以下、本発明に係る電池システムの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明に係る電源システムの第1の実施形態を示すブロック図である。ここで、本実施形態に係る電源システムにおいては、発電モジュールを構成する発電部の例として、燃料改質方式を採用した固体高分子型の燃料電池を有しているものとして説明する。
本実施形態に係る電源システムは、図1に示すように、大別して、発電用燃料が封入された燃料パック10(燃料封入部)と、該燃料パック10が着脱可能に結合され、燃料パック10から供給される発電用燃料に基づいて、電気エネルギーを発生(発電)する発電モジュール20と、を有して構成され、燃料パック10には回収保持部11(保持手段)が設けられ、また、発電モジュール20には発電部21(発電手段)、動作制御部22、出力制御部23、分離回収部24(分離回収手段)が設けられている。
以下、各構成について、具体的に説明する。
(A)燃料パック10
燃料パック10は、その組成に水素を含有する液体(又は、液化)燃料又は気体燃料が、充填、封入された密閉性の高い一定容積の燃料貯蔵容器であって、上記発電モジュール20に対して、着脱可能に結合された構成を有している。燃料パック10に封入された発電用燃料は、燃料パック10が発電モジュール20に結合された状態でのみ、出力制御部23を介して、発電部21により負荷に出力される電気エネルギーを生成するために必要な所定の供給量が取り込まれる。
また、燃料パック10の内部、又は、その一部に、後述する発電モジュール20において電気エネルギーを発生する際に生成、排出される副生成物のうち、分離回収部24により分離、回収された特定の成分又は物質のみを保持するための回収保持部11が設けられている。具体的には、後述するが、燃料パック10が発電モジュール20に結合された状態でのみ、発電モジュール10の発電部21における電気化学反応や燃焼反応等により電気エネルギーが発生する際に生成される水(H2O)や窒素酸化物(NOX)、硫黄酸化物(SOX)等の副生成物(特定の成分又は物質)の全て、又は、これらの一部が、回収保持部11(又は、燃料パック10)の外部に漏出又は排出しないように、不可逆的に保持するように構成されている。
ここで、水(H2O)は常温常圧下で液体であるので、回収保持部11内及び燃料パック10の気圧を高めて液化するための手段は特に必要はないが、電気エネルギーを発生する際に生成される恐れのある窒素酸化物(NOX)及び硫黄酸化物(SOX)の気化点は、常圧で概ね常温未満であり、これらの副生成物ガスの量が多く、回収保持部11内で回収した水に溶けきれない分が回収保持部11の容積を越える恐れがある場合、回収保持部11内及び分離回収部24内の気圧を高くすることにより液化して副生成物の体積を縮小して回収保持部11に収容させる。
したがって、回収保持部11に適用される構成としては、上記特定の成分又は物質を不可逆的に吸収、吸着固定、定着等することができるように、吸収ポリマーや逆止弁等を備えていることが好ましい。なお、燃料パック10及び回収保持部11の具体的な構成例及び作用については、後述する。
また、燃料パック10は、人為的な加熱・焼却処理や薬品・化学処理等を行った場合であっても、有機塩素化合物(ダイオキシン類;ポリ塩化ジベンゾパラジオキシン、ポリ塩化ジベンゾフラン)や塩化水素ガス、重金属等の有害物質、環境汚染物質の発生が少ない、又は、抑制された材料により構成されているものであってもよい。
また、本実施形態に係る電源システムに用いられる発電用燃料としては、少なくとも、発電用の燃料が封入された上記燃料パック10が、自然界に投棄又は埋め立て処理されて、大気中や土壌中、水中に漏れ出した場合であっても、自然環境に対して汚染物質とならず、かつ、後述する発電モジュール20の主発電部21Aにおいて、高いエネルギー変換効率で電気エネルギーを生成することができる燃料、具体的には、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールからなる液体燃料や、ジメチルエーテル、イソブタン、天然ガス(CNG)等の炭化水素物からなる液化ガス、水素ガス等の気体燃料を良好に適用することができる。
このような構成を有する燃料パック10及び発電用燃料によれば、本実施形態に係る電源システムにおいて電気エネルギーを発生する際に生成される副生成物が、燃料パック10内に設けられた回収保持部11に不可逆的に保持されるので、仮に、自然環境や、電源システムが接続又は装着されるデバイスに対して有害な副生成物(NOX、SOX、H2O等)が生成された場合であっても、該副生成物が電源システムの外部に排出されることがないので、大気汚染、地球温暖化等の環境への影響や、デバイスの漏電や電気部品の劣化、接触不良等の発生を抑制することができる。
また、燃料パック10を発電モジュール20に対して、着脱可能に構成することにより、封入された発電用燃料の残量が減少、又は、なくなった場合には、燃料パック10への発電用燃料の補充や燃料パック10の再利用(リサイクル)を行うことができるので、燃料パック10や発電モジュール20の廃棄量を大幅に削減することができる。ここで、単一の発電モジュール20に対して、新たな燃料パックを交換して取り付けることができるので、汎用の化学電池と同様に、簡便な使用形態を提供することができる。
また、発電用燃料がなくなった燃料パック10を回収することにより、回収保持部11に保持された副生成物を自然環境に負担を与えない方法で適切に処理することができるので、副生成物による自然環境の汚染や地球温暖化等を防止することができる。
(B)発電モジュール20
図2は、本実施形態に係る電源システムに適用される発電モジュールの一実施形態の要部構成を示すブロック図であり、図3は、本実施形態に係る発電モジュールに適用される発電部の第1の構成例を示す概略構成図である。
