本発明の幾つかの実施形態、本発明を実施して使用する際における幾つかの実施形態、及び本発明を実施するための最良の形態を、添付の図面を参照しながら以下詳しく例示として説明する。一部の図面中、同じ参照符号は同じ構成要素を示す。
以下、本発明の組み合わせ型温度露出インジケータの構成部品として有用に組み込み可能な凍結インジケータを説明する。かかる凍結インジケータは、液体媒質中における固体粒子の視覚的に活性な分散体であって、凍結露出を示す明確な外見の変化を生じる分散体からなる活性インジケータを用いることができる。本発明の一部の実施形態では、凍結インジケータの有効寿命(使用有効期間)を延ばすために、新規な蒸気封止技術を用いる。また本発明は、例えば金属や金属酸化物など無機顔料の、水、水性媒質あるいはその他適切な分散媒中の分散体を含む新規な分散体を用いた実施形態を含む。
本発明は、大量生産可能であり、且つどのインジケータによっても一貫した応答を可能とする、小型で低コストの凍結インジケータをなす有用な実施形態を含む。本発明に基づくそのような小型の凍結インジケータは、例えば数ミクロリットルまたは数十ミクロリットルレベルで計測可能なかなり小型のインジケータ容量を有し得る。液体媒質を通過する光路が短いにもかかわらず、本発明は、例えば凍結露出の結果として不透明度、反射率、またはそれら両方において顕著な変化を呈することによって、凍結露出を示す優れた視認シグナルを与えることが可能な活性インジケータ要素を提供する。
本発明の更なる実施形態は、例えば所定の時間間隔にわたる特定の温度または特定の温度間隔への露出など、定められた凍結露出の事象に応答して、明瞭な視認シグナルを提供可能である。望ましくは、凍結インジケータの生産バッチ中の全てでないにしてもほとんどが、定められた温度事象に応答して、所望の視認シグナルを与えることができる。例えば、水の凝固点をモニターする場合、定められる温度事象は、-2°C± 0.2°Cで1時間とし得る。もちろん特定の目的に応じて、その他の温度事象も定義あるいは選択可能である。所望の均質性(一貫性)は、バッチあるいはサンプル中における凍結インジケータユニットの少なくとも約90%から、良好な視認応答が得られることである。例えば99%や99.9%など、もっと高い均質性が得られればより有用である。
本発明は、通常は凍結温度より高い周囲温度に維持されており、凍結するとその指示を与えることが可能な新規な凍結インジケータを用いることができる。凍結の指示は、水の凝固点またはそれに近い温度に対するインジケータの現在あるいは過去の露出についての明瞭で不可逆的な指示として与えられる。指示される凍結温度またはそれに近い温度の事象は、水の凝固点から数度の範囲内、例えば約
−10°Cから約5°Cの範囲内の温度への露出とすることが考えられる。インジケータを活性化させるのに必要な露出の持続時間は、インジケータの応答成分が周囲温度にまで冷えるのに掛かる時間、及び凍結が生じるのに要する時間を含む。この時間は、当業者であれば理解されるように、インジケータの構成及びその他各種の因子に応じて、1または2分程度の短い時間、30または60分程度の長い時間、あるいはその他適切な時間とし得る。
「水」及び「水性」という用語は本明細書において、酸化水素H2Oだけでなく、酸化デューテリウムD2O、部分的に重水素化された水DHO、及びそれらの混合物を含む。酸化デューテリウム及び/又は部分的に重水素化された水の濃度を変更して、水または水相の凝固点を制御できる。
本明細書の開示から当業者であれば自明であるように、凝固点以外の温度や上記以外の露出持続時間に応答する凍結インジケータも提供可能である。さらに、本明細書の開示から当業者であれば、特定の物質の凝固点に対応することもあれば対応しないこともある、周囲よりも低下したその他の温度に応答するインジケータをどのようにすれば提供できるか理解可能であろう。
本発明を実施するのに有用な一部の凍結インジケータの実施形態は、凍結温度に対するホスト製品の実際の過去における露出、あるいは潜在的な露出を伴う事象を指示するのに使用できる。
使用する液体分散媒の組成に応じ、指示される凍結温度は、本発明の凍結インジケータで使われる場合、水の凝固点、水性溶液や混合物の凝固点、あるいは有機物、シリコーンやその他の溶媒、液体や液体混合物の凝固点とし得る。液体媒質は、凍結露出の前、中及び後において単一相であることが望ましい。つまり、液体媒質は単一の液体例えば水、または凍結の前、中及び後あるいは解凍後において1つまたは複数のその他のものから分離しない混合可能な液体の混合物とし得る。その他の液体としては、例えば所望なら、エチルやその他のアルコール、トルエン、ヘキサンを使用可能である。
本発明の一実施形態において、活性インジケータ要素23は、有機溶媒あるいはその他の有機液体を含まない。
応答温度は所望なら、例えば液体媒質の凝固点を低下させる溶質を加えることによって調整できる。一例として、低下される温度の範囲は約−1°Cから約−5°Cである。
制限を意図するものでない一例では、低下した凝固点を有するホスト製品について、0°Cより低い凍結指示を与えるため、塩化ナトリウムまたはその他適切な溶質が適量含められる。そのようなホスト製品の例は、血清、血液、その他の体液、及び類似物を含む。
本発明の更なる実施形態によれば、水または用いられるその他の水性分散媒の凝固点を高めるため、酸化デューテリウムまたはその他適切な物質を添加できる。
一部の実用状況においては、ホスト製品自体が凍結するよりわずか前に、凍結インジケータが凍結することがある。この現象は、ホスト製品の差し迫った凍結を予め警告する点で、一部の場合に有用である。予め与えられる警告は、誤った保証(肯定)が行われるリスク、あるいは潜在的に損傷が生じる凍結条件にホスト製品が露出されことの指示を怠るリスクを減じる。つまり本発明の凍結インジケータは、既に起こったかもしれないしあるいはまだ起こってないかもしれないホスト製品の実際の凍結でなく、インジケータ自体の現在または過去の凍結を、それ自身の視覚表示によって指示する。
本発明による凍結インジケータで与えられる凍結指示は、本明細書の開示から当業者であれば自明であるように、各種の方法で使用可能である。例えば、否定の指示、つまりホスト製品の状態に問題が有り得ることもしくは状態が望ましくないことを表す凍結露出の指示を与える凍結インジケータを有するホスト製品は、さまざまな異なる方法で対処できる。すなわちそのようなホスト製品は、使用の継続または撤回、将来のエンドユーザによる廃棄、流通チャネルからの排除、または改善が可能である。
一部の実施形態において、本発明を実施するのに有用な凍結インジケータは、一定のインジケータ容積体(volume)を閉じて取り囲むインジケータバブル(半球状体)またはハウジングを備え、インジケータ容積体が活性インジケータ要素または物質を含む。インジケータバブルは、例えばドーム様形状やその他の適切に輪郭形成された形状など、任意の適切な形状を取り得る。インジケータバブルは、ホスト製品に付着あるいは付設可能なインジケータ基材上に支持したり、あるいはその上方または外側へ突出可能である。
凍結インジケータは、幅広い各種のホスト製品に適用あるいは付設可能な小型の視認インジケータとして有用に実施できる。小型の凍結インジケータの実施形態は、経済的な大量生産に適している。但し所望なら、比較的大型の実施形態も可能である。そのような大型の実施形態は、所望であるなら、より大きな視認効果及び/又はより遅い応答時間をインジケータの視認シグナルに与えることができる。
一部のホスト製品は凍結に敏感で損傷し易い製品であり、例えばワクチン用の小型薬瓶や損傷し易い生物製剤を含んだ注射器、あるいは感覚反応上の品質が凍結によって損なわれるその他の凍結に敏感な製品、例えば果物、トリュフ(truffles)、グルメ向き食肉、魚などの食品が含まれる。
上記以外の適用可能なホスト製品としては、本明細書の他の箇所でも記述されているように、チーズやワインなどの熟成製品が含まれる。さらに他の適用可能なホスト製品は、当業者にとって周知であるかもしくは周知となるものである。
ここで図1−2を参照すると、番号10で表した例示の凍結インジケータは、凍結インジケータ10を構造的に支持する担持基材12と、基材12の下面に塗布された接着剤層14と、ライナー(裏当て)16とを備える。本明細書で用いる方向に関する記述(下面など)は、図1及び2に示したインジケータ10の向きを基準にしている。尚実施に際して、凍結インジケータ10は任意の所望の向きを取り得るものである。ライナー16は引き剥がしシーとして機能し、これを引き剥がすことでライナー16上の接着剤14によって、凍結インジケータ10をホスト製品(不図示)へ取り付け可能となる。従ってその目的上、接着剤14は所望なら感圧式のものとし得る。ライナー16はフレキシブルなのが望ましいが、剛性でもよく、例えばポリマー、紙、金属のフィルムやシートなど、任煮の適切なフィルム材またはシート材で形成可能である。ライナー16や感圧接着剤として使用可能な適切な材料は、引き剥がしシートまたはその他の分野において周知である。上記に代え、別個に塗布される接着剤で凍結インジケータをホスト製品に取り付けてもよく、そのような接着剤は所望なら感圧式、ホットメルト、または化学反応接着剤とし得る。この場合、接着剤はインジケータをホスト製品に取り付ける際に塗布可能である。
凍結インジケータ10をホスト製品に取り付けるあるいは付設させる別の手段は、当業者にとって周知であるかもしくは周知となるものである。そのような代替手段はフック-ループファスナー方式、ピンなどの機械的な突状物、鳩目、テープ、固定具、及び単なる並置を含むが、これらに限定されない。
基材12の上面に、図1−2に示した本発明の実施形態ではドーム様の形状を有するものとして例示した透明または半透明のインジケータバブル18が保持されている。以下、それ以外の幾つか可能な形状を説明する。インジケータバブル18は、望ましくは熱封着の遮水(ウォータバリア)層22を介して基材12上に支持された周囲フランジ20を有する。インジケータバブル18は、インジケータ容積体34内に入れられた外見が変化する活性インジケータ要素23を含む。インジケータ要素23は凍結インジケータの凍結応答成分であり、後で詳しく説明する。
インジケータバブル18は光透過性が充分に高く、外見の変化を例えば約0.2mから約3mなど適切な視認距離から、肉眼またはその他適切な計測具で読み取り可能とするのが望ましい。
凍結インジケータとして用いるのに適した多くのポリマーフィルムは、顕著な蒸気透過率を有する。凍結インジケータの使用期間中における過剰な蒸気損は、液体分散媒の喪失つまりインジケータの乾き切りを引き起こすことがある。すなわち、蒸気損はインジケータの性能低下や喪失をもたらす可能性がある。この問題を改善し活性インジケータ要素23の利用度を高めるため、本発明は蒸気阻止手段を提供する。かかる手段は、インジケータバブル18の下方で、基材12上に形成された蒸気阻止層24を有する第1の蒸気阻止部材を含む。後で詳述する別の蒸気阻止部材を、インジケータバブル18の壁の層成分として設けることもできる。
遮水層22と蒸気阻止層24は共に、図1−2に示すように、平面形状の薄層シートからなる。不透明なプリント受容リング26がインジケータバブル18を取り囲み、周囲フランジ20の上に位置する。リング26は、テキスト、グラフィックス及び/又はその他のプリント可能な表記27を受容及び表示可能である。
上記に代えてあるいは加えて、表示テキスト、グラフィックス、及びその他のプリント可能な表記を、遮水層22または蒸気阻止層24に施すこともできる。
リング26は適切な色のインク被覆で設けたり、あるいは所望なら例えばポリマー、紙、金属のフィルムやシート要素など、別個の構造要素をフランジ20に付着して設けてもよい。本発明の一実施形態において、リング26は参照リングまたは活性インジケータ要素23に近接したその他の参照領域である。この目的上、リング26またはその他の参照領域は、活性インジケータ要素23の外見を解釈(視認)し易くするため、凍結インジケータの外見変化の最終点もしくはその他の変化点と一致するか、あるいはそれを示唆するように選択された外見を有することができる。例えば、参照リング26は、凍結後における活性インジケータ要素23の外見とほぼ一致するか、またはそれを示唆するものである。本発明の一実施形態において、参照リング26は凍結後の外見と視覚的にコントラストな表示を与えることができる。また例えば参照リング26は、凍結前における活性インジケータ要素23の外見とほぼ一致するか、あるいはそれを示唆するようにもできる。
例えば参照リング26は、凍結した後の活性インジケータ要素23の外見とほぼ一致した外見を有し、両者を組み合わせた外見がほぼ一様になるようにすることもできる。この一様な外見は、活性インジケータ要素23が周囲の参照リング26と対照をなしている当初のインジケータの外見と著しく異なる。
担持基材12は、本明細書の開示に照らして発明の目的を満たすことが見込まれる任意の適切な材料で作成可能である。これらの材料は例えば、ポリマー材、紙、厚紙、その他の繊維または織物材、積層材、金属材、及び金属複合材を含む。担持基材12は、意図する最終用途及び凍結インジケータの所望コストに基づいて選択される強度と耐久性を有することが望ましい。
担持基材12は、特定のホスト製品について所望に応じあるいは適宜、かなりフレキシブル、わずかにフレキシブル、または剛性とし得る。平坦であるが剛性の担持基材12を用いた凍結インジケータ10の実施形態は、ワクチン用小型薬瓶などのホスト製品容器の平坦な頂部またはその他の平坦面上に取り付けるのに使える。フレキシブルで平坦な基材12は、円筒状のワクチン用小型薬瓶、注射器、注射器用容器、その他の薬品用容器、あるいはその他のホスト製品の側面など、湾曲面上に取り付けるのに使える。所望なら担持基材12は、例えば円筒状または球状表面など、凸状の容器表面と合致するように凹状に形成することも可能である。
