JP5043277B2 - 分子クローニング法および使用試薬 - Google Patents

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Description

【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は一般に、方向的または非方向的に核酸分子を連結する段階を含み、組換え核酸分子の構築を容易にする組成物および方法、より具体的には、方向的もしくは非方向的に核酸分子連結する段階を含む、2個またはそれ以上の核酸分子を共有結合で結合する段階に有用な組成物、および共有結合で連結されたこのような組換え核酸分子を作製する方法に関する。
【0002】
背景情報
遺伝子配列および読み枠を含む多数のヌクレオチド配列をクローニングすることができれば、遺伝子発現、およびその調節に関する大量の情報が得られる。また、このような配列は、疾患条件の原因を理解する上で有用な場合があり、理想的には、疾患の診断および治療の手段を提供しうる。しかし、発現された多数のヌクレオチド配列をクローニングすることは比較的単純な操作であるが、例えば、このような配列の発現にかかわる調節領域の特性解析を行うこと、またこのような配列にコードされたポリペプチドを発現させることはやや困難である。特に核酸分子とクローニング用の核酸分子を連結して、機能性の組換え核酸分子となるような核酸分子をクローニングする改善された方法が求められている。特に所定の方向に挿入配列がベクターにクローニングされたり、または1個もしくは複数の他の核酸分子を連結されたりすることが可能な、方向的クローニング法が求められている。
【0003】
トポイソメラーゼの使用は、クローニングおよび連結の方法を改善する上で簡便な手段となる。例えばトポイソメラーゼを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)産物のベクターへの迅速な連結を行うことで、煩雑な従来のクローニング法を、5分間で完了する手順に切りつめることができる。したがってトポイソメラーゼは、高スループットのクローニングへの応用に特に有用である。しかし読み枠(ORF)をゲノムスケールの分子クローニング手段で発現させることが現在求められているので、2種またはそれ以上の核酸分子の連結方向を、発現可能なクローニングされた核酸分子などの機能性の組換え核酸分子が調製可能なように、より適切に制御することが求められている。
【0004】
クローニングされたORFの発現には、PCR産物がベクターに正しい方向で挿入されて、ベクター上に位置する機能性の発現ドメインと合わせて作用することが求められる。トポイソメラーゼを利用したクローニング分野の現状では、ORFが、さまざまなDNAポリメラーゼを用いたPCRで増幅される。校正機能がなく、固有の末端トランスフェラーゼ活性があるTaqなどのポリメラーゼが一般に使用されており、鋳型に由来しない一つの3' A突出を各末端に含むPCR産物が得られている。このような増幅産物は、一つの3' T突出を各末端に含む、トポイソメラーゼで修飾したベクターに効率的にクローニングすることができる(TOPO TA Cloning(登録商標) Kit、Invitrogen Corp.、Carlsbad、CA)。これとは対照的に、固有の3'→5'エキソヌクレアーゼ校正活性があるpfuなどのポリメラーゼでは、平滑末端化されたPCR産物が得られる。平滑末端を含む、トポイソメラーゼで修飾したベクターは、校正機能をもつポリメラーゼで作製されたPCR産物のクローニングに利用することができる(Zero Blunt TOPO(登録商標) PCR Cloning Kit、Invitrogen Corp.、Carlsbad、CA)。PCR産物およびトポイソメラーゼで修飾された適切なベクターをインキュベートすることで連結が5分間で完了する。しかし、このクローニング法で得られる挿入配列の方向はランダムである。
【0005】
トポイソメラーゼで修飾したクローニングベクターへDNA断片の挿入方向はランダムなので、使用者はスクリーニングを行うことで、挿入方向が適切なクローンを同定しなければならない。挿入配列の方向は、例えば制限酵素による解析、ベクターにコードされたプロモーター領域からのインビトロ転写、および例えば、挿入配列に特異的な1本のプライマーとベクターに特異的な1本のプライマーを用いたPCR、を含むさまざまな方法で決定することができる。しかし明らかなように、挿入配列の方向を決定する際の要件には、時間的な投資が必要であり、対象核酸分子を同定するためのコストが実質的に増えるおそれが、特に高スループットのクローニング法を用いる場合にはある。したがって複数の理由から、現在のクローニング法、特に高スループットの遺伝子発現の解析には大きな制限がある。なぜなら、正しい方向の挿入配列をもつクローンを選択するためには、数多くの煩雑な段階を実施しなければならないためであり、各クローンについて8個程度のスクリーニングを行うことで適切な方向を有するクローンを同定する必要があるからである。したがって、2個またはそれ以上の核酸分子を一定の方向に共有結合で連結するために有用な方法および試薬が求められている。本発明は、このようなニーズを満たし、他の利点を提供する。
【0006】
発明の概要
本発明は、2種またはそれ以上のds核酸分子を方向的または非方向的に連結する段階を含む、2種またはそれ以上(例えば2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種など)の2本鎖(「ds」)核酸分子を共有結合で連結するための組成物および方法を提供する。本発明に使用される核酸分子は、好ましくは、第一の末端および第二の末端を含む。このような分子の第一の末端、および/または第二の末端は、好ましくは、5'および/または3'の延長すなわち突出を有する。したがって、本発明に使用される核酸分子の一端または両端は、3'および/または5'の突出を有する場合がある。突出配列は、分子の両端において、配列が同じ場合もあれば異なる場合もあり、また種類が同じ場合もあれば異なる場合もある(例えば3'または5'の突出)。また、核酸分子の一端が3'の延長または5'の延長を有する場合がある一方で、分子の別の末端が延長を有する場合があるが、必ずしも有するとは限らない。いくつかの局面では、核酸分子の一端は、3'突出または5'突出を含む場合があるが、別の末端は平滑末端化されている場合がある(突出がない)。本発明では、任意の末端における3'および/または5'の延長配列(突出)の長さは任意の数(任意の数のヌクレオチド)である場合があり、また任意の配列を有する場合がある。したがって本発明は、1か所または複数のヌクレオチドの突出を有する核酸分子に関する。いくつかの局面では、核酸分子およびその末端は、修飾されたヌクレオチド、または標識されたヌクレオチドを含む場合がある。本発明の用途においては、核酸分子を融合もしくは結合または連結することが可能な酵素もしくはタンパク質を使用することができる。したがって、同じ場合もあれば異なる場合もある2個またはそれ以上の核酸分子を、このような酵素を用いて方向的に結合することができる。このような酵素またはタンパク質は、トポイソメラーゼ(IA型、IB型、II型などを含む)、リコンビナーゼタンパク質(FLIPリコンビナーゼ、Intインテグラーゼ、creリコンビナーゼなどを含む)、およびリガーゼ(T4 DNAリガーゼなどを含む)を含むがこれらに限定されない。
【0007】
本発明の方法では、第一の核酸分子の一端の3'または5'の突出は、少なくとも第二の核酸分子の末端またはその近傍において、少なくとも一つの配列に相同性を有する(または相補的である)場合がある。したがって、3'もしくは5'の突出または延長と、第二の分子上の相同性のある鎖、または相補鎖との塩基対合、またはハイブリダイゼーションにより、本発明は、2種の異なる分子の方向性または非方向性の会合または連結が可能である。好ましい局面では、少なくとも第一の分子の一方の末端の3'または5'の突出は、その相補配列と、第二の分子の末端またはその近傍で会合させるか、またはハイブリダイズすることで、鎖の侵入に関与する場合がある。一つの局面では、このような鎖の侵入により、3'または5'の突出が、そのパートナー分子の所望の末端と、方向的に会合することができる。結合される分子の突出、および末端を設計することで、2個または多数のパートナー分子が、本発明により、リガーゼ活性を有する1種または複数のタンパク質もしくは酵素(例えばトポイソメラーゼ、リガーゼ、リコンビナーゼなど)の存在下で結合可能となる。したがって本発明は、1個の分子の少なくとも1本の鎖と、別の分子の少なくとも1本の鎖を共有結合で連結する段階がかかわる、2個またはそれ以上の核酸分子(例えば2本鎖の核酸分子)をつなぐ方法を提供する。本発明は、本発明の方法でつながれた核酸分子の調製用の組成物、および本発明の方法で作成された組成物をさらに提供する。
【0008】
本発明の諸段階は、トポイソメラーゼで触媒される異なる核酸分子の鎖の共有結合による連結が関与する、本明細書に記載された方法で例示される。したがって本発明は、第一の末端および第二の末端(第一の末端は、第一の5'突出、および3'端に共有結合的に連結された状態の第一のトポイソメラーゼを含み、また第二の末端は、3'端に共有結合的に連結された第二のトポイソメラーゼを含み、また第二の5'突出、平滑末端、または3'チミジン突出を含む)を有する単離されたds核酸分子に部分的に関する(第一の突出と第二の5'突出は異なる)。第一のトポイソメラーゼと第二のトポイソメラーゼは同じ場合もあれば異なる場合もある。第一の5'突出は、例えばヌクレオチド配列5'-GGTG-3'を含むヌクレオチド配列を有する場合がある。
【0009】
一つの態様では、ds核酸分子は、λベクターなどの線状ベクター、または直線化されたプラスミドなどの直線化されたベクターの場合があるベクターである。このようなベクターは、クローニングベクター、または発現ベクターの場合があり、また例えば1個もしくは複数のlox部位、または1個もしくは複数のatt部位などの1か所もしくは複数(例えば1か所、2か所、3か所、4か所、5か所、6か所など)のリコンビナーゼ認識部位、1個もしくは複数の転写調節領域、1個もしくは複数の翻訳調節領域、1個もしくは複数の選択マーカー、または1個もしくは複数のタグなどの対象ペプチドをコードする1個もしくは複数のヌクレオチド配列、またはこれらの組み合わせを含む場合がある。例えばベクターは、pUni/V5-His バージョンA(配列番号:16)ベクター、またはpCR(登録商標)2.1(配列番号:17)ベクターである。
【0010】
本発明は、望ましいならば2個もしくはそれ以上の核酸分子を使用可能に連結する段階を含む、2個、3個、4個、またはそれ以上の核酸分子を方向的または非方向的に連結する方法にも関する。方向的に連結された組換え核酸分子を作製する方法は、例えば第一の末端に共有結合で結合された第一のトポイソメラーゼ、および第二の末端に共有結合で結合された第二のトポイソメラーゼを有し、また第一の末端に5'突出を、また第二の末端に平滑末端、3'ウリジン突出、3'チミジン突出、または第二の5'突出も含む、第一のトポイソメラーゼをチャージした第一のds核酸分子;第一の平滑末端および第二の末端を有する少なくとも第二のds核酸分子(第一の平滑末端は、第一の核酸分子の第一の末端の第一の5'突出に相補的な5'ヌクレオチド配列を有する)を接触させることで実施することができる。第一および第二のトポイソメラーゼは、例えば2個のワクシニアウイルスのIB型トポイソメラーゼなどの2個のIB型トポイソメラーゼのように同じ場合もあれば、または、異なる生物に由来する2個のIB型トポイソメラーゼ、またはIB型トポイソメラーゼ、およびIA型もしくはII型トポイソメラーゼのように異なる場合もある。
【0011】
本発明の方法を実施する際には、第一および第二(または他)のds核酸分子を、第二の核酸分子の第一の平滑末端の5'ヌクレオチド配列が、第一の5'突出と選択的にハイブリダイズして、第一のトポイソメラーゼが、第一のds核酸分子の第一の末端の3'端を、第二のds核酸分子の第一の平滑末端の5'端に共有結合で連結し、また第二のトポイソメラーゼが、第一のds核酸分子の第二の末端の3'端を、第二のds核酸分子の第二の末端の5'端に共有結合で連結することで、方向的に連結された組換え核酸分子を作製することが可能な条件下で接触させる。したがって本発明は、このような方法で作製された、方向的または非方向的に連結された組換え核酸分子を提供する。
【0012】
本発明の方法を実施する際の一つの局面では、第一のトポイソメラーゼをチャージしたds核酸分子の第二の末端は平滑末端を有し、また第二のds核酸分子の第二の末端は平滑末端を有する。別の局面では、トポイソメラーゼをチャージした第一のds核酸分子の第二の末端は3'チミジン突出を有し、また第二のds核酸分子の第二の末端は3'アデノシン突出を有するか、またはトポイソメラーゼをチャージした第一のds核酸分子の第二の末端は3'ウリジン(もしくはその修飾型、例えばデオキシウリジン)突出を有し、また第二のds核酸分子の第二の末端は3'アデノシン突出を有する。さらに別の局面では、トポイソメラーゼをチャージした第一のds核酸分子は、第二の末端に第二の5'突出を有し、第二のds核酸の第二の末端は、第二の5'突出に相補的なヌクレオチド配列を有する。トポイソメラーゼをチャージした第一のds核酸分子は、クローニングベクターまたは発現ベクターを含むベクターである場合があるが、必ずしもその必要はない。
【0013】
本発明の方法は、方向的または非方向的に連結された組換え核酸分子を、細菌などの原核細胞の場合もあれば哺乳類細胞などの真核細胞の場合もある細胞に導入する段階をさらに含む場合がある。したがって本発明は、本発明の方法で作製される細胞、ならびにこのような細胞から作製される非ヒトトランスジェニック生物も提供する。
【0014】
トポイソメラーゼをチャージした第一のds核酸分子はベクターである場合があり、また本発明の方法で使用される第二のds核酸分子は増幅産物である場合がある。また第二のds核酸分子は、例えばcDNAライブラリーまたはコンビナトリアルライブラリーに含まれる分子である、複数の第二のdsヌクレオチド分子の一つである場合がある。
【0015】
方向的または非方向的に連結された組換え核酸分子を作製する方法は、例えば第一の末端(第一の5'標的配列を5'端に、またトポイソメラーゼ認識部位を3'端に有する)および第二の末端(トポイソメラーゼ認識部位を3'端に有する)を有する第一の前駆体ds核酸分子:第一の平滑末端および第二の末端(第一の平滑末端は、第一の前駆体ds核酸分子の5'標的配列に相補的な5'ヌクレオチド配列を有する)を有する第二のds核酸分子;ならびにトポイソメラーゼ認識部位に特異的なトポイソメラーゼを接触させることでも実施することができる。第一のds核酸分子、第二のds核酸分子、およびトポイソメラーゼを、トポイソメラーゼ活性を可能とする条件、すなわちトポイソメラーゼがその認識部位に結合して切断して、トポイソメラーゼをチャージした3'端を生じることが可能な条件下で接触させることで、適切な5'端の3'端を連結することが可能である。このような条件では、トポイソメラーゼによる切断後に残る第一の5'標的配列の一部と、第二のds核酸分子の第一の平滑末端の5'ヌクレオチド配列(第一の平滑末端の5'ヌクレオチド配列は、5'標的配列の一部に相補的である)のハイブリダイゼーションが可能となる。
【0016】
本発明の方法を実施する一つの局面では、第一の前駆体ds核酸分子の第二の末端は、トポイソメラーゼによる切断後に平滑末端となり、また第二のds核酸分子の第二の末端は平滑末端である。別の局面では、第一の前駆体ds核酸分子の第二の末端は、トポイソメラーゼによる切断後に3'チミジンの延長を有し、第二のds核酸分子の第二の末端は3'アデノシン、または3'-ウリジン(例えばデオキシウリジン)の突出を含む。さらに別の局面では、第一の前駆体ds核酸分子は、第二の5'標的配列を第二の末端に有し、第二のds核酸分子の第二の末端は、第二の5'標的配列の少なくとも一部に相補的な5'ヌクレオチド配列を有する。
【0017】
第一の前駆体ds核酸分子は、クローニングベクターおよび発現ベクターを含むベクターであり、またベクターが一般に環状の状態で入手可能の場合は、トポイソメラーゼの作用で直線化可能であり、または例えばトポイソメラーゼとの接触によって、第一および第二のds核酸分子が本発明の方法により方向的もしくは非方向的に連結可能となるように、ベクター直線化する1種または2種の制限エンドヌクレアーゼを含めることで直線化することが可能である。本発明は、例えば方向的に連結された組換え核酸分子を細胞に導入する段階をさらに含む場合がある本発明の方法で作製される方向的または非方向的に連結された組換え核酸分子も提供する。したがって本発明は、このような方向的または非方向的に連結された組換え核酸分子を含む細胞、ならびにこのような細胞から作製されるトランスジェニック非ヒト生物も提供する。
【0018】
第一の前駆体ds核酸分子は、相互に使用可能に連結可能な1個または複数(例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個など)の発現制御領域を含む場合があり、また第二のds核酸分子は、読み枠のすべてまたは一部をコードする場合がある(発現制御領域は、本発明の方法で作製された、方向的に連結された組換え核酸分子中の読み枠に使用可能に連結される)。また、第二のds核酸分子は、複数の第二のds核酸分子のうちの一つ、例えばcDNAライブラリーに含まれる分子である場合がある。
【0019】
方向的に連結された組換え核酸分子を作製する方法は、第一の末端に第一の5'突出、および3'端に共有結合で結合された第一のトポイソメラーゼを有するトポイソメラーゼをチャージした第一のds核酸分子と、第一の平滑末端および第二の末端(第一の平滑末端は第一の5'突出に相補的な5'ヌクレオチド配列を含む)を有する第二のds核酸分子とを接触させることでも実施することができる。この方法は、第一の平滑末端の5'ヌクレオチド配列が、第一の5'突出と選択的にハイブリダイズすることで、第一のトポイソメラーゼが、第一のds核酸分子の第一の末端の3'端を、第二のds核酸分子の第一の末端の5'端に共有結合で連結することができる条件下で実施される。
【0020】
このような方法はさらに、トポイソメラーゼをチャージした第一のds核酸分子および第二のds核酸分子を、第三のds核酸分子(第三のds核酸分子の第1の末端は、5'突出、および3'端に共有結合で結合された第二のトポイソメラーゼを有し、また第二のds核酸分子は、第二の5'突出に相補的な5'ヌクレオチド配列を含む第二の平滑末端を有する)に接触させる段階を含む場合もある)。接触させる段階は例えば第二のds核酸の第二の平滑末端の5'ヌクレオチド配列が、第三のds核酸分子の第一の末端の5'突出と選択的にハイブリダイズすることが可能な条件下(第二のトポイソメラーゼは第三のds核酸分子の第一の末端の3'端を、第二のds核酸分子の第二の平滑末端の5'端に共有結合で連結させることが可能である)で実施することができる。同様に、この方法は、第四の、第五の、第六の、またはそれ以上のds核酸分子を方向的または非方向的に連結する際に用いることができる(このようなds核酸分子の末端は本明細書で例示されるように選択される)。第一および第二(または他)のトポイソメラーゼは、同じ場合もあれば異なる場合もあり、また望ましいならば、第一または第三のds核酸分子は、トポイソメラーゼをチャージしたものではなく、トポイソメラーゼ認識部位を含む場合がある(この方法は、試薬をトポイソメラーゼに接触させる段階をさらに含む場合がある)。
【0021】
本発明の方法は、同時に、または連続的に実施することができる。本発明の方法は例えば、第一のds核酸分子を第二のds核酸分子に方向的に連結させ、次に異なる反応容器内で、第三のds核酸分子が第二のds核酸分子に方向的に連結されるように連続的に実施することができる。または本発明の方法は、すべての反応物が同時にともに含まれるように、同時に実施することができる。
【0022】
本発明の方法は、例えば発現制御領域を読み枠に使用可能に連結させたり、第一および第二の読み枠を使用可能に連結させて、1個または複数の発現制御領域に、さらに使用可能に連結可能な融合タンパク質をコードする組換え核酸分子を作製する段階を含む、2個またはそれ以上(例えば2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個など)のds核酸分子を連結する段階に特に有用である。例えば本発明の方法を実施する際には、第一のds核酸分子に発現制御領域を含めることが可能であり、第二のds核酸分子が読み枠をコードすることが可能であり、また第三のds核酸分子がペプチドをコードすることが可能である(方向的に連結された組換え核酸分子内では、発現制御領域は読み枠に使用可能に連結され、第二のds核酸分子は第三のds核酸分子に使用可能に連結され、また使用可能に連結された第二および第三のds核酸分子は読み枠を含むタンパク質およびペプチドをコードする)。このようなペプチドは、任意の遺伝子産物、または他の読み枠、タグ(例えばアフィニティタグ)、検出用標識などを含む任意のペプチドまたはポリペプチドの場合がある。
【0023】
本発明は、第一の末端および第二の末端を有する第一のds核酸分子(第一の末端は5'突出、および3'端に共有結合で結合されたトポイソメラーゼを有する);ならびに第一の平滑末端および第二の末端を有する第二のds核酸分子(第一の平滑末端は、第一の5'突出に相補的な第一の5'ヌクレオチド配列、および第一の5'ヌクレオチド配列に相補的な第一の3'ヌクレオチド配列を有する)を含む組成物にも関する。このような組成物では、第二のds核酸分子の第一の平滑末端の第一の5'ヌクレオチド配列は、第一の核酸分子の第一の末端の第一の5'突出とハイブリダイズすることが可能である(第二のds核酸分子の第一の平滑末端の第一の3'ヌクレオチド配列が置換される)。このような組成物に含まれる第一のds核酸分子は、第二の末端に第二の5'突出をさらに有し、第二のds核酸分子の第二の末端は、第二の5'突出に相補的な第二の5'ヌクレオチド配列、および第二の5'ヌクレオチド配列に相補的な第二の3'ヌクレオチドをさらに含む場合がある。
【0024】
本発明は、ds核酸分子を方向的に連結する際に有用な1種または複数の試薬を含むキットにも関する。一つの態様では、本発明のキットは、第一の末端および第二の末端(第一の末端は、第一の5'突出および3'端に共有結合で結合された第一のトポイソメラーゼを含み、第二の末端は、3'端に共有結合で結合された第二のトポイソメラーゼを含み、また第二の5'突出、平滑末端、または3'チミジン突出を含む)を有するds核酸分子を含む(第一の5'突出は、第二の5'突出と異なる)。このようなトポイソメラーゼは、同じ場合もあれば異なる場合もあり、またds核酸分子はベクターである場合があり、また発現制御領域を含む場合がある。
【0025】
別の態様では、本発明のキットは、第一の末端の3'端に共有結合で結合された第一のトポイソメラーゼ、および第二の末端の3'端に共有結合で結合された第二のトポイソメラーゼを有する第一のds核酸分子(第一の末端は第一の5'突出も有し、また第二の末端は、平滑末端、3'チミジン突出、または第二の5'突出も有すし、第二の5'突出が存在する場合、これは第一の5'突出と異なる);ならびに複数の第二のds核酸分子(複数の各ds核酸分子は第一の平滑末端を有し、第一の平滑末端は、第一のds核酸分子の第一の5'突出に相補的な5'ヌクレオチド配列を含む)を含む。複数の第二のds核酸分子は、複数の転写調節領域、翻訳調節領域、またはこれらの組み合わせである場合があるほか、ペプチドタグや細胞区画化ドメインなどの複数のペプチドをコードする場合がある。
【0026】
本発明のキットは、1個または複数(例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個など)の、トポイソメラーゼをチャージした本発明のds核酸分子、例えば1個または複数(例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個など)の、トポイソメラーゼをチャージしたベクター;トポイソメラーゼに接触させて、トポイソメラーゼをチャージした本発明のds核酸分子を作製することが可能な1個または複数(例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個など)の前駆体ds核酸分子;またはこれらの組み合わせを含む場合がある。本発明のキットは、例えば増幅反応で1個または複数の第二のds核酸分子を調製するための1本または複数のプライマー、またはプライマー対;キットの成分を検討したり標準化したりするための1個または複数の対照のds核酸分子;例えば、本発明の方法で作製された組換え核酸分子を導入可能なコンピテント細胞の場合がある1個または複数の細胞;本発明の方法を実施するための1種または複数(例えば1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種など)の反応緩衝液;この方法を実施するための指示書などを含む場合もある。
