JP5053583B2 - セルロースエステルフィルム積層体およびその製造方法、偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルム、並びに液晶表示装置 - Google Patents
セルロースエステルフィルム積層体およびその製造方法、偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルム、並びに液晶表示装置 Download PDFInfo
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Description
[1] 下記式(S−1)〜(S−3)を満たし、残留溶剤量が0.01質量%以下であるセルロースエステルフィルムの少なくとも片面に、保護フィルムが積層されていることを特徴とするセルロースエステルフィルム積層体。
式(S−1) 2.5≦A+B≦3.0
式(S−2) 0≦A≦2.2
式(S−3) 0.8≦B≦3.0
(式中、Aはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に対する炭素数3〜22のアシル基の置換度を表す。)
[2] 前記セルロースエステル中のセルロースの水酸基に対して置換している炭素数3〜22のアシル基が、プロピオニル基およびブチリル基の少なくとも一種であることを特徴とする[1]に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
[3] 前記セルロースエステルフィルムが、微粒子、紫外線吸収剤、可塑剤および安定剤からなる群より選択される少なくとも一種を含有することを特徴とする[1]または[2]に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
[4] セルロースエステルフィルムが、タッチロールを用いて溶融製膜されたことを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のセルロースエステルフィルム積層体。
[5] 前記保護フィルムが、樹脂基材と粘着剤層からなり、前記樹脂基材がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレートおよびポリイミド、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリレートからなる群より選択される少なくとも一種を含有し、前記粘着剤層がアクリル系ポリマーおよびエチレン−酢酸ビニル系共重合体からなる群より選択される少なくとも一種を含有することを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
[6] 前記セルロースエステルフィルムの正面レターデーション(Re)が0〜300nmであり、且つ、厚さ方向のレターデーション(Rth)が−300〜700nmであることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
式(S−1) 2.5≦A+B≦3.0
式(S−2) 0≦A≦2.2
式(S−3) 0.8≦B≦3.0
(式中、Aはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に対する炭素数3〜22のアシル基の置換度を表す。)
[8] タッチロールを用いて溶融製膜することを特徴とする[7]に記載のセルロースエステルフィルム積層体の製造方法。
[9] 前記セルロースエステルフィルムの少なくとも片面を鹸化する工程をさらに有することを特徴とする[7]または[8]に記載のセルロースエステルフィルム積層体の製造方法。
[10] 前記鹸化する工程の後に前記保護フィルムを積層する工程を行なうことを特徴とする[9]に記載のセルロースエステルフィルム積層体の製造方法。
[11] 前記鹸化した面上に前記保護フィルムを積層することを特徴とする[10]に記載のセルロースエステルフィルム積層体の製造方法。
[13] [8]〜[12]のいずれか一項に記載の製造方法により製造されたセルロースエステルフィルム積層体。
[15] [1]〜[6]または[13]のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム積層体から得られたセルロースエステルフィルムを用いたことを特徴とする光学補償フィルム。
[16] [1]〜[6]または[13]のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム積層体から得られたセルロースエステルフィルムを用いたことを特徴とする反射防止フィルム。
本発明で用いられるセルロースエステルは下記式(S−1)〜(S−3)を満足するものである。
式(S−1) 2.5≦A+B≦3.0
式(S−2) 0≦A≦2.2
式(S−3) 0.8≦B≦3.0
(式中、Aはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に対する炭素数3〜22のアシル基の置換度を表す。)
次に本発明で用いられるセルロースエステルフィルムに含有させることができる好ましい添加剤について記載する。本発明においては、例えば微粒子、紫外線吸収剤、可塑剤、(光)安定剤、染料など各種の添加剤を用いることができる。以下に、代表的な添加剤について記載する。
本発明においては、紫外線劣化防止のためにセルロースエステルフィルムに少なくとも一種の紫外線吸収剤を添加することが好ましい。紫外線吸収剤を添加することにより、波長360nmでの光線透過率が10%以下とすることが好ましく、8%以下とすることがより好ましく、5%以下とすることが特に好ましい。
(2)可塑剤
セルロースエステルに可塑剤を添加することにより、セルロースエステルの結晶融解温度(Tm)を下げることができる。本発明に用いる可塑剤の分子量は特に限定されるものではなく、低分量でもよく高分子量でもよい。可塑剤の種類は、リン酸エステル類、アルキルフタリルアルキルグリコレート類、カルボン酸エステル類、多価アルコールの脂肪酸エステル類などが挙げられる。それらの可塑剤の形状としては固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。溶融製膜を行なう場合は、不揮発性を有するものを特に好ましく使用することができる。可塑剤は、セルロースエステル100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、0.5〜13質量部の範囲で使用することがより好ましく、3〜12質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。
本発明においては、要求される性能を損なわない範囲内で、必要に応じて熱劣化防止用、着色防止用の安定剤として、ホスファイト系化合物、亜リン酸エステル化合物、フォスフェイト、チオフォスフェイト、弱有機酸、エポキシ化合物等を単独または2種類以上混合して添加してもよい。ホスファイト系安定剤の具体例としては、特開2004−182979号公報の段落[0023]〜[0039]に記載の化合物をより好ましく用いることができる。亜リン酸エステル系安定剤の具体例としては、特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物を用いることができる。
また本発明で用いるセルロースエステルには、光学調整剤を添加することもできる。例えば、光学異方性をコントロールするためのレターデーションコントロール剤が、場合により添加される。セルロースエステルフィルムのレターデーションを調整するため、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物をレターデーションコントロール剤として使用することが好ましい。芳香族化合物は、セルロースエステル100質量部に対して、0.01〜20質量部の範囲で使用することが好ましい。芳香族化合物は、セルロースエステル100質量部に対して、0.05〜15質量部の範囲で使用することがより好ましく、0.1〜10質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。本発明では、2種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
本発明におけるセルロースエステルは、フッ素原子を有する重合体を含むくことが好ましい。フッ素原子を有する重合体は、離型剤としての作用を発現できる。フッ素原子を有する重合体としては、例えば、特開2001−269564号公報に記載の重合体を挙げることができる。フッ素原子を有する重合体として好ましいものは、フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体を必須成分として含有してなる単量体を重合せしめた重合体である。その添加量は、セルロースエステル100質量部に対して、0.01〜5質量部の範囲で使用することが好ましく、0.01〜3質量部の範囲で使用することがより好ましく、0.05〜2質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。
また、本発明においては、フィルムの黄色みを抑えフィルムの酸化を防止するために青色染料を添加することが好ましい。これらの染料も、可塑剤と同様の効果を有する添加剤である。好ましい染料としてはアンスラキノン系染料が挙げられる。アンスラキノン系染料は、アンスラキノンの1位から8位迄の位置に任意の置換基を有することができる。好ましい置換基としては、置換されても良いアニリノ基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基が挙げられる。その添加量は、セルロースエステル100質量部に対して、0.000005〜1質量部の範囲であることが好ましく、0.00005〜1.5質量部の範囲であることがより好ましく、0.00002〜0.5質量部の範囲であることがさらに好ましい。
本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基体であるセルロースエステルフィルムは、溶融製膜法によって製造することが好ましい。一般に、溶融製膜法は、セルロースエステルを予め所定の温度に予熱し、添加物などを混合する混練・押し出し工程、キャスト工程、延伸工程、緩和工程、冷却工程、巻き取り工程、加工工程を通じて、所望のセルロースエステルフィルムを得るものである。溶融製膜条件の最適化について、以下に詳細に記述する。
本発明では、セルロースエステルと添加物は溶融製膜に先立ちペレット化するのが好ましい。ペレット化を行なうにあたりセルロースエステルは事前に乾燥しておくことが好ましい。またペレット化を行なう時に、上記添加物を押出機の途中にある原料投入口やベント口から投入することもできる。ペレット化における押出滞留時間は10秒〜60分、より好ましくは15秒〜30分である。十分に溶融ができれば、滞留時間は短い方が、樹脂劣化、黄色み発生を抑えることができる点で好ましい。
(1)乾燥
本発明では、上述の方法でペレット化したものを用いるのが好ましく、溶融製膜に先立ちペレット中の含水率を好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは、0.01%以下にした後、溶融押出し機のホッパーに投入する。このときホッパーを好ましくは20℃〜110℃、より好ましくは40℃〜100℃、さらに好ましくは50℃〜90℃にする。この際、ホッパーは除湿風エアー等で一定風量・温度であることが好ましいが、目的とする含水率が得られるのであればこの限りでは無い。また、ホッパー内を真空密閉構造とし、窒素等の不活性ガスを封入することがより好ましい。
上述したセルロースエステルは押出機の供給口を介してシリンダー内に供給される。シリンダー内は供給口側から順に、供給口から供給したセルロースエステルを定量輸送する供給部とセルロースエステルを溶融混練・圧縮する圧縮部と溶融混練・圧縮されたセルロースエステルを計量する計量部とで構成される。また、押出機内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出し機を用いて真空排気しながら実施するのがより好ましい。押出機のスクリュー圧縮比は2.5〜4.5に設定され、L/Dは20〜70に設定されていることが好ましい。