遮水層22は、水性分散体を活性要素として使用する凍結インジケータ10の実施形態において有用される。適切な水性分散体の例は、本明細書の別の箇所で詳しく説明される。遮水層22は、例えば疎水性の合成ポリマーなど、活性要素23と反応せず且つそれによって劣化せず、特に活性要素23の水性成分が存在する場合にはそれによって劣化しない材料で形成されるのが好ましい。そのような耐久性は、特定の凍結インジケータについて意図される、数日、数週、数ヶ月、あるいは数年の寿命にわたって効果を生じるものとすべきである。インジケータ23内にその他の液体が含まれる場合、それらも同様に適切な材料を用いることで内部に含めることができる。
遮水層22によって得られる有用な追加機能は、熱封着の機能である。遮水層22は適切な材料で形成した場合、周囲フランジ20の近傍あるいはそれ以外の適切な位置において、凍結インジケータ10の別の1つまたは複数の構成部分と有効に封着可能で、インジケータ要素23の周囲に全体的または部分的に封着された容器を与えることができる。耐水性と熱封着の両機能を与えられる遮水層22用の適切な材料は、例えばポリオレフィン、非晶質ポリエステル、及びその他の材料など、当業者にとって周知であるかもしくは周知となるであろう熱封着可能な材料を含む。また当業者にとって自明であるように、異なるバリヤー層22を用いて対応する機能を与えることで、異なる種類の活性要素23も利用可能である。
所望なら遮水層22は、活性インジケータ要素23に対して視覚上対照的な背景を与え、活性要素23の視認とインジケータの読み取りを容易化する外見を有することもできる。例えば、カーボンブラック粒子の分散体など、比較的暗いインジケータ要素23を用いる場合、遮水層22は淡いまたは明るい色とし得る。これに代えて所望なら、インジケータバブル18の視覚的な外見に対して、遮水層22は比較的暗くまたは濃く着色された背景を与えることもできる。
外見の別の選択肢を与えるため、追加の着色または他の方法による視覚的活性層あるいは被覆を、遮水層22の「上方」の視認者の方を向いた表面に設けることも可能である。
基材の蒸気阻止層24は、蒸気の下方への移動を防止し、それに伴うインジケータバブル18からの蒸気損を防止する役割を果たす。蒸気阻止層24は、例えばアルミニウムやその他適切な水蒸気阻止材で形成された金属箔またはフィルムで構成できる。所望なら基材の蒸気阻止層24は、基材12または遮水層22に対して蒸着可能である。上記に代えて所望なら、遮水層22は、一部の例については後でさらに説明する適切なポリマーまたはシリコーンの水封止材からなるフィルムまたは被覆を、構造的なバリヤー層または担持基材12上に形成して構成してもよい。そのような場合の一例は、アルミニウムの層または被覆である。さらには、インジケータバブル18に関連して後で述べるような透明な蒸気阻止材も使用可能である。
基材の蒸気阻止層24は任意の適切は構成とすることができ、例えば基材12及び遮水層22と組み立てられる別個の要素としたり、あるいは上記で示唆したように、それらいずれかの構成部材の上面または下面に被着される被覆またはフィルムで構成可能である。所望なら基材の蒸気阻止層24は、インジケータバブル18の周囲に延びる容器やポーチの壁部ともし得る。
所望なら、基材12、遮水層22、及び基材の蒸気阻止層24は、積層体または複合体として予め組み立て、幾つか個々の層の所望な機能性を複合体全体として与えることもできる。すなわち、例えば蒸気阻止層24を比較的丈夫なアルミニウム層とし、これを担持基材12に接着して、担持基材12の構造的安定性に寄与させることが可能である。
本発明の有用な一実施形態において、遮水層22と蒸気阻止層24は、複合二層材または積層材として、例えば熱封着可能なフィルム上に施したアルミニウムフォイル層または被覆からなる被覆フォイルとして設けることができる。アルミニウムの層または被覆は、所望の蒸気阻止機能を与え、蒸気阻止層24となり得る。所望ならアルミニウムの層または被覆より上方の各層を透明にして、アルミニウム層が活性インジケータ23に対し銀色の反射性背景を与えるようにしてもよい。
上記のような複合二層フィルムの熱封着可能なフィルム構成部のための適切な材料の幾つか有用な例は、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルを含む。その他の例は、当業者にとって周知であろう。所望なら、被覆フォイルの片面または両面にラッカーを塗布可能である。本発明の実施に際して有用な被覆フォイルの供給メーカーの1つは、米国ニュージャーシ州サマヴィル所在の Tekni-Plex, Inc. である。 Tekni-Plex, Inc.から入手可能で有用なアルミニウム被覆フォイルの一例はTEKNILID(商標)1252で、これは供給メーカーによれば、ポリ塩化ビニル及びポリ塩化ビニリデンを基材とし、その上に上塗りラッカー/アルミニウム/熱封着ラッカーを形成してなる。
再び図1−2を参照すると、図示したインジケータバブル18の実施形態は、透明または部分的に透明なドーム状の外壁29からなる上方構造体を有し、外壁29は各種の機能を果たすように複数の層で作成可能である。
本発明の一実施形態において、外壁29は外層28と、熱成形可能な内層32と、透明な蒸気阻止層30として形成される別の蒸気阻止部材とからなる多層構成を有する。外層28は凍結インジケータ10の周囲環境に露出される一方、内層32は基材12と共に、内部に要素23を収容可能なインジケータ容積体34を画成する。
透明な蒸気阻止層30は所望なら、内層32と外層28の間に挟むこともできる。これに代えて、透明な蒸気阻止層30を、内層32の内側または最外層28の外側に配置することもできる。例えば透明な蒸気阻止層30は、外層28または内層32いずれか上の層または被覆として形成可能である。この層または被覆は、例えば真空下の蒸着やその他の適切な方法など、任意の所望な方法によって形成可能である。
望ましくは、外壁29がインジケータ容積体34内の活性インジケータ23を視認するための視認窓を提供する。このために、外壁29を構成する幾つかの層がそれ自体光透過性とされるか、あるいは光透過層を含む。あるいは、インジケータバブル18の外壁全体を光透過性にする必要はない。所望なら、ドームよりも広がりが小さい光透過性の窓を設け、ドームの残りの部分を不透明にしてもよい。
外壁29はその層全体を考慮して、例えば透明または半透明など充分に光透過性で、インジケータバブル18の内部における反射の著しい変化を、人の肉眼または光学的な読み取り装置によって外部からモニター可能とすることが望ましい。このようなモニタリングは、例えば約0.2mから約3mの距離から有効である。但し所望なら、凍結インジケータ10は、上記よりも短いあるいは長い距離からのモニタリングを可能とする視認特性を有することも可能である。
本発明の一実施形態においては、活性インジケータ23がインジケータ容積体34を完全に満たす。別の実施形態においては、活性インジケータ23がインジケータ容積体34を完全には満たさず、小さいが視認できる空気またはその他のガスの気泡36がインジケータ容積体34内に形成される。気泡36は容易に移動して、ドーム内に液体媒質が存在することを示す。例えばドーム直径の約5から約30%の範囲の直径、またはそれより大きい寸法を有する気泡は、凍結インジケータとしての役割も果たし、活性インジケータ要素が凍結して固体状態にあることを、ホスト製品の動きに伴って明瞭に指示する。このような指示は、活性インジケータ要素が凍結の指示ついては比較的あいまいで、解凍時により顕著な指示を与える場合に有用である。
本発明の別の実施形態において、凍結インジケータ10は、不透明でもよい基材材料から、例えば成型によって形成された湾曲またはドーム状部分を有するインジケータバブル(半球状物)18を備える。基材材料としては、例えば2ミル(0.002インチ、約0.05mm)の適切な厚さを有するポリウレタン発泡体などが使え、所望ならバブル18の湾曲部分が凹部として形成される。インジケータバブル18の湾曲またはドーム型の形状は、平坦、透明またはその他の光透過性窓によって覆うことができ、その窓を通じて凍結指示のシグナルが視認される。ドーム及び平坦な透明窓はそれら両者の間で、インジケータ分散体を受け入れるためのインジケータ容積体をドーム内に画成する。所望なら、インジケータ容積体は前述したように、1つまたは複数の適切な蒸気阻止材で部分的または全体的に包囲可能である。
有機液体、特に揮発性有機物を活性インジケータ要素23の成分として含まない水性分散体を用いた本発明の実施形態は、蒸気阻止層30に適した材料または構造の選択を容易にする点で有益である。
所望なら、後で詳述するように、透明な蒸気阻止層30の範囲を、周囲フランジ20を除いた領域に限定し、フランジ20の熱封着を容易化することも可能である。
熱成形可能な内層32を構造層とし、インジケータバブル18の外壁29に形状を与えることもできる。あるいはそのような構造的形状を、外層28及び/又は透明な蒸気阻止層30で与えてもよい。一実施形態において内層32は、遮水層22またはその他の適切な層に対し、周囲フランジ20で熱封着可能な熱成形材料を有するか、もしくはそれによって構成することができる。内層32は、場合に応じ適度な可撓性を伴って所望の形状を維持し、外層28を構成するその他の層を支持可能である。
外層28の外面は、通常の取り扱い中及びその他の物体との接触時の損傷からインジケータバブル18を保護するため、それ自体を耐引っ掻き性にしてもよいし、耐引っ掻き性の被覆を施すこともできる。上記に加えてもしくはそれに代えて、外層28の外面をプリント可能、つまり印字物を受容及び表示可能に処理あるいは構成することもできる。
別の実施形態において本発明は、外層28、基材の蒸気阻止層24、及び内層によって個々に与えられる諸機能の幾つかを果たす既知の積層材または複合材を使用可能である。例えば、丸薬、錠剤などとして処方された薬物用の蒸気遮断包装として用いられている複合包装フィルムは、メーカーの仕様、簡単な実験、もしくはその他適切な手段に基づく判断によれば、本発明の実施に際して用いるのに適した性質を有するものである。
本発明の一実施形態において、活性インジケータ要素23は水蒸気損を防止するため、蒸気阻止容器内に全体的に収容される。蒸気阻止容器は、蒸気阻止層24と蒸気阻止層30によって全体的、ほぼ全体的、または部分的に構成可能である。本発明の別の実施形態(図示せず)において、容器は小型アンプルのように、インジケータ分散体を収容したフレキシブルまたは剛性の蒸気阻止材からなる独立式で、曇りのないまたは透明な封着サックである。所望なら、インジケータ分散体を含むそのようなサックまたはアンプルは予め作製しておき、その後基材12及び凍結インジケータ10のその他所望の構成部と一体に組み立てることもできる。
本発明の別の実施形態によれば、少量または小等分量のインジケータ分散体が蒸気阻止材の透明で、フレキシブルなサック内にカプセル封入される。内容物の液体状態を示す手助けとして、小さい空気またはその他のガスの気泡を封着サックまたはアンプル内に含めるのが有用である。
本発明のさらに別の実施形態では、インジケータ分散体をマイクロカプセルに封入し、各凍結インジケータユニット毎に、各々が凝固可能な分散体を含む微小バブルのフラットアレイ(平坦な配列物)を得ることができる。そのようなインジケータアレイは所望なら、ホスト製品に合わせて湾曲可能であり、また印刷あるいはその他の連続的な巻帯体(ウェブ)やシート送り式大量生産に適するようにも構成可能である。
そのような方式で収容される液体及び液体蒸気は、水、水性液体、及びそれらから誘起されるものを含む蒸気である。その他の液体や溶媒及びそれらの蒸気が活性インジケータ要素23で使われる場合、所望なら対応する適切な蒸気阻止材を使うことで、それらも同様に収容及び保持可能である。用いる特定の蒸気阻止材は、液体とその蒸気の性質に基づき、凍結インジケータの意図する有用期間中充分な封じ込めを与えて性能の劣化を防止するように選択可能である。
凍結インジケータ10の使用前における保存寿命は所望に応じ、蒸気損を防止するアルミニウムフォイルやその他の適切な材料からなる保護ポーチやシース内にインジケータを封入することにより、例えば1年、2年、数年あるいは不定期間に延長可能である。保護ポーチやシースは、インジケータ10をホスト製品に適用する前、インジケータ10をホスト製品に付設する前、またはインジケータの応答を読み取る前に取り除くことができる。
蒸気阻止層30に使われる材料は、凍結インジケータの意図する寿命中における水またはその他の分散相成分の望ましくない損失を防ぐように選択可能である。前述したように、分散相または媒質の過剰な損失は、シグナルの質低下、凍結露出事象に関する分かりにくいシグナル、またはシグナル無しの事態をもたらすことがある。本発明の一実施形態において、蒸気阻止層30は、温度38°C(100°F)及び相対湿度90%で、水蒸気または水分の透過率が1.0g/m2/日以下を可能とする物質、積層材、複合材などからなる。他の実施形態において、温度38°C(100°F)及び相対湿度90%で、水蒸気の透過率は0.50g/m2/日以下である。所望なら、水蒸気の透過率が0.1g/m2/日以下など、もっと低い水蒸気の透過率を与える材料も使える。
蒸気阻止材は、本発明の多くの目的上、その蒸気阻止特性が、正常または標準の保存寿命中の1年で、水またはその他のインジケータ液体の20重量%以下、より望ましくは10重量%以下が失われるような特性である場合に有用となる。もっと長い保存寿命が望ましい場合には、例えば正常または標準の保存寿命中の2年、3年、あるいはもっと長い年数で、水の20重量%以下、より望ましくは10重量%以下が失われるように、より優れた水蒸気制御を用いることもできる。ここで用語「保存寿命(shelf life)」は、例えばホスト製品への取り付け後の周囲の条件に露出される状態におけるインジケータの寿命を意味する。
本発明は、基材の蒸気阻止層24が透明な蒸気阻止層30について上述した蒸気制御の要件を満たすような実施形態も含む。本発明の多くの実施形態では、基材の蒸気阻止層24を不透明にできるため、アルミニウムやその他不透明な材料からなる適度に厚い層を蒸気阻止層24に用いて、蒸気損の良好な制御を行うことができる。
