JP5055702B2 - 正極活物質及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、正極活物質及びその製造方法に関する。
リチウム二次電池に代表される非水系電解質電池は、高いエネルギー密度を有することから小型携帯端末や移動体通信装置等への電源として広く使用されている。一般的なリチウムイオン電池は、充放電に伴いリチウムイオンを放出・吸蔵しうる正極活物質を備えた正極と、充放電に伴いリチウムイオンを吸蔵・放出しうる負極と、溶質としてリチウム塩が非水溶媒に溶解している非水電解質を備えている。
現在、リチウム二次電池の正極活物質には、層状構造を有するLiMO2(Mは遷移金属元素)で表される組成のリチウム含有遷移金属酸化物、スピネル構造を有するLiM24(Mは遷移金属元素)で表される組成のリチウム含有遷移金属酸化物、LiMPO4(Mは遷移金属元素)で表される組成のリチウム含有遷移金属ポリリン酸化合物等が知られている。とりわけ層状構造を有するLiMO2型リチウム含有遷移金属酸化物であるLiCoO2は高いエネルギー密度を示すことから携帯通信機器用の非水系電解質電池用正極活物質材料として広く使用されている。
近年、原料コスト低減や特性向上を目的として、LiCoO2に対して、Coの一部をNiやMnで置換した構造のリチウム含有遷移金属酸化物についても広く検討されている。特に、Coの一部をNi及びMnで置換した構造のリチウム含有遷移金属酸化物について、充電時の熱安定性に優れる系が紹介されている(例えば非特許文献1,2、特許文献1,3〜6参照)。
一方、活物質の表面を異種元素で改質して性能を改善する試みも各種提案されている。特許文献7〜10には、活物質の表面をアルミニウムで被覆することで電子伝導度が向上することが記載されている。しかしながら、この方法によれば確かに粒子表面の電子伝導性は向上するものの正極場での電解質の酸化分解を抑制する目的には不十分であった。
また、特許文献2には、In、Mg、Al、Ba、Sr、Ca、Zn、Sn、Bi、Ce、Ybの金属導電層を母材粒子表面に形成した正極材料が記載されている。しかしながら、0価金属を表面に配置すると、サイクル性能が必ずしも良好なものとはならなかった。これは、充放電に伴う活物質粒子の膨張・収縮に対する金属導電層の追随が不充分であるためではないかと推察される。さらに、金属導電層を表面に形成させるには、同文献の実施例記載のように還元雰囲気で処理を行う必要があり、このような雰囲気で処理を行うと、正極活物質からの酸素脱離等が起こり活物質の結晶構造の崩れが生じやすく、電池性能を低下させるといった問題点があった。また、特許文献1には、Li−Mn−Ni−Co系複合酸化物母材粒子の表面近傍に結晶構造を崩さない程度の微小量の異種元素(Al、Mg、Ca、Sr、Y、Yb)をドープすることにより、耐熱性や電子伝導性を上げる試みがなされている。ここに開示された異種元素の付与方法は、共沈で得られた遷移金属酸化物及び水酸化リチウムと共に焼成するときに適量の水酸化アルミニウムなどのアルミニウム源を同時に混合することにより、アルミニウムは正極活物質の表面近傍のみにドープされるというものである(同文献段落0037参照)。しかしながら、本発明者らの検討によれば、この技術を用いても、正極場での電解質の酸化分解を抑制するには不十分であった。
小山(Y.Koyama)、田中(I.Tanaka)、足立(H.Adachi)、牧村(Y.Makimura)、薮内(N.Yabuuchi)、小槻(T.Ohzuku),「第42回電池討論会予稿集」,(日本),2001年,p.50−51 牧村(Y.Makimura)、薮内(N.Yabuuchi)、小槻(T.Ohzuku)、小山(Y.Koyama),「第42回電池討論会予稿集」,(日本),2001年,p.52−53 特開2003−17052号公報 特開2000−48820号公報 特開2002−42813号公報 特開2003−86183号公報 国際公開第02/073718号パンフレット 国際公開第02/086993号パンフレット 特開平8−102332号公報 特開平9−171813号公報 特開2002−151077号公報 特開2001−256979号公報
非水電解質電池は、充電状態で長時間放置されると、放電性能等電池としての特性を悪化させるという問題があった。特に、充放電を多数回繰り返した非水電解質電池に対して充電状態での長時間放置を行うと、特性の悪化は特に顕著に認められた。この原因について本発明者らが解析したところ、特性が悪化した非水系電解質電池では、炭素材料を用いた負極の作動電位領域が上昇していることが見いだされた。このことから、本発明者らは、特性悪化の原因を次のように推察した。即ち、正極にかかる電位によって正極近傍の電解質が分解して炭酸根を主とする分解生成物が発生し、これが負極側に泳動することで負極表面に炭酸根を主とする被膜が生成し、負極インピーダンスを上昇させる。すると、実質的に負極電位が上昇することによって、負極の作動電位領域が高電位側にシフトし、これに伴い、正極の作動電位領域が高電位側にシフトする。このため、正極にはより高電位がかかることになり、上記現象がより加速され、より電池特性を悪化させる。
本発明の課題は、上記問題点に鑑み、充電電位で長時間放置されても性能劣化の小さい正極活物質とその製造方法を提供すること、充電状態で長時間放置されても容量低下の小さい電池とすることのできる正極を提供すること、充電状態で長時間放置されても容量低下の小さい電池を提供することにある。
