JP5053187B2 - 延性に優れたパーライト系高炭素鋼レール - Google Patents
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例えば、非特許文献1に示されている炭素量0.6〜0.7質量%の普通炭素鋼レールでは、JIS3号Uノッチシャルピー衝撃試験での常温の衝撃値は12〜18J/cm2程度であり、このようなレールを寒冷地等の低温度域で使用した場合、微小な初期欠陥や疲労き裂から脆性破壊を引き起こすといった問題があった。
一般にパーライト鋼の延性や靭性を向上させるには、パーライト組織(パーライトブロックサイズ)の微細化、具体的には、パーライト変態前のオーステナイト粒微細化や、パーライト変態時のパーライト組織の微細化が有効であると言われている。
しかし、レールの製造ではこれらの方法で圧延直後のオーステナイト粒微細化を達成できたとしても、熱処理を開始するまでに粒成長しまい、結果的に延性が低下してしまう問題がある。
しかし、変態核を利用したオーステナイト粒内からのパーライト変態については、変態核の量の制御が困難なことや粒内からのパーライト変態が安定しない等の問題があり、十分なパーライト組織の微細化が達成できなかった。
(1)質量%で、C:0.85超〜1.40%、Si:0.10〜2.00%、Mn:0.10〜2.00%、Ti:0.01〜0.05%、N<0.0040%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、レール頭部がパーライト組織であり、かつ前記パーライト組織中の任意断面において、粒子径が10nm以上100nm以下のTi系析出物(例えば炭化物、窒化物、炭窒化物)が被検面積1mm2あたり50,000〜500,000個存在することを特徴とする延性に優れたパーライト系レール。
上記(1)のレールには、質量%でさらに、下記a)〜h)の成分を選択的に含有させることができる。
a)Cr:0.05〜2.00%、Mo:0.01〜0.50%の1種または2種、
b)V:0.02〜0.10%、Nb:0.002〜0.050%の1種または2種、
c)B :0.0001〜0.0050%、
d)Co:0.10〜2.00%、Cu:0.05〜1.00%の1種または2種、
e)Ni:0.01〜1.00%、
f)Mg:0.0005〜0.0200%、Ca:0.0005〜0.0150%の1種または2種、
g)Al:0.0100〜1.00%、
h)Zr:0.0001〜0.2000%
本発明者らは、レールの延性向上を不安定にしているオーステナイト粒成長を抑制する方法を検討した。その結果、オーステナイト粒成長は、基本的にはレール鋼の温度とよい相関があり、圧延後のレール鋼を冷却すること、すなわちレール鋼の温度を低下させることにより、粒成長が著しく抑制されることを実験により確認した。
次に、本発明者らは、ラボ実験により、N量を0.040%未満に低減させた鋼中のTi量や、加工熱処理条件を変更し、Ti析出物の分散状態を変化させることで、オーステナイト粒の粒成長を抑制し、同時に延性に悪影響を及ぼさないTi系析出物のサイズと個数を検討した。
Ti系析出物の個数は、レール鋼の任意の場所から抽出レプリカ試料、あるいは薄膜試料を作製し、これを透過電子顕微鏡(TEM)を用いて、10nm以上100nm以下の析出物の個数を、少なくとも1000μm2以上の面積ににつき測定し、これを単位面積当たりの個数に換算する。例えば、2万倍の倍率にて1視野を100mm×80mmとして観察した場合、1視野あたりの観察面積は20μm2 であるから少なくとも50視野につき観察を行う。この時、粒子径10〜100nmの析出物個数が50視野(1000μm2)で100個であれば、粒子個数は1mm2あたり100,000個と換算できる。
El>26−15×[C]+0.4×π×10−7×[d]×[N] (1)
ここで、Elは引張試験における全伸び(%)、Cは炭素量(質量%)、πは円周率、dは粒子径10〜100nmの析出物の平均粒子径(nm)、Nは1mm2あたりの析出物の個数(個/mm2)である。
Cは、パーライト変態を促進させ、かつ耐摩耗性を確保する有効な元素である。C量が0.85% 以下では、パーライト組織中のセメンタイト相の体積比率が確保できず、重荷重鉄道において耐摩耗性が維持できない。また、C量が1.40%を超えると、本発明の製造方法を適用しても、粒成長が抑えられず、かつ初析セメンタイトの生成が顕著になり、さらに粗大なTi炭化物を形成するため延性が低下する。このため、C量を0.85〜1.40%に限定した。なお、炭素量を0.95%以上にすると、耐摩耗性がより一層向上し、レールの使用寿命の改善効果が高い。
