JP5058403B2 - Ck−mb活性測定法およびck−mb活性測定試薬 - Google Patents

Ck−mb活性測定法およびck−mb活性測定試薬 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はミトコンドリアクレアチンキナーゼ(mCK)の活性を特異的に阻害するモノクローナル抗体を用いたクレアチンキナーゼMBアイソザイム(CK−MB)の測定法および測定試薬に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒトのクレアチンキナーゼ(CK)は遺伝子を異にする3つの蛋白が存在する。細胞質に由来する2種類の蛋白(局在により筋肉型(M型)と脳型(B型))ともう一つはミトコンドリアに由来する蛋白である。細胞質由来のCKアイソザイムはM型とB型との組み合わせによりなる2量体で構成され、CK−MM、CK−MB、CK−BBの3種類に分類される。ミトコンドリアCK(mCK)は、偏在型のユビキタス(ubiquitous)Mia−CKとサルコメリック(sarcomeric)Mib−CKのアイソフォームが組織特異的に合成される。
【0003】
また、mCKは8量体で極めて安定的に存在するが、クレアチン、MgADPおよび硝酸塩の遷移状態類似物質複合体の存在下では、数分のうちに2量体に加速的に解離する。また、血液中では時間と共に徐々に2量体になると言われている(Karin Fritz−Wolf et al.:Nature,381,341−345,1996)。
【0004】
これらアイソザイムの電気泳動の移動度は陰極側からmCK(8量体)、mCK(2量体)=CK−MM、CK−MB、CK−BBの順になる。mCK(2量体)はCK−MMと同じ移動度を示すため保存血液では電気泳動的にCK−MMとして測定されてしまう。その他にアイソザイムではないが、免疫グロブリンが結合したマクロCKも存在する。これらは移動度、免疫向流法などによりザイモグラムから確認することができる。
【0005】
臨床検査においてはCK、CKアイソザイムの定量が広く行われている。中でもCK−MBは心筋梗塞のマーカーとして重要である。CK−MBの定量はEIA法、免疫阻害法、電気泳動法などにより行われている。EIA法はCK−MBだけを特異性高く測定できる反面、専用の機器が必要で迅速性に欠ける。電気泳動法は操作が煩雑で熟練を要する上に、結果を出すまでにデンシトメーターでCK−MBの存在比率を出す必要があり迅速性に欠ける。免疫阻害法は自動分析装置により迅速簡便に測定ができる利点があるが特異性に欠ける欠点を有していた。
【0006】
しかし現状では、急性心筋梗塞の早期診断が求められる為、迅速簡便に測定ができる免疫阻害法が広く使用されている。この方法は、CK−Mサブユニットに対する特異抗体(以下、抗CK−M阻害抗体ということもある)を用いてMサブユニットを失活させ、残存するBサブユニット活性を測定するものである。この方法だと、CK−MBの他にCK−BB、mCK(2量体+8量体)を測定してしまう。この内CK−BBは、血中にほとんど存在しないため無視できるし、CK−BBが逸脱する疾患も少ない。しかし、mCKは健常者の血清中でもCK−MBとほぼ同じ活性量含まれており(豊田陽子 他:生物物理化学,41,244,1997、星野忠 他:小児を対象としたCKアイソザイム分画の年齢別推移に関する検討.生物物理化学,42補冊2,21,1998)、さらに肝疾患などの細胞壊死、悪性腫瘍などでmCKの逸脱が起こり結果の判定を混乱させる。 最近では、ロタウイルスによる腸炎、新生児仮死などでもmCKの逸脱が起こることが報告されている(星野忠 他:臨床病理,46,総会号,57,1998、金光房江 他:臨床病理,46,総会号,56,1998)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来の免疫阻害法は、抗CK−M阻害抗体を用いてCK‐MBを測定するものであり、簡便で迅速に測定できるが、この方法だとmCKも同時に測定してしまい、正確なCK−MBの測定は期待できない。しかし、mCKを阻害する抗体および抗CK‐M阻害抗体を添加することにより、mCKの影響を回避して正確で特異性の高い簡便なCK‐MB測定が可能となる。そこで本発明の目的は、免疫阻害法によるCK‐MB測定法において、mCKの影響を回避して正確で特異性の高い簡便なCK‐MB測定法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、たとえば哺乳動物をmCKで免疫して得られた抗血清や、免疫した各種動物由来のBリンパ球と各種骨髄腫細胞との細胞融合により作製したモノクローナル抗体産生ハイブリドーマから、前記目的を達成せしめる抗体を得て本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)免疫阻害法によりクレアチンキナーゼ(CK)MBアイソザイム(CK−MB)の酵素活性を測定する方法であって、ミトコンドリア局在クレアチンキナーゼアイソザイム(mCK)の酵素活性を阻害するモノクローナル抗体およびクレアチンキナーゼM(CK−M)サブユニットの酵素活性を阻害する抗体を用いて検体を処理し、CK−Mサブユニットの酵素活性およびmCKの酵素活性を阻害する処理がなされた検体中残存するクレアチンキナーゼB(CK−B)サブユニットの酵素活性を測定し、測定されたCK−Bサブユニットの酵素活性からCK−MBの酵素活性を求めることを特徴とするCK−MB活性測定法、