発電モジュール20は、図1に示すように、燃料パック10から供給される発電用燃料を用いて、電気化学反応や燃焼反応等により、少なくとも、電源システムに接続された負荷(図示を省略)に対して、駆動電源(電圧/電流)となる電気エネルギーを発生する発電部21と、負荷の駆動状態(負荷駆動情報)に基づいて、動作制御信号を出力して、発電部21の動作状態を制御する動作制御部22と、動作制御部22からの動作制御信号に基づいて、発電部21における起動動作や電気エネルギーの発生量(発電量)等の発電状態を制御する出力制御部23と、発電部21における電気エネルギーの発生の際に生成される副生成物のうち、特定の成分又は物質を分離して、当該特定の成分又は物質のみを燃料パック10内に設けられた回収保持部11に不可逆的に回収、保持させる分離回収部24と、を有して構成されている。
動作制御部22は、発電モジュール20の内部で生成、あるいは、発電モジュール20の外部から供給される電気エネルギー(動作電源)により動作し、本実施形態に係る電源システムに接続された負荷(図示を省略)の駆動状態に関する情報(負荷駆動情報)に基づいて、後述する発電部21の発電状態を制御する。具体的には、発電部21が駆動していない状態で、負荷を起動する指令を検出した場合には、後述する出力制御部23に対して、発電部21を起動させるための動作制御信号を出力し、また、発電部21が駆動している状態で、負荷を停止する指令を検出した場合には、出力制御部23に対して、発電部21を停止させるための動作制御信号を出力する。
一方、発電部21が駆動している状態で、負荷の駆動状態の変動を検出した場合には、出力制御部23に対して、発電部21から負荷に供給される電気エネルギーが負荷の駆動状態に対応した適切な値となるように、発電部21における電気エネルギーの発生量(発電量)を調整するための動作制御信号を出力する。
ここで、動作制御部22において検出される指令等の負荷の駆動状態に関する情報(負荷駆動情報)とは、負荷となる周辺機器側から、その駆動状態(起動/変動)に応じて出力される特定の情報信号であってもよいし、汎用の化学電池のように正(+)極と負(−)極のみにより負荷と電気的に接続された構成にあっては、例えば、後述する待機状態において、正(+)極及び負(−)極を介して、負荷に対して常時モニタ電圧を供給して、その変動を常時監視することにより、負荷の起動状態を検出し、また、後述する定常状態において、正(+)極及び負(−)極を介して、負荷に供給される駆動電源となる電気エネルギー(特に、駆動電圧)の変動を常時監視することにより、負荷の変動状態を検出するものであってもよい。
出力制御部23は、図2に示すように、上記動作制御部22からの動作制御信号に基づいて、発電部21を駆動状態に移行(起動)する制御を行う起動部23aと、発電部21への発電用燃料(水素ガス)の供給量を制御する燃料制御部23bと、発電部21への空気(酸素ガス)の供給量を制御する空気制御部23cと、発電用燃料を改質して、発電用燃料に含有される水素をガス化して供給する改質部23dと、を有して構成されている。
ここで、起動部23aは、発電部21が駆動していない状態で、動作制御部22から発電部21を起動させるための動作制御信号を受け取ると、少なくとも、燃料制御部23b及び空気制御部23c(燃料制御部23bのみの場合もある)を制御して、発電部21に水素ガス(H2)及び酸素ガス(O2)を供給することにより、発電部21を起動させて、所定の電気エネルギーを発生する動作状態(定常状態)に移行させる。
また、発電部21が駆動している状態で、動作制御部22から発電部21を停止させるための動作制御信号を受け取ると、少なくとも、燃料制御部23b(燃料制御部23b及び空気制御部23cの場合もある)を制御して、発電部21への水素ガス(H2)の供給を停止することにより、発電部21における電気エネルギーの発生(発電)を停止させて、待機状態に移行させる。
燃料制御部23bは、起動部23aを介して、動作制御部22から出力される動作制御信号に基づいて、発電部21において、所定の電気エネルギーを生成、出力するために必要な量の水素ガス(H2)となる分の燃料や水等を燃料パック10から供給して、改質部23dにより水素ガス(H2)に改質して、後述する発電部21(図3参照)の燃料極31に供給する制御を行い、また、空気制御部23cは、発電部21(図3参照)の空気極32に供給する酸素ガス(O2)の量を制御する。これらの制御部23b、23cによる発電部21への水素ガス(H2)及び酸素ガス(O2)の供給量を調整することにより、発電部(燃料電池本体)21における電気化学反応の進行状態が制御され、電気エネルギーの発生量(発電量)が制御される。
ここで、空気制御部23cは、発電部21における単位時間当たりの酸素の最大消費量に相当する空気(大気)を供給できるものであれば、発電部21の空気極32に供給する酸素ガスの量を制御することなく、駆動時(定常状態)に常に供給するように設定されていてもよい。すなわち、出力制御部23は、電気化学反応の進行状態を燃料制御部23bのみで制御し、空気制御部23cの代わりに通気孔を設け、発電部21における電気化学反応に用いられる最低限以上の量の空気が通気孔を介して、常時供給されるように構成されているものであってもよい。
また、改質部23dは、上述したように、燃料パック10に封入された発電用燃料に含まれる水素成分を抽出してガス化し、発電部21に供給する。具体的には、燃料パック10内の発電用燃料は、メタノール(CH3OH)の他に、メタノールと等モルの水(H2O)が混合され、メタノールと均一に混合された状態で燃料パック10から出力制御部23に供給され、これらのメタノール等の水素を含む液体燃料(アルコール類)と水との混合物が、次の化学反応式(1)に示すように、水蒸気改質反応を引き起こして、水素ガス(H2)を生成する。なお、この改質反応により生成される水素以外の微量の生成物(主に、CO2)は、大気中に排出される。
CH3OH+H2O → 3H2+CO2 ・・・(1)
