。よって、始点の位置ずれが発生した場合にも何らかの修正機能が必要となる。
図25には、本実施例の電子線応用装置の全体構成を模式図で示す。本実施例の走査電子顕微鏡は、大まかには、走査電子顕微鏡2500、当該走査電子顕微鏡の制御動作を実行する制御装置2510、制御装置2510の更に上位の制御を実行するコンピュータ2520およびコンピュータに必要な情報入力や動作条件の設定を行うユーザーインターフェース2530により構成される。
走査電子顕微鏡2500は、一次電子ビームを発生する電子源2501、発生した一次電子ビームのクロスオーバ位置を制御するコンデンサレンズ2502、コンデンサレンズ2502のクロスオーバ位置制御と組み合わされて一次電子ビームの電流量を調整する制限絞り部材2503、走査偏向器2504、対物レンズ2505、計測対象試料2506を載置する試料ステージ2507、一次電子ビーム照射により発生する二次電子または後方散乱電子を検出する検出器2508などにより構成される。制御装置2510は、実際には走査電子顕微鏡2500の各構成部の駆動電源や各電源を制御するためのマイコンの集合で構成されており、必要な電流・電圧あるいは制御信号を供給して走査電子顕微鏡2500を実際に動作させる。コンピュータ2520は、SEMの個々の構成部品を統括して動作させるために必要とする制御情報(例えば、ユーザーインターフェース2530から設定入力された動作条件に沿って装置全体を動作させるために必要な走査電子顕微鏡2500の構成部品の連係制御情報)を計算して、制御装置2510へ伝送する。また、検出器2508の検出信号と走査信号の変調周波数との同期を取り、二次電子ないし後方散乱電子の二次元強度分布データを計算して、ユーザーインターフェース2530の表示装置(図示せず)に表示させる。また、コンピュータ2520内には、上で説明した各種の計算処理を実行するための演算装置やメモリが格納されている。更に、コンピュータ2520には、取得された二次元分布データや上の演算装置で実行される各種のソフトウェアが格納される外部記憶装置2521が格納されている。信号伝送線2522および2523は、外部記憶装置2521とコンピュータ2520とを接続する。
次に、図7及び図26により本実施例の電子線応用装置の動作について説明する。本実施例の電子線応用装置は、基本的に図7と同じフローに従って動作するが、ステップ9に図26に示す動作が加わる点で異なる。従って、それ以外のステップにおける動作は、実施例2で説明した動作と同じであるため説明を省略する。
図26には、あるアレイ構造像のパターン計数が終了した時点で正検出されたパターンの割合がδ以内かどうかの判定ステップの実行フローについて示した。閾値δの値は、セルカウントの対象となるパターンによって異なるため、外部記憶装置2521内には、δの値と試料の識別番号(例えばロット番号等)が相互に参照可能な状態で格納されている。
正検出の割合が閾値よりも小さい場合には、コンピュータ2520により誤差の原因推定処理が実行される。当該処理は、検出予測領域とパターン検出位置とのずれ量の分布情報の取得ステップと誤差原因の推定ステップを含んで構成される。ずれ量の分布情報は、外部記憶装置2521内に格納された二次元分布データを参照して、検出落としや誤検出の発生位置の座標情報と問題となるFOV内での始点座標と終点座標とを読み出すことにより取得する。実施例2と同様、検出落しや誤検出の発生件数が特に多い場合には、発生件数やそれに類する情報が画面表示される。画面表示の要否を判断するための閾値は、コンピュータ2520内のメモリや外部記憶装置2521内に格納され、コンピュータ2520の動作時に参照される。また、上記の閾値を越えた場合には、セルカウントを実行した領域の画像データを表示装置上に表示する。検出落しや誤検出の発生件数が多い領域のパターン構造を実画像上で確認できるため、装置の使い勝手が向上する。
次に、図27を用いて、ずれ量の分布情報から誤差の発生原因を特定するための原理について説明する。図22〜24では、誤差の発生原因が、
(1)取得されたアレイ構造像(パターンの二次元分布データ)に歪みや異物が多い
(2)単位ベクトルの設定が不適切
(3)セルカウントの始点に位置ずれが存在する
