JP5064731B2 - 血圧降下剤 - Google Patents
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Description
アンジオテンシンIIは強力な血管収縮作用とアルドステロン分泌作用を有する昇圧物質であるが、アンジオテンシンIも単なる前駆物質ではなくカテコールアミンの遊離を促進するなどの生理活性を有することが明らかになっている。
また、レニン−アンジオテンシン系と高血圧症の関係については、強い血管収縮作用を有するアンジオテンシンIIが細胞膜上のアンジオテンシンII受容体を介してその作用を示す。アンジオテンシンII受容体には、いくつかのサブタイプが存在しており、そのうちアンジオテンシンII1型(AT1)受容体は、血管収縮作用を有し、アンジオテンシンII 2型(AT2)受容体は、血管拡張作用を有している。具体的には、アンジオテンシンIIは、アンジオテンシンII1型受容体に結合することによって、血管収縮作用を起こす。従って、AT1受容体を拮抗または、AT2受容体を作動させることにより、血圧降下作用が期待できる。
ノコギリヤシは、その果実の油性成分が前立腺肥大症による排尿障害に有効とされている(非特許文献2:吉川敏一、辻智子編著、「医療従事者のための[完全版]機能性食品ガイド」、第1版、株式会社講談社、2004年8月20日、p62−63)。しかしながら、アンジオテンシンII1型受容体拮抗作用、アンジオテンシンI変換酵素阻害作用は知られていない。
センダングサ属の植物の血液循環改善作用(特許文献1:特開2002−205954号公報)、高血糖予防、皮膚炎予防、花粉症予防作用(特許文献2:特開2004−323362号公報)が知られている。しかしながら、センダングサ属のタウコギがアンジオテンシンII1型受容体拮抗作用、アンジオテンシンI変換酵素阻害作用を有することは知られていない。
クロモジに関しては、クロモジの根皮及び幹枝を生薬としたウショウに降圧作用(非特許文献3:萩庭丈寿ら、薬学雑誌、第82巻、1962年、p1441)が知られているがアンジオテンシンII1型受容体拮抗作用、アンジオテンシンI変換酵素阻害作用は知られていない。
ボタンについては、ボタンの根皮を血圧上昇薬に配合することが知られている(特許文献3:特開平8−48639号公報、特許文献4:特開平9−136831号公報)。ボタンのアンジオテンシンII1型受容体拮抗作用、アンジオテンシンI変換酵素阻害作用は知られていない。
(2)タウコギのエタノール抽出物を含有することを特徴とするアンジオテンシンI変換酵素阻害剤。
(3)タウコギのエタノール抽出物を含有することを特徴とする血圧降下剤。
(4)タウコギのエタノール抽出物を含有することを特徴とする高血圧症治療用医薬。
ボタンの花抽出物には、血圧降下作用、特に、収縮期に血圧降下に顕著な作用が認められる。
本発明のメリロート、ノコギリヤシ、タウコギ、クロモジ、ボタン、その抽出物としては、植物を乾燥させた乾燥物、その粉砕物、圧搾汁、水あるいはアルコール、エーテル、アセトンなどの有機溶媒による粗抽出物、および粗抽出物を分配、カラムクロマトなどの各種クロマトグラフィーなどで段階的に精製して得られた抽出物画分など、全てを使用することができる。これらは単独で用いても良く、また2種以上混合して用いても良い。
例えば、葉、茎、花や根などの乾燥物1Kgに99.5%エタノール抽出液3Lを加え、室温で一晩浸漬することにより得た抽出液を、そのままアンジオテンシンII1型受容体拮抗剤、アンジオテンシンI変換酵素阻害剤及び血圧低下剤として使用しても良いし、各種クロマトグラフィーを組み合わせて、その抽出液から精製したものを使用しても良い。
これらの本発明による植物乾燥物または抽出物に、アンジオテンシンII1型受容体拮抗作用、アンジオテンシンI変換酵素阻害作用を有することは、従来から全く知られておらず、本発明により得られた新知見である。
