JP5036090B2 - 銅合金熱間鍛造品及び銅合金熱間鍛造品の製造方法 - Google Patents

銅合金熱間鍛造品及び銅合金熱間鍛造品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、銅合金熱間鍛造品及び銅合金熱間鍛造品の製造方法に関する。特に、強度、耐力、熱伝導性、電気伝導性、クリープ特性に優れた銅合金熱間鍛造品及びその銅合金熱間鍛造品の製造方法に関する。
銅は、高い熱伝導性、電気伝導性を活かし、ヒートシンク、ヒートスプレッダ、エンドリング、端子、ベース板、コネクター、電極、センサー部品、モールド、圧力容器など様々な産業分野に用いられている。ところが、タフピッチ銅、無酸素銅、りん脱酸銅を初めとする99.9%以上の銅濃度を有する所謂純銅は、強度が低いので強度を確保するためには単位面積当たりの銅使用量が多くなってコスト高となり、容積、重量も大きくなる。
また、半導体素子の高集積化・大容量化に伴い、自動車の高出力モーター制御装置用の半導体素子等に使用され半導体に生じる熱を放出させるためのヒートシンクやヒートスプレッダには、フィン部等によりヒートシンクやヒートスプレッダ全体の表面積を広げて半導体で発生した熱を効率良く放出する高い熱伝導性が要求される。
更に、ヒートシンク等は、より多くの熱を放出させるために水冷方式によってその効率を更に高めて使用することが考えられるが、その場合、水圧に耐えうる強度、特に初期の変形強さ、すなわち耐力が大きいことが必要である。また、これらのヒートシンクには、優れた放熱性が必要であるが、組立工程時や実装時に加えられるはんだ付けや硬ろう付け時の温度によって強度や硬さが低下しないことが必要である。そして、使用中に温度上昇があっても、それに耐えることができる高いクリープ特性が必要である。
また、モーターに使われるエンドリングについては、ローターバーとの接合が硬ろう付けによって行われ、ろう付け後も高い強度と高い熱伝導性、電気伝導性が必要である。そして、使用中に100℃を超える温度上昇があるので、排熱(熱伝導)性に優れることが求められる。また、高速で運転すると大きな遠心力が生じるので、その遠心力に耐えうる高い強度、すなわち100℃を超える環境での高いクリープ特性が求められる。ヒートシンクやコネクター、電極等も同様であり、連続して長時間の使用に耐えうる高いクリープ特性が求められる。
このように、上記のような用途に用いられる銅合金には、高い強度、耐力、熱伝導性、電気伝導性、クリープ特性が求められる。
上記のヒートシンク等の加工方法について説明すると、表面積を広くするため表面に突起部を設けたヒートシンク、大型の端子やコネクター、電極、センサ−部品のように外形が複雑な形状や、モーターのエンドリングのようにドーナツ状の形状を加工するには、熱間鍛造や、切削、プレス、冷間鍛造によって加工することができる。しかしながら、切削加工は、材料を様々な形状を加工することができるが、銅濃度が高い銅合金は被削性が頗る悪いので、加工するのに多くの工数を要し、また歩留まりが悪いので経済的に問題である。プレスや冷間鍛造で成形しようとすると、銅は加工硬化するので、大きな加工度を加えることができず、複雑な形状を加工することができない。プレスや冷間鍛造によって複雑な形状を加工するには、加工限界に達した後に、焼鈍・酸洗してから再びプレス、冷間鍛造によって複雑な形状に作り上げなければならず、コストが掛かる。
そのために、1つの工程でニアネットシェイプまで作る方法として熱間鍛造によって製造することが望ましい。熱間鍛造なら、小さなプレス能力の鍛造機でも複雑な形状に成形することができ、低コストである。
しかしながら、一般的な銅及び銅合金の熱間鍛造は、一般的に700℃又は800℃の高温で加工するため、熱間鍛造後の銅及び銅合金の強度が非常に低くなるという問題がある。そのために、一般的な銅及び銅合金でなく、溶体化−時効・析出型合金のCr−Zr銅(1mass%Cr−0.1mass%Zr−Cu)を用いることが考えられる。しかし、この合金は、活性な元素Zrを含むため、溶解・鋳造コストがかかり、通常、熱間鍛造した後に材料を再び950℃以上(950〜1000℃)に加熱し、その直後に急冷、そして時効するという熱処理プロセスを経て製造される。950℃という高温の再加熱はコストアップになり、大気中で加熱すれば酸化ロスが生じるので、複雑な形状では寸法上の問題もある。また、高温の再加熱のために鍛造品が変形しやすくなり、また材料間にへばりつきが生じる。そのために、不活性ガス、又は真空中において950℃で熱処理されるが、酸化ロスは防げるもののコストが高くなり、変形やへばりつきの問題もある。
また、Al、Si、Ni等の組成を限定した熱間鍛造用の銅合金が提案されている(特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1に記載された銅合金は、特別な溶体化処理が必要であり、また、電気・熱伝導性が悪いという問題がある。
特開2002−80924号公報
本発明は、斯かる従来技術の問題を解決するためになされたものであり、強度、耐力、熱伝導性、電気伝導性に優れた銅合金熱間鍛造品及び銅合金熱間鍛造品の製造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明者は、銅合金の組成や金属組織について検討した。その結果、所定の組成の銅合金において、熱間鍛造を所定の条件で行い、平均結晶粒径が所定の範囲内である再結晶粒群の占める割合と未再結晶粒の占める割合とを所定の範囲内にすることにより、強度、耐力、熱伝導性、電気伝導性等に優れた銅合金熱間鍛造品が得られるという知見を得た。
本発明は、上記の本発明者の知見に基づき完成されたものである。すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、0.21〜0.44mass%のCoと、0.06〜0.13mass%のPと、0.003〜0.08mass%のSnと、0.00003〜0.0030mass%のOとを含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる合金組成であり、Coの含有量[Co]mass%とPの含有量[P]mass%との間に、3.1≦([Co]−0.005)/([P]−0.006)≦4.9の関係を有し、断面金属組織において、再結晶粒の平均結晶粒径が0.050〜0.50mmである再結晶粒群の占める割合と、未再結晶粒の占める割合との合計が80%以上であることを特徴とする銅合金熱間鍛造品を提供する。
本明細書でいう未再結晶粒について説明する。熱間鍛造前の再結晶粒が、熱間鍛造によってひずみを受けるが、再結晶せずにひずみが残留した状態で残ったものを未再結晶粒という。結晶粒にひずみが残留しているか否かは、金属組織を見れば明らかであり、再結晶粒と未再結晶粒とはひずみの残留を観察して識別することができるが、本発明では次のようにして識別する。再結晶粒は、正6角形に近い形状を示し、結晶粒に外接する外接円と、内接する内接円を描くと、(結晶粒の外接円の径)/(結晶粒の内接円の径)の比は、ほとんどの再結晶粒が、2.0未満である。従って、(結晶粒の外接円の径)/(結晶粒の内接円の径)の比が2.0以上の結晶粒を未再結晶粒とする。図1に、結晶粒に外接する外接円の径と、結晶粒に内接する内接円の径の例を示す。
次に、本明細書でいう再結晶粒群と、再結晶粒群の平均結晶粒径とについて説明する。再結晶粒の平均結晶粒径をJIS H 0501に準拠して測定する。そして、その観察した視野の金属組織が再結晶粒であるときには、その視野内にある全ての再結晶粒の集まりをその視野における再結晶粒群という。そして、観察した視野の再結晶粒の平均結晶粒径がammであるとすると、その視野にあった再結晶粒は、再結晶粒の平均結晶粒径がammであった再結晶粒群とする。このようにして、観察する視野毎に再結晶粒群の平均結晶粒径を測定する。
また、本明細書でいう断面金属組織は、鍛造品を切断する少なくとも一つの断面において、鍛造品の表面から深さ1mmの部分を除外した部分における金属組織とする。
好ましくは、0.001〜0.3mass%のZn、0.002〜0.2mass%のMg、0.001〜0.3mass%のAgのいずれか1種以上を更に含有することが望ましい。
斯かる好ましい銅合金熱間鍛造品によれば、Zn、Mg、Agのいずれかを有するので、強度が向上する。
また、銅合金熱間鍛造品は、0.005〜0.15mass%のNi、0.003〜0.10mass%のFeのいずれか1種以上を更に含有し、Coの含有量[Co]mass%と、Niの含有量[Ni]mass%と、Feの含有量[Fe]mass%と、Pの含有量[P]mass%との間に、3.1≦([Co]+0.9×[Ni]+0.8×[Fe]−0.005)/([P]−0.006)≦4.9、及び0.010≦2×[Ni]+3×[Fe]≦0.75×[Co]の関係を有していてもよい。
この銅合金熱間鍛造品によれば、Ni、Feのいずれかを有していても、強度、耐力、熱伝導性、電気伝導性等に優れている。
好ましくは、耐力が、230N/mm以上であり、20℃における熱伝導率が300W/m・K以上、又は20℃における導電率が75%IACS以上であり、前記耐力をL(N/mm)、前記熱伝導率をM(W/m・K)、前記導電率をN(%IACS)としたとき、(L×M)の値が77000以上、又は、(L×N)の値が、19000以上であることが望ましい。
ヒートシンク、コネクター、エンドリングで要求される耐力、熱伝導性、電気伝導性は、それらの数値が高いほど材料の節約につながり、最終製品のコンパクト化に繋がる。ここで、一般的な純銅(C1020、C1100、C1220)の熱間鍛造品の20℃における熱伝導率が320〜395W/m・K、電気伝導度が83〜102%IACS、耐力が40〜80N/mm、耐力と熱伝導率との積が17000〜25000、耐力と導電率との積が4500〜6000程度であることを考慮に入れれば、上記で望ましいとした数値は、大きな効果を当然に発揮する。なお、工業用純アルミニウムの熱間鍛造品は、耐力が、約30N/mm、20℃における熱伝導率が約220W/m・K、導電率が約60%IACSであり、これらの数値を遥かに上回る。
より好ましくは、耐力が、250N/mm以上、20℃における熱伝導率が310W/m・K以上、又は導電率が77%IACS以上であり、耐力と熱伝導率との積が82000以上、又は、耐力と導電率との積が、20000以上である。最適には、純銅と同等の高熱伝導性、高電気伝導性を有し、耐力においては遥かに高い数値で、耐力が、260N/mm以上、20℃における熱伝導率が320W/m・K以上、又は導電率が80%IACS以上であり、耐力と熱伝導率との積が85000以上、又は、耐力と導電率との積が、21000以上である。
そして、200℃で50N/mmの応力を加え、クリープ試験を行った時、初期の変形を除いた全クリープ変形量が0.05%以下であることを特徴とする。後述するように、熱間鍛造後、析出熱処理前に、冷間加工を5〜20%を施すと、200℃で100N/mmの応力を加え、1000時間のクリープ試験を行ったとき、初期変形を除いた全クリープ変形量が0.15%以下であることを特徴とする。