(2)前記mCKの酵素活性を阻害するモノクローナル抗体が、サルコメラmCKの酵素活性を阻害するが、クレアチンキナーゼMBアイソザイム(CK−MB)、クレアチンキナーゼMMアイソザイム(CK−MM)およびクレアチンキナーゼBBアイソザイム(CK−BB)の酵素活性は阻害しない(1)に記載のCK−MB活性測定方法、
(3)CK−Mサブユニットの酵素活性を阻害する抗体およびmCKの酵素活性を阻害するモノクローナル抗体を一つの工程中で同時に作用させることを特徴とする(1)または(2)に記載のCK−MB活性測定法、
(4)CK−Mサブユニットの酵素活性を阻害する抗体およびmCKの酵素活性を阻害するモノクローナル抗体を別々の工程で作用させることを特徴とする(1)または(2)に記載のCK−MB活性測定法、
(5)前記mCKの酵素活性を阻害するモノクローナル抗体が、受託番号FERM BP−7133号により寄託されているハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体であることを特徴とする(1)〜(4)の何れか1項に記載のCK−MB活性測定法、
(6)(1)記載のCK−MB活性測定法に用いるCK−MB活性測定試薬であって、クレアチンキナーゼM(CK−M)サブユニットの酵素活性を阻害する抗体およびミトコンドリア局在クレアチンキナーゼアイソザイム(mCK)の酵素活性を阻害するモノクローナル抗体を含むことを特徴とするCK−MB活性測定試薬、
(7)前記mCKの酵素活性を阻害するモノクローナル抗体が、サルコメラmCKの酵素活性を阻害するが、クレアチンキナーゼMBアイソザイム(CK−MB)、クレアチンキナーゼMMアイソザイム(CK−MM)およびクレアチンキナーゼBBアイソザイム(CK−BB)の酵素活性は阻害しない(6)に記載のCK−MB活性測定試薬、
(8)前記mCKの酵素活性を阻害するモノクローナル抗体が、受託番号FERM BP−7133号により寄託されているハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体であることを特徴とする(6)または(7)に記載のCK−MB活性測定試薬、
を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の抗mCK酵素活性阻害抗体(抗mCK阻害抗体とよぶこともある)は、mCK蛋白質を特異的に認識し、且つその酵素活性を特異的に阻害する抗体である。本発明の抗体は、後述する本発明のCKアイソザイムの分別定量法に使用できるが、このCKアイソザイムの分別定量法において実質的にmCK以外のCKアイソザイムの測定に影響が無い程度にまでmCKを阻害できれる抗体であればよく、mCKを60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上阻害する抗体であり得る。mCKは多くの場合、試料中に5〜20U/L含まれており、80%以上のmCK阻害能を有すれば臨床上問題なく使用可能である。mCK阻害能の低い抗体であっても、複数の抗体を組み合わせて使用する、またはmCKを阻害しうる化合物と共に使用することにより、実質的に80%以上の阻害効果を得ることができるので、本発明の範囲に含まれる。また、本発明の抗体は、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよいが、好ましくはモノクローナル抗体である。
【0011】
具体的には例えば、本発明の抗体は、ヒトmCKを特異的に認識して阻害しうるモノクローナル抗体であって、マウス由来かつイムノグロブリンG(IgG)クラスのmCKI−578と命名された抗体であり、受託番号FERM BP−7133号により平成12年4月13日付けで通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されているハイブリドーマにより産生される抗体である。mCKI−578は、試料中のmCK酵素活性を特異的に80%以上阻害することができる。また、mCKI−578は、少なくともサルコメラmCKを90%以上阻害する。本発明の抗体は、この具体例に限定されるものではなく、ヒトmCKを特異的に認識し、且つその酵素活性を特異的に阻害しうる抗体であればよい。また、本発明の抗mCK阻害抗体は、mCK酵素活性を阻害する目的で使用する時、単独で用いてもよいし、複数の抗mCK阻害抗体、例えば認識部位が異なる抗体を適宜組み合わせて用いることも可能である。
【0012】
本発明の抗体の由来である動物種はマウスに限るものではなく、ラット、ハムスター、ウサギ、ヤギ、ウマなどが例示されるが、好ましくはマウスである。抗体のサブクラスはIgGに限定されるものではなく、IgMなどでもよい。
【0013】
本発明の抗体は、従来公知の免疫学的手法を用いて、例えば抗原としてmCKを用い、好ましくはアジュバントと共に哺乳類に免疫し、免疫した動物の血清などから得ることができる。モノクローナル抗体および該モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、免疫した動物由来のBリンパ球と各種骨髄腫細胞とを融合することにより、具体的には以下に記載する方法で作製することができる。
【0014】