なお、本発明者らは、上記課題を解決する目的で、水中に母材粒子を分散し、3族元素化合物の水溶液を滴下する方法により、リチウムイオンを吸蔵および放出し得る母材粒子の電解質と接触し得る部分の少なくとも一部の上に周期律表の3族の元素が存在する正極活物質を作製した。この方法の詳細は「比較例2」として本願明細書中に記載した。この方法によっても、充電状態で長時間放置されても容量低下の小さい電池とすることのできる正極活物質を提供することができたものの、電池の初期放電容量が低下してしまうといった問題点があった。本発明は、かかる課題をも解決しようとするものである。
本発明の技術的構成および作用効果は以下の通りである。ただし、作用機構については推定を含んでおり、その作用機構の正否は本発明を制限するものではない。
(1) リチウムを含有しかつリチウムイオンを吸蔵および放出し得る母材粒子の上に、元素Aの化合物粒子(但し、Aは周期律表の3族の元素)が配されている正極活物質である。
(2) 前記元素Aの化合物粒子は前記母材粒子の上に点在して配されている(1)項記載の正極活物質。
(3) 前記母材粒子の上に配されている前記元素Aの化合物粒子の最大粒径は、該化合物粒子が配されている前記母材粒子の粒径の0.01倍以上0.1倍以下である(1)項又は(2)項記載の正極活物質。
(4) 前記元素Aの化合物は、前記母材粒子の重量に対して、元素Aの酸化物換算で0.5重量%以上5重量%以下配されている(1)項〜(3)項のいずれかに記載の正極活物質。
(5) 前記母材粒子は、α−NaFeO2型結晶構造を有するリチウム含有遷移金属酸化物からなる(1)項〜(4)項のいずれかに記載の正極活物質。
(6) 前記母材粒子は、α−NaFeO2型結晶構造を有し、組成式LixMnaNibCocd(但し、0≦x≦1.3、a+b+c=1、|a−b|≦0.03、0≦c<1、1.7≦d≦2.3)で表されるリチウム含有遷移金属酸化物からなる(1)項〜(5)項のいずれかに記載の正極活物質。
(7) リチウムを含有しかつリチウムイオンを吸蔵および放出し得る母材粒子と、元素Aの化合物(但し、Aは周期律表の3族の元素)粒子とを混合し、熱処理を行うことにより、前記母材粒子の上に元素Aが存在し得るように元素Aを付与する正極活物質の製造方法。
(8) 前記元素Aの化合物粒子の平均粒径は、前記母材粒子の平均粒径の0.01倍以上0.1倍以下である(7)項記載の正極活物質の製造方法。
(9) 前記母材粒子100重量部に対して、前記元素Aの化合物粒子を1重量部以上5重量部以下混合する(7)項又は(8)項記載の正極活物質の製造方法。
(10) 前記熱処理の温度は900℃以上である(7)項〜(9)項のいずれかに記載の正極活物質の製造方法。
(11) 前記母材粒子は、α−NaFeO2型結晶構造を有するリチウム含有遷移金属酸化物の粒子である(7)項〜(10)項のいずれかに記載の正極活物質の製造方法。
(12) 前記母材粒子は、α−NaFeO2型結晶構造を有し、組成式LixMnaNibCocd(但し、0≦x≦1.3、a+b+c=1、|a−b|≦0.03、0≦c<1、1.7≦d≦2.3)で表されるリチウム含有遷移金属酸化物の粒子である(7)項〜(11)項のいずれかに記載の正極活物質の製造方法。
(13) (7)項〜(12)項のいずれかに記載の正極活物質の製造方法によって製造された正極活物質。
(14) (1)項〜(6)項のいずれか又は(13)項に記載の正極活物質を備えた正極。
(15) (14)項記載の正極を備えた電池。
上記(1)項において、母材粒子とは、元素Aの化合物粒子が配されることがなくても、リチウムを含有しかつリチウムイオンを吸蔵および放出し得る粒子である。ここで、元素Aは周期律表の3族の元素であれば特に限定されないが、Yb(イットリビウム)又はCe(セリウム)が特に好ましい。
上記(2)項において、「前記元素Aの化合物粒子は前記母材粒子の上に点在して配されている」とは、前記元素Aの化合物粒子が配されている一個の母材粒子を観察したとき、前記元素Aの化合物粒子は該一個の母材粒子の上に点在して配されているように見えることをいう。この様子は、後述するように、走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって確認することができる。ここで、「一個の」母材粒子とは、リチウムを含有しかつリチウムイオンを吸蔵および放出し得る材料(母材)の最小単位粒子をいう。但し、一般的な「リチウムを含有しかつリチウムイオンを吸蔵および放出し得る材料」においては、前記最小単位粒子は、複数の一次粒子が集合したような二次粒子形態を呈していることが多い。ここで、「複数の一次粒子が集合したような二次粒子形態を呈している」との表現は、母剤粒子の生成過程を限定するものではない。例えば前記母材粒子がα−NaFeO2型結晶構造を有するリチウム含有遷移金属酸化物からなる場合には、該母材粒子はちょうど複数の一次粒子が集合したような二次粒子形態を呈しているのが一般的である。しかしながら、該母材粒子は、実際には元々独立していた一次粒子同士が凝集して形成されたものではない。遷移金属化合物とリチウム化合物を混合して熱処理を経てリチウム含有遷移金属酸化物が生成する過程において、前記遷移金属化合物の粒子が結晶成長してリチウム含有遷移金属酸化物に変化するが、このときの生成したリチウム含有遷移金属酸化物の結晶粒子形態がちょうどあたかも複数の一次粒子が寄り集まってできたかのような形態にみえることから、「複数の一次粒子が集合したような二次粒子形態を呈している」と表現したにすぎない。従って、このような材料の場合、前記「一個の」粒子は、「複数の一次粒子が集合した二次粒子形態を呈している一個の粒子」に相当する。