多くの有用で透明な蒸気阻止材は、本明細書における教示に基づき当業者にとって自明なものであり、複合材を含む。一部の適切な材料は、当業者にとって周知であるかまたは周知となるであろう合成有機ポリマー材、シリコーンまたは有機シリコーンポリマー材を含むが、これらに限定されるものではない。単層フィルムや多層積層材も使用可能である。有用な多層積層材は、構造的な合成ポリマーフィルム及び蒸気阻止合成ポリマーフィルムからなる。一般に、適切な多層材はより低い水蒸気透過率を有するが、より高価である。一部の有用で透明な蒸気阻止材の例は、下記のものを含む:木製床用封水材のような、被覆として塗布可能で透明な封水ウレタン、ポリ塩化ビニルとポリクロロトリフルオロエチレンの2層積層材、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン及びポリクロロトリフルオロエチレンの3層積層材、グリコール化ポリエチレンテレフタレート(「PETG」)、ポリクロロトリフルオロエチレン(「PCTFE」)、PETGとPCTFEの2層積層材及びポリ塩化ビニルとPCTFEまたはその他適切なバリアフィルム材との2層積層材、エチレンビニルアルコール共重合体(「EVOH」),及びPETG,PCTFE及びEVOHの3層積層材。
透明な水蒸気バリア30を作製するのに有用な一部の材料は、Tekni-Plex, Inc.から入手可能であるような剛性またはフレキシブルなブリスター(発泡)包装用の水分遮断フィルムを含む。その一例は、Honeywell International Inc から商標ACLAR22で供給されているようなポリ塩化ビニルとポリクロロトリフルオロエチレンの2層積層材である。別の例は、米国ニュージャーシ州サマヴィル所在のTekni-Plex,Inc.から供給されているTEKNIFLEX(商標)VPA760で、これは2層、すなわち7.5ミルのPVC層と0.6ミルのPCTFE層とからなる積層材であると説明されている。この物質の水蒸気透過率はメーカーによれば、24時間当たり100平方インチ当たり0.025グラムである。同じメーカーによる別の例は、TEKNIFLEX(商標)VPA10300で、これは3層、すなわち10ミルのPVC層、2ミルのPE層、及び3ミルのPCTFE層からなる積層材であると説明されている。この物質の水蒸気透過率はメーカーによれば、24時間当たり100平方インチ当たり0.005グラムである。
一部の実施形態において、本発明は凍結インジケータの大量生産のため、トローチ剤や錠剤包装用にTekni-Plex, Inc.から供給されているような、例えば直径15mmのブリスター(泡状体)の予形成アレイを用いることができる。
その他の適切で透明な水蒸気遮断材の一部は、例えばアルキルと低級アルキル置換シランを含むトリメトキシシランなど、硬化すると丈夫な疎水性被覆を与える重合可能な有機シリコーンモノマーを含有可能である。このため、所望ならインジケータの作製プロセスに、例えば約60−120°Cなど適度な温度での蒸気阻止材硬化工程を含めることができる。この場合基材の被覆材料は、適切なポリエステルなど、適度な硬化温度に耐えられるように選択される。
本発明の一部の代替実施形態では、一種または複数種の金属からなる薄い蒸着(デポジット)膜が透明な蒸気阻止層30の役割を果たしたり、あるいはその成分となり得る。蒸着金属は例えば、アルミニウムまたはその他の適切な金属である。蒸着金属膜の厚さは、凍結インジケータの意図される寿命中における水蒸気やその他の液体の蒸気の適切な遮断と適切な光透過性との間のバランスが得られるように選択される。
本発明の別の実施形態では、透明な蒸気阻止層30用に他の材料を用いることもできる。例えば蒸気阻止層30は、インジウムスズ酸化物、酸化ケイ素などや、またはそのような材料の組み合わせ物や複合物など、透明なセラミック材からなる蒸着もしくはその他の方法で形成されたフィルム、層または被覆で構成可能である。一部の有用なセラミック層製品は、米国ミネソタ州ノースフィールド所在の Sheldahl から入手可能である。セラミック材は脆いことがあるため、蒸気阻止層30が湾曲形状を有する場合、セラミックの付着は例えば外層28の凹状内面や内層の凸状外面に対してなど、予成形された構成部に対して行うことができる。このようにすれば、脆いセラミック層をポスト成形しなくて済む。
次に図3を参照すると、凍結インジケータ10の各構成層は、本明細書で説明した諸機能を果たすのに適した寸法を有する。尚各寸法は、特定の最終的な製品用途、モニターすべきホスト製品、及びその他の因子に従って変わり得る。図1の用紙面と直角な水平面内における凍結インジケータ10のX−Y寸法は主に、意図する用途によって決まる特定の凍結インジケータ10の所望な寸法及び形状によって決まる。
X−Y平面に直角な方向、つまり図3に示した用紙上の垂直方向、において取り得るZ−方向の寸法例を次に説明する。以下に記述する寸法は、直径が例えば10mmで、インジケータ容積体34の容積が例えば10または20mLの凍結インジケータ10に用いられるもので、単位はミル(mils)で表されている。尚ミルは、1インチの1000分の1で、約0.025mmである。図3を順次上方に向かって見ると、引き剥がし可能ライナー16は約0.25から約25ミルの厚さで、例えば約2.5ミルの厚さとし得る。接着剤層14は約0.1から約10ミルの厚さで、例えば約1ミルの厚さとし得る。担持基材12は約0.2から約20ミルの厚さで、例えば約2ミルの厚さとし得る。基材の蒸気阻止層24は約0.002から約0.2ミルの厚さで、例えば約0.02ミルの厚さとし得る。遮水層22は約0.1から約10ミルの厚さで、例えば約1ミルの厚さとし得る。
熱成形可能な内層32は約0.6から約60ミルの厚さで、例えば約6ミルの厚さとし得る。透明な蒸気阻止層30は約0.02から約2ミルの厚さで、例えば約0.2ミルの厚さとし得る。外層28は約0.03から約3ミルの厚さで、例えば約0.3ミルの厚さとし得る。周囲リング26は約0.03から約3ミルの厚さで、例えば約0.3ミルの厚さとし得る。その他の適切な寸法は、本明細書の開示から明らかであるかまたは明らかとなるであろう。上記の各寸法は、単に例示であるに過ぎない。その他の可能な寸法は、当業者にとって自明であろう。
上記の各層は、フランジ20の近くで一体状に締め付けまたは圧接することで、望ましくはインジケータ容積体34の全周にわたって閉ループ状に延びる水及び蒸気に対する密封シールを与えることができる。その密封シールは所望なら、加熱及び/又は接着剤を用いて、もしくはその他の適切な手段で施せる。例えば、熱成形可能な内層32を遮水層22に封着するのに、感圧接着剤を使用可能である。
インジケータの幾つかの層の材料は、フランジ20の近くで相互に接着可能または熱封着可能となるように選択したり、あるいは接着剤を用いて各層を垂直方向にそれと隣接する層に接合することができる。上記に代えてまたはそれに加えて、クランプ、リベットなどの機械的手段も、幾つかの層を一体状に固定するのに使用可能である。また凍結インジケータ10に構造的一体性を与えるのに、上記したものの1つまたはその他、もしくはそれらの組み合わせを用いてもよい。
凍結インジケータ10は、低コストでの作製のため、ロール状またはシート状材料として入手可能な市販のフィルム材を部分的または全体的に有する、もしくはそれによって部分的または全体的に構成することができる。そのような凍結インジケータは、明確な視認シグナルを与える小ユニットとして実施可能である。基材の蒸気阻止層24と透明な蒸気阻止層30を用いて得られる蒸気損の制御は、活性インジケータ要素の乾き切りを防止し、凍結インジケータ10によって与えられる視認シグナルの均質性(一貫性)及び明瞭度を促進させる。
図1に示すように、インジケータバブル18は垂直の断面において、円の一部をなす内部容積体34を画成する。外壁29がほぼ部分円弧状である一方、基材12及びその上の各層が、インジケータバブル18に対して平坦な床を提供する。その他の断面形状、特にドーム内の流体圧によって自然に与えられる形状、もしくはその他各種の形状も用いることができる。
インジケータバブル18は平面視において、例えば円形、楕円形、角状、正方形、長方形、三角形、多角形、六角形、及びストリップ(帯片)状など、任意の所望な外周形状を取り得る。インジケータバブル18の角形状は、一体状のフィルムやシートなどから凍結インジケータの構造物を受け入れるように、丸みを付けたまたは湾曲した角部を有する形状で実施可能である。平面視における凍結インジケータの外周形状は、インジケータバブル18と同様の形状、あるいは全く異なる形状とし得る。凍結インジケータ10の図示した実施形態は、所望ならその他の形状も取り得るという理解を前提として、凍結インジケータ及びインジケータバブル18が共に平面視で円形という特に有用な例を参照してさらに説明される。
活性要素23は、凍結温度への露出とその後の解凍によって、明瞭で且つ不可逆的な変化を外見に生じる任意の有効な液体組成物、分散体、またはその他の要素とすることができる。外見の変化は、活性要素内に存在する水またはその他の液体の結晶化によってもたらされてもよく、人の観測者あるいは光学的手段で読み取られる。
上述したように有用な視覚上の変化は、例えば水性液体媒質などの液体媒質中における不透明な固体粒状物の分散体を用いることによって与えられる。液体媒質は、液体媒質の単独液体成分として、水または水性混合物からまたは実質上それらからなるのが有用である。本明細書で説明するようにもしくは当業者にとっては自明であるように、溶質が存在してもよい。液体媒質は有機液体、特に非極性の揮発性液体を含まないものとし得る。但し一部のケースでは所望なら、例えばエチルアルコールなどの極性有機溶媒を、場合によっては水との共沸点混合物の形で、凝固点を下げるために用いてもよい。また水と混和可能で、凍結インジケータ10の使用条件下において水または水相から分離しない液体も使える。本発明の一部の実施形態では、凍結前、中及び後において単相のままである液体水性混合物を用いる。
本発明によれば、有用な比率の酸化デューテリウム及び/又は重水素化水を、液体媒質で用いられる水中に含めることができる。酸化デューテリウムは、水性液体媒質の凝固点を高める役割を果たす。さらに酸化デューテリウムは、所定の凍結温度においてより迅速な応答を与えるのを助成する。例えば、水が存在する場合における、液体媒質中の水成分内での酸化デューテリウムの比率は、水のうち約10から約70重量%の範囲で用いることができる。所望ならその比率は、液体媒質中の水成分内のうち約20から約50重量%とし得る。
活性要素23の一例は、水またはその他の水性媒質中におけるインクまたはその他の不透明な粒子の安定した水生分散体、場合によってはコロイド状分散体からなる。分散粒子は、安定して分散可能な、任意の適切な粒径(粒度)及び粒径分布をとり得る。例えば、分散粒子は10ミクロン、1ミクロン、または100nmより小さい平均粒径を有することができる。
粒子は、例えばカーボンブラック、酸化鉄、ウルトラマリンなど、任意の適切な有機または無機顔料やレーキとし得る。その他多くのものも当業者にとって周知であり、使用可能である。
分散される固相は、例えば約5容量%以下など、分散体中かなり小さい比率とし得る。本発明の一実施形態では、約1容量%以下の比率の顔料を用いる。この比率は、約0.1から1容量%の範囲が可能である。所望なら、分散体中の固体粒子について、約10重量%までのもっと高い比率も可能である。固体のより高い濃度は、凍結前の凍結インジケータ10に対して、より濃いまたはより暗い視覚上の外見を与えることができる。一部のケースでは、固体濃度が低い方が凍結時により明瞭な視覚上の変化を与えることもある。
所望なら、分散体の凝固開始を助成し、決められた温度事象に対する一貫した応答を得るのを容易化するため、核形成剤を用いることもできる。例えば水は、0°Cの標準条件下で正確な融点を呈する。しかしながら、周知の過冷却の現象により、与えられた環境状況における凝固点はゼロより数度低くなることがある。その他の液体も、多かれ少なかれ同様に挙動する。核形成剤の使用、水性液体分散媒の場合には氷核形成剤の使用は、凝固点を液体の融点により近づける制御を助成する。
水性のインジケータ分散体を利用した本発明の一実施形態では、水の凍結をその凍結に近い温度で開始させることが知られている核形成剤を用いる。適切な核形成剤の一部の例は、当業者にとって周知であるかまたは周知となるであろうヨー化銀結晶、低温析出のヨー化銀/臭化銀混合物、硫化銅、氷核を形成するたんぱく質材、及びその他の適切な氷またはそれ以外の核形成剤を含む。氷核を形成するたんぱく質材の一例は、York Snow (米国ニューヨーク州ヴィクター所在)から商標 SNOMAX で市販されている、氷核形成活性微生物
Pseudomonas syringae (植物病原細菌)から誘導された雪誘起製品である。
核形成剤は、核形成上有効な任意の量または比率で添加可能であり、例えばインジケータ分散体の約0.01重量%から約1重量%の比率、一例としては約0.05から約0.1重量%の核形成剤を用いる。当該分野で周知のように、一定量の核形成剤で異なる量の液体に核形成を行える。所望なら、用いるべき核形成剤の量をルーチン実験によって求めることができる。
凍結インジケータ10は所望なら、可視光に対しては透明な紫外線阻止層または被覆を、凍結インジケータ10の1つ以上の透明な外層上に含むことができる。このような紫外線阻止手段は、凍結インジケータ10中の紫外線感知成分を、紫外線によって起こり得る損傷や劣化から保護するのに有用である。適切な紫外線阻止技術の一部の例は、米国特許出願公開第2004/0253733 号及びそこで引用されている文献に記載されており、同米国特許出願公開の開示全体が参照によってここに包含される。
有用な活性要素の別の例は、例えばコロイド状金、コロイド状銀、コロイド状セレンなど、非反応性金属またはその他の非反応性無機鉱物(ミネラル)や無機材のコロイド状分散体からなる。分散材は通常、凍結インジケータの使用寿命中、凍結インジケータの性能に悪影響を及ぼす反応を示さない。
