JP5053583B2 - セルロースエステルフィルム積層体およびその製造方法、偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルム、並びに液晶表示装置 - Google Patents

セルロースエステルフィルム積層体およびその製造方法、偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルム、並びに液晶表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、セルロースエステルフィルムに保護フィルムを積層した積層体とその製造方法に関する。また本発明は、該セルロースエステルフィルム積層体を用いて作製される偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルムおよび液晶表示装置にも関係する。
従来から、液晶表示装置に使用されるセルローストリアセテートフィルムを製造する際に、ジクロロメタンのような塩素系有機溶剤にセルローストリアセテートを溶解し、これを基材上に流延、乾燥して製膜する溶液流延法が主に実施されている。塩素系有機溶剤の中でもジクロロメタンは、セルローストリアセテートの良溶媒であるとともに、沸点が低く(約40℃)、製膜工程や乾燥工程において乾燥させ易いという利点を有することから、好ましく使用されている。しかしながら、近年では環境保全の観点から、塩素系有機溶媒を始めとする有機溶媒の排出を抑えることが強く求められるようになっている。このため、より厳密なクローズドシステムを採用して系から有機溶媒が漏れ出さないように努めたり、製膜工程から有機溶媒が漏れても外気に出す前にガス吸収塔を通して有機溶媒を吸着させたり、火力により燃焼させたり、電子線ビームにより分解させたりするなどの処理を行って、殆ど有機溶媒を排出することがないように対策が講じられている。しかしながら、これらの対策を行っても完全な非排出には至らないため、さらなる改良が必要とされていた。
そこで、有機溶剤を用いない製膜法として、セルロースエステルを溶融製膜する方法が開発された(例えば、特許文献1および2参照)。これらの方法は、セルローストリアセテートのアセチル基の炭素鎖を長くすることで融点を下げ、溶融製膜しやすくしたものである。具体的には、従来から用いられていたセルロースアセテートを、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレート等に変えることで溶融製膜を可能にしている。溶融製膜で得られたセルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレート等を、視野角補償フィルムとして用いられているセルローストリアセテートフィルムの代わりに用いれば、湿度変化による視野特性が変動しにくくなるという効果が得られる。
特表平6−501040号公報 特開2000−352620号公報
しかしながら、これらの特許文献の実施例に記載される方法などにしたがって溶融製膜した場合、得られるセルロースエステルフィルムに着色や面状不良が見られたり、またフィルムの巻き取り時や加工時に傷が発生して光学上の欠陥を生じたりすることがあり、その管理には注意が必要であった。
これらの従来技術の課題に鑑みて、本発明は、面状が良好で傷がないセルロースエステルフィルムを供給することができるセルロースエステルフィルム積層体を提供することを目的とする。また本発明は、そのようなセルロースエステルフィルム積層体を簡便に製造する方法を提供することを目的とする。さらに本発明は、加工時のハンドリング性良く、光学特性が優れた偏光板、光学補償フィルムおよび反射防止フィルムを提供することを目的とする。また本発明は、表示画面での異物故障や経時での視認性の変化を改善した液晶表示装置を提供することも目的とする。
これらの目的は、以下の構成を有する本発明により達成された。
[1] 下記式(S−1)〜(S−3)を満たし、残留溶剤量が0.01質量%以下であるセルロースエステルフィルムの少なくとも片面に、保護フィルムが積層されていることを特徴とするセルロースエステルフィルム積層体。
式(S−1) 2.5≦A+B≦3.0
式(S−2) 0≦A≦2.2
式(S−3) 0.8≦B≦3.0
(式中、Aはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に対する炭素数3〜22のアシル基の置換度を表す。)
[2] 前記セルロースエステル中のセルロースの水酸基に対して置換している炭素数3〜22のアシル基が、プロピオニル基およびブチリル基の少なくとも一種であることを特徴とする[1]に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
[3] 前記セルロースエステルフィルムが、微粒子、紫外線吸収剤、可塑剤および安定剤からなる群より選択される少なくとも一種を含有することを特徴とする[1]または[2]に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
[4] セルロースエステルフィルムが、タッチロールを用いて溶融製膜されたことを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のセルロースエステルフィルム積層体。
[5] 前記保護フィルムが、樹脂基材と粘着剤層からなり、前記樹脂基材がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレートおよびポリイミド、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリレートからなる群より選択される少なくとも一種を含有し、前記粘着剤層がアクリル系ポリマーおよびエチレン−酢酸ビニル系共重合体からなる群より選択される少なくとも一種を含有することを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
[6] 前記セルロースエステルフィルムの正面レターデーション(Re)が0〜300nmであり、且つ、厚さ方向のレターデーション(Rth)が−300〜700nmであることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
[7] 下記式(S−1)〜(S−3)を満たすセルロースエステルを180〜230℃で溶融してダイから押し出すことによりセルロースエステルフィルムを製膜する工程と、該セルロースエステルフィルムの少なくとも片面に保護フィルムを積層する工程を有することを特徴とするセルロースエステルフィルム積層体の製造方法。
式(S−1) 2.5≦A+B≦3.0
式(S−2) 0≦A≦2.2
式(S−3) 0.8≦B≦3.0
(式中、Aはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に対する炭素数3〜22のアシル基の置換度を表す。)
[8] タッチロールを用いて溶融製膜することを特徴とする[7]に記載のセルロースエステルフィルム積層体の製造方法。
[9] 前記セルロースエステルフィルムの少なくとも片面を鹸化する工程をさらに有することを特徴とする[7]または[8]に記載のセルロースエステルフィルム積層体の製造方法。
[10] 前記鹸化する工程の後に前記保護フィルムを積層する工程を行なうことを特徴とする[9]に記載のセルロースエステルフィルム積層体の製造方法。
[11] 前記鹸化した面上に前記保護フィルムを積層することを特徴とする[10]に記載のセルロースエステルフィルム積層体の製造方法。
[12] 前記鹸化する工程の前に前記保護フィルムを積層する工程を行なうことを特徴とする[9]に記載のセルロースエステルフィルム積層体の製造方法。
[13] [8]〜[12]のいずれか一項に記載の製造方法により製造されたセルロースエステルフィルム積層体。
[14] 偏光膜に[1]〜[6]または[13]のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム積層体から得られたセルロースエステルフィルムを用いたことを特徴とする偏光板。
[15] [1]〜[6]または[13]のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム積層体から得られたセルロースエステルフィルムを用いたことを特徴とする光学補償フィルム。
[16] [1]〜[6]または[13]のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム積層体から得られたセルロースエステルフィルムを用いたことを特徴とする反射防止フィルム。
[17] [14]に記載の偏光板、[15]に記載の光学補償フィルム、および、[16]に記載の反射防止フィルムからなる群より選択される少なくとも一つを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
本発明のセルロースエステルフィルム積層体は、保護フィルムを剥離することにより、面状が良好で傷がないセルロースエステルフィルムを容易に供給することができる。また、本発明の製造方法によれば、加工工程におけるフィルム面への傷付きなどを大幅に抑えて、上記の特徴を有するセルロースエステルフィルム積層体を簡便に提供することができる。さらに、本発明の偏光板、光学補償フィルムおよび反射防止フィルムは光学特性に優れており、本発明の液晶表示装置は表示画面での異物故障や経時での視認性の変化が抑えられている。
以下において、本発明のセルロースエステルフィルム積層体とその製造方法などについて詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
[セルロースエステル]
本発明で用いられるセルロースエステルは下記式(S−1)〜(S−3)を満足するものである。
式(S−1) 2.5≦A+B≦3.0
式(S−2) 0≦A≦2.2
式(S−3) 0.8≦B≦3.0
(式中、Aはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に対する炭素数3〜22のアシル基の置換度を表す。)
セルロースを構成する、ベータ(β)−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースエステルは、これらの水酸基の一部または全部をエステル化した重合体(ポリマー)である。置換度は、2位、3位および6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1)の合計を意味する。したがって、2位、3位および6位の水酸基がすべて置換されている場合の置換度は3になる。本発明において、A+Bはより好ましくは2.60≦A+B≦3.0であり、さらに好ましくは2.7≦A+B≦3.0である。また、Aは、好ましくは0≦A≦1.8であり、Bは1.0≦B≦3.0が好ましく、さらには1.2≦B≦3.0が好ましい。本発明においては、セルロースの2位、3位および6位の水酸基の置換度は特に限定されないが、セルロースエステルの6位の置換度が好ましくは0.7以上であり、さらに好ましくは0.8以上であり、特に好ましくは0.85以上であり、特に0.90以上が好ましい。これによりセルロースエステルの溶解性、耐熱性を向上させることができる。6位の水酸基の置換度が大きいセルロースエステルの合成については、特開平11−5851号、特開2002−212338号、特開2002−338601号の各公報などに記載がある。
次に本発明で用いられるセルロースエステルの置換基Bで表される炭素数3〜22のアシル基は、脂肪族アシル基でも芳香族アシル基でもいずれであってもよい。本発明で用いられるセルロースエステルのアシル基が脂肪族アシル基である場合、炭素数は3〜18であることが好ましく、炭素数は3〜12であることがさらに好ましく、炭素数は3〜8であることが特に好ましい。これらの脂肪族アシル基の例としては、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、あるいはアルキニルカルボニル基などを挙げることができる。アシル基が芳香族アシル基である場合、炭素数は6〜22であることが好ましく、炭素数は6〜18であることがさらに好ましく、炭素数は6〜12であることが特に好ましい。これらのアシル基は、それぞれさらに置換基を有していてもよい。
置換基Bで表される好ましいアシル基の例としては、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、イソブチリル基、ピバロイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフタレンカルボニル基、フタロイル基、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、さらに好ましいものは、プロピオニル基、ブチリル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、ピバロイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などであり、特に好ましいものはプロピオニル基、ブチリル基である。
本発明で用いられるセルロースエステルのエステルを構成するアシル基は、好ましくは炭素原子数が6以下の脂肪族アシル基であり、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基およびヘキサノイル基からなる群より選択されるアシル基が好ましい。より好ましいのは、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基およびペンタノイル基からなる群より選択されるアシル基であり、さらに好ましいのはアセチル基、プロピオニル基およびブチリル基からなる群より選択されるアシル基である。本発明で用いられるセルロースエステルのエステルを構成するアシル基は、単一種であってもよいし、複数種であってもよい。
セルロースエステルの原料綿や合成方法については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)7〜12頁に記載されている。セルロース原料としては、広葉樹パルプ、針葉樹パルプ、綿花リンター由来のものが好ましく用いられる。セルロース原料としては、α−セルロース含量が92質量%〜99.9質量%の高純度のものを用いることが好ましい。セルロース原料がシート状や塊状である場合は、あらかじめ解砕しておくことが好ましく、セルロースの形態は微細粉末から羽毛状になるまで解砕が進行していることが好ましい。本発明におけるセルロースエステルは、その含水率が2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以下であることが特に好ましい。
本発明で好ましく用いられるセルロースエステルの平均重合度は100〜700であり、より好ましくは120〜550であり、さらに好ましくは120〜400であり、特に好ましくは平均重合度130〜350である。
本発明では、セルロースエステルを1種類のみ用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。また、本発明におけるセルロースエステルは、セルロースエステル以外の高分子成分を適宜混合したものでもよい。混合される高分子成分はセルロースエステルと相溶性に優れるものが好ましく、フィルムにしたときの透過率が80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは92%以上であることが好ましい。
本発明で用いられるセルロースエステルは、質量平均分子量Mw/数平均分子量Mn比が1.5〜7.0のものが好ましく用いられ、特に好ましくは1.5〜6.0であり、さらに好ましくは2.0〜5.5であり、さらに好ましくは2.5〜5.5である。セルロースエステルはペレット化することが好ましく、好ましいペレットの大きさは1mm3〜10cm3であり、より好ましくは5mm3〜5cm3、さらに好ましくは10mm3〜3cm3である。乾燥して得られたセルロースエステルは、保存時の環境による影響を受けにくくするために、低温暗所で保存することが望ましい。さらに、保管用としてアルミニウムなどの防湿素材で作製された防湿袋や、SUS製ドラムあるいはコンテナに入れて保存することがさらに好ましい。
[添加剤]
次に本発明で用いられるセルロースエステルフィルムに含有させることができる好ましい添加剤について記載する。本発明においては、例えば微粒子、紫外線吸収剤、可塑剤、(光)安定剤、染料など各種の添加剤を用いることができる。以下に、代表的な添加剤について記載する。
(1)紫外線吸収剤
本発明においては、紫外線劣化防止のためにセルロースエステルフィルムに少なくとも一種の紫外線吸収剤を添加することが好ましい。紫外線吸収剤を添加することにより、波長360nmでの光線透過率が10%以下とすることが好ましく、8%以下とすることがより好ましく、5%以下とすることが特に好ましい。
本発明では、これらの紫外線吸収剤として市販品を使用してもよい。市販品として、ベンゾトリアゾール系としてはTINUBIN P(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)、TINUBIN234(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)、TINUBIN 320(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)、TINUBIN 326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)、TINUBIN 327(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)、TINUBIN 328(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)、スミソーブ340(住友化学)などが挙げられる。また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、シーソーブ100(シプロ化成)、シーソーブ101(シプロ化成)、シーソーブ101S(シプロ化成)、シーソーブ102(シプロ化成)、シーソーブ103(シプロ化成)、アデカスタイプLA-51(旭電化)、ケミソープ111(ケミプロ化成)、UVINUL D-49(BASF)などが挙げられる。 オキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤としては、TINUBIN 312(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)やTINUBIN 315(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)がある。またサリチル酸系紫外線吸収剤としては、シーソーブ201(シプロ化成)やシーソーブ202(シプロ化成)が上市されており、シアノアクリレート系紫外線吸収剤としてはシーソーブ501(シプロ化成)、UVINUL N-539(BASF)がある。高分子紫外線吸収剤としては、特開2004−148542号の[0035]〜[0064]に記載の紫外線吸収剤が挙げられる。紫外線吸収剤は、セルロースエステル100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲で使用することが好ましく、0.01〜5質量部の範囲で使用することがより好ましく、0.2〜3質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。
本発明では、紫外線吸収剤と共に光安定剤を併用することがさらに好ましい場合がある。紫外線吸収剤と一緒に、ヒンダードアミン系光安定剤、ヒドロキシベンゾエート系光安定剤剤などを好ましく用いることができる。また、ニッケル系消光剤系安定剤を併用することも好ましい。光安定剤は、セルロースエステル100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲で使用することが好ましく、0.01〜5質量部の範囲で使用することがより好ましく、0.2〜3質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。
(2)可塑剤
セルロースエステルに可塑剤を添加することにより、セルロースエステルの結晶融解温度(Tm)を下げることができる。本発明に用いる可塑剤の分子量は特に限定されるものではなく、低分量でもよく高分子量でもよい。可塑剤の種類は、リン酸エステル類、アルキルフタリルアルキルグリコレート類、カルボン酸エステル類、多価アルコールの脂肪酸エステル類などが挙げられる。それらの可塑剤の形状としては固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。溶融製膜を行なう場合は、不揮発性を有するものを特に好ましく使用することができる。可塑剤は、セルロースエステル100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、0.5〜13質量部の範囲で使用することがより好ましく、3〜12質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。
(3)安定剤
本発明においては、要求される性能を損なわない範囲内で、必要に応じて熱劣化防止用、着色防止用の安定剤として、ホスファイト系化合物、亜リン酸エステル化合物、フォスフェイト、チオフォスフェイト、弱有機酸、エポキシ化合物等を単独または2種類以上混合して添加してもよい。ホスファイト系安定剤の具体例としては、特開2004−182979号公報の段落[0023]〜[0039]に記載の化合物をより好ましく用いることができる。亜リン酸エステル系安定剤の具体例としては、特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物を用いることができる。
また、本発明で用いるセルロースエステルには、劣化防止剤および酸化防止剤を添加することも好ましい。フェノール系化合物、チオエーテル系化合物、リン系化合物などは劣化防止剤もしくは酸化防止剤として添加することにより、劣化および酸化防止に相乗効果が現れる。さらに、その他の安定剤としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)17頁〜22頁に詳細に記載されている素材を好ましく用いることができる。これらの各種添加剤は、セルロースエステル100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲で使用することが好ましく、0.01〜5質量部の範囲で使用することがより好ましく、0.05〜3質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。
(4)光学調整剤
また本発明で用いるセルロースエステルには、光学調整剤を添加することもできる。例えば、光学異方性をコントロールするためのレターデーションコントロール剤が、場合により添加される。セルロースエステルフィルムのレターデーションを調整するため、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物をレターデーションコントロール剤として使用することが好ましい。芳香族化合物は、セルロースエステル100質量部に対して、0.01〜20質量部の範囲で使用することが好ましい。芳香族化合物は、セルロースエステル100質量部に対して、0.05〜15質量部の範囲で使用することがより好ましく、0.1〜10質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。本発明では、2種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
(5)フッ素原子を有する重合体−離型剤
本発明におけるセルロースエステルは、フッ素原子を有する重合体を含むくことが好ましい。フッ素原子を有する重合体は、離型剤としての作用を発現できる。フッ素原子を有する重合体としては、例えば、特開2001−269564号公報に記載の重合体を挙げることができる。フッ素原子を有する重合体として好ましいものは、フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体を必須成分として含有してなる単量体を重合せしめた重合体である。その添加量は、セルロースエステル100質量部に対して、0.01〜5質量部の範囲で使用することが好ましく、0.01〜3質量部の範囲で使用することがより好ましく、0.05〜2質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。
(6)染料
また、本発明においては、フィルムの黄色みを抑えフィルムの酸化を防止するために青色染料を添加することが好ましい。これらの染料も、可塑剤と同様の効果を有する添加剤である。好ましい染料としてはアンスラキノン系染料が挙げられる。アンスラキノン系染料は、アンスラキノンの1位から8位迄の位置に任意の置換基を有することができる。好ましい置換基としては、置換されても良いアニリノ基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基が挙げられる。その添加量は、セルロースエステル100質量部に対して、0.000005〜1質量部の範囲であることが好ましく、0.00005〜1.5質量部の範囲であることがより好ましく、0.00002〜0.5質量部の範囲であることがさらに好ましい。
以下にアンスラキノン系染料の具体例を挙げるが、本発明で用いることができるアンスラキノン系染料はこれらに限定されるものではない。すなわち、1,4−ジフェニルアミノアンスラキノン、1,4−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)アンスラキノン、1,4−ビス(2,4−ジエチル−4−メチルフェニル)アンスラキノン、1,4−ビス(2,6−ジメチル−4−シクロヘキシルスルホンアミドフェニル)アンスラキノン、1−メトキシフェニルアミノ−4−ヒドロキシ−5−メトキシフェニルアミノ−8−ヒドロキシアンスラキノン、1,4−ビス(2,4,6−トリプロピルシクロヘキシルスルホンアミドフェニル)アンスラキノン、1−エトキシフェニルアミノ−4−ヒドロキシ−5−メトキシフェニルアミノ−8−ヒドロキシアンスラキノン、1,4−ビス(2,4,6−トリメトキシフェニルアミノ)アンスラキノン、1,4−ビス(2,4,6−トリエチルフェニル)アンスラキノン、1,4−ビス(2,4−ジイソプロポキシ−6−メチルフェニル)アンスラキノン、1,4−ビス(2,6−ジクロロ−4−シクロヘキシルスルホンアミドフェニル)アンスラキノン、1−(2,4,6−トリメトキシフェニルアミノ)−4−ヒドロキシ−5−(2,4,6−トリメトキシフェニルアミノ)−8−ヒドロキシアンスラキノン、1,4−ビス(2,4,6−トリプロピルシクロヘキシルスルホンアミドフェニル)アンスラキノン、1,5−ビス(メトキシフェニルアミノ)−4,8−ジヒドロキシアンスラキノンなどを挙げることができる。
[溶融製膜工程]
本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基体であるセルロースエステルフィルムは、溶融製膜法によって製造することが好ましい。一般に、溶融製膜法は、セルロースエステルを予め所定の温度に予熱し、添加物などを混合する混練・押し出し工程、キャスト工程、延伸工程、緩和工程、冷却工程、巻き取り工程、加工工程を通じて、所望のセルロースエステルフィルムを得るものである。溶融製膜条件の最適化について、以下に詳細に記述する。
(ペレット化)
本発明では、セルロースエステルと添加物は溶融製膜に先立ちペレット化するのが好ましい。ペレット化を行なうにあたりセルロースエステルは事前に乾燥しておくことが好ましい。またペレット化を行なう時に、上記添加物を押出機の途中にある原料投入口やベント口から投入することもできる。ペレット化における押出滞留時間は10秒〜60分、より好ましくは15秒〜30分である。十分に溶融ができれば、滞留時間は短い方が、樹脂劣化、黄色み発生を抑えることができる点で好ましい。