上記(3)項において、「前記母材粒子の上に配されている前記元素Aの化合物粒子の最大粒径は、該化合物粒子が配されている前記母材粒子の粒径の0.01倍以上0.1倍以下である」と記載したように、本発明に係る正極活物質は、走査型電子顕微鏡(SEM)等によって粒子を観察したとき、母材粒子と前記元素Aの化合物粒子とが独立して観察されるといった特徴がある。この観察像は、大きな粒子の上に小さな粒子を載置したように見える。したがって、前記観察結果から、前記元素Aは、母材粒子の内部あるいは表面近傍にドープされているのではないことが強く示唆される。一方、本発明者らの検討によれば、引用文献1記載の方法に倣って正極活物質を作製した場合、即ち、共沈で得られた遷移金属酸化物及び水酸化リチウムと共に焼成してリチウム含有遷移金属酸化物を得る際に前記元素Aの化合物を混合しておくことによって得られた正極活物質のSEM像は、前記元素Aの化合物を混合しないで焼成して得られたリチウム含有遷移金属酸化物からなる正極活物質(前記母材粒子に相当)と見分けがつかなかったことから、引用文献1記載の方法によれば、同文献の段落0037にも記載されている通り、元素Aはリチウム含有遷移金属酸化物粒子の上にではなく、リチウム含有遷移金属酸化物の結晶格子内にドープされていることが推察された。なお、前記母材粒子の上に配されている前記元素Aの化合物粒子は、充分に小さくても本発明の効果が奏されるが、その最大粒径が、該化合物粒子が配されている前記母材粒子の粒径の0.01倍以上であることによって、SEM観察やEPMA測定等によって本発明の適用を確認することが容易となる。また、0.1倍以下であることによって、前記元素Aの化合物が物理的に母材粒子の表面を大きく覆い電池内で電解液との接触を阻害する虞が低減できるほか、電極のエネルギー密度を低下させる虞を低減できるため、好ましい。
上記(4)項に記載したように、前記元素Aの化合物は、前記母材重量に対して、元素Aの酸化物換算で0.5重量%以上配されていることによって、本発明の効果を十分に発揮させることができる点で好ましい。また、5重量%以下配されていることによって、電極のエネルギー密度を低下させる虞を低減できるため、好ましい。
上記(5)項に記載したように、前記母材粒子は、α−NaFeO2型結晶構造を有するリチウム含有遷移金属酸化物の粒子であるものから選択することにより、高い作動電位を有し繰り返し充放電性能にも優れた正極活物質並びに電池とすることができる点で好ましい。このような粒子としては、LiCoO2粒子、LiNiO2粒子等が挙げられる。
上記(6)項に記載したように、なかでも、前記母材粒子は、α−NaFeO2型結晶構造を有し、組成式LixMnaNibCocd(但し、0≦x≦1.3、a+b+c=1、|a−b|≦0.03、0≦c<1、1.7≦d≦2.3)で表されるリチウム含有遷移金属酸化物の粒子であるものとすることが好ましく、c≠0であることにより本発明の効果が顕著に奏される。cの値は0.3付近でも良いが、0.6以上とすることで、長寿命でエネルギー密度が高く、高温熱安定性にも優れた電池を提供できる点で好ましい。ここで、前記母材粒子はLi,Mn,Ni,Co,O以外の元素を少量含んでいてもよく、そのようなものについても本発明の範囲内である。
上記(7)項において、元素Aは周期律表の3族の元素であれば特に限定されないが、Yb(イットリビウム)又はCe(セリウム)が特に好ましい。前記母材粒子と、元素Aの化合物粒子とを混合し、熱処理を行うことにより、元素Aの化合物粒子が前記母材粒子の上に固定される。前記熱処理によって元素Aの化合物粒子が前記母材粒子の上に固定される機構については必ずしも明らかではないが、一種の「焼結」によるものと推察される。
本発明の製造方法によれば、充電電位で長時間放置されても性能劣化の小さい正極活物質とその製造方法を提供することができる。また、充電状態で長時間放置されても容量低下の小さい電池とすることのできる正極を提供することができる。また、充電状態で長時間放置されても容量低下の小さい電池を提供することができる。
本発明に用いる母材粒子は、リチウムコバルト酸化物やリチウムニッケル酸化物等に代表される、α−NaFeO2型の層状結晶構造を有するリチウム遷移金属化合物が好ましい。なかでも、一般式LixNiaMnbCocdで表され、x、a、b、c、dが以下に示す関係式を満たす組成であることが好ましい。
0<x≦1.4
0≦a<1.0
0≦b<0.6
0≦c<1
a+b+c=1
1.7≦d≦2.3
上記リチウム遷移金属化合物は、α−NaFeO2型層状構造を有するLiNiO2のNiサイトの一部をMn、Coで置換した構造である。Niサイトの一部をMn、Coで置換することにより、NiとMn、Coとの間で配位子である酸素イオンを介して共鳴安定化するため、LiNiO2よりも熱的安定性が向上する。特に、本発明の課題のように長時間の充電状態に対応させようとする場合には、充電末状態の正極活物質の安定性は極めて重要であり、LiNiO2よりも充電末安定性の高いLi−Ni−Mn(−Co)複合酸化物が好適に使用できる。