また、発電部21は、図3に示すように、大別して、例えば、白金や白金・ルテニウム等の触媒微粒子が付着した炭素電極からなる燃料極(カソード)31と、白金等の触媒微粒子が付着した炭素電極からなる空気極(アノード)32と、燃料極31と空気極32の間に介装されたフィルム状のイオン導電膜(交換膜)33と、を有して構成されている。ここで、燃料極31には、上述した改質部23dを介して抽出された水素ガス(H2)が供給され、一方、空気極32には大気中の酸素ガス(O2)が供給されることにより、電気化学反応により発電が行われ、負荷34に対して所定の駆動電源(電圧/電流)となる電気エネルギーが供給される。
具体的には、燃料極31に水素ガス(H2)が供給されると、次の化学反応式(2)に示すように、上記触媒により電子(e−)が分離した水素イオン(プロトン;H+)が発生し、イオン導電膜33を介して空気極32側に通過するとともに、燃料極31を構成する炭素電極により電子(e−)が取り出されて負荷34に供給される。
3H2 → 6H++6e− ・・・(2)
一方、空気極32に空気が供給されると、次の化学反応式(3)に示すように、上記触媒により負荷34を経由した電子(e−)とイオン導電膜33を通過した水素イオン(H+)と空気中の酸素ガス(O2)が反応して水(H2O)が生成される。
6H++3/2O2+6e− → 3H2O ・・・(3)
このような一連の電気化学反応((2)式及び(3)式)は、概ね60〜80℃の比較的低温の環境下で進行する。なお、上記化学反応式(1)〜(3)には記載していないが、副生成物として、水の他に燃料中に存在する微量の窒素、硫黄成分から合成される窒素酸化物(NOX)、硫黄酸化物(SOX)が生じることがある。
なお、上述したような電気化学反応により負荷34に供給される駆動電源(電圧/電流)は、発電部21の燃料極31に供給される水素ガス(H2)の量に依存する。したがって、燃料制御部23bによって、発電部21の燃料極31に供給される水素ガス(H2)の量を制御することにより、負荷に供給される電気エネルギーを任意に調整することができる。
そして、分離回収部24は、上述した出力制御部23及び発電部21において、電気エネルギーを発生するための一連の化学反応に伴って生成される副生成物のうち、少なくとも1種類又はそれ以上の、特定の成分又は物質を分離して、上記燃料パック10に設けられた回収保持部11に送出する。
具体的には、本実施形態に係る電源システムにおいては、出力制御部23の改質部23dにおける水蒸気改質反応(化学反応式(1))に伴って、水素ガスとともに生成される二酸化炭素(CO2)、及び、発電部21における電気化学反応(化学反応式(2)、(3))に伴って、電気エネルギーの発生とともに生成される水(H2O)が、改質部23d及び発電部21から排出されるが、二酸化炭素(CO2)は極めて微量であり、デバイスへの影響もほとんどないため、非回収物質として電源システム外に排出され、一方、水(H2O)等が分離回収部24により回収されて回収保持部11に送出され、不可逆的に保持される。
ここで、発電部21における電気化学反応(化学反応式(2)、(3))は、概ね60〜90℃程度で進行するため、発電部21において生成される水(H2O)は、ほぼ水蒸気(気体)の状態で排出される。そこで、分離回収部24は、例えば、発電部21から排出される水蒸気を冷却することにより、あるいは、圧力を加えることにより、水(H2O)の成分のみを液化して、他の成分から分離、回収する。
なお、本実施形態においては、発電用燃料としてメタノール(CH3OH)を適用した場合を示したので、電気エネルギーの発生に伴う副生成物は、大半が水(H2O)であって、微量の二酸化炭素(CO2)を電源システム外に排出する態様を採用することにより、分離回収部24における特定の成分又は物質(すなわち、水)の分離、回収を比較的簡易な構成により実現することができるが、発電用燃料として他の物質を適用した場合には、水(H2O)とともに比較的大量の二酸化炭素(CO2)等が生成される場合もある。
このような場合には、分離回収部24により、例えば、水(H2O)と、その他の大量に生成される特定の成分又は物質(二酸化炭素)を分離した後、燃料パック10に設けた単一又は複数の回収保持部11に、合一又は個別に保持するように構成してもよい。
このように、本実施形態に係る電源システムによれば、発電モジュール20により電気エネルギーを発生する際に生成される副生成物、例えば、二酸化炭素(CO2)、水(H2O)等のうち、少なくとも1成分が燃料パック10内に設けられた回収保持部11に保持されることにより、副生成物が燃料パック10内に不可逆的に保持されて、電源システム外部への排出又は漏出が抑制されるので、副生成物(水)によるデバイスの動作不良や劣化等を防止することができるとともに、燃料封入部に保持された副生成物を自然環境に負担を与えない方法で適切に処理することができるので、副生成物(二酸化炭素)による自然環境の汚染や地球温暖化等を防止することができる。また、窒素酸化物(NOX)、硫黄酸化物(SOX)についても、水(H2O)とは別の回収保持部11に回収するようにしてもよい。
また、本実施形態に係る電源システムにおいては、電源システムに接続される負荷(デバイス)の駆動状態(負荷駆動情報)に応じて、所定の駆動電源となる電気エネルギーの供給、停止制御、及び、電気エネルギーの発生量の調整制御を行うことができるので、発電用燃料を効率的に消費することができる。したがって、所定の電気的特性を実現しつつ、エネルギーの利用効率が極めて高い電源システムを提供することができる。
さらに、本実施形態に係る電源システムにおいては、後述するように、本実施形態に係る電源システム(発電モジュール)を、半導体製造技術を適用して小型軽量化し、汎用の化学電池と同等の形状になるように構成することにより、外形形状及び電気的特性(電圧/電流特性)のいずれにおいても汎用の化学電池との高い互換性を実現することができ、既存の電池市場における普及を一層容易なものとすることができる。これにより、環境問題やエネルギー利用効率等の点で課題が多い既存の化学電池に替えて、燃料電池を用いた電源システムを容易に普及させることができるので、環境への影響を抑制しつつ、高いエネルギー利用効率を実現することができる。