粒状形態で使用可能な材料の更なる一部の例には、顔料、インク顔料、鉱物、非反応性金属、貴金属、高価金属、金、銀、アルミニウム、イリジウム、プラチナ、亜鉛、セレン、カーボンブラック、イオウ、酸化鉄、カオリナイト、モンモリロナイト、タルク、ハロイサイト、カルサイト(炭酸カルシウム)、ドロマイト(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム)、ルチル二酸化チタン、ギブサイト(水酸化アルミニウム)、紅亜鉛鉱(酸化亜鉛)、バライト(硫酸バリウム)、結晶質シリカ、非晶質シリカ、水和シリカ、ほたる石(フッ化カルシウム)、ハイドロキシアパタイト、白色及び着色されたポリスチレンビーズ、白色及び着色されたプラスチック及び合成ポリマー粒子、または上記材料の中の2種以上の組み合わせで、一方の材料が他方の上に被覆されているものを含む組み合わせ、からなる群の中から選ばれた材料の粒子が含まれる。
分散される無機顔料材は、凍結及び解凍後に外見の変化をもたらすものが選ばれる。外見の変化は明確であるのが望ましい。例えば、英国カーディフ所在の BB International Ltd から入手可能な10nmのコロイド状金は、凍結及び解凍すると赤から青黒に変化し、使用可能である。その他のサイズ、例えば20,50及び200nmのコロイド状金も、例えば赤から透明(clear)になり、所望なら使用可能である。
コロイド状固体は一般に、球状粒子とし得る。一実施形態において、コロイド状固体は、平均粒径の10%以内の直径を有する粒子が90%以上となる狭い粒径分布を有する。
そのようなコロイド状鉱物またはその他の固体は、百万分の約1から500または1000重量部(「ppm」)、すなわち約0.0001から約0.05または0.1重量%の範囲という極めて低濃度で使用可能である。例えば、コロイド中の固体の濃度または比率が、約10から約100重量ppmという範囲で使える。分散体は、ほぼ純粋な水中における、元素状またはその他の無機材の比較的純粋な分散体とし得る。本発明の一実施形態において、その他の構成成分は存在しない。活性インジケータ要素23は、水中に分散したコロイド状の無機粒子、例えば金粒子から、もしくは実質上それらから構成可能である。
所望なら、分散体の安定を容易化し維持するため、当該分野で周知であるような1種以上の分散体つまり分散助剤を用いることができる。その一例は、ヘキサメタリン酸塩である。一般に、約0.1モル以上の強度を有する分散剤溶液であるのが好ましい。
凍結インジケータ分散体の一部の実施形態は、顔料、水及び分散剤から、または実質上それらからなる。染料などの着色剤を、水性分散媒に添加可能である。蒸気損の制御を容易にするため、有機溶媒は所望なら除くことができる。
使用時、凍結インジケータ10の一部の実施形態は、不透明な灰色、黒、白、赤、青、黄、緑、またはその他所望の色の初期外見を有することができ、その色は分散体で使われる顔料を適切に選択することによって決まる。凍結して解凍すると、分散体の安定性が失われる。分散体の粒子は、視認可能なビーズ、凝塊(ランプ)または集塊へと凝集または集成し、その間に透明な液体が視認可能な状態になる。液体の光学的特性に応じ、透明な液体を介して背景が視認可能になることもある。この場合、透明な液体の外見は、減色効果によって与えられる。例えば、黄色の液体を介して見える青の背景は、観測者に対して緑の外見を生じる。使用可能な各種有用な視覚上の組み合わせは、本明細書の開示から当業者にとっては自明であろう。
例えば、水中のカーボンブラックの分散体と白の背景層は、初期において連続的な黒の外見を有する凍結インジケータを提供する。凍結すると、カーボンブラック粒子が小さい黒の各領域に凝塊し、観測者にはそれらの間からバリア層の白がまだら状またはモザイク状に見える。あるいは、バリア層つまり背景層を赤、オレンジまたは黄などの明るい警告色とし、凝集した黒い粒子の間からそれが見えたとき注目を引くようにすることもできる。
別の著しい色の変化として、1種以上の添加剤を用いると黄色になる青粒子の水中分散体を用い、初期に一様な緑の外見を与えるように着色剤の濃度を選択しておくこともできる。凍結して凝集すると、青の凝乳中に黄色がまだらに存在する初期とまったく異なる外見を生じる。
一部の場合、視認応答の強度は分散体中における固体顔料またはその他の材料の濃度と関連しており、この点を考慮すれば、所望の視認効果を与えられるように変更、選択または調整可能な別のパラメータを得ることができる。
このように本発明は、視認シグナルの選択をフレキシブルな範囲で行える凍結インジケータを提供する。凍結によって与えられる外見の変化は、活性要素23の顔料成分、活性要素の水性またはその他の液相、水阻止層または水阻止層の上または背後にある追加の背景色層によって与えられる背景外見の色及び反射率または吸収率に応じて決まるそれぞれの外見を、それらが用いられている場合に適切に選択することによって管理可能である。
限定を意図するものではない、本発明を実施する際の幾つかの例を以下において説明する。
例1:凍結時のコロイド外見変化
各種コロイド状混合物の5つの試料1−5で、各々がほぼ0.5mlの2つの等量試料を別々のカップに入れる。これらのカップは透明な250mmのポリマーフィルムから熱成形されたもので、各カップは約0.8mlの容積を有する。カップを透明なポリマーテープで密封する。各密封カップには、小さい気泡が意図的に入れられている。各試料の一方の等量分を、-29°Cの冷凍庫内に入れる。他方の等量分は、室温に置いたままとする。各試料の一方の等量分が完全に凍結した後、それを取り出して解凍し、室温に置いたままで凍結させなかった他方の等量分と視覚的に比較する。
試料1−5を用意するのに、以下の各組成を有するコロイド状混合物を用いている:
試料1:米国ウィスコンシン州グリーンベイ所在Omnova Performance Chemicals から入手可能なGenflo9771ラテックス(固体約40%w/w)
試料2:米国ペンシルバニア州フィラデルフィア所在Hunt Corp. から入手可能な Aquaseal AS510G
ラテックス(固体約40%w/w)
試料3:米国カリフォルニア州レディング所在 Ted Pella Inc.から入手可能な10nmの金ゾル
試料4:米国カリフォルニア州レディング所在 Ted Pella Inc.から入手可能な50nmの金ゾル
試料5:米国カリフォルニア州レディング所在 Ted Pella Inc.から入手可能な200nmの金ゾル
観測で得られた一部の結果を、下記の表1に示す:
各ケースで、凍結及び解凍の結果、明確な視覚上の変化が生じている。コロイド状組成物1−5は各々、本発明における活性要素、例えば活性インジケータ要素23として用いるのに適している。金試料3−5は、驚くべきほど明確な外見の変化を与えており、蒸気阻止層24及び30またはその他の蒸気損防止手段を設けてもしくは設けなくとも、各種の異なる凍結インジケータ10で有利に使用可能なことを実証している。つまり金コロイドは、見込まれる寿命が比較的短い凍結インジケータだけでなく、保管状態の寿命及びホスト製品に取り付けてからの寿命の両方を含め、比較的長い寿命を有することが期待される凍結インジケータにおいても有効に使える。
例2:ラテックスコロイド
固体濃度の高い(約40%w/w)ラテックス分散体(米国ウィスコンシン州グリーンベイ所在Omnova Performance Chemicalsから入手可能なGenflo9771)を、水道水で各種レベルに希釈し、多数のテスト試料を作製する。水道水としては、溶解したカルシウム塩を含んでいると考えられる、米国ペンシルバニア州ニューホープのろ過してない硬質水道水が用いられる。
希釈ラテックス分散体の各試料について、各々がほぼ0.5mlの2つの等量試料を別々のカップに入れる。これらのカップは透明な250mmのポリマーフィルムから熱成形されたもので、各カップは約0.8mlの容積を有する。カップを透明なポリマーテープで密封する。各密封カップには、小さい気泡が意図的に入れられている。各試料の一方の等量分を、-20°Cの冷凍庫内に入れる。他方の等量分は、室温に置いたままとする。各試料の一方の等量分が完全に凍結した後、それを取り出して解凍し、室温に置いたままで凍結させなかった他方の等量分と視覚的に比較する。
得られた一部の結果を、下記の表2に示す:
すべてのケースで、凍結/解凍した試料と凍結させなかった試料との間で、明確な相違が生じている。ラテックスが1.6%以下である比較的低い濃度においても、明確な外見の変化が得られる。凍結して解凍された製品における透明な液体の存在は、例えば濃く着色された明瞭な背景を示すのに有用な手段を提供する。例2の各コロイドは、本発明の凍結インジケータにおける活性要素として使用可能である。
以下の対照例C3−C5及び例6−11で説明する実験手順は、各種のバリアフィルム材からなる市販のブリスターパッケージ内に封入された各種のインジケータ分散体の水分損性能に関する有意なシミュレーションを提供することを意図している。
対照例C3:
単層ポリ塩化ビニルバリアフィルム/希釈水
直径が15mmよりやや大きい一連の孔を、長さ30cm、幅10cm、厚さ2cmの木製ブロックに約5mmの深さで穿孔する。この木製ブロックを支持体として用い、Tekni-Plex, Inc.から供給されている直径15mmのブリスター(泡状体)の予形成アレイから個々のブリスターをカットする。本対照例で用いるブリスター材は、商標TEKNIFLEX
VM 100 でTekni-Plex, Inc.から供給されている、10ミルの単層ポリ塩化ビニル製バリアフィルムである。このフィルムの水蒸気透過率はメーカーによれば、24時間当たり100平方インチ当たり0.18グラムである。ブリスターをカットする際には、各ブリスター空所(キャビティ)の周辺に、少なくとも3mmの平坦なフィルム材料が存在するように注意する必要がある。後述するインジケータ分散体を、各ブリスター空所内に加える。商標TEKNILID1252でTekni-Plex,Inc.から入手可能なアルミニウム被覆フォイルを、25´35mmの長方形にカットする。このフォイルはメーカーによれば、ポリ塩化ビニル及び塩化ポリビニリデンを基材とし、その上に上塗りラッカー/アルミニウム/熱封着ラッカーを形成してなる。その1つの長方形を、各ブリスターの頂部に、熱封着側を下に向けて置く。
高さ25mm及び直径19mmで円筒状のアルミニウムブロックで、その一端に深さ約7mmであけられた直径15mmの孔を有するブロックを、約170°Cの表面温度を有するように設定されたラボ用スターラーホットプレート上に、孔あき端を下向きに置いて加熱する。加熱されたブロックを万力型把持器でつかみ、支持されている各ブリスターの中心に位置合わせして、約3秒間適度な圧力を手で加えながら被覆フォイルと接触する。アルミニウムブロックが被覆フォイルをブリスターに封着するのに充分な熱を発生する一方、アルミニウムブロックに孔が存在することで、ブリスターの中身の過熱は防止される。被覆フォイルとブリスターの間の熱封着の効力は視覚的に確認され、ブリスターフォイルを軽く加圧することによって得られる。必要なら、アルミニウムブロックを再度加熱する。
ACME Markets(www.acmemarkets.com)から供給されている蒸留水を、被覆フォイルで密封した各ブリスター内に200mLの容量づつ加えて3つの試料を作成する。
対照例C4:
単層ポリ塩化ビニルバリアフィルム/金コロイド
重量1.0mgのヨー化銀粉末核形成剤をへら(スパチュラ)を使ってブリスターに入れ、次いで容量200mLのインジケータ分散体をブリスター内に分与して3つの試料を作製する点を除き、対照例C3と同様の手順を繰り返す。ここで用いるインジケータ分散体は塩化金から誘導された水性金コロイドで、British BioCell International (www.bbigold.com)から製品コード EM.GC40 で供給されているものである。この金コロイド製品は受納状態において非常に濃い赤で、また供給メーカーによれば、粒径40nm、520nmでの光学濃度4.8、及び塩化金での金重量を基準として0.04重量%の金コロイド濃度を有する。ここで用いるヨー化銀は、Sigma-Aldrichから製品コード
226823-25Gで供給されているものである。
対照例C5:
単層ポリ塩化ビニルバリアフィルム/ラテックス分散体
ここでは、OMNOVA Solutions Inc.(www.omnova.com)から供給されているOMNOVA
5176ラテックスをインジケータ分散体として用い、これをピペットを使ってブリスターに入れる点を除き、対照例C4と同様の手順を繰り返す。供給された状態のラテックス分散体を、蒸留水(Acme Markets)中に0.07%の塩化カルシウムを含む溶液で3%の濃度に希釈する。メーカーから供給された状態のラテックス分散体は、固体含有量が公称50%のため、希釈で得られる分散体は約1.5重量%の固体含有量を有する。その色は、白から淡い黄褐色である。尚、重量表示の濃度は分散体の重量を基準としている。
例6−8:
3層積層フィルム
ブリスターアレイが、米国Tekni-Filmsから製品コードTeknifex(登録商標)VPA10300で供給されているもので、10ミルのポリ塩化ビニル層、2ミルのポリエチレン層、及び3ミルのポリクロロテトラフルオロエチレン層からなる3層積層フィルムである点を除き、対照例C3−C5と同様の手順を繰り返す。このフィルムの水蒸気透過率は供給メーカーによれば、24時間当たり100平方インチ当たり0.005グラムである。
例7−9:
2層積層フィルム
積層フィルムが、製品コードTeknifex
(登録商標)760で、7.5ミルのポリ塩化ビニル層と0.6ミルのポリクロロテトラフルオロエチレン層からなる2層フィルムである点を除き、例7−9と同様の手順を繰り返す。このフィルムの水蒸気透過率は供給メーカーによれば、24時間当たり100平方インチ当たり0.025グラムである。