抗原としては、目的とする特異性によっても異なるが、mCKに対して特異的に親和性を有し且つその酵素活性を阻害する抗体を得る場合には、ヒトまたは哺乳類のmCKが用いられるが、特異性を高めるためには種特異的な抗原を用いることが好ましい。ヒトmCKに対して特異的に親和性を有し且つその酵素活性を特異的に阻害する抗体を得る場合には、抗原として好ましくはヒトmCKを用いる。当該抗原は、mCKを心筋組織や血液などから精製することにより調製できるし、また遺伝子工学的手法によっても得ることができる。
【0015】
感作抗原としては、精製したmCK蛋白質、またはそのアミノ酸配列に基づき遺伝子工学的手法により発現させたmCK蛋白質やその部分ペプチドをリン酸緩衝液(PBS)などの適当な緩衝液中に溶解、あるいは懸濁したものが用いられる。抗原液は通常抗原物質を50〜500μg/mL程度含む濃度に調製すればよい。また、ペプチド抗原など、それだけでは抗原性が低い場合は、アルブミンやキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)などの適当なキャリアータンパク質に架橋して用いることが好ましい。当該抗原で免疫感作する動物としては、マウス、ラット、ハムスター、ウマ、ヤギ、ウサギなどが例示される。好ましくはマウス、より好ましくはBALB/cマウスである。
【0016】
このとき、被免疫動物の抗原への応答性を高めるため、当該抗原溶液をアジュバントと混合して投与することが好ましい。ここで用いられるアジュバントとしては、フロイント完全アジュバント(FCA)、フロイント不完全アジュバント(FIA)、Ribi(MPL)、Ribi(TDM)、Ribi(MPL+TDM)。百日咳ワクチン(Bordetella pertussis vaccine)、ムラミルジペプチド(MDP)、アルミニウムアジュバント(ALUM)、およびこれらの組合せが例示されるが、初回免疫時にFCA、追加免疫時にFIAやRibiアジュバントを使用する組合せが特に好ましい。
【0017】
免疫方法は、使用する抗原の種類やアジュバント混合の有無などにより、注射部位、スケジュールなどを適宜変化させることができるが、例えば、被免疫動物としてマウスを用いる場合は、アジュバント混合抗原液0.05〜1mL(抗原物質10〜200μg)を腹腔内、皮下、筋肉内または(尾)静脈内に注射し、初回免疫から約4〜21日毎に1〜4回追加免疫を行い、さらに約1〜4週間後に最終免疫を行う。当該抗原溶液をアジュバントを使用せずに投与する場合には、抗原量を多くして、腹腔内注射してもよい。抗体価は追加免疫の約5〜6日後に採血して調べる。抗体価の測定は、後述の抗体価アッセイに準じ、通常行われる方法で行うことができる。最終免疫より約3〜5日後、該免疫動物から脾細胞を分離して抗体産生細胞を得る。
【0018】
骨髄腫細胞としては、マウス、ラット、ヒトなど由来のものが使用される。例えばマウスミエローマP3X63−Ag8、P3X63−Ag8−U1、P3NS1−Ag4、SP2/o−Ag14、P3X63−Ag8・653などの株化骨髄腫細胞が例示される。骨髄腫細胞には免疫グロブリン軽鎖を産生しているものがあり、これを融合対象として用いると、抗体産生細胞が産生する免疫グロブリン重鎖とこの軽鎖とがランダムに結合することがあるので、好ましくは免疫グロブリン軽鎖を産生しない骨髄腫細胞、例えばP3X63−Ag8・653やSP2/o−Ag14などを用いることが好ましい。抗体産生細胞と骨髄腫細胞とは、同種動物、特に同系統の動物由来であることが好ましい。骨髄腫細胞の維持は、凍結保存するか、またはウマ、ウサギもしくはウシ胎児血清を添加した一般的な培地で継代培養することにより行われる。また細胞融合には対数増殖期の細胞を用いるのが好ましい。
【0019】
抗体産生細胞と骨髄腫細胞とを融合させてハイブリドーマを作製する方法としては、ポリエチレングリコール(PEG)を用いる方法、センダイウイルスを用いる方法、電気融合装置を用いる方法などが例示される。例えばPEG法の場合、約30〜60%のPEG(平均分子量1,000〜6,000)を含む適当な培地または緩衝液中に脾細胞と骨髄腫細胞を1〜10:1、好ましくは5〜10:1の混合比で懸濁し、温度約25〜37℃、pH6〜8の条件下で、約30秒〜3分間程度反応させればよい。反応終了後、細胞を洗浄しPEG溶液を除いて培地に再懸濁し、マイクロタイタープレート中に播種して培養を続ける。
【0020】
融合操作後の細胞は選択培地で培養して、ハイブリドーマの選択を行う。選択培地は、親細胞株が死滅し、融合細胞のみが増殖しえる培地であり、通常ヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン(HAT)培地が使用される。ハイブリドーマの選択は、通常融合操作の1〜7日後に、培地の一部、好ましくは約半量を選択培地と交換することによって開始し、さらに2、3日毎に同様の培地交換を繰り返しながら培養することにより行う。顕微鏡観察によりハイブリドーマのコロニーが生育しているウエルを確認する。
【0021】
生育しているハイブリドーマが所望の抗体を産生しているかどうかを知るには、培養上清を採取して抗体価アッセイを自体公知の方法により行えばよい。例えば固相化した抗原タンパク質に段階希釈した該上清を加えて反応させ、さらに蛍光物質、酵素、もしくは放射性同位体(RI)などで標識した二次抗体(抗グロブリン抗体、抗IgG抗体、抗IgM抗体など)を反応させれば、該上清中に産生されている抗体を検出することができ、また抗体価を測定することができる。抗原が酵素などの場合は、その酵素と該上清とを反応させた後、適当な基質を反応させて酵素阻害活性の有無により、抗体の検出および抗体価の測定を行うことができる。このように各ウエルの培養上清をスクリーニングし、適切な抗体を産生しているハイブリドーマを得る。