好ましくは、前記再結晶粒における析出物の平均粒径が1.3〜3.9nm、又は析出物の90%以上が0.7〜7nmであることが望ましい。
斯かる好ましい銅合金熱間鍛造品によれば、析出物の平均粒径が1.3〜3.9nm、又は析出物の90%以上が0.7〜7nmになることにより高耐力、高熱伝導性、高電気伝導性を有し、また使用環境である100〜200℃において高いクリープ特性を有することができる。
好ましくは、前記再結晶粒の平均結晶粒径が0.050〜0.50mmである前記再結晶粒群の占める割合が60%以上、若しくは前記未再結晶粒の占める割合が60%以上であることが望ましい。
斯かる好ましい銅合金熱間鍛造品によれば、使用環境である100〜200℃において高いクリープ特性を有することができる。
好ましくは、825℃で300秒間加熱され、冷却後の耐力が、125N/mm以上であり、前記冷却後の20℃における熱伝導率が280W/m・K以上、又は前記冷却後の20℃における導電率が70%IACS以上であり、前記冷却後の耐力をL(N/mm)、前記冷却後の20℃における熱伝導率をM(W/m・K)、前記冷却後の20℃における導電率をN(%IACS)としたとき、(L×M)の値が38000以上、又は、(L×N)の値が、9600以上であることが望ましい。
本発明の熱間鍛造品で作られる、例えば、エンドリングは、ローターバーとの接合には、強度や熱伝導性、電気伝導性に優れる JIS Z 3261に記載されているBAg−5:45Ag−30Cu−25Zn合金ろう、BAg−6:50Ag−34Cu−16Zn合金ろう、BAg−7:56Ag−22Cu−17Zn−5Sn合金ろうが用いられ、その硬ろう付け温度は、各々745〜845℃、775〜870℃、650℃〜750℃の高温が推奨されている。このために、エンドリングは、短時間であるがろう付温度である800℃前後の耐熱性が要求される。当然、電気用途に使われるので、硬ろう付け後も、高い熱伝導性、電気伝導性が望まれる。また、モーターに使われるエンドリングは、高速化により遠心力が大きいので、それに耐える強度も必要である。
すなわち、当該鍛造品をAgろう付け条件に相当する825℃のソルトバスで300秒間浸漬し、加熱した材料において、耐力が、125N/mm以上、好ましくは130N/mm以上、20℃における熱伝導率が280W/m・K以上、又は導電率が70%IACS以上であり、耐力と熱伝導率との積が38000以上、又は、耐力と導電率との積が、9600以上であることを特徴とする。そして、硬ろう付け相当の熱処理を行った熱間鍛造品に、200℃で50N/mmの応力を加え、1000時間のクリープ試験を行ったとき、初期の変形を除いた全クリープ変形量が0.25%以下であることを特徴とする。更に、エンドリング等の平滑な面を有する熱間鍛造品は、熱間鍛造後、析出熱処理を行なう前に、冷間加工を5〜20%を施すことにより、825℃のソルトバスで300秒間加熱した試験片において、耐力が、150N/mm以上、20℃における熱伝導率が280W/m・K以上、又は導電率が70%IACS以上であり、耐力と熱伝導率との積が48000以上、又は、耐力と導電率との積が、12000以上であることを特徴とする。更に、硬ろう付け相当の熱処理を行った熱間鍛造品に、200℃で50N/mmの応力を加え、1000時間のクリープ試験を行ったとき、初期変形を除いて、0.15%以下のクリープ変形量であることを特徴とする。なお、これらの特性値は、空冷後に、590℃のソルトバスで30分間の、主として熱・電気伝導度回復のための熱処理を施した後に測定している。これら硬ろう付けを施した材料においても、高い強度、高い熱伝導性、高い電気伝導性を有しているので、高速回転するエンドリングや、圧力の掛かるヒートシンク等には好適な熱間鍛造品となる。
ろう付け相当品は、平均結晶粒径が、0.05mm、更には0.08mm以上で粗大なため、825℃の高温にろう付け相当の時間保持しても、析出物の粒成長を遅らせ、多少は大きくなるが、まだ耐力に寄与する細かい析出物が多いので、耐力が高い。ろう付け後、熱伝導性・電気伝導性を回復させる熱処理、すなわち、ろう付け後の冷却過程で650℃から550℃への温度域を5〜50分掛けて冷却する、又は、硬ろう付け後、一旦空冷し、550℃〜650℃の温度で、5〜50分保持することにより、ろう付け後に、良好な耐力、熱伝導性・電気伝導性を示す。特に熱間鍛造後、5〜20%の冷間加工を加えると、耐力が高くなる。これは、熱間鍛造品の平均結晶粒径が0.05mm、0.08mm以上あるため、825℃に加熱されても、冷間加工により導入された加工ひずみが残り、そのひずみに相当する強度が加算される。すなわち、ろう付けにより熱間鍛造品が800℃以上に加熱されても、平均結晶粒径が0.05mm又は0.08mmより大きいので、析出粒子の成長を遅らせ、耐力に寄与する析出粒子が多く残り、加えて、加工ひずみが加算されることによって、150N/mm以上の更に高い耐力を有する。クリープ変形に関しても、熱間鍛造品は、結晶粒が大きいので拡散速度が遅く、耐熱性を有しているので、高い応力を加えても変形量が少ない。冷間加工を加えたものは、更に高い耐力を有するので、クリープ変形量は少ない。なお、鍛造品を高温の液体であるソルトバスに浸漬すると、鍛造品の温度は急速に上がる。したがって、800℃以上825℃以下の温度で、少なくとも180秒以上は、熱間鍛造品はソルトバス中に浸漬保持されている。
以上に説明した銅合金熱間鍛造品の製造方法としては、例えば下記の第1乃至第3の製造方法を挙げることができる。
第1の製造方法は、熱間鍛造が施される鍛造材の熱間鍛造前の加熱温度が925〜1025℃であり、前記鍛造材の前記加熱終了時の平均結晶粒径が0.10〜5.0mmであることを特徴とする。
尚、本明細書でいう鍛造材とは、鍛造が行われる前の材料と、鍛造が行われた後の材料との両方を意味する。
第2の製造方法は、熱間鍛造が施される鍛造材の少なくとも一回の熱間鍛造を700℃以上で実施し、前記熱間鍛造後に前記鍛造材を12℃/秒以上の冷却速度で400℃以下に冷却、又は650℃から550℃までの温度領域を12℃/秒以上の冷却速度で冷却し、前記冷却後に前記鍛造材に冷間加工を行い、又は冷間加工を行わずに450〜600℃の熱処理温度で0.2〜10時間の保持時間であり、前記熱処理温度をT℃、前記保持時間をt時間とすると520≦T+20×t1/2≦615の関係を充たす熱処理を行ことを特徴とする。好ましくは、当該熱処理後に、400℃に達するまで、0.1℃/分から3℃/分の冷却速度で冷却する。
尚、熱間鍛造を700℃以上で実施するとは、鍛造直前の温度を700℃以上にすることを意味する。
第2の製造方法で製造された銅合金熱間鍛造品は、前記熱間鍛造後で前記熱処理前の導電率をX(%IACS)とすると、Xと、Pの含有量[P]mass%と、Coの含有量[Co]mass%と、Feの含有量[Fe]mass%と、Snの含有量[Sn]mass%と、Mgの含有量[Mg]mass%と、Niの含有量[Ni]mass%との間に、
(45-25[P]−20[Co]-10[Fe]‐5[Sn]-3[Mg]-2[Ni])≦X≦(55-25[P]−20[Co]-10[Fe]‐5[Sn]-3[Mg]-2[Ni])の関係を有することが望ましい。
第3の製造方法は、熱間鍛造が施される鍛造材の少なくとも一回の熱間鍛造を700℃以上で実施し、前記熱間鍛造後に前記鍛造材を650℃から550℃までの温度領域を12℃/秒以上の冷却速度で冷却し、前記冷却後に400〜540℃の温度領域で10〜200分保持することを特徴とする製造方法。
尚、熱間鍛造を700℃以上で実施するとは、鍛造直前の温度を700℃以上にすることを意味する。
本発明によれば、銅合金熱間鍛造品が強度、耐力、熱伝導性、電気伝導性に優れる。
図1は、結晶粒に外接する外接円の径と、結晶粒に内接する内接円の径の例を示す図である。 図2は、熱間鍛造品を作成した合金の組成を示す図である。 図3は、試験1の各工程の製造条件を示す図である。 図4は、試験1において熱間鍛造した平板の形状を示す図である。 図5は、試験2の各工程の製造条件を示す図である。 図6は、試験1の結果を示す図である。 図7は、試験1の結果を示す図である。 図8は、試験1の結果を示す図である。 図9は、試験1の結果を示す図である。 図10は、試験1の結果を示す図である。 図11は、試験1の結果を示す図である。 図12は、試験1の結果を示す図である。 図13は、試験1の結果を示す図である。 図14は、試験2の結果を示す図である。 図15は、試験2の結果を示す図である。 図16は、各試験での金属組織を示す写真である。
本発明の実施形態に係る銅合金熱間鍛造品について説明する。
本発明に係る銅合金として、第1発明合金乃至第3発明合金を提案する。合金組成を表すのに本明細書において、[Cu]のように[ ]の括弧付の元素記号は当該元素の含有量値(mass%)を示すものとする。また、この含有量値の表示方法を用いて、本明細書において複数の計算式を提示するが、それぞれの計算式において、当該元素を含有していない場合は0として計算する。また、第1乃至第3発明合金を総称して発明合金とよぶ。
第1発明合金は、0.21〜0.44mass%のCoと、0.06〜0.13mass%のPと、0.003〜0.08mass%のSnと、0.00003〜0.0030mass%のOとを含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる合金組成であり、Coの含有量[Co]mass%とPの含有量[P]mass%との間に、3.1≦([Co]−0.005)/([P]−0.006)≦4.9の関係を有する。
第2発明合金は、Co、P、Sn、Oの組成範囲が第1発明合金と同一であり、更に、0.001〜0.3mass%のZn、0.002〜0.2mass%のMg、0.001〜0.3mass%のAgのいずれか1種以上を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる合金組成であり、Coの含有量[Co]mass%とPの含有量[P]mass%との間に、3.1≦([Co]−0.005)/([P]−0.006)≦4.9の関係を有する。
第3発明合金は、Co、P、Sn、O、Zn、Mg、Agの組成範囲が第1発明合金又は、第2発明合金と同一であり、更に0.005〜0.15mass%のNi、0.003〜0.10mass%のFeのいずれか1種以上を更に含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる合金組成であり、Coの含有量[Co]mass%と、Niの含有量[Ni]mass%と、Feの含有量[Fe]mass%と、Pの含有量[P]mass%との間に、
3.1≦([Co]+0.9×[Ni]+0.8×[Fe]−0.005)/([P]−0.006)≦4.9、及び0.010≦2×[Ni]+3×[Fe]≦0.75×[Co]の関係を有する。
