ところで、上記カーテンエアバッグ装置では、収容状態にあるカーテン部材が、後部ピラーや該後部ピラーの車両前側に隣接する後部サイドウインドの形状によっては、該カーテン部材の車両後側端部が後部ピラーにおける後部ピラートリムと車体との間の空間内に配設される場合がある。この場合、その空間内に配設された部分は、ルーフトリムよりも硬質の部材からなるピラートリムを変形させて、該ピラートリムとサイドウインドとの間を通って車室内へ展開することになる。
ところが、上記のようにカーテン部材の車両後側端部を後部ピラーにおける後部ピラートリムと車体との間の空間内に配設すると、ルーフトリムよりも硬質の部材からなるピラートリムを変形させる必要があるために、特に低温時に後部ピラートリムが破損する可能性が高くなる。
そこで、上記特許文献1では、後部サイドウインドを覆う後席用膨張部における車両後側部分を前側部分に対して折り重ね可能な形状にして、後席用膨張部における車両後側部分を前側部分に折り重ねた状態で後席用膨張部を上下方向に折り畳んで、その車室側をルーフトリムにより覆われた状態で収容することで、カーテン部材の展開時に後席用膨張部が後部ピラートリムに接触しないようにして、後部ピラートリムの破損を防止している。
しかしながら、上記特許文献1のような後席用膨張部の折り畳み方では、後席用膨張部全体の展開は遅くなる傾向にある。特に、後席に着座している乗員の頭部は、通常、後部サイドウインドにおける車両後側部(後席用膨張部における車両後側部分)に相当する位置にあり、このため、後部サイドウインドにおける車両後側部分を早期に覆うことが要求されており、この要求を満足させるためには、後席用膨張部における車両後側部分を後部ピラーにおける後部ピラートリムと車体との間の空間内に配設することが好ましい。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、カーテン部材において展開完了状態で後部サイドウインドにおける車両後側部を覆う後部膨張部を、後部ピラーにおける後部ピラートリムと車体との間の空間内に収容した場合であっても、後部ピラートリムの破損を防止できるようにすることにある。
上記の目的を達成するために、この発明では、カーテン部材の後部膨張部の少なくとも一部を、後部ピラーにおける後部ピラートリムと車体との間の空間内に配設収容して、その空間内に配設した部分が、後部ピラートリムの車両前側縁と後部サイドウインドとの間を通って車両前側に展開するように構成するとともに、カーテン部材の展開完了状態において、車幅方向車室側から見て、該カーテン部材の後部膨張部の車両後側縁が後部ピラートリムの車両前側縁から離間するようにした。
具体的には、請求項1の発明では、車両側部の後部ピラーの車両前側に隣接する後部サイドウインドを少なくとも含むサイドウインド部の上縁部に、車室側をルーフトリムにより覆われた状態で車両前後方向に延びるように収容され、ガスの注入による膨張によって上記ルーフトリムを変形させて上記サイドウインド部を覆うように展開するカーテン部材を有するカーテンエアバッグ装置を備えた車両の後部構造を対象とする。
そして、上記収容状態にあるカーテン部材の車両後側端部は、上記後部ピラーの車室側の面を構成する、上記ルーフトリムよりも硬質の部材からなる後部ピラートリムの上端の車両前側縁近傍を通って車両後側に向かって下方に傾斜するように延びていて、該後部ピラーにおける後部ピラートリムと車体との間の空間内に配設されたピラートリム・車体間配設部を有し、上記カーテン部材は、上記ガスの注入により膨張して該カーテン部材の展開完了状態で上記後部サイドウインドにおける少なくとも車両後側部を覆う後部膨張部を有し、上記カーテン部材の後部膨張部は、少なくとも一部が上記ピラートリム・車体間配設部とされた状態で収容されるとともに、該ピラートリム・車体間配設部とされた部分が、上記後部ピラートリムの車両前側縁と後部サイドウインドとの間を通って車両前側に展開するように構成されており、上記カーテン部材の展開完了状態において、車幅方向車室側から見て、該カーテン部材の後部膨張部の車両後側縁が上記後部ピラートリムの車両前側縁から離間しているものとする。
