JP5068164B2 - タウオパシーの治療のための組成物および方法 - Google Patents

タウオパシーの治療のための組成物および方法 Download PDF

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Description

本発明は、微小管関連タウの分子的病理的症状によって起こる、あらゆる神経変性疾患および/または痴呆傾向の疾患(以下、「タウオパシー」と称する)の治療のための薬剤組成物を調製するための、特異的なインドロカルバゾール化合物の使用に関する。さらに、本発明は、神経原線維変性の有効なインヒビターを同定する方法、および神経原線維の病理的症状によって特徴付けられる状態の治療のために、in vitroで、対らせんフィラメントタイプのタウ過剰リン酸化のインヒビターの適切な用量を決定する方法に関する。
異常なタンパク質リン酸化は、現在、神経原線維変性と通常呼ばれている、神経変性のプロセスにおける微小管関連タンパク質タウの病理的凝集に密接に関連することが報告されている。現時点で、約22の一般的な状態ならびに非常にまれな状態を含む該疾患のそれぞれの疾患は、アルツハイマー病(AD)、前頭葉型痴呆(前頭側頭骨変性(FTD)としても知られている)、皮質基底部変性(CBD)、ピック病(PiD)、パーキンソン痴呆症候群(PDD)、核上麻痺、嗜銀性グレイン型疾患(AGD)および一般的に用いられている名前によっては認識されていない、症候学的に機能が相関する、ヒト脳の種々のニューロン集団神経中の神経原線維のもつれ(NFT)の細胞間形成を共有する種々の小疾患が挙げられる。臨床的疾患としての実体とは関係なく、神経原線維のもつれは常に、超構造的に対らせん状フィラメント(PHF)によって構成される、または、頻度は少ないが、直線状フィラメント(SF)によって構成される。分子的に、対らせん状フィラメントは、正常の細胞生物状態では決して認められない、異常にリン酸化された状態のタンパク質タウに関連する微小管(MT)を専ら含んでいる。この病理的リン酸化状態においては、タウタンパク質は、微小管と結合することができず、微小管の固定化および細胞骨格のニューロン特異的組織化および微小管依存性輸送におけるそれらの正常な生理学的機能を果たすことができない。
臨床疾患の神経原線維変性と神経原線維のもつれの主要な関連性は、特に、古典的アルツハイマー病において見られるように、副行の病理的特徴が共存する場合については、長い間、推測されてはいたが、証明することは依然として困難なままであった。それはタウオパシーがヒト脳においてのみ認められるものだからである。特定のタウオパシーがタウにおける突然変位に起因し、これらと同じ突然変異がタウトランスジェニックマウスにおいて、致死的な神経変性表現型を凝集することがわかったとき、この点は明確になった。対らせん状フィラメントがヒトにおいて突然変異を伴って生成されるか、マウスにおいて突然変異を伴って生成されるかに関わらず、プロセスの早い時期に、必ずそれらの生成に、同じタイプのタウ(PHFタウ)の病理的過剰リン酸化が関連している。これは、PHFタウ過剰リン酸化がエチオロジーとは独立した神経原線維変性に共通の前駆体であることの強力な証拠である。したがって、例えば、適切なキナーゼの阻害によってこの病理的リン酸化の生化学を妨害する治療薬は、タウオパシーを治療するのに非常に有効である可能性がある。
グリコシル化されたインドロカルバゾールのグループに属するキナーゼインヒビターは、種々のキナーゼを阻害することから過去10年間、大きな注目を集めている。このクラスの最も顕著なメンバーは、アルカロイド生成物であるスタウロスポリンとK252aである。これらおよび他の複数の誘導体は、種々の癌の徴候の治療に使用するために主として研究されていたものである。国際公開公報第WO97/05140号は、広範囲の、修飾K252a誘導体を記載しているが、PKC阻害活性による、免疫抑制や増殖性疾患(癌)の治療用として例示される化合物は少ない。
国際公開公報第WO97/05140号
これまでのところ、細胞モデルにおいてタウの過剰リン酸化を阻害することが可能な特異的小分子キナーゼインヒビターについてのみ開示されている。K252aの合成アナログの、ある誘導体は、従来技術において開示されている構造的クラスの他の化合物の多くとは対照的に、天然の生成物から採取することはできず、PHFタウの過剰リン酸化を阻害するめに有用な力価および有効性を示すものであった[国際公開公報第00/01699号]。しかしながら、これらの化合物は、高度のキナーゼ特異性を示さず、1以上のキナーゼを阻害したようであるが、その合成は、ラセミ化合物を形成したに過ぎなかった。
さらに、この一連の化合物の物理化学的特性は非常に弱いため、化合物として適用するためには、非GRAS(FDAガイドラインのもとで一般的に安全であると見なされている(Generally Regarded As Safe under FDA
guidelines))賦形剤を用いる必要がある。さらに、特殊化された条件下でさえ、従来の化合物の経口バイオアベイラビリティーは、ラットにおいて通常10%を超えない[国際公開公報第WO95/22331号]。これらの不利な特性におそらく関連して、静脈投与後のラットでの半減期は、約1時間と短く、魅力的なものではない。所与の時点における血漿での化合物の濃度に対する、脳での化合物の濃度として、in vivoで測定した脳/血漿比率も弱く、GRAS−賦形剤を用いた場合、さらに低下する。これは、これらのパラメータに対する賦形剤の影響が容認できないものであることを示唆している。したがって、ヒト病原性突然変異のタウを持つトランスジェニックマウスにような、真正のモデルにおける神経原線維病態の阻害を調べるための長期的なin vivo実験は、そのようなに化合物を用いて行うことはできない。
国際公開公報第WO95/22331号
あいにく、上記従来技術の化合物を製剤に使用することに関する限定は、キナーゼインヒビターのインドロカルバゾールクラスに共通するようである。天然の生成物K252aの誘導体の経口バイオアベイラビリティーも10%を超えないことが報告されている。K252a自体は、ラットにおける最大経バイオアベイラビリティーは13%であり、脳/血漿比率は1以下と良好である。
これらの好ましくない物理化学的特性は、製剤の目的、特に、高い脳/血漿比率が望まれる神経変性疾患および/または痴呆傾向の疾患の治療のための、グリコシル化されたインドロカルバゾールのグループに属するキナーゼインヒビターの使用を制限する。
したがって、この技術においては、高度なキナーゼ特異性およびより良好な溶解性、経口バイオアベイラビリティーおよび脳血液関門貫通を持ち、関連する純エナンチオマーの好都合の合成アクセスを可能にし、真正PHFタウの過剰リン酸化の、強力かつ有効な阻害と神経原線維変性の阻害を提供するグリコシル化されたインドロカルバゾールのグループに属する化合物が必要である。
本発明は、高度なキナーゼ特異性、より良好な物理化学的特性、関連する純粋なエナンチオマーとの好都合な合成アクセス(synthetic access)を持ち、真正PHFタウの過剰リン酸化の、強力かつ有効な阻害と神経原線維変性の阻害を提供するグリコシル化されたインドロカルバゾールのグループに属する化合物、ならびにタウ病理学に関連するあらゆる形態の痴呆症の予防および治療を提供する。本発明は、一般式1で表される化合物が、真正PHFタウの過剰リン酸化の強力かつ有効な阻害と、神経原線維変性の阻害、これらの化合物についてこれまで認識されていなかった特殊な使用に適するという事実に基づいている。したがって、一般式1で表される化合物は、以下の疾患のいずれかの予防および治療に使用することができる。疾患としては、アルツハイマー病、ピック病、前頭側頭骨の散発性痴呆および17番染色体に関連するパーキンソン症の前頭側頭骨の痴呆、進行性核上麻痺(PSP)、皮質基底部変性(CBD)および亜急性硬化性全脳炎、(家族性)多系タウオパシー痴呆症、家族性ゲルトマン・ストロイスラー・シャインカー病(Gerstmann-Straussler-Scheinker
Disease)、プリオンタンパク質大脳アミロイド血管障害(Prion Protein Cerebral Amyloid
Angiopathy)および他のプリオンタンパク質関連疾患が含まれる。
特に、本発明は、一般式1で表されるインドロカルバゾール化合物、または薬学的に許容可能なそれらの塩の使用であって、微小管関連タウの分子的病理的症状によって起こる神経変性疾患および/または痴呆傾向の疾患の予防もしくは治療のための薬剤組成物の製剤のための使用について言及している。
Figure 0005068164
式中、
は、COOR(R=H、メチル、エチル、もしくはシクロプロピル)、またはCONHR(R=H、メチル、エチル、もしくはシクロプロピル)のいずれかであり、好ましくは、CONHRであり、Rはさらに好ましくは、Hもしくはメチルであり;
およびRは、それぞれ個別に、H、F、メチル、OH、NH、またはNR(RおよびRは、それぞれ個別に、Hもしくはメチル)であり、好ましくはHであり;
Zは、(H、H)、またはOのいずれかであり、好ましくは(H、H)である。
ある好ましい態様において、一般式1で表される化合物は、薬学的に許容可能な塩の形態で用いられる。あらゆる薬学的に許容可能な塩を用いることができる。好ましい塩は、ヒドロクロリド、硫酸塩、メシラート、およびp−トイウオールスルホン酸塩(p-toiuol sulfonic acid salts)である。
別の態様は、微小管に関連するタウの分子的病理的症状によって起こる神経変性疾患および/または痴呆傾向の疾患を治療または予防するための方法であって、一般式1で表される化合物または薬学的に許容可能なそれらの塩の有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む方法である。
Figure 0005068164
式中、
は、COOR(R=H、メチル、エチル、もしくはシクロプロピル)、またはCONHR(R=H、メチル、エチル、もしくはシクロプロピル)のいずれかであり;
およびRは、それぞれ個別に、H、F、メチル、OH、NH、またはNR(RおよびRは、それぞれ個別に、Hもしくはメチル)であり;
Zは、(H、H)、またはOのいずれかである。
さらに好ましい態様において、神経原線維変性のインヒビターおよびそれらの有効性を同定する方法が記載されている。該方法は、下記(i)〜(iv)を含む。
(i)哺乳動物脳から取得した代謝的に活性のある脳切片組織を、濃度を変化させながら、候補化合物とともにインキュベートすること;
(ii)PP2Aインヒビターを用いてタウの過剰リン酸化を誘発すること;
(iii)組織または組織の抽出物中のタウホスホエピトープを、免疫化学的方法によって定量すること;および、
(iv)前記脳切片組織中のホスホエピトープ誘発を、濃度を変化させたインヒビター化合物に暴露した場合と、未処置の対照組織の場合とで比較すること。
本発明において、オカダ酸およびカリクリン、特に、オカダ酸をPP2Aインヒビターの例として挙げることができる。
本発明のさらに別の態様は、神経原線維病理学によって特徴付けられる状態の治療のための、対らせんフィラメントタイプのタウの過剰リン酸化のインヒビターの適切な用量を決定するための方法である。この方法は、下記(i)〜(ii)を含む。
(i)PP2Aインヒビターによって刺激される脳切片においてインヒビターを滴定し、有効な組織濃度を測定すること;および
(ii)該用量レジメンのファーマコキネティック評価を行って、患者の中枢神経系において有効な濃度を達成すること。
神経原線維病理学によって特徴付けられる状態の治療のための、対らせんフィラメントタイプのタウの過剰リン酸化のインヒビターの適切な用量を決定するための方法も開示されている。この方法は、下記(i)〜(iv)を含む。
(i)健康な、年齢相応の対照被検者の脳脊髄液中の、対らせんフィラメントタイプのタウホスホエピトープの正常レベルを測定すること;
(ii)ある形態の神経原線維変性に罹患した単独の被験者において、インヒビターの投与量を、数週間の間隔で増量すること、または、別々の被験者に対してインヒビターの用量を増加させること;
(iii)治療を開始する直前に、そして、インヒビターを数週間投与し続けた後に再び、同じ被験者の脳脊髄液中の、対らせんフィラメントタイプのタウホスホエピトープの減少を免疫化学的に評価すること、および
(iv)ある形態の神経原線維変性に罹患した個別の被験者において、脳脊髄液中の対らせんフィラメントタイプのタウホスホエピトープのレベルを、治療を開始する前後で比較し、対らせんフィラメントタイプのタウホスホエピトープのレベルが、健康な、年齢相応の対象において認められた範囲まで減少した場合の用量を有効容量として同定すること。