上記方法にて、ダイよりシート上に押し出された溶融樹脂をキャスティングドラム上で冷却固化し、フィルムを得る。この時、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法、タッチロール法等の方法を用い、キャスティングドラムと溶融押出ししたシートの密着を上げることが好ましい。このような密着向上法は、溶融押出しシートの全面に実施してもよく、一部に実施しても良い。特にエッジピニングと呼ばれる、フィルムの両端部にのみを密着させる方法が取られることも多いが、これに限定される物ではない。キャスティングドラムは複数本用い、徐冷する法がより好ましい、特に一般的には3本の冷却ロールを用いることが比較的よく行われているが、この限りではない。ロールの直径は50mm〜5000mmが好ましく、より好ましくは100mm〜2000mm、さらに好ましくは150mm〜1000mmである。複数本あるロールの間隔は、面間で0.3mm〜300mmが好ましく、より好ましくは、1mm〜100mm、さらに好ましくは3mm〜30mmである。キャスティングドラムの温度は、60℃〜160℃が好ましく、より好ましくは70℃〜150℃、さらに好ましくは80℃〜140℃である。この後、キャスティングドラムから剥ぎ取り、ニップロールを経た後に巻き取る。巻き取り速度は10m/分〜100m/分が好ましく、より好ましくは15m/分〜80m/分、さらに好ましくは20m/分〜70m/分である。製膜幅は好ましくは0.7m〜5m、さらに好ましくは1m〜4m、さらに好ましくは1.3m〜3mである。また、いわゆるタッチロール法を用いる場合、タッチロール表面は、ゴム、テフロン(登録商標)等の樹脂でもよく、金属ロールでも良い。さらに、金属ロールの厚みを薄くすることでタッチしたときの圧力によりロール表面が若干くぼみ、圧着面積が広くなりフレキシブルロールと呼ばれる様なロールを用いることも可能である。
このようなタッチロールは、ダイから出たメルトをロール間で挟む時に生じる残留歪を低減するために、弾性を有するものが好ましい。ロールに弾性を付与するためには、ロールの外筒厚みを通常のロールよりも薄くすることが必要であり、外筒の肉厚Zは、0.05mm〜7.0mmが好ましく、より好ましくは0.2mm〜5.0mmである。さらに好ましくは0.3mm〜2.0mmである。例えば、外筒厚みを薄くすることにより、弾性を付与したタイプや、金属シャフトの上に弾性体層を設け、その上に外筒を被せ、弾性体層と外筒の間に液状媒体層を満たすことにより極薄の外筒によりタッチロール製膜を可能にしたものが挙げられる。キャスティングロール、タッチロールは、表面が鏡面であることが好ましく、算術平均高さRaが100nm以下、好ましくは50nm以下、さらに好ましくは25nm以下である。具体的には例えば特開平11−314263号、特開2002−36332号、特開平11−235747号、特開2004−216717号、特開2003−145609号各公報や国際公開第97/28950号パンフレットに記載のものを利用できる。
溶融製膜工程においてフィルム化されたセルロースエステルフィルムは、そのまま連続した延伸工程に、あるいは一度ロール状に巻き込んでしかる後に延伸されることも好ましい。延伸は行なわなくてもよい。延伸はTg〜(Tg+50℃)で実施するのが好ましく、より好ましくは(Tg+1℃)〜(Tg+30℃)、さらに好ましくは(Tg+2℃)〜(Tg+20℃)である。好ましい延伸倍率は少なくとも1方向に−10%〜50%延伸することが好ましい。延伸倍率は−5%〜50%がより好ましく、さらに好ましくは−3%〜45%、特に好ましくは0%〜40%である。これらの延伸は1段で実施しても、多段で実施してもよい。ここでいう延伸倍率は、以下の式を用いて求めたものである。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ
このような延伸は出口側の周速を速くした2対以上のニップロールを用いて、長手方向に延伸してもよく(縦延伸)、フィルムの両端をチャックで把持しこれを直交方向(長手方向および直角方向)に広げてもよい(横延伸)。また、延伸後に緩和してもよい。
このようにして得たシートは両端をトリミングし、巻き取ることが好ましい。トリミングされた部分は、粉砕処理された後、あるいは必要に応じて造粒処理や解重合・再重合等の処理を行った後、同じ品種のフィルム用原料としてまたは異なる品種のフィルム用原料として再利用してもよい。トリミングカッターはロータリーカッター、シャー刃、ナイフ等いずれのタイプの物を用いても構わない。
材質についても、炭素鋼、ステンレス鋼いずれを用いても構わない。一般的には、超硬刃、セラミック刃を用いると刃物の寿命が長く、また切り粉の発生が抑えられて好ましい。なお、トリミング後に両端にナーリング(厚みだし)加工を付与してもよいが、必ずしも必要としない。このようにして得られたセルロースエステルフィルムの厚みは、20μm〜400μmが好ましく、さらに好ましくは40μm〜200μm、特に好ましくは50μm〜150μmである。本発明では、得られたセルロースエステルフィルムの厚みが200μmを超える場合には、さらに延伸することで、本発明の好ましい膜厚にすることができる。
本発明で用いられるセルロースエステルフィルムは表面処理してもよい。表面処理を行なうことによって、例えばセルロースエステルフィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着性の向上を図ることができる。表面処理としては、例えば、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torr(約0.13〜2666Pa)の低圧ガス下でおこる、いわゆる低温プラズマのことも示すが、大気圧下でのグロー放電処理でもよい。
本発明で用いられるセルロースエステルフィルムは鹸化処理されていてもよい。本発明で用いられるセルロースエステルフィルムは、鹸化処理する前あるいは後に、電子線などの表面処理を実施してもよい。例えば、グロー放電処理(大気圧あるいは真空系)、紫外線照射処理、コロナ処理を用いることができる。セルロースエステルを偏光膜の保護膜として使用する場合は、アルカリ水溶液で鹸化処理し、ポリビニルアルコールを接着剤として塗布して偏光膜を貼り合わせることが一般に行われている。この時、鹸化済みのセルロースエステルは、容易にフィルム面同士が接着してしまうため、ロール状に巻き取って保管することが困難であった。そのために、偏光板を作製する工程の中に、鹸化処理工程を組み込むことがこれまでは一般的であり、偏光板を製造する上で生産性の制約を受けていた。本発明によれば、このような生産性の制約を受けずに、鹸化処理工程をセルロースエステルフィルム積層体の製造工程の中に組み込むことができる。このため、本発明によれば、偏光板製造時には、あらかじめ鹸化処理されているセルロースエステルを用いて、迅速かつ簡便に偏光板を製造することが可能になる。
次に、アルカリ鹸化処理工程について記述する。アルカリ鹸化処理工程には、アルカリ鹸化水溶液を用いる。アルカリ鹸化水溶液のアルカリ剤は、無機アルカリ剤および有機アルカリ剤のいずれも使用でき、アルカリ鹸化特性を有するものであれば特に限定されるものではない。無機強アルカリ剤としては、アルカリ金属の水酸化物(例えば、NaOH、KOH、LiOH)、2属金属の水酸化物、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウムが好ましい。
また有機アルカリ剤としては、水酸化アンモニウム、アミン(例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエタノールアミン、エチレンイミン、トリエチルアミン)、および錯塩の遊離塩基(例えば、[Pt(NH3)6](OH)4)が好ま
しい。これらの中でも、低い濃度で鹸化反応をおこすためにアルカリ金属の水酸化物であるNaOH、KOH、LiOHがさらに好ましく、特にNaOH、KOHが好ましい。これらのアルカリ剤は単独もしくは二種以上を組み合わせて併用することもできる。
アルカリ鹸化水溶液に場合により用いられる界面活性剤は、アルカリ鹸化水溶液の表面張力を下げて塗布を容易にしたり、ハジキ故障を防止することができる他、濃縮されたアルカリ剤やフィルムとアルカリ剤との反応生成物をアルカリ鹸化水溶液中に安定に存在させ、後の水洗工程においても析出、固体化を防ぐことができる。界面活性剤の濃度は、0.005〜15質量%が好ましく、0.02〜1質量%がさらに好ましい。
(アニオン界面活性剤)
アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、α−オレフィンスルホン酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が好適に挙げられる。
カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩類、テトラブチルアンモニウムブロミド等の第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン類、アルキルアミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミダゾリン類等が挙げられる。
(ノニオン性界面活性剤)
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸(12)、特開2004−203964号公報に記載の部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤は、分子内にパーフルオロアルキル基を含有する界面活性剤を指す。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型、パーフルオロアルキルベタイン等の両性型、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基および親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基および親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基含有ウレタン等の非イオン型が挙げられる。
以上の界面活性剤のうち、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等のポリオキシアルキレンに読み替えることもでき、それらもまた前記界面活性剤に包含される。前記界面活性剤は、一種単独で使用してもよいし、併用により効果を損なわない限りにおいては、2種以上を併用してもよい。
アルカリ鹸化水溶液およびアルカリ希釈液には消泡剤を添加してもよい。その添加剤は、アルカリ鹸化水溶液中には、好ましくは0.0051〜15質量%、特により好ましくは0.005〜3質量%の濃度で含有させることができる。一方、アルカリ希釈液中には、好ましくは0.001〜2質量%、特に好ましくは0.005〜0.5質量%の濃度で含有させることができる。この範囲であれば、フィルム表面への微小な気泡の付着が無くなり、アルカリ処理による鹸化がムラ無く均一に進行する。
数)、1,1,1,2,2,3,3−ヘプタフロロプロパノール、ヘキサフロロブタンジオール、パーフロロシクロヘキサノール等)等を挙げることができる。これらの有機溶剤の含有量は使用液の総質量に対して0.1〜5質量%が好ましい。
本発明で用いられるアルカリ鹸化水溶液には、さらに、防黴剤および/または防菌剤を添加してもよい。本発明において使用される防黴剤および防菌剤は、アルカリ鹸化に悪影響を及ぼさないものであれば何でもよいが、具体的にはチアゾリルベンズイミダゾール系化合物、イソチアゾロン系化合物、クロロフェノール系化合物、ブロモフェノール系化合物、チオシアン酸やイソチアン酸系化合物、酸アジド系化合物、ダイアジンやトリアジン系化合物、チオ尿素系化合物、アルキルグアニジン化合物、4級アンモニウム塩、有機スズや有機亜鉛化合物、シクロヘキシルフェノール系化合物、イミダゾールおよびベンズイミダゾール系化合物、スルファミド系化合物、塩素化イソシアヌル酸ナトリウムなどの活性ハロゲン系化合物、キレート剤、亜硫酸化合物、ペニシリンに代表される抗生物質など種々の防バクテリア剤や防黴剤などがある。
なお、本発明で用いられるアルカリ鹸化液には、他の添加剤を併用しても良い。例えば、アルカリ液安定化剤(酸化防止剤等)、公知のpH緩衝剤等が挙げられる。なお、本発明においてアルカリ鹸化水溶液の添加剤は、これらに限定されるものではない。アルカリ鹸化水溶液の温度は、反応温度(=セルロースエステルフィルムの温度)に等しいことが望ましい。安定な塗布を行なうためには、水の沸点よりも低い温度であることが必要であり、15℃〜90℃であることが好ましく、15〜80℃であることがさらに好ましく、特には25〜70℃であることが好ましい。
本発明で用いられるセルロースエステルフィルムの表面処理方法はアルカリ鹸化水溶液を用いてセルロースエステルフィルムの表面が室温以上の温度でアルカリ鹸化水溶液を用いて鹸化処理する工程、そしてアルカリ鹸化水溶液をセルロースエステルフィルムから洗い落とす工程、さらに酸性水溶液でアルカリ性水溶液を中和する工程、および水洗する工程によりアルカリ鹸化処理を実施することが好ましい。アルカリ鹸化水溶液を用いてセルロースエステルフィルムを処理する工程は従来公知のいずれの方法を用いても良く、浸漬方法、吹き付け方法、塗布方法等が挙げられる。