次に、製造方法について説明する。製造方法は、熱間鍛造前に鍛造材を加熱する加熱工程と、加熱された鍛造材を鍛造する熱間鍛造工程と、熱間鍛造後の鍛造材を冷却する冷却工程と、冷却後の鍛造材を加熱する析出熱処理工程とを有している。
加熱工程における加熱温度は、925〜1025℃である。
熱間鍛造は、少なくとも1回行い、少なくとも鍛造直前の温度を700℃以上とする。
冷却工程では、熱間鍛造後から12℃/秒以上の冷却速度で400℃以下に冷却するか、又は650℃から550℃までの温度領域を12℃/秒以上の冷却速度で冷却する。
析出熱処理の条件は、熱処理温度が450〜600℃で保持時間が0.2〜10時間であり、熱処理温度をT℃、保持時間をt時間とすると520≦T+20×t1/2≦615の関係を充たす。当該熱処理後、好ましくは400℃に達するまで、0.1℃/分から3℃/分の冷却速度で冷却する
前記の冷却工程と析出熱処理工程との間に冷間加工を行ってもよい。
以上の製造方法を、第1製造方法とよぶ。
尚、本実施形態の銅合金熱間鍛造品の製造方法に供される鍛造材の製造履歴はどのようなものでもよい。例えば、鋳造後でも、押出後でも、熱間鍛造後でも、冷間加工後でもよい。
第1製造方法における熱間鍛造工程の後を、次のようにしてもよい。熱間鍛造後に12℃/秒以上の冷却速度で650℃から550℃までの温度領域を冷却し、その後、400〜540℃の温度領域で10〜200分保持する。この400〜540℃の温度領域での10〜200分の保持が、第1製造方法における析出熱処理工程の役割をする。
以上の製造方法を、第2製造方法とよぶ。
次に、各元素の添加理由について説明する。
Coの単独の添加では高い強度・電気伝導性等は得られないが、P、Snとの共添加で熱伝導性・電気伝導性を損なわずに、高い強度、高い耐熱特性、高い延性が得られる。Coの単独の添加では、強度が多少向上する程度であり顕著な効果はない。発明合金の組成範囲の上限を超えると効果が飽和するばかりでなく、却って、熱伝導性・電気伝導性を損ない、鍛造時の変形抵抗が高くなる。また、Coはレアメタルであるので、高コストになる。Coの含有量が発明合金の組成範囲の下限より少ないと、Pと共添加しても目的とする高い耐力が得られない。Coの組成範囲の下限は、0.21mass%であって、好ましくは、0.24mass%であり、より好ましくは、0.27mass%であり、特に高い耐力が必要な場合は、0.35mass%である。Coの組成範囲の上限は、特に高い耐力を必要とする場合は0.44mass%であり、好ましくは、0.43mass%であり、耐力とコストとの兼ね合いで、0.40mass%以下が好ましい。
Pの添加は、Co、Snと共添加することにより熱伝導性・電気伝導性を損なわずに、高い強度を得ることができる。Pの単独の添加は、湯流れ性と強度を向上させ、結晶粒を微細化させる。Pの含有量が組成範囲の上限を超えると、上記の湯流れ性と強度と結晶粒微細化の効果が飽和する。また、熱伝導性・電気伝導性が損なわれる。また、鋳造時に割れが生じやすくなり、熱間鍛造時にも割れが生じ易くなる。Pの含有量が組成範囲の下限より少ないと、高強度の効果が発揮できない。Pの組成範囲の上限は、高い耐力を得るためと、Coとの関係で0.13mass%であり、好ましくは0.12mass%である。Pの組成範囲の下限は、0.060mass%であり、好ましくは0.070mass%であり、高耐力を得るためには、0.090mass%である。
Co、Pを上記した組成範囲で共添加することにより強度、熱伝導性、電気伝導性、延性、100〜200℃でのクリープ特性、耐熱性、硬ろう付け後の強度、変形能が良くなる。これらの両元素が固溶状態であると、鍛造時の変形抵抗が低くなり、また、熱間鍛造時の動的再結晶、静的再結晶が遅れる。Co、Pの含有量が一方でも組成範囲より少ない場合、上記いずれの特性も顕著な効果を発揮しないばかりか熱伝導性が頗る悪くなる。Co、Pの含有量が組成範囲より多い場合は同様に熱伝導性が頗る悪く、各々の単独添加の場合と同様の欠点が生じる。Co、Pの両元素は、本発明の課題を達成するための必須元素であり、適正なCo、P等の配合比率によって熱伝導性・電気伝導性を損なわずに、耐力、耐熱性、高温強度、硬ろう付け後の強度、高温クリープ強度を向上させる。Co、Pは、発明合金の組成範囲内で大きな効果を発揮し、組成範囲の上限に近づくにつれて、コストとの兼ね合いがあるが、これらの諸特性がより向上する。Co、Pが結合して強度に寄与する超微細な析出物を析出させる。Co、Pの共添加は、熱間鍛造中の動的再結晶を抑制し、熱間鍛造直後の静的再結晶の生成を遅らせる。但し、その効果も、発明合金の組成範囲の上限を超えると、ほとんど特性の向上は認められなくなり、却って上述したような欠点が生じ始める。
本発明の課題である高い強度、高い電気伝導性を得るには、CoとPの割合が非常に重要になる。組成、加熱温度、冷却速度等の条件が揃えば、析出熱処理によりCoとPは、概ねCo:Pの質量濃度比が約4:1から約3.5:1になる微細な析出物を形成する。析出物は、例えばCoP、又はCo2.aP、Co等の化合式で表され、略球状、又は略楕円形で粒径が2〜3nm程度の大きさであれば強度に大きく寄与する。具体的には、鍛造品の断面である平面で表される析出物の平均粒径で定義すれば1.5〜3.9nm(好ましくは1.7〜3.5nm、最適には、1.9〜3.1nm)であり、又は析出物の大きさの分布から見れば、析出物の90%、好ましくは95%以上が0.7〜7nmであり、最も好ましくは95%以上が0.7〜5nmであり、そして析出物が均一に析出することにより高強度を得ることができる。
析出物は、均一で微細に分布し、大きさも揃い、その粒径が細かいほど再結晶部の粒径、強度、高温強度に影響を与える。なお、0.7nmの粒径は概ね超高圧の透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope以下、TEMと記す)を用い、75万倍で観察し、専用のソフトを使えば識別・寸法測定可能な限界のサイズである。従って、もし0.7nm未満の析出物が存在しても、上記の平均粒径の算出から除外しており、上記した「0.7〜7nm」の範囲は「7nm以下」と同じ意味である。なお、析出物には、鋳造段階で生じる晶出物は当然含まれない。また、析出物の均一分散に関して敢えて定義するとすれば、75万倍のTEMで観察した時、後述する顕微鏡観察位置(極表層等特異な部分を除いて)の任意の200nm×200nm領域において、少なくとも90%以上の析出粒子の最隣接析出粒子間距離が、100nm以下、好ましくは75nm以下、又は平均粒子径の25倍以内であるか、又は、後述する顕微鏡観察位置の任意の200nm×200nm領域において、析出粒子が少なくとも25個以上、好ましくは50個以上存在すること、すなわち標準的なミクロ的な部位において特性に影響を与える大きな無析出帯がないこと、すなわち、不均一析出帯がないと定義できる。
析出物の大きさは、析出物の平均粒径が3.9nmを超えると強度への寄与が少なくなり、平均粒径で1.3nm、または1.5nm、よりも小さいと、強度的にも飽和し、熱伝導性・電気伝導性が劣る。析出物の大きさが1.5nmよりも小さいと、熱伝導性・電気伝導性が劣るのは、微細すぎると全てを析出させることが困難なためである。更に、析出物の平均粒径は3.5nm以下が好ましく、特に、熱間鍛造後の金属組織が再結晶粒から構成される場合、析出物により合金が、強化されるので、析出物の平均粒径は3.5nm以下が好ましく、最適には、3.1nm以下である。下限側は、熱伝導性・電気伝導性との関係から1.7nm以上が好ましい。また、平均粒径が小さくても、粗大な析出物の占める割合が大きいと、強度に寄与しない。すなわち、7nmを超える大きな析出粒子はさほど強度に寄与しないので、析出粒径が7nm以下の割合が、90%以上が必要で、好ましくは95%以上である。更には、析出物が均一分散していないと、すなわち無析出帯があると強度は低い。析出物に関し、平均粒径が小さいこと、粗大な析出物がないこと、均一に析出していることの3つの条件を満たすことが最も好ましい。なお、前記及び後述する析出熱処理条件式の値が下限値よりも低い場合、析出物は微細であるが、析出量が少ないために強度への寄与が小さく熱伝導性も悪くなる。析出熱処理条件の値が上限値よりも高い場合、熱伝導性は向上するが、析出物は大きくなり、7nmを超える粗大な粒子が増え、析出物粒子の数が減少し、析出による強度への寄与が小さくなる。
本発明においてCoとPの量が理想的な配合であっても、また、理想的な条件で析出熱処理されても、全てのCo、Pが析出物を形成することはない。本発明で工業的に実施できるCoとPの配合及び析出熱処理条件で析出熱処理すると、Coの概ね0.005mass%、Pの概ね0.006mass%は、析出物形成にあたらず、マトリックスに固溶状態で存在する。従って、Co、Pの質量濃度から各々0.005mass%及び0.006mass%を差引いて、Co、Pの質量比を決定する必要がある。すなわち、Co、Pの組成、又は、単にCoとPとの比率を決定するのでは不十分であり、([Co]−0.005)/([P]−0.006)の値が3.1〜4.9が必要不可欠な条件であり、好ましくは、3.2〜4.6、より好ましくは3.3〜4.3、最適には3.5〜4.0である。([Co]−0.005)と([P]−0.006)が最適な比率であるならば、目的とする微細な析出物が形成され、高い熱伝導性・電気伝導性、高強度を得ることができる。一方、上述した比率の範囲から離れると、Co、Pのどちらかが析出物形成にあたらずに固溶状態になり、高強度が得られないばかりか熱伝導性・電気伝導性が悪くなる。または、目的の化合比率と異なった析出物が形成され、析出粒子径が大きくなったり、強度に余り寄与しない析出物であったりするので、熱伝導性・電気伝導性、強度、クリープ特性に優れた材料に成りえない。
次に、Snについて説明する。Snは、0.003mass%以上の少量の含有量で、熱間鍛造最初の工程である加熱において、925℃以上の温度で、短時間の加熱でCo、Pの固溶を促進して結晶粒を粗大なものにし、一方では、熱間鍛造時の動的再結晶、静的再結晶の生成を抑制する。そして、Snの添加は、熱間鍛造時の材料温度が局部的に低下しても、局所的に加工度が異なっても、また熱間鍛造に時間を要しても、Co、Pの固溶状態を保持する作用を持つ。Snの添加は、熱間鍛造プロセスの最初である加熱の段階では、金属組織を粗大にし、Co、Pをより速く固溶状態にし、熱間鍛造加工の段階では、Co、P等の溶体化感受性を低くし、つまり、溶体化状態を保持し、最終の析出時にはCoとPを主体とする析出物を多く析出させつつ、それらの析出物が微細に、そして均一に分散させて析出させる作用を有する。金属組織的には、鍛造前の加熱の925℃以上の高温時においては、結晶粒の粗大化を促進し、熱間鍛造中においては、再結晶核生成を抑制する役割を果たす。Co、P、Snの共添加により、本願で規定している鍛造温度でCo、P等を固溶状態にすることは、熱間での変形抵抗を低くし、小さなパワーで成形することを意味する。一方、熱間鍛造時の動的再結晶、静的再結晶核の生成を抑制し、動的再結晶、静的再結晶が遅れることは、熱間鍛造時の再結晶温度を高くし、鍛造後の金属組織で、未再結晶状態が得られやすくなる。熱間鍛造の加工率にもよるが、925℃以上に鍛造材を一旦加熱し、そして鍛造直前の温度が、Co、Pが固溶状態にある700℃から850℃の間であれば、本願で目的としている加工組織が得られる。また、一般的に熱伝導性と電気伝導性は、概ね比例関係にあるが、熱間鍛造プロセスと、Co、P等を理想的な状態にまで析出させる作用を有するSnの効果が相まって、比例関係以上に熱伝導性がよくなる。また、Snの固溶により、熱間鍛造品のマトリックスの耐熱性を向上させることにより、硬ろう付け後の耐力を高いまま保持するとともに、クリープ特性を向上させる作用を有する。