【0027】
一つの態様では、方向的または非方向的に連結された組換え核酸分子を作製する方法は、1か所の1本鎖突出、および1か所のトポイソメラーゼ部位、またはこれに結合する1個のトポイソメラーゼを有する第一のds核酸分子を用いて実施される。別の態様では第三の核酸分子が含まれる。本発明のこの局面では、連結される異なるds核酸分子に対する固有の突出配列が、同核酸分子が、核酸分子が方向的、また任意の所望の順序で連結可能なように固有の突出を有するように調製される場合がある。同様に、この方法は、2個またはそれ以上の数の核酸分子を方向的に連結する段階を含む、任意の数の核酸分子を連結する際に用いられる場合がある。発現制御領域を含む、トポイソメラーゼをチャージしたds核酸分子がかかわるある態様では、第三(または他)のdsヌクレオチド配列も、1個、2個またはそれ以上の発現制御領域、または他の対象配列を含む場合がある。
【0028】
本発明は、DNA断片を、クローニングベクターまたは発現ベクターに、容易に、またトポイソメラーゼを介したクローニングの効率で、方向的に挿入する方法を提供する。この方法は、現行のクローニングシステムより利益がある。というのは、所望の方向にクローニングされた挿入配列を同定する際に必要とされる煩雑なスクリーニング過程を減らせるからである。一つの局面では、この方法は、両方の3'端に共有結合で結合された1個のトポイソメラーゼ分子を有する、直線化された発現ベクターを使用する。直線化されたベクターの第一の末端は、5'の1本鎖突出を含む場合もあり、第二の末端は、いずれかが平滑である場合があり、T/Aクローニング用の1か所の3'チミジン延長を有し、または、自身が第二の5'の1本鎖突出配列を含む場合がある。1本鎖突出配列は、利便性を考慮した任意の配列、または所望の配列の場合がある。
【0029】
トポイソメラーゼをチャージしたクローニングベクターの構築は、ベクターをエンドヌクレアーゼで切断した後に、合成オリゴヌクレオチドの相補的アニーリング、およびワクシニアウイルスのトポイソメラーゼIよるヘテロ2本鎖の部位特異的切断を行うことで達成することができる。適合性のあるエンドヌクレアーゼによるベクターの切断で特異的な付着末端が生じる。特別のオリゴヌクレオチドは付着末端とアニーリングし、トポイソメラーゼIによる修飾により、ベクターの特別の末端を形成する配列をもつ。1本鎖突出の配列および長さは、使用者の希望に応じて変わる。
【0030】
本発明で提供される、1本鎖配列の、トポイソメラーゼをチャージしたds核酸ベクターの好ましい用途では、ベクターに挿入されるDNA断片は、PCR産物などの増幅反応産物である。特別のプライマーを用いたPCR増幅により、増幅産物は、挿入部位の一端または両端に1本鎖配列を有する、トポイソメラーゼIをチャージしたクローニングベクターに方向的に挿入することができる。このような特別のプライマーは、任意のプライマー対の少なくとも1本のプライマーが5'端に付加的配列を含むように設計することができる。付加された配列は、ベクター内の1本鎖突出の配列に相補的になるように設計される。ベクター内における5'の1本鎖突出と、PCR産物の5'端間の相補性が、トポイソメラーゼを介したベクターへのPCR産物の方向的挿入にかかわる。具体的には、ベクターの一端のみと、PCR産物の一端が相補的な1本鎖配列領域を有するので、この例のような産物の挿入は、方向的であり、またトポイソメラーゼはPCR産物とベクターの連結を触媒することができる。
【0031】
発明の詳細な説明
本発明は、鎖の侵入により、2個またはそれ以上の2本鎖(ds)核酸分子を方向的または非方向的に連結するための組成物および方法を提供する。例えば本発明は、第一の末端および第二の末端を有するds核酸分子(第一の末端は、第一の5'突出、および3'端に共有結合で結合された状態の第一のトポイソメラーゼを含み、また第二の末端は、3'端に共有結合で結合された状態の第二のトポイソメラーゼを含み、また第二の5'突出、平滑末端、3'ウリジン突出、または3'チミジン突出)を含む(第一の5'突出と第二の5'突出は異なる)を提供する。第一のトポイソメラーゼおよび第二のトポイソメラーゼは、同じ場合もあれば異なる場合もある。第一の5'突出は、任意のヌクレオチド配列(例えばヌクレオチド配列5-GGTG)を有する場合がある。
【0032】
本発明のいくつかの局面は、トポイソメラーゼを用いた連結によって提供される利点を保ちながら、PCRで得られた、ORFを含むDNA断片が、クローニングベクターに方向的に挿入されることを可能とするように、トポイソメラーゼによるクローニングを修飾する。このシステムは、方向的クローニングの効率が常に90%を越えることを可能とすることにより、スクリーニングを行って所望の方向の挿入配列を含むクローンを同定する際に要する作業量を大きく減らす。本発明は、高スループットの遺伝子発現操作を簡素化し、スクリーニング過程に関連した費用を節約し、他の利点を提供する。
【0033】
本発明の、トポイソメラーゼをチャージしたds核酸分子は一般に、1本鎖突出、および第一の末端の終端またはその近傍に共有結合で結合された状態の第一のトポイソメラーゼを有する。また本発明の、トポイソメラーゼをチャージしたds核酸分子は、第二の末端の終端またはその近傍に共有結合で結合された状態の第二のトポイソメラーゼを含む場合がある。1本鎖突出は、5'突出である場合があり、また個々のトポイソメラーゼは、両方の3'端またはその近傍に結合した状態にある場合がある。トポイソメラーゼが3'端の一方、または好ましくは両端に結合する場合、本発明の、トポイソメラーゼをチャージしたds核酸分子の第二の末端は、典型的には平滑末端、3'チミジン突出、または第一の5'突出とは異なる第二の5'突出である。
【0034】
本明細書で使用される、「第一の末端」および「第二の末端」を有する核酸分子と記載する場合、このような核酸分子は線状である。「1本鎖突出」または「突出」という表現は、ds核酸分子の相補鎖の末端を越えて伸長するds核酸分子の鎖を意味するように本発明では使用される。「5'突出」または「5'突出配列」という表現は、ds核酸分子の相補鎖の3'端を越えて5'方向に伸長するds核酸分子の鎖を意味するように本発明では使用される。「3'突出」、または「3'突出配列」という表現は、ds核酸分子の相補鎖の5'端を越えて3'方向に伸長するds核酸分子の鎖を意味するように本発明では使用される。利便性を考慮して、5'突出は、IB型トポイソメラーゼによる、ds核酸分子の部位特異的な切断の結果として作成される場合がある(実施例1および2を参照)。同様に、3'突出は、IA型トポイソメラーゼまたはII型トポイソメラーゼによる、ds核酸分子の切断によって生成される場合がある。
【0035】
3'突出および5'突出は、任意のヌクレオチド配列を有する場合があり、また任意の長さ(例えば2残基、3残基、4残基、5残基、6残基、7残基、8残基、9残基、10残基などのヌクレオチド)を有する場合があるが、一般には少なくとも2残基のヌクレオチドである。突出配列は、本発明の方法による、あるds核酸分子の所定の末端と、第二の核酸分子の所定の末端との連結を可能とするように選択することができる。2本鎖の核酸分子が方向的に連結される場合、3'または5'の突出は一般にパリンドロームではない。なぜなら、パリンドロームの突出を有するds核酸分子が相互に会合して、2個またはそれ以上のds核酸分子を所定の方向に含む、方向的に連結された組換え核酸分子の収率を下げる場合があるからである。突出は例えば、転写調節領域または翻訳調節領域(プロモーターなど)、コザック配列、開始コドンなど、またはこれらのヌクレオチド配列の相補配列を含む場合がある。
【0036】
3'突出または5'突出は、突出のヌクレオチド配列の少なくとも一部が相補配列とハイブリダイズすることが可能であれば、相補的なヌクレオチド残基とハイブリダイズすることが可能な、事実上任意のヌクレオチドもしくはヌクレオチド類似体、または修飾型ヌクレオチドを含む場合がある。したがって、突出中のヌクレオシドは、プリン(グアノシン(G)もしくはアデノシン(A))、またはピリミジン(チミジン(T)、ウリジン(U)、もしくはシチジン(C))などの天然のヌクレオチドを含む場合がある。また、突出は、ヌクレオシドの置換物、例えばイノシンなどのヌクレオシド、またはメチルグアノシン、もしくは5-ハロゲン化ピリミジンヌクレオシド(例えば5-ブロモデオキシウリジンもしくは5-メチルデオキシシチジン)などのヌクレオシドの修飾型を含む場合がある。望ましいならば、突出は比較的高いGC含量を有する場合がある。例えば突出のGC含量は50%を上回る、例えば66%のGC含量、または75%のGC含量、または80%のGC含量、または100%のGC含量の場合がある。一つの態様では、突出は配列5'-GGTG-3'を有する。.

【0037】
第一の核酸分子の5'または3'の突出は、例えば相補的なヌクレオチド残基が、連結される第二(もしくは他)のds核酸分子の実質的に平滑な末端またはその近傍において、相補的な配列内に存在しない、1個もしくは2個、または数個のヌクレオチド残基を、例えば突出の自由端に含む場合がある。それにもかかわらず、第一の核酸分子の末端における突出は、突出中の他のヌクレオチド残基のために、第二の核酸分子の相補的な配列と選択的にハイブリダイズすることが可能である。例えば5'突出が6個のヌクレオチドを含む場合、最も5'側の1個または2個のヌクレオチドは、第二の核酸分子内の相補的なヌクレオチド配列中の対応するヌクレオチドに対して相補的である必要はないが、残存する4個のヌクレオチド残基との相補性があるために、選択的なハイブリダイゼーションが生じる場合がある。突出中(または第二の核酸分子の「相補的な」配列中)に存在しうる非相補的なヌクレオチド残基の数または特定の位置は、ハイブリダイゼーションの特異性を実質的に低下させたり阻害したりすることなく、一般的なハイブリダイゼーション法で決定することができる。
【0038】
突出のヌクレオチド塩基は、固定核酸類似体(locked nucleic acid)(LNA)(Proligo;Boulder CO)を含む場合がある。LNAの単量体は、リボヌクレオシドに構造的に類似した二環式化合物である。「固定核酸」という表記は、フラノース環の構造が、2'-O位を4'-C位につなぐメチレンリンカーによってLNAで制限されることを強調するために作られた。本明細書で使用される、1個または複数のLNAの修飾を含むすべての核酸分子はLNA分子と呼ばれる。LNAのオリゴマーは、ワトソン-クリック塩基対の法則に従い、相補的なオリゴヌクレオチドとハイブリダイズする。LNAは、いくつかの状況におけるDNAおよび他の核酸誘導体と比較した場合に、ハイブリダイゼーションの大きな改善、安定性、高温安定性の上昇をもたらす場合がある(Koshkinら、Tetrahedron 54:3607〜30、1998;Koshkinら、J.Am.Chem.Soc. 120:13252〜53、1998;Wahlestedtら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:5633〜38、2000)。
【0039】
ds核酸分子の第一の末端または第二の末端に関しては、核酸分子の任意の特定の方向を意味すると意図されず、相互に末端の相対的な重要性があることを意味しないと解釈される。第一の末端および第二の末端を有する核酸分子が2本鎖の核酸分子である場合、各末端は5'端および3'端を含む。したがって本明細書では、例えば第一の末端または第二の末端である場合がある、トポイソメラーゼ認識部位を3'端に含み、ヒドロキシル基を同末端の5'端に含む核酸分子に関して言及される。
【0040】
核酸分子に結合した状態のトポイソメラーゼは一般に、ds核酸分子の「末端またはその近傍」に結合した状態となる。トポイソメラーゼをに関する「末端またはその近傍」という表現は、トポイソメラーゼが、結合される鎖の末端を第二の核酸分子(5'端に遊離のヒドロキシル基を含む)につなぐように、ds核酸分子の一方の鎖に共有結合で結合された状態を意味する。一般にトポイソメラーゼは、末端の一方の終端に共有結合で結合された状態にあることで、「末端またはその近傍」に位置する。例えばトポイソメラーゼが、ワクシニアウイルスのトポイソメラーゼなどのIB型トポイソメラーゼである場合、トポイソメラーゼは、ds核酸分子の末端の3'端に結合した状態にある。しかし、末端の終端に共有結合で結合された状態のトポイソメラーゼを有する末端が、相補鎖に1本鎖突出配列を含むことで、トポイソメラーゼが結合されている終端を越えて伸長する場合もある。このようなトポイソメラーゼは、ds核酸分子の末端の近傍に位置するトポイソメラーゼの一例である。
【0041】
ある分子を指して、本明細書で使用される「単離された」という表現は、分子が、天然に存在する状態ではない状態にあることを意味する。一般に、単離された核酸分子は、例えば細胞に含まれるゲノムの一部ではない任意の核酸分子である場合があるほか、同核酸分子を通常含む細胞から物理的に分離された任意の核酸分子である場合がある。本発明のさまざまな組成物は、単離されたds核酸分子の混合物を含むと解釈される。したがって、「単離された」という表現は、ある分子の天然の状態からの単離に関してのみ使用されると理解され、その分子が唯一の構成成分であることを意味しない。
【0042】
トポイソメラーゼは、DNA鎖の切断および再結合を介して、DNAの位相的な状態を修飾する酵素群である(参照として本明細書に組み入れられる、Shumanら、米国特許第5,766,891号)。トポイソメラーゼは、2本鎖核酸分子の1本鎖を切断するIA型およびIB型のトポイソメラーゼを含むI型のトポイソメラーゼ、および核酸分子の両方の鎖を切断するII型トポイソメラーゼ(ジャイレース)に分類される。本明細書で説明するように、I型およびII型のトポイソメラーゼ、ならびに触媒ドメイン、およびその変異型は、本発明の方法による、方向的に連結された組換え核酸分子を作製する上で有用である。II型トポイソメラーゼは、組換え核酸分子の作製、またはクローニング法に一般に使用されていないが、IB型トポイソメラーゼは、さまざまな手法に用いられている。
【0043】
IA型およびIB型のトポイソメラーゼは、ds核酸分子の一方の鎖を切断する。IA型トポイソメラーゼによるds核酸分子の切断では、切断部位に5'リン酸と3'ヒドロキシルが生じ、IA型トポイソメラーゼは、切断された鎖の5'端に共有結合で結合されている。これとは対照的に、IB型トポイソメラーゼによるds核酸分子の切断では、切断部位で3'リン酸と5'ヒドロキシルが生じ、IB型トポイソメラーゼは、切断された鎖の3'端に共有結合で結合されている。IA型トポイソメラーゼは、例えば大腸菌(E. coli)のトポイソメラーゼIおよびトポイソメラーゼIII、真核生物のトポイソメラーゼII、および原始(archeal)リバースジャイレースを含む(参照として本明細書に組み入れられる、Berger、Biochim.Biophys.Acta 1400:3〜18、1998を参照)。
【0044】
IB型トポイソメラーゼは、あらゆる真核細胞に存在してワクシニアウイルス、および他の細胞性ポックスウイルスにコードされる、核のI型トポイソメラーゼを含む(参照として本明細書に組み入れられる、Chengら、Cell 92:841〜850、1998を参照)。真核生物の代表的なIB型トポイソメラーゼは、酵母、ショウジョウバエ、および哺乳類の細胞(ヒト細胞を含む)で発現されるトポイソメラーゼである(それぞれ参照として本明細書に組み入れられる、CaronおよびWang、Adv.Pharmacol. 29B:271〜297、1994;Guptaら、Biochim.Biophys.Acta 1262:1〜14、1995を参照;またBerger、前記、1998も参照)。ウイルス由来の代表的なIB型トポイソメラーゼは、脊椎動物のポックスウイルス(ワクシニアウイルス、ショープ線維種ウイルス、ORFウイルス、鶏痘ウイルス、および伝染性軟属腫ウイルス)、および昆虫のポックスウイルス(アマサクタモーレイ(Amasacta moorei)昆虫ポックスウイルスで産生されるトポイソメラーゼである(それぞれ参照として本明細書に組み入れられる、Shuman、Biochim.Biophys.Acta 1400:321〜337、1998;Petersenら、Virology 230:197〜206、1997;ShumanおよびPrescott、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7478〜7482、1987;Shuman、J.Biol.Chem. 269:32678〜32684、1994;米国特許第5,766,891号;国際特許出願番号PCT/US95/16099;国際特許出願番号PCT/US98/12372、を参照;またChengら、前記、1998も参照)。
【0045】
II型トポイソメラーゼは、例えば細菌由来のジャイレース、細菌由来のDNAトポイソメラーゼIV、真核生物由来のDNAトポイソメラーゼII、およびT偶数ファージにコードされたDNAトポイソメラーゼを含む(参照として本明細書に組み入れられる、RocaおよびWang、Cell 71:833〜840、1992;Wang、J.Biol.Chem. 266:6659〜6662、1991;Berger、前記、1998)。IB型トポイソメラーゼと同様に、II型トポイソメラーゼは、切断活性および連結活性の両方を有する。またIB型トポイソメラーゼと同様に、基質となるds核酸分子は、II型トポイソメラーゼが、切断部位における一方の鎖に対する共有結合による連結を形成可能なように調製することができる。例えば仔ウシ胸腺のII型トポイソメラーゼは、5'端から3つのヌクレオチドの位置にある、5'側が凹んだトポイソメラーゼ認識部位を含む基質ds核酸分子を切断し、切断部位の5'側に位置する3個の核酸分子を解離させ、トポイソメラーゼと、ds核酸分子の5'端との共有結合を形成する(Andersenら、前記、1991)。また、このようなII型トポイソメラーゼをチャージしたds核酸分子を、3'ヒドロキシル基を含む第二の核酸分子に接触させると、II型トポイソメラーゼは、これらの配列を連結させた後に組換え核酸分子から離れることができる。したがって、II型トポイソメラーゼも、本発明の方法を実施する際に有用である。
【0046】
トポイソメラーゼの構造解析から、IA型、IB型、およびII型のトポイソメラーゼを含む個々のトポイソメラーゼファミリーの分子が、同ファミリーの他の分子と共通の構造上の特性をもつことが示されている(Berger、前記、1998)。また、さまざまなIB型トポイソメラーゼの配列解析から、構造が特に触媒ドメインで高度に保存されていることが報告されている(Shuman、前記、1998;Chengら、前記、1998;Petersenら、前記、1997)。例えば314アミノ酸からなるワクシニアウイルスのトポイソメラーゼのアミノ酸81〜314を含むドメインは、他のIB型トポイソメラーゼと実質的な相同性を有し、単離されたドメインは、代謝回転速度が遅く、また認識部位に対する結合親和力が低いものの、完全長のトポイソメラーゼと実質的に同じ活性を有する(Shuman、前記、1998;Chengら、前記、1998を参照)。また、アミノ酸末端ドメイン(アミノ酸残基70〜72)に変異がある、ワクシニアウイルスの変異型トポイソメラーゼは、完全長のトポイソメラーゼと同じ特性を示す(Chengら、前記、1998)。事実、ワクシニアウイルスのIB型トポイソメラーゼの変異解析から、トポイソメラーゼの活性に影響を及ぼすことなく、また活性に必要な同じ複数のアミノ酸をもつ、変異が生じうる多数のアミノ酸残基の存在がわかっている(Shuman、前記、1998)。ワクシニアウイルスのトポイソメラーゼの触媒ドメインと、他のIB型トポイソメラーゼとの間に高い相同性があること、またワクシニアウイルスのトポイソメラーゼを対象とした詳細な変異解析から、IB型トポイソメラーゼ、およびさまざまなアミノ酸変異をもつIB型トポイソメラーゼの単離された触媒ドメインが本発明の方法に使用可能であると解釈されており、このため本発明の目的に合うトポイソメラーゼとみなされている。
【0047】
さまざまなトポイソメラーゼは、多様な配列特異性を示す。例えばII型トポイソメラーゼは、さまざまな配列に結合可能であるが、切断は高度に特異的な認識部位で起きる(参照として本明細書に組み入れられる、Andersenら、J.Biol.Chem. 266:9203〜9210、1991を参照)。これとは対照的に、IB型トポイソメラーゼには、特定のヌクレオチド配列(「トポイソメラーゼ認識部位」)に結合して切断する部位特異的なトポイソメラーゼが含まれる。トポイソメラーゼ(例えばIB型トポイソメラーゼ)によりds核酸分子が切断されると、ホスホジエステル結合のエネルギーは、トポイソメラーゼ中の特定のチロシン残基と、トポイソメラーゼ認識部位の3'ヌクレオチドとの間にホスホチロシル連結が形成されることで保存される。トポイソメラーゼ切断部位が核酸分子の3'端の近傍にある場合、下流の配列(切断部位に対して3'側)が解離して、新しく生成された3'端に共有結合で結合された状態のトポイソメラーゼを有する核酸分子が残される場合がある(図9参照)。
【0048】
共有結合で結合された状態のトポイソメラーゼは、逆の反応、例えばIB型トポイソメラーゼがリン酸チロシル化結合および自由端の5'ヒドロキシル基を含む核酸分子を介して連結される、認識配列の3'ヌクレオチドの共有結合による連結を触媒する場合もある。したがって、IB型トポイソメラーゼを使用して組換え核酸分子を作製するための、いくつかの方法が開発されている。したがって、結合状態のIB型トポイソメラーゼを含むクローニングベクターが開発されて市販されている(Invitrogen Corp.、Carlsbad CA)。このようなクローニングベクターは、直線化されると、共有結合で結合された状態のIB型トポイソメラーゼを各3'端に含む(「トポイソメラーゼでチャージされた」状態)。このようなベクターにクローニングされる、cDNAライブラリーに含まれるような核酸分子、または制限酵素切断断片、またはランダムに切断されたゲノムDNA配列を、例えばホスファターゼで処理することで、5'ヒドロキシル末端が得られ、次に、トポイソメラーゼが、ヒドロキシル基を含む5'端、および共有結合で結合された状態のトポイソメラーゼを含む3'端で核酸分子を連結可能とする条件下で、直線化されたベクターに加える。5'ヒドロキシル末端を含むように生成される、PCR増幅産物などの核酸分子は、トポイソメラーゼをチャージしたベクターに、速やかな連結反応(室温で約5分)でクローニングすることができる。このようなトポイソメラーゼによる連結反応に特有の、速やかな連結および広い温度範囲により、トポイソメラーゼをチャージしたベクターは、一般に自動システムを用いて実施される高スループットの応用に望ましいものとなる。
【0049】
ワクシニアウイルスは、2本鎖DNAに部位特異的な1本鎖のニックを形成すること、ならびに5'ヒドロキシルによって誘導される再連結を可能とする、314アミノ酸からなるI型トポイソメラーゼ酵素をコードしている、部位特異的なI型トポイソメラーゼは、ポックスウイルスのトポイソメラーゼなどのウイルス由来のトポイソメラーゼを含むがこれらに限定されない。ポックスウイルスのトポイソメラーゼの例には、ショープ線維症ウイルス、およびORFウイルスなどがある。他の部位特異的なトポイソメラーゼが当業者に知られており、本発明の実施に使用することができる。
【0050】
ワクシニアウイルスのトポイソメラーゼは、2本鎖DNAに結合し、高レベルの配列特異性を示しながら、一方の鎖のホスホジエステル主鎖を切断する。切断は、切断可能な鎖に含まれるペンタピリミジンからなるコンセンサス配列5'-(C/T)CCTT↓、または関連配列で生じる。ある態様では、切断可能な結合は、2本鎖DNAの3'端から2〜12 bpに位置する。別の態様では、ワクシニアウイルスのトポイソメラーゼによる切断可能な複合体の形成には、切断部位の上流にある6個の2本鎖ヌクレオチド、および下流にある2個のヌクレオチドが必要である。ワクシニアウイルスのトポイソメラーゼによって切断される配列の例には、
Figure 0005043277
などがあるがこれらに限定されない。
【0051】
他の部位特異的なI型トポイソメラーゼのいくつかの例は当技術分野で周知である。このような酵素群は、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、***酵母(Saccharomyces pombe)、およびテトラヒメナを含むがこれらに限定されない多くの生物にコードされているが、これらの種のトポイソメラーゼI酵素は、コンセンサス配列に対する特異性が、ワクシニアウイルスに由来するトポイソメラーゼより低い(Lynnら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:3559〜3563、1989;Engら、J.Biol.Chem. 264:13373〜13376、1989;Buskら、Nature 327:638〜640、1987)。