に好ましい。
洗浄工程は、アルカリ鹸化水溶液、アルカリ希釈液またはアルカリ中和液を除去するために実施する。これらの中のアルカリ剤、酸、塩、フィルム添加物質などの抽出素材が残っていると、鹸化反応が進行したり、後に塗布する配向膜ならびに液晶性分子層の塗膜形成や液晶分子の配向に影響を及ぼす。洗浄は、洗浄水を塗布する方法、洗浄水を吹き付ける方法、あるいまたは、洗浄水の入った容器にセルロースエステルフィルムごと浸漬する方法で実施できる。洗浄水を塗布する方法と吹き付ける方法が、セルロースエステルフィルムを連続搬送しながら実施するために好ましい。洗浄水を吹き付ける方法では、噴流によってセルロースエステルフィルム上の洗浄水とアルカリ性塗布液との乱流混合が得られるために、特に好ましい。
本発明のセルロースエステルフィルム積層体は、上記のセルロースエステルフィルムの少なくとも片面に保護フィルムを積層した構造を有する。本発明における保護フィルムとは、セルロースエステルフィルムを保護する機能を有するフィルムであり、テープ状であるものも含まれる。本発明における保護フィルムは、必ずしもセルロースエステルフィルムを保護することだけを目的として積層されるフィルムに限定されず、他の機能を併せ持つものであっても構わない。本発明における保護フィルムの構造は特に制限されず、例えば樹脂基材の片面に粘着剤層が設けられた積層フィルム、粘着剤を塗工した樹脂フィルム、片側が粘着剤層になっている共押出フィルムなどが好ましい例として挙げられる。保護フィルムの樹脂基材としては、従来から使用されている光学用保護フィルムを特に制限なく使用することができる。一般的には、透視による光学フィルムの検査性や管理性などの観点から、樹脂基材材料として、例えば、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂のような透明なポリマーを用いることが好ましい。
以下に本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムの特性について記載する。
本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムの残留溶剤量は0.01質量%以下である。残留溶剤量は0.005質量%以下であることがより好ましく、0.001質量%以下であることがさらに好ましく、検出されないことが特に好ましい。本発明の製造方法にしたがって、溶融製膜法によりセルロースエステルフィルムを製膜すれば、残留溶剤量が0.01質量%以下のフィルムを得ることができる。フィルム中の残留溶剤量については、ガスクロマトグラフィーを用いて測定することができる。
本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムは、肉眼でスジ状の光漏れが観察されない。ここでいう「肉眼でスジ状の光漏れが観察されない」とは、セルロースエステルフィルムを直交する2枚の偏光膜で挟み込み、目視で観察される光漏れを観察したときに0.5mm以上の長さを有するスジ状の光漏れが観察されないことをいう。本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムは、0.3mm以上の長さを有するスジ状の光漏れが観察されないものであることがより好ましく、0.2mm以上の長さを有するスジ状の光漏れが観察されないものであることがさらに好ましく、特に好ましくはスジ状の光漏れがまったく観察されないものである。
本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムの膜厚は20〜200μmであることが好ましく、より好ましくは20μm〜160μm、さらに好ましくは30μm〜120μm、特には40〜120μmが好ましい。また製膜方向(長手方向)と、フィルムのReの遅相軸とのなす角度θは0°、+90°もしくは−90°に近いほど好ましい。本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムの厚みムラは、厚み方向、幅方向いずれも0〜5μmが好ましく、より好ましくは0〜3μm、さらに好ましくは0〜2μmである。
本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムの波長590nmにおける正面レターデーション(Re)は0〜300nmであることが好ましく、かつ厚さ方向のレターデーション(Rth)は−300〜700nmであることが好ましい。さらに好ましくは、正面レターデーション(Re)が0〜250nmで、かつ厚さ方向のレターデーション(Rth)が−200〜500nmである。特に好ましくは正面レターデーション(Re)が0〜250nmで、且つ厚さ方向のレターデーション(Rth)が−150〜300nmである。Reムラは0〜10nmが好ましく、より好ましくは0〜5μm、さらに好ましくは0〜3μmである。Rthムラは0〜10nmが好ましく、より好ましくは0〜5nm、さらに好ましくは0〜2nmである。本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムは、これらの光学特性を有するときに偏光子の保護膜として極めて好ましいものである。
測定されるフィルムが一軸または二軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRthは算出される。
Rthは前記Reを、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長590nmの光を入射させて全部で11点測定し、その測定されたレタデーション値と平均屈折率および入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
また、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレタデーション値を測定し、その値と平均屈折率および入力された膜厚値を基に、以下の式(b)および式(c)よりRthを算出することもできる。
式(c): Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
測定されるフィルムが一軸や二軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRthは算出される。
Rthは前記Reを、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長590nmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率および入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
これら平均屈折率と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHまたはWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)がさらに算出される。
本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムは、さまざまな手段により機能化することができる。例えば、特定の機能を有する層(機能層)をさらに形成したりすることができる。特に、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)32頁〜45頁に詳細に記載されている機能層を組み合わせて各光学フィルムを構成することが好ましい。中でも好ましいのが、後述する偏光膜の付与(偏光板)、光学補償層の付与(光学補償シート)、反射防止層の付与(反射防止フィルム)である。これらの機能層の付与などは、本発明のセルロースエステルフィルム積層体を製造する際にすでに行っておいてもよいし、本発明のセルロースエステルフィルム積層体からセルロースエステルフィルムを取り出した後に該フィルムに対して行ってもよい。
機能層を形成するとき等には、界面活性剤が好ましく用いられる。機能層の形成に使用される界面活性剤は、その使用目的によって分散剤、塗布剤、濡れ剤、帯電防止剤などに分類される。本発明では、ノニオン性、イオン性(アニオン、カチオン、ベタイン)のいずれの界面活性剤であっても使用することができる。さらにフッ素系低分子界面活性剤も有機溶媒中での塗布剤や、帯電防止剤として好ましく用いられる。
本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムには、接着層を形成することができる。接着層は、セルロースエステルフィルムと機能層(紫外線吸収層)を接着すること等を目的として形成する。例えば、セルロースエステルフィルムに一旦何らかの表面処理をした後、あるいは表面処理なしで、接着層(下塗り層)を形成し、さらにこの上に機能層を塗布する方法などがある。前記下塗層の構成には種々の工夫が行われており、例えば、1層の下塗り層を一層で構成する単層法や、支持体であるセルロースエステルフィルムによく接着する下塗第1層を設け、その上に第2層として機能層とよく接着する下塗り第2層を塗布する所謂重層法がある。機能層を接着するためには、必ずしも接着層を形成しなくてもよい。例えば、セルロースエステルフィルム表面を活性化処理をしたのち、直接セルロースエステルフィルム上に機能層を塗布して接着力を得る方法を採用することもできる。
本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムには、滑り層を形成することができる。滑り層は特に最外層に形成することが好ましい。滑り層は、滑り剤を添加した層を形成することにより形成することができる。滑り剤は、滑り層以外の層にも含有させることができる。用いられる滑り剤としては、例えば、特公昭53−292号公報に開示されているようなポリオルガノシロキサン;米国特許第4,275,146号明細書に開示されているような高級脂肪酸アミド;特公昭58−33541号公報、英国特許第927、446号明細書あるいは特開昭55−126238号および同58−90633号各公報に開示されているような高級脂肪酸エステル(炭素数10〜24の脂肪酸と炭素数10〜24のアルコールとのエステル);米国特許第3,933,516号明細書に開示されているような高級脂肪酸金属塩;特開昭58−50534号公報に開示されているような、直鎖高級脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル;国際公開第90/108115.8号パンフレットに開示されているような分岐アルキル基を含む高級脂肪酸−高級アルコールエステル等が知られている。
本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムには、導電性層を形成してもよく、その場合は少なくとも一種の導電性無機素材、および/または少なくとも一種の有機導電性素材(例えば、イオン性導電性素材)を含有する層である。さらに好ましくは、導電性層は、導電性金属酸化物や導電性ポリマーを含有する層である。なお、導電性層は、蒸着やスパッタリングによる透明導電性膜でもよい。導電性無機素材である好ましい金属酸化物の例としては、ZnO、TiO2、SnO2、Al2O3、In2O3、SiO2、MgO、BaO、MoO2、V2O5等、あるいはこれらの複合酸化物が好ましく、特にZnO、SnO2、Sb2O3、V2O5が好ましい。複合酸化物には、異種原子としてAl、In、Ta、Sb、Nb、Ag、Cl、Br、Iが添加されているのが効果的であり、添加量は0.01mol%〜25mol%の範囲が好ましい。異種原子を含む複合酸化物の好ましい例としては、例えばZnOに対してはAl、In等を添加したもの、SnO2に対してSb、Nb、ハロゲン元素等を添加したもの、TiO2に対してNb、Ta等を添加したものが挙げられる。これら異種原子の添加量は0.01mol%〜30mol%の範囲が好ましいが、0.1mol%〜10mol%であれば特に好ましい。
本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムには、偏光膜を付与して偏光板とすることもできる。
(偏光膜の使用素材)
現在、市販の偏光板に使用される偏光膜(偏光子)は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素を浸透させることで作製されるのが一般的である。偏光膜は、Optiva Inc.に代表される