一般式1で表される化合物は、国際公開公報第WO00/01699号に開示されているタウの過剰リン酸化のインヒビターに関連する好ましくない物理化学的特性に関する、製剤目的での使用を制限していた重要な問題を解決するものである。一般的なインドロカルバゾールの構造的クラスは、溶解性、調剤、バイオアベイラビリティーの点が悪いことが知られていた。対照的に、一般式1で表される化合物は、対応するK252aの誘導体においてこれまでに報告されていたものよりも良好な溶解性、経口バイオアベイラビリティーおよび脳血液関門貫通を持っている。そして後者の特性は、中枢神経系のタウオパシーの治療において特に重要である。
国際公開公報第WO00/01699号
国際公開公報第WO00/01699に記載の化合物と比較して、ここで開示されている化合物によって、薬理経済学的な向上およびさらに安全性が付与されることも同様に重要である。これによって、関連する純粋なエナンチオマーとの好都合な合成アクセス(synthetic
access)を可能にする。
一般式1で表され化合物として、神経原線維変性によって特徴付けられる疾患の治療に有用な特性の組み合わせ、ならびにそれらの好都合なアクセス可能性の点から、天然の(+)−K252aに対応する絶対構造中、式2および3で表された化合物が好ましい。
Figure 0005068164
一般式2および3で表される化合物は、以下の疾患のいずれかの予防および治療に使用することができる。疾患としては、限定されないが、アルツハイマー病、ピック病、前頭側頭骨の散発性痴呆および17番染色体に関連するパーキンソン症の前頭側頭骨の痴呆、進行性核上麻痺(PSP)、皮質基底部変性(CBD)および亜急性硬化性全脳炎、(家族性)多系タウオパシー痴呆症、家族性ゲルトマン・ストロイスラー・シャインカー病(Gerstmann-Straussler-
Scheinker Disease)、プリオンタンパク質大脳アミロイド血管障害(Prion Protein Cerebral Amyloid
Angiopathy)および他のプリオンタンパク質関連疾患が含まれる。
発明の詳細な説明
本発明の本質を理解することができるように、本発明の特定の局面、様式、態様、変形例、および特徴を以下に、種々の詳細レベルで示す。一般に、これらの開示は、新たな方法、およびそれを必要とする患者の治療において単独もしくは組み合わせて用いることができる組成物を提供する。したがって、本発明の種々の局面は、微小管関連タウの分子的病理的症状によって起こる神経変性疾患および/または痴呆傾向の疾患(以下「タウオパシー」と呼ぶ)の治療のための薬剤組成物の製剤のため特異的なインドロカルバゾール化合物の使用に関する。本発明の他の種々の局面はさらに、神経原線維の病理的特徴を持つ状態の治療のために、in
vitroでの対らせんフィラメントタイプのタウ過剰リン酸化のインヒビターの適切な用量を決定する方法に関する。別の局面において、本発明は、本発明の神経原線維変性の有効なインヒビターを同定する方法を提供する。これらの局面を示す種々の態様を以下に述べる。
定義
本明細書において用いられている用語の定義を以下に記載する。他の用語の定義は、米国エネルギー省科学局、ヒューマンゲノムプロジェクト(the U.S. Deptment of Energy, Office of Science, Human Genome Project)が提供する用語集を参照されたい
(http://www.ornl.gov/sci/techresources/Human_Genome/glossary/)。
米国エネルギー省科学局、ヒューマンゲノムプロジェクト(the U.S. Deptment of Energy, Office of Science, Human Genome Project)が提供する用語集 + (http://www.ornl.gov/sci/techresources/Human_Genome/glossary/)
本明細書において用いられている用語「抗体」は、限定されないが、ポリクローナル抗体(pAbs)、モノクローナル抗体(mAbs)、ヒト化抗体もしくはキメラ抗体、および抗体フラグメントをタンパク質に結合させるのに十分な生物学的機能をもつ抗体フラグメントを含む。
本明細書において用いられている用語「臨床反応」は、反応の量的測定、反応無し、および有害反応(すなわち副作用)のいずれか、または全てを意味する。
本明細書において用いられている用語「臨床試験」は、特定の治療に対する反応に関する臨床データを集めるために設計された、あらゆるリサーチ研究を意味し、限定されないが、フェーズI、フェーズIIおよびフェーズIII臨床試験を含む。標準的な方法を用いて、患者集団を限定し、被験者登録させる。
本明細書において用いられている用語「有効量」の化合物は、望ましい薬物動態学的、毒物学的、治療的および/または予防的効果を達成するのに十分な量、治療される疾患、例えば、微小管関連タウの分子的病理的症状によって起こる神経変性疾患および/または痴呆傾向のあらゆる疾患(以下「タウオパシー」と呼ぶ)の症状を予防または軽減させる量を言う。被験者に投与される化合物の量は、疾患の種類や重篤度および一般的な健康様態、年齢、性別、体重および薬剤に対する認容度などの個体の特徴によって変わる。当業者は、これらおよび他のファクターを考慮して、適切な投与量を決定することができる。典型的には、治療的または予防的効果を達成するために十分な本発明の化合物の量は、体重1kgあたり、約0.001mg/日乃至約100mg/日である。好ましくは、該投与量は、体重1kgあたり、約1mg/日乃至約10mg/日である。本発明の化合物はまた、それぞれ組み合わせて、または1以上のさらなる治療的化合物と組み合わせて投与することができる。
本明細書において用いられている用語「患者・被験者」は、好ましくは患者・被験者がヒトなどの哺乳動物であることを意味しているが、例えば、家庭動物(例えば、イヌ、ネコなど)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)、および実験動物(例えば、サル(例えば、カニクイザル)、ラット、マウス、モルモットなど)でもよい。
本明細書において用いられている用語「タウオパシー」は、タウ病理的症状に関連するあらゆる形態の痴呆症を言う。アルツハイマー病と、いくつかの形態の前頭側頭骨の散発性痴呆(ピック病、前頭側頭骨の散発性痴呆および17番染色体に関連するパーキンソン症の前頭側頭骨の痴呆)が最も一般的な形態のタウオパシーである。他のタウオパシーとしては、限定されないが、進行性核上麻痺(PSP)、皮質基底部変性(CBD)および亜急性硬化性全脳炎、(家族性)多系タウオパシー痴呆症、家族性ゲルトマン・ストロイスラー・シャインカー病(Gerstmann-Straussler-
Scheinker Disease)、プリオンタンパク質大脳アミロイド血管障害(Prion Protein Cerebral Amyloid
Angiopathy)、および他のプリオンタンパク質関連疾患が挙げられる。
本明細書において用いられているように、試薬または薬物の、被験者または患者への投与は、自己投与および他者からの投与が含まれる。記載した医学的状態の治療または予防の種々の様態は、「実質的」であることを意味し、それは、総合的な治療または予防もしくはほぼ総合的な治療または予防を含み、それによって、いくつかの生物学的または医学的に関連する結果が達成される。
本発明の1以上の態様の詳細を以下の添付の明細書中に示す。ここに記載のものと類似もしくは同等のあらゆる方法および材料は、本発明のプラクティスまたは試験において使用することができるが、好ましい方法および材料を以下に述べる。本発明の他の特徴、目的および効果は、明細書および請求の範囲から明らかであろう。明細書および添付の請求の範囲中では、文脈から明らかに異なる場合を除いて、単数形は複数を含む。他に特に記載がない限り、本明細書において用いられている全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって共通に理解されているものと同じ意味を持つ。参照した個別の文献、特許、または特許出願が特に、個別に全ての目的のためにその全体が引用によって援用されるのと同程度に全ての目的のために、全ての引例を引用によってその全体を援用する。
グリコシル化されたインドロカルバゾールのグループに属するキナーゼインヒビターは、種々のキナーゼを阻害するものとして過去10年間大きく注目されてきている。このクラスの最も顕著なものは、天然アルカロイド生成物であるスタウロスポリンとK252aである。これら、および他の誘導体について、主に種々の癌の徴候におけるその治療的使用について検討した。少数の症例において、MLK(多重系列キナーゼ)標的を介してのJNK経路のその阻害活性ゆえに、パーキンソン病(PD)のための特異的なK252a誘導体CEP−1347のような中枢神経系(CNS)の徴候について熟考した[Maroney et al.,
J. Biol. Chem,, 276, 25302-8 (2001)]。キナーゼ阻害活性とは無関係に、K252aの誘導体はまた、それらの明らかなニューロトロフィンゆえに神経変性疾患に有用である[例えば、国際公開公報第WO95/07911号]。国際公開公報第WO97/05140号は、多種の修飾K252a誘導体を記載しているが、PKC阻害活性による、免疫抑制や増殖性疾患(癌)の治療用として例示される化合物は少ない。
Maroney et al., J. Biol. Chem,, 276,25302-8 (2001) 国際公開公報第WO95/07911号
これまでのところ、細胞モデルにおいてタウの過剰リン酸化を阻害することが可能な特異的小分子キナーゼインヒビターについてのみ開示されている。K252aの合成アナログの、ある誘導体は、従来技術において開示されている構造的クラスの他の化合物の多くとは対照的に、天然の生成物から採取することはできず、PHFタウの過剰リン酸化を阻害するめに有用な力価および有効性を示すものであった[国際公開公報第00/01699号]。しかしながら、これらの化合物は、高度のキナーゼ特異性を示さず、1以上のキナーゼを阻害したようであるが、その合成は、ラセミ化合物を形成したに過ぎなかった。
本発明は、一般式1で表されるグリコシル化インドロカルバゾールのグループに属するキナーゼインヒビター 化合物が、真正PHFタウの過剰リン酸化の強力かつ有効な阻害と、神経原線維変性の阻害、これらの化合物についてこれまで認識されていなかった特殊な使用に適するという事実に基づいている。
本発明の化合物は、従来技術の化合物と比べて、さらに重要な効果を提供する。一般的なインドロカルバゾールの構造的クラスは、溶解性、調剤、バイオアベイラビリティーの点が悪いことが知られていた。対照的に、一般式1で表される化合物は、対応するK252aの誘導体においてこれまでに報告されていたものよりも良好な溶解性、経口バイオアベイラビリティーおよび脳血液関門貫通を持っている。そして後者の特性は、中枢神経系のタウオパシーの治療において特に重要である。したがって、本発明の化合物は、国際公開公報第WO00/01699号に開示されているタウの過剰リン酸化のインヒビターに関連する好ましくない物理化学的特性に関する、製剤目的での使用を制限していた重要な問題を解決するものである。
他の同様に重要な本発明の効果としては、本発明の化合物によって、薬理経済学の向上および更なる安全性が付与されることがあげられる。高度なキナーゼ特異性を示さず、複数のキナーゼを阻害したようであったが、その合成によってラセミ化合物が作製されただけであった従来技術の化合物[国際公開公報第WO00/01699号参照]とは対照的に、本発明の化合物は、より高いキナーゼ特異性を示し、関連する純粋なエナンチオマーとの好都合な合成アクセス(synthetic access)を可能にする
化合物の調製
一般式1で表される化合物は、市販のスタウロスポリンから、例えば、国際公開公報第97/05140号や、従来技術[例えば、国際公開公報第WO94/02488号]のインドロカルバゾール誘導体化の状況で開示されている、一般的に確立した官能基化学に記載の方法を用いて調製することができる。これらの文献は、引用によって援用する。複数グラムの量の式3で表される好ましい化合物を、一般式1で表される化合物(R=COOCH、国際公開公報第WO97/05140号に記載のようにして得られる)のそれぞれのカルボキシメチル誘導体を、テトラヒドロフラン中のメチルアミンと反応させることによって調製する。あるいは、カルボキシメチル誘導体は、国際公開公報第WO97/05140号のようにアルカリ条件下でまず加水分解し、次に、濃縮した試薬(例えば、1,1’−ジカルボニルジイミダゾール)の存在下で、テトラヒドロフラン中のメチルアミンと反応させてもよい。経口投与のために、化合物のあらゆるin