上記のようなSnの効果を発揮させるためには、Snの含有量は0.003mass%以上が必要であるが、よりその効果を発揮させるためには、0.005mass%以上が好ましく、最適には0.007mass%以上が好ましい。一方、Snの含有量が0.08mass%を超えるとその効果は飽和し、電気・熱伝導性が悪くなる。熱伝導性、電気伝導性がより必要とする場合は、0.06mass%以下が好ましく、強度、耐熱性との関係もあるが0.04mass%以下が好ましい。
次に、Zn、Mg、Agについて説明する。Zn、Mg、Agは固溶強化によって合金の強度を向上させると同時に、Snと同様に熱間鍛造の一連のプロセスの中でCo、Pの固溶状態を保持し、動的・静的再結晶を遅らせる働きを持つ。Znは、更にはんだ濡れ性、ろう付け性を改善する。Zn等は、Co、Pの均一析出を促進させる作用を持つ。そしてAg、Mgは、硬ろう付け後の耐力、クリープ特性を向上させる。Zn、Mg、Agの含有量が組成範囲の下限より少ないと、上記した効果が発揮されない。各々の組成範囲の上限を越えると、上記した効果が飽和するばかりか、熱伝導性が低下し始め、熱間鍛造時の変形抵抗が大きくなり、変形能が悪くなる。Znの組成範囲の上限は、0.2mass%以下が好ましく、0.1mass%以下がより好ましい。同様に、Mgの含有量は、0.003mass%以上が好ましく0.005mass%以上がよい。Mgの組成範囲の上限は、0.1mass%以下が好ましく、0.05mass%以下がより好ましい。Agの含有量は、0.003mass%以上が好ましく0.005mass%以上がよい。一方Agの組成範囲の上限は、0.2mass%以下が好ましく、0.1mass%以下がより好ましい。
次に、Fe、Niについて説明する。Fe、NiはCoの機能を一部代替すると同時にCoとPの結合をより効果的に行わせる働きをする。従って、基本のCo、Pとの関係式から更に、Ni、Feを加えると次の二つの関係式が成立する。
3.1≦([Co]+0.9×[Ni]+0.8×[Fe]−0.005)/([P]−0.006)≦4.9、(好ましい範囲は、3.2〜4.6、より好ましくは3.3〜4.3、最適には、3.4〜4.0)
0.010≦2×[Ni]+3×[Fe]≦0.75×[Co]、(好ましい範囲は、0.025〜0.7×[Co]、より好ましくは0.040〜0.6×[Co]、最適には、0.050〜0.5×[Co])
[Ni]の0.9の係数と、[Fe]の0.8の係数は、CoとPとの結合の割合を1とした場合の、NiとFeがPと結合する割合を表したものである。なお、Co、Fe、NiとP等の配合比が関係式の範囲から外れていくと、析出物が減少し、析出物の微細化、均一分散が損なわれ、析出にあずからないCo、Fe、Ni又はP等がマトリックスに過分に固溶し、熱伝導性・電気伝導性が悪くなると同時に目標とする高い耐力が得られない。本発明で工業的に実施できるCo、Ni、FeとPの配合及び析出熱処理条件で析出熱処理すると、([Co]+0.9×[Ni]+0.8×[Fe])のうち概ね0.005mass%、Pは概ね0.006mass%は、析出物の形成にあたらず、マトリックスに固溶状態で存在する。従って、([Co]+0.9×[Ni]+0.8×[Fe])とPの質量濃度から、各々0.005mass%、0.006mass%を差引いて、Co等とPの質量比を決定する必要がある。そして、そのCo等とPとの析出物は、概ねCo:Pの質量濃度比が4.3:1から3.5:1になる、例えばCoP、Co2.aP、又はCo1.bPを中心に、Coの一部がNi、Feに置き換わったCoNiFe、CoNi、CoFe等が形成される必要がある。CoP、又はCo2.xyを基本とする微細析出物が形成されないと、本件の主題である高い耐力、高い熱伝導性・電気伝導性、更には硬ろう付け後の高い耐力やクリープ特性が得られない。
Fe、Niの単独の添加は、熱伝導性・電気伝導性を低下させ、熱間鍛造時の変形抵抗が高くなる。また、NiはCo、Pとの共添加のもとでCoの代替機能を持つほか、Niによる熱伝導性・電気伝導性の低下量が小さい。
Fe、Niは、数式([Co]+0.9×[Ni]+0.8×[Fe]−0.005)/([P]−0.006)の値が3.1〜4.9の中心値から外れても、導電性の低下を最小限に留める機能を持つ。しかし、Niを0.15mass%以上や、数式(2×[Ni]+3×[Fe])の値が0.8×[Co]を越えるように過剰に添加すると、析出物の組成が徐々に変化し、強度向上や耐熱性の向上に寄与しないばかりか、熱間鍛造時の熱間変形抵抗が増大し、熱伝導性・電気伝導性が低下する。
Feは、CoとPとの共添加のもと、微量の添加で強度を向上させ、また、動的再結晶を遅らせて未再結晶組織を増大させる。ただし、Feの含有量が0.10mass%を越えたり、数式(2×[Ni]+3×[Fe])の値が[Co]を越えるようにFeを過剰に添加すると、析出物の組成が徐々に変化し、強度向上や耐熱性が向上しないばかりか、熱間変形抵抗が増大し、熱伝導性・電気伝導性が低下する。
次に、金属組織について説明する。
熱間鍛造品は、一般的に複雑な形状を有し、各部位により様々な加工率で熱間加工されている。また、熱間鍛造される鍛造材の加熱条件や、熱間鍛造の回数、熱間鍛造温度等の諸条件にもよるが、熱間鍛造で得られる金属組織は、熱間鍛造品の各部位により異なったものである。本願の高耐力、高熱伝導性、高電気伝導性を有する熱間鍛造品を得るためには、平均結晶粒径が0.050mmから0.50mmである再結晶粒群の占める割合と未再結晶の占める割合の合計で80%以上が必要である。本発明合金は、熱間鍛造中において、再結晶核の生成を抑制する性質を持つが、熱間鍛造温度が高く、熱間加工率が低い場合は、熱間鍛造品の金属組織は再結晶する。ところが再結晶粒の平均結晶粒径が0.050mm以下である再結晶粒群の占める割合が20%以上であると、次の析出熱処理時で生成するCo、Pの析出物の平均粒径が大きくなり、析出がやや不十分で、全体として高耐力が得られない。また、電気、熱の伝導性も悪くなる。再結晶粒の平均結晶粒径が、0.050mm以上であると、析出熱処理時で生成するCo、Pの析出物の平均粒径が小さくなり、全体として高耐力が得られる。そして、平均結晶粒径が0.050mm以上であると、Co、Pとの析出強化に加え、Co、P、Sn等の構成元素の拡散を遅らせるので、マトリックスの耐熱性が高められ、本願の使用環境である100〜200℃における耐力とクリープ特性を高めることができる。また、平均結晶粒径が0.050mm以上であると、約800℃の硬ろう付け時において、Co、Pの再固溶を遅らせ、Co、Pの微細な析出物を残留させることができるので、硬ろう付け後もより高い耐力が得られる。また、熱間鍛造後に更に冷間加工を施している場合は、その加工ひずみが残存するので、より高い耐力が得られる。なお、平均結晶粒径が0.050mmから0.50mmである再結晶粒群であって、それらの平均結晶粒径は、0.070mm以上が好ましく、0.080mm以上であることが最も好ましい。一方、平均結晶粒径が、0.50mmを超えると、延性に問題が生じる。より好ましくは、0.30mm以下であり、最適には0.20mm以下である。
熱間鍛造品の金属組織が未再結晶の状態であると、熱間鍛造前の加熱時に生じた平均結晶粒径が0.1mm以上である結晶粒内にひずみを蓄積させることができるので、析出熱処理後の微細な析出粒子の存在と合わさって、より高い耐力を得ることができる。そして使用環境である100〜200℃における耐力とクリープ特性を高めることができる。未再結晶粒内に析出する析出粒子が、0.050mm以上の平均結晶粒径を持つ再結晶粒群の析出物よりも少し大きくなるので、析出物による耐力への寄与が少なくなるが、熱間鍛造時のひずみが増加するので、ひずみによる耐力への寄与が多くなる。熱間鍛造の加工率が高い場合、または、鍛造直前の温度が低い場合、未再結晶粒を持つ発明合金の耐力は、少し高くなるが、トータル的に、平均結晶粒径が0.050mm以上の再結晶粒群と未再結晶粒との間に耐力、熱伝導性、電気伝導性に大きな差は無いので、これらが占める割合が合計して80%以上存在すると、高耐力、高熱伝導性、高電気伝導性を有する熱間鍛造品になる。勿論、使用環境である100〜200℃において高い耐力とクリープ特性を有することができる。なお、熱間鍛造で生成する未再結晶組織は、冷間鍛造や冷間加工で生じる加工組織と形状は似ているが、冷間加工されたものに比べ転位密度が低ので、延性に富んでいる。
次の何れかの場合の条件が揃うと、熱間鍛造品の平均結晶粒径が0.050mmから0.50mmである再結晶粒群の占める割合が60%以上になり、高耐力、高熱伝導性、高電気伝導性を有する熱間鍛造品が得られる。
1.熱間鍛造品の中でも、加工率が全体的に低い場合
2.熱間鍛造前の鍛造材の結晶粒が粗大化している場合
3.熱間鍛造品が大きいため、静的再結晶が起こりやすく、結晶成長がし易い場合
4.熱間鍛造温度が高い場合
熱間鍛造品の平均結晶粒径のより好ましい条件として、平均結晶粒径が0.080mmから0.30mmである再結晶粒群の占める割合が、60%以上、又は、平均結晶粒径が0.050mmから0.50mmである再結晶粒群の占める割合が、80%以上、最適には、平均結晶粒径が0.080mmから0.20mmである再結晶粒群の占める割合が、80%以上である。これらの金属組織の状態にすることにより、すなわち、一般的な銅合金の平均結晶粒径より大きくすることにより、析出熱処理時で生成するCo、Pの析出物の平均粒径が小さくなり、高耐力が得られ、硬ろう付けを行っても析出粒子の再固溶を妨げ、更には鍛造品に冷間加工を施すと、その加工ひずみをより多く結晶粒内に蓄積できるので、より高い耐力を有することができる。結晶粒が大きいと、原子の拡散を遅らせる作用を有するので、使用環境である100〜200℃での耐力とクリープ特性を高めることができる。なお、平均結晶粒径が、0.50mmを超えると、延性に問題が生じる。平均結晶粒径は、より好ましくは0.30mm以下であり、最適には0.20mm以下である。