塗布型偏光膜も利用できる。偏光膜におけるヨウ素および二色性色素は、バインダー中で配向することで偏光性能を発現する。二色性色素としては、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素あるいはアントラキノン系色素が用いられる。二色性色素は、水溶性であることが好ましい。二色性色素は、親水性置換基(例えば、スルホ基、アミノ基、ヒドロキシル基)を有することが好ましい。例えば、発明協会公開技法(公技番号2001−1745号、2001年3月15日発行、発明協会)58頁に記載の化合物が挙げられる。
平行延伸法においては、延伸に先立ち、PVAフィルムを膨潤させるのが好ましい。膨潤度は1.2〜2.0倍(膨潤前と膨潤後の質量比)である。この後、ガイドロール等を介して連続搬送しつつ、水系媒体浴内や二色性物質溶解の染色浴内で、15〜50℃、就中17〜40℃の浴温で延伸するのが好ましい。延伸は2対のニップロールで把持し、後段のニップロールの搬送速度を前段のそれより大きくすることで達成できる。
斜め延伸法においては、特開2002−86554号公報に記載の斜め方向に傾斜め方向に張り出したテンターを用い延伸する方法を用いることができる。この延伸は空気中で延伸するため、事前に含水させて延伸しやすくすることが必用である。好ましい含水率は5%〜100%であり、延伸温度は40℃〜90℃が好ましく、延伸中の湿度は、相対湿度で50%〜100%が好ましい。
このようにして得られた偏光膜の吸収軸は10°〜80°が好ましく、より好ましくは30°〜60°であり、さらに好ましくは実質的に45°(40°〜50°)である。
本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムと延伸して調製した偏光膜を貼り合わせて偏光板を作製する。張り合わせる方向は特に制限はないが、セルロースエステルフィルムの流延軸方向と偏光板の延伸軸方向が0°、45°、90°のいずれかになるように行なうのが好ましい。貼り合わせの接着剤は特に限定されないが、PVA系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等の変性PVAを含む)やホウ素化合物水溶液等が挙げられ、中でもPVA系樹脂が好ましい。接着剤層厚みは乾燥後に0.01〜10μmが好ましく、0.05〜5μmが特に好ましい。
貼り合せの層構成として以下のようなものが挙げられる。
イ)A/P/A
ロ)A/P/B
ハ)A/P/T
ニ)B/P/B
ホ)B/P/T
なお、「A」は本発明の積層体を構成する未延伸セルロースエステルフィルム、「B」は本発明の積層体を構成する延伸セルロースエステルフィルム、「T」はセルローストリアセテートフィルム(富士写真フイルム(株)製、フジタックTD80U等)、「P」は偏光膜を指す。
このようにして得られた偏光板の光線透過率は高い方が好ましく、偏光度も高い方が好ましい。本発明の偏光板の透過率は、42.0%以上であることが好ましく、具体的には、42%〜50%あることが好ましく、より好ましくは42.5%〜50%、さらに好ましくは43.0%〜50%、最も好ましくは43.5%〜50%の範囲にある。また、偏光度は、99.0%以上であることが好ましく、具体的には、99%〜100%の範囲にあることが好ましく、より好ましくは99.5%〜100%、さらに好ましくは99.6%〜100%、最も好ましくは99.9%〜100%の範囲にある。さらに、このようにして得た本発明の偏光板はλ/4板と積層し、円偏光を作製することができる。この場合λ/4の遅相軸と偏光板の吸収軸とを45°になるように積層する。この時、λ/4は特に限定されないが、より好ましくは低波長ほどレターデーションが小さくなるような波長依存性を有するものがより好ましい。さらには長手方向に対し20°〜70°傾いた吸収軸を有する偏光膜、および液晶性化合物からなる光学異方性層からなるλ/4板を用いることが好ましい。これらの偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合してもよい。プロテクトフィルムおよびセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。
(反射防止フィルムの構成)
本発明の反射防止フィルムは、本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムの片面上に、少なくとも1層のハードコート層と最外層に位置する低屈折率層を有する。本発明の反射防止フィルムの好ましい積層構成として、透明支持体、ハードコート層、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の順に層を有する構成を挙げることができる。透明支持体、中屈折率層、高屈折率層および低屈折率層の屈折率は、以下の関係を満足する。
低屈折率層の屈折率<透明支持体の屈折率<中屈折率層の屈折率<高屈折率層の屈折率また、ハードコート層と低屈折率層の間に、防眩性ハードコート層を設けてもよい。ハ
ードコート層、光拡散性(内部散乱性)のハードコート層、高屈折率層、低屈折率層の順に層を有する構成も好ましい。
反射防止膜の高い屈折率を有する層は、平均粒子サイズ100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子およびマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化性膜からなる。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。このような超微粒子とするには、粒子表面が表面処理剤で処理されること(例えば、シランカップリング剤等:特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908号公報、アニオン性化合物或いは有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とすること(特開2001−166104号公報等)、特定の分散剤を併用すること(例えば、特開平11−153703号公報、米国特許第6,210,858B1号、特開2002−2776069号公報等)等が挙げられる。
本発明における低屈折率層は、熱または電離放射線により架橋する含フッ素化合物、無機もしくは有機の微粒子、バインダー等から形成することが好ましく、粒子間もしくは粒子内部に空隙を有する層、ゾルゲル法による低屈折率層等も用いることができる。低屈折率層の屈折率は、低ければ反射防止性能が良化するため好ましいが、低屈折率層の強度付与の観点では困難となる。このバランスを考えると、低屈折率層の屈折率は1.30〜1.50であることが好ましく、1.35〜1.49であることがさらに好ましい。また、低屈折率層の屈折率は、高屈折率層より、0.05〜2.0の範囲で低いことが必要である。 低屈折率層に用いられる架橋性のフッ素高分子化合物としてはパーフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラデシル)トリエトキシシラン)等の他、含フッ素モノマーと架橋性基付与のためのモノマーを構成単位とする含フッ素共重合体が挙げられる。
(ア)微粒子の表面処理剤にポリマーを結合させる方法、
(イ)微粒子をコアとして、その周囲にポリマーシェルを形成する方法、および
(ウ)微粒子間のバインダーとして、ポリマーを使用する方法、
を好ましく挙げることができる。
上記(ア)の表面処理剤に結合させるポリマーは、(イ)のシェルポリマーまたは(ウ)のバインダーポリマーであることが好ましい。
上記(イ)のポリマーは、低屈折率層の塗布液の調製前に、微粒子の周囲に重合反応により形成することが好ましい。
上記(ウ)のポリマーは、低屈折率層の塗布液にモノマーを添加し、低屈折率層の塗布と同時または塗布後に、重合反応により形成することが好ましい。(ア)〜(ウ)の内、二種類または三種類を組み合わせて、実施することが好ましく、(ア)と(ウ)の二種類の組み合わせ、または(ア)〜(ウ)の三種類の組み合わせで実施することが特に好ましい。
上記の方法については、特開平11−6902号公報等に詳しく記載されている。
ハードコート層は、反射防止フィルムに物理強度を付与するために、透明支持体(セルロースエステルフィルム)の表面に設ける。特に、透明支持体と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。ハードコート層は、光および/または熱の硬化性化合物の架橋反応、または、重合反応により形成されることが好ましい。硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、又加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したと同様のものが挙げられる。ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、国際公開第00/46617号パンフレット等記載のものが挙げられる。高屈折率層はハードコート層を兼ねることができる。このような場合、高屈折率層で記載した手法を用いて微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。ハードコート層は、平均粒子サイズ0.2〜10μmの粒子を含有させて防眩機能(アンチグレア機能)を付与した防眩層(後述)を兼ねることもできる。ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmである。 ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。又、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ない
ほど好ましい。
ハードコート層は、防眩性および/または光拡散性(内部散乱性)を付与するための透光性粒子、高屈折率無機超微粒子、およびハードコート性を十分に強力にするためのマトリックスを少なくとも各々1種ずつ含有する。
S=[D(0.9)−D(0.1)]/D(0.5)
D(0.1):体積換算粒子サイズの積算値の10%相当粒子サイズ
D(0.5):体積換算粒子サイズの積算値の50%相当粒子サイズ
D(0.9):体積換算粒子サイズの積算値の90%相当粒子サイズ
したIn2O3)、酸化亜鉛、特定金属含有の酸化チタン(特定金属として、コバルト、アルミニウム、ジルコニウムが挙げられる。)、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウムなどの粒子が挙げられる。これらの中で二酸化珪素、酸化アルミニウムが好ましい。
架橋アクリル粒子(例えば綜研化学(株)製MXシリーズ、屈折率=1.49)、架橋スチレン粒子(例えば綜研化学(株)製SXシリーズ、屈折率=1.61)、架橋メラミン粒子、架橋ベンゾグアナミン粒子(例えば日本触媒(株)製エポスターシリーズ、屈折率=1.68)等の樹脂粒子が挙げられる。透光性粒子の形状は、真球あるいは不定形のいずれも使用できるが、表面突起形状が揃う球状粒子が好ましい。
前方散乱層は、液晶表示装置に適用した場合に、上下左右方向に視角を傾斜させたときの視野角改良効果を付与するために設ける。上記ハードコート層中に屈折率の異なる微粒子を分散することで、ハードコート機能と兼ねることもできる。例えば、前方散乱係数を特定化した特開11−38208号公報、透明樹脂と微粒子の相対屈折率を特定範囲とした特開2000−199809号公報、ヘイズ値を40%以上と規定した特開2002−107512号公報等が挙げられる。
本発明の反射防止フィルムには、さらに、プライマー層、防湿層、下塗り層や保護層、シールド層、滑り層を設けてもよい。シールド層は、電磁波や赤外線を遮蔽するために設けられる。
反射防止フィルムの各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート、マイクログラビア法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。
光学異方性層は、液晶表示装置の黒表示における液晶セル中の液晶化合物を補償するためのものであり、本発明の積層体を構成する未延伸または延伸セルロースエステルフィルムの上に配向膜を形成し、さらに光学異方性層を付与することで形成される。
本発明の積層体を構成する未延伸または延伸セルロースエステルフィルムを前記のようにして表面処理し、さらにその上に配向膜を設ける。この膜は、液晶性分子の配向方向を規定する機能を有する。しかし、液晶性化合物を配向後にその配向状態を固定してしまえば、配向膜はその役割を果たしているために、本発明の光学補償フィルムの構成要素としては必ずしも必須のものではない。即ち、配向状態が固定された配向膜上の光学異方性層のみを偏光子上に転写して本発明の偏光板を作製することも可能である。配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例えば、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。配向膜に使用するポリマーは、原則として、液晶性分子を配向させる機能のある分子構造を有する。本発明では、液晶性分子を配向させる機能に加えて、架橋性官能基(例えば、二重結合)を有する側鎖を主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する架橋性官能基を側鎖に導入することが好ましい。