【0052】
本発明の組成物および方法は、ワクシニアウイルスのトポイソメラーゼなどのIB型トポイソメラーゼの用途に関して一般に本明細書に例示されている。しかし本発明の方法が、単に成分を調節することにより、他のトポイソメラーゼを用いて実施可能であることも解釈される。例えば極めて詳しく後述するように、ds核酸分子の一方または両方の3'端にIB型トポイソメラーゼ認識部位を組み入れる方法が開示されている。したがって本発明の開示に関しては、IA型またはII型のトポイソメラーゼのトポイソメラーゼ認識部位が、ds核酸分子に同様に組み入れ可能であることを当業者であれば理解すると思われる。
【0053】
第一の末端に5'突出を含む、トポイソメラーゼをチャージしたds核酸分子は一般に、第一の末端の3'端に共有結合で結合された状態のトポイソメラーゼを含む。第一の末端に5'突出および第一のトポイソメラーゼを含むds核酸は、第二の末端に共有結合で結合された状態の第二のトポイソメラーゼを含む場合もある。第一の末端に共有結合で結合された状態のトポイソメラーゼは、第二の末端に共有結合で結合された状態のトポイソメラーゼと同じ場合もあれば異なる場合もある。したがって、ワクシニアウイルスのトポイソメラーゼは、第一の末端に共有結合で結合された状態の場合があり、別のポックスウイルス、または真核生物の核にあるIB型トポイソメラーゼは、第二の末端に結合した状態の場合がある。一般に、各末端のトポイソメラーゼが異なる場合、これらは同じ一般ファミリー、例えばIA型もしくはIB型、またはII型のトポイソメラーゼである。
【0054】
一つの態様では、本発明のトポイソメラーゼをチャージした2本鎖の核酸分子は、クローニングベクターまたは発現ベクターの場合があるベクターである。このようなベクターは、細菌由来の複製起点、真核生物由来の複製起点、抗生物質耐性遺伝子などの配列を含み、さらにトポイソメラーゼ認識部位、もしくはトポイソメラーゼをチャージした末端、またはこれらの組み合わせを含む場合がある。本発明のこのようなベクターは、利便性を考慮して、本明細書に開示されているように、キットにまとめることができる。本発明のベクターは、プラスミドベクター、コスミドベクター、人工染色体(例えば細菌人工染色体、酵母人工染色体、哺乳類人工染色体など)、またはバクテリオファージ、バキュロウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、セムリキ森林ウイルス、およびアデノ関連ウイルスベクターなどのウイルスベクターの場合がある。いずれもよく知られており、いくつかの業者(Promega、Madison WI;Stratagene、La Jolla CA;GIBCO/BRL、Gaithersburg MD)から購入することができる。ウイルス由来の発現ベクターは、方向的に連結された組換え核酸分子を作製して、細胞(特に被験者の細胞)に導入する目的で本発明の方法を実施する際に特に有用な場合がある。ウイルスベクターには、比較的高い効率で宿主細胞に感染可能であり、また特定の細胞種に感染可能であったり、修飾することで宿主の特定の細胞感染可能であったりするという利点がある。
【0055】
ウイルスベクターは、特定の宿主系において使用するために開発されており、例えば昆虫細胞に感染するバキュロウイルスベクター;哺乳類細胞に感染するレトロウイルスベクター、他のレンチウイルスベクター(ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に基づくベクター)、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルス(AAV)ベクター、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクターなどを含む(参照として本明細書に組み入れられる、MillerおよびRosman、BioTechniques 7:980〜990、1992;Andersonら、Nature 392:25〜30、Suppl.、1998;VermaおよびSomia、Nature 389:239〜242、1997;Wilson、New Engl.J.Med. 334:1185〜1187、1996を参照)。例えばHIVを元にしたウイルスベクターはT細胞に感染させる際に使用することが可能であり、アデノウイルスを元にしたウイルスベクターは例えば、呼吸器の上皮細胞に感染させる際に使用することが可能であり、またヘルペスウイルスを元にしたウイルスベクターは、神経細胞に感染させる際に使用することが可能である。AAVベクターなどの他のベクターは、広い宿主細胞域をもつ場合があるので、さまざまな種類の細胞に感染させる際に使用することができるが、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターを特定の受容体またはリガンドで修飾することで、受容体を介した反応による標的特異性を変えることもできる。
【0056】
トポイソメラーゼをチャージしたベクター、またはトポイソメラーゼ認識部位を含む、本発明の直線化されたベクターは、本明細書に開示された方法、または当技術分野で周知の方法で作製することができる。例えば環状ベクターは、直線化して、1個または複数のオリゴヌクレオチドと連結したりハイブリダイズしたりして修飾することで、トポイソメラーゼ認識部位、またはその切断産物、および標的となる5'配列すなわち5'突出を一端または両端に作製することができる(実施例1および2を参照)。このようなベクターは例えば、原核生物の宿主細胞、真核生物の宿主細胞、またはこれら両方における複製に必要な発現制御領域を含む場合もあり、また抗生物質耐性などもたらすポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む場合があり、または、このような配列を、本発明の方法でベクターに導入することができる。また、このようなベクターは、1か所または2か所、またはそれ以上の部位特異的な組込み認識部位(att部位やlox部位など)を含む場合がある。例えばattB配列またはattP配列を、本発明の単離された核酸分子へ組み込むことで、ゲートウェイ(GATEWAY)(商標)クローニングシステム(Cloning System)(Invitrogen Corp.、La Jolla CA)を用いる核酸分子の簡便な操作が可能となる。
【0057】
本発明は、トポイソメラーゼをチャージした、突出のある1本鎖のDNA断片を有する修飾型クローニングベクターを提供する。このような修飾型ベクターでは、直線状のds核酸分子(例えば後に発現させる、PCRで増幅された分子、または適切なORF)の方向性の挿入が可能であり、またトポイソメラーゼを用いたクローニングの効率を利用する。本明細書で使用されるドナーという用語は、5'-CCCTT切断部位を3'端の近傍に含む2本鎖DNAなどの分子を意味する。また「アクセプター」という用語は、5'-OH末端を含む2本鎖DNAを意味する。トポイソメラーゼによって共有結合的に活性化されたドナーは、1本鎖配列の相補性があるアクセプターに移る。
【0058】
本発明により、特定の態において、トポイソメラーゼで修飾したベクターを、少なくとも1個の、1本鎖の5'突出配列を含むようにさらに適合させて、DNAセグメントの方向的挿入を促進する。このようなベクターにクローニングされる核酸分子は、結果として得られる組換えベクターから発現可能なORFを含むPCR産物の場合がある。ORFの増幅に使用されるプライマーは、プライマー対の少なくとも1本のプライマーが付加的な配列をその5'端に含むように設計される。このような配列は、本発明の、トポイソメラーゼで修飾されたベクター内に存在する、1本鎖の5'突出の配列に相補的になるように設計される。
【0059】
本発明は、鎖の侵入および連結を用いて、第一の核酸分子と、少なくとも第二の核酸分子を方向的または非方向的に連結することで、方向的または非方向的に連結された組換え核酸分子を作製する方法を一般に提供する。本明細書で使用される「鎖の侵入」という表現は、第一の2本鎖核酸分子の一方の鎖の、第二の核酸分子の1本鎖部分による置換を意味する(1本鎖は、置換鎖に実質的に同一なヌクレオチド配列を有し、また置換鎖に相補的な鎖とハイブリダイズすることが可能である)。
【0060】
方向的または非方向的に連結された組換え核酸分子を作製する方法は、例えば第一の末端において第一の鎖(例えば3'鎖または5'鎖)に第一の突出を有する第一のds核酸分子;ならびに第一の実質的に平滑な末端および第二の末端を有する第二のds核酸分子を接触させることで実施することができる(第一の核酸分子の第一の末端の第一の突出に相補的なヌクレオチドは、第一の実質的に平滑な末端およびその近傍に存在する)。この方法は、第一の突出が、第二のds核酸分子の第一の実質的に平滑な末端の相補的なヌクレオチド配列に選択的にハイブリダイズすることが可能であって、第一のds核酸分子の第一の末端、および第二のds核酸分子の第一の末端が連結可能な条件下で実施される。第一の突出は、3'突出、または5'突出の場合がある。本発明はさらに、上述の方法の使用に適した分子を調製する際に使用可能な前駆体核酸分子を提供する。本発明は、上述の方法で調製される核酸分子も提供する。
【0061】
図1は、共有結合で連結された組換え核酸分子の作製に使用することができる本発明の方法の例を示している。図1の四角および円は、鎖の置換が起こりうる、配列相補性のある領域を示す。置換に必ずしも関与しない(関与は可能)ds核酸分子の他の末端は、実質的に平滑末端を含む場合がある、または3'もしくは5'の突出を含む場合がある任意の構造をとりうる。第一のds核酸分子、第二のds核酸分子、第三のds核酸分子(以下同様)上における平滑末端、および/または突出の他の組み合わせは、本発明の方法で連結可能であり、また部分的には、図1に挙げられた例を元に当業者には明らかになると思われる。
【0062】
図1Aに示されているように、方向的または非方向的に連結された組換え核酸分子を作製する方法は、例えば第一の末端において第一の鎖上に第一の突出を有する第一のds核酸分子;第一の実質的に平滑な末端、および第二の末端を有する第二のds核酸分子(第一の実質的に平滑な末端は、第一の核酸分子の第一の末端の第一の突出に相補的なヌクレオチド配列を有する);ならびに核酸分子を連結するための試薬(例えばトポイソメラーゼ、リガーゼ、またはリコンビナーゼを含む試薬)を接触させることで実施することができる。この方法は、第一の突出が、第二のds核酸分子の第一の実質的に平滑な末端の相補的なヌクレオチド配列と選択的にハイブリダイズすることが可能な条件下で実施することができる。また、この方法は、一つの核酸分子の5'鎖を、第二の核酸分子の3'鎖に連結可能な試薬の存在下で、また第一のds核酸分子の第一の末端の3'端と、第二のds核酸分子の第一の末端の5'端が連結される条件下で実施することができる。上述の方法の変形形態、ならびに上述の他の方法において、第一の突出は、3'突出、または5'突出の場合がある。
【0063】
図1Bに示されているように、連結された組換え核酸分子、例えば方向的に連結された組換え核酸分子を作製する方法は、第一の末端および第二の実質的に平滑な末端において第一の鎖に第一の突出を有する第一のds核酸分子;ならびに、第一の実質的に平滑な末端、および第二の突出を有する第二の末端を有する第二のds核酸分子(第二のds核酸分子の第一の実質的に平滑な末端は、第一の核酸分子の第一の末端の第一の突出に相補的なヌクレオチド配列を有し、また第一の核酸分子の第二の実質的に平滑な末端は、第二のds核酸分子の第二の末端の第二の突出に相補的なヌクレオチド配列を有する)に接触させることで実施することができる。この方法は、第一の突出が、第二のds核酸分子の第一の実質的に平滑な末端に相補的なヌクレオチド配列と選択的にハイブリダイズし、また第二の突出が、第一のds核酸分子の第二の実質的に平滑な末端に相補的なヌクレオチド配列と選択的にハイブリダイズする条件下で実施される。また、この方法は、一つの核酸分子の3'鎖と、別の核酸分子の5'鎖との連結を触媒する試薬の存在下で、また、第一のds核酸分子の第一の末端の3'端が、第二のds核酸分子の第一の末端の5'端に連結され、また第一のds核酸分子の第二の実質的に平滑な末端の3'端が、第二のds核酸分子の第二の末端の5'端に連結される条件下で実施することができる。上述の方法のさまざまな変形形態において、第一の突出および第二の突出の一方または両方は、3'突出または5'突出の場合がある。したがってds核酸分子は、各末端における核酸の鎖の共有結合による連結が環状の組換え核酸分子の形成を導く、二つの別個の鎖の侵入を生じることができる。
【0064】
図1Cに示されているように、連結された組換え核酸分子、例えば方向的に連結された組換え核酸分子を作製する方法は、例えば第二の突出を有する第一の末端および第二の末端において第一の突出を有する第一のds核酸分子;ならびに第一の実質的に平滑な末端、および第二の実質的に平滑な末端を有する第二のds核酸分子(第二のds核酸分子の第一の実質的に平滑な末端は、第一の核酸分子の第一の末端の第一の突出に相補的なヌクレオチド配列を有し、また第二の核酸分子の第二の実質的に平滑な末端は、第一のds核酸分子の第二の末端の第二の突出に相補的なヌクレオチド配列を有する)に接触させることで実施することができる。この方法は、第一の突出が、第二のds核酸分子の第一の実質的に平滑な末端の相補的なヌクレオチド配列と選択的にハイブリダイズすることが可能で、また第二の突出が、第二のds核酸分子の第二の実質的に平滑な末端の相補的なヌクレオチド配列と選択的にハイブリダイズすることが可能な条件下で実施することができる。また、この方法は、第一のds核酸分子の第一の末端が、第二のds核酸分子の第一の末端に連結され、また第一のds核酸分子の第二の末端が、第二のds核酸分子の第二の実質的に平滑な末端に連結される条件下で実施することができる。上述の本発明のさまざまな変形形態において、第一の突出および第二の突出の一方または両方は、3'突出または5'突出の場合がある。したがってds核酸分子は、各末端における核酸の鎖の共有結合による連結が環状の組換え核酸分子の形成を導く、二つの別個の鎖の侵入を生じることができる。
【0065】
図1Dに示されているように、連結された組換え核酸分子、例えば方向的に連結された組換え核酸分子を作製する方法は、例えば第一の末端の第一の鎖に第一の突出を有する第一のds核酸分子;第一の実質的に平滑な末端および第二の実質的に平滑な末端を有する第二のds核酸分子;ならびに第一の末端において第一の鎖に第二の突出を有する第三のds核酸分子(第二のds核酸分子の第一の実質的に平滑な末端は、第一の突出に相補的なヌクレオチド配列を有し、第二のds核酸分子の第二の実質的に平滑な末端は、第二の突出に相補的なヌクレオチド配列を有する)を接触させることで実施することができる。この方法は、第一の突出が、第二のds核酸分子の第一の実質的に平滑な末端の相補的なヌクレオチド配列と選択的にハイブリダイズすることが可能で、また第二の突出が、第二のds核酸分子の第二の実質的に平滑な末端の相補的なヌクレオチド配列と選択的にハイブリダイズすることが可能な条件下で実施することができる。また、この方法は、第一のds核酸分子の第一の末端が、第二のds核酸分子の第一の末端に連結され、また第三のds核酸分子の第一の末端が、第二のds核酸分子の第二の実質的に平滑な末端に連結される条件下で実施することができる。上述の方法のさまざまな変形形態において、第一の突出および第二の突出の一方または両方は、3'突出または5'突出の場合がある。
【0066】
図1Eに示されているように、連結された組換え核酸分子、例えば方向的に連結された組換え核酸分子を作製する方法は、例えば第一の実質的に平滑な末端を有する第一のds核酸分子;第一の末端において第一の鎖に第一の突出を有し、また第二の末端において第二の鎖に第二の突出を有する第二のds核酸分子;ならびに第二の実質的に平滑な末端を有する第三のds核酸分子(第一のds核酸分子の第一の実質的に平滑な末端は、第二の核酸分子の第一の末端の第一の突出に相補的なヌクレオチド配列を有し、また第二の実質的に平滑な末端は、第二のds核酸分子の第二の末端の第二の突出に相補的なヌクレオチド配列を有する)を接触させることで実施することができる。この方法は、第一の突出が、第一のds核酸分子の第一の実質的に平滑な末端の相補的なヌクレオチド配列と選択的にハイブリダイズすることが可能で、また第二の突出が、第二の実質的に平滑な末端の相補的なヌクレオチド配列に選択的にハイブリダイズすることが可能な条件下で実施することができる。また、この方法は、第一のds核酸分子の第一の実質的に平滑な末端が、第二のds核酸分子の第一の末端に連結され、また第三のds核酸分子上に位置する第二の実質的に平滑な末端が、第二のds核酸分子の第二の末端に連結される条件下で実施することができる。上述の方法のさまざまな変形形態において、第一の突出および第二の突出の一方または両方は、3'突出または5'突出の場合がある。
【0067】
方向的または非方向的に連結された組換え核酸分子を作製する方法は、例えば第一の実質的に平滑な末端およびその近傍に共有結合で結合された状態の第一のトポイソメラーゼを有する第一のds核酸分子;ならびに、第一の末端において第一の鎖に第一の3'突出を有する第二のds核酸分子(第一のds核酸分子の第一の実質的に平滑な末端は、第一の3'突出に相補的なヌクレオチド配列を有する)を接触させることで実施することができる(図2参照)。この方法は、第一の3'突出が、第一のds核酸分子の第一の実質的に平滑な末端の相補的なヌクレオチド配列と選択的にハイブリダイズすることが可能な条件下で実施することができる。また、この方法は、トポイソメラーゼが、第一のds核酸分子の第一の末端の3'端を、第二のds核酸分子の第一の末端の5'端に共有結合で連結可能なように実施することができる(参照として全体が本明細書に組み入れられる、ChengおよびShuman、Mol.Cell.Biol. 20:8059〜8068、2000)。
【0068】
第一のds核酸分子の第一の実質的に平滑な末端またはその近傍に、共有結合で連結された状態のトポイソメラーゼのもつ、第二のds核酸分子と3'突出とを共有結合で連結する能力(図2)は、共有結合で結合された状態のトポイソメラーゼの、切断可能なホスホジエステルの5'側におけるDNAとの接触に関する、これまで価値を認められていなかった構造的柔軟性を示す。スーパーコイルDNAの弛緩が触媒されることで、共有結合で結合された状態のIB型トポイソメラーゼは、下流の2本鎖と離れ、切断可能なリン酸の反対側のホスホジエステル結合の周囲における2本鎖の回転を可能とした後に、バックボーンを再び閉じることができる。
【0069】
本発明の方法は、核酸分子の1本の鎖を実質的に置換することにより、相同性に依存した連結後に、残存するニックを修復するための追加的な反応を実施する必要性をなくすように実施することができる(図2参照)。例えば、この方法は、1個の核酸分子の突出配列が、全長を伸長するように、また鎖の侵入に伴って他のds核酸分子の鎖が置換されるように実施することができる。したがって、この態様では、トポイソメラーゼによって連結されなかった鎖にニックは必要ではない。
【0070】
本発明の方法で連結されるds核酸分子の末端は、1個の核酸分子の5'端と、別の核酸分子の3'端との連結に有用な任意の試薬を用いることで、共有結合で結合されうる。したがって、末端を共有結合的に連結させるための試薬は例えばIA型、IB型、またはII型のトポイソメラーゼを含むトポイソメラーゼ;T4 DNAリガーゼなどのリガーゼ;FLIPリコンビナーゼ、Intインテグラーゼ、もしくはcreリコンビナーゼを含むリコンビナーゼ;または別のINTファミリーの酵素である(例えばNucl.Acids.Res. 26:391〜406、1998を参照)。また、一つのニックが一方の鎖の連結後に残る場合、ニックは、インビボ連結法によって、例えばニックの入ったds核酸分子を大腸菌などの細胞に導入することで閉じることができる場合がある。ある好ましい態様では、鎖の置換がかかわる2か所の末端の連結段階には、トポイソメラーゼによる連結が関与する。また、第一のds核酸分子と第二のds核酸分子との連結段階に関して開示された方法では、第三の核酸分子を、鎖の置換に関与しない第一の核酸分子、または第二の核酸分子の末端に連結させることもできる。
【0071】
本発明の方法は、第一のds核酸分子を、少なくとも第二のds核酸分子に、非方向的または好ましくは方向的に連結する際に実施することができる。しかし、この方法により、ds核酸分子の一方の両端の終端もしくはその近傍におけるヌクレオチド配列と、もう一方のds核酸分子の少なくとも一端の終端もしくはその近傍におけるヌクレオチドとの間に相補性が存在する態様において、第一の核酸分子と第二の核酸分子を非方向的に連結することができる。あるds核酸分子の両端の終端またはその近傍におけるヌクレオチド配列と、別のds核酸分子の少なくとも一方の鎖との間における、このような相補性は、例えば同一のヌクレオチド配列を、ds核酸分子の両端の同じ末端(5'または3')に含めることにより達成することができる。これは例えば、同じ制限酵素で切断可能な標的配列、および同じヌクレオチド配列を含む標的配列を設計することで達成することができる。
【0072】
本発明は、望ましいならば2個またはそれ以上(例えば2個、3個、4個、5個、6個、7個など)の核酸分子を使用可能に連結させる段階を含む、第一の核酸分子と、少なくとも第二の核酸分子を方向的または非方向的に連結する方法にも関する。方向的または非方向的に連結された組換え核酸分子を作製する方法は、例えば第一の末端において共有結合で結合された状態の第一のトポイソメラーゼ、および第二の末端において共有結合で結合された状態の第二のトポイソメラーゼを有し、第一の末端に5'突出を、また第二の末端に平滑末端、3'ウリジン突出、3'チミジン突出、または第二の5'突出も含む、トポイソメラーゼをチャージした第一のds核酸分子;ならびに第一の平滑末端および第二の末端を有する第二のds核酸分子(第一の平滑末端は、第一の核酸分子の第一の末端の第一の5'突出に相補的な5'ヌクレオチド配列を有する)を接触させることで実施することができる。第一のトポイソメラーゼおよび第二のトポイソメラーゼは、例えばワクシニアウイルスの2個のIB型トポイソメラーゼを含む2個のIB型トポイソメラーゼのように同じ場合もあれば、異なる生物に由来する2個のIB型トポイソメラーゼ、またはIB型トポイソメラーゼ、およびIA型トポイソメラーゼもしくはII型トポイソメラーゼを含むように異なる場合もある。
【0073】
本発明の方法を実施する際には、第二の核酸分子の5'ヌクレオチド配列が、第一の5'突出と選択的にハイブリダイズすることが可能な条件下で、第一のds核酸分子と第二のds核酸分子を接触させ、それにより第一のトポイソメラーゼが、第一のds核酸分子の第一の末端の3'端を、第二のds核酸分子の第一の末端の5'端に共有結合で連結し、また第二のトポイソメラーゼが、第一のds核酸分子の第二の末端の3'端を、第二のds核酸分子の第二の末端の5'端に共有結合で連結することで、方向的もしくは非方向的に連結された組換え核酸分子を作製可能になる。したがって本発明は、このような方法で作製された、方向的または非方向的に連結された組換え核酸分子を提供する。
【0074】
本明細書で開示されるように、本発明の方法は、2個またはそれ以上のdsヌクレオチドを所定の方向に方向的に連結する手段を提供することができる。本明細書で使用される「方向的に連結する」という表現は、2個またはそれ以上の核酸分子の特定の所定の順序および/または方向における、共有結合による連結を意味する。したがって本発明の方法は、プロモーター発現制御領域を、コード配列の上流に共有結合により連結し、またポリアデニル化シグナルをコード領域の下流に共有結合により連結することで、機能性の発現可能な組換え核酸分子を得る手段;または2個のコード配列を、これらが同じ読み枠で転写および翻訳されるように共有結合により連結することで融合タンパク質を得る手段を提供する。本明細書で使用される「非方向的に連結する」という表現は、2個またはそれ以上の核酸分子のランダムな順序、すなわち核酸分子の第一の末端または第二の末端のいずれかが別の核酸分子の末端に連結可能とする、共有結合による連結を意味する。
【0075】
ds核酸分子の末端に関して使用される「実質的に平滑である」という表現は、対象末端が平滑となりうること、または突出を有する第二の核酸分子によって鎖の侵入を低下させたり抑制したりしない短い突出をもちうること意味する。例えば実質的に平滑な末端は、実質的に平滑な末端における突出が鎖の侵入を阻害しないという条件で、1個、2個、または少数のヌクレオチドの突出を有する末端を含む場合がある。例えば第二のds核酸分子は、5'アデノシン、または5'イノシンの突出を有する場合がある。