【0022】
さらに限界希釈法、軟寒天法、蛍光励起セルソーターを用いた方法などにより単一クローンを分離する。例えば限界希釈法の場合、ハイブリドーマのコロニーを1細胞/ウエル前後となるように培地で段階希釈して培養することにより目的とするモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ クローンを単離することができる。得られた抗体産生ハイブリドーマ クローンは、約10%(v/v)ジメチルスルホキシド(DMSO)あるいはグリセリンなどの凍結保護剤の共存下に凍結させて−70〜−196℃で保存すると、約半年〜半永久的に保存可能である。細胞は用時37℃前後の恒温槽中で急速に融解して使用する。凍結保護剤の細胞毒性が残存しないようによく洗浄してから使用するのが望ましい。
【0023】
ハイブリドーマが産生する抗体の免疫グロブリンサブクラスを調べるためには、該ハイブリドーマを一般的な条件で培養し、その培養上清中に分泌された抗体を市販の抗体クラス・サブクラス判定用キットなどを用いて分析することにより知ることができる。
【0024】
ハイブリドーマからのモノクローナル抗体の取得方法は、必要量やハイブリドーマの性状などによって適宜選択して用いる。例えば、該ハイブリドーマを移植したマウス腹水から取得する方法、細胞培養により培養上清から取得する方法などが例示される。マウス腹腔内で増殖可能なハイブリドーマであれば、腹水から数mg/mLの高濃度のモノクローナル抗体を得ることができる。インビボで増殖できないハイブリドーマは細胞培養の培養上清から取得する。細胞培養によるモノクローナル抗体の取得は、抗体産生量はインビボより低いが、マウス腹腔内に含まれる免疫グロブリンや他の夾雑物質の混入が少なく、精製が容易であるという利点がある。
【0025】
抗体をハイブリドーマを移植したマウス腹腔内から取得する場合、例えば、予めプリスタン(2、6、10、14−テトラメチルペンタデカン)などの免疫抑制作用を有する物質を投与したBALB/cマウスの腹腔内へハイブリドーマ(約10個以上)を移植し、約1〜3週間後に貯留した腹水を採取する。異種ハイブリドーマ(例えばマウスとラット)の場合には、ヌードマウス、放射線処理マウスを使用することが好ましい。
【0026】
一方、細胞培養上清から抗体を取得する場合、例えば、細胞維持に用いられる静置培養法の他に、高密度培養方法あるいはスピンナーフラスコ培養方法などの培養法を用い、当該ハイブリドーマを培養し抗体を含有する培養上清を得る。培養液に含まれる血清は、他の抗体やアルブミンなどの夾雑物が含まれ、抗体精製が煩雑になることが多いので、培養液への添加は少なくすることが望ましい。または、ハイブリドーマを常法により無血清培地に馴化し、無血清培地を用いて培養すれば、抗体精製が容易になるので、より好ましい。
【0027】
腹水や培養上清からのモノクローナル抗体の精製は、免疫グロブリンの精製法として従来既知の硫酸アンモニウムや硫酸ナトリウムを用いた塩析による分画法、ポリエチレングリコール分画法、エタノール分画法、DEAEイオン交換クロマトグラフィー法、ゲル濾過法などを応用することで、容易に達成される。
【0028】
さらに、モノクローナル抗体が、マウスIgGである場合には、プロテインA結合単体あるいは抗マウスイムノグロブリン結合単体を用いたアフィニティークロマトグラフィー法により精製することが可能であり、簡便である。
【0029】
かくして得られた本発明のモノクローナル抗体は試料中のmCK酵素活性を特異的に阻害できる。従って、本抗体を用いることにより、試料中のmCKを選択的に排除することができ、CK−Mサブユニットを選択的に排除せしめる抗体と共に使用することで、クレアチンキナーゼ(CK)アイソザイムであるCK−MB、CK−MM、CK−BBおよびmCKを分別定量することが可能となる。
本発明は、本発明のモノクローナル抗体で処理することにより、mCKを排除することを特徴とするクレアチンキナーゼ(CK)アイソザイムの分別定量法を提供する。本発明の抗mCK酵素活性阻害モノクローナル抗体は、単独で用いてもよいし、複数の抗mCK阻害抗体、例えば認識部位が異なる抗体を適宜組み合わせて用いることも可能である。
【0030】
CKアイソザイム測定法の基本原理は、免疫阻害法によるCKアイソザイムの酵素活性を選択的に測定する方法を利用する。一般に、例えばこの方法によるCK−MBの活性測定は次のようにして行われている。すなわち、ヒトCK−Mサブユニットに特異的な活性阻害抗体を使用し、試料中のCK−MMおよびMB中のMサブユニット活性(MBは約半分の活性が阻害される)を阻害したのち、残存するBサブユニット活性を2倍することによりCK−MB活性を測定する。CK−MB活性の測定は、下述の反応式(化1)の左行反応によって生成するATPを、さらにヘキソキナーゼ(HK)とグルコース6リン酸脱水素酵素(G−6−PDH)からなる共役反応によりNADPHを生成させ、NADPHの量的変化を定量することにより行う(化2)。
【0031】
【化1】
Figure 0005058403
【0032】
【化2】
Figure 0005058403
【0033】
従来法では、抗CK−M阻害抗体のみを用いてCK−MBの測定を行っていたため、mCKも同時に測定され正確なCK−MB活性の測定が期待できなかったが、本発明のCKアイソザイムの分別定量法において、クレアチンキナーゼM(CK−M)サブユニットおよびミトコンドリア局在クレアチンキナーゼアイソザイム(mCK)の酵素活性を、CK−Mサブユニットに対する阻害抗体およびmCKに対する阻害抗体で試料を処理することにより選択的に排除する処理をした後、残存するCK活性を測定すれば、実用上十分に正確なCK−MB測定を簡便迅速に実施できる。