(溶融製膜)
(1)乾燥
本発明では、上述の方法でペレット化したものを用いるのが好ましく、溶融製膜に先立ちペレット中の含水率を好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは、0.01%以下にした後、溶融押出し機のホッパーに投入する。このときホッパーを好ましくは20℃〜110℃、より好ましくは40℃〜100℃、さらに好ましくは50℃〜90℃にする。この際、ホッパーは除湿風エアー等で一定風量・温度であることが好ましいが、目的とする含水率が得られるのであればこの限りでは無い。また、ホッパー内を真空密閉構造とし、窒素等の不活性ガスを封入することがより好ましい。
(2)溶融押出し
上述したセルロースエステルは押出機の供給口を介してシリンダー内に供給される。シリンダー内は供給口側から順に、供給口から供給したセルロースエステルを定量輸送する供給部とセルロースエステルを溶融混練・圧縮する圧縮部と溶融混練・圧縮されたセルロースエステルを計量する計量部とで構成される。また、押出機内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出し機を用いて真空排気しながら実施するのがより好ましい。押出機のスクリュー圧縮比は2.5〜4.5に設定され、L/Dは20〜70に設定されていることが好ましい。
本発明の製造方法では、押出温度は180℃〜230℃であり、好ましくは190℃〜230℃、さらに好ましくは195℃〜230℃の範囲である。この時の温度は、押し出し機の最下流部の温度を示すものである。押し出し機の種類として、一般的には設備コストの比較的安い単軸押し出し機が用いられることが多く、フルフライト、マドック、ダルメージ等のスクリュータイプがあるが、熱安定性の比較的悪いセルロースエステル樹脂には、フルフライトタイプが好ましい。二軸押し出し機には大きく分類して同方向と異方向のタイプがありどちらも用いることが可能であるが、同方向回転のタイプが好ましい。
(3)キャスト
上記方法にて、ダイよりシート上に押し出された溶融樹脂をキャスティングドラム上で冷却固化し、フィルムを得る。この時、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法、タッチロール法等の方法を用い、キャスティングドラムと溶融押出ししたシートの密着を上げることが好ましい。このような密着向上法は、溶融押出しシートの全面に実施してもよく、一部に実施しても良い。特にエッジピニングと呼ばれる、フィルムの両端部にのみを密着させる方法が取られることも多いが、これに限定される物ではない。キャスティングドラムは複数本用い、徐冷する法がより好ましい、特に一般的には3本の冷却ロールを用いることが比較的よく行われているが、この限りではない。ロールの直径は50mm〜5000mmが好ましく、より好ましくは100mm〜2000mm、さらに好ましくは150mm〜1000mmである。複数本あるロールの間隔は、面間で0.3mm〜300mmが好ましく、より好ましくは、1mm〜100mm、さらに好ましくは3mm〜30mmである。キャスティングドラムの温度は、60℃〜160℃が好ましく、より好ましくは70℃〜150℃、さらに好ましくは80℃〜140℃である。この後、キャスティングドラムから剥ぎ取り、ニップロールを経た後に巻き取る。巻き取り速度は10m/分〜100m/分が好ましく、より好ましくは15m/分〜80m/分、さらに好ましくは20m/分〜70m/分である。製膜幅は好ましくは0.7m〜5m、さらに好ましくは1m〜4m、さらに好ましくは1.3m〜3mである。また、いわゆるタッチロール法を用いる場合、タッチロール表面は、ゴム、テフロン(登録商標)等の樹脂でもよく、金属ロールでも良い。さらに、金属ロールの厚みを薄くすることでタッチしたときの圧力によりロール表面が若干くぼみ、圧着面積が広くなりフレキシブルロールと呼ばれる様なロールを用いることも可能である。
さらに、以下にタッチロール製膜について詳細に記載する。本発明では、前述したように溶融後ダイから押出した後、キャスティングドラム上でタッチロールを用いて製膜することがより好ましい。この方法はダイから出たメルトをキャスティングドラムとタッチロールで挟み込んで冷却固化するものである。これを用いることで、上述のフィルムに形成された微細凹凸を平滑にすることができ液晶表示装置でのボケを軽減できる。
このようなタッチロールは、ダイから出たメルトをロール間で挟む時に生じる残留歪を低減するために、弾性を有するものが好ましい。ロールに弾性を付与するためには、ロールの外筒厚みを通常のロールよりも薄くすることが必要であり、外筒の肉厚Zは、0.05mm〜7.0mmが好ましく、より好ましくは0.2mm〜5.0mmである。さらに好ましくは0.3mm〜2.0mmである。例えば、外筒厚みを薄くすることにより、弾性を付与したタイプや、金属シャフトの上に弾性体層を設け、その上に外筒を被せ、弾性体層と外筒の間に液状媒体層を満たすことにより極薄の外筒によりタッチロール製膜を可能にしたものが挙げられる。キャスティングロール、タッチロールは、表面が鏡面であることが好ましく、算術平均高さRaが100nm以下、好ましくは50nm以下、さらに好ましくは25nm以下である。具体的には例えば特開平11−314263号、特開2002−36332号、特開平11−235747号、特開2004−216717号、特開2003−145609号各公報や国際公開第97/28950号パンフレットに記載のものを利用できる。
このようにタッチロールは薄い外筒の内側を流体が満たされているため、キャスティングロールと接触させるとその押圧で凹状に弾性変形する。従って、タッチロールとキャスティングロールは冷却ロールと面接触するため押圧が分散され、低い面圧を達成できる。このためこの間に挟まれたフィルムに残留歪を残すことなく、表面の微細凹凸を矯正できる。好ましいタッチロールの線圧は3kg/cm〜100kg/cm、より好ましくは5kg/cm〜80kg/cm、さらに好ましくは7kg/cm〜60kg/cmである。ここで云う線圧とはタッチロールに加える力をダイの吐出口の幅で割った値である。線圧が3kg/cm以上であればタッチロールの押し付けによる微細凹凸低減効果が得られやすい。一方、100kg/cm以下であれば、タッチロールの歪みが起きにくく、キャスティングロール全域にわたって均一にタッチして全幅にわたって微細凹凸を軽減しやすい。タッチロールは60℃〜160℃、より好ましくは70℃〜150℃、さらに好ましくは80℃〜140℃に設定するのが好ましい。このような温度制御はこれらのロール内部に温調した液体、気体を通すことで達成できる。
[延伸工程]
溶融製膜工程においてフィルム化されたセルロースエステルフィルムは、そのまま連続した延伸工程に、あるいは一度ロール状に巻き込んでしかる後に延伸されることも好ましい。延伸は行なわなくてもよい。延伸はTg〜(Tg+50℃)で実施するのが好ましく、より好ましくは(Tg+1℃)〜(Tg+30℃)、さらに好ましくは(Tg+2℃)〜(Tg+20℃)である。好ましい延伸倍率は少なくとも1方向に−10%〜50%延伸することが好ましい。延伸倍率は−5%〜50%がより好ましく、さらに好ましくは−3%〜45%、特に好ましくは0%〜40%である。これらの延伸は1段で実施しても、多段で実施してもよい。ここでいう延伸倍率は、以下の式を用いて求めたものである。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ
このような延伸は出口側の周速を速くした2対以上のニップロールを用いて、長手方向に延伸してもよく(縦延伸)、フィルムの両端をチャックで把持しこれを直交方向(長手方向および直角方向)に広げてもよい(横延伸)。また、延伸後に緩和してもよい。
[巻き取り]
このようにして得たシートは両端をトリミングし、巻き取ることが好ましい。トリミングされた部分は、粉砕処理された後、あるいは必要に応じて造粒処理や解重合・再重合等の処理を行った後、同じ品種のフィルム用原料としてまたは異なる品種のフィルム用原料として再利用してもよい。トリミングカッターはロータリーカッター、シャー刃、ナイフ等いずれのタイプの物を用いても構わない。
材質についても、炭素鋼、ステンレス鋼いずれを用いても構わない。一般的には、超硬刃、セラミック刃を用いると刃物の寿命が長く、また切り粉の発生が抑えられて好ましい。なお、トリミング後に両端にナーリング(厚みだし)加工を付与してもよいが、必ずしも必要としない。このようにして得られたセルロースエステルフィルムの厚みは、20μm〜400μmが好ましく、さらに好ましくは40μm〜200μm、特に好ましくは50μm〜150μmである。本発明では、得られたセルロースエステルフィルムの厚みが200μmを超える場合には、さらに延伸することで、本発明の好ましい膜厚にすることができる。
[表面処理]
本発明で用いられるセルロースエステルフィルムは表面処理してもよい。表面処理を行なうことによって、例えばセルロースエステルフィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着性の向上を図ることができる。表面処理としては、例えば、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torr(約0.13〜2666Pa)の低圧ガス下でおこる、いわゆる低温プラズマのことも示すが、大気圧下でのグロー放電処理でもよい。
[鹸化工程]
本発明で用いられるセルロースエステルフィルムは鹸化処理されていてもよい。本発明で用いられるセルロースエステルフィルムは、鹸化処理する前あるいは後に、電子線などの表面処理を実施してもよい。例えば、グロー放電処理(大気圧あるいは真空系)、紫外線照射処理、コロナ処理を用いることができる。セルロースエステルを偏光膜の保護膜として使用する場合は、アルカリ水溶液で鹸化処理し、ポリビニルアルコールを接着剤として塗布して偏光膜を貼り合わせることが一般に行われている。この時、鹸化済みのセルロースエステルは、容易にフィルム面同士が接着してしまうため、ロール状に巻き取って保管することが困難であった。そのために、偏光板を作製する工程の中に、鹸化処理工程を組み込むことがこれまでは一般的であり、偏光板を製造する上で生産性の制約を受けていた。本発明によれば、このような生産性の制約を受けずに、鹸化処理工程をセルロースエステルフィルム積層体の製造工程の中に組み込むことができる。このため、本発明によれば、偏光板製造時には、あらかじめ鹸化処理されているセルロースエステルを用いて、迅速かつ簡便に偏光板を製造することが可能になる。
(アルカリ鹸化溶液)
次に、アルカリ鹸化処理工程について記述する。アルカリ鹸化処理工程には、アルカリ鹸化水溶液を用いる。アルカリ鹸化水溶液のアルカリ剤は、無機アルカリ剤および有機アルカリ剤のいずれも使用でき、アルカリ鹸化特性を有するものであれば特に限定されるものではない。無機強アルカリ剤としては、アルカリ金属の水酸化物(例えば、NaOH、KOH、LiOH)、2属金属の水酸化物、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウムが好ましい。
また有機アルカリ剤としては、水酸化アンモニウム、アミン(例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエタノールアミン、エチレンイミン、トリエチルアミン)、および錯塩の遊離塩基(例えば、[Pt(NH36](OH)4)が好ま
しい。これらの中でも、低い濃度で鹸化反応をおこすためにアルカリ金属の水酸化物であるNaOH、KOH、LiOHがさらに好ましく、特にNaOH、KOHが好ましい。これらのアルカリ剤は単独もしくは二種以上を組み合わせて併用することもできる。
アルカリ鹸化水溶液のアルカリ剤の濃度は、使用するアルカリ剤の種類、反応温度および反応時間に応じて決定される。短い時間で鹸化反応を完了するためには、高い濃度に溶液を調製することが好ましい。ただし、アルカリ濃度が高すぎるとアルカリ鹸化水溶液の安定性が損なわれ、長時間塗布において固形分として液中あるいは気液界面に析出する場合もある。アルカリ鹸化水溶液の濃度は0.21〜5mol/Lであることが好ましく、0.5〜5mol/Lであることがさらに好ましく、0.5〜3mol/Lであることが最も好ましい。
(界面活性剤)
アルカリ鹸化水溶液に場合により用いられる界面活性剤は、アルカリ鹸化水溶液の表面張力を下げて塗布を容易にしたり、ハジキ故障を防止することができる他、濃縮されたアルカリ剤やフィルムとアルカリ剤との反応生成物をアルカリ鹸化水溶液中に安定に存在させ、後の水洗工程においても析出、固体化を防ぐことができる。界面活性剤の濃度は、0.005〜15質量%が好ましく、0.02〜1質量%がさらに好ましい。
本発明におけるアルカリ鹸化方法に好ましく用いられる界面活性剤については、アルカリ鹸化液に溶解または分散可能なものであれば特に制限はない。非イオン性界面活性剤(ノニオン界面活性剤、フッ素系界面活性剤)、イオン性界面活性剤(アニオン、カチオン、両性界面活性剤)等のいずれをも好適に用いることができる。界面活性剤の中でも、ノニオン界面活性剤とアニオン界面活性剤が溶解性と鹸化性能の観点から好ましく用いられる。これらの界面活性剤は、1種類を単独で添加してもよく、異なるイオン性界面活性剤同士や非イオン性界面活性剤同士を1種類以上組み合わせてもよく、また、イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤とを組み合わせて添加してもよい。
以下、本発明に使用しうる界面活性剤について順次説明する。
(アニオン界面活性剤)
アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、α−オレフィンスルホン酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が好適に挙げられる。
(カチオン界面活性剤)
カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩類、テトラブチルアンモニウムブロミド等の第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体等が挙げられる。
(両性界面活性剤)
両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン類、アルキルアミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミダゾリン類等が挙げられる。
(ノニオン性界面活性剤)
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸(12)、特開2004−203964号公報に記載の部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド等が挙げられる。
これらの具体例を示すと、例えば、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド、ポリオキシエチレンオレイン酸アミド、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレンエチレンアビエチルエーテル、ポリオキシエチレンノニンエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレングリセリルモノオレート、ポリオキシエチレングリセリルモノステアレート、ポリオキシエチレンプロピレングリコールモノステアレート、オキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー、ジスチレン化フェノールポリエチレンオキシド付加物、トリベンジルフェノールポリエチレンオキシド付加物、オクチルフェノールポリオキシエチレンポリオキシプロピレン付加物、グリセロールモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等が挙げられる。これらのノニオン性界面活性剤の質量平均分子量は、300〜50,000が好ましく、500〜5,000がより特に好ましい。
(4)フッ素系界面活性剤
フッ素系界面活性剤は、分子内にパーフルオロアルキル基を含有する界面活性剤を指す。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型、パーフルオロアルキルベタイン等の両性型、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基および親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基および親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基含有ウレタン等の非イオン型が挙げられる。
以上の界面活性剤のうち、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等のポリオキシアルキレンに読み替えることもでき、それらもまた前記界面活性剤に包含される。前記界面活性剤は、一種単独で使用してもよいし、併用により効果を損なわない限りにおいては、2種以上を併用してもよい。
また、アルカリ鹸化水溶液中の塩化物塩化物イオン(好ましくは塩素イオン)およびカルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの多価金属イオンを各々1000mg/L以下とすることにより、濃縮したアルカリ剤や脂肪酸塩やフィルム添加物質などの抽出物質をフィルム表面に析出させないことが可能になる。アルカリ鹸化水溶液の主溶媒は水であるが、用いる水は純水が好ましい。純水中のカルシウム濃度は、0.001〜100mg/Lであることが好ましく、0.001〜50mg/Lであることがさらに好ましく、0.001〜10mg/Lであることが特に好ましい。マグネシウム濃度は、0.001〜50mg/Lであることが好ましく、0.001〜30mg/Lであることがさらに好ましく、0.001〜10mg/Lであることが特に好ましい。
カルシウムやマグネシウム以外の多価の金属イオン、例えばBe,Sr,Ba,Al,Sn,Pb,Ti,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Ni、Cu(II),Co,Znも含まれないことが好ましい。多価金属イオンの濃度は0.002〜150mg/Lであることが好ましい。一方、アルカリ鹸化溶液に塩化物イオンや炭酸イオンなどのアニオンも含まないことが好ましい。塩化物イオン濃度は0.001〜100mg/Lであることが好ましく、0.001〜50mg/Lであることがさらに好ましく、0.001〜10mg/Lであることが特に好ましい。また、炭酸イオンも含まれないことが好ましい。炭酸イオン濃度は0.001〜500mg/Lであることが好ましく、0.001〜100mg/Lであることがさらに好ましく、0.001〜20mg/Lであることが特に好ましい。以上の各イオン種とも濃度が低いほど好ましく、下限の0.001mg/Lとは、測定限界以下であることを意味している。これらの濃度範囲において、溶液中の不溶解物の生成が抑えられる。これらの濃度範囲において、溶液中の不溶解物の生成が抑えられる。
本発明で用いられるアルカリ鹸化水溶液の表面張力は15〜65mN/mであることが好ましい。より好ましくは15〜60mN/mであり、特に好ましくは15〜50mN/mである。本発明で用いられるアルカリ鹸化水溶液の粘度は0.6〜20mPa・sであることが好ましく、より好ましくは1〜15mPa・sである。且つ、アルカリ鹸化水溶液の表面張力は前述した通りとすることが好ましく、この範囲において、フィルム表面への濡れ性、フィルム表面に塗布した溶液の保持性、鹸化処理後のフィルム表面からのアルカリ液の除去性が充分に行われ、安定した塗布操作が実現できる。
また、アルカリ鹸化水溶液の密度は、0.9〜1.4g/cm3であることが好ましく、0.95〜1.3g/cm3であることがより好ましく、1.0〜1.2g/cm3であることが特に好ましい。アルカリ鹸化水溶液の密度が低すぎると、搬送による風圧による風ムラが生じ、処理の均一性が損なわれることがある。また、アルカリ鹸化水溶液の密度が高すぎると、自重により搬送方向に平行な塗布スジが発生し、これもまた処理の均一性が損なわれ、配向膜の厚みムラの原因となることがある。さらに、アルカリ鹸化方法のアルカリ鹸化水溶液の比導電率は後述する洗浄工程での負荷を最小限にするために20mS/cm〜2S/cmであることが好ましく、50mS/cm〜1.5S/cmであることがより好ましく、100mS/cm〜1S/cmであることが特に好ましい。比導電率を2S/cm以下とすることにより、輝点故障(異物欠陥)の原因となる塩が発生しにくくなり、光学補償層の密着不良が生じにくくなる。
また、アルカリ鹸化水溶液の液特性として、測定波長400nmにおける液の吸光度は2.0未満であることが好ましい。吸光度の高い液を用いると液中に溶け出したセルロースエステルフィルムとの反応生成物やフィルム添加剤がセルロースエステルフィルム上に付着して輝点故障(異物欠陥)の発生原因となる。アルカリ鹸化水溶液の吸光度の制御には活性炭を用い、溶出成分を吸着、除去する方法が利用できる。活性炭は、鹸化溶液中の着色成分を除去する機能を有すれば良よく、その形態、材質等に制限はない。採用する方法は、活性炭を直接アルカリ鹸化水溶液槽に入れる方法であっても、鹸化水溶液槽と活性炭を充填した浄化装置間に鹸化水溶液を循環させる方法であっても構わない。
鹸化反応に必要なアルカリ塗布量は、セルロースエステルフィルムの単位面積当たりの鹸化反応サイト数に配向膜との密着を発現させるために必要な鹸化深さを乗じた総鹸化サイト数(=理論アルカリ塗布量)が目安となる。鹸化反応の進行にともなってアルカリが消費され反応速度が低下するため、実際には上述の理論アルカリ塗布量の数倍を塗布することが好ましい。具体的には、理論アルカリ塗布量の2〜20倍であることが好ましく、2〜5倍であることがさらに好ましい。
(消泡剤)
アルカリ鹸化水溶液およびアルカリ希釈液には消泡剤を添加してもよい。その添加剤は、アルカリ鹸化水溶液中には、好ましくは0.0051〜15質量%、特により好ましくは0.005〜3質量%の濃度で含有させることができる。一方、アルカリ希釈液中には、好ましくは0.001〜2質量%、特に好ましくは0.005〜0.5質量%の濃度で含有させることができる。この範囲であれば、フィルム表面への微小な気泡の付着が無くなり、アルカリ処理による鹸化がムラ無く均一に進行する。
消泡剤としては、ヒマシ油、亜麻仁油等の油脂系、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸系、天然ワックス等の脂肪酸エステル系、ポリオキシアルキレンモノハイドリックアルコール等のアルコール系、ジ−tert−アミルフェノキシエタノール、ヘプチルセロソルブ、ノニルセロソルブ、3−ヘプチルカルビトール等のエーテル系、トリブチルフォスフェート、トリス(ブトキシエチル)フォスフェート等の燐酸エステル系、ジアミルアミン等のアミン系、ポリアルキレンアミド、アシレートポリアミド等のアミド系、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸カリウム、羊毛オレイン酸のカルシウム塩等の金属石鹸系、ラウリル硫酸エステルナトリウム等の硫酸エステル系、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチル水素ポリシロキサン、フロロポリシロキサン、ジメチルポリシロキサンとポリアルキレンオキサイドとの共重合体等のシリコーンオイル、およびその溶液型、エマルジョン型、ペースト型シリコーンオイル等のシリコーン系の消泡剤が挙げられる。
本発明で用いられるアルカリ鹸化水溶液には、アルカリ鹸化水溶液への界面活性剤、消泡剤の溶解助剤として、上記した有機溶剤以外の有機溶媒を添加することができる。好ましくは水への溶解度を持つ溶媒であれば特に制限はない。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、エトキシエタノール、ブトキシエタノール、ジエチレンクリコールモノエチルエーテル、エチレンクリコールモノブチルエーテル、ベンジルアルコール、フッ化アルコール(例えば、Cn2n+1(CH2kOH(nは3〜8の整数、kは1または2の整
数)、1,1,1,2,2,3,3−ヘプタフロロプロパノール、ヘキサフロロブタンジオール、パーフロロシクロヘキサノール等)等を挙げることができる。これらの有機溶剤の含有量は使用液の総質量に対して0.1〜5質量%が好ましい。
(防黴剤/防菌剤)
本発明で用いられるアルカリ鹸化水溶液には、さらに、防黴剤および/または防菌剤を添加してもよい。本発明において使用される防黴剤および防菌剤は、アルカリ鹸化に悪影響を及ぼさないものであれば何でもよいが、具体的にはチアゾリルベンズイミダゾール系化合物、イソチアゾロン系化合物、クロロフェノール系化合物、ブロモフェノール系化合物、チオシアン酸やイソチアン酸系化合物、酸アジド系化合物、ダイアジンやトリアジン系化合物、チオ尿素系化合物、アルキルグアニジン化合物、4級アンモニウム塩、有機スズや有機亜鉛化合物、シクロヘキシルフェノール系化合物、イミダゾールおよびベンズイミダゾール系化合物、スルファミド系化合物、塩素化イソシアヌル酸ナトリウムなどの活性ハロゲン系化合物、キレート剤、亜硫酸化合物、ペニシリンに代表される抗生物質など種々の防バクテリア剤や防黴剤などがある。
その他L.E.West,""Water Quality Criteria""Phot.Sci.and Eng.,Vol9 No.6(1965)記載の殺菌剤、特開昭57−8542号、同58−105145号、同59−126533号、同55−111942号、同57−157244号各公報記載の各種防黴剤、「防菌防黴の化学」堀口博著・三共出版(昭57)、「防菌防黴技術ハンドブック」日本防菌防黴学会・技報堂(昭61)に記載されているような化合物などを用いることができる。上記した防黴剤および/または防菌剤の添加量は、アルカリ鹸化水溶液中に0.01〜50g/Lであることが好ましく、より好ましくは0.05〜20g/Lである。
本発明で用いられるアルカリ鹸化水溶液には場合により有機溶剤を添加することができる。水への溶解度を持つ溶媒であれば特に制限はない。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、エトキシエタノール、ブトキシエタノール、ジエチレンクリコールモノエチルエーテル、エチレンクリコールモノブチルエーテル、ベンジルアルコール、3−フェニル−1−プロパノール、4−フェニル−1−ブタノール、4−フェニル−2−ブタノール、2−フェニル−1−ブタノール、2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、o−メトキシベンジルアルコール、m−メトキシベンジルアルコール、p−メトキシベンジルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、フッ化アルコール(例えば1,1,1,2,2,3,3−ヘプタフロロプロパノール、ヘキサフロロブタンジオール、パーフロロシクロヘキサノール等)等を挙げることができる。有機溶剤の含有量は使用液の総質量に対して0.1〜5質量%が好ましい。その使用量は界面活性剤の使用量と密接な関係があり、有機溶剤の量が増すにつれ、界面活性剤の量は増加させることが好ましい。これは界面活性剤の量が少なく、有機溶剤の量を多く用いると有機溶剤が完全に溶解せず、従って、良好な鹸化処理の確保が期待できなくなるからである。