vivo実験における賦形剤中での溶解性を向上させるために、式3で表される化合物は、塩の形態、例えば、必要量の対応する酸を、式3で表される化合物のテトラヒドロフラン溶液に添加し、溶媒を蒸発させることによって、ヒドロクロリド塩に変換することができる。
国際公開公報第WO94/02488号
神経原線維変性のインヒビターおよびその力価/有効性を同定する方法
本発明は、神経原線維変性のインヒビターおよびそれらの有効性を同定する方法を提供する。その方法は、以下のステップを含む。
(i)哺乳動物脳から取得した代謝的に活性のある脳切片組織を、濃度を変化させながら、候補化合物とともにインキュベートすること;
(ii)PP2Aインヒビターを用いてタウの過剰リン酸化を誘発すること;
(iii)組織または組織の抽出物中のタウホスホエピトープを、免疫化学的方法によって定量すること;および、
(iv)前記脳切片組織中のホスホエピトープ誘発を、濃度を変化させたインヒビター化合物に暴露した場合と、未処置の対照組織の場合とで比較すること。
ステップ(i)において、代謝的に活性のある脳切片は、屠殺した成体ラットから採取したばかりの脳組織、好ましくは海馬を反応させ、組織チョッパーを用いて切片化したものから取得できる。例えば、生理学的な低カルシウム緩衝液中で採取後、該切片を、同じ緩衝液中であるが生理学的カルシウム濃縮物の存在下で候補化合物とともに、好ましくは、一般式1で表される化合物とともに、濃度を、例えば、30nM〜10μMの範囲で変化させながら、34〜37℃の範囲で、例えば、15分間プレインキュベートした。したがって、ステップ(ii)は、PP2Aインヒビターを添加して、例えば、少なくとも1時間行った。好ましくは、オカダ酸(1μM)を用いる。ステップ(iii)に関しては、キナーゼ、ホスファターゼおよびプロテアーゼを停止させるための試薬を含有する非変性緩衝液を用いて、切片を抽出することができる(例えば、超音波処理による)。免疫化学的分析の前に、タウタンパク質を濃縮するために抽出物を手短に沸騰させてもよい。こうした条件下でも抽出物中で可溶性のままである。従来の免疫ブロッティング法(例えば、ウエスタンブロット法)または別法としてリン酸化非依存性タウ抗体を用いたELISA法を使用することによって、固定量のタンパク質を含有する抽出物サンプル中のPHF型タウホスホエピトープの量を、例えば、市販されている染色キットまたは化学発光キットを用いて、現像することによって測定することができ、次いでデンシトメトリ(免疫ブロット)または光の吸収もしくは発光の直接的な測定(ELISA)を行うことができる。より正確にするために、このようにして得られたシグナルをタウの合計量に正規化してもよい。これは、リン酸化非依存性タウ抗体を用いた同じ方法によって測定される。当該タウホスホエピトープの正規化された量は、任意の単位の強度におけるタウの合計に対するタウホスホエピトープの比率で表される。最後に、ステップ(iv)は、濃度を変化させたタウの過剰リン酸化インヒビターの存在下で任意に正規化された量の病理的タウホスホエピトープと、PP2Aインヒビターのみによって誘導された最大量とを比較する。PHFタウホスホエピトープの誘発を50%減少させるタウの過剰リン酸化インヒビターの濃度は、部分的に効果があると考えられる。一方、PHFタウホスホエピトープの量を、PP2Aインヒビターによるあらゆる誘発を行わない場合に脳切片に認められる標準レベルまで減少させるタウの過剰リン酸化インヒビターの最小濃度が、最低完全有効濃度である。
神経原線維病理学によって特徴付けられる状態の治療のための、対らせんフィラメントタイプのタウの過剰リン酸化のインヒビターの適切な用量を決定するための方法
神経原線維病理学によって特徴付けられる状態の治療のための、対らせんフィラメントタイプのタウの過剰リン酸化のインヒビターの適切な用量を決定する2つの方法を説明する。双方の場合において、被験者は、任意の哺乳動物である。ある態様において、該哺乳動物はヒトである。別の態様において、哺乳動物は、該方法を行ったあと任意に屠殺される実験動物である。
第1の方法においては、以下のステップが行われる。
(i)前述の方法によって、PP2Aインヒビターによって刺激される脳切片においてインヒビターを滴定し、有効な組織濃度を測定する。
(ii)該用量レジメンのファーマコキネティック評価を行って、患者の中枢神経系において有効な濃度を達成する。
このステップの好ましい態様を以下に述べる。ここでは、タウの過剰リン酸化のインヒビター、好ましくは、一般式1で表される化合物を、種々の用量で、適切な経路、好ましくは経口で、被験体に投与する。該化合物の経時的な濃度は、投与後、一定期間の間繰り返し採取した、固定体積の血漿中の化合物の量を測定することによって評価することができる。結局、該化合物は、非水の混合可能な有機溶媒によって余すところ無く抽出することができ、例えば、HPLCによって、好ましくは、光度測定または蛍光定量的検出方法によって、任意の単位で定量することができる。次いで、血漿サンプルの抽出によって確立された、既にスパイク形となっている標準曲線に対するこれらの値と、ex vivo での化合物の既知の量とを比較することによって、絶対量の化合物を取得する。次いで最大血漿濃度の時点を選択して、別個の一連の試験において、脳中の化合物の量を求める。動物被験体に関しては、適切な投与後間隔で脳を切除し、非水の混合可能な有機溶媒を用いて、例えば、超音波処理によって余すところ無く抽出し、その化合物の量を、血漿での処置と同様にしてHPLCによって確立する。ヒト被験者に関しては、化合物の量は、定量的核磁気共鳴画像診断(MRI)によって非侵襲的に測定することができる。この方法の十分な感受性を得るために、該化合物は、この目的にとって好適なように、例えば、インヒビター分子の合成的に好都合の位置に13Cアイソトープを組み込むことなどによって、同位体標識した形態で投与することができる。
第2の方法は、ヒト被験者に特に好適であり、以下のステップを含む。
(i)健康な、年齢相応の対照被検者の脳脊髄液中の、対らせんフィラメントタイプのタウホスホエピトープの正常レベルを測定する。
(ii)ある形態の神経原線維変性に罹患した単独の被験者において、インヒビターの投与量を、数週間の間隔で増量すること、または、別々の被験者に対してインヒビターの用量を増加させる。
(iii)治療を開始する直前に、そして、インヒビターを数週間投与し続けた後に再び、同じ被験者の脳脊髄液中の、対らせんフィラメントタイプのタウホスホエピトープの減少を免疫化学的に評価する。
(iv)ある形態の神経原線維変性に罹患した個別の被験者において、脳脊髄液中の対らせんフィラメントタイプのタウホスホエピトープのレベルを、治療を開始する前後で比較し、対らせんフィラメントタイプのタウホスホエピトープのレベルが、健康な、年齢相応の対象において認められた範囲まで減少した場合の用量を有効容量として同定する。
ここで、この方法の好ましい態様について述べる。
ステップ(i)において、PHFタウホスホエピトープのコントロール値の参照範囲は、好ましくは、Thr231またはSer422のリン酸化に関するものを健康な被験者において測定した。被験者は、それぞれの神経変性疾患が発症しやすい年齢とするのが好適である。例えば、2〜15mlの脳脊髄液を脊椎穿刺によって抜き取る。次いで、そのようなサンプルの等量のアリコートを、例えば、一般に入手可能なELISAキットなどによって分析する。より正確にするために、該サンプルを、同等のタンパク質相当量に正規化してもよい。この試験の感受性をより高めるために、該サンプルを真空蒸着によって濃縮して用いてもよい。被験者が、採取後1年以内に神経変性疾患の徴候を示さない場合、すべての健康であると証明された被験者の最も高いレベルのタウホスホエピトープを「受容可能なレベル」とした。
ステップ(ii)は、タウの過剰リン酸化のインヒビター、好ましくは、一般式1で表される化合物を、確立された機能的診断基準によって神経原線維病理によって特徴付けられる疾患であると臨床的に診断された患者に対して投与することを含む。該診断は、バイオマーカー診断基準、最も好都合には、ステップ(iii)での投与前試験の状況で確立された脳脊髄液内のタウホスホエピトープに関連する基準によってサポートされ得る。化合物の用量は、どの所与の患者においても数週間の間隔で増量することもできるし、または研究コホート内の各患者に異なる用量を投与することもできる。さらに、別々の用量間隔を採用することもできる。
ステップ(iii)において、タウ過剰リン酸化のインヒビター、好ましくは、一般式1で表される化合物を用いて治療された患者のそれぞれから採取した脳脊髄液を、化合物1を投与する直前に採取し、ステップ(i)で用いたものと同じ分析手段および手順を用いてPHFタウホスホエピトープの病理的参照レベルを確立した。その後、インヒビターを用いた治療を開始し、そこではステップ(ii)の用量レジメンを採用した。あらゆる用量のインヒビターを用いて連続的に治療した数週間後、各患者から、さらに脳脊髄液サンプルを抜き取り、各患者の治療前サンプルを直接参照しながら分析を行った。最終的に、二つの治療前脳脊髄液サンプルならびに健康な対照のサンプル(ステップ(i))を、同時に、治療後サンプルと同じELISAプレート上で再度試験し、試験の安定性と再生性を確認した。
最後に、ステップ(iv)においては、被験者個体において用量上昇によって決定するか、または、被験者集団で別個に固定した用量レジメンによって決定したインヒビターの用量および/または長期投与レジメンは、PHFタウホスホエピトープのレベルを「許容可能なレベル」に抑制するものであり(ステップ(i)参照)、完全に有効な長期的用量であると見なされる。それより高いが治療前レベルより低い、あらゆるレベルは、個体被験者にとって部分的に有効な用量である。
中枢神経系組織モデルにおけるPHFタイプのタウの過剰リン酸化の阻害のための活性濃度の測定
PHFタイプのタウの過剰リン酸化を有効に阻害するための、一般式1で表される化合物のin situで必要な濃度は、新鮮に調製した代謝的に活性のある成体ラット海馬脳切片の組織モデル、この目的のために有用であることが予めわかっていなかったモデルにおいて評価した。どの既知の分子マーカーによっても、ヒトアルツハイマー脳からのPHFタウに認められるものとの識別が実質的に不能な、真正のPHFタイプのリン酸化事象は、ホスファターゼインヒビターオカダ酸(OA)の投与によってそのような脳切片中に急速に誘発される[Gong et al., Brain Res. Brain Res. Protoc., 6,134-140 (2001);
国際公開公報第WO01/57535号;WO00/01699号]
Gong et al., Brain Res. Brain Res.Protoc., 6,134-140 (2001) 国際公開公報第WO01/57535号
PHFタイプのタウの過剰リン酸化の診断基準は多数存在し、それらの大半は、タウの20より多くのリン酸化の部位の全ての中でリン酸化の特異的な部位を認識するモノクローナル抗体との反応を行い、その全てはPHF状態のタウにおいて最大限にリン酸化される。いわゆる「プロリン指向性」部位のクラスに属する部位の大半は、不変的にSer−ProまたはThr−Proモチーフによって特徴付けられる。これらのモチーフのリン酸化は、タンパク質のコンホーメーションに対して深遠な作用を有している。リン酸化をレポートする部位指向性のリン酸化感受性抗体、例えば、Ser199、Ser202、Thr205、Thr231、Ser235、Ser396、Ser404、Ser402は、種々のソースからルーチンで入手可能である。少数のホスホエピトープは、通常のリン酸化されたタウには全く存在しないので、PHFタウに対して特に特異性を有する。例としては、リン酸化とコンホーメーションの双方に依存する複合体エピトープをもつmAb AT100、最も顕著には、タウのSer422リン酸化のみに依存するmAb AP422があげられる。後者の抗体のエピトープの制限が、特に簡単であるため、in vivoならびにin vivoのすべての真正PHF−タイプのタウリン酸化現象に対する特に有用な診断基準となる[国際公開公報第WO01/57535号]。上記リン酸化モチーフ以外に、少数の非プロリン指向性リン酸化部位もまた、微小管に対する結合を担うタウのドメイン内に位置するSer262などのPHFタウリン酸化状態に特異的に結合している。