なお、熱間鍛造後、析出熱処理前に平均結晶粒径が0.050mmから0.50mmである再結晶粒群の占める割合が60%以上である熱間鍛造品は、熱間鍛造後、析出熱処理前の時点で、耐力が60〜130N/mm、ビッカース硬さが50〜85であり、かつ導電率が33〜49%IACSである。析出熱処理前の強度が低いので、容易に矯正や目的とする形状に成形がし易い。また、熱間鍛造品の形状によっては熱間鍛造後、析出熱処理前に1〜20%の軽冷間加工を施す場合がある。熱間鍛造後に軽冷間加工を施すことにより、熱処理後の熱間鍛造品の耐力は、著しく向上する。具体的には5〜15%の冷間加工で280〜390N/mmの耐力となり、より好適なヒートシンクや、エンドリング用の熱間鍛造品となる。更には、使用環境である100〜200℃の耐力とクリープ特性を高めることができる。具体的には、200℃で100N/mmの応力を負荷し、1000時間のクリープ試験を行ったとき、初期変形を除いた全クリープ変形量が0.15%以下の耐クリープ変形に優れた熱間鍛造品になる。
鍛造前の鍛造材の結晶粒径が大きくても、次の場合に熱間鍛造品の金属組織は、未再結晶状態になる。
1.熱間鍛造加工率が大きい場合
2.薄肉に鍛造される箇所等において、熱間鍛造中を含め温度低下が急で、動的・静的再結晶が生じる時間がない場合
3.熱間鍛造温度が低い場合
熱間鍛造温度が低く、熱間鍛造品の金属組織が未再結晶状態にあっても、鍛造材が、少なくとも一旦925℃以上に加熱されているので、析出熱処理後の析出物が微細であり、合金は強化されると同時に、熱間鍛造時に未再結晶状態に相当する蓄積されたひずみが熱処理後も残り、それが加算されるので、高耐力、高熱伝導性、高電気伝導性が得られる。更に、元の結晶粒が未再結晶状態であるので、硬ろう付けを行っても析出物の消滅が遅れ、使用環境である100〜200℃における耐力とクリープ特性を高めることができる。未再結晶粒の占める割合が、60%以上であると、高耐力、高熱伝導性、高電気伝導性を有する熱間鍛造品が得られる。より好ましい条件としては、未再結晶粒の占める割合は、80%以上である。
次に、製造工程について説明する。
鍛造前の加熱温度は、鍛造材を925℃以上(好ましくは940℃以上)に加熱する必要がある。925℃以上に加熱すると、Snの含有の効果もあってCo、Pはマトリックスに固溶し、Co、Pの析出物による結晶粒成長抑制作用が無くなるので、平均結晶粒径が0.10mm以上の粗大な金属組織となる。一旦、金属組織が粗大化する925℃以上に鍛造材を加熱すれば、その後に鍛造材を加熱するための加熱炉の中で温度低下があっても、炉から鍛造するまでに鍛造材が温度低下しても、複数回熱間鍛造する際に熱間鍛造品の温度が低下しても、Co、Pの固溶状態は維持される。例えば、ドーナツ状の大型エンドリングを作る時は、鍛造材を10回以上鍛造し、熱間鍛造開始から終了まで5分から15分掛かるが、最終の熱間鍛造温度が少なくとも700℃以上であれば、Co、Pのほとんどが溶体化状態にある。
そして、粗大化した結晶粒は、熱間鍛造中の再結晶核の生成を遅らせるので、その生成する平均結晶粒径を、0.050mm以上、更には0.080mm以上の大きなものとする、又は、熱間鍛造加熱時にできた平均結晶粒径0.1mm以上の結晶粒をひずんだ状態させる、すなわち未再結晶状態にさせる。そして熱間鍛造品の結晶粒が大きいと、約800℃の硬ろう付け時において、析出熱処理によって析出していたCo、Pの再固溶を遅らせる。
加熱温度が925℃を下回り、平均結晶粒径が0.10mm未満であると、熱間鍛造中の温度低下と、熱間鍛造時間の経過と共に、Co、P等の固溶状態が維持されず、強度に余り寄与しない粗大な析出物の析出が始まり、鍛造後に析出熱処理をしても、析出する余力が少なくなっているため、高い耐力が得られない。また、この析出熱処理で析出する粒子も、平均結晶粒径を一旦0.1mm以上に粗大化させた場合より大きくなるので、高い耐力が得られないし高いクリープ特性も得られない。また、電気・熱の伝導性も悪い。
鍛造材を一旦925℃以上に加熱し、850℃以下の温度で鍛造すると、薄肉部においては、冷却速度が速いこと、加熱により鍛造材の結晶粒が粗大化していること、Co、P等が固溶状態にあること、Snを含有していることにより、金属組織は未再結晶状態になる。例えば、鍛造材を連続炉で加熱、冷却するとき、最高到達温度を925℃以上にし、次いで700℃から850℃の間の所定の温度にまで下げ、意図的に炉内で温度を制御、熱間鍛造することにより、目的とする未再結晶組織を安定して得ることが出来る。未再結晶状態による蓄積されたひずみと析出熱処理後の微細析出物の析出の両方の効果により、合金は強化される。なお、925℃から前記の所定の温度までの平均冷却速度が、3℃/分以上、好ましくは5℃/分以上であれば、合金中のCo、Pの固溶状態はほとんど維持される。また、熱間鍛造時の温度が800℃前後から、鍛造材の結晶粒が粗大化していること、Co、P等が固溶状態にあること、Snを含有していることにより、熱間加工率の低い厚肉部でも金属組織は一部で未再結晶状態になる。但し、合金中のCoやPが幾ら固溶状態にあるからと言っても、熱間鍛造温度の低下と共に、熱間変形抵抗が高くなるので、鍛造機のパワー、成形性との関係を鑑みて、鍛造温度を決定すればよい。本発明合金は、鍛造温度が低くなっても、前記のとおり、最高到達温度から所定の低い温度に達するまで時間が経過しても、Co、Pが固溶状態にあるので、他の析出型銅合金に比べ、遥かに熱間変形抵抗が低く、変形能が優れている。
一旦、短時間であっても925℃以上に加熱し、鍛造前の鍛造材の結晶粒を成長させ、平均結晶粒径を0.10mmから5.0mmにする。結晶粒度を0.10mm以上にすることにより、Co、P等のほとんどを固溶状態にすることができる。
そして、高温で素材の結晶粒を粗大化させておくと、鍛造温度を意図的に低くしても(鍛造直前の温度が700℃以上)、複数回熱間鍛造して温度低下や、時間がかかってもCo、P等を固溶状態に保つことができる。粗大化した結晶粒は、850℃以下の温度で熱間鍛造すると金属組織を未再結晶状態にさせることができ、未再結晶状態であると、熱間鍛造品にひずみを蓄積させることができる。析出熱処理時において、Co、Pの析出物が、微細に析出し、かつ、熱間鍛造時に蓄積されたひずみが更に加算されるので、析出熱処理後の耐力をより高いものにすることができる。また、使用環境である100〜200℃の耐力とクリープ特性を高めることができる。未再結晶粒にするための鍛造温度は、より好ましくは830℃以下であり、下限は変形抵抗が高くなるので好ましくは、720℃以上、より好ましくは750℃以上で鍛造し、400℃までの温度域を12℃/秒の冷却速度で冷却し、その後析出熱処理を行うと耐力が高く、熱伝導性・電気伝導性の優れたものができる。
Co、P等が固溶状態にあるかどうか、鍛造品に析出余力があるかどうかは、熱間鍛造後、析出熱処理前の鍛造品の導電率で判別できる。析出による合金の強化は、析出物の粒径の大きさと共に、析出余力があるかどうかがもう1つの大きなポイントである。本願の合金組成を満足しておれば、熱間鍛造後、熱処理前の導電率:%IACSの値が、(45-25[P]−20[Co]-10[Fe]‐5[Sn]-3[Mg]-2[Ni])の式で表される値以上であり、(55-25[P]−20[Co]-10[Fe]‐5[Sn]-3[Mg]-2[Ni])の式で表される値以下であることが好ましい。下限は、工業的に熱間鍛造にCo、P等が固溶状態にある理想の数値であり、上限側は、本願を達成する上で鍛造品に析出余力が残っている限界の数値である。上限側は、(52-25[P]−20[Co]-10[Fe]‐5[Sn]-3[Mg]-2[Ni])であることが好ましい。Co、P等の含有量にもよるが、鍛造後の導電率は、33〜49%IACS であり、熱処理後の導電率が75%IACS以上であるので、差が大きいほど、析出量が大きいことを示している。析出量の観点から、析出熱処理前後での導電率の差が、32%IACSが必要であり、好ましくは、36%IACS以上であり、最適には、40%IACS以上である。
所定の温度に達しない、例えば900℃の加熱である場合、Co、P等の固溶はほとんど終了しているので、加熱後に直ちに熱間鍛造し、そして直ちに水冷し、析出熱処理を行うと、目標とする近い耐力まで到達することができる。しかしながら、加熱後に熱間鍛造までの時間が掛かる場合や、数回の熱間鍛造を実施し、鍛造品の温度が750℃近くまで低下する場合や、熱間鍛造後に冷却までの時間を要する場合には、加熱温度が925℃より低いと、Co、Pは、固溶状態を保持されずに大きな析出粒子が析出する。析出熱処理を施しても、析出する析出粒子は、鍛造材を熱間鍛造前に925℃以上に加熱した場合より大きい。結果として、平均析出粒子径は、大きいものになり、4nmを超え、又は0.7〜7nmの大きさの析出物が90%未満となり、必要とする耐力まで達しない。金属組織的に、鍛造材の加熱が925℃より低いと、結晶粒は大きくならず、熱間鍛造後の金属組織は、再結晶粒であっても平均結晶粒径が0.05mm以下の割合が多い。また未再結晶粒であっても、元の鍛造材の結晶粒が小さい。これらにより、析出粒子の粒径が大きくなり、耐力が低くなり、また、100〜200℃でのクリープ特性も悪くなり、ろう付け後においても、耐力は低く、クリープ特性も悪くなる。
高温加熱後に、直ちに熱間鍛造する必要もなく、また鍛造を複数回行ってもよい。しかしながら、Co、Pの固溶状態を保持するためには、最後の鍛造は、少なくとも鍛造温度を700℃以上で実施し、成形性や鍛造中の冷却を鑑み、好ましくは730℃以上でする必要がある。
次に、熱間鍛造後の冷却について説明する。
700℃以上の温度で熱間鍛造後、400℃以下に12℃/秒以上、好ましくは20℃/秒以上の冷却速度で急冷するか、又は熱間鍛造後、650℃から550℃の温度領域を12℃/秒以上、好ましくは20℃/秒以上の冷却速度で通過することが、冷却時の絶対条件になる。
一般的には水冷が好ましいが、析出が開始する温度の650℃から550℃の領域を速く通過させることが必要である。この温度域を、ゆっくり通過すると、強度に寄与しない粗大な析出物が析出し、後の析出熱処理で熱処理しても析出する粒子は大きく、平均析出粒子径は、4nmを超える、又は0.7〜7nmの大きさの析出物が90%未満となるので、耐力は必要とされる数値にまで達しない。
次に、析出熱処理について説明する。
熱間鍛造後の冷却後に、固溶したCo、Pを析出させるために析出熱処理を行う。熱処理後の強度は析出粒子径に依存する。析出粒子の粒径が小さい方が銅合金熱間鍛造品の強度は高くなる。
析出熱処理の条件は、熱処理温度をT℃、保持時間をt時間とすると、520≦T+20×t1/2≦615の関係を充たすようにする。ただし、前記の関係式においてT℃は450〜600℃であり、t時間は0.2〜10時間である。