次に、本実施形態に係る燃料パックの具体的な構成と、燃料パックと回収保持部との関係について、図面を参照して説明する。
図4は、本実施形態に係る燃料パックと回収保持部との関係を示す概略図である。
図4(a)に示すように、本実施形態に係る燃料パック10は、一定の容積を有し、上述したような分解性を有する高分子材料(プラスチック)により構成されているとともに、例えば、メタノール等の発電用燃料が充填された空間12A(第1の空間)と、分離回収部24から送出される水等の副生成物(特定の成分又は物質)が保持される空間12B(第2の空間)と、後述するように、空間12Bの容積を相対的に可変し、空間12Bを空間12Aから隔絶する回収袋13と、空間12Aに封入された発電用燃料を燃料制御部23bに供給する燃料供給弁14Aと、分離回収部24から送出される副生成物を空間12Bに取り込むための副生成物取込弁14Bと、を有して構成されている。
ここで、燃料供給弁14A及び副生成物取込弁14Bは、いずれも、燃料パック10が発電モジュール20に結合された状態でのみ、発電用燃料の供給や、副生成物の取り込みが可能となるように、逆止弁が設けられている。これにより、燃料パック10が発電モジュール20から取り外された状態においては、空間12Aに封入された発電用燃料及び空間12Bに保持された副生成物は、燃料パック10の外部に漏出することがない。なお、副生成物取込弁14Bに逆止弁の機能を設ける替わりに、空間12Bに吸収(吸水)ポリマー等を充填した構成を有するものであってもよい。
このような構成を有する燃料パック10において、空間12Aに封入された発電用燃料が燃料供給弁14Aを介して発電モジュール20(発電部21)供給されることにより、所定の電気エネルギーを発生する動作が実行されるとともに、上記分離回収部24により電気エネルギーの発生に伴って生成された副生成物のうち、特定の成分又は物質(例えば、水)のみが回収されて、副生成物取込弁14Bを介して空間12Bに取込、保持される。
これにより、空間12Aに封入された発電用燃料の容積が減少するとともに、相対的に、空間12Bに保持される特定の成分又は物質の容積が増大する。このとき、空間12Bに吸収ポリマー等を充填した構成を適用することにより、回収され、取り込まれた副生成物の実質的な容積に比較して、より大きな容積を有するように空間12Bの容積を制御することができる。
したがって、空間12Aと12Bの関係は、発電モジュール20における電気エネルギーの発生(発電)動作に伴って、単に、相対的に増減するだけでなく、空間12Bに保持された副生成物の量に応じて、図4(b)に示すように、所定の圧力で回収袋13を押圧することにより、空間12Aに封入された発電用燃料に圧力が印加されることがなるので、発電モジュール20への発電用燃料の供給を適切に行うことができ、図4(c)に示すように、空間12Bに保持される副生成物により、空間12Aに封入された発電用燃料をほぼ完全になくなるまで供給することができる。
ここで、上記(1)式〜(3)式により、1molのメタノール(CH3OH)及び1molの水(H2O)に対して、3molの割合で水(H2O)が生成されるが、液体の状態で1molのメタノール(CH3OH)は、40.56cm3程度であるのに対して、1molの水(H2O)は、18.02cm3程度であるので、燃料パック10の空間12Aに初期状態で封入されたメタノール(CH3OH)をMcm3とすると、空間12Aは水を含めて1.444Mcm3の容積となる。
そして、すべてのメタノール(CH3OH)が反応すると、副生成物の水(H2O)は1.333Mcm3となり、初期状態の液体燃料(メタノール(CH3OH)と水(H2O)との混合物)との体積比が92.31%程度になるので、副生成物の容積のほとんどを水が占める場合、副生成物が生成されるにしたがって、燃料パック10の空間12A内の発電用燃料の容積と空間12B内の副生成物の容積との和は減少するため、予め液体燃料が入らない副生成物用の空間12Bを大きく設ける必要がないので、初期状態で燃料パック10内のほとんどに液体燃料を充填することができる。
次に、本実施形態に係る発電モジュールに適用される発電部の他の構成例について、図面を参照して説明する。
図5は、本実施形態に係る発電モジュールに適用される発電部の第2の構成例を示す概略構成図である。ここでは、必要に応じて、上述した電源システムの構成(図1乃至図3)を参照しながら説明する。
上述した第1の構成例(図3)においては、発電モジュール20に適用される発電部21として、燃料改質方式を利用した固体高分子型の燃料電池を示して説明したが、第2の構成例においては、発電部の例として、燃料直接供給方式を採用した固体高分子型の燃料電池の構成を有している。
図5に示すように、第2の構成例に係る発電部21Xは、所定の触媒微粒子が付着した炭素電極からなる燃料極41と、所定の触媒微粒子が付着した炭素電極からなる空気極42と、燃料極41と空気極42の間に介装されたイオン導電膜43と、を有して構成されている。ここで、燃料極41には、第1の構成例に示したような改質部23dを介すことなく、燃料パック10に封入された発電用燃料(例えば、メタノール等のアルコール類)が直接供給され、一方、空気極42には大気中の酸素ガス(O2)が供給される。
この発電部(燃料電池)21Xにおける電気化学反応は、具体的には、燃料極41に発電用燃料であるメタノール(CH3OH)が直接供給されると、次の化学反応式(4)に示すように、触媒反応により電子(e−)が分離して水素イオン(プロトン;H+)が発生し、イオン導電膜43を介して空気極42側に通過するとともに、燃料極41を構成する炭素電極により電子(e−)が取り出されて負荷44に供給される。なお、この触媒反応により生成される水素以外の微量の生成物(主に、CO2)は、燃料極41側から大気中に排出される。
CH3OH+H2O → 6H++6e−+CO2 ・・・(4)