【0076】
本明細書における、「第一の核酸分子」、「第二の核酸分子」、「第三の核酸分子」などの記述は、複数の核酸分子のどれが言及されているかを示す手段を提供する際にのみ使用されると解釈される。したがって、特定の核酸分子に関して、何ら具体的に定義された特徴がない場合は、1個の核酸分子、または核酸分子の集団、もしくは複数の核酸分子に関して使用される「第一」、「第二」、「第三」などという表現は、対象核酸分子に関する任意の特定の順序、重要性、または他の情報を示すことは意図されない。したがって、例示的な方法が例えば、PCRを用いて、増幅産物がトポイソメラーゼ認識部位を一端または両端に含むように第一のds核酸分子を増幅するという場合は、同様に第二(または他)のds核酸分子も同じように増幅されうると解釈される。
【0077】
ds核酸分子に関して使用される「少なくとも第二の」という表現は、第一のds核酸分子に加えて、1個または複数(例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個など)の核酸分子を意味する。したがって、この表現は、1津の第二の核酸分子のみを意味する場合があるほか、1つの第二の核酸分子および1つの第三の核酸分子(またはそれ以上)を意味する場合がある。したがって「第二(または他)のds核酸分子」、または「第二(および他)のds核酸分子群」という表現は、「少なくとも第二の核酸分子」という表現が、第二の、第三の、またはそれ以上の核酸分子を意味しうるという事実を意識して本明細書で使用される。特に示された部分を除き、「少なくとも第二の核酸分子」という表現の意味に含まれる核酸分子は、第一の核酸分子と同じか、または実質的に同じ場合があると解釈される。例えば第一および第二のds核酸分子は、これらの分子の一つだけの分子(例えば第一のds核酸分子)がトポイソメラーゼ認識部位を有することを除き、または相補的な5'突出配列を有すること(例えば第一および第二のds核酸分子が本発明の方法で方向的に連結されうるように、トポイソメラーゼによる切断によって生成されること)を除いて同じ場合がある。したがって本発明の方法により、例えば発現制御領域などの第三のds核酸分子によって任意選択で分散可能で、また所定の方向(例えば相互に5'→3'の方向)に方向的に連結された配列を含む場合がある、第一および第二のds核酸分子の連鎖状分子(concatenate)を作製することができる。
【0078】
個々のds核酸分子、例えば第一のds核酸分子と呼ばれる配列は一般に、相互に同一な、または実質的に同一な、このような核酸分子の集団を含むと解釈される。したがって「異なる」という表現が、例えば第一の(または第一の集団の)ds核酸分子と、第二(および他)のds核酸分子とを比較する際に使用されることは明らかである。本明細書で使用される、本発明の組成物のds核酸分子に関して使用される「異なる」という表現は、ds核酸分子が、最適にアライメントしたときにそれぞれの配列同一性が95%未満であること、一般には配列同一性が90%未満であること、通常は配列同一性が70%未満であることを意味する。したがって、例えば相互に多型異型であることのみが異なるds核酸分子、または異なる5'もしくは3'の突出配列を単に含むds核酸分子は、本発明の切断部位の目的上、「異なる」とはみなされない。これとは対照的に、異なるds核酸分子は、ポリペプチドをコードする第一の配列、および発現制御領域を含む第二の配列、または第一のポリペプチドをコードする第一の配列、および非相同のポリペプチドをコードする第二の配列によって例示される。
【0079】
「組換え体」という用語は、少なくとも2個の核酸分子の連結によって生成される核酸分子を意味するように本明細書で使用される。したがって、本発明の方法に含まれる組換え核酸分子、または本発明の方法で作製される組換え核酸分子は、天然に(例えば減数***の過程で)生成される可能性のある核酸分子とは区別される。本発明の方法で作製される組換え核酸分子は、例えば2本鎖の核酸分子中のトポイソメラーゼ結合部位に対して極めて近傍、一般にはすぐ隣、また通常は3'側における相補的な核酸配列によって同定される場合がある。
【0080】
本明細書で開示されるように、本発明の方法は、第一のds核酸分子を第二のds核酸分子に方向的または非方向的に連結する際に使用することができる。多くの態様では、本発明の方法は、第一のds核酸分子と第二(または他)のds核酸分子を方向的に連結する際に使用される場合がある。しかし、第一のds核酸分子と第二(または他)のds核酸分子を非方向的に連結する方法の使用には利点もある。非方向的に連結する段階は例えば、1)第二のヌクレオチド配列が、第二の突出の全体または一部を形成可能な、第一のds核酸分子の第二の末端の5'端またはその近傍に存在して、第二のds核酸分子の5'の相補的なヌクレオチド配列とハイブリダイズ可能な場合;ならびに、2)ヌクレオチド配列が、第一のds核酸分子の第一の末端の5'突出とハイブリダイズすることが可能な第二のds核酸分子の第一の末端と第二の末端の両方の5'端またはその近傍に存在する場合に実施することができる。これらの態様では、第一のds核酸分子の第二の末端、および第二のds核酸分子の第二の末端はいずれかが平滑であるか、または突出を含む。
【0081】
別の態様では、方向的または非方向的に連結された組換え核酸分子を作製する方法は、例えば第一の5'標的配列を5'端に、またトポイソメラーゼ認識部位を3'端またはその近傍に有する第一の末端、およびトポイソメラーゼ認識部位を3'端またはその近傍に有する第二の末端を有する第一の前駆体ds核酸分子;第一の平滑末端および第二の末端を有する第二のds核酸分子(第一の平滑末端は第一の前駆体ds核酸分子の5'標的配列に相補的な5'ヌクレオチド配列を有する);ならびにトポイソメラーゼ認識部位に特異的なトポイソメラーゼを接触させることで実施することができる。本明細書で使用されるように、「前駆体」ds核酸分子という呼称は、トポイソメラーゼ認識部位を含むds核酸分子、および同認識部位に特異的なトポイソメラーゼによる切断で、所望の5'端のヌクレオチド配列、3'端のヌクレオチド配列、またはこれら両方を有する末端を生じるds核酸分子を意味する。このような所望の末端は、部分的には、5'標的配列を含むds核酸分子の切断によって、このds核酸分子を第二のds核酸分子に方向的に連結することを可能とする5'ヌクレオチド配列に変換される5'標的配列の存在によって作製される。
【0082】
本発明の方法により、第一のds核酸分子、第二のds核酸分子、およびトポイソメラーゼは、トポイソメラーゼ活性を可能とする条件、すなわちトポイソメラーゼが認識部位に結合してこれを切断し、トポイソメラーゼをチャージした3'端を生じることを可能とする、および3'端を適切な5'端に連結可能とする条件下で接触される。このような条件により、トポイソメラーゼによる切断後に残る第一の5'標的配列の一部と、5'標的配列の同じ部分に相補的な第二のds核酸分子の5'ヌクレオチド配列とのハイブリダイゼーションが可能となる。
【0083】
本発明の方法を実施するにあたって、前駆体ds核酸分子を、トポイソメラーゼおよび第二のds核酸分子と同じ反応容器中に同時にまとめることで、その後に、前駆体ds核酸分子が、第二のds核酸分子に方向的に連結可能なトポイソメラーゼをチャージしたds核酸分子に変換される場合がある。トポイソメラーゼを、前駆体ds核酸および第二の核酸と同じ反応容器内にまとめることにより、本発明の方法は単純化される。または、第一の前駆体ds核酸分子は、トポイソメラーゼによる切断および結合を可能とする条件下でトポイソメラーゼとまとめることが可能であり、続いて第二のds核酸分子を付加することができる。
【0084】
前駆体ds核酸分子は、線状または環状(スーパーコイルを含む)の場合があり、また、1種または複数のトポイソメラーゼによる切断の結果、また望ましいならば、制限エンドヌクレアーゼによる切断の結果、トポイソメラーゼをチャージした線状の第一のds核酸分子が得られる。例えば相互に約100ヌクレオチド以内で相補鎖内に、好ましくは相互に約20ヌクレオチド以内で相補鎖内に、2か所のIB型トポイソメラーゼ認識部位を含む環状ds核酸分子は、部位特異的なIB型トポイソメラーゼに、各鎖が切断されて介在配列が解離することで各末端に共有結合で結合された状態のトポイソメラーゼを有する線状のds核酸分子が得られるように接触させることができる。
【0085】
一般に、第二の、または他のds核酸分子に方向的に連結可能な、トポイソメラーゼをチャージした2本鎖核酸は、トポイソメラーゼを、少なくとも1か所のトポイソメラーゼ認識部位を第一の標的配列の一方の末端またはその近傍に含む前駆体ds核酸分子に接触させることで得られる。本明細書で使用される「トポイソメラーゼ認識部位」という表現は、部位特異的なトポイソメラーゼが認識して結合する特定のヌクレオチド配列を意味する。例えばヌクレオチド配列
Figure 0005043277
は、ワクシニアウイルスのDNAトポイソメラーゼIを含むポックスウイルスのトポイソメラーゼの多くが特異的に結合して、認識部位の最も3'側のチミジンを鎖を切断して
Figure 0005043277
を含む核酸分子、すなわちトポイソメラーゼのチロシン残基を介して3'リン酸に共有結合で結合された状態のトポイソメラーゼの複合体を生じることが可能なトポイソメラーゼ認識部位である(参照として本明細書に組み入れられる、Shuman、J.Biol.Chem. 266:11372〜11379、1991;SekiguchiおよびShuman、Nucl.Acid.Res. 22:5360〜5365、1994を参照;米国特許第5,766,891号;国際特許出願番号PCT/US95/16099;国際特許出願番号PCT/US98/12372も参照)。
【0086】
前駆体ds核酸分子を、例えば一端または両端から約2〜15ヌクレオチド(例えば2残基、3残基、4残基、5残基、6残基、7残基、8残基、9残基、12残基、14残基、15残基、または20残基のヌクレオチド)にIB型トポイソメラーゼの認識部位を含むように構築する上での利点は、部位特異的なトポイソメラーゼによるds核酸分子の切断によって5'突出が作製されることである。それぞれ2〜20ヌクレオチドを含む場合がある、このような5'突出配列は、所望の任意の配列をもつように、本明細書に開示されたPCR法で設計される場合がある。したがって、切断された第一のds核酸分子が、選択された第二(または他)のds核酸分子に本発明の方法で方向的に連結される場合、また選択された配列が5'突出配列を有する場合、第一のds核酸分子上の5'突出は、2個(またはそれ以上)の配列が5'突出の相補性があるために所定の方向に方向的に連結されるように、選択された第二(または他)のds配列上の5'突出に相補的になるように設計することができる。上述したように、同様の方法を、IA型トポイソメラーゼまたはII型トポイソメラーゼによる切断によって生じる3'突出配列に関して行うことができる。
【0087】
本明細書で使用されるように、トポイソメラーゼ認識部位に関して使用される「切断産物」という用語は、トポイソメラーゼにより通常その認識部位で切断されて、IB型トポイソメラーゼの場合であればトポイソメラーゼ認識部位中の3'端のヌクレオチドの3'リン酸基に共有結合で結合された状態のトポイソメラーゼの複合体、またはIA型もしくはII型のトポイソメラーゼの場合であればトポイソメラーゼ認識部位中の5'端のヌクレオチドの5'リン酸基に共有結合で結合された状態のトポイソメラーゼの複合体を含む核酸分子を意味する。共有結合で結合された状態のトポイソメラーゼを有する、トポイソメラーゼで切断されたds核酸分子を含む、このような複合体は本明細書では「トポイソメラーゼで活性化された」核酸分子、または「トポイソメラーゼをチャージした」核酸分子と呼ばれる。トポイソメラーゼで活性化されたds核酸分子は、未切断状態のトポイソメラーゼ認識部位およびトポイソメラーゼを含むds核酸分子(トポイソメラーゼはds核酸分子を認識部位で切断可能であり、共有結合で結合された状態となる)が可能なように本発明の方法に使用することができる。
【0088】
本開示から容易に明らかになるように、本発明の方法で連結されるds核酸分子の末端は、さまざまな特徴をもちうる。例えば一つの局面では、第一の前駆体ds核酸の第二の末端は、トポイソメラーゼによる切断後に平滑末端となり、また第二のds核酸分子の第二の末端は平滑末端である。別の局面では、第一の前駆体ds核酸分子の第二の末端は、トポイソメラーゼによる切断後に3'チミジンの延長を有し、また第二のds核酸分子の第二の末端は3'アデノシン突出を有し、または同末端は3'アデノシンの突出、および3'デオキシウリジンの突出を含む場合がある(参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,487,993号および第5,856,144号を参照)。さらに別の局面では、第一の前駆体ds核酸分子は、第二の末端に第二の5'標的配列を有し、第二のds核酸分子の第二の末端は、第二の5'標的配列の少なくとも一部に相補的な5'ヌクレオチド配列を有する。第一の前駆体ds核酸分子は、クローニングベクターおよび発現ベクターを含むベクターである場合があり、また一般に環状形状で示される場合は、トポイソメラーゼの作用によって直線化されたり、または例えば、トポイソメラーゼと接触させることで第一および第二のds核酸分子が本発明の方法で方向的に連結可能なように、ベクターを直線化する1種または2種の制限エンドヌクレアーゼを含めることによって直線化されたりする場合がある。
【0089】
本明細書で使用される、核酸分子の3'端(IB型)または5'端(IA型もしくはII型)に対するトポイソメラーゼ認識部位の近接性に関して使用される「末端またはその近傍」という表現は、3'端または5'端からそれぞれ約1〜100ヌクレオチド以内にある部位、通常は末端から約1〜20ヌクレオチド以内にある部位、また特に個々の末端から約2〜12ヌクレオチド以内にある部位を意味する。トポイソメラーゼ認識部位を、末端の約10〜15ヌクレオチド以内に配置することの利点は、トポイソメラーゼによる切断後に、切断部位の下流にある配列の一部が、共有結合で結合された状態のトポイソメラーゼを含む残存する核酸分子から自然に解離する場合があることである(通常「自殺的切断」と呼ばれる;例えばShuman、前記、1991;Andersenら、前記、1991を参照)。トポイソメラーゼ認識部位が、末端から約12〜15ヌクレオチドより長い場合は、切断部位の上流または下流にある核酸分子は、反応条件を改変すること(例えばトポイソメラーゼ切断部位を含む2本鎖の一部の溶解温度以上の温度におけるインキュベーション段階を加えること)によって、残存する配列からの解離が誘導される場合がある。
【0090】
第一の末端および第二の末端に5'標的配列およびトポイソメラーゼを有する第一の前駆体ds核酸分子を用いる本発明の方法により、第一の前駆体ds核酸分子を第二のds核酸分子に方向的または非方向的に連結することができる。この方法は典型的には、第一の前駆体ds核酸分子と第二のds核酸分子を方向的に連結する際に使用され、また第一の前駆体ds核酸分子と第二のds核酸分子を非方向的に連結する際にも使用される場合がある。非方向的な連結は例えば、1)第二のヌクレオチド配列が、第二のds核酸分子の5'の相補的なヌクレオチド配列とのハイブリッドの形成を可能とするように、第一の前駆体ds核酸分子の第二の末端の5'端またはその近傍に存在する場合;ならびに、2)ヌクレオチド配列が、第一の前駆体ds核酸分子の第一の末端またはその近傍において5'標的配列とのハイブリッドの形成を可能とするように、第二のds核酸分子の第一の末端と第二の末端の両方の5'端またはその近傍に存在する場合に実施することができる。これらの態様では、第一の前駆体ds核酸分子の第二の末端、および第二のds核酸分子の第二の末端は、いずれかが平滑末端か、または突出を含む。
【0091】
方向的または非方向的に連結された組換え核酸分子を作製する方法も、第一の末端に第一の5'突出を、また3'端に共有結合で結合された状態の第一のトポイソメラーゼを有するトポイソメラーゼをチャージした第一のds核酸分子と、第一の平滑末端および第二の末端を有する第二のds核酸分子(第一の平滑末端は、第一の5'突出に相補的な5'ヌクレオチド配列を含む)を接触させることで実施することができる。この方法は、第一の平滑末端の5'ヌクレオチド配列が、第一の5'突出と選択的にハイブリダイズすることが可能で、第一のトポイソメラーゼが、第一のds核酸分子の第一の末端の3'端と、第二のds核酸分子の第一の末端の5'端とを共有結合で連結可能な条件下で実施することができる。
【0092】
このような方法はさらに、トポイソメラーゼをチャージした第一のds核酸分子および第二のds核酸分子を、第三のds核酸分子に接触させる段階を含む場合がある(第三のds核酸分子の第一の末端は、5'突出および3'端に共有結合で結合された状態の第二のトポイソメラーゼを有し、また第二のds核酸分子は、第三の核酸分子の5'突出に相補的な5'ヌクレオチド配列を含む第二の平滑末端を有する)。この接触段階は例えば第二のds核酸の第二の平滑末端の5'ヌクレオチド配列が、第三のds核酸分子の第一の末端の5'突出と選択的にハイブリダイズ可能で、第二のトポイソメラーゼが、第三のds核酸分子の第一の末端の3'端と、第二のds核酸分子の第二の平滑末端の5'端とを共有結合で連結させることが可能な条件下で実施することができる。第一のトポイソメラーゼおよび第二のトポイソメラーゼは、同じ場合もあれば異なる場合もあり、望ましいならば、第一のds核酸分子または第三のds核酸分子は、トポイソメラーゼをチャージしたものではなく、トポイソメラーゼ認識部位を含む場合がある(この方法は、反応物にトポイソメラーゼを接触させる段階をさらに含む場合がある)。本発明の方法は、第一のds核酸分子が、第二のds核酸分子に方向的に連結され、その後に第三のds核酸分子が、第二のds核酸分子に方向的または非方向的に連結するように、またはすべての反応物が同時に含まれうるように実施することができる。
【0093】
本発明の方法は、cDNAすなわち単離されたゲノムDNA配列の読み枠を、1個または複数の発現制御領域を推定コード配列に使用可能に連結することで発現可能とする手段を提供する。本発明に有用な発現制御領域の例は本明細書に開示されており、また転写発現制御領域、翻訳発現制御領域、また核酸分子またはポリペプチドの細胞内(または細胞外)における輸送または局在化を促進する配列や、検出可能な表現型をもたらす配列などを含む。転写発現制御領域には例えば、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルス、およびヘルペスウイルスに由来するプロモーターなどのプロモーター、ならびにメタロチオネイン、骨格アクチン、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホグリセリン酸、ジヒドロ葉酸還元酵素、およびチミジンキナーゼをコードする遺伝子に由来するプロモーター、ならびにラウス肉腫ウイルスの末端反復配列(LTR)などのウイルス由来のLTRに由来するプロモーター;免疫グロブリンのエンハンサーなどの構成的に活性を示すエンハンサー、またはSV40のエンハンサーなどの誘導型のエンハンサーなどが含まれる。例えばメタロチオネインプロモーターは、銅、ニッケル、またはカドミウムのイオンなどの金属イオン曝露に応じた高レベルの発現も誘導可能な構成的に活性を示すプロモーターである。これとは対照的に、テトラサイクリン(tet)の誘導型プロモーターは、テトラサイクリン、またはテトラサイクリン類似体(通常は不活性な分子)に対する曝露に応じて誘導されるプロモーターの例である。
【0094】
転写発現制御領域は、組織特異的な発現制御領域、例えば、コードされた産物の発現が個人の筋肉組織に制限されるような、または培養中、例えば器官培養に含まれる混合細胞集団の筋肉細胞に制限されるような、筋肉細胞に特異的な発現制御領域の場合もある。例えば、筋肉のクレアチンキナーゼ遺伝子のプロモーター(参照として本明細書に組み入れられる、Sternbergら、Mol.Cell.Biol. 8:2896〜2909、1988)、およびミオシン軽鎖遺伝子のエンハンサー/プロモーター(参照として本明細書に組み入れられる、Donoghueら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:5847〜5851、1991)を含む筋肉細胞に特異的な発現制御領域は当技術分野で周知である。他の組織特異的なプロモーター、ならびに細胞または生物体の特定の発生段階でのみ発現される発現制御領域は、当技術分野で周知である。
【0095】
本発明の方法によるコンストラクトの作製に有用な発現制御領域、または他の領域は、さまざまな方法で得られる。特に多くの領域が市販のベクターに含まれており、またベクターから単離することが可能であり、また例えば、本明細書に開示されているPCR法を用いて一端または両端においてトポイソメラーゼ認識部位を含むように改変することができる。また、本明細書で有用な領域をコードする配列は一般によく知られており、諸文献に開示されている。多くの場合、このような配列、例えば転写および翻訳の発現制御領域、ならびに細胞区画化ドメインは比較的短い配列なので、このような配列、またはこのような配列をコードするヌクレオチド配列の化学合成に適している。したがって一つの態様では、本発明の方法による、または本発明のキットに含まれる、組換え核酸分子の作製に有用な本発明の組成物を含む配列は、化学合成することが可能であり、望ましくは、トポイソメラーゼ認識部位を同配列の一端もしくは両端に含むように合成することができるほか、またさらに部位特異的なトポイソメラーゼによる切断後に突出配列を含むように合成することができる。
【0096】
ds核酸分子が本発明の方法で方向的に連結される場合、このような核酸分子は一般に、作製される組換え核酸分子が、所望の構造を有し、所望の機能を発揮し、また所望の発現産物をコードするなどといったように、使用可能に連結される。本明細書で使用される「使用可能に連結される」という表現は、2個またはそれ以上の核酸分子が、一方または両方の配列、またはこれらの組み合わせに由来する機能に影響するように一つの単位として作用するように、相互に配置されることを意味する。例えば読み枠を含む核酸分子は、細胞内で通常ゲノムに結びつけられている読み枠の発現に作用を及ぼすのと似た方法で読み枠の調節作用をもたらすようなプロモーターに使用可能に連結される場合がある。同様に、複数の読み枠を含む2個またはそれ以上の核酸分子は、転写および翻訳に伴い、キメラの融合ポリペプチドが生成されるように、同じ読み枠で使用可能に連結することができる。
【0097】
読み枠を含む第一のds核酸分子は、任意の増幅法、例えばプライマー対を用いたPCRで増幅して、本発明の、トポイソメラーゼをチャージしたds核酸分子の5'突出に相補的な5'ヌクレオチド配列を有する増幅された第一のds核酸分子を作製することができる。増幅された第一のds核酸分子の両端が、トポイソメラーゼをチャージしたds核酸上における二つの突出に相補的である場合、5'突出は相互に異なる。増幅された第一のds核酸分子は次に、第二の核酸分子が本発明の方法によりコード配列の5'端に使用可能に連結されるように、プロモーターなどの所望の発現制御領域を含むトポイソメラーゼをチャージしたds核酸分子と接触させることができる。
【0098】
成分のさまざまな組み合わせを本発明の方法に使用することができる。例えば本発明の方法は、トポイソメラーゼで活性化された第一のds核酸分子;第一の末端および第二の末端を有する第二のds核酸分子(第一の末端もしくは第二の末端、またはこの両方において、第二の核酸分子は、同じ末端の5'端においてヒドロキシル基を有する);ならびに5'突出を接触させることで実施することができる。連結される一端または両端の5'端が5'リン酸基を有する場合、ホスファターゼも反応混合物の成分に接触させることができる。接触させることで、ホスファターゼは、必要であれば、5'ヒドロキシル基を同じ末端に作製することが可能であり、また第二のds核酸分子が次に、トポイソメラーゼで活性化された第一のds核酸分子に方向的に連結されうる。当業者であれば、成分の他の組み合わせが、本発明の方法を実施するうえで有用であることを理解すると思われる。
【0099】
本明細書で使用される、第一の核酸分子と第二の核酸分子を「すべての成分が接触する条件下で」接触させる段階とは、反応条件が、第一のds核酸分子の、トポイソメラーゼにより切断される末端が、トポイソメラーゼがその酵素活性の作用を及ぼすのに十分近接して、第一のds核酸分子の3'端を、第二の核酸分子の末端における5'ヒドロキシル基に共有結合で連結するのに適切であることを意味する。このような条件の例には、例えば反応温度、イオン強度、およびpHなどが含まれる。また条件は経験的に決定される場合があるほか、当技術分野で周知であるように、核酸分子の特定のハイブリダイゼーションの条件を予測する公式を用いて決定されうる(例えばそれぞれ参照として本明細書に組み入れられる、Sambrookら、「分子クローニング:実験マニュアル( Molecular Cloning A laboratory manual 」(Cold Spring Harbor Laboratory Press 1989を参照);Ausubelら、「分子生物学の最新プロトコール( Current Protocols in Molecular Biology 」、John Wiley and Sons、Baltimore、MD、1987、および1995年までの補遺を参照)。