析出熱処理のより好ましい範囲は、530≦T+20×t1/2≦590であり、T℃は470〜570℃であり、t時間は0.3〜8時間である。所定の析出熱処理後の温度から、400℃までの温度域を、3℃/分以下の冷却速度で冷却すると、電気・熱伝導性が向上する。例えば、50℃/分で冷却するより、1℃/分で冷却したほうが、導電率が約2%IACS向上する。なお、0.3℃/分の冷却速度で概ねこの効果は飽和する。また、電気・熱伝導性と引張強さ、耐力との関係において、強度重視の場合、525≦T+20×t1/2≦570が好ましく、電気・熱伝導性を重視する場合、560≦T+20×t1/2≦605が好ましい。必要とされる特性に応じて、熱処理条件を適切に設定することが出来る。
析出熱処理の基本は、上記のような冷却後の再加熱であるが、熱間鍛造後の冷却過程で、650℃から550℃までの温度域を通過させた後に、540〜400℃の領域を2℃/分以下の冷却速度で冷却する、或いはその温度域で保持してもよい。Co、Pの析出物が微細に析出する。この場合、540〜400℃の領域での冷却時間若しくは保持時間は、10分から200分で十分効果があり、析出を兼ねた冷却を行うことができる。鍛造材は、熱間鍛造時に、金属組織の状態が部位によって、再結晶粒であるか未再結晶粒であるかや、平均結晶粒径や、加工ひずみの残留等に差があり、不均一な状態になっている。しかしながら、この熱処理により、析出処理を行うと共に残留応力を無くすので、金属組織を均一な状態にすることができる。
熱間鍛造後の冷却と、析出熱処理との間に冷間加工を行ってもよい。熱間鍛造後、冷間での矯正は勿論、冷間加工、例えば更に冷間で鍛造すると、熱伝導性・電気伝導性を損なわずに耐力やクリープ特性が向上する。また、熱間鍛造品の平均結晶粒径が、厚肉部において0.05mm以上、好ましくは0.08mm以上、或いは、未再結晶部の元の平均結晶粒径径が0.1mmで粗大化しているので、硬ろう付けの条件が800℃の高温であっても短時間であれば、Co、Pの再固溶を遅らせることができる。また、冷間加工を施している場合には加工ひずみの回復を遅らせるので硬ろう付け後の耐力やクリープ特性が高くなる。
なお、熱間鍛造品を800〜850℃の硬ろう付け後に空冷すると、熱伝導性・電気伝導性が悪くなる。それは、800℃の高温であっても短時間であれば、Co、Pの再固溶が遅れるものの、Co、Pが固溶しているためであり、Co、Pの再析出処理を行う必要がある。硬ろう付け後の冷却過程で、500〜650℃の温度で、5〜100分保持、生産性を鑑みれば、550〜650℃の温度で5〜50分保持、又は550〜650℃の温度域を5〜50分かけて冷却してもよい。又は、硬ろう付け後、一旦空冷し、500〜650℃の温度で、5〜100分保持、生産性を鑑みれば、550〜650℃の温度で5〜50分保持すれば、容易に、再び、高い熱伝導性・電気伝導性を有することができる。この硬ろう付け後の熱処理は、主として、熱伝導性・電気伝導性を向上させる目的であり、耐力、熱伝導性・電気伝導性を向上させる熱間鍛造後の析出熱処理とは異なり、区別される。
(実施例)
上述した第1発明合金、第2発明合金、第3発明合金及び比較用の組成の銅合金を用いて、高性能熱間鍛造品を作成した。図2は、熱間鍛造品を作成した合金の組成を示す。また、比較用として、純銅のC1220とC1020も使用した。
試験1として、次のようにして銅合金熱間鍛造品を製造した。
最初に実操業の電気炉によって原材料を溶解し、組成を調整して、外径240mm、長さ700mmのビレットを製造した。ビレットを870℃で2分間加熱し、間接押出機で外径36.5mmの棒を押し出した。間接押出機の押出能力は2750トンであった。熱間押出材の平均結晶粒径は、いずれも0.030mmから0.045mmであった。
熱間押出材を鍛造材として、鍛造前の加熱温度、鍛造温度、鍛造終了温度、鍛造終了後の冷却速度、析出熱処理条件を変えた複数の工程によって銅合金熱間鍛造品を製造した。図3に各工程の製造条件を示す。
工程A,A−1,A−2,C,E,F,G,H,H−1は、上述した第1製造方法に適合した工程である。
工程D,I,Jは、第1製造方法の比較例の工程である。
工程Bは、上述した第2製造方法に適合した工程であり、熱間鍛造後に、500℃のソルトバスに浸漬し、30分間保持した。
工程Sは、純銅のC1220とC1020に適した工程である。
鍛造形状は、φ36.5mm、L=152mmの熱間押出材を横置きにして、20mmの厚肉部と6mmの薄肉部を含む平板に熱間鍛造し、各々複数個鍛造し、析出熱処理をした。図4に、熱間鍛造した平板の形状を示す。平板の長手方向が、熱間押出材の押し出し方向に対応している。熱間鍛造の前の加熱後に、水冷して断面の金属組織を観察した。
鍛造品の1つは、そのままアムスラー万能試験機で引張試験し、耐力を求めた。
鍛造品の1つは、厚肉部をX部(2か所)とし、薄肉部をY部とし、厚肉と薄肉の境界部をZ部として切り出し、X、Y部をアムスラー万能試験機で引張試験し、耐力、伸び、引張強さを測定した。
鍛造品の2つは、任意の個所を切断し、1つの鍛造品のX、Y、Z部の各々の10か所ずつ、金属組織を観察し、再結晶の有無、再結晶粒の平均結晶粒径を求めた。同時に、X、Y部の熱伝導率、電気伝導率を測定した。鍛造品の熱伝導率、電気伝導率は、X、Y部の平均値を採用した。
鍛造品からX部を1個切り出し、200℃で50N/mmの応力を加え、1000時間のクリープ試験し、初期の変形を除く全クリープ変形を測定した。
また、鍛造品からX部を2個切り出し、ろう付け相当の試験、すなわち、実際のAgろう付け条件に相当する825℃のソルト中で300秒間加熱、空冷後、再び590℃のソルトバスで、30分間浸漬の熱処理を施し空冷した(以下、この試験をろう付け相当試験という)。なお、本試料を825℃のソルトバスに浸漬したところ、浸漬後、85秒から105秒間で、800℃に達した。よって、少なくとも、800℃〜825℃で180秒以上高温に加熱されたことを意味する。ろう付け相当試験片を加工し、200℃で50N/mmの応力を加え、1000時間のクリープ試験し、初期の変形を除く、全クリープ変形を測定した。
試験2として、直径240mm、長さ80mmの鋳塊片を950℃に加熱し、熱間鍛造を繰り返し、外径約300mm、内径約90mm、高さ約50mmの熱間鍛造片を得た。鍛造終了温度650℃で、鍛造後に空冷した。
この熱間鍛造片を鍛造材として、製造条件を変えた複数の工程によって熱間鍛造品を製造した。鍛造材をガス炉で再加熱し、熱間鍛造により、外径約350mm、内径約200mm、高さ約50mmのリングにした。鍛造回数は約20回である。一部は更に冷間鍛造し、高さを44mmにした。この加工は冷間加工率12%に相当する。製造条件は、鍛造前の加熱温度、鍛造温度、鍛造終了温度、鍛造終了後の冷却速度、析出熱処理条件を変化させた。図5に、各工程の製造条件を示す。
工程K,K−1,L,Mは、上述した第1製造方法に適合した工程である。
工程N,O,P,Q,Rは、第1製造方法の比較例の工程である。
工程Tは、純銅のC1220とC1020に適した工程である。
析出熱処理後に試験1の鍛造試験片のX部とほぼ同じ大きさである断面20mm×20mm、長さ160mmの試験片を切り出し、断面の金属組織観察、熱伝導率・電気伝導率の測定、ろう付け相当試験、クリープ試験を行った。クリープ試験は、冷間鍛造無しの場合は、200℃で50N/mmの応力、冷間鍛造を行ったものは、200℃で100N/mmの応力を加え、1000時間のクリープ試験し、初期の変形を除く、全クリープ変形量を測定した。ろう付け相当試験は、冷間鍛造の有無に関わらず、825℃のソルトバス中で300秒間加熱した。空冷後に再び590℃のソルトバスで、30分間浸漬し、主として熱・電気伝導度回復のための析出熱処理を施し、その後に空冷した。なお、C1020、C1220を用いた試験については、この析出熱処理を施していない。このろう付け相当試験片の耐力、熱伝導率、電気伝導率を測定した。更に、ろう付け相当試験片を加工し、200℃で50N/mmの応力を加え、1000時間のクリープ試験を行い、初期の変形を除く、全クリープ変形量を測定した。
試験1及び試験2の各熱間鍛造品の評価を下記の試験で行った。
引張試験は、次のようにして行った。
厚肉部(X部)と試験2のリング鍛造品は、試験片を切り出し、JIS Z 2201の金属材料引張試験片の4号試験片にしたがって試験した。但し、平行部の径を10mmとし、標点距離を4×A1/2(Aは平行部の断面積)とした。試験2のリング鍛造品については、幅方向は中央で、表面を含んだ、20mm×20mmの断面を持ち、長さ160mmに切り出した直方体を試験片とした。
薄肉部(Y部)は、試験片を切り出し、JIS Z 2201の金属材料引張試験片の4号試験片にしたがって試験した。但し、平行部の径を5mmとし、標点距離を4×A1/2(Aは平行部の断面積)とした。
再結晶と未再結晶粒の識別方法について説明する。
再結晶粒は、正6角形に近い形状を示し、結晶粒に外接円と内接円を描くと(結晶粒の外接円の径)/(結晶粒の内接円の径)の比は、ほとんどの再結晶粒が、2.0未満である。従って、(結晶粒の外接円の径)/(結晶粒の内接円の径)の比が2.0以上の結晶粒を未再結晶粒とする。
本明細書でいう再結晶粒群と、再結晶粒群の平均結晶粒径の測定方法について説明する。再結晶粒の平均結晶粒径は、JIS H 0501に準拠して測定する。
金属組織を、倍率を75倍とし、50mm×70mmの視野で観察する。但し、結晶粒径が、0.15〜0.20mmを境にして粗大な結晶粒の場合は、37.5倍とした。そして、その観察した視野の金属組織が再結晶粒であるときには、その視野内にある全ての再結晶粒の集まりをその視野における再結晶粒群とする。そして、観察した視野の再結晶粒の平均結晶粒径がammであるとすると、その視野にあった再結晶粒は、再結晶粒の平均結晶粒径がammであった再結晶粒群とする。その観察した視野の金属組織が未再結晶の場合には、その視野は全て未再結晶粒とする。
このようにして、観察する金属断面の全体から、均一に10視野を観察し、視野毎に再結晶粒か未再結晶粒であるかを判定する。そして、観察した視野が再結晶粒であった場合には、平均結晶粒径を測定する。このようにして、10視野の観察結果から、その断面金属組織において、再結晶粒の平均結晶粒径が所定の範囲に入る再結晶粒群の占める割合を算出する。
例えば、10視野の内、1視野が未再結晶粒で、9視野が再結晶粒であり、再結晶粒であった9視野の内、8視野の平均結晶粒径が0.050〜0.50mmであり、1視野の平均結晶粒径が0.01mmであったとする。この場合は、再結晶粒の平均結晶粒径が0.050〜0.50mmである再結晶粒群の占める割合が80%であり、未再結晶粒の占める割合が10%ということになる。
なお、観察した視野が、未再結晶と再結晶が混在する視野であった場合は、未再結晶粒と再結晶粒(微細な結晶粒を含む)を区分し、再結晶部を画像処理ソフト「WinROOF」によって2値化し、その面積率が20%未満の場合は、未再結晶粒の視野と判定し、また、80%以上の場合は再結晶粒の視野と判定し、それ以外は、再結晶部にも、未再結晶部にも属さないとした。さらに再結晶と未再結晶の判別が付き難い場合、200倍のEBSP(Electron Backscatter Diffraction Pattern、電子線後方散乱回折図形)による結晶粒マップから加工ひずみの残留の度合いによって再結晶域と未再結晶域を区別し、その領域の面積率を画像解析(画像処理ソフト「WinROOF」で2値化する)により測定した。EBSPを用いることにより、本発明での加工によるひずみが多く残留しているかどうか確かめることができている。