本発明で用いられるアルカリ鹸化水溶液は、アルカリ剤との組み合わせにおいてpH緩衝作用があることから、非還元糖から選ばれる少なくとも一つの化合物を含有することが好ましい。かかる非還元糖とは、遊離のアルデヒド基やケトン基を持たず、還元性を示さない糖類であり、還元基同士の結合したトレハロース型少糖類、糖類の還元基と非糖類が結合した配糖体および糖類に水素添加して還元した糖アルコールに分類され、何れも本発明に好適に用いられる。トレハロース型少糖類には、サッカロースやトレハロースがあり、配糖体としては、アルキル配糖体、フェノール配糖体、カラシ油配糖体などが挙げられる。また糖アルコールとしてはD,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズリシットおよびアロズルシットなどが挙げられる。さらに二糖類の水素添加で得られるマルチビットおよびオリゴ糖の水素添加で得られる還元体(還元水あめ)が好適に用いられる。これらの中で本発明に好ましい非還元糖は糖アルコールとサッカロースであり、特にD−ソルビット、サッカロース、還元水あめが適度なpH領域に緩衝作用があることと、低価格であることで好ましい。これらの非還元糖は、単独もしくは二種以上を組み合わせて使用でき、それらの現像液中に占める割合は0.1〜30質量%が好ましく、さらに好ましくは、1〜20質量%である。
(アルカリ鹸化液への他の添加剤)
なお、本発明で用いられるアルカリ鹸化液には、他の添加剤を併用しても良い。例えば、アルカリ液安定化剤(酸化防止剤等)、公知のpH緩衝剤等が挙げられる。なお、本発明においてアルカリ鹸化水溶液の添加剤は、これらに限定されるものではない。アルカリ鹸化水溶液の温度は、反応温度(=セルロースエステルフィルムの温度)に等しいことが望ましい。安定な塗布を行なうためには、水の沸点よりも低い温度であることが必要であり、15℃〜90℃であることが好ましく、15〜80℃であることがさらに好ましく、特には25〜70℃であることが好ましい。
(アルカリ鹸化処理方法)
本発明で用いられるセルロースエステルフィルムの表面処理方法はアルカリ鹸化水溶液を用いてセルロースエステルフィルムの表面が室温以上の温度でアルカリ鹸化水溶液を用いて鹸化処理する工程、そしてアルカリ鹸化水溶液をセルロースエステルフィルムから洗い落とす工程、さらに酸性水溶液でアルカリ性水溶液を中和する工程、および水洗する工程によりアルカリ鹸化処理を実施することが好ましい。アルカリ鹸化水溶液を用いてセルロースエステルフィルムを処理する工程は従来公知のいずれの方法を用いても良く、浸漬方法、吹き付け方法、塗布方法等が挙げられる。
一般的に実施される鹸化処理液浴にセルロースエステルフィルムを浸漬する方法を記述する。処理浴のサイズは特に限定されないが、所定の温度および処理時間が可能となる容器であればよい。処理工程の配置としては、送り出し部−(電子線処理部)−アルカリ鹸化処理槽−水洗槽−酸性中和槽−水洗槽−乾燥工程部−巻き取り部の工程配置が一般的である。各槽の温度は5〜90℃、処理時間5秒〜1200秒でコントロールされれば特に限定されない。鹸化処理浴としては15〜80℃であることがさらに好ましく、25〜70℃であることが特に好ましい。また処理時間は10秒〜600秒であることがさらに好ましく、10〜300秒が特に好ましい。また酸性中和槽としては5〜80℃であることがさらに好ましく、10〜50℃であることが特に好ましい。また処理時間は10秒〜600秒であることがさらに好ましく、10〜300秒が特に好ましい。水洗槽については、5〜80℃であることがさらに好ましく、10〜50℃であることが特に好ましい。また処理時間は10秒〜600秒であることがさらに好ましく、10〜300秒が特に好ましい。
また、乾燥工程の温度は、25〜150℃が好ましく、さらには30〜140℃がより好ましく、特には40〜130℃がさらに好ましい。また、乾燥時間は5〜1500秒が好ましく、さらには20〜1200秒がより好ましく、特には60〜1200秒がさらに好ましい。処理方法は、ロール状で搬送されてもよいし、シート状で処理されてもよい。ロール状セルロースエステルフィルムの場合は、送り出しから乾燥までを一貫してハンドリングしてもよいし、場合により工程のいずれかの時点で切断してさらに一定の長さのロール状態でハンドリングしてもよいし、シート状態として後処理工程をしても良い。搬送速度としては、1〜200m/分が好ましく、より好ましくは3〜150m/分がより好ましく、さらには10〜150m/分がさらに好ましい。
セルロースエステルフィルムにアルカリ鹸化水溶液を塗布する工程では、ダイコーター(エクストルージョンコーター、スライドコーター)、ロールコーター(順転ロールコーター、逆転ロールコーター、グラビアコーター)、ロッドコーター(細い金属線を巻いたロッド)が好ましく利用できる。塗布方式に関しては、各種文献(例えば、Modern Coating and Drying Technology,Edward Cohen and Edgar B. Gutoff, Edits., VCH Publishers , Inc, 1992) に記載されている。アルカリ鹸化水溶液の塗布量は、その後、水洗除去するため廃液処理を考慮して、極力抑制することが望ましく、1〜100ml/m2が好ましく、1〜50ml/m2がより好ましい。少ない塗布量域でも安定に操作できるロッドコーター、グラビアコーター、ブレードコーターが特に好ましい。また、アルカリ鹸化水溶液を塗布し、セルロースエステルフィルムを鹸化処理したのち、アルカリ鹸化水溶液をセルロースエステルフィルムから容易に洗い落とすために、アルカリ鹸化水溶液はセルロースエステルフィルムの下面に塗布することが好ましい。単位時間当たりの水吹き付け量の変動は、搬送されるセルロースエステルフィルムの長手方向および幅方向とも30%未満に制御することが好ましい。また、連続塗布方式を採用することもできる。
塗布型アルカリ鹸化方法を用いるときはアルカリ鹸化水溶液を塗布した後、鹸化反応が終了するまで、電子線処理したセルロースエステルフィルムの温度を室温(20℃)以上に保つことが推奨される。加熱する手段は、セルロースエステルフィルムの片面がアルカリ鹸化水溶液により濡れている状態であることを考慮して選択する。塗布の反対面への熱風の衝突(吹付け)、加熱ロールによる接触伝熱、マイクロ波による誘導加熱、赤外線ヒーターによる輻射熱加熱等が好ましく利用できる。赤外線ヒーターは、非接触、かつ空気の流れを伴わずに加熱できるため、アルカリ鹸化水溶液塗布面への影響を最小にできるため好ましい。赤外線ヒーターは、電気式、ガス式、オイル式あるいはスチーム式の遠赤外セラミックヒーターが利用できる。市販の赤外線ヒーター(例えば(株)ノリタケカンパニーリミテド製)を用いてもよい。熱媒体が、オイルまたはスチームを用いるオイル式またはスチーム式の赤外ヒーターは、有機溶剤が共存する雰囲気における防爆の観点で好ましい。
セルロースエステルフィルムの温度は、アルカリ鹸化水溶液塗布前に加熱した温度と同じでも異なっていてもよい。また、鹸化反応中に温度を連続的、または段階的に変更してもよい。フィルム温度は、好ましくは20℃〜150℃、より好ましくは25℃〜100℃、さらに好ましくは35℃〜80℃である。フィルム温度の検出には、一般に市販されている非接触の赤外線温度計が利用でき、上記温度範囲に制御するために、加熱手段に対してフィードバック制御を行ってもよい。アルカリ鹸化水溶液を塗布して、洗い落とすまでに上記温度範囲に保持する時間は、後述する搬送速度にもよるが、1秒〜5分に保つことが好ましく、2〜100秒間保つことがより好ましく、3〜50秒間保つことが特に好ましい。
セルロースエステルフィルムを搬送しながら各工程処理を実施し、アルカリ鹸化処理を行なうことが好ましいが、セルロースエステルフィルムの搬送速度は、上記アルカリ鹸化水溶液の組成と塗布方式の組み合わせによって決定する。一般に、10〜500m/分が好ましく、20〜300m/分がさらに好ましい。
また、セルロースエステルフィルムを予め室温以上に加熱する工程、またはあるいは、セルロースエステルフィルムにアルカリ鹸化水溶液を塗布する工程の前に、粉塵を除去するため、並びに膜表面の濡れ性をより均一にするために除電処理、除塵処理あるいは、ウェット処理を実施することもできるこれらの方法は一般に知られている方法を用いることができ、除電方法としては、特開昭62−131500号公報に記載の方法、や除塵方法としては特開平2−43157号公報に記載の方法を用いることができる。
セルロースエステルフィルムの温度を室温以上に維持して、鹸化反応を進行させた後、アルカリ鹸化水溶液とセルロースエステルフィルムとの鹸化反応を減速あるいは停止するには、大きく3つの方法がある。一つ目は、塗布されたアルカリ鹸化水溶液を希釈してアルカリ濃度を下げ、反応速度を低下させる方法であり、二つ目は、アルカリ鹸化水溶液が塗布されたセルロースエステルフィルムの温度を下げ、反応速度を低下させる方法であり、三つ目は、酸性の液によって中和する方法である。
塗布されたアルカリ鹸化水溶液を希釈するためには、希釈液を塗布する方法、希釈液を吹き付ける方法、希釈液の入った容器にセルロースエステルフィルムごと浸漬する方法が採用できる。希釈液を塗布する方法と吹き付ける方法がセルロースエステルフィルムを連続搬送しながら実施する上で好ましい方法である。希釈液を塗布する方法は、必要最小限の希釈液量を用いて実施できるために最も好ましい。
希釈液の塗布は、既にアルカリ鹸化水溶液が塗布されたセルロースエステルフィルム上に希釈液を再度適用できる連続塗布可能な方式であることが望ましい。塗布は、ダイコーター(エクストルージョンコーター、スライドコーター)、ロールコーター(順転ロールコーター、逆転ロールコーター、グラビアコーター)、ロッドコーター(細い金属線を巻いたロッド)が好ましく利用できる。塗布方式に関しては、各種文献(例えば、Modern Coa ting and Drying Technology, Edward Cohen and Edgar B. Gutoff, Edits., VCH Publis hers, Inc, 1992)に記載されている。アルカリ鹸化水溶液と希釈液とを速やかに混合してアルカリ濃度を低下させるためには、希釈液が塗布される微小領域(塗布ビードと呼ぶこともある)において、流れが層流であるダイコーターよりも、流れが一様とならないロールコーターやロッドコーターが好ましい。
アルカリ希釈液は、アルカリ濃度を低下させること、フィルム添加物質などの抽出素材をフィルムに付着させないことが目的であるため、アルカリ鹸化水溶液中のアルカリ剤を溶解する溶媒でなければならない。よって、水または水と有機溶剤との混合液を用いることが好ましく、二種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。前述するアルカリ鹸化水溶液に用いた有機溶剤が優位に用いることができる。好ましい溶剤は水である。また、アルカリ希釈液には、フィルム添加物質などの抽出素材をフィルムに付着させないために界面活性剤を含ませることが好ましい。界面活性剤としては特に限定はないが、前述するアルカリ鹸化水溶液に用いる界面活性剤を有利に利用できる。さらに、アルカリ希釈液には、前述する消泡剤を含ませることがフィルム表面への微小な気泡の付着を無くし、アルカリ鹸化水溶液およびアルカリ希釈液の洗浄がムラ無く均一に行なうことができるため、好ましい。
希釈液の塗布量は、アルカリ鹸化水溶液の濃度に応じて決定する。塗布ビードにおける流れが層流であるダイコーターの場合、塗布量は、元のアルカリ濃度を1.5〜10倍に希釈することが好ましく、2〜5倍に希釈することがさらに好ましい。ロールコーターやロッドコーターの場合は、塗布ビード内の流動が一様でないため、アルカリ鹸化水溶液と希釈液との混合が発生し、この混合した液が再塗布される。したがって、この場合は希釈液の塗布量によって希釈率を特定することができないため、希釈液塗布後のアルカリ濃度を測定する必要がある。ロールコーターやロッドコーターにおいても、塗布量は、元のアルカリ濃度を1.5〜10倍に希釈することが好ましく、2〜5倍に希釈することがさら
に好ましい。
アルカリによる鹸化反応を迅速に停止するため、酸を用いることもできる。少ない量で中和するため、強酸を用いることが好ましい。さらに、水洗の容易さを考慮すると、アルカリと中和反応後に生成する塩が水に対する溶解度が高い酸を選定することが好ましい。塩酸、硝酸、リン酸、クロム酸、スルホン酸、メタンスルホン酸が特に好ましい。また、アルカリ鹸化液中の炭酸イオン濃度や塩化物イオン濃度が高い場合には、急激な中和反応により沈殿が生じることあり、その場合にはアルカリ中和液中に緩衝性の弱酸を添加することが好ましい。このような弱酸としてはPergamonPress社発行のIO NISATION CONSTANTS OF ORGANIC ASIDS IN AQUEOUS SOLUTIONに記載のソルビットやサッカロース、グルコース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、フラクトース、リボース、マンノースおよびL−アスコルビン酸などの糖類の他、アルコール類、アルデヒド類、フェノール性水酸基を有する化合物やオキシム類、核酸関連物質などが挙げられる。
塗布されたアルカリ鹸化水溶液を酸で中和するためには、酸性溶液(アルカリ中和液)を塗布する方法、酸性溶液を吹き付ける方法、あるいは酸性溶液の入った容器にセルロースエステルフィルムごと浸漬する方法が採用できる。酸性溶液を塗布する方法と吹き付ける方法がセルロースエステルフィルムを連続搬送しながら実施する上で好ましい。酸性溶液を塗布する方法は、必要最小限の酸性溶液を用いて実施できるために最も好ましい。
アルカリ中和液の塗布は、既にアルカリ鹸化水溶液が塗布されたセルロースエステルフィルム上に酸性溶液を再度適用できる連続塗布可能な方式であることが望ましい。塗布は、ダイコーター(エクストルージョンコーター、スライドコーター)、ロールコーター(順転ロールコーター、逆転ロールコーター、グラビアコーター)、ロッドコーター(細い金属線を巻いたロッド)が好ましく利用できる。塗布方式に関しては、各種文献(例えば、Modern Coating and Drying Technology, Edward Cohen and Edgar B. Gutoff, Edits., VCH Publishers, Inc, 1992)に記載されている。アルカリ鹸化水溶液と中和液とを速やかに混合してアルカリ性を低下させるためには、中和液が塗布される微小領域(塗布ビードと呼ぶこともある)において、流れが層流であるダイコーターよりも、流れが一様とならないロールコーターやロッドコーターが好ましい。
アルカリ中和液の塗布量は、アルカリの種類とアルカリ鹸化水溶液の濃度に応じて決定する。塗布ビードにおける流れが層流であるダイコーターの場合、中和液の塗布量は、元のアルカリ塗布量の0.1〜5倍であることが好ましく、0.5〜2倍であることがさらに好ましい。ロールコーターやロッドコーターの場合は、塗布ビード内の流動が一様でないため、アルカリ鹸化水溶液と中和液との混合が発生し、混合した液が再塗布される。したがって、この場合は中和液の塗布量によって中和率を特定することができないため、中和液塗布後のアルカリ濃度を測定する必要がある。ロールコーターやロッドコーターにおいては、酸性溶液塗布後のpHが4〜9になる様に酸性溶液の塗布量を決定することが好ましく、6〜8になるように決定することがさらに好ましい。
アルカリ中和液は、アルカリ性を低下させること、フィルム添加物質などの抽出素材をフィルムに付着させないことが目的であるため、中和反応で生じる塩アルカリ鹸化水溶液中のアルカリ剤を溶解する溶媒でなければならない。よって、水または水と有機溶剤との混合液を用いることが好ましく、二種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。前述するアルカリ鹸化水溶液に用いた有機溶剤を有意に用いることができる。好ましい溶剤は水である。また、アルカリ中和液には、フィルム添加物質などの抽出素材をフィルムに付着させないために界面活性剤を含ませることが好ましい。界面活性剤としては特に限定はないが、前述するアルカリ鹸化水溶液に用いる界面活性剤を有利に利用できる。さらに、アルカリ中和液には、前述する緩衝剤を含ませることが洗浄効率を高めるために好ましい。
セルロースエステルフィルムの温度を降下させて、鹸化反応を停止することもできる。反応を促進させるために室温以上に保たれた状態から、充分に温度低下させることによって実質的に鹸化反応を停止させる。セルロースエステルフィルムの温度を低下させる手段は、セルロースエステルフィルムの片面が濡れていることを考慮して決定する。塗布の反対面への冷風の衝突、あるいは、冷却ロールによる接触伝熱等が好ましく採用できる。冷却後のフィルム温度は、5℃〜60℃であることが好ましく、10℃〜50℃であることがさらに好ましく、15℃〜30℃であることが最も好ましい。フィルム温度は、非接触式の赤外線温度計で測定することが好ましい。冷却手段に対してフィーッドバック制御を行い、冷却温度を調節することもできる。
(洗浄工程)
洗浄工程は、アルカリ鹸化水溶液、アルカリ希釈液またはアルカリ中和液を除去するために実施する。これらの中のアルカリ剤、酸、塩、フィルム添加物質などの抽出素材が残っていると、鹸化反応が進行したり、後に塗布する配向膜ならびに液晶性分子層の塗膜形成や液晶分子の配向に影響を及ぼす。洗浄は、洗浄水を塗布する方法、洗浄水を吹き付ける方法、あるいまたは、洗浄水の入った容器にセルロースエステルフィルムごと浸漬する方法で実施できる。洗浄水を塗布する方法と吹き付ける方法が、セルロースエステルフィルムを連続搬送しながら実施するために好ましい。洗浄水を吹き付ける方法では、噴流によってセルロースエステルフィルム上の洗浄水とアルカリ性塗布液との乱流混合が得られるために、特に好ましい。
水の吹き付け方法は、塗布ヘッド(例えば、ファウンテンコーター、フロッグマウスコーター)を用いる方法、あるいは、空気の加湿や塗装、タンクの自動洗浄に利用されるスプレーノズルを用いる方法で実施できる。塗布方式に関しては、「コーティングのすべて」荒木正義編集、(株)加工技術研究会(1999年)に記載がある。円錐状あるいは扇状のスプレーノズルをセルロースエステルフィルムの幅方向に配列して、全幅に水流が衝突するように配置することができる。市販のスプレーノズル(例えば、(株)いけうち製、スプレーイングシステムズ社製)を用いてもよい。水の吹き付け速度は、大きい方が高い乱流混合が得られる。ただし、速度が大きすぎると、連続搬送するセルロースエステルフィルムの搬送安定性を損なう場合もある。吹き付けの衝突速度は、50〜1000cm/秒が好ましく、100〜700cm/秒がさらに好ましく、100〜500cm/秒が最も好ましい。
単位時間当たりの水吹き付け量の変動は、搬送されるセルロースエステルフィルムの長手方向および幅方向とも30%未満に制御することが好ましい。ただし、セルロースエステルフィルムの幅方向の両端では、アルカリ鹸化水溶液の塗布量や中和に使用した酸性溶液の塗布量が多いことが少なくない。塗布量が多い部分の洗浄性を確保するために、幅方向両端の水吹き付け量を増やすこともできる。塗布ヘッドを用いる場合は、両端の流量が多くなるように水が吐出するスリットのクリアランスを広く設定する。また、局所的に両端に水膜を供給するために幅が狭いコーターを別途、設置してもよい。幅が狭いコーターは、複数設置することもできる。スプレーノズルを用いる場合も、両端に局所的に水吹き付けるためのノズルを設置することができる。
水洗で一定量の水を用いる場合、一度に全量適用するよりも数回に分割して適用する回分式洗浄方法を採用することが好ましい。すなわち、水の量を幾つかに分けて、セルロースエステルフィルムの搬送方向に順次に設置した複数の水洗手段に供給する。一つの水洗手段と次の水洗手段との間には適当な時間(距離)を設けて、拡散によるアルカリ性塗布液の希釈を進行させる。さらに好ましくは、搬送されるセルロースエステルフィルムに傾斜を設けるなどして、フィルム上の水がフィルム面に沿って流れる様にすれば、拡散に加えて、流動による混合希釈が得られる。最も好ましい方法としては、水洗手段と水洗手段の間にセルロースエステルフィルム上の水膜を除去する水切り手段を設けることで、さらに水洗希釈効率を高められる。具体的な水切り手段としては、ブレードコーターに用いられるブレード、エアナイフコーターに用いられるエアナイフ、ロッドコーターに用いられるロッド、ロールコーターに用いられるロールが挙げられる。順次に配置された水洗手段の数は、多いほうが有利である。ただし、設置スペースならびに設備コストの観点から、通常は好ましくは2〜10段、より好ましくは2〜5段が使用される。水切り手段後の水膜厚みは、薄い方が好ましいが、用いる水切り手段の種類によって最低水膜厚みが制限される。ブレード、ロッド、ロールなど、物理的に固体をセルロースエステルフィルムに接触させる方法においては、例え固体がゴムなどの硬度の低い弾性体であったとしても、フィルム表面にキズを付けたり、弾性体が磨り減ったりするので有限の水膜を潤滑流体として残す必要がある。通常は、好ましくは数μm以上、より好ましくは10μm以上の水膜を潤滑流体として残存させる。
極限まで水膜厚みを減少させられる水切り手段としては、エアナイフが好ましい。充分な風量と風圧を設定することにより、水膜厚みをゼロに近づけることができる。ただし、エアーの吹出し量が大きすぎると、搬送フィルムのばたつきや一方への片寄りなど、セルロースエステルフィルムの搬送安定性に影響を及ぼすことがあるので、好ましい範囲が存在する。セルロースエステルフィルム上の元の水膜厚み、フィルムの搬送速度にもよるが、好ましくは10〜500m/秒、より好ましくは20〜300m/秒、より好ましくは30〜200m/秒の風速を使用する。また、均一に水膜除去を行なうためには、セルロースエステルフィルムの幅方向の風速分布を、通常は10%以内、好ましくは5%以内になるように、エアナイフの吹出し口やエアナイフへの給気方法を調整する。搬送するセルロースエステルフィルム表面とエアナイフ吹出し口の間隙は、狭い方が水切り能は増すが、セルロースエステルフィルムと接触して傷付ける可能性が高くなるため、適当な範囲がある。通常は、好ましくは10μm〜10cm、より好ましくは100μm〜5cm、さらに好ましくは500μm〜1cmの間隙をもって、エアナイフを設置する。さらに、エアナイフと対向するように、セルロースエステルフィルムの水洗面と反対側にバックアップロールを設置することで、間隙の設定が安定するとともに、フィルムのバタツキやシワ、変形などの影響を緩和することができるので好ましい。
洗浄水には、純水を用いることが好ましい。本発明に用いられる純水とは、比電気抵抗が少なくとも0.1MΩ以上であり、特にナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどの金属イオンは1mg/L未満、クロルクロロイオン、硝酸イオンなどのアニオンは0.1mg/L未満であることが好ましい。純水は、逆浸透膜、イオン交換樹脂、蒸留などの単体、またはあるいはそれらの組み合わせによって得ることができる。洗浄水は高温であるほど、洗浄能力は上がる。しかし、搬送されるセルロースエステルフィルム上に水を吹き付ける方法においては、空気と接触する水の面積が大きく、高温ほど蒸発が著しくなるため、周囲の湿度が増し、結露する危険性が高くなる。このため、洗浄水の温度は、好ましくは5〜90℃、より好ましくは20℃〜80℃、さらに好ましくは25℃〜60℃の範囲で設定する。
アルカリ鹸化水溶液の成分、または鹸化反応の生成物が水に容易に溶けない場合、水洗工程の前または後に水に不溶な成分を除去するための溶剤洗浄工程を付加しても良い。溶剤洗浄工程には、上に述べた水洗方法、水切り手段を利用することができる。用いる有機溶剤については、前述のアルカリ鹸化水溶液に使用できる溶剤のほか、新版溶剤ポケットブック(オーム社、1994年刊)に記載の溶剤を使用することができる。
洗浄工程の次に乾燥工程を実施することもできる。通常は、エアナイフなどの水切り手段で充分に水膜を除去できることが多く、乾燥工程は必要でないことあるが、セルロースエステルフィルムをロール状に巻き取る前に、好ましい含水率に調整するために加熱乾燥してもよい。逆に、設定された湿度を有する風で調湿することもできる。乾燥風の温度は30〜200℃が好ましく、40〜150℃がより好ましく、50〜120℃が特に好ましい。電子線処理しアルカリ鹸化処理したセルロースエステルフィルムは、上述したアルカリ鹸化処理工程の後に連続して機能層の塗設を行なうことができる。塗布により片面に鹸化処理を実施し、その上に機能層の塗設を行なうことにより、機能層を設けた後にフィルムをロール状に巻き取っても、機能層面とフィルムの反対面との間で貼りついたりすることを防止することができる。
[保護フィルム]
本発明のセルロースエステルフィルム積層体は、上記のセルロースエステルフィルムの少なくとも片面に保護フィルムを積層した構造を有する。本発明における保護フィルムとは、セルロースエステルフィルムを保護する機能を有するフィルムであり、テープ状であるものも含まれる。本発明における保護フィルムは、必ずしもセルロースエステルフィルムを保護することだけを目的として積層されるフィルムに限定されず、他の機能を併せ持つものであっても構わない。本発明における保護フィルムの構造は特に制限されず、例えば樹脂基材の片面に粘着剤層が設けられた積層フィルム、粘着剤を塗工した樹脂フィルム、片側が粘着剤層になっている共押出フィルムなどが好ましい例として挙げられる。保護フィルムの樹脂基材としては、従来から使用されている光学用保護フィルムを特に制限なく使用することができる。一般的には、透視による光学フィルムの検査性や管理性などの観点から、樹脂基材材料として、例えば、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂のような透明なポリマーを用いることが好ましい。
これらのなかでもポリエステル系樹脂が好ましい。樹脂基材として、1種または2種以上の樹脂のラミネート体を用いることもできるし、また樹脂基材の延伸物を用いることもできる。保護フィルムの基材の厚みは、一般的には、500μm以下、好ましくは10〜200μmである。耐熱性の高い樹脂基材を用いることが好ましく、熱変形温度で100℃以上を示し、かつ強靱であるフィルムを用いることが好ましい。熱変形温度が100℃以上であれば熱乾燥やUV照射などによって高温下にさらされても、保護フィルム基材の変形に起因してセルロースエステルフィルムが変形したり、カールしたりしにくい。好ましい樹脂基材としては、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略す)、ポリエチレン(以下「PE」と略す)、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド等が挙げられる。
保護フィルム基材に付与される粘着剤層を形成する粘着剤の種類は特に限定されず、アクリル系、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、スチレン−エチレン−ブチレン共重合樹脂、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、芳香族石油樹脂、ポリブテン、ポリイソブテン、クマロン−インデン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、アクリルゴム、天然ゴム、シリコーンゴム、合成ゴム等が挙げられ、これらは単独あるいは2つ以上の混合物が用いられる。
保護フィルムは乾燥工程において高温にさらされることがあるので、高温にさらされた後も接着昂進しないような粘着剤を本発明において使用することが好ましい。このような粘着剤の例としては、アクリル系、ゴム系、シリコーン系粘着剤等が挙げられるが、これらに限定されるものでない。透視性、耐候性、耐熱性などの観点からは、エチレン−酢酸ビニル系共重合体(EVA)や、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましく用いられる。アクリル系ポリマーの場合は、質量平均分子量が30万〜250万程度であるものが好ましい。
アクリル系ポリマーを調製するために使用されるモノマーとしては、各種(メタ)アクリル酸アルキルを挙げることができる。例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、イソノニルエステル、イソデシルエステル、ドデシルエステル、ラウリルエステル、トリデシルエステル、ペンタデシルエステル、ヘキサデシルエステル、ヘプタデシルエステル、オクタデシルエステル、ノナデシルエステル、エイコシルエステル等の炭素数1〜20のアルキルエステル)を挙げることができ、これらを単独もしくは組み合わせて使用することができる。