LixNiaMnbCocdを合成するに当たり、Mn量が多い場合、即ちb>0.6の場合には、主に斜方晶のLiMnO2が生成してしまい、層状のα―NaFeO2型結晶構造を取ることができないので、bは0.6を超えることができない。従って、0≦b<0.6が好ましい。特に本発明のような常時高電圧で使用する電池に用いる場合には、bの値は0.55未満がさらに好ましい。
また、MnがNiより多い(a/b>1)場合や、Niを含まない組成(a=0)では、Li2MnO3のようなα―NaFeO2型ではない不純相が形成され、層状のα―NaFeO2型結晶構造と共存する。この不純相は4V領域での電極反応に供しないものであるため、この不純相を多く含むと活物質としての容量は減少し、充放電サイクル時にはこの不純相の存在による構造の不安定化により劣化速度が速くなる。従って、a/b≦1、a>0とすることが好ましい。
一方、上記したLi2MnO3のような不純相の形成は、焼成時にLiをやや過剰に仕込むこと、すなわち、組成中のLi比を1.0<xとすることで抑制することができる。これはLiを過剰にするとLiが遷移金属サイトに入り込むことで不純相の形成を阻害し、構造を安定化させているものと思われる。
特に、Mn組成比率(bの値)を高い(例えば0.55≦b≦0.60)ものとする場合には、xの値を1.3〜1.4とすることで、Li2MnO3の生成を抑え構造を安定化させる効果を有効に発揮でき、特に、本発明の課題である長時間の充電状態に対応させようとする場合には、xの値を1.3〜1.4とすることによる構造安定化の効果を有効に享受できる。従って、組成中のLi比を1.0<x≦1.4とすることが好ましい。
リチウムコバルト酸化物では、正極電位が4.5Vを越えたあたりから結晶構造が六方晶から単斜晶へと変化すると伴に酸素層間が開きすぎることでLiイオンの静電トラップ効果が働き結晶内のLiイオン拡散が阻害され、放電時の高率放電が悪くなると言われている。また、同時に充放電効率やサイクル性能が極端に悪くなるためリチウムコバルト酸化物を正極活物質に使用した電池の高電圧使用は好ましくない。この観点から、Co組成比率(cの値)は1でも良いが、c<1とすることが好ましく、なかでもc≦0.84とすることで母材粒子の構造安定性が飛躍的に向上するので、本発明に適用すると高性能な非水系電解質電池用正極活物質が得られる。Mn、Niの比については、1:1に近い組成(|a−b|<0.03)の活物質とすることで最も構造が安定し、充放電サイクル性能に優れた正極活物質となるので、最も好ましい。
リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を合成するにあたっては、Liがα−NaFeO2構造の6aサイトに、Co、MnおよびNiが6bサイトに、そしてOが6cサイトにそれぞれ過不足なく占有されるならば、製造方法は特に限定されるものではない。現実的には、Li化合物、Mn化合物、Ni化合物およびCo化合物を粉砕・混合し、熱的に分解混合させる方法、沈殿反応させる方法、または加水分解させる方法によって好適に合成することが可能である。なかでも、MnとNiとCoとの複合沈殿化合物(以下「前駆体」ともいう)とLi化合物とを原料とし、それらを混合・熱処理する方法が均一な母材粒子を合成する上で好ましい。
前記前駆体は、MnとNiとCoとが均一に混合された化合物であることが好ましい。この条件を満たす限りにおいては、前記Mn−Ni−Co混合物前駆体の製法は特に限定されないが、本発明に係るリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物の元素の構成範囲では、Liの脱離・挿入による結晶構造の安定性が高いことが要求されるため、「Mn、NiおよびCoの酸性水溶液を水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液で沈澱させる共沈製法」を採用してもよく、この方法により作製された前駆体を用いれば、とりわけ高い電池性能を示す正極活物質を作製することができる。このとき、これらMn、NiおよびCoの金属イオン量に対して、反応系内のアンモニウムイオン量を過剰量とした条件下で結晶成長の核を発生させると、極めて均質で嵩高い前駆体粒子の作製が可能となり、好ましい。アンモニウムイオンが存在しないと、これらの金属イオンが酸−塩基反応によって急速に沈殿形成するため、結晶配向が無秩序となって嵩密度の低い沈殿が形成されるので好ましくない。アンモニウムイオンが存在することにより、前記沈殿反応速度が金属−アンミン錯体形成反応を経由することで緩和され、結晶配向性がよく、嵩高くて一次粒子結晶の発達した沈殿を作製することが可能となるので好ましい。また、反応器形状や回転翼の種類といった装置因子や、反応槽内に沈殿物が滞在する時間、反応槽温度、総イオン量、液pH、アンモニアイオン濃度、酸化数調整剤の濃度などの諸因子を選択することで、前記共沈化合物の粒子形状や嵩密度、表面積などの物性を制御することも可能となる。
前記Mn−Ni−Co混合物前駆体の原料は、Mn化合物としては酸化マンガン、炭酸マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン等を、Ni化合物としては、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル等を、Co化合物としては、硫酸コバルト、硝酸コバルト等を、アンモニウム源としては、硫酸アンモニウム、アンモニア水等を一例として挙げることができる。