一方、空気極42には空気が供給されることにより、上述した化学反応式(3)と同様に、触媒により負荷44を経由した電子(e−)とイオン導電膜33を通過した水素イオン(H+)と空気中の酸素ガス(O2)が反応して水(H2O)が生成される。
なお、このような一連の電気化学反応((4)式及び(3)式)は、概ね室温程度の比較的低温の環境下で進行する。
このような構成を有する発電部21Xによれば、上述した燃料改質型の燃料電池を備えた発電モジュールに比較して、改質部を必要としないので、装置構成を極めて簡素化して小型化することができるとともに、継続的に電気化学反応により電気エネルギーを発生することができるので、常時電気エネルギーを生成、供給する必要がある構成、例えば、携帯電話等のように常時待機電力を必要とする機器に良好に適用することができる。
次に、本実施形態に係る発電モジュールに適用される発電部のさらに他の構成例について、図面を参照して説明する。
図6は、本実施形態に係る電源システムに適用される発電モジュールの他の実施形態の要部構成を示すブロック図である。ここで、上述した実施形態と同等の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
また、図7は、本実施形態に係る発電モジュールに適用される発電部の第3の構成例を示す概略構成図であり、図8は、本実施形態に係る発電モジュールに適用される発電部の第4の構成例を示す概略構成図である。
上述した実施形態においては、発電部21、21Xとして、燃料電池を適用した構成を示したため、図2に示したように、起動部23aにより燃料制御部23bを制御して、発電部21、21Xへの発電用燃料の供給を制御することにより、発電部21の動作状態を制御することができるが、本構成例に係る内燃機関型や外燃機関型等の発電部を適用する場合には、図6に示すように、起動部23aにより燃料制御部23bに加えて、発電部21をも起動/停止(燃焼起動/停止)させる制御を行うものであってもよい。
図7(a)、(b)に示すように、第3の構成例に係る発電部21Yは、複数の羽根が円周に沿って配列され、自在に回転する可動羽根52aと、可動羽根52aの回転中心に直結された発電器55と、可動羽根52aの外周側に複数の羽根が配列された固定羽根52bと、可動羽根52aと固定羽根52bとからなるガスタービン52への気化された発電用燃料(燃料ガス)の供給を制御する吸気制御部53と、燃焼後の排気ガスの排出を制御する排気制御部54と、を有して構成されている。ここで、ガスタービン52、吸気制御部53及び排気制御部54からなる発電部21Yの構成は、半導体製造技術を適用することにより、例えば、単一のシリコンチップ51上に微細化して形成することができる。
このような発電部21Yにおいて、吸気制御部53を介してガスタービン52の燃焼室に燃料ガスを取り込み、所定のタイミングで該燃料ガスを点火、燃焼することにより、燃焼室の圧力が上昇して力学エネルギーに変換されて、可動羽根52aを回転させて発電器55を駆動し、電気エネルギーを発生する。そして、燃焼後の排気ガスは、排気制御部54により所定のタイミングで排出される。ここで、発電部21Yの起動動作は、図6に示したように、上述した起動部23aにより燃料ガスの供給動作とともに制御され、また、燃料ガスの吸気、点火動作、排気ガスの排出動作は、所定の動作電源に基づいて動作する吸気制御部53、ガスタービン52、排気制御部54により制御される。
すなわち、本構成例における発電モジュールは、上述した各構成例に示したような燃料電池に替えて、燃料ガスの燃焼反応により生じる熱膨張(圧力差)に基づく力学エネルギーにより発電器を回転させて電気エネルギーを生成するガス燃焼型タービン発電器を備えた構成を有している。この場合、発電部21Yにおける電気エネルギーの発生に伴って、二酸化炭素(CO2)、水(H2O)、窒素酸化物(NOX)、硫黄酸化物(SOX)等の副生成物が大量に生成される。
したがって、本構成例における発電モジュールを適用した電源システムにおいても、発電モジュール20に設けられた分離回収部24により、発電部21Yにおける電気エネルギーの発生に伴って生成される副生成物のうち、少なくとも1種以上の特定の成分又は物質が分離、回収されて、燃料パック10に設けられた回収保持部11に不可逆的に保持される。
これにより、特に、地球温暖化物質や大気汚染物質と目される特定の成分又は物質、具体的には、二酸化炭素(CO2)、窒素酸化物(NOX)、硫黄酸化物(SOX)等を回収、保持することにより、これらの成分又は物質が電源システムの外部に排出することが防止、抑制されるので、燃料封入部に保持された副生成物を自然環境に負担を与えない方法で適切に処理することにより、副生成物による自然環境の汚染や地球温暖化等を防止することができる。また、デバイスに影響を及ぼす水(H2O)等の特定の成分又は物質を回収、保持することにより、これらの成分又は物質が電源システムの外部に排出することが防止、抑制されるので、デバイスの動作不良や劣化等を防止することができる。
また、本構成例における発電モジュールを適用した電源システムにおいても、上述した電源システムと同様に、出力制御部23により、ガスタービン52の起動、停止、及び、燃料ガスの供給量を調整することにより、負荷の駆動状態に応じた適切な電気エネルギーを生成、供給することができるので、発電用燃料を効率的に消費することができ、エネルギーの利用効率が高い電源システムを提供することができる。
さらに、図8(a)、(b)に示すように、第4の構成例に係る発電部21Zは、燃料ガスを触媒燃焼させて熱を発生させる触媒燃焼器61と、概ね一定の温度を保持する定温部62と、触媒燃焼器61を第1の温度端、定温部62を第2の温度端として、第1及び第2の温度端間に生じた温度差により、ゼーベック効果に基づく熱電子を放出させて電気エネルギーを生成する温度差発電器63と、を有して構成されている。ここで、触媒燃焼器61、定温部62及び温度差発電器63からなる発電部21Zの構成は、上述した各構成例と同様に、半導体製造技術を適用することにより、微細化して形成することができる。