上記の構成により、カーテン部材の後部膨張部の少なくとも一部は、カーテン部材の収容状態でピラートリム・車体間配設部とされ、この後部膨張部におけるピラートリム・車体間配設部とされた部分が、後部ピラートリムの車両前側縁と後部サイドウインドとの間を通って車両前側(車室内)に展開する。そして、カーテン部材の展開完了状態において、車幅方向車室側から見て、後部膨張部の車両後側縁が後部ピラートリムの車両前側縁から離間していることで、後部膨張部は、カーテン部材の展開完了状態において、後部ピラーにおける後部ピラートリムと車体との間の空間内に残っていないことになる。これにより、後部膨張部の車両後側を拘束せずにフリーな状態にすることができる。すなわち、後部膨張部を、カーテン部材の展開完了状態においても上記空間内に残っている部分から切り離すことができ、これにより、後部膨張部は、カーテン部材の展開開始から展開完了までの間中、車両後側が全く拘束されなくなり、余計なテンションがかかり難くなる。このことで、後部膨張部は、ガスが少し供給されただけで、後部ピラートリムを変形させて、後部ピラートリムの車両前側縁と後部サイドウインドとの間を通って車両前側に展開しようとする。この結果、後部膨張部は、殆ど膨張していない状態で、後部ピラートリムの車両前側縁と後部サイドウインドとの間を通過して車室内に展開する。したがって、後部ピラートリムの変形量は小さくて済み、また後部ピラートリムは後部膨張部から大きな力を受けることがない。よって、後部膨張部を、収容状態で後部ピラーにおける後部ピラートリムと車体との間の空間内に配設した場合であっても、後部ピラートリムの破損を防止することができる。しかも、後部膨張部は、後部ピラートリムから大きな抵抗を受けることなくスムーズに車室内に展開するため、後部膨張部を早期に展開させることができる。
請求項2の発明では、請求項1の発明において、上記後部膨張部に、該後部膨張部の膨張時における車幅方向の厚みを所定値以下に抑制する膨張抑制部が形成されているものとする。
このことにより、膨張抑制部によって、後部膨張部の膨張時における車幅方向の厚みを、後部ピラートリムが破損しないような値に確実に抑えることができ、後部ピラートリムの破損をより一層確実に防止することができる。
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明において、上記後部膨張部に、該後部膨張部内への上記ガスの流入を制限する制限部が形成されているものとする。
このことで、制限部によって、後部膨張部が後部ピラートリムの車両前側縁と後部サイドウインドとの間を通過する前に大きく膨張し過ぎるのを抑制することができる。また、カーテン部材における後部膨張部よりも車両前側部分が、後部膨張部よりも先に展開することで、殆ど膨張していない後部膨張部を引き出す役割を果たし、これにより、後部膨張部を早期に車室内に出すことができる。よって、後部ピラートリムの破損をより一層確実に防止することができる。
請求項4の発明では、請求項3の発明において、上記制限部は、上記ガスが、上記後部膨張部内における車両前側部分に流入した後、該後部膨張部内における車両後側部分へ流入するように構成されているものとする。
このことにより、通常、後部膨張部における車両後側部分がピラートリム・車体間配設部とされるので、その車両後側部分が後部ピラートリムの車両前側縁と後部サイドウインドとの間を通過する前に大きく膨張し過ぎるのを抑制することができる。また、後部膨張部における車両後側部分は、後部膨張部において先に展開する車両前側部分に引き出されながら展開するため、車両後側部分をより早期に車室内に出すことができて、後部ピラートリムの変形量をより一層小さくすることができる。さらに、後部膨張部における車両前側部分が車両後側部分と共にピラートリム・車体間配設部とされた場合でも、通常、後部膨張部において車両前側部分が車両後側部分よりも先に後部ピラートリムの車両前側縁と後部サイドウインドとの間を通過するので、後部膨張部内における車両後側部分へのガスの供給を車両前側部分よりも遅くすることで、車両後側部分が上記間を通過するときの大きさ(車幅方向の厚み)を、車両前側部分が上記間を通過するときと大きさ(車幅方向の厚み)と略同じにすることができる。よって、後部ピラートリムの破損をより一層確実に防止することができるとともに、後部膨張部の展開の更なる早期化を図ることができる。
請求項5の発明では、請求項1〜4のいずれか1つの発明において、上記カーテン部材の展開完了状態において、車幅方向車室側から見て、該カーテン部材の後部膨張部の車両後側縁が、上記後部ピラートリムの上端近傍の高さ位置から下側全体に亘って、該後部ピラートリムの車両前側縁から離間しているものとする。