である場合について説明した。この場合において、検出落としや誤検出の発生件数は、セルカウントの始点からの距離(=パターンマッチングを行った位置座標の始点からの距離であって、画素数で表現される)に対して、図27に示すような分布を持つと考えられる。
例えば、取得した二次元分布データに歪みや異物が多い場合には、発生する検出落としや誤検出は発生位置に対して依存性を持たないため、発生件数は、始点からの距離に対して全くランダムな分布を示すと考えられる。また、単位ベクトルが不適切であった場合には、歪み量は始点からの距離に比例して増大すると考えられるため、発生件数は、始点からの距離に対して線形に増大すると考えられる。更にまた、セルカウントの始点に位置ずれが存在する場合には、基準パターンの中心位置ずれが位置されたままセルカウントが進行するため、発生件数は、始点からの距離に対してほぼ一定と考えられる。よって、検出落としや誤検出の発生件数の始点からの距離に対する依存性を計算し、類別を判定することにより、誤差の発生原因を特定することができる。このような特定ステップは、実際には、コンピュータ2520内の演算手段が、ずれ量の分布に対して適当なフィッティングカーブを当てはめることにより実行される。誤差発生の原因が特定されると、計数条件が再設定されて、セルカウントが再開される。
次に、セルカウント再開のための計数条件再設定手順について説明する。
まず、歪みや異物が多いために検出落しや誤検出の割合が多い場合は、アレイ構造像の撮影条件(倍率、取り込み時間など)や基準パターンの設定条件(形状、サイズなど)、パターンマッチングの画像処理条件(閾値など)が再設定される。この場合、図26の誤差の原因推定ステップが終了した時点で、図7のステップ4あるいはステップ9に戻って、処理を再開することになる。
単位ベクトルの設定が不適切であった場合には、ユーザーインターフェース2530の表示画面が単位ベクトルの修正画面に遷移し、図28(A)と(B)に示す画面および単位ベクトルの再設定要求とが修正画面上に表示される。以下、再設定を行う際の修正手順について、図28(A)と(B)を用いて説明する。アレイ構造像 (図28(A))のフーリエ変換像(図28(B))には、アレイ構造の周期性に対応した様々なピークが発生する。これらのピークから、単位ベクトルの初期値から計算されたピークに最も位置が近いピークを選択する。選択したピークの中心位置から計算された単位ベクトルを、修正後の単位ベクトルとする。単位ベクトルの修正に、アレイ構造像の自己相関像を用いても良い。この場合も自己相関像に発生するピークのうち、単位ベクトルの初期値から計算されたピークに位置が最も近いピークを選択する。選択したピークの中心位置から計算された単位ベクトルを修正後の単位ベクトルとする。以上の手順に従って装置ユーザーにより単位ベクトルが再設定されると、電子線応用装置は、再設定された単位ベクトルに従って、セルカウントを再開する。
セルカウントの始点に位置ずれが存在する場合、以下の手順で始点の位置を修正する。まず、正検出位置における、検出予測領域中心と検出位置との平均ずれ量を計算し、これを始点のずれ量とみなす。計算されたずれ量に基づき、第nのアレイ構造像における始点の位置を修正する。
なお、アレイ構造像の撮影条件を低倍率かつ短い取り込み時間に設定すると、パターン計数時間を短縮することが出来るが、像SN低下によって検出結果が不安定になる。基準パターンに複数のパターンを含ませると、個々パターンのバラツキが平均化されて検出結果が安定するが、解析時間は増加する。基準パターンの形状も正方形、長方形、円形など、任意の形状が選択できるので、試料にあわせて最適化した方が良い。基準パターンに適当な加工を施すことにより、検出結果が安定する場合もある。例えば、アレイ構造像から複数のパターンを切り出し、それらのパターンの加算平均を基準パターンとする。基準パターンに適当なマスクをかけパターンマッチングに用いる領域のみを抽出するなどである。画像処理については、パターンマッチングに用いる相互相関法や最少二乗法では、基準パターンと一致を判定する閾値を画像に応じて最適化する必要がある。これらの条件を最適化し、パターン正検出の割合を向上させる。