また、得られるアクリル系ポリマーに極性を付与するために前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとともに、(メタ)アクリル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有単量体;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等のヒドロキシル基含有単量体;N−メチロールアクリルアミド等のアミド基含有単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアノ基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有単量体;酢酸ビニル等のビニルエステル類;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体などを共重合モノマーとして用いることができる。なお、アクリル系ポリマーの重合法は特に制限されず、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、UV重合などの公知の重合法を採用することができる。
また前記粘着剤は、架橋剤を含有していてもよい。架橋剤としては、ポリイソシアネート化合物、ポリアミン化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。さらに前記粘着剤には、必要に応じて、粘着付与剤、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線吸収剤、光・熱安定剤、染料、シランカップリング剤等を適宜使用することもできる。例えば、粘着剤層に脂肪酸エステルを添加してもよく、その場合は脂肪酸とアルコールの縮合反応により得られるエステルとして、脂肪酸は炭素数が11以上のものが好ましく、分子内に不飽和結合を持っていてもよく、またイソシアネート基やエポキシ基のような官能基を持っていてもよい。アルコールとしては炭素数1〜18の1価アルコールのほか、エチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールが例示される。脂肪酸エステルの含有量は、粘着剤100質量部に対して0.5〜7質量部が好ましい。0.5質量部以上であれば接着昂進が起こり難く、7質量部以下であれば剥離した後の被着体表面の汚染を抑えやすい。
粘着剤層の形成方法は、特に制限されず、剥離ライナに粘着剤を塗布し、乾燥後、樹脂基材に転写する方法(転写法)、樹脂基材に直接、粘着剤を塗布、乾燥する方法(直写法)等が挙げられる。粘着剤層の厚み(乾燥膜厚)は、必要とされる粘着力に応じて決定される。通常1〜100μm程度、好ましくは5〜50μmである。保護フィルムの樹脂基材の厚みは特に限定されないが、10〜150μmが好ましい。10μm以上であれば、十分な支持能力を持つとともに、剥離時に破れにくくなる。150μm以下であれば、剥ぎ取りが比較的容易で、セルロースエステルフィルムの破断などが起こりにくくなる。保護フィルムの粘着剤層の厚みは特に限定されないが、0.5〜40μmが好ましい。0.5μm以上であれば、積層時にエアーを巻き込みにくく、40μm以下であれば適度な剥離強度を実現しやすい。
本発明においてセルロースエステルフィルムに保護フィルムを積層するには、セルロースエステルフィルムと保護フィルムを空気がまきこまないようにしながら、適度の圧力で接触させて、保護フィルムの有する粘着性により積層することが好ましい。このとき、通常の保護(プロテクト)フィルムを積層する際に用いられる張り合わせ用ニップロール等が用いられる。ゴムロールと金属ロールを組み合わせたニップロール、ゴムロールとゴムロールを組み合わせたニップロール等を用いて、例えばセルロースエステルフィルムと保護フィルムをY字状に寄せてきて、ニップロールに両者が各々一部沿った状態で接合させることにより積層することができる。セルロースエステルフィルムに保護フィルムを積層した積層体の厚みのばらつきは3μm以下であることが好ましい。
積層する際に用いるセルロースエステルフィルムと保護フィルムの幅は一致していてもよいし、異なっていてもよい。本発明におけるセルロースエステルフィルムの幅と保護フィルムの幅の比は、1:0.1〜1.1であることが好ましく、1:1.05〜1.1であることがより好ましく、1:0.8〜1.0であることがさらに好ましい。セルロースエステルフィルムの幅と保護フィルムの幅の比を好ましい範囲に設定することにより、フィルムの貼合性、搬送性の点で有利な効果が得られる。
保護フィルムとセルロースエステルフィルムの積層体から両者を剥離するのに要する剥離力は、2〜35×10-3N/25mm幅であることが好ましい。ここでいう剥離力は、コーティング加工後の剥離力を指す。2×10-3N/25mm幅以上であれば搬送中に剥離しにくく、35×10-3N/25mm幅以下であれば、剥がすときにクラックや破断が生じにくくて剥がしやすい。
[セルロースエステルフィルムの特性]
以下に本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムの特性について記載する。
(残留溶剤量)
本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムの残留溶剤量は0.01質量%以下である。残留溶剤量は0.005質量%以下であることがより好ましく、0.001質量%以下であることがさらに好ましく、検出されないことが特に好ましい。本発明の製造方法にしたがって、溶融製膜法によりセルロースエステルフィルムを製膜すれば、残留溶剤量が0.01質量%以下のフィルムを得ることができる。フィルム中の残留溶剤量については、ガスクロマトグラフィーを用いて測定することができる。
(面状)
本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムは、肉眼でスジ状の光漏れが観察されない。ここでいう「肉眼でスジ状の光漏れが観察されない」とは、セルロースエステルフィルムを直交する2枚の偏光膜で挟み込み、目視で観察される光漏れを観察したときに0.5mm以上の長さを有するスジ状の光漏れが観察されないことをいう。本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムは、0.3mm以上の長さを有するスジ状の光漏れが観察されないものであることがより好ましく、0.2mm以上の長さを有するスジ状の光漏れが観察されないものであることがさらに好ましく、特に好ましくはスジ状の光漏れがまったく観察されないものである。
(厚み)
本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムの膜厚は20〜200μmであることが好ましく、より好ましくは20μm〜160μm、さらに好ましくは30μm〜120μm、特には40〜120μmが好ましい。また製膜方向(長手方向)と、フィルムのReの遅相軸とのなす角度θは0°、+90°もしくは−90°に近いほど好ましい。本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムの厚みムラは、厚み方向、幅方向いずれも0〜5μmが好ましく、より好ましくは0〜3μm、さらに好ましくは0〜2μmである。
(光学特性)
本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムの波長590nmにおける正面レターデーション(Re)は0〜300nmであることが好ましく、かつ厚さ方向のレターデーション(Rth)は−300〜700nmであることが好ましい。さらに好ましくは、正面レターデーション(Re)が0〜250nmで、かつ厚さ方向のレターデーション(Rth)が−200〜500nmである。特に好ましくは正面レターデーション(Re)が0〜250nmで、且つ厚さ方向のレターデーション(Rth)が−150〜300nmである。Reムラは0〜10nmが好ましく、より好ましくは0〜5μm、さらに好ましくは0〜3μmである。Rthムラは0〜10nmが好ましく、より好ましくは0〜5nm、さらに好ましくは0〜2nmである。本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムは、これらの光学特性を有するときに偏光子の保護膜として極めて好ましいものである。
本明細書において、Re、Rthは各々、波長590nmにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。ReはKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において、特に断りがない限り波長590nmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが一軸または二軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRthは算出される。
Rthは前記Reを、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長590nmの光を入射させて全部で11点測定し、その測定されたレタデーション値と平均屈折率および入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
また、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレタデーション値を測定し、その値と平均屈折率および入力された膜厚値を基に、以下の式(b)および式(c)よりRthを算出することもできる。
Figure 0005053583
[式中、Re(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレタ−デーション値をあらわす。また、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnxおよびnyに直交する方向の屈折率を表す。]
式(c): Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
測定されるフィルムが一軸や二軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRthは算出される。
Rthは前記Reを、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長590nmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率および入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
これら平均屈折率と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHまたはWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)がさらに算出される。
また、本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムは、25℃における相対湿度10%の光学特性と80%の光学特性との差が小さいことが好ましい。本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムは、光学遅相軸が流延方向あるいは幅方向に対して平行あるいは直角であることが好ましい。特に延伸処理を施した場合には、流延方向に延伸した場合は0°に近いほど好ましく、具体的には0±3°が好ましく、より好ましくは0±1.5°であり、さらに好ましくは0±0.5°である。幅方向に延伸した場合は、90±3°あるいは−90±3°が好ましく、より好ましくは90±1.5°あるいは−90±1.5°、さらに好ましくは90±0.5°あるいは−90±0.5°である。
本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムは、好ましくは透過率が90%以上であり、さらに好ましくは91%以上であり、特に好ましくは92%以上である。本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムは、ヘイズが0〜1.5%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0〜1.2%であり、さらに好ましくは0〜0.8%であり、特には0.1〜0.5%が好ましい。以上の観点から、本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムは、ヘイズが0.1〜1.2%であり、可視光透過率が91%以上であり、25℃・相対湿度60%環境下で波長590nmにおける面内方向の固有複屈折が0〜0.001であり、厚さ方向の固有複屈折の絶対値が0〜0.003であることが特に好ましい。
[セルロースエステルフィルムの機能化]
本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムは、さまざまな手段により機能化することができる。例えば、特定の機能を有する層(機能層)をさらに形成したりすることができる。特に、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)32頁〜45頁に詳細に記載されている機能層を組み合わせて各光学フィルムを構成することが好ましい。中でも好ましいのが、後述する偏光膜の付与(偏光板)、光学補償層の付与(光学補償シート)、反射防止層の付与(反射防止フィルム)である。これらの機能層の付与などは、本発明のセルロースエステルフィルム積層体を製造する際にすでに行っておいてもよいし、本発明のセルロースエステルフィルム積層体からセルロースエステルフィルムを取り出した後に該フィルムに対して行ってもよい。
機能層を形成するとき等には、界面活性剤が好ましく用いられる。機能層の形成に使用される界面活性剤は、その使用目的によって分散剤、塗布剤、濡れ剤、帯電防止剤などに分類される。本発明では、ノニオン性、イオン性(アニオン、カチオン、ベタイン)のいずれの界面活性剤であっても使用することができる。さらにフッ素系低分子界面活性剤も有機溶媒中での塗布剤や、帯電防止剤として好ましく用いられる。
(1)接着層の付与
本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムには、接着層を形成することができる。接着層は、セルロースエステルフィルムと機能層(紫外線吸収層)を接着すること等を目的として形成する。例えば、セルロースエステルフィルムに一旦何らかの表面処理をした後、あるいは表面処理なしで、接着層(下塗り層)を形成し、さらにこの上に機能層を塗布する方法などがある。前記下塗層の構成には種々の工夫が行われており、例えば、1層の下塗り層を一層で構成する単層法や、支持体であるセルロースエステルフィルムによく接着する下塗第1層を設け、その上に第2層として機能層とよく接着する下塗り第2層を塗布する所謂重層法がある。機能層を接着するためには、必ずしも接着層を形成しなくてもよい。例えば、セルロースエステルフィルム表面を活性化処理をしたのち、直接セルロースエステルフィルム上に機能層を塗布して接着力を得る方法を採用することもできる。
(2)滑り層の付与
本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムには、滑り層を形成することができる。滑り層は特に最外層に形成することが好ましい。滑り層は、滑り剤を添加した層を形成することにより形成することができる。滑り剤は、滑り層以外の層にも含有させることができる。用いられる滑り剤としては、例えば、特公昭53−292号公報に開示されているようなポリオルガノシロキサン;米国特許第4,275,146号明細書に開示されているような高級脂肪酸アミド;特公昭58−33541号公報、英国特許第927、446号明細書あるいは特開昭55−126238号および同58−90633号各公報に開示されているような高級脂肪酸エステル(炭素数10〜24の脂肪酸と炭素数10〜24のアルコールとのエステル);米国特許第3,933,516号明細書に開示されているような高級脂肪酸金属塩;特開昭58−50534号公報に開示されているような、直鎖高級脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル;国際公開第90/108115.8号パンフレットに開示されているような分岐アルキル基を含む高級脂肪酸−高級アルコールエステル等が知られている。
(3)導電性層の付与
本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムには、導電性層を形成してもよく、その場合は少なくとも一種の導電性無機素材、および/または少なくとも一種の有機導電性素材(例えば、イオン性導電性素材)を含有する層である。さらに好ましくは、導電性層は、導電性金属酸化物や導電性ポリマーを含有する層である。なお、導電性層は、蒸着やスパッタリングによる透明導電性膜でもよい。導電性無機素材である好ましい金属酸化物の例としては、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、BaO、MoO2、V25等、あるいはこれらの複合酸化物が好ましく、特にZnO、SnO2、Sb23、V25が好ましい。複合酸化物には、異種原子としてAl、In、Ta、Sb、Nb、Ag、Cl、Br、Iが添加されているのが効果的であり、添加量は0.01mol%〜25mol%の範囲が好ましい。異種原子を含む複合酸化物の好ましい例としては、例えばZnOに対してはAl、In等を添加したもの、SnO2に対してSb、Nb、ハロゲン元素等を添加したもの、TiO2に対してNb、Ta等を添加したものが挙げられる。これら異種原子の添加量は0.01mol%〜30mol%の範囲が好ましいが、0.1mol%〜10mol%であれば特に好ましい。
また、これらの導電性を有する金属酸化物粉体の体積抵抗率は107Ω・cm以下が好ましく、さらに105Ω・cm以下であることが好ましく、特に103Ω・cm以下であることが好ましい。その1次粒子サイズは50Å〜0.2μmであることが好ましく、特には50Å〜0.1μmであることが好ましい。また、凝集体の高次構造の長径が100Å〜6μmである特定の構造を有する粉体(例えば、針状)を導電層に体積分率で0.01%〜80%以下含んでいることが好ましい。この導電性微粒子の添加量は0.001〜5.0g/m2が好ましく、特に0.005〜1g/m2が好ましい。これらの酸化物については特開昭56−143431号、同56−120519号、同58−62647号各公報などに記載されている。さらにまた、特公昭59−6235号公報に記載のごとく、他の結晶性金属酸化物粒子あるいは繊維状物(例えば酸化球状カーボンブラック)に上記の金属酸化物を付着させた導電性素材を使用してもよい。利用できる粒子サイズは10μm以下が好ましいが、特に2μm以下であると分散後の安定性が良く使用し易い。
(4)偏光膜の付与
本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムには、偏光膜を付与して偏光板とすることもできる。
(偏光膜の使用素材)
現在、市販の偏光板に使用される偏光膜(偏光子)は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素を浸透させることで作製されるのが一般的である。偏光膜は、Optiva Inc.に代表される
塗布型偏光膜も利用できる。偏光膜におけるヨウ素および二色性色素は、バインダー中で配向することで偏光性能を発現する。二色性色素としては、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素あるいはアントラキノン系色素が用いられる。二色性色素は、水溶性であることが好ましい。二色性色素は、親水性置換基(例えば、スルホ基、アミノ基、ヒドロキシル基)を有することが好ましい。例えば、発明協会公開技法(公技番号2001−1745号、2001年3月15日発行、発明協会)58頁に記載の化合物が挙げられる。
偏光膜は、厚み35μm以下のものであれば、特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光膜としては、たとえば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分鹸化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光膜が好適である。特にヨウ素染色したポリビニルアルコール系フィルムの染色性が良好で好適である。
厚み30μm以下の偏光膜は、たとえば、厚みが100μm以下のポリビニルアルコール系フィルムを、ヨウ素にて染色、架橋、延伸、乾燥することにより形成することができる。
ポリビニルアルコール系フィルムとしては、ポリビニルアルコール系樹脂を、水または有機溶媒に溶解した原液を流延成膜する流延法、キャスト法、押出法等の任意の方法で成膜されたものを使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、100〜5000が好ましく、1400〜4000がより好ましい。ポリビニルアルコール系フィルムの膜厚は100μm以下であり、好ましくは20〜90μm、さらに好ましくは20〜85μmである。膜厚が100μmを超える場合は、液晶表示装置等に実装した場合に表示パネルの色変化が大きくなる。一方、膜厚が薄すぎる場合は延伸が困難となる。
染色工程においては、ポリビニルアルコール系フィルムを、ヨウ素が添加された20〜70℃の染色浴に1〜20分間浸漬し、ヨウ素を吸着させる。染色浴中のヨウ素濃度は、通常水100質量部あたり0.1〜1質量部である。染色浴中には、染色効率を高めるために、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム ヨウ化錫、ヨウ化チタン等のヨウ化物等の助剤を好ましくは0.02〜20質量部、より好ましくは2〜10質量部添加してもよい。染色浴中には、水溶媒以外に、水と相溶性のある有機溶媒が少量含有されていてもよい。なお、ポリビニルアルコール系フィルムは、ヨウ素または二色性染料含有水溶液中で染色する前に、水浴等にて20〜60℃で0.1〜10分間膨潤処理してもよい。
架橋工程においては、染色処理したポリビニルアルコール系フィルムを、ホウ素化合物含有水溶液中で延伸する。ホウ素化合物含有水溶液は、通常水100質量部に対して、ホウ酸、ホウ砂、グリオキザール、グルタルアルデヒド等のポリビニルアルコールの架橋剤を単独または混合して、1〜10質量部含有する。ホウ素化合物含有水溶液中には、面内の均一な特性を得るために、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化鋼、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等のヨウ化物等の助剤を好ましくは0.05〜15質量%、より好ましくは0.5〜8質量%添加してもよい。ホウ素化合物含有水溶液の温度は通常20〜70℃、好ましくは40〜60℃の範囲である。浸漬時間は、特に限定されないが、通常1秒〜15分間、好ましくは5秒〜10分間である。ホウ素化合物含有水溶液には、水溶媒以外に、水と相溶性のある有機溶媒が少量含有されていてもよい。
乾燥工程においては、ヨウ素吸着配向処理を施したポリビニルアルコール系フィルムを、さらに水温が好ましくは10〜60℃、より好ましくは30〜40℃、濃度が好ましくは0.1〜10質量%のヨウ化カリウム等のヨウ化物水溶液に通常1秒〜1分間浸漬した後、水洗し、通常20〜80℃で1分〜10分間乾燥して偏光フィルムを得る。ヨウ化物水溶液中には、硫酸亜鉛、塩化亜鉛物等の助剤を添加してもよい。
延伸法の場合、延伸倍率は3.0〜20.0倍が好ましく、3.0〜10.0倍がさらに好ましい。延伸は、空気中でのドライ延伸(相対湿度10%以下の環境下にて行なう延伸)で実施できる。また、水に浸漬した状態でのウェット延伸を実施してもよい。ドライ延伸の延伸倍率は3.0〜10.0倍が好ましく、ウェット延伸の延伸倍率は3.0〜7.5倍が好ましい。ウェット延伸の総延伸倍率が3.0倍未満の場合は高偏光度の偏光板を得難く、7.5倍を超える場合はフィルムが破断しやすくなる。なお、ここでいう延伸倍率は、(延伸後の偏光膜の長さ)/(延伸前の偏光膜の長さ)である。延伸方向は長手方向に平行に行ってもよく(平行延伸)、斜め方向におこなってもよい(斜め延伸)。これらの延伸は、延伸方法や延伸回数等は、特に制限されるものではなく、染色,架橋の各工程で行ってもよく、いずれか一工程でのみ行ってもよい。また、同一工程で複数回行なってもよい。
(I)平行延伸法
平行延伸法においては、延伸に先立ち、PVAフィルムを膨潤させるのが好ましい。膨潤度は1.2〜2.0倍(膨潤前と膨潤後の質量比)である。この後、ガイドロール等を介して連続搬送しつつ、水系媒体浴内や二色性物質溶解の染色浴内で、15〜50℃、就中17〜40℃の浴温で延伸するのが好ましい。延伸は2対のニップロールで把持し、後段のニップロールの搬送速度を前段のそれより大きくすることで達成できる。
(II)斜め延伸法
斜め延伸法においては、特開2002−86554号公報に記載の斜め方向に傾斜め方向に張り出したテンターを用い延伸する方法を用いることができる。この延伸は空気中で延伸するため、事前に含水させて延伸しやすくすることが必用である。好ましい含水率は5%〜100%であり、延伸温度は40℃〜90℃が好ましく、延伸中の湿度は、相対湿度で50%〜100%が好ましい。
このようにして得られた偏光膜の吸収軸は10°〜80°が好ましく、より好ましくは30°〜60°であり、さらに好ましくは実質的に45°(40°〜50°)である。
また、保護フィルムと貼り合わせる際の偏光膜の水分率(偏光膜の全体質量に占める偏光膜中の水分質量割合)は、偏光膜の厚さにもよるが、一般に20質量%未満であり、5〜20質量%、特に13〜17質量%の範囲であることが好ましい。水分率が20質量%を超える場合は、偏光板作製後の水分変化量が多くなり、高温高湿環境下における偏光度の低下や耐久性に悪影響を及ぼしている。
(貼り合せ)
本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムと延伸して調製した偏光膜を貼り合わせて偏光板を作製する。張り合わせる方向は特に制限はないが、セルロースエステルフィルムの流延軸方向と偏光板の延伸軸方向が0°、45°、90°のいずれかになるように行なうのが好ましい。貼り合わせの接着剤は特に限定されないが、PVA系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等の変性PVAを含む)やホウ素化合物水溶液等が挙げられ、中でもPVA系樹脂が好ましい。接着剤層厚みは乾燥後に0.01〜10μmが好ましく、0.05〜5μmが特に好ましい。
貼り合せの層構成として以下のようなものが挙げられる。
イ)A/P/A
ロ)A/P/B
ハ)A/P/T
ニ)B/P/B
ホ)B/P/T
なお、「A」は本発明の積層体を構成する未延伸セルロースエステルフィルム、「B」は本発明の積層体を構成する延伸セルロースエステルフィルム、「T」はセルローストリアセテートフィルム(富士写真フイルム(株)製、フジタックTD80U等)、「P」は偏光膜を指す。