こうすることで、後部膨張部が後部ピラートリムの車両前側縁と後部サイドウインドとの間を通過するときにおいては、上記の如く後部ピラートリムに大きな力を付与しないことに加えて、後部膨張部が上記間を通過した後においても、後部膨張部が、後部ピラートリムにおいて特に破損し易い上端部に対して大きな力を付与することがない。
請求項6の発明では、請求項11〜4のいずれか1つの発明において、上記カーテン部材の展開完了状態において、車幅方向車室側から見て、該カーテン部材の後部膨張部の車両後側縁が、上記後部サイドウインドの上縁近傍の高さ位置から下側全体に亘って、該後部サイドウインドの車両後側縁から離間しているものとする。
すなわち、後部サイドウインドの上縁近傍の高さ位置には、収容状態にあるカーテン部材が下方に曲がる部分が存在し、この部分では、略真下側に展開しようとする力と下側かつ前側に展開しようとする力とが複雑に作用するため、展開時の挙動が不安定になって、一般に上記曲がる部分の近傍に位置する後部ピラートリムの上端部に対して、大きな力を付与する可能性が高くなる。しかし、この発明では、カーテン部材の後部膨張部の車両後側縁が、後部サイドウインドの上縁近傍の高さ位置から下側全体に亘って、該後部サイドウインドの車両後側縁から離間している(後部ピラートリムが存在する高さ位置では、後部ピラートリムの車両前側縁から離間している)ので、後部膨張部の車両後側縁における上記離間部分の上端が上記曲がる部分と略同じ位置になり、この結果、上記曲がる部分では、車両後側がフリーな状態になるため、略真下側に展開するようになる。したがって、上記曲がる部分の展開が安定し、延いては後部膨張部の展開が安定して、後部ピラートリムの上端部に大きな力を付与するのを防止することができる。
以上説明したように、本発明のカーテンエアバッグ装置を備えた車両の後部構造によると、カーテン部材の後部膨張部の少なくとも一部を、後部ピラーにおける後部ピラートリムと車体との間の空間内に配設されたピラートリム・車体間配設部として収容して、その後部膨張部におけるピラートリム・車体間配設部とされた部分が、後部ピラートリムの車両前側縁と後部サイドウインドとの間を通って車両前側に展開するように構成するとともに、カーテン部材の展開完了状態において、車幅方向車室側から見て、該カーテン部材の後部膨張部の車両後側縁が後部ピラートリムの車両前側縁から離間するようにしたことにより、後部膨張部を、後部ピラーにおける後部ピラートリムと車体との間の空間内に収容した場合であっても、後部ピラートリムの変形量を小さくして、後部ピラートリムの破損を防止することができるとともに、後部膨張部が後部ピラートリムから受ける抵抗を小さくして、後部膨張部を早期に展開させることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る後部構造が適用された、カーテンエアバッグ装置Aを備えた車両(自動車)の側部を示す。同図において、1はフロントドア7に形成されたフロントサイドウインド、2はリヤドア8に形成されたリヤサイドウインド、3はフロントピラー、4はセンタピラー、5はリヤピラー、9は上記フロントサイドウインド1に対応する運転席シート、10は上記リヤサイドウインドに対応する後席シート、11は運転席シート9に着座している乗員13(運転手)を拘束して保護するための運転席用シートベルト装置、12は後席シート10に着座している乗員14を拘束して保護するための後席用シートベルト装置である。
上記リヤピラー5は、本発明の車両側部の後部ピラーに相当するものであり、リヤサイドウインド2は、リヤピラー5の車両前側に隣接する後部サイドウインドに相当するものである。
上記フロントピラー3、センタピラー4及びリヤピラー5の各車室側の面は、それぞれフロントピラートリム16、センタピラートリム17、及びリヤピラートリム18(後部ピラートリムに相当)で構成されている。