このような発電部21Zにおいて、上述した出力制御部23(燃料制御部23b)を介して触媒燃焼器61に燃料ガスが供給されると、該燃料ガスが触媒燃焼反応により発熱して、触媒燃焼器61の温度が上昇する。一方、定温部62の温度はほぼ一定に設定されているので、触媒燃焼器61と定温部62との間には温度勾配(熱傾斜)が発生する。そして、この温度勾配により熱エネルギーが温度差発電器63を移動することにより、ゼーベック効果に基づく熱電子が放出されて電気エネルギーが発生する。この場合においても、発電部21Zにおける電気エネルギーの発生に伴って、二酸化炭素(CO2)、水(H2O)、窒素酸化物(NOX)、硫黄酸化物(SOX)等の副生成物が生成される。
したがって、本構成例における発電モジュールを適用した電源システムにおいても、上述した電源システムと同様に、発電モジュール20に設けられた分離回収部24により、発電部21Zにおける電気エネルギーの発生に伴って生成される副生成物のうち、少なくとも1種以上の特定の成分又は物質が分離、回収されて、燃料パック10に設けられた回収保持部11に不可逆的に保持されるので、二酸化炭素(CO2)、窒素酸化物(NOX)、硫黄酸化物(SOX)等の地球温暖化物質や大気汚染物質と目される特定の成分又は物質が電源システムの外部に排出することが防止、抑制され、自然環境の汚染や地球温暖化等を防止することができる。
また、本構成例における発電モジュールを適用した電源システムにおいても、上述した電源システムと同様に、出力制御部23により、触媒燃焼器61に供給される燃料ガスの供給量を調整することにより、温度差発電器63に生じる温度差を制御して、負荷の駆動状態に応じた適切な電気エネルギーを生成、供給することができるので、発電用燃料を効率的に消費することができ、エネルギーの利用効率が高い電源システムを提供することができる。
なお、上述した各構成は、発電モジュール20に適用される発電部の一例を示したに過ぎず、本発明に係る電源システムの構成を何ら限定するものではない。要するに、本発明に適用される発電部21は、燃料パック10に封入された液体燃料又は気体燃料が直接又は間接的に供給されることにより、発電部内部で電気化学反応や燃焼反応等により電気エネルギーを発生することができるものであれば、他の構成を有するものであってもよく、例えば、ガス燃焼タービンに替えて、ロータリーエンジンやスターリングエンジン、パルス燃焼エンジン等の内燃機関又は外燃機関(エンジン)と電磁誘導や圧電変換による発電器とを組み合わせたもの、熱音響効果による外力発生手段と電磁誘導や圧電変換による発電器とを組み合わせたもの、あるいは、電磁流体力学(MHD)発電器等を良好に適用することができる。
<第2の実施形態>
次に、本発明に係る電源システムの第2の実施形態について、図面を参照して説明する。
図9は、本発明に係る電源システムの第2の実施形態を示すブロック図であり、図10は、本実施形態に係る電源システムに適用される発電モジュールの一実施形態の要部構成を示すブロック図である。図11は、本実施形態に係る電源システムに適用される発電モジュールの他の実施形態の要部構成を示すブロック図である。ここで、上述した実施形態と同等の構成については、同一の符号を付して、その説明を簡略化又は省略する。
本実施形態に係る電源システムは、図9に示すように、大別して、発電用燃料が封入された燃料パック10と、該燃料パック10から供給される発電用燃料に基づいて、電気エネルギーを発生する発電モジュール20と、を有して構成され、燃料パック10には回収保持部11が設けられ、また、発電モジュール20には主発電部21A(発電手段)、副発電部21B、動作制御部22、出力制御部23、分離回収部24が設けられている。
ここで、燃料パック10は、上述した第1の実施形態(図1、図4参照)と同等の構成を有し、また、発電モジュール20に設けられた主発電部21Aは、上述した第1の実施形態に示した発電部21(図3、図5、図7、図8参照)と同等の構成を有しているので、その説明を省略する。ただし、上記化学反応式(1)〜(3)のように、化学反応に水が必要で、かつ、副生成物として水が生じる場合、後述するように、発電用燃料として液体燃料と等モルの水は必要なく、反応の初期に必要な量の水だけ含まれていればよい。なお、本実施形態においても、主発電部21Aとして、燃料改質方式を採用した固体高分子型の燃料電池を適用した場合について説明する。
発電モジュール20に設けられた副発電部21Bは、電源システムの外部からの燃料供給に依存することなく、電源システムの内部において、常時、所定の電気エネルギーを自立的に発生して、発電モジュール20の各構成(本実施形態においては、動作制御部22、出力制御部23)に対して、動作電源(電圧/電流)となる電気エネルギーを供給する。
ここで、副発電部21Bにおける電気エネルギーの発生方法は、例えば、上述した第1の実施形態に示した発電部21と同様に、燃料パック10から供給される発電用燃料を用いた電気化学反応や燃焼反応によるもの(図3、図5、図7、図8参照)を良好に適用することができるほか、燃料パック10に封入された発電用燃料の充填圧力(又は、吐出圧力)を用いてタービン(発電器)を回転させて電気エネルギーを発生する力学的なエネルギー変換作用等によるもの、また、発電モジュール内に、太陽電池や生物電池、振動発電器等を備え、これらにより電気エネルギーを発生するもの、さらには、上述した発電部21と同等の構成を有する主発電部21Aにより生成された電気エネルギーの一部を充電池やコンデンサ等の電気エネルギー蓄積手段に蓄積し、常時、自立的に電気エネルギーを放出(放電)させるようにしたもの等であってもよい。
したがって、副発電部21Bとして、燃料パック10から供給される発電用燃料を用いて、電気化学反応や燃焼反応、力学的なエネルギー変換作用等により、電気エネルギーを発生する構成を適用する場合には、発電モジュール20の各構成(動作制御部22、出力制御部23)に対する動作電源となる電気エネルギーを生成するために必要な最低限の量の発電用燃料が、燃料パック10から副発電部21Bに常時供給される。