ボタンの花から抽出したエキスを用いて、血圧降下作用、特に、収縮期血圧の降下作用を確認することができた。収縮期血圧は用量依存的に低下し、対照群との有意差が認められた。拡張期血圧は、統計的に有意差はないものの、収縮期血圧と同様に用量依存的に血圧が低下した。心拍数は殆ど変動せず、安全性が高い。
1)メリロート、ノコギリヤシ、タウコギ、クロモジ、ボタンの粗抽出
メリロート(葉)、ノコギリヤシ(果実)、タウコギ(全草)、クロモジ(乾皮[ウショウ])、ボタン(花)の乾燥物各500gに99.5%エタノール5Lを加え、電熱式水浴機で加熱還流により、抽出物20.3g、18.1g、2.66g、8.0g、65.6gを各々得た。
実施例1で得られた各抽出物のアンジオテンシンII1型受容体への作用を評価するために、アンジオテンシンII1型受容体発現遺伝子を導入したヒト胎児腎細胞(mAT1a(HA)/293―T)を用いて、細胞内カルシウムイオン濃度を測定した。具体的には、
10%FCS/DMEM(1%Hygromycin B添加)培地で培養した上記細胞を遠心後、上清を捨て、HEPES/Hanksバッファー(0.1%BSA添加)10mlと1mM Fura―2AM蛍光プローブ40μlを加え、37℃で1時間静置した。その後、遠心して、上清を捨て、細胞を再びHEPES/Hanksバッファー(0.1%BSA添加)に懸濁させた。この懸濁液を0.5mlキュベットにとり、蛍光度計にセットし、植物抽出物(20mg/ml MeOH)を5μl添加した。その後、アンジオテンシンII/HEPES/Hanksバッファー(0.1%BSA添加)を5μl添加した。この時、340nmと380nmで励起し、500nmの蛍光を測定した。蛍光強度比(340/380)と、細胞内のカルシウム濃度は比例関係にある。予め、何も添加しないときの蛍光強度比(340/380)(A0とする)を測定し、次いでアンジオテンシンIIのみ添加後の蛍光強度比(340/380)(Bとする)を測定して対照とした。試料を添加する前の蛍光強度比(340/380)(A1とする)、試料のみ添加したときの蛍光強度比(340/380)(Cとする)、次いでアンジオテンシンII添加後の蛍光強度比(340/380)(Dとする)を測定し、試料のアンジオテンシンII1型受容体拮抗作用を評価した。試料添加前のベースライン(A1)は測定ごとに変動する。結果を表1に示す。表1()中の左側の数値は、B−A0に対するC−A1の割合を表した数値であり、変化率(%)と呼ぶ。変化率(%)が――のものは試料を添加したときに蛍光強度比(340/380)に変化が見られなかったことを示す。右側の数値は、B−A0に対するD−A1の割合を表した数値であり、応答率(%)と呼ぶ。変化率(%)と応答率(%)は次式により求めた。
応答率(%)= [(D−A1)/(B−A0)]×100
実施例1で得られた各抽出物のアンジオテンシン変換酵素(ACE)に対する阻害効果を検証した。具体的には、ACE10ngと各抽出物の混合液中に基質であるHippuryl−Histidyl―Leucineを添加し、20分間反応させた。この時、励起波長340nm、蛍光波長425nmで蛍光強度を測定し、以下の式により阻害率を算出した。結果を表2に示す。なお、ポジティブコントロールであるcaptoprilのIC50値は、2nM であった。
阻害率(%)=100−〔[(サンプル−ブランク)/(コントロール−ブランク)]×100〕
サンプル :試料+ACEを添加したときの蛍光強度
コントロール:ACEのみ添加したときの蛍光強度
ブランク :ACEの代わりに1N塩酸のみ添加したときの蛍光強度
上記の実施例1で得られたボタン抽出物を用いて、常法により下記の配合組成の高血圧の予防、治療用の錠剤を製造した。
(組 成) (質量%)
ボタン抽出物 2.0
乳 糖 77.0
コーンスターチ 20.0
グアーガム 1.0
