(実施の形態1)
以下図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。まずは、実施の形態1〜3において、各種の電子検出装置の機構的な内容について説明する。図1〜図4は、本発明の実施の形態1における電子検出装置の斜視図である。
図1に示すように、実施の形態1の電子検出装置は、ケース本体1の上面中央部に表示手段2が設けられている点を除けば、電子化される前の検出装置と外観上は大差ない。
以下、本明細書では、検出物質は、妊娠マーカーであるhCGとする。即ち、次のように試験片を用意する。多孔質担体であるニトロセルロース製のメンブレン(ミリポア社:SCHF(商標))に、抗hCG抗体(1mg/ml)をライン状に1テスト(約5mm幅)あたり1マイクロリットルになるよう塗布して乾燥させ、これを抗体固定化メンブレンとする。一方、0.02μm金コロイド粒子に、抗βhCG抗体を、常法で結合させ標識成分とする。
試験片の反応試薬部を次のように構成する。即ち、標識成分である金コロイド粒子の濃度が520nmの吸光度で2.0となるように調整して1テストあたり約30マイクロリットル相当をガラス繊維パッドに塗布して乾燥する。これを上述の抗体固定化メンブレンと組み合わせて約5mm幅に裁断し1テスト分の試験片とする。
次に、図1〜図4を参照しながら、検査者が慣れ親しんでいる一連の操作について説明する。
まず、検査者が、電子検出装置を乾燥状態で暗所保存する袋(通常、アルミニウムの薄膜製)を開いて電子検出装置を取り出すと、図1に示すような状態にある。即ち、ケース本体1の引抜部3側にキャップ4が着脱可能に装着されており、引抜部3の反対側は、装着部6となっている。引抜部3と装着部6とは、水平断面形状が略同一となっており、キャップ4は、引抜部3にも装着部6にも装着できる。
検査者が、キャップ4をつかんで、キャップ4を矢印N1方向に引き抜くと、図2に示す状態となる。即ち、キャップ4により封止されていた、引抜部3と引抜部3から外部へ延出する採液部5が露呈する。
次に、検査者は、キャップ4を引抜部3側から装着部6側へ移動し、装着部6に(図3の矢印N2方向)キャップ4を装着する。すると、図4に示す状態となる。
この後、検査者は、採液部5に尿をかけるのであるが、この際、図3と図4を比べると明らかなように、装着部6から後方へ延びるキャップ4の長さだけ、採液部5からの距離が長くなる。つまり、検査者が手で持つキャップ4の位置が尿をかける採液部5から遠くなるため、尿が誤って手に付着する等の事態を回避できるようになっている。
本発明者は、図1〜図4に至る上記一連の操作(つまり、キャップ4を引抜部3から取り外す操作、あるいは、キャップ4を装着部6に装着する操作)中に、キャップ4の移動と連動し、ケース本体1に内蔵されるボタン電池11を非給電状態から給電状態に変更し、変更後、給電状態を保持する(言い換えれば、非可逆的に電源オンにする)ための給電機構を案出した。
なお、キャップ4と引抜部3から延出する採液部5とを除き、各要素は、ケース本体1内に保持される。
ここで図5は、本発明の実施の形態1における装着部の拡大斜視図、図6は、本発明の実施の形態1における装着部の平面図、図7は、本発明の実施の形態1における電池ホルダの斜視図、図8は、本発明の実施の形態1における電子検出装置のブロック図(移動前)、図9は、本発明の実施の形態1における装着部の平面図、図10は、本発明の実施の形態1における電子検出装置のブロック図(移動後)である。
実施の形態1では、以下詳細に説明するように、給電機構が、装着部6に設けられ、給電機構は、装着部6へ装着される方向(図3の矢印N2方向)のキャップ4の移動に連動してボタン電池11と一対の電極12、13との位置関係を変更し、ボタン電池11を非給電状態から給電状態へ変更する。
まず図8を参照しながら、各要素について説明する。採液部5に試料液体(本例では、尿)が供給され、しばらくたつと、試験片の検出領域に検出結果を示すサインが呈される。このサインは、典型的には、所定色の一本又は複数本のラインによるパターンであり、例えば、一本のみの場合「陰性」を示し、二本の場合「陽性」を示す如くである。
センサー14aは、本例では光センサーからなり、このサインを読み取り、測定回路14bは、センサー14aの出力に応じて検出結果(本例では、妊娠の有無)を示す信号を生成する。
本形態の表示手段2は、液晶パネル(白黒でもカラーでも良い。)からなり、測定回路14bからの信号に基づいて、検出結果を表示する。勿論、事情が許せば、蛍光表示管等、他の周知の表示手段を使用しても差し支えない。