【0100】
本明細書で開示される、相補的なヌクレオチド配列を、増幅されたds核酸分子の一端または両端に取り込ませるように設計されたプライマーを用いるPCR法は、本発明の方法に有用なds核酸分子を作製する簡便な手法の例である。プライマー対の少なくとも1本のプライマーは、5'から3'の方向に、本発明の、トポイソメラーゼをチャージしたds核酸分子上にある第一の突出に相補的なヌクレオチド配列を含むように設計される。PCRプライマー対の第二のプライマーは、増幅対象の核酸分子の所望の配列に相補的な場合があり、また第二の相補配列を含む場合がある。
【0101】
プライマーは、例えばatt部位やlox部位などの部位特異的な組込み認識部位を含む、他の任意の対象配列を含んだりコードしたりする場合もあれば、上述したように、トポイソメラーゼ認識部位を、上記対象配列を含むds核酸分子に導入する際に単に使用される場合がある。本発明の方法で作製される組換え核酸分子、および部位特異的な組込み認識部位(att部位やlox部位など)を含む組換え核酸分子は、例えば必要とされる組込み部位(それぞれatt部位もしくはlox部位)を含むベクターや遺伝子座などの所望の遺伝子座に特異的に組込み可能であり、また部位特異的な現象(例えば、それぞれλファージのIntタンパク質およびIHFタンパク質、もしくはCreリコンビナーゼ)に必要な適切な酵素と接触させることで組込み可能である。例えばattB配列もしくはattP配列の、本発明の方法による方向的または非方向的に連結された組換え核酸分子への組込みにより、ゲートウェイ(商標) クローニングシステム(Invitrogen Corp.、La Jolla、CA)を用いた核酸分子の簡便な操作が可能となる。本発明の方法に使用される第一のds核酸分子は、2か所の部位特異的な組込み部位を含む直線化されたベクター(例えば「エントリーベクター」(ゲートウェイ(商標)クローニングシステム)の場合があり、また本発明の方法により、第二(または他)のds核酸分子を部位特異的な組込み部位の間に挿入することができる。
【0102】
本発明の方法またはキットに使用されるds核酸分子は、任意の増幅反応、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、相補的なヌクレオチド配列を5'端に含むように増幅することができる。PCRで例示されるが、他の増幅法により、増幅後の核酸分子が相補的な配列をその末端の一つの5'端にもつように核酸分子を増幅することもできる。相補的なヌクレオチド配列は、増幅された核酸が連結される、トポイソメラーゼをチャージしたds核酸上の5'突出に相補的である。相補性の存在は核酸分子の所定の方向における会合を促し、分子は本発明の方法により、トポイソメラーゼによって連結される場合がある
【0103】
増幅用プライマーは、所望のds核酸分子、例えば転写もしくは翻訳の発現制御領域、またはエピトープタグもしくは細胞区画化ドメインなどの対象コード配列をコードするds核酸分子に特異的な特徴をもたらすように設計することができる。この局面では、増幅用プライマーは、増幅に伴ってds核酸分子が、5'相補配列を一端または望ましくは両端に含むように設計される。
【0104】
増幅用プライマーは、本発明の方法で作製された方向的に連結された組換え核酸分子を増幅するために使用することもできる。例えば本発明の方法は、プロモーター、コード配列を含む核酸分子、およびポリアデニル化シグナルを含む核酸分子を含む核酸分子を含む三種のds核酸分子から、発現可能な組換え核酸分子を作製することができる。このような核酸分子の作製は、相補的な5'(または3')の配列を、連結されるdsヌクレオチド配列の末端に組込むことで促進される(好ましくは相補的な配列の一方は突出配列である)。
【0105】
したがって、プロモーターの上流にあるプロモーターを含む核酸分子の突出に特異的な第一のプライマー、およびポリアデニル化シグナルの下流にある同シグナルを含む核酸分子の突出に特異的な第二のプライマーを含むPCR用プライマー対を設計することで、プロモーター、コード配列、ポリアデニル化シグナルを正しい(所定の)方向で含む完全長の機能性の組換え核酸分子のみが増幅される。具体的には、部分反応産物、例えばコード配列に連結されたプロモーターのみを含む反応産物、およびニックを含む反応産物を含む反応産物は増幅されない。したがってPCRにより、本発明の方法に有用なds核酸分子を選択的に設計すること、また所望の成分および特徴を有する反応産物のみを選択的に増幅することができる。
【0106】
本発明の方法は、第一のds核酸分子に方向的に連結される第二のds核酸分子が、複数の第二のds核酸分子の一つとなるように実施することができる。本明細書で使用される、第一の核酸分子、または少なくとも第二の核酸分子に関して使われる「複数」という表現は、核酸分子が関連するが異なることを意味する。本発明の目的では、複数の核酸分子は、複数の核酸分子のそれぞれが例えば第二のds核酸分子を方向的に連結される、トポイソメラーゼをチャージしたds核酸分子上に存在する5'突出配列に相補的な5'ヌクレオチド配列を含む意味において「関連する」。また複数の核酸分子は、これらが例えばcDNAライブラリー、核酸分子のコンビナトリアルライブラリー、核酸分子のさまざまな集団などを含む場合がある点において「異なる」。cDNAライブラリー、コンビナトリアルライブラリー、核酸分子のさまざまな集団を含むライブラリーなどを作製する方法は、当技術分野で周知である(例えばそれぞれ参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,837,500号;米国特許第5,622,699号;米国特許第5,206,347号;ScottおよびSmith、Science 249:386〜390、1992;Marklandら、Gene 109:13〜19、1991;O'Connellら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:5883〜5887、1996;TuerkおよびGold、Science 249:505〜510、1990;Goldら、Ann.Rev.Biochem. 64:763〜797、1995を参照)。
【0107】
第二のds核酸分子が、ds核酸分子の集団の一つである場合、本発明の方法はさらに、第一のds核酸分子の集団を使用することができる(それぞれは、異なりかつランダムに作製されたヌクレオチド配列を、第一の末端および/または第二の末端の3'端および/または5'端、もしくはその近傍に含む(例えばランダムに作製された3'もしくは5'の突出を第一の末端もしくはその近傍に含む)。末端の近傍にランダムに作製されたヌクレオチド配列の集団は、複数の第二のds核酸分子の多く、もしくはすべての末端もしくはその近傍におけるヌクレオチド配列に相補的な配列を含む。したがって本発明により、複数の第二のds核酸分子中の多く、またはすべての核酸分子を含む、連結された組換え核酸分子を作製することができる。
【0108】
本発明の方法は、分子生物学分野における応用範囲が広い。以下に詳述するように、本発明の方法により、例えばDNAプローブもしくはRNAプローブを標識すること、センスRNAもしくはアンチセンスRNAを作製すること、ツーハイブリッドアッセイ法に用いるベイトコンストラクトまたはプレイコンストラクトを調製すること、線状の発現配列を調製すること、共役インビトロ転写/翻訳アッセイ法に有用なコンストラクトを調製すること、また方向的なクローニングを実施することができる。
【0109】
本発明のこの局面で作製される方向的または非方向的に連結された組換え核酸分子は、直線状の場合があるが、好ましくは環状であり、具体的には上述したベクターである。環状の組換え核酸分子は、ベクターの特徴をもつように、また例えば、原核生物の宿主細胞、真核生物の宿主細胞、またはこれら両方における複製に必要な発現制御領域を含むように作製することができる。また同分子は、抗生物質耐性などの表現型をもたらすポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む場合がある。
【0110】
本発明の方法はさらに、方向的または非方向的に連結された組換え核酸分子を、細菌などの原核細胞、もしくは哺乳類細胞などの真核細胞の場合がある細胞に導入する段階を含む場合がある。したがって本発明は、本発明の方法で作製された細胞、ならびにこのような細胞から作製された非ヒトトランスジェニック生物も提供する。このような方法の利点は、本発明の方法で環状化される、作製された組換え核酸分子が、コンストラクトが増幅される適切な宿主細胞を形質転換したり、トランスフェクトしたりすることである。したがって、宿主細胞を用いたインビボ法で、本発明の方法で作製される、大量の環状化産物が得られる。
【0111】
本発明の方法は部分的には、作製された連結後の組換え核酸分子が、トポイソメラーゼが連結される末端の3'端のみに結合しているためにニックを一方の鎖に含むか、または本発明の方法で連結された2個の核酸分子の1個のみに完全に由来する1本の鎖を含むことを特徴とすると解釈される。組換え核酸分子がニックを含む場合、望ましいならば例えば、ニックを含む組換え核酸分子にDNAリガーゼを接触させることで、ニックを含む組換え核酸分子をニックを修復可能な細菌などの細胞に導入することにより、または文献に記載されている他の任意の方法により、ニックはホスホジエステル結合に変換される場合がある。したがって一つの態様では、本発明の方法は、鎖の侵入および連結を含む。
【0112】
本発明の方法で作製された組換え核酸分子が、当初の核酸分子の一つのみに完全に由来する1本の鎖を含まない場合、本発明の方法は、置換されたヌクレオチド配列が産物から切断される切断段階をさらに含む。このような切断段階は、例えば置換鎖を含む組換え核酸分子に、5'→3'もしくは3'→5'(置換鎖の方向による)の1本鎖の核酸を対象とするエキソヌクレアーゼ活性を有する酵素を接触させる段階を含む、1本鎖ヌクレオチド配列を切断したり分解したりすることが知られている任意の方法で実施することができる。このような方法は、インビトロで簡便に実施することができる。または、このような組換えds核酸分子を、置換されたヌクレオチド配列が切断される細胞(例えば大腸菌細胞)に導入することができる。
【0113】
本発明の方法により、キメラの融合ポリペプチドをコードする、方向的に連結された組換え核酸分子を作製することができる。このような組換え核酸分子を作製する際には、第一のds核酸分子、および第二(または他)のds核酸分子はそれぞれ、読み枠のすべてまたは一部をコードすることが可能であり、また本明細書に記載されている第一の末端および/または第二の末端を有する第一のds核酸分子、および第二(または他)のds核酸分子が方向的に連結される。このようなキメラポリペプチドは、2個(またはそれ以上)のコードされたペプチド(またはポリペプチド)が1個の産物に翻訳される(すなわちペプチドがペプチド結合を介して共有結合により連結される)融合ポリペプチドを含む場合がある。
【0114】
例えば、第一のds核酸分子は、細胞区画化ドメイン(細胞膜局在化ドメイン、核局在化シグナル、ミトコンドリア膜局在化シグナル、小胞体局在化シグナルなど)、またはタンパク質トランスダクションドメイン(ヒト免疫不全ウイルスのTATタンパク質トランスダクションドメインなどの、同ドメインが連結したペプチドの細胞内への移行を促進可能なドメイン)をコードする場合がある(参照として本明細書に組み入れられる、Schwarzeら、Science 285:1569〜1572、1999;Derossiら、J.Biol.Chem. 271:18188、1996;Hancockら、EMBO J. 10:4033〜4039、1991;Bussら、Mol.Cell.Biol. 8:3960〜3963、1988;米国特許第5,776,689号を参照)。これらのドメインは、本発明の方法で方向的に連結される、第二のds核酸分子にコードされたドメインおよびポリペプチドを含む融合ポリペプチドを、細胞内の特定の区画に選択的に向かわせる際に、または細胞から分泌させたり細胞内に侵入させたりする際に有用な場合がある。したがって本発明は、キメラポリペプチドをコードする、方向的に連結された組換え核酸分子を手段を提供する。
【0115】
本発明の方法で作製される方向的に連結された組換え核酸分子から発現される融合ポリペプチドは、発現される融合ポリペプチドの検出や単離などを可能とする検出用標識またはタグの特徴をもつペプチドを含む場合もある。例えば本明細書に記載される、トポイソメラーゼ認識部位を含む第一のds核酸分子、第二のds核酸分子、もしくは他のds核酸分子、またはこの切断産物は、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ルシフェラーゼ、もしくは他の酵素などの酵素をコードする場合があるほか、ポリヒスチジン配列(例えばヘキサヒスチジン)、V5エピトープ、c-mycエピトープなどのペプチドタグ、ヘマグルチニンエピトープ、FLAGエピトープをコードする場合がある。検出用標識を含む融合ポリペプチドの発現の検出は、適切な試薬を用いて、例えばルシフェラーゼを含む融合ポリペプチドにルシフェリンを添加したときの発光を検出することで、またはポリヒスチジンタグを含む融合ポリペプチドに対するニッケルイオンの結合を検出することで行うことができる。
【0116】
ポリヒスチジンタグは、約2〜10個の連続したヒスチジン残基(例えば2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続ヒスチジン残基)を含む場合がある。このタグは、ニッケルイオン、ならびに他の金属イオン(例えば銅イオン)に結合するペプチドタグの場合もあり、また金属を用いたキレートアフィニティクロマトグラフィーに使用することができる。このようなタグの例には、以下の化学式を有するペプチドなどがある:R1-(His-X)n-R2(式中、(His-X)nは金属キレート用ペプチドを意味し、nは2〜10(例えば2、3、4、5、6、7、8、9、または10)の数であり、またXは、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンからなる群より選択されるアミノ酸である)。またR2は、金属キレート用ペプチドに共有結合で結合されたポリペプチドの場合があり、R1は水素または1個もしくは複数(例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、20個、30個、50個、60個など)のアミノ酸残基のいずれかの場合がある。またR1は、金属キレート用ペプチドに共有結合的に結合されるポリペプチドの場合があり、R2は水素または1個もしくは複数(例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、20個、30個、50個、60個など)のアミノ酸残基のいずれかの場合がある。このような性質をもつタグは、参照として全体が本明細書に組み入れられる米国特許第5,594,115号に記載されている。
【0117】
同様に、タグを含む融合ポリペプチドの単離は、例えばmycエピトープを含む融合ポリペプチドを、抗c-mycエピトープ抗体が結合した状態のカラムに通し、次に、結合状態の融合ポリペプチドを溶出するか、またはポリヒスチジンタグを含む融合ポリペプチドを、ニッケルイオンもしくはコバルトイオンのアフィニティカラムに通して、結合状態の融合ポリペプチドを溶出することで実施することができる。このような融合ポリペプチドを検出する方法、または単離する方法は、選択される検出用標識またはタグに関して当業者によく知られている(例えば参照として本明細書に組み入れられる、Hoppら、Biotechnology 6:1204、1988;米国特許第5,011,912号を参照)。
【0118】
一つの態様では、方向的に連結された組換え核酸分子は、ツーハイブリッドアッセイ法を実施する際に有用なキメラポリペプチドをコードする。この方法では、第一のds核酸分子は、1個または複数(例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個など)の他のポリペプチドと特異的に相互作用する能力を有することが疑われたり検討対象となったりするポリペプチド、またはその関連ドメインをコードする。本発明の方法により第一のds核酸分子が方向的に連結される第二のds核酸分子は、転写活性化ドメインまたはDNA結合ドメインをコードする場合がある。例えば方向的に連結される第一のds核酸分子は、例えば第一の末端の5'突出を、またトポイソメラーゼ認識部位、またはその切断産物を第一の末端もしくはその近傍に含むように修飾される。連結される第二のds核酸分子は、第一のds核酸分子の第一の末端において5'突出に相補的な5'配列を含むか、または含むように修飾される。第一のds核酸分子および第二のds核酸分子とトポイソメラーゼとの接触により、方向的に連結された核酸分子は、ツーハイブリッドアッセイ法の実施に有用な第一のハイブリッドをコードする(例えば参照として本明細書に組み入れられる、FieldsおよびSong、Nature 340:245〜246、1989;米国特許第5,283,173号;Fearonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7958〜7962、1992;Chienら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:9578〜9582、1991;Young、Biol.Reprod. 58:302〜311(1998)を参照)。同様の方法で、第一のハイブリッドタンパク質のポリペプチド、またはそのドメインとの相互作用能力に関して検討される複数のポリペプチドを含む場合がある第二のハイブリッドタンパク質が作製される。この方法を同様に行うことで、リバース・ツーハイブリッドアッセイ法(参照として本明細書に組み入れられる、LeannaおよびHannink、Nucl.Acids Res. 24:3341〜3347、1996)などの修飾型のツーハイブリッドアッセイ法、抑制トランス活性化因子システム(参照として本明細書に組み入れられる米国特許第5,885,779号)、タンパク質動員システム(参照として本明細書に組み入れられる米国特許第5,776,689号)などに有用な融合タンパク質をコードする方向的に連結された核酸分子を構築することができる。
【0119】
本明細書で開示されるように、第二のds核酸分子は、複数の核酸分子、例えばcDNAライブラリー、核酸分子のコンビナトリアルライブラリー、またはさまざまな核酸分子の混合集団の一つである場合がある。したがって本発明の方法は、ポリペプチド集団内で生じるタンパク質間相互作用を同定するための高スループットのツーハイブリッドアッセイ法の実施に使用されるキメラポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドを作製する際に特に有用である(参照として本明細書に組み入れられる米国特許第6,057,101号および米国特許第6,083,693号を参照)。このような方法では、ツーハイブリッドアッセイ法の各ハイブリッドタンパク質は、ポリペプチドをコードする核酸分子の二つの集団(多数)のうちの異なる一つ(その多数の各々が、関連しているが異なる数種の核酸分子から、このような分子の一万種という高い程度にまで至る複雑性を有する)を用いて作製される。本発明の方法を実施すること、例えば複数の各核酸分子を増幅するPCRプライマー対を用いることで、キメラのベイトポリペプチド集団およびキメラのプレイポリペプチド集団をコードする方向的に連結された組換えポリヌクレオチドを容易に作製することができる。これらの集団は、増幅後の複数の核酸分子(それぞれ適切な末端を含む)を、トポイソメラーゼ、およびトポイソメラーゼ認識部位をその末端もしくはその近傍に含み、転写活性化ドメインもしくはDNA結合ドメインをコードする核酸分子に接触させることで作製される。
【0120】
本発明の方法に有用な第一のds核酸分子は、例えばリボプローブ、アンチセンスの核酸分子、リボザイム、または三本鎖形成核酸分子として機能可能であったり、インビトロ翻訳反応で使用することが可能であったりするリボ核酸(RNA)分子をコードする場合もあり、また第二のds核酸分子は、第一の核酸分子からRNAを発現させる際に有用な発現制御領域をコードする場合がある。例えば大量のRNAを産生させることが望ましい場合は、本発明の方法を実施するための第二のds核酸分子の成分は、T7、T3、またはSP6 RNAポリメラーゼのプロモーターなどのRNAポリメラーゼのプロモーターを含む場合がある。RNA分子を細胞内で発現させる場合、例えばアンチセンス分子を哺乳類細胞内で発現させる場合は、第二(または他)のds核酸分子は、哺乳類細胞内で活性のあるプロモーター(特に標的細胞内だけで活性のある組織特異的なプロモーター)を含むとよい。またRNA分子を、例えば共役したインビトロ転写/翻訳反応内で翻訳させる場合は、第一の核酸分子、もしくは第二(または他)の核酸分子は適切な翻訳発現制御領域を含むとよい。
【0121】
本発明の方法で作製された方向的または非方向的に連結された組換え核酸分子は、方向的または非方向的に挿入された核酸分子を含む組換え体ベクターが一般に使用される、さまざまな目的に使用することができる。したがって、方向的または非方向的に連結された核酸分子を例えば、ポリペプチドを細胞内で発現させる際や、病的状態を診断したり治療したりする際などに使用することができる。生きている対象に投与する場合には、方向的または非方向的に連結された組換え核酸分子は一般に、対象への投与に適した薬学的組成物中に製剤化される。したがって本発明は、本発明の方法で作製される方向的または非方向的に連結された組換え核酸分子、およびこのような核酸分子の発現産物を含む薬学的組成物を提供する。したがって、このような核酸分子は、病的な状態のみられる対象の治療に用いる薬物として有用である。
【0122】
薬学的に許容される担体は当技術分野で周知であり、例えば、水または生理食塩水などの水性溶媒もしくは他の溶媒、またはグリコール、グリセロール、オリーブ油などの油、または注射用有機エステルなどの他の溶媒を含む。薬学的に許容される担体は、例えば複合物の吸収を安定化したり上昇させたりするように作用する生理学的に許容される化合物を含む場合がある。このような生理学的に許容される成分は、例えばグルコース、ショ糖、もしくはデキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸もしくはグルタチオンなどの抗酸化剤、キレート化剤、低分子量タンパク質、または他の安定剤もしくは賦形剤を含む。生理学的に許容される化合物を含む、薬学的に許容される担体の選択が例えば、経口的、または非経口的(経静脈的、および注射、挿管、または他の当技術分野で周知の方法など)の場合がある組成物の投与経路に依存することを当業者であれば理解すると思われる。このような薬学的組成物は、診断用試薬、栄養基質、毒素、または治療的薬剤(例えば癌の化学療法薬)などの別の試薬を含む場合もある。
【0123】
方向的に連結された組換え核酸分子は、水中油型乳濁液、マイクロエマルジョン、ミセル、混合ミセル、リポソーム、微粒子、または他の重合基質などのカプセル化材料と混合することができる(例えば参照として本明細書に組み入れられるGregoriadis「リポソーム技術(Liposome Technology)」、第1巻(CRC Press、Boca Raton、FL 1984);Fraleyら、Trends Biochem. Sci.、6:77(1981)を参照)。リポソーム、例えばリン脂質または他の脂質を含む分子は、作製および投与が比較的容易な非毒性の担体、生理学的に許容される担体、および代謝可能な担体である。「ステルス」リポソーム(例えば参照として本明細書に組み入れられる米国特許第5,882,679号;5,395,619号;および5,225,212を参照)は、薬学的組成物を調製する際に特に有用なカプセル化材料の一例であり、また他の「マスク型」リポソームを同様に使用して、核酸分子が循環中に留まる時間を長くすることができる。例えば陽イオン性リポソームは、特定の受容体およびリガンドで修飾することもできる(参照として本明細書に組み入れられる、Morishitaら、J.Clin.Invest、91:2580〜2585(1993))。このような核酸分子も、アデノウイルス-ポリヒスチジン複合体と複合体を形成させることで細胞に導入することができる(例えば参照として本明細書に組み入れられる、Michaelら、J.Biol Chem. 268:6866〜6869 (1993)を参照)。このような組成物は、核酸分子を、インビボもしくはインビトロ(核酸分子を含む細胞が対象に再び投与されるエクスビボを含む)で細胞に導入する際に特に有用な場合がある(参照として本明細書に組み入れられる米国特許第5,399,346号を参照)。本発明の方法で作製された核酸分子は、遺伝子銃を用いた方法で細胞に導入することもできる(例えばSykesおよびJohnston、前記、1999を参照)。