前記Mn−Ni−Co混合物前駆体の作製に用いる原料としては、アルカリ水溶液と沈殿反応を形成するものであればどのような形態のものでも使用することができるが、好ましくは溶解度の高い金属塩を用いるとよい。この場合、Mnは複数の酸化数をとりうるが、沈殿形成時は2価の状態で結晶内に取り込まれることが好ましい。沈殿形成時にマンガンが酸化されると、結晶内に水が取り込まれやすくなり、焼結工程で不純相が生成する可能性がある。前記不純相としてはLiMn23が挙げられ、該LiMn23は活物質としては4V付において電気的に不活性であり、容量低下の要因となる。この問題を解決する手段として、反応溶液へヒドラジン等の還元剤を入れたり、反応容器内を不活性ガスで満たして、酸素を取り除いたりする方法が採られる。なお、水酸化物の共存下で沈澱形成を行った場合、その形態は水酸化物が主たる生成物となるが、Mnなどは沈殿前駆体の乾燥工程で酸化物の形態となることもある。
このようにして作製したMn−Ni−Co混合物前駆体とLi化合物とを混合し、熱処理することにより、本発明に係る母剤粒子として好ましいリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を好適に作製することができる。前記Li化合物としては、水酸化リチウム、炭酸リチウムを用いることで好適に製造することができる。
この時の熱処理条件としては、酸素雰囲気下、700℃以上1000℃以下の温度範囲を採用すれば好適に製造することができる。前記熱処理温度が700℃を下回ると、固相反応が進行せず、また、1000℃より高いと固相反応が過度に進行する結果、極度に焼結化が進行するので好ましくない。800℃以上1000℃以下の温度範囲であれば高い性能を有するリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を得ることができるのでより好ましい。
本発明に係る正極活物質を製造するにあたっては、上記(7)項に記載したように、リチウムを含有しかつリチウムイオンを吸蔵および放出し得る母材粒子と、元素Aのカルコゲン化合物(但し、Aは周期律表の3族の元素)粒子とを混合し、熱処理を行うことにより、前記母材粒子の上に元素Aが存在し得るように元素Aを付与することができる。ここで用いる元素Aの化合物としては、例えばYb23やCeO2等を用いることができる。但し、0価金属を用い、母材粒子上に0価金属の状態で存在させようとすると、特許文献2にも記載されているように、不活性ガス等の還元雰囲気で熱処理を行う必要がある。ところが、還元雰囲気で熱処理を行うと、母材粒子を構成しているカルコゲン原子が熱処理の過程で脱落し易くなる。例えば、層状岩塩型結晶構造を有するLixMnaNibCoc2組成で表される母材粒子の場合には、酸素原子が脱落して組成比の崩れを導き、その結果、正極活物質としての特性を著しく低下させる虞がある。従って、0価金属は好ましくない。これに対し、母材粒子上に存在させる元素Aの化合物が酸化物である場合には、還元雰囲気で熱処理を行う必要がないのでこのような問題がない。従って、元素Aの化合物は酸化物が好ましい。
前記母材粒子と元素Aのカルコゲン化合物との混合にあたっては、両者を水または有機溶剤等の媒体で攪拌することによってもよいが、水の使用を避けることにより、母材粒子表面に水酸化物が形成され、正極活物質の電気抵抗を増大させる虞を避けることができるため、好ましい。また、乾式による混合を採用すれば、前記混合工程を簡略化できるため、好ましい。
本発明に係る前記熱処理の雰囲気としては特に限定されるものではなく、空気雰囲気とすれば製造コストを低減できる点で好ましい。
熱処理時間は、5時間以上15時間以下とすることが好ましい。熱処理時間を5時間以上とすることにより、元素Aの化合物粒子の母材粒子への付与が充分となる点で好ましく。15時間以下とすることにより、該熱処理工程に係るコストを最小限とすることができる点で好ましい。
上記(8)項に記載したように、前記元素Aのカルコゲン化合物粒子の平均粒径は、前記母材粒子の平均粒径の0.01倍以上0.1倍以下とすることが好ましい。0.01倍以上とすることにより、前記母材粒子と前記元素Aの化合物粒子を混合するときに粒子が細かすぎて舞い上がり作業性が低下する虞を軽減できる点で好ましい。また、0.1倍以下であることによって、前記元素Aの化合物が物理的に母材粒子の表面を大きく覆い電池内で電解液との接触を阻害する虞が低減できるほか、電極のエネルギー密度を低下させる虞を低減できるため、好ましい。
前記母材粒子と元素Aのカルコゲン化合物との混合比率は、上記(9)項に記載したように、前記母材粒子100重量部に対して、前記元素Aのカルコゲン化合物粒子を1重量部以上とすることによって、本発明の効果を十分に発揮させることができる点で好ましい。また、5重量部以下とすることによって、電極のエネルギー密度を低下させる虞を低減できるため、好ましい。
前記熱処理の温度は、上記(10)項に記載したように、化合物粒子の母材粒子への付与を充分とすることができるため、900℃以上であることが好ましい。また、該熱処理温度は1100℃以下とすることにより、母材粒子が酸素欠損を生じる虞を低減できるため、好ましい。
本発明の正極活物質を用いた正極は、前記正極活物質を主要構成成分とし、正極活物質を、導電剤および結着剤、さらに必要に応じてフィラーと混練して正極合剤とした後、この正極合剤を集電体としての箔やラス板等に塗布、または圧着して50℃〜250℃程度の温度で、2時間程度加熱処理することにより好適に作製される。正極活物質の正極に対する含有量は、80重量%〜99重量%が好ましく、85重量%〜97重量%がより好ましい。