前記ロ)の構成の場合A,Bは同一組成のセルロースエステルでも異なっていてもよい。前記イ)の構成の場合、Aは同一組成のセルロースエステルでも異なっていてもよく、同一延伸倍率でも異なっていてもよい。前記ニ)の構成の場合、Bは同一組成のセルロースエステルでも異なっていてもよく、同一延伸倍率でも異なっていてもよい。また本発明の偏光板を液晶表示装置に組み込んで使用する場合は、どちらを液晶面にしてもよいが、構成ロ)、ホ)の場合はBを液晶側にするのがより好ましい。本発明の偏光板を液晶表示装置に組み込む場合、通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、この場合、本発明の偏光板であるイ)〜ホ)および通常の偏光板(T/P/T)を自由に組み合わせることができる。しかし液晶表示装置の表示側最表面のフィルムには透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等を設けることが好ましく、これら各層には後述のものを用いることができる。
(偏光板の特性と応用)
このようにして得られた偏光板の光線透過率は高い方が好ましく、偏光度も高い方が好ましい。本発明の偏光板の透過率は、42.0%以上であることが好ましく、具体的には、42%〜50%あることが好ましく、より好ましくは42.5%〜50%、さらに好ましくは43.0%〜50%、最も好ましくは43.5%〜50%の範囲にある。また、偏光度は、99.0%以上であることが好ましく、具体的には、99%〜100%の範囲にあることが好ましく、より好ましくは99.5%〜100%、さらに好ましくは99.6%〜100%、最も好ましくは99.9%〜100%の範囲にある。さらに、このようにして得た本発明の偏光板はλ/4板と積層し、円偏光を作製することができる。この場合λ/4の遅相軸と偏光板の吸収軸とを45°になるように積層する。この時、λ/4は特に限定されないが、より好ましくは低波長ほどレターデーションが小さくなるような波長依存性を有するものがより好ましい。さらには長手方向に対し20°〜70°傾いた吸収軸を有する偏光膜、および液晶性化合物からなる光学異方性層からなるλ/4板を用いることが好ましい。これらの偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合してもよい。プロテクトフィルムおよびセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。
(5)反射防止フィルムの作成
(反射防止フィルムの構成)
本発明の反射防止フィルムは、本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムの片面上に、少なくとも1層のハードコート層と最外層に位置する低屈折率層を有する。本発明の反射防止フィルムの好ましい積層構成として、透明支持体、ハードコート層、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の順に層を有する構成を挙げることができる。透明支持体、中屈折率層、高屈折率層および低屈折率層の屈折率は、以下の関係を満足する。
低屈折率層の屈折率<透明支持体の屈折率<中屈折率層の屈折率<高屈折率層の屈折率また、ハードコート層と低屈折率層の間に、防眩性ハードコート層を設けてもよい。ハ
ードコート層、光拡散性(内部散乱性)のハードコート層、高屈折率層、低屈折率層の順に層を有する構成も好ましい。
本発明の反射防止フィルムの好ましい積層構成の一例としては、セルロースエステルフィルム支持体、ハードコート層、光拡散性(内部散乱性、防眩性)ハードコート層、そして低屈折率層の順序の層構成を有するものが挙げられる。ハードコート層は光拡散性(内部散乱性、防眩性)ハードコート層1層のみの構成も好ましい。低屈折率層は、最外に位置するように配置する。光拡散性(内部散乱性、防眩性)ハードコート層には、光拡散性(内部散乱性)を付与する粒子などが分散している。本発明において、ハードコート層は、このように光拡散性(内部散乱性)を有するハードコート層と光拡散性(内部散乱性)を有しないハードコート層の組み合わせでもよく、防眩性を有するハードコート層と防眩性を有しないハードコート層の組み合わせでもよく、いずれかのハードコート層1層でもよいし、複数層、例えば2層〜4層で構成されていてもよい。
本発明の反射防止膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。本発明の反射防止フィルムは、ヘイズ値が好ましくは3〜30%、より好ましくは4〜15%の範囲にあり、そして450nm〜650nmの平均反射率が好ましくは1.8%以下、より好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1.2%以下である。上記範囲のヘイズ値および平均反射率であることにより、透過画像の劣化を伴なわずに良好な防眩性および反射防止性が得られる。
(高屈折率層および中屈折率層)
反射防止膜の高い屈折率を有する層は、平均粒子サイズ100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子およびマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化性膜からなる。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。このような超微粒子とするには、粒子表面が表面処理剤で処理されること(例えば、シランカップリング剤等:特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908号公報、アニオン性化合物或いは有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とすること(特開2001−166104号公報等)、特定の分散剤を併用すること(例えば、特開平11−153703号公報、米国特許第6,210,858B1号、特開2002−2776069号公報等)等が挙げられる。
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。さらに、ラジカル重合性および/またはカチオン重合性の重合性基を少なくとも2個以上含有する多官能性化合物含有組成物、加水分解性基を含有する有機金属化合物およびその部分縮合体組成物からなる群より選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。例えば、特開2000−47004号公報、同2001−315242号公報、同2001−31871号公報、同2001−296401号公報等に記載の化合物が挙げられる。また、金属アルコキドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載されている。高屈折率層の屈折率は、−般に1.70〜2.20である。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。
(低屈折率層)
本発明における低屈折率層は、熱または電離放射線により架橋する含フッ素化合物、無機もしくは有機の微粒子、バインダー等から形成することが好ましく、粒子間もしくは粒子内部に空隙を有する層、ゾルゲル法による低屈折率層等も用いることができる。低屈折率層の屈折率は、低ければ反射防止性能が良化するため好ましいが、低屈折率層の強度付与の観点では困難となる。このバランスを考えると、低屈折率層の屈折率は1.30〜1.50であることが好ましく、1.35〜1.49であることがさらに好ましい。また、低屈折率層の屈折率は、高屈折率層より、0.05〜2.0の範囲で低いことが必要である。 低屈折率層に用いられる架橋性のフッ素高分子化合物としてはパーフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラデシル)トリエトキシシラン)等の他、含フッ素モノマーと架橋性基付与のためのモノマーを構成単位とする含フッ素共重合体が挙げられる。
含フッ素ポリマーは、フッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーの重合反応により合成することが好ましい。含フッ素モノマーの具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類、パーフルオロポリエーテルおよびその誘導体等が挙げられる。これらの中から、一つまたは複数のモノマーを任意の比率で組み合わせて、(共)重合により目的の含フッ素ポリマーを得ることができる。また、上記含フッ素モノマーと、フッ素原子を含有しないモノマーとの共重合体を含フッ素ポリマーとして用いてもよい。併用可能なモノマーには特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tert−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロニトリル誘導体等を挙げることができる。好ましいフッ素化合物として、特開平9−222503号公報の段落番号[0018]〜[0026]、同11−38202号公報の段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報の段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報、特開2003−26732号公報の段落番号[0012]〜[0077]、特開2004−45462号公報の段落番号[0030]〜[0047]等に記載の化合物を挙げることができる。また、含フッ素ポリマー中に、滑り性付与のため、ポリオルガノシロキサンを導入することも好ましい。これは、例えば末端にアクリル基、メタクリル基、ビニルエーテル基、スチリル基等を持つポリオルガノシロキサンと上記のモノマーとの重合によって得られる。
架橋性基付与のためのモノマーとしては、グリシジルメタクリレートのように分子内にあらかじめ架橋性官能基を有する(メタ)アクリレートモノマーの他、カルボキシル基やヒドロキシル基、アミノ基、スルホン酸基等を有する(メタ)アクリレートモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート等)が挙げられる。後者は共重合の後、架橋構造を導入できることが特開平10−25388号公報および特開平10−147739号公報で知られている。含フッ素ポリマーとして、市販されている素材を使用することもできる。市販されているフッ素ポリマーの例としては、サイトップ(旭硝子)、テフロンAF(デュポン)、ポリフッ化ビニリデン、ルミフロン(旭硝子)、オプスター(JSR)、等が挙げられる。フッ素素材による低屈折率層は、動摩擦係数が0.03〜0.15、水に対する接触角が90〜120°であることが好ましい。
上記のフッ素素材による低屈折率層中に無機微粒子を用いることは、強度改良の点で好ましい。無機微粒子としては非晶質のものが好ましく用いられ、金属等の酸化物、窒化物、硫化物またはハロゲン化物からなることが好ましく、なかでも酸化物が特に好ましい。これら無機化合物を構成する金属等の原子としては、Na、K、Mg、Ca、Ba、Al、Zn、Fe、Cu、Ti、Sn、In、W、Y、Sb、Mn、Ga、V、Nb、Ta、Ag、Si、B、Bi、Mo、Ce、Cd、Be、PbおよびNiが好ましく、Mg、Ca、BおよびSiがさらに好ましい。二種類の金属等を含む無機化合物を用いてもよい。特に好ましい無機化合物は、二酸化ケイ素、すなわちシリカである。該無機微粒子の平均粒子サイズは、0.001〜0.2μmであることが好ましく、0.005〜0.05μmであることがより好ましい。微粒子の粒子サイズはなるべく均一(単分散あるいは実質上単分散)であることが好ましい。該無機微粒子の添加量は、低屈折率層の全質量の5〜90質量%であることが好ましく、10〜70質量%であるとさらに好ましく、10〜50質量%が特に好ましい。該無機微粒子は表面処理を施して用いることも好ましい。表面処理法としてはプラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理とカップリング剤を使用する化学的表面処理があるが、カップリング剤を使用する化学的表面処理が好ましい。カップリング剤としては、オルガノアルコキシメタル化合物(例えば、チタンカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。該無機微粒子がシリカの場合はシランカップリング処理が特に有効である。
低屈折率層として、無機もしくは有機の微粒子を用い、微粒子間または微粒子内にミクロボイドを形成した層を用いることも好ましい。粒子間のミクロボイドは、微粒子を少なくとも2個以上積み重ねることにより形成することができる。なお、粒子サイズが等しい(完全な単分散の)球状微粒子を最密充填すると、26体積%の空隙率の微粒子間ミクロボイドが形成される。粒子サイズが等しい球状微粒子を単純立方充填すると、48体積%の空隙率の微粒子間ミクロボイドが形成される。実際の低屈折率層では、微粒子の粒子サイズの分布や粒子内ミクロボイドが存在するため、空隙率は上記の理論値からかなり変動する。空隙率を増加させることで、低屈折率層の屈折率を低下させることができる。また、微粒子を積み重ねてミクロボイドを形成するのと、微粒子の粒子サイズを調整することで、粒子間ミクロボイドの大きさも適度の(光を散乱せず、低屈折率層の強度に問題が生じない)値に容易に調節できる。さらに、微粒子の粒子サイズを均一にすることで、粒子間ミクロボイドの大きさも均一である光学的に均一な低屈折率層を得ることができる。これにより、低屈折率層は微視的にはミクロボイド含有多孔質膜であるが、光学的あるいは巨視的には均一な膜にすることができる。粒子間ミクロボイドは、微粒子およびポリマーによって低屈折率層内で閉じていることが好ましい。閉じている空隙には、低屈折率層表面に開かれた開口と比較して、低屈折率層表面での光の散乱が少ないとの利点もある。ミクロボイドを形成することにより、低屈折率層の巨視的屈折率は、低屈折率層を構成する成分の屈折率の和よりも低い値になる。層の屈折率は、層構成要素の体積当りの屈折率の和になる。微粒子やポリマーのような低屈折率層の構成成分の屈折率は1よりも大きな値であるのに対して、空気の屈折率は1.00である。そのため、ミクロボイドを形成することによって、屈折率が非常に低い低屈折率層を得ることができる。
微粒子の平均粒子サイズは、0.5〜200nmであることが好ましく、1〜100nmであることがより好ましく、3〜70nmであることがさらに好ましく、5〜40nmの範囲であることが最も好ましい。微粒子の粒子サイズは、なるべく均一(単分散)であることが好ましい。無機微粒子は、金属等の酸化物、窒化物、硫化物またはハロゲン化物であることが好ましく、なかでも酸化物またはハロゲン化物であることがさらに好ましく、酸化物またはフッ化物であることが最も好ましい。これら無機化合物を構成する金属等の原子としては、Na、K、Mg、Ca、Ba、Al、Zn、Fe、Cu、Ti、Sn、In、W、Y、Sb、Mn、Ga、V、Nb、Ta、Ag、Si、B、Bi、Mo、Ce、Cd、Be、PbおよびNiが好ましく、Mg、Ca、BおよびSiがさらに好ましい。また、無機微粒子は、非晶質であることが好ましい。二種類の金属等を含む無機化合物を用いてもよい。特に好ましい無機化合物は、二酸化ケイ素、すなわちシリカである。
無機微粒子内ミクロボイドは、例えば、粒子を形成するシリカの分子を架橋させることにより形成することができる。シリカの分子を架橋させると体積が縮小し、粒子が多孔質になる。ミクロボイドを有する(多孔質)無機微粒子は、ゾル−ゲル法(特開昭53−112732号、特公昭57−9051号の各公報記載)または析出法(APPLIEDOPTICS、27、3356頁(1988)記載)により、分散物として直接合成することができる。また、乾燥・沈澱法で得られた粉体を、機械的に粉砕して分散物を得ることもできる。市販の多孔質無機微粒子(例えば、二酸化ケイ素ゾル)を用いてもよい。ミクロボイドを有する無機微粒子は、低屈折率層の形成のため、適当な媒体に分散した状態で使用することが好ましい。分散媒としては、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)およびケトン(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)が好ましい。
有機微粒子は、モノマーの重合反応(例えば乳化重合法)により合成されるポリマー微粒子であることが好ましい。この有機微粒子も非晶質であることが好ましい。有機微粒子のポリマーはフッ素原子を含むことが好ましい。ポリマー中のフッ素原子の割合は、35〜80質量%であることが好ましく、45〜75質量%であることがさらに好ましい。また、有機微粒子内に、例えば、粒子を形成するポリマーを架橋させ、体積を縮小させることによりミクロボイドを形成させることも好ましい。粒子を形成するポリマーを架橋させるためには、ポリマーを合成するためのモノマーの20モル%以上を多官能モノマーとすることが好ましい。多官能モノマーの割合は、30〜80モル%であることがさらに好ましく、35〜50モル%であることが最も好ましい。上記有機微粒子の合成に用いられるモノマーで、含フッ素ポリマーを合成するために用いるフッ素原子を含むモノマーの例として、フルオロオレフィン類(例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、アクリル酸またはメタクリル酸のフッ素化アルキルエステル類およびフッ素化ビニルエーテル類が含まれる。
フッ素原子を含むモノマーとフッ素原子を含まないモノマーとのコポリマーを用いてもよい。フッ素原子を含まないモノマーの例には、オレフィン類(例えば、エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン)、アクリル酸エステル類(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル)、スチレン類(例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン)、ビニルエーテル類(例えば、メチルビニルエーテル)、ビニルエステル類(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル)、アクリルアミド類(例えば、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド)、メタクリルアミド類およびアクリルニトリル類が含まれる。多官能モノマーの例には、ジエン類(例えば、ブタジエン、ペンタジエン)、多価アルコールとアクリル酸とのエステル(例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、多価アルコールとメタクリル酸とのエステル(例えば、エチレングリコールジメタクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート)、ジビニル化合物(例えば、ジビニルシクロヘキサン、1,4−ジビニルベンゼン)、ジビニルスルホン、ビスアクリルアミド類(例えば、メチレンビスアクリルアミド)およびビスメタクリルアミド類が含まれる。
ボイドを含有する低屈折率層中に、5〜50質量%の量のポリマーを含むことが好ましい。ポリマーは、微粒子を接着し、空隙を含む低屈折率層の構造を維持する機能を有する。ポリマーの使用量は、空隙を充填することなく低屈折率層の強度を維持できるように調整する。ポリマーの量は、低屈折率層の全量の10〜30質量%であることがより好ましい。
ポリマーと微粒子を接着させることは、低屈折率層の強度付与のために好ましい。その方法としては、
(ア)微粒子の表面処理剤にポリマーを結合させる方法、
(イ)微粒子をコアとして、その周囲にポリマーシェルを形成する方法、および
(ウ)微粒子間のバインダーとして、ポリマーを使用する方法、
を好ましく挙げることができる。
上記(ア)の表面処理剤に結合させるポリマーは、(イ)のシェルポリマーまたは(ウ)のバインダーポリマーであることが好ましい。
上記(イ)のポリマーは、低屈折率層の塗布液の調製前に、微粒子の周囲に重合反応により形成することが好ましい。
上記(ウ)のポリマーは、低屈折率層の塗布液にモノマーを添加し、低屈折率層の塗布と同時または塗布後に、重合反応により形成することが好ましい。(ア)〜(ウ)の内、二種類または三種類を組み合わせて、実施することが好ましく、(ア)と(ウ)の二種類の組み合わせ、または(ア)〜(ウ)の三種類の組み合わせで実施することが特に好ましい。
上記の方法については、特開平11−6902号公報等に詳しく記載されている。
また、低屈折率層の素材として、オルガノシラン等有機金属化合物の加水分解部分縮合物(いわゆるゾルゲル膜)も好ましい。このうちオルガノシシランの加水分解部分縮合物の屈折率が低くかつ膜強度も強く好ましく、より好ましくは光硬化性のオルガノシランの加水分解部分縮合物である。オルガノシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、CF3CH2CH2Si(OCH33、CF3(CF25CH2CH2Si(OCH33、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−トリメトキシシリルプロピルイソシアネート、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられるが、本発明で用いることができるオルガノシランはこれらに限定されるものではない。また異なる2種以上のオルガノシランを混合して用いることも普通に行われ、硬さ、脆性の調節、および官能基導入の目的で適宜調節されることが好ましい。
オルガノシランの加水分解縮合反応は無溶媒でも、溶媒中でも行なうことができる。溶媒としては有機溶媒が好ましく、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどを挙げることができる。加水分解縮合反応は触媒存在下で行われることが好ましい。触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸類、シュウ酸、酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸などの有機酸類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどの無機塩基類、トリエチルアミン、ピリジンなどの有機塩基類、トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム、などの金属アルコキシド類、前記金属アルコキシド類と、アセト酢酸エチル、アセチルアセトンなどとの金属キレート化合物類、などが挙げられる。加水分解縮合反応は、アルコキシ基1モルに対して通常0.3〜2.0モル、好ましくは0.5〜1.0モルの水を添加し、上記溶媒および触媒の存在下、通常25〜100℃で、撹拌することにより行われる。触媒の添加量はアルコキシ基に対して通常0.01〜10モル%、好ましくは0.1〜5モル%である。反応条件はオルガノシランの反応性により適宜調節されることが好ましい。
オルガノシランの加水分解物および/またはその部分縮合物、いわゆるゾルゲル成分(以後このように称する)を光硬化性とする場合は、ゾルゲル成分中に光によって反応促進剤を発生する化合物を含有していることが好ましく、具体的には光酸発生剤あるいは光塩基発生剤が好ましく、いずれもゾルゲル成分の縮合反応を促進することができる。具体的には、光酸発生剤としては、ベンゾイントシレート、トリ(ニトロベンジル)ホスフェート、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩など、光塩基発生剤としては、ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、ジ(メトキシベンジル)ヘキサメチレンジカルバメートなどを挙げることができる。このうち光酸発生剤がより好ましく、具体的にはトリアリールスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、が好ましい。これらの化合物と併用して増感色素も好ましく用いることができる。光によって反応促進剤を発生する化合物の添加量としては、低屈折率層塗布液全固形分に対して0.1〜15%が好ましく、より好ましくは0.5〜5%である。
本発明のゾルゲル成分による低屈折率層には、防汚性および滑り性付与の目的で、前述の含フッ素ポリマーも好ましく併用される。含フッ素ポリマーのうち含フッ素ビニルモノマーを重合して得られるポリマーが好ましく、さらにゾルゲル成分と共有結合可能な官能基を有することが、ゾルゲル成分との相溶性および膜強度の観点で好ましい。低屈折率層の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがさらに好ましく、60〜120nmであることが最も好ましい。
(ハードコート層)
ハードコート層は、反射防止フィルムに物理強度を付与するために、透明支持体(セルロースエステルフィルム)の表面に設ける。特に、透明支持体と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。ハードコート層は、光および/または熱の硬化性化合物の架橋反応、または、重合反応により形成されることが好ましい。硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、又加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したと同様のものが挙げられる。ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、国際公開第00/46617号パンフレット等記載のものが挙げられる。高屈折率層はハードコート層を兼ねることができる。このような場合、高屈折率層で記載した手法を用いて微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。ハードコート層は、平均粒子サイズ0.2〜10μmの粒子を含有させて防眩機能(アンチグレア機能)を付与した防眩層(後述)を兼ねることもできる。ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmである。 ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。又、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ない
ほど好ましい。
(光拡散性または防眩性ハードコート層)
ハードコート層は、防眩性および/または光拡散性(内部散乱性)を付与するための透光性粒子、高屈折率無機超微粒子、およびハードコート性を十分に強力にするためのマトリックスを少なくとも各々1種ずつ含有する。
防眩性または内部散乱性ハードコート層は、マトリックス中に平均粒子サイズ0.3〜10μmの透光性粒子が分散している屈折率不均一層である。防眩性または内部散乱性ハードコート層を形成する上記粒子を除く成分、即ち後述する粒子サイズ100nm以下の高屈折率無機超微粒子が分散したマトリックスの屈折率は、1.57〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.60〜1.80であり、高屈折率である。この値の範囲で、反射防止フィルムとして反射防止性能が充分となり、好ましい。
防眩性または内部散乱性ハードコート層は、上記高屈折率無機超微粒子が分散したマトリックスに分散する粒子サイズ0.3〜10μmの透光性粒子によって、光の内部散乱が生じるために、防眩性ハードコート層での光学干渉の影響が生じない。上記粒子サイズの透光性粒子を有しない高屈折率の防眩性または内部散乱性ハードコート層では、防眩性または内部散乱性ハードコート層と支持体との屈折率差による光学干渉のために、反射率の波長依存性において反射率の大きな振幅が見られ、結果として反射防止効果が悪化し、同時に色ムラが発生する。
前記透光性粒子は、上記したように防眩性や内部散乱性付与と透明支持体或はハードコート層との干渉による反射率悪化防止、色ムラ防止の目的で、平均粒子サイズ0.3〜10μmの透明な粒子が好ましい。より好ましくは1.0〜7.0μm、さらに好ましくは1.5〜4.0の範囲である。
粒子の粒子サイズ分布は狭いほど好ましい。粒子の粒子サイズ分布を示すS値は下記式で表され、2以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.0以下、特に好ましくは0.7以下である。