上記後席用シートベルト装置12は、ウェビング41と、このウェビング41を巻き取るリトラクタ部42と、このリトラクタ部42から上側に引き出されたウェビング41と係合して該ウェビング41の引き出し方向を上向きから下向きに変換するショルダーアンカー部43と、ウェビング41の先端部が取り付けられた不図示のラップアンカー部と、ウェビング41の長さ方向中間部に配設された不図示のタングと、このタングが着脱可能に係合する不図示のバックル部とを有する3点式に構成されている。上記ショルダーアンカー部43は、図4に拡大して示すように、リヤピラー5におけるリヤピラートリム18と車体インナパネル52(図3参照)との間の空間内に配設されているとともに、該車体インナパネル52に回動軸43a周りに回動可能に取り付けられていて、ウェビング41が挿通された挿通孔43bにてウェビング41の向きを変換する。そして、上記下向きに変換されたウェビング41は、ショルダーアンカー部43から、リヤピラートリム18に形成されたスロット18aを通って車室内に引き出される。尚、運転席用シートベルト装置11も、後席用シートベルト装置12と同様の構成であるので、説明は省略する(図1では、ウェビング、リトラクタ部及びショルダーアンカー部について、後席用シートベルト装置12と同じ符号を付している)。図1中、17aは、センタピラートリム17に形成された、上記スロット18aと同様のスロットである。
上記車両には、カーテンエアバッグ装置Aが搭載されており、このカーテンエアバッグ装置Aは、当該車両のサイドウインド部(本実施形態では、フロントサイドウインド1及びリヤサイドウインド2が前後に並設された部分)を覆うように構成されている。
具体的には、カーテンエアバッグ装置Aは、ガスが注入されて膨張する前部膨張部20a及び後部膨張部20bを有するカーテン部材20と、このカーテン部材20にガスを供給するガス供給装置としてのインフレータ21とを備えている。上記カーテン部材20は、図2に示すように、車両前後方向全体に亘って上下方向に蛇腹状に折り畳まれていて(ロール状に巻き畳んでもよい)、上記サイドウインド部(フロントサイドウインド1及びリヤサイドウインド2)の上縁部においてルーフサイドレール32(車体)に沿って車両前後方向に延びるように収容されている。そして、カーテン部材20は、前部膨張部20a及び後部膨張部20bの上記ガスの注入による膨張によって上記サイドウインド部を覆うようにカーテン状に展開する。尚、カーテン部材20は、折り畳まれた状態が維持されるように、展開時に破れ易い紙等のシート状部材(図示せず)で覆われている。
上記カーテン部材20は、車幅方向両面をそれぞれ構成する2枚の布からなり、この2枚の布が、上記前部膨張部20a及び後部膨張部20bがガス注入可能な袋状となるように互いに縫い合わされている。そして、前部膨張部20aは、上記ガスの注入により膨張してカーテン部材20の展開完了状態で主としてフロントサイドウインド1における車両後側部分(運転席シート9に着座している乗員13の頭部に対応する部分)を覆う一方、後部膨張部20bは、上記ガスの注入により膨張してカーテン部材20の展開完了状態でリヤサイドウインド2における車両後側部分(後席シート10に着座している乗員14の頭部に対応する部分)を覆う。前部膨張部20aと後部膨張部20bとは、展開完了状態にあるカーテン部材20上部の車両前後方向略中央部で接続されており、この接続部の下側部分を含めて、前部膨張部20a及び後部膨張部20bの周囲は、ガスが注入されることはなくて、カーテン部材20が展開しても上記2枚の布同士が接触した非膨張部とされている。尚、後部膨張部20bは、カーテン部材20の展開完了状態でリヤサイドウインド2全体を覆うものであってもよく、リヤサイドウインド2における少なくとも車両後側部分を覆うものであればよい。
上記インフレータ21は、車両が所定の状態になったときに作動してガスを発生して供給するものであって、カーテン部材20上部における前部膨張部20aと後部膨張部20bとの接続部にパイプ28によって繋がっている。これにより、インフレータ21からのガスが、前部膨張部20a及び後部膨張部20bに略同時に供給される。ここで、上記所定の状態とは、例えば当該車両の衝突(特に側突)が予知されたとき、当該車両の衝突が検出されたとき、又は当該車両の横転が判定されたときであり、当該車両にはそれらの状態を検知するためのセンサと、該センサの出力を受けてそれら状態の発生を判定し、インフレータ21を作動させるコントローラとが設けられている。