このようにして得た配向膜の膜厚は、0.1〜10μmの範囲にあることが好ましい。
棒状液晶性分子としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。なお、棒状液晶性分子には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶性分子を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも、棒状液晶性分子として用いることができる。言い換えると、棒状液晶性分子は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。
円盤状(ディスコティック)液晶性分子には、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
前記の液晶性分子と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶分子の配向性等を向上することができる。液晶性分子と相溶性を有し、液晶性分子の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。
光学異方性層は、液晶性分子および必要に応じて後述の重合性開始剤や任意の成分を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成できる。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジン)、炭化水素(例えば、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
配向させた液晶性分子を、配向状態を維持して固定することができる。固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2,367,661号、同2,367,670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2,448,828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2,722,512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3,046,127号、同2,951,758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3,549,367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4,239,850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4,212,970号明細書記載)が含まれる。光重合開始剤の使用量は、塗布液固形分は0.01〜20質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
本発明の液晶表示装置は、本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムを用いて形成される。具体的には、上述の偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルムからなる群より選択される少なくとも1つを用いて形成される。
本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムは、液晶表示装置の光学補償シートとして用いると特に有効である。フィルムそのものを光学補償シートとして用いる場合は、偏光素子(後述)の透過軸と、セルロースエステルフィルムからなる光学補償シートの遅相軸とを実質的に平行または垂直になるように配置することが好ましい。このような偏光素子と光学補償シートとの配置については、特開平10−48420号公報に記載がある。液晶表示装置は、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償シートを配置した構成を有している。
本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有効に用いられる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学的性質は、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配置により決定される。
本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配置により決定される。本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムには、各種OCBモードの液晶セルに対応した光学特性を付与すればよい。その範囲は、Reが20nm〜100nmであり、好ましくはReが30nm〜80nmであり、特には30nm〜60nmである。また、Rthが150nm〜300nmであり、好ましくはRthが160nm〜260nmであり、特には170nm〜250nmである。
本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムは、ASM(Axially Symmetric Alligned Microcell)モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚みが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)外の論文(Kume et al., SID 98 Digest 1089 (1998))に記載がある。本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムは、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置については、古くから良く知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平3−9325号、同6−148429号、同8−50206号、同9−26572号の各公報に記載がある。本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムには、これらの各種液晶表示装置に対する光学補償シート用として好ましい光学特性を付与すればよい。
(1−1)セルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムの製膜
(1)セルロースエステルペレットの調製
セルロースエステルとして、セルロースエステルA(アセチル基の置換度1.50、プロピオニル基の置換度1.40、トータル置換度2.90、粘度平均重合度180、含水率0.1質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度140mPa・s、平均粒子サイズ1.4mmであって標準偏差0.4mmである粉体)を用いた。なお、セルロースエステルAは、残存酢酸量が0.05質量%、残留プロピオン酸が0.03質量%であり、Ca含有量が51ppm、Mg含有量が15ppm、Fe含有量が0.45ppmであり、さらに硫酸基としてのイオウ量を0.16ppm含むものであった。
前記セルロースエステルを直径3mm、長さ5mmの円柱状のペレットに成形したものを、110℃の真空乾燥機で3時間乾燥した。これをホッパーに投入し225℃で溶融した後、口径5μmの焼結金属フィルターを用いて、10MPaで速度0.1m/分にて加圧濾過した。得られた濾過物は、透明かつ均質な組成であることを確認した。
つぎに105℃になるように調整したホッパーに投入し、10分間かけてメルトを溶融押出しした。このとき、上流側溶融温度は195℃、中間溶融温度は210℃、下流側溶融温度は225℃、圧縮比は14、T−ダイ温度は118℃、T−ダイおよびキャスティングドラム間距離は8cm、固化速度は30℃/秒、キャスティングドラム温度は第一ロール(上流)が115℃、第二ロール(上流)が114℃、第三ロール(上流)が113℃、冷却速度は−15℃/秒であった。この際、各水準静電印加法(10kVのワイヤーをメルトのキャスティングドラムへの着地点から10cmのところに設置)を用いた。固化したメルトを剥ぎ取り、ニップロールを介して、巻き取り張力6kg/cm2で30m/分で搬送して長尺フィルムを作製(セルロースエステルフィルム試料1−1)した。フィルム厚は80μmであり、幅は1.35mで、長さは900mとした。なお、巻き取り直前に両端(全幅の各3%)をトリミングした後、後述する保護フィルムをキャスティングローラー面側に付着してロール状態に巻き取った。なお、各工程はダウンフロータイプのクリーンエアーでクラス100以下とした環境条件で実施した。
保護フィルムAとして、基材がPETフィルム(25μm厚)で粘着剤層がアクリル粘着剤(20μm厚)であるPET保護テープ(品番:S−362,藤森工業社製、幅1.35m、長さ1000m巻き)を使用した。上記で作製したセルロースエステルフィルム試料1−1の片面(キャスティングロール面側)に、保護フィルムAをゴムロールと金属ロールの組み合わせによるニップロールを用いて、セルロースエステルフィルムのキャスティングロール面側と、保護フィルムAをY字状に寄せてきて、ニップロールに両者が各々一部沿った状態ではさみ、接合させることにより付着(ラミネート)した。セルロースエステルフィルムと保護フィルムAとのセルロースエステルフィルム積層体(積層体試料1−2)の平均厚みは105μmであった。積層体の幅方向と長手方向の厚みばらつきを測定したところ、それぞれ2.5μm、1.0μmであった。なお、本工程はダウンフロータイプのクリーンエアー下で、クラス1000以下の環境条件で実施した。
前述した方法で得られたセルロースエステルフィルム積層体(積層体1−2)のロール状巻き芯に巻き込まれたフィルムを、再度速度30m/分で引っ張り出して、保護フィルムを剥ぎ取った。なお、本工程はダウンフロータイプのクリーンエアーでクラス1000以下とした環境条件で実施した。保護フィルムの剥離は、保護フィルムを積層体試料1−2の搬送路に沿った巻き芯に巻き取ることにより実施した。保護フィルムをはがして得られたセルロースエステルフィルムを、直交する2枚の偏光膜で挟み込み、目視で観察される傷や異物に起因する光漏れを観察したところ、目視上で光漏れは全く観察されず、優れた面状有するフィルムであることが確認された。
以下にセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムに関する前述の各特性の測定方法と評価方法ついて記載する。
(ダイスジ)
ダイスジの評価は、流延方向に見られるスジ状のムラを、反射光源のもとで目視観察し、以下に従って評価した。
A: ダイスジは見られなかった。
B: ダイスジが微かに見られた。
C: ダイスジがはっきりと認められた。
D: ダイスジが全面に著しく発生していることが認められた。
ダンムラの評価は、幅方向に見られる段状のムラを、反射光源のもとで目視観察し、以下に従って評価した。
A: ダンムラは見られなかった。
B: ダンムラが微かに見られた。
C: ダンムラがはっきりと認められた。
D: ダンムラが全面に著しく発生していることが認められた。
セルロースエステルフィルムを25℃・相対湿度60%にて24時間調湿後、自動複屈折計(KOBRA−21ADH:王子計測機器(株)製)を用いて、25℃・相対湿度60%において、フィルム表面に対し垂直方向および遅相軸を回転軸としてフィルム面法線から+50°から−50°まで10°刻みで傾斜させた方向から波長590nmにおける位相差値を測定することにより、面内レターデーション値(Re)と膜厚方向のレターデーション値(Rth)とを算出させた。特に断らない場合ReおよびRthは、この値をさす。
長手方向に1m間隔で100点、1cm四方の大きさにサンプリングし、また、製膜全幅にわたり、1cm四方の大きさに5cm等間隔でサンプリングした。それぞれ得られたサンプルの各最大値と最小値の差を求め、Reムラ、Rthムラとした。
長手方向に1m間隔で100点、1cm四方の大きさにサンプリングし、また、製膜全幅にわたり、1cm四方の大きさに5cm等間隔でサンプリングした。それぞれ得られたサンプルの厚みを測定し、厚みの最大値と最小値の差を求めて評価した。