S=[D(0.9)−D(0.1)]/D(0.5)
D(0.1):体積換算粒子サイズの積算値の10%相当粒子サイズ
D(0.5):体積換算粒子サイズの積算値の50%相当粒子サイズ
D(0.9):体積換算粒子サイズの積算値の90%相当粒子サイズ
透光性粒子の形状は、真球あるいは不定形のいずれも使用できる。また、形状が異なる2種以上の透光性粒子を併用して用いてもよい。また、防眩性または内部散乱性層のマトリックス層厚よりも小さい粒子サイズの透光性粒子が、透光性粒子全体の50%未満であることが好ましい。粒度分布はコールターカウンター法により測定できるが、分布は粒子数分布に換算する。上記透光性粒子は、形成された防眩性ハードコート層中の粒子量が好ましくは10〜1000mg/m2、より好ましくは30〜800mg/m2となるように防眩性または内部散乱性ハードコート層に含有される。
さらに、他の好ましい態様として、粒子サイズの異なる少なくとも2種類以上の透光性粒子を併用する防眩性または内部散乱性ハードコート層が挙げられる。透光性粒子としては、素材種が異なっていても、同一であっても、下記の要件を満たせば、制限を受けるものではない。
透光性粒子としては、無機粒子、有機粒子が挙げられる。無機粒子の具体例としては、二酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化錫、ITO(SnO2をドープ
したIn23)、酸化亜鉛、特定金属含有の酸化チタン(特定金属として、コバルト、アルミニウム、ジルコニウムが挙げられる。)、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウムなどの粒子が挙げられる。これらの中で二酸化珪素、酸化アルミニウムが好ましい。
有機粒子としては樹脂粒子が好ましい。樹脂粒子としては、例えば、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、(メタ)アクリロニトリル系樹脂、(メタ)アクリルアミド系樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂等の粒子などが挙げられる。好ましくは、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、ポリスチレン系樹脂等の架橋樹脂粒子が挙げられる。特に、重合性モノマーおよび架橋剤の乳化重合、ソープフリー重合、懸濁重合、シード重合、二段階膨潤重合、分散重合法等で得られる重合体からなる架橋樹脂微粒子が好適に使用できる。
上記透光性粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子(例えば日本触媒(株)製シーホスタシリーズ、屈折率=1.43)、アルミナ粒子(例えば住友化学工業(株)製スミコランダムシリーズ、屈折率=1.64)、TiO2粒子等の無機化合物の粒子、あるいは
架橋アクリル粒子(例えば綜研化学(株)製MXシリーズ、屈折率=1.49)、架橋スチレン粒子(例えば綜研化学(株)製SXシリーズ、屈折率=1.61)、架橋メラミン粒子、架橋ベンゾグアナミン粒子(例えば日本触媒(株)製エポスターシリーズ、屈折率=1.68)等の樹脂粒子が挙げられる。透光性粒子の形状は、真球あるいは不定形のいずれも使用できるが、表面突起形状が揃う球状粒子が好ましい。
(前方散乱層)
前方散乱層は、液晶表示装置に適用した場合に、上下左右方向に視角を傾斜させたときの視野角改良効果を付与するために設ける。上記ハードコート層中に屈折率の異なる微粒子を分散することで、ハードコート機能と兼ねることもできる。例えば、前方散乱係数を特定化した特開11−38208号公報、透明樹脂と微粒子の相対屈折率を特定範囲とした特開2000−199809号公報、ヘイズ値を40%以上と規定した特開2002−107512号公報等が挙げられる。
(その他の層)
本発明の反射防止フィルムには、さらに、プライマー層、防湿層、下塗り層や保護層、シールド層、滑り層を設けてもよい。シールド層は、電磁波や赤外線を遮蔽するために設けられる。
(塗布方法)
反射防止フィルムの各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート、マイクログラビア法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。
(6)光学補償層の付与(光学補償フィルムの作製)
光学異方性層は、液晶表示装置の黒表示における液晶セル中の液晶化合物を補償するためのものであり、本発明の積層体を構成する未延伸または延伸セルロースエステルフィルムの上に配向膜を形成し、さらに光学異方性層を付与することで形成される。
(配向膜)
本発明の積層体を構成する未延伸または延伸セルロースエステルフィルムを前記のようにして表面処理し、さらにその上に配向膜を設ける。この膜は、液晶性分子の配向方向を規定する機能を有する。しかし、液晶性化合物を配向後にその配向状態を固定してしまえば、配向膜はその役割を果たしているために、本発明の光学補償フィルムの構成要素としては必ずしも必須のものではない。即ち、配向状態が固定された配向膜上の光学異方性層のみを偏光子上に転写して本発明の偏光板を作製することも可能である。配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例えば、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。配向膜に使用するポリマーは、原則として、液晶性分子を配向させる機能のある分子構造を有する。本発明では、液晶性分子を配向させる機能に加えて、架橋性官能基(例えば、二重結合)を有する側鎖を主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する架橋性官能基を側鎖に導入することが好ましい。
配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができ、これらの組み合わせを複数使用することができる。ポリマーの例には、例えば特開平8−338913号公報明細書中段落番号[0022]記載のメタクリレート系共重合体、スチレン系共重合体、ポリオレフィン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリカーボネート等が含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いることができる。水溶性ポリマー(例えば、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。重合度が異なるポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールを2種類併用することが特に好ましい。ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がさらに好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5000であることが好ましい。
液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖は、一般に疎水性基を官能基として有する。具体的な官能基の種類は、液晶性分子の種類および必要とする配向状態に応じて決定する。例えば、変性ポリビニルアルコールの変性基としては、共重合変性、連鎖移動変性またはブロック重合変性により導入できる。変性基の例には、親水性基(カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、チオール基等)、炭素数10〜100個の炭化水素基、フッ素原子置換の炭化水素基、チオエーテル基、重合性基(不飽和重合性基、エポキシ基、アジリニジル基等)、アルコキシシリル基(トリアルコキシ、ジアルコキシ、モノアルコキシ)等が挙げられる。これらの変性ポリビニルアルコール化合物の具体例として、例えば特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0022]〜[0145]、同2002−62426号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0022]に記載のもの等が挙げられる。
架橋性官能基を有する側鎖を配向膜ポリマーの主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖に架橋性官能基を導入すると、配向膜のポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを共重合させることができる。その結果、多官能モノマーと多官能モノマーとの間だけではなく、配向膜ポリマーと配向膜ポリマーとの間、そして多官能モノマーと配向膜ポリマーとの間も共有結合で強固に結合される。従って、架橋性官能基を配向膜ポリマーに導入することで、光学補償フィルムの強度を著しく改善することができる。
配向膜ポリマーの架橋性官能基は、多官能モノマーと同様に、重合性基を含むことが好ましい。具体的には、例えば特開2000−155216号公報明細書中段落番号[0080]〜[0100]記載のもの等が挙げられる。配向膜ポリマーは、前記の架橋性官能基とは別に、架橋剤を用いて架橋させることもできる。架橋剤としては、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾールおよびジアルデヒド澱粉が含まれる。二種類以上の架橋剤を併用してもよい。具体的には、例えば特開2002−62426号公報明細書中の段落番号[0023]〜[0024]記載の化合物等が挙げられる。反応活性の高いアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが好ましい。架橋剤の添加量は、ポリマーに対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がさらに好ましい。配向膜に残存する未反応の架橋剤の量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。このように調節することで、配向膜を液晶表示装置に長期使用、或いは高温高湿の雰囲気下に長期間放置しても、レチキュレーション発生のない充分な耐久性が得られる。
配向膜は、基本的に、配向膜形成材料である前記ポリマー、架橋剤を含む透明支持体上に塗布した後、加熱乾燥(架橋させ)し、ラビング処理することにより形成することができる。架橋反応は、前記のように、透明支持体上に塗布した後、任意の時期に行なってよい。ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーを配向膜形成材料として用いる場合には、塗布液は消泡作用のある有機溶媒(例えば、メタノール)と水との混合溶媒とすることが好ましい。その比率は質量比で水:メタノールが0:100〜99:1が好ましく、0:100〜91:9であることがさらに好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、さらには光学異方性層の層表面の欠陥が著しく減少する。
配向膜の塗布方法は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法またはロールコーティング法が好ましい。特にロッドコーティング法が好ましい。また、乾燥後の膜厚は0.1〜10μmが好ましい。加熱乾燥は、20℃〜110℃で行なうことができる。充分な架橋を形成するためには60℃〜100℃が好ましく、特に80℃〜100℃が好ましい。乾燥時間は1分間〜36時間で行なうことができるが、好ましくは1分間〜30分間である。pHも、使用する架橋剤に最適な値に設定することが好ましく、グルタルアルデヒドを使用した場合は、pH4.5〜5.5で、特に5が好ましい。
配向膜は、延伸・未延伸セルロースエステルフィルム上または前記下塗層上に設けられる。配向膜は、前記のようにポリマー層を架橋したのち、表面をラビング処理することにより得ることができる。前記ラビング処理は、液晶表示装置の液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を適用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより、配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行なうことにより実施される。工業的に実施する場合、搬送している偏光膜のついたフィルムに対し、回転するラビングロールを接触させることで達成するが、ラビングロールの真円度、円筒度、振れ(偏芯)はいずれも30μm以下であることが好ましい。ラビングロールへのフィルムのラップ角度は、0.1〜90°が好ましい。ただし、特開平8−160430号公報に記載されているように、360°以上巻き付けることで、安定なラビング処理を得ることもできる。フィルムの搬送速度は1〜100m/minが好ましい。ラビング角は0〜60°の範囲で適切なラビング角度を選択することが好ましい。液晶表示装置に使用する場合は、40〜50°が好ましい。45°が特に好ましい。
このようにして得た配向膜の膜厚は、0.1〜10μmの範囲にあることが好ましい。
次に、配向膜の上に光学異方性層の液晶性分子を配向させる。その後、必要に応じて、配向膜ポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを反応させるか、あるいは、架橋剤を用いて配向膜ポリマーを架橋させる。光学異方性層に用いる液晶性分子には、棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子が含まれる。棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子は、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、さらに、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。
(棒状液晶性分子)
棒状液晶性分子としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。なお、棒状液晶性分子には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶性分子を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも、棒状液晶性分子として用いることができる。言い換えると、棒状液晶性分子は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。
棒状液晶性分子については、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994)日本化学会編の第4章、第7章および第11章、および液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。棒状液晶性分子の複屈折率は、0.001〜0.7の範囲にあることが好ましい。棒状液晶性分子は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、ラジカル重合性不飽基或はカチオン重合性基が好ましく、具体的には、例えば特開2002−62427号公報明細書中の段落番号[0064]〜[0086]に記載の重合性基、重合性液晶化合物が挙げられる。
(円盤状液晶性分子)
円盤状(ディスコティック)液晶性分子には、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
円盤状液晶性分子としては、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造である液晶性を示す化合物も含まれる。分子または分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。円盤状液晶性分子から形成する光学異方性層は、最終的に光学異方性層に含まれる化合物が円盤状液晶性分子である必要はなく、例えば、低分子の円盤状液晶性分子が熱や光で反応する基を有しており、結果的に熱、光で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失った化合物も含まれる。円盤状液晶性分子の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。また、円盤状液晶性分子の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
円盤状液晶性分子を重合により固定するためには、円盤状液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。円盤状コアと重合性基は、連結基を介して結合する化合物が好ましく、これにより重合反応においても配向状態を保つことができる。例えば、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0151]〜[0168]記載の化合物等が挙げられる。ハイブリッド配向では、円盤状液晶性分子の長軸(円盤面)と偏光膜の面との角度が、光学異方性層の深さ方向でかつ偏光膜の面からの距離の増加と共に増加または減少している。角度は、距離の増加と共に減少することが好ましい。さらに、角度の変化としては、連続的増加、連続的減少、間欠的増加、間欠的減少、連続的増加と連続的減少を含む変化、あるいは、増加および減少を含む間欠的変化が可能である。間欠的変化は、厚さ方向の途中で傾斜角が変化しない領域を含んでいる。角度は、角度が変化しない領域を含んでいても、全体として増加または減少していればよい。さらに、角度は連続的に変化することが好ましい。
偏光膜側の円盤状液晶性分子長軸の平均方向は、一般に円盤状液晶性分子あるいは配向膜の材料を選択することにより、またはラビング処理方法の選択することにより、調整することができる。また、表面側(空気側)の円盤状液晶性分子の長軸(円盤面)方向は、一般に円盤状液晶性分子あるいは円盤状液晶性分子と共に使用する添加剤の種類を選択することにより調整することができる。円盤状液晶性分子と共に使用する添加剤の例としては、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマーおよびポリマーなどを挙げることができる。長軸配向方向の変化の程度も、前記と同様に、液晶性分子と添加剤との選択により調整できる。
(光学異方性層の他の組成物)
前記の液晶性分子と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶分子の配向性等を向上することができる。液晶性分子と相溶性を有し、液晶性分子の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。
前記重合性モノマーとしては、ラジカル重合性若しくはカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、前記の重合性基含有の液晶化合物と共重合性のものが好ましい。例えば、特開2002−296423号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0020]記載のものが挙げられる。前記化合物の添加量は、円盤状液晶性分子に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
前記界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報明細書中の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物が挙げられる。
また、円盤状液晶性分子とともに使用するポリマーは、円盤状液晶性分子に傾斜角の変化を与えられることが好ましい。前記ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0178]記載のものが挙げられる。液晶性分子の配向を阻害しないように、前記ポリマーの添加量は、液晶性分子に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。円盤状液晶性分子のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃がさらに好ましい。
(光学異方性層の形成)
光学異方性層は、液晶性分子および必要に応じて後述の重合性開始剤や任意の成分を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成できる。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジン)、炭化水素(例えば、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
塗布液の塗布は、公知の方法(例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜15μmであることがさらに好ましく、1〜10μmであることが最も好ましい。
(液晶性分子の配向状態の固定)
配向させた液晶性分子を、配向状態を維持して固定することができる。固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2,367,661号、同2,367,670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2,448,828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2,722,512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3,046,127号、同2,951,758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3,549,367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4,239,850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4,212,970号明細書記載)が含まれる。光重合開始剤の使用量は、塗布液固形分は0.01〜20質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2の範囲にあることが好ましく、20mJ/cm2〜5000mJ/cm2の範囲にあることがより好ましく、100mJ/cm2〜800mJ/cm2の範囲にあることがさらに好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
この光学補償フィルムと偏光膜とを組み合わせることも好ましい。具体的には、前記のような光学異方性層用塗布液を偏光膜の表面に塗布することにより光学異方性層を形成する。その結果、偏光膜と光学異方性層との間にポリマーフィルムを使用することなく、偏光膜の寸度変化にともなう応力(歪み×断面積×弾性率)が小さい薄い偏光板が作製される。本発明に従う偏光板を大型の液晶表示装置に取り付けると、光漏れなどの問題を生じることなく、表示品位の高い画像を表示することができる。 偏光膜と光学補償層との傾斜角度は、液晶表示装置を構成する液晶セルの両側に貼り合わされる2枚の偏光板の透過軸と液晶セルの縦または横方向のなす角度にあわせるように延伸することが好ましい。通常の傾斜角度は45°である。しかし、最近は、透過型、反射型および半透過型液晶表示装置において必ずしも45°でない装置が開発されており、延伸方向は液晶表示装置の設計にあわせて任意に調整できることが好ましい。
[液晶表示装置への利用]
本発明の液晶表示装置は、本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムを用いて形成される。具体的には、上述の偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルムからなる群より選択される少なくとも1つを用いて形成される。
(一般的な液晶表示装置の構成)
本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムは、液晶表示装置の光学補償シートとして用いると特に有効である。フィルムそのものを光学補償シートとして用いる場合は、偏光素子(後述)の透過軸と、セルロースエステルフィルムからなる光学補償シートの遅相軸とを実質的に平行または垂直になるように配置することが好ましい。このような偏光素子と光学補償シートとの配置については、特開平10−48420号公報に記載がある。液晶表示装置は、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償シートを配置した構成を有している。
液晶セルの液晶層は、通常は、二枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セルには、さらにガスバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板は、一般に80μm〜500μmの厚みを有する。光学補償シートは、液晶画面の着色を取り除くための複屈折率フィルムである。本発明では、セルロースエステルフィルムそのものを、光学補償シートとして用いることができる。さらに反射防止層、防眩性層、λ/4層や2軸延伸セルロースエステルフィルムとして機能を付与してもよい。また、液晶表示装置の視野角を改良するため、本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルム積層体と、それとは(正/負の関係が)逆の複屈折を示すフィルムを重ねて光学補償シートとして用いてもよい。光学補償シートの厚みの範囲は、前述した本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムの好ましい厚みと同じである。
偏光素子の偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。いずれの偏光膜も、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。偏光板の保護膜は、25μm〜350μmの厚みを有することが好ましく、40μm〜200μmの厚みを有することがさらに好ましい。液晶表示装置には、表面処理膜を設けてもよい。表面処理膜の機能には、ハードコート、防曇処理、防眩処理および反射防止処理が含まれる。前述したように、支持体の上に液晶(特にディスコティック液晶性分子)を含む光学的異方性層を設けた光学補償シートも提案されている(特開平3−9325号、同6−148429号、同8−50206号、同9−26572号の各公報記載)。本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムは、そのような光学補償シートの支持体としても用いることができる。
光学的異方性層は、傾斜配向したディスコティック液晶性分子を含む層であることが好ましい。ディスコティック液晶性分子の円盤面と支持体面とのなす角は、光学的異方性層の深さ方向において変化している(ハイブリッド配向している)ことが好ましい。ディスコティック液晶性分子の光軸は、円盤面の法線方向に存在する。ディスコティック液晶性分子は、円盤面の法線方向の屈折率よりも円盤面方向の屈折率が大きな複屈折性を有する。ディスコティック液晶性分子は、支持体表面に対して実質的に水平に配向させてもよい。
(VA型液晶表示装置)
本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有効に用いられる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学的性質は、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配置により決定される。