析出粒子の粒径の測定は、次のようにして行った。
75万倍のTEM(透過電子顕微鏡)の透過電子像を、画像処理ソフト「WinROOF」によって2値化して析出物を抽出し、各析出物の面積の平均値を算出して、平均粒子径を測定した。測定位置は、試験片の肉厚をhとすると、両表面から1h/4の2点とし、その平均値を採った。また、それぞれの析出物の粒径から、7nm以下の析出物の個数の割合を測定したが、粒径0.7nm未満のものについては、誤差が大きいと判断し、析出粒子から除外した(認識しなかった)。
電気伝導度の測定は、日本フェルスター株式会社製の導電率測定装置(SIGMATEST D2.068)を用いて測定した。電気伝導度と導電率は同義語である。
熱伝導度の測定は、レーザーフラッシュ法により、20℃での熱伝導率を測定した。
クリープ特性は、次のクリープ試験によって測定した。
各種の試験片を切り出し、JIS Z 2271の金属材料の引張試験方法に準じて行った。試験片は、平行部の径を8mmとし、標点距離を40mmとした。クリープ試験は、鍛造品、リング鍛造品(試験2)については、50N/mmの応力をかけ、200℃、1000時間での全クリープ変形量、および初期変形を除いた全クリープ変形量を求めた。冷間加工(鍛造)を加えたリング鍛造品については、100N/mmの応力をかけ、200℃、1000時間での全クリープ変形量、および初期変形を除いた全クリープ変形量を求めた。そして、ろう付け相当試験後の試験片についても、50N/mmの応力をかけ、200℃、1000時間での全クリープ変形量、および初期変形を除いた全クリープ変形量を求めた。
試験1の結果を、図6乃至図13に、試験2の結果を図14乃至図15に示し、いくつかの試験での金属組織の写真を図16に示す。
尚、試験1の結果の表で、部位の欄のXの行に、試験片のX部の結果を示し、Yの行に試験片のY部の結果を示した。そして、部位の欄のVの行においては、結晶粒径に関する項目には、X、Y、Z部での測定の平均値を記載し、析出物の粒径に関する項目と、熱伝導率、導電率の項目には、X、Y部での測定の平均値を記載し、引張試験に関する項目には試料全体を引っ張った結果を記載した。また、工程A−Oの行には、工程Aにおける冷却後の機械的性質を記載した。
試験の結果、次のことが分かった。
1.第1発明合金であって、再結晶粒の平均結晶粒径が0.050〜0.50mmである再結晶粒群の占める割合と、未再結晶粒の占める割合との合計が80%以上である銅合金熱間鍛造品は、強度、耐力、熱伝導性、電気伝導性等に優れていた。その中でも再結晶粒の平均結晶粒径が0.080〜0.30mmである再結晶粒群の占める割合と、未再結晶粒の占める割合との合計が80%以上である銅合金熱間鍛造品は、耐クリープ性を含めたこれらの諸特性に優れていた。鍛造後の簡易的な連続熱処理工程を入れた工程B、2回の鍛造工程を入れた工程G、鍛造温度が異なった工程E、Fともにいずれも、良好な諸特性を示した。また、溶体化処理等のコストがかかる工程を用いない熱間鍛造なので、低コストになる(合金No.11の工程A、B,C,E,F,G,H等参照)。さらに熱間鍛造後の冷却速度が速い方が、強度、耐力、熱伝導性、電気伝導性、クリープ特性等に優れていた(工程A、B,C等参照)。
2.第2発明合金であって、再結晶粒の平均結晶粒径が0.050〜0.50mmである再結晶粒群の占める割合と、未再結晶粒の占める割合との合計が80%以上である銅合金熱間鍛造品は、更に強度が強くなっている(合金No.21の工程A、E,F,G,H等参照)。
3.第3発明合金であって、再結晶粒の平均結晶粒径が0.050〜0.50mmである再結晶粒群の占める割合と、未再結晶粒の占める割合との合計が80%以上である銅合金熱間鍛造品は、第1発明合金の場合と同様に、強度、耐力、熱伝導性、電気伝導性等に優れていた(合金No.31の工程A、B,E,F,G,H等参照)。
4.再結晶粒における析出物の平均粒径が1.3〜3.9nm、又は析出物の90%以上が0.7〜7nmであると、高耐力、高熱伝導性、高電気伝導性を有し、また使用環境である100〜200℃において高いクリープ特性を有することができる(合金No.11の工程A、B,C,E,F,H等参照)
5.再結晶粒の平均結晶粒径が0.050〜0.50mmである再結晶粒群の占める割合が60%以上、若しくは未再結晶粒の占める割合が60%以上であると、使用環境である100〜200℃において高いクリープ特性を有することができる(合金No.11の工程F,G等参照)。
6.825℃で300秒間加熱され、冷却後の耐力が、125N/mm以上であり、前記冷却後の20℃における熱伝導率が280W/m・K以上、又は前記冷却後の20℃における導電率が70%IACS以上であり、前記冷却後の耐力をL(N/mm)、前記冷却後の20℃における熱伝導率をM(W/m・K)、前記冷却後の20℃における導電率をN(%IACS)としたとき、(L×M)の値が38000以上、又は、(L×N)の値が、9600以上である銅合金熱間鍛造品を得ることができた。そして、熱間鍛造後に加工率12%の冷間加工を施すことにより、さらに耐力と200℃におけるクリープ特性に優れることができる(合金No.11の工程K,L,M等参照)。
7.熱間鍛造前の加熱温度が低いと、鍛造前の鍛造材の平均結晶粒径は、0.1mm以上にならない。平均結晶粒径が、0.1mm以上にならないと、熱間鍛造品の薄肉部では、未再結晶粒になるか、再結晶しても、平均結晶粒径が、0.05mm以上にならない。熱間鍛造品の厚肉部においても、平均結晶粒径が0.050mm以上の占める再結晶粒の割合が少ない、また、平均結晶粒径が0.08mmより大きな結晶粒を得ることは難しい。工程Eと工程Fは、鍛造材の加熱温度が同じで、素材の平均結晶粒径は0.1mm以上になっている。しかし、鍛造温度、終了温度が異なるため、厚肉部においては、両工程共にほとんどが再結晶しているものの、結晶粒径0.08mm以上の占める割合に差があるため、析出物の粒径が、工程Fの方が大きくなっている。その結果、工程Eの方が、耐力、電気伝導性、熱伝導性が少し高い。薄肉部においては、工程Fは、未再結晶状態になるので、析出粒子径が、工程Eに比べ少し大きい。試験結果は、工程Fが未再結晶状態により、耐力が少し高く、熱伝導性・電気伝導性は少し低い。工程Aと合わせて考えれば、工程・設備の制約、鍛造品形状、耐力と熱伝導性・電気伝導性のどちらに主眼を置くか、によって適宜熱間鍛造の温度を変えるとよいことが分かる。
8.熱間鍛造後に行う析出熱処理後、400℃までの冷却速度を0.8℃/分で冷却すると、強度、耐熱特性等の諸特性にほとんど変化なく、導電率が約2%IACS向上する。熱処理後の冷却を遅くすることによって、Co、P等がさらに微細に析出するためと考えられる。冷却速度を遅くしても、比較例合金は、強度・導電率特性は僅かに向上する程度である。(工程A−1参照)
525≦T+20×t1/2≦570で析出熱処理すると、強度が高くなる。560≦T+20×t1/2≦605で熱処理すると、電気・熱伝導性が高くなる。温度条件等を上げると、析出粒子が、少し大きくなるが、平均粒子径が3.9nmより小さく、析出物の90%以上が0.7〜7nmであるので、強度等の低下を僅かなものとし、より多くのCo、Pを析出できたために電気・熱伝導性が高くなったと考えられる。(工程A−1、工程A−2参照)
熱間鍛造後で析出熱処理前の導電率:%IACSが、(45-25[P]−20[Co]-10[Fe]‐5[Sn]-3[Mg]-2[Ni])から、(55-25[P]−20[Co]-10[Fe]‐5[Sn]-3[Mg]-2[Ni])の間にあると、析出余力があるので、合金は析出によって強化される。特に、(52-25[P]−20[Co]-10[Fe]‐5[Sn]-3[Mg]-2[Ni])より数値が小さいか、または、析出熱処理後の導電率の差が、36%IACS以上、さらには、40%IACS以上あると、さらに強度、耐熱特性等の特性がよくなる。
9.工程Iは、工程Fと同様に、未再結晶組織が形成されるが、未再結晶組織の割合が工程Fより少ないことと、鍛造後の導電率が高く、析出余力が小さいために、強度が低く、電気・熱伝導性が悪い。
工程E、F、G、H−1は、工程Aに比べ、鍛造温度が低いが、鍛造品の導電率、および析出粒子径からCo、Pの固溶状態が、維持されていることが確認できる。
工程H−1は、鍛造材の結晶粒が大きくなっていることと、鍛造温度が低いために、鍛造品のほとんどの部位で未再結晶状態になる。また鍛造温度が低くても、Co、Pの固溶状態が維持されており、未再結晶組織と析出によって強度が高くなっている。また、未再結晶組織であっても、延性の低下が少ない。鍛造品の形状、用途、鍛造機のパワーによって、適宜鍛造条件を選択すると、より特性の優れたものが得られる。
10.熱間鍛造後の金属組織の影響について述べる。
熱間鍛造前の鍛造材の加熱の段階で平均結晶粒径が0.1mm以上になっていると、熱間鍛造後も、厚肉部では平均結晶粒径が0.05mm以上、さらには0.08mm以上になる。平均結晶粒径が大きいほど、後の析出熱処理後の析出物の粒径が小さくなり、高い耐力が得られ、また高い熱伝導性・電気伝導性が得られる。これは、鍛造前の鍛造材の段階で、結晶粒径を大きくすることにより、Co、Pのほとんどが固溶するので、析出熱処理を行うと、析出する析出物が小さくなり、またほとんどが析出するので、熱伝導性・電気伝導性が高くなる。さらに、熱間鍛造品の平均結晶粒径が大きく、細かい析出物が析出しているので、耐熱性及び強度が高くなる。そして、平均結晶粒径が大きいので構成元素の拡散が遅れ、原子レベルでの拡散に依存するクリープ変形を起こり難くし、高温に加熱しても析出物の再固溶を遅らせる。このことにより、ろう付け相当の熱処理を行っても、高い強度が維持され、クリープ変形にも耐える。
11.熱間鍛造時に高い加工率を加えられた部分は、熱間鍛造温度が低くなると未再結晶状態になる。熱間鍛造前の加熱の段階で、平均結晶粒径を0.1mm以上にすることによって、析出熱処理後の析出物の大きさが細かくなり、未再結晶状態によるひずみが加わるので、高い耐力を持つようなる。再結晶粒の平均結晶粒径が0.050〜0.50mmである再結晶粒群の占める割合と、未再結晶粒の占める割合との合計が80%以上を占めると、耐力、熱伝導性・電気伝導性が高くなる。また、平均結晶粒径が0.05mm以上の再結晶粒のみの部分(主としてX部)と、未再結晶粒のみの部分(主としてY部)と、これらの混在する全体部分との間における、耐力、熱伝導性・電気伝導性の差は小さい。
12.鍛造前の鍛造材の段階で、0.1〜5mmの平均結晶粒径にしておくと、熱間鍛造の開始温度、終了温度に関わらず(但し、終了温度が700℃以上)、鍛造で出来る金属組織は、平均結晶粒径が0.05mm以上の再結晶粒の組織か、未再結晶粒の組織のいずれかが主体となるので、良好な、耐力、熱伝導性・電気伝導性を示す。