【0034】
上記本発明のCK−MB測定法では、抗CK−M阻害抗体および本発明の抗mCK阻害抗体とを同一の工程中、例えば測定用酵素液中、で作用させてもよいし、別々の工程で、例えば本発明の抗mCK阻害抗体を基質液に添加し、抗CK−M阻害抗体は測定用酵素液中で、作用させてもよい。
活性測定を目的とするアイソザイムがCK−MBの場合は、好ましくは同時に、抗CK−M阻害抗体および本発明で得た抗mCK阻害抗体で試料を処理して測定を行うのが簡便でよい
【0035】
さらに本発明は、抗mCK阻害抗体で試料を処理することによりmCKの酵素活性を選択的に排除することを特徴とするmCK測定法を提供する。すなわち、本発明のmCK測定法においては、試料中のmCKを含むクレアチンキナーゼ活性の測定と、上記本発明の抗mCK阻害抗体を用いてmCK以外のクレアチンキナーゼ活性の測定とを行い、得られた2つの測定値の差からmCK活性のみを求めることができる。この時、試料中のmCKを含むクレアチンキナーゼ活性の測定と、上記本発明の抗mCK阻害抗体を用いてmCK以外のクレアチンキナーゼ活性の測定とは、抗CK−M阻害抗体などを含んでいる測定用試薬を使用して行ってもよいし、含んでいない測定用試薬を使用して行ってもよい。2つの測定において使用する測定用試薬が抗CK−M阻害抗体の含有に関して同条件であれば問題はない。
【0036】
例えば、試料中の全CK活性を測定し、測定後さらに本発明の抗mCK阻害抗体を加えて再度測定を行い、得られた2つの測定値の差によりmCK活性を求めることができる。この時、試料をまず抗CK−M阻害抗体を用いて処理しCK−MM活性とCK−MBの約半分の活性とを阻害したのちに一旦測定を行って、1/2CK−MB+mCK酵素活性を測定し(測定値A)、測定後さらに本発明の抗mCK阻害抗体を加えて再度測定を行い、1/2CK−MB酵素活性(測定値B)を測定することにより、mCK活性のみならずCK−MB活性を同一試料を用いて同時に簡便迅速に測定できる。すなわち、CK−MB活性は測定値Bを2倍することにより求めることができるし、mCK活性は測定値Aと測定値Bとの差により求めることができる。
【0037】
また例えば、試料中のmCKを含むクレアチンキナーゼ活性の測定と、試料中のmCK以外のクレアチンキナーゼ活性の測定とを別々に行い、得られた2つの測定値の差からmCK活性を得ることもできる。すなわち、試料中のmCKを含むクレアチンキナーゼ活性を例えば全CK活性測定試薬(キットA)を用いて測定し、試料中のmCK以外のクレアチンキナーゼ活性を別に調製した抗mCK阻害抗体をキットAに添加したキットBを用いて測定を行い、得られた2つの測定値の差からmCK活性を得ることができる。この時、キットAとして抗CK−M阻害抗体を添加したCK−MB活性測定試薬を使用すれば、mCK活性のみならず、CK−MB活性をも求めることができる。
【0038】
さらに、本発明のCKアイソザイムの分別定量法において、抗mCK阻害抗体を用いて試料中のmCK以外のクレアチンキナーゼ活性の測定を行い(測定値C)、抗CK−M阻害抗体と抗mCK阻害抗体とを用いてmCK、CK−MM、および1/2CK−MB以外のCK活性の測定を行い(測定値D)、測定値Cと測定値Dの2倍の値との差により、CK−MM活性を求めることができる。
【0039】
本発明の方法により測定される試料は特に制限はないが、通常臨床検査の分野で行われているCKアイソザイムが測定されている方法や試料に適用しうる。
【0040】
また本発明は、本発明のCKアイソザイム測定法、CK−MB測定法、mCK測定法に必要な試薬をキット化または単品で構成してなるCKアイソザイム活性測定用試薬を提供する。本発明のCKアイソザイム活性測定用試薬は、本発明の抗mCK酵素活性阻害モノクローナル抗体を試薬中に含むかまたは単品として構成してなる。ここでいう試薬には、全CK活性測定試薬や、急性心筋梗塞の生化学的診断に用いられているCK−MB測定用試薬を、その一部として利用できるがこれに限定されるものではない。
【0041】
【実施例】
以下の実施例は本発明を具体的に説明するものであるが、これによって本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例1】
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの作製
(1)免疫原(抗原)の調製
ヒトmCKはヒト心筋組織を用い、Robert Robertsら、TheJournal of Biological Chemistry、第255巻、2870〜2877項、1980、およびAnn Merz Graceら、The Journal of Biological Chemistry、第258巻、15346〜15354項、1983に記載されている方法により精製した。400gのヒト心筋より約10mgの精製ヒトmCKが得られた。これを使用するまで凍結保存した。
【0042】
(2)被免疫動物
5〜8週令の近交系BALB/c系マウス雌を、動物飼育チェンバー内(23±1℃、湿度70%)で、標準ペレットを使用して飼育し、任意に給水して飼育した。
【0043】
(3)免疫方法