(OCB型液晶表示装置およびHAN型液晶表示装置)
本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配置により決定される。本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムには、各種OCBモードの液晶セルに対応した光学特性を付与すればよい。その範囲は、Reが20nm〜100nmであり、好ましくはReが30nm〜80nmであり、特には30nm〜60nmである。また、Rthが150nm〜300nmであり、好ましくはRthが160nm〜260nmであり、特には170nm〜250nmである。
(その他の液晶表示装置)
本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムは、ASM(Axially Symmetric Alligned Microcell)モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚みが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)外の論文(Kume et al., SID 98 Digest 1089 (1998))に記載がある。本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムは、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置については、古くから良く知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平3−9325号、同6−148429号、同8−50206号、同9−26572号の各公報に記載がある。本発明の積層体を構成するセルロースエステルフィルムには、これらの各種液晶表示装置に対する光学補償シート用として好ましい光学特性を付与すればよい。
以下に実施例と比較例とを挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[実施例1]
(1−1)セルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムの製膜
(1)セルロースエステルペレットの調製
セルロースエステルとして、セルロースエステルA(アセチル基の置換度1.50、プロピオニル基の置換度1.40、トータル置換度2.90、粘度平均重合度180、含水率0.1質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度140mPa・s、平均粒子サイズ1.4mmであって標準偏差0.4mmである粉体)を用いた。なお、セルロースエステルAは、残存酢酸量が0.05質量%、残留プロピオン酸が0.03質量%であり、Ca含有量が51ppm、Mg含有量が15ppm、Fe含有量が0.45ppmであり、さらに硫酸基としてのイオウ量を0.16ppm含むものであった。
また6位の水酸基に対するアセチル基の置換度は0.44、6位の水酸基に対するプロピオニル基の置換度は0.53、質量平均分子量/数平均分子量比は3.0であった。セルロースエステルAを、メチレンクロライド/メタノール=90/10(質量比)を用いてガラス板上に溶液製膜して、80μmの厚みのフィルムを得た。このセルロースエステルAのみからなるフィルムのイエローインデックスは0.87であり、ヘイズは0.1、透明度は94.2%であり、Tg(ガラス転移温度;DSCにより測定)は125℃であった。このセルロースエステルAは、綿花リンターから採取したセルロースを原料として合成した。
このセルロースエステルAを105℃で5時間乾燥し、含水率を0.07質量%にした後に、セルロースエステル固形分に対して、一次平均粒子サイズ20nmのシリカ微粒子を0.007質量%、紫外線吸収剤としてUV剤a{2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン}を0.4質量%、UV剤b{2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール}を0.4質量%、およびUV剤c{2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール}を0.4質量%、可塑剤ビフェニルジフェニルフォスフェートを2質量%、安定剤として、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトを0.1質量%、2,2'−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−[(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]〕を0.1質量%、およびビス[(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネートを0.1質量%、離型剤としてトリデカフルオロエチルメタクリレート/ポリ(平均重合度5)オキシエチレンメタクリレート/ブチルアクリレート=30/20/50(モル比、分子量9000)を0.1質量%添加、さらに染料として1,4−ビス(2,4,6−トリプロピルシクロヘキシルスルホンアミドフェニル)アンスラキノンを0.00005質量%添加した。
これらを混合して2軸混練押し出し機のホッパーに投入し、さらに150〜200℃でスクリュー回転数300rpm、滞留時間40秒で混練して融解した。さらに、50℃の水浴中で直径3mmのストランド状に200kg/時間でダイから押し出し、1分間浸漬した後(ストランド固化)、10℃の水中を30秒間通過させて温度を下げ、長さ5mmに裁断してペレットを得た。得られたセルロースエステルAからなるペレットを、105℃で120分間乾燥し、しかる後にアルミニウムを有するラミネートフィルムからなる防湿袋に袋詰めして保管した。
(2)濾過
前記セルロースエステルを直径3mm、長さ5mmの円柱状のペレットに成形したものを、110℃の真空乾燥機で3時間乾燥した。これをホッパーに投入し225℃で溶融した後、口径5μmの焼結金属フィルターを用いて、10MPaで速度0.1m/分にて加圧濾過した。得られた濾過物は、透明かつ均質な組成であることを確認した。
(3)溶融製膜
つぎに105℃になるように調整したホッパーに投入し、10分間かけてメルトを溶融押出しした。このとき、上流側溶融温度は195℃、中間溶融温度は210℃、下流側溶融温度は225℃、圧縮比は14、T−ダイ温度は118℃、T−ダイおよびキャスティングドラム間距離は8cm、固化速度は30℃/秒、キャスティングドラム温度は第一ロール(上流)が115℃、第二ロール(上流)が114℃、第三ロール(上流)が113℃、冷却速度は−15℃/秒であった。この際、各水準静電印加法(10kVのワイヤーをメルトのキャスティングドラムへの着地点から10cmのところに設置)を用いた。固化したメルトを剥ぎ取り、ニップロールを介して、巻き取り張力6kg/cm2で30m/分で搬送して長尺フィルムを作製(セルロースエステルフィルム試料1−1)した。フィルム厚は80μmであり、幅は1.35mで、長さは900mとした。なお、巻き取り直前に両端(全幅の各3%)をトリミングした後、後述する保護フィルムをキャスティングローラー面側に付着してロール状態に巻き取った。なお、各工程はダウンフロータイプのクリーンエアーでクラス100以下とした環境条件で実施した。
(1−2)保護フィルムの付着
保護フィルムAとして、基材がPETフィルム(25μm厚)で粘着剤層がアクリル粘着剤(20μm厚)であるPET保護テープ(品番:S−362,藤森工業社製、幅1.35m、長さ1000m巻き)を使用した。上記で作製したセルロースエステルフィルム試料1−1の片面(キャスティングロール面側)に、保護フィルムAをゴムロールと金属ロールの組み合わせによるニップロールを用いて、セルロースエステルフィルムのキャスティングロール面側と、保護フィルムAをY字状に寄せてきて、ニップロールに両者が各々一部沿った状態ではさみ、接合させることにより付着(ラミネート)した。セルロースエステルフィルムと保護フィルムAとのセルロースエステルフィルム積層体(積層体試料1−2)の平均厚みは105μmであった。積層体の幅方向と長手方向の厚みばらつきを測定したところ、それぞれ2.5μm、1.0μmであった。なお、本工程はダウンフロータイプのクリーンエアー下で、クラス1000以下の環境条件で実施した。
(1−3)セルロースエステルフィルム積層体の評価
前述した方法で得られたセルロースエステルフィルム積層体(積層体1−2)のロール状巻き芯に巻き込まれたフィルムを、再度速度30m/分で引っ張り出して、保護フィルムを剥ぎ取った。なお、本工程はダウンフロータイプのクリーンエアーでクラス1000以下とした環境条件で実施した。保護フィルムの剥離は、保護フィルムを積層体試料1−2の搬送路に沿った巻き芯に巻き取ることにより実施した。保護フィルムをはがして得られたセルロースエステルフィルムを、直交する2枚の偏光膜で挟み込み、目視で観察される傷や異物に起因する光漏れを観察したところ、目視上で光漏れは全く観察されず、優れた面状有するフィルムであることが確認された。
ここで、本発明のセルロースエステルフィルム積層体から剥離して得られたセルロースエステルフィルム試料1−1は、以下の特性を示すものであり優れた光学用基板であることを確認した。ダイスジはA、ダンムラはAで良好であり、Reムラは0.2nm、Rthムラは1.5nm、厚みムラは2.1μmであり優れており、さらにロール汚れはAであった。また、Re湿度依存性は1.4nm、およびRth湿度依存性も5.8nmと小さいものであることを確認した。
またセルロースエステルフィルム試料1−1は、傾斜幅は19.1nm、限界波長は389.4nm、吸収端は376.5nm、380nmの吸収は1.4%であり、軸ズレ(分子配向軸)は0.15°、弾性率は長手方向が2.96GPa,幅方向が2.83GPa、抗張力は長手方向が115MPa、幅方向が107MPa、伸長率は長手方向が61%,幅方向が60%であり、アルカリ加水分解性はAであり、カール値は相対湿度25%で−0.1,ウェット(相対湿度10%以下)では1.2であった。また、含水率は1.8質量%であり、熱収縮率は長手方向が−0.05%であり幅方向が−0.07%であった。異物はリントが4個/m未満であった。輝点は、0.02mm以下が7個/3m未満、0.02〜0.05mmが3個/3m未満、0.05mm以上はなかった。これらは、光学用途に対しては優れた特性を有するものであった。また、塗布後の接着性はAであり、透湿度も良好(650g/m2・日)であることを示す。残留溶剤は検出されなかった。
(1−4)測定方法および評価方法
以下にセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムに関する前述の各特性の測定方法と評価方法ついて記載する。
(ダイスジ)
ダイスジの評価は、流延方向に見られるスジ状のムラを、反射光源のもとで目視観察し、以下に従って評価した。
A: ダイスジは見られなかった。
B: ダイスジが微かに見られた。
C: ダイスジがはっきりと認められた。
D: ダイスジが全面に著しく発生していることが認められた。
(ダンムラ)
ダンムラの評価は、幅方向に見られる段状のムラを、反射光源のもとで目視観察し、以下に従って評価した。
A: ダンムラは見られなかった。
B: ダンムラが微かに見られた。
C: ダンムラがはっきりと認められた。
D: ダンムラが全面に著しく発生していることが認められた。
(ReおよびRth)
セルロースエステルフィルムを25℃・相対湿度60%にて24時間調湿後、自動複屈折計(KOBRA−21ADH:王子計測機器(株)製)を用いて、25℃・相対湿度60%において、フィルム表面に対し垂直方向および遅相軸を回転軸としてフィルム面法線から+50°から−50°まで10°刻みで傾斜させた方向から波長590nmにおける位相差値を測定することにより、面内レターデーション値(Re)と膜厚方向のレターデーション値(Rth)とを算出させた。特に断らない場合ReおよびRthは、この値をさす。
(Reムラ、Rthムラ)
長手方向に1m間隔で100点、1cm四方の大きさにサンプリングし、また、製膜全幅にわたり、1cm四方の大きさに5cm等間隔でサンプリングした。それぞれ得られたサンプルの各最大値と最小値の差を求め、Reムラ、Rthムラとした。
(厚みムラ)
長手方向に1m間隔で100点、1cm四方の大きさにサンプリングし、また、製膜全幅にわたり、1cm四方の大きさに5cm等間隔でサンプリングした。それぞれ得られたサンプルの厚みを測定し、厚みの最大値と最小値の差を求めて評価した。
(Re湿度依存性およびRth湿度依存性)
さらにこれらの試料について、25℃/相対湿度10%でRe(10%RH)、Rth(10%RH)を求めた。さらにこれらの試料を25℃・相対湿度80%で同様に測定し、Re(80%RH)、Rth(80%RH)を求めた。各試料について、Re(10%RH)とRe(80%RH)の差を求めてRe湿度依存性を評価し、また、Rth(10%RH)とRth(80%RH)の差を求めてRth湿度依存性を評価した。
(ヘイズ)
試料40mm×80mmについて、25℃・相対湿度60%でヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)を用いてJIS K−6714に従って測定した。
(透明度)
試料20mm×70mmについて、25℃・相対湿度60%で透明度測定器(AKA光電管比色計、KOTAKI製作所)を用いて可視光(615nm)の透明度を測定した。
(分子配向軸)
試料70mm×100mmを、25℃・相対湿度65%で2時間調湿し、自動複屈折計(KOBRA21DH、王子計測(株))を用いて垂直入射における入射角を変化させた時の位相差を測定して分子配向軸を算出した。
(キシミ)
試料100mm×200mmおよび75mm×100mmを、23℃・相対湿度65%で2時間調湿し、テンシロン引張試験機(RTA−100,オリエンテック(株))を用いて、大きいフィルムを台の上に固定し、200gのおもりをつけた小さいフィルムを載せた。おもりを水平方向に引っ張り、動き出した時の力、動いているときの力を測定した。そして、静摩擦係数、動摩擦係数をそれぞれ次式に従い算出した。
F=μ×W (W:おもりの重さ(kgf))
(動摩擦(鋼球法))
試料35mm×100mmを、23℃・相対湿度65%で2時間調湿し、動摩擦係数測定器(東洋ボールドウィン)を用いて、測定面を上にして試料を台に固定し、鋼球を試料上におろし、台を送り測定した。
(カール値)
試料35mm×3mmを、カール調湿槽(HEIDON(No.YG53−168)、新東科学(株))で相対湿度25%、55%、85%で24時間調湿し、曲率半径をカール板で測定しドライのカール値とした。またウェットでのカールは、水温25℃の水中に30分静置した後に、そのカール値を測定した。
(透湿係数)
試料70mmφを25℃・相対湿度95%および40℃・相対湿度95%でそれぞれ24時間調湿し、透湿試験装置(KK−709007、東洋精機(株))にて、JIS Z−0208に従って、単位面積あたりの水分量(g/m2)を算出した。そして、透湿度を(調湿後質量)−(調湿前質量)により求めた。さらに強制的評価として、60℃・相対湿度95%にて24時間調湿後に測定し、透湿係数とした。
(異物検査)
試料の全幅×1mの範囲に反射光をあて、膜中異物を目視にて検出した後、偏光顕微鏡で異物(リント)を確認して評価した。
(熱収縮率)
寸法安定性は熱収縮率で評価した。試料の縦方向および横方向より30mm幅×120mm長さの試験片を各3枚採取した。試験片の両端に6mmφの穴をパンチで100mm間隔に開けた。これを23±3℃、相対温度65±5%の室内で3時間以上調湿した。自動ピンゲージ(新東科学(株)製)を用いてパンチ間隔の原寸(L1)を最小目盛り/1000mmまで測定した。次に試験片を80℃±1℃の恒温器に吊して3時間熱処理し、23±3℃、相対湿度65±5%の室内で3時間以上調湿した後、自動ピンゲージで熱処理後のパンチ間隔の寸法(L2)を測定した。そして以下の式により熱収縮率を算出した。
熱収縮率=(L1−L2/L1)×100
(輝点異物の測定)
直交状態(クロスニコル)に二枚の偏光板を配置して透過光を遮断し、二枚の偏光板の間に各試料を置いた。偏光板はガラス製保護板のものを使用した。片側から光を照射し、反対側から光学顕微鏡(50倍)で1cm2当たりの直径0.01mm以上の輝点数をカ
ウントした。
(Tgの測定)
DSCの測定パンに試料を20mg入れた。これを窒素気流中で、10℃/分で30℃から250℃まで昇温した後、30℃まで−10℃/分で冷却した。この後、再度30℃から250℃まで昇温してベースラインが低温側から偏奇し始める温度をTgとした。
(ロール汚れ)
T−ダイから押出しする際に最初のロールのフィルム端部におけるロール表面の汚れ程度を、反射光源のもとで目視観察し、以下に従って評価した。
A: 汚れは見られなかった。
B: 汚れが微かに見られた。
C: 汚れがはっきりと認められた。
D: 汚れが全面に著しく認められた。
(接着性)
得られた試料フィルム5cm×5cmを25℃、相対湿度80%で3時間調湿した後、フィルムの溶融製膜時のキャスティングドラム面とエアー面を重ね合わせ、防湿袋に封じ込んだ後に、フィルム全体に10kgの荷重をかけた。さらに、60℃で3日間経時させ25℃、相対湿度60%に戻し2時間後にフィルム同士の接着跡を目視確認し、下記に従って評価した。
A: 接着跡は見られなかった。
B: 接着跡が微かに見られた。
C: 接着跡がかなり認められた。
D: 接着跡が全面に著しく発生していることが認められた。
(セルロースエステルの置換度)
セルロースの水酸基に対するアシル基の置換度は、Carbohydr.Res.273(1995)83−91(手塚他)に記載の方法で13C−NMRにより求めた。
(セルロースエステルの重合度)
絶乾したセルロースエステル約0.2gを精秤して、メチレンクロリド:エタノール=9:1(質量比)の混合溶剤100mlに溶解した。これをオストワルド粘度計にて25℃で落下秒数を測定し、重合度を以下の式により求めた。
ηrel =T/T0
[η]=ln(ηrel)/C
DP=[η]/Km
[式中、Tは測定試料の落下秒数、T0は溶剤単独の落下秒数、lnは自然対数、Cは濃度(g/L)、Kmは6×10-4である。]
(傷付き)
キシミ値を評価したフィルムを目視で観察し、以下に従って評価した。
A: 傷付きは全く認められなかった。
B: 傷付きがわずかに認められた。
C: 傷付きがかなり認められた。
D: 傷付きが著しく認められた。
(抗張力、伸長率)
試料15mm×250mmを、23℃、相対湿度65%にて2時間調湿し、テンシロン引張試験機(RTA−100、オリエンテック(株))にてISO1184−1983に従って、初期試料長100mm、引張速度200±5mm/分で弾性率を引張初期の応力と伸びより算出し、抗張力と伸張力を評価した。
(アルカリ加水分解性)
試料100mm×100mmを、自動アルカリ鹸化処理装置(新東科学(株)製)にて、60℃,2mol/L水酸化ナトリウム水溶液にて3分間鹸化し、4分間水洗した後、30℃,0.01mol/L希硝酸にて4分間中和し、4分間水洗した。その後、100℃で3分間乾燥し、さらに自然乾燥を1時間行なって、下記の目視基準と鹸化処理前後のヘイズ値からアルカリ加水分解性を評価した(25℃・相対湿度60%)。
A: 白化は全く認められなかった。
B: 白化がわずかに認められた。
C: 白化がかなり認められた。
D: 白化が著しく認められた。
(含水率)
試料7mm×35mmを水分測定器と試料乾燥装置(CA−03、VA−05、共に三菱化学(株))を用いてカールフィッシャー法で測定した。水分量(g)を試料質量(g)で除して算出した。
(残留溶剤量)
ガスクロマトグラフィー(GC−18A、島津製作所(株)製)を用いて、試料7mm×35mmのベース残留溶剤量を測定した。
(熱収縮率)
試料30mm×120mmを90℃・相対湿度5%で24時間、120時間経時させ、自動ピンゲージ(新東科学(株)製)にて、両端に6mmφの穴を100mm間隔に開けて、間隔の原寸(L1)を最小目盛り1/1000mmまで測定した。さらに90℃・相対湿度5%にて24時間、120時間熱処理してパンチ間隔の寸法(L2)を測定した。熱収縮率を{(L1−L2)/L1}×100により求めた。
(弾性率)
東洋ボールドウィン製の万能引っ張り試験機STM T50BPを用いて、23℃、相対湿度70%雰囲気中、引っ張り速度10%/分で0.5%伸びにおける応力を測定し、弾性率を求めた。
[比較例1]
実施例1の(1−2)において保護フィルムAの付着を実施することなく、セルロースエステルフィルムを巻き取りロール状態にする以外は、実施例1と全く同様にして、比較試料−1を作製した。
得られた比較試料−1のセルロースエステルフィルムをロール状巻き芯に巻き込んだフィルムを、再度速度30m/分で引っ張り出した。本工程はダウンフロータイプのクリーンエアーでクラス1000以下とした環境条件で実施した。得られた比較試料−1のセルロースエステルフィルムを、直交する2枚の偏光膜で挟み込み、目視で観察される光漏れを観察したところ、0.5mm以上の光漏れが11個/m観察され、面状として問題となるレベルであった。
[実施例2]
保護フィルムAの代わりに下記の保護フィルムBを用いたこと以外は、実施例1と同様にして保護フィルムを付着させ、再度巻きほぐし保護フィルムを剥離して、セルロースエステルフィルムの面状を観察した。ここで保護フィルムBとしては、基材がPE、粘着剤層がエバール(EVA)からなる共押出で作製されたPE保護(商品名:積水プロテクトテープ#6221F,積水化学工業社製)を使用した。保護フィルムBは、長さ1000m巻きであり(基材層42μm、粘着剤層8μm)、総厚は平均50μmであった。実施例1と同様にして保護フィルムBをセルロースエステルフィルム(試料1−1)に積層した。積層体の厚みは平均130μmであった。積層体の幅方向と長手方向の厚みばらつきを測定したところ、それぞれ4.6μm、5.2μmであった。得られた積層体のロール巻き長さは850mであり、セルロースエステルフィルム積層体(積層体試料2−1)とした。
保護フィルムBをラミネートして得られた本発明の積層体試料2−1のセルロースエステルフィルムをロール状巻き芯に巻き込んだフィルムを、再度速度30m/分で引っ張り出した。なお、本工程はダウンフロータイプのクリーンエアーでクラス1000以下とした環境条件で実施した。得られた本発明の積層体試料2−1から剥離したセルロースエステルフィルムを、直交する2枚の偏光膜で挟み込み、目視で観察される光漏れを観察したところ、0.2mmの光漏れが1個/m観察されるのみで、0.5mm以上の光漏れはなく、傷がなく実際上問題のない優れた面状レベルであった。
[比較例2]
実施例1の(1−1)の(3)における溶融製膜において、下流側溶融温度225℃を本発明の製造方法の温度領域外である245℃(特許文献2(特開2000−352620号公報)の実施例に挙げられている溶融温度である)に変更する以外は、試料1−2と全く同様にして比較用セルロースエステルフィルム積層体(比較積層体試料2−1)を作製した。同様にして溶融製膜の下流側溶融温度225℃を本発明の製造方法の温度領域外である175℃に更する以外は、試料1−1と全く同様にして比較用セルロースエステルフィルム積層体(比較積層体試料2−2)を作製した。
得られた比較積層体試料2−1および2−2を実施例1の(1−3)にしたがって評価した。その結果、比較積層体試料2−1および2−2から得られるセルロースエステルフィルムは、目視で観察される傷や異物に起因する光漏れが縦横にスジ状に見られる面状の悪いものであった。これらは、セルロースエステルフィルムの溶融製膜時に発生するダイライン、ダイスジに起因するものである(比較試料2−1、2−2共にダイスジ、ダンムラはDランクであり面状の悪いものであった)。
これはセルロースエステルフィルム積層体の基体であるセルロースエステルフィルムの溶融製膜時の下流溶融温度が本発明の範囲外であるために、ダイスジ、ダンムラを発生して面状が悪化したことが原因と推定される。
[実施例3]
実施例1において、保護フィルムAを下記の保護フィルムCに変更する以外は、実施例1と全く同様にして、本発明の積層体試料3を作製した。
(3−1)光学用保護フィルムに使用する粘着剤の調製
2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレートおよび2−ヒドロキシエチルアクリレートのアクリル系ポリマー(質量比:68/29/3,質量平均分子量40万)の25%酢酸エチル溶液に、固形分換算で前記アクリル系ポリマー100質量部に対してトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート3質量部を添加、混合し、アクリル系粘着剤組成物を調製した。
(3−2)保護フィルムCの作成
厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、上記処理剤を乾燥後の塗布量が0.04g/m2になるようにワイヤーバーで塗布し、20℃で1分間乾燥して処理層を形成した。次いで、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの処理層の反対面に、上記アクリル系粘着剤組成物を乾燥後の厚みが15μmになるようにアプリケータで塗布し、120℃で2分間乾燥して粘着剤層を形成し、光学用保護フィルムを得た。
(3−3)セルロースエステルフィルム積層体の評価
得られたセルロースエステルフィルム積層体(積層体試料3)のロール状巻き芯に巻き込まれたフィルムを、再度速度30m/分で引っ張り出して、保護フィルムを剥ぎ取った。本工程はダウンフロータイプのクリーンエアーでクラス1000以下とした環境条件で実施した。保護フィルムの剥離は、積層体試料3の搬送路に沿った巻き芯に巻き取り実施した。保護フィルムをはがして得られたセルロースエステルフィルムを、直交する2枚の偏光膜で挟み込み、目視で観察される傷や異物に起因する光漏れを観察したところ、本発明にしたがって保護フィルムを付着したセルロースエステルフィルム積層体(積層体試料3)には光漏れは全く観察されず、優れた面状を有するフィルムであることが確認された。
[実施例4]
実施例1における本発明の積層体試料1−2の製造に用いたセルロースエステルAをセルロースエステルB(アセチル基の置換度1.10、プロピオニル基の置換度1.80、トータル置換度2.90、粘度平均重合度150、含水率0.1質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度52mPa・s、平均粒子サイズ1.5mmであって標準偏差0.5mmである粉体)に変更した以外は、実施例1の積層体試料1−2と全く同様にして本発明の積層体試料4−1を作製した。さらに、セルロースエステルAをセルロースエステルC(アセチル基の置換度1.00、プロピオニル基の置換度1.85、トータル置換度2.85、粘度平均重合度160、含水率0.05質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度125mPa・s、平均粒子サイズ1.0mmであって標準偏差0.25mmである粉体)に変更した以外は、実施例1の積層体試料1−2と全く同様にして本発明の積層体試料4−2を作製した。積層体試料4−1および4−2共に目視上で光漏れは全く観察されず、優れた面状を有するフィルムであることが確認された。
[実施例5]
次に、セルロースエステルフィルムを偏光板等に応用した実施例を記載する。
(5−1)偏光板の作製
(1)セルロースエステルフィルムの鹸化