13.熱間鍛造後の冷却速度の影響について述べる。熱間鍛造後における650℃から550℃への冷却速度が遅いと、析出熱処理後の耐力、熱伝導性・電気伝導性が低くなる。これは、冷却時に粗大な析出物が析出したためと思われる。また、クリープ変形量も多くなる。
14.試験2のリング鍛造について述べる。熱間鍛造前の鍛造材の加熱温度が低いと、熱間鍛造温度の低下に伴って、Co、Pの固溶状態が崩れ、粗大な析出物が多くなるため、析出熱処理後の耐力が低く、熱伝導性・電気伝導性も悪い。熱間鍛造前の鍛造材の加熱が適正であっても、最終熱間鍛造温度が低いと、Co、Pの粗大な析出物が多くなるため、析出熱処理後の耐力が低く、熱伝導性・電気伝導性も悪い。
15.リング熱間鍛造品を、825℃、300秒のソルトバスに浸漬し、熱処理すると、熱間鍛造後の平均結晶粒径が0.08mm以上に大きくなっているので、析出物の粒成長が遅れ、析出物が多少大きくなる、または、析出物の再固溶が遅れる。しかしながら、耐力に寄与する細かい析出物が充分にあるので、良好な、耐力、熱伝導性・電気伝導性を示す。比較例では、元の熱間鍛造品の平均結晶粒径が小さくて析出物が大きいうえに、さらに析出物が粗大化する、または、析出物の再固溶が多くなるので、耐力、熱伝導性・電気伝導性が悪い。
本発明に係るリング熱間鍛造品は、熱間鍛造後に、12%の冷間加工を加えると、耐力が高くなる。これは、熱間鍛造品の平均結晶粒径が0.08mm以上なので、825℃に加熱されても、冷間加工により導入された加工ひずみが残留するためと考えられる。さらに、クリープ変形に関しては、本発明に係る熱間鍛造品は、比較例に比べ強度が高く、平均結晶粒径が大きいため拡散速度が遅いので、高い耐熱性を有し、クリープ変形量が少ない。冷間鍛造を加えたものは、さらに耐力が高く、加工ひずみが多く残留しているので、クリープ変形量は少ない。
16.Fe、Niの含有量が発明合金の組成範囲外であると、析出物の構成が変わり、析出物が大きくなるため、耐力、熱伝導性・電気伝導性が低く、クリープ特性も低い。
17.Snの含有量が発明合金の組成範囲よりも多いと、熱伝導性・電気伝導性が低い。また、析出物がやや大きいために、Snの固溶強化が相殺され、耐力も少し低い。
18.Co、Pの含有量が発明合金の組成範囲よりも少ないと、熱伝導性・電気伝導性はよいが、耐力が低く、クリープ特性も悪い。
19.Coが0.21〜0.44mass%であり、Pが0.06〜0.13mass%であっても、3.1≦([Co]−0.005)/([P]−0.006)≦4.9の関係式を満足しないと、余分なCo、Pがマトリックスに固溶し、又は、析出物の構成が変わって析出物が大きくなるために、耐力、熱伝導性・電気伝導性が低く、また、クリープ特性も悪い。特に、鍛造回数の多い試験2の熱間鍛造品は、熱間鍛造中に析出物が粗大化し、熱処理後も析出物の平均粒径が大きいので、耐力、熱伝導性・電気伝導性、クリープ特性が低い。さらに、825℃で熱処理すると、鍛造品の析出粒子が大きいので、耐力が低くなり、耐熱性に劣るので、クリープ特性も低い。
20.Snの含有量が発明合金の組成範囲よりも少ないと、短時間ですべてのCo、Pが固溶しないので、粗大な析出物が残留する。また、熱間鍛造中に一部で析出物が粗大化し、全体としても熱処理後の析出物が大きくなるので、耐力、熱伝導性・電気伝導性が低くなる。
21.工程A-Oから、熱間鍛造後の引張強さ、耐力が低く、伸び値が高いので、析出処理前に、冷間矯正が容易に行われ、より精度の高いニアネットシェイプまで作れることが示唆される。
20.C1020、C1220は、熱間鍛造すると、耐力は著しく低く、耐熱性にも劣るのでクリープ特性も低い。
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。
本出願は、日本国特許出願2010−245994に基づいて優先権主張を行なう。その出願の内容の全体が参照によって、この出願に組み込まれる。
本発明に係る銅合金熱間鍛造品は、ヒートシンク(ハイブリッドカー、電気自動車、コンピューターの冷却等)、ヒートスプレッダ、モータのローターバーやエンドリング、パワーリレー、パワーモジュール部材、バッテリー端子、電気部品(留具、締具、電気配線器具、電極、リレー、接続端子、オス端子各種端子等)、航空機・ロケット部材、溶接用部材、太陽光発電、パワーモジュールや核融合設備のヒートシンクのような用途に最適である。

Claims (12)

  1. 0.21〜0.44mass%のCoと、0.06〜0.13mass%のPと、0.003〜0.08mass%のSnと、0.00003〜0.0030mass%のOとを含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる合金組成であり、Coの含有量[Co]mass%とPの含有量[P]mass%との間に、
    3.1≦([Co]−0.005)/([P]−0.006)≦4.9の関係を有し、
    断面金属組織において、再結晶粒の平均結晶粒径が0.050〜0.50mmである再結晶粒群の占める割合と、未再結晶粒の占める割合との合計が80%以上であることを特徴とする銅合金熱間鍛造品。
  2. 0.001〜0.3mass%のZn、0.002〜0.2mass%のMg、0.001〜0.3mass%のAgのいずれか1種以上を更に含有することを特徴とする請求項1に記載の
    銅合金熱間鍛造品。
  3. 0.005〜0.15mass%のNi、0.003〜0.10mass%のFeのいずれか1種以上を更に含有し、
    Coの含有量[Co]mass%と、Niの含有量[Ni]mass%と、Feの含有量[Fe]mass%と、Pの含有量[P]mass%との間に、
    3.1≦([Co]+0.9×[Ni]+0.8×[Fe]−0.005)/([P]−0.006)≦4.9、及び0.010≦2×[Ni]+3×[Fe]≦0.75×[Co]の関係を有することを特徴とする請求項1に記載の銅合金熱間鍛造品。
  4. 0.005〜0.15mass%のNi、0.003〜0.10mass%のFeのいずれか1種以上を更に含有し、
    Coの含有量[Co]mass%と、Niの含有量[Ni]mass%と、Feの含有量[Fe]mass%と、Pの含有量[P]mass%との間に、
    3.1≦([Co]+0.9×[Ni]+0.8×[Fe]−0.005)/([P]−0.006)≦4.9、及び0.010≦2×[Ni]+3×[Fe]≦0.75×[Co]の関係を有することを特徴とする請求項2に記載の銅合金熱間鍛造品。
  5. 耐力が、230N/mm以上であり、
    20℃における熱伝導率が300W/m・K以上、又は20℃における導電率が75%IACS以上であり、
    前記耐力をL(N/mm)、前記熱伝導率をM(W/m・K)、前記導電率をN(%IACS)としたとき、(L×M)の値が77000以上、又は、(L×N)の値が、19000以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の銅合金熱間鍛造品。
  6. 前記再結晶粒における析出物の平均粒径が1.3〜3.9nm、又は析出物の90%以上が0.7〜7nmであること特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の銅合金熱間鍛造品。
  7. 前記再結晶粒の平均結晶粒径が0.050〜0.50mmである前記再結晶粒群の占める割合が60%以上、若しくは前記未再結晶粒の占める割合が60%以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の銅合金熱間鍛造品。
  8. 825℃で300秒間加熱され、冷却後の耐力が、125N/mm以上であり、
    前記冷却後の20℃における熱伝導率が280W/m・K以上、又は前記冷却後の20℃における導電率が70%IACS以上であり、
    前記冷却後の耐力をL(N/mm)、前記冷却後の20℃における熱伝導率をM(W/m・K)、前記冷却後の20℃における導電率をN(%IACS)としたとき、(L×M)の値が38000以上、又は、(L×N)の値が、9600以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の銅合金熱間鍛造品。
  9. 請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の銅合金熱間鍛造品の製造方法であって、
    熱間鍛造が施される鍛造材の熱間鍛造前の加熱温度が925〜1025℃であり、前記鍛造材の前記加熱終了時の平均結晶粒径が0.10〜5.0mmであることを特徴とする銅合金熱間鍛造品の製造方法。
  10. 請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の銅合金熱間鍛造品の製造方法であって、
    熱間鍛造が施される鍛造材の少なくとも一回の熱間鍛造を700℃以上で実施し、
    前記熱間鍛造後に前記鍛造材を12℃/秒以上の冷却速度で400℃以下に冷却、又は650℃から550℃までの温度領域を12℃/秒以上の冷却速度で冷却し、
    前記冷却後に前記鍛造材に冷間加工を行った後又は冷間加工を行わずに、450〜600℃の熱処理温度で0.2〜10時間の保持時間であり、前記熱処理温度をT℃、前記保持時間をt時間とすると520≦T+20×t1/2≦615の関係を充たす熱処理を行うことを特徴とする銅合金熱間鍛造品の製造方法。
  11. 請求項10に記載の銅合金熱間鍛造品の製造方法で製造された銅合金熱間鍛造品であって、
    前記熱間鍛造後で前記熱処理前の導電率をX(%IACS)とすると、Xと、Pの含有量[P]mass%と、Coの含有量[Co]mass%と、Feの含有量[Fe]mass%と、Snの含有量[Sn]mass%と、Mgの含有量[Mg]mass%と、Niの含有量[Ni]mass%との間に、
    (45-25[P]−20[Co]-10[Fe]‐5[Sn]-3[Mg]-2[Ni])≦X≦(55-25[P]−20[Co]-10[Fe]‐5[Sn]-3[Mg]-2[Ni])の関係を有することを特徴とする銅合金熱間鍛造品。
  12. 請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の銅合金熱間鍛造品の製造方法であって、
    熱間鍛造が施される鍛造材の少なくとも一回の熱間鍛造を700℃以上で実施し、
    前記熱間鍛造後に前記鍛造材を650℃から550℃までの温度領域を12℃/秒以上の冷却速度で冷却し、前記冷却後に400〜540℃の温度領域で10〜200分保持することを特徴とする銅合金熱間鍛造品の製造方法。
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