老化テスト
各例毎に3試料で、例C3−C5及び例6−11で合計27個のテスト試料を老化テストに付す。老化テストは、ブリスターを通り水蒸気が移動する結果として、室温または周囲温度における長期の貯蔵期間中に生じると考えられる製品からの水損をシミュレートするために、上昇温度において行う。凍結インジケータの各ブリスター試料を計量し、グラム単位で小数点以下5桁までの重量を求めた後、65°Cに保持された炉内に6週間入れておく。室温より高く加熱することで老化過程が加速され、例えば12または24ヶ月以上など、多月数にわたって測定されることになる所望の保存寿命よりも短い時間枠内でテストを実施可能とする。各試料は定期的に炉から取り出し、計量をその都度行って水損の評価をしてから、炉内に再び戻す。水(水分)損は減算法によって求める。各ケースにおいて、開始時の水の重量は約200mgである。一部の得られた結果を、以下の表3に示す。重量損を求めるのに加え、各試料を毎日観測し、例えば色の変化や粘性の増加など、インジケータ分散体の外見の変化を記録する。
1 試料が24日後に乾燥し切ったため、それ以降の測定は行ってない
表3のデータを見れば分かるように、テストした各試料は、65°Cで老化させた場合異なる率で水を損失する。
水だけを含む例6と9のブリスター試料を、同じく水だけを含む対照例C3のブリスター試料と比較すると、本テスト系においては、単層VM 100の対照フィルムよりも、3層VPA10300のフィルム及び2層VPA760のフィルムの方が優れた水蒸気遮断特性を持つことが示されている。対照例C3の試料は、例6と9の試料よりも著しく急速に水を損失している。つまり2週後において、C3試料からは約60%の水が損失したのに対し、例6の試料からは約4−5%の損失また例9の試料からは約16%の損失が生じている。これらの結果は、前述したそれぞれの相対的な水蒸気透過率と一致している:すなわち本実験においては、VPA10300が前述した中で最も低い水蒸気透過率を有し、実際の水損も最も低かった。
金コロイド EM.GC40を含む例7と10のブリスター試料を、同じく金コロイドEM.GC40を含む対照例C4のブリスター試料と比較すると、本テスト系においては、金コロイドを含む凍結インジケータ用の材料として、単層VM100の対照フィルムよりも、3層VPA10300のフィルム及び2層VPA760のフィルムの方が優れた水蒸気遮断特性を持つことが示されている。(表3には記載してない)外見について見ると、65°Cで最初の9日間、どの金コロイド試料についても外見の変化は何ら認められていない。65°Cで12日後に、対照例C4の試料の中身が赤から無色に変化した一方、例7と10の試料は色の変化を生じなかった。試料重量の比較は、C4試料の色の全体的損失が水の約60%の損失に一致することを示している。さらにテストを継続すると、対照例C4の色が無くなった後も、例7と10の試料は色を長く維持された。最終的に、例7と10の試料は次のように褪色を生じた:65°Cで24日後、例7の試料は淡い桃色になったのに対し、例10の試料は淡い紫色になった。この段階での水損は、例5の試料で約10%、例8の試料で約30%である。つまり、12日後には色が喪失した対照例C4の試料と比較し、VPA10300及びVPA760両フィルムによって得られる優れた水分の遮断性能が、例7と10の試料の色保持に寄与していることが明らかである。
3.0%のOMNOVA5176ラテックスを含む例8と11のブリスター試料を、同じく3.0%のOMNOVA5176ラテックスを含む対照例C5のブリスター試料と比較すると、本テスト系においては、ラテックス分散体を含む凍結インジケータ用の材料として、単層VM100の対照フィルムよりも、3層VPA10300のフィルム及び2層VPA760のフィルムの方が優れた水蒸気遮断特性を持つことが示されている。外見について見ると、65°Cで最初の12日間で、全ての試料について色がやや黒くなり、白から淡い茶褐色または中間の茶褐色になっただけである。対照例C5は例5と8の試料より早く水を損失するが、試料は全て流動自在な液体のままである。24日目に、対照例C5の試料はほとんどの水を損失し、濃い茶褐色の粘性半固体になる一方、例8と11の試料は依然流動自在で、茶褐色液体のままである。テストが終了した6週後、例8と11の試料は尚流動自在で茶褐色の、当初の試料と同様の外見を有する液体のままであるのに対し、対照例C5のブリスターは液体を含まず、黄茶色の残留物を有するだけである。対照試料が乾燥し切った後も、上記のような物理的外見が保持されたのは、VPA10300及びVPA760両フィルムの優れた水分の遮断性能のためであることが明らかである。
例12:金コロイド及び酸化デューテリウム
へらを使い、得られるコロイドを基準として0.05重量%の濃度に対応する0.0002gのヨー化銀粉末を、0.2mlの蓋付きプラスチック製小型薬瓶(Corning Inc. 製:「Thermowellチューブ」、カタログ番号6571)10個の各々に入れる。対照例C4で用いたのと同じ濃い赤色の40nm金コロイド(製品コードEM.GC40)26.4mLと、13.6mLの酸化デューテリウム(Sigma-Aldrich、www.sigmaaldrich.com)とを、ピペットを使って各小型薬瓶に加える。得られた10個の各試料を、超音波クリーナBrasonic
200 を使って5秒間超音波処理する。酸化デューテリウムによる希釈後、金コロイドの赤色はやや減じたが、依然肉眼で鮮明に視認される。各試料を −2℃のプロピレングリコール/水浴内に入れ、色の変化を定期的にチェックする。
各試料は全て、10分以内で凍結し氷を形成する。凍結した試料の小型薬瓶は全て、白色から透明の外見を有する。試料の小型薬瓶を室温に戻した後は、全て無色である。凍結前(赤)と凍結後(無色)におけるインジケータの外見の相違は顕著である。
例12は、用いた金コロイドが顕著な視覚上の色変化を与える本発明の有用な実施形態を例示している。凍結速度を高める核形成剤としての0.05%のヨー化銀と、凝固点を純水よりも上昇させる34%の酸化デューテリウムとの組み合わせを用いることで、迅速な凍結応答が得られる。尚、%表示はコロイドの重量を基準とした重量%である。
例13−16 金コロイド及び異なる濃度での酸化デューテリウム
粒径20nm、光学濃度2.2、塩化金での重量を基準とした0.02%の金コロイド濃度を有する、製品コードEM.GC20(British BioCell International、 www.bbigold.com)で供給されているものを金コロイドとして用いる点を除き、例12と同様の手順を繰り返す。また、金コロイドと酸化デューテリウムを、ピペットを使って異なる比率で試料小型薬瓶に加え、それぞれ例13、14,15及び16で0%、20%、34%及び45%のデューテリウム(重水素)濃度を与える。各ケースにおいて、試料の総容量は40mLである。必要に応じ、例毎に30個の試料で、それぞれの例を3回実施し、後で説明するように3つの異なる温度で選択的にテストする。
表4に示すように、例13−16の選択したそれぞれ10個の試料群を、3つの温度、すなわち水の融点とそれよりわずかに低い温度である0℃、-1℃及び -2℃のプロピレングリコール/水浴内に浸漬する。各試料は定期的に調べる。表4中「変化」と記された試料は、テスト温度で凍結して白色/透明の固体を生じ、浴から取り出して室温に戻した後は、全てのケースにおいて無色の液体である。「無変化」と記された試料は、テスト温度下及び室温に戻した後も桃/赤色の液体のままであった。表4は、各カテゴリーについて観測された試料の数を示している。
表4は、試料の凝固に起因した視認可能な色の変化を伴って、テストした金コロイドが凍結温度に応答するのに要する時間が、酸化デューテリウムの濃度の上昇と共に減少すること示している。例13は酸化デューテリウムを含まず、対照となるものである。例13の全試料は凍結するまでに、-2℃においても、約2時間という比較的長い応答時間を要している。-1℃では、例13の試料はいずれも6時間後でも凍結せず、また0℃では、3日後も不凍結のままである。
これに対し、20%の酸化デューテリウムを含む例14の試料は、応答時間が著しく短い:つまり、10個全ての試料の色が -2℃で10分後に変化し、-1℃では45分後に半分の試料が凍結し、また1.5時間後には全てが凍結している。しかしながら0℃では、5.0日露出した後でもいずれの試料も凍結していない。
34%の酸化デューテリウムを含む例15の試料も、-2℃で10分後に全て色が変化している。-1℃では、10個の試料うち7個がわずか10分後に凍結を指示する色変化を示しており、17分後には全試料が色変化している。0℃では、120分後に一部の試料が凍結を指示し、150分後には10個のうち7個の試料が色変化している。
45%の酸化デューテリウムを含む例16の試料は、0℃でわずか55分後に全て色が変化しており、表4に示したデータから -1℃及び −2℃ではほんの数分で色変化することが予期されるため、0℃より低い温度でのテストは行っていない。
表4の結果は、酸化デューテリウムの存在が各試料を凍結温度に対して感応し易くしていることを示している。
例17:GC40金コロイド単体
光学濃度4.8を有する40mLの金コロイドEM.GC40を、例12で述べたような10個の試料用小型薬瓶の各々にピペットを使って入れる。コロイドEM.GC40は室温で濃い赤色である。各小型薬瓶を、−25℃の冷凍庫内に30分間置く。
EM.GC40 金コロイドの試料は全て凍結して、白色から透明な外見を有する氷を形成し、室温に戻した後は全て無色である。
例18:GC20金コロイド単体
例17で用いた金コロイドEM.GC40の代わりに、光学濃度2.2を有するEM.GC20金コロイドを用い、例17と同様の手順を繰り返す。コロイドEM.GC20は、凍結前において桃/赤色である。例17と同様の結果が得られる。
例19:銀コロイド(Hot Tub(商標))
例17で用いた金コロイドEM.GC40の代わりに、Purest Colloids Inc.(www.purestcolloids.com)から供給されている水性銀コロイドHot
Tub Silverを用い、例17と同様の手順を繰り返す。用いた水性銀コロイドは、凍結前において灰色である。室温に戻した後の試料はほぼ無色であるが、わずかに灰色味を有していた点を除き、例17とほぼ同様の結果が得られる。
例20:銀コロイド(MesoSilver(商標))
例17で用いた金コロイドEM.GC40の代わりに、Purest Colloids Inc.(www.purestcolloids.com)から供給されている水性銀コロイドMesoSilver(商標)を用い、例17と同様の手順を繰り返す。用いた水性銀コロイドは、凍結前において淡い灰色である。例17と同様の結果が得られる。
例21:金コロイド(MesoGold(商標))
例17で用いた金コロイドEM.GC40の代わりに、Purest Colloids Inc.(www.purestcolloids.com)から供給されている水性金コロイドMesoGold(商標)を用い、例17と同様の手順を繰り返す。用いた水性金コロイドは、凍結前において淡い桃色である。例17と同様の結果が得られる。
例17−21は、British
BioCell International から入手された金コロイド(例17と18)の本テスト系における挙動を、その他の市販されている金属コロイド製品と比較している。例19−21は、Hot Tub Silver、MesoSilver及びMesoGoldの全てが、凍結すると肉眼で視認可能な、不可逆的で明確な色変化を与えることを示している。従ってこれらの各製品は、本発明による凍結インジケータの視覚的に活性なコロイド状インジケータ成分として適切に使用できることが明らかである。例17と18で用いた、British BioCell International製の金コロイドEM.GC40とEM.GC20は、特に劇的な色変化を与える。例19−21で用いたような、その他の比較的不活性な貴金属のコロイドで得られるそれより薄い色も、視覚上利用可能な選択肢の範囲を広げている。そのような低濃度の金属コロイドは、白またはその他の色を背景として、1つ以上の各種異なる視覚的効果を与えるのに使用可能である。
例22:銀コロイドMesoSilverと酸化デューテリウム
26.4mLの銀コロイドMesoSilverと13.6mLの酸化デューテリウムを、10個のThermowell 製試料用小型薬瓶の各々にピペットを使って入れる。各試料を、超音波クリーナ Brasonic200を使って5秒間超音波処理する。酸化デューテリウムによる希釈後、銀コロイドの灰色は薄くなったが、依然肉眼で明らかである。各試料を−2℃の水浴内に入れ、色変化を定期的にチェックする。
18時間後も、試料は凍結せず、色の変化も現れない。次いで試料の小型薬瓶を、−25℃の冷凍庫内に30分間置く。試料は全て凍結して、白色から透明な外見を有する氷を形成し、室温に戻した後は全て無色である。
例23:金コロイドMesoGoldと酸化デューテリウム
銀コロイドMesoSilverに代え、金コロイドMesoGoldを用いる点を除き、例22と同様の手順を繰り返す。酸化デューテリウムによる希釈後、桃色は薄くなったが、依然肉眼に明らかなものである。例22と同様の結果が得られる。
例24:銀コロイドMesoSilver、酸化デューテリウム及びヨー化銀
0.0002gのヨー化銀粉末も各試料の小型薬瓶に加える点を除き、例22と同様の手順を繰り返す。このケースでは、−2℃への露出後10分以内に10個全ての試料が凍結し、室温へ戻した後は全て無色である。
例25:金コロイドMesoGold、酸化デューテリウム及びヨー化銀
0.0002gのヨー化銀粉末も各試料の小型薬瓶に加える点を除き、例23と同様の手順を繰り返す。このケースでは、−2℃への露出後10分以内に10個全ての試料が凍結し、室温へ戻した後は全て無色である。
例22−25は、コロイド単体の場合よりも冷凍露出に対して迅速な応答を得るために、金コロイドMesoGold及び銀コロイドMesoSilver