PHFタウ様リン酸化状態についての高度に特徴的な別の診断基準は、SDS−PAGEゲル上で最大限に制限された電気泳動移動度であり、それは、全てのプロリン指向性リン酸化の効果を変更するコンホーメーションの組み合わせであることが報告されている。この状態で、PHFタウは、微小管に結合する能力、脱リン酸化によって完全に逆転され得る機能的欠乏を失っている。
オカダ酸で処置した脳切片においては、上記病理的マーカーの多くがモデル化されている。活性インヒビター化合物を検出するために、新たに調製された代謝的に活性のある単離された切片を、生理学的緩衝液(人工脳脊髄液またはクレブス-リンガー溶液)中で一定の酸素化状態に保ち、一般式1で表される化合物の濃度の範囲でプレインキュベートした。次いで該切片を、キナーゼ活性ならびにホスファターゼの双方を停止させる緩衝液を用いて抽出した。そしてそのような組織ホモジネートの可溶性上清をSDS−PAGEによって分離し、そしてウエスタンブロット法を行った。タウの部位特異的リン酸化モチーフに向けたモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を用いた標準的な方法から免疫ブロットを開発した。その例としては、限定されないが、Thr181、Ser199/Ser202/Thr205(mAb AT8)、Thr212、Thr231(mAb AT100)、Ser235、Ser262、Ser396(mAb PHF−1)、Ser404およびSer422(mAb AP422)があげられる。次いで、リン酸化感受性タウ抗体を用いたシスターブロットを調べ、特定のエピトープを定義するリン酸化の程度の正確な量の測定を表す全体のタウの免疫反応性に対するそれぞれのホスホエピトープの強度比を作成することによって、そのシグナルの強度をサンプル中のタウの総量に正規化することができる。同種の免疫化学的試薬を用いたELISA法によってより高速に同様の分析を行うことができることを当業者は容易に理解できる。別法として、その分析を一般的に確立している抗体染色技術をin situで、凍結組織またはホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、または類似の変性固定剤を用いて前もって固定しておいたパラフィン包埋組織の薄い切片上で行うこともできる。
顕著に、一般式1で表される化合物、特に式2および式3で表される化合物は、ホスファターゼ阻害によって誘導された非常に一般的なリン酸化作用の性質にも関わらず、オカダ酸によるこれらのPHF−マーカーの全ての補体の誘発を阻止する。該化合物は、基本的に脳切片中のタウのリン酸化の正常な生理学的パターンを阻止および防止するものであり、それは、in vivoのリン酸化のパターンに類似するものである。化合物の力価は、IC50値=200nM(式2または3で表される化合物と同様)から10μMまでの範囲である。用量反応性の挙動を詳細に分析したところ、同様に驚くべきことに、全てのPHFタウマーカーは、活性化合物によって、類似のIC50値で共滴定されていることがわかった。このことは、PHFタウの過剰リン酸化は、刺激剤オカダ酸の性質に基づいて予期されうる事象ほど異質ではないことを示唆するものである。タウの過剰リン酸化は一般的に10×IC50の濃度で完全に抑制される。しかしながら、そのような完全に有効な濃度においては、基礎となる正常リン酸化パターンが影響を受けない、これは、in vivo化合物が病理的タウリン酸化事象か生理学的タウリン酸化事象かを選択するものであることを示唆するものである。これらのデータから、例えば、式2または3で表される化合物については、PHFタイプのタウの過剰リン酸化を完全に抑制するためには、脳での濃度が少なくとも1μMであることが望ましい。
一般式1で表される化合物の、特にタウオパシーに関連するリン酸化に対する有効性は、インドロカルバゾール化合物クラスの頻繁に観察される特徴ではない。従来技術の特定のインドロカルバゾールキナーゼインヒビター、CEP−1347(置換K252a誘導体など)、または親化合物スタウロスポリンは、これらの脳切片過剰リン酸化モデルにおいては非活性である。これらのキナーゼインヒビター、特に後者は、それほど特異的ではないにもかかわらず、多数のキナーゼを潜在的に阻害する。この点から、一般式1で表される化合物の有効性は期待できなかった。
中枢神経系でのin vivoでの一般式1で表される化合物の有効な濃度に到達するための用量の決定
タウの過剰リン酸化のインヒビターとしての一般式1で表される化合物の可能性については、すでに国際公開公報第WO00/01699号に記載がある。しかしながら、この一連の化合物の物理化学的特性は非常に低い。その結果、化合物を投与するためには、非GRAS賦形剤を使用する必要がある。さらに、特別な状況での適用では、従来技術の化合物の経口バイオアベイラビリティーは通常ラットにおいて10%を超えない[国際公開公報第WO95/22331号]。これらの好ましくない特性におそらく関連して、静脈投与後のラットでの半減期は、約1時間と短く、魅力的なものではない。所与の時点における血漿での化合物の濃度に対する、脳での化合物の濃度として、in
vivoで測定した脳/血漿比率も弱く、GRAS−賦形剤を用いた場合、さらに低下する。これは、これらのパラメータに対する賦形剤の影響が容認できないものであることを示唆している。ヒト病原性突然変異のタウを持つトランスジェニックマウスにような、真正のモデルにおける神経原線維病態の阻害を調べるための長期的なin vivo実験は、そのようなに化合物を用いて行うことはできない。
残念ながら、上記従来技術の化合物を製剤に使用することに対する限定は、キナーゼインヒビターのインドロカルバゾールクラスにも共通するようである。天然の生成物K252aの誘導体の経口バイオアベイラビリティーも10%を超えないことが報告されている。K252a自体は、ラットにおける最大経口バイオアベイラビリティーは13%であり、脳/血漿比率は1以下と良好である。
これらの公知の困難に鑑み、動物モデルまたはヒト被験体での長期の有効性の研究は、非常に時間と費用がかかるので、中枢神経系を一般式1で表される化合物に曝露して、好適に設計されたファーマコキネティック研究によって、用量と比較して評価することが望ましい。上記組織モデルによって決定されたように、有効濃度はin vivoでの標的への曝露を規定する。驚くべきことに、一般式1で表される代表的な化合物を、特に、塩の形態で適用したとき、ラットでの経口バイオアベイラビリティーは上記例に比べ2〜3倍になった。また、脳/血漿比率は、1に到達し、またはさらには、1を超えた。このことは、脳血液関門を超えて行われる活性的な摂取メカニズムを示唆している。この所見は、キナーゼ選択性があまり高くないため、これらのキナーゼインヒビターの中枢神経系への適用に特に関連性を有する。このように、脳貫通が適度に向上することにより、周辺組織への曝露を低くすることができ、したがって、適度なキナーゼ選択性によって、非中枢神経系の副作用の危険性を減少させることができる。別の重要な利点は、十分な適用がGRAS−賦形剤を用いたときのみ通常は達成できることである。よりよい物理化学的な特性に関連しているものと思われるが、半減期もまた、ラットでの静脈注射後の式3で表された化合物の場合、2〜3時間で十分な範囲まで向上する。類似の研究は、他の種、例えば、マウスにも適用可能であることを当業者は理解するであろう。ヒト被験者の場合、化合物の中枢神経系への浸透を評価するために非侵襲的な画像化技術、例えば、MRI研究に好適な一般式1で表される化合物を同位体標識した後に化合物を評価することが好ましい。
偶然のタウの過剰リン酸化のインヒビターの活性を伴う挙動によって、一般式1で表される化合物、特に式2および3で表される化合物が、アルツハイマー病やタウオパシーのグループ慢性の中枢神経系の病状の治療に一般的に実行可能な注入量の範囲(例えば、5〜20mg/kg)で有用であることが証明された。
実験動物モデルにおいて真正の神経原線維の病理学によって特徴付けられる神経変性性の病状の治療
一般的に、神経原線維の病理学は、ヒト以外のいずれの野生型の種でも、いずれのレベルでも認められない。このことによって、原発の疾患のメカニズムの一部としてのこの現象の関連さえ疑わしくなるほどに、この種の神経変性の研究を大いに阻害していた。神経の、全ての生化学的異常および機能不全をもつ特定のタウオパシーは、種々の単一のタウ突然変異から発することの発見により、そのような疾患のプロセスにおけるタウの原因的役割が証明された。さらに、タウのヒト病原性突然変異をトランスジェニックマウスに導入することによって、小さな実験動物での真正病理学をモデル化することができ、治療薬のコンセプトテストを決定的に証明した。しかしながら、疾患プロセスの原因における、対らせんフィラメントの形成に関連する病理的タウのリン酸化の役割は依然として明らかでない。すなわち、異常なタウのリン酸化は、神経毒性タウ凝集物を生成する原因鎖の上流または下流であるのか、または単に、それが単なるタウ病理状態の随伴現象であるのかが明らかでない。神経原線維変性状態でのタウの過剰リン酸化のインヒビターの有効性は、上流であり、凝集の原因であるかどうかを合理的に予測することができたに過ぎない。
家族性タウオパシーの例として、タウにおける突然変異P301L(微小管結合繰り返しドメインの「ヒンジ」領域の突然変異)は、50〜60歳くらいのヒトにおいて家族性の形態のFTDP(パーキンソン症の前頭側頭骨の痴呆)を引き起こす[Hutton
et al., Nature 393, 702-705 (1998)]。そのような突然変異ヒトタウを持つトランスジェニックマウスにおいては、発現がプリオンプロモータによって引き起こされて、内因性のマウスタウと類似のタンパク質レベルになったとき、8〜12月齢で発症するALS(筋萎縮性側索硬化症)と類似の運動性疾患フェノタイプで死んだ[Lewis et al., Nature Genet, 25,
402-405 (2000)]。該フェノタイプは、ヒトのそれとは異なる(主に前頭葉の病理状態)、なぜなら、神経原線維の病理状態のマウスでの分布は、主に脊髄や後脳/脳幹部分であり、第1に運動系に影響を及ぼすものであったからである。この相違は、実際には有利である。なぜなら、運動機能の欠損の読取は、記憶や精神医学のフェノタイプのような他の微妙な欠損に比べて精密に行わなくてもよいからである。したがって、非常に客観的な試験でそのようなマウスの病理状態の発症を見極めることができる。運動系の欠損では、例えば、「ワイヤハングテスト(wire hang test)」と「ビームバランステスト(beam balance test)」の組み合わせ、または当該技術分野において公知の後肢の性能に感受性を示す他の類似のテストを、定期的な間隔で用いてトランスジェニックマウスの行動を約8ヶ月間続けてモニターすることが都合がよい。ストリンジェントな発症診断基準は、偽陽性を除外するようにして、そのようなテストの組み合わせの試行錯誤、すなわち、診断基準を満たした後に再び一時的に回収したマウスによって組み立てる。したがって、そのようなフェノタイプのP301L−トランスジェニックマウスとしてのコンセプトデータの証明は、信頼性は非常に高く、ヒト病理状態における臨床使用を予測できるものである。
Hutton et al., Nature 393, 702-705 (1998) Lewis et al., Nature Genet, 25,402-405 (2000)
P301Lタウトランスジェニックマウスは、発症2〜3週間後、非常に急速に症状が悪化し、タウ突然変異を有している、もしくは有していないヒト患者に認められるもの(タウオパシーは、アルツハイマー病がそうであるように、通常、数年で進行する)より速いレベルで、病理状態が異常に激しく進行し、瀕死状態になる。したがって、この種のトランスジェニックマウスモデルは、有効な薬物が見過ごされやすい、非常に「難しい」モデルであるとみなされる。逆に、そのような困難なモデルにおいて効果が実際に認められる場合、それは非常に有意な結果であると考えられなければならない。野生型ヒトタウを用いた、他のそれほど激しくないトランスジェニックマウスモデルも、例えば、ノックアウト/ノックイン法によって、近年開発されている。そのトランスジェニックマウスモデルでは、内因性マウス遺伝子がゲノムヒトタウ構築物に置き換えられ、6つのタウスプライシングアイソフォームの完全ヒト補体の発現が可能となっている[Andorfer et al., J.