【0124】
本明細書で開示される、本発明の方法で作製された方向的に連結された核酸分子は例えばニックを含む。このような分子は例えば、ニックの入った組換え核酸分子にリガーゼを接触させることで解離しうる。このような、共有結合で両方の鎖に連結された、方向的に連結された組換え核酸分子は、PCRなどの増幅反応の鋳型として使用することができる。したがって大量のコンストラクトを作製することができる。また増幅反応は、部分反応産物を得ることなく、所望の産物だけを得るためのインビトロ選択法となりうる。例えば本発明の方法により、5'→3'方向に使用可能に連結された、第一のds核酸分子(プロモーターを含む)、第二のds核酸分子(コード鎖を含む)、および第三のds核酸分子(ポリアデニル化シグナルを含む)(作製された組換え核酸分子中のニックは連結される)を含む、方向的に連結された組換え核酸分子を作製することができる。
【0125】
プロモーター配列の上流のヌクレオチド配列に相補的な第一のプライマー、およびポリアデニル化シグナルの下流のヌクレオチド配列に相補的な第二のプライマーを含むPCRプライマー対を選択することにより、プロモーター、コード領域、およびポリアデニル化シグナルを含む機能性増幅産物を作製することができる。これとは対照的に、第一のds核酸分子、または第三のdsヌクレオチドのいずれかを欠く部分反応産物は、第一のプライマーまたは第二のプライマーのいずれかが、部分産物にそれぞれハイブリダイズしないことから増幅されない。また、第二のds核酸分子を欠くコンストラクトは、第一のds核酸分子および第三のds核酸分子の5'突出配列と相補性をもなたいことから作製されないと思われる。したがって本発明は部分的に、所望の機能性の、方向的に連結された組換え核酸分子を得るための手段を提供する。
【0126】
PCRなどの増幅反応をこのように使用することは、対象コンストラクトを同定するために本発明の方法で作製される多数の核酸分子をスクリーニングする手段となる。自動化された高スループットの解析でPCRに使用する方法は極めて一般的な方法で、またよく知られているので、本発明の方法は、高スループット系における用途に容易に適合できると解釈される。このような系を用いて、多数のコンストラクトを平行してスクリーニングすることができる。また、部分反応産物または不完全な反応産物を同定して廃棄することで、コンストラクトの特徴を決定したり、コンストラクトの機能をさらに別の実験で検討したりするために要する時間および費用を無駄にしないで済む。
【0127】
第一のds核酸分子が第一のトポイソメラーゼを含むものの、第二のトポイソメラーゼもしくはトポイソメラーゼ結合部位を含まない、本発明の方法で作製される組換え核酸分子は一般に線状であり、他の局面では本発明の方法で環状の組換え核酸分子を作製することができる。しかし線状分子として作製される、方向的に連結された組換え核酸分子は、例えばベクターとして使用する場合に環状化することができる。また本発明の方法で作製される線状の方向的に連結された組換え核酸分子は、プラスミドベクター、またはウイルスベクター(バクテリオファージ、バキュロウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、セムリキ森林ウイルス、およびアデノ関連ウイルスのベクターなど)の場合があるベクター(いずれもよく知られており、業者から購入することができる)にクローニングすることができる(Invitrogen Corp.、La Jolla CA;Promega、Madison WI;Stratagene、La Jolla CA;GIBCO/BRL、Gaithersburg MD)。
【0128】
本発明の方法により、検出目的で核酸分子を、核酸分子がプローブとして有用となるように、化合物、または低分子量の有機物質もしくは無機物質で標識することもできる。例えば3'端にトポイソメラーゼ認識部位、またはその切断断片を有する第一のds核酸分子は、アビジンもしくはストレプトアビジンを用いて検出可能なビオチン、蛍光化合物(例えばCy3、Cy5、Fam、フルオレセイン、またはローダミン)、放射性核種(例えば硫黄35、テクネチウム99、リン32、またはトリチウム)、常磁性スピン標識(例えば炭素13)、化学発光化合物、認識抗体を用いて検出可能なエピトープ(例えばペプチド性エピトープ)などの検出用化合物に結合した状態とすることで、本発明の方法によって、方向的に連結される2本鎖の組換え核酸分子を作製することで、作製された核酸分子が標識される。核酸分子を上記のような化合物で検出可能に標識する方法は、当技術分野で周知である(例えば参照として本明細書に組み入れられる、Hermanson、「生物複合体技術(Bioconjugate Techniques)」(Academic Press 1996)を参照)。細胞区画化ドメインまたは検出用標識もしくはタグをコードする核酸分子、または転写もしくは翻訳の発現制御領域を含む核酸分子を含む、本明細書に開示された配列、または当技術分野で周知の配列は、本明細書に開示されたキットの有用な成分になると解釈される。
【0129】
第二のトポイソメラーゼもしくはトポイソメラーゼ認識部位ではなく、第一のトポイソメラーゼを有する第一のds核酸分子が使用される本発明の方法は、部位特異的に標的DNA配列に挿入することができる、発現可能な組換え核酸分子の作製に特に有用である。標的DNA配列は、任意のDNA配列、特にゲノムDNA配列、また好ましくは、ヌクレオチド配列の一部またはすべてが既知である遺伝子の場合がある。この方法は、第一の末端および第二の末端を有し、またポリペプチド(例えば選択マーカー)をコードする第一のds核酸分子(第一のds核酸分子は両端において相補的な配列を含む)を使用すること;ならびにコンストラクトが挿入される部位に対して上流および下流に位置する配列から作製される、第一のds核酸分子を、第一のPCR増幅産物および第二のPCR増幅産物(各増幅産物はそれぞれ、トポイソメラーゼ認識部位、および本開示に記載された配列を元に選択される5'標的配列を含む)に方向的に連結することにより実施することができる。例えば第一の増幅産物および第二の増幅産物は、トポイソメラーゼによる切断によって、それぞれが第一のds核酸分子の所定の末端に連結されるように、異なる5'標的配列を有する。
【0130】
第一の増幅産物および第二の増幅産物は、二組のPCRプライマー対を用いて作製される。二組のPCRプライマー対は、Taqポリメラーゼなどの適切なポリメラーゼ、および増幅対象配列を含むテンプレートの存在下において、同プライマーが、選択マーカーの挿入部位に対して上流にあって隣接する、また下流にあって隣接する標的DNA配列の一部を増幅するように選択される。またPCRプライマー対の組は、増幅産物がトポイソメラーゼ認識部位を含み、部位特異的なトポイソメラーゼによる切断後に、末端における5'突出配列が選択マーカーに方向的に連結されるように設計される。したがって第一のPCRプライマー対は、1)増幅産物が方向的に連結される選択マーカーの末端の5'相補配列に相補的なヌクレオチド配列、トポイソメラーゼ認識部位に相補的なヌクレオチド配列、および挿入部位の上流に位置する標的DNA配列の3'配列に相補的なヌクレオチド配列を5'→3'の方向に含む第一のプライマー;ならびに、2)第一のプライマーが相補的となる、3'配列の上流(すなわち挿入部位の下流)に位置する標的ゲノムDNAのヌクレオチド配列を含む第二のプライマーを含む。第二のPCRプライマー対は、1)方向的に連結される選択マーカーの末端の5'相補配列に相補的なヌクレオチド配列、トポイソメラーゼ認識部位に相補的なヌクレオチド配列、および標的DNA配列の5'配列のヌクレオチド配列(標的ゲノムDNAの5'配列は、第一のPCRプライマー対の第一のプライマーが相補的となる標的DNA配列の3'配列の下流に位置する)を5'→3'方向に含む第一のプライマー;ならびに第一のプライマーに含まれる標的ゲノムDNAの5'配列の下流に位置する標的DNA配列の3'配列に相補的なヌクレオチド配列を含む第二のプライマー対の第二のプライマーを含む。標的ゲノムDNAに相補的なプライマーの配列が、標的DNAの配列をふまえて選択されることを当業者であれば理解すると思われる。
【0131】
選択マーカーを含む第一のds核酸分子、第一の増幅産物および第二の増幅産物(第二のds核酸分子および第三のds核酸分子)、およびトポイソメラーゼ(トポイソメラーゼをチャージした分子を除く)を接触させると、方向的に連結された組換え核酸分子が得られる。ニックの連結に続き、作製された組換え核酸分子は、望ましいならば、標的ゲノムDNAの上流および下流の配列に特異的なPCRプライマーを用いてさらに増幅されることで、機能性コンストラクトのみが確実に増幅される。作製された方向的に連結された組換え核酸分子は、ゲノム中で相同組換えを起こさせて、例えば、細胞内における遺伝子の機能をノックアウトしたり、作製された組換え核酸分子を含む細胞に新しい表現型を加えたりする際に有用である。この方法はまた、ゲノム中に安定に維持された作製された組換え核酸分子を有するトランスジェニック非ヒト生物を作製する際に使用することができる。
【0132】
トポイソメラーゼまたはトポイソメラーゼ認識部位を、例えば第二の末端ではなく第一の末端に有する第一のds核酸が関与する本発明の方法は、アダプター配列またはリンカー配列を、複数の第二(または他)のds核酸分子のそれぞれを含む、対象となる第二のds核酸分子の一端もしくは両端に共有結合で連結する段階にも有用である。例えば、第一のds核酸分子の両端にリンカーを加えることが望ましい場合、本発明の方法は、トポイソメラーゼを、第二のds核酸分子および第三のds核酸分子のそれぞれの5'端に位置する突出配列に相補的な各5'端もしくはその近傍における5'の相補的な配列を有する第一のds核酸分子;およびそれぞれ、トポイソメラーゼ認識部位を適切な3'端に含み、また5'突出配列を、トポイソメラーゼ認識部位を含む末端もしくはその近傍に含む第二のds核酸分子および第三のds核酸分子に接触させることで実施することができる。適切な末端は、第一のds核酸分子にリンカーが方向的に連結される末端である。このような方法を実施する際に、第二の核酸分子、また少なくとも第三の核酸分子を含むリンカーの配列は同じ場合もあれば異なる場合もある。
【0133】
5'標的配列およびトポイソメラーゼを第一の末端にもつ第一のds核酸分子が関与する本発明の方法は、第一のds核酸分子を、少なくとも第二のds核酸分子に方向的または非方向的に連結するように実施することができる。この方法により典型的には、第一のds核酸分子と第二のds核酸分子が方向的に連結される。しかし、この方法では、第一のds核酸分子と第二のds核酸分子が以下の態様において、非方向的に連結される場合がある:1)第二のヌクレオチド配列が、第一のds核酸分子の第二の末端の5'端もしくはその近傍に存在する場合、すなわち第二のds核酸分子の第二の末端において、5'の相補的なヌクレオチド配列とハイブリダイズ可能な場合;ならびに、2)ヌクレオチド配列が、第二のds核酸分子の第一の末端および第二の末端の両方の5'端もしくはその近傍に存在する場合、すなわち第一のds核酸分子の第一の末端において、5'突出とハイブリダイズ可能な場合。非方向的に連結する段階が関与するこれらの態様では、第一のds核酸分子の第二の末端、および第二のds核酸分子の第二の末端はいずれかが平滑末端であるか、または突出を含む。
【0134】
第三のds核酸分子を第二のds核酸分子に連結させる段階が関与する態様では、以上の方法で、方向的または非方向的に二つの核酸分子を連結することができる。この方法は典型的には、第二のds核酸分子と第三のds核酸分子を方向的に連結する際に用いられる。しかし、この方法では、第三のds核酸分子と第二のds核酸分子が以下の態様において、非方向的に連結される場合がある:1)第二のヌクレオチド配列が、第三のds核酸分子の第二の末端の5'端もしくはその近傍に存在する場合、すなわち第二のds核酸分子の第二の末端において、5'の相補的なヌクレオチド配列とハイブリダイズ可能な場合;ならびに、2)ヌクレオチド配列が、第二のds核酸分子の第一の末端および第二の末端の両方の5'端もしくはその近傍に存在する場合、すなわち第三のds核酸分子の第一の末端において、5'突出とハイブリダイズ可能な場合。非方向的に連結する段階が関与するこれらの態様では、第三のds核酸分子の第二の末端、および第二のds核酸分子の第二の末端はいずれかが平滑末端であるか、または突出を含む。
【0135】
本発明は、第一の末端および第二の末端を有する第一のds核酸分子(第一の末端は、5'突出、および共有結合で結合された状態のトポイソメラーゼを3'端に有する);ならびに第一の平滑末端および第二の末端を有する第二のds核酸分子(第一の平滑末端は、第一の5'突出に相補的な第一の5'ヌクレオチド配列、および第一の5'ヌクレオチド配列に相補的な第一の3'ヌクレオチド配列を有する)を含む組成物も提供する。このような組成物では、第二のds核酸分子の第一の平滑末端の第一の5'ヌクレオチド配列は、第一の核酸分子の第一の末端の第一の5'突出とハイブリダイズ可能である(第二のds核酸分子の第一の平滑末端の第一の3'ヌクレオチド配列が置換される)。このような組成物に含まれる第一のds核酸分子は、第二の5'突出を第二の末端にさらに有する場合があり、また第二のds核酸分子の第二の末端は、第二の5'突出に相補的な第二の5'ヌクレオチド配列、および第二の5'ヌクレオチド配列に相補的な第二の3'ヌクレオチド配列をさらに含む場合がある。
【0136】
本発明は、ds核酸分子を方向的または非方向的に連結する際に有用な1種または複数(例えば1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種など)の試薬を含むキットも提供する。一つの態様では、本発明のキットは、第一の末端および第二の末端を有するds核酸分子を含む(第一の末端は、第一の5'突出および3'端に共有結合で結合された状態の第一のトポイソメラーゼを含み、また第二の末端は、3'端に共有結合で結合された状態の第二のトポイソメラーゼを含み、また第二の5'突出、平滑末端、3'ウリジン突出、もしくは3'チミジン突出を含む(第一の5'突出は第二の5'突出と異なる)。同じ場合もあれば異なる場合もあるトポイソメラーゼもキットの成分となりうる。キットに含まれるds核酸分子は、ベクターである場合があるが、必ずしもベクターである必要はなく、また1個または複数(例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個など)の発現制御領域、ならびにキットの成分を使用するための指示書を含む場合がある。
【0137】
本発明のキットは、複数の第二のds核酸分子も含む場合がある(複数の各ds核酸分子は、第一の平滑末端を有し、また第一の平滑末端は、第一のds核酸分子の第一の5'突出に相補的な5'ヌクレオチド配列を含む)。複数の第二のds核酸分子は、複数の転写調節領域、翻訳調節領域、またはこれらの組み合わせの場合があるほか、ペプチドタグや細胞区画化ドメインなどの複数のペプチドをコードする場合がある。
【0138】
キットのds核酸分子成分は例えば、クローニングベクター、または発現ベクターなどの直線化されたベクターの場合がある。望ましいならば、このようなキットは、異なる発現制御領域、またはタグもしくは他の検出用分子、もしくは細胞区画化ドメインをコードする配列などがあるがこれらに限定されない他の配列をそれぞれ含む複数のds核酸分子を含む場合がある。このような異なる領域は、異なる種類の特定の制御領域、例えば構成型もしくは誘導型のプロモーター、または組織特異的なプロモーターの場合があるか、または例えば転写および翻訳の発現制御領域やエピトープタグなどを含む異なる種類の領域の場合がある。このようなds核酸分子は、トポイソメラーゼで活性化されたものである場合もあれば、トポイソメラーゼで活性化される場合もあり、また5'突出配列、またはトポイソメラーゼによる活性化後に5'突出配列となる配列を含む。また複数のds核酸分子は、特定の発現制御領域に特有な、または複数の関連発現制御領域(例えば複数の異なるプロモーター領域)に共通した、5'突出配列を有する場合がある。ds核酸分子の5'突出配列は、ds核酸分子上に含まれる1個もしくは複数の発現制御領域が、使用可能に方向的に連結されて、有用な機能、例えばコザック配列を含む領域を含む配列を提供可能なように設計することが可能であり、また翻訳開始部位を含む領域は、同領域が本発明の方法で使用可能に方向的に連結可能なように、相補的な5'突出を有する場合がある。
【0139】
本発明は、本明細書に記載された方法に使用する核酸分子を連結するためのキットをさらに提供する。したがって本発明のキットは、本明細書に記載された方法を実施するための1種または複数の成分を含む場合がある。特定の態様では、本発明のキットは、キット成分の使用に関する指示書、1種もしくは複数の緩衝液、1種もしくは複数の核酸分子(例えば、5'突出、3'突出、5'突出と3'突出、2個の3'突出、2個の5'突出などを有する1種もしくは複数の核酸分子)、1種もしくは複数のトポイソメラーゼ、1種もしくは複数のリガーゼ、1種もしくは複数のリコンビナーゼ、5'突出および/または3'突出を有する分子を調製するための1種もしくは複数のアダプターリンカー、および/または本発明の方法を実施するための1個もしくは複数の容器からなる群より選択される1種もしくは複数の成分を含む場合がある。
【0140】
以下の実施例は、本発明を説明することを意図しており、制限する意図はない。
【0141】
実施例1
本発明の好ましい態様では、トポイソメラーゼをチャージしたds核酸分子の作製は、最初に市販のクローニングベクターを入手することで開始される。このようなベクターの一つが、特異的に設計された領域を含む環状スーパーコイルベクターpUni/V5-His バージョンA(Invitrogen Corp、Carlsbad、CA)である。このような領域は、真核生物宿主でmRNAの安定性を高めるためのBGHポリアデニル化配列、T7転写終結領域、R6Kγ DNA複製起点、ならびにカナマイシン耐性遺伝子および抗生物質耐性選択用のプロモーターを含む。またpUni/V5-His バージョンAは、一連の制限エンドヌクレアーゼ認識部位をコードする合成DNA配列であるマルチクローニングサイトを含む。このマルチクローニングサイトは、ベクターの特定の位置にDNAをクローニングするために作製される。また、ベクターのマルチクローニングサイト内には、エンドヌクレアーゼ認識部位に対して5'側に挿入されることでCreリコンビナーゼによるさまざまな他の発現ベクターへの融合を促進するloxP部位も存在する(Echo(商標) Cloning System、Invitrogen Corp.、Carlsbad、CA)。任意選択のC末端のV5エピトープタグは、発現される融合タンパク質の、抗V5抗体を用いた検出を容易にするために存在させる。任意選択のC末端のポリヒスチジン(6×His)タグも、発現されるタンパク質の迅速な精製および検出を可能とするために存在させる。loxP部位の下流に存在する、細菌由来のリボソーム結合部位は、大腸菌における転写の開始を可能とする。諸領域の以上のような組み合わせは、pUni/V5-His バージョンAクローニングベクターに特異的であるが、多くの類似したクローニングベクターおよび発現ベクターが市販されており、当技術分野で周知の方法で配列から組み立てることができる。pUni/V5-His バージョンAは、2.2 kbの2本鎖プラスミドである(図3および5を参照)。
【0142】
pUni/V5-His バージョンAに由来する、トポイソメラーゼIをチャージしたクローニングベクターの構築は、エンドヌクレアーゼによるベクターの切断と、それに続く合成オリゴヌクレオチドとの相補的アニーリング、およびワクシニアトポイソメラーゼIによるヘテロ2本鎖の部位特異的な切断で達成される。SacIおよびEcoRIは、pUni/V5-His バージョンAのマルチクローニングサイト内に存在する、多くある制限エンドヌクレアーゼ切断部位の二つである(図3参照)。pUni/V5-His バージョンAを、対応する制限酵素SacIおよびEcoRIで切断すると、ベクター上に付着末端が生じる(5'-AGCT-3'および5'-AATT-3'、図6)。これらの酵素は、ニューイングランドバイオラボズ(New England Biolabs)(Beverly、MA. カタログ番号RO156S、SacIおよびRO101S、EcoRI)を始めとする数多くの業者から容易に入手することができる。切断後のpUni/VS-His バージョンAは、イソプロパノール沈殿法で、切断断片と容易に分離することができる。DNAを切断して単離する以上の方法および他の方法は当技術分野で周知である(Sambrookら、(1989)、「分子クローニング、実験マニュアル(Molecular Cloning, A Laboratory Manual)」第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press;5.28〜5.32.)。
【0143】
精製後の切断後のベクターを、2種の特異的なオリゴヌクレオチドアダプターおよびT4 DNAリガーゼとインキュベートする。アダプターは、ベクターのSacI末端およびEcoRIの末端に適合する末端を含むオリゴヌクレオチドの2本鎖である。適切な配列の他のアダプターオリゴヌクレオチドを、異なる制限酵素切断部位を有する他のベクター用に作製することが可能であることを当業者であれば容易に理解すると思われる。T4 DNAリガーゼとのインキュベーションに続き、連結したアダプターを含むベクターをイソプロパノールで精製する。
【0144】
TOPO D1およびTOPO D2とのアニーリングの結果得られるアダプター2本鎖は、1本鎖のEcoRIの突出を一方の末端に有し、また12ヌクレオチドの1本鎖突出をもう一方の末端に有する。
【0145】
第一のアダプターオリゴヌクレオチド(TOPO D1)は、EcoRIの付着末端3'-TTAA-5'に相補性を有する。またTOPO D1は、3'端の16 bp上流に位置する、トポイソメラーゼのコンセンサスペンタピリミジン領域5'-CCCTTを含む付加的な24 bpを含む。TOPO D1アダプターオリゴの残りの配列および長さは多様であり、研究者の特定のニーズに合わせて修飾することができる。この態様では、使用アダプターの全配列は
Figure 0005043277
である。
【0146】
第二のアダプターオリゴヌクレオチド(TOPO D2)は、TOPO D1に完全に相補的でなければならない。TOPO D2は、直線化されたベクターの下の鎖が延長している、EcoRIの付着末端flapの5'側とまさに相補的である。またTOPO D2は、標的配列である配列3'-GTGG、およびトポイソメラーゼ切断後に、クローニング目的の1本鎖突出を含む。この態様では、1本鎖突出は、mRNAへのリボソーム結合の効率を高めることによって真核細胞におけるORFの発現を促すことが知られているコザック配列に相補的となるように選択されたが、配列および長さは、使用者の特定のニーズに合わせて大きく変動する。TOPO D2の全配列は
Figure 0005043277
である。
【0147】
上記と同様に、オリゴヌクレオチドTOPO 4およびTOPO 5とのアニーリングの結果得られるアダプター2本鎖は、1本鎖のSacIの突出を一方の末端に有し、また12ヌクレオチドの1本鎖突出をもう一方の末端に有する。
【0148】
第三のアダプターオリゴヌクレオチド(TOPO D5)は、SacIの付着末端3'-TCGA-5'に対する相補性を有する。TOPO D1と同様に、TOPO D5は、1本鎖突出を生じる付加的な塩基を有する。長さおよび配列は、使用者のニーズに応じて変化する場合がある。この態様では、TOPO D5の配列は
Figure 0005043277
である。
【0149】
第四のアダプターオリゴヌクレオチド(TOPO D4)は、TOPO D5に完全な相補性を有し、直線化されたベクターの上の鎖が延長している、SacIの付着末端flapの5'側とまさに相補的である。TOPO D4は、トポイソメラーゼのコンセンサス配列5'-CCCTTも含む。TOPO D4アダプターオリゴの残りの配列およびサイズはさまざまであり、研究者の特定のニーズに合わせて修飾することができる。この態様では、TOPO D4の配列は
Figure 0005043277