に加えて、酸化デューテリウム及び場合によってはヨー化銀を処方できることを例示している。
本発明の更なる観点によれば、活性インジケータ23として使用するのに適切な凍結インジケータ分散体は、表面電荷を減少し分散体の安定性を減じる多価対イオンの供給源を用いることによって、酸化鉄やその他の金属酸化物などの、微細に分散された表面荷電顔料を使用可能である。以下の例26は、本発明のこの観点を例示している。
例26:酸化鉄分散体の作成
23.0gの希釈水をガラス製容器内で、米国マサチューセッツ州ワードヒル所在のAlpha Aesarから得られる0.25gの乾燥酸化鉄粉末、つまり純度99%、平均粒径20−50nmの酸化鉄(III)に加える。これに、約10%のアンモニア溶液2.0gを加え、容器を閉じる。混合物を激しく振ってから、10分間超音波浴中に入れ、その後放置する。混合物は即座に凝固した。数ヵ月後容器を開けると、強いアンモニア臭が認められ、上澄みを取り出した。同量の蒸留水で置き換え、容器を閉じてから、5分間超音波浴中に入れた。この混合物は凝固せず、軽いアンモニア臭を有していた。一晩放置後、少量の物質が沈殿したが、上澄みはよく分散されたままであった。これを分散体Iとする。
一定分量の分散体Iを、約1.0g/lの濃度となるように蒸留水で希釈する。この希釈液はよく分散しており、凍結しても凝固しない。その後、空気に露出させながら、約20分間65℃に加熱する。冷却時、アンモニア臭は存在しない。−3.0℃で凍結させると、部分凝固が見られる。これを分散体IIとする。
一定分量の分散体Iを取り、蒸留水による少量の0.20%または0.020%塩化カルシウム溶液をこれに加える。得られた試料を混合し、放置する。0.004%以上の塩化カルシウムで用意した各試料は凝固したが、0.002%以下の塩化カルシウムで用意した各試料は凝固しない。より多量の分散体試料を、0.002%の塩化カルシウムで用意する。この試料は、一晩置いても分散したままであった。これを分散体IIIとする。
分散体I−IIIの各試料を、凍結テストのため次のように用意する:核形成剤である約0.5mgのヨー化銀粉末を、150mlのポリ塩化ビニル製ブリスターの底に入れ、約100mlの分散体をこれに加える。ブリスターを、感圧接着テープ 3M3850で密封する。−3.0℃の不凍溶液中に5分間浸漬し、凍結テストを行う。全試料をこのように用意し、3回テストを行う。
全試料は5分以内に凍結することが分かる。ヨー化銀を機能不全にしてしまうような、ヨー化銀の効力減退は見られない。
塩化カルシウムを加えない試料を含むブリスターの外見は、凍結するとわずかに変化し、凍結外観を呈する。しかしながら、酸化物の錆色はブリスター全体にわたりほぼ一様に分散したままである。解凍した混合物はよく分散しており、対応する非凍結のブリスターと見分けがつかない。その外見変化は有用なインジケータとして用いるには不充分であり、また変化が不可逆的でない。つまり、塩化カルシウムを含まないテストした分散体は、本発明による凍結インジケータとして用いるのに適さない。
0.002%の塩化カルシウムを含む試料の外見は、凍結すると明確に変化する。色の強度が減少し、ブリスターの中心に向かってクラスター(房)状に集中する。解凍するとコロイドが凝固し、透明な上澄みから急速に沈殿する。これらの試料は、本発明による凍結インジケータの活性成分として有用と認められる。その他の多価陽イオンまたはその他の不溶性無機粉末についても、同様の結果が得られることが見込まれる。
例26から理解されるように、本例ではカルシウムイオンである多価の対イオン源が分散体に含まれる場合には、その濃度に対して分散体を限界近くで安定させておくことにより、微細に分散された酸化鉄を凍結インジケータの活性要素として使用可能である。凍結すると、対イオンの濃度が増大し、分散粒子の表面電荷をさらに中性化する結果、分散体は安定性を失い凝固する。
酸化鉄に加え、水中に懸濁化されると単純なイオン化可能表面を有する多くの鉱物及びその他の粒子も、表面電荷を部分的に中性化して限界近くで安定な分散体を与える適切な多価の対イオン源を用いることによって、本発明の実施に際して同様に使用できる。
懸濁液の表面電荷は、それほど分散しないように比較的低く調整可能である。この調整は、表面電荷の性質に応じ酸または塩基を使って行える。例26では、水酸化アンモニウムを使ってまず酸化鉄粒子に高い電荷を与えてよく分散可能とし、その後水酸化アンモニウムを取り除き電荷を低めている。
本発明の別の観点では、例27に説明するような更なる実験を行い、透明なインジケータドームまたはバブルを基材層に接着するのに感圧接着剤を用いることで、高温での熱封着が避けられるかどうかを判定可能である。
例27:ブリスターパック凍結インジケータに対する感圧接着剤の使用
100ml等分量の金コロイド(BBIEM GC40)と、蒸留水を用いた50ml等分量の約1%のヨー化銀懸濁液(Sigma Aldrich)を、450mlの各ポリ塩化ビニル製ブリスター内に配分する。一組のブリスター試料を、熱シール接着剤を含むTEKNILID (商標)1252 フォイルで熱封着する。もう一組のブリスター試料を、3M Corp.製で製品コード3280の感圧性接着テープ剤を用いて低温封着する。2種類の試料の凍結特性を、−3.0℃の冷却浴中に浸漬して比較する。両方の組の試料は10分以内に凍結し、全てのケースで中身は桃色から透明に変化する。試料を解凍し室温に戻しても、透明のままである。テストは、室温に1日保持した試料についても繰り返した。同様の結果が得られている。全試料が凍結時に良好な視覚上の変化を示し、その変化は不可逆である。これらの試料は全て、本発明の実施の際に凍結インジケータの分散体として有用と認められる。本テストの結果、感圧性接着剤は、望ましくないほど分散体を汚染するものではないと認められる。
所望なら、水の代わりに混和可能な有機物、有機混合物、シリコーン流体またはシリコーン流体混合物、もしくはその他の液体または液体混合物を用い、所望の温度への露出に対する応答およびその指示を与えるように選択可能である。それに応じ、適切な蒸気バリアも選択可能である。
本発明による凍結インジケータを大量生産するのに、各種の方法が使える。例えば、インジケータの上層をなすシートまたは巻帯体(ウェブ)アセンブリに逆向きのドーム状部を設け、そこに活性要素の液体分散体を全体的または部分的に満たすことができる。次いで基材層をその上に施し、締め付けて閉じる。その後、個々の凍結インジケータを周囲フランジの近傍で圧力または熱封着し、シートまたは巻帯体から切断もしくは打ち抜いて得る。
上記の説明から理解されるように、本発明は特に、例えば少なくとも6ヶ月、1年、2年、場合によってはそれ以上の年数に及ぶ良好な保存寿命を有する小型で経済的な凍結インジケータを提供可能である。そのために本発明は、所定の凍結条件に対し一貫して反応し、光学的に容易に観察または読み取り可能な強度及び/又はコントラストの充分な視覚的変化を与える、高質で適切に制御された水性分散体を使うことができる。小型のユニットを提供する際に役立つ有用な特徴には、希釈水性分散体の使用、蒸気損抑制措置の採用、及び凍結事象に対して優れた光学的応答を与える活性要素の採用が含まれる。
図4を参照すれば、図示の組み合わせ型温度露出インジケータ90は、主要な構成部分として、図1−3に示したような凍結インジケータ10を含む。凍結インジケータ10は、累積的な環境時間-温度インジケータ100のための支持台としての役割を果たし、それを支持する。時間-温度インジケータ100は、凍結インジケータ10の外層28に適切なパターン及び配置で施すことができ、あるいはその他任意の所望な方法で凍結インジケータ10に支持可能である。
図4に示すように、時間-温度インジケータ100は、凍結インジケータ10の外層28の中心に対し、時間-温度インジケータ100の周囲にそれによって覆われ妨げられないリング状ゾーン102を残して施された円形ディスクを備え、凍結インジケータの活性要素23の外見をそのリング状ゾーン102を通じて視認可能である。その結果得られるインジケータの全体的外見は図から明らかなように、図4の上方から見た場合、射的またはアーチェリの射的とほぼ似ており、時間-温度インジケータ100が射的の中心の的をなし、リング状ゾーン102と凍結インジケータ10の周囲リング26が中心の的の周囲に位置する内側及び外側リングをそれぞれなす。
時間-温度インジケータは、周囲の温度に対して累積的に感応し、当該分野で周知なように、温度露出の所定の時間積分に達すると視覚上の変化を表示する活性要素を含むかまたはそれを備える。時間-温度インジケータは、重合可能なジアセチレンモノマーやその他の適切な化合物など、活性剤を組み入れたインク被覆で構成してもよい。それに代えて、時間-温度インジケータはインク被覆を有する基材層を備えてもよく、この場合基材層が、例えば接着剤により凍結インジケータの外壁に適切に取り付けられる。時間-温度インジケータをドームの外壁に施すまで、接着剤を引き剥がし層で覆っておいてもよい。
一実施形態において、時間-温度インジケータは当初桃色で、その最終変化点に達すると青黒い色に変化する。時間-温度インジケータの応答特性及び最終変化点は、目的とするホスト製品の損傷し易さつまり保存寿命特性と一致する。時間-温度インジケータは、観測可能なまたは光学的に読み取り可能な視覚上の変化を与えることで、ホスト製品の温度履歴に関する有意な指示を与える。例えば時間-温度インジケータは、製品が使用寿命の期限に達しているまたはそれに近づいており、直ちに使用するか、あるいは場合によっては破棄すべきであることを指示可能である。
組み合わせ型温度露出インジケータの作製時には、その時期尚早の活性化を防ぐため、ホスト製品との組み立てまたはホスト製品への付設を行う前に、凍結インジケータが凍結温度に露出されないように保護するのが望ましい。重合可能なポリアセチレン活性剤を用いた時間-温度インジケータは、その時期尚早の活性化を防ぐため、ホスト製品との組み立てまたはホスト製品への付設を行う前まで低温貯蔵器内に保持される。
上記の点を考慮に入れて、凍結インジケータと時間-温度インジケータは、任意の適切な方法及び順序でホスト製品との組み立てまたはホスト製品への付設を行うことができる。例えば、凍結インジケータを室温でホスト製品に付着した後、時間-温度インジケータを低温貯蔵器から取り出し、例えば図4に示したように凍結インジケータに接着することで、ホスト製品に付着するか、もしくその他の方法で付設する。所望なら、時間-温度インジケータは、ホスト製品へ施す直前に室温またはその他適切な温度とすることで、凍結インジケータを過度に冷却するのを防ぎ、その時期尚早の活性化のリスクを防ぐことができる。
本発明の別の実施例(図示せず)は、単一つまり統合シグナル方式の組み合わせ型温度露出インジケータからなる。この統合シグナル方式の実施形態では、凍結インジケータからの視認シグナルと時間-温度インジケータからの視認シグナルが、1つのシグナルとして読み取られるように組み合わされる。そのような統合方式の組み合わせ型温度露出インジケータの一実施形態では、透明であって、凍結インジケータの透明なドームをほぼ完全に覆う時間-温度インジケータを用い、時間-温度インジケータの外見がドームの外見に加えられ、単一のシグナルを与える。両インジケータの各反射率は、減算的に配合される。一実施形態において、時間-温度インジケータと凍結インジケータ両方の外見が類似しており、単純な「イーザ/オア」シグナルを与える;すなわちインジケータは、不適切な凍結または熱への露出が生じると、暗いまたはその他の「容認不能な」外見を呈する。
本発明の別の実施形態(図示せず)は、半円形状の2つの半体に分割された円形またはドット状のインジケータからなり、一方の半体が凍結インジケータで、他方の半体が累積時間-温度インジケータである。所望なら参照インジケータを、ドット周囲のリングとして用いることもできる。両インジケータと参照リングの最終変化点における外見は、同じでもよい。
図5−13に、異なる幾何学的形状であるが、いずれも容易に読み取り可能で、視覚的に一貫した(コヒーレントな)設計を用いた、3つの異なる構成の組み合わせ型インジケータが示してある。異なる幾何学的形状及びその他の構造的特徴を有するその他の構成も、当業者にとっては明らかであろう。例えば、三角形、円形、長方形または正方形などの領域をインジケータとその参照領域間で分割したり、両インジケータ間で分割してもよい。後者の場合、1つ以上の参照領域を、幾何学的形状の周囲に隣接させてもよい。各インジケータは、平行な帯状、バー状、またはその他のグラフィック配列でも実現可能である。ここで説明及び示唆するように、視認者または光学的読み取り器に対して、1つ以上の明瞭なシグナルを与えるその他のカラー方式も使える。
図5−7は、凍結インジケータと時間-温度インジケータ両方の信号が中央部分で組み合わされ、2つのインジケータが時間-温度インジケータ用の1つの参照リングによって取り囲まれている本発明の実施形態を示している。図8−13は、2つの参照領域が用いられる各実施形態を示している。すなわち、図8−10の実施形態では、正方形の時間-温度インジケータが中央に位置し、凍結インジケータが外側リングに設けられる一方、図11−13の実施形態では、円形の凍結インジケータが中央に位置し、時間-温度インジケータが外側リングに設けられている。
図5−7を参照すると、そこに例示した組み合わせ型温度露出インジケータ90の第1変形例は、中間の視覚強度を有する外側の時間-温度インジケータ用参照リング110と、当初明るく着色されている円形の凍結インジケータ112と、凍結インジケータ112に重ね合わされ、図示のごとく凍結インジケータ112の部分を直接視認できるように残した、透明な正方形の時間-温度インジケータ114とを備える。