以上、図26に沿って本実施例の装置の動作フローについて説明したが、図26に示す誤差の原因の推定ステップと計数条件の再設定ステップは、セルカウントを行いながら実行してもよいし、セルカウント終了後に実行してもよい。装置上は、両方の動作モードに対応するソフトウェアをコンピュータ2520ないし外部記憶装置2521に組み込んでおき、装置使用者がいずれかの動作モードを選択できるようにする(例えば、図26のフローの開始前にいずれかの動作モードの選択要求をユーザーインターフェース2530上に表示するなど)と装置の操作性が向上する。
画像処理としてはパターンマッチングの他に、アレイ構造像全体の移動量を計測する画像処理が必要である。試料ステージ位置設定誤差が無ければ、試料ステージ移動前後で同じ視野が撮影される。しかし、試料ステージ位置設定誤差があるので、視野ずれが発生している。この視野ずれ量は単位ベクトルよりも大きいと仮定されるので、パターンマッチングでは計測できない。そこで、位相差計算を用いた視野ずれ解析方法を用いることにした。この方法は、類似パターンは検出せずに同一パターンのみを検出するという特徴がある。従って、単位ベクトルよりも大きい視野ずれ量を持つアレイ構造像間でも視野ずれ量が解析できる。
ここで、今回用いた視野ずれ解析法を、図29を用いて説明する。視野ずれD=(Dx, Dy)のある2枚の離散画像S1(n, m)、S2(n, m)を仮定し、S1(n, m)=S2(n+Dx, m+Dy)と記述する。S1(n, m), S2(n, m)の2次元離散的フーリエ変換をS1’(k, l), S2’(k, l)とする。フーリエ変換にはF{S(n+Dx, m+Dy)}=F{S(n, m)}exp(iDx・k+iDy・l)の公式があるので、S1’(k, l)=S2’(k, l)exp(iDx・k+iDy・l)と変形できる。つまりS1’(k, l)とS2’(k, l)の視野ずれDは位相差exp(iDx・k+iDy・l)=P’(k, l)で表現される。P’(k, l)は周期が(Dx, Dy)の波でもあるので、位相差画像P’(k, l)を逆フーリエ変換した解析画像P(n, m)には(Dx, Dy)の位置にδ的なピークが発生する。なお振幅の情報を全て除去するのではなく、S1’(k, l)・S2’(k, l)*=|S1’||S2’| exp(iDx・k+iDy・l)の振幅成分にlogもしくは√の処理を施して振幅成分を抑制した画像を計算し、該画像に逆フーリエ変換を施しても、視野ずれベクトルの位置(Dx, Dy)にδ的なピークが発生するので、該画像で視野ずれ解析を行っても良い。位相差画像P’(k, l)をフーリエ変換しても(-Dx, -Dy)にδ的なピークが発生するので、位相差画像P’((k, l)のフーリエ変換像で視野ずれ解析を実行しても良い。解析画像P(n, m)にはδ的なピークのみが存在すると仮定できるので、重心位置計算や関数フィッティングによって、δ的なピークの位置を小数点以下の精度で求められる。またδ的なピーク以外は雑音と見なすことが出来るので、解析画像P(n, m)全体の強度に対するδ的なピークの強度の割合を画像間の一致度と見なすことが出来る。一致度判定の上限値・下限値は、外部記憶装置2521あるいはコンピュータ2520に格納される。
従来の視野ずれ解析法では視野ずれ解析結果の信頼性を評価することは困難であり、解析に必要な周波数成分が不足していたために間違った視野ずれ量を出力しても、その視野ずれ量に基づいて解析・校正フローを進めてしまう。以上説明した視野ずれ解析法の採用により、一致度の下限値を設定し、一致度が下限値以下であれば画像の取り直しなどの対策を自動的に実施することが可能になる。
なお、視野ずれ解析用のアレイ構造像とパターン計数用のアレイ構造像では撮影条件を変えた方が良い。パターン計数用のアレイ構造像は計数時間を短縮するめに低倍率で撮影することが望まれるが、視野ずれ解析用のアレイ構造像は個々のパターンの違いが観察できる、ある程度高倍率で撮影する必要がある。また、解析可能か否かは画像間の視野ずれ量にも依存する。視野ずれ量が増加するに従って画像間で共通する視野が減少し、解析が困難になる。解析可能な視野ずれ量が試料ステージ位置設定精度よりも小さくなった場合は、試料ステージ移動後、イメージシフト偏向器で視野をずらせた複数枚のアレイ構造像を撮影し、試料ステージ位置設定誤差を解析する。