さらにこれらの試料について、25℃/相対湿度10%でRe(10%RH)、Rth(10%RH)を求めた。さらにこれらの試料を25℃・相対湿度80%で同様に測定し、Re(80%RH)、Rth(80%RH)を求めた。各試料について、Re(10%RH)とRe(80%RH)の差を求めてRe湿度依存性を評価し、また、Rth(10%RH)とRth(80%RH)の差を求めてRth湿度依存性を評価した。
試料40mm×80mmについて、25℃・相対湿度60%でヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)を用いてJIS K−6714に従って測定した。
試料20mm×70mmについて、25℃・相対湿度60%で透明度測定器(AKA光電管比色計、KOTAKI製作所)を用いて可視光(615nm)の透明度を測定した。
試料70mm×100mmを、25℃・相対湿度65%で2時間調湿し、自動複屈折計(KOBRA21DH、王子計測(株))を用いて垂直入射における入射角を変化させた時の位相差を測定して分子配向軸を算出した。
試料100mm×200mmおよび75mm×100mmを、23℃・相対湿度65%で2時間調湿し、テンシロン引張試験機(RTA−100,オリエンテック(株))を用いて、大きいフィルムを台の上に固定し、200gのおもりをつけた小さいフィルムを載せた。おもりを水平方向に引っ張り、動き出した時の力、動いているときの力を測定した。そして、静摩擦係数、動摩擦係数をそれぞれ次式に従い算出した。
F=μ×W (W:おもりの重さ(kgf))
試料35mm×100mmを、23℃・相対湿度65%で2時間調湿し、動摩擦係数測定器(東洋ボールドウィン)を用いて、測定面を上にして試料を台に固定し、鋼球を試料上におろし、台を送り測定した。
試料35mm×3mmを、カール調湿槽(HEIDON(No.YG53−168)、新東科学(株))で相対湿度25%、55%、85%で24時間調湿し、曲率半径をカール板で測定しドライのカール値とした。またウェットでのカールは、水温25℃の水中に30分静置した後に、そのカール値を測定した。
試料70mmφを25℃・相対湿度95%および40℃・相対湿度95%でそれぞれ24時間調湿し、透湿試験装置(KK−709007、東洋精機(株))にて、JIS Z−0208に従って、単位面積あたりの水分量(g/m2)を算出した。そして、透湿度を(調湿後質量)−(調湿前質量)により求めた。さらに強制的評価として、60℃・相対湿度95%にて24時間調湿後に測定し、透湿係数とした。
試料の全幅×1mの範囲に反射光をあて、膜中異物を目視にて検出した後、偏光顕微鏡で異物(リント)を確認して評価した。
寸法安定性は熱収縮率で評価した。試料の縦方向および横方向より30mm幅×120mm長さの試験片を各3枚採取した。試験片の両端に6mmφの穴をパンチで100mm間隔に開けた。これを23±3℃、相対温度65±5%の室内で3時間以上調湿した。自動ピンゲージ(新東科学(株)製)を用いてパンチ間隔の原寸(L1)を最小目盛り/1000mmまで測定した。次に試験片を80℃±1℃の恒温器に吊して3時間熱処理し、23±3℃、相対湿度65±5%の室内で3時間以上調湿した後、自動ピンゲージで熱処理後のパンチ間隔の寸法(L2)を測定した。そして以下の式により熱収縮率を算出した。
熱収縮率=(L1−L2/L1)×100
直交状態(クロスニコル)に二枚の偏光板を配置して透過光を遮断し、二枚の偏光板の間に各試料を置いた。偏光板はガラス製保護板のものを使用した。片側から光を照射し、反対側から光学顕微鏡(50倍)で1cm2当たりの直径0.01mm以上の輝点数をカ
ウントした。
DSCの測定パンに試料を20mg入れた。これを窒素気流中で、10℃/分で30℃から250℃まで昇温した後、30℃まで−10℃/分で冷却した。この後、再度30℃から250℃まで昇温してベースラインが低温側から偏奇し始める温度をTgとした。
T−ダイから押出しする際に最初のロールのフィルム端部におけるロール表面の汚れ程度を、反射光源のもとで目視観察し、以下に従って評価した。
A: 汚れは見られなかった。
B: 汚れが微かに見られた。
C: 汚れがはっきりと認められた。
D: 汚れが全面に著しく認められた。
得られた試料フィルム5cm×5cmを25℃、相対湿度80%で3時間調湿した後、フィルムの溶融製膜時のキャスティングドラム面とエアー面を重ね合わせ、防湿袋に封じ込んだ後に、フィルム全体に10kgの荷重をかけた。さらに、60℃で3日間経時させ25℃、相対湿度60%に戻し2時間後にフィルム同士の接着跡を目視確認し、下記に従って評価した。
A: 接着跡は見られなかった。
B: 接着跡が微かに見られた。
C: 接着跡がかなり認められた。
D: 接着跡が全面に著しく発生していることが認められた。
セルロースの水酸基に対するアシル基の置換度は、Carbohydr.Res.273(1995)83−91(手塚他)に記載の方法で13C−NMRにより求めた。
絶乾したセルロースエステル約0.2gを精秤して、メチレンクロリド:エタノール=9:1(質量比)の混合溶剤100mlに溶解した。これをオストワルド粘度計にて25℃で落下秒数を測定し、重合度を以下の式により求めた。
ηrel =T/T0
[η]=ln(ηrel)/C
DP=[η]/Km
[式中、Tは測定試料の落下秒数、T0は溶剤単独の落下秒数、lnは自然対数、Cは濃度(g/L)、Kmは6×10-4である。]
キシミ値を評価したフィルムを目視で観察し、以下に従って評価した。
A: 傷付きは全く認められなかった。
B: 傷付きがわずかに認められた。
C: 傷付きがかなり認められた。
D: 傷付きが著しく認められた。
試料15mm×250mmを、23℃、相対湿度65%にて2時間調湿し、テンシロン引張試験機(RTA−100、オリエンテック(株))にてISO1184−1983に従って、初期試料長100mm、引張速度200±5mm/分で弾性率を引張初期の応力と伸びより算出し、抗張力と伸張力を評価した。
試料100mm×100mmを、自動アルカリ鹸化処理装置(新東科学(株)製)にて、60℃,2mol/L水酸化ナトリウム水溶液にて3分間鹸化し、4分間水洗した後、30℃,0.01mol/L希硝酸にて4分間中和し、4分間水洗した。その後、100℃で3分間乾燥し、さらに自然乾燥を1時間行なって、下記の目視基準と鹸化処理前後のヘイズ値からアルカリ加水分解性を評価した(25℃・相対湿度60%)。
A: 白化は全く認められなかった。
B: 白化がわずかに認められた。
C: 白化がかなり認められた。
D: 白化が著しく認められた。
試料7mm×35mmを水分測定器と試料乾燥装置(CA−03、VA−05、共に三菱化学(株))を用いてカールフィッシャー法で測定した。水分量(g)を試料質量(g)で除して算出した。
ガスクロマトグラフィー(GC−18A、島津製作所(株)製)を用いて、試料7mm×35mmのベース残留溶剤量を測定した。
試料30mm×120mmを90℃・相対湿度5%で24時間、120時間経時させ、自動ピンゲージ(新東科学(株)製)にて、両端に6mmφの穴を100mm間隔に開けて、間隔の原寸(L1)を最小目盛り1/1000mmまで測定した。さらに90℃・相対湿度5%にて24時間、120時間熱処理してパンチ間隔の寸法(L2)を測定した。熱収縮率を{(L1−L2)/L1}×100により求めた。
東洋ボールドウィン製の万能引っ張り試験機STM T50BPを用いて、23℃、相対湿度70%雰囲気中、引っ張り速度10%/分で0.5%伸びにおける応力を測定し、弾性率を求めた。
実施例1の(1−2)において保護フィルムAの付着を実施することなく、セルロースエステルフィルムを巻き取りロール状態にする以外は、実施例1と全く同様にして、比較試料−1を作製した。
得られた比較試料−1のセルロースエステルフィルムをロール状巻き芯に巻き込んだフィルムを、再度速度30m/分で引っ張り出した。本工程はダウンフロータイプのクリーンエアーでクラス1000以下とした環境条件で実施した。得られた比較試料−1のセルロースエステルフィルムを、直交する2枚の偏光膜で挟み込み、目視で観察される光漏れを観察したところ、0.5mm以上の光漏れが11個/m観察され、面状として問題となるレベルであった。
保護フィルムAの代わりに下記の保護フィルムBを用いたこと以外は、実施例1と同様にして保護フィルムを付着させ、再度巻きほぐし保護フィルムを剥離して、セルロースエステルフィルムの面状を観察した。ここで保護フィルムBとしては、基材がPE、粘着剤層がエバール(EVA)からなる共押出で作製されたPE保護(商品名:積水プロテクトテープ#6221F,積水化学工業社製)を使用した。保護フィルムBは、長さ1000m巻きであり(基材層42μm、粘着剤層8μm)、総厚は平均50μmであった。実施例1と同様にして保護フィルムBをセルロースエステルフィルム(試料1−1)に積層した。積層体の厚みは平均130μmであった。積層体の幅方向と長手方向の厚みばらつきを測定したところ、それぞれ4.6μm、5.2μmであった。得られた積層体のロール巻き長さは850mであり、セルロースエステルフィルム積層体(積層体試料2−1)とした。
実施例1の(1−1)の(3)における溶融製膜において、下流側溶融温度225℃を本発明の製造方法の温度領域外である245℃(特許文献2(特開2000−352620号公報)の実施例に挙げられている溶融温度である)に変更する以外は、試料1−2と全く同様にして比較用セルロースエステルフィルム積層体(比較積層体試料2−1)を作製した。同様にして溶融製膜の下流側溶融温度225℃を本発明の製造方法の温度領域外である175℃に更する以外は、試料1−1と全く同様にして比較用セルロースエステルフィルム積層体(比較積層体試料2−2)を作製した。
これはセルロースエステルフィルム積層体の基体であるセルロースエステルフィルムの溶融製膜時の下流溶融温度が本発明の範囲外であるために、ダイスジ、ダンムラを発生して面状が悪化したことが原因と推定される。
実施例1において、保護フィルムAを下記の保護フィルムCに変更する以外は、実施例1と全く同様にして、本発明の積層体試料3を作製した。
2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレートおよび2−ヒドロキシエチルアクリレートのアクリル系ポリマー(質量比:68/29/3,質量平均分子量40万)の25%酢酸エチル溶液に、固形分換算で前記アクリル系ポリマー100質量部に対してトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート3質量部を添加、混合し、アクリル系粘着剤組成物を調製した。
厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、上記処理剤を乾燥後の塗布量が0.04g/m2になるようにワイヤーバーで塗布し、20℃で1分間乾燥して処理層を形成した。次いで、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの処理層の反対面に、上記アクリル系粘着剤組成物を乾燥後の厚みが15μmになるようにアプリケータで塗布し、120℃で2分間乾燥して粘着剤層を形成し、光学用保護フィルムを得た。
得られたセルロースエステルフィルム積層体(積層体試料3)のロール状巻き芯に巻き込まれたフィルムを、再度速度30m/分で引っ張り出して、保護フィルムを剥ぎ取った。本工程はダウンフロータイプのクリーンエアーでクラス1000以下とした環境条件で実施した。保護フィルムの剥離は、積層体試料3の搬送路に沿った巻き芯に巻き取り実施した。保護フィルムをはがして得られたセルロースエステルフィルムを、直交する2枚の偏光膜で挟み込み、目視で観察される傷や異物に起因する光漏れを観察したところ、本発明にしたがって保護フィルムを付着したセルロースエステルフィルム積層体(積層体試料3)には光漏れは全く観察されず、優れた面状を有するフィルムであることが確認された。
実施例1における本発明の積層体試料1−2の製造に用いたセルロースエステルAをセルロースエステルB(アセチル基の置換度1.10、プロピオニル基の置換度1.80、トータル置換度2.90、粘度平均重合度150、含水率0.1質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度52mPa・s、平均粒子サイズ1.5mmであって標準偏差0.5mmである粉体)に変更した以外は、実施例1の積層体試料1−2と全く同様にして本発明の積層体試料4−1を作製した。さらに、セルロースエステルAをセルロースエステルC(アセチル基の置換度1.00、プロピオニル基の置換度1.85、トータル置換度2.85、粘度平均重合度160、含水率0.05質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度125mPa・s、平均粒子サイズ1.0mmであって標準偏差0.25mmである粉体)に変更した以外は、実施例1の積層体試料1−2と全く同様にして本発明の積層体試料4−2を作製した。積層体試料4−1および4−2共に目視上で光漏れは全く観察されず、優れた面状を有するフィルムであることが確認された。