これらセンサー14a、測定回路14b及び表示手段2は、以上の機能を持ち、しかもボタン電池11により駆動可能なものであれば任意に構成できる。
実施の形態1では、ボタン電池11が、図7に示す電池ホルダ7に保持される。
電池ホルダ7は、円筒状をなすホルダ本体8と、ホルダ本体8の両側部に平行に設けられる一対の遮光板9、10を備え、ホルダ本体8がボタン電池11を水平に保持する際、遮光板9、10は、垂直に起立する。
ホルダ本体8は、中央にボタン電池11の底部を装着可能に形成される凹部8aを有し、ボタン電池11を保持する。遮光板9、10の外側面のほぼ中央には、外向きに突出する突起9a、10aがそれぞれ設けられる。
突起9a、10aは、図5に示すように、装着部6の両側面に形成される溝6aにスライド自在に係合する。
また、図6、図10に示すように、遮光板9、10は、装着部6の内部に垂直に刻まれた一対のガイド溝6b内にスライド自在に挿入されている。
したがって、凹部8aに保持されるボタン電池11は、装着部6の内部において、図5の矢印N2方向に移動可能に保持されることになる。
さらに、遮光板9、10は、溝6aを介して装着部6の内部へ入ろうとする光を遮断するため、センサー14aが外光により邪魔されず、センサー14aの検出精度を良好に保持できる。
図6に示すように、実施の形態1では、キャップ4の内部には、突起9a、10aに係合する突部4aが左右一対に形成されている。
また、図7に示すように、遮光板9、10の奥側下部には、下向きに突出しテーパ面を有する段差部9b、10bがそれぞれ形成される。
なお、段差部9b、10bのテーパ面の反対側は垂直な起立面9c、10cとなっている。
図6、8〜10に示すように、装着部6の内部には、段差部9b、10bと対応する逆止部6gが形成される。さらに、逆止部6gよりも奥側にストッパ6fが立設される。
そして、図6、図8に示すように、工場出荷時には、遮光板9、10は、矢印N2方向の最も手前側の位置にある。矢印N2方向において、電極12は、手前側にあり、ホルダ本体8の位置にかかわらず、ホルダ本体8に保持されるボタン電池11の一方の電極と常に接触する。
一方、電極13は、電極12よりも矢印N2方向の奥側(離れた位置)にあり、図6、図8に示される状態では、ホルダ本体8に保持されるボタン電池11の他方の電極とは接触しない。
図6に示すように、検査者が、キャップ4をつかみ、装着部6に装着しようとする操作を行うと、検査者が気づかなくとも、突部4aが突起9a、10aに係合し、ホルダ本体8が装着部6の奥側へ向けて(矢印N2方向に)押されることになる。
その結果、この移動と連動して、図6、図8の状態から、ホルダ本体8及びそれに保持されるボタン電池11が矢印N2方向へ移動し、図9、図10に示す状態へ遷移する。
この遷移の結果、ボタン電池11の他方の電極は、電極13に接触することになる。つまり、ボタン電池11は、図8に示す非給電状態から図10に示す給電状態へ遷移する。
図10に示す位置へホルダ本体8が移動すると、ホルダ本体8の先頭部分は、ストッパ6fへ当接し、もはやそれ以上装着部6の奥側(矢印N2方向)へ移動できなくなる。
一方、これにともない、遮光板9、10の下部にある段差部9b、10bのテーパ面が逆止部6gを乗り上げて前進し、乗り越えると直ちに起立面9c、10cが逆止部6gと噛み合う。
その結果、ホルダ本体8は、もはや矢印N2方向の逆方向にも移動できなくなる(逆行防止)。言い換えれば、ボタン電池11は、常時電極12に接触しており、その後矢印N2方向に移動して、一旦、電極13にも接触すると、以後、その状態を拘束され、電池容量を使い果たすまで、給電を継続することになる。
以上の説明から明らかなように、実施の形態1によれば、検査者から見ると、装着部6にキャップ4を装着するという慣れ親しんだ操作を行うだけで、自然にボタン電池11がオンになり、その後、検出結果が表示手段2に表示されることになる。いいかえれば、検査者は電源をオンするということを意識しなくても足りる。また、突起9a、10aやホルダ本体8等は、ケース1内に位置しており、検査者は、キャップ4の移動により操作できるだけであって、容易に触れることができず、誤操作は、ほとんどあり得ない。
(実施の形態2)