図1及び図2に示すように、上記カーテン部材20の上端(非膨張部)は、ピン状の固定用部材55によって、該カーテン部材20の上記第2側辺部側の端部を含めて複数箇所で、アウタパネル32a及びインナパネル32bからなるルーフサイドレール32の該インナパネル32bに固定されている。そして、折り畳まれたカーテン部材20の車室側は、ルーフトリム34によって覆われている。このルーフトリム34は、その側縁がサイドライニング35に脱離可能に係合していて、カーテン部材20の膨張展開力によって変形させられてサイドライニング35から外れ、これにより、サイドライニング35との間に隙間を形成して、カーテン部材20の車室内への展開を許容するようになっている。すなわち、カーテン部材20は、ルーフトリム34とサイドライニング35との隙間から車室内に展開する。このサイドライニング35は、ルーフサイドレール32のフランジ部に保持されている。尚、サイドライニング35は、ウェザーストリップであってもよい。
また、上記ルーフトリム34は、上記各ピラー3〜5の箇所では、それぞれフロントピラートリム16、センタピラートリム17及びリヤピラートリム18と脱離可能に係合していて、カーテン部材20の膨張展開力によって各ピラートリム16〜18から外れるようになっている。上記各ピラートリム16〜18は、ルーフトリム34(発泡性ウレタン樹脂等の軟質材)よりも硬質の部材(例えばポリプロピレンやサーモプラスチックオレフィン(TPO)等の合成樹脂)からなっている。
上記展開完了状態にあるカーテン部材20の車両前側端部には、支持テザー38の一端部が結合されている。この支持テザー38の他端部は、フロントピラー3の車体インナパネル(図示せず)に設けた連結部37に回動可能に連結されている。そして、支持テザー38は、カーテン部材20の収容状態ではフロントピラー3におけるフロントピラートリム16と車体インナパネルとの間の空間内に収容されており、カーテン部材20が展開すると、それに伴って連結部37の周りに回動しながら、カーテン部材20の車両前側端部を、その展開が安定するように支持する。尚、支持テザー38は、カーテン部材20の展開時には、フロントピラートリム16を車室側に押圧して、これによりフロントピラートリム16とフロントサイドウインド1との間に生じる隙間から車室内に出る。
上記収容状態にあるカーテン部材20の車両後側端部は、リヤサイドウインド2の車両後側縁に沿って、車両後側に向かって下方に傾斜するように延びている。すなわち、収容状態にあるカーテン部材20の車両後側端部は、リヤサイドウインド2の上縁部と車両後側縁部との角部から下側に曲がり、リヤサイドウインド2の車両後側縁部において上記リヤピラートリム18の上端(リヤサイドウインド2の上縁よりも低い高さ位置にある)の車両前側縁近傍を通って車両後側に向かって下方に傾斜するように延びている。このため、このカーテン部材20の車両後側端部は、リヤピラー5におけるリヤピラートリム18と車体(車体インナパネル52(図3参照))との間の空間内に配設されたピラートリム・車体間配設部20cを有する。尚、図3中、51は、車体インナパネル52と共にリヤピラー5の車体を構成するアウタパネルであり、53はウエザーストリップである。
上記収容状態にあるカーテン部材20の上端(非膨張部)は、車両後側端部においては、上記下側に曲がる部分(この部分を曲部20fという)と最も下側の部分(最後部)との箇所で、固定用部材55によって車体に固定されている(曲部20fではルーフサイドレール32のインナパネル32bに固定され、最も下側の部分ではリヤピラー5の車体インナパネル52に固定されている)。
上記カーテン部材20の後部膨張部20bは、該後部膨張部20bにおける車両後側部分の一部(主として展開完了状態での下側部分)が上記ピラートリム・車体間配設部20cとされた状態で収容され、後部膨張部20bにおける車両後側部分の残り(主として展開完了状態での上側部分)と車両前側部分とは、上記サイドウインド部の上縁部(リヤサイドウインド2の上縁部)とリヤサイドウインド2の車両後側縁部におけるリヤピラートリム18上端よりも上側部分(車室側がルーフトリム34により覆われる部分)とに収容されている。また、前部膨張部20aは、上記サイドウインド部の上縁部(主としてフロントサイドウインド1の上縁部)に収容される。尚、後部膨張部20bやリヤピラートリム18等の形状によっては、後部膨張部20b全体がピラートリム・車体間配設部20cとされた状態で収容されてもよい。