外側参照リング110は所望なら、時間-温度インジケータ114の望ましい最終変化点と合致した適切な色を有する、周囲リング26上のインク被覆とし得る。凍結インジケータ112は、当初明るく着色されており、凍結すると暗くなる任意の適切な構造を有することができる。例えば、着色された背景と組み合わされた低濃度のラテックス分散体は、当初ミルク様の不透明な外見を有し、凍結すると凝固して、着色された背景を視認者が視認可能となる。時間-温度インジケータ114は、当該分野で周知なように、例えばポリアセチレン色変化モノマーなど、活性インクを含み透明で、インク処方された温度感知剤の層で構成可能である。
図5に示すように、当初の新鮮な状態において、両インジケータ112と114は明るく着色されている一方、参照リング110はそれより暗い色を有する。新鮮な状態にあることが、中央領域に顕著な暗い部分がないことから明らかとなる。図6においては、時間-温度インジケータ114が暗くなって参照リング110と合致しており、当該ホスト製品の潜在的な鮮度喪失または熱濫用(露出)を示しており、従ってそのホスト製品は廃棄されるべきである。図7では、図示例の場合凍結インジケータ112が参照リング110よりも顕著にあるいはそれと異なる色で暗くなり、インジケータが凍結したことを示す。つまり、インジケータの真ん中に暗い領域が存在することが、望ましくないまたは許容できない温度露出を明瞭にシグナル表示する。凍結インジケータ112の暗色化は、透明な時間-温度インジケータ114の暗色化と組み合わされて、より暗い中央の方形領域を与える。
次に図8−10を参照すると、そこに例示した組み合わせ型温度露出インジケータ90の第2変形例は、中間の視覚強度を有する外側の凍結インジケータ用参照リング120と、この参照リング120と隣接したリング状の凍結インジケータ122で、当初明るく着色されている凍結インジケータ122とを備える。さらに、組み合わせ型温度露出インジケータ90はその半径方向内側に、正方形の時間-温度インジケータ124を備え、時間-温度インジケータ124は不透明な白の背景層を有し、時間-温度インジケータ用の参照リング126で取り囲まれている。代替実施形態(図示せず)においては、時間-温度インジケータ124が当初透明である。
図8−10を見れば分かるように、図9に示した大きく暗い円の存在は熱露出を示し、また図10に示した太く暗いリングは凍結を示し、いずれも望ましくない温度露出が生じており、それに応じてホスト製品を取り扱うべきであることを示している。
次に図11−13を参照すると、そこに例示した組み合わせ型温度露出インジケータ90の第3変形例は、中間の視覚強度を有する外側の時間-温度インジケータ用参照リング130を備える。参照リング130にリング状の時間-温度インジケータ132が隣接しており、このインジケータ132は当初明るく着色されている。さらに、組み合わせ型温度露出インジケータ90はその半径方向内側に、凍結インジケータ用参照リング136で取り囲まれた円形の凍結インジケータ134を備える。
また図11−13を見れば分かるように、図13に示した大きく暗い円の存在は凍結を示し、図12に示した太く暗いリングは熱露出を示し、同じくいずれも望ましくない温度露出が生じており、それに応じてホスト製品を取り扱うべきであることを示している。
図5−7、図8−11及び図11−13に示した変形例の各々において、凍結インジケータ、時間-温度インジケータ及びいずれかの背景によってそれぞれ表示される視覚的外見は、ここに示した教示に従い、特定の組み合わせ型温度露出インジケータにおける所望な視覚的効果を得るように選択可能であり、いずれの参照領域も目的とする最終変化点に従って適切な方法で着色または顔料調整されている。
図14−17に示すように、本発明は、ホスト製品の温度露出履歴について包括的な指示を与えることが可能な三元(three-way)組み合わせ型温度露出インジケータも提供する。特に、本発明による三元組み合わせ型温度露出インジケータは、累積的な過去の温度露出、凍結温度への露出、及びしきい値より高い温度への露出に関する指示を与えることができる。
図14及び15を参照すれば、上方フィルム部材200と下方フィルム部材202を備えた、198で示す三元組み合わせ型温度露出インジケータの実施形態が示してあり、両フィルム部材は所望なら、インジケータに一体性を与える構造的部材とし得る。ここで「上方」及び「下方」は、図14及び15に示したようなインジケータの向きを基準としている。図示のごとく、両フィルム部材200と202及びインジケータ自体は、細長いほぼ長方形の形状を有する。尚、垂直方向の尺度は、理解し易くするため誇張してある。両フィルム部材200と202及びインジケータ自体は、円形、長円(卵)形、三角形、不規則形状、その他奇抜な形状など、任意の所望な形状を有することができる。インジケータ198は、剛性またはフレキシブルどちらでもよい。またインジケータ198の実施形態は垂直方向の寸法を極めて薄くし、本明細書に記載する凍結インジケータの小型実施形態の一部と適合するように比較的小さい寸法にすることもできる。さらに三元組み合わせ型温度露出インジケータ198の一部の実施形態は、連続状の巻帯体技術あるいはその他の適切な手段を用いることで、印刷などの方法による大量生産に適する。
上方フィルム部材200は、透明であるか、または活性インジケータ領域内に透明な窓を有するのが望ましく、例えばポリエチレンやポリプロピレンを含む合成ポリマーなど、任意の適切な材料で形成し得る。下方フィルム部材202も同様の材料で形成可能で、透明とし得る。下方フィルム部材202はあるいは不透明でもよく、金属や紙のフィルム材で形成したり、もしくは印刷またはその他の方法で被覆を施した透明材でも形成可能である。
下方フィルム部材202は基材としての役割を果たし、その上に位置する各インジケータ要素に対する構造的支持を与える。下方フィルム部材202の下面に、引き剥がしライナー204を感圧接着剤206の層によって除去可能に接着可能である。引き剥がしライナー204を除去し、インジケータを接着剤206によってホスト製品やその他の適切な構造体に取り付けることができる。所望なら安定した構造を与えるため、例えば外周シール、接着剤による積層化(貼り合わせ)、あるいはその他の適切な手段によって上方フィルム部材200を下方フィルム部材202に取り付けることもできる。
下方フィルム部材202よりも横方向の寸法が幾分小さく、白色または明るく着色された多孔性の灯心材料(毛管作用)部材208が、下方フィルム部材202の上に位置する。着色可溶材210の貯蔵部が灯心材料部材208の一端、図14では右端近くに配設されている。着色可溶材210は、例えば約20°Cから約40°Cの範囲の高い融点を有する。灯心材料部材208と着色可溶材210は協働して、温度しきい値インジケータを構成する。着色可溶材210の融点に近いしきい値より高い温度に比較的短い期間でも露出されると、その着色可溶材が溶解し、灯心材料部材208に沿って移動し、灯心材料部材208の左端で視認可能な暗色化を発生する。しきい値インジケータで使用可能なその他の有用な構成及び技術は、当業者にとって自明であるかまたは自明となるであろう。例えば、Prusikらの米国特許第5,709,472号及び2006年8月30日に出願されたSmithらの継続中の米国仮特許出願第60/823,957号に記載されているような、しきい値インジケータやしきい値インジケータ技術が使用可能である。これらの特許及び出願の開示内容が、参照によってここに包含される。
図示のように、例えば正方形の形状を有する累積的な周囲温度露出インジケータ212が、灯心材料部材208の他端、図14において左端近くに配設されている。累積時間-温度インジケータ212は環境温度への露出に感応して、例えば時間-温度露出の積分に従い経時的に徐々に暗色化するような視覚上の変化を生じる。累積時間-温度インジケータ212は、当初明るく着色されて且つ充分に光透過性であり、溶けた着色可溶材210の移動によって生じる灯心材料部材208の暗色化がインジケータの外部から視認または読み取り可能であるのが望ましい。
累積時間-温度インジケータ212は、本発明の例示した実施形態の目的を満たし、特に当初の光透過性の外見からの不可逆的な変化を与えて、累積的な時間-温度露出に関する視覚上のシグナルをもたらすことが可能な任意の活性インジケータ要素を用いることができる。当該分野において周知であるように、適切なインジケータ要素の一例は、色が変化する重合可能なジアセチレンモノマー化合物である。累積時間-温度露出インジケータ212で使用可能な各種の適切な累積時間-温度要素は、米国ニュージャージー州モリスプレインズ所在のTemptime Corporationから入手可能である。その他の使用可能な適切な累積時間-温度要素も、当業者にとって周知または自明であるか、もしくは本明細書の開示内容を参照して周知となる。
透明な中央の視認窓216を有する任意選択の参照リング214、及び着色されるか、またはその他の方法で視覚的に特徴付けられた外周リング部218を、三元組み合わせ型温度露出インジケータの外見の較正または解釈を助成するために設けることができる。図示のように、参照リング214は、累積時間-温度露出インジケータ212と上方フィルム部材200との間に位置する。その他の適切な配置位置も可能なことは、当業者にとって自明であろう。
上方フィルム部材200の上面に、凍結インジケータ220が累積時間-温度露出インジケータに対しその上方で垂直方向に位置合わせされて支持されている。凍結インジケータ220は、ドーム様のブリスター(泡状体)222と、活性要素223と、透明な基材224とを備える。活性要素223は、凍結前は透明または光透過性で、凍結すると不可逆的に暗色化するのが望ましい。活性要素223を充分に光透過性とすることで、基材224とブリスター222の透過性を考慮に入れ、累積時間-温度露出インジケータ212または灯心材料部材208の色の変化つまり暗色化が凍結インジケータ220を通して外部の観測者にとって視認可能となる。三元組み合わせ型温度露出インジケータ198の目的を満たす範囲内であれば、凍結インジケータ220や活性要素223は、凍結インジケータ10について前述したような構造または構成を有することができる。凍結インジケータ220は、それより下側の状態を通知するのに充分な光を伝達できれば、当初完全に透明である必要はない。例えば凍結インジケータ220は、当初低強度の透明な赤で、凍結に露出すると青に変化するインジケータ分散体を用いることができる。このためには、金コロイドが使用可能である。
あるいは当業者にとって自明であるように、周知の活性凍結インジケータ要素やいずれ周知となるであろう凍結インジケータ要素も使用できる。その一例が、Manske の米国特許第4,457,252号に開示されており、同特許の開示内容は参照によってここに包含される。Manskeは、凍結インジケータにおける無色の有機化合物の使用を記載している。染料で飽和され、無色の化合物よりも低い固化温度を有し、無色の化合物と混合可能な別の有機化合物が、凍結インジケータと連通する毛細管などの中に配置される。凍結または同等の露出が生じると、染料で飽和された化合物が凍結インジケータ内へと輸送され、無色の化合物と混合して視覚上の凍結指示を与える。
図示の例においては、上記したように、参照リング214は暗い。累積時間-温度露出インジケータ212は当初明るく、経時と共にゆっくり暗色化する。可溶材210も暗いので、三元組み合わせ型温度露出インジケータの露出温度が上限しきい値を超えるならまたは超えるとき、可溶材210が灯心材料部材に沿って広がり、凍結インジケータ220を通して見える灯心材料部材の部分を明から暗に変化させる。凍結インジケータ220は透明であり、活性要素223をなす透明または無色の凍結インジケータ材を当初提示する。凍結インジケータ220が凍結温度に露出されると、活性要素223の凍結インジケータ材が暗色化する。
三元組み合わせ型温度露出インジケータ198は、インジケータ及びそれが付属された任意のホスト製品が3種類の異なる望ましくない温度条件のいずれかに露出されたかどうかについて、単純で容易に読み取れる指示を与える。特に、3種類の指示を、凍結インジケータ220自体によって与えられる1つの視認窓を介して全て読み取ることができる。
三元組み合わせ型温度露出インジケータ198が暗い円の内部に明るい正方形を表示する限り、そのホスト製品は使用可能である。三元組み合わせ型温度露出インジケータ198が参照リング214内に暗い領域を表示すると、これは、ホスト製品が望ましくない温度条件に露出された可能性があり、おそらく使用すべきでないこと、あるいはホスト製品の状態を使用前にさらにチェックすべきであることを意味する。つまり、三元組み合わせ型温度露出インジケータ198が凍結条件にさらされると、凍結インジケータ220が暗い円を示す。またインジケータがしきい値より高い温度にさらされると、累積時間-温度露出インジケータ212と中央の視認窓216両方を通して見られる灯心材料部材208の外見を、可溶材210が暗色化する。その結果、正方形(視認窓)216が周囲の参照リング214の円よりも暗く見える。さらに、時間と温度の累積的な影響が所定の限界を超えると、窓216を通して視認される累積時間-温度露出インジケータ212が、周囲の円よりも暗い中央の正方形を表示する。
図16−17に示す三元組み合わせ型温度露出インジケータの実施形態は、幾つかのインジケータが垂直方向に重ね合わされる代わりに、横に並べて配列される点を除き、三元組み合わせ型温度露出インジケータ198とほぼ同じである。
図16−17を参照すれば、そこに例示した三元組み合わせ型温度露出インジケータ230では、累積時間-温度露出インジケータ212と灯心材料部材208が下方フィルム部材202上に、横に並べ相互に離して配置されている。図14−15の実施形態と比較すると、累積時間-温度露出インジケータ212が正方形でなく円形に印刷またはその他の方法によって構成され、灯心材料部材208が短くなっている。図17に示すように、しきい値より高い温度への露出が生じると、可溶材210が灯心材料部材208の全長に沿って移動する。
