JP5064960B2 - ガスシールドアーク溶接用めっきなし鋼ワイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、ワイヤ表面に銅めっきが施されていないガスシールドアーク溶接用めっきなし鋼ワイヤに関し、特に軟質で長尺のコンジットケーブルを使用して溶接する場合においても、ワイヤ送給性に優れ、チップ摩耗の少ない全自動および半自動溶接用フラックス入りワイヤ、ソリッドワイヤ等のガスシールドアーク溶接用めっきなし鋼ワイヤに関する。
一般にガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤは、細径(0.8〜1.6mm)でワイヤ表面に銅めっきが施されているものが使用されている。これは、ワイヤ表面に銅めっきが施されていないと、溶接時にコンジットケーブルに内包されたライナ内で摩擦抵抗による送給抵抗を受けること、さらにチップも摩擦によって摩耗して、アークが不安定になるからである。
しかし、ワイヤ表面に銅めっきが施されているワイヤを使用した場合は、溶接時にライナ内で摩擦によってワイヤ表面の銅めっきが剥がされ、長時間溶接しているとライナ内に銅屑が堆積して送給抵抗が大きくなり、ワイヤ送給性が不良となってアークが不安定になるという問題もある。一方、ワイヤ表面に銅めっきが施されていないワイヤについても、上記銅めっきの剥離の問題とともに、ワイヤ製造時に工程を大幅に省略できること、およびめっきの廃液の取扱が不要になるなどの利点から従来から種々の研究がされ実用化されている。
例えば、特開昭53−6247号公報(特許文献1)に、ワイヤ表面に燐と硫黄を含む有機金属を添加した防錆潤滑油を塗布して、ワイヤ送給性、通電性および防錆などの諸性能を得るというめっきなし鋼ワイヤが開示されている。特開昭55−141395号公報(特許文献2)には、ワイヤ表面に粉末状の硫黄と二硫化モリブデンとグラファイトの混合物を塗布し、溶接性能、通電特性および防錆性能を得るというめっきなし鋼ワイヤが開示されている。
また、特開平11−147195号公報(特許文献3)には、ワイヤ表面に環状構造を有する炭化水素化合物を存在させて、潤滑物質の剥離を抑制して良好なワイヤ送給性を得るというめっきなし鋼ワイヤが開示されている。さらに、特開2005−169415号公報(特許文献4)には、高級脂肪酸、アルカリ石鹸、金属石鹸、MoS2、黒鉛、BN、フッ化物、タルクおよびマイカのうちの1種以上からなる固形潤滑剤皮膜と、その外周に脂肪酸エステルおよび潤滑油の1種以上の液体潤滑油を塗布し、スパッタ発生量の抑制とワイヤ送給性に優れためっきなし鋼ワイヤが開示されている。
しかし、ガスシールドアーク溶接用溶接用ワイヤを用いて安定した溶接を行うためには、ガスシールドアーク溶接用ワイヤを決められた一定の速度で溶接部に供給すること、つまりワイヤ送給性が良好であることが必要となる。ワイヤは送給ローラの送給力によってライナ内に押し込まれ、一方ライナ内面からは接触摩擦による送給抵抗を受ける。このとき、ライナが直線状態に近い比較的優しい使用環境化の場合には、送給抵抗はそれほど大きくならず、ワイヤ送給性に問題は生じないが屈曲個所が多く、屈曲半径(曲率半径)が小さく、あるいはライナが長尺化した場合等の過酷な使用環境下の場合には、送給抵抗が増加し送給力とのバランスが崩れ、ワイヤ送給性が悪化する。
前述のワイヤ表面に潤滑剤を塗布しためっきなし鋼ワイヤは、特にライナ内入口側でのライナとの接触により潤滑剤がワイヤ表面から脱落しやすく、長尺のライナの場合溶接トーチ近傍においてワイヤ表面の潤滑剤付着量が少なくなって送給抵抗が大きくなる。さらに脱落した潤滑剤、ライナとの摩擦によって削られたFe粉およびワイヤとの摩擦によって削られたライナ表面のZn粉、Fe粉などがライナ内で堆積するため、長期間溶接すると徐々にワイヤ送給性が劣化し、アークが不安定になる。さらに、チップも摩擦によって摩耗して、アークが不安定になるという問題が生じて満足できるものではない。
特開昭53−6247号公報 特開昭55−141395号公報 特開平11−147195号公報 特開2005−169415号公報
本発明は、長尺のライナを使用し、かつ屈曲箇所の多い場合においても短時間から長時間の溶接に至るまでワイヤ送給性が良好でチップ摩耗が少なく、アークが安定した溶接を行うことができるガスシールドアーク溶接用めっきなし鋼ワイヤを提供することを目的とする。
本発明の要旨とするところは、
(1)ガスシールドアーク溶接用めっきなし鋼ワイヤ表面に油脂またはエステルの1種以上の基油に硫黄含有量が5〜20質量%の硫化油脂、硫化エステル、硫化脂肪酸または硫化オレフィンの1種以上を15〜65質量%、二硫化モリブデンを8〜30質量%、油溶性高分子化合物の1種以上を5〜15質量%含有し、その他不可避不純物からなる送給潤滑剤がワイヤ10kg当たり0.5〜3.0g付着していることを特徴とするガスシールドアーク溶接用めっきなし鋼ワイヤ。
(2)硫化油脂、硫化エステル、硫化脂肪酸または硫化オレフィンは、ASTM D1662に基づいて測定した150℃における活性硫黄分が4質量%以下であることを特徴とする前記(1)記載のガスシールドアーク溶接用めっきなし鋼ワイヤ。
(3)送給潤滑剤にリン酸エステル、アルキルホスホン酸誘導体またはレシチンの1種以上を1〜10質量%含むことを特徴とする前記(1)または(2)記載のガスシールドアーク溶接用めっきなし鋼ワイヤ。
(4)送給潤滑剤にカリウム化合物をK換算値で0.5〜5質量%含むことを特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれかに記載のガスシールドアーク溶接用めっきなし鋼ワイヤにある。
本発明のガスシールドアーク溶接用めっきなし鋼ワイヤによれば、長尺のライナを使用し、かつ屈曲箇所の多い場合の溶接においても給電チップでの通電が安定してチップの摩耗が少なく、さらに短時間から長時間に至る溶接でも良好なワイヤ送給性およびアークが安定した溶接が可能となる。
本発明者らは、前記課題を解決するためにガスシールドアーク溶接用めっきなし鋼ワイヤ表面に塗布する送給潤滑剤について種々検討した。その結果、めっきなし鋼ワイヤ表面に、油脂またはエステルの1種以上の基油に硫黄を適量含んだ硫化油脂、硫化エステル、硫化脂肪酸または硫化オレフィンと二硫化モリブデンおよび油溶性高分子化合物の1種以上を適量含んだ送給潤滑剤を塗布することにより、ライナの長さおよび屈曲に関係なく、短時間から長時間に至る溶接においてもチップの摩耗が少なく、良好なワイヤ送給性およびアークが安定した溶接ができることを見出した。また、前記潤滑剤にリン酸エステル、アルキルホスホン酸誘導体またはレシチンの1種以上を含むことにより、さらに良好なワイヤ送給性が発揮できることも見出した。さらに、カリウム化合物を適量含むことによって、特にめっきなしソリッドワイヤの場合アークが安定する。
以下、本発明の内容を詳細に説明する。
油脂またはエステルの1種以上の基油に硫黄含有量が5〜20質量%の硫化油脂、硫化エステル、硫化脂肪酸または硫化オレフィンの1種以上を含有させることにより、これらの硫黄成分がワイヤ表面に化学吸着して潤滑膜を形成する。化学吸着した潤滑膜は、ワイヤ表面との化学結合で形成されており、ファンデルワールス力で形成される動植物油および鉱物油での物理吸着よりも結合力が強く、特に長時間溶接した場合のライナが高温になるほど結合力が強くなってワイヤ表面とライナとの摩擦係数を低くしてワイヤ送給性が良好となる。
硫化油脂、硫化エステル、硫化脂肪酸または硫化オレフィンの硫黄含有量が5質量%未満の場合、送給潤滑剤のワイヤ表面への吸着力が弱く送給抵抗の増加抑制効果が認められず、ワイヤ送給性改善は望めない。また、長時間溶接においてはチップが摩耗してアークが不安定になる。一方、20質量%を超えると、ワイヤ表面の鉄素地と硫黄が反応して硫化鉄を生成してワイヤ表面が変色すると共にチップ部での通電性が不良となってアークが不安定になる。さらに、溶接金属に硫黄が歩留り高温割れ性や衝撃靭性を劣化させる。
また、硫化油脂、硫化エステル、硫化脂肪酸または硫化オレフィンの1種以上の前記基油への含有量が15質量%未満の場合、ライナとワイヤ間での摩擦係数が高くなり、送給抵抗が増大してワイヤ送給性が不良となる。また、長時間溶接においてはチップが摩耗してアークが不安定になる。一方、60質量%超では、ワイヤ表面の鉄素地と硫黄が反応して硫化鉄を生成してワイヤ表面が変色すると共にチップ部での通電性が不良となってアークが不安定になる。さらに、長時間溶接ではライナ内に送給潤滑剤が堆積されてワイヤ送給性が不良となる。
硫化油脂、硫化エステル、硫化脂肪酸または硫化オレフィンの活性硫黄分は、ワイヤ表面の鉄素地と反応し、硫化鉄を生成する。したがって、ASTM D1662に基づいて測定した150℃における活性硫黄分が4質量%超であると、ワイヤ表面の鉄素地と硫黄が反応して硫化鉄を生成してワイヤ表面が変色すると共にチップ部での通電性が不良となってアークが不安定になる。
二硫化モリブデンは、ライナとの摩擦抵抗を非常に小さくしてワイヤ送給性を良好にする。また、ライナとの接触によって少しずつ脱落した二硫化モリブデンは、長時間溶接によってライナ内に堆積されるが、堆積した二硫化モリブデンはライナとワイヤとの摩擦抵抗をさらに小さくする。さらに、チップとの摩擦抵抗をも少なくして長時間溶接してもチップの摩耗が極めて少ない。したがって、長時間溶接する場合においてもワイヤ送給性が良好で、安定した溶接が可能となる。二硫化モリブデンが8質量%未満であると、特に長時間溶接した場合にワイヤ送給性が不良となる。また、チップが摩耗してアークが不安定になる。一方、二硫化モリブデンが30質量%を超えると、ワイヤ送給ローラ部でワイヤがスリップしてワイヤの送給が困難となる。
油溶性高分子化合物の1種以上は、前記二硫化モリブデンをワイヤ表面に均一に分散させるとともにワイヤ表面に二硫化モリブデンを強固に付着させる作用がありライナ内への脱落を防止する。油溶性高分子化合物としてはポリブテン、ポリイソブチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタアクリレート、ポリアクリル酸、マレイン化ポリブテン、ポリエチレンおよびポリプロピレン等の平均分子量が600から50万の高分子化合物が挙げられる。
油溶性高分子化合物の1種以上が5質量%未満であると、二硫化モリブデンを均一に分散できず、部分的にワイヤ送給抵抗が大きくなったり、送給ローラ部でワイヤがスリップする。また、長時間溶接ではライナ内に送給潤滑剤が堆積されてワイヤ送給性が不良となる。一方、油溶性高分子化合物の1種以上が15質量%を超えると、チップ部での通電性が不良となってアークが不安定になる。
ワイヤ表面の送給潤滑剤付着量は、ワイヤ10kg当たり0.5〜3.0g(以下、g/10kgWという。)とする。ワイヤ表面の送給潤滑剤付着量が0.5g/10kgW未満では、潤滑性能不足によりワイヤ表面とライナとの摩擦係数が増大し、送給抵抗の増加抑制効果は期待できずワイヤ送給性が不良となる。また、チップが摩耗してアークが不安定になる。一方、3.0g/10kgWを超えると、過剰付着により送給ローラがスリップするため、ワイヤの安定送給が困難となる。また、長時間の溶接ではライナ内に送給潤滑剤が堆積しワイヤ送給性が不良となる。さらに、潤滑油成分は、C−H結合で構成されているため、溶接時に多量の水素が混入し、溶接金属部にピットやブローホールが生じやすくなる。
さらに、リン酸エステル、アルキルホスホン酸誘導体またはレシチンの1種以上は、各潤滑成分を均一に分散させてワイヤ表面に均一に塗布するとともに、潤滑剤の通電性を向上させる。リン酸エステル、アルキルホスホン酸誘導体またはレシチンの1種以上が1質量%未満では、各潤滑成分がワイヤ表面で偏析しやすくなり、ワイヤ送給性が安定しない部分が生じる。一方、10質量%を超えるとスパッタ発生量が多くなり溶接作業性が劣化する。
また、送給潤滑剤にカリウム化合物をカリウム換算値で0.5〜5質量%含むことによって、特にめっきなしソリッドワイヤの場合アークが安定する。カリウム化合物のカリウム換算値が0.5質量%未満では効果が発揮できず、5質量%を超えると、スパッタ発生量が多くなる。カリウム化合物としては塩化カリウム、ステアリン酸カリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム、フッ化カリウム、臭化カリウム、クエン酸カリウム、炭酸カリウム等を用いることができる。
本発明で用いられる基油は、油脂とエステルとする。ここで油脂とは牛脂、ラード、パーム油、ヤシ油、ナタネ油または大豆油等をいう。エステルは、脂肪酸とアルコールから合成されるエステルであり、脂肪酸としては炭素数12〜36の一塩基酸または二塩基酸であり、アルコールとしては炭素数1〜18の一価または多価アルコールが挙げられる。具体例としてはパルミチン酸エチルヘキシルエステル、オレイン酸ブチルエステル、イソステアリン酸ブチルカルビトールエステル、ベヘニン酸ラウリルエステル、ネオペンチルグリコールオレイン酸エステル、トリメチロールプロパンイソステアリン酸エステル、ペンタエリスリトールオレイン酸エステル、トリメチロールプロパンダイマー酸エステル等をいう。前記油脂またはエステルの1種以上の基油は、ワイヤ表面との物理吸着により潤滑膜を形成するとともに耐錆性を向上させる。
なお、ワイヤ表面の送給潤滑剤の粘性はワイヤ送給性に影響を与える要因となる。粘性が低いとライナとの接触により特に二硫化モリブデンがワイヤ表面から剥離しやすくなり、送給抵抗が増大する。逆に粘性が高いとワイヤ表面の送給潤滑剤が均一に塗布されず、部分的に送給抵抗が増大する。したがって、送給潤滑剤の粘度は300〜1400mm2/sであることが好ましい。
本発明の対象とするめっきなし鋼ワイヤは、図1(a)、(b)に示すように鋼製外皮1内にフラックス2を充填し、合せ目3を有する断面構造のシームタイプのフラックス入りワイヤ、図1(c)に示す断面構造のシームレスタイプのフラックス入りワイヤおよびソリッドワイヤを対象とする。
以下、本発明の効果を実施例により具体的に説明する。
表1に示す製品径1.2mmのシームタイプ(図1の(a))およびシームレスタイプ(図1の(c))めっきなしフラックス入りワイヤ(JIS Z 3313 YFW−C50DR)とめっきなしソリッドワイヤ(JIS Z 3312 YGW12)に各種送給潤滑剤を塗布してスプール巻きワイヤとした。なお、基油のエステルは表2に示すものを用いた。また、硫化油脂、硫化エステル、硫化脂肪酸または硫化オレフィンの1種以上は、表3に示すものを用いた。また、各試作ワイヤの送給潤滑剤の付着量は温トルエン抽出法により測定した。
Figure 0005064960
Figure 0005064960
Figure 0005064960
各試作ワイヤを150℃の恒温炉に60日間保管して、ワイヤ表面状態を観察した後ワイヤ送給性および溶接後のライナ内への潤滑剤、他の堆積量を調べた。
ワイヤ送給性評価試験は、図2に示す装置を用いて行った。図2において送給機4にセットされたスプール巻きワイヤ5は、送給ローラ6により引き出され、コンジットケーブル7に内包したライナを経てその先端のトーチまで送給される。そして給電チップと鋼板10の間でビードオンプレート溶接を行う。コンジットケーブル7は6m長で、ワイヤに送給抵抗を与えるために、トーチ手元のコンジットケーブル屈曲をS字にした。
また、150mm径のループを2つ形成した屈曲部9を設けた。送給器には送給ローラの周速度Vr(=設定ワイヤ速度)の検出器、ワイヤの実速度(Vw)検出器11を備えている。送給性評価指標のスリップ率SLはSL=(Vr−Vw)/Vr×100%で表される。また、送給ローラ部に設けられたロードセル12により送給時にワイヤがライナから受ける反力を送給抵抗Rとして検出した。
短時間溶接試験は、表4に示す溶接条件で2分間溶接して送給抵抗Rとスリップ率SLを測定し、平均値を求めた。送給抵抗Rが4kgf以下、スリップ率SLが2%以下の場合に送給性良好と判定した。また、通電不良等により瞬間的に高くなる送給抵抗Rおよびスリップ率SLの最大値を測定し、送給抵抗R:5kgf以下、スリップ率SL:3%以下を送給性良好と判定した。
Figure 0005064960
長時間溶接試験は、表4に示す溶接条件で10分溶接後5分休憩を10回繰り返し合計100分溶接し、10分毎の送給抵抗Rとスリップ率SLを測定し、平均値を求めた。各溶接時間で送給抵抗Rが5kgf以下、スリップ率SLが3%以下の場合に送給性良好と判定した。
また、100分間溶接後のライナ内の堆積量を調査した。堆積量は、ライナを50cm間隔で切断し、温トルエン抽出法により全ての堆積物の重量を測定した。堆積量がライナ長さ100cm当たり50mg以下を良好と判定した。
アークの安定性は、アーク状態を観察して評価した。スパッタ発生状態の評価は、小粒で少ないものを○、小粒または大粒で多いものを×として評価した。また、チップの摩耗量は、試験毎に新しい市販のチップ(内径1.4mm)を用いて、長期溶接試験終了後最も摩耗量の多い箇所の内径を測定した。チップ摩耗量の評価は、摩耗量が0.1mm以下を良好として評価した。それらの結果を表5にまとめて示す。
Figure 0005064960
表1および表5中、ワイヤNo.1〜8が本発明例、ワイヤNo.9〜18は比較例である。
本発明例であるワイヤNo.1、2は、めっきなしソリッドワイヤ表面の油脂またはエステルの基油に硫黄含有量が適量で活性硫黄分の少ない硫化油脂、硫化エステル、硫化脂肪酸または硫化オレフィンの1種以上、二硫化モリブデン、油溶性高分子化合物の1種以上を適量含有し、さらに、リン酸エステル、アルキルホスホン酸誘導体またはレシチンの1種以上、カリウム化合物のK換算値を適量含む送給潤滑剤が適量塗布されているので、ワイヤ表面の変色がなく短時間溶接試験および長時間溶接試験とも送給抵抗Rおよびスリップ率SLが低くアークが安定し、ライナ内の堆積量およびチップ磨耗も少ないなど極めて満足な結果であった。
なお、ワイヤNo.3は、めっきなしソリッドワイヤ表面の潤滑剤中にKを含まないのでアークがやや不安定であった。ワイヤNo.4〜7は、めっきなしフラックス入りワイヤ表面の油脂またはエステルの基油に硫黄含有量が適量で活性硫黄分の少ない硫化油脂、硫化エステル、硫化脂肪酸または硫化オレフィンの1種以上、二硫化モリブデン、油溶性高分子化合物の1種以上を適量含有し、さらにリン酸エステル、アルキルホスホン酸誘導体またはレシチンの1種以上を適量含む送給潤滑剤が適量塗布されているので、ワイヤ表面の変色がなく短時間溶接試験および長時間溶接試験とも送給抵抗Rおよびスリップ率SLが低くアークが安定し、ライナ内の堆積量およびチップ磨耗も少ないなど極めて満足な結果であった。
なお、ワイヤNo.8は、送給潤滑剤中にリン酸エステル、アルキルホスホン酸誘導体またはレシチンの1種以上を含んでいないので、短時間溶接試験および長時間溶接試験とも送給抵抗Rが若干高くなった。比較例中ワイヤNo.9は、送給潤滑剤中の硫化油脂と硫化オレフィンの硫黄含有量が多いので、ワイヤ表面が変色し、チップ部での通電性が不良となってアークがやや不安定となるとともに送給抵抗Rおよびスリップ率SLの最高値が高くなった。
ワイヤNo.10は、送給潤滑剤中の硫化エステルの硫黄含有量が少ないので、短時間溶接試験および長時間溶接試験とも送給抵抗Rが高くアークが不安定であった。また、チップの摩耗量が多く長時間溶接試験ではアークが非常に不安定であった。さらに、リン酸エステル、アルキルホスホン酸誘導体およびレシチンの合計量が多いのでスパッタ発生量も多くなった。
ワイヤNo.11は、送給潤滑剤中の硫化エステルが多いので、ワイヤ表面が変色し、短時間溶接試験ではチップ部での通電性が不良となってアークがやや不安定となった。また、長時間溶接試験ではライナ内の堆積量が多くなり送給抵抗Rが高くアークが不安定であった。さらに、リン酸エステルが少ないので、短時間溶接試験で送給抵抗Rの最高値が高くなった。
ワイヤNo.12は、送給潤滑剤中の硫化脂肪酸と硫化エステルの合計量が少ないので、短時間溶接試験および長時間溶接試験とも送給抵抗Rが高くアークが不安定であった。また、チップの摩耗量が多く長時間溶接試験ではアークが非常に不安定であった。ワイヤNo.13は、送給潤滑剤中の二硫化モリブデンが多いので、短時間溶接試験および長時間溶接試験ともスリップ率SLが高く、また、硫化脂肪酸および硫化エステルの活性硫黄含有量が多いので、ワイヤ表面が変色してチップ部での通電性が不良となってアークが非常に不安定であった。
ワイヤNo.14は、送給潤滑剤中の二硫化モリブデンが少ないので、長時間溶接試験では送給抵抗Rが高く、また、チップが摩耗してアークが非常に不安定であった。ワイヤNo.15は、送給潤滑剤中のポリブテンとポリメタアクリレートの合計量が多いので、チップ部での通電性が不良となってアークが不安定になった。また、カリウム化合物のK換算値が多いのでスパッタ発生量が多かった。
ワイヤNo.16は、送給潤滑剤中のポリブテンが少ないので、短時間溶接試験では部分的にアークがやや不安定となるとともに送給抵抗Rおよびスリップ率SLの最高値が高くなった。また、長時間溶接試験ではライナ内の堆積量が多く送給抵抗Rが高くなってアークが不安定であった。ワイヤNo.17は、ワイヤ表面の送給潤滑油量が多いので、短時間溶接試験および長時間溶接試験ともスリップ率SLが高くアークが不安定であった。また、長時間溶接試験ではライナ内の堆積量が多く送給抵抗Rも高くなった。
ワイヤNo.18は、ワイヤ表面の送給潤滑油量が少ないので、短時間溶接試験および長時間溶接試験とも送給抵抗Rが高くアークが不安定で、長期間溶接試験ではチップが摩耗し、さらに、カリウム化合物のK換算値が少ないのでアークが非常に不安定であった。
フラックス入りワイヤの断面構造例を示した模式図である。 本発明の実施例におけるワイヤ送給性評価試験の装置を示す図面である。
符号の説明
1 鋼製外皮
2 フラックス
3 合せ目
4 送給機
5 スプール巻きワイヤ
6 送給ローラ
7 コンジットケーブル
8 トーチ
9 コンジットケーブル屈曲部
10 鋼板
11 ワイヤ実速度検出器
12 ロードセル


特許出願人 日鐵住金溶接工業株式会社 他1名

Claims (4)

  1. ガスシールドアーク溶接用めっきなし鋼ワイヤ表面に油脂またはエステルの1種以上の基油に硫黄含有量が5〜20質量%の硫化油脂、硫化エステル、硫化脂肪酸または硫化オレフィンの1種以上を15〜60質量%、二硫化モリブデンを8〜30質量%、油溶性高分子化合物の1種以上を5〜15質量%含有し、その他不可避不純物からなる送給潤滑剤がワイヤ10kg当たり0.5〜3.0g付着していることを特徴とするガスシールドアーク溶接用めっきなし鋼ワイヤ。
  2. 硫化油脂、硫化エステル、硫化脂肪酸または硫化オレフィンは、ASTM D1662に基づいて測定した150℃における活性硫黄分が4質量%以下であることを特徴とする請求項1記載のガスシールドアーク溶接用めっきなし鋼ワイヤ。
  3. 送給潤滑剤にリン酸エステル、アルキルホスホン酸誘導体またはレシチンの1種以上を1〜10質量%含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスシールドアーク溶接用めっきなし鋼ワイヤ。
  4. 送給潤滑剤にカリウム化合物をK換算値で0.5〜5質量%含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のガスシールドアーク溶接用めっきなし鋼ワイヤ。
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