以下、図11〜図16を参照しながら、実施の形態2を説明する。ここで、図11は、本発明の実施の形態2における電池ホルダの斜視図、図12は、本発明の実施の形態2における引抜部の拡大斜視図、図13は、本発明の実施の形態2における引抜部の斜視図、図14は、本発明の実施の形態2における電子検出装置の平面図(移動前)、図15は、本発明の実施の形態2における電子検出装置の平面図(移動中)、図16は、本発明の実施の形態2における電子検出装置の平面図(移動後)である。
実施の形態2では、実施の形態1と異なり、以下詳細に説明するように、給電機構が、引抜部3に設けられ、給電機構は、引抜部3から取り外される(図2の矢印N1方向)キャップ4の移動に連動してボタン電池11と一対の電極21、22との位置関係を変更し、ボタン電池11を非給電状態から給電状態へ変更する。以下、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
実施の形態2では、図11に拡大して示す電池ホルダ15を用いてボタン電池11を保持する。
電池ホルダ15は、ホルダ本体16を有する。電池ホルダ15は、好ましくは可撓性樹脂等により一体的に成形される。この点は、実施の形態1も同様である。
ホルダ本体16は、円筒状をなし、中央にボタン電池11の底部を装着可能に形成される凹部16aを有し、ボタン電池11を保持する。なお、ボタン電池11の図示は省略されているが、ホルダ本体16とボタン電池11との位置関係は、実施の形態1と同様であり、凹部16a内に保持される。
ホルダ本体16の両側には、引抜部3の奥側へ湾曲して延びる可撓腕17、18がそれぞれ設けられる。可撓腕17、18は、可撓性を有し、それぞれ矢印N3方向へ変形できる。
図12に示すように、実施の形態1の突起9a、10aと同様に、可撓腕17、18の先端部は、引抜部3の両側部に形成される溝3aとスライド自在に係合する。
また、図11、図14に示すように、キャップ4の内部には、可撓腕17、18のそれぞれの自由端17a、18aに噛み合う内向爪4bが形成されている。
さらに、電池ホルダ15の逆行防止のため、ホルダ本体16の両側部には、外向きに爪19、20が突設され、引抜部3の内部には、爪19、20と噛み合うガイド壁3bが形成されている。
また、実施の形態1と同様に、矢印N1方向にそれぞれ離れた位置に、電極22、電極21が配設される。電極22は、ボタン電池11の一方の電極に常時接触している。
一方、電極21は、工場出荷時(キャップ4が引抜部3に装着され移動を開始するまでの間)には、図12、図14に示すように、ボタン電池11の他方の電極には接触しない。
以下、図14〜図16を参照しながら、工場出荷時からキャップ4が引抜部3から取り外されるまでの動作を説明する。
まず、工場出荷時には、上述したように、内向爪4bが自由端17a、18aと噛み合っており、電極21はボタン電池11の電極に接触していない。つまり、ボタン電池11は、非給電状態にある。
次に、検査者が、キャップ4をつかんでキャップ4を矢印N1方向へ引き始めると、図15に示すように、その移動に伴って、電池ホルダ15及びそれに保持されるボタン電池11は、矢印N1方向へ移動し、図15の点線で示す位置に至る。
すると、電極21はボタン電池11の電極に接触し、ボタン電池11は、非給電状態から給電状態へ遷移する。
また、このとき、この点線で示す位置に至ると、起立面3dと爪19、20とが噛み合って、それ以降電池ホルダ15は矢印N1方向の逆方向へは移動できなくなる(逆行防止)。
さらに、このとき、可撓腕17、18は、それぞれガイド壁3bのガイド面3c(図12参照。)にならってやや内側へ変形し、自由端17a、18aは、内向爪4bから外れて、もはや噛み合わなくなる。
その結果、電池ホルダ15の移動とキャップ4の移動とが切り離され、検査者は、キャップ4を引き抜くことができる。
上述したように、以上の動作により、検査者がキャップ4を引抜部3から引き抜く途中で、ボタン電池11は非給電状態から給電状態へ遷移し、その後給電状態に保持される。
以上の説明から明らかなように、実施の形態2によれば、検査者から見ると、引抜部3からキャップ4を取り外すという慣れ親しんだ操作を行うだけで、自然にボタン電池11がオンになり、その後、検出結果が表示手段2に表示されることになる。いいかえれば、検査者は電源をオンするということを意識しなくても足りる。また、可撓腕17、18や電池ホルダ15等は、ケース1内に位置しており、検査者は、キャップ4の移動により操作できるだけであって、容易に触れることができず、誤操作はほとんどあり得ない。
(実施の形態3)