凍結インジケータ220は、透明な上方フィルム部材200上の中央で、水平方向には累積時間-温度露出インジケータ212と灯心材料部材208との間に配設されている。透明な上方フィルム部材200に不透明な層232が印刷されて、3つの横に並んだ窓を形成しており、これらの窓を通して下側の各層が視認可能である。凍結インジケータ220は中央の窓を占める。図16において左側の窓234は、累積時間-温度露出インジケータ212の上方に位置して、その表示を与える。右側の窓236は、灯心材料部材208の表示、及び可溶材210が存在すればその表示を与える。図示のごとく、凍結インジケータ220によって与えられる窓及びその他2つの窓234と236は全て円形で、同じサイズを有する。しかし所望なら、上方フィルム部材200上の凍結インジケータ220及び窓234と236について、異なる形状やサイズ及び異なる配置を用いることもできる。
不透明な層232は、凍結インジケータ220と一貫したあるいはその視認を容易とするような任意の所望な外見を有することができる。また所望なら、不透明な層232はテキスト、グラフィックス、あるいはその他の表記を保持または備えてもよい。例えば不透明な層232は、インジケータの各表示を説明する凡例を保持可能である。この実施形態では、参照リング214や同様の視覚的に特徴付けられた領域は示してない。しかし所望なら、幾つかのインジケータの外見の1つまたはその他のものに対応して参照領域を設けることもできる。あるいは不透明な層232は、インジケータ220の起こり得る外見の1つ以上に対する文章の及び/又はグラフィックによるガイドを備えてもよい。
三元組み合わせ型温度露出インジケータ230を使用する際、窓234を通して見られる累積時間-温度露出インジケータ212は明るい外見から始まり、時間と共にゆっくり暗くなっていく。可溶材210は暗く、周囲温度が上限しきい値を超えると可溶材210が灯心材料部材208に沿って広がり、図示のように灯心材料部材208を明から暗に変化させ、窓236内に暗色の外見を提示する。凍結インジケータ220は透明で、当初無色の凍結インジケータ材を提示する。凍結温度に遭遇すると、凍結インジケータ材が暗くなる。
三元組み合わせ型温度露出インジケータ230が3つの明るい円を示している限り、当該ホスト製品は使用可能である。インジケータが凍結条件かしきい値より高い温度に露出されると、もしくは時間-温度の累積的な影響が設定限界を超えると、上方フィルム部材200上に表示される当初透明だったまたは明るかった3つの円のうち少なくとも1つが暗くなり、問題の可能性をシグナル表示する。
つまり三元組み合わせ型温度露出インジケータ230は、コンパクト且つ効率的で、3種類の表示を1ユニットに統合したインジケータディスプレイを与え、暗い円を表示するという単一のシグナルを使って、各種の損傷を起こし得る周囲温度パラメータのうち少なくとも1つにホスト製品が露出されたことを明瞭に通知できる。また三元組み合わせ型温度露出インジケータ230は、どのパラメータが超えられたかを容易に通知し、また2つの特定のパラメータあるいは3つ全てのパラメータが超えられたことを示すことができる。3種類のインジケータは共通の基材上に整列して一体化され、共通の容易に読み取れる外見を提供する。
また本発明は、三元組み合わせ型温度露出インジケータ198及び230と同様であるが、3種類のインジケータ構造のうちの1つ、つまり累積時間-温度露出インジケータ212、凍結インジケータ220、または可溶材210と灯心材料部材208によって与えられるしきい値インジケータのいずれかが省略された二元組み合わせ型温度露出インジケータも含む。この観点において、本発明は2つの実施形態、つまり凍結インジケータと累積時間-温度露出インジケータの組み合わせ、凍結インジケータとしきい値温度インジケータの組み合わせ、及びしきい値温度インジケータと累積時間-温度露出インジケータの組み合わせを提供する。
本発明は、各種の価値ある利点をもたらす。例えば、損傷し易い製品の取り扱い及び使用を改善するための有用な装置の作製及び方法の実施を可能とする。本発明によれば、使用の時点で製品が温度による老化及び凍結による損傷を受けているかどうかを容易に点検でき、製品が有害な温度露出を蒙っていないことを確かめることができる。別の利点として、ワクチンや注射器など、小型で低コストの製品に経済的に適用可能である。さらに、参照ガイドを含み、容易に読み取れる視覚的な組み合わせ表示を与え、特に熱帯地域の低開発国における予防接種計画で生じるような困難な状況下での製品の使用を容易化する。
時間-温度露出インジケータ用の有用な活性剤の一部の例は、「KEモノマー」としても周知な2,4-ヘキサジン-1,6-ビス(エチル尿素);「KPrモノマー」としても周知な2,4-ヘキサジン-1,6-ビス(プロピル尿素);及びKEモノマーとKPrモノマーの2:1の共結晶混合物で、「KXモノマー」としても周知な混合物などの共結晶アセチレン剤を含む。周知なように、その他のポリアセチレン剤も使える。例えば、Pantel
の米国特許第4,189,399号と第4,384,980号、及び Preziosiらの米国特許第4,789,637号と第4,788,151号を参照のこと。これら各米国特許の開示内容は、参照によってここに包含される。
時間-温度インジケータの動作は、異なる技術に基づいて行うことができる。その他の技術の例は以下のものを含むが、それらに限定されない:拡散または移動技術;機械的な活性化を必要とする時間-温度インジケータ;酸化剤との接触による酸化重合可能な染料を用いた色変化技術;別の色のパッチを覆っており、所定の温度に露出されると溶解して透明となる着色されたサーモクロミック材料の使用;有機銀塩酸化剤と還元剤とを用いた、熱感知式像形成技術;温度露出によって脱色する熱感知有機結晶の使用;酵素に基づくセンサ;視覚的出力を備えた電子的な時間-温度インジケータ;及び微生物学的デバイス。これらの及びその他の時間-温度を指示する技術は、本出願と共通の出願人によって所有されており、名称「鮮度追跡(FRESHNESS TRACKING)」で2005年8月31日に出願された、Martinらによる米国仮特許出願第60/712,929号に記載されており、その開示内容全体が参照によってここに包含される。
本発明の別の観点では、例えば果物、高級魚など成熟する凍結感応製品の成熟度、及びそのような製品の起こり得る凍結露出を指示可能な組み合わせ型成熟インジケータを提供する。本発明のこの観点においては、時間-温度インジケータに代えて、本出願と共通の出願人によって所有されており、名称「成熟する消費商品をマーケット化する方法及びそれに有用な製品(Method Of Marketing Maturing Consumable Products
and Products Useful Therein)」で2005年5月2日に出願された、Prusikらによる米国特許出願第 11/119,650 号に記載されているような成熟インジケータを使用可能であり、その開示内容全体が参照によってここに包含される。
本発明のさらに別の観点では、例えば環境条件インジケータに関して、本出願と共通の出願人によって所有されており、名称「視覚的な環境条件モニターを備えたRFIDタグ(RFID Tag With Visual Environmental Condition Monitor)」で2004年12月20日に出願された、米国特許出願公開第2006/0145863号(その開示内容全体が参照によってここに包含される)に記載されている方法で無線周波数識別(RFID)タグに組み込まれるまたは付設される組み合わせ型インジケータを提供する。この組み合わせ型インジケータは、本明細書で説明した形状または構成のいずれおも有することができる。上記継続中の米国特許出願に開示されているように、RFIDタグは、本発明に基づき本明細書で説明したような組み合わせ型温度インジケータで構成可能な周囲温度インジケータによってモニターされるホスト製品について、識別データを発生またはその他の方法で生成可能なのが実用的である。
つまり本発明は、無線周波数識別(RFID)タグなどと一体状にまたはそれに付設して共通の基材上に支持された凍結インジケータと累積的な環境時間-温度インジケータとを含む。また本発明は、無線周波数識別(RFID)タグと一体状にまたはそれに付設して共通の基材上に支持された、本明細書で説明したような温度しきい値インジケータと累積的な環境時間-温度インジケータとを含む。さらに本発明は、無線周波数識別(RFID)タグと一体状にまたはそれに付設して共通の基材上に支持された凍結インジケータと温度しきい値インジケータとを含む。
さらに本発明は、無線周波数識別(RFID)タグなどと一体状に共通の基材上に支持された、本明細書で説明したような凍結インジケータと、本明細書で説明したようなしきい値温度インジケータとを含む。
本発明の組み合わせ型インジケータは、幅広い各種ホスト製品のいずれについてもその温度露出をモニターするのに使える。この目的のため、組み合わせ型インジケータは任意の適切な方法でホスト製品に付設または付着して、その露出をモニター可能である。
適用可能なホスト製品の一部の例は、凍結に敏感なワクチン、食材、酪農品、野菜、植物、花、球根、生物薬剤、培養液、人間または動物の器官、薬物、医薬品、化学品、水性化学品、塗料、及び水性接着剤を含む。
凍結すると損傷し易い恐れのあるホスト製品の別の一部の例は、次のものを含む:果物、野菜、例えば牛乳、クリーム、ヨーグルト及びチーズなどの酪農品;卵及び卵を含む製品;例えばパン、ケーキ、クッキー、ビスケット、練り粉菓子類(ペストリー)及びパイなどの焼き製品;生、調理、保存または燻製処理した肉及び魚;さらには牛肉、子牛肉、豚肉、羊肉、山羊肉、狩猟肉、家畜化動物の肉、野生動物の肉、及びその他の肉のロースト、ステーキ、細切れ、全体及び分割した部片;
例えばレストランで提供される食品、取り立て食品、果物、野菜などの提供食品;
例えば高級及びその他の果物、チョコレート、チーズ及び保存処理肉、チキン、家禽、狩猟品などのメール注文品や一般運送業者による配送品、さらには電話、メール、インターネットで注文され、個人宅や会社に配達されるインスタントまたは下ごしらえ済みの料理品;
例えばペットフード、及び農業や動物園関連、その他の動物用フードなど、凍結すると損傷し易い動物用フード;
切断済み及び未切断の花;
水含有化粧品、及び生物製剤やその他化学変化を起こし易い成分を含む化粧品;
例えば培養物、器官やその他の人間または動物の肉体部片、血液、及び血液製剤など、産業用または治療用に使われる生物学的物質;
凍結すると損傷し易いものを含む診断用デバイス、キット及び成分;
例えばワクチン、ドラッグ、医薬品、薬物、医療用デバイス及び予防具などの、凍結すると損傷し易い医療品;
神経作用物質、血液剤、びらん剤、その他の有毒剤への露出を検出するのに有用な、凍結すると損傷し易い化学または生物剤検出キット;
例えば水含有製品などの、凍結すると損傷し易い化学品及び工業的供給品;及び
その他、当業者によって自明な凍結すると損傷し易い製品。
本発明の凍結インジケータの実施形態は、例えば次のようなものを含む幅広い熟成品の凍結にたいする露出の恐れをモニターするのにも有用に使える:果物;りんご;西洋なし;キューイ;メロン;ぶどう;グレープフルーツ;バナナ;モモ;ネクタリアン;プラム;パイナップル;マンゴー;グアバ;ナツメヤシ;パパイヤ;プランテーン(料理用バナナ);アボガド;ペッパー(ピーマン);トマト;チーズ;ソフトチーズ;ブリチーズ;カマンベールチーズ;ハードチーズ;チェダーチーズ;熟成牛肉;熟成ステーキ;その他の熟成肉及び肉製品;熟成高級肉;熟成ハム;キジ;高級狩猟品;熟成ソーセージ;ワイン;ブルドーワイン;ブルゴーニュ(バーガンディ)ワイン;クラレット;シャンパン;ポートワイン;ウィスキー;コニャック;及びその他の熟成によって得られる飲料からなる群の中から選ばれた1つ以上の熟成製品。
本発明はさらに、本明細書で説明した本発明による品質保証システムを備えた上述の熟成ホスト製品のいずれかを有する、熟成可能なまたは熟成している品質保証品を含む。
本明細書で説明した組み合わせ型インジケータは、例えば最終包装品に仕上げられる時点など、生産、包装または流通中の適切な時点でホスト製品に適用可能であり、使用前の所定の時点でそれを検査する。使用前の適切な時点で凍結インジケータ10を検査し、凍結への露出が生じたことがシグナル表示されていれば、そのホスト製品を廃棄することができる。
ここに包含される開示物。 本明細書で特に参照した米国特許及び特許出願の各々、諸外国及び国際特許の各刊行物、その他の各刊行物、及び刊行されていない各特許出願の全開示内容が、参照によってここに全て包含される。
本明細書の全体を通じて、特定の成分を有する、含むまたは備えるものとして組成が説明されている場合、あるいは特定の処理工程を有する、含むまたは備えるものとして方法(プロセス)が説明されている場合、本発明の組成は記載された成分から実質上構成可能またはそれらから構成可能であること、及び本発明の方法は記載された処理工程から実質上構成可能またはそれらから構成可能であることが意図されている。工程の順序または幾つかの措置を実施する順序は、発明が機能可能である限り重要なものではない。また、2つ以上の工程または措置を同時に実施することもできる。尚、本明細書に記載する全ての比率は、特に断り書きがない限り、当該組成の重量を基準とした重量比率である。
さらに、2つの物質層を用いるものとして構造が例示されている場合、本発明は、それら2層の機能を単層で果たす代替実施形態も想定している。
上記の詳細な説明は、当業者にとっては自明であるように、本発明を実施するための最良の形態に関する部分的または完全な情報が記述されていることもあり、また本発明の変形、代替または有用な実施形態が示唆もしくは記述されていることもある前述の発明の背景及び発明の要旨の記載を参照してまたはそれと組み合わせて読まれるべきである。
以上本発明の例示の実施形態を説明したが、当業者にとっては多くの及び各種の変形が自明であり、また当該分野の発展に伴ってそれらが自明になるのはもちろんのことである。そのような変形も、本明細書に開示された発明の精神及び範囲内に含まれるものである。