そして、上記カーテン部材20が上下方向に蛇腹状に折り畳まれていることによって、カーテン部材20において上記曲部20fよりも車両前側では、該カーテン部材20が略真下側に展開する一方、曲部20fよりも車両後側では、下側かつ車両前側に展開しようとする。また、後述の如く後部膨張部20b(特に後部膨張部20bにおける車両後側部分)内への上記ガスの流入が制限されて前部膨張部20aがより早期に展開することで、後部膨張部20bが前部膨張部20aにより車両前側へ引っ張られる傾向にあるため、曲部20fよりも車両後側では、より車両前側に展開しようとする。この結果、後部膨張部20bにおいてピラートリム・車体間配設部20cとされた部分は、図3に示すように、リヤピラートリム18の車両前側縁とリヤサイドウインド2との間(詳細には、リヤピラートリム18の車両前側縁とウエザーストリップ53との間)を通って車両前側(正確には車両前側かつ下側)に展開する。すなわち、後部膨張部20bにおけるピラートリム・車体間配設部20cとされた部分は、リヤピラートリム18を車室側へ押圧して変形させ、この変形したリヤピラートリム18(図3の二点鎖線で示す状態を参照)とリヤサイドウインド2との間を通って車室内へ展開することになる。
ここで、図3に示すように、上記リヤピラートリム18において、上記収容状態にあるカーテン部材20のピラートリム・車体間配設部20cよりも車両後側の位置で車両後側に向かって車室側に曲がる曲部18bが上下に延設されており、この曲部18bにより、上記リヤピラートリム18が上述の如く後部膨張部20bによって車室側に押圧されたときに車室側に変形し易くなっている。すなわち、リヤピラートリム18は、上記曲部18bにより、リヤピラートリム18の車両前側縁を自由端としかつ曲部18bよりも車両後側の部分(本実施形態では、車室側に最も突出した部分)を固定端とする片持ちはり状に変形するようになり、上記自由端近傍を小さい力で車室側に押圧するだけで容易に車室側に変形する。
図4に示すように、上記カーテン部材20の展開完了状態において、車幅方向車室側から見て、該カーテン部材20の後部膨張部20bの車両後側縁は、リヤサイドウインド2の上縁近傍の高さ位置から下側全体に亘って、該リヤサイドウインド2の車両後側縁から所定量だけ離間している。本実施形態では、リヤピラートリム18の上端はリヤサイドウインド2の上縁よりも低い高さ位置にあり、車幅方向車室側から見てリヤピラートリム18の車両前側縁はリヤサイドウインド2の車両後側縁と同じであるので、カーテン部材20の展開完了状態において、車幅方向車室側から見て、カーテン部材20の後部膨張部20bの車両後側縁は、リヤピラートリム18の車両前側縁から所定量だけ離間していることになる。
すなわち、カーテン部材20の展開完了状態において、後部膨張部20bにおけるピラートリム・車体間配設部20cとされた部分の一部が、リヤピラー5におけるリヤピラートリム18と車体インナパネル52との間の空間内に残ってはおらず、完全に車室内に出た状態にある。これは、後部膨張部20bを出来る限りフリーな状態にして展開が拘束されないようにするためである。そして、本実施形態では、上述の如くカーテン部材20の後部膨張部20bにおける車両後側部分が、固定用部材55によって車体に固定された非膨張部と共に、ピラートリム・車体間配設部20cとされて収容されているが、この後部膨張部20bにおける車両後側部分が、車体に固定された非膨張部と繋がっていない。つまり、後部膨張部20bと車体に固定された非膨張部との間にスリット20gを形成している。このスリット20gの上端は、リヤサイドウインド2の上縁近傍の高さ位置にあり、このスリット20gによって、カーテン部材20の展開完了状態において、車幅方向車室側から見て、該カーテン部材20の後部膨張部20bの車両後側縁が、リヤサイドウインド2の上縁近傍の高さ位置から下側全体に亘って、リヤサイドウインド2の車両後側縁から離間する(リヤピラートリム18が存在する高さ位置では、リヤピラートリム18の車両前側縁から離間する)ことになる。尚、カーテン部材20の後部膨張部20bの車両後側縁とリヤピラートリム18の車両前側縁(リヤサイドウインド2の車両後側縁)との離間量である上記所定量は、後部膨張部20bと車体に固定された非膨張部とを切り離すことができればいくらでもよいが、乗員14を保護する観点からは、出来る限り小さいことが望ましい。
上記スリット20gによって、後部膨張部20bの車両後側は完全にフリーな状態になり、後部膨張部20bにおけるピラートリム・車体間配設部20cとされた部分がスムーズにかつ早期に車室内に出るようになる。すなわち、後部膨張部20bが車室内に出るのが遅れると、後部膨張部20bにおけるピラートリム・車体間配設部20cとされた部分は、膨張し過ぎて車幅方向の厚みが大きくなった状態で、リヤピラートリム18の車両前側縁とリヤサイドウインド2との間を通過することになり、このため、リヤピラートリム18の変形量が大きくなってリヤピラートリム18が破損し易くなる。しかし、本実施形態では、カーテン部材20の展開開始から展開完了までの間中、車両後側が全く拘束されないため、余計なテンションがかかり難く、殆ど膨張していない状態でリヤピラートリム18の車両前側縁とリヤサイドウインド2との間を通過する。