Neurochem., 86, 582-90 (2003)]。そのようなマウスは、高齢で発症し、進行がより遅く、軽く、より複雑なフェノタイプを示す。それらは、時間をかけた試験スケジュールで、有効性の低い治療法を試験するのに有用であるかもしれず、より洗練された読取が必要とされる。しかしながら、有用性の問題とは別に、真正のタウ病理状態が病原性突然変異を持たない動物において生成されることもあるということを証明するものであり、その限りにおいては、大部分のタウオパシーならびにアルツハイマー病が突然変異によるものではないということから意義がある。明らかに、アルツハイマー病のようなタウオパシーは、多因子に由来するが、常に共通のタウ病理状態の悪性経路に至るわけではない。
Andorfer et al., J. Neurochem., 86,582-90 (2003)
本明細書に開示されている化合物は、活動的なP301L−タウトランスジェニックマウスモデルにおいて試験されるのには十分有効である。予期される開始時の直前に、すなわち、P301L−タウトランスジェニックマウスモデルの場合には、約8ヶ月目から、式3で表される化合物のような化合物、好ましくは、塩の形態の化合物を、好適な突然変異タウトランスジェニックマウスに1日2回、経口強制飼養によって、式3で表される化合物の場合、10mg/kg〜20mg/kgの用量で投与する。上記の脳切片モデルおよびファーマコキネティック研究の滴定の結果にしたがって、あらゆる個別の化合物について、当業者は用量を調整することができる。化合物は、当該技術分野において公知の種々の固形用量において固形物として付与することができる。または、分散を最適にするために、PEG400のような最少量の液体に溶解してもよい。治療中、治療および未治療P301L−タウトランスジェニックマウスの運動機能を、ワイヤハングテスト単独で、もしくはビームバランステストと組み合わせて、連続的に評価する。治療群と対照群の間で、発症時間の中間値を記録し、それぞれの分散性を用いて、例えば、標準ANOVA統計テストによって有意性を計算する。(i)マウスが瀕死状態に陥ったとき、または(ii)実験治療ウインドウが終わったとき(通常3ヶ月未満)に、マウスを屠殺する。PHFタウの過剰リン酸化および神経原線維のもつれの形成の標準的な生化学的および組織学的評価を用いた死体解剖によって治療の有効性をさらに確認する。生化学PHF−リン酸化マーカーの分析を行うために、脊髄または中枢神経系の他の罹患部分からの新鮮な組織のアリコートを界面活性剤の入っていない緩衝液中で抽出し、低速上清中で病理的にリン酸化したタウの量を、AP422などの診断用mAbs、または当該技術分野において公知の他のタウホスホエピトープ依存性抗体を用いたウエスタンブロット法によって脳切片を用いて行った分析(上記参照)と同様にして測定する。この分析は、P301L−タウトランスジェニックマウス中で、過剰リン酸化されたヒトタウタンパク質がトランスジェニックヒトおよび内因性マウスタウタンパク質の正常にリン酸化された混合物と比較して、標準的なSDS−PAGE上で、特有の遅延したゲル移動性を示すことによって、助けられる。低速の上清に対して100,000xgで遠心分離を行うことによって、異常なゲル移動性のリン酸化されたタウ種の全量の殆どを沈澱させる。したがって、抽出中、懸濁可能であるにもかかわらず、P301L−タウトランスジェニックマウス中に形成された過剰リン酸化されたタウタンパク質は、本質的に不溶性である。
タウの過剰リン酸化の阻害がタウタンパク質の凝集度に及ぼす影響を測定するために、過剰リン酸化されたヒトタウタンパク質の脊髄または脳抽出物の低速上清中の量を、HT7のようなリン酸化依存性ヒト特異的mAbを用いて評価することができ、その定量化されたシグナルは、ヒトトランスジェニックタウ(正常にリン酸化されたもの、および異常にリン酸化されたものの双方)に対する比率を作成することによって、トランスジーン発現のばらつきに関して正規化してもよい。式3で表される化合物は、種々のタウホスホエピトープシグナルならびに、ヒトタウシグナルの合計を同程度に減少させた。これによって、過剰リン酸化によって、低速上清中の不溶性PHFタウの形成を対応して減少させる結果となることを示した。したがって、タウの過剰リン酸化は、PHF病理状態を導く原因的カスケードにおける必須のステップであることが明らかである。
罹患したCNS組織の他のアリコートを切断し、神経原線維のもつれまたはニューロパイル繊維の形態の凝集化したタウの標準的な組織学的評価を、好適な銀染色法(例えば、Gallyas染色)またはホスホエピトープ感受性mAbs(例えば、AT8)を用いた免疫組織化学法によって行った。しかしながら、一般的に、低速抽出上清における過剰リン酸化されたタウ種の式3で表される化合物による減少と、組織学的に検出可能な濃縮体の数との間に相関はない。このことは、不溶性タウ種であるが、成熟した濃縮体ではない前者のプールが主に神経毒性種であることを示唆するものである。
上記機能的および病理学的診断基準の全てによって、一般式1で表される化合物、特に式3で表される化合物は、病理状態および疾患フェノタイプの発症を、式3で表される化合物の場合、少なくとも6週間遅らせ、この活動的なモデルにおいて有意に疾患の進行を遅らせる。
要約すれば、驚くべきことに、生化学的誘発の完全に人工的な方法(例えば、オカダ酸による)を用いたin vitro 脳切片組織モデルは、いまだ曖昧な病因論を用いて、および関連する非常に異なる時間スケールを用いて(時間vs週/月)を用いて、タウタンパク質の凝集を特徴とする病理学的モデルにおける有効性の正確な予測ができることが本発明において認められている。したがって、本発明のこの局面は、神経原線維変性によって特徴付けられる中枢神経系を治療するのに有用な治療薬の同定および関連する投与を非常に容易にするはずである。
アルツハイマー病または他の形態のタウオパシーに罹患したヒト患者の治療
古典的アルツハイマー病は、2種の病理的タンパク質の罹患患者脳への沈殿によって定義される。膜タンパク質APRに由来する短凝集ペプチドであるAβの主に細胞外での沈澱は、顕著な特徴の1つである。他の沈澱は、定義によれば、異常に過剰リン酸化されたタウのPHF(タウオパシー)への細胞内凝集である。Aβの沈澱だけを持ついくつかのトランスジェニックマウス系列においては、神経変性は認められなかった。他方、神経原線維のもつれを示す突然変異タウトランスジェニックマウス系列は、神経原線維のもつれ全てが例外なく広範囲の神経変性のフェノタイプを持つことがわかった。これは、非痴呆の高齢患者の脳が、神経原線維のもつれ、レビ小体または血管異常などの他の異常を示さず、しばしば広範なAβ病理症状を示す、ヒトの状況を映し出すものである。対照的に、脳のあらゆる領域での高密度の神経原線維のもつれの発生は、たとえ、あらゆる他の病理的特徴を伴わない場合でも(「純タウオパシー」)、罹患した脳領域に依存して、常に重篤な機能的欠損と相関している。
当該分野の現在の証拠は、タウオパシーは、他の病理的マーカーが共存する場合でも、原発の悪性病状であることを厳格に示している。したがって、タウの過剰リン酸化のインヒビターを用いた治療が、全ての疾患、特にアルツハイマー病において指示されている。前頭側頭骨変性、皮質前庭変性、またはピック病のような、もっとも顕著な純タウオパシーの多くについての臨床診断は、特有の全体的特徴ゆえに、明解であることが多い[Kertesz
A., Neurologist, 9, 311-317 (2003)]が、一方、古典的アルツハイマー病の明解な診断は、困難である。なぜなら、臨床的に診断された患者の中で、Aβ病理症状とともに脳血管動脈硬化症やレビ封入体を引き起こし、神経原線維のもつれに由来する神経変性によって支配される古典的アルツハイマー病のような類似の全体的徴候をもたらすのはより小部分だからである。
Kertesz A., Neurologist,9, 311-317 (2003)
現在のプラクティスで広く普及している標準的な心理測定的評価器具もしくは画像診断技術によってアルツハイマー病であると診断された患者は、一般式1で表される化合物を用いた治療が本当に必要であるかどうかを証明するため、該疾患のタウへの関与に関連するさらに特異的なバイオマーカーテストを行う。疾患が疑われる患者から、腰椎タップ(lumbar
spinal taps)によって脳脊髄液を採取し、一般に利用可能なELISAテストによってタウタンパク質の濃度を測定する。濃度上昇が確認されれば、アルツハイマー病であると診断される[Andreasen et al., Neurology,
53, 1488-94 (1999)]。さらなる診断の正確性は、特異的なホスホエピトープ、例えば、それぞれのアルツハイマー患者のタウのリン酸化病理症状の顕著な寄与を示す、Thr231のリン酸化に関連するものを測定することによって、診断がさらに正確になる[例えば、Hampel
et al., Arch. Gen. Psychiatry, 61, 95-102 (2004)]。
Andreasen et al., Neurology,53, 1488-94 (1999) Hampel et al.,Arch. Gen. Psychiatry, 61, 95-102 (2004)
アルツハイマー病またはあらゆる他のタウオパシーの上記診断基準の1つまたは全てを有すると診断された患者を、例えば、1日1回または2回、100〜1000mgの用量の一般式1で表される化合物を経口または直腸投与することによって治療する。各個別の患者における正確な用量は、患者の年齢、体重、ならびに疾患の重篤度などの種々の因子に依存し、診断に用いたもの(上記参照)と同じ脳脊髄液タウホスホエピトープELISAテストを用いて、好都合に決定される。治療開始前に、数ミリリットルの脳脊髄液サンプルを腰椎穿刺によって採取し、患者の病理的なタウのリン酸化マーカーの基礎レベルを測定する。その後、該患者の用量を増やすスケジュールとする。任意の所与の用量での治療の4週間後、脳脊髄液サンプルをさらに採取し、タウホスホエピトープの濃度を繰り返し測定する。該患者にとって十分な最低用量は、タウホスホエピトープ濃度が、健康な対応する年齢の対照の平均濃度に戻るときである。このテストは、単に確認的な方法で単一の用量を用いて行うこともできる。そのようなテストに好適な抗体は、限定されないが、Thr181、Ser199、Ser202、Thr205、Ser235およびSer396、特にThr231もしくはSer422、または、Thr231/Ser235などのような特異的なリン酸化部位の組み合わせを含む部位上のタウのリン酸化を認識する。治療は、症状が続く限り持続する。通常、患者の生涯にわたって行う。化合物は、無機もしくは有機酸とともに薬学的に許容可能な塩として投与することもできる。その塩としては、限定されないが、クロリド、硫酸塩、ホスフェート、メシレート、p−トイウオールスルホン酸塩(p-toiuol sulfonic acid
salts)、フォルミエート(formiate)、酢酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、乳酸塩などがあげられる。
経口投与用の薬剤組成物は、糖、例えば、ラクトースやソルビトール、セルロース製剤、例えば、メチルセルロース、種々のデンプン、ゼラチン、シクロデキストリン、ポリビニルピロリドン、タルク、ステアリン酸、およびそれらの塩、様々な程度にポリマー化したポリエチレングリコール、例えば、PEG400などの不活性成分を含むことができる。別法として、一般的な可塑剤を含む、もしくは含まないゼラチン製の乾燥充填カプセルを使用することもできる。直腸投与用の組成物もまた、坐剤の基剤として不活性成分を含むことができる。これらとしては、限定されないが、トリグリセリド、パラフィン、PEGまたは高級アルコールがあげられる。