次に、セルロースエステルフィルムを偏光板等に応用した実施例を記載する。
(5−1)偏光板の作製
(1)セルロースエステルフィルムの鹸化
本発明のセルロースエステルフィルム積層体試料1−2から剥離して得られたセルロースエステルフィルム試料1−1、および別途N,N',N"−トリ−m−トルイル−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミンをセルロースエステルに対して4質量%添加して溶液流延し、残留溶媒が存在する状態で乾燥させながら幅方向に1.32倍延伸して得たセルローストリアセテート(Reは60nm、Rthは200nm、膜厚80μm)を以下の方法で鹸化した。すなわち、KOHを1.5mol/Lとなるように溶解した後に、60℃に調温したものを鹸化液として用いた。そして、60℃のセルロースエステルフィルム上に10g/m2塗布し、1分間鹸化した。この後、50℃の温水をスプレーにより、10リットル/m2・分で1分間吹きかけ洗浄した。その後、110℃の乾燥風を風速15m/秒で送り、5分間で乾燥した。これらの鹸化は、ロール状のフィルムを速度45m/分で搬送しながら実施した。本発明のセルロースエステルフィルム積層体試料1−2から剥離して得られたセルロースエステルフィルム試料1−1の鹸化フィルムを試料5−1とした。
特開2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し、厚み20μmの偏光膜を調製した。
このようにして得た偏光膜を、前記鹸化処理したセルロースエステルフィルム試料5−1、および延伸セルローストリアセテートフィルムで挟んだ後、PVA((株)クラレ製、PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、偏光軸とセルロースエステルフィルム試料5−1の長手方向とが90°となるように張り合わせた。このうち本発明によるセルロースエステルフィルム5−1と、別途作製した鹸化済みのセルローストリアセテートフィルム(Re:61nm、Rth:205nm)を特開2000−154261号公報の図2〜9に記載の20インチVA型液晶表示装置に25℃・相対湿度60%下で取り付けた後、25℃・相対湿度10%の環境中に持ち込み、目視で色調変化の大小を10段階評価(大きいものほど変化が大きい)で評価し、表示ムラの発生している領域を目視で評価し、それが発生している割合(%)を求めた。本発明によるセルロースエステルフィルム試料1−1の色調変化は1であり、非常に優れたものであった。また、特開平2002−86554号公報の実施例1に従い、テンターを用い延伸軸が吸収軸に対して45°の角度となるように延伸した偏光板についても同様に本発明によるセルロースエステルフィルムを用いて作製したが、前記同様良好な結果が得られた。
特開平11−316378号公報の実施例1の液晶層を塗布したセルロースアセテートフィルムの代わりに、本発明による鹸化済みのセルロースエステルフィルム試料5−1を使用し、これを、特開2002−62431号公報の実施例9に記載のベンド配向型液晶セルに25℃・相対湿度60%下で取り付けた。これを25℃・相対湿度10%の環境中に持ち込み、コントラストの変化を目視評価し、色変化の大小を10段階評価(大きいものほど変化が大きい)して2のマークを得た。本発明を実施したことにより良好な性能が得られた。
発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の実施例47に従い、実施例1において作製した本発明のセルロースエステルフィルム積層体試料1−2から剥離して得られたセルロースエステルフィルム試料1−1を用いて低反射フィルムを作製したところ、良好な光学性能が得られた。
実施例1において作製した本発明のセルロースエステルフィルム積層体試料1−2から剥離して得られたセルロースエステルフィルム試料1−1を、特開2002−265636号公報の実施例13において、セルローストリアセテートフィルム試料1301の代わりに用いた。そして、特開2002−265636号公報の実施例13と全く同様にして、光学異方性層、偏光板試料を作製することによりベンド配向型液晶セルを作製した。得られた液晶セルは、優れた視野角特性を有するものであった。
実施例1において作製した本発明のセルロースエステルフィルム積層体試料1−2から剥離して得られたセルロースエステルフィルム試料1−1を、特開2002−265636号公報の実施例14におけるセルローストリアセテートフィルム試料1401の代わりに用いた。そして、特開2002−265636号公報の実施例14と全く同様にして、光学異方性層、偏光板試料を作製することによりTN型液晶セルを作製した。得られた液晶セルは、優れた視野角特性を有するものであった。
(8−1)保護フィルム付きセルロースエステルフィルム積層体の鹸化
実施例1において作製した本発明のセルロースエステルフィルム積層体試料1−2を、以下の方法で鹸化した。すなわち、KOHを1.5mol/Lとなるように溶解した後に、60℃に調温したものを鹸化液として用いた。そして、60℃のセルロースエステルフィルム上に10g/m2塗布し、1分間鹸化した。この後、50℃の温水をスプレーにより、10リットル/m2・分で1分間吹きかけ洗浄した。その後、110℃の乾燥風を風速15m/秒で送り、5分間で乾燥した(鹸化済み積層体試料1−2)。
特開2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し、厚み20μmの偏光膜(偏光膜試料8−2)を調製した。偏光度は99.99%であった。
N,N',N"−トリ−m−トルイル−1,3,5ートリアジン−2,4,6−トリアミンをセルロースエステルに対して4質量%添加して溶液流延し、残留溶媒が存在する状態で乾燥させながら幅方向に1.32倍延伸して得たセルローストリアセテート(Reは60nm、Rthは200nm、膜厚80μm)を、以下に従って鹸化した。すなわち、KOHを1.5mol/Lとなるように溶解した後に、60℃に調温したものを鹸化液として用いた。そして、60℃のセルローストリアセテートフィルム上に10g/m2塗布し、1分間鹸化した。この後、50℃の温水をスプレーにより、10リットル/m2・分で1分間吹きかけ洗浄した。その後、110℃の乾燥風を風速15m/秒で送り、5分間で乾燥した。このサンプルをセルローストリアセテートフィルム試料8−3とした。
本発明による保護フィルム付きの鹸化済み積層体試料1−2と、位相差用セルローストリアセテート試料8−3を、偏光膜試料8−2を用いて、積層体試料1−2/PVA((株)クラレ製、PVA−117H)3%水溶液/偏光膜試料8−2/PVA((株)クラレ製、PVA−117H)3%水溶液/セルローストリアセテートフィルム試料8−3の層構成で挟み込み、位相差板を作製した。この時、偏光軸とセルロースエステルフィルム試料1−1の遅相軸方向とが90°となるように張り合わせ、本発明のセルロースエステルフィルム積層体を有する位相差板試料8−4を得た。
得られた位相差板試料8−4の保護フィルムを剥離して、2枚を偏光軸が直交するように重ね合わせ、その異物を目視で観察してところ、0.2mm以上の輝点異物は全く観察されなかった。このことから、本発明による保護フィルムを積層したセルロースエステルフィルム積層体は、その位相差板の作製時における取り扱いでも優れたものであることが実証された。
実施例8の(8−1)において、実施例1の(1−2)において作製した本発明のセルロースエステルフィルム積層体試料1−2を、実施例1の(1−1)において作製した本発明によるセルロースエステルフィルム試料1−1に変更する以外は、実施例8と全く同様にして、比較用位相差板試料8−5を得た。得られた位相差板試料8−5を2枚準備し、それらの偏光軸が直交するように重ね合わせ、その異物を目視で観察してところ、1mm以上の輝点異物が3個/m2観察され、さらに0.5mm以上の輝点異物が12個/m2観察された。したがって、実施例8の本発明による保護フィルムを付与した場合に比べ、保護フィルムのない比較用位相差板試料8−5は、その位相差板の作製時における取り扱いで異物を発生したことによる問題を含むものであった。以上からも本発明のセルロースエステルフィルム積層体が優れたものであることが実証された。
(9−1)鹸化処理フィルムの作製
実施例1の(1−1)で得られたセルロースエステルフィルム試料1−1の片面(エアー面側)に、40℃に保温した下記処方のアルカリ鹸化水溶液(S−1)をロッドコーターで20ml/m2塗布した。110℃に加熱したスチーム式遠赤外ヒーター((株)ノリタケカンパニーリミテッド製)の下に7秒滞留させてフィルムの表面温度を40〜50℃とした後に、同じくロッドコーターを用いて純水を20ml/m2 塗布し、アルカリ液を洗い落とした。この時、フィルム温度は40〜45℃に維持されており、純水塗布後の塗膜のKOH濃度は0.5mol/Lであった。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返し、アルカリを洗い落とした後に70℃の乾燥ゾーンに15秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理フィルム(試料1−1−K1)を作製した。
KOH 560質量部
C14H29−O−(CH2CH2O)−H 100質量部
消泡剤サーフィノールDF110D(日信化学工業(株)製) 2質量部
水 9338質量部
アルカリ鹸化水溶液S−1の表面張力は、64mN/mであり、液の粘度は1.8mPa・s、液の密度は1.07g/cm3、電気伝導度は180mS/cmであった。アルカリ鹸化水溶液中の炭酸イオン濃度は1090mg/Lであり、カルシウム、マグネシウムを含む多価金属イオン濃度の総和は190mg/Lであり、塩化物イオン濃度は133mg/Lであった。
得られた鹸化処理フィルム試料1−1−K1の鹸化面に、実施例1の(1−2)と同じ方法で保護フィルムAを張り合わせて、セルロースエステルフィルム積層体試料K1−Aを作成した。得られた積層体試料K1−Aの平均厚みは105μmであった。また、積層体の幅方向と長手方向の厚みばらつきを測定したところ、それぞれ2.5μm、1.0μmであった。
積層体試料K1−Aについて、実施例1の(1−3)と同じ評価を実施した。その結果、積層体試料K1−Aは、目視上で光漏れは全く観察されず、優れた面状を有するフィルムであることが確認された。また、積層体試料K1−Aから提供されたセルロースエステルフィルムについては、すべて実施例1の(1−3)と同じ測定結果と評価結果を得た。
実施例9において保護フィルムAの付着しなかったこと以外は、実施例9と全く同様にして、比較試料−4を作製した。
得られた比較試料−4のセルロースエステルフィルムをロール状巻き芯に巻き込んだフィルムを、再度速度30m/分で引っ張り出した。本工程はダウンフロータイプのクリーンエアーでクラス1000以下とした環境条件で実施した。得られた比較試料−4のセルロースエステルフィルムを、直交する2枚の偏光膜で挟み込み、目視で観察される光漏れを観察したところ、0.5mm以上の光漏れが11個/m観察され、面状として問題となるレベルであった。
実施例9で得られた鹸化処理フィルム試料1−1−K1とセルロースエステルフィルム積層体試料K1−Aを用いたことを除いて、実施例2〜8と同じ処理を行った。その結果、実施例2〜8と同等の結果が得られ、本発明の優れた効果が同様に確認された。
実施例1の「(1−1)セルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムの製膜」の「(3)溶融製膜」において、特開平11−235747号公報の実施例1に記載のタッチロール(二重抑えロールと記載のあるもの)を用い(但し薄肉金属外筒厚みは3mmとした)、タッチロール製膜を実施した(タッチロール製膜を実施したこと以外は全て実施例1と同様にして実施)。タッチロール製膜により微細凹凸、液晶表示装置でのぼけ幅が改良された。
セルロースアシレートフィルムを3次元表面構造解析顕微鏡(Zygo社製New View5022)を用いて下記条件で測定した。
対物レンズ:2.5倍
イメージズーム:1倍
測定視野:幅方向(TD)2.8mm、長手方向(MD)2.1mm
この中で0.1μm〜100μmの高さの山(凸部)、0.1μm〜100μmの深さの谷(凹部)の本数を数えた。ただし、凸部、凹部はいずれもMD方向に連続して1mm以上つながっているものを指す。この凸部、凹部の本数を測定幅(2.8mm)で割った後100倍し、10cm当りの凸部、凹部の数とした。上記測定を、製膜したサンプルフィルム全幅にわたって等間隔で30点測定して平均化することにより、幅10cm当りの凸部と凹部の数を求めた。