であり、付加的な12 bpの1本鎖突出を含む。
【0150】
これらのアダプターオリゴヌクレオチドは、ホスホアミダイト法(Caruthersら、Meth.Enzymol.154:287〜313、1987)を含む任意の数多くの手法で化学合成することができる。オリゴの化学合成に関するこの方法および他の方法は当技術分野で周知である。
【0151】
精製後の切断後のベクターとアダプターオリゴヌクレオチドとの相補的アニーリングは、T4 DNAリガーゼの存在下におけるDNAのインキュベーションによって行われる。典型的な連結反応は、リガーゼおよび適切な反応緩衝液の存在下における、クローニングベクターと適切なDNA断片とのインキュベーションによって実施される。連結反応用の緩衝液は、反応のエネルギーとなるATP、ならびにジチオスレイトールなどの還元試薬、およびトリス-HClなどのpH安定化剤を含む必要がある。クローニングベクターとDNA断片との濃度の比は、各反応によって変わり、決定するための公式は文献に多く記載されている(例えば「プロトコールと使用ガイド(Protocols and Applications Guide)」(1991)、Promega Corporation、Madison、WI、p.45を参照)。T4リガーゼは、インキュベーション中に、隣接する5'リン酸と3'ヒドロキシル末端間のホスホジエステル結合の形成を触媒する。付着末端は一般に12〜15℃で30分で連結されるが、平滑末端の連結には室温で4〜16時間が必要である(Ausubelら、(1992)、第2版;「分子生物学における簡単なプロトコール(Short Protocols in Molecular Biology)」、John Wiley & Sons, Inc.、New York、NY、3.14〜3.37)。しかし、パラメータの範囲は各実験で変動する。この態様では、精製後の切断後のpUni/V5-His バージョンA、およびアダプターオリゴは、T4リガーゼおよび適切な緩衝液の存在下で、12.5℃で16時間インキュベートされた。結果として得られた直線化されてアダプターが付加されたベクターは、塩基対の相補性およびT4リガーゼで触媒されたホスホジエステル結合を介してアダプターオリゴヌクレオチドに結合した、精製されたクローニングベクターを含む(図7参照)。
【0152】
アダプターを付加したベクターのトポイソメラーゼによる効率的な修飾には、TOPO D1およびTOPO D4の1本鎖突出上に2本鎖DNAを作製するために、アニーリング用オリゴの付加が必要である。ワクシニアウイルスに由来するトポイソメラーゼIは、最初に非共有結合的に2本鎖DNAに結合する。同酵素は次に2本鎖に沿って拡散し、この拡散は、コンセンサスのペンタピリミジン配列5'-CCCTTに至り、共有結合で結合して、トポイソメラーゼに適合させた複合体が形成されるまで続く(Shumanら、米国特許第5,766,891号を参照)。アダプターが付加されたベクターの修飾は、DNAリガーゼの非存在下で進み、アダプターが付加されたベクターとアニーリング用オリゴとの間のホスホジエステル結合の形成を妨げる。これは、非切断可能な鎖におけるホスホジエステル結合が、切断時に脱離基の解離を妨げるためである(図8および9)。
【0153】
アニーリング用オリゴヌクレオチド(TOPO D3)は、TOPO D1およびTOPO D4の1本鎖のDNA突出に対する相補性をもっていなくてはならない。この態様では、突出はいずれも以下の配列を有する:
Figure 0005043277
。したがってTOPO D3は、アダプターオリゴの1本鎖突出に対する完全な相補性をもつ配列
Figure 0005043277
、および付加的な3 bpの突出3'-AAC-5'をもつ。
【0154】
トポイソメラーゼの存在下における、アダプターが付加されたベクターとアニーリング用オリゴとのインキュベーションにより、トポイソメラーゼが非共有結合により結合可能な2本鎖のDNAが得られる(図10)。結合した状態のトポイソメラーゼは、促進型の拡散機構により、5'-CCCTT認識モチーフを見つけるまで2本鎖DNAを探索する。このモチーフの3'側にある切断可能な鎖のホスホジエステルバックボーンの切断は、好ましいオリゴヌクレオチド切断配列5'-CCCTT↓の3'リン酸原子に対する求核攻撃で触媒されて、3'ホスホチロシル結合による、DNAと酵素との共有結合が生じる(Shumanら、(1989) Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 86、9793〜9796を参照)。切断可能な鎖の切断により、5'-CCCTTモチーフの下流の3'端のアダプターオリゴを含む2本鎖の脱離基、およびアニーリング用オリゴTOPO D3が生じる。脱離基は、ホスホチロシル結合の5'ヒドロキシルを介した攻撃を介して、ベクターのトポイソメラーゼで修飾された末端に再連結可能であるが、この反応は、脱離基がベクターに共有結合で結合しない場合には望ましくない。T4ポリヌクレオチドキナーゼおよびATPを切断/再連結反応へ添加すると、平衡が、捕捉されたトポイソメラーゼが蓄積する側に向かってさらにシフトする。これはキナーゼが、脱離基の5'ヒドロキシルをリン酸化して再結合を妨げるためである(Ausubelら、(1992)、第2版;「分子生物学における簡単なプロトコール(Short Protocols in Molecular Biology)」、John Wiley & Sons, Inc.、New York. NY、3.14〜3.30)。結果として生じた直線化されたベクターは、TOPO D4/D3の脱離基に由来する平滑末端、およびTOPO D1/D3の脱離基に由来する末端を有する1本鎖突出を含む(図11)。直線化されたクローニングベクターの末端はいずれも、トポイソメラーゼがチャージされると、迅速で効率的かつ方向的なトポイソメラーゼを介したアクセプター分子の挿入が可能となる。
【0155】
上記の例では、トポイソメラーゼで修飾された方向的クローニングベクターを作製するpUni/V5-His バージョンAの修正について詳述したが、このような方法を、任意のプラスミド、コスミド、ウイルス、または他のDNAに適用する方法を当業者であれば理解すると思われる。この例が、配列5'-GGTG-3'を含む5'の1本鎖突出を含むベクターを示していることは重要である。しかし、アダプター2本鎖およびアニーリング用オリゴヌクレオチドを設計することで、任意のベクターの一端または両端における任意の配列または長さの突出を特別設計することが当業者であれば可能になると思われる。
【0156】
具体的には、任意のプラスミド、コスミド、ウイルス、または他のDNAを修飾して、利便性を考慮した任意の配列および長さをもつ1本鎖突出をもたせることが可能である。基本的な段階は以下の通りである:最初にベクターを対象に、対象DNAを直線化することが明らかな処理を行う。共通の手順には、制限酵素による切断、およびトポイソメラーゼII処理などがあるがこれらに限定されない。直線化した後に、特別の1本鎖突出を添加する。上記の例では、相補的なオリゴヌクレオチドを、制限酵素切断物の付着末端に添加して、所望の1本鎖突出を得る。しかし、1本鎖突出を形成するオリゴヌクレオチドを、T4リガーゼによる平滑末端の連結により添加することもできる。この1本鎖突出配列を対象に、トポイソメラーゼIにより、1本鎖にニックを入れる。次に、この1本鎖突出を用いて、1種または複数の相補的なヌクレオチド配列を含むPCR産物を方向的に挿入することができる。
【0157】
同様に、トポイソメラーゼによる修飾は、任意の2本鎖プラスミド、コスミド、ウイルス、または他のDNA断片に適用可能である。トポイソメラーゼIを2本鎖DNAに結合させる方法は当技術分野で周知である(Shumanら、米国特許第5,766,891号を参照)。2本鎖DNA断片上におけるトポイソメラーゼの戦略的な配置は、トポイソメラーゼIのコンセンサス配列を組込むことで決定される(Shumanら、米国特許第5,766,891号を参照)。トポイソメラーゼIが2本鎖DNAに結合し、切断可能な鎖にニックを入れることで、所定の1本鎖突出配列が明らかとなり、侵入してくるPCR産物を正しい1本鎖突出を介した方向に連結する。
【0158】
実施例2
別のプラスミドに対する、本発明の応用の一例として、pCR(登録商標)2.1(図4および12)を修飾して、特別の1本鎖配列をもつトポイソメラーゼIに適合させたベクターを作製した。
【0159】
pCR(登録商標)2.1プラスミドは3.9 kbのT/Aクローニングベクターである。このベクターの配列には、特別に設計されたいくつかの領域が含まれる。領域群には、f1複製起点、ColE1複製起点、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、LacZ-α断片、およびLacZ-α断片内に位置して組換えプラスミドの青色-白色による選択を可能とするマルチクローニングサイトなどがある。pCR(登録商標)2.1プラスミドのマルチクローニングサイトの配列(図4)は以下の配列を含む;HindIII、SpeI、およびEcoRIを含むがこれらに限定されない多くの制限酵素の切断部位;M13フォワードプライマーおよびリバースプライマー、ならびにT7 RNAポリメラーゼのプロモーター。
【0160】
特別の1本鎖配列を有するトポイソメラーゼIをチャージしたベクターの構築は、エンドヌクレアーゼによる切断と、これに続く、合成オリゴヌクレオチドを用いた相補的アニーリング、およびワクシニアウイルスのトポイソメラーゼIによるヘテロ2本鎖の部位特異的な切断を含む。制限酵素HindIII、SpeI、およびEcoRIによりpCR(登録商標)2.1プラスミドを切断すると、ベクター上にHindIIIおよびEcoRIの付着末端が残される(図13)。pCR(登録商標)2.1のHindIII切断部位の下流にある解離断片は、サイズを小さくするためにさらにSpeIで切断される。断片のサイズを小さくすることで、切断後のベクターの精製を容易にして、より小さな切断片をイソプロパノール沈殿法で除くことができる。以上の酵素は、ニューイングランドバイオラボズ(New England Biolabs)を始めとする多くの業者から容易に入手できる(Beverly、MA、カタログ番号;RO104S、HindIII;RO133S、SpeI;RO101S、EcoRI)。DNAの切断および単離の方法は当技術分野で周知である(Sambrookら、前記、1989)。
【0161】
精製された切断後のベクターを、4種のアダプターオリゴヌクレオチドおよびT4 DNAリガーゼとインキュベートする。アダプターオリゴヌクレオチドは、HindIIIの付着末端、EcoRIの付着末端、または相互に相補性をもつように設計する。T4 DNAリガーゼとのインキュベーションに続き、アダプターが付加されたベクターをイソプロパノールを用いて精製する。
【0162】
第一のアダプターオリゴヌクレオチド(TOPO H)は、HindIIIの付着末端3'-TCGA-5'に対する相補性を有する。またTOPO Hは、3'端の19 bp上流に位置する、トポイソメラーゼのコンセンサスペンタピリミジン配列5'-CCCTTを含む付加的な24 bpを有する。TOPO Hアダプターオリゴの残りの配列および長さはさまざまであり、改変することで研究者の特定のニーズに合わせることができる。この態様では、使用されるアダプターの全配列は、
Figure 0005043277
である。
【0163】
第二のアダプターオリゴヌクレオチド(TOPO 16)は、TOPO Hに完全に相補性でなければならない。TOPO 16は、直線化されたベクターの下の鎖が延長している、HindIIIの付着末端の5'側とまさに相補的である。またTOPO 16は、方向的クローニング用に選択される1本鎖配列である配列3'-TAAGを含む。TOPO 16の全配列は、
Figure 0005043277
である。
【0164】
第三のアダプターオリゴヌクレオチド(TOPO 1)は、EcoRIの付着末端3'-TTAA-5'に相補性を有する。TOPO Hと同様に、TOPO 1は、3'端の12 bp上流に位置するトポイソメラーゼIのコンセンサス配列CCCTTを含む付加的な塩基を有する。TOPO 1の長さおよび配列は、使用者のニーズに応じて変動することがある。この態様では、TOPO 1の配列は、
Figure 0005043277
である。
【0165】
第四のアダプターオリゴヌクレオチド(TOPO 2)は、TOPO 1に対して完全な相補性を有し、直線化されたベクターの上の鎖が延長している、EcoRIの付着末端の5'側とまさに相補的である。この態様では、TOPO 2の配列は、
Figure 0005043277
である。
【0166】
精製後の切断ベクターとアダプターオリゴヌクレオチドとの相補的アニーリングは、T4 DNAリガーゼの存在下におけるDNAのインキュベーションによって行われる。T4リガーゼは、インキュベーション中に、隣接する5'リン酸と3'ヒドロキシル末端間におけるホスホジエステル結合の形成を触媒する。この態様では、精製後の切断後のpCR(登録商標)2.1およびアダプターオリゴを、T4リガーゼおよび適切な緩衝液の存在下で16時間かけて12.5℃でインキュベートした。結果として得られた、直線化されてアダプターが付加されたベクターは、塩基対の相補性、およびT4リガーゼが触媒するホスホジエステル結合によってアダプターオリゴヌクレオチドに結合した、精製後のクローニングベクターを含む(図13)。連結法は文献に多く記載されている(Ausubelら、(1992)、第2版;「分子生物学における簡単なプロトコール(Short Protocols in Molecular Biology)」、John Wiley & Sons, Inc.、New York、NY、3.14〜3.37を参照)。
【0167】
アダプターが付加されたベクターにトポイソメラーゼをチャージする際には、アニーリング用オリゴヌクレオチドを付加して、TOPO HおよびTOPO 1の1本鎖突出上に2本鎖DNAを作製することが必要である。アダプターが付加されたベクターに対するチャージをDNAリガーゼの非存在下で行うと、アダプターが付加されたベクターとアニーリング用オリゴとの間におけるホスホジエステル結合の形成が妨げられる。これは、非切断可能な鎖のホスホジエステル結合が、切断に伴う脱離基の解離を妨げるからである(図9参照)。
【0168】
アニーリング用オリゴヌクレオチド(TOPO 17)は、TOPO Hの1本鎖DNA突出に対する相補性を有していなければならない。この態様では、突出の配列は
Figure 0005043277
である。したがってTOPO 17の配列3'-GCTATCAC-5'は、アダプターオリゴヌクレオチドの1本鎖突出に対して完全な相補性を有する。
【0169】
アニーリング用オリゴヌクレオチド(TOPO 3)は、TOPO 1の1本鎖DNAの突出に対する相補性を有していなければならない。この態様では、突出の配列は
Figure 0005043277
である。したがってTOPO 3の配列
Figure 0005043277
は、アダプターオリゴヌクレオチドの1本鎖突出、および付加的な3 bpの突出5'-CAA-3'に対して完全な相補性を有する。
【0170】
トポイソメラーゼの存在下における、アダプターが付加されたベクターとアニーリング用オリゴとのインキュベーションにより、トポイソメラーゼが非共有結合的に結合可能な2本鎖DNAが得られる(図14)。結合した状態のトポイソメラーゼは、促進型の拡散機構により、5'-CCCTT認識モチーフを見つけるまで2本鎖DNAを探索する。このモチーフの3'側にある切断可能な鎖のホスホジエステルバックボーンの切断は、DNAと同酵素との3'-ホスホチロシル結合による共有結合を生じる(Shumanら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 86:9793〜9796、1989)。切断可能な鎖の切断により、5'-CCCTTモチーフおよび相補的アニーリング用オリゴヌクレオチドの下流にアダプターオリゴの3'端を含む2本鎖の脱離基が生じる。脱離基は、トポイソメラーゼが付加されたベクターに、ホスホチロシル連結の5'ヒドロキシルに対する攻撃により再び連結することがある(この攻撃もトポイソメラーゼにより触媒される)。平衡反応へT4ポリヌクレオチドキナーゼを添加すると、キナーゼによる脱離基の5'ヒドロキシルのリン酸化によって逆反応が妨げられる(Ausubelら、(1992)、第2版;「分子生物学における簡単なプロトコール(Short Protocols in Molecular Biology)」、John Wiley & Sons, Inc.、New York、NY、3.14〜3.30)。結果として得られた直線化されたベクターは、TOPO 1/3の脱離基に由来する平滑末端、およびTOPO H/17の脱離基に由来する1本鎖の配列末端を含む(図15)。直線化されたクローニングベクターの末端のいずれも、トポイソメラーゼをチャージすることで、アクセプター分子への迅速で効率的かつ方向的なトポイソメラーゼ介在型の挿入が可能となる。
【0171】
本発明の方向的クローニング
本発明は、DNAの方向的クローニングの方法も提供する。以下の例では、pUni/V5-His バージョンAから構築された、本発明の、トポイソメラーゼをチャージしたds核酸ベクターを、ジーンストーム(GeneStorm)(商標) 発現レディクローン(Expression Ready Clones) (Invitrogen Corp.、Carlsbad、CA)に由来するORFの方向的挿入に使用した。修飾型pUniベクターを、これらのORFのクローニング用として選択した。というのは、トポイソメラーゼによるベクターの切断により1本鎖突出となる付加された標的配列には、ORFの発現を促進することが知られているコザック配列に対する相同性があるためである。しかしこの前に、任意のプラスミド、コスミド、ウイルス、または他のDNAを修飾することで、必要な1本鎖配列をもたせることができることに注意されたい。同様に、任意のDNA断片を修飾して、ベクターの任意の1本鎖突出に対して相同な配列をもたせることが可能である。重要な点は、1本鎖突出の配列が、方向的クローニングの効率に影響を及ぼしうることである。例えばGC含量が低い1本鎖突出は、アニーリングの安定性が低く、またクローニングされるDNA断片の両端に対して高い相補性を有する1本鎖突出は、DNA挿入配列の方向を一定にする能力を弱める。したがって、1本鎖突出の配列は、以上の問題や似たような問題を避けるように慎重に設計すべきである。
【0172】
実施例3
本発明は、PCR産物を、本発明の方法で構築されたベクターへ方向的に挿入する際に特に有用である。所望の挿入配列のPCR増幅では、PCRプライマーの設計は、本発明の、トポイソメラーゼをチャージしたds核酸ベクターに方向的にクローニングされる、同定された挿入配列に相補的になるように行う。DNAのコード鎖の上流に結合するように設計されるプライマーは、5'端にある付加的な相補的ヌクレオチド配列で修飾される。結果として得られるPCR産物は、本発明の、トポイソメラーゼをチャージしたds核酸クローニングベクターへの、1本鎖突出を介した方向的挿入と、これに続く産物の発現を可能とする相補的な配列をもつ。
【0173】
一つの態様は、ドナーの2本鎖DNA基質に、ドナーの2本鎖DNA分子に、1本鎖突出を含む5'オリゴヌクレオチドプライマーを用いた、ドナーの2本鎖DNA分子のPCR増幅により、1本鎖突出部位を導入する段階を含む。DNAの任意の領域のPCR増幅は、所望の領域の外部の既知の領域に相補的なオリゴヌクレオチドプライマーを設計することで達成される。好ましい態様では、DNAの2本鎖領域のコード鎖に相同性を有するプライマーは、本発明の、トポイソメラーゼをチャージしたds核酸クローニングベクターの1本鎖突出に相補的な付加的なヌクレオチド配列をもつ。
【0174】
本発明を高スループットのフォーマットに用いることで、発明者らは、本発明の、トポイソメラーゼをチャージしたds核酸クローニングベクターへの方向的クローニングを目的として、ジーンストーム(商標)発現系(Invitrogen Corporation、Carlsbad、CA)から82個の既知のORFを選択したが、各使用者により、どのDNAの配列も望ましいものとして選択される可能性がある。これらのORFのそれぞれについて、コード鎖および非コード鎖に相同性を有するプライマーを設計する。PCR産物を、実施例1に記載された、トポイソメラーゼをチャージした本発明のds核酸ベクターの修飾型pUni/V5-His バージョンAに方向的にクローニングするために、所定のプライマー対のうち1本のプライマーが、ベクターに含まれる1本鎖突出に相補的なヌクレオチド配列を含むように修飾した。この実施例では、コーディングプライマーは、本発明の、トポイソメラーゼをチャージしたds核酸クローニングベクターの1本鎖突出の配列3'-GTGG-5'に相補的な、付加的な配列5'-CACC-3'を含むものを使用した。上記のORFを対象に、各プライマーを用いたPCR増幅を行うと、1本鎖突出を5'端に有する2本鎖DNA断片が得られる(図16)。発明者らは、PCR増幅にpfuポリメラーゼを使用したが、PCR反応が、pfuなどの非好熱性ポリメラーゼを用いるか、またはTaqなどの好熱性ポリメラーゼのいずれかを用いて実施した後に、平滑末端化を行って、これらの酵素がPCR産物の末端に残した非テンプレートヌクレオチドを除くことができることはよく知られている。
【0175】
この実施例では、0.1 μgの各プライマーを、ORFを含む0.05 μgのDNAと、総容量50 μlのPCR反応混合物中に混合した。プライマーおよびベクター以外に、反応混合物には、水、PCR用緩衝塩、10 mMのdNTP、および1.25単位のpfuポリメラーゼも含めた。以下の熱サイクル温度を用いた:94℃における最初の変性;次に94℃における25回の変性、55℃におけるプライマーのアニーリング、72℃における伸長(各1分);最後に72℃で15分間の伸長反応。しかし、これらのパラメータは、増幅対象の各DNA断片によって変動する。PCR増幅法は当技術分野で周知である(Ausubelら、(1992)、第2版;「分子生物学における簡単なプロトコール(Short Protocols in Molecular Biology)」、John Wiley & Sons, Inc.、New York、NY、15.3〜15.4、また3'突出の平滑末端への変換に関しては、「プロトコールと使用ガイド(Protocols and Applications Guide)」、Promega Corp.;Madison WI、43〜44、1989)。
【0176】
相補的なヌクレオチド配列を含む、PCRで増幅されたドナーの2本鎖DNAと、本発明の、トポイソメラーゼをチャージしたds核酸ベクター(修飾型pUni/V5-His バージョンA)とのインキュベーションにより、ドナーDNAの方向的クローニングが達成される。例えばジーンストーム(商標)クローンコレクション(Invitrogen Corporation、Carlsbad、CA)から82個のORFを、相補的なヌクレオチド配列を含むアダプターを付加したプライマーを用いて増幅した。記載の修飾型プライマー対による、82個のジーンストーム(商標)ORFの増幅で、相補的なヌクレオチド配列を5'端に有するPCR産物が得られた。このORFのPCR産物を、10 ngの本発明のトポイソメラーゼをチャージしたds核酸クローニングベクターと、滅菌水または塩溶液中に混合した。この反応液を緩やかに攪拌し、5分間室温(22〜23℃)でインキュベートした。5分後、発明者らは反応液を氷上に移し、ワンショット(One Shot)(登録商標)化学的形質転換(Chemical Transformation)、またはエレクトロポレーション(Invitrogen Corporation、Carlsbad、CA、カタログ番号はそれぞれC4040-10およびC4040-50)(Invitrogen TOPO Cloning Protocol、Invitrogen Corp.)を行った。トポイソメラーゼは、連結反応の触媒により、ベクターの隣接する鎖と産物を結合していた(図17)。したがって、5'端において相補的なヌクレオチド配列とともに構築されたDNA断片は、本発明の、トポイソメラーゼをチャージしたds核酸クローニングベクターに高い効率で正しく挿入された。
【0177】
本発明の特定の態様による、相補的な5'配列を含むDNA断片の、ds核酸クローニングベクターへの方向的挿入は、形質転換された宿主細胞の複数のコロニーを対象とした配列決定でみた場合に、90%を超える効率で生じる。この実施例では、ジーンストーム(商標)のORFを含む、本発明の、トポイソメラーゼをチャージしたds核酸クローニングベクターを、形質転換にコンピテントな大腸菌宿主細胞とインキュベートした。74回の形質転換反応で、ORFの、本発明のトポイソメラーゼをチャージしたds核酸クローニングベクターへの方向的クローニングが、選択した8個のコロニーのうち少なくとも7個でみられ、これらのクローニング反応の59回が、選択された8個のすべてのコロニーに方向性が認められた。全体的な方向的クローニングスコアは656個中609個であったので、方向的挿入が、選択されたクローンの93%以上でみられたことになる(表1参照)。