また、動作制御部22は、上述した副発電部21Bから供給される電気エネルギー(動作電源)により動作し、上述した第1の実施形態と同様に、電源システムに接続された負荷の駆動状態に関する情報(負荷駆動情報)に基づいて、後述する主発電部21Aの発電状態を制御する。
出力制御部23は、図10に示すように、上述した第1の実施形態と同様に、上記動作制御部22からの動作制御信号に基づいて、主発電部21Aを駆動状態に移行(起動)する制御を行う起動部23aと、主発電部21Aへの発電用燃料(水素ガス)の供給量を制御する燃料制御部23bと、主発電部21Aへの空気(酸素ガス)の供給量を制御する空気制御部23cと、発電用燃料を改質して、発電用燃料に含有される水素をガス化して供給する改質部23dと、を有して構成されている。ここで、少なくとも、起動部23a及び燃料制御部23bには、副発電部21Bからの電気エネルギーが動作電源として供給されている。
また、分離回収部24は、出力制御部23及び主発電部21A(さらに、副発電部21Bを含むものであってもよい)において、電気エネルギーを発生するための一連の化学反応に伴って生成される副生成物のうち、少なくとも1種類又はそれ以上の、特定の成分又は物質を分離して、上記燃料パック10に設けられた回収保持部11に送出するとともに、該回収された特定の成分又は物質の一部を燃料制御部23bに供給する。
具体的には、本実施形態においては、主発電部21Aとして、燃料改質方式を採用した固体高分子型の燃料電池を適用しているので、化学反応初期において、上述した第1の実施形態に示したものと同様に、改質部23dにおける水蒸気改質反応(化学反応式(1))に伴って、燃料パック10内に含まれた水(H2O)及びメタノール(CH3OH)から二酸化炭素(CO2)が生成され、また、主発電部21Aにおける電気化学反応(化学反応式(2)、(3))に伴って、水(H2O)が生成されるが、これらの副生成物のうち、分離回収部24により、例えば、水(H2O)が回収されて回収保持部11に送出され、不可逆的に保持される。そして、化学反応の初期を過ぎると、分離回収部24により回収した水(H2O)の一部が化学反応式(1)の左辺のH2Oとして利用され、燃料制御部23bを介して、改質部23dにおける発電用燃料の水蒸気改質反応(化学反応式(1))や、水素ガス(H2)の加湿に利用される。
なお、主発電部21Aにおける電気化学反応(化学反応式(2)、(3))において、空気極32に供給された後、残存した酸素ガス(O2)を上記副生成物として回収して、主発電部21A(又は、副発電部21B)における電気化学反応に反応ガスとして再利用するようにしてもよい。
また、1molの水(H2O)及び1molのメタノール(CH3OH)から3molの水(H2O)が生成され、生成された水(H2O)うち、1/3程度が化学反応式(1)の左辺のH2Oとなるため、分離回収部24から燃料制御部23bに送出され、残り2/3程度が分離回収部24から回収保持部11に送出される。したがって、発電用燃料として液体燃料と等モルの水を必要としないため、燃料パック10の容積当たりの液体燃料の充填率を高くすることができる。
このように、本実施形態に係る電源システムによれば、発電モジュール20により電気エネルギーを発生する際に生成される副生成物、例えば、二酸化炭素(CO2)、水(H2O)等のうち、少なくとも1成分が燃料パック10内に設けられた回収保持部11に不可逆的に保持されて、電源システム外部への排出又は漏出が抑制されるとともに、回収された副生成物の一部が電気エネルギーの発生(発電)の際に、直接的又は間接的に再利用される。したがって、副生成物による自然環境やデバイスへの悪影響を抑制しつつ、副生成物循環型の電源システムを実現することができる。
なお、本実施形態においては、主発電部21Aとして、燃料電池を適用した構成を示したが、上述した各構成例に示したような内燃機関型や外燃機関型等の発電部(図7、図8)を適用する場合には、図11に示すように、主発電部21Aにおける電気エネルギーの発生に伴って生成される二酸化炭素(CO2)、水(H2O)、窒素酸化物(NOX)、硫黄酸化物(SOX)、残存酸素ガス(O2)等の副生成物のうち、少なくとも、1種以上の特定の成分又は物質を分離、回収して、燃料パック10に設けられた回収保持部11に不可逆的に保持することができるとともに、例えば、残存酸素ガス(O2)を燃料制御部23bに供給することにより、燃料パック10から供給される発電用燃料を酸素ガスリッチの燃料に改質して、燃焼反応により電気エネルギーを発生する主発電部21Aに供給することができ、よりエネルギーの利用効率が高い電源システムを実現することができる。
次に、本発明に係る電源システムに適用される外形形状について、図面を参照して説明する。
図12は、本発明に係る電源システムに適用される外形形状の具体例を示す概略構成図であり、図13は、本発明に係る電源システムに適用される外形形状と、汎用の化学電池の外形形状との対応関係を示す概略構成図である。
上述したような構成を有する電源システムにおいて、燃料パック10を発電モジュール20に結合した状態、又は、一体的に構成した状態における外形形状は、例えば、図12に示すように、汎用の化学電池に多用されている円形電池71、72、73や、特殊形状の電池(非円形電池)81、82、83の規格に則って、これらのいずれかと同等の形状及び寸法を有するように形成されているとともに、例えば、図3、図5に示した発電モジュール20の発電部21、21Xの燃料極31、41及び空気極32、42、図12に示す各電池形状の正(+)極及び負(−)極に各々対応するように、電気的に構成されている。
ここで、円形電池71、72、73は、具体的には、市販のマンガン乾電池やアルカリ乾電池、ニッケル・カドミウム電池、リチウム電池等に最も多用され、対応する機器も多いシリンダ型(円筒型:図12(a))や、腕時計等に利用されるボタン型(図12(b))、カメラや電子手帳等に利用されるコイン型(図12(c))等の外形形状を有している。
一方、非円形電池81、82、83は、具体的には、コンパクトカメラやデジタルスチルカメラ等、使用する機器の形状等に対応して設計(カスタマイズ)された特殊形状型(図12(d))や、携帯音響機器や携帯電話等の小型薄型化に対応した角形(図12(e))、平型(図12(f))等の外形形状を有している。
なお、上述したように、本発明に係る電源システムに搭載される発電モジュール20(発電部21、主発電部21A、副発電部21B、動作制御部22、出力制御部23、分離回収部24)は、既存の半導体技術を適用することにより、例えば、数ミクロンオーダーにマイクロチップ化、あるいは、マイクロプラント化することができる。また、発電モジュール20の発電部として、高いエネルギー利用効率を実現することができる燃料電池を適用することにより、既存の化学電池と同等(又は、それ以上)の電池容量を実現するために必要となる発電用燃料の量を比較的少量に抑制することができる。
したがって、本実施形態に係る電源システムにおいて、図12に示した既存の電池形状を良好に実現することができ、例えば、図13(a)、(b)に示すように、燃料パック10Aを発電モジュール20Aに結合した状態における外形寸法(例えば、長さLa、直径Da)が、図13(c)に示すような汎用の化学電池91の外形寸法(例えば、長さLp、直径Dp)と略同等になるように構成することができる。
これにより、汎用の化学電池と同一又は同等の電気的特性を有する電気エネルギーを供給することができるとともに、外形形状においても同等の形状及び寸法を備えた完全互換の電源システムを実現することができるので、既存の携帯機器等のデバイスに対して、汎用の化学電池と全く同様に、動作電源として適用することができる。特に、発電モジュールとして燃料電池を備えた構成を適用し、かつ、燃料パックとして電気エネルギーの発生に伴う副生成物を回収、保持する手段を備え、上述した分解性プラスチック等の材料からなる構成を適用することにより、自然環境やデバイスへの悪影響を抑制しつつ、高いエネルギー利用効率を実現することができるので、既存の化学電池の投棄や埋め立て処理による環境問題やエネルギー利用効率の問題等を良好に解決することができる。
なお、図12に示した外形形状はいずれも、日本国内で市販、又は、デバイスに付属して流通、販売されている化学電池の一例であって、本発明の適用が可能な構成例のごく一部を示したものに過ぎない。すなわち、本発明に係る電源システムに適用可能な外形形状は、上記具体例以外であってもよく、例えば、世界各国で流通、販売されている化学電池、あるいは、将来実用化が予定されている化学電池の形状に合致し、さらには、電気的特性をも合致するように設計することができることはいうまでもない。
なお、上述した実施形態においては、図示を省略したが、燃料パック10に残存する発電用燃料の量(残量)を監視するための残量検出手段を備え、該発電用燃料の残量に基づいて、発電部21又は主発電部21Aにより生成される電気エネルギー(特に、駆動電圧)を徐々に変化(低下)させるものであってもよい。このような構成によれば、本発明に係る電源システムから出力される電気エネルギー(駆動電圧)を、化学電池における経時的な電圧変化に対応させて変化させることができるので、化学電池を動作電源とする各種デバイスに標準的に搭載されている電池残量の通知機能を良好に動作させることができ、化学電池との互換性を一層高めることができる。
なお、上述した各実施の形態においては、化学反応により生成される窒素酸化物(NOX)、硫黄酸化物(SOX)を回収する構成を示したが、窒素酸化物(NOX)や硫黄酸化物(SOX)の生成量がごく少量であるか、あるいは、発電モジュール20に窒素酸化物(NOX)、硫黄酸化物(SOX)を無毒な物質に分解又は改質する触媒を設ければ、回収保持部11に保持することなく、電源システムの外にそのまま排気するようにしてもよい。
この場合、燃料パック10(回収保持部11を含む)は、上記燃料貯蔵容器としての機能を有しつつ、特定の環境下において、元来自然界に存在し、かつ、自然を構成する物質への変換が可能な材料により構成されていることが好ましい。すなわち、燃料パック10は、例えば、自然界に投棄又は埋め立て処理された場合であっても、土壌中の微生物や酵素等の働き、あるいは、太陽光線の照射、雨水や大気等により、自然界に無害な物質(元来自然界に存在し、かつ、自然を構成する物質、例えば、水と二酸化炭素等)に変換される各種の分解反応、例えば、生分解性や光分解性、加水分解性、酸化分解性等の分解性を有し、かつ、封入される燃料との接触により、少なくとも短期間で分解される恐れがなく、また、封入される燃料を、少なくとも短期間で燃料としての利用が不可能となるほど変質させるものではなく、さらに、外的な物理適応力に対して十分な強度を有する特性を備えた高分子材料(プラスチック)により構成することができる。
なお、上述したように、化学電池のリサイクルによる回収率は、僅か20%程度に過ぎず、残りの80%程度が自然界に投棄又は埋め立て処理されている現状を鑑みると、燃料パック10の材料としては、生分解性プラスチックを適用することが望ましく、具体的には、石油系又は植物系原料から合成される化学合成型の有機化合物を含む高分子材料(ポリ乳酸、脂肪族ポリエステル、共重合ポリエステル等)や、微生物産生型のバイオポリエステル、トウモロコシやサトウキビ等の植物系原料から抽出されるでんぷんやセルロース、キチン、キトサン等からなる天然物利用型の高分子材料等を良好に適用することができる。
また、燃料パック10が分解性を有する高分子材料により構成され、かつ、発電用燃料としてアルコールや炭化水素等の自然界において、元来自然界に存在する無害な物質に分解しやすい物質を適用することにより、仮に、自然界に投棄又は埋め立て処理された場合や、人為的な焼却処分や薬品処理等された場合であっても、自然環境に対して大気や土壌、水質の汚染、あるいは、人体に対する環境ホルモンの生成等の悪影響を及ぼすことを大幅に抑制することができる。