上記(1)で調製した精製ヒトmCKを抗原として用い、100μg/0.5mLとなる様にPBSで調製し、同量(0.5mL)のフロイント完全アジュバント(Freund’s complete adjuvant)(Difco社製)を混合して乳化した。この乳化状の抗原を、5週令の4匹の雌のBALB/cマウスの腹腔に1匹あたり200μL投与した。さらに2週間毎に、Ribiアジュバントにて100μg/mLとなるように調製した上記抗原をマウス当たり20μgずつ4回投与した。さらに1ヶ月の後Ribiアジュバントで100μg/mLとなるように調製した上記抗原を同様に追加免疫した後、マウスの抗体価を測定した。抗体価の高いマウスはさらに2週間後、抗原である精製ヒトmCKをPBSで100μg/mLに調製し、マウス尾静脈より注射して最終免疫した。
【0044】
(4) 抗体価測定(抗体価アッセイ)
抗体価の測定に当たっては、定期的にマウス眼底網膜より少量の全血を採取し、血清を分離した後使用直前まで凍結保存した。免疫開始時より、ヒトmCKに対する抗体価をmCK酵素活性阻害抗体法により調べた。
【0045】
すなわち、各マウスの抗血清をPBSで10〜1,000倍希釈して調製した抗体液25μLと25μLのmCK酵素液(200U/L)とを96穴マイクロタイタープレートに加え室温で10分間反応した後、100μLの酵素試薬〔100mM イミダゾール、2mM EDTA、10mM酢酸マグネシウム、2mM アデノシン−5’−ニリン酸(ADP)、5mM アデノシン−5’−一リン酸(AMP)、40μM P1,P5−ジ(アデノシン−5’)五リン酸(AP5A)、30mM 1−チオグリセロール、28mM D−グルコース、2mM NADP、3U/mL HK、2U/mL グルコース−6−リン酸脱水素酵素、30mM クレアチンリン酸二ナトリウム、0.3mg/mL ニトロブルーテトラゾリウムクロライド、0.6U/mL ダイアフォラーゼ、pH6.6〕を96穴マイクロタイタープレートに加え、37℃で10分間反応させた。ついで、波長570nmにおける吸光度を試薬盲検を対照に測定した。なお、抗体陰性コントロールとして抗血清の代わりに非免疫マウス血清を添加し、陰性コントロールとした。
【0046】
得られた吸光度から、mCK酵素活性阻害特異抗体が血液中に産生されていればmCKの酵素活性が阻害され基質反応が抑制されて吸光度の変化量が低くなるため、mCK酵素活性阻害特異抗体の存在を特定することができた。
【0047】
(5) 反応特異性の検討
得られた抗mCK酵素活性阻害ポリクローナル抗体はさらに、ヒトmCKの代りにヒトCK−MBまたはヒトCK−MMを至適濃度に加えた酵素液をそれぞれ調製し、上記(4)と同様の方法により各CKアイソザイムに対する酵素活性阻害を確認した。
【0048】
(6)細胞融合
最終免疫から3日後にBALB/cマウスの摘脾を行い、EMEM培養液中で脾細胞を浮遊させて、脾細胞の浮遊液を作製した。ついで、脾細胞をEMEM培養液で4回洗浄した後、細胞数を算定し、7.0×10個の脾細胞を得た。
【0049】
細胞融合は、8−アザグアニン(2−amino−6−oxy−8azapurine) 耐性のBALB/cマウス由来骨髄腫培養細胞株(P3X63−Ag8・653、以下、X63細胞という)を親細胞株として用いた。
【0050】
X63細胞は、非働化した牛胎児血清(fetal calf serum:FCS)10%を含むRPMI−1640培養液(20μg/mL,8−アザグアニン含有)で継代培養した。細胞融合の3日前より8−アザグアニンを含有しない10%FCS含有RPMI−1640培養液でさらに培養し、対数増殖期の細胞を用いた。X63細胞はRPMI−1640培養液で3回洗浄した後、細胞数を算定し、7×10個の生細胞を得た。
【0051】
RPMI−1640培養液で、ポリエチレングリコール−4000が50(W/V)%濃度となるように溶解し、上記の脾細胞とX63細胞との比が10:1となるように混合し、ケーラーおよびミルシュタイン共著:ネイチャー(Nature 第256巻,495−497,1975)およびヨーロピアン ジャーナル オブ イムノロジー(Eur.J.Immunol.第6巻,511−519,1976年)の方法に準じて細胞融合を行った。
【0052】
その後、10%FCSを添加したRPMI−1640培養液に、1×10−4M のヒポキサンチン、4×10−7Mのアミノプテリンおよび1.6×10−5M のチミジン(HAT)を含有するHAT選択培地に、脾細胞が2.0×10個/mLとなるように浮遊させた。ついで、この細胞浮遊液を50μLずつ、96穴マイクロタイタープレートの各ウエルに分注した後、CO無菌培養器において温度37℃、湿度95%、8%のCO 雰囲気で培養を行なった。培養開始後、1日目と2日目にHAT選択培地を各ウエルに1滴ずつ、また培養開始後7日目と9日目にHAT選択培地を、各ウエルに2滴ずつ添加してさらに培養を行った。その後、HATを含まない培養液で育成させ、約10日〜2週間後に、目的のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを下記に記載したスクリーニング方法によって選別した。
【0053】
(7)スクリーニング
上記ハイブリドーマの培養上清を用いて、mCK酵素活性阻害による方法により実施した。
【0054】