本発明のセルロースエステルフィルム積層体試料1−2から剥離して得られたセルロースエステルフィルム試料1−1、および別途N,N',N"−トリ−m−トルイル−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミンをセルロースエステルに対して4質量%添加して溶液流延し、残留溶媒が存在する状態で乾燥させながら幅方向に1.32倍延伸して得たセルローストリアセテート(Reは60nm、Rthは200nm、膜厚80μm)を以下の方法で鹸化した。すなわち、KOHを1.5mol/Lとなるように溶解した後に、60℃に調温したものを鹸化液として用いた。そして、60℃のセルロースエステルフィルム上に10g/m2塗布し、1分間鹸化した。この後、50℃の温水をスプレーにより、10リットル/m2・分で1分間吹きかけ洗浄した。その後、110℃の乾燥風を風速15m/秒で送り、5分間で乾燥した。これらの鹸化は、ロール状のフィルムを速度45m/分で搬送しながら実施した。本発明のセルロースエステルフィルム積層体試料1−2から剥離して得られたセルロースエステルフィルム試料1−1の鹸化フィルムを試料5−1とした。
(2)偏光膜の作製
特開2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し、厚み20μmの偏光膜を調製した。
(3)貼り合わせ
このようにして得た偏光膜を、前記鹸化処理したセルロースエステルフィルム試料5−1、および延伸セルローストリアセテートフィルムで挟んだ後、PVA((株)クラレ製、PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、偏光軸とセルロースエステルフィルム試料5−1の長手方向とが90°となるように張り合わせた。このうち本発明によるセルロースエステルフィルム5−1と、別途作製した鹸化済みのセルローストリアセテートフィルム(Re:61nm、Rth:205nm)を特開2000−154261号公報の図2〜9に記載の20インチVA型液晶表示装置に25℃・相対湿度60%下で取り付けた後、25℃・相対湿度10%の環境中に持ち込み、目視で色調変化の大小を10段階評価(大きいものほど変化が大きい)で評価し、表示ムラの発生している領域を目視で評価し、それが発生している割合(%)を求めた。本発明によるセルロースエステルフィルム試料1−1の色調変化は1であり、非常に優れたものであった。また、特開平2002−86554号公報の実施例1に従い、テンターを用い延伸軸が吸収軸に対して45°の角度となるように延伸した偏光板についても同様に本発明によるセルロースエステルフィルムを用いて作製したが、前記同様良好な結果が得られた。
(5−2)光学補償フィルムの作製
特開平11−316378号公報の実施例1の液晶層を塗布したセルロースアセテートフィルムの代わりに、本発明による鹸化済みのセルロースエステルフィルム試料5−1を使用し、これを、特開2002−62431号公報の実施例9に記載のベンド配向型液晶セルに25℃・相対湿度60%下で取り付けた。これを25℃・相対湿度10%の環境中に持ち込み、コントラストの変化を目視評価し、色変化の大小を10段階評価(大きいものほど変化が大きい)して2のマークを得た。本発明を実施したことにより良好な性能が得られた。
(5−3)低反射フィルムの作製
発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の実施例47に従い、実施例1において作製した本発明のセルロースエステルフィルム積層体試料1−2から剥離して得られたセルロースエステルフィルム試料1−1を用いて低反射フィルムを作製したところ、良好な光学性能が得られた。
[実施例6]
実施例1において作製した本発明のセルロースエステルフィルム積層体試料1−2から剥離して得られたセルロースエステルフィルム試料1−1を、特開2002−265636号公報の実施例13において、セルローストリアセテートフィルム試料1301の代わりに用いた。そして、特開2002−265636号公報の実施例13と全く同様にして、光学異方性層、偏光板試料を作製することによりベンド配向型液晶セルを作製した。得られた液晶セルは、優れた視野角特性を有するものであった。
[実施例7]
実施例1において作製した本発明のセルロースエステルフィルム積層体試料1−2から剥離して得られたセルロースエステルフィルム試料1−1を、特開2002−265636号公報の実施例14におけるセルローストリアセテートフィルム試料1401の代わりに用いた。そして、特開2002−265636号公報の実施例14と全く同様にして、光学異方性層、偏光板試料を作製することによりTN型液晶セルを作製した。得られた液晶セルは、優れた視野角特性を有するものであった。
[実施例8]
(8−1)保護フィルム付きセルロースエステルフィルム積層体の鹸化
実施例1において作製した本発明のセルロースエステルフィルム積層体試料1−2を、以下の方法で鹸化した。すなわち、KOHを1.5mol/Lとなるように溶解した後に、60℃に調温したものを鹸化液として用いた。そして、60℃のセルロースエステルフィルム上に10g/m2塗布し、1分間鹸化した。この後、50℃の温水をスプレーにより、10リットル/m2・分で1分間吹きかけ洗浄した。その後、110℃の乾燥風を風速15m/秒で送り、5分間で乾燥した(鹸化済み積層体試料1−2)。
(8−2)保護フィルム付きセルロースエステルフィルム積層体からなる偏光板の作製
特開2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し、厚み20μmの偏光膜(偏光膜試料8−2)を調製した。偏光度は99.99%であった。
(8−3)位相差フィルムの作製
N,N',N"−トリ−m−トルイル−1,3,5ートリアジン−2,4,6−トリアミンをセルロースエステルに対して4質量%添加して溶液流延し、残留溶媒が存在する状態で乾燥させながら幅方向に1.32倍延伸して得たセルローストリアセテート(Reは60nm、Rthは200nm、膜厚80μm)を、以下に従って鹸化した。すなわち、KOHを1.5mol/Lとなるように溶解した後に、60℃に調温したものを鹸化液として用いた。そして、60℃のセルローストリアセテートフィルム上に10g/m2塗布し、1分間鹸化した。この後、50℃の温水をスプレーにより、10リットル/m2・分で1分間吹きかけ洗浄した。その後、110℃の乾燥風を風速15m/秒で送り、5分間で乾燥した。このサンプルをセルローストリアセテートフィルム試料8−3とした。
(8−4)位相差板の作製
本発明による保護フィルム付きの鹸化済み積層体試料1−2と、位相差用セルローストリアセテート試料8−3を、偏光膜試料8−2を用いて、積層体試料1−2/PVA((株)クラレ製、PVA−117H)3%水溶液/偏光膜試料8−2/PVA((株)クラレ製、PVA−117H)3%水溶液/セルローストリアセテートフィルム試料8−3の層構成で挟み込み、位相差板を作製した。この時、偏光軸とセルロースエステルフィルム試料1−1の遅相軸方向とが90°となるように張り合わせ、本発明のセルロースエステルフィルム積層体を有する位相差板試料8−4を得た。
(8−5)評価
得られた位相差板試料8−4の保護フィルムを剥離して、2枚を偏光軸が直交するように重ね合わせ、その異物を目視で観察してところ、0.2mm以上の輝点異物は全く観察されなかった。このことから、本発明による保護フィルムを積層したセルロースエステルフィルム積層体は、その位相差板の作製時における取り扱いでも優れたものであることが実証された。
[比較例3]
実施例8の(8−1)において、実施例1の(1−2)において作製した本発明のセルロースエステルフィルム積層体試料1−2を、実施例1の(1−1)において作製した本発明によるセルロースエステルフィルム試料1−1に変更する以外は、実施例8と全く同様にして、比較用位相差板試料8−5を得た。得られた位相差板試料8−5を2枚準備し、それらの偏光軸が直交するように重ね合わせ、その異物を目視で観察してところ、1mm以上の輝点異物が3個/m2観察され、さらに0.5mm以上の輝点異物が12個/m2観察された。したがって、実施例8の本発明による保護フィルムを付与した場合に比べ、保護フィルムのない比較用位相差板試料8−5は、その位相差板の作製時における取り扱いで異物を発生したことによる問題を含むものであった。以上からも本発明のセルロースエステルフィルム積層体が優れたものであることが実証された。
[実施例9]
(9−1)鹸化処理フィルムの作製
実施例1の(1−1)で得られたセルロースエステルフィルム試料1−1の片面(エアー面側)に、40℃に保温した下記処方のアルカリ鹸化水溶液(S−1)をロッドコーターで20ml/m2塗布した。110℃に加熱したスチーム式遠赤外ヒーター((株)ノリタケカンパニーリミテッド製)の下に7秒滞留させてフィルムの表面温度を40〜50℃とした後に、同じくロッドコーターを用いて純水を20ml/m2 塗布し、アルカリ液を洗い落とした。この時、フィルム温度は40〜45℃に維持されており、純水塗布後の塗膜のKOH濃度は0.5mol/Lであった。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返し、アルカリを洗い落とした後に70℃の乾燥ゾーンに15秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理フィルム(試料1−1−K1)を作製した。
アルカリ鹸化水溶液(S−1)処方
KOH 560質量部
1429−O−(CH2CH2O)−H 100質量部
消泡剤サーフィノールDF110D(日信化学工業(株)製) 2質量部
水 9338質量部
アルカリ鹸化水溶液S−1の表面張力は、64mN/mであり、液の粘度は1.8mPa・s、液の密度は1.07g/cm3、電気伝導度は180mS/cmであった。アルカリ鹸化水溶液中の炭酸イオン濃度は1090mg/Lであり、カルシウム、マグネシウムを含む多価金属イオン濃度の総和は190mg/Lであり、塩化物イオン濃度は133mg/Lであった。
(9−2)保護フィルムの付着および評価
得られた鹸化処理フィルム試料1−1−K1の鹸化面に、実施例1の(1−2)と同じ方法で保護フィルムAを張り合わせて、セルロースエステルフィルム積層体試料K1−Aを作成した。得られた積層体試料K1−Aの平均厚みは105μmであった。また、積層体の幅方向と長手方向の厚みばらつきを測定したところ、それぞれ2.5μm、1.0μmであった。
積層体試料K1−Aについて、実施例1の(1−3)と同じ評価を実施した。その結果、積層体試料K1−Aは、目視上で光漏れは全く観察されず、優れた面状を有するフィルムであることが確認された。また、積層体試料K1−Aから提供されたセルロースエステルフィルムについては、すべて実施例1の(1−3)と同じ測定結果と評価結果を得た。
[比較例4]
実施例9において保護フィルムAの付着しなかったこと以外は、実施例9と全く同様にして、比較試料−4を作製した。
得られた比較試料−4のセルロースエステルフィルムをロール状巻き芯に巻き込んだフィルムを、再度速度30m/分で引っ張り出した。本工程はダウンフロータイプのクリーンエアーでクラス1000以下とした環境条件で実施した。得られた比較試料−4のセルロースエステルフィルムを、直交する2枚の偏光膜で挟み込み、目視で観察される光漏れを観察したところ、0.5mm以上の光漏れが11個/m観察され、面状として問題となるレベルであった。
[実施例10]
実施例9で得られた鹸化処理フィルム試料1−1−K1とセルロースエステルフィルム積層体試料K1−Aを用いたことを除いて、実施例2〜8と同じ処理を行った。その結果、実施例2〜8と同等の結果が得られ、本発明の優れた効果が同様に確認された。
[実施例11]
実施例1の「(1−1)セルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムの製膜」の「(3)溶融製膜」において、特開平11−235747号公報の実施例1に記載のタッチロール(二重抑えロールと記載のあるもの)を用い(但し薄肉金属外筒厚みは3mmとした)、タッチロール製膜を実施した(タッチロール製膜を実施したこと以外は全て実施例1と同様にして実施)。タッチロール製膜により微細凹凸、液晶表示装置でのぼけ幅が改良された。
また国際公開第97/28950号パンフレットの第1の実施例と同様のタッチロール(シート成形用ロールと記載のあるもの)を用い(但し金属製外筒に用いた冷却水は温度18℃から120℃のオイルに変更)、タッチロール線圧15kg/cm、タッチロール温度115℃で実施した。上記の方法で微細凹凸の本数を測定したところ、実施例1のセルロースエステルフィルムが3本であったのに対して、タッチロールを用いた場合は0本であり、タッチロール製膜方法がさらに優れたものであることが確認された。
(微細凹凸)
セルロースアシレートフィルムを3次元表面構造解析顕微鏡(Zygo社製New View5022)を用いて下記条件で測定した。
対物レンズ:2.5倍
イメージズーム:1倍
測定視野:幅方向(TD)2.8mm、長手方向(MD)2.1mm
この中で0.1μm〜100μmの高さの山(凸部)、0.1μm〜100μmの深さの谷(凹部)の本数を数えた。ただし、凸部、凹部はいずれもMD方向に連続して1mm以上つながっているものを指す。この凸部、凹部の本数を測定幅(2.8mm)で割った後100倍し、10cm当りの凸部、凹部の数とした。上記測定を、製膜したサンプルフィルム全幅にわたって等間隔で30点測定して平均化することにより、幅10cm当りの凸部と凹部の数を求めた。
[実施例12]
(1)セルロースアシレートDの合成
セルロース(広葉樹パルプ)10質量部に酢酸0.1質量部、プロピオン酸2.7質量部を噴霧した後、1時間室温で保存した。別途、無水酢酸1.2質量部、プロピオン酸無水物61質量部、硫酸0.7質量部の混合物を調製し、−10℃に冷却後に、前記前処理を行ったセルロースと反応容器内で混合した。
30分経過後、外設温度を30℃まで上昇させ、4時間反応させた。反応容器に25%含水酢酸46質量部を添加し、内温を60℃に上昇させて、2時間攪拌した。酢酸マグネシウム4水和物と酢酸と水とを等質量ずつ混合した溶液を6.2質量部添加し、30分間攪拌した。反応液を順番に保留粒子径40μm、10μm、5μmの金属焼結フィルターにて加圧濾過して異物を除去した。75%含水酢酸に濾過後の反応液を混合してセルロースアセテートプロピオネートを沈殿させた後、70℃の温水にて、洗浄液のpHが6〜7になるまで洗浄を行った。さらに、0.001%水酸化カルシウム水溶液中で0.5時間攪拌する処理を行った後に濾過した。得られたセルロースアセテートプロピオネートは、70℃で乾燥させた。1H−NMRの測定から得られたセルロースアセテートプロピオネートはアセチル基の置換度0.15、プロピオニル基の置換度2.55、重量平均分子量135000、数平均分子量52000であった。
(2)ペレット化
このセルロースエステルDを105℃で5時間乾燥し、含水率を0.07質量%にした後に、セルロースエステル固形分に対して、一次平均粒子サイズ20nmのシリカ微粒子を0.007質量%、紫外線吸収剤としてUV剤a{2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン}を0.4質量%、UV剤b{2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール}を0.4質量%、およびUV剤c{2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール}を0.4質量%、可塑剤a{ビフェニルジフェニルフォスフェート}を2質量%、可塑剤b{トリメチロールプロパントリベンゾエート}を2質量%、可塑剤c{エチルフリルエチルグリコレート}を2質量%、安定剤として、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトを0.1質量%、2,2'−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−[(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]〕を0.1質量%、およびビス[(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネートを0.1質量%、離型剤としてトリデカフルオロエチルメタクリレート/ポリ(平均重合度5)オキシエチレンメタクリレート/ブチルアクリレート=30/20/50(モル比、分子量9000)を0.1質量%添加、さらに染料として1,4−ビス(2,4,6−トリプロピルシクロヘキシルスルホンアミドフェニル)アンスラキノンを0.00005質量%添加した。
これらを混合して含水率を0.1%以下にまで乾燥した後、2軸混練押し出し機のホッパーに投入し、150〜200℃でスクリュー回転数300rpm、滞留時間40秒で混練して融解した。これを、直径3mmのストランド状に200kg/時間でダイから押し出し、50℃の水浴中で1分間浸漬した後(ストランド固化)、10℃の水中を30秒間通過させて温度を下げ、長さ5mmに裁断してペレットを得た。得られたセルロースエステルDからなるペレットを、105℃で120分間乾燥し、しかる後にアルミニウムを有するラミネートフィルムからなる防湿袋に袋詰めして保管した。
(3)フィルム化
これを(Tm−10℃)になるように調整したホッパーに投入し、溶融温度230℃で、圧縮比3.5のフルフライトスクリューを用い、L(スクリュー長)/D(スクリュー径)=30で混練溶融した。さらに、押し出し機出口にてブレーカープレート式の濾過を行った後、ギアポンプ通過後に4μmのステンレス製リーフ型ディスクフィルター型濾過装置を通した後、Tダイから押し出し特開平11−235747号公報の実施例1に記載のタッチロールを用いてタッチ圧0.3MPaで製膜した。これをキャスティングロールから剥ぎ取り巻き取った。なお、巻き取り直前に両端(全幅の各3%)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ50μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた後、1.5m幅で3000mをロール状に巻き取った。このフィルムの有機溶媒含有量(ガスクロマトグラフィー法による)は0.01質量%以下であった。
(4)保護フィルムの付着
保護フィルムAとして、基材がPETフィルム(25μm厚)で粘着剤層がアクリル粘着剤(20μm厚)であるPET保護テープ(品番:S−362,藤森工業社製)を使用した。上記で作製したセルロースエステルフィルムの片面(キャスティングロール面側)に、保護フィルムAをゴムロールと金属ロールの組み合わせによるニップロールを用いて、セルロースエステルフィルムのキャスティングロール面側と、保護フィルムAをY字状に寄せてきて、ニップロールに両者が各々一部沿った状態ではさみ、接合させることによりラミネートし、積層体フィルムを得た。積層体の幅方向と長手方向の厚みのばらつきを測定したところ、それぞれ3.0μm、0.8μmであった。なお、本工程はダウンフロータイプのクリーンエアー下で、クラス1000以下の環境条件で実施した。
このセルロースアシレートフィルムを実施例1の(1−3)に記載の方法に従って評価を行ったところ、ダイスジA、ダンムラAであり良好な表面性を有するフィルムであることを確認した。
また、傾斜幅は20.1nm、限界波長は386.1nm、吸収端は377.1nm、380nmの吸収は1.5%であり、軸ズレ(分子配向軸)は0.18°、弾性率は長手方向が3.00GPa,幅方向が2.91GPa、抗張力は長手方向が120MPa、幅方向が110MPa、伸長率は長手方向が55%,幅方向が60%であり、アルカリ加水分解性はAであり、カール値は相対湿度25%で−0.11,ウェット(相対湿度10%以下)では1.3であった。また、含水率は2.1質量%であり、熱収縮率は長手方向が−0.09%であり幅方向が−0.05%であった。異物はリントが5個/m未満であった。輝点は、0.02mm以下が2個/3m未満、0.02〜0.05mmが1個/3m未満、0.05mm以上はなかった。
これらは、光学用途に対しては優れた特性を有するものであった。また、塗布後の接着性はAであり、透湿度も良好(610g/m2・日)であった。残留溶剤は検出されなかった。
また、実施例11に記載の方法に従ってこのセルロースアシレートフィルムの微細凹凸の本数を測定したところ、0本であり微細凹凸の少ないフィルムが得られた。
このセルロースアシレートフィルムを用いて実施例5〜8に記載の方法に従って、偏光板、光学補償フィルム、低反射フィルム、ベンド配向型液晶セル、TN型液晶セル、保護フィルム付きセルロースエステルフィルム積層体からなる偏光版、位相差フィルム、位相差板を作製したところいずれも優れた性能を示した。
[実施例13]
セルローアシレートDの代わりにプロピオニル基の置換度1.5、アセチル基の置換度1.0、重量平均分子量150000、数平均分子量56000のセルロースアシレートEを用いる他は、実施例12と同様にフィルムを作成し評価を行ったところ、いずれも良好な結果を得た。
[実施例14]
セルローアシレートDの代わりにプロピオニル基の置換度0.8、アセチル基の置換度1.8、重量平均分子量160000のセルロースアシレートFを用いる他は、実施例12と同様にフィルムを作成し評価を行ったところ、いずれも良好な結果を得た。
[実施例15]
セルローアシレートDの代わりにプロピオニル基の置換度0.8、アセチル基の置換度1.8、重量平均分子量160000のセルロースアシレートFを用い、可塑剤を添加しない以外は、実施例12と同様にフィルムを作成し評価を行ったところ、いずれも良好な結果を得た。
[実施例16]
セルロースアシレートDの代わりにプロピオニル基の置換度0.8、アセチル基の置換度1.8、重量平均分子量160000のセルロースアシレートFを用い、実施例12の可塑剤に代えてトリメチロールプロパントリベンゾエートをセルロースアシレートEに対し10質量%用いる他は、実施例12と同様にフィルムを作成し評価を行ったところ、いずれも良好な結果を得た。
本発明のセルロースエステルフィルム積層体は、保護フィルムを剥離することにより、面状が良好で傷がないセルロースエステルフィルムを容易に供給することができる。また、本発明の製造方法によれば、加工工程におけるフィルム面への傷付きなどを大幅に抑えて、上記の特徴を有するセルロースエステルフィルム積層体を簡便に提供することができる。本発明のセルロースエステルフィルム積層体を利用すれば、光学特性に優れた偏光板、光学補償フィルムおよび反射防止フィルムや、表示画面での異物故障や経時での視認性の変化が抑えられている液晶表示装置を容易に製造することができる。したがって、本発明は産業上の利用可能性が高い。
タッチロール法による溶融製膜を行うための装置の一態様を示す概略図である。
符号の説明
1 メルト
2 キャスティングドラム
3 押出し機
4 ダイリップ
5 タッチロール

Claims (16)

  1. 下記式(S−1)〜(S−3)を満たし、残留溶剤量が0.01質量%以下であるセルロースエステルフィルムの少なくとも片面に、保護フィルムが接触して積層されているセルロースエステルフィルム積層体であって、
    前記保護フィルムが、樹脂基材と粘着剤層からなり、該樹脂基材がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリスチレン、ポリアクリロニトリルおよびポリメタクリレートからなる群より選択される少なくとも一種を含有し、該粘着剤層がアクリル系ポリマーおよびエチレン−酢酸ビニル系共重合体からなる群より選択される少なくとも一種を含有し、
    該セルロースエステルフィルム積層体から前記保護フィルムをはがして得られるセルロースエステルフィルムを直交する2枚の偏光板で挟み込んで目視で観察してもスジ状の光漏れが観察されないセルロースエステルフィルム積層体。
    式(S−1) 2.5≦A+B≦3.0
    式(S−2) 0≦A≦2.2
    式(S−3) 0.8≦B≦3.0
    (式中、Aはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に対する炭素数3〜22のアシル基の置換度を表す。)
  2. 前記セルロースエステル中のセルロースの水酸基に対して置換している炭素数3〜22のアシル基が、プロピオニル基およびブチリル基の少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
  3. 前記セルロースエステルフィルムが、微粒子、紫外線吸収剤、可塑剤および安定剤からなる群より選択される少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
  4. 前記セルロースエステルフィルムが、タッチロールを用いて溶融製膜されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
  5. 前記セルロースエステルフィルムの正面レターデーション(Re)が0〜300nmであり、且つ、厚さ方向のレターデーション(Rth)が−300〜700nmであることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
  6. 下記式(S−1)〜(S−3)を満たすセルロースエステルを180〜230℃で溶融してダイから押し出すことによりセルロースエステルフィルムを製膜する工程と、該セルロースエステルフィルムの少なくとも片面に保護フィルムを接触させて積層する工程を有し、
    前記保護フィルムが、樹脂基材と粘着剤層からなり、該樹脂基材がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリスチレン、ポリアクリロニトリルおよびポリメタクリレートからなる群より選択される少なくとも一種を含有し、該粘着剤層がアクリル系ポリマーおよびエチレン−酢酸ビニル系共重合体からなる群より選択される少なくとも一種を含有することを特徴とするセルロースエステルフィルム積層体の製造方法。
    式(S−1) 2.5≦A+B≦3.0
    式(S−2) 0≦A≦2.2
    式(S−3) 0.8≦B≦3.0
    (式中、Aはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に対する炭素数3〜22のアシル基の置換度を表す。)
  7. タッチロールを用いて溶融製膜することを特徴とする請求項に記載のセルロースエステルフィルム積層体の製造方法。
  8. 前記セルロースエステルフィルムの少なくとも片面を鹸化する工程をさらに有することを特徴とする請求項またはに記載のセルロースエステルフィルム積層体の製造方法。
  9. 前記鹸化する工程の後に前記保護フィルムを積層する工程を行なうことを特徴とする請求項に記載のセルロースエステルフィルム積層体の製造方法。
  10. 前記鹸化した面上に前記保護フィルムを積層することを特徴とする請求項に記載のセルロースエステルフィルム積層体の製造方法。
  11. 前記鹸化する工程の前に前記保護フィルムを積層する工程を行なうことを特徴とする請求項に記載のセルロースエステルフィルム積層体の製造方法。
  12. 請求項11のいずれか一項に記載の製造方法により製造されたセルロースエステルフィルム積層体。
  13. 偏光膜に請求項1〜または12のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム積層体から得られたセルロースエステルフィルムを用いたことを特徴とする偏光板。
  14. 請求項1〜または12のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム積層体から得られたセルロースエステルフィルムを用いたことを特徴とする光学補償フィルム。
  15. 請求項1〜または12のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム積層体から得られたセルロースエステルフィルムを用いたことを特徴とする反射防止フィルム。
  16. 請求項13に記載の偏光板、請求項14に記載の光学補償フィルム、および、請求項15に記載の反射防止フィルムからなる群より選択される少なくとも一つを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
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