(1)セルロースアシレートDの合成
セルロース(広葉樹パルプ)10質量部に酢酸0.1質量部、プロピオン酸2.7質量部を噴霧した後、1時間室温で保存した。別途、無水酢酸1.2質量部、プロピオン酸無水物61質量部、硫酸0.7質量部の混合物を調製し、−10℃に冷却後に、前記前処理を行ったセルロースと反応容器内で混合した。
30分経過後、外設温度を30℃まで上昇させ、4時間反応させた。反応容器に25%含水酢酸46質量部を添加し、内温を60℃に上昇させて、2時間攪拌した。酢酸マグネシウム4水和物と酢酸と水とを等質量ずつ混合した溶液を6.2質量部添加し、30分間攪拌した。反応液を順番に保留粒子径40μm、10μm、5μmの金属焼結フィルターにて加圧濾過して異物を除去した。75%含水酢酸に濾過後の反応液を混合してセルロースアセテートプロピオネートを沈殿させた後、70℃の温水にて、洗浄液のpHが6〜7になるまで洗浄を行った。さらに、0.001%水酸化カルシウム水溶液中で0.5時間攪拌する処理を行った後に濾過した。得られたセルロースアセテートプロピオネートは、70℃で乾燥させた。1H−NMRの測定から得られたセルロースアセテートプロピオネートはアセチル基の置換度0.15、プロピオニル基の置換度2.55、重量平均分子量135000、数平均分子量52000であった。
このセルロースエステルDを105℃で5時間乾燥し、含水率を0.07質量%にした後に、セルロースエステル固形分に対して、一次平均粒子サイズ20nmのシリカ微粒子を0.007質量%、紫外線吸収剤としてUV剤a{2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン}を0.4質量%、UV剤b{2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール}を0.4質量%、およびUV剤c{2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール}を0.4質量%、可塑剤a{ビフェニルジフェニルフォスフェート}を2質量%、可塑剤b{トリメチロールプロパントリベンゾエート}を2質量%、可塑剤c{エチルフリルエチルグリコレート}を2質量%、安定剤として、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトを0.1質量%、2,2'−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−[(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]〕を0.1質量%、およびビス[(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネートを0.1質量%、離型剤としてトリデカフルオロエチルメタクリレート/ポリ(平均重合度5)オキシエチレンメタクリレート/ブチルアクリレート=30/20/50(モル比、分子量9000)を0.1質量%添加、さらに染料として1,4−ビス(2,4,6−トリプロピルシクロヘキシルスルホンアミドフェニル)アンスラキノンを0.00005質量%添加した。
これを(Tm−10℃)になるように調整したホッパーに投入し、溶融温度230℃で、圧縮比3.5のフルフライトスクリューを用い、L(スクリュー長)/D(スクリュー径)=30で混練溶融した。さらに、押し出し機出口にてブレーカープレート式の濾過を行った後、ギアポンプ通過後に4μmのステンレス製リーフ型ディスクフィルター型濾過装置を通した後、Tダイから押し出し特開平11−235747号公報の実施例1に記載のタッチロールを用いてタッチ圧0.3MPaで製膜した。これをキャスティングロールから剥ぎ取り巻き取った。なお、巻き取り直前に両端(全幅の各3%)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ50μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた後、1.5m幅で3000mをロール状に巻き取った。このフィルムの有機溶媒含有量(ガスクロマトグラフィー法による)は0.01質量%以下であった。
保護フィルムAとして、基材がPETフィルム(25μm厚)で粘着剤層がアクリル粘着剤(20μm厚)であるPET保護テープ(品番:S−362,藤森工業社製)を使用した。上記で作製したセルロースエステルフィルムの片面(キャスティングロール面側)に、保護フィルムAをゴムロールと金属ロールの組み合わせによるニップロールを用いて、セルロースエステルフィルムのキャスティングロール面側と、保護フィルムAをY字状に寄せてきて、ニップロールに両者が各々一部沿った状態ではさみ、接合させることによりラミネートし、積層体フィルムを得た。積層体の幅方向と長手方向の厚みのばらつきを測定したところ、それぞれ3.0μm、0.8μmであった。なお、本工程はダウンフロータイプのクリーンエアー下で、クラス1000以下の環境条件で実施した。
また、傾斜幅は20.1nm、限界波長は386.1nm、吸収端は377.1nm、380nmの吸収は1.5%であり、軸ズレ(分子配向軸)は0.18°、弾性率は長手方向が3.00GPa,幅方向が2.91GPa、抗張力は長手方向が120MPa、幅方向が110MPa、伸長率は長手方向が55%,幅方向が60%であり、アルカリ加水分解性はAであり、カール値は相対湿度25%で−0.11,ウェット(相対湿度10%以下)では1.3であった。また、含水率は2.1質量%であり、熱収縮率は長手方向が−0.09%であり幅方向が−0.05%であった。異物はリントが5個/m未満であった。輝点は、0.02mm以下が2個/3m未満、0.02〜0.05mmが1個/3m未満、0.05mm以上はなかった。
これらは、光学用途に対しては優れた特性を有するものであった。また、塗布後の接着性はAであり、透湿度も良好(610g/m2・日)であった。残留溶剤は検出されなかった。
セルローアシレートDの代わりにプロピオニル基の置換度1.5、アセチル基の置換度1.0、重量平均分子量150000、数平均分子量56000のセルロースアシレートEを用いる他は、実施例12と同様にフィルムを作成し評価を行ったところ、いずれも良好な結果を得た。
セルローアシレートDの代わりにプロピオニル基の置換度0.8、アセチル基の置換度1.8、重量平均分子量160000のセルロースアシレートFを用いる他は、実施例12と同様にフィルムを作成し評価を行ったところ、いずれも良好な結果を得た。
セルローアシレートDの代わりにプロピオニル基の置換度0.8、アセチル基の置換度1.8、重量平均分子量160000のセルロースアシレートFを用い、可塑剤を添加しない以外は、実施例12と同様にフィルムを作成し評価を行ったところ、いずれも良好な結果を得た。
セルロースアシレートDの代わりにプロピオニル基の置換度0.8、アセチル基の置換度1.8、重量平均分子量160000のセルロースアシレートFを用い、実施例12の可塑剤に代えてトリメチロールプロパントリベンゾエートをセルロースアシレートEに対し10質量%用いる他は、実施例12と同様にフィルムを作成し評価を行ったところ、いずれも良好な結果を得た。
2 キャスティングドラム
3 押出し機
4 ダイリップ
5 タッチロール
Claims (16)
- 下記式(S−1)〜(S−3)を満たし、残留溶剤量が0.01質量%以下であるセルロースエステルフィルムの少なくとも片面に、保護フィルムが接触して積層されているセルロースエステルフィルム積層体であって、
前記保護フィルムが、樹脂基材と粘着剤層からなり、該樹脂基材がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリスチレン、ポリアクリロニトリルおよびポリメタクリレートからなる群より選択される少なくとも一種を含有し、該粘着剤層がアクリル系ポリマーおよびエチレン−酢酸ビニル系共重合体からなる群より選択される少なくとも一種を含有し、
該セルロースエステルフィルム積層体から前記保護フィルムをはがして得られるセルロースエステルフィルムを直交する2枚の偏光板で挟み込んで目視で観察してもスジ状の光漏れが観察されないセルロースエステルフィルム積層体。
式(S−1) 2.5≦A+B≦3.0
式(S−2) 0≦A≦2.2
式(S−3) 0.8≦B≦3.0
(式中、Aはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に対する炭素数3〜22のアシル基の置換度を表す。) - 前記セルロースエステル中のセルロースの水酸基に対して置換している炭素数3〜22のアシル基が、プロピオニル基およびブチリル基の少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
- 前記セルロースエステルフィルムが、微粒子、紫外線吸収剤、可塑剤および安定剤からなる群より選択される少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
- 前記セルロースエステルフィルムが、タッチロールを用いて溶融製膜されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
- 前記セルロースエステルフィルムの正面レターデーション(Re)が0〜300nmであり、且つ、厚さ方向のレターデーション(Rth)が−300〜700nmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
- 下記式(S−1)〜(S−3)を満たすセルロースエステルを180〜230℃で溶融してダイから押し出すことによりセルロースエステルフィルムを製膜する工程と、該セルロースエステルフィルムの少なくとも片面に保護フィルムを接触させて積層する工程を有し、
前記保護フィルムが、樹脂基材と粘着剤層からなり、該樹脂基材がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリスチレン、ポリアクリロニトリルおよびポリメタクリレートからなる群より選択される少なくとも一種を含有し、該粘着剤層がアクリル系ポリマーおよびエチレン−酢酸ビニル系共重合体からなる群より選択される少なくとも一種を含有することを特徴とするセルロースエステルフィルム積層体の製造方法。
式(S−1) 2.5≦A+B≦3.0
式(S−2) 0≦A≦2.2
式(S−3) 0.8≦B≦3.0
(式中、Aはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に対する炭素数3〜22のアシル基の置換度を表す。) - タッチロールを用いて溶融製膜することを特徴とする請求項6に記載のセルロースエステルフィルム積層体の製造方法。
- 前記セルロースエステルフィルムの少なくとも片面を鹸化する工程をさらに有することを特徴とする請求項6または7に記載のセルロースエステルフィルム積層体の製造方法。
- 前記鹸化する工程の後に前記保護フィルムを積層する工程を行なうことを特徴とする請求項8に記載のセルロースエステルフィルム積層体の製造方法。
- 前記鹸化した面上に前記保護フィルムを積層することを特徴とする請求項9に記載のセルロースエステルフィルム積層体の製造方法。
- 前記鹸化する工程の前に前記保護フィルムを積層する工程を行なうことを特徴とする請求項8に記載のセルロースエステルフィルム積層体の製造方法。
- 請求項6〜11のいずれか一項に記載の製造方法により製造されたセルロースエステルフィルム積層体。
- 偏光膜に請求項1〜5または12のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム積層体から得られたセルロースエステルフィルムを用いたことを特徴とする偏光板。
- 請求項1〜5または12のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム積層体から得られたセルロースエステルフィルムを用いたことを特徴とする光学補償フィルム。
- 請求項1〜5または12のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム積層体から得られたセルロースエステルフィルムを用いたことを特徴とする反射防止フィルム。
- 請求項13に記載の偏光板、請求項14に記載の光学補償フィルム、および、請求項15に記載の反射防止フィルムからなる群より選択される少なくとも一つを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
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