すなわち、25μLのハイブリドーマ培養上清と25μLのmCK酵素液(200U/L)とを96穴マイクロタイタープレートに加え室温で10分間反応した後、100μLの酵素試薬〔100mM イミダゾール、2mM EDTA、10mM酢酸マグネシウム、2mM アデノシン−5’−ニリン酸(ADP)、5mM アデノシン−5’−一リン酸(AMP)、40μM P1,P5−ジ(アデノシン−5’)五リン酸(AP5A)、30mM 1−チオグリセロール、28mM D−グルコース、2mM NADP、3U/mL HK、2U/mLグルコース−6−リン酸脱水素酵素、30mM クレアチンリン酸二ナトリウム、0.3mg/mL ニトロブルーテトラゾリウムクロライド、0.6U/mL ダイアフォラーゼ、pH6.6〕を96穴マイクロタイタープレートに加え、37℃で10分間反応させた。ついで、波長570nmにおける吸光度を試薬盲検を対照に測定した。なお、抗体陰性コントロールとしてハイブリドーマ培養上清の代わりに培養液のみを添加し、陰性コントロールとした。
【0055】
得られた吸光度から、mCKの酵素活性を阻害する抗体が存在した場合には基質反応が抑制されるため吸光度の変化量が低くなるので、mCKに対する阻害抗体を産生しているハイブリドーマを特定することができた。
【0056】
得られた抗ヒトmCK酵素活性阻害モノクローナル抗体はさらに、ヒトmCKの代りにヒトCK−MBまたはヒトCK−MMを用い、上記と同様の方法により各酵素に対する酵素活性阻害を確認した。
上記(7)のスクリーニング方法により、ハイブリドーマの増殖が認められた96穴マイクロタイタープレートの2496穴についてスクリーニングを実施し、10穴についてmCK酵素活性を阻害するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの存在が認められた。
【0057】
(8)モノクローナル抗体産生ハイブリドーマ株の樹立(クローニング)
上記(7)のスクリーニングにより得られた10穴中のハイブリドーマを限界希釈法によりクローニングした。その結果、上記10穴中のハイブリドーマの内、安定にmCK酵素活性阻害を示すモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞を1クロ−ン選択した。このハイブリドーマを樹立株とし、受託番号FERM BP−7133号として通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託した。
【0058】
(9)マウスイムノグロブリンサブクラスの同定
上記、クローニングにより単一クローンとして得られたハイブリドーマ クローン(FERM BP−7133)の産生するモノクローナル抗体のマウスイムノグロブリンサブクラスを、ザイメッド(Zymed)社製 モノアブタイピングキット(MONOAb typing kit)を使用して同定した。その結果FERM BP−7133が産生するモノクローナル抗体( mCKI−578)はイムノグロブリンG(IgG1,κ)であることが判明した。
【0059】
(10) mCKI−578のヒトCKアイソザイムに対する特異性
得られた抗体mCKI−578の、ヒトCKアイソザイムに対する特異性を確認するため、ヒトmCK、ヒトCK−MM、ヒトCK−BBまたはヒトCK−MBを用い、上記(7)と同様の方法により各アイソザイムに対する酵素活性阻害を確認した。
その結果を表1に示した。mCKI−578は、mCKの酵素活性を約90%阻害したが、CK−MM、CK−BB、およびCK−MBの酵素活性は阻害しなかった。従って、mCKI−578は、mCKのみを特異的に認識し、mCK酵素活性を選択的に阻害する抗体であることが確認された。一方、FERM BP−7133と同様に作製された別のハイブリドーマ クローンから産生されたCK−1773はいずれのCKアイソザイムも阻害しなかった。
【0060】
【表1】
モノクローナル抗体mCKI−578の特異性
Figure 0005058403
【0061】
(11)mCKI−578のサルコメラmCKに対する阻害活性
mCKI−578のサルコメラmCKに対する阻害能を上記(7)と同様の方法で検討したところ、図1に示すように約98%の阻害が認められた。
【0062】
【実施例2】
実施例1で得られたmCKI−578を用いたCK−MB測定
ヒト健常人検体またはヒトmCK陽性検体100μlに生理食塩水、抗ヒトCK−M阻害抗体(ヤギ)、抗ヒトmCK阻害抗体(実施例1)または2つの抗体を混合したものを各々10μl加えて電気泳動を行った。電気泳動はポルEフィルムシステム(アガロース電気泳動)を使用し、40分間泳動した。泳動後、CK発色試薬〔100mMイミダゾール、2mM EDTA、10mM酢酸マグネシウム、2mMアデノシン−5’−二リン酸(ADP)、5mMアデノシン−5’−一リン酸(AMP)、40μM P1,P5−ジ(アデノシン−5’−五リン酸(AP5A)、30mM 1−チオグリセロール、20mM D−グルコース、2mM NADP、3U/mlヘキソキナーゼ、2U/mlグルコース−6−リン酸脱水素酵素、30mMクレアチンリン酸、1mg/mlのニトロブルーテトラゾリウム、3U/mlのダイアフォラーゼ、PH6.6〕を泳動したゲルに染み込ませて37℃で30分間インキュベートした。5%酢酸水溶液で反応を停止し、精製水で洗浄後、ゲルを乾燥させてコピーした。抗ヒトCK−M阻害抗体だけではmCKを阻害できないため、mCKもCK−MBとして測定されてしまうが、抗ヒトCK−M阻害抗体と抗ヒトmCK阻害抗体(実施例1)を併用して使用することによりCK−MBが特異的に測定されることが示唆された。
【0063】
【実施例3】
mCKI−578を用いた筋肉疾患患者検体のCK−MB測定