以下、図17〜図19を参照しながら、実施の形態3を説明する。ここで、図17は、本発明の実施の形態3における電池ホルダの斜視図、図18は、本発明の実施の形態3における電極、電池及び電池ホルダの斜視図、図19は、本発明の実施の形態3における装着部の拡大斜視図、図20は、本発明の実施の形態3における装着部の断面図(移動前)、図21は、本発明の実施の形態3における装着部の断面図(移動後)である。
実施の形態3では、以下詳細に説明するように、給電機構が、装着部6に設けられ、給電機構は、装着部6へ装着される方向(図3の矢印N2方向)のキャップ4の移動に連動してボタン電池11と一対の電極27、28との位置関係を変更し、ボタン電池11を非給電状態から給電状態へ変更する。この点は、実施の形態1と似ている。
しかしながら、実施の形態3では、以下に述べるように、電極の位置関係の点と絶縁板を使用する点等が、実施の形態1と異なる。
実施の形態3では、ボタン電池11は、工場出荷時に図18に示す電池ホルダ25に保持されるが、実施の形態1のようにボタン電池11が電池ホルダ25と常に一体的に移動するわけではない。
電池ホルダ25は、ホルダ本体26と、ホルダ本体26の両側部に平行に設けられる一対の遮光板9、10を備え、ホルダ本体26がボタン電池11を水平に保持する際、遮光板9、10は、垂直に起立する。
ホルダ本体26は、中央にボタン電池11の底部を装着可能に形成される凹部26aを有し、ボタン電池11を保持する。
しかし、凹部26aには、ボタン電池11の電極を電気的に絶縁する絶縁板26bが張設されており、ボタン電池11は絶縁板26b上に載置されている。つまり、電池ホルダ25は、ボタン電池11と分かれて矢印N2方向へ移動できる。
遮光板9、10の外側面のほぼ中央には、外向きに突出する突起9a、10aがそれぞれ設けられる。
突起9a、10aは、図19に示すように、装着部6の両側面に形成される溝6aにスライド自在に係合する。
また、図19、図21に示すように、遮光板9、10は、装着部6の内部に垂直に刻まれたガイド溝6b内にスライド自在に挿入されている。
したがって、電池ホルダ25は、装着部6の内部において、図19の矢印N2方向に移動可能に保持されることになる。
さらに、遮光板9、10は、ガイド溝6bを介して装着部6の内部へ入ろうとする光を遮断するため、センサー14aが外光により邪魔されず、センサー14aの検出精度を良好に保持できる。
図19に示すように、実施の形態3では、キャップ4の内部には、突起9a、10aに係合する突部4aが左右一対に形成されている。
また、遮光板9、10の奥側下部には、下向きに突出しテーパ面を有する段差部9b、10bがそれぞれ形成される。なお、段差部9b、10bのテーパ面の反対側は垂直な起立面9c、10cとなっている。
図20、21に示すように、装着部6の内部には、段差部9b、10bと対応するストッパ6gが形成される。さらに、ストッパ6gよりも奥側に逆止突起6fが立設される。これらの点は、実施の形態1と同様である。
実施の形態3では、実施の形態1とは異なり、図20に示すように、工場出荷時には、一対の電極27、28が、絶縁板26b上に載置されるボタン電池11の両電極を挟んでいる。
但し、図20の状態では、電極28とボタン電池11の電極との間に絶縁板26bが介在しているので、電極28はボタン電池11の電極に接触できず、ボタン電池11は非給電状態にある。
一方、実施の形態1と同様、図19に示すように、検査者が、キャップ4を保持し、装着部6に装着しようとする操作を行うと、検査者が気づかなくとも、突部4aが突起9a、10aに係合し、電池ホルダ25が装着部6の奥側へ向けて(矢印N2方向)に押されることになる。
その結果、この移動と連動して、図20の状態から、電池ホルダ25が矢印N2方向へ移動し、図21に示す状態へ遷移する。
この遷移の結果、電池ホルダ25は、矢印N2方向へ移動するが、ボタン電池11は電極27、28に挟持されているため、基本的に移動しない。
その結果、電極28とボタン電池11の電極との間に介在していた絶縁板26bが取り除かれることになり、ボタン電池11の電極は、電極27、28の両方に接触し、給電状態へ遷移する。この際、ボタン電池11と電極28との間に介在していた絶縁体26bがこれらの間から引き抜かれる結果となる。つまり、ボタン電池11は、絶縁体26bの厚さ分下降し電極28に接触するものであり、移動距離は短いとはいえ、電極27、28とボタン電池11との位置関係は、略垂直方向に変更されることになる。