Crは、パーライトの平衡変態点を上昇させ、結果としてパーライト組織を微細にして高硬度(強度)化に寄与すると同時に、セメンタイト相を強化して、パーライト組織の硬度(強度)を向上させることにより耐摩耗性を向上させる元素である。ただし、0.05%未満ではその効果が小さく、2.00%を超える過剰な添加を行うと、焼入性が著しく増加し、マルテンサイト組織が多量に生成し、レール鋼の延性が低下する。このため、Cr量を0.05〜2.00%に限定した。
Pは、レール鋼の延性を劣化させる元素であり、0.035%を越えて含有すると、その影響が無視できなくなる。そのためPの含有量は0.035%以下とする。好ましくは、0.020%以下である。
上記成分を含有したレール鋼は上記のような成分組成で構成されるレール鋼は、転炉、電気炉などの通常使用される溶解炉で溶製を行い、この溶鋼を造塊・分塊法あるいは連続鋳造法により、レール圧延用鋼片を鋳造する。
表1に成分範囲およびTi系析出物の分散状態が上記請求範囲内の鋼レールを示す。これらの鋼レールは、転炉で成分調整された後、連続鋳造法で鋳造したレール圧延用鋼片を加熱温度1,250℃以上×60分以上で加熱した。加熱保持後の熱間圧延に際して、仕上圧延は900〜950℃で1パス当り断面減少率約10%で行なった。
(1)本発明鋼レール(13本)
符号A〜M:上記成分範囲内で、かつ析出物サイズ、個数が上記範囲内の鋼レール。
(2)比較鋼レール(12本)
符号a〜g:C、Si、Mn、Ti、Nの添加量が上記請求範囲外の鋼レール(7本)。
符号h〜l:上記成分範囲内で鋼レール中の析出物の分散状態が、上記請求範囲外の鋼レール(4本)。
(3)頭部引張試験
試験機:万能小型引張試験機
試験片形状:JIS Z2201 4号相似
試験片採取位置:頭表面より5mm下(図2参照)
平行部長さ:25mm、平行部直径:6mm、伸び測定評点間距離:21mm
引張速度:10mm/min、試験温度:常温(20℃)
尚、レールのように高いCを含有する鋼においては、全伸びに対するC以外の元素の影響はCと比較して小さいため、主にC量との関係で整理することができる。
Claims (9)
- 質量%で、
C:0.85超〜1.40%、
Si:0.10〜2.00%、
Mn:0.10〜2.00%、
Ti:0.01〜0.05%、
N<0.0040%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
レール頭部がパーライト組織であり、かつ前記パーライト組織中の任意断面において、粒子径が10nm以上100nm以下のTi系析出物が被検面積1mm2あたり50,000〜500,000個存在することを特徴とする延性に優れたパーライト系高炭素鋼レール。 - 質量%で、さらに、
Cr:0.05〜2.00%、
Mo:0.01〜0.50%
の1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1に記載の延性に優れたパーライト系高炭素鋼レール。 - 質量%で、さらに、
V:0.005〜0.500%、
Nb:0.002〜0.050%
の1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の延性に優れたパーライト系高炭素鋼レール。 - 質量%で、さらに、
B :0.0001〜0.0050%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の延性に優れたパーライト系高炭素鋼レール。 - 質量%で、さらに、
Co:0.10〜2.00%、
Cu:0.05〜1.00%
の1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の延性に優れたパーライト系高炭素鋼レール。 - 質量%で、さらに、
Ni:0.01〜1.00%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の延性に優れたパーライト系高炭素鋼レール。 - 質量%で、さらに、
Mg:0.0005〜0.0200%、
Ca:0.0005〜0.0150%
の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の延性に優れたパーライト系高炭素鋼レール。 - 質量%で、さらに、
Al:0.0050〜1.00%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の延性に優れたパーライト系高炭素鋼レール。 - 質量%で、さらに、
Zr:0.0001〜0.2000%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の延性に優れたパーライト系高炭素鋼レール。
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