測定用酵素液(140mMイミダゾール、2.8mM EDTA、14mM酢酸マグネシウム、2.8mMアデノシン−5’−ニリン酸(ADP)、7mMアデノシン−5’−一リン酸(AMP)、14μM P1,P5−ジ(アデノシン−5’)五リン酸(AP5A)、42mM 1−チオグリセロール、28mM D−グルコース、2mM NADP、4.2U/ml ヘキソキナーゼ、2.1U/ml G6PDH、pH6.6)に抗ヒトCK−M阻害抗体(ヤギ)1.0U/ml添加したもの(対照法)とさらに1U/mlの抗ヒトmCK阻害抗体(実施例1)を添加したもの(本発明)を調製した。CK活性が300U/L以上の筋肉疾患検体15例について、血清20μlに、本発明の抗体を添加していない上記測定用酵素液を250μl加えて37℃で恒温とした後、波長340nmにおける吸光度を測定した(A)。さらに、これに基質液として150mMクレアチンリン酸二ナトリウム100μlを添加し2〜3分後より吸光度変化を測定した(B)。CK−MB活性は以下の計算式(数1)により算出した。次に、同一検体について、本発明の抗体を添加した測定用酵素液を用いて同様に操作し、CK活性を測定した。
【0064】
【数1】
Figure 0005058403
: CK−B活性をCK−MB活性に変換するファクター
【0065】
この結果、筋肉疾患患者検体は従来行われていた対照法では急性心筋梗塞患者検体でないにもかかわらず10検体が25U/L以上の活性を示した。しかしながら、本発明においてはすべての検体が25U/L以下となった(表2)。
【0066】
【表2】
Figure 0005058403
【0067】
以上の結果より、本発明はCK−MBの非特異反応を減少させることにより急性心筋梗塞に対する早期マーカーとして従来よりも感度が高くなることが期待される。
【0068】
【発明の効果】
本発明の抗ヒトmCK阻害モノクローナル抗体を用いたCKアイソザイム分別定量法により、従来の測定方法では不可能であった、CK−MB、mCK、CK−MM、CK−BBの選択的かつ正確な定量が可能となった。特にCK−MBは心筋梗塞のマーカーであり、本発明のCK−MB測定法により急性心筋梗塞の重篤度や病態の把握が確度高く迅速に行えるので、急性心筋梗塞における早期診断のみならずその治療のモニターなどの臨床検査上、本発明は大きな意義を持つ。
また、mCKは肝疾患、悪性腫瘍、ロタウイルス腸炎などで増加することが知られており、本発明はこれら疾患の診断に有用である。
【0069】
【図面の簡単な説明】
【図1】 モノクローナル抗体mCKI−578の、サルコメラmCKに対する阻害能を示す図面である。

Claims (8)

  1. 免疫阻害法によりクレアチンキナーゼ(CK)MBアイソザイム(CK−MB)の酵素活性を測定する方法であって、ミトコンドリア局在クレアチンキナーゼアイソザイム(mCK)の酵素活性を阻害するモノクローナル抗体およびクレアチンキナーゼM(CK−M)サブユニットの酵素活性を阻害する抗体を用いて検体を処理し、CK−Mサブユニットの酵素活性およびmCKの酵素活性を阻害する処理がなされた検体中残存するクレアチンキナーゼB(CK−B)サブユニットの酵素活性を測定し、測定されたCK−Bサブユニットの酵素活性からCK−MBの酵素活性を求めることを特徴とするCK−MB活性測定法。
  2. 前記mCKの酵素活性を阻害するモノクローナル抗体が、サルコメラmCKの酵素活性を阻害するが、クレアチンキナーゼMBアイソザイム(CK−MB)、クレアチンキナーゼMMアイソザイム(CK−MM)およびクレアチンキナーゼBBアイソザイム(CK−BB)の酵素活性は阻害しない請求項1に記載のCK−MB活性測定法。
  3. CK−Mサブユニットの酵素活性を阻害する抗体およびmCKの酵素活性を阻害するモノクローナル抗体を一つの工程中で同時に作用させることを特徴とする請求項1または2に記載のCK−MB活性測定法。
  4. CK−Mサブユニットの酵素活性を阻害する抗体およびmCKの酵素活性を阻害するモノクローナル抗体を別々の工程で作用させることを特徴とする請求項1または2に記載のCK−MB活性測定法。
  5. 前記mCKの酵素活性を阻害するモノクローナル抗体が、受託番号FERM BP−7133号により寄託されているハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のCK−MB活性測定法。
  6. 請求項1記載のCK−MB活性測定法に用いるCK−MB活性測定試薬であって、クレアチンキナーゼM(CK−M)サブユニットの酵素活性を阻害する抗体およびミトコンドリア局在クレアチンキナーゼアイソザイム(mCK)の酵素活性を阻害するモノクローナル抗体を含むことを特徴とするCK−MB活性測定試薬。
  7. 前記mCKの酵素活性を阻害するモノクローナル抗体が、サルコメラmCKの酵素活性を阻害するが、クレアチンキナーゼMBアイソザイム(CK−MB)、クレアチンキナーゼMMアイソザイム(CK−MM)およびクレアチンキナーゼBBアイソザイム(CK−BB)の酵素活性は阻害しない請求項6に記載のCK−MB活性測定試薬。
  8. 前記mCKの酵素活性を阻害するモノクローナル抗体が、受託番号FERM BP−7133号により寄託されているハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のCK−MB活性測定試薬。
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