製剤および治療方法
経口で用いることが意図された組成物は、薬剤組成物の製造の分野において公知のあらゆる方法で調製することができ、そのような組成物は、薬学的に洗練され、かつ美味な製剤を提供するために、甘味づけ化合物、香味つけ化合物、着色化合物および保存用化合物から選択される1以上の化合物を含んでもよい。錠剤は、錠剤を製造するのに好適な、非毒性の薬学的許容可能な添加物との混合物中に活性化合物を含有する。これらの添加物の例としては、例えば、不活性希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウムなど;顆粒化および崩壊剤化合物、例えば、コーンスターチ、もしくはアルギン酸;結合用化合物、例えば、デンプン、ゼラチン、もしくはアカシア;ならびに潤滑用化合物、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、もしくはタルクがあげられる。錠剤は、コーティングを施していなくてもよいし、または公知の技術でコーティングを施し、消化管での崩壊および吸収を遅らせ、それによって、より長い時間活性を持続させることができる。例えば、モノステアリン酸グリセリン、ジステアリン酸グリセリンなどの遅延物質を採用することもできる。
水性懸濁液は、水性懸濁液作製に好適な添加物との混合物中に活性物質を含有する。そのような添加物は、懸濁化合物、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアカシアゴムである。分散もしくは湿潤化合物は、天然に存在するリン脂質、例えば、レシチン、または脂肪酸をもつアルキレンオキシドの縮合物、例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン、または長鎖脂肪族アルコールをもつエチレン酸化物の縮合物、例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール(heptadecaethyleneoxycetanol)、または、脂肪酸由来の部分エステルのエチレン酸化物の縮合物およびモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトールなどのヘキシトール、または脂肪酸由来の部分エステルをもつエチレン酸化物の縮合物、および無水ヘキシトール、例えば、モノオレイン酸ポリエチレンソルビタンであってもよい。水性懸濁液は、1以上の保存剤、例えば、エチル、またはn−プロピルp−ヒドロキシベンゾエート、1以上の着色化合物、1以上の香味付け化合物、および1以上の甘味付け化合物(スクロースもしくはサッカリン)を含むこともできる。
経口使用用製剤はまた、活性剤と、例えば、カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、もしくはカオリンなどの不活性固形希釈物とを混合した硬ゼラチンカプセル、または活性剤と、水もしくは、ピーナッツオイル、液体パラフィンもしくはオリーブオイルなどの油媒体とを混合した軟ゼラチンカプセルとして存在してもよい。
油性懸濁液は、活性成分を植物油(例えば、落花生油、オリーブオイル、ゴマ油、もしくはココナッツ油)、または液体パラフィンなどの鉱油中に懸濁させることによって作製することもできる。該油性懸濁液は、硬化化合物、例えば、蜜蝋、固形パラフィン、もしくはアセチルアルコールを含有してもよい。上記のような甘味付け化合物、香味付け化合物を添加して、経口製剤を作製してもよい。これらの組成物は、アスコルビン酸などの抗酸化剤を添加して保存してもよい。
水を添加することによって水性懸濁液の製剤に適する分散可能粉末および顆粒剤は、分散化合物または湿潤化合物、懸濁化合物および1以上の保存剤との混合物中の活性成分として提供される。好適な分散化合物または湿潤化合物、懸濁化合物については既に述べた。更なる添加物、例えば、甘味付け、香味付け、および着色化合物を加えてもよい。
本発明の薬剤組成物はまた、油中水エマルジョンの形態で存在してもよい。油相は、植物油、例えば、オリーブオイル、落花生油など、または液体パラフィンなどの鉱油、またはこれらの混合物とすることができる。好適な懸濁化化合物は、天然に存在するゴム、例えば、アカシアゴムもしくはトラガカントゴム、天然に存在するリン脂質、例えば、大豆、レシチン、およびエステル類、もしくは脂肪酸由来の部分的エステル類、およびヘキシトール、無水物、例えば、モノオレイン酸ソルビタン、および酸化エチレンを有する前記部分エステルの縮合物、例えば、甘味付け、香味付け、および着色化合物を加えてもよい。
シロップおよびエリキシルは、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、もしくはスクロースなどの甘味付け化合物を用いて作製することができる。そのような製剤はまた、緩和剤、保存剤、香味付け化合物および着色化合物を含有してもよい。薬剤組成物は、無菌の注射可能な、水性もしくは油性懸濁液の形態でもよい。この懸濁液は、上で既に説明した好適な分散化合物または湿潤化合物を用いた公知の技術にしたがって製剤することができる。この無菌の注射可能性剤はまた、非毒性の非経口で受け入れることができる希釈剤もしくは溶媒中の無菌の注射可能もしくは懸濁液とすることができる。例えば、1,3−ブタンジオールに溶解した溶液とすることができる。受容可能な賦形剤および溶媒としては、水、リンゲル溶液、等張食塩水を用いることができる。さらに、無菌の固定油も、溶媒または懸濁媒体として都合よく用いることができる。この目的のために、合成モノグリセリドもしくはジグリセリドなど、あらゆる無刺激の固定油を用いてもよい。さらに、オレイン酸などの脂肪酸を注射可能物の作製に用いることもできる。
活性化合物は、薬物の直腸投与用坐剤の形態で投与することもできる。これらの組成物は、薬物と、好適な非刺激性添加物とを混合することによって調製することができる。それは常温では固体であるが、直腸の温度では液体となり、そこで溶けて薬物を放出する。このような物質としては、カカオ脂およびポリエチレングリコールがあげられる。
活性化合物は、無菌媒体中で非経口投与してもよい。該薬物は、賦形剤および用いられる濃度によって、該賦形剤に懸濁または溶解させることができる。局所麻酔、保存剤および緩衝化合物などのアジュバントを該賦形剤に溶解し得ることが有利である。
本発明の組成物(すなわち、上で定義したように、化学式1、2、および3で表されるグリコシル化インドロカルバゾールのグループに属するキナーゼインヒビター)を、特定の分子に適合可能なあらゆる経路で連続的または断続的に投与することができる。したがって、適切であれば、投与は、経口または非経口で行うことができ、皮下、経静脈、吸入、経鼻、および腹腔内投与経路が含まれる。さらに、断続的な投与は、1日1回、2日に1回、3日に1回、週1回、週2回、2週間に1回、月2回、月に1回といった周期的な、組成物ボラスの注射で行うこともできる。
本発明の治療組成物は、あらゆる好適な手段によって、直接的に(例えば、局所、注射による、埋め込み、もしくは部分組織への局所投与)もしくは全身投与で(例えば、非経口もしくは経口)で個体に提供することができる。組成物は、非経口投与、静脈、皮下、分子内、眼内、腹膜内、筋肉内, 口腔内、直腸、経膣、眼窩内、皮内、経皮、気管内、脳内、頭蓋内、髄腔内、心室内、鞘内、槽内、嚢内、鼻腔内、または、エアゾール投与で投与することができる場合、該組成物は好ましくは、水性もしくは生理学的に適合する液体懸濁液もしくは溶液の一部を含んでいてもよい。したがって、担体もしくは賦形剤は、生理学的に許容可能であり、その結果、望ましい組成物を患者に送達することに加えて、それは、患者の電解質および/または体積のバランスに悪影響を及ぼさない。試薬のための液体媒体は、したがって、標準生理食塩水(例えば、0.9%NaCl水溶液)または緩衝液(pH3〜7.4)を含むことができる。あるいは、本発明の方法において、ミニポンプを用いて本発明の治療組成物を連続的もしくは拍動的に投与してもよい。
非経口投与のために有用な溶液は、製剤技術の分野において公知の(例えば、Remington's
Pharmaceutical Science (Gennaro, A., ed.), Mack Pub., 1990)あらゆる方法によって調製することができる。本発明の治療薬の製剤は、例えば、ポリエチレングリコール、植物由来の油、水素化ナフタレンなどの、ポリアルキレングリコール類を含むことができる。直接投与のための製剤は、特に、グリセロール、および他の高粘度組成物を含み、作用物質が望ましい位置に維持することを助けている。成体適合性、好ましくは、成体吸収性ポリマー、例えば、ヒアルロン酸、コラーゲン、リン酸トリカルシウム、ポリブチレート、グリコリドポリマーおよびラクチド/グリコリドコポリマーは、in vivoでの作用物質の放出をコントロールするための有用な添加物である。これらの試薬の他の潜在的に有用な非経口送達システムとしては、エチレン酢酸ビニルコポリマー粒子、浸透ポンプ、埋め込み式注入システム、およびリポソームがあげられる。吸入投与用の製剤は、添加物、例えば、ラクトースを含み、あるいは、例えば、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、グリココール酸およびデオキシコール酸を含有する水溶液であってもよい。あるいは、点鼻薬の形態で投与する油性溶液であってもよい。あるいは、経鼻投与されるゲルの形態でもよい。非経口投与の製剤としては、口腔内投与用グリココール酸、直腸投与のためのメトキシスチルベン、または経膣投与のためのキュートリック酸(cutric acid)が含まれる。直腸投与のための坐剤もまた、本発明の治療用組成物(単独もしくは化学療法薬との組み合わせ)と、常温で固体、体温で液体となる非刺激性添加物(ココア脂もしくは他の組成物など)とを混合することによって調製することができる。
Remington's Pharmaceutical Science (Gennaro,A., ed.), Mack Pub., 1990
本発明のキナーゼインヒビター化合物を注射によって投与する場合、それを水性もしくは非水溶媒に溶解、懸濁、または乳化させることによって製剤することができる。メチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N.N−ジメチルホルムアミド、植物油もしくは類似の油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸のエステル、およびプロピレングリコールが、非水溶媒の例である。化合物は、ハンクス液、リンゲル液もしくは生理食塩水などの水溶液中で製剤することが好ましい。
キナーゼインヒビター化合物を経口投与する場合、当該技術分野において公知の薬学的に許容可能な担体と組み合わせて製剤することができる。該担体によって、化合物を、患者が消化できるように、例えば、錠剤、丸薬、懸濁液、液体またはゲルとして製剤することができる。経口使用用製剤は、化合物と個体添加物とを混合する、得られた混合物を任意に粉砕する、好適な補助剤を添加する、顆粒混合物を加工することを含む種々の方法で取得することができる。経口製剤において使用可能な添加物の例を以下に示す:糖類、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、もしくはソルビトールなど;セルロース製剤、例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびポリビニルピロリドン(PVP)。