視野ずれ解析用アレイ構造像の撮影条件の最適化は以下の手順で実施する。試料ステージ移動前に撮影したアレイ構造像1202とイメージシフト偏向器で視野をずらせて撮影したアレイ構造像1203で視野ずれ解析を実施する。視野ずれ量は試料ステージの位置設定誤差程度とする。視野ずれ量が解析できなかった場合は、撮影条件や視野ずれ量を変えて再び検証を実施する。
視野ずれ解析用のアレイ構造像の撮影条件決定の後、試料ステージ移動前のアレイ構造像1202(図12(A)参照)を撮影する。イメージシフト偏向器の制御値変化と、それによる視野移動を相殺させる試料ステージ移動を実施した後、試料ステージ移動後のアレイ構造像1205(図12(B)参照)を撮影する。ステージ移動前のアレイ構造像1202との視野ずれ量を解析し、試料ステージの位置設定誤差を求め、これを修正する。修正はイメージシフト偏向器による視野移動で実施しても良いし、試料ステージ移動後に撮影されたアレイ構造像における検出予測領域の修正で実施しても良い。
なお、電磁界レンズの周辺歪の影響で、画像間に視野ずれ量の他に回転や縮尺の違いが含まれることも考えられる。この場合、画像間の視野ずれ量と共に回転と縮尺も解析できる視野ずれ・回転・縮尺解析法を用いた方が良い。また、フィルタ調整やパラメータ調整によっては、類似のパターンは検出せず、同一のパターンのみを検出するように調整することも可能である。ただし画像ごとに調整する必要があり、調整のノウハウも必要になる。
以上説明した本実施例の電子線応用装置により、セルカウント時の誤差補正が可能となり、従来技術に比べてより正確なセルカウント機能を備えた電子線応用装置が実現可能となる。また、以上説明した誤差補正機能は、実施例2,3で説明した装置のみならず、荷電粒子線装置一般に適用することが可能である。
本発明によって、これまで困難とされたメモリセル構造内の不良位置の特定を高精度、高速かつ安定に特定できるようになる。検査装置と解析装置における不良位置伝達のTATの大幅な向上によって、プロセス開発における不良解析のTATが向上する。
従来のセルカウントの問題点の説明図。
単位ベクトルの説明図。
実施例1のセルカウント手法の基本フロー図。
図3のフロー終了後に画面表示される画像の一例。
複雑なパターンを有する試料を示す模式図。
実施例2の荷電粒子線装置の全体構成図。
実施例2の荷電粒子線装置の動作の全体フローを示す図。
図7に示す全体フローの試料位置調整工程の詳細フロー。
図7に示す全体フローのパターン計数の条件設定ステップの詳細フロー。
図7のステップ6の詳細フロー。
図7のステップ8の詳細フロー。
イメージシフト偏向器による視野移動範囲の変更手法の説明図。
FOVの移動の様子を示す模式図。
図7のステップ9の詳細フロー。
図11のステップ9の詳細フロー。
実施例2の荷電粒子線装置で取得されるSEM像、CAD像の一例。
実施例2の荷電粒子線装置のGUIの構成例。
実施例3の荷電粒子線装置の全体構成図。
集束イオンビームカラムと投射イオンビームカラムの要部構成図。
実施例3の荷電粒子線装置において、セルカウント終了後に表示画面に表示される画像の例。
実施例3の荷電粒子線装置における試料加工フローの説明図。
パターン形状のバラツキや異物と誤差の関係の説明図。
単位ベクトルの設定と誤差の関係の説明図。
始点の位置ずれと誤差の関係の説明図。
実施例4の荷電粒子線装置の全体構成図。
実施例4の荷電粒子線装置の動作フローの特徴点の説明図。
ずれ量の分布と誤差の発生原因との関係図。
不適切な単位ベクトルの修正画面上に表示される図の一例。
本実施例の視野ずれ解析法の説明図。
符号の説明
100:基準パターン、セルカウント領域の境界線:101,102、200:基準パターン、401:始点セル、402:基準パターン、403:終点セル、404:検出予測領域、405,405’,406,406’:補助線、501:基準パターン、502:aベクトル方向の補助線、503:bベクトル方向の補助線、504:cベクトル方向の補助線、505:検出予測領域、506:クラスタ単位でのセルカウントの方向、507:単位ベクトル(a,b)により形成される基準パターン、508:単位ベクトル(c,d)により形成される基準パターン、601:1次電子線、602:2次電子、603:試料、610:照射光学系、611:電子銃、612,613:コンデンサレンズ、614:開き角制限絞り、615:スキャン偏向器、616:イメージシフト偏向器、617:対物レンズ、618:2次電子検出器、620:真空チャンバ隔壁、621:ベース、622:大ステージ、623:試料台駆動手段、624:試料台、625:プローブ駆動手段、626:プローブ用アタッチメント、627:メカニカルプローブ、628:電気特性計測器、611':電子銃制御電源、612':コンデンサレンズ用制御電源、614':絞り制御装置、615':偏向器制御装置、616':イメージシフト偏向器制御電源、617':対物レンズ制御電源、618':二次電子検出器制御装置、622':大ステージ制御手段、623':試料台駆動手段、625':プローブ駆動手段制御手段、630:コンピュータ630、631:画像処理部1、632:画像処理部2,633:画像処理部3,634:CADナビシステム、635:記憶手段、636:表示装置、637:ユーザーインターフェース、1301:第1のFOV、1302:第2のFOV、1303:第3のFOV、1304:第2のFOVにおける終点の検出予測領域、1305:第2のFOVにおける終点の検出予測領域、1306:第3のFOVにおける終点の検出予測領域、1601:プラグ、1602:第1の横配線、1603:第2の横配線、1604:第3の横配線、1605:縦方向の配線、1606:SEM画像に現れるプラグ、1607:プラグのCAD像とSEM像とが重畳されて表示された図、1801:イオンビーム照射光学系、1811:イオンビーム、1812:イオンビーム照射光学系制御装置、1820:電子ビーム照射光学系、1821:1次電子ビーム、1822:対物レンズ、1813:イオン源、1814:ビーム制限アパーチャー、1815:集束レンズ、1816:偏向器、1817:対物レンズ、1818:パターン開口、1819:投射マスク板、1823:電子銃、1824:SEM用照射光学系制御装置、1825:二次電子検出器、1826:A/D変換器、1830:マニピュレータ、1831:メカニカルプローブ、1832:マニピュレータ制御装置、1840:制御コンピュータ、1841:表示装置、1842:ユーザーインターフェース、1850:画像演算ユニット、1851:画像処理部1、1852:画像処理部2,1853:画像処理部3、1854:CADナビシステム、1855:記憶手段、1860:デポガス供給源、1861:デポガス供給制御装置、1870:試料ステージ、1871:試料ステージ制御装置、1872:サンプルキャリア、1873:サンプルキャリア用ホルダ、1874:サンプルキャリア用ホルダの移動手段、1875:試料ステージ駆動機構、2000:試料、2001:プラグ、2002:第1の横配線、2003:第2の横配線、2004:第3の横配線、2006:加工目標のプラグ、2007:マーキング、2101:第1加工穴、2102:イオンビーム、2103:マーキング、2104:プラグ、2105:第2加工穴、2106:試料片、2107:プローブ先端部、2108:デポ膜、2109:サンプルキャリア、2110:サンプルキャリア表面の固定用溝、2111:ウォール部、2201:正常ビット、2202:歪んだビット、2203〜2204:異物、2205:基準パターン、2206:検出落とし領域、2207:誤検出領域、2208:正検出領域、2301:bベクトル方向の補助線、2302:単位ベクトルが適切であった場合のbベクトル方向の補助線、2303:bベクトル方向のずれ量、2304:aベクトル方向の補助線、2305:単位ベクトルが適切であった場合のaベクトル方向の補助線、2306:aベクトル方向のずれ量、2307:不適切な検出予測領域、2308:正しい検出予測領域、2401:始点のセル、2402:正しい検出予測領域、2403:不適切な検出予測領域、2404:正しい中心座標、2405:不適切な中心座標、2406:ずれ量、2407:移動前のFOVの境界線、2408:移動後のFOVの境界線、2500:走査電子顕微鏡、2501:電子源、2502:コンデンサレンズ、2503:制限絞り部材、2504:走査偏向器、2505:対物レンズ、2506:試料、2507:試料ステージ、2508:検出器、2510:走査電子顕微鏡本体の制御装置、2520:コンピュータ、2521:外部記憶装置、2522,2523:信号伝送線、2530:ユーザーインターフェース。