【0178】
実施例4
同様の例において、上述の、本発明の、トポイソメラーゼをチャージした本発明のds核酸ベクターの修正型(pCR(登録商標)2.1)を用いて、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする、PCRで得られたORFが、ベクター上に存在するlacZのα断片と同じ読み枠で方向的にクローニングされた(図4参照)。GFP遺伝子の増幅に使用したプライマーは、不可欠な相補的なヌクレオチド配列5'-ATTC-3'、およびメチオニンから翻訳を開始するための既知配列5'-ATG-3'を含む。上述した、必要なクローニング段階を用いて、PCRで増幅されたGFPをベクターに挿入し、形質転換細胞を固体寒天プレート上で生育させた。生育するコロニーはPCR産物が正しく挿入されたコロニーである(表2参照)。
【0179】
以上のデータは、クローニング分野に関する現状に比べて実質的な改善を意味し、また、高スループットの手法に高度に適合するクローニングにおける発明を示す。90%を越える方向的クローニングの効率が得られれば、使用者は、個々のクローニングされたDNA断片について2個のコロニーをスクリーニングするだけで済む。したがって96ウェルプレート上で、48個の異なるクローンを、方向的挿入についてスクリーニングするとよく、これは現行のクローニング法の400%を超えるものである。本発明は、多くの高スループットの遺伝子発現操作を簡素化し、現在のコストの数分の一で達成することができる。
【0180】
【表1】
本発明のトポイソメラーゼをチャージしたds核酸クローニングベクターを用いた、ORFの方向的クローニング
Figure 0005043277
【0181】
【表2】
本発明のトポイソメラーゼをチャージしたds核酸クローニングベクター(修飾型pCK2.1)へのGFPの読み枠の合う方向的クローニング
Figure 0005043277
【0182】
本発明は、上記の実施例に関して記載されているが、修正および変更が本発明の精神および範囲に含まれることが理解される。したがって本発明は、添付された特許請求の範囲のみに制限される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のさまざまな局面の実施に使用可能ないくつかのds核酸分子。図中、円および四角で囲んだ領域は、相互に鎖の侵入が生じるのに十分なヌクレオチド配列相補性を含む領域を示す。図1Aは、第二の分子の末端との鎖の侵入を起こさせる一つの末端をそれぞれ含む2つのds核酸分子(「第一の」の分子および「第二の」分子)(四角で囲った部分を参照)。各分子の鎖を共有結合で結びつける(例えば連結する)際にトポイソメラーゼを使用する際は、第一の分子の末端の3'側の凹んだ鎖に通常、トポイソメラーゼがチャージされる。さらにトポイソメラーゼは通常、第一の分子の末端の3'側の凹んだ鎖と、鎖の侵入が生じる第二の分子の5'鎖との共有結合による連結を触媒する(すなわち四角で囲まれて示される第二の核酸分子の5'端)。図1Bは、それぞれが、他の分子の末端との鎖の侵入を可能とする二つの末端を含む、2個のds核酸分子(「第一の」分子および「第二の」分子)。さらに、二つの核酸分子はそれぞれ、平滑末端、および5'に1本鎖突出を有する末端を有する(円および四角を参照)。したがって図に示す核酸分子は、二つの別個の鎖の侵入を、各末端における核酸の鎖の共有結合による連結によって生じることが可能であり、単一の環状核酸分子が得られる。共有結合による末端の連結は、例えば図1Aに記載されたように実施することができる。図1Cは、それぞれが、他の分子の異なる末端との鎖の侵入を可能とする二つの末端を含む、2個のds核酸分子(「第一の」分子および「第二の」分子)。さらに、これらの分子の一つは2か所の平滑末端を有し、またもう一つの分子は各末端の5'に1本鎖突出を有する。したがって図に示す分子は、二つの異なる鎖の侵入を生じることが可能であり、各末端における核酸の鎖の共有結合による連結によって環状核酸分子が形成される。共有結合による末端の連結は、図1Aに記載されたように実施することができる。図1Dは、3種のds核酸分子(「第一の」分子、「第二の」分子、および「第三の」分子)。3種のうち2種(「第一の」分子および「第三の」分子)は、他の分子(「第二」の分子)の異なる平滑末端との鎖の侵入を可能とする、1本鎖の5'突出を有する。したがって図に示す分子は、2種の異なる鎖の侵入を生じて、3種すべての分子を含む線状の核酸分子を作製する。共有結合による末端の連結は、図1Aに記載されたように実施することができる。図1Eは、図1Dに記載された分子に似た核酸分子(核酸分子の一つ(「第二の」分子)が両端に5'突出を有し、また他の二つの核酸分子(「第一の」分子および「第二の」分子)のそれぞれが2か所の平滑末端をもつ点を除く)。
【図2】 トポイソメラーゼ認識部位の上流に5'尾部を含む第一の鎖の3'端にトポイソメラーゼを含む実質的に平滑末端を有する第一のds核酸分子;および5'尾部に相補的な3'突出を有する第二のds核酸分子の鎖の侵入が関与する本発明の一つの局面(ChengおよびShuman、Mol.Cell.Biol. 20:8059〜8068、2000を参照)。図中、四角で囲まれた領域は、相互に鎖の侵入を生じるための十分なヌクレオチド配列相補性を含む領域を示す。
【図3】 pUni/V5-His バージョンA(配列番号:18)マルチクローニングサイトのヌクレオチド配列および制限エンドヌクレアーゼ認識配列の位置、およびこの2.3 kbの長さをもつベクターのプラスミドマップ。EcoRIクローニング部位は、ヌクレオチド471に位置し、SacIクローニング部位は、ヌクレオチド528に位置する。
【図4】 pCR 2.1のマルチクローニングサイトの制限エンドヌクレアーゼ認識配列のヌクレオチド配列および位置、および同ベクターのプラスミドマップ。HindIIIクローニング部位は、ヌクレオチド234に位置し、SpeIクローニング部位はヌクレオチド258に位置し、またEcoRIクローニング部位はヌクレオチド283およびヌクレオチド299に位置する。このベクターの長さは3906ヌクレオチドである。LacZα断片:1〜587塩基;M13リバースプライミング部位:205〜221塩基;マルチクローニングサイト:234〜355塩基;T7プロモーター/プライミング部位:362〜381塩基;M13フォワード(-20)プライミング部位:389〜404塩基;M13フォワード(-40)プライミング部位:408〜424塩基;f1複製起点:546〜960塩基;カナマイシン耐性遺伝子のORF:1294〜2088塩基;アンピシリン耐性遺伝子のORF:2106〜2966塩基;ColE1複製起点:3111〜3784塩基。図示されたベクターは、TAクローニング(TA Cloning)(登録商標)により挿入されたPCR産物を含むpCR(登録商標)2.1ベクターである。挿入されたPCR産物が、EcoRI切断部位に挟まれていることに注意されたい。矢印は、T7 RNAポリメラーゼによる転写の開始点を意味する。
【図5】 ベクターpUni/V5-His バージョンA配列のヌクレオチド配列(配列番号:16)。
【図6】 pUni/V5-His バージョンAのEcoRIおよびSacIによる切断、ならびに結果として得られる付着末端の配列を示す。loxP領域近傍の、図の左側に示す、結果として得られる付着末端は、EcoRIによる切断の結果として得られる付着末端である。V5領域近傍の、図の右側に示す、結果として得られる付着末端は、SacIによる切断の結果として得られる付着末端である。loxP領域、V5領域、および6×His領域、ならびに停止コドンを同じ読み枠で含むベクターの領域群を示す。
【図7】 DNAリガーゼの存在下における、切断後のベクターに対するアダプターオリゴヌクレオチドの付加。この反応によって、図示された直線化された、アダプターが付加されたベクターが得られる。アダプターの配列には下線を引いてある。4種類のアダプターオリゴヌクレオチドの配列を以下に示す:
Figure 0005043277
T4による連結反応により、図示された直線化されたクローニングベクターが得られる。アダプター配列には下線を引いてある。
【図8】 切断可能な鎖のトポイソメラーゼによる切断により、非切断可能な鎖のリン酸結合が維持されてベクターに結合した状態の脱離基が残される、トポイソメラーゼによる切断反応。図示した反応では、ds核酸分子にトポイソメラーゼが添加されている。トポイソメラーゼは、CCCTT配列に結合し、隣接するホスホジエステル結合を切断する。非切断可能な鎖における、アダプターが付加されたベクターと、アニーリング用オリゴとの間のホスホジエステル結合が、切断後における脱離基の解離を妨げる。図示した2本鎖DNAモデルでは、Xとxは相補的なヌクレオチド塩基を示す。
【図9】 切断可能な鎖のトポイソメラーゼによる切断により、非切断可能な鎖にリン酸結合がないことが、脱離基のベクターからの解離を可能とする、トポイソメラーゼ切断反応。図示した反応では、図示したds核酸分子にトポイソメラーゼが添加されている。トポイソメラーゼは、CCCTT配列に結合し、隣接するホスホジエステル結合を切断する。非切断可能な鎖において、アダプターが付加されたベクターと、アニーリング用オリゴとの間にホスホジエステル結合が存在しないことから、切断に伴い脱離基が解離する。図示した2本鎖DNAモデルでは、Xとxは相補的ヌクレオチド塩基を示す。
【図10】 DNAリガーゼの非存在下において、アニーリング用オリゴヌクレオチドを、アダプターが付加された直線化されたベクターへ添加することで、図示したような、直線化され、アダプターが付加され、またアニーリングが生じたベクターが得られる。アニーリング用オリゴヌクレオチドが、ベクターとリン酸結合で結合していないために、トポイソメラーゼを介した切断により解離が可能となる点に注意されたい。アダプターが付加されたオリゴヌクレオチドには1本線を、アニーリングしているオリゴヌクレオチドには2本線を引いてある。いずれかのTOPO D3と、これに隣接するオリゴヌクレオチドTOPO D2およびTOPO D5との間にホスホジエステル結合はない。アニーリング用オリゴヌクレオチドは以下の配列を有し、TOPO D1の1本鎖突出、およびTOPO D4の1本鎖突出の両方に相補的である:
Figure 0005043277
【図11】 本発明の、直線化された、トポイソメラーゼをチャージしたds核酸クローニングベクターの例。1本鎖突出は、コザック転写配列に対応する。このベクターは、直線化されたTOPO flapクローニングベクター(修飾型pUni/His バージョンA)である。
【図12】 ベクターpCR 2.1配列のヌクレオチド配列(配列番号:17)。
【図13】 pCR2.1(登録商標)ベクターの形状。図13Aは、制限酵素EcoRIおよびHindIIIによる切断後のpCR2.1(登録商標)(付着末端が結果的に生じている点に注意)。4種類のアダプターオリゴヌクレオチドが連結されて、直線化されたベクターとなっている。オリゴヌクレオチド上のTOPO結合部位の配列はCCCTT(下線部)である。付着末端の相補的な塩基を太字で示す。4種類のアダプターオリゴヌクレオチドの配列は以下の通りである:
Figure 0005043277
TOPO HおよびTOPO 1は、それぞれHindIIIおよびEcoRIの付着末端に相補的な5'端を有する。図13Bは、T4リガーゼの存在下における、アダプターオリゴとのインキュベーションによりアダプターが付加されたpCR2.1(登録商標)のバージョン。
【図14】 アダプターが付加されたpCR2.1(登録商標)ベクターへのアニーリング用オリゴヌクレオチドの付加と、それに続く、トポイソメラーゼIの結合、およびトポイソメラーゼによる2本鎖ベクターの切断。結果として得られるベクターは線状で、トポイソメラーゼIが両端にチャージされている。また、このベクターの一端は、特別の4 bpの1本鎖配列を有し、もう一端は平滑である。図示した最初の反応において、結合状態のアダプターおよびアニーリング用オリゴヌクレオチドを含むpCR2.1(登録商標)の末端近傍に位置する共有結合の結合部位の2本鎖DNAの5'端にトポイソメラーゼが結合して切断する。この段階は、T4ポリヌクレオチドキナーゼの存在下で実施される。このアニーリング用オリゴヌクレオチドの配列は以下の通りである:
Figure 0005043277
TOPO 3とTOPO 2との間に、またはTOPO 17とTOPO 16の間とには、ホスホジエステル結合は形成されていない。このアニーリング用オリゴヌクレオチドには二本線を引いてある。
【図15】 本発明の、直線化された、トポイソメラーゼをチャージしたds核酸クローニングベクターの別の例。この例では、1本鎖突出配列は、3'-TAAG-5'である。このベクターは、直線化された、TOPOをチャージしたFLAPベクター(修飾型pCR2.1(登録商標))である。
【図16】 方向的クローニング用に設計されたプライマーを用いたPCRによる対象遺伝子の増幅。結果として得られる産物は、本発明のベクターを用いた方向的クローニングに必要な1本鎖突出を有する。上の図に示したプライマーCACCは、対象遺伝子のコード鎖に相同であり、その5'端に付加された「FLAP」配列を有する。プライマーを含むCACC配列を含む、適切なプライマーの存在下における、対象遺伝子の標準的なPCR増幅を行うことで、下の図に記載された産物が得られる。この産物は、flap配列を5'端に有する、2本鎖の対象遺伝子の単位複製配列である。
【図17】 1本鎖突出を有する、TOPO FLAPクローニングベクターを含む、本発明の2本鎖の核酸ベクターが、増幅されたDNAの適切な方向における挿入を促進可能であること。正しく挿入された場合、トポイソメラーゼは産物をベクターに連結する。
【配列表】
Figure 0005043277
Figure 0005043277
Figure 0005043277
Figure 0005043277
Figure 0005043277
Figure 0005043277
Figure 0005043277
Figure 0005043277

Claims (45)

  1. 方向的に連結された組換え核酸分子を作製する方法であって、
    第一の5'突出に相補的なヌクレオチド配列が、第一の5'突出と選択的にハイブリダイズすることが可能な条件下で、
    a)第一の末端またはその近傍において共有結合で結合された状態の第一のトポイソメラーゼ、第二の末端またはその近傍において共有結合で結合された状態の第二のトポイソメラーゼを含む、トポイソメラーゼをチャージした第一の2本鎖(ds)核酸分子(第一の末端が第一の5'突出をさらに含み、第二の末端が、平滑末端、3'チミジン突出、または第二の5'突出をさらに含む);および
    b)第一の平滑末端および第二の末端を含む第二のds核酸分子(第一の平滑末端がその5'端に第一の5'突出に相補的なヌクレオチド配列を含む)
    を接触させる段階を含み、
    それによって第一のトポイソメラーゼが、共有結合によって、第一のds核酸分子の第一の末端の3'端を、第二のds核酸分子の第一の末端の5'端に連結させ、
    第二のトポイソメラーゼが、共有結合によって、第一の核酸分子の第二の末端の3'端を、第二のds核酸分子の第二の末端の5'端に連結することで、方向的に連結された核酸分子を作製する方法であり、そして
    トポイソメラーゼがI型トポイソメラーゼである、方法
  2. 第一のds核酸分子の第二の末端が平滑末端を含み、第二のds核酸分子の第二の末端が平滑末端を含む、請求項1記載の方法。
  3. トポイソメラーゼをチャージした第一のds核酸分子の第二の末端が3'チミジン突出を含み、第二のds核酸分子の第二の末端が3'アデノシン突出を含む、請求項1記載の方法。
  4. トポイソメラーゼをチャージした第一のds核酸分子が、第二の末端における第二の5'突出、および第二の末端において第二の5'突出に相補的なヌクレオチド配列を含む第二のds核酸を含む、請求項1記載の方法。
  5. 第一のds核酸分子がベクターである、請求項1記載の方法。
  6. トポイソメラーゼをチャージした第一のds核酸分子がクローニングベクターである、請求項5記載の方法。
  7. トポイソメラーゼをチャージした第一のds核酸分子が発現ベクターである、請求項6記載の方法。
  8. 方向的に連結された組換え核酸分子を細胞に導入する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
  9. 細胞が真核細胞である、請求項8記載の方法。
  10. 細胞が哺乳類細胞である、請求項9記載の方法。
  11. 細胞が細菌である、請求項8記載の方法。
  12. 第二のds核酸分子が増幅産物を含む、請求項1記載の方法。
  13. トポイソメラーゼがIB型トポイソメラーゼである、請求項1記載の方法。
  14. 第二のds核酸分子が、複数の第二のds核酸分子のうちの一つを含む、請求項1記載の方法。
  15. 複数の第二のds核酸分子が相互に異なる、請求項14記載の方法。
  16. 複数の第二のdsヌクレオチド分子がcDNAライブラリーを含む、請求項14記載の方法。
  17. 複数の第二のdsヌクレオチド分子がコンビナトリアルライブラリーを含む、請求項14記載の方法。
  18. 方向的に連結された組換え核酸分子を作製する方法であって、トポイソメラーゼ活性を可能とする条件、および第一の5'標的配列と、標的配列に相補的なヌクレオチド配列とのハイブリダイゼーションにより、方向的に連結された組換え核酸分子作製を可能とする条件下で、
    a)5'端に第一の5'標的配列を含み、3'端にトポイソメラーゼ認識部位を含む、第一の末端と、3'端にトポイソメラーゼ認識部位を含む、第二の末端とを含む、第一の前駆体2本鎖(ds)核酸分子;
    b)第一の平滑末端および第二の末端を含む第二のds核酸分子(第一の平滑末端が5'端に、5'標的配列に相補的なヌクレオチド配列を含む);ならびに
    c)トポイソメラーゼ認識部位に特異的なトポイソメラーゼ
    を接触させる段階を含み、
    トポイソメラーゼがI型トポイソメラーゼである、方法
  19. 第一の前駆体ds核酸の第二の末端がトポイソメラーゼで切断されることで平滑末端となり、第二のds核酸分子の第二の末端が平滑末端である、請求項18記載の方法。
  20. 第一の前駆体ds核酸分子の第二の末端がトポイソメラーゼで切断されることで3'チミジン延長を含み、第二のds核酸分子の第二の末端が、3'アデノシン突出を含む、請求項18記載の方法。
  21. 第一の前駆体ds核酸分子が、第二の末端に位置する第二の5'標的配列を含み、第二のds核酸分子が第二の末端において、第二の5'標的配列に相補的な核酸配列を含む、請求項18記載の方法。
  22. 第一の前駆体ds核酸分子がベクターである、請求項21記載の方法。
  23. ベクターが発現ベクターである、請求項22記載の方法。
  24. 方向的に連結された組換え核酸分子を細胞に導入する段階をさらに含む、請求項18記載の方法。
  25. 第一の前駆体ds核酸分子が発現制御領域を含み、第二のds核酸分子が読み枠を含み、方向的に連結された組換え核酸分子内に、発現制御領域が使用可能に読み枠に連結される、請求項18記載の方法。
  26. 第二のds核酸分子が増幅産物を含む、請求項18記載の方法。
  27. トポイソメラーゼがIB型トポイソメラーゼである、請求項18記載の方法。
  28. 第二のds核酸分子が、複数の第二のds核酸分子のうちの一つを含む、請求項18記載の方法。
  29. 複数の第二のdsヌクレオチド分子がcDNAライブラリーを含む、請求項28記載の方法。
  30. 方向的に連結された組換え核酸分子を作製する方法であって、
    第一の平滑末端の5'ヌクレオチド配列が、第一の5'突出に選択的にハイブリダイズ可能な条件下で、
    a)2本鎖(ds)核酸分子の第一の末端の3'端に共有結合で連結された第一のトポイソメラーゼを含み、第一の末端が第一の5'突出をさらに含む、トポイソメラーゼをチャージした第一のds核酸分子;および
    b)第一の平滑末端および第二の末端を含む第二のds核酸分子(第一の平滑末端が、第一の5'突出に相補的な5'ヌクレオチド配列を含む)
    を接触させる段階を含み、それによって第一のトポイソメラーゼが、第一のds核酸分子の第一の末端の3'端を、第二のds核酸分子の第一の末端の5'端に共有結合で連結することができる方法であり、そして
    トポイソメラーゼがI型トポイソメラーゼである、方法
  31. トポイソメラーゼをチャージした第一のds核酸分子と第二のds核酸分子を第三のds核酸分子に接触させる段階をさらに含み、
    第三のds核酸分子の第一の末端が、5'突出および共有結合で3'端に結合された状態の第二のトポイソメラーゼを含み、
    第二のds核酸分子が、第二の5'突出に相補的な5'ヌクレオチド配列を含む第二の平滑末端をさらに含み、ならびに
    接触させる段階が、第二のds核酸の第二の平滑末端の5'ヌクレオチド配列が、第三のds核酸分子の第一の末端の5'突出と選択的にハイブリダイズ可能な条件下で実施され、
    それによって、第二のトポイソメラーゼが、第三のds核酸分子の第一の末端の3'端を、第二のds核酸分子の第二の平滑末端の5'端に共有結合で連結可能である請求項30記載の方法。
  32. 第一のds核酸分子が第二のds核酸分子に方向的に連結され、その後、第三のds核酸分子が第二のds核酸分子に方向的に連結される、請求項31記載の方法。
  33. 第一のds核酸分子が、第二のds核酸分子に使用可能に連結される、請求項30記載の方法。
  34. 第一のds核酸が発現制御領域を含み、第二のds核酸が読み枠を含む、請求項30記載の方法。
  35. 第一のds核酸分子が発現制御領域を含み、第二のds核酸分子が読み枠を含み、第三のds核酸分子がペプチドをコードし、
    方向的に連結された組換え核酸分子内において、発現制御領域が読み枠に使用可能に連結され、第二のds核酸分子が第三のds核酸分子に使用可能に連結され、ならびに、
    第二のds核酸分子が第三のds核酸分子に使用可能に連結されて、読み枠およびペプチドを含む融合タンパク質をコードする、請求項31記載の方法。
  36. ペプチドがタグを含む、請求項35記載の方法。
  37. 以下
    a)第一の末端および第二の末端を含む第一のds核酸分子(第一の末端が5'突出、および3'端に共有結合で結合されたトポイソメラーゼを含む)、および
    b)第一の平滑末端および第二の末端を含む第二のds核酸分子(第一の平滑末端が、第一の5'突出に相補的な第一の5'ヌクレオチド配列、および第一の5'ヌクレオチド配列に相補的な第一の3'ヌクレオチド配列を含む)
    を含む組成物であって、トポイソメラーゼがI型トポイソメラーゼである、組成物。
  38. 第二のds核酸分子の第一の平滑末端の第一の5'ヌクレオチド配列が、第一の核酸分子の第一の末端の第一の5'突出とハイブリダイズし、第二のds核酸分子の第一の平滑末端の第一の3'ヌクレオチド配列が置換される、請求項37記載の組成物。
  39. 第一のds核酸分子が、第二の末端において第二の5'突出をさらに含み、第二のds核酸分子の第二の末端が、第二の5'突出に相補的な第二の5'ヌクレオチド配列、および第二の5'ヌクレオチド配列に相補的な第二の3'ヌクレオチド配列をさらに含む、請求項37記載の組成物。
  40. 請求項1記載のds核酸分子を含むキット。
  41. 核酸分子がベクターである、請求項40記載のキット。
  42. 発現制御領域をさらに含む、請求項40記載のキット。
  43. 以下
    a)第一の末端の3'端に共有結合で結合された第一のトポイソメラーゼ、および第二の末端の3'端に共有結合で結合された第二のトポイソメラーゼを含み、
    第一の末端が、第一の5'突出をさらに含み、第二の末端が、平滑末端、3'チミジン突出、または第二の5'突出をさらに含み、第一の5'突出が第二の5'突出とは異なる、第一の2本鎖(ds)核酸分子;および
    b)複数の各ds核酸分子が第一の平滑末端を含み、第一の平滑末端が第一のds核酸分子の第一の5'突出に相補的な5'ヌクレオチド配列を含む、複数の第二のds核酸分子
    を含むキットであって、トポイソメラーゼがI型トポイソメラーゼである、キット。
  44. 複数の第二のds核酸分子が、転写調節領域、翻訳調節領域、またはこれらの組み合わせを含む、請求項43記載のキット。
  45. 複数の第二のds核酸分子が、ペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、請求項43記載のキット。
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