なお、導電剤および結着剤、フィラー、集電体としては、当該技術分野において、自明のものを、自明の処方で用いることができる。
上記正極を非水電解質電池に適用する場合には、正極と、負極と、非水系電解質とを具備し、一般的には、正極と負極との間に、非水系電解質電池用セパレータが設けられる。非水系電解質は、電解質塩が非水溶媒に含有されてなる形態を好適に例示できる。
非水系電解質、負極、セパレータとしては、一般にリチウム電池等への使用が提案されている自明のものを、自明の処方で使用可能である。ここで、前記非水電解質としては、液状電解質(電解液)、ゲル電解質、(無機、有機)固体電解質などを適宜選択して使用可能である。
非水電解質電池は、非水電解質を、例えば、セパレータと正極と負極とを積層する前または積層した後に注液し、最終的に、外装材で封止することによって好適に作製される。また、正極と負極とがセパレータを介して積層された発電要素を巻回してなる電池においては、非水電解質は、前記巻回の前後に発電要素に注液されるのが好ましい。注液法としては、常圧で注液することも可能であるが、真空含浸方法や加圧含浸方法も使用可能である。
電池の外装体の材料としては、当該技術分野において、自明のものを、自明の処方で用いることができる。
以下に、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の記載により限定されるものではない。
5リットル密閉型反応槽に水を3.5リットル入れた。さらにpH=11.6±0.1となるよう、32%水酸化ナトリウム水溶液を加えた。パドルタイプの攪拌羽根を備えた攪拌機を用いて1200rpmの回転速度で攪拌し、外部ヒーターにより反応槽内溶液温度を50℃に保った。また、前記反応槽内溶液にアルゴンガスを吹き込んで、溶液内の溶存酸素を除去した。
一方、原料溶液である遷移金属元素が溶解している水溶液を調整した。マンガン濃度が0.293mol/リットル、ニッケル濃度が0.293mol/リットル、コバルト濃度が1.172mol/リットル及びヒドラジン濃度が0.0101mol/リットルとなるように、硫酸マンガン・5水和物水溶液、硫酸ニッケル・6水和物水溶液、硫酸コバルト・7水和物水溶液及びヒドラジン1水和物水溶液を混合して得た。
該原料溶液を3.17ml/minの流量で前記反応槽に連続的に滴下した。これと同期して、12mol/リットルのアンモニア溶液を0.22ml/minの流量で滴下混合した。なお、滴下の開始以降、前記反応槽内溶液のpHが11.4±0.1と一定になるよう、32%水酸化ナトリウム水溶液を断続的に投入した。また、前記反応槽内の溶液温度が50℃と一定になるよう断続的にヒーターで制御した。また、前記反応槽内が還元雰囲気となるよう、アルゴンガスを液中に直接吹き込んだ。また、反応槽内の溶液量が3.5リットルと常に一定量となるよう、フローポンプを使ってスラリーを系外に排出した。
前記滴下の開始から60時間経過後、そこから5時間の間に、前記滴下を継続しながら、反応晶析物であるNi−Mn−Co複合酸化物のスラリーを採取した。採取したスラリーを水洗、ろ過し、80℃で一晩乾燥させ、Ni−Mn−Co共沈前駆体の乾燥粉末を得た。
得られたNi−Mn−Co共沈前駆体粉末を75μm未満に篩い分け、水酸化リチウム一水塩(LiOH・H2O)粉末をLi/(Ni+Mn+Co)=1.02となるように秤量し、遊星型混練器を用いて混合した。これをアルミナ製こう鉢に充てんし、電気炉を用いて、ドライエア流通下、100℃/hの昇温速度で850℃まで昇温し、850℃の温度を15h保持し、次いで、100℃/hの冷却速度で200℃まで冷却し、その後放冷した。得られた粉体を75μm以下に篩い分けした。エックス線回折測定の結果、得られた粉末は空間群R3−mに帰属される単一相であることがわかった。ICP発光分光分析の結果、LiMn0.167Ni0.167Co0.6672組成を確認した。このようにして母材粒子を作製し、以下の実施例及び比較例に用いた。
(実施例1)
母材粒子として、上記にて得られたLiMn0.167Ni0.167Co0.6672(平均粒径1μm)と、元素Aのカルコゲン化合物として平均粒径0.1μmのYb23を97:3の重量比で混合し、空気中900℃にて12時間焼成し、粉末を得た。走査型電子顕微鏡(SEM)観察及びEPMA測定の結果、得られた粉末は、平均粒径0.1μmの酸化物が平均粒径1μmの母材表面に付着したような形態を呈していた。これを実施例1に係る正極活物質とする。エックス線回折測定の結果、得られた粉末は空間群R3−mに帰属される単一相を依然として保っていた。ICP発光分光分析の結果、LiMn0.167Ni0.167Co0.6672組成の存在を確認した。元素分析の結果から、配されたYbの量は、Yb23換算で、母材粒子に対して2.5重量%であった。該正極活物質のSEM写真を図1,2に示す。ここで、図1は、5000倍の設定で撮影したSEM観察像であり、下部の白いバーの長さが10μmであることを示している。また、図2は、7500倍の設定で撮影したSEM観察像であり、下部の白いバーの長さが10μmであることを示している。
(実施例2)