上記後部膨張部20bには、該後部膨張部20bの膨張時における車幅方向の厚みを所定値以下に抑制する膨張抑制部20dが形成されている。本実施形態では、膨張抑制部20dは、カーテン部材20の車幅方向両面をそれぞれ構成する2枚の布を、後部膨張部20bの略中央部にて互いに接触させた状態で縫い合わせてなるものであり、後部膨張部20bが最大に膨張しても、車幅方向の厚みが上記所定値とされる。この所定値は、後部膨張部20bにおける車両後側部分がリヤピラートリム18の車両前側縁とリヤサイドウインド2との間を通過する際においてリヤピラートリム18が最大に変形可能な量(破損しない最大量)に基づいて設定される。尚、膨張抑制部20dは1つに限らず、後部膨張部20bに複数設けてもよく、2枚の布を所定長さを有するテザーで互いに結合したものであってもよい。
また、後部膨張部20bには、該後部膨張部20b内への上記ガスの流入を制限する制限部20eが、上記膨張抑制部20dから後部膨張部20bの上端縁における曲部20f近傍部まで延びるように形成されている。この制限部20eも、上記膨張抑制部20dと同様に、上記2枚の布を互いに接触させた状態で縫い合わせてなるものである。この制限部20eにより上記ガスは後部膨張部20b内における車両前側部分及び車両後側部分に同時に流入することはできず、後部膨張部20b内における車両前側部分に流入した後、該後部膨張部20b内における車両後側部分へ流入するようになる。尚、制限部20eも、上記膨張抑制部20dと同様に、後部膨張部20b(特に後部膨張部20bにおける車両後側部分)の膨張時における車幅方向の厚みを所定値以下に抑制する役目を有している。
上記収容状態にあるカーテン部材20に、上記インフレータ21からガスが供給されると、そのガスが前部膨張部20a内及び後部膨張部20b内に流入して前部膨張部20a及び後部膨張部20bが膨張し、曲部20fよりも車両前側では、カーテン部材20が略真下側に展開する一方、曲部20fよりも車両後側では、下側かつ車両前側に展開する。このとき、上記スリット20gによって、後部膨張部20bが、その車両後側が拘束されないフリーな状態で展開する。また、後部膨張部20b内(特に後部膨張部20b内における車両後側部分)への上記ガスの流入が制限されて前部膨張部20aがより早期に展開するとともに、後部膨張部20bにおいては車両前側部分が車両後側部分よりも早期に展開する。したがって、後部膨張部20bにおけるピラートリム・車体間配設部20cとされた部分は、その車幅方向の厚みが上記所定値に達しないような殆ど膨張していない状態で前部膨張部20aと後部膨張部20bにおける車両前側部分とにより車両前側に引っ張られながら、リヤピラートリム18の車両前側縁とリヤサイドウインド2との間を早期に通って車両前側(車室内)に展開する。このとき、後部膨張部20bにおけるピラートリム・車体間配設部20cとされた部分は、リヤピラートリム18を車室側に変形させるが、その変形量はかなり小さくて済み、よって、リヤピラートリム18の破損を防止することができる。また、たとえ、後部膨張部20bにおけるピラートリム・車体間配設部20cとされた部分が、リヤピラートリム18の車両前側縁とリヤサイドウインド2との間を通過する前にかなり膨張したとしても、膨張抑制部20dによって、その車幅方向の厚みは最大でも上記所定値となり、リヤピラートリム18が破損するようなことはない。さらに、後部膨張部20bは、リヤピラートリム18から大きな抵抗を受けることなくスムーズに車室内に展開するため、後部膨張部20bを早期に展開させることができる。