図21に示す位置へ電池ホルダ25が移動すると、遮光板9、10の下部にある段差部9b、10bのテーパ面がストッパ6gを乗り上げて前進し、乗り越えると直ちに起立面9c、10cがストッパ6gと噛み合う。
その結果、ホルダ本体26は、もはや矢印N2方向の逆方向にも移動できなくなる(逆行防止)。
以後、ボタン電池11は、電極27と電極28とに挟持されるままとなり、電池容量を使い果たすまで、給電を継続することになる。
以上の説明から明らかなように、実施の形態3によれば、検査者から見ると、装着部6にキャップ4を装着するという慣れ親しんだ操作を行うだけで、自然にボタン電池11がオンになり、その後、検出結果が表示手段2に表示されることになる。いいかえれば、検査者は電源をオンするということを意識しなくても足りる。また、突起9a、10aや電池ホルダ25等は、ケース1内に位置しており、検査者は、キャップ4の移動により操作できるだけであって、容易に触れることができず、誤操作はほとんどあり得ない。
(実施の形態4)
実施の形態4では、試験片のさらなる詳細と、電子検出装置による陽性/陰性の判定等を説明する。なお、機構的な内容については、上述した実施の形態1〜3のいずれであっても以下の説明は妥当する。
図22(a)は、本発明の実施の形態4における試験片の平面図、図22(b)は、同側面図である。
メンブレン32、標識成分、反応試薬部については、実施の形態1で述べたとおりである。さらに、試験片は、図22(a)の矢印で示される流れ方向を有し、上流側から、ろ紙からなり液体試料が滴下される採液部30と、採液部30の後半部分に重ねて連設される標識粒子塗布パッド31と、メンブレン32と、最も下流側に設けられる吸水ろ紙33とを備える。
試験片は、採液部30の端部を除き、ケース1内に収納され、ケース1内の試験片には外光が入らないようになっている。採液部30に液体試料が滴下される前、試験片は乾燥状態に保持される。そのとき、標識成分は、標識粒子塗布パッド31に保持されている。採液部30に液体試料が滴下されると、液体試料は採液部30、標識粒子塗布パッド31、メンブレン32の順にクロマト的に流動し、下流の吸水ろ紙33に吸い取られる。標識粒子塗布パッド31に保持されていた標識粒子は、液体試料と共に流動する。
目的の検出物であるhCGと特異的に反応する2種のモノクローナル抗体のうち、1種をメンブレン32の中程にライン状に固定し固相部34を形成する。もう一方のモノクローナル抗体は、標識粒子である金コロイド粒子に結合させ標識粒子塗布パッド31に上記のように保持させる。
また、固相部34に近接して、モノクローナル抗体が固定されず、メンブレン32そのものからなる対照区域35を設定する。
以上のように構成した試験片を、ボタン電池11のみにより電力が供給される電子検出装置のケース1に収納すると、固相部34及び対照区域35の明るさは次のように変化する。
<状態1:開始>
ボタン電池11がオンになった直後までは、メンブレン32は、固相部34、対照区域35を含め、乾燥状態に保持され、最も明るい状態にある。以下、ボタン電池11による電力供給が開始されるが、時間の経過と共に電圧が低下してゆく。
<状態2:液到着>
液体試料が採液部30に滴下され流動し、固相部34、対照区域35に到着すると、固相部34、対照区域35は、乾燥状態から湿潤状態へ移行し、状態1よりもやや暗くなる。
<状態3:標識検出>
液体試料と共に、標識粒子が固相部34、対照区域35に到着すると、標識粒子は着色(例えば、赤紫色等)されているから、固相部34、対照区域35ともに、状態2よりもさらに暗くなる。なお、標識粒子が固相部34、対照区域35に到着すると、その到着自体により暗くなるのであって、このことは、試料液体が目的の検出物を含む(陽性)のか含まない(陰性)のかによらない。
<状態4:陽性/陰性検出>
陽性であれば、固相部34に固相されるモノクローナル抗体は、目的の検出物と特異的に反応するので、目的の検出物が固相部34に捕捉される。また、目的の検出物は、標識粒子が結合するもう1種のモノクローナル抗体にも特異的に反応するので、結果的に、この標識粒子が、固相部34に固定されることになる。このため、陽性であれば、固相部34は、標識粒子により着色されることになり、暗くなる。陰性であれば、このような着色を生じない。
一方、対照区域35には、モノクローナル抗体が固定されていないため、以上のような着色現象が発生しない。よって、陽性であっても陰性であっても明るさはほとんど同じである。つまり、対照区域35は、目的の検出物の有無にかかわらず反応による発色はしない。
次に図23を参照しながら、本形態における回路等について説明する。図23は、本発明の実施の形態4における電子検出装置のブロック図である。
上述したように、メンブレン32の固相部34及び対照区域35並びにその周囲は、ケース1により包囲され外光が進入しないように遮蔽されている。
本形態では、次のようにセンサーである2つのフォトダイオード43、44と、光源であるLED42を配置する。即ち、固相部34と対照区域35との間隔の中心にLED42を配置し、光は、LED42から互いに等距離で固相部34及び対照区域35に照射される。
また、固相部34により反射された光がケース1に到来する位置に前方フォトダイオード43を配置し、対照区域35により反射された光が到来する位置に後方フォトダイオード44を配置する。
このように、固相部34の明るさを前方フォトダイオード43で計測し、対照区域35の明るさを後方フォトダイオード44で計測する。勿論、固相部34、対照区域35の明るさをそれぞれ計測できれば十分であって、光源やセンサーの構成は種々変更して差し支えないし、固相部34及び対照区域35のレイアウトも、計測に支障がない限り変更しても良い。
さて、フォトダイオードの出力電圧と明るさの関係は、図26のグラフに示される関係を有する。即ち、より明るい方が出力電圧は高くなり、より暗い方が出力電圧が低くなる。しかしながら、フォトダイオードは、個体差によりその特性にかなりバラツキがある。
ここで、ボタン電池11の電源が投入されてからの時間をt[秒]、前方フォトダイオード43の出力電圧の計測値をVF(t)、後方フォトダイオード44の出力電圧の計測値をVR(t)とする。なお、出力電圧は、計算の便宜上、フルスケールで値「2」をとるように無次元化する。
計測時間を15分間[900秒]としたところ、図27に示される結果を得た。各測定値VF(t)、VR(t)は、ボタン電池11の電圧低下に伴って低下する性質がある。また、各測定値VF(t)、VR(t)には、かなりのバラツキがあることが理解されよう。
バラツキを是正するため、図27の結果を補正する。即ち、これらの測定値は、個々のフォトダーオードの検出能力のバラツキに依存するため、このバラツキを補正するため、各計測値の初期値VF(0)、VR(0)を用いて、演算式2×VF(t)/VF(0)、2×VR(t)/VR(0)にて補正した。その結果は、図28に示すとおりである。補正後の両計測値は、一致しており、以下補正後の計測値を単に計測値VF(t)、VR(t)というものとする。
再び図23を参照しながら、回路等について説明する。ボタン電池11は、唯一の電力源であり、実施の形態1〜3で述べた各種の機構により、ボタン電池11には直列にスイッチ40が接続される。スイッチ40は、一旦投入されると、閉のままとなり、給電回路41がボタン電池11の電力を図23に示される各要素へ供給する。
LED42、各フォトダイオード43、44は、上述のように構成されるが、各フォトダイオード43、44には、A/D変換器45、46が接続され、A/D変換器45、46の後段には計測部47が接続される。
計測部47は、A/D変換器45、46によりデジタル信号とされた各フォトダイオード43、44の計測値を入力すると、上記の補正を行い、現在の各計測値(補正後)VF(t)、VR(t)を常時更新部50へ出力する。
記憶部49は、レジスタ、メモリ等から構成され、本形態では次の各領域が設けられている。しかしながら、各領域を共通化するなどして回路規模を小さくする等種々変更して差し支えない。
計測値記憶部51は、計測部47が現在出力する各測定値VF(t)、VR(t)を記憶する。
基準値記憶部52は、各基準値SF、SR(当初は、時刻t=0の各測定値VF(0)、VR(0))を記憶する。
直前計測値記憶部53は、計測部47が現在よりも所定時間Δtだけ前(直前)に出力した各測定値PF、PR(VF(t−Δt)、VR(t−Δt))を記憶する。
閾値記憶部54は、図24、図25にて使用する各種閾値TH1〜TH4を記憶する。なお、各種閾値TH1〜TH4は、経験値に基づいて正の値として設定される。
表示画像記憶部55は、表示結果として表示手段2に表示させるべき各画像を記憶する。
制御部48は、プロセッサ及びメモリ等からなり、図24、図25のフローチャートに沿うプログラムを実行し、図23に示される各要素を制御する。
タイマ57は、制御部48によりリセットされてからの経過時間を制御部48へ出力する。
演算部56は、記憶部49に記憶された各値に基づく演算を行い結果を制御部48へ返す。更新部50は、計測部47から出力される各測定値VF(t)、VR(t)を順次、計測値記憶部51へ保存し、制御部48の指示に従って、基準値記憶部52、直前計測値記憶部53の各値を更新する。
就中、更新部50は、陽性/陰性判定の基準となる基準値であり、時間の経過に伴い基準値記憶部52に記憶される基準値を更新する。
次に、図24、図25を参照しながら、図23に示される電子検出装置の処理の流れを説明する。
この処理は、上記状態1〜4に対応して、<開始処理:ボタン電池投入直後の処理>、<液到着判定:固相部等に液体試料が到着したかどうかを判定する処理>、<標識検出判定:固相部等に標識成分が到着したかどうかを判定する処理>、<陽性/陰性判定:評価値に基づき目的の検出物が液体試料に含まれるかどうかを判定する処理>を含む。
まずステップ1にて、スイッチ40を閉じ、ボタン電池11の電源がオンになると、以後ボタン電池11の給電が不能になるまで、ボタン電池11は給電を継続する。
給電回路41により給電が開始されると、ステップ2にて、ボタン電池11がオンになった直後(時刻t=0)の固相部34、対照区域35のそれぞれの明るさを前方フォトダイオード43、後方フォトダイオード44がそれぞれ計測し、これらの計測値は、A/D変換器45、46によりデジタル信号に変換され、計測部47に入力される。そして、計測部47は、上述した補正を実施し、補正後の計測値VF(0)、VR(0)が更新部50に入力される。
更新部50は、これらの計測値VF(0)、VR(0)をそれぞれ計測値記憶部51に保存するとともに、同じ計測値を基準値SF、SRとして基準値記憶部52に保存する。
また、更新部50は、ステップ3にて、これらの計測値VF(0)、VR(0)をそれぞれ直前計測値PF、PRとして直前計測値記憶部53に保存する。
そして、制御部48は、ステップ4にて、タイマ57をリセットし、ステップ5にて所定時間(例えば、8秒程度)が経過したかどうかチェックする。
ステップ6では、制御部48は、PF−VF(t)>TH1という比較を演算部56に実行させる。ボタン電池11がオンになった直後では、PF=VF(t)となるので、このチェック結果は「否」となる。
第1閾値TH1は例えば「0.1」のように比較的大きめに設定される。PF−VF(t)>TH1という関係が成り立つならば、固相部34が前回の計測値により示される明るさから急に大きく暗くなったことになる。もしそうなら、ステップ7にて固相部34に液体試料が到着したと判定される。
そうでなければ、ステップ8における比較を演算部56に実行させる。ステップ8では、(PF−VF(t))−(PR−VR(t))>TH2という比較が実施される。第2閾値TH2は、例えば「0.0117」のように比較的小さめに設定される。
ステップ8の関係が成立するならば、固相部34(上流側)の明るさの変化が対照区域35(下流側)の明るさの変化より、ある程度大きいことになり、これは固相部34に液体試料が到着したことを意味する。よって、ステップ8の結果が「是」ならばステップ7にて固相部34に液体試料が到着したと判定される。
一方、ステップ6、8の結果が両方とも「否」ならば、未だ固相部34には液体試料が到着していないと判定される(ステップ9)。この場合、制御部48は、更新部50に現在の計測値VF(t)、VR(t)を基準値SF、SRとして基準値記憶部52に保存させる。つまり、基準値SF、SRが、書き替えられる。
その後、処理は、ステップ3に戻され、液体試料の到着が確認されるまで、ステップ3以下の処理が繰り返される。ここで、この書き換えの意味については、後に図29を参照しながら詳しく説明する。
ステップ7にて液体試料の到着が確認されると、ステップ11にて、制御部48は、タイマ57をリセットし、標識検出判定へ移行する。即ち、ステップ12にて、制御部48は、演算部56に2*VF(t)/SFと2*VR(t)/SRのいずれもが第3閾値TH3よりも小さいかどうかチェックさせる。
第3閾値TH3は、例えば「1.68」程度とする。もし小さければ、固相部34、対照区域35の明るさがいずれも標識の色により基準値SF、SRに対して84%以下に低下したことになり、ステップ16にて、標識が検出されたと判定される。
小さくなければ、ステップ13にて標識は未だ検出されないと判定され、タイマ57の経過時間を制御部48はチェックする。ここで、液体試料が固相部34に到着してから標識の色により固相部34の明るさが変化するまでの時間は、小時間(高々30秒程度)である。
よって、ステップ13にて標識は未だ検出されていないと判定された場合、ステップ14にてタイマ57がリセットされてからの経過時間をチェックし、所定時間内であればステップ12〜14の処理を繰り返し、所定時間を超えればエラー処理(ステップ15)して処理を打ち切る。エラー処理として、表示画像記憶部55に記憶されたエラー時用の画像を、制御部48が表示手段2に表示させる。
ステップ16にて、標識が検出されたと判定された場合、制御部48は、ステップ17にてタイマ57を再度リセットし判定時間が経過するまで待つ(ステップ18)。判定時間は、陽性と判定すべき場合、標識成分が結合した目的の検出物と、固相部34に固相されたモノクローナル抗体とが結合し、これによる結合物が所定個数以上固相部34に捕捉され、めいりょうな呈色が認められるまで暫時待つための時間である。例えば、3分乃至3分半ぐらいに設定すると良い。
判定時間が経過したら、制御部48は、演算部56にステップ19の評価式による評価値Resultと計算させ、これと第4閾値TH4とを大小比較させる。本形態では、図25に示す評価値Resultを使用しているので、第4閾値TH4は、例えば「0.05」程度とする。
ステップ20における比較の結果、評価値Resultが第4閾値TH4を超えていれば、制御部48は陽性判定を行い(ステップ21)、ステップ23にて陽性表示用の画像を表示画像記憶部55から読み出して、表示手段2に表示させ、処理を終了する。
ステップ20における比較の結果、評価値Resultが第4閾値TH4以下であれば、制御部48は陰性判定を行い(ステップ22)、ステップ23にて陰性表示用の画像を表示画像記憶部55から読み出して、表示手段2に表示させ、処理を終了する。
もとより、図24、図25における大小比較、数式等は、例示に過ぎないのであって、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々変更できる。
図29は、上記モデルケースにおいて、第4閾値TH4=0.05である場合の、基準値SF、SRの書き替えにより、評価値Resultが時間tとともにどのように変化するかを示す。この場合、第4閾値TH4=0.05であるが、全く基準値SF、SRを書き替えないとすると、図29に上向き矢印(太線)で示した遷移は発生しない。言い換えれば、「0sec」と記載された点線に示されるとおりに、評価値Resultは、下降してゆく。
特に、時間t=300(秒)付近で評価値Resultは、第4閾値TH4と一致し、以下それよりも下回ることになる。こうなると、検査者がボタン電池11の電源を入れてから時間tが300(秒)以上経過すると、液体試料に目的の検出物が含まれているかいないかにかかわらず、ステップ20の判断結果は「否」となる。つまり、本来陽性判定がされなければならない場合であっても、誤って陰性判定される結果になる。
こうなると、電子検出装置の検出結果の信頼性が著しく低下するのは容易に理解されよう。本形態のように構成すれば、基準値SF、SRが適宜間隔(図29における60(秒)毎は、図示を容易にするための例示に過ぎない。)をおいて書き替えられることにより、その都度、評価値Resultは、第4閾値TH4に近づいていたものが、再度持ち上げられる(第4閾値TH4から遠ざかる)。これにより、時間の経過に起因する誤判定を未然に防止できる。
一般的に、反応後の試験片は、液体試料により濡れた後に、試薬が流れ去り、反応前の反射率に対して対照区域44の明るさを示す後方フォトダイオード44の出力値は約20.0%低下することが分かっている。また弱陽性のモデルケースとして出力値が固相部34の明るさを示す出力値が23.4%低下する場合を想定する。以上の前提に基づき、本発明者らは、シミュレーションを行った。この場合の対照区域35、固相部34のシミュレートされる計測値は、それぞれ2×0.8*VR(t)/SR、2×0.766×VF(t)/SFとなる。0.8、0.766という係数は、上記低下するパーセンテージによる。
また、電圧の低下がなければ、固相部34、対照区域35のいずれかまたは両方のフォトダイオード計測値がある基準以下までの低下を示すことによって、試験片に液体試料が展開したかどうか、さらには標識の流出があるかどうかを検知することが出来る。しかしながら、書き換えをしなければ、電源低下に伴う計測値の低下によって、実際には液体試料や標識が展開していないにもかかわらず、液体試料や標識が流れてきたと誤って判断してしまう可能性がある。書き換えによって、この点も改善できる。