母材粒子として上記にて得られたLiMn0.167Ni0.167Co0.6672(平均粒径1μm)と、元素Aのカルコゲン化合物として平均粒径0.1μmのCeO2を97:3の重量比で混合し、空気中900℃にて12時間焼成し、粉末を得た。走査型電子顕微鏡(SEM)観察及びEPMA測定の結果、得られた粉末は平均粒径0.1μmの酸化物が平均粒径1μmの母材表面に付着したような形態を呈していた。これを実施例2に係る正極活物質とする。エックス線回折測定の結果、得られた粉末は空間群R3−mに帰属される単一相であることがわかった。ICP発光分光分析の結果、LiMn0.167Ni0.167Co0.6672組成を確認した。元素分析の結果から、配されたCeの量は、CeO2換算で、母材粒子に対して2.5重量%であった。
(比較例1)
上記にて得られたLiMn0.167Ni0.167Co0.6672(平均粒径1μm)を比較例1に係る正極活物質とする。該正極活物質のSEM写真を図3,4に示す。ここで、図3は、5000倍の設定で撮影したSEM観察像であり、下部の白いバーの長さが10μmであることを示している。また、図4は、7500倍の設定で撮影したSEM観察像であり、下部の白いバーの長さが10μmであることを示している。この観察結果から明らかなように、母材粒子の表面に、図1,2で観察されたような直径0.1mm前後の粒子は全く見られない。
(比較例2)
母材粒子として上記にて得られたLiMn0.167Ni0.167Co0.6672(平均粒径1μm)50gを1リットル反応容器に入れ、そこに全量が500gとなるようイオン交換水を入れ、固形分比率10重量%の懸濁溶液を作製した。一方、Yb(NO33・4H2O(3.34g)を100mlイオン交換水に溶解した水溶液(以下単に「析出反応液」ともいう)を作製した。ここで、析出反応液中のYb化合物の量(元素Aの量)は、母材粒子の重量との和に対してYb23換算で3.0重量%に相当するようにして決定した。前記懸濁溶液をパドル翼を備えた攪拌棒を用いて450rpmの回転速度で攪拌し、外部ヒーターを用いて懸濁溶液の温度を50℃と一定になるよう制御した。
前記懸濁溶液に前記析出反応液を3ml/minの速度で滴下した。析出反応液の滴下と同期して、懸濁溶液のpHが11.0±0.1と一定になるよう10重量%NaOH溶液を断続的に投入した。析出反応液の滴下終了後、懸濁溶液の温度を50℃に保持したまま、懸濁溶液のpHを12.0±0.1まで増加させ、この状態で30分保持した。次に、懸濁液をろ過・洗浄し、110℃で乾燥後、エアー流通下400℃で5時間熱処理した。得られた粉体を75μm未満に篩い分けした。これを比較例2に係る正極活物質とする。
処理後の粉体のBET表面積と平均粒径(D50)の値は処理前母材粒子の値と一致した。エックス線光電子分光法(XPS)により、付与した元素Aの状態分析を行ったところ、185.5eV付近に4d5スペクトル線が観測された。これは、別途市販のYb23を用いて測定したスペクトル線と完全に一致した。このことから、付与された元素Aは酸化物の状態で存在していることが示唆された。次に、処理後の粉体の組成をICP発光分光分析によって求めたところ、元素Aの化合物は、全母材重量に対してYb23換算で2.5重量%付与されていることがわかった。エックス線回折測定(XRD)の結果、Yb23に基づく回折線は認められなかった。また、処理前の母材粒子と処理後の粉体との間に格子定数の変動が認められなかったことから、付与された元素Aは母材中にはドープされず、リチウムイオンを吸蔵および放出し得る母材粒子の電解質と接触し得る部分の少なくとも一部の上に周期律表の3族の元素が存在する正極活物質が得られたことが認められた。しかしながら、走査型電子顕微鏡(SEM)観察の結果、上記実施例1や実施例2に係る正極活物質のSEM観察結果にみられたような、小粒径の酸化物が母材粒子の上に点在して配されている形態は認められなかった。
実施例1,2及び比較例1に係る正極活物質を用い、以下に示す手順で、非水系電解質電池用正極を作成した後、負極に金属リチウムを用いた非水系電解質電池を作製し、正極活物質の電気化学的評価を行った。なお、現実の用途に用いる非水電解質電池には、現在広く市販されている非水電解質電池と同様に、リチウムイオンを吸蔵放出可能な炭素質材料を備えた負極を用いることが好ましいが、ここでは正極の挙動を中心に評価する目的から、負極には金属リチウムを用いることとしたものである。負極に金属リチウムを用いた電池を用いることにより、定電圧印加試験において印可した電圧は、正極に印可した電位とほぼ等しいと考えることができる。また、本発明の正極活物質を用いた非水電解質電池は、通常4.2〜4.3Vの電圧で充電を行う使用方法を想定して設計する場合が多い。本発明はかかる設計によって作製された電池において効果を奏する。以下の評価試験においては、加速試験の観点から、定電圧印加試験に用いる電圧を4.5Vとした。本発明の正極活物質を用いた非水電解質電池は、4.5Vといった高い電圧で充電を行う使用方法を想定して設計してもよい。充電時の正極電位が4.5Vに至って使用する非水電解質電池に本発明の正極活物質を適用すれば、本発明の効果がより顕著に認められる。
〔正極の作製〕
正極活物質、アセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)を重量比90:5:5の割合で混合し、分散媒としてN−メチルピロリドンを加えて混練分散し、塗布液を調製した。なお、PVdFは固形分が溶解分散された液を用い、固形重量換算した。該塗布液を厚さ20μmのアルミニウム箔集電体に塗布し、揮発溶剤を除去し、プレスすることによって正極板を作製した。なお、正極板は電池の組み立て前に150℃で12時間減圧乾燥を行った。