また、本実施形態では、カーテン部材20の展開完了状態において、車幅方向車室側から見て、該カーテン部材20の後部膨張部20bの車両後側縁が、リヤサイドウインド2の上縁近傍の高さ位置から下側全体に亘って、リヤサイドウインド2の車両後側縁から離間している(つまりスリット20gの上端がリヤサイドウインド2の上縁近傍の高さ位置にある)ので、リヤピラートリム18の上端部に大きな力を付与するのを防止することができる。すなわち、リヤサイドウインド2の上縁近傍の高さ位置には、収容状態にあるカーテン部材20の曲部20fが存在し、上記スリット20gがない場合、その曲部20fでは、略真下側に展開しようとする力と下側かつ前側に展開しようとする力とが複雑に作用するため、展開時の挙動が不安定になって、曲部20fの比較的近傍に位置するリヤピラートリム18の上端部に対して、大きな力を付与する可能性が高くなると考えられる。しかし、上記スリット20gによって、曲部20fでは、車両後側がフリーな状態になるため、略真下側に展開することとなり、この結果、曲部20fの展開、延いては後部膨張部20bの展開をスムーズにすることができて、リヤピラートリム18の上端部に大きな力を付与するようなことはなくなる。よって、リヤピラートリム18の破損をより一層有効に防止することができる。
尚、上記実施形態では、スリット20gの上端をリヤサイドウインド2の上縁近傍の高さ位置になるようにしたが、リヤピラートリム18の上端近傍の高さ位置になるようにしてもよい。つまり、カーテン部材20の展開完了状態において、車幅方向車室側から見て、該カーテン部材20の後部膨張部20bの車両後側縁が、リヤピラートリム18の上端近傍の高さ位置から下側全体に亘って、リヤピラートリム18の車両前側縁から離間しているようにする。この場合でも、後部膨張部20bにおけるピラートリム・車体間配設部20cとされた部分がリヤピラートリム18の車両前側縁とリヤサイドウインド2との間を通過するときにおいては、上記実施形態の如くリヤピラートリム18を殆ど変形させないことに加えて、後部膨張部20bにおけるピラートリム・車体間配設部20cとされた部分が上記間を通過した後においても、後部膨張部20bが、リヤピラートリム18において特に破損し易い上端部に対して大きな力を付与することがない。
また、上記実施形態では、収容状態にあるカーテン部材20の車両後側端部において、曲部20fと最も下側の部分との箇所で車体に固定したが、図5に示すように、曲部20fの箇所のみで固定するようにして、ピラートリム・車体間配設部20cは車体に固定されないようにしてもよい(二点鎖線で示す収容状態を参照)。この場合、ピラートリム・車体間配設部20cは非膨張部を含まず、後部膨張部20bのみで構成される。また、カーテン部材20の展開完了状態で、後部膨張部20bにおけるピラートリム・車体間配設部20cとされた部分が車室内に出ると、リヤピラー5におけるリヤピラートリム18と車体インナパネル52との間の空間内にカーテン部材20は残らないことになる。すなわち、上記実施形態のように、後部膨張部20bと車体に固定された非膨張部とを切り離すようなスリット20gが不要になる。そして、この場合においても、上記展開完了状態において、車幅方向車室側から見て、カーテン部材20の後部膨張部20bの車両後側縁が、リヤピラートリム18の車両前側縁から離間するようにすればよい。
さらに、上記実施形態では、カーテン部材20の後部膨張部20bに膨張抑制部20dや制限部20eを形成したが、これらは必ずしも必要なものではなく、これらをなくしたとしても、カーテン部材20の展開完了状態において、車幅方向車室側から見て、該カーテン部材20の後部膨張部20bの車両後側縁がリヤピラートリム18の車両前側縁から離間するように構成すれば、後部膨張部20bにおけるピラートリム・車体間配設部20cとされた部分が、大きく膨張する前にリヤピラートリム18の車両前側縁とリヤサイドウインド2との間を通過するようにすることができ、リヤピラートリム18の破損を防止することができる。
また、上記実施形態では、リヤピラートリム18を、曲部18bによって車室側に変形し易い形状にしたが、そのような形状にする必要は必ずしもなく、例えばリヤピラートリム18の車両前後方向中央部が車両前側縁及び後側縁よりも車室側に突出する形状であってもよい。
さらにまた、上記実施形態では、2つのサイドウインドを有する車両に本発明を適用したが、本発明は、3つのサイドウインド(3列シート)を有する車両や、4つ以上のサイドウインドを含むサイドウインド部を有する車両にも適用することができる。この場合、後部ピラーは、車両側部のピラーのうち最後部に位置するピラー(3つのサイドウインドの場合には、クォータピラー)とすればよく、サイドウインド部は、上記後部ピラーの車両前側に隣接する後部サイドウインド(3つのサイドウインドの場合には、クォータウインド)を少なくとも含むものとすればよい。