本発明のキナーゼインヒビター化合物はまた、エアゾールスプレー製剤の形態で、圧縮パック、もしくはネブライザーから、または乾燥粉末吸入器から送達することもできる。ネブライザーで使用することができる好適な噴射剤としては、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、および二酸化炭素があげられる。用量は、圧力エアゾールの場合、制御した量の化合物が送達されるようにバルブを設けることによって決定している。
皮膚表面への局所投与用の製剤としては、本発明の治療用組成物(単独もしくは化学療法薬との組み合わせ)を放出することが可能な分子カプセルを分散させることによって調製することができる。皮膚科学的に許容可能な担体、例えば、ローション、クリーム、軟膏または石鹸などとともに調製される。膜もしくは層を皮膚上に形成し、局所投与し、除去されないようにすることが可能な担体が特に有用である。内部組織表面への局所投与には、作用物質の液体組織接着剤、または組織表面への吸収を高めることが知られている他の物質中に分散させてもよい。例えば、ヒドロキシプロピルセルロースまたはィブリノゲン/トロンビン溶液を用いることも有利である。別法として、組織コーティング溶液、例えば、ペクチン含有製剤を用いてもよい。
本発明のキナーゼインヒビター化合物は、微小管関連タウの分子的病理的症状によって起こる神経変性疾患および/または痴呆傾向の疾患(以下「タウオパシー」と呼ぶ)の治療に用いることができる。本発明の化合物は、同時にまたは時間的に連続して形成される。本発明の化合物は、単独で、または他の治療薬、例えば、神経成長因子、アセチルコリンエステラーゼインヒビター、またはβ-アミロイドペプチドのレベルを減少させる化合物と組み合わせて投与することができる。
本発明の薬剤組成物は、治療的に有効な量の本発明の化合物を含有している。化合物の量は、治療を受ける患者によって変わる。患者の体重、疾患の重篤度、投与方法および処方する医師の判断が、適切な量を決定する際に考慮される。本発明のキナーゼインヒビター化合物の治療的に有効な量は、当該技術分野の当業者の技量の範囲である。
キナーゼインヒビター化合物の治療的に有効な量は、治療を受ける患者によって変わるが、好適な用量は、典型的に約0.001mg/kg〜約10g/kgの化合物である。別の好適な用量範囲は、約0.1mg/kg〜約500mg/kgの化合物である。さらに別の好適な用量範囲は、約1mg/kg〜約100mg/kgの化合物である。
いくつかの症例においては、患者を治療するために上で述べた範囲外の用量を用いる必要があるかもしれない。それらの症例は、処方する医師には明らかである。必要に応じて、医師は、特定の患者の反応と関連させて、どのように、いつ、治療を中断、調整、または終了すべきかを知っている。
以下の実施例によって、本発明をさらに説明する。それは、本発明の範囲を限定することを意図しない。本発明の目的と意図を離れず、材料と方法の双方について多くの変更例を実施してもよいことは当該技術分野の当業者には明らかであろう。本発明の化合物は、実験動物モデルのin
vitro およびin vivo で以下のアッセイを用いて、その有効性について試験することができる。有効な化合物は、タウの過剰リン酸化およびタウタンパク質凝集体を以下に述べるように、in vitro および実験動物モデルで阻害するであろう。本発明の好ましい化合物は、実験動物モデルにおいて最も有効性の高いものである。以下の実施例は、上記本発明を例示したものであり、上記開示の範囲を限定することを意図するものではない。
実施例において、以下の短縮形を採用している。
CaCl=塩化カルシウム
CO=二酸化炭素
DMSO=ジメチルスルホキシド
ECL=増強化学発光
EDTA=エチレンジアミンテトラ酢酸
EGTA=エチレングリコール−ビス(2−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−テトラ酢酸
HEPES=N−2−ヒドロキシエチル−ピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸
IC50=50%抑制濃度
i.v.=静脈経由
HPLC=高速液体クロマトグラフィー
h=時間
KCl=塩化カリウム
kg=キログラム
KHPO=リン酸二水素カリウム
MgSO=硫酸マグネシウム
mAb=モノクローナル抗
min=分
ml=ミリリットル
μM=マイクロモル
mM=ミリモル
mm=ミリメートル
NaCl=塩化ナトリウム
NaHCO=炭酸水素ナトリウム
nM=ナノモル
OD=光学密度
pAb=ポリクローナル抗体
PEG=ポリエチレングリコール
PHF=対らせんフィラメント
PMSF=p−メチルフェニルスルホニルフルオリド
P301L突然変異タウ=301位のプロリンがロイシンに置換されているタウ
4R0Nスプライシングアイソフォーム=4微小管結合繰り返しドメインを持ち、N末端が挿入されていないタウ
SDS−PAGE=ドデシル硫酸ナトリウムゲル電気泳動
Ser=セリン
Thr=トレオニン
実施例1:ラット海馬脳切片モデルにおけるタウの過剰リン酸化のインヒビターの滴定
成体雄Wistarラット(体重約300グラム、月齢3ヶ月)に対してCOで手短に麻酔をかけ、斬首した。2分以内に脳を除去し、とがっていないへらを用いて海馬を切開した。その海馬を、Mcllwain組織チョッパーを用いて0.45mM切片に切断し、氷冷低カルシウムクレブス−重炭酸緩衝剤(pH7.0)(124mMのNaCI、3.33mMのKCI、0.01mMのCaCI、1.25mMのKHPO、1.33mMのMgSO、25.7mMのNaHCO、10mMのD−グルコース、および20mMのHEPES)に入れた。5〜8枚の切片を5mlの低カルシウム緩衝剤とともにチューブに入れ、飽和酸素水(95%O、5%CO)とともに33〜34℃で少なくとも30分間インキュベートした。30分後、その溶液を生理的濃度のカルシウム(1.3mM)を含有する緩衝液と取り換え、さらに30分間インキュベートした。少なくとも合計1時間の平衡化の後、切片を15分間プレインキュベートし、一般式1で表される化合物の濃度を10μMにした。一般式1で表される化合物の適切な希釈液を10mMのDMSO原液から調製し、最終的なDMSO濃度をインキュベーション溶液中において0.5%とした。その後、該切片を1μMのオカダ酸に1時間曝露した。この処置の後、緩衝液を除去し、該切片を10〜20秒間、プロテアーゼインヒビター反応混液(100μMのPMSF、10μgのアプロチニン、10μMのロイペプチン、6μg/mlのペプスタチン、および40μMのキモスタチン)を含有する0.5ml「ホモジナイゼーション緩衝液」(100mMのKHPO、pH6.5、2mMのEGTA、2mMのEDTA、0.5mMのPMSFおよび2μMのオカダ酸)中で超音波処理した。ホモジネートを30分、16,000xgで遠心分離にかけ、上清を回収し、5分間、100℃にまで加熱し、再度遠心分離を行った。タンパク質含有率に正規化された熱的に安定な上清のアリコートを10%SDS−PAGE上で分析し、次いで、mAbs AT8(抗Ser202/Thr205;1:200)、AP422(抗Ser422;1:5,000)、AT100および抗Ser262および抗Thr231pAbsを用いて免疫ブロッティングを行った。ブロットをECL(Amersham Life Sciences)で展開し、Kodak X−OMAT
ARフィルムに露光した。ホスホエピトープの形成を、適切に露光された(OD<1.5)フィルムの比重分析によって定量化した。問題のホスホエピトープの高度の、ブロット上でタウタンパク質を脱リン酸化した後、mAb Tau−1(1:5,000)によって測定したタウ免疫活性の全体に対する比率を求めることによって行い、高濃度のウシ腸ホスファターゼを用いて、シスターブロットの広範囲のインキュベーションによって達成した。
タウの過剰リン酸化阻害の表面的な評価を10μMの化合物で行い、次いで、該化合物の詳細な滴定を30nM〜10μMで行った。上記決定されたホスホエピトープ強度比が、オカダ酸のみを用いてインヒビターを用いずに取得した対照値と比較して50%減少したとき、IC50値を一般式1で表される化合物の濃度として定義した。式2および3で表される化合物は、AP422、AT8、AT100、抗Thr231および抗pSer262について、200〜400nMの範囲のIC50値を有していた。
実施例2:式3で表される化合物についてin
vivoでの脳曝露に必要な用量の測定
in vivo脳曝露に必要な用量を評価するために、1.5ml/kgのPEG400Macrogol Ph. Eurの賦形剤中の式3で表される化合物の10mg/kgのヒドロクロリドを、一晩絶食させた体重240〜270グラムのWistar
Ratsの2群(n=3)に対して大腿部の静脈を介して静脈投与した。投与は麻酔をかけて行った。投与は、3.5%イソフルオラン/Oで開始し、化合物投与中は1%に維持し、静脈の縫合を行った。200μlの局部麻酔リドカインを局部投与した。化合物投与の1時間後、200μlの血液を尾部の静脈注射によって取得した。血液採取直後、手短にCO麻酔を施して、ラットを斬首により屠殺した。脳および脊髄を切除し、体重を測定した。尾の静脈血を遠心分離することによって(13000xg、20分間、4℃)、血漿を取得した。以下に詳細を示した方法を用いて、5mg/kgの経口投与を行った後、約4時間の血漿半減期を式3で表される化合物について測定した。CNS組織に認められる濃度は、血漿に認められるものと類似しており、これは、脳血液関門の貫通が十分であることを示すものである。
式3で表される化合物の血漿からの抽出
ガラス管内で、200μlの濃縮アンモニウム溶液および200μlの飽和NaCl溶液を、等量の血液から取得した各血漿サンプルと混合させた。該混合物を2mlの酢酸エチル(HPLCグレード)を用いて、激しくボルテックスすることによって1分間抽出させて、微細なエマルジョンを得た。遠心分離(4000xg、5〜10分間、室温)によって相分離を加速させた後、有機相をガラスピペットで回収し、真空蒸発装置中のガラスバイアル中で、50〜60℃で蒸発させた。水相を同じ方法で2回抽出させ、該有機相を第1の抽出物と混合した。
式3で表される化合物の脳からの抽出
ラット脳の半分を円錐形の底のガラス管に入れ、500μlの飽和NaCl溶液中で、55%の電力で20秒間、4℃で超音波処理(Bandelin Sonoplus UW 2070, Berlin)によって均質化した。200μlの濃縮アンモニウムをサンプルに添加した。抽出は、2x2mlの酢酸エチル(HPLCグレード)を用いて行った。脊髄サンプルに対しても同様の処置を施した。
式3で表される化合物の抽出回収および標準曲線の確立
対照ラットから採取した、飽和NaCl中の100μlの血漿または0.5グラムの脳組織ホモジネートをそれぞれ、式3で表される化合物とともにスパイクし、1ng/ml〜5μg/mlの濃縮物を作製した。次いで、スパイクした脳または血漿のサンプルを上記のようにして抽出および処理した。抽出物の定量分析を、蛍光検出を用いたHPLCで行った。結合した有機抽出物を蒸発させた後の残留物を300μlのアセトニトリル中に取り出し、100μlを5μmm Rp18Select B、12.5×4.6mmカラム(Merck)に、流速0.75ml/minで注入した。溶出は、40℃でアセトニトリル/水(60/40(v/v))を用いて定組成溶離で行った。ピーク面積による蛍光検出および定量化をG1321A(Agilent Tech 1100シリーズ)検出器を用いて、励起波長および発光波長を284nmおよび476nmとして行った。ピーク面積を、式3で表される化合物のアセトニトリル溶液の原液(HPLCグレード)から誘導した純粋な標準の濃縮物を注入した後のものと比較し、抽出効率を測定した。それは、通常90〜95%であった。純粋標準の量(単位:μg)対蛍光ピーク面積をプロットすることによって標準曲線を作成した(単位:μg)。
実施例3:神経原線維変性に罹患しているP301L−タウトランスジェニックマウスの治療
ヒトP301L突然変位タウトランスジーン(JNPL3系列、Taconic Farms, NYから入手可能)の4R0Nスプライシングアイソフォームに同型接合している同齢の61匹のトランスジェニックマウスのコホートを、式3で表される化合物を用いた治療をうける30匹と、賦形剤のみ、もしくは治療を受けないままの31匹(対照群)の2群に分けた。
治療群中の治療レジメンは、最初のマウスが運動系の欠損の徴候を示し始めて直ぐ(通常生後8ヶ月頃)に開始した。その後このマウスを対照群から除外し、対照群は30匹となった。治療スケジュールは、PEG400 Macrogol Ph. Eur中の塩酸塩として、溶解した式3で表される化合物(濃度約5mg/ml)を10mg/kgの用量で、1日2回経口強制飼養によって投与することを含む。該化合物は、早朝および夕方遅くに投与し、薬物投与の6時間前はマウスを絶食させる。薬物治療の開始と同時に、通常運動機能試験スケジュールを、疾患の発症に関する厳しい正式な診断基準に基づいて、下記のようにしてモニターした。治療も試験も少なくとも3ヶ月続け、その時点で、発症したが死に到らなかったマウスは屠殺する。マウスが自ら食物を摂取できなくなったときを瀕死段階とする。
運動機能テストは、ワイヤハングテスト(wire
hang test)とビームバランステスト(beam balance test)でマウスの日常的な評価を行う。各テストは、同じテストセッションでそれぞれ2回ずつ行うが、マウスの疲労を避けるために、連続的には行わない。ワイヤハングテストは単に、マウスが前肢だけでグリッドをつかむようにした後、マウスが逆さかご形格子に60秒以上捉まっていることができることを要求するものである。ビームバランステストでは、マウスは1つのプラットフォーム間の狭い上りビームを横切らなければならない。後肢の問題の差し迫った徴候を検出するために、横切るのにかかった時間、ならびに後肢が滑った回数を記録する。
疑陽性が混在する発症時間の間、すなわち、マウスが診断基準に合格しなかったように見えた後、機能が回復した場合に、診断基準のストリンジェンシーと、感受性とのバランスを得るために、2日連続の2つのテストで少なくとも1つのテストに合格しないか、または2日連続の2つのテストのうち少なくとも1回の両方のテストに合格しないことが必要である。
治療群vs対照群での発症時間を、生存曲線で理解する。一方向性ANOVAと、フィッシャーズポストホックテスト(Fisher's post-hoc test)による群の間の、標準偏差を伴う発症時間の中間値を比較し、治療効果の統計的な有意性を計算する。関連性のない原因、すなわち、タウオパシーの典型的な徴候を示すことなく死んだ動物は、対象外とした。これらの診断基準によれば、1日2回の10mg/kgのキナーゼインヒビター3の経口投与による治療を3ヶ月間受けた(対照コホートの第1のマウス中の最初の徴候が認められたときから開始する)約30匹の動物コホート中で2匹のマウスだけが重篤な疾患の完全な診断基準に達した。一方、等しい大きさの賦形剤を用いて治療した対照コホートにおいては、半分以上の動物が本当の運動徴候の同じ診断基準に達した(P<0.005)。
屠殺後、それぞれのマウスから採取した中枢神経系組織を反応させ、タウのリン酸化効果の生化学的分析と、標準的な神経病理学的方法によるタウ病理症状の組織学的評価を行った。各後脳および脊髄の半分を「ホモジナイゼーション緩衝液」中で抽出を行い、ホスホエピトープ抗体を有するホモジネート上清のウェスタンブロッティング分析によって、PHF様リン酸化タウの定量を行った。他方の組織は、4%ホルムアルデヒド中で固定化し、切開を行った。後脳および脊髄の一連の組織切片をGallyas銀染色法[Munoz, Biotech. Histochem., 74,
311-320 (1999)]、およびPHF−1やAT8などのヒト神経病理学に通常用いられるホスホエピトープmAbsによって染色し、神経原線維のもつれを調べた。神経原線維のもつれは、限定された顕微鏡視野内の同じ組織の多数の切片内で計測する。さらに、ニューロパイル繊維(対らせんフィラメントからなる)によるニューロパイル中の、より拡散した染色を、盲検によりO、+、++、+++で半定量的に評点した。次いで、神経原線維のもつれの数ならびにニューロパイル繊維の評点を、治療群と対照群との間で、ANOVA分析とフィッシャーズポストホックテスト(Fisher's post-hoc test)によって統計学的に比較した。
Munoz, Biotech. Histochem., 74, 311-320 (1999)
マウス脳抽出物の不溶性の過剰リン酸化タウ種のウェスタンブロッティング分析を以下のようにして行う。治療マウスまたは未治療マウスの、脳または脊髄組織のサンプルを、切除直後に超音波処理により、10〜20倍の量の氷冷した抽出緩衝液(100mMのKHPO、pH6.5、2mMのEGTA、2mMのEDTA、0.5mMのPMSF、1μMのOAおよび10μg/mlのロイペプチンを含む)中でホモジナイズした。遠心分離を13,000xgで、5分間、4℃で行った後、上清を回収し、それらの総含有量を測定した。合計抽出タンパク質の等しい荷重に正規化された上清のアリコートを、8%トリス−グリシンSDS−PAGEに載せ、標準的なウエスタンブロット法によって電気泳動分離後、ニトロセルロース膜上にブロッティングした。乾燥ミルクの3%溶液または他の可溶性不活性タンパク質を用いて、ブロッティングをブロックし、次いでいくつかの好適に希釈した抗体(例えば、AP422、1:4,000、AT8、1:1,000、抗−pSer2621:5,000)に曝露し、二次抗体(例えば、モノクローナル一次抗体AbsのHRP結合ヤギ抗マウスpAb、およびポリクローナル一次抗体AbsのHRP結合ヤギ抗ウサギpAb、希釈率約1:5,000)を用いて、Amersham
ECLキットを用いて標識した後、展開した。ECLフィルム上のシグナルを、デジタルデンシトメトリ(ImageQuant、Biorad)を用いて定量した。AP422やAT8などのPHF特異的mAbsは、その特徴的に遅延したゲル移動性(64kD、P301Lタウマウスモデル中)によって、病理的にリン酸化したトランスジェニックタウのみを認識するが、一方、抗pSer262などの他の抗体は、罹患していないトランスジェニックヒトタウおよび内因性マウスタウの混合物を含む、見かけの重量が55kD分子量の正常にリン酸化したタウタンパク質をも標識する。それは通常分子的病理的症状に関与しないものである。この64kDバンドの異常タウタンパク質の定量のみをキナーゼインヒビター3の有効性の判定に採用した。遠心分離(100,000xg)後、全ての64kD種を上清画分から除去するので、異常にリン酸化したタウ種の集団全体は、オリジナル13,000xg抽出上清は不溶性の性質を持つことが明らかである。ヒトタウ特異的mAb HT7によって、病理活性全体の正規化された測定値を、神経原線維の病理状態を防ぐときにキナーゼインヒビター3の有効性の特定の判定基準として最も好ましく用いられている64kDシグナルの55kDと64kDシグナルの合計に対する比率を作成することによって求めた。
この判定基準にしたがって、10〜200mg/kgのキナーゼインヒビター3を1日2回、経口的に最少量のPEG400(37℃で化合物を可溶化するため)を含む賦形剤とともに投与することによって治療したコホートは、賦形剤で治療した対照コホートより、病理的に修飾された64kDタウの作製が平均で50%少なかった。64kDタウシグナルの全て、すなわち、HT7のリン酸化依存性のタウシグナルならびにAP422、AT8および抗pSer262のホスホエピトープ(64kD集団のみ)が略同じ量減少する(P=0.015〜0.004)からである。
均等物
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態に限定されるものではない。それは、本発明の個別の局面の単なる例示であることが意図されている。本発明の精神および範囲を離れることなく、本発明の多くの変更および変形が可能であることは当該技術分野の当業者には明らかであろう。ここに例示したものの他にも、本発明の範囲内の機能的に等価な方法および装置を当該技術分野の当業者は、本明細書の記載から明らかであろう。そのような変更や変形例は、添付の請求の範囲に含まれることが意図されている。本発明は、添付の請求の範囲およびそれが権利付与する均等物によってのみ限定されるものとする。

Claims (5)

  1. 微小管関連タウの分子的病理的症状によって起こる神経変性疾患の予防もしくは治療のための薬剤組成物の製剤の製造のための、一般式1で表されるインドロカルバゾール化合物、または薬学的に許容可能なそれらの塩の使用。
    Figure 0005068164
    式中、Rは、COOR(式中、R=H、メチル、エチル、もしくはシクロプロピル)、またはCONHR式中、=H、メチル、エチル、もしくはシクロプロピル)のいずれかであり;
    およびRは、それぞれ個別に、H、F、メチル、OH、NH、またはNR式中、およびRは、それぞれ個別に、Hもしくはメチル)であり;
    Zは、(H、H)またはOのいずれかである。
  2. 前記神経変性疾患が、アルツハイマー病、前頭葉型痴呆、ピック病、パーキンソン痴呆症候群、皮質基底部変性、嗜銀性グレイン型疾患、進行性核上麻痺、亜急性硬化性全脳炎、多系タウオパシー痴呆症、家族性ゲルトマン・ストロイスラー・シャインカー病(Gerstmann-Straussler-Scheinker Disease)、およびプリオンタンパク質大脳アミロイド血管障害(Prion Protein Cerebral Amyloid Angiopathy)からなる群から選択される、請求項1に記載の使用。
  3. 前記インドロカルバゾール化合物が下記式2または3に記載の化合物または、薬学的に許容可能なそれらの塩である、請求項1又は2のいずれかに記載の使用。
    Figure 0005068164
  4. 一般式2で表されるインドロカルバゾール化合物、または薬学的に許容可能なそれらの塩。
    Figure 0005068164
    式中、RはHである。
  5. 一般式3で表されるインドロカルバゾール化合物、または薬学的に許容可能なそれらの塩。
    Figure 0005068164
    式中、RはCHである。
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