〔電池の作製〕
厚さ40μmの金属リチウム箔を厚さ10μmの銅箔集電体に貼付したものを負極板とし、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートを6:7:7の体積比で混合した溶媒に1mol/lの濃度でLiPF6を溶解したものを電解質として用い、セパレータにはポリアクリレートで表面改質して電解質の保持性を向上したポリプロピレン製の微孔膜を用いた。外装体には金属樹脂複合フィルムを用いた。実施例1,2及び比較例1,2に係る正極活物質をそれぞれ用いて設計容量10mAhの非水系電解質電池を作製し、それぞれ本発明電池1,2及び比較電池1,2とした。
〔定電圧印加試験〕
上記それぞれの電池に対して20℃の恒温槽中で5サイクル半の初期充放電を行った。充電条件は、充電電圧4.5V、電流0.1ItA、15時間の定電流定電圧充電とし、放電条件は、電流0.1ItA、終止電圧3.0Vの定電流放電とした。5サイクル目の放電容量に基づき、正極活物質の単位重量当たりの放電容量(mAh/g)を算出し、表1に示した。
6サイクル目の充電後、4.5Vの充電電圧を印加したまま、恒温槽の温度を55℃とし、さらに前記4.5Vの定電圧を200時間連続的に印加した。次に、回路を開放して恒温槽の温度を20℃に戻し、電池温度が20℃となるまで充分な時間(16時間)放置後、上記初期充放電の同一の条件で、6サイクル目の放電、7サイクル目の充電及び7サイクル目の放電を行った。前記5サイクル目の放電容量に対する7サイクル目の放電容量の割合を容量維持率(%)として求め、表1に示した。
表1に示されているように、リチウム含有遷移金属酸化物の粒子上にYb化合物の粒子又はCe化合物の粒子が配された実施例1又は2に係る正極活物質を備えた正極を用いた本発明電池1,2は、Yb化合物の粒子又はCe化合物の粒子が配されていない比較例1に係るリチウム含有遷移金属酸化物の粒子を正極活物質として備える正極を用いた比較電池1に比べ、充電状態に長時間放置された後においても充分な電池容量を示すことが確認された。また、前記元素Aとしては、CeよりもYbが好ましいことがわかった。元素Aの化合物が付与されているものの母材粒子の上に点在して配されている形態がSEM観察によって確認できなかった比較例2に係る正極活物質を用いた比較電池2においても本発明の効果が認められたものの、放電容量の低下が見られた。これは、前記元素Aの付与を湿式で行ったため、母材中のリチウムが溶出したことによると考えられる。加えて、本発明の製造方法によれば、比較例2の方法に比べて極めて簡便な方法で本発明に係る正極活物質を製造することができる。
なお、本発明は、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上記した実施の形態若しくは実施例はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、請求の範囲によって示すものであって、明細書本文にはなんら拘束されない。さらに、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
実施例1に係る正極活物質のSEM観察像である。 実施例1に係る正極活物質のSEM観察像である。 比較例2に係る正極活物質のSEM観察像である。 比較例2に係る正極活物質のSEM観察像である。

Claims (9)

  1. リチウムを含有しかつリチウムイオンを吸蔵および放出し、4.2V(vs.Li/Li)以上の電位で充電を行いうる母材粒子の上に、元素Aの酸化物粒子(但し、AはYb又はCe)が点在して配されている正極活物質。
  2. 前記母材粒子の上に配されている前記元素Aの酸化物粒子の最大粒径は、該酸化物粒子が配されている前記母材粒子の粒径の0.01倍以上0.1倍以下である請求項1記載の正極活物質。
  3. 前記元素Aの酸化物は、前記母材粒子の重量に対して、元素Aの酸化物換算で0.5重量%以上5重量%以下配されている請求項1又は2記載の正極活物質。
  4. 前記元素Aの酸化物がYb 又はCeOである請求項1〜3のいずれかに記載の正極活物質。
  5. 前記母材粒子が、α−NaFeO2型結晶構造を有するリチウム含有遷移金属酸化物からなる請求項1〜4のいずれかに記載の正極活物質。
  6. 前記母材粒子は、α−NaFeO2型結晶構造を有し、組成式LixMnaNibCocd(但し、0≦x≦1.3、a+b+c=1、|a−b|≦0.03、0≦c<1、1.7≦d≦2.3)で表されるリチウム含有遷移金属酸化物からなる請求項5に記載の正極活物質。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の正極活物質を含む正極を備えた電池。
  8. リチウムを含有しかつリチウムイオンを吸蔵および放出し得る母材粒子と、元素Aのカルコゲン化合物(但し、AはYb又はCe)粒子とを混合し、熱処理を行うことにより、前記母材粒子の上に元素Aの酸化物が存在し得るように元素Aを付与する正極活物質の製造方法。
  9. 前記熱処理の温度は900℃以上である請求項8記載の正極活物質の製造方法。
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