上記の実施例1で得られたタウコギ抽出物を用いて、常法により下記の配合組成のジュースを製造した。
(組 成) (質量%)
冷凍濃縮温州みかん果汁 5.0
果糖ブドウ糖液糖 11.0
クエン酸 0.2
L−アスコルビン酸 0.02
香 料 0.2
色 素 0.1
タウコギ抽出物 0.2
水 83.28
実施例1で得られたボタンの花からの抽出物を用いて、自然発症高血圧ラット(SHR)を用いて単回投与により降圧作用について検討した。
実施例1で得られたボタンの花抽出物を所定量秤量し,食用なたね油 25%,Tween 20 10%,蒸留水 65%の混合液に用時に乳濁化にして使用した。
[試験方法]
13週齢のSHR/Izm雄性ラットの血圧(収縮期血圧,拡張期血圧)及び心拍数を小動物無加温型非観血式血圧計を用いて測定し,収縮期血圧が各群でほぼ同一になるように,下記に記載した群構成表(表3)に基づき群分けを行った。群分け後,一夜絶食したラットに被験物質を単回経口投与した。ボタン抽出物0.1g/kg投与群はラット体重1kgあたり0.1gのボタン抽出物を投与した。ボタン抽出物0.3g/kg投与群はラット体重1kgあたり0.3gのボタン抽出物を投与した。ボタン抽出物1.0g/kg投与群はラット体重1kgあたり1.0gのボタン抽出物を投与した。投与2,4,6,8及び24時間後に血圧及び心拍数の測定を行った。対照群には,被験物質の溶媒である油25%,Tween 20 10%,蒸留水65%の混合液を投与した。
収縮期血圧については,対照群では投与前に186±4.0 mmHgを示した.投与4時間後までに若干の低下がみられたが,その後は回復した。
ボタン抽出物0.1及び0.3 g/kg投与群では投与前ではそれぞれ186±2.9及び186±2.7 mmHgを示し,投与4時間後にはそれぞれ177±3.4及び173±4.1 mmHgを示し,対照群と比較して低下傾向がみられた。
ボタン抽出物1 g/kg投与群では投与前で186±2.8 mmHgを示し,対照群と比較して投与2〜6時間後には、166±2.6、162±3.0及び167±4.4 mmHgを示し、特に、2時間後と4時間後では有意な低値を示した( p<0.05,対照群と比較してTukeyの多重比較検定で有意差あり)。
対照群と比較してボタン抽出物0.1,0.3及び1 g/kg投与群では用量依存的な血圧低下がみられた。
拡張期血圧については,対照群で投与4〜6時間後に血圧の低下がみられたが,その後回復した。ボタン抽出物投与群では,対照群とほぼ同様に推移した。
心拍数については対照群では,投与後ほぼ一定に推移した.ボタン抽出物投与群においても,投与後ほぼ一定に推移した。
試験結果のデータを、収縮期血圧を表4及び図1に、拡張期血圧を表5及び図2に、心拍数を表6及び図3に示す。
本実施例による試験の結果、ボタン抽出物投与群では、収縮期血圧について用量依存的な降圧作用がみられた。ボタン抽出物1.0 g/kg投与群では対照群と比較して有意な降圧作用が認められた。ボタン抽出物0.1,0.3 g/kg投与群についても対照群と比較して低下傾向がみられたが,有意差は認められなかった。拡張期血圧についても、用量依存的な降圧作用がみられたが、有意差は認められなかった。また、心拍数については、殆ど影響が無いことが示された。
対照群での投与後にみられる血圧の低下は日内変動及び絶食の影響が顕著にみられたのではないかと考えられる。
Claims (4)
- タウコギのエタノール抽出物を含有することを特徴とするアンジオテンシンII1型受容体拮抗剤。
- タウコギのエタノール抽出物を含有することを特徴とするアンジオテンシンI変換酵素阻害剤。
- タウコギのエタノール抽出物を含有することを特徴とする血圧降下剤。
- タウコギのエタノール抽出物を含有することを特徴とする